(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018787
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置、方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01N 11/04 20060101AFI20240201BHJP
G01N 11/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
G01N11/04 B
G01N11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122325
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000001421
【氏名又は名称】キユーピー株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100210790
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大策
(72)【発明者】
【氏名】池田 信章
(72)【発明者】
【氏名】佐野(藤岡) 沙都子
(57)【要約】
【課題】非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る。
【解決手段】断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置は、配管の半径R
p又は配管を流れる非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件であって、3条件以上の条件において、配管の一地点と、一地点から非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する圧力情報取得機構と、条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに基づいて、式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出し、且つ条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに算出された降伏応力σ
0に基づいて、式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する算出部と、を備える、装置。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置であって、
前記配管の半径R
p又は前記配管を流れる前記非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件であって、3条件以上の前記条件において、前記配管の一地点と、前記一地点から前記非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、前記非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する圧力情報取得機構と、
前記条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出し、且つ前記条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに算出された降伏応力σ
0に基づいて、以下の式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する算出部と、を備える、装置。
【数1】
【請求項2】
前記算出部において算出された前記レオロジー特性値に基づいて、以下の式(3)及び式(4)から、前記非ニュートン流体のせん断速度
の関数として、前記非ニュートン流体の粘度μを算出する、粘度算出部をさらに備える、請求項1に記載の装置。
【数2】
【請求項3】
前記配管は、前記一地点及び前記他地点を含み、異なる半径Rpを有し、前記非ニュートン流体が流れる3区間を備え、
前記装置は、前記配管の前記3区間における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得機構を更に備え、
前記圧力情報取得機構は、前記3区間にそれぞれ含まれる前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記配管の前記3区間は直列に並び、
前記流量情報取得機構は、前記3区間のうちいずれか1区間における流量Qに関する情報を、前記3区間における流量Qに関する情報として取得する、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記配管は、前記一地点及び前記他地点を含み、前記非ニュートン流体が流れる1区間を有し、
前記装置は、前記配管の前記1区間の流量Qが異なる3時点における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得機構を更に備え、
前記圧力情報取得機構は、前記3時点における前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項6】
前記圧力情報取得機構は、前記一地点及び前記他地点において前記配管の壁面に沿うように設けられたひずみゲージを含むセンサ部を有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項7】
断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法であって、
前記配管の半径R
p又は前記配管を流れる前記非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件を、3条件以上準備する準備工程と、
前記条件において、前記配管の一地点と、前記一地点から前記非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、前記非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する圧力情報取得工程と、
前記条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出する降伏応力算出工程と、
前記条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに降伏応力算出工程において算出された降伏応力σ
0に基づいて、以下の式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する算出工程と、を備える、方法。
【数3】
【請求項8】
断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得るために、コンピュータを、レオロジー特性値を算出する算出部として機能させるためのプログラムであって、
前記算出部は、前記配管の半径R
p又は前記配管を流れる前記非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件であって、3条件以上の前記条件において、前記配管の一地点と、前記一地点から前記非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、前記非ニュートン流体の圧力差ΔPと、前記条件における半径R
p、流量Q及び距離Lとに基づいて、以下の式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出し、且つ前記条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに算出された降伏応力σ
0に基づいて、以下の式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する、プログラム。
【数4】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
非ニュートン流体のレオロジー特性値を得るための様々な方法及び装置が知られている。例えば特許文献1には、サンプル流体のせん断率(せん断速度)が流量に比例することを前提とした上で、流体の流量及び圧力低下に基づいて、流体の粘度を計算することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非ニュートン流体の応力τとせん断速度
(以下の説明においては、せん断速度を「γ」と表記することもある)との関係は、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ
0の3つのレオロジー特性値を用いた以下の式によって表すことができる。
【数1】
なお、n=1,σ
0=0とすれば、上の式はニュートン流体にも当てはまる。
【0005】
特許文献1に記載の方法は、ニュートン流体について粘性係数Kの値を求めたり、非ニュートン流体についてσ0=0であることを仮定した上で粘性係数K及び粘性指数nを求めたりすることはできるが、非ニュートン流体の降伏応力σ0の値を仮定せずに、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値をそれぞれ求めることはできなかった。
【0006】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置、方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第1の態様は、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置であって、
前記配管の半径R
p又は前記配管を流れる前記非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件であって、3条件以上の前記条件において、前記配管の一地点と、前記一地点から前記非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、前記非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する圧力情報取得機構と、
前記条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出し、且つ前記条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに算出された降伏応力σ
0に基づいて、以下の式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する算出部と、を備える。
【数2】
【0008】
本開示の第2の態様は、上述した第1の態様による装置において、前記算出部において算出された前記レオロジー特性値に基づいて、以下の式(3)及び式(4)から、前記非ニュートン流体のせん断速度γの関数として、前記非ニュートン流体の粘度μを算出する、粘度算出部をさらに備える。
【数3】
【0009】
