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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018576
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】距離計測装置、及び距離計測方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20240201BHJP
   G01C 3/06 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G01B11/24 A
G01C3/06 120Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022121995
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000198
【氏名又は名称】弁理士法人湘洋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】針山 達雄
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正浩
(72)【発明者】
【氏名】丸野 兼治
(72)【発明者】
【氏名】秋山 弘人
(72)【発明者】
【氏名】神藤 英彦
【テーマコード(参考)】
2F065
2F112
【Fターム(参考)】
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD03
2F065DD12
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH04
2F065LL24
2F065LL37
2F065MM06
2F065MM16
2F065PP04
2F065PP05
2F065SS02
2F065SS13
2F112AD01
2F112BA06
2F112CA08
2F112DA15
2F112DA17
2F112DA19
2F112DA32
2F112EA01
(57)【要約】
【課題】 プローブ先端部の内部における迷光を抑止し、対象物までの距離を高い精度で測定する。
【解決手段】 距離計測装置は、プローブ先端部が、前記プローブ先端部の先端に、前記光学素子から入射された前記測定光の光路を切り替える光路切替素子、を有し、前記プローブ先端部の少なくとも前記第5面に対向する位置に配置された部分の材質は、前記測定光を吸収する。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計測プローブを備える距離計測装置であって、
前記計測プローブは、
前記計測プローブの先端に係止されたプローブ先端部と、
係止された前記プローブ先端部を回転させる回転部と、
前記プローブ先端部に対して測定光を出射する光学素子と、を有し、
前記プローブ先端部は、前記プローブ先端部の先端に、
前記光学素子から入射された前記測定光の光路を切り替える光路切替素子、を有し、
前記光路切替素子は、
前記光学素子から入射された前記測定光が入射する第1面と、
前記第1面より入射した前記測定光の偏光状態に応じ、前記測定光を反射、または透過する第2面と、
前記第2面で反射した前記測定光を対象物に出射する第3面と、
前記第2面を通過した前記測定光を前記対象物に出射する第4面と、
前記第3面と対応する第5面と、を有し、
前記プローブ先端部の少なくとも前記第5面に対向する位置に配置された部分の材質は、前記測定光を吸収する
距離計測装置。
【請求項2】
請求項1に記載の距離計測装置であって、
前記プローブ先端部は、前記プローブ先端部の先端に前記測定光を吸収する吸収壁を有し、
前記吸収壁は、
前記プローブ先端部の前記第5面に対向する位置に配置された部分の材質よりも前記測定光の吸収率が高く、
前記光路切替素子の前記第5面に対向する位置に配置される
距離計測装置。
【請求項3】
請求項2に記載の距離計測装置であって、
前記吸収壁の法線と前記プローブ先端部の回転軸との角度は、90度未満である
距離計測装置。
【請求項4】
請求項2に記載の距離計測装置であって、
前記プローブ先端部は、
前記光路切替素子の前記第3面から出射された前記測定光を透過して前記対象物に出射させる第1光学窓と、
前記光路切替素子の前記第4面から出射された前記測定光を透過して前記対象物に出射させる第2光学窓と、を有し、
前記第1光学窓の法線と前記プローブ先端部の回転軸との角度は90度未満であり、
前記第2光学窓の法線と前記プローブ先端部の回転軸と角度は0度以上である
距離計測装置。
【請求項5】
請求項4に記載の距離計測装置であって、
前記計測プローブは、
前記プローブ先端部の先端に係止された前記光路切替素子を覆うキャップ、を有し、
前記第1光学窓、前記第2光学窓、及び前記吸収壁は、前記キャップに設けられている
距離計測装置。
【請求項6】
請求項2に記載の距離計測装置であって、
前記吸収壁は、NDフィルタ、または前記測定光を吸収する塗料からなる
距離計測装置。
【請求項7】
請求項1に記載の距離計測装置であって、
前記光路切替素子の前記第1面は、前記光学素子から入射された前記測定光の一部を反射する反射コーティングが施されており、距離計測における補正用原点となる
距離計測装置。
【請求項8】
請求項1に記載の距離計測装置であって、
前記対象物までの距離を算出する距離計測部、を備え、
前記距離計測部は、前記対象物からの反射光に基づいて算出される光の伝搬時間に基づいて前記対象物までの距離を算出する
距離計測装置。
【請求項9】
請求項1に記載の距離計測装置であって、
前記光路切替素子の前記第5面は、前記プローブ先端部の回転軸に対して所定角だけ傾斜している
距離計測装置。
【請求項10】
距離計測部、及び計測プローブを備える距離計測装置による距離計測方法であって、
前記計測プローブは、
前記計測プローブの先端に係止されたプローブ先端部と、
係止された前記プローブ先端部を回転させる回転部と、
前記プローブ先端部に対して測定光を出射する光学素子と、を有し、
前記プローブ先端部は、前記プローブ先端部の先端に、
