(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018336
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】含液物の乾燥方法及び装置
(51)【国際特許分類】
F26B 3/04 20060101AFI20240201BHJP
F26B 21/12 20060101ALI20240201BHJP
F26B 25/00 20060101ALI20240201BHJP
C02F 11/13 20190101ALI20240201BHJP
C02F 11/121 20190101ALI20240201BHJP
【FI】
F26B3/04
F26B21/12
F26B25/00 A
C02F11/13
C02F11/121
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121611
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】埜村 誠
【テーマコード(参考)】
3L113
4D059
【Fターム(参考)】
3L113AA01
3L113AB02
3L113AC50
3L113AC67
3L113BA36
3L113CA04
3L113CA11
3L113CB23
3L113DA02
4D059AA03
4D059AA23
4D059BD01
4D059BD02
4D059BD21
4D059BD24
4D059BD26
4D059BE02
4D059BE15
4D059BE17
(57)【要約】
【課題】含液物を効率よく乾燥することができる含液物の乾燥方法及び装置を提供する。
【解決手段】液と粒子とを含むスラリー状又はペースト状の含液物を乾燥する方法において、含液物を面状部具備体の面状部に付着させる付着工程と、その後、乾燥する乾燥工程とを有する含液物の乾燥方法。前記付着工程の後、前記面状部に付着した含液物の液切りを行う液切り工程をさらに有する含液物の乾燥方法。前記乾燥工程において、面状部に付着した含液物の表面に沿って、常温又は加温気体を流して乾燥を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液と粒子とを含むスラリー状又はペースト状の含液物を乾燥する方法において、含液物を面状部具備体の面状部に付着させる付着工程と、その後、乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とする含液物の乾燥方法。
【請求項2】
前記面状部は、スリット状の隙間を有する請求項1の含液物の乾燥方法。
【請求項3】
前記面状部は、網目状である請求項1の含液物の乾燥方法。
【請求項4】
前記面状部は、凹凸を有する請求項1の含液物の乾燥方法。
【請求項5】
前記付着工程の後、前記面状部に付着した含液物の液切りを行う液切り工程をさらに有する請求項1の含液物の乾燥方法。
【請求項6】
前記含液物付着面状部具備体を起立状態とすることにより、前記液切り工程を行う請求項5の含液物の乾燥方法。
【請求項7】
前記液切り工程において、前記面状部に付着した含液物を任意の温度に保持できるように熱を与えるようにした、請求項6の含液物の乾燥方法。
【請求項8】
前記乾燥工程において、面状部に付着した含液物の表面に沿って、常温又は加温気体を流して乾燥を行う請求項1の含液物の乾燥方法。
【請求項9】
前記乾燥工程において、前記気体の流速及び/又は方向を変化させる請求項8の含液物の乾燥方法。
【請求項10】
前記含液物付着面状部具備体を起立状態にして前記乾燥工程を行う請求項9の含液物の乾燥方法。
【請求項11】
前記乾燥工程において、前記含液物付着面状部具備体の起立角度を変化させる請求項10の含液物の乾燥方法。
【請求項12】
前記乾燥工程において、含液物付着面状部具備体の天地方向を逆にする請求項10の含液物の乾燥方法。
【請求項13】
液と粒子とを含むスラリー状又はペースト状の含液物を乾燥する装置において、含液物を面状部具備体の面状部に付着させる付着手段と、その後、乾燥する乾燥手段とを有することを特徴とする含液物の乾燥装置。
【請求項14】
前記面状部は、スリット状の隙間を有する請求項13の含液物の乾燥装置。
【請求項15】
前記面状部は、網目状である請求項13の含液物の乾燥装置。
【請求項16】
前記面状部は、凹凸を有する請求項13の含液物の乾燥装置。
【請求項17】
前記面状部に付着した含液物の液切りを行う液切り手段をさらに有する請求項13の含液物の乾燥装置。
【請求項18】
前記含液物付着面状部具備体を起立状態とする起立手段を有する請求項17の含液物の乾燥装置。
【請求項19】
前記面状部に付着した含液物を任意の温度に保持できるように熱を与える手段を有する請求項18の含液物の乾燥装置。
【請求項20】
前記乾燥手段は、前記面状部に付着した含液物の表面に沿って、常温又は加温気体を流して乾燥を行う手段である請求項13の含液物の乾燥装置。
【請求項21】
前記気体の流速及び/又は方向を変化させる手段を有する請求項20の含液物の乾燥装置。
【請求項22】
前記含液物付着面状部具備体を起立状態とする起立手段を有する請求項21の含液物の乾燥装置。
【請求項23】
前記含液物付着面状部具備体の起立角度を変化させる手段を有する請求項22の含液物の乾燥装置。
【請求項24】
