(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018588
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】着色組成物、着色物の製造方法、着色物、キット
(51)【国際特許分類】
C09B 67/20 20060101AFI20240201BHJP
D06P 1/02 20060101ALI20240201BHJP
D06P 3/00 20060101ALI20240201BHJP
D06P 3/04 20060101ALI20240201BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20240201BHJP
C09D 11/328 20140101ALI20240201BHJP
C09B 29/045 20060101ALN20240201BHJP
C09B 29/042 20060101ALN20240201BHJP
【FI】
C09B67/20 K
D06P1/02
D06P3/00 D
D06P3/04
D06P5/30
C09D11/328
C09B29/045
C09B29/042
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122012
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000252300
【氏名又は名称】富士フイルム和光純薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝之
(72)【発明者】
【氏名】神野 由記
(72)【発明者】
【氏名】藤江 賀彦
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛敬
(72)【発明者】
【氏名】澁沢 翔
(72)【発明者】
【氏名】田邉 順
【テーマコード(参考)】
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
4H157AA01
4H157AA02
4H157BA24
4H157DA01
4H157DA20
4H157GA06
4J039BC50
4J039BC51
4J039BC55
4J039BE02
4J039BE12
4J039CA03
4J039DA01
4J039EA16
4J039EA35
4J039EA46
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】ポリアミド繊維を含む布帛の着色に用いた際に、得られる着色物のシアンの色味に優れ、着色物の耐汗性及び耐光性も優れる、着色組成物を提供する。
【解決手段】ポリアミド繊維を含む布帛の着色に用いられる着色組成物であって、
着色剤、及び、水を含み、
着色剤が、一般式(IA)で表される化合物、一般式(IB)で表される化合物、及び、一般式(IC)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、着色組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリアミド繊維を含む布帛の着色に用いられる着色組成物であって、
着色剤、及び、水を含み、
前記着色剤が、一般式(IA)で表される化合物、一般式(IB)で表される化合物、及び、一般式(IC)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、着色組成物。
【化1】
一般式(IA)中、R
1a及びR
2aは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、又は、アルキルアリールアミノ基を表す。
Mは、水素原子、又は、カチオンを表す。
L
1a及びL
2aは、それぞれ独立に、カルボニル基、又は、スルホニル基を表す。
Y
aは、置換基を表す。pは、1~4の整数を表す。
但し、一般式(IA)で表される化合物は、以下の要件1~3のいずれかを満たす。
要件1:R
1a及びR
2aがそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、及び、ヘテロ環基からなる群Iから選択され、且つ、pが1である場合には、Y
aで表される前記置換基のハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90であり、
R
1a及びR
2aがそれぞれ独立に前記群Iから選択され、且つ、pが2~4のいずれかの整数である場合には、複数のY
aで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.65~0.90である。
要件2:R
1a及びR
2aの一方が前記群Iから選択され、R
1a及びR
2aの他方がアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、及び、アルキルアリールアミノ基からなる群IIから選択され、且つ、pが1である場合には、Y
aで表される前記置換基のハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90であり、
R
1a及びR
2aの一方が前記群Iから選択され、R
1a及びR
2aの他方が前記群IIから選択され、且つ、pが2~4のいずれかの整数である場合には、複数のY
aで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.53~0.90である。
要件3:R
1a及びR
2aがそれぞれ独立に前記群IIから選択され、且つ、pが1である場合には、Y
aで表される前記置換基のハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であり、
R
1a及びR
2aがそれぞれ独立に前記群IIから選択され、且つ、pが2~4のいずれかの整数である場合には、複数のY
aで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.40~0.90である。
一般式(IB)中、R
1b及びR
2bは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、又は、アルキルアリールアミノ基を表す。
Mは、水素原子、又は、カチオンを表す。
L
1b及びL
2bは、それぞれ独立に、カルボニル基、又は、スルホニル基を表す。
Y
bは、置換基を表す。qは、0~3の整数を表す。
但し、qが1である場合には、Y
bで表される置換基のハメットの置換基定数σp値は0.00~0.72であり、qが2又は3である場合には、複数のY
bで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.00~0.72である。
一般式(IC)中、R
1c及びR
2cは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、又は、アルキルアリールアミノ基を表す。
Mは、水素原子、又は、カチオンを表す。
L
1c及びL
2cは、それぞれ独立に、カルボニル基、又は、スルホニル基を表す。
Y
cは、置換基を表す。rは、0~2の整数を表す。
但し、rが1である場合には、Y
cで表される置換基のハメットの置換基定数σp値は-0.30~0.50であり、rが2である場合には、複数のY
cで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が-0.30~0.50である。
【請求項2】
前記一般式(IA)で表される化合物が、一般式(IIA)で表される化合物であり、前記一般式(IB)で表される化合物が、一般式(IIB)で表される化合物であり、前記一般式(IC)で表される化合物が、一般式(IIC)で表される化合物である、請求項1に記載の着色組成物。
【化2】
一般式(IIA)中、R
1a、R
2a、M、L
1a及びL
2aはそれぞれ、前記一般式(IA)中のR
1a、R
2a、M、L
1a及びL
2aと同義である。
R
1a及びR
2aがそれぞれ独立に前記群Iから選択される場合、Y
IIaは、ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90である置換基であって、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基、及び、アルキルアリールアミノスルホニル基からなる群から選択される置換基であり、
R
1a及びR
2aの一方が前記群Iから選択され、R
1a及びR
2aの他方が前記群IIから選択される場合、Y
IIaは、ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90である置換基であって、アルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基、アルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリフルオロメチル基、及び、ジアルキルホスホネート基からなる群から選択される置換基であり、
R
1a及びR
2aがそれぞれ独立に前記群IIから選択される場合、Y
IIaは、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90である置換基であって、アルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基、アルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリフルオロメチル基、ジアルキルホスホネート基、ジアルキルホスフィンオキシド基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、及び、4-ピリジル基からなる群から選択される置換基である。
一般式(IIB)中、R
1b、R
2b、M、L
1b及びL
2bはそれぞれ、前記一般式(IB)中のR
1b、R
2b、M、L
1b及びL
2bと同義である。
Y
IIb及びY
IIb-2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基Xであり、
前記置換基Xは、ハロゲン原子、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、ジアリールアミノカルボニル基、アルキルアリールアミノカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基、アルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、トリフルオロメチル基、ジアルキルホスホネート基、ジアルキルホスフィンオキシド基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、及び、4-ピリジル基からなる群から選択される置換基である。
但し、Y
IIb及びY
IIb-2の一方が水素原子であり、他方が前記置換基Xである場合には、前記置換基Xで表される基のハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72であり、Y
IIb及びY
IIb-2の両方が前記置換基Xである場合、2つの前記置換基Xのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.00~0.72である。
一般式(IIC)中、R
1c、R
2c、M、L
1c及びL
2cはそれぞれ、前記一般式(IC)中のR
1c、R
2c、M、L
1c及びL
2cと同義である。
Y
IIcは、水素原子、又は、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50である置換基であって、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、及び、アリールスルホニルアミノ基からなる群から選択される置換基である。
【請求項3】
前記着色剤が、前記一般式(IA)で表される化合物であり、
R1a及びR2aが、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、又は、ジメチルアミノ基を表す、請求項1に記載の着色組成物。
【請求項4】
前記着色剤が、前記一般式(IIB)で表される化合物であり、
YIIbが水素原子、又は、前記置換基Xであり、YIIb-2が水素原子である、請求項2に記載の着色組成物。
【請求項5】
前記着色剤が、前記一般式(IIC)で表される化合物であり、
YIIcは、水素原子、又は、ハメットの置換基定数σp値が-0.20~0.50である置換基であって、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、及び、アリールスルホニルアミノ基からなる群から選択される置換基である、請求項2に記載の着色組成物。
【請求項6】
L1a、L2a、L1b、L2b、L1c、及び、L2cが、カルボニル基である、請求項1に記載の着色組成物。
【請求項7】
インクジェット用インクである、請求項1~6のいずれか1項に記載の着色組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の着色組成物を、インクジェット法によりポリアミド繊維を含む布帛に付与する工程を含む、着色物の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の製造方法により製造された着色物。
【請求項10】
請求項1~6のいずれか1項に記載の着色組成物と、ポリアミド繊維を含む布帛とを含む、キット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、着色組成物、着色物の製造方法、着色物、及び、キットに関する。
【背景技術】
【0002】
アゾ色素は種々の可視光吸収を有することが多いため、従来より種々の分野で利用されてきている。例えば、アゾ色素は、布帛の着色に用いられる場合がある。
より具体的には、特許文献1では、発色濃度が高く、耐水性に優れた画像を形成し得る、アゾ色素を含む捺染用水性着色組成物が開示されている。