前記光学素子から入射された前記測定光の光路を切り替える光路切替素子、を有し、
前記光路切替素子は、
前記光学素子から入射された前記測定光が入射する第1面と、
前記第1面より入射した前記測定光の偏光状態に応じ、前記測定光を反射、または透過する第2面と、
前記第2面で反射した前記測定光を対象物に出射する第3面と、
前記第2面を通過した前記測定光を前記対象物に出射する第4面と、
前記第3面と対向 する第5面と、を有し、
前記プローブ先端部の少なくとも前記第5面に対向する位置に配置された部分の材質は、前記測定光を吸収し、
前記光路切替素子により、前記光学素子から入射された前記測定光の光路を前記第3面の方向に切り替えるステップと、
前記回転部により、前記プローブ先端部を回転させながら、前記第3面から前記対象物に出射された前記測定光を走査するステップと、
前記距離計測部による、前記対象物からの反射光に基づいて、前記対象物までの距離を算出するステップと、
を含む距離計測方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、距離計測装置、及び距離計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
対象物に設けられた穴の底面や側面の形状を計測する技術として、例えば、特許文献1には「測定プローブと、プローブ先端部と、を備える距離測定装置であって、前記測定プローブは、前記プローブ先端部に出射する測定光の偏光を制御する偏光状態制御部と、前記プローブ先端部を回転させる回転機構と、を備え、前記プローブ先端部は、光路切替素子、を備え、前記光路切替素子は、前記測定光の前記偏光に基づいて前記プローブ先端部の外部へ前記測定光を照射する方向を切り替え、前記測定光が対象物にて反射または散乱した光を取り込む、ことを特徴とする距離測定装置」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6730483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
引用文献1に記載の発明によれば、プローブ先端部の光路切替素子によって測定光の照射方向を切り替えることにより、測定プローブの側面方向の測定と奥行き方向の測定とを実現できる。
【0005】
ただし、測定光が対象物にて反射または散乱した光を取り込む際、該光がプローブ先端部の内部で反射して迷光となり、対象物までの距離の誤測定や測定精度の低下の要因となることがある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、プローブ先端部の内部における迷光を抑止し、対象物までの距離を高い精度で測定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願は、上記課題の少なくとも一部を解決する手段を複数含んでいるが、その例を挙げるならば、以下の通りである。
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の一態様に係る形状計測装置は、計測プローブを備える距離計測装置であって、前記計測プローブは、前記計測プローブの先端に係止された円筒状のプローブ先端部と、係止された前記プローブ先端部を回転させる回転部と、前記プローブ先端部に対して測定光を出射する光学素子と、を有し、前記プローブ先端部は、前記プローブ先端部の先端に、前記光学素子から入射された前記測定光の光路を切り替える光路切替素子、を有し、前記光路切替素子は、前記光学素子から入射された前記測定光が入射する第1面と、前記第1面より入射した前記測定光の偏光状態に応じ、前記測定光を反射、または透過する第2面と、前記第2面で反射した前記測定光を対象物に出射する第3面と、前記第2面を通過した前記測定光を前記対象物に出射する第4面と、前記第3面と対向 する第5面と、を有し、前記プローブ先端部の少なくとも前記第5面に対向する位置に配置された部分の材質は、前記測定光を吸収する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、プローブ先端部の内部における迷光を抑止し、対象物までの距離を高い精度で測定することが可能となる。
【0010】
上記した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本発明の第1の実施形態に係る距離計測装置の構成例を示す模式図である。
図2図2は、距離計測部の構成例を示す図である。
図3図3は、FMCW(Frequency Modulated Continuous Wave)方式による測定ビート信号に基づく距離算出の一例を説明するための図である。
図4図4は、FMCW方式による測定ビート信号に基づく距離算出の一例を説明するための図である。
図5図5は、光路切替素子による測定光の出射方向の切替原理を説明するための図である。
図6図6(A),(B)は、計測プローブの内部で生じる迷光の例を示しており、図6(A)は測定光の出射方向が側面方向である場合、図6(B)は測定光の出射方向が直進方向である場合を示している。
図7図7は、多重反射時に検出される反射強度プロファイルの一例を示す図である。
図8図8は、距離計測装置を含む形状計測装置の構成例を示す模式図である。
図9図9は、形状計測装置の機能ブロックの構成例を示す図である。
図10図10は、本発明の第2の実施形態に係る距離計測装置の構成例を示す図である。
図11図11は、第2の実施形態における吸収壁の傾斜角の一例を示す図である。
図12図12は、本発明の第3の実施形態に係る距離計測装置の構成例を示す図である。
図13図13は、本発明の第4の実施形態に係る距離計測装置の構成例を示す図である。
図14図14は、補正用原点から対象物までの距離の算出方法を説明するための図である。
図15図15は、形状計測装置による形状計測処理の一例を説明するフローチャートである。
図16図16は、本発明の第5の実施形態に係る距離計測装置の構成例を示す図である。
図17図17は、本発明の第6の実施形態に係る距離計測装置の構成例を示す図である。
図18図18は、キャップの構成例を示す図である。
図19図19は、キャップの側面側の光学窓と吸収壁との位置関係の一例を示す図である。
図20図20は、キャップの底面側の光学窓と吸収壁との位置関係の一例を示す図である。
