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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024180678
(43)【公開日】2024-12-26
(54)【発明の名称】点眼型洗眼用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/22 20060101AFI20241219BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20241219BHJP
   A61P 27/04 20060101ALI20241219BHJP
【FI】
A61K47/22
A61K9/08
A61P27/04
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024185672
(22)【出願日】2024-10-22
(62)【分割の表示】P 2020113493の分割
【原出願日】2020-06-30
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐伯 貴史
(57)【要約】
【課題】滴下数が視認によって把握しやすい点眼型洗眼用組成物を提供することを目的とする。また滴下数が視認によって把握しやすいとともに、防腐保存性に優れた点眼型洗眼用組成物を提供することを目的とする。
【解決手段】点眼型洗眼用組成物を着色された澄明な水溶液として調製する。着色化合物を配合することで、点眼型洗眼用組成物に視認性に加えて、防腐保存力を付与することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色された澄明な水溶液である点眼型洗眼組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点眼型洗眼用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、洗眼用カップ(アイカップ)を用いた洗眼方法が知られており、該方法の一例として、洗眼用カップに洗眼液を適量(例えば5mL程)注ぎ、次いで、該カップを片側の眼周辺に押し当てて該カップ内の洗眼液と眼とを接触させ、数回まばたきを行うことにより洗眼する方法が挙げられる。しかし、該方法は、洗眼用カップが必須であり、携帯性に欠けるといった問題がある。
【0003】
また、前記方法とは異なる洗眼方法として、洗眼液を眼に直接点眼して洗眼する方法が知られている(例えば、特許文献1)。当該点眼様式による洗眼は、通常、点眼薬よりも多い滴下回数、例えば、1眼あたり1回3~12滴程度の点眼液を眼球に滴下することで行われる。しかし、点眼型の洗眼液は、通常の点眼薬よりも1回の滴下数が多く、また液滴下の間隔が短くなることに加えて、通常、眼鏡やコンタクトレンズを外して適用されるため、滴下数が把握しにくいという問題がある。特に、介護者が被介護者の洗眼に使用する場面では、介護者が目視により容易に滴下数を把握できることが好ましく、その必要性は高い。このように点眼型洗眼用組成物は、その滴下数が視認によって把握しやすいことが求められる。
【0004】
一方、点眼型洗眼用組成物は、洗眼用カップが不要であるため携帯性に優れているというメリットがある。このため、外出先で使用する場面が多く、汚染するリスクも高い。汚染リスクを低減するために、塩化ベンザルコニウムなどの第4級アンモニウム系の防腐剤を配合することも可能であるが、角膜への影響やコンタクトレンズへの吸着が懸念されるため、当該防腐剤の配合は好ましくない。このため、第4級アンモニウム系化合物を始めとする防腐剤を配合しなくても、防腐保存性に優れた点眼型洗眼用組成物が求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-210265号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、滴下数が視認によって把握しやすい点眼型洗眼用組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、滴下数が視認によって把握しやすいとともに、防腐保存性に優れた点眼型洗眼用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題に鑑み鋭意検討を行ったところ、黄色、黄赤色または赤色を呈した点眼型洗眼用組成物が、目視により滴下液を認識把握しやすいことを確認し、さらに、着色化合物として、シアノコバラミン、ベルベリン、それらの塩、及びそれらの水和物からなる群より選択される少なくとも1種を配合すると、着色に加えて、同時に点眼型洗眼用組成物に防腐力を付与ないし向上することができることを見出した。本発明は当該知見に基づき更に検討を重ねた結果、完成されたものである。本発明には、次に掲げる実施形態が包含される。