また、特許文献2では、良好な色相及び堅牢性を有し、高い分子吸光係数を有するアゾ色素を含む着色組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2013-047386号
【特許文献2】特開2016-084421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
昨今、ポリアミド繊維を含む布帛を着色して、シアンの色味に優れる着色物が得られることが望まれている。また、得られる着色物の耐汗性、及び、耐光性に優れることも望まれている。
本発明者らは、特許文献1又は特許文献2に記載の着色組成物を用いてポリアミド繊維を含む布帛の着色について検討したところ、得られる着色物のシアンの色味、耐汗性、及び、耐光性の鼎立が必ずしも十分でなく、更なる改良の余地があることを知見した。
【0005】
そこで、本発明は、ポリアミド繊維を含む布帛の着色に用いた際に、得られる着色物のシアンの色味に優れ、着色物の耐汗性及び耐光性も優れる、着色組成物を提供することを課題とする。
また、本発明は、上記着色組成物を用いた着色物の製造方法、着色物、及び、キットを提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明を完成させるに至った。すなわち、以下の構成により上記課題が解決されることを見出した。
【0007】
〔1〕 ポリアミド繊維を含む布帛の着色に用いられる着色組成物であって、
着色剤、及び、水を含み、
上記着色剤が、後述する一般式(IA)で表される化合物、後述する一般式(IB)で表される化合物、及び、後述する一般式(IC)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、着色組成物。
〔2〕 上記一般式(IA)で表される化合物が、後述する一般式(IIA)で表される化合物であり、上記一般式(IB)で表される化合物が、後述する一般式(IIB)で表される化合物であり、上記一般式(IC)で表される化合物が、後述する一般式(IIC)で表される化合物である、〔1〕に記載の着色組成物。
〔3〕 上記着色剤が、上記一般式(IA)で表される化合物であり、
R1a及びR2aが、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、又は、ジメチルアミノ基を表す、〔1〕又は〔2〕に記載の着色組成物。
〔4〕 上記着色剤が、上記一般式(IIB)で表される化合物であり、
YIIbが水素原子、又は、上記置換基Xであり、YIIb-2が水素原子である、〔2〕に記載の着色組成物。
〔5〕 上記着色剤が、上記一般式(IIC)で表される化合物であり、
YIIcは、水素原子、又は、ハメットの置換基定数σp値が-0.20~0.50である置換基であって、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、及び、アリールスルホニルアミノ基からなる群から選択される置換基である、〔2〕に記載の着色組成物。
〔6〕 L1a、L2a、L1b、L2b、L1c、及び、L2cが、カルボニル基である、〔1〕~〔5〕のいずれか1つに記載の着色組成物。
〔7〕 インクジェット用インクである、〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の着色組成物。
〔8〕 〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の着色組成物を、インクジェット法によりポリアミド繊維を含む布帛に付与する工程を含む、着色物の製造方法。
〔9〕 〔8〕に記載の製造方法により製造された着色物。
〔10〕 〔1〕~〔6〕のいずれか1つに記載の着色組成物と、ポリアミド繊維を含む布帛とを含む、キット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ポリアミド繊維を含む布帛の着色に用いた際に、得られる着色物のシアンの色味に優れ、着色物の耐汗性及び耐光性も優れる、着色組成物を提供できる。
また、本発明は、上記着色組成物を用いた着色物の製造方法、着色物、及び、キットを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされる場合があるが、本発明はそのような実施態様に制限されない。
【0010】
以下、本明細書における各記載の意味を表す。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
また、本明細書において、「ハメットの置換基定数σp値がX~YであるZ基」という規定は、Z基の中でハメットの置換基定数σp値がX~Yである基を意味する。例えば、ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90であるアルキルスルホニル基という場合、アルキルスルホニル基の中でハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90である基(例えば、メチルスルホニル基、又は、エチルスルホニル基)を意味する。
【0011】
[着色組成物]
本発明の着色組成物は、ポリアミド繊維を含む布帛の着色に用いられる着色組成物であって、着色剤、及び、水を含み、上記着色剤が後述する一般式(IA)で表される化合物、後述する一般式(IB)で表される化合物、及び、後述する一般式(IC)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種(以下、単に「特定化合物」ともいう。)を含む。
本発明の着色組成物が上記構成を取ることで、本発明の効果が得られる機序は必ずしも明らかではないが、本発明者らは以下の通り推察している。
上記特定化合物のような、解離性基を有するアゾ色素(以下、単に「解離性アゾ色素」ともいう。)は、解離性基であるフェノール性水酸基等が解離してアニオン状態となることで、極大吸収波長が深色シフトするため、極大吸収波長が長波長領域にあるシアン色素にとって好ましい構造を有している。
例えば、特定化合物中の置換基であるR1a及びR2aとして適切な官能基を選択し、かつ、Yaとしてハメットの置換基定数σp値を適切な範囲に設定した官能基を選択して、両者を組み合わせることで、吸収波長領域をコントロールし、更に望ましいシアンの色味を表現できたものと考えられる。
上記解離性アゾ色素は、上述の通り解離したアニオン状態にあることで望ましいシアンの色味を呈しており、汗に晒されると、汗中のH+等によって、解離状態から非解離状態となってしまうため、色味の悪化に繋がる。また、光に晒された際には、解離性アゾ色素が分解することで色味の悪化に繋がるが、このような色素の分解が発生するのは、非解離状態からの分解経路が主であると発明者らは考えている。
したがって、解離性アゾ色素が安定して存在するためには、解離性基が解離してアニオン状態を維持していることが重要であり、本発明においては所定の骨格の特定化合物を選択し、更に置換基のハメットの置換基定数σp値を適切な範囲に設定することで、色味、耐汗性及び耐光性のバランスを取ることができたものと推察される。
以下、着色組成物に含まれる各成分について詳細に説明する。
【0012】
〔着色剤〕
<特定化合物>
着色組成物は、着色剤を含む。上記着色剤は、一般式(IA)で表される化合物、一般式(IB)で表される化合物、及び、一般式(IC)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
【0013】
【0014】
一般式(IA)中、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、又は、アルキルアリールアミノ基を表す。
【0015】
上記アルキル基としては、直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のいずれであってもよく、更に置換基を有していてもよい。
アルキル基としては、例えば、炭素数1~20の直鎖状、分岐鎖状、及び、環状のアルキル基が挙げられる。なかでも、炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が好ましく、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基がより好ましく、炭素数1~5の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が更に好ましく、メチル基、エチル基、又は、イソプロピル基が最も好ましい。
【0016】
上記アリール基としては、例えば、フェニル基、及び、ナフチル基が挙げられる。なかでも、フェニル基、及び、ナフチル基が好ましい。
上記ヘテロ環基としては、芳香族ヘテロ環基であっても、脂肪族ヘテロ環基であってもよく、例えば、環員数が5~10の芳香族ヘテロ環、及び、環員数が5~10の脂肪族ヘテロ環が挙げられる。上記ヘテロ環基を構成するヘテロ環としては、ピリジン環、キノリン環、フラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピラゾール環、イミダゾール環、ベンゾイミダゾール環、トリアゾール環、及び、オキサゾール環が挙げられる。なかでも、ピリジン環、フラン環、又は、チオフェン環が好ましい。
【0017】
上記アルコキシ基としては、炭素数1~20のアルコキシ基が好ましく、炭素数1~10のアルコキシ基がより好ましく、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、又は、t-ブトキシ基が更に好ましい。
上記アリールオキシ基としては、炭素数6~20のアリールオキシ基が好ましく、炭素数6~10のアリールオキシ基がより好ましく、フェノキシ基が更に好ましい。
【0018】
上記アミノ基は、第1級アミノ基(-NH2)を表す。
上記アルキルアミノ基は、第1級アミノ基(-NH2)において、1つの水素原子が上記アルキル基で置換された置換基を表し、例えば、炭素数1~20のアルキルアミノ基が挙げられる。なかでも、炭素数1~10のアルキルアミノ基が好ましく、炭素数1~5のアルキルアミノ基がより好ましく、メチルアミノ基、エチルアミノ基、又は、イソプロピルアミノ基が更に好ましい。
上記アリールアミノ基は、第1級アミノ基(-NH2)において、1つの水素原子が上記アリール基で置換された置換基を表し、例えば、炭素数6~20のアリールアミノ基が挙げられる。なかでも、炭素数6~10のアリールアミノ基が好ましく、フェニルアミノ基がより好ましい。
【0019】
上記ジアルキルアミノ基は、第1級アミノ基(-NH2)において、2つの水素原子がそれぞれ独立に、上記アルキル基で置換された置換基を表し、例えば、炭素数1~20のジアルキルアミノ基が挙げられる。なお、上記炭素数は、ジアルキルアミノ基に含まれる2つのアルキル基の炭素数の合計を意味する。なかでも、炭素数1~10のジアルキルアミノ基が好ましく、炭素数1~5のジアルキルアミノ基がより好ましく、ジメチルアミノ基又はジエチルアミノ基が更に好ましい。
上記ジアリールアミノ基は、第1級アミノ基(-NH2)において、2つの水素原子がそれぞれ独立に、上記アリール基で置換された置換基を表し、例えば、炭素数12~30のジアリールアミノ基が挙げられる。なお、上記炭素数は、ジアリールアミノ基に含まれる2つのアリール基の炭素数の合計を意味する。なかでも、炭素数12~20のジアリールアミノ基が好ましく、ジフェニルアミノ基がより好ましい。
上記アルキルアリールアミノ基は、第1級アミノ基(-NH2)において、一方の水素原子が上記アルキル基で置換され、もう一方の水素原子が上記アリール基で置換された置換基を表し、例えば、炭素数7~20のアルキルアリールアミノ基が挙げられる。なお、上記炭素数は、アルキルアリールアミノ基に含まれるアルキル基の炭素数とアリール基の炭素数の合計を意味する。なかでも、炭素数7~10のアルキルアリールアミノ基が好ましく、メチルフェニルアミノ基、又は、エチルフェニルアミノ基がより好ましい。
【0020】
得られる着色物のシアンの色味がより優れる、着色物の耐汗性がより優れる、及び、着色物の耐光性がより優れる点のいずれかの効果が得られる点(以下、単に「本発明の効果がより優れる点」ともいう。)で、R1a及びR2aは、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、又は、ジメチルアミノ基であることが好ましい。
【0021】
一般式(IA)中、Mは、水素原子、又は、カチオンを表す。Mとしては、カチオンが好ましい。
Mで表されるカチオンとしては、特に制限されないが、例えば、無機カチオンであってもよく、有機カチオンであってもよい。
無機カチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、及び、カリウムイオン等のアルカリ金属カチオン、並びに、アンモニウムイオンが挙げられる。
有機カチオンとしては、例えば、ピリジニウム、テトラメチルアンモニウム、グアニジニウム、テトラメチルグアニジニウム、アミジニウム、及び、テトラエチルアンモニウムが挙げられる。
【0022】
一般式(IA)中、L1a及びL2aは、それぞれ独立に、カルボニル基(-CO-)、又は、スルホニル基(-SO2-)を表す。L1a及びL2aとしては、少なくとも一方がカルボニル基であることが好ましく、両方がカルボニル基であることがより好ましい。
【0023】
一般式(IA)中、Yaは、置換基を表し、pは、1~4の整数を表す。
Yaは、式(IA)中の1,2-ベンゾイソチアゾール環において、5位、6位、及び、7位のいずれかに位置することが好ましく、5位又は6位に位置することがより好ましく、5位に位置することが更に好ましい。
pとしては、特に制限されないが、1~3の整数が好ましく、1又は2がより好ましく、1が更に好ましい。
【0024】
一般式(IA)で表される化合物は、以下の要件1~3のいずれかを満たす。
後述するように、要件1~3においては、R1a及びR2aが後述する群I又は群IIから選択される基の種類によって、Yaで表される置換基のハメットの置換基定数σp値の範囲が規定される。