図21図21は、プローブ先端部に対する光路切替素子、及びキャップの組付け方法の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の複数の実施形態について図面に基づいて説明する。なお、各実施形態を説明するための全図において、同一の部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、以下の実施形態において、その構成要素(要素ステップ等も含む)は、特に明示した場合及び原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須ではない。また、「Aからなる」、「Aよりなる」、「Aを有する」、「Aを含む」と言うときは、特にその要素のみである旨明示した場合等を除き、それ以外の要素を排除しない。同様に、以下の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合及び原理的に明らかにそうでないと考えられる場合等を除き、実質的にその形状等に近似または類似するもの等を含む。
【0013】
<本発明の第1の実施形態に係る距離計測装置100
図1は、本発明の第1の実施形態に係る距離計測装置100の構成例を示す模式図である。
【0014】
距離計測装置100は、距離計測部111、及び計測プローブ115を備える。
【0015】
距離計測部111は、測定光を発生し、接続ケーブル113を介して、計測プローブ115に出力する。また、距離計測部111は、計測プローブ115から接続ケーブル113を介して入力される反射光に基づいて対象物Tまでの距離を算出する。接続ケーブル113は、例えば、光ファイバからなる。
る。
【0016】
計測プローブ115は、ヘッド101、及びプローブ先端部106からなる。計測プローブ115は、対象物Tに対して測定光を照射し、対象物Tにて反射した反射光を受光し、接続ケーブル113を介して距離計測部111に出力する。
【0017】
計測プローブ115のヘッド101は、その内部にレンズ部102、第1偏光状態制御部103、及び回転部104を有する。
【0018】
レンズ部102は、光ファイバフォーカサからなる。レンズ部102は、距離計測部111から入力された測定光を絞り、第1偏光状態制御部103に向けてヘッド101内の空間に出射する。第1偏光状態制御部103は、例えば、1/4波長板からなり、測定光の偏光状態を制御する。回転部104は、モータ等から成る。回転部104は、距離計測部111からの制御に従い、モータ等を回転駆動して、レンズ部102から出力された測定光と平行な回転軸周りにプローブ先端部106を回転させる。
【0019】
計測プローブ115のプローブ先端部106は、測定光及び反射光が通過するように、例えば中空円筒状に形成されている。また、プローブ先端部106は、側面方向である第1方向D1に開口109を有し、長手方向である第2方向D2に開口110を有する。プローブ先端部106は、中空円筒状の内部のヘッド101側において第2偏光状態制御部105を係止する。また、プローブ先端部106は、中空円筒状の内部の先端側において光路切替素子107を係止する。第2偏光状態制御部105、及び光路切替素子107は、回転部104によるプローブ先端部106の回転に伴って同時に回転される。光路切替素子107をプローブ先端部106の内部に配置したことにより、光路切替素子107が対象物Tに接触して破損してしまうことを防ぐことができる。
【0020】
第2偏光状態制御部105は、例えば、1/4波長板からなり、測定光の偏光状態を制御する。
【0021】
光路切替素子107は、例えば、立方体の偏光ビームスプリッタから成る。光路切替素子107は、第1面P1から入射した測定光を、第2面P2にて測定光の直線偏光の方向に応じて測定光を反射または透過する。具体的には、光路切替素子107は、当該回転軸に略直交する第1方向D1に反射して第3面P3から出射する。また、光路切替素子107は、測定光をプローブ先端部106の回転軸と略平行な第2方向D2に透過して第4面P4から出射する。測定光の偏光状態の制御と、光路切替素子107からの測定光の射出方向との関係については、図5を参照して後述する。
【0022】
さらに、プローブ先端部106の内壁面には、光路切替素子107に第5面P5に対向する位置に吸収壁108を有する。吸収壁108は、その法線とプローブ先端部106の回転軸とは略直交するが、厳密には直交していない。吸収壁108は、例えば、ND(Neutral Density)フィルタからなる。吸収壁108は、測定光に対応する波長の光の吸収率がプローブ先端部106の内壁面よりも高く、測定光に対応する波長の光を吸収する。吸収壁108に採用するNDフィルタとしては、例えば、反射する光量が10万分の1程度に抑制できるものが望ましい。NDフィルタの代わりに、光を吸収する材質の塗料を塗布してもよい。また例えば、レンズのコバ面に塗るような黒塗り塗料を採用してもよい。これにより、プローブ先端部106の内部における迷光を削減し、距離測定の精度低下を防ぐことができる。なお、吸収壁108を設ける代わりに、または、吸収壁108に追加して、プローブ先端部106を測定光に対応する波長の光を吸収する材質で形成してもよい。あるいは、プローブ先端部106に光を吸収する材質の塗料を塗布してもよい。
【0023】
なお、測定光の偏光状態を制御して測定光の射出方向を変更する代わりに、例えば、ガルバノミラーを用いて測定光を走査してもよい。ガルバノミラーを1つ用いることで、1次元的に測定光を走査することが可能であり、2つ用いれば、2次元的に測定光を走査することができる。さらに、測定光の走査機構として、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーやポリゴンミラー等を用いてもよい。
【0024】
次に、図2は、距離計測部111の構成例を示している。同図は、距離計測部111が距離計測方式として、光の伝搬時間に基づいて対象物までの距離を算出するFMCW方式を採用している場合に対応する構成例である。
【0025】