本開示の第3の態様は、上述した第1の態様又は上述した第2の態様による装置において、前記配管は、前記一地点及び前記他地点を含み、異なる半径Rpを有し、前記非ニュートン流体が流れる3区間を備え、
前記装置は、前記配管の前記3区間における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得機構を更に備え、
前記圧力情報取得機構は、前記3区間にそれぞれ含まれる前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得する。
【0010】
本開示の第4の態様は、上述した第3の態様による装置において、前記配管の前記3区間は直列に並び、
前記流量情報取得機構は、前記3区間のうちいずれか1区間における流量Qに関する情報を、前記3区間における流量Qに関する情報として取得する。
【0011】
本開示の第5の態様は、上述した第1の態様又は上述した第2の態様による装置において、前記配管は、前記一地点及び前記他地点を含み、前記非ニュートン流体が流れる1区間を有し、
前記装置は、前記配管の前記1区間の流量Qが異なる3時点における流量Qに関する情報を取得する流量情報取得機構を更に備え、
前記圧力情報取得機構は、前記3時点における前記一地点と前記他地点との間の圧力差ΔPに関する情報を取得する。
【0012】
本開示の第6の態様は、上述した第1の態様から上述した第5の態様のそれぞれによる方法において、前記圧力情報取得機構は、前記一地点及び前記他地点において前記配管の壁面に沿うように設けられたひずみゲージを含むセンサ部を有する。
【0013】
本開示の第7の態様は、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法であって、
前記配管の半径R
p又は前記配管を流れる前記非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件を、3条件以上準備する準備工程と、
前記条件において、前記配管の一地点と、前記一地点から前記非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、前記非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する圧力情報取得工程と、
前記条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出する降伏応力算出工程と、
前記条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに降伏応力算出工程において算出された降伏応力σ
0に基づいて、以下の式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する算出工程と、を備える、方法である。
【数4】
【0014】
本開示の第8の態様は、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得るために、コンピュータを、レオロジー特性値を算出する算出部として機能させるためのプログラムであって、
前記算出部は、前記配管の半径R
p又は前記配管を流れる前記非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件であって、3条件以上の前記条件において、前記配管の一地点と、前記一地点から前記非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、前記非ニュートン流体の圧力差ΔPと、前記条件における半径R
p、流量Q及び距離Lとに基づいて、以下の式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出し、且つ前記条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに算出された降伏応力σ
0に基づいて、以下の式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する、プログラムである。
【数5】
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、非ニュートン流体のレオロジー特性値を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態に係る装置を示すブロック図である。
【
図3】一実施形態に係る降伏応力算出工程を示す図である。
【
図5】流体の応力τとせん断速度γとの関係の例を示す図である。
【
図6】式(1)及び式(2)が導かれる手順を説明するための図である。
【
図11】実施例及び比較例における非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置を示す図である。
【
図12】実施例1におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図13】比較例1におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図14】比較例2におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図15】比較例3におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図16】実施例2におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図17】比較例4におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図18】比較例5におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図19】比較例6におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図20】実施例3におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図21】比較例7におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図22】比較例8におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図23】比較例9におけるせん断速度γごとのせん断応力の実測値及び計算値を示す図である。
【
図24】回転粘度計を用いて非ニュートン流体の物性を測定した測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の一実施の形態について説明する。なお、本件明細書に添付する図面においては、理解のしやすさの便宜上、適宜縮尺および縦横の寸法比等を、実物のそれらから変更し誇張してある。
【0018】
まず、
図1を参照して、本実施の形態に係る、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法及び装置10の概要について説明する。
図1は、レオロジー特性値を得る方法に用いられる装置10を示すブロック図である。装置10は、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置であって、圧力情報取得機構12及び算出部13を備える。
図1に示す装置10は、粘度算出部14及び流量情報取得機構11をさらに備える。非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置10は、非ニュートン流体が流れる断面円形の配管を備えてもよいし、備えていなくてもよい。すなわち、非ニュートン流体が流れる断面円形の配管は、装置10の一部をなしてもよいし、装置10の一部をなさなくてもよい。
【0019】
流量情報取得機構11及び圧力情報取得機構12は、配管を流れる非ニュートン流体の流量Q及び圧力差ΔPを、3条件以上の異なる条件において測定する。圧力情報取得機構12は、配管の半径R
p又は配管を流れる非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件であって、3条件以上の条件において、非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する。非ニュートン流体の圧力差ΔPは、配管の一地点と、一地点から非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の圧力差である。流量情報取得機構11は、配管の、非ニュートン流体の圧力差ΔPが測定される一地点及び他地点を含み、異なる半径R
pを有し、非ニュートン流体が流れる3区間以上の区間において、流量Qに関する情報を取得する。算出部13は、上記3条件以上の条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出する。算出部13は、さらに上記3条件以上の条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに算出された降伏応力σ
0に基づいて、以下の式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する。粘度算出部14は、算出部13において算出されたレオロジー特性値に基づいて、以下の式(3)及び(4)から、非ニュートン流体のせん断速度γの関数として、非ニュートン流体の粘度μを算出する。
【数6】
【0020】
一例として、装置10は、算出部13として機能するコンピュータを備える。この場合、コンピュータを算出部13として機能させるためのプログラムを、コンピュータに実行させることによって、コンピュータを算出部13として機能させることができる。プログラムは、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得るために、コンピュータを、レオロジー特性値を算出する算出部13として機能させる。このとき、プログラムは、コンピュータにあらかじめインストールされていてもよい。若しくは、記憶媒体、例えばプログラムを記録した不揮発性メモリを用いてプログラムがコンピュータにインストールされてもよい。若しくは、ネットワークを介して配布されたプログラムがコンピュータにインストールされてもよい。
【0021】
図1は、流量情報取得機構11及び圧力情報取得機構12が、配管を流れる非ニュートン流体の流量Q及び圧力差ΔPを、異なる3条件において測定する例を示している。
図1の(Q
1、ΔP
1)、(Q
2、ΔP
2)及び(Q
3、ΔP
3)は、異なる3条件において取得された3組の流量Q及び圧力差ΔPを表している。
図1に示す例において、算出部13は、取得された3組の流量Q及び圧力差ΔPから、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出する。算出部13は、さらに3条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに算出された降伏応力σ