群Iで例示される基と群IIで例示される基とを比較すると、群IIで例示される基のほうが電子供与性が強い。そこで、要件1~3においては、R1a及びR2aで選択される基の電子供与性の強さに応じて、Yaで表される置換基のハメットの置換基定数σp値の範囲が調整されている。
【0025】
要件1:R1a及びR2aがそれぞれ独立に水素原子、アルキル基、アリール基、及び、ヘテロ環基からなる群Iから選択され、且つ、pが1である場合には、Yaで表される上記置換基のハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90であり、
R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群Iから選択され、且つ、pが2~4のいずれかの整数である場合には、複数のYaで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.65~0.90である。
【0026】
本発明において「ハメットの置換基定数σp値」とは、ハメット則として成立する関係式における置換基に特有の定数である。ハメットの置換基定数σp値が正であることは、置換基が電子吸引性であることを示す。
ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論ずるため、1935年にL.P.Hammettによって提唱された経験則であるが、今日では広く妥当性が認められている。ハメット則により求められた置換基定数には、σp値とσm値とがある。これらの値は、多くの一般的な成書に記載されている。
本明細書では、Chem.Rev.,1991年,91巻,165~195ページに記載された値を採用する。なお、上記文献に記載されていない置換基については、文献「The Effect of Structure upon the Reactions of Organic Compounds. Benzene Derivatives」(J.Am.Chem.Soc.1937, 59, 1, 96-103)に記載された計算方法に従って算出された値を採用する。
【0027】
上記要件1のうちpが1である場合、Yaで表される置換基としては、例えば、シアノ基、ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90であるアルキルスルホニル基(-SO2R、Rはアルキル基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90であるアリールスルホニル基(-SO2Ar、Arはアリール基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90であるアルキルアミノスルホニル基(-SO2NHR、Rはアルキル基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90であるジアルキルアミノスルホニル基(-SO2NR2、Rはアルキル基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90であるアリールアミノスルホニル基(-SO2NHAr、Arはアリール基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90であるジアリールアミノスルホニル基(-SO2NAr2、Arはアリール基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90であるアルキルアリールアミノスルホニル基(-SO2N(-R)Ar、Rはアルキル基、Arはアリール基を表す)、及び、ニトロ基が挙げられる。
pが2~4の整数である場合、Yaで表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、及び、要件1のうちpが1である場合の、上述したYaで表される置換基からなる群から選択される置換基が挙げられる。
なお、要件1においては、pが2~4の整数である場合、複数のYaで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.65~0.90の範囲であればよく、複数のYaのうち少なくとも1つがハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90の範囲外の置換基であってもよい。
【0028】
R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群Iから選択され、且つ、pが1である場合において、Yaで表される上記置換基のハメットの置換基定数σp値は、本発明の効果がより優れる点から、0.65~0.80が好ましく、0.65~0.75がより好ましい。
R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群Iから選択され、且つ、pが2~4のいずれかの整数である場合において、複数のYaで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値は、本発明の効果がより優れる点から、0.65~0.80が好ましく、0.65~0.75がより好ましい。
【0029】
ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90である(以下、単に「要件1のσp値の」ともいう。)アルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基、及び、エチルスルホニル基が挙げられる。
要件1のσp値のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基が挙げられる。
要件1のσp値のアルキルアミノスルホニル基としては、エチルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件1のσp値のジアルキルアミノスルホニル基としては、ジメチルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件1のσp値のアリールアミノスルホニル基としては、フェニルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件1のσp値のジアリールアミノスルホニル基としては、ジフェニルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件1のσp値のアルキルアリールアミノスルホニル基としては、メチルフェニルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0030】
要件2:R1a及びR2aの一方が上記群Iから選択され、R1a及びR2aの他方がアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、及び、アルキルアリールアミノ基からなる群IIから選択され、且つ、pが1である場合には、Yaで表される上記置換基のハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90であり、
R1a及びR2aの一方が上記群Iから選択され、R1a及びR2aの他方が上記群IIから選択され、且つ、pが2~4のいずれかの整数である場合には、複数のYaで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.53~0.90である。
【0031】
上記要件2のうちpが1である場合、Yaで表される置換基としては、例えば、ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90であるアルキルアミノスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90であるジアルキルアミノスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90であるアリールアミノスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90であるジアリールアミノスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90であるアルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基(-SO2NH2)、シアノ基、ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90であるアルキルスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90であるアリールスルホニル基、トリフルオロメチル基、ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90であるジアルキルホスホネート基(-P(=O)(OR)2、Rはアルキル基を表す。)、及び、ニトロ基が挙げられる。
pが2~4の整数である場合、Yaで表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、及び、要件2のうちpが1である場合の、上述したYaで表される置換基からなる群から選択される置換基が挙げられる。
なお、要件2においては、pが2~4の整数である場合、複数のYaで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.53~0.90の範囲であればよく、複数のYaのうち少なくとも1つがハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90の範囲外の置換基であってもよい。
【0032】
R1a及びR2aの一方が上記群Iから選択され、R1a及びR2aの他方が上記群IIから選択され、且つ、pが1である場合には、Yaで表される上記置換基のハメットの置換基定数σp値は、本発明の効果がより優れる点から、0.53~0.80が好ましく、0.53~0.75がより好ましい。
R1a及びR2aの一方が上記群Iから選択され、R1a及びR2aの他方が上記群IIから選択され、且つ、pが2~4のいずれかの整数である場合には、複数のYaで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値は、本発明の効果がより優れる点から、0.53~0.80が好ましく、0.53~0.75がより好ましい。
【0033】
ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90である(以下、単に「要件2のσp値の」ともいう。)アルキルアミノスルホニル基としては、1-プロピルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件2のσp値のジアルキルアミノスルホニル基としては、ジメチルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件2のσp値のアリールアミノスルホニル基としては、フェニルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件2のσp値のジアリールアミノスルホニル基としては、ジフェニルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件2のσp値のアルキルアリールアミノスルホニル基としては、メチルフェニルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件2のσp値のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基及びエチルスルホニル基が挙げられる。
要件2のσp値のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基が挙げられる。
要件2のσp値のジアルキルホスホネート基としては、ジメチルホスホネート基が挙げられる。
【0034】
要件3:R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群IIから選択され、且つ、pが1である場合には、Yaで表される上記置換基のハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であり、
R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群IIから選択され、且つ、pが2~4のいずれかの整数である場合には、複数のYaで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.40~0.90である。
【0035】
上記要件3のうちpが1である場合、Yaで表される置換基としては、例えば、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるアルキルアミノスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるジアルキルアミノスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるアリールアミノスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるジアリールアミノスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるアルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基(-SO2NH2)、シアノ基、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるアルキルスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるアリールスルホニル基、トリフルオロメチル基、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるジアルキルホスホネート基(-P(=O)R2)、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるジアルキルホスフィンオキシド基(-O-P(=O)(R2)、Rはアルキル基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるアルキルカルボニル基(-C(=O)-R、Rはアルキル基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるアルコキシカルボニル基(-C(=O)OR、Rはアルキル基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるアルキルスルフィニル基(-S(=O)-R、Rはアルキル基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90であるアリールスルフィニル基(-S(=O)-Ar、Arはアリール基を表す)、及び、4-ピリジル基が挙げられる。