距離計測部111において、距離計測制御部216は、発振器202に対して掃引波形信号を送信する。発振器202は、レーザ光源201に対して三角波電流を注入し、駆動電流を変調する。これにより、レーザ光源201は、一定の変調速度で時間的に周波数掃引されたFM(Frequency Modulated)光を発生する。なお、レーザ光源201を外部共振器付き半導体レーザ装置として構成し、レーザ光源201の共振波長を発振器202からの三角波状の制御信号により変化させてもよい。この場合も、レーザ光源201は、時間的に周波数掃引されたFM光を発生する。
【0026】
発生されたFM光は、光ファイバカプラ203により2分割される。なお、光ファイバカプラ203はビームスプリッタであってもよい。後述する光ファイバカプラ204,206,210についても同様である。
【0027】
光ファイバカプラ203により2分割されたFM光の一方は参照光学系へと導光され、光ファイバカプラ204にてさらに2分割される。光ファイバカプラ204にて2分割されたFM光の一方は、光ファイバ205にて一定の光路差を設けた後、光ファイバカプラ206にて2分割されたFM光の他方と合波されて受光器207に受光される。これは、マッハツェンダ干渉計の構成となっており、受光器207では光路差に比例した一定の参照ビート信号が検出される。参照ビート信号は、距離計測制御部216に出力される。
【0028】
光ファイバカプラ203により2分割されたFM光の他方は、偏光切替器217により、光ファイバのSlow軸あるいはFast軸に沿った偏光方向に切り替えられる。この後、偏光方向が切り換えられたFM光は、サーキュレータ208を通過し、光ファイバカプラ210によって分岐され、FM光の一方は、参照ミラー211に反射して参照光となり、FM光の他方は、計測プローブ115に出力され、プローブ先端部106から対象物Tに出射される。
【0029】
対象物Tで反射した反射光は、プローブ先端部106、ヘッド101、距離計測部111の順に戻り、参照ミラー211に反射された参照光と光ファイバカプラ210で合波され、サーキュレータ208により受光器209に導光される。受光器209は、参照光と測定光との干渉により発生した測定ビート信号を検出して距離計測制御部216に出力する。
【0030】
距離計測制御部216は、受光器207からの参照ビート信号をサンプリングクロックとして、受光器209からの測定ビート信号をA/D変換する。または、参照ビート信号と測定ビート信号とを一定のサンプリングクロックでサンプリングする。より具体的には、参照ビート信号は、ヒルベルト変換を行うことにより、90度位相がずれた信号を作り出すことができる。ヒルベルト変換の前後の参照信号から、信号の局所位相を求めることが可能であるため、この位相を補間することで、参照信号が一定の位相となるタイミングを求めることができる。このタイミングに合わせて、測定ビート信号を補間サンプリングすることで、参照ビート信号を基準として測定ビート信号をリサンプリングすることが可能となる。または、距離計測制御部216が有するAD/DA変換機能により参照ビート信号をサンプリングクロックとして測定信号をサンプリングしてA/D変換しても、同様の結果を得ることができる。
【0031】
また、距離計測制御部216は、サンプリングした測定ビート信号を制御装置214に出力する。制御装置214は、サンプリングした測定ビート信号から対象物Tまでの距離を算出する。なお、サンプリングした測定ビート信号に基づく距離の算出方法については、図3、及び図4を参照して後述する。
【0032】
なお、距離計測部111の変形例として、サーキュレータ208、光ファイバカプラ210、参照ミラー211、受光器209を計測プローブ115のヘッド101に配置してもよい。その場合、受光器209が出力する測定ビード信号は接続ケーブル113を介して距離計測制御部216に出力される。
【0033】
次に、図3は、FMCW方式による測定ビート信号に基づく距離算出の一例を説明するための図である。同図は、横軸が時間、縦軸が測定光の周波数であって、参照ミラー211にて反射した参照光301と、対象物Tで反射した反射光302との関係を示している。
【0034】
参照光301と反射光302との受光器209への到達時間には時間差Δtがある。そして、この時間差Δtの間にレーザ光源201からのFM光はその周波数が変化しているので、受光器209では、この周波数差に等しいビート周波数fの測定ビート信号が検出される。周波数掃引幅Δνだけ変調するのに要する時間をTとした場合、時間差Δtは次式(1)によって表すことができる。
Δt=T・f/2Δν (1)
【0035】
対象物Tまでの距離Lは、時間差Δtの間に光が進む距離1/2である。よって、距離Lは、大気中の光速度cを用いて次式(2)により算出できる。
L=cT・f/2Δν (2)
【0036】
式(2)から明らかなように、距離Lとビート周波数fとは線形な関係にある。よって、受光器209にて検出された測定ビート信号をFFT(First Fourier Transform:高速フーリエ変換)して、ピーク位置と大きさを求めれば、対象物Tの反射位置と反射光量を求めることができる。
【0037】
図4は、FMCW方式による測定ビート信号に基づく距離算出の一例を説明するための図である。同図は、横軸がFFTの周波数、縦軸が反射強度であって、反射強度プロファイルの一例を示している。
【0038】
反射強度プロファイルは、そのピーク付近がその他に比べて離散的なデータとなる。ピーク幅wは、距離分解能c/2Δνにより計算される。そこで、ピーク点401付近の3点以上のデータを、上に凸形状を有する二次関数またはガウス関数等の関数を当てはめて、当てはめた関数のピークを採用することにより、距離分解能以上の精度で対象物Tの位置を求めることが可能となる。
【0039】
なお、ビート周波数の解析の一例として、FFTを挙げたが、例えば、最大エントロピー法を用いてもよい。その場合、FFTよりも高分解能にピーク位置を検出できる。
【0040】
次に、図5は、光路切替素子107による測定光の偏光方向に応じた出射方向の切替原理を説明するための図である。
【0041】
プローブ先端部106に係止されている光路切替素子107は、測定光の偏光方向が入射面に平行に振動する場合、当該測定光を第2方向D2に向けて透過させる性質を持つ。また、光路切替素子107は、測定光の偏光方向が入射面に垂直な方向に振動する場合、当該測定光を第1方向D1に向けて反射させる性質を持つ。