前記含液物付着面状部具備体の天地方向を逆にする手段を有する請求項22の含液物の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含液物(液が水の場合は含水物)の乾燥方法及び装置に係り、詳しくはスラリー状、ペースト状などの状態となっている含液物を乾燥する方法及び装置に関する。本発明の一態様は、水処理工程から排出される各種汚泥、すなわち、沈殿回収物やろ過回収物、凝集処理汚泥や生物処理汚泥等の含水物の乾燥、または、各種製造工程における液体と固形物を含む含液廃棄物の乾燥、または、有機物の発酵残渣等の含液物の乾燥に好適な方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
汚泥の乾燥方法として、特許文献1には、汚泥を抄き、次いで脱水した後、温風により乾燥することが記載されている。
【0003】
特許文献2には、断片となった汚泥を、乾燥室内で移動させながら乾燥することが記載されている。
【0004】
特許文献3には、重力濾過部、脱水部を有する脱水装置で処理した汚泥を断片に切り出し、乾燥することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000-263098号公報
【特許文献2】特開2009-101276号公報
【特許文献3】特開2016-209814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
水を蒸発させるために多大なエネルギーが必要なことはよく知られている。加えて、生物処理汚泥等の含水物は、水と固形物との水和や、水を抱え込む特性のあるタンパク質や糖質などの介在、あるいは、凝集剤が水分を抱えているなど、単に水分子を蒸発させることよりも難しい。よって、含水物は非常に乾燥されにくく、特許文献1~3の方法によっても水を十分に蒸発させ乾燥することは容易ではなかった。
【0007】
乾燥に関わる要素は、温度(熱)、湿度(飽和水蒸気圧)、の他に、水と気体が接する境界面の水蒸気飽和層を速やかに移動させるための期待の流れ(風力、風速)が重要である。本発明は、このような水分の蒸発に関わる要素を上手く組み合わせ制御することで、含液物を効率よく乾燥する方法及び装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[1] 液と粒子とを含むスラリー状又はペースト状の含液物を乾燥する方法において、
含液物を面状部具備体の面状部に付着させる付着工程と、その後、乾燥する乾燥工程とを有することを特徴とする含液物の乾燥方法。
【0009】
[2] 前記面状部は、スリット状の隙間を有する[1]の含液物の乾燥方法。
【0010】
[3] 前記面状部は、網目状である[1]の含液物の乾燥方法。
【0011】
[4] 前記面状部は、凹凸を有する[1]の含液物の乾燥方法。
【0012】
[5] 前記付着工程の後、前記面状部に付着した含液物の液切りを行う液切り工程をさらに有する[1]の含液物の乾燥方法。
【0013】
[6] 前記含液物付着面状部具備体を起立状態とすることにより、前記液切り工程を行う[5]の含液物の乾燥方法。
[7] 前記液切り工程において、前記面状部に付着した含液物を任意の温度に保持できるように熱を与えられるようにした[6]の含液物の乾燥方法。
【0014】
[8] 前記乾燥工程において、面状部に付着した含液物の表面に沿って、常温又は加温気体を流して乾燥を行う[1]の含液物の乾燥方法。
【0015】
[9] 前記乾燥工程において、前記気体の流速及び/又は方向を変化させる[8]の含液物の乾燥方法。
【0016】
[10] 前記含液物付着面状部具備体を起立状態にして前記乾燥工程を行う[9]の含液物の乾燥方法。
【0017】
[11] 前記乾燥工程において、前記含液物付着面状部具備体の起立角度を変化させる[10]の含液物の乾燥方法。
【0018】
[12] 前記乾燥工程において、含液物付着面状部具備体の天地方向を逆にする[9]の含液物の乾燥方法。
【0019】
[13] 液と粒子とを含むスラリー状又はペースト状の含液物を乾燥する装置において、含液物を面状部具備体の面状部に付着させる付着手段と、その後、乾燥する乾燥手段とを有することを特徴とする含液物の乾燥装置。
【0020】
[14] 前記面状部は、スリット状の隙間を有する[13]の含液物の乾燥装置。
【0021】
[15] 前記面状部は、網目状である[13]の含液物の乾燥装置。
【0022】
[16] 前記面状部は、凹凸を有する[13]の含液物の乾燥装置。
【0023】
[17] 前記面状部に付着した含液物の液切りを行う液切り手段をさらに有する[13]の含液物の乾燥装置。
【0024】
[18] 前記含液物付着面状部具備体を起立状態とする起立手段を有する[17]の含液物の乾燥装置。
【0025】
[19] 前記面状部に付着した含液物を任意の温度に保持できるように熱を与える手段を有する[18]の含液物の乾燥装置。
【0026】
[20] 前記乾燥手段は、前記面状部に付着した含液物の表面に沿って、常温又は加温気体を流して乾燥を行う手段である[13]の含液物の乾燥装置。
【0027】
[21] 前記気体の流速及び/又は方向を変化させる手段を有する[20]の含液物の乾燥装置。
【0028】
[22] 前記含液物付着面状部具備体を起立状態とする起立手段を有する[21]の含液物の乾燥装置。
【0029】