pが2~4の整数である場合、Yaで表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、及び、要件3のうちpが1である場合の、上述したYaで表される置換基からなる群から選択される置換基が挙げられる。
なお、要件3において、pが2~4の整数である場合、複数のYaで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.40~0.90の範囲であればよく、複数のYaのうち少なくとも1つがハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90の範囲外の置換基であってもよい。
【0036】
R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群IIから選択され、且つ、pが1である場合には、Yaで表される上記置換基のハメットの置換基定数σp値は、本発明の効果がより優れる点から、0.40~0.80が好ましく、0.40~0.75がより好ましい。
R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群IIから選択され、且つ、pが2~4のいずれかの整数である場合には、複数のYaで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値は、本発明の効果がより優れる点から、0.40~0.80が好ましく、0.40~0.75がより好ましい。
【0037】
ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90である(以下、単に「要件3のσp値の」ともいう。)アルキルアミノスルホニル基としては、1-プロピルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件3のσp値のジアルキルアミノスルホニル基としては、ジメチルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件3のσp値のアリールアミノスルホニル基としては、フェニルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件3のσp値のジアリールアミノスルホニル基としては、ジフェニルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件3のσp値のアルキルアリールアミノスルホニル基としては、メチルフェニルアミノスルホニル基が挙げられる。
要件3のσp値のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基及びエチルスルホニル基が挙げられる。
要件3のσp値のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基が挙げられる。
要件3のσp値のジアルキルホスホネート基としては、ジメチルホスホネート基が挙げられる。
要件3のσp値のジアルキルホスフィンオキシド基としては、ジメチルホスフィンオキシド基が挙げられる。
要件3のσp値のアルキルカルボニル基としては、メチルカルボニル基が挙げられる。
要件3のσp値のアルコキシカルボニル基としては、エトキシカルボニル基が挙げられる。
要件3のσp値のアルキルスルフィニル基としては、メチルスルフィニル基が挙げられる。
要件3のσp値のアリールスルフィニル基としては、フェニルスルフィニル基が挙げられる。
【0038】
上記一般式(IA)で表される化合物は、本発明の効果がより優れる点で、一般式(IIA)で表される化合物であることが好ましい。
【0039】
【0040】
一般式(IIA)中、R1a、R2a、M、L1a及びL2aはそれぞれ、上記一般式(IA)中のR1a、R2a、M、L1a及びL2aと同義である。
R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群Iから選択される場合、YIIaは、ハメットの置換基定数σp値が0.65~0.90である置換基であって、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基、及び、アルキルアリールアミノスルホニル基からなる群から選択される置換基である。
つまり、R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群Iから選択される場合、YIIaは、シアノ基、要件1のσp値のアルキルスルホニル基、要件1のσp値のアリールスルホニル基、要件1のσp値のアルキルアミノスルホニル基、要件1のσp値のジアルキルアミノスルホニル基、要件1のσp値のアリールアミノスルホニル基、要件1のσp値のジアリールアミノスルホニル基、及び、要件1のσp値のアルキルアリールアミノスルホニル基からなる群から選択される置換基である。
上記各基の具体的な例示は、上述した通りである。
R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群Iから選択される場合、YIIaで表される上記置換基のハメットの置換基定数σp値は、本発明の効果がより優れる点から、0.65~0.80が好ましく、0.65~0.75がより好ましい。
【0041】
R1a及びR2aの一方が上記群Iから選択され、R1a及びR2aの他方が上記群IIから選択される場合、YIIaは、ハメットの置換基定数σp値が0.53~0.90である置換基であって、アルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基、アルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリフルオロメチル基、及び、ジアルキルホスホネート基からなる群から選択される置換基である。
つまり、R1a及びR2aの一方が上記群Iから選択され、R1a及びR2aの他方が上記群IIから選択される場合、YIIaは、要件2のσp値のアルキルアミノスルホニル基、要件2のσp値のジアルキルアミノスルホニル基、要件2のσp値のアリールアミノスルホニル基、要件2のσp値のジアリールアミノスルホニル基、要件2のσp値のアルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、シアノ基、要件2のσp値のアルキルスルホニル基、要件2のσp値のアリールスルホニル基、トリフルオロメチル基、及び、要件2のσp値のジアルキルホスホネート基からなる群から選択される置換基である。
上記各基の具体的な例示は、上述した通りである。
R1a及びR2aの一方が上記群Iから選択され、R1a及びR2aの他方が上記群IIから選択される場合、YIIaで表される上記置換基のハメットの置換基定数σp値は、本発明の効果がより優れる点から、0.53~0.80が好ましく、0.53~0.75がより好ましい。
【0042】
R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群IIから選択される場合、YIIaは、ハメットの置換基定数σp値が0.40~0.90である置換基であって、アルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基、アルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、トリフルオロメチル基、ジアルキルホスホネート基、ジアルキルホスフィンオキシド基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、及び、4-ピリジル基からなる群から選択される置換基である。
つまり、R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群IIから選択される場合、YIIaは、要件3のσp値のアルキルアミノスルホニル基、要件3のσp値のジアルキルアミノスルホニル基、要件3のσp値のアリールアミノスルホニル基、要件3のσp値のジアリールアミノスルホニル基、要件3のσp値のアルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、シアノ基、要件3のσp値のアルキルスルホニル基、要件3のσp値のアリールスルホニル基、トリフルオロメチル基、要件3のσp値のジアルキルホスホネート基、要件3のσp値のジアルキルホスフィンオキシド基、要件3のσp値のアルキルカルボニル基、要件3のσp値のアルコキシカルボニル基、要件3のσp値のアルキルスルフィニル基、要件3のσp値のアリールスルフィニル基、及び、4-ピリジル基からなる群から選択される置換基である。
上記各基の具体的な例示は、上述した通りである。
R1a及びR2aがそれぞれ独立に上記群IIから選択される場合、YIIaで表される上記置換基のハメットの置換基定数σp値は、本発明の効果がより優れる点から、0.40~0.80が好ましく、0.40~0.75がより好ましい。
【0043】
一般式(IB)中、R1b及びR2bは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、又は、アルキルアリールアミノ基を表す。
【0044】
R1b又はR2bで表される、上述の、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、又は、アルキルアリールアミノ基の態様及び好適態様については、それぞれ、上記一般式(IA)中に明示されるR1a及びR2aについて説明した通りであるが、なかでも、R1b及びR2bとしては、それぞれ独立に、メチル基、イソプロピル基、メトキシ基、メチルアミノ基、及び、ジメチルアミノ基からなる群から選択されることが好ましい。
【0045】
一般式(IB)中、Mは、水素原子、又は、カチオンを表す。Mの態様及び好適態様については、上記一般式(IA)中に明示されるMについて説明した通りである。
【0046】
一般式(IB)中、L1b及びL2bは、それぞれ独立に、カルボニル基、又は、スルホニル基を表す。L1b及びL2bとしては、少なくとも一方がカルボニル基であることが好ましく、両方がカルボニル基であることがより好ましい。
【0047】
一般式(IB)中、Ybは、置換基を表し、qは、0~3の整数を表す。
qとしては、特に制限されないが、0~2の整数が好ましく、0又は1がより好ましい。
【0048】
一般式(IB)において、qが1である場合には、Ybで表される置換基のハメットの置換基定数σp値は0.00~0.72であり、qが2又は3である場合には、複数のYbで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.00~0.72である。
一般式(IB)で表される化合物においては、イソチアゾール環と縮合する環に窒素原子が1つ含まれる。このように窒素原子が含まれることにより、この環に置換する基のハメットの置換基定数σp値が一般式(IA)で表される化合物の範囲とは異なってくる。
【0049】
qが1である場合、Ybで表される置換基としては、例えば、ハメットの置換基定数σp値は0.00~0.72である置換基であって、ハロゲン原子、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、ジアリールアミノカルボニル基、アルキルアリールアミノカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基、アルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、アリール基、ヘテロ環基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルアミノ基(-NHCOR、Rはアルキル基を表す)、アリールカルボニルアミノ基(-NHCOAr、Arはアリール基を表す)、アルキルスルホニルアミノ基(-NHSO2R、Rはアルキル基を表す)、アリールスルホニルアミノ基(-NHSO2Ar、Arはアリール基を表す)、トリフルオロメチル基、ジアルキルホスホネート基、ジアルキルホスフィンオキシド基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、及び、4-ピリジル基からなる群から選択される置換基が挙げられる。
【0050】
qが2又は3である場合、Ybで表される置換基としては、ハロゲン原子、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、ジアリールアミノカルボニル基、アルキルアリールアミノカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基、アルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、トリフルオロメチル基、ジアルキルホスホネート基、ジアルキルホスフィンオキシド基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、及び、4-ピリジル基からなる群から選択される置換基が挙げられる。
なお、qが2又は3である場合、複数のYbで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.00~0.72の範囲であればよく、複数のYbのうち少なくとも1つがハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72の範囲外の置換基であってもよい。