【0042】
したがって、偏光切替器217(図2)をオン、オフして測定光の偏光方向を電気的に切り替えることにより、測定光の出射方向を第2方向D2、または第1方向D1に切り替えることができる。測定光の出射方向を第1方向D1とした状態で回転させるには、光路切替素子107の回転に応じて測定光の偏光方向を回転させ、光路切替素子107に対して相対的な偏光状態を一定に保つ必要がある。そのため、第1偏光状態制御部103、及び第2偏光状態制御部105を用いる。
【0043】
第1偏光状態制御部103は、入射光の偏光方向に対して、その軸が45度傾けて配置されることにより、直線偏光を円偏光に変換する。第2偏光状態制御部105は、第1偏光状態制御部103によって円偏光に変換された測定光を再び直線偏光に変換する。なお、第2偏光状態制御部105、及び光路切替素子107は回転部104により同時に回転されるので、光路切替素子107に対して常に一定の偏光入射方向を維持することができ、第1方向D1に向けた測定光を回転させることができる。
【0044】
<計測プローブ115の内部における迷光について>
ここで、改めて計測プローブ115の内部における迷光について説明する。図6は、図1に示された計測プローブ115から吸収壁108を省略した構成例を示しており、計測プローブ115の内部で生じる迷光の例を示している。
【0045】
同図(A)に示すように、測定光の出射方向が側面方向である場合、測定光は対象物Tにて反射し(1回目の反射)、その反射光は偏光が乱された状態で光路切替素子107に戻る。この場合、反射光の光路切替素子107に対して直交する偏光成分は、光路切替素子107にてレンズ部102の方向に反射される。すなわち、測定光の光路を逆方向に進行する。一方、反射光の光路切替素子107に対して平行な偏光成分は、光路切替素子107を透過して、相対するプローブ先端部106の内壁面に照射される。当該内壁面は照射光を反射した内壁面と正対しているため、照射された反射光の大部分は再び光路切替素子107を透過して、対象物Tに照射される。そして再び、対象物Tにて反射し(2回目の反射)、その反射光は偏光が乱された状態で光路切替素子107に戻る。そして、反射光の光路切替素子107に対して直交する偏光成分は、測定光の光路を逆方向に進行する。このように多重反射が生じた場合、検出される反射強度プロファイルは対象物Tにて1回目に反射した成分と、2回目に反射する成分との2つが含まれることになる。
【0046】
同様に、同図(B)に示すように、測定光の出射方向が直進方向である場合、測定光は対象物Tにて反射し(1回目の反射)、その反射光は偏光が乱された状態で光路切替素子107に戻る。この場合、反射光の光路切替素子107に対して平行な偏光成分は、光路切替素子107を透過して測定光の光路を逆方向に進行する。一方、反射光の光路切替素子107に対して直交する偏光成分は、光路切替素子107にて側面方向に反射され、プローブ先端部106の内壁面に照射される。そして、当該内壁面に照射された反射光の大部分は再び光路切替素子107にて反射されて対象物Tに照射される。そして再び、対象物Tにて反射し(2回目の反射)、その反射光は偏光が乱された状態で光路切替素子107に戻る。したがって、この場合も、検出される反射強度プロファイルは対象物Tにて1回目に反射した成分と、2回目に反射する成分との2つが含まれることになる。
【0047】
次に、図7は、多重反射が生じた場合に検出された反射強度プロファイルの一例を示している。同図は、横軸が距離、縦軸が検出された反射強度を示している。
【0048】
同図に示された2か所の距離ピーク700,701のうち、距離ピーク700が対象物Tからの1回目の反射光に基づいて測定された距離を示し、距離ピーク701が対象物Tからの2回目の反射光に基づいて測定された距離を示している。対象物Tまでの距離が事前にわかっていれば問題ないが、わかっていない場合には、距離ピーク700,701のどちらが対象物Tまでの距離を示しているのは判断できない。また、対象物Tの位置関係によっては距離ピーク701の反射強度の方が距離ピーク700の反射強度よりも大きい場合があり、誤って距離ピーク701を対象物Tまでの距離として検出してしまうこともある。また、距離ピーク701の反射強度が強い場合にはショットノイズが増えて、本来測定したい距離ピーク700の信号のS/Nが低下してしまうことがある。
【0049】
これに対し、本実施形態では、吸収壁108を設置しているので2回目の反射が抑止される。したがって、計測プローブ115の内部における迷光を抑止できて、対象物Tまでの距離の誤検出や測定精度の低下を防ぐことができる。
【0050】
<距離計測装置100を含む形状計測装置1000の構成例>
次に、図8は、距離計測装置100を含む形状計測装置1000の構成例を示す模式図である。
【0051】
形状計測装置1000は、ステージ機構903として、載置された対象物TをX方向に移動させるX軸ステージ804、及びX軸ステージ804をY軸方向に移動させるY軸ステージ805、並びに、計測プローブ115を保持してZ軸方向に移動させるZ軸ステージ806を有する。さらに、形状計測装置1000は、ステージ機構903を制御するステージコントローラ808を有する。
【0052】
対象物Tの形状を計測する場合、初めに、X軸ステージ804に対象物Tを載置し、X軸ステージ804、及びY軸ステージ805を移動させて、対象物TをXY平面における所定の位置に固定する。次に、Z軸ステージ806により計測プローブ115を上下方向に移動させることにより対象物Tの3次元形状を測定する。なお、測定対象範囲が狭く、Z軸方向に対する移動のみで形状が計測できる場合は、X軸ステージ804、及びY軸ステージ805を使用せず、対象物Tの位置が一意に定まるように冶具で位置決めし、Z軸ステージ806のみを移動させて、対象物Tの3次元形状を測定してもよい。
【0053】
なお、形状計測装置1000の構成例は、上述した例に限らない。例えば、3軸加工機において、工具の代わりに計測プローブ115を把持させれば、3軸加工機上オンマシン測定を実現できる。
【0054】
また、多自由度ロボットに計測プローブ115を保持させれば、対象物Tの形状を測定する立体形状測定装置を実現できる。