【0008】
項1.着色された澄明な水溶液である点眼型洗眼組成物。
項2.点眼型洗眼用組成物に着色と同時に防腐力を付与するための製造方法であって、点眼型洗眼用組成物に、着色化合物を配合する工程を有する、前記方法。
項3.点眼型洗眼用組成物に着色化合物を配合することにより、前記点眼型洗眼用組成物を着色すると同時に当該組成物に防腐作用を付与することを特徴とする、着色化合物の使用方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、洗眼時における点眼様式による点眼型洗眼用組成物の滴下数を容易に視認することができる。このため、眼鏡やコンタクトを外した状態でも、また被介護者に点眼する介護者においても、3~8滴という適切な量の点眼液を用いて洗眼を行うことができる。また、本発明によれば、前記効果に加えて、第4級アンモニウム系化合物を始めとする防腐剤を配合しなくとも、すぐれた保存防腐性を発揮することができる。このため、従来の防腐剤の、例えば角膜への影響やコンタクトレンズへの吸着といった問題が抑制された、点眼型洗眼用組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、着色された澄明な水溶液である点眼型洗眼用組成物を提供する。
【0011】
本発明の点眼型洗眼用組成物の着色は特に制限されない。例えば、配合する着色化合物の色に起因して、制限されないものの、例えば黄色、黄赤色、及び赤色などの色を有することができる。なお、当該色は、JISで規定されている基本色名に基づく色である。これらの基本色名に分類される色であればよく、当該色には、例えば「うすい」、「淡い」、「明るい」、「やわらかい、」「くすんだ」、「暗い」、「灰みの」、「濃い」、「つよい」、または「あざやかな」等の明度や彩度を有する色も含まれる。また、「紫みの赤色」、「黄みの赤色」、「赤みの黄色」、または「緑みの黄色」も含まれる。
【0012】
「澄明」とは、点眼型洗眼用組成物(水溶液)が目視で濁っていないことを意味する。具体的には、濁度試験法(目視法)により、点眼型洗眼用組成物(水溶液)の澄明性が水と同じか、または多少濁っていても、その濁度が、ホルマジン乳濁標準液の比較液I(ホルマジン標準液5mLを水で100mLに調製した液)の濁度以下と認定される場合は、当該点眼型洗眼用組成物は澄明であると判断することができる。なお、ホルマジン乳濁標準液は、ヘキサメチレンテトラミン試液25mLに硫酸ヒドラジウム試液25mLを添加し室温で24時間放置して調製したホルマジン乳濁原液3mLに、水を加えて200mLに調整することで調製することができる。目視による測定は、検体を、内径15~25mmの無色透明の平底試験管に液層が深さ40mmになるようにとり、散乱光の中で黒色の背景を用いて真上から観察して水または比較液Iと比較することで実施することができる。
【0013】
点眼型洗眼用組成物の水溶液を、澄明性を損なうことなく、着色するために好適に使用することができる着色化合物としては、特に制限されないが、一例を挙げると、シアノコバラミン、ベルベリン、それらの塩、及びそれらの水和物からなる群より選択される少なくとも1種を挙げることができる。これらは1種単独で使用してもよいし、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
【0014】
シアノコバラミンは、ビタミンB12とも称される水溶性ビタミンである。点眼型洗眼用組成物に0.0002~0.002w/v%の範囲で配合することで、点眼型洗眼用組成物(水溶液)を澄明な淡赤~赤に着色することができる。シアノコバラミンの配合割合として、好ましくは0.0004~0.002w/v%であり、より好ましくは0.0006~0.002w/v%を挙げることができる。特にシアノコバラミンを、0.0008~0.002w/v%の割合で配合することで、点眼型洗眼用組成物(水溶液)を澄明な淡赤に着色され滴下液の視認性を向上させることができるとともに、点眼型洗眼用組成物に防腐力(抗菌作用)を付与することができる。