【0051】
qが1である場合には、Ybで表される置換基のハメットの置換基定数σp値は、本発明の効果がより優れる点で、0.00~0.66が好ましく、0.00~0.50がより好ましい。
qが2又は3である場合には、複数のYbで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値は、本発明の効果がより優れる点で、0.00~0.66が好ましく、0.00~0.50がより好ましい。
【0052】
Ybで表される置換基は、なかでも、臭素原子、塩素原子、フェニルアミノカルボニル基、メチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、メチルカルボニルアミノ基、フェニル基、メチルカルボニル基、エチルカルボニル基、メトキシ基、メチルチオ基、メチル基、フェニルスルホニル基、メチルスルホニル基、ピリジンから水素原子1つを除いてなる基(ピリジン環基)、ピリミジンから水素原子1つを除いてなる基(ピリミジン環基)、又は、チオフェンから水素原子1つを除いてなる基(チオフェン環基)が好ましい。
【0053】
上記一般式(IB)で表される化合物は、本発明の効果がより優れる点で、一般式(IIB)で表される化合物であることが好ましい。
【0054】
【0055】
一般式(IIB)中、R1b、R2b、M、L1b及びL2bはそれぞれ、上記一般式(IB)中のR1b、R2b、M、L1b及びL2bと同義である。
YIIb及びYIIb-2は、それぞれ独立に、水素原子、又は、置換基Xであり、
置換基Xは、ハロゲン原子、ホルミル基、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、ジアルキルアミノカルボニル基、アリールアミノカルボニル基、ジアリールアミノカルボニル基、アルキルアリールアミノカルボニル基、シアノ基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルアミノスルホニル基、ジアルキルアミノスルホニル基、アリールアミノスルホニル基、ジアリールアミノスルホニル基、アルキルアリールアミノスルホニル基、アミノスルホニル基、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアリールアミノ基、アルキルアリールアミノ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基、トリフルオロメチル基、ジアルキルホスホネート基、ジアルキルホスフィンオキシド基、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基、及び、4-ピリジル基からなる群から選択される置換基である。
但し、YIIb及びYIIb-2の一方が水素原子であり、他方が置換基Xである場合には、置換基Xで表される基のハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72であり、YIIb及びYIIb-2の両方が置換基Xである場合、2つの置換基Xのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.00~0.72である。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、YIIbが水素原子、又は、置換基Xであり、YIIb-2が水素原子であることが好ましい。
【0056】
YIIb及びYIIb-2の一方が水素原子であり、他方が置換基Xである場合には、置換基Xで表される基のハメットの置換基定数σp値は、本発明の効果がより優れる点で、0.00~0.66が好ましく、0.00~0.50がより好ましい。
YIIb及びYIIb-2の両方が置換基Xである場合、2つの置換基Xのハメットの置換基定数σp値の合計値は、本発明の効果がより優れる点で、0.00~0.66が好ましく、0.00~0.50がより好ましい。
【0057】
YIIb及びYIIb-2の一方が水素原子であり、他方が置換基Xである場合、置換基Xとしては、シアノ基、ハロゲン原子、ハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72であるアルコキシカルボニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72であるアリールスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72であるアルキルスルホニル基、ハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72であるヘテロ環基、ハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72であるアリール基、ハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72であるアルキルカルボニルアミノ基、ホルミル基、又は、ハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72であるアリールアミノカルボニル基が好ましい。
【0058】
ハメットの置換基定数σp値が0.00~0.72である(以下、単に「置換基Xで規定されるσp値の」ともいう。)アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、及び、エトキシカルボニル基が挙げられる。
置換基Xで規定されるσp値のアリールスルホニル基としては、フェニルスルホニル基、及び、4-メチルスルホニル基が挙げられる。
置換基Xで規定されるσp値のアルキルスルホニル基としては、メチルスルホニル基が挙げられる。
置換基Xで規定されるσp値のヘテロ環基としては、ピリジン環基、チオフェン環基、及び、ピリミジン環基が挙げられる。
置換基Xで規定されるσp値のアリール基としては、フェニル基が挙げられる。
置換基Xで規定されるσp値のアルキルカルボニルアミノ基としては、メチルカルボニルアミノ基が挙げられる。
置換基Xで規定されるσp値のアリールアミノカルボニル基としては、フェニルアミノカルボニル基が挙げられる。
【0059】
YIIb及びYIIb-2の両方が置換基Xである場合、2つの置換基Xのハメットの置換基定数σp値の合計値が0.00~0.72であり、2つの置換基Xとしては、それぞれ独立に、シアノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールスルホニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルカルボニルアミノ基、又は、アルキルスルホニルアミノ基が好ましい。
【0060】
一般式(IC)中、R1c及びR2cは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、又は、アルキルアリールアミノ基を表す。
【0061】
上記R1c及びR2cで表される、アルキル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ジアルキルアミノ基、ジアリールアミノ基、又は、アルキルアリールアミノ基の態様及び好適態様については、それぞれ、上記一般式(IA)中に明示されるR1a及びR2aについて説明した通りであるが、なかでも、R1c及びR2cとしては、それぞれ独立に、メチル基、イソプロピル基、メトキシ基、エチルアミノ基、及び、ジメチルアミノ基からなる群から選択されることが好ましい。
【0062】
一般式(IC)中、Mは、水素原子、又は、カチオンを表す。Mの態様及び好適態様については、上記一般式(IA)中に明示されるMについて説明した通りである。
【0063】
一般式(IC)中、L1c及びL2cは、それぞれ独立に、カルボニル基、又は、スルホニル基を表す。L1c及びL2cとしては、少なくとも一方がカルボニル基であることが好ましく、両方がカルボニル基であることがより好ましい。
【0064】
一般式(IC)中、Ycは、置換基を表し、rは、0~2の整数を表す。
rとしては、特に制限されないが、0又は1が好ましく、1がより好ましい。
【0065】
一般式(IC)において、rが1である場合には、Ycで表される置換基のハメットの置換基定数σp値は-0.30~0.50であり、rが2である場合には、複数のYcで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が-0.30~0.50である。
一般式(IC)で表される化合物においては、イソチアゾール環と縮合する環に窒素原子が2つ含まれる。このような窒素原子が含まれることにより、この環に置換する基のハメットの置換基定数σp値が一般式(IA)で表される化合物の範囲とは異なってくる。
【0066】
rが1である場合、Ycで表される置換基としては、例えば、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアルキル基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアリール基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアルコキシ基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアリールオキシ基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアルキルチオ基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアリールチオ基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアルキルカルボニルアミノ基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアリールカルボニルアミノ基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアルキルスルホニルアミノ基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアリールスルホニルアミノ基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアルキルカルボニル基、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるアラルキルチオ基(-SCH2Ar、Arはアリール基を表す)、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50であるジアルキルアミノカルボニルアルキレンチオ基(-S-L-CONR2、Lはアルキレン基を、Rはアルキル基を表す)、及び、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50である、アルキル基、ハロゲン原子又はアルコキシ基がアリール基に置換しているアリールカルボニルアミノ基が挙げられる。
rが2である場合、Ycで表される置換基としては、例えば、ハロゲン原子、及び、rが1である場合の、上述したYcで表される置換基からなる群から選択される置換基が挙げられる。
なお、rが2である場合、2つのYcで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値が-0.30~0.50の範囲であればよく、2つのYcのうち少なくとも1つがハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50の範囲外の置換基であってもよい。
【0067】
rが1である場合には、Ycで表される置換基のハメットの置換基定数σp値は、本発明の効果がより優れる点で、-0.25~0.50が好ましく、-0.20~0.30がより好ましい。
rが2である場合には、複数のYcで表される置換基のそれぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値は、本発明の効果がより優れる点で、-0.25~0.50が好ましく、-0.20~0.30がより好ましい。
【0068】
ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50である(以下、単に「Ycで規定されるσp値の」ともいう。)アルキル基としては、メチル基、又は、イソプロピル基が挙げられる。
Ycで規定されるσp値のアリール基としては、フェニル基が挙げられる。
Ycで規定されるσp値のアルコキシ基としては、メトキシ基が挙げられる。
Ycで規定されるσp値のアリールオキシ基としては、フェニルオキシ基が挙げられる。
Ycで規定されるσp値のアルキルチオ基としては、メチルチオ基、及び、エチルチオ基が挙げられる。
Ycで規定されるσp値のアリールチオ基としては、フェニルチオ基が挙げられる。
Ycで規定されるσp値のアルキルカルボニルアミノ基としては、メチルカルボニルアミノ基、及び、イソプロピルカルボニルアミノ基が挙げられる。
Ycで規定されるσp値のアリールカルボニルアミノ基としては、フェニルカルボニルアミノ基が挙げられる。
Ycで規定されるσp値のアルキルスルホニルアミノ基としては、メチルスルホニルアミノ基が挙げられる。
Ycで規定されるσp値のアリールスルホニルアミノ基としては、フェニルスルホニルアミノ基が挙げられる。
【0069】
上記一般式(IC)で表される化合物は、一般式(IIC)で表される化合物であることが好ましい。
【0070】
【0071】
一般式(IIC)中、R1c、R2c、M、L1c及びL2cはそれぞれ、上記一般式(IC)中のR1c、R2c、M、L1c及びL2cと同義である。
YIIcは、水素原子、又は、ハメットの置換基定数σp値が-0.30~0.50である置換基であって、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、及び、アリールスルホニルアミノ基からなる群から選択される置換基である。