【0055】
次に、図9は、図8に示された形状計測装置1000の機能ブロックの構成例を示している。制御装置214は、距離演算部901、及び形状算出部902を有する。距離演算部901は、距離計測部111から入力された、サンプリングした測定ビート信号から対象物Tまでの距離を算出する。また、距離演算部901は、算出した対象物Tまでの距離と、ステージ機構903のXYZ座標を定めるステージエンコーダ信号との紐付け等を実行する。形状算出部902は、距離演算部901による、対象物Tまでの距離とステージエンコーダ信号と紐付け結果に基づき、対象物Tの3次元形状を測定する。表示部215は、測定された対象物Tの3次元画像を表示する。
【0056】
<本発明の第2の実施形態に係る距離計測装置100
次に、図10は、本発明の第2の実施形態に係る距離計測装置100の構成例を示している。
【0057】
距離計測装置100は、距離計測装置100図1)における吸収壁108の向きを変更したものである。すなわち、距離計測装置100の吸収壁108は、その法線がプローブ先端部106の回転軸に対して略直交する(厳密には直交していない)ように配置されていた。これに対し、距離計測装置100の吸収壁108は、その法線と、当該回転軸とが0度よりも大きく90度未満の傾斜角θを有して配置されている。すなわち、距離計測装置100は、距離計測装置100に比べて、吸収壁108が明確に傾斜して配置されている。なお、距離計測装置100の吸収壁108以外の構成要素については、距離計測装置100の構成要素と共通であり同一の符号を付しているのでその説明を省略する。
【0058】
図11は、距離計測装置100における吸収壁108の傾斜角θの一例を示している。
【0059】
距離計測装置100において、光路切替素子107の第1面P1から入射し、第2面P2にて側面方向に出射され、第3面P3から出射した測定光は、対象物Tにて反射し(1回目の反射)、その反射光は偏光が乱された状態で第3面P3から光路切替素子107に戻る。そして、反射光の大部分は、第2面P2にてレンズ部102の方向に反射される。
【0060】
一方、反射光のうち、第2面P2を透過した光は吸収壁108に照射される。吸収壁108は、照射された光の多くを吸収するが、その一部を反射する。このとき、吸収壁108は、プローブ先端部106の回転軸に対して傾斜角θで配置されているので、吸収壁108からの反射光は傾斜角2θだけ傾斜して光路切替素子107に戻る。そして、再び対象物Tにて反射し(2回目の反射)、その反射光は偏光が乱された状態で光路切替素子107に戻る。そして、反射光の大部分は、第2面P2にてレンズ部102の方向に反射されるが、プローブ先端部106の回転軸に対して傾斜角2θを有するので、レンズ部102の集光角度よりも2θが大きければ集光されない。
【0061】
したがって、レンズ部102の集光角度に基づいて傾斜角θを決定し、吸収壁108を配置すれば、反射強度プロファイル(図7)における、迷光に起因する距離ピーク701の発生を防ぐことができる。
【0062】
<本発明の第3の実施形態に係る距離計測装置100
次に、本発明の第3の実施形態に係る距離計測装置100について説明する。距離計測装置100は、距離計測装置100図1)に対して、プローブ先端部106に係止された光路切替素子107の形状が異なる。
【0063】
図12は、距離計測装置100の構成例のプローブ先端部106に係止された光路切替素子107の形状の一例を示している。
【0064】
距離計測装置100における光路切替素子107の形状は直方体である。これに対して、距離計測装置100における光路切替素子107の形状は、第3面P3と相対している第5面P5が、プローブ先端部106の回転軸に対して角θだけ傾斜されている。
【0065】
距離計測装置100において、光路切替素子107の第3面P3から側面方向に出射された測定光は、対象物Tにて反射し(1回目の反射)、その反射光は偏光が乱された状態で光路切替素子107に戻る。そして、反射光の大部分は第2面P2にてレンズ部102の方向に反射される。
【0066】
一方、反射光のうち、第2面P2を透過した光は、第5面P5から吸収壁108に照射される。ただし、第5面P5は、プローブ先端部106の回転軸に対して傾斜角θを有するので、第5面P5からの出射する光は、次式(3)で示す各θ’だけ屈折することになる。
θ'=sin-1(n・sinθ) (3)
ここで、nは、光路切替素子107の屈折率である。
【0067】
吸収壁108は、第5面P5からの光の多くを吸収するが、その一部は反射される。このとき、第5面P5からの光は角θだけ傾斜しているので、吸収壁108からの反射光は傾斜角2θだけ傾斜して光路切替素子107に戻る。そして、再び対象物Tにて反射し(2回目の反射)、その反射光は偏光が乱された状態で光路切替素子107に戻る。そして、反射光の大部分は、第2面P2にてレンズ部102の方向に反射されるが、プローブ先端部106の回転軸に対して傾斜角2θを有するので、レンズ部102の集光角度よりも2θが大きければ集光されない。
【0068】
したがって、レンズ部102の集光角度に基づいて光路切替素子107の第5面P5の傾斜角θを決定すれば、反射強度プロファイル(図7)における、迷光に起因する距離ピーク701の発生を防ぐことができる。
【0069】
<本発明の第4の実施形態に係る距離計測装置100
次に、図13は、本発明の第4の実施形態に係る距離計測装置100の構成例を示している。
【0070】
距離計測装置100は、光路切替素子107の第1面P1にレンズ部102からの測定光の一部を反射する反射コーティング1300が施されている。また、光路切替素子107の側面方向の第3面P3、及び直進方向の第4面P4に反射を防止するARコート1301,1302が設けられている。
【0071】
距離計測装置100においては、光路切替素子107の第1面P1に反射コーティング1300を設けたことにより、第1面P1を距離測定における補正用原点とすることができる。これにより、光ファイバカプラ210以降の光路における熱等の影響による光路長の変化に起因する距離測定誤差を無視することができる。また、光路切替素子107の第3面P3、及び第4面P4にARコート1301,1302を設けたことにより、ノイズの原因となる光路切替素子107の内部での迷光を抑止できる。