【0015】
ベルベリンまたはその塩は、抗炎症作用を有する化合物である。点眼型洗眼用組成物に0.0005~0.005w/v%の範囲で配合することで、点眼型洗眼用組成物(水溶液)を澄明な淡黄~黄に着色することができる。ベルベリンまたはその塩の配合割合として、好ましくは0.001~0.005w/v%であり、より好ましくは0.002~0.004w/v%を挙げることができる。特にベルベリンまたはその塩を、0.002~0.0025w/v%の割合で配合することで、点眼型洗眼用組成物(水溶液)を澄明な淡黄に着色され滴下液の視認性を向上させることができるとともに、点眼型洗眼用組成物に防腐力(抗菌作用)を付与することができる。ベルベリンの塩としては、薬学的に許容される塩を挙げることができる。好ましくは点眼や洗眼に使用することができる塩である。かかる塩としては、制限されないものの、ベルベリンの硫酸塩、塩酸塩、及び塩化物等を挙げることができる。好ましくはベルベリン塩化物である。なお、ベルベリンまたはその塩は水和物の状態であってもよい。
【0016】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、更に、点眼や洗眼における使用に許容可能な任意の他の成分を含有してもよい。該他の成分として、本発明を制限するものではないが、薬効成分、緩衝剤、安定剤、等張化剤、清涼化剤、溶剤、pH調整剤、増粘剤、防腐剤等が例示される。該他の成分は、目的等に応じて適宜選択すればよく、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよく、その配合量も適宜決定すればよい。
【0017】
この限りにおいて本発明を制限するものではないが、他の成分の一例として薬効成分を例示すると、薬効成分として、アミノ酸類、ビタミン類、抗炎症剤(消炎剤)、角膜表層保護剤、抗ヒスタミン剤等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本発明を限定するものではないが、例えば、アミノ酸類として、アミノ酸及びその薬学的に許容される塩;タウリンなどのアミノ酸類似物等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。好ましくはタウリン等のアミノ酸類似物が例示される。なお、本発明の点眼型洗眼用組成物は、アミノ酸及び/またはその塩を配合しないで調製することができる。ここでいうアミノ酸とは、アミノ基とカルボキシ基の両方の官能基を持つ蛋白質の構成ユニットとなりえるアミノ酸を意味し、例えばL-アスパラギン酸等が含まれる。
【0019】
本発明を限定するものではないが、例えば、抗炎症剤として、硫酸亜鉛、乳酸亜鉛、アラントイン、イプシロン-アミノカプロン酸、グリチルリチン酸及びその塩(グリチルリチン酸二カリウム等)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明を限定するものではないが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、前述するベルベリン、その塩、またはその水和物以外の抗炎症剤を含まないものであることが好ましく、特に硫酸亜鉛及び/または乳酸亜鉛を含有しないものであることが好ましい。
【0020】
本発明を限定するものではないが、例えば、角膜表層保護剤として、コンドロイチン硫酸及びその塩、ヒアルロン酸及びその塩が例示される。好ましくはコンドロイチン硫酸及びその塩である。コンドロイチン硫酸の塩として、好ましくはアルカリ金属塩等、更に好ましくはナトリウム塩(コンドロイチン硫酸エステルナトリウム)が例示される。なお、本発明の洗眼用組成物において、角膜表層保護剤としてコンドロイチン硫酸及び/またはその塩を配合する場合、ヒアルロン酸及びその塩は配合しないことが好ましい。
【0021】
本発明を限定するものではないが、例えば、抗ヒスタミン剤として、ジフェンヒドラミン及びその塩(ジフェンヒドラミン塩酸塩等)、クロルフェニラミン及びその塩(クロルフェニラミンマレイン酸塩等)等が挙げられる。これらは1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。なお、本発明を限定するものではないが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、抗ヒスタミン剤を含まないものであることが好ましく、特に、特にクロルフェニラミン及びその塩を含有しないものであることが好ましい。