つまり、YIIcは、水素原子、Ycで規定されるσp値のアルキル基、Ycで規定されるσp値のアリール基、Ycで規定されるσp値のアルコキシ基、Ycで規定されるσp値のアリールオキシ基、Ycで規定されるσp値のアルキルチオ基、Ycで規定されるσp値のアリールチオ基、Ycで規定されるσp値のアルキルカルボニルアミノ基、Ycで規定されるσp値のアリールカルボニルアミノ基、Ycで規定されるσp値のアルキルスルホニルアミノ基、又は、Ycで規定されるσp値のアリールスルホニルアミノ基である。
上記各基の具体的な例示は、上述した通りである。
なかでも、本発明の効果がより優れる点で、YIIcは、水素原子、又は、ハメットの置換基定数σp値が-0.20~0.50(好ましくは、-0.20~0.30)である置換基であって、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、及び、アリールスルホニルアミノ基からなる群から選択される置換基であることが好ましい。
【0072】
特定化合物の分子量は、300~1000が好ましく、340~800がより好ましく、400~600が更に好ましい。
【0073】
一般式(IA)で表される化合物の合成方法は特に制限されないが、例えば、以下のスキームに示すように、一般式(AA)で表される化合物と一般式(CA)で表される化合物とを用いたジアゾカップリング反応が挙げられる。
一般式(IB)で表される化合物の合成方法は特に制限されないが、例えば、以下のスキームに示すように、一般式(AB)で表される化合物と一般式(CB)で表される化合物とを用いたジアゾカップリング反応が挙げられる。
一般式(IC)で表される化合物の合成方法は特に制限されないが、例えば、以下のスキームに示すように、一般式(AC)で表される化合物と一般式(CC)で表される化合物とを用いたジアゾカップリング反応が挙げられる。
【0074】
【0075】
一般式(AA)で表される化合物、一般式(AB)で表される化合物、及び、一般式(AC)で表される化合物は、例えば、市販又は公知の原料から出発して公知の有機合成反応を組み合わせた以下のルートにより合成できる。
【0076】
【0077】
一般式(CA)で表される化合物は、例えば、市販の原料から出発して公知の有機合成反応を組み合わせた以下のルートにより合成できる。
一般式(CB)で表される化合物、及び、一般式(CC)で表される化合物も同様にして合成できる。
【0078】
【0079】
以下、特定化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されない。
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
着色組成物中の特定化合物の含有量は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる点で、着色組成物の全質量に対し、0.1~20質量%が好ましく、0.2~15質量%がより好ましい。
特定化合物は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0087】
〔水〕
着色組成物は、水を含む。
水としては、特に制限されず、例えばイオン交換水でも、水道水でもよい。
水の含有量は特に制限されず、着色組成物の全質量に対して、20.0~99.9質量%が好ましく、35.0~99.8質量%がより好ましい。
【0088】
〔任意成分〕
着色組成物は、上述の特定化合物及び水のほか、任意の成分を含んでいてもよい。
【0089】
<有機溶媒>
着色組成物は、有機溶媒を含んでいてもよい。
有機溶媒としては、特に制限されないが、水性有機溶媒が好ましく、例えば、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、及び、グリセリン)、アミン類、一価アルコール類、多価アルコールのアルキルエーテル、複素環類、並びに、アセトニトリル等が挙げられる。
着色組成物が有機溶媒を含む場合、有機溶媒の含有量は特に制限されず、着色組成物の全質量に対して、1~60質量%が好ましく、2~50質量%がより好ましい。
有機溶媒は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0090】
<界面活性剤>
着色組成物は、界面活性剤を含んでいてもよく、着色組成物は、保存安定性、吐出安定性、及び、吐出精度等を高める観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。
界面活性剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、及び、非イオン性界面活性剤のいずれの界面活性剤も用いることができる。
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、及び、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0091】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪酸石鹸、N-アシル-N-メチルグリシン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、及び、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0092】
両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、及び、イミダゾリニウムベタインが挙げられる。
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、及び、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0093】
着色組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、着色組成物の全質量に対して、0.001~5.0質量%が好ましく、0.002~4.0質量%がより好ましい。
界面活性剤は1種のみ用いてもよく、2種以上用いてもよい。2種以上用いる場合は、それらの合計量が上記範囲となることが好ましい。
【0094】
<その他の添加剤>
着色組成物は、その他に従来公知の添加剤を含んでいてもよい。例えば、紫外線吸収剤、pH調整剤、色糊、防腐剤、防黴剤、褪色防止剤、乳化安定剤、浸透促進剤、赤外線吸収剤、蛍光増白剤、消泡剤、潤滑剤、増粘剤、帯電防止剤、マット剤、酸化防止剤、比抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料、及び、還元防止剤等が挙げられる。
【0095】
〔着色組成物の物性〕
着色組成物の25℃における粘度は、取り扱いの観点から、30mPa・s以下が好ましく、20mPa・s以下がより好ましい。下限は特に制限されないが、1mPa・s以上の場合が多い。
【0096】
[着色組成物の製造方法]
着色組成物の製造方法は特に制限されず、上述した各成分を混合して製造できる。
混合する際には、必要に応じて、撹拌処理を実施してもよい。撹拌処理は、公知の分散装置を用いて実施できる。
また、上記混合は、加熱環境下にて実施してもよい。加熱処理を行う際の加熱温度は、25~60℃が好ましく、30~45℃がより好ましい。
また、各成分を混合した後、必要に応じて、ろ過処理を実施してもよい。
【0097】
[インク]
本発明の着色組成物は、インクとして好適に用いることができ、なかでも、インクジェット用インクとして好適に用いることができる。
【0098】
[着色物の製造方法]
本発明の着色組成物は、ポリアミド繊維を含む布帛の着色に用いられる。
なお、着色の一例として、着色組成物を被着色物上に塗布して模様の形を与え、着色剤を被着色物に染着又は固着させることによって模様のある染色物をつくる染色法が挙げられる。工業的には、版を用いるスクリーン印刷、ローラー印刷、転写紙を用いる転写法、及び、インクジェット法等が挙げられる。
本発明の着色組成物を用いて、ポリアミド繊維を含む布帛を着色する方法は特に制限されず、上述したように、スクリーン印刷、ローラー印刷、転写紙を用いる転写法、及び、インクジェット法が挙げられる。
なかでも、生産性に優れる点で、インクジェット法が好ましい。より具体的には、本発明の着色組成物を、インクジェット法によりポリアミド繊維を含む布帛に付与する工程(以下、本工程をインクジェット工程ともいう。)を含む、着色物の製造方法が好ましい。
以下、上記インクジェット法での着色物の製造方法について詳述する。
以下では、まず、使用される布帛について説明し、その後、工程の手順について詳述する。
【0099】
〔布帛〕
布帛に含まれるポリアミド繊維を構成する材料はポリアミドであればよく、例えば、6ナイロン、及び、66ナイロンが挙げられる。
ポリアミド繊維を含む布帛は、ポリアミド繊維のみから構成されていてもよいし、ポリアミド繊維以外の繊維を含んでいてもよい。
布帛がポリアミド繊維以外の繊維を含む場合、ポリアミド繊維の含有量は、布帛の全質量に対して、30質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましい。
ポリアミド繊維がナイロン繊維である場合、ナイロン繊維の平均太さは、1~10デニールが好ましく、2~6デニールがより好ましい。
【0100】
〔工程の手順〕
本工程では、本発明の着色組成物を、インクジェット法によりポリアミド繊維を含む布帛に付与する。
上記インクジェット法は、インクジェット記録ヘッドから本発明の着色組成物を吐出させて、本発明の着色組成物を布帛に付与し、画像を印字する方法である。
上記インクジェット法を実施するために使用される装置としては、公知のインクジェット装置を用いることができる。
【0101】
〔他の工程〕
本発明の着色物の製造方法は、上述したインクジェット工程以外の他の工程を有していてもよい。
【0102】
<前処理工程>
本発明の着色物の製造方法は、インクジェット工程の前に、布帛に前処理を施す工程を有していてもよい。
布帛に行う前処理とは、水性(水溶性)高分子、水性(水溶性)金属塩、pH調整剤、ヒドロトロピー剤、及び、pH緩衝剤等の各種前処理剤を、布帛に付与する処理である。前処理においては、絞り率5~150%(好ましくは、10~130%)の範囲で前処理剤を布帛にパッティングすることが好ましい。
更に、撥水剤、界面活性剤等を布帛に付与してもよい。
前処理剤を布帛に付与する方法は特に制限されず、例えば、浸漬法、パッド法、コーティング法、スプレー法、及び、インクジェット法等が挙げられる。
前処理に用いられる各成分としては、国際公開第2013/047386号の段落0119~0123に記載の成分が挙げられる。
【0103】
<後処理工程>
本発明の着色物の製造方法は、インクジェット工程の後に、後処理工程を有していてもよい。後述する後処理工程を実施することにより、着色剤のポリアミド繊維への定着を促進させ、その後、定着しなかった着色剤、その他の成分、及び、前処理剤を十分除去することができる。
【0104】
後処理工程として、後述する乾燥工程、スチーム工程、及び、洗浄工程が挙げられる。後処理工程においては、乾燥工程、スチーム工程、及び、洗浄工程の順に実施されることが好ましい。
【0105】
-乾燥工程-
乾燥工程は、インクジェット工程にて着色組成物が付与された布帛を乾燥する工程である。本工程を実施することにより、印捺濃度を向上させ、滲みを有効に防止できる。
乾燥条件は特に制限されず、乾燥温度は室温~150℃が好ましく、乾燥時間は0.5~30分間が好ましい。
乾燥方法としては、空気対流方式、加熱ロール直付け方式、又は、照射方式が好ましい。
【0106】
-スチーム工程-
スチーム工程は、インクジェット工程にて着色組成物が付与された布帛にスチームによる熱処理を施す工程である。
布帛がナイロン繊維を主成分として含む布帛である場合、スチーム工程の時間は1分~90分が好ましく、3分~60分がより好ましい。
ここで布帛がある繊維を「主成分として含む」とは、布帛に含まれる繊維の中でその含有量が最大のものを意味する。
【0107】
-洗浄工程-
洗浄工程は、インクジェット工程にて着色組成物が付与された布帛を洗浄する工程である。本工程を実施することにより、未固着の着色剤等を布帛から除去できる。
洗浄方法としては、従来公知の洗浄方法が採用できる。
洗浄においては、常温~100℃の範囲の水、アニオン系のソーピング剤、又は、ノニオン系のソーピング剤を使用することが好ましい。
【0108】
-乾燥工程(洗浄後の乾燥)-
上記洗浄工程後の布帛は、乾燥される。乾燥方法は特に制限されず、洗浄した布帛を脱水した後、天日干し、乾燥機、ヒートロール、又は、アイロン等の方法により乾燥することができる。
【0109】
[着色物]
本発明は、着色物の発明も含む。本発明の着色物とは、上記製造方法により得られる着色物である。
【0110】
[キット]
本発明の一実施形態であるキットは、本発明の一実施形態である着色組成物と、ポリアミド繊維を含む布帛とを少なくとも含むキットである。この着色キットを用いて布帛の着色を実施し得る。
上記キットは、着色組成物をインクとして用いるインクジェット法による着色方法において好適に用いることができる。
【実施例0111】
以下に実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。
以下の実施例に示す材料、使用量、割合、処理内容、及び、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更できる。したがって、本発明の範囲は以下に示す実施例により限定的に解釈されるべきではない。
【0112】
[特定化合物及び比較化合物(着色剤)]
布帛の着色に用いた着色組成物(インクジェット組成物)の調製に用いる着色剤は、以下の通り合成した。
【0113】
〔化合物(B-32)の合成(合成例)〕
化合物(B-32)は、以下のスキームに従って合成した。
【0114】
【0115】
<化合物2の合成>
富士フイルム和光純薬(株)から購入した化合物1(129.3g)のジメチルアセトアミド(360ml)溶液に、氷水冷下、無水酢酸(96.4g)を滴下し、室温にて1時間撹拌した。得られた反応液を水(1080ml)に滴下し、室温にて2時間撹拌し、減圧にてろ過し、水でかけ洗い後、50℃にて乾燥することにより、化合物2(156g)を得た。