0に基づいて、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する。
【0022】
本実施の形態に係る、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法は、準備工程と、圧力情報取得工程と、降伏応力算出工程と、算出工程と、を備える。本実施の形態に係る方法は、流量情報取得工程と粘度算出工程とをさらに備える。準備工程においては、配管の半径Rp又は配管を流れる非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる条件を、3条件以上準備する。圧力情報取得工程及び流量情報取得工程においては、配管を流れる非ニュートン流体の流量Q及び圧力差ΔPを、準備工程で準備された3条件以上の異なる条件において測定する。圧力情報取得工程においては、準備工程で準備された上記3条件以上の条件において、配管の一地点と、一地点から非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の、非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する。流量情報取得工程においては、配管の、非ニュートン流体の圧力差ΔPが測定される一地点及び他地点を含み、異なる半径Rpを有し、非ニュートン流体が流れる3区間以上の区間において、流量Qに関する情報を取得する。降伏応力算出工程においては、上記3条件以上の条件における半径Rp、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに基づいて、上記式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ0を算出する。算出工程においては、上記3条件以上の条件における半径Rp、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに算出された降伏応力σ0に基づいて、上記式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する。粘度算出工程においては、算出工程において算出されたレオロジー特性値に基づいて、上記式(3)及び(4)から、非ニュートン流体のせん断速度γの関数として、非ニュートン流体の粘度μを算出する。本実施の形態に係る、断面円形の配管を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る方法は、上述した装置10を用いて行うことができる。
【0023】
以下、レオロジー特性値を得るための装置10及び方法の具体例について説明する。本実施の形態においては、流量Q及び圧力差ΔPが測定される条件を3条件以上準備する方法の一例として、非ニュートン流体が流れる配管の半径を変えることにより、上述の異なる条件を、
図1に示すように3条件だけ準備する方法について説明する。
【0024】
(準備工程)
まず、配管の半径Rp又は配管を流れる非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる3条件を準備する、準備工程を行う。
【0025】
本実施の形態における配管20は、一地点及び他地点を含み、異なる半径R
pを有する3区間を備える。この場合、3条件は、異なる半径R
pを有する3区間において準備される。
図2は、本実施の形態に係る配管20を示す断面図である。配管20は、
図2に示すように、主配管21と、主配管21に対して並列に並ぶ3つの並列配管22と、を有する。
図2に示す幅2R
p1、2R
p2及び2R
p3は、3つの並列配管の直径の幅、すなわち半径R
pの2倍の幅を示している。
図2に示すように、3つの並列配管22は、それぞれ異なる半径R
p1、R
p2及びR
p3を有する。換言すれば、配管20は、3つの並列配管22において、異なる半径R
p1、R
p2及びR
p3を有する、第1区間31、第2区間32及び第3区間33の3つの区間を有する。
【0026】
配管20の材料は、例えばステンレスである。主配管21の半径は、例えば1cm以上150cm以下である。並列配管22の半径は、例えば1cm以上150cm以下である。
【0027】
本実施の形態における準備工程は、配管20に非ニュートン流体を流す工程を含む。本実施の形態においては、主配管21に非ニュートン流体を流すことによって、3つの並列配管22には、主配管21から非ニュートン流体が流れ込む。このとき、第1区間31、第2区間32、第3区間33には、3つの区間の半径Rpが異なることに起因して、異なる流量Q1、Q2及びQ3の非ニュートン流体が流れ込む。これによって、第1区間31、第2区間32及び第3区間33において、半径Rp及び流量Qの両方が異なる3条件が準備される。流量Q1、Q2及びQ3の範囲は、例えば体積流量において100L/h以上10,000L/h以下である。
【0028】
配管20に流して、レオロジー特性値を得る対象とする非ニュートン流体の種類は、特に限られない。非ニュートン流体は、例えばマヨネーズ、ケチャップ、ソース類、流動食などの食品、又は歯磨き粉、乳化タイプ・液粉混合タイプの洗剤や化粧品、インク、ペンキ、接着剤などである。
【0029】
(流量情報取得工程)
準備工程の後、流量情報取得工程を行う。本実施の形態においては、流量情報取得工程において、装置10の流量情報取得機構11を用いて、準備工程において準備された3条件における非ニュートン流体の流量Qに関する情報を取得する。本実施の形態においては、配管20のうち異なる半径Rpを有する、第1区間31、第2区間32、第3区間33における流量Q1、Q2及びQ3を取得する。
【0030】
流量情報取得機構11は、例えば非ニュートン流体の流量Qを測定する流量計を有する。
図2に示す場合、流量情報取得機構11は、例えば3つの区間にそれぞれ設けられた3つの流量計を有する。この場合、流量情報取得工程では、3つの流量計を用いて3つの区間における流量Qを測定することによって、流量Qに関する情報を取得する。流量計は、例えば電磁流量計又は質量流量計である。
【0031】
本実施の形態においては、3つの区間における流量Qに関する情報を、体積流量として取得する。流量Qを体積流量として取得する方法としては、流量Qを体積流量にて測定する流量計を用いる方法、又は流量Qを質量流量にて測定した上で、質量流量に非ニュートン流体の密度を除して体積流量に換算する方法が挙げられる。
【0032】
(圧力情報取得工程)
また、圧力情報取得工程を行う。圧力情報取得工程においては、装置10の圧力情報取得機構12を用いて、流量情報取得工程を行った3条件において、配管20の一地点と、一地点から非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点との間の非ニュートン流体の圧力差ΔPに関する情報を取得する。
【0033】
本実施の形態においては、第1区間31の一地点31aと、一地点31aから非ニュートン流体の流れる下流側に距離L
1だけ離れた他地点31bとの間の圧力差ΔP
1、第2区間32の一地点32aと、一地点32aから非ニュートン流体の流れる下流側に距離L
2だけ離れた他地点32bとの間の圧力差ΔP
2、及び第3区間33の一地点33aと、一地点33aから非ニュートン流体の流れる下流側に距離L
3だけ離れた他地点33bとの間の圧力差ΔP
3に関する情報を取得する。3条件における一地点と他地点との間の距離Lは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
図2に示す例において、第1区間31の一地点31aと他地点31bとの距離L
1、第2区間32の一地点32aと他地点32bとの間の距離L
2、第3区間33の一地点33aと他地点33bとの間の距離L
3は、それぞれ異なっている。
【0034】
圧力情報取得機構12は、例えば、3つの区間にそれぞれ設けられた3つの差圧計を有する。この場合、圧力情報取得工程では、差圧計を用いて一地点と他地点との間の圧力差ΔPを測定することによって、圧力差ΔPに関する情報を取得する。また、圧力情報取得機構12は、3つの区間にそれぞれ設けられ、一地点の圧力を測定する第1圧力計と、3つの区間にそれぞれ設けられ、他地点の圧力を測定する第2圧力計と、を有してもよい。この場合、圧力情報取得工程では、第1圧力計及び第2圧力計を用いて一地点及び他地点の圧力を測定し、一地点の圧力から他地点の圧力を引くことによって、圧力差ΔPに関する情報を取得する。
【0035】
圧力情報取得機構12は、一地点及び他地点において配管20の内側に設けられた弾性体を含むセンサ部を有してもよい。例えば、圧力情報取得機構12が第1圧力計及び第2圧力計を有する場合、第1圧力計及び第2圧力計が、配管20の内側に設けられた弾性体を含むセンサ部をそれぞれ有する。この場合、第1圧力計及び第2圧力計は、配管20内の圧力による弾性体のゆがみを検知することによって、配管20内の圧力を測定する。
【0036】
また、圧力情報取得機構12は、一地点及び他地点において配管20の壁面に沿うように設けられたひずみゲージを含むセンサ部を有してもよい。例えば、圧力情報取得機構12が第1圧力計及び第2圧力計を有する場合、第1圧力計及び第2圧力計が、配管20の壁面に沿うように設けられたひずみゲージを含むセンサ部をそれぞれ有する。この場合、第1圧力計及び第2圧力計は、配管20内の圧力による配管20の壁面のゆがみを、ひずみゲージを用いて検知することによって、配管20内の圧力を測定する。ひずみゲージは、配管20の内側に設けられていてもよく、配管20の外側に設けられていてもよい。ひずみゲージが配管20の内側に設けられている場合、ひずみゲージが配管20内の非ニュートン流体の流れを妨げにくくするためには、ひずみゲージは、配管20の壁面に埋め込まれていることが好ましい。
【0037】
図2に示すように、圧力差ΔPに関する情報を取得する一地点と他地点との位置は、一地点及び他地点の間において配管20が一方向に延びているように定められる。以下の理由のためである。後述する算出工程においては、一地点と他地点との間の圧力差ΔPが、配管20の壁面において生じる粘性摩擦力によって生じるとの仮定のもとで、レオロジー特性値を算出する。一方、配管20の壁面に折れが形成されている折れ部23においては、配管20を流れる非ニュートン流体の流れが十分に発達していない。したがって、配管20の一地点と他地点との間に折れ部23が存在する場合、流れを十分に発達させるための助走区間を設ける必要がある。助走区間がない、もしくは短い場合、折れ部23における流れが十分に発達していないため圧力差ΔPに影響を及ぼす恐れがある。これに対し、上述のように一地点及び他地点の位置を定めることによって、一地点と他地点との間の圧力差ΔPに対して助走区間中の流れが影響を及ぼすことを抑制することができる。このため、後述する算出工程において圧力差ΔPが粘性摩擦力によって生じるとの仮定のもとでレオロジー特性値の算出を行うに際して、算出の精度を向上することができる。
【0038】