【0022】
本発明の点眼型洗眼用組成物が薬効成分を含有する場合、本発明の効果を妨げない限り、薬効成分の含有量は制限されず、点眼薬や洗眼用組成物に通常配合できる量の範囲から選択することができる。
【0023】
他の成分の一例として緩衝剤としては、慣用のものを制限なく使用することができるが、好ましくはホウ酸及びその塩(例えば、ナトリウム塩)等が挙げられる。ホウ酸の塩として、好ましくはホウ砂(四ホウ酸ナトリウム)等が例示される。該組成物中のホウ酸の含有量は、本発明の効果を妨げない限り制限されないが、0.2~2.5w/v%が例示され、好ましくは0.5~2.2w/v%、より好ましくは1~2w/v%が例示される。また、ホウ砂の含有量は、0.001~0.6w/v%が例示され、好ましくは0.002~0.1w/v%、より好ましくは0.003~0.05w/v%が例示される。
【0024】
また、安定剤として慣用のものを制限なく使用することができるが、好ましくはPOEソルビタン脂肪酸エステル、POE硬化ヒマシ油、モノステアリン酸ポリエチレングリコール、エデト酸ナトリウム水和物等が例示される。安定剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。本発明の効果を妨げない限り、安定剤の含有量は制限されず、該組成物中、安定剤の含有量は0.001~0.5w/v%が例示され、好ましくは0.005~0.4w/v%が例示される。
【0025】
また、等張化剤として慣用のものを制限なく使用することができるが、好ましくはプロピレングリコール等が例示される。等張化剤の含有量は制限されず、本発明の点眼型洗眼用組成物の浸透圧比(対生理食塩水)が0.6~1.6の範囲になるように、該組成物中、0~2w/v%、好ましくは0.3~2w/v%の範囲から適宜選択することできる。
【0026】
また、清涼化剤として慣用のものを制限なく使用することができる。本発明の効果を妨げない限り、清涼化剤の含有量は制限されず、0.0001~0.6w/v%の範囲から選択される。好ましくは0.005~0.3w/v%が例示される。
【0027】
また、溶剤として慣用のものを制限なく使用することができる。好ましくは水(精製水、滅菌精製水)が例示される。本発明の効果を妨げない限り、溶剤の含有量は制限されず、60~99w/v%の範囲から選択される。好ましくは70~99w/v%が例示される。
【0028】
また、pH調整剤として慣用のものを制限なく使用することができる。本発明の効果を妨げない限り、pH調整剤の含有量は制限されず、本発明の点眼型洗眼用組成物のpHが室温(24℃)で5~8の範囲になるように、該組成物中、0.001~0.01w/v%の範囲から適宜選択することできる。
【0029】
また、本発明の点眼型洗眼用組成物は、増粘剤として慣用のものを制限なく配合することができるが、好ましくは増粘剤を含有しないものである。
【0030】
また、防腐剤として慣用のものを制限なく使用することができるが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、好ましくは防腐剤、特に第4級アンモニア系の防腐剤(例えば、ベンザルコニウム塩化物、ベンゼトニウム塩化物等)を含有しないものである。
【0031】
本発明の一実施形態として、制限するものではないが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、(1)着色化合物、ならびに(2)薬効成分、緩衝剤、安定剤、等張化剤、清涼化剤、溶剤及びpH調整剤からなる群より選択される少なくとも1種を含み、増粘剤及び/または防腐剤(特に第4級アンモニア系化合物)を含まない。当該本発明の点眼型洗眼用組成物は、前記(1)及び(2)の成分からなるものが含まれる。
【0032】
また、本発明の一実施形態として、制限するものではないが、本発明の点眼型洗眼用組成物は、前記薬効成分として、アミノ酸及びその塩(特にアスパラギン酸及びその塩)を含有しないもの、抗ヒスタミン剤(特にマレイン酸クロルフェニラミン)を含有しないものが例示される。
【0033】