得られた化合物2の1H-NMR(Nuclear Magnetic Resonance)データを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=10.12(bs,1H),9.27(bs,1H),7.94(d,J=2.4Hz,1H),6.94(dd,J=2.4Hz,8.8Hz,1H),6.85(d,J=8.8Hz,1H),2.10(s,3H)
【0116】
<化合物3の合成>
上記で得られた化合物2(93.0g)のクロロホルム(750ml)溶液に、氷水冷下、密度1.38g/mlの硝酸水溶液(63.2g)を滴下し、室温にて3時間撹拌した。この溶液に水100mlを滴下し、析出した固体を減圧にてろ過して回収し、クロロホルム(200ml)及び水(100ml)で順次かけ洗い後、室温にて乾燥することにより、化合物3(76.0g)を得た。
得られた化合物3の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=9.76(bs,1H),8.20(d,J=2.4Hz,1H),7.74(d,J=2.4Hz,1H),2.10(s,3H)
【0117】
<化合物4の合成>
上記で得られた化合物3(25.0g)のメタノール(200ml)分散液に、室温にて5%パラジウム炭素(2.3g)及びギ酸アンモニウム(44g)を添加し、50℃にて2時間撹拌した。得られた溶液からセライトろ過により不溶成分を除去後、得られたろ液中のメタノール約160mlを減圧にて留去し、残った溶液を酢酸エチル(400ml)及び飽和食塩水(400ml)で抽出した。水相を酢酸エチル(400ml)にて再抽出し、有機相を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥し、約100gになるまで、減圧にて濃縮した。
得られた濃縮液にジメチルアセトアミド(100ml)を加えた後、氷水冷下、イソブチリルクロリド(12.6ml)及びピリジン(10.5ml)を滴下し、室温にて2時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(200ml)及び0.5規定塩酸水(200ml)で抽出した。有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧にて濃縮した。残渣を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶することにより、化合物4(21.7g)を得た。
得られた化合物4の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=9.95(bs,1H),9.70(bs,1H),9.55(bs,1H),7.38(d,J=8.0Hz,1H),7.32(d,J=8.0Hz,1H),6.79(t,J=8.0Hz,1H),2.79(hep,J=6.8Hz,1H),2.13(s,3H),1.12(d,J=6.8Hz,6H)
【0118】
<化合物6の合成>
東京化成工業(株)から購入した化合物5(4.5g)のジメチルアセトアミド(34ml)溶液に塩化マグネシウム6水和物(8.1g)を加え室温にて約10分間撹拌した。この分散液に水流化ナトリウム(ca65wt%)(3.6g)を加え、40℃にて3時間撹拌した。酢酸エチル(150ml)及び水(150ml)を加えて分液した。水相の不溶物を減圧ろ過で除去した後、食塩を加えて飽和させた。この水相を酢酸エチル(100ml)で3回抽出した。有機相を合わせて、飽和食塩水(50ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液を減圧にて濃縮後、ジメチルホルムアミド(30ml)を加えて更に濃縮した。残渣を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶することにより、化合物6(5.0g)を得た。
得られた化合物6の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=9.82(bs,1H),9.49(bs,1H),8.02(dd,J=1.6Hz,4.4Hz,1H),7.52(dd,J=1.6Hz,8.0Hz,1H),6.83(bs,2H),6.59(dd,J=4.4Hz,8.0Hz,1H)
【0119】
<化合物7の合成>
上記で得られた化合物6(4.65g)のメタノール(46.5ml)溶液に室温にて30wt%過酸化水素水(3.4ml)を滴下し、その温度で1.5時間撹拌した。得られた反応液に水(50ml)を添加し、室温で5分間撹拌後、0℃に冷却し、減圧にてろ過し、水でかけ洗いをした。得られた固体を50℃にて乾燥することにより、化合物7(3.9g)を得た。
得られた化合物7の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=8.55(dd,J=2.0Hz,4.0Hz,1H),8.21(dd,J=2.0Hz,8.4Hz,1H),8.10(bs,2H),6.81(dd,J=4.0Hz,8.4Hz,1H)
【0120】
<化合物(B-32)の合成>
上記で得られた化合物7(3.9g)及び化合物4(6.1g)を50℃にリン酸(59ml)に溶解させ、0℃に冷却した。混合液に亜硝酸ナトリウム(1.95g)を約10分かけて添加し、その温度で2時間した後、室温で1時間撹拌した。続いて、混合液に水(585ml)を滴下し、0℃に冷却した後、50wt%水酸化ナトリウム水溶液(44.5g)を10℃以下で滴下し、その温度で1時間撹拌した。得られた反応液を減圧にてろ過し、水でかけ洗い後、50℃で乾燥することにより化合物(B-32)の粗体(7.0g)を得た。
得られた粗体のアセトニトリル(70ml)分散液を50℃にて30分間撹拌し、室温に冷却後減圧にてろ過した。得られた粗体を更にメタノール(70ml)に分散して50℃にて30分間撹拌後、室温に冷却後減圧にてろ過した。
得られた粗体をカラム精製(2vol%トリエチルアミン含有クロロホルム、2vol%トリエチルアミン含有クロロホルム/2vol%トリエチルアミン含有メタノール=10/1、及び、2vol%トリエチルアミン含有クロロホルム/2vol%トリエチルアミン含有メタノール=5/1をこの順で展開溶媒として用いた。)後、減圧にて濃縮することにより、化合物(B-32)、及び、化合物(B-32)のトリエチルアミン塩の混合物を得た。
上記混合物を水(150ml)に溶解し、濃塩酸(約1.2ml)で酸性(pH≒2)化することにより固体が析出した。これを減圧にてろ過し、水で十分にかけ洗いすることにより、化合物(B-32)(2.5g)を得た。
得られた化合物(B-32)の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=9.59(bs,1H),9.43(bs,1H),8.64(bs,1H),8.58(d,J=8.0Hz,1H),8.41(bs,1H),8.32(bs,1H),7.21(bs,1H),2.92(hep,J=6.8Hz,1H),2.19(s,3H),1.13(d,J=6.8Hz,6H)
【0121】
〔化合物(A-19)の合成(合成例)〕
化合物(A-19)は、以下のスキームに従って合成した。
【0122】
【0123】
<化合物8の合成>
上記で得られた化合物3(5.0g)のメタノール(50ml)分散液に、室温にて5%パラジウム炭素(0.5g)及びギ酸アンモニウム(9.8g)を添加し、50℃にて2時間撹拌した。得られた溶液からセライトろ過により不溶成分を除去後、得られたろ液中のメタノール約32mlを減圧にて留去し、残った溶液を酢酸エチル(100ml)及び飽和食塩水(100ml)で抽出した。水相を酢酸エチル(100ml)にて再抽出し、有機相を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧にて濃縮した。
得られた濃縮物にアセトニトリル(30ml)を加えた後、氷水冷下、エチルイソシアネート(1.40ml)を滴下し、室温にて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(100ml)及び0.5規定塩酸水(100ml)で抽出した。有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧にて濃縮した。残渣を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶することにより、化合物8(2.2g)を得た。
得られた化合物8の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=10.15(bs,1H),9.90(bs,1H),8.08(bs,1H),7.60(d,J=8.0Hz,1H),6.94(d,J=8.0Hz,1H),6.84(t,J=5.4Hz,1H),6.71(t,J=8.0Hz,1H),3,11(dq,J=5.4Hz,7,2Hz,2H),2.14(s,3H),1.05(t,J=7.2Hz,1H)
【0124】
<化合物11の合成>
国際公開第2012/058392号に記載の方法で合成した化合物9(7.5g)のジメチルアセトアミド(50ml)溶液に塩化マグネシウム6水和物(8.1g)を加え室温にて約10分間撹拌した。この分散液に水流化ナトリウム(ca65wt%)(3.6g)を加え、40℃にて3時間撹拌した。酢酸エチル(500ml)及び水(500ml)を加えて分液した。水相の不溶物を減圧ろ過で除去した後、食塩を加えて飽和させた。この水相を酢酸エチル(200ml)で3回抽出した。有機相を合わせて、飽和食塩水(100ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。得られた溶液を減圧にて濃縮後、ジメチルホルムアミド(30ml)を加えて更に濃縮することにより化合物10の粗体(7.5g)を得た。
この粗体のメタノール(75ml)溶液に室温にて30wt%過酸化水素水(3.4ml)を滴下し、その温度で1.5時間撹拌した。得られた反応液に水(75ml)を添加し、室温で5分間撹拌後、0℃に冷却し、減圧にてろ過し、水でかけ洗いをした。得られた固体をメタノールから再結晶することにより、化合物11(6.0g)を得た。
得られた化合物11の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=8.39(d,J=1.6Hz,1H),8.22(bs,2H),7.56(dd,J=1,6Hz,9.2Hz,1H),7.35(d,J=9.2Hz,1H),7.18(bs,2H)
【0125】
<化合物(A-19)の合成>
上記で得られた化合物11(2.3g)を分散させたテトラヒドロフラン(7.2ml)/水(4.8ml)の混合液に室温にて濃塩酸(5.8ml)を滴下し、30℃にて30分間撹拌した後、0℃に冷却した。混合液に亜硝酸ナトリウム(1.03g)の水(2ml)溶液を滴下し、反応液を0℃に保ったまま30分間撹拌した後、スルファミン酸(0.49g)を添加した。この混合液を5分間撹拌した後、上記で得られた化合物8(2.4g)を添加し、0℃で1時間撹拌したのち室温で1時間撹拌した。続いて、混合液に水(100ml)を滴下し、得られた反応液を減圧にてろ過し、水でかけ洗い後、50℃で乾燥することにより化合物(A-19)の粗体(3.0g)を得た。
得られた粗体のアセトニトリル(60ml)分散液を50℃にて30分間撹拌し、室温に冷却後減圧にてろ過した。
得られた粗体をカラム精製(2vol%トリエチルアミン含有クロロホルム、2vol%トリエチルアミン含有クロロホルム/2vol%トリエチルアミン含有メタノール=9/1、及び、2vol%トリエチルアミン含有クロロホルム/2vol%トリエチルアミン含有メタノール=4/1をこの順で展開溶媒として用いた。)後、減圧にて濃縮することにより、化合物(A-19)、及び、化合物(A-19)のトリエチルアミン塩の混合物を得た。
上記混合物を水(75ml)/メタノール(10ml)混合溶媒に溶解し、濃塩酸(約0.6)で酸性(pH≒2)化することにより固体が析出した。これを減圧にてろ過し、水で十分にかけ洗いすることにより、化合物(A-19)(0.91g)を得た。
得られた化合物(A-19)の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=9.79(bs,1H),8.51(bs,1H),8.44(bs,2H),8.02(bs,1H),7.89(d,J=9.0Hz,1H),7.63(d,J=9.0Hz,1H),7.49(bs,2H),7.20(bs,1H),3.15(q,J=7.2,2H),2.19(s,3H),1.08(t,J=7.2Hz,3H)
【0126】
〔化合物(C-6)の合成(合成例)〕
化合物(C-6)は、以下のスキームに従って合成した。
【0127】
【0128】
<化合物12の合成>
上記で得られた化合物3(5.0g)のメタノール(50ml)分散液に、室温にて5%パラジウム炭素(0.5g)及びギ酸アンモニウム(9.8g)を添加し、50℃にて2時間撹拌した。得られた溶液からセライトろ過により不溶成分を除去後、得られたろ液中のメタノール約32mlを減圧にて留去し、残った溶液を酢酸エチル(100ml)及び飽和食塩水(100ml)で抽出した。水相を酢酸エチル(100ml)にて再抽出し、有機相を合わせて硫酸ナトリウムで乾燥し、減圧にて濃縮した。
得られた濃縮物にジメチルアセトアミド(30ml)を加えた後、室温にて無水酢酸(1.69ml)を滴下し、50℃にて1時間撹拌した。得られた反応液を酢酸エチル(100ml)及び0.5規定塩酸水(100ml)で抽出した。有機相を炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥後、減圧にて濃縮した。残渣を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶することにより、化合物12(3.1g)を得た。