一地点よりも非ニュートン流体の流れる上流側に位置する折れ部23のうち、一地点に最も近い近接折れ部231と、一地点との距離Wは、対象となる被測定物の粘度によって異なるが、粘度が100Pa・s以上であれば距離Wは1mm以上であることが好ましく、粘度が10Pa・s以上であれば距離Wは10mm以上であることがより好ましく、粘度が1Pa・s以上であれば距離Wは100mm以上であることがさらに好ましい。距離Wが上記の範囲であることによって、近接折れ部231と一地点との距離を確保して、近接折れ部231において発生した助走区間中の流れの圧力差ΔPに対する影響を抑制して、より精度よくレオロジー特性値を算出することができる。
【0039】
圧力情報取得工程は、流量情報取得工程よりも前に行ってもよく、流量情報取得工程と同時に行ってもよく、流量情報取得工程よりも後に行ってもよい。
【0040】
(降伏応力算出工程)
流量情報取得工程及び圧力情報取得工程の後に、3条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに基づいて、以下の式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出する、降伏応力算出工程を行う。降伏応力算出工程は、算出部13を用いて行うことができる。算出部13は、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出する算出部第1部分と、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する算出部第2部分とを有してもよい。この場合、降伏応力算出工程は、算出部第1部分を用いて行うことができる。算出部13は、例えばCPUである。
【数7】
【0041】
具体的には、以下の方法によって降伏応力σ
0を算出する。併せて、αの値を算出する。まず、以下のようにx
1、y
1及びdを定める。
【数8】
【0042】
式(1)及び式(5)~式(7)から、以下の式(8)が得られる。
【数9】
【0043】
式(5)より、x
1は、配管20の半径R
p及び流量Qから算出することができる。また、式(6)より、y
1は、配管20の半径R
p、距離L、及び圧力差ΔPから算出することができる。このため、準備工程において3条件を準備し、3条件における圧力差ΔP及び流量Qを取得することによって、(x
1,y
1)の数値の組が3つ得られる。
図3は、得られた3つの(x
1,y
1)の数値の組の一例を示す図である。
図3の横軸はx
1の値を表す。また、
図3の縦軸はy
1の値を表す。
図3の点D1、D2及びD3は、得られた3つの(x
1,y
1)の数値の組のプロットを表す。これら数値の組の関係を、式(8)で表される関数を用いて近似し、式(8)で表される関数が(x
1,y
1)の数値の組の関係とよく対応する近似となるようなα及びdの値を決定する。
図3の直線C1は、(x
1,y
1)の数値の組の関係を近似する、式(8)で表される関数の一例を表す。式(8)で表される関数を用いた近似、並びにα及びdの値の決定は、例えば最小二乗法によって行う。式(8)で表される関数を用いた近似、並びにα及びdの値の決定は、最小絶対値法によって行ってもよい。求められたdの値から、式(7)を用いて、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出する。
【0044】
(算出工程)
降伏応力算出工程の後に、3条件における半径R
p、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに降伏応力算出工程において算出された降伏応力σ
0に基づいて、以下の式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する、算出工程を行う。算出工程は、算出部13を用いて行うことができる。上述したように、算出部13は、レオロジー特性値として降伏応力σ
0を算出する算出部第1部分と、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する算出部第2部分とを有してもよい。この場合、算出工程は、算出部第1部分を用いて算出された降伏応力σ
0に基づいて、算出部第2部分を用いて行うことができる。
【数10】
【0045】
具体的には、以下の方法によって粘性係数K及び粘性指数nを算出する。まず、以下のようにx
2、y
2、a及びbを定める。
【数11】
【0046】
式(2)及び式(9)~(12)から、以下の式(13)が得られる。
【数12】
【0047】
式(9)より、x
2は、配管20の半径R
p及び流量Qから算出することができる。また、式(10)より、y
2は、配管20の半径R
p、距離L、及び圧力差ΔPから算出することができる。このため、準備工程において3条件を準備し、3条件における圧力差ΔP及び流量Qを取得することによって、(x
2,y
2)の数値の組が3つ得られる。
図4は、得られた3つの(x
2,y
2)の数値の組の一例を示す図である。
図4の横軸はx
2の値を表す。また、
図4の縦軸はy
2の値を表す。
図4の点D4、D5及びD6は、得られた3つの(x
2,y
2)の数値の組のプロットを表す。式(13)の降伏応力σ
0に、降伏応力算出工程において算出された降伏応力σ
0の値を代入した式で表される関数を用いて、これら数値の組の関係を近似し、当該関数が(x
2,y
2)の数値の組の関係とよく対応する近似となるようなa及びbの値を決定する。
図4の曲線C2は、(x
2,y
2)の数値の組の関係を近似する、当該関数の一例を表す。式(13)で表される関数を用いた近似、並びにa及びbの値の決定は、例えば最小二乗法によって行う。式(13)で表される関数を用いた近似、並びにa及びbの値の決定は、最小絶対値法によって行ってもよい。求められたa及びbの値から、式(11)及び式(12)を用いて、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する。
【0048】
ここで、式(1)及び式(2)を導いた方法について説明する。
図5に、非ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係について、ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係とともに示す。非ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係を表すモデルとして、Herschel-BulkleyモデルやCassonモデルが知られている。Herschel-Bulkleyモデルにおける非ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係は、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ
0の3つのレオロジー特性値に基づいて、以下の式(14)によって表される。
【数13】
【0049】
例えば、非ニュートン流体のうち、応力τとせん断速度γとの関係が
図5の符号(I)が付された一点鎖線で表されるビンガム流体は、式(14)においてn=1,σ
0>0となっている場合に該当する。また、非ニュートン流体のうち、応力τとせん断速度γとの関係が
図5の符号(II)が付された実線で表される、降伏応力がゼロではない擬塑性流体は、式(14)においてn<1,σ
0>0となっている場合に該当する。また、非ニュートン流体のうち、応力τとせん断速度γとの関係が
図5の符号(III)が付された破線で表される、降伏応力がゼロではないダイラタント流体は、式(14)においてn>1,σ
0>0となっている場合に該当する。なお、応力τとせん断速度γとの関係が
図5の符号(IV)が付された二点鎖線で表されるニュートン流体も、式(14)においてn=1,σ
0=0となっている場合に該当すると考えることが可能である。
【0050】
また、Cassonモデルにおける非ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係は、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ
0の3つのレオロジー特性値に基づいて、以下の式(15)によって表される。
【数14】
【0051】
ここで、
図6に示すように、断面円形の配管120の一地点120aと、一地点120aから距離Lだけ離れた他地点120bとの間を、一地点120aから他地点120bへ向かうz方向に非ニュートン流体が流れる場合であって、配管120の半径がR
p、配管120を流れる非ニュートン流体の流量がQである場合について考える。
図6に示す符号Aが付された一点鎖線は、断面円形の配管120の中心軸の位置を示す仮想の線である。この場合、
図6に示すように、配管の中心軸Aからの距離をrとおくと、配管の一地点と他地点との間を流れる非ニュートン流体の流速uの分布と、流量Qとの関係から、以下の式(16)が得られ、流速uとせん断速度γとの関係から、以下の式(17)が得られる。
【数15】
【0052】
また、上記の式(14)を書き換えることによって、以下の式(18)が得られる。
【数16】
【0053】
ここで、配管120中において生じる応力τの分布関数を、式(19)のようなm次関数として定義する。
【数17】
【0054】
本実施の形態においては、配管120中において生じる応力τの分布関数を、1次関数と考える。すなわち、式(19)においてmは1であると考える。式(17)及び(18)、並びに式(19)のmに1を代入した式を用いて式(16)を置換積分することによって、以下の式(20)を導くことができる。
【数18】
【0055】
また、配管120の一地点120aにおける圧力と他地点120bにおける圧力との圧力差ΔPについて考える。圧力差ΔPが、配管120の壁面において生じる粘性摩擦力F
pによって生じると仮定すると、ΔPとF
pとの間には以下の式(21)が成立する。
【数19】
【0056】
また、F
pは、以下の式(22)で表される。
【数20】
式(19)より、τ
Wはz方向に依存しない値なので、式(22)は以下の式(23)で表される。
【数21】
式(21)に式(23)を代入することによって、以下の式(24)が得られる。
【数22】
式(24)を整理することによって、以下の式(25)を導くことができる。
【数23】
【0057】
式(20)に、式(25)を代入することによって、上記の式(2)を導くことができる。
【0058】
また、式(14)と式(2)とを対比すると、式(2)において、式(14)の応力τは以下の式(26)に対応し、式(14)のせん断速度γは以下の式(27)に対応する。
【数24】
【0059】
そこで、式(15)の応力τに式(26)を代入し、式(15)のせん断速度γに式(27)を代入して整理すると、以下の式(28)が得られる。
【数25】
【0060】
以下の式(29)のようにαを置いて、式(28)に式(29)を代入することによって、上記の式(1)を導くことができる。
【数26】
【0061】
本実施の形態に係る方法においては、式(1)を導くために式(14)及び式(15)が利用され、式(2)を導くために式(14)が利用されている。このため、本実施の形態に係る方法は、Herschel-BulkleyモデルとCassonモデルとが利用されているものと言える。
【0062】
(粘度算出工程)