本発明の点眼型洗眼用組成物のpHは、点眼剤や洗眼剤として使用可能な範囲であれば制限されないが、室温(24℃)でpH5~8、好ましくはpH5.5~7.5、好ましくはpH6~7.5が例示される。pHは、卓上型pHメーターF-52(株式会社堀場製作所製)で測定される。
【0034】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、後述の通り、通常、点眼容器に収容され、点眼される。このことから、該組成物の粘度は、点眼可能な範囲であれば制限されないが、好ましくは室温で0.9~2.5mPa・s、より好ましくは0.9~1.6mPa・s、更に好ましくは0.9~1.2mPa・sが例示される。粘度は、コーンプレート型粘度計(レオメーターMCR302、Anton Paar社製)を用いて、せん断速度100s-1、測定温度25℃で測定される。より具体的には、レオメーターのサンプルプレートに組成物5mLを添加し、半径50mm、コーン角度1°のコーンプレートセンサーをセットし、25℃で、せん断速度が100s-1となるようにセンサーを回転させ、粘度を測定する。100秒間計測を行い、2秒毎に1点データを取得し、45~49点目のデータ5点から平均値を算出し、これを粘度とする。
【0035】
本発明の点眼型洗眼用組成物の浸透圧は、点眼剤や洗眼剤として使用可能な範囲であれば制限されないが、例えば、浸透圧比は0.6~1.6が例示され、好ましくは0.7~1.3、より好ましくは0.8~1.2が例示される。浸透圧比は、自動浸透圧分析装置(オズモステーション OM-6060、アークレイ株式会社製)を用いて測定、算出される、第十七改正日本薬局方2.47浸透圧測定法(オスモル濃度測定法)に従う値であって、該組成物と生理食塩液(0.9w/v%塩化ナトリウム水溶液)のオスモル濃度を測定し、生理食塩液の測定値を1とした場合の値である。
【0036】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、コンタクトレンズを装着した状態で使用してもよく、装着していない状態で使用してもよい。コンタクトレンズは、ハードコンタクトレンズ、ソフトコンタクトレンズの別を問わない。
【0037】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、点眼により使用できる限り制限されないが、使い勝手が良い等の観点から、該組成物は、通常、点眼容器に収容して使用される。
【0038】
点眼容器としては、該組成物を収容して点眼できる限り制限されず、例えば、従来公知の点眼剤や点眼型洗眼剤等に使用されている点眼容器(例えば、容器本体、中栓(ノズル)、キャップを含む)が例示される。点眼容器は、容器本体、中栓(ノズル)及びキャップのそれぞれが独立しているタイプ、容器本体、中栓(ノズル)及びキャップの少なくとも2つが一体型となっているタイプ、中栓(ノズル)に穴が設けられているタイプ、中栓(ノズル)に穴が無く、使用時にキャップを巻き締めることによって中栓(ノズル)に穴を開けて使用するタイプ等のいずれであってのよい。
【0039】
点眼容器の容量は制限されないが、使い勝手が良い等の観点から、容量は8~20mLが例示され、好ましくは10~15mL、より好ましくは12~14mLが例示される。容量は、マルチドーズ型、ユニットドーズ型の別を考慮して適宜決定すればよい。
【0040】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、1眼あたり、1回に3~8滴点眼することにより使用される。この限りにおいて制限されないが、該組成物は、1眼あたり、1回に、好ましくは4~8滴、より好ましくは4~6滴が点眼される。
【0041】
該組成物の1滴あたりの滴下量は、本発明の効果が得られる限り制限されないが、例えば、1滴あたり、30~50μLが例示され、好ましくは35~40μL、より好ましくは35~37μLが例示される。
【0042】
該組成物の1日あたりの使用回数は特に制限されず、例えば、1眼あたり、1日1~12回、2~8回、3~6回等のいずれであってもよい。
【0043】