[23] 前記含液物付着面状部具備体の起立角度を変化させる手段を有する[22]の含液物の乾燥装置。
【0030】
[24] 前記含液物付着面状部具備体の天地方向を逆にする手段を有する[22]の含液物の乾燥装置。
【発明の効果】
【0031】
本発明によると、スラリー状、ペースト状などの乾燥されにくい含液物であっても、面状部具備体の面状部に付着させ、効率よく乾燥することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図12】枠状ホルダ及び面状部具備体の構成図である。
【
図13】枠状ホルダ及び面状部具備体の構成図である。
【0033】
以下、本発明についてさらに詳細に説明する。
【0034】
[含液物]
本発明において、乾燥対象とする含液物は、スラリー状又はペースト状などの形態となっている。ここで言うスラリー状とは、液体中に固形物が懸濁している状態の含液物を指す。ペースト状とは、流動性はあるものの、スラリー状よりも高い粘性を持っている含液物のことを指す。含液物の具体例としては、排水,特に有機物含有排水の生物処理汚泥や、排水処理工程で発生したスラッジ、浮上スカムなどの他、メタン発酵、アルコール発酵、乳酸発酵、水素発酵、酸化発酵、アセトン・ブタノール発酵において生じた残渣、あるいは、醤油や豆乳製造時に排出された残滓などの含水物が例示されるが、これらに限定されない。含液物は水以外の油や有機溶剤等の非水液体と固形物質とを含み、スラリー状又はペースト状となっている非水系含液物であってもよく、水と非水液体とを含み、スラリー状又はペースト状となっている含液物であってもよい。
【0035】
[面状部具備体]
本発明は、含液物を面状部具備体の面状部に付着させて乾燥を行う。面状部は、プレート状、シート状、網状、布(特に織布)、簀状、など、2次元に広がる形状物であればいずれでもよい。面状部は、平面状であってもよく、波板状などの湾曲面状であってもよい。
【0036】
好適な面状部としては、簀状のものや、網、織布、不織布、透水性フィルムなどが挙げられる。簀状の面状部としては、細長い棒状体を平行に配列し、紐などの結束材で連結した簀の子状のものが好適である。この棒状体としては、丸棒状、角棒状などのいずれでもよいが、断面円形の丸棒状のものが好適である。
【0037】
棒状体や結束材などの面状部の材料は、吸水特性や腐食,塩が析出する問題を鑑み、合成樹脂が好適である。合成樹脂としては、耐水性、耐熱性、耐候性などの特性に優れるものを選んで用いるのが好ましい。
【0038】
面状部がプレート状又はシート状である場合、面状部を厚み方向に貫く多数の孔が設けられてもよい。孔の数が多いほど水の透過性はよくなるが、固形物が流出する恐れがある。おおよそ、1cm四方に少なくとも1つ以上の孔のあることが望ましい。孔の形状に制限はなく、多角形であっても、円状であっても、複雑な形状であってもよい。一方、孔の径は被乾燥物の状態に合わせて調整する必要がある。孔が大き過ぎると固形物が流出する恐れがあり、固形物のサイズに近いと孔に固形分が詰まって閉塞することがある。孔が小さすぎると液体の透過に時間を要し透過率が悪くなる。液体の透過性を鑑みると、孔径または孔幅は0.1mm~10mm,特に、0.5~5mm程度であると好適であり、被乾燥物の状態に合わせて適正な中心孔径と孔径範囲を設計するのが良い。
【0039】
面状部具備体は、面状部のみからなるものであってもよく、面状部の全周又は1対の平行な辺部に設けられたフレーム部を有したものであってもよい。
【0040】
面状部具備体は、容器状であり、容器の底面が面状部となっているものであってもよい。
【0041】
【0042】
図1は、底板に孔の空いていない単なる平板のトレー(18cm×30cm)よりなる面状部具備体1を示している。なお、(b)は(a)のB-B線断面図である。
【0043】
図2は、底板に、多数の孔2aを有したパンチングプレートを使用したトレイよりなる面状部具備体2を示している。なお、(b)は(a)のB-B線矢視図である。
【0044】
図3は、底板に液体が透過できる幅のスリット3aを入れたプレートよりなる面状部具備体3を示している。なお、(b)は(a)のB-B線矢視図である。
【0045】
図4は、竹ひごを筏のように繋いで作った漉き網状の面状部具備体4を示している。なお、(b)は(a)のB-B線矢視図である。
【0046】
図5は、ネット(網戸用、例えば18メッシュ)5aを用いて作成した簀桁状の面状部具備体5を示している。なお、(b)は(a)のB-B線断面図である。図示は省略するが、このネット5aの代わりに脱水機用の濾布(ポリプロピレン製・平織)や、透水性不織布シートで作成した簀桁であってもよい。
【0047】
面状部具備体は、
図5(c)のように、ネット5aの代わりに透水性フィルム5fを金網5mの上に張って作成した面状部具備体5’であってもよい。
【0048】
図6は、表面に凹凸(櫛型)があるプレートよりなる面状部具備体6を示している。なお、(b)は(a)のB-B線矢視図である。
凹部を形成することで、液体が浸み出す空間が作られ、後段の液切り工程で、特に面状部具備体を立てて液切りする場合に、液の排除をより高められる。
【0049】
図7は、表面に凹凸(三角様の突起)があるプレートよりなる面状部具備体7を示している。なお、(b)は(a)のB-B線矢視図である。
期待する効果は凹凸(三角様の突起)と同様であるが、乾燥時の斜面における気体の流れがスムーズになるため、蒸気飽和層の排除効率をより高める効果が期待できる。