次に、粘度算出部14を用いて、算出工程において算出されたレオロジー特性値に基づいて、非ニュートン流体の粘度μを算出する、粘度算出工程を行う。粘度算出工程では、上記の式(4)に、算出工程において算出された粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の値を代入した上で、式(4)を上述の式(3)に代入することによって、せん断速度γの関数としての粘度μ、すなわちμ(γ)を算出する。粘度算出部14は、例えばCPUである。
【0063】
本実施の形態に係る方法及び装置10によれば、配管20を連続的に流れる非ニュートン流体について、粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の3つのレオロジー特性値、及びせん断速度γの関数としての粘度μを算出することができる。このため、配管20を連続的に流れる非ニュートン流体について、粘性係数K、粘性指数n、降伏応力σ0及び粘度μを継続的に算出してモニタリングすることができる。
【0064】
本実施の形態に係る方法及び装置10の効果について、特に、式(1)から降伏応力σ0を算出して式(2)から粘性係数K及び粘性指数nを算出する以外の方法によってレオロジー特性値を算出する方法との比較によりさらに説明する。
【0065】
レオロジー特性値として粘性係数K、粘性指数n及び降伏応力σ0を算出する方法として、以下の方法も考えられる。本実施の形態に係る準備工程、流量情報取得工程及び圧力情報取得工程と同様の方法によって、3条件以上の異なる条件における半径Rp、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに関する情報を取得する。これによって、上記式(13)の(x2,y2)の数値の組が、当該条件の数だけ得られる。得られた(x2,y2)の数値の組の関係を、式(13)で表される関数を用いて近似し、式(13)で表される関数が(x2,y2)の数値の組の関係とよく対応する近似となるようなa、b及び降伏応力σ0の値を決定する。求められたa及びbの値から、式(11)及び式(12)を用いて、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出する。この方法においては、式(13)を導くために式(14)が利用されているが、式(15)は利用されていない。このため、この方法は、Herschel-Bulkleyモデルが利用され且つCassonモデルが利用されていないものと言える。
【0066】
また、レオロジー特性値として粘性係数K、粘性指数n及び降伏応力σ0を算出する方法として、Herschel-BulkleyモデルやCassonモデル以外の、非ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係を表すモデルを利用する方法も考えられる。Herschel-BulkleyモデルやCassonモデル以外のモデルとしては、例えばべき乗側モデルやVocadloモデルが挙げられる。べき乗則モデルやVocadloモデルが利用されている式からレオロジー特性値を算出する方法の例については、実施例において後述する。
【0067】
本件発明者らは、レオロジー特性値を得る方法について鋭意研究を重ねた結果、式(1)から降伏応力σ0を算出して式(2)から粘性係数K及び粘性指数nを算出する方法によって、レオロジー特性値を高い精度で算出できることを見出した。特に、式(1)と式(2)とを用いる方法によれば、他の式からレオロジー特性値を算出する方法と比較して、多様な環境下において、レオロジー特性値の算出の精度を安定的に高くできることを見出した。また、多様な非ニュートン流体をレオロジー特性値算出の対象とする場合において、レオロジー特性値の算出の精度を安定的に高くできることを見出した。なお、本件発明者らが、式(1)と式(2)とを用いる方法により、他の方法と比較して、多様な環境下において、レオロジー特性値の算出の精度を安定的に高くできることを検証した実験については、実施例として後述する。
【0068】
より具体的には、配管20を流れる非ニュートン流体のせん断速度γを小さくすることが難しいために、準備工程において準備される3条件以上の条件が、せん断速度γの小さな条件を含まない場合であっても、レオロジー特性値の算出の精度を高くできることを見出した。換言すれば、流量情報取得工程及び圧力情報取得工程において、せん断速度γの小さな条件において流量Q及び圧力差ΔPを取得できない場合であっても、レオロジー特性値の算出の精度を高くできることを見出した。
【0069】
配管20を流れる非ニュートン流体のせん断速度γを小さくすることが難しい場合とは、例えば、せん断速度γを非ニュートン流体のレオロジー特性値の算出のために適した値とする以外の観点から、せん断速度γを大きくすることが求められる場合である。より具体的には、非ニュートン流体である製品の生産ラインにおいて、生産ラインに含まれる配管20を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を算出する場合に、生産ラインを動作させる上での必要性から、せん断速度γを大きくすることが求められる場合である。また、レオロジー特性値算出の対象とする非ニュートン流体の物性のために、配管20を流れる非ニュートン流体のせん断速度γを小さくすることが難しくなることもあり得る。
【0070】
本実施の形態の式(1)と式(2)とを用いる方法によって、準備工程において準備される3条件以上の条件が、せん断速度γの小さな条件を含まない場合であっても、レオロジー特性値の算出の精度を高くできる理由としては、以下の理由が考えられる。まず、上述したHerschel-Bulkleyモデルが利用され且つCassonモデルが利用されていない方法のように、式(2)を用い且つ式(1)は用いずにレオロジー特性値の算出を行う場合について考える。この場合、最小二乗法等による解析の特性上、せん断速度γの小さな条件を含まない測定値に基づいて式(2)のみで解析を行うと、せん断速度γの小さな条件下においても応力τの変化が大きい状態が維持されていると仮定して解析されてしまい、せん断速度γが0付近における降伏応力σ0がほぼ0の値として出力されやすくなる。一方、式(1)は、低せん断速度域においてもせん断速度γの平方根が一定量変化するときの応力τの平方根の変化量が一定である(せん断速度γの平方根と応力τの平方根との関係が一次関数で表せる)ことを利用したモデルとなっているため、式(2)のみで解析を行う場合よりも現実的な値が出力されやすい。また、式(1)を用いて降伏応力σ0を先に決定することで、式(2)から解析するべきパラメータが粘性係数K、粘性指数nの2つに減るため、式(2)を用いた解析のときに最小二乗法等による解析結果が収束しやすくなる。
【0071】
上述の通り、本実施の形態の式(1)と式(2)とを用いる方法によれば、多様な環境下において、安定的に高い精度でレオロジー特性値を算出できる。特に、準備工程において準備される3条件以上の条件が、せん断速度γの小さな条件を含まない場合であっても、高い精度でレオロジー特性値を算出できる。一例として、準備工程において準備される条件において、配管20の、圧力差ΔPが測定される一地点と他地点との間を流れる非ニュートン流体のせん断速度γは、1(1/秒)以上である。特に、準備工程において準備される条件の全てにおいて、配管20の、圧力差ΔPが測定される一地点と他地点との間を流れる非ニュートン流体のせん断速度γは、1(1/秒)以上である。本実施の形態の式(1)と式(2)とを用いる方法によれば、一地点と他地点との間を流れる非ニュートン流体のせん断速度γが1(1/秒)以上であっても、高い精度でレオロジー特性値を算出できる。
【0072】
(第1の変形例)
上述の実施の形態においては、特に、配管20が、主配管21と、主配管21に対して並列に並ぶ、3つの並列配管22と、を有する場合に、3つの並列配管22を、半径R
pが異なる3区間として用いる例について示した。しかしながら、3区間の態様はこれに限られない。
図7は、第1の変形例に係る方法に用いられる配管20を示す断面図である。
図7に示すように、第1の変形例において、配管20は、主配管21と、主配管21に対して並列に並ぶ2つの並列配管22と、を有する。そして、主配管21及び2つの並列配管22が、異なる半径R
p1、R
p2及びR
p3をそれぞれ有する。この場合、主配管21と2つの並列配管22とを、半径R
pが異なる第1区間31、第2区間32及び第3区間33の3区間として用いてもよい。
【0073】
(第2の変形例)
上述の実施の形態及び変形例においては、配管20が、主配管21と、主配管21に対して並列に並ぶ並列配管22と、を有する場合に、並列配管22を、半径R
pが異なる区間として用いる例について示した。しかしながら、3区間の態様はこれに限られない。
図8は、第2の変形例に係る方法に用いられる配管20を示す断面図である。第2の変形例における配管20は、
図8に示すように、直列に並ぶ、第1区間31、第2区間32及び第3区間33の3区間を備える。3区間は、異なる半径R
p1、R
p2及びR
p3をそれぞれ有する。この場合、3区間が直列に並ぶために、3区間を流れる非ニュートン流体の流量Q
1、Q
2及びQ
3は等しくなる。このため、流量情報取得工程においては、3区間のうちいずれか1区間における流量Qに関する情報を、3区間における流量Qに関する情報として取得してもよい。この場合、流量情報取得機構11は、3区間のうち1区間の流量Qを測定するように設けられた1つの流量計を有してもよい。例えば第1区間31の流量Q
1を測定するように設けられた流量計を用いて流量Q
1を測定し、第2区間32の流量Q
2及び第3区間33のQ
3も流量Q
1と同様とすることによって、流量Q
1、Q
2及びQ
3に関する情報を取得することができる。また、流量情報取得工程においては、3区間と直列に並ぶ図示しない第4区間における流量を測定し、流量Q
1、Q
2及びQ
3は第4区間の流量と同様とすることによって、流量Q
1、Q
2及びQ
3を取得してもよい。この場合、流量情報取得機構11は、第4区間の流量を測定するように設けられた1つの流量計を有してもよい。
【0074】
(第3の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、配管20の半径R
p又は配管20を流れる非ニュートン流体の流量Qの少なくとも一方が異なる3条件として、配管20の異なる3区間における3条件を準備する例について示した。しかしながら、3条件の態様はこれに限られない。
図9は、第3の変形例に係る方法を示す図である。第3の変形例における配管20は、
図9に示すように、一地点35aと、一地点35aから非ニュートン流体の流れる下流側に距離L
5だけ離れた他地点35bと、を含む区間35を備える。区間35は、半径R
p5を有する。
【0075】
第3の変形例では、準備工程において、区間35を備える配管20に、非ニュートン流体を流す。ここで、区間35を流れる非ニュートン流体の流量Qは、時間毎に変化しているものとする。時間毎の流量Qの変化は、例えば、ポンプを用いて非ニュートン流体を区間35に流している場合に、ポンプの脈動に起因して生じる。
図9(a)~(c)は、流量Qが異なる3時点における区間35の様子をそれぞれ示している。