【0072】
図14は、距離計測装置100図13)に対応する、補正用原点を用いた距離測定の補正方法について説明するための図であり、距離計測装置100から得られる検出ビート信号のFFT結果を示している。同図の横軸は距離、縦軸は検出ビート信号の検出強度を示している。
【0073】
補正用原点となる光路切替素子107の第1面P1にて反射した反射光に基づく距離は検出ピーク1401として検出される。一方、光路切替素子107の第1面P1を通過して第3面P3または第4面P4から出射されて対象物Tに照射され、その反射光に基づく距離は検出ピーク1402として検出される。したがって、検出ピーク1402が表す距離から、検出ピーク1401が表す距離を差し引くことにより、補正用原点である光路切替素子107の第1面P1から対象物Tまでの距離を得ることができる。
【0074】
次に、図15は、距離計測装置100を包含した形状計測装置100による距離計測処理の一例を説明するフローチャートである。
【0075】
当該距離計測処理は、例えば、ユーザからの所定の開始操作に応じて開始される。はじめに、制御装置214が、ユーザからの操作入力に基づき、対象物T(例えば、穴)の距離測定が、測定光を第1方向D1に出射する側面測定であるか、または測定光を第2方向D2に出射する深さ測定であるかを判定する(ステップS1)。
【0076】
ステップS1で、側面測定であると判定した場合、制御装置214が、距離計測部111を制御して、計測プローブ115からの測定光の出射方向を第1方向D1に制御し、測定光を出射させるとともに、回転部104によりプローブ先端部106を回転させる。そして、制御装置214の距離演算部901が、距離計測部111からサンプリングした測定ビート信号を取得し、それと同期して、ステージコントローラ808からステージ機構903のXYZ座標を定めるステージエンコーダ信号と、回転部104の回転角を取得してこれらを紐付ける。(ステップS2)。
【0077】
次に、距離演算部901が、図14を参照して説明したように、測定ビート信号に基づき、所定の原点から対象物Tまでの距離と、所定の原点から補正用原点(光路切替素子107の第1面P1)までの距離をそれぞれ算出する(ステップS3)。次に、距離演算部901が、所定の原点から対象物Tまでの距離から、所定の原点から補正用原点までの距離を減算して、補正用原点から対象物Tまでの距離を算出する(ステップS4)。
【0078】
次に、形状算出部902が、距離演算部901による、補正用原点から対象物Tまでの距離とステージエンコーダ信号と、回転部104の回転角と紐付け結果に基づき、対象物T(穴)の直径を算出する(ステップS5)。この際、対象物T(穴)の真円度を算出することも可能である。
【0079】
一方、ステップS1で、深さ測定であると判定した場合、制御装置214が、距離計測部111を制御して、計測プローブ115からの測定光の出射方向を第2方向D2に制御し、測定光を出射させる。そして、制御装置214の距離演算部901が、距離計測部111からサンプリングした測定ビート信号を取得し、それと同期して、ステージコントローラ808からステージ機構903のXYZ座標を定めるステージエンコーダ信号を取得して両者を紐付ける。(ステップS6)。
【0080】
次に、ステップS3と同様、距離演算部901が、測定ビート信号に基づき、所定の原点から対象物Tまでの距離と、所定の原点から補正用原点(光路切替素子107の第1面P1)までの距離をそれぞれ算出する(ステップS7)。次に、ステップS4と同様、距離演算部901が、所定の原点から対象物Tまでの距離から、所定の原点から補正用原点までの距離を減算して、補正用原点から対象物Tまでの距離。すなわち、深さを算出する(ステップS8)。なお、ステップS5の算出結果、及びステップS8の算出結果に基づき、対象物Tの3次元形状を計測するようにしてもよい。以上で、当該距離計測処理は終了される。
【0081】
<本発明の第5の実施形態に係る距離計測装置100
次に、図16は、本発明の第5の実施形態に係る距離計測装置100の構成例を示している。
【0082】
距離計測装置100は、すなわち、距離計測装置100図1)に対して、光路切替素子107の位置が異なる。距離計測装置100の光路切替素子107は、プローブ先端部106の先端側の内部に係止されていた。これに対して、距離計測装置100の光路切替素子107は、プローブ先端部106の先端側の開口の外部に露出して設置されている。
【0083】
これにより、例えば、光路切替素子107が埃等によって汚れた場合の清掃が容易となる。なお、光路切替素子107の第3面P3、及び第4面P4には、距離計測装置100図13)と同様、ARコート1301,1302を設けてもよい。これにより、ノイズの原因となる光路切替素子107内部での迷光を抑止できる。さらに、第3面P3、及び第4面P4には、撥水コートを設けてもよい。これにより、光路切替素子107に汚れが付くことを抑止できる。
【0084】
<本発明の第6の実施形態に係る距離計測装置100
次に、図17は、本発明の第6の実施形態に係る距離計測装置100の構成例を示している。
【0085】
距離計測装置100は、距離計測装置100図16)に、露出している光路切替素子107を覆うキャップ1700を追加したものである。
【0086】
図18は、キャップ1700の構成例を示している。キャップ1700は、第1光学窓1701、第2光学窓1702、及び吸収壁108を有する。第1光学窓1701は、光路切替素子107の第3面P3と対象物Tとの間に、第1光学窓1701の法線とプローブ先端部106の回転軸とが直交しないように0度より大きく90度未満の傾斜角を有して配置されている。第2光学窓1702は、光路切替素子107の第4面P4と対象物Tとの間に、第2光学窓1702の法線とプローブ先端部106の回転軸とが平行とならないように0度より大きく90度未満の傾斜角を有して配置されている。吸収壁108は、光路切替素子107の第5面P5と対向する位置に設けられる。
【0087】
なお、第1光学窓1701の外側面1800(図8)には、ARコート、及び撥水コートを設けることが望ましい。また、第1光学窓1701の内側面1801(図8)にはARコートを設けることが望ましい。また、キャップ1700の外側の角は面取りすることが望ましい。角を面取りすることにより、キャップ1700が対象物Tに接触した場合に計測プローブ115がずれて、計測プローブ115の破損を防ぐことができる。