【0050】
図8は、表面に凹凸(波型)があるプレートよりなる面状部具備体8を示している。なお、(b)は(a)のB-B線矢視図である。
【0051】
[面状部具備体への含液物の付着方法]
面状部具備体に含液物を付着させるには、含液物を塗着してもよく、吹き付けて付着させてもよい。含液物が液状などの流動性の高い場合には、含液物を面状部具備体で漉いて付着させてもよく、面状部具備体に含液物を流し込んで濾過するようにして付着させてもよい。
【0052】
面状部具備体に含液物を付着させた後、付着物の上面を平らに均してもよい。
【0053】
平らに均した場合の付着物の好ましい付着厚さは、含液物の性質によっても異なるが、生物処理汚泥や発酵残渣の場合、付着厚さは、過大であると乾燥時間が長くなり、過小であると充填効率低くなり容積効率が悪くなるので、乾燥に供する時点での厚みは0.1~20mm、特に1~5mm程度が好適である。
【0054】
含液物は、面状部の全体に付着させてもよく、面状部のうち周縁部を除いた部分にのみ付着させてもよい。後者の場合、含液物付着領域と面状部の周縁との距離は30cm以下、より好ましくは10cm以下であることが好ましい。
【0055】
面状部具備体に含液物を付着させる態様の具体例を
図9~11に示す。
【0056】
図9は、スラリー状の含液物を面状部具備体に漉くことにより含液物を付着させる方法を示している。図示の通り、面状部具備体10の上に型枠11を載せ、槽12内の含液物13を型枠11内に流し出し、含液物13の付着物層を形成する。なお、槽12内において、被乾燥物(汚泥スラリー等)と凝集剤とを混合して、凝集物を形成させるようにしてもよい。この場合、図示していないが、槽12は撹拌翼を備える。この他、被乾燥物と凝集剤を槽12内に流し込む際に、流し込む力や流速を利用して混合できるようにしてもよい。例えば、両方を同時に落とし込み、その衝撃からなる破裂・拡散力によって混合を生み出したり、内壁方向に噴出して旋回流を生み出し混合させることもできる。
【0057】
型枠11は、含液物を流し込むときだけ下方に移動し、含液物がサイドリークするのを抑制し、バラツキの少ない付着物層(ケーキ層)を形成する。含液物が面状部具備体10に乗った後は上方に移動し、次の漉きに備える。この際、型枠内の壁に付着し残存しているものを掻き落としたり、洗い流したりできる機構・工程を設けてもよい。
【0058】
スラリーが含水液であるとき、漉いた後の同伴水には、面状部具備体10を直接通過するものと、付着物層の側面から浸み出してくるものと、付着物層の上面に溜まって浮いているものがある。側面および上面の水を排除するために、後工程で水切りを行なう。側面や上面に水が残っていると、いちどに蒸発する量が多くなり、水面と気体との境界面に水蒸気飽和層が形成されて蒸発速度が低下したり、蒸発潜熱のために温度低下が起きて水分蒸発効率が悪くなり、乾燥時間が長くなってしまうからである。
【0059】
図10は、ペースト状の含液物をスプレーノズル15により孔なしの面状部具備体16上に供給した後、プレス機17を用いて均すことにより、含液物14の付着物層を形成する方法を示している。
【0060】
図11は、ロードセル式計量器20上の計量槽21内のペースト状含液物19を孔なしの面状部具備体22上に流し出し、ワイパー23によって上面を均して付着物層を形成する方法を示している。
【0061】
図示は省略するが、
図10においてワイパー23で含液物14を均してもよい。また、
図11において、プレス機17によって含液物を均してもよい。
【0062】
本発明では、面状部具備体は1枚ずつ分離独立した状態で使用されてもよく、2枚以上を枠状ホルダに保持させた状態で使用されてもよい。
図12はその一例を示しており、(a),(b)図の通り、複数枚の面状部具備体30が枠状ホルダ31に保持されている。なお、(b)図は(a)図のB-B線矢視図である。
【0063】
この枠状ホルダ31は、面状部具備体30に含液物が付着された後、(c),(d)図のように起立させて平行に配置される。この場合、付着物層同士が向き合うことはない。なお、(c)図は(d)図のC-C線矢視図である。
【0064】
本発明では、
図13のように、複数の枠状ホルダ31を連結具(蝶番)32で連結して、一体の枠状ホルダユニットとしてもよい。この枠状ホルダユニットは、付着物層が背合せと対面とが交互となるように折り畳み可能である。なお、(b)図は(a)図のB-B線矢視図である。
【0065】
[液切り(水切り)]
含液物を付着させた面状部具備体を直ちに乾燥処理してもよいが、面状部具備体を立てた状態(起立状態)とし、液切りを行うようにしてもよい。
【0066】
含液物が汚泥などの場合、含液物を面状部具備体に付着させると、液分が付着物層の表面に浮き出てくるので、面状部具備体を立てた状態とすることにより、浮き出た液を重力により落下させ、液切り(含水物の場合は水切り)することが好ましい。
【0067】
面状部具備体を立てた状態とする場合、面状部具備体の面状部を鉛直としてもよく、鉛直からさらに±45°の範囲で斜めとしてもよい。
【0068】
面状部具備体を立てた状態(起立状態)とする場合であって、面状部具備体が簀状体のように、一方向に延在するスリット状部分を有する場合、スリット状部分を天地方向に配向させてもよく、水平方向に配向させてもよく、両者の間の方向に配向させてもよい。なお、スリット状部分を略天地方向にすると、液切り特性は向上するが、含液物がズリ落ち易くなる。スリット状部分を略水平方向とした場合、含液物のズリ落ちは抑制されるが、液切り特性が天地方向の場合に比べると劣ったものとなる。