図9(a)は流量がQ
1である第1時点、
図9(b)は流量がQ
1とは異なるQ
2である第2時点、
図9(c)は流量がQ
1及びQ
2とは異なるQ
3である第3時点における区間35の様子を示している。脈動による流量Qの変化の周期は、10ミリ秒以上500ミリ秒以下であり、例えば80ミリ秒である。ここで、流量Qの変化の周期とは、流量Qを連続的に測定した場合における、極大値を記録してから次の極大値を記録するまでに経過した時間の平均値を意味する。この場合に、流量情報取得工程では、配管20の区間35の流量Qが異なる、第1時点、第2時点及び第3時点の3時点において、流量Q
1、Q
2及びQ
3に関する情報を取得する。流量情報取得機構11は、区間35の流量を測定するように設けられた1つの流量計を有する。流量情報取得工程では、1つの流量計を用いて、3時点において流量を測定することによって、流量Q
1、Q
2及びQ
3に関する情報を取得することができる。
【0076】
第3の変形例における、流量Q
1、Q
2及びQ
3に関する情報を取得する3時点の定め方について説明する。
図10は、区間35の流量Qを連続的に測定した場合における測定結果の一例について、区間35の一地点35aと他地点35bとの間の圧力差ΔPの測定結果の一例とともに示す図である。
図10の横軸は経過した時間tを表す。また、
図10の縦軸は、流量Q又は圧力差ΔPの大きさを表す。「Q」と付された実線は流量Qの測定結果の一例を表し、「ΔP」と付された一点鎖線は圧力差ΔPの測定結果の一例を表す。流量Qが
図10に示すように変化する場合、流量Qが極値をとる時点のうち3つを、流量Q
1、Q
2及びQ
3に関する情報を取得する、第1時点T
1、第2時点T
2及び第3時点T
3の3時点と定めることができる。流量Qが極値をとる時点は、流量Qの変化率が0となる時点として検出することができる。3つの時点を定める基準となる流量Qの3つの極値は、3つの極小値又は3つの極大値であってもよいが、極小値と極大値とを少なくとも1つ含むことが好ましい。3つの極値が極小値と極大値とを少なくとも1つ含むことによって、より流量Qが大きく異なる3条件に基づいて、より精度よくレオロジー特性値を算出することができる。
【0077】
また、圧力情報取得工程では、流量Qに関する情報を取得した3時点において、区間35の一地点35aと他地点35bとの間の圧力差ΔP1、ΔP2及びΔP3に関する情報を取得する。この場合、圧力情報取得機構12は、例えば、一地点35aと他地点35bとの間の圧力差ΔPを測定するように設けられた1つの差圧計を有する。圧力情報取得機構12が1つの差圧計を有する場合、圧力情報取得工程では、1つの差圧計を用いて、3時点において圧力差を測定することによって、圧力差ΔP1、ΔP2及びΔP3に関する情報を取得することができる。又は、圧力情報取得機構12は、一地点35aの圧力を測定する第1圧力計と、他地点35bの圧力を測定する第2圧力計と、を有してもよい。圧力情報取得機構12が第1圧力計と第2圧力計とを有する場合、圧力情報取得工程では、第1圧力計及び第2圧力計を用いて、3時点における一地点35a及び他地点35bの圧力を測定し、一地点35aの圧力から他地点35bの圧力を引くことによって、圧力差ΔP1、ΔP2及びΔP3に関する情報を取得する。
【0078】
区間35の流量Qを連続的に測定した場合における測定結果と、区間35の一地点35aと他地点35bとの間の圧力差ΔPを連続的に測定した場合における測定結果とは、極値をとる時点がずれる場合がある。
図10に示す例においては、流量Qが極値を有する3時点T
1、T
2及びT
3と、圧力差ΔPが極値を有する3時点T
1´、T
2´及びT
3´との間には、それぞれΔT分のずれが生じている。このずれは、流量Qを測定する流量計の位置と、圧力差ΔPを測定する差圧計又は圧力計の位置との距離に起因するずれであると考えられる。この場合、圧力情報取得工程では、圧力差ΔPが極値を有する時点T
1´、T
2´及びT
3´のうち、それぞれ3時点T
1、T
2及びT
3と最も近い時点における圧力差ΔPを、3時点T
1、T
2及びT
3における圧力差ΔP
1、ΔP
2及びΔP
3として取得してもよい。このようにΔPを取得することによって、流量Qの極値と圧力差ΔPの極値とを対応させ、流量Qの変化と圧力差ΔPの変化とのずれを補正することができる。この場合、圧力差ΔPが極値をとる時点は、圧力差ΔPの変化率が0となる時点として検出することができる。
【0079】
(第4の変形例)
上述の実施の形態及び各変形例においては、特に、準備工程において半径Rp又は流量Qの少なくとも一方が異なる条件を3条件準備する例について示した。しかしながら、準備工程の方法はこれに限られない。準備工程において、半径Rp又は流量Qの少なくとも一方が異なる条件を4条件以上準備してもよい。この場合、降伏応力算出工程において、4条件以上の条件における半径Rp、流量Q、距離L及び圧力差ΔPに基づいて、上記式(1)から、レオロジー特性値として降伏応力σ0を算出できる。また、算出工程において、4条件以上の条件における半径Rp、流量Q、距離L及び圧力差ΔP、並びに降伏応力算出工程において算出された降伏応力σ0に基づいて、上記式(2)から、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出できる。
【0080】
準備工程において、半径Rp又は流量Qの少なくとも一方が異なる条件を4条件以上準備する場合、上述の実施の形態及び各変形例において説明した3条件を準備する方法と同様の方法によって、4条件以上の条件を準備できる。また、上述の実施の形態及び各変形例において説明した3条件を準備する方法を組み合わせて、4条件以上の条件を準備してもよい。
【0081】
一例として、準備工程において準備される3条件以上の条件は、主配管及び並列配管を備える配管においては、主配管内に位置し、半径Rp1を有する第1区間と、主配管内に位置して第1区間と直列に並び、半径Rp1とは異なる半径Rp2を有する第2区間と、主配管と並列に並ぶ並列配管に位置し、半径Rp1及び半径Rp2とは異なる半径Rp3を有する第3区間と、において準備される3条件を含み得る。また、準備工程において準備される3条件以上の条件は、流量Qが時間毎に変化する配管においては、半径Rp1を有する配管の第1区間における、流量Qが異なる第1時点及び第2時点と、半径Rp1とは異なる半径Rp2を有する配管の第2区間と、において準備される3条件を含んでもよい。
【実施例0082】
次に、上記実施の形態における具体的実施例について述べる。
【0083】
(実施例1)
まず、
図11に示す、配管20を流れる非ニュートン流体のレオロジー特性値を得る装置10を準備した。
図11に示す配管20は、接続配管41を介して、タンク42、ポンプ43及び流量情報取得機構11に接続されている。
図11においては、配管20を通過する非ニュートン流体が、配管20、タンク42、ポンプ43及び流量情報取得機構11をこの順に通過して循環するように、配管20、タンク42、ポンプ43及び流量情報取得機構11が直列に接続されている。
図11においては、タンク42に収容された非ニュートン流体がポンプ43によって送り出されることによって、非ニュートン流体が配管20及び接続配管41を流れて循環する。これによって、非ニュートン流体が配管20を流れる。
【0084】
ポンプ43は、羽根車式のマグネットポンプである。ポンプ43は、ポンプ43の有する羽根車と、羽根車を回転させるモータとを有する。そして、ポンプ43には、モータの駆動速度を変えるインバータ44が設けられている。
図11においては、インバータ44によりモータの駆動速度を変えつつポンプ43により非ニュートン流体を送り出すことによって、配管20を流れる非ニュートン流体の流量Qが異なる条件を、3条件以上準備できる。
【0085】
図11において、流量情報取得機構11は、配管20と直列に並ぶ接続配管41の流量を測定することによって、配管20の流量Qに関する情報を取得する。実施例1においては、流量情報取得機構11として、配管20と直列に並ぶ接続配管41の流量を測定する楕円ギア方式流量計(株式会社社堀場製作所製、製品名「LM05ZAT」)を用いた。
【0086】
図11において、配管20には、配管20の一地点34aと、一地点34aから非ニュートン流体の流れる下流側に距離Lだけ離れた他地点34bとの間の圧力差ΔPに関する情報を取得する、圧力情報取得機構12が設けられている。実施例1においては、圧力情報取得機構12として、配管20の一地点34aと他地点34bとの間の圧力差ΔPを測定する差圧計(株式会社キーエンス製、製品名「AP-12S」)を用いた。
【0087】
次に、タンク42に、非ニュートン流体として、住友ファーマフード&ケミカル株式会社製のグリロイド(登録商標)3Sを収容した。
【0088】
準備工程として、インバータ44によりモータの駆動速度を変えつつポンプ43により非ニュートン流体を送り出すことによって、配管20を流れる非ニュートン流体の流量Qが異なる条件を15条件準備した。そして、圧力情報取得工程として、上記15条件において、圧力情報取得機構12によって配管20の一地点34aと他地点34bとの間の圧力差ΔPに関する情報を取得した。また、流量情報取得工程として、上記15条件において、流量情報取得機構11によって配管20の流量Qに関する情報を取得した。
【0089】
降伏応力算出工程として、以下の工程を行った。上記15条件において取得された圧力差ΔPに関する情報、及び流量Qに関する情報に基づいて、上記式(5)及び上記式(6)によって表される(x1,y1)の数値の組を15組だけ得た。これら15組の数値の組の関係を、上記式(8)で表される関数を用いて近似し、上記式(8)で表される関数が(x1,y1)の数値の組の関係とよく対応する近似となるようなα及びdの値を決定した。上記式(8)で表される関数を用いた近似、並びにα及びdの値の決定は、最小二乗法によって行った。求められたdの値から、上記式(7)を用いて、レオロジー特性値として降伏応力σ0を算出した。
【0090】
さらに、算出工程として、以下の工程を行った。上記15条件において取得された圧力差ΔPに関する情報、及び流量Qに関する情報に基づいて、上記式(9)及び上記式(10)によって表される(x2,y2)の数値の組を15組だけ得た。上記式(13)の降伏応力σ0に、先の工程で算出された降伏応力σ0の値を代入した式で表される関数を用いて、これら15組の数値の組の関係を近似し、当該関数が(x2,y2)の数値の組の関係とよく対応する近似となるようなa及びbの値を決定した。上記式(13)で表される関数を用いた近似、並びにa及びbの値の決定は、最小二乗法によって行った。求められたa及びbの値から、上記式(11)及び上記式(12)を用いて、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出した。
【0091】