本発明の点眼型洗眼用組成物は、着色化合物の配合により着色しているため、視認性に優れており、また携帯に便利な点眼型であるため、外出先でも手軽に眼を洗浄することができる。その一方で、雑菌の混入が懸念されるが、着色化合物の配合により、同時に防腐力を備えている。このことから、本発明は、点眼型洗眼用組成物に着色化合物を配合することにより、当該点眼型洗眼用組成物を着色すると同時に当該組成物に防腐効果を付与することを特徴とする、着色化合物の使用方法を提供するものでもある。本発明の方法は、点眼型洗眼用組成物に着色と同時に防腐力を付与するための方法として有用であり、かかる方法には、着色化合物として前述するシアノコバラミン、ベルベリン、それらの塩、及びそれらの水和物からなる群より選択される少なくとも1種を使用する方法が含まれる。これらの着色化合物の配合割合は、前述した通りである。
【実施例0044】
以下、試験例及び実施例を示して本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0045】
試験例1:滴下液の見やすさの評価
以下の方法で調製した点眼型洗眼用組成物を滴下してもらい、滴下液の見やすさを評価した。
【0046】
1.点眼型洗眼用組成物の調製
表1に示す配合割合に従い各成分を混合して点眼型洗眼用組成物(pH6.0)を調製した。調製した組成物13mLを、一般的な点眼容器(容量15mL、ポリエチレンテレフタレート樹脂製、マルチドーズ型、伸晃化学株式会社製)に充填し、点眼容器入りの澄明な点眼型洗眼用組成物を得た(実施例1~5、比較例1)。
【0047】
2.試験方法
視力が0.01~0.4である6名の被験者に、各点眼型洗眼用組成物を、点眼容器から8滴ずつ眼に滴下してもらい、滴下液の見えやすさを、比較例1との比較で、4つの選択肢(1:比較例1よりも見やすい、2:比較例1よりもやや見やすい、3:比較例1のほうがやや見やすい、4:比較例1のほうが見やすい)の中から回答してもらった。下記の基準に示すように、「1」の回答をした被験者の数から、滴下液の見やすさを評価した。なお、試験は、四方が白壁で囲まれた白色灯照明の部屋で実施した。また、点眼容器の滴下口と眼との距離を50cmに設定した。
[評価基準]
◎:5~6名が「1:比較例1よりも見やすい」と回答
○:3~4名が「1:比較例1よりも見やすい」と回答
△:1~2名が「1:比較例1よりも見やすい」と回答
×:0名が「1:比較例1よりも見やすい」と回答
【0048】
3.試験結果
結果を表1に合わせて示す。
【0049】
【表1】
【0050】
表1に示すように、無色透明な比較例1の滴下液よりも、淡黄色の実施例3の滴下液のほうが見やすく、さらに黄色、淡黄赤色及び淡赤色をした実施例4、5、1及び2の滴下液のほうが見えやすいことが確認された。
【0051】
試験例2:防腐力の評価
以下の方法で調製した点眼型洗眼用組成物の防腐力を評価した。
【0052】
1.点眼型洗眼用組成物の調製
表2に示す配合割合に従い各成分を混合して各種の点眼型洗眼用組成物(pH6.0)を調製し、調製した組成物10mLを、殺菌済みの点眼容器(容量15mL、ポリエチレンテレフタレート樹脂製、マルチドーズ型、伸晃化学株式会社製)に充填し、点眼容器入りの澄明な点眼型洗眼用組成物を得た(実施例6~9、比較例2)。
【0053】
2.試験方法
調製した各組成物10mLを、容器に入れた状態で、25℃で1日間静置した。その後、キャップを開けて、点眼容器から中栓を外し、これに、セパシア菌を水に懸濁した懸濁液100μLを添加することで、セパシア菌を1.0×10CFU/mLとなる割合で接種した。その後、中栓を点眼容器に取り付け、キャップを閉めて、撹拌して、25℃の暗所に保存した。保存から21日後に、セパシア菌を接種した各組成物0.1mLを点眼容器から取り出し、これをSCDLP寒天培地にコンラージ棒で塗布し、34℃48時間培養後、菌数を目視で数え、数えた菌数に100を乗じた値を、保存から21日後の各組成物中の菌数とした。測定した菌数から下記の基準に従って点眼型洗眼用組成物の防腐力を評価した。
[評価基準]
◎:菌数ゼロ(すべて死滅)
○:菌数が接種量の0.1%以下に減少
△:菌数が接種量の1%以下に減少
×:前記△の基準を満たさない
【0054】
3.試験結果
結果を表2に合わせて示す。
【0055】
【表2】
【0056】
表2に示すように、比較例2の点眼型洗眼用組成物にシアノコバラミン及びベルベリンの塩の少なくとも一方を配合した実施例6~9について、点眼型洗眼用組成物に防腐力を付与ないし高めることが確認された。
【0057】
処方例
表3に本発明の点眼型洗眼用組成物の処方例を示す。処方例1~9は、滴下数が視認によって把握しやすいとともに防腐保存性に優れていることが認められ、携帯することで、場所を問わずに使用できる点眼型洗眼用組成物として使用することができる。
【0058】
【表3】