【0069】
<液切りの別の態様>
水切りは、重力濾過方式によって行ってもよく、遠心力を利用したり圧搾することによって行ってもよい。また、上記の重力を利用した液切りと、遠心力利用液切りと、圧搾液切りとの2つ以上の方法を組み合わせてもよい。
【0070】
【0071】
図14は、重力ろ過方式の液切りの一例を示しており、面状部具備体40を略水平とし、面状部具備体40上のスラリー状の付着物39の液切りを行う。
【0072】
この方式の場合、
図15のように、面状部具備体40を斜めとしてもよい。斜めとした場合、水平とした場合よりも雫(水滴など)が落下しやすい。
【0073】
図15では、付着物39を面状部具備体40の上側としているが、
図16のように下側としてもよい。
図16によると、
図15に比べて、付着物内の面状部具備体40近傍の液体分が少なくなり、より乾燥しやすくなる。
【0074】
図17~20は、遠心方式によるペースト状付着物の液切り方法を示している。符号44は回転軸を示している。
図19,20において、符号45は回転アーム、46は回転バケットを示している。
【0075】
図17~19において、どちら向きの回転でもよい。両方向の回転がより好ましい。
図17~19においては、付着物39が剥離しない回転数とする。
図20の方式によると、
図17~19よりも回転数は上げられるが、付着物39内の面状部具備体近傍に液分が集まってしまう欠点がある。
【0076】
図21では、プレス機50によって付着物39をプレスして脱液する形態を示している。面状部具備体40が静置している間に、プレス機50が上下して圧搾力を加え、付着物39から液分を浸み出させる。
図22では、ローラー51によって圧搾する。
図22(a)は、ローラー51の位置は固定されており、面状部具備体40が移動することで圧搾される形態を示している。
図22(b)は、面状部具備体40が静置しており、ローラー51が移動して圧搾される形態を示している。脱液の効果は同じであり、どちらの形態を採用しても構わない。
【0077】
図23では、面状部具備体40及びその上の付着物39を上下から多孔板等よりなる押さえ板55,56を挟み、圧搾する。57はローラーを示す。
【0078】
なお、過度に強く圧搾すると、面状部具備体のネット等の隙間に付着物が入ってしまい、乾燥不良が起きたり、乾燥後に剥がれなくなることがある。脱水機とは異なり、粒子間の間隙水や、粒子に付着している付着水を力を掛けて絞り出すのではなく、あくまでも、浸み出してくる液体(例えば自由水など)を除去することが目的であるので、加圧力を適度にコントロールすることが望ましい。
【0079】
以上の、面状部具備体の面状部に含液物を付着させる工程、続く液切り工程は、次の乾燥工程と同じ空間,例えば乾燥室内,に備えていてもよいが、乾燥室内の湿度をむやみに上げて乾燥効率を下げてしまわないように、乾燥室内とは切り離した別の空間にて実施できるように構成する方がよい。
【0080】
さらに、前記液切り工程において、前記前記面状部に付着した含液物を任意の温度に保持できるように熱を与えられるような機構を付与すると良い。例えば水は15℃付近より低温度では粘性が急激に上昇し、移動速度が低下してしまう。たとえ鉛直に雫が垂れるようにしても、水滴が長く伸びてしまい、水切りに支障を起こす。また、含液物の温度が下がると、続く乾燥室においても昇温のためのエネルギーを消費してしまうだけでなく、昇温時間のために乾燥時間が長くなってしまうことになる。
【0081】
そこで、乾燥室に入る前に含液物付着面状部具備体を立てる場合には、熱を与えられるような構造にしておくことが好ましい。フードのような覆いを設け、内部に熱源(電気ヒーター等)を置き、フード内を加温することで、水の滴下を促進することができる。
【0082】
熱源はどこに置いてもよいが、フード内の天面に付けた場合は、フードの設計構造によっては熱源表面に水蒸気が籠ってしまうことがあるので、詳細な検討が必要になる。底面に設けた場合には、落ちた水滴が熱源上面に載ってしまい、水蒸気を発生しフード内を高湿度環境にしてしまうことがあるので、フード内の気体の流れを詳細に検討することが必要になる。熱源を側面に設置した場合には、比較的効率的に、含液物および面状部具備体を昇温させることができる。
【0083】
また、フード内に蒸気や温風を送って昇温させることもできる。この場合には、乾燥室に導入する温風の一部をフード内に導く、または、乾燥室内から取り込んだ温風の一部をフード内に導く、または、乾燥室出口の排気の一部または全量をフードに導くことで、フード内の雰囲気を昇温させ、含液物付着面状部具備体の温度を調整したり、温度低下しないように状態を保持することができる。もちろん、電源設置と温風導入の両方を備えていてもよい。
【0084】
このカバーされた空間内での滞留時間は長い程よいが、少なくとも5分間以上、より好ましくは、10分以上確保できるように構成されるのが良い。温度は15℃以上、好ましくは25℃以上となるように設計するのが良い。なお、湿度は問わない。
【0085】
[含液物の乾燥]
必要に応じ、上記の液切りを行った後、含液物が付着した面状部具備体を乾燥工程に供し、含液物の乾燥を行う。
【0086】
この乾燥は、面状部具備体に付着した含液物に沿って空気等の気体を流すことにより行うのが好ましい。