算出されたレオロジー特性値の妥当性を、以下の方法によって検証した。上記式(4)に、先の工程において算出された粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の値を代入して、応力τとせん断速度γとの関係を表す式を得た。また、上記15条件において、以下の方法によって、せん断速度γ及びせん断応力を測定した。測定装置として回転粘度計(TA Instruments社製、製品名「DHR-2」)を用いて、二重円筒式による測定から、せん断速度γ及びせん断応力を測定した。そして、当該方法によって測定されたせん断応力の値と、上述の方法によって得た応力τとせん断速度γとの関係を表す式に当該方法によって測定されたせん断速度γの値を代入することで得た応力τの値とが精度よく対応するかを確認した。以下、測定装置として回転粘度計を用いて測定されたせん断応力を、「せん断応力の実測値」とも称する。また、応力τとせん断速度γとの関係を表す式に、測定装置として回転粘度計を用いて測定されたせん断速度γの値を代入することで得た応力τを、「せん断応力の計算値」とも称する。せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで、算出されたレオロジー特性値の妥当性を検証した。
【0092】
図12に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図12に、実施例1におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0093】
(比較例1)
比較例1として、Herschel-Bulkleyモデルが利用され且つCassonモデルが利用されていない式からレオロジー特性値を得る方法を行った。比較例1においては、実施例1の圧力情報取得工程と同様の方法によって取得された圧力差ΔPに関する情報、及び実施例1の流量情報取得工程と同様の方法によって取得された流量Qに関する情報に基づいて、上記式(9)及び上記式(10)によって表される(x2,y2)の数値の組を15組だけ得た。これら15組の数値の組の関係を、上記式(13)で表される関数を用いて近似し、上記式(13)で表される関数が(x2,y2)の数値の組の関係とよく対応する近似となるようなa、b及び降伏応力σ0の値を決定した。上記式(13)で表される関数を用いた近似、並びにa、b及び降伏応力σ0の値の決定は、最小二乗法によって行った。求められたa及びbの値から、上記式(11)及び上記式(12)を用いて、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出した。
【0094】
上記式(4)に、先の工程において算出された粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0の値を代入して、応力τとせん断速度γとの関係を表す式を得た。そして、比較例1において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、実施例1と同様に、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0095】
図13に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図13に、比較例1におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0096】
(比較例2)
比較例2として、べき乗則モデルが利用されている式からレオロジー特性値を得る方法を行った。べき乗則モデルにおける非ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係は、粘性係数K及び粘性指数nの2つのレオロジー特性値に基づいて、以下の式(30)によって表される。
【数27】
【0097】
べき乗則モデルにおける式(30)は、Herschel-Bulkleyモデルにおける上記式(14)の降伏応力σ
0を0とみなした式に相当する。このため、比較例2においては、以下の方法によって、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出した。まず、実施例1の圧力情報取得工程と同様の方法によって取得された圧力差ΔPに関する情報、及び実施例1の流量情報取得工程と同様の方法によって取得された流量Qに関する情報に基づいて、上記式(9)及び上記式(10)によって表される(x
2,y
2)の数値の組を15組だけ得た。これら15組の数値の組の関係を、以下の式(31)で表される関数を用いて近似し、式(31)で表される関数が(x
2,y
2)の数値の組の関係とよく対応する近似となるようなa及びbの値を決定した。上記式(31)で表される関数を用いた近似、並びにa及びbの値の決定は、最小二乗法によって行った。なお、式(31)は、Herschel-Bulkleyモデルが利用され且つCassonモデルが利用されていない比較例1の方法において使用された式(13)の、降伏応力σ
0の値に0を代入した式に相当する。
【数28】
【0098】
求められたa及びbの値から、上記式(11)及び上記式(12)を用いて、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出した。
【0099】
上記式(3)に、先の工程において算出された粘性係数K及び粘性指数nの値を代入して、応力τとせん断速度γとの関係を表す式を得た。そして、比較例2において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、実施例1と同様に、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0100】
図14に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図14に、比較例2におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0101】
(比較例3)
比較例3として、Vocadloモデルが利用されている式からレオロジー特性値を得る方法を行った。Vocadloモデルにおける非ニュートン流体の応力τとせん断速度γとの関係は、粘性係数K及び粘性指数nの2つのレオロジー特性値に基づいて、以下の式(32)によって表される。
【数29】
【0102】
比較例3においては、具体的には以下の方法によって、レオロジー特性値として粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ
0を算出した。まず、実施例1の圧力情報取得工程と同様の方法によって取得された圧力差ΔPに関する情報、及び実施例1の流量情報取得工程と同様の方法によって取得された流量Qに関する情報に基づいて、上記式(9)及び上記式(10)によって表される(x
2,y
2)の数値の組を15組だけ得た。これら15組の数値の組の関係を、以下の式(33)で表される関数を用いて近似し、式(33)で表される関数が(x
2,y
2)の数値の組の関係とよく対応する近似となるような粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ
0を決定した。上記式(33)で表される関数を用いた近似、並びに粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ
0の値の決定は、最小二乗法によって行った。なお、式(33)は、式(32)の応力τをy
2、せん断速度γをx
2に置き換えた式に相当する。
【数30】
【0103】
上記式(32)に、先の工程において算出された粘性係数K及び粘性指数nの値を代入して、応力τとせん断速度γとの関係を表す式を得た。そして、比較例3において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、実施例1と同様に、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0104】
図15に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図15に、比較例3におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0105】
(実施例2)
タンク42に、非ニュートン流体として、住友ファーマフード&ケミカル株式会社製のキサンタンガムを収容した以外は、実施例1と同様の方法によって、レオロジー特性値として粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0を算出した。
【0106】
実施例2において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、実施例1と同様の方法によって、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0107】
図16に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図16に、実施例2におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0108】
(比較例4)
タンク42に、非ニュートン流体として、住友ファーマフード&ケミカル株式会社製のキサンタンガムを収容した以外は、比較例1と同様の方法によって、レオロジー特性値として粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0を算出した。
【0109】
比較例4において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、比較例1と同様の方法によって、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0110】
図17に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図17に、比較例4におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0111】
(比較例5)
タンク42に、非ニュートン流体として、住友ファーマフード&ケミカル株式会社製のキサンタンガムを収容した以外は、比較例2と同様の方法によって、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出した。
【0112】
比較例5において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、比較例2と同様の方法によって、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0113】
図18に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図18に、比較例5におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0114】
(比較例6)
タンク42に、非ニュートン流体として、住友ファーマフード&ケミカル株式会社製のキサンタンガムを収容した以外は、比較例3と同様の方法によって、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出した。
【0115】