【0088】
図19は、キャップ1700の側面側の第1光学窓1701と、吸収壁108との位置関係の一例を示している。
【0089】
第1光学窓1701の傾斜角度θについて説明する。光路切替素子107の第3面P3から側面方向に照射された測定光は、その一部が第1光学窓1701の表面で反射される。第1光学窓1701がガラスである場合、その反射率は4%となる。この場合、受光器209の感度にもよるが、反射率が大きすぎるため、受光器209が飽和する可能性がある。そのため、プローブ先端部106の回転軸に対して第1光学窓1701を角度θだけ傾斜させる。第1光学窓1701で反射した光は、角度2θだけ傾斜して状態で第2面P2に戻り、プローブ先端部106の回転軸に対して2θだけ傾斜して反射される。したがって、レンズ部102の集光角度よりも角度2θを大きくすれば、第1光学窓1701での反射光がレンズ部102によって集光されない。したがって、レンズ部102の集光角度に基づいて傾斜角度θを決めればよい。
【0090】
なお、光路切替素子107の第3面P3から側面方向に照射されて第1光学窓1701を通過した測定光には、第1光学窓1701を通過する際、第1光学窓1701の傾きθと厚みdにより、光軸シフトが生じる。光軸シフト量hは、次式(4)によって表される。
d=h・sinθ(1-(cosθ/√(n-sinθ)) (4)
【0091】
例えば、第1光学窓1701の厚みdを200μm、角度θを2度とした場合、光軸シフト量hは4μm程度になる。照射する測定光のビーム径によるが、例えば、測定光のビーム径が100μm程度であれば、4μm程度の光軸シフト量は距離測定に影響しないので無視できる。
【0092】
次に、第1光学窓1701の傾斜角θと吸収壁108との関係について説明する。第1光学窓1701の傾斜角度θに対し、吸収壁108の傾斜角度は-θ方向だけ傾斜させる。第1光学窓1701で反射して角度2θで吸収壁108に入射した光は、吸収壁108で反射する際に4θ傾斜するため、レンズ部102による集光を抑止できる。
【0093】
図20は、キャップ1700の底面側の第2光学窓1702と、吸収壁108との位置関係の一例を示している。
【0094】
まず、第2光学窓1702の傾斜角度θについて説明する。光路切替素子107の第4面P4から直進方向に照射された測定光は、その一部が第2光学窓1702の表面で反射される。第2光学窓1702がガラスである場合、その反射率は4%となる。この場合、受光器209の感度にもよるが、反射率が大きすぎるため、受光器209が飽和する可能性がある。そのため、プローブ先端部106の回転軸と直交する線に対して第2光学窓1702を角度θだけ傾斜させる。第2光学窓1702で反射した光は、角度2θだけ傾斜して状態で第2面P2を通過する。したがって、レンズ部102の集光角度よりも角度2θが大きければ第2光学窓1702で反射した光が集光されない。したがって、レンズ部102の集光角度に基づいて傾斜角度θを決めればよい。
【0095】
なお、光路切替素子107の第4面P4から直進方向に照射されて第2光学窓1702を通過した測定光には、上述した第1光学窓1701の場合と同様、光軸シフト量が生じる。ただし、光軸シフト量hが4μm程度であれば、距離測定に影響しないので無視できる。
【0096】
次に、第2光学窓1702の傾斜角θと吸収壁108との関係について説明する。第1光学窓1701の場合と同様に、第2光学窓1702で反射して角度2θで吸収壁108に入射した光は、吸収壁108で反射する際に4θ傾斜するため、レンズ部102による集光を抑止できる。
【0097】
次に、図21は、距離計測装置100図17)における、プローブ先端部106に対する光路切替素子107、及びキャップ1700の組付け方法の一例を示している。
【0098】
同図に示されるように、始めに、ホルダ2000に光路切替素子107を接着する。次に、ホルダ2000をプローブ先端部106に挿入して接着する。最後に、キャップ1700をホルダ2000に接着する。このように、プローブ先端部106に対して光路切替素子107、及びキャップ1700を組み立て式とすることにより、光路切替素子107と、第1光学窓1701、第2光学窓1702、及び吸収壁108を有するキャップ1700とを高い精度で配置できる。
【0099】
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形が可能である。例えば、上述した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えたり、追加したりすることが可能である。
【0100】
また、上記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部または全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD等の記録装置、または、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に置くことができる。また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0101】
100~100・・・形状計測装置、101・・・ヘッド、102・・・レンズ部、103・・・第1偏光状態制御部、104・・・回転部、105・・・第2偏光状態制御部、106・・・プローブ先端部、107・・・光路切替素子、108・・・吸収壁、109,110・・・開口、111・・・距離計測部、113・・・接続ケーブル、115・・・計測プローブ、808・・・ステージコントローラ、901・・・距離演算部、902・・・形状算出部、903・・・ステージ機構、1000・・・形状計測装置、1300・・・反射コーティング、1301・・・ARコート、1302・・・ARコート、1700・・・キャップ、1701・・・第1光学窓、1702・・・第2光学窓、2000・・・ホルダ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21