【0087】
乾燥工程を行う場合、含液物付着面状部具備体を立てた状態とすることが好ましい。この場合も、含液物付着面状部具備体は鉛直とされてもよく、鉛直に対し±45°の範囲で斜めにしてもよい。
【0088】
この角度は、乾燥工程間中一定であってもよく、変化させてもよい。例えば、当初は斜めとしておき、含液物の乾燥が進行して面状部から脱落し難くなったときに略鉛直となるようにしてもよい。また、乾燥途中に鉛直位置から斜めに傾けて、気体の流れに対して俯角を付けることで、含液物付着面の周縁部から離れた位置に、例えば中央部、に、気体流れが直接当たるようにすることで、乾燥ムラを少なくすることもできる。
【0089】
含液物の表面に沿う乾燥用の気体の流速が速いほど蒸発速度を高められると思われているが、液面-気体界面から気体流れが剥離してしまい、水蒸気飽和層の排除が難しくなることがある。また、あまり速いと、付着させた含流物を落下させてしまうこともある。そこで、含液物の表面に沿って流す乾燥用の気体の流速は、0.5m/sec以上、例えば0.5~10m/sec程度が好ましい。気体の流速は一定であってもよく、変動させてもよい。風速を変動させることで、含液物への風の当たり方、当たる位置が変化するので、乾燥ムラを少なくする効果が期待できる。
【0090】
気体は、含液物の表面に沿って略水平方向に流してもよく、下から上向きに流してもよく、上から下向きに流してもよい。この流れの向きも、一定であってもよく、変化させてもよい。風向きを変化させることで、乾燥ムラを少なくする効果が期待できる。
【0091】
液体の蒸発は液面と気体との境界付近の飽和蒸気圧によって蒸発速度が決まり、温度条件のみで支配されているわけではないが、温度が高いほど蒸気圧が高くなることや、蒸発潜熱を考慮した時、温度が高いほど都合が良い。
本乾燥法では送風により乾燥を行なうので、送風による温度低下(冷却)がないように、予め気体の温度を調節して供するのがよい。 例えば、蒸発させたい液体が水である場合には、気体の温度は37℃以上、特に40~70℃程度が好ましい。また、湿度は50%以下に調整するのがよい。被処理物が有機物である場合、70℃を超えるとタンパク質などは物質変性が起きて液体(水)を抱え込んでしまったり、不快な臭気を発することがある。
水の1気圧における沸点は100℃であるが、蒸発させたい液体が有機溶剤(溶媒)である場合には、おおむね水の沸点より低く、例えばエーテルで34.6℃、アセトンで56℃、エチルアルコールで78.4℃であり、水の場合と同じく上記の温度条件に調整して供すれば、十分蒸発に用いる気体として適する。
【0092】
乾燥工程は、乾燥用のスペース、例えば乾燥室内で行われるのが好ましい。この場合、含液物が付着した面状部具備体を乾燥室内で移動させてもよい。
【0093】
本発明の一態様では、多数の含液物付着面状部具備体を、所定の間隔をあけて移送部材上に起立状態で配列設置し、乾燥室内を連続的に移動させる。この場合、乾燥室内の最上位の第1走行ゾーンを室の一端側から他端側へ移動させた後、該第1走行ゾーンにおいて面状部具備体の直下の第2走行ゾーンに移し、該第2走行ゾーンにおいて面状部具備体を他端側から一端側へ移動させてもよい。さらに、第2走行ゾーンの該一端側から直下の第3走行ゾーンに移し、該第3走行ゾーンにおいて面状部具備体を該一端側から該他端側へ移動させてもよく、さらに該第3走行ゾーンから直下の第4走行ゾーンに移し、該第4走行ゾーンにおいて面状部具備体を該一端側から該他端側へ移動させてもよい。
【0094】
なお、第1走行ゾーンから第2走行ゾーンに移すときに、含液物付着面状部具備体の天地方向を反転させ、第2走行ゾーンから第3走行ゾーンに移すときに、含液物付着面状部具備体の天地方向を再度反転させ、第3走行ゾーンから第4走行ゾーンに移すときに、含液物付着面状部具備体の天地方向を再々度反転させてもよい。天地方向を乾燥途中で逆にすることは、含液物から見て風が当たる方向、すなわち、風の流れる方向(風上・風下)を変えることになり、一方向から風を当てた時よりも乾燥ムラを少なくする効果が期待できる。
【0095】
上側の走行ゾーンから下側の走行ゾーンに移すときに、被処理物の表面に風が当たらなくなるため、面状部上の含液物の温度が低下しないようにするための加温手段を設けることが好ましい。加温手段は、電熱ヒーターなど熱を直接与える方法や、伝熱管を備えたオイルヒーター、温水ヒーター、温風ヒーターなど間接的に熱を与える方法を利用することができる。また、該空間には断熱材を貼ったり、遠赤外線を放出するパネルを貼ってもよい。
【0096】
乾燥された付着物は、スクレーパ等によって面状部具備体から剥し取るのが好ましい。
【0097】
乾燥工程の一例を
図24~27に示す。
図24~27は、乾燥室60内に、付着物を有した面状部具備体30を配置し、風室61から温風を乾燥室60に通風している様子を示している。
【0098】
図24~27では、複数の面状部具備体30が枠状ホルダ31に保持されたものが1段(
図24,25)又は上下多段(
図26,27では2段)に配置されている。面状部具備体30は、付着物の付着面が上下方向とされている。
図24,26では、温風が下側から上方へ通風される。
図25,27では、温風が図の右側から左側へ通風されている。
【0099】