比較例6において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、比較例3と同様の方法によって、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0116】
図19に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図19に、比較例6におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0117】
(実施例3)
タンク42に、非ニュートン流体として市販のケチャップを収容した以外は、実施例1と同様の方法によって、レオロジー特性値として粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0を算出した。
【0118】
実施例3において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、実施例1と同様の方法によって、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0119】
図20に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図20に、実施例1におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0120】
(比較例7)
タンク42に、非ニュートン流体として市販のケチャップを収容した以外は、比較例1と同様の方法によって、レオロジー特性値として粘性係数K、粘性指数n、及び降伏応力σ0を算出した。
【0121】
比較例7において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、比較例1と同様の方法によって、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0122】
図21に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図21に、比較例7におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0123】
(比較例8)
タンク42に、非ニュートン流体として市販のケチャップを収容した以外は、比較例2と同様の方法によって、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出した。
【0124】
比較例8において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、比較例2と同様の方法によって、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0125】
図22に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図22に、比較例8におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0126】
(比較例9)
タンク42に、非ニュートン流体として市販のケチャップを収容した以外は、比較例3と同様の方法によって、レオロジー特性値として粘性係数K及び粘性指数nを算出した。
【0127】
比較例9において算出されたレオロジー特性値の妥当性を、比較例3と同様の方法によって、せん断応力の実測値と、せん断応力の計算値とが精度よく対応するかを確認することで検証した。
【0128】
図23に、せん断速度γごとのせん断応力の実測値を、円形白抜きのプロットで示す。また、
図23に、比較例9におけるせん断速度γごとのせん断応力の計算値を、円形の塗りつぶされたプロットで示す。
【0129】
(レオロジー特性値の妥当性の評価)
実施例1乃至3及び比較例1乃至9において算出されたレオロジー特性値の妥当性を評価するために、実施例1乃至3及び比較例1乃至9のそれぞれにおいて算出された応力τとせん断速度γとの関係を表す式の、せん断速度γごとのせん断応力の実測値の近似式としての決定係数R2を算出した。決定係数R2の算出結果を、表1に示す。表1の各欄に記載の数値は、「非ニュートン流体の種類」に対応する非ニュートン流体について、「利用されているモデル」に対応するモデルが利用されてレオロジー特性値が算出された場合の、応力τとせん断速度γとの関係を表す式の決定係数R2である。表1の各欄に括弧付きで記載された「(実施例1)」、「(比較例1)」などの表記は、各欄に記載の決定係数R2が算出された実施例又は比較例を示している。
【0130】
【0131】
レオロジー特性値の妥当性の評価の結果、Herschel-Bulkleyモデル及びCassonモデルが利用された方法において、すなわち実施例1乃至3において、算出された決定係数R2は、レオロジー特性値の算出の対象とする非ニュートン流体の種類に関わらず、大きいことがわかった。特に、実施例1乃至3において算出された決定係数R2は、いずれも0.85より大きいことがわかった。これに対して、Herschel-Bulkleyモデルが利用され且つCassonモデルが利用されていない方法、べき乗則モデルが利用されている方法及びVocadloモデルが利用されている方法では、レオロジー特性値の算出の対象とする非ニュートン流体の種類によっては、決定係数R2が小さくなることがわかった。特に、Herschel-Bulkleyモデルが利用され且つCassonモデルが利用されていない方法、べき乗則モデルが利用されている方法及びVocadloモデルが利用されている方法では、ケチャップをレオロジー特性値の算出の対象とする場合に、いずれも決定係数R2が0.65より小さいことがわかった。また、Herschel-Bulkleyモデル及びCassonモデルが利用された方法においては、ケチャップをレオロジー特性値の算出の対象とする場合に、すなわち実施例3において、算出された決定係数R2が0.9409と特に大きくなることがわかった。
【0132】
また、ケチャップをレオロジー特性値の算出の対象とした実施例3及び比較例7乃至9においては、
図21乃至23に示すように、せん断速度γが小さな領域において、せん断速度γとせん断応力との関係を表すプロットを取得することができなかった。特に、実施例3及び比較例7乃至9においては、せん断速度γが10(1/秒)以下の領域において、せん断速度γとせん断応力との関係を表すプロットを取得することができなかった。
【0133】
レオロジー特性値の妥当性の評価の結果が上記のようになった理由、並びに実施例3及び比較例7乃至9において、せん断速度γが小さな領域においてせん断速度γとせん断応力との関係を表すプロットを取得することができなかった理由について検討するため、以下の追加の実験を行った。実施例1において上述した回転粘度計を用いて、実施例1において上述した方法によって、レオロジー特性値の算出の対象とした非ニュートン流体のそれぞれの物性を、さらに詳細に測定した。
【0134】
図24は、回転粘度計を用いて非ニュートン流体のそれぞれの物性を測定した測定結果を示している。
図24は、特に、非ニュートン流体のそれぞれにおけるせん断速度γとせん断応力との関係、及びせん断速度γと粘度μとの関係を測定した測定結果を示している。
図24の横軸は、せん断速度γ(1/秒)を示している。
図24の左側の縦軸は、せん断応力(Pa)を示している。
図24の右側の縦軸は、粘度μ(mPa・秒)を示している対数軸である。
図24の四角形の塗りつぶされたプロットは、グリロイド(登録商標)3Sにおけるせん断速度γとせん断応力との関係を示している。
図24の四角形白抜きのプロットは、グリロイド(登録商標)3Sにおけるせん断速度γと粘度μとの関係を示している。
図24の三角形の塗りつぶされたプロットは、キサンタンガムにおけるせん断速度γとせん断応力との関係を示している。
図24の三角形白抜きのプロットは、キサンタンガムにおけるせん断速度γと粘度μとの関係を示している。
図24の円形の塗りつぶされたプロットは、ケチャップにおけるせん断速度γとせん断応力との関係を示している。
図24の円形白抜きのプロットは、ケチャップにおけるせん断速度γと粘度μとの関係を示している。
【0135】
図24から、ケチャップは、レオロジー特性値の算出の対象とした非ニュートン流体の中でも、比較的に、せん断速度γの小さな領域においてもせん断応力が大きいことがわかった。また、ケチャップのせん断速度γは、せん断応力を0から上昇させていくと、せん断応力が一定値以下である間はあまり上昇しないが、せん断応力が一定値を超えると急激に上昇するような変化を示すことがわかった。このことから、ケチャップは、小さなせん断速度γで流れるように制御することが困難であることが理解できる。実施例3及び比較例7乃至9において、せん断速度γが小さな領域においてせん断速度γとせん断応力との関係を表すプロットを取得することができなかったのは、上記の通り、ケチャップを小さなせん断速度γで流れるように制御することが困難であったためと考えられる。
【0136】
また、グリロイド(登録商標)3Sは、一般に降伏応力σ
0が0とみなせる流体として知られている。このことは、
図24に示されたグリロイド(登録商標)3Sにおけるせん断速度γとせん断応力との関係において、せん断速度γが0付近のときにせん断応力が0付近となっていることからも理解できる。また、キサンタンガム及びケチャップは、一般に降伏応力σ
0が0ではない流体として知られている。このことは、
図24に示されたキサンタンガム及びケチャップにおけるせん断速度γとせん断応力との関係において、せん断速度γが0付近のときにせん断応力が0付近にはないことからも理解できる。
【0137】
ここで、Herschel-Bulkleyモデル及びCassonモデルが利用された実施例の方法においては、実施例3の結果の通り、上述の物性を有するケチャップにおいても、大きな決定係数R2が得られた。このことから、実施例の方法によれば、非ニュートン流体の物性のために配管20を流れる非ニュートン流体のせん断速度γを小さくすることが難しい場合であっても、レオロジー特性値の算出の精度を高くできることが確認された。また、この結果から、実施例の方法によれば、他の理由により配管20を流れる非ニュートン流体のせん断速度γを小さくすることが難しい場合であっても、レオロジー特性値の算出の精度を高くできることが類推された。また、Herschel-Bulkleyモデル及びCassonモデルが利用された実施例の方法においては、非ニュートン流体の種類に関わらず、決定係数R2が大きいことがわかった。このことから、実施例の方法によれば、多様な環境下において多様な非ニュートン流体のレオロジー特性値を算出する場合にも、安定的に高い精度でレオロジー特性値を算出できることが確認された。特に、グリロイド(登録商標)3Sのような降伏応力σ0が0とみなせる流体についても、キサンタンガム及びケチャップのような降伏応力σ0が0ではない流体についても、安定的に高い精度でレオロジー特性値を算出できることが確認された。
【0138】
なお、以上において上述した実施の形態に対するいくつかの変形例を説明してきたが、当然に、複数の変形例を適宜組み合わせて適用することも可能である。