得られた化合物12の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=9.92(bs,1H),9.68(bs,2H),7.34(d,J=8.0Hz,2H),6.78(t,J=8.0Hz,1H),2.13(s,6H)
【0129】
<化合物14の合成>
文献既知の方法で合成した化合物13(3.66g)のジメチルアセトアミド(23ml)溶液に塩化マグネシウム6水和物(3.3g)を加え室温にて約30分間撹拌した。この分散液に水流化ナトリウム(ca65wt%)(1.2g)を加え、室温にて3時間撹拌した。酢酸エチル(200ml)及び水(200ml)を加えて分液した。有機相を減圧にて濃縮後、ジメチルホルムアミド(30ml)を加えて更に濃縮した。残渣を酢酸エチル/ヘキサンから再結晶することにより、化合物14(4.0g)を得た。
得られた化合物14の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=9.90(bs,1H),9.64(bs,1H),8.47(s,1H),8.33(m,2H),7.92(bs,2H),6.51(m,3H)
【0130】
<化合物15の合成>
上記で得られた化合物14(3.23g)のメタノール(55ml)溶液に室温にて30wt%過酸化水素水(1.6ml)を滴下し、その温度で3時間撹拌した。得られた反応液に水(110ml)を添加し、室温で5分間撹拌後、0℃に冷却し、減圧にてろ過し、水でかけ洗いをした。得られた固体をアセトニトリル(70ml)に分散し、50℃にて30分間撹拌し、室温に冷却後、減圧にてろ過した。得られた固体を50℃にて乾燥することにより、化合物15(2.1g)を得た。
得られた化合物15の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=9.43(s,1H),8.93(bs,2H),8.45(m,2H),7.53(m,3H)
【0131】
<化合物(C-6)の合成>
上記で得られた化合物12(1.82g)のリン酸(16.5ml)/水(4.7ml)分散液を50℃で30分間撹拌し、0℃に冷却した。この混合液に亜硝酸ナトリウム(0.73g)を約5分かけて添加し、その温度で30分間撹拌した。続いて、この混合液を化合物15(1.82g)のメタノール(20ml)溶液に0℃にてゆっくりと加え、0℃で30分間した後、室温にて1時間撹拌した。この反応液に水(200ml)を加え、析出した結晶を減圧にてろ過し、50℃にて乾燥することにより、化合物(C-6)の粗体1.30gを得た。
得られた粗体をアセトニトリル(30ml)に分散し、50℃にて1時間撹拌し、室温に冷却した。減圧にてろ過後、50℃にて乾燥することにより化合物(C-6)(1.18g)を得た。
得られた化合物(C-6)の1H-NMRデータを以下に示す。
1H-NMR(400MHz,DMSOd6):δ=9.33(s,1H),9.09(d,J=4.8Hz,2H),8.80(d,J=2.4Hz,1H),8.49(m,2H),8.20(d,J=2.4Hz,1H),7.53(m,3H),2.18(s,3H),2.16(s,3H)
【0132】
<特定化合物>
実施例で用いたその他の特定化合物及び比較化合物は上記合成例を参照して合成した。
以下、着色組成物の調製に用いた各材料を示す。汎用色素であるAB-9(アシッドブルー9)及びDB-86(ダイレクトブルー86)、化合物(R-1)~(R-13)は比較化合物である。
【0133】
【0134】
【0135】
【0136】
<比較化合物>
【0137】
【0138】
【0139】
〔着色物(着色サンプル)の作製〕
以下の各工程によって、評価に供する着色サンプルを作製した。
【0140】
<前処理工程>
着色用布帛として、ポリアミド繊維を含む布帛である、ナイロン6ジャージ(縦方向の密度:36目/インチ、横方向の密度:36目/インチ、目付:231.5g/m2、染色社製)を用いた。
布帛に対し、絞り率90%にて前処理剤Aをパッティングし、自然乾燥させることで前処理済み布帛を得た。なお、前処理剤Aは下記材料を混合することで調製した。
(前処理剤A)
・糊剤:グアーガム〔日晶株式会社製、MEYPRO GUM NP〕 2g
・ヒドロトロピー剤:尿素〔富士フイルム和光純薬社製〕 5g
・pH調整剤:硫酸アンモニウム〔富士フイルム和光純薬社製〕 4g
・水 89g
【0141】
<インクジェット工程>
(インクジェット用インクの調製)
下記組成の通り各成分を混合し、得られた混合液を30~40℃で加熱しながら1時間撹拌した後、平均孔径0.5μmのミクロフィルターで減圧ろ過することで、インクジェット用インクを調製した。なお、以下の各成分の質量%は、各成分のインクジェット用インク全質量に対する含有量(質量%)を表す。
・表1~表3に示す特定化合物又は比較化合物のナトリウム塩 5質量%
・グリセリン〔富士フイルム和光純薬社製〕(水性有機溶媒) 10質量%
・ジエチレングリコール〔富士フイルム和光純薬社製〕(水性有機溶媒) 10質量%
・オルフィンE1010〔日信化学社製〕(アセチレングリコール系界面活性剤)
1質量%
・水 74質量%
【0142】
インクジェットプリンター(ディマティックス社製、DMP-2381)に、上記(インク組成物の調製)にて得られた各インクジェット用インクをセットし、上記<前処理工程>にて得られた前処理済み布帛にベタ画像を印捺した。
【0143】
<後処理工程>
上記<インクジェット工程>にて得られた、印捺した布帛を乾燥した後、スチーム工程にて飽和蒸気中、100℃で30分間スチームをかけ、着色剤を布帛の繊維に固着させた。その後、得られた布帛を冷水で10分、60℃の温水で5分洗った後、自然乾燥した。得られた布帛は色落ちすることなく、高濃度の着色サンプルが得られた。
【0144】
〔着色サンプルの評価〕
<色味>
得られた各着色サンプルについて、好ましいシアンの色味を有しているかを目視にて観察し、下記評価基準に基づいて色味を評価した。評価基準の数値が大きいほど、良好なシアンを示す。なお、緑みの強いシアンを示す着色剤は、青みの強いシアンを示す着色剤に対し、化合物の合成が困難である等の理由により、技術難度が一般的に高いことから、評価6に対する評価5、及び、評価4に対する評価3を下記評価基準の通り設定した。5以上の評価が好ましい。
(色味の評価基準)
1:暗いシアン
2:やや暗いシアン
3:青みが強いシアン
4:緑みが強いシアン
5:青みがやや強いシアン
6:緑みがやや強いシアン
7:鮮やかなシアン
【0145】
<耐汗性>
得られた各着色サンプルについて、以下の方法で耐汗性を評価した。具体的には、JIS L0848(2004)に規定される方法に準拠し、得られた各着色サンプルに対して酸性人工汗液(pH=5.5)を用いた処理を行った。
上記酸性人工汗液による処理後の各着色サンプルと、処理前の各着色サンプルとの色差△Eab(*)を下記式(X)に従って算出し、下記評価基準に基づいて耐汗性を評価した。値が小さいほど試験前後での色差の変化が小さく、耐汗性に優れることを示す。5以上の評価が好ましい。
(耐汗性の評価基準)
1:15以上
2:10以上15未満
3:7以上10未満
4:5以上7未満
5:3以上5未満
6:1以上3未満
7:1未満
【0146】
(色差△Eabの算出方法)
(*):ΔEab=((ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2)0.5 式(X)
分光濃度測定計(Xrite社製、X-rite i1Pro)にて、上記酸性人工汗液による処理前後における各着色サンプルのCIEL*a*b*表色系(国際照明委員会規格(1976年))における明度L*と色度a*及びb*を測定した。この測定結果より、上記試験前後における差ΔL*、Δa*、Δb*を算出し、上記式(X)に従って色差△Eabを求めた。
【0147】
<耐光性>
得られた各着色物について、以下の方法で耐光性を評価した。具体的には、ISO 105-B02に準じて、得られた各着色サンプルを用いて評価用サンプルを作製後、上記サンプルに対しキセノンフェードメーターにより、キセノン光を5時間照射した。上記<耐汗性>の評価と同様に、評価用サンプルの色差△Eabを上記式(X)に従って算出し、下記評価基準に基づいて耐光性を評価した。値が小さいほど試験前後での色差の変化が小さく、耐光性に優れることを示す。5以上の評価が好ましい。
(耐光性の評価基準)
1:20以上
2:15以上20未満
3:12.5以上15未満
4:10以上12.5未満
5:7.5以上10未満
6:5以上7.5未満
7:2.5以上5未満
【0148】
表1に実施例1-1~1-12、及び、比較例1-1~1-8の評価結果を、表2に実施例2-1~2-14、及び、比較例2-1~2-4の評価結果を、表3に実施例3-1~3-10、及び、比較例3-1~3-3の評価結果を示す。なお、表1中の特定化合物は、上記一般式(IA)で表される化合物であり、表2中の特定化合物は、上記一般式(IB)で表される化合物であり、表3中の特定化合物は、上記一般式(IC)で表される化合物である。
表1~表3中の各表記は以下を示す。
「着色剤」欄は、上記(インクジェット用インク)の調製に用いた特定化合物又は比較化合物を表す。
「R1,R2」欄は、特定化合物において、R1a又はR2aが、上記群Iから選択される場合に「A」とし、上記群IIから選択される場合に「B」とした。
「Y」欄は、特定化合物においてYa、Yb、又は、Ycで表される置換基を表す。例えば、実施例1-1の場合、特定化合物はYaとしてハロゲン原子を2つ有していることを意味する。
「Yのσp値」欄は、特定化合物においてYa、Yb、又は、Ycで表される置換基のハメットの置換基定数σp値を表し、「Σσp」欄は、それぞれのハメットの置換基定数σp値の合計値を表す。例えば、実施例1-1の場合、ハロゲン原子のハメットの置換基定数σp値は、0.23であるため、「Σσp」欄は、0.46を表す。
「要件1」欄は、着色剤が、上記一般式(IIA)、上記一般式(IIB)、又は、上記一般式(IIC)のいずれかで表される化合物である場合に「A」とし、上記以外の場合を「B」とした。
「要件2」欄は、表1に記載の実施例において、着色剤が、上記一般式(IA)で表される化合物であり、R1a及びR2aが、それぞれ独立に、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、又は、ジメチルアミノ基を表す場合に「A」とし、上記以外の場合を「B」とした。表2及び表3においては、「要件2」欄は「-」とする。
「要件3」欄は、表2に記載の実施例において、着色剤が、上記一般式(IIB)で表される化合物であり、YIIbが水素原子又は上記置換基Xであり、YIIb-2が水素原子である場合に「A」とし、上記以外の場合を「B」とした。表1及び表3においては、「要件3」欄は「-」とする。
「要件4」欄は、表3に記載の実施例において、着色剤が、上記一般式(IIC)で表される化合物であり、YIIcは、水素原子、又は、ハメットの置換基定数σp値が-0.20~0.50である置換基であって、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、及び、アリールスルホニルアミノ基からなる群から選択される置換基である場合に「A」とし、上記以外の場合を「B」とした。表1及び表2においては、「要件4」欄は「-」とする。
「要件5」欄は、表1~表3に記載の実施例において、特定化合物において、L1a、L2a、L1b、L2b、L1c、及び、L2cが、カルボニル基である場合に「A」とし、上記以外の場合を「B」とした。
【0149】
【0150】
【0151】
【0152】
表1~3の結果から、本発明の着色組成物は、ポリアミド繊維を含む布帛の着色に用いた際に、得られる着色物のシアンの色味に優れ、着色物の耐汗性及び耐光性も優れることが確認された。
【0153】
表1の結果から、一般式(IA)で表される化合物が、一般式(IIA)で表される化合物である場合、耐汗性及び耐光性がより優れることが確認された(実施例1-1と、実施例1-11との対比等)。
一般式(IA)で表される化合物において、R1a及びR2aが、それぞれ独立に、炭素数2以下の基(例えば、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、又は、ジメチルアミノ基)を表す場合、色味及び耐光性がより優れることが確認された(実施例1-5と、実施例1-4との対比等)。
一般式(IA)で表される化合物において、L1a及びL2aが、カルボニル基である場合、色味がより優れることが確認された(実施例1-10と、実施例1-4との対比等)。
【0154】
表2の結果から、一般式(IB)で表される化合物が、一般式(IIB)で表される化合物である場合、本発明の効果がより優れることが確認された(実施例2-8と、他の実施例との対比等)。
一般式(IB)で表される化合物が、一般式(IIB)で表される化合物であり、且つ、YIIbが水素原子、又は、置換基Xであり、YIIb-2が水素原子である場合、各評価の合計点がより優れ、本発明の効果がより優れることが確認された(実施例2-5、2-9~2-11と、他の実施例との対比等)。
一般式(IB)で表される化合物において、L1b及びL2bが、カルボニル基である場合、色味がより優れることが確認された(実施例2-13と、実施例2-14との対比等)。
【0155】
表3の結果から、一般式(IC)で表される化合物が、一般式(IIC)で表される化合物である場合、耐汗性及び耐光性がより優れることが確認された(実施例3-10と、他の実施例との対比等)。
一般式(IC)で表される化合物が、一般式(IIC)で表される化合物であり、且つ、YIIcは、水素原子、又は、ハメットの置換基定数σp値が-0.20~0.50である置換基であって、アルキル基、アリール基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基、アルキルスルホニルアミノ基、及び、アリールスルホニルアミノ基からなる群から選択される置換基である場合、各評価の合計点がより優れ、本発明の効果がより優れることが確認された(実施例3-8と、他の実施例との対比等)。
一般式(IC)で表される化合物において、L1c及びL2cが、カルボニル基である場合、耐光性がより優れることが確認された(実施例3-7と、実施例3-2との対比等)。