温風はファン及び加熱手段(熱交換器又はヒータなど)によって発生させるのが好ましいが、ガスを燃焼した排気を、そのまま導入,または、外気など他の気体と混合した後に導入、または、冷却するなど温度調整後に導入してもよい。送風ファンは加熱手段の上流側に配置されてもよく、下流側に配置されてもよい。後者の場合、送風ファンは
図24,25のように風室61内に配置されてもよい。
【0100】
ただし、通風方向や通風機構は上記以外であってもよい。
【0101】
図28,29では、面状部具備体への含液物の付着から乾燥室への導入及び乾燥室からの取り出しまでの工程の一例を示している。
【0102】
図28では、面状部具備体67の上に含液物68を供給装置69から供給し、プレス装置71によって含液物の上面を均すと共に液体を排除する。次いで、面状部具備体67を起立させ、移送手段(図示略)によって乾燥室60内を起立状態で移動させ、風室61からの温風によって付着物を乾燥させる。付着物が乾燥して乾燥物68Dとなった面状部具備体67が乾燥室60から出たところで、スクレーパ74によって乾燥物68Dを剥ぎ取り、収容箱76に乾燥物を収容する。スクレーパ74は上下に動いてもよく、水平方向に動いてもよい。
【0103】
面状部具備体67は、回収箱77に回収する。符号78は気体の加熱手段、79は送風ファンを示している。
【0104】
図29では、面状部具備体67の上に含液物68を供給装置69から供給し、プレス装置72によって含液物の上面を均すと共に脱水する。次いで、面状部具備体67を起立させ、移送手段(図示略)によって乾燥室60内を起立状態で移動させ、風室61からの温風によって付着物を乾燥させる。
図29では、面状部具備体67は乾燥室60の上段側を移動した後、下段側に移り、下段側を反対方向に移動する。
【0105】
付着物が乾燥して乾燥物68Dとなった面状部具備体67が乾燥室60から出たところで、スクレーパ75によって乾燥物68Dを剥ぎ取り、収容箱76に乾燥物を収容する。面状部具備体67は、循環移送手段(図示略)によって移送され、含液物の付着工程に送られる。
図29のその他の符号は
図28と同様の部分を示している。
【0106】
以上のように、本発明による乾燥方法および乾燥装置は、以下の点で特許文献1~3と
は異なる新しい発明である。
【0107】
特許文献1(特開2000-263098号公報)は、生物処理で生成され、自然に沈降する汚泥や、凝集剤を使用して沈降させる汚泥など、(1)あらゆる分野の汚泥を濃縮する簡易、小形の容器と(2)通気性・透水性シートを用い効率よく処理する汚泥処理システムおよびその処理装置であり、この手段は前記通気性・透水性シートを透過させた熱風を汚泥内の厚み方向に通過させて、該汚泥を乾燥させる構成となっているので、本発明の形態とは異なる。
【0108】
特許文献2(特開2009-101276号公報)は、天日による汚泥を効率的に乾燥する汚泥乾燥方法および汚泥乾燥装置であって、太陽光が透過するように構成された乾燥室内に、(1)汚泥を載置して乾燥させる汚泥載置部と汚泥供給手段とを備え、(2)同乾燥室内で送風を行なう送風手段を備え、(3)汚泥載置面に平行な流れの空気を送風するように構成された汚泥乾燥方法およびその装置であり、すなわち太陽光が透過するような乾燥室を利用する構成となっていること、同・乾燥室内にて汚泥供給と汚泥載置とを行なう構成となっているので、本発明の形態とは異なる。
【0109】
特許文献3(特開2016-209814号公報)は、薬剤を添加した汚泥を、ろ過体で搬送しながら重力ろ過して濃縮する濃縮装置と、続いて、該濃縮装置で濃縮された汚泥を一対のベルト間で搬送しながら加圧脱水する脱水装置と、続いて、該脱水装置で脱水された汚泥を切断する切断装置と、続いて、該切断装置で切断された汚泥を通気構造を有したコンベアで搬送しながら乾燥させる乾燥装置とで構成される汚泥脱水乾燥システムであり、切断装置で断片化された汚泥を載せた周回走行するベルトコンベアの走行方向に向かって送風する構成となっているので、本発明の形態とは大きく異なる。
【実施例0110】
[実施例1]
<実験の目的>
汚泥を付着させた簀桁を立てることによる水切り促進効果の確認を行う。
【0111】
<実験方法>
目開き18メッシュの「網戸」用のネットを樹脂製の「枠」に張って、枠内の寸法が25cm×35cmとなる「簀桁」を製作した。
【0112】
この簀桁に、予め凝集させておいた下水消化汚泥を乗せ、水切り特性を調査した。
【0113】
評価に用いた下水消化汚泥は、A処理場の嫌気性汚泥消化槽の第2消化タンクから採取した。採取直後のTS濃度は1.8%であった。
【0114】
凝集剤は、栗田工業(株)販売商品のPC696を、水道水を用いて溶解濃度0.2%に調整して使用した。
【0115】
汚泥スラリー1000mlに、ポリマー溶解液100mlを添加し、ビーカー内において回転速度100rpmで30秒間撹拌した。この凝集スラリーを、
図30の通り、20cm×30cmの型枠を乗せた上記簀桁の上に流し込んだ。
【0116】
1分後に型枠を取り除き、簀桁の下に透過液回収漏斗とメスシリンダーを配置した。Case-1では型枠を外した後、水平のまま水を切り、Case-2では型枠を外した後、鉛直に立てて水を切った。水切りは合計60分間行なった。
【0117】
メスシリンダーの目盛りより、水切り水量を計測した。結果を
図31に示す。
【0118】
図31の通り、簀桁で立てたCase-2の方が同伴水の回収量が15%程多く、乾燥室への水分持ち込み量を減らせることになる。水分持ち込み量が多いと、乾燥室内の湿度が高くなって、乾燥効率が落ちるのと、蒸発潜熱のために水分および汚泥レイヤーの温度が低下し、蒸発効率の低下に繋がることになる。
【0119】
[実施例2]
<実験の目的>
汚泥を付着させた簀桁を立てることによる乾燥効果の確認を行う。
【0120】
<実験方法>
実施例1で示した条件で作成した汚泥を簀桁の上に乗せて水切りしたものを、ビニール製のカバーで作られた市販の園芸用の温室内に鉛直方向に並べて立てて、側面から温風を送風し、乾燥特性を調査した。
【0121】
送風は小型の扇風機を使用し、風速は3m/sec(流れの方向,風速,共に固定)とし、予め温度:65℃,湿度:40%に調整した空気を送ることで乾燥を行なった。
【0122】
汚泥スラリー1000mlに、ポリマー溶解液100mlを添加し、ビーカー内において回転速度100rpmで30秒間撹拌した。この凝集スラリーを、
図30と同じように20cm×30cmの型枠を乗せた上記簀桁の上に流し込んだ。Case-1では型枠を外した後、水平のまま59分間置いて水を切ったものを9枚用意し、乾燥時にはこれらの9枚を3cm間隔で水平状態に保持できるようにし、温風を簀桁と平行に側面から送風することで乾燥を実施した。Case-2では型枠を外した後、鉛直に立てて59分間置いて水を切ったものを9枚用意し、乾燥時にはこれら9枚を3cm間隔で鉛直方向に立てて保持できるようにし、温風を簀桁と平行に側面から送風することで乾燥を実施した。Case-3は型枠を外した後、鉛直に立てて59分間置いて水を切ったものを9枚用意し、乾燥時にはこれらの9枚を3cm間隔で水平状態に戻して保持できるようにし、温風を簀桁と平行に側面から送風することで乾燥を実施した。
【0123】
1時間ごとに、並べた9枚の内の真ん中の簀桁の中央部からサンプル片を採取し、それぞれの水分含有量を分析した。結果を
図32に示す。
【0124】
図32の通り、簀桁を立てたCase-2の方が水平のCase-1よりも乾燥特性が明らかによく、含水率が30%に達するまでの乾燥時間が50%ほど短かった。また、水切り時には立てて静置したが、続く乾燥時には水平に戻して乾燥させたCase-3はCase-2よりは劣るものの、Case-1よりは乾燥時間が遥かに短かった。以上の結果より、立てて水切りしたことが乾燥時間の短縮に大きく寄与し、かつ、乾燥時にも立てた状態で乾燥させた方が乾燥時間をより短くできることが示された。なお乾燥時間が短いということは、乾燥に掛かるエネルギーの消費量も少なくできることにも繋がるので、乾燥コストを下げることができ、さらには乾燥装置の大きさもコンパクトにすることができる。
【0125】
[実施例3]
<実験の目的>
汚泥を簀桁に付着させるときに水切りする必要がないペースト状の汚泥を用いて、乾燥時に水平に置いたときと、鉛直に立てたときの乾燥特性を比較し、乾燥効果の優劣を確認する。
【0126】
<実験方法>
評価に用いた汚泥は、実施例1,実施例2で用いたものと同時に採取した、同一のものであり、A処理場の嫌気性汚泥消化槽の第2消化タンクから採取したものである。これを凝集剤を用いることなく、遠心分離器で濃縮した。遠心分離器は、株式会社コクサン製品のH-103n型を使用し、2500Gが掛けられるように遠沈管およびバケットを選択し、回転数を調整した。遠心分離は5分間(加減速時間を除く、定常時の保持時間として)行ない、上澄みとなっている分離水を廃棄し、沈殿物をスパーテルで掻き出した。この操作を繰り返して、実験に用いる濃縮汚泥を必要量作製した。なお、遠心分離により容積比で水:固形物=2:1となり、濃縮汚泥の濃度は、計算でおおよそ5.4%,乾燥法による分析値では5.5%であった。ここで調整した濃縮汚泥を50g計り取り、20cm×30cmのポリプロピレン製の平板(厚み:約2mm),以下「プレート」と呼ぶ,の上に落とし、ヘラでまんべんなく広げた。
【0127】
Case-1は、濃縮汚泥を載せたプレートを9枚用意し、乾燥時にはこれらの9枚を3cm間隔で水平状態に保持できるようにし、温風をプレートと平行に側面から送風することで乾燥を実施した。Case-2では、濃縮汚泥を載せたプレートを9枚用意し、乾燥時にはこれらの9枚を3cm間隔で鉛直状態に立てて保持できるようにし、温風をプレートと平行に側面から送風することで乾燥を実施した。Case-3では、同じく濃縮汚泥を載せたプレートを9枚用意し、乾燥時にはこれらの9枚を3cm間隔で鉛直状態に立てて保持できるようにしたが、Case-2とは異なり、温風をプレートと平行に下方から上方に向かって鉛直方向に送風することで乾燥を実施した。
【0128】
送風は小型の扇風機を使用し、風速は3m/sec(流れの方向,風速,共に固定)とし、予め温度:65℃,湿度:40%に調整した空気を送ることで乾燥を行なった。
【0129】
1時間ごとに、並べた9枚の内の真ん中の簀桁の中央部からサンプル片を採取し、それぞれの水分含有量を分析した。結果を
図33に示す。
【0130】
図33の通り、簀桁を立てたCase-2の方がCase-1よりも乾燥特性が明らかによく、含水率が30%に達するまでの乾燥時間が40%ほど短かった。また、送風を下方から上方へと行なったCase-3は、送風を側面から行なったCase-2よりも乾燥時間を15%ほど短くできた。以上の結果より、乾燥時にも立てた状態で乾燥させた方が乾燥時間をより短くできることが示された。さらに、乾燥時に立てた場合でも、送風方向を変える効果が示され、鉛直方向に送風する効果が示された。