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特開2024-18800アスファルト混合物の製造方法及び使用済ポリマー材の加熱温度設定方法
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  • 特開-アスファルト混合物の製造方法及び使用済ポリマー材の加熱温度設定方法 図1
  • 特開-アスファルト混合物の製造方法及び使用済ポリマー材の加熱温度設定方法 図2
  • 特開-アスファルト混合物の製造方法及び使用済ポリマー材の加熱温度設定方法 図3
  • 特開-アスファルト混合物の製造方法及び使用済ポリマー材の加熱温度設定方法 図4
  • 特開-アスファルト混合物の製造方法及び使用済ポリマー材の加熱温度設定方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018800
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】アスファルト混合物の製造方法及び使用済ポリマー材の加熱温度設定方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/20 20060101AFI20240201BHJP
   E01C 7/26 20060101ALI20240201BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240201BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08J3/20 Z CEP
C08J3/20 CER
C08J3/20 CEZ
E01C7/26
C08L101/00
C08L95/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122345
(22)【出願日】2022-07-29
(71)【出願人】
【識別番号】000183646
【氏名又は名称】出光興産株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(74)【代理人】
【識別番号】100224926
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 雄久
(72)【発明者】
【氏名】安藤 秀行
(72)【発明者】
【氏名】呉 悦樵
【テーマコード(参考)】
2D051
4F070
4J002
【Fターム(参考)】
2D051AD07
2D051AG01
2D051AG11
2D051AH02
4F070AA65
4F070AB09
4F070AB26
4F070AC29
4F070AE01
4F070FA03
4F070FA17
4F070FB06
4F070FC02
4J002AA00W
4J002AG00X
4J002GL00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】使用済ポリマー材を含むアスファルト混合物において、必要な品質を確保できる技術を提供する。
【解決手段】本開示のアスファルト混合物の製造方法は、容器に載せた少なくとも熱可塑性を有する使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に上記容器を反転して上記容器に対する上記使用済ポリマー材の付着性を評価した評価結果を取得し、評価結果に基づいて設定された上記使用済ポリマー材の加熱温度の上限温度以下の温度に加熱された上記使用済ポリマー材と、骨材およびアスファルト組成物を混合してアスファルト混合物を生成することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器に載せた少なくとも熱可塑性を有する使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に上記容器を反転記容器に対する上記使用済ポリマー材の付着性を評価した評価結果を取得し、
上記評価結果に基づいて設定された上記使用済ポリマー材の加熱温度の上限温度以下の温度に加熱された上記使用済ポリマー材と、骨材およびアスファルト組成物を混合してアスファルト混合物を生成すること
を特徴とするアスファルト混合物の製造方法。
【請求項2】
上記使用済ポリマー材を、100℃を超える温度で、加熱すること
を特徴とする請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項3】
上記評価結果は、
容器に載せた上記使用済ポリマー材の重量M1と、
上記使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に上記容器を反転したときに上記容器に付着した上記使用済ポリマー材の重量m1と、を測定し、
以下の数式(1)で示される付着率rに基づいて、上記使用済ポリマー材の付着性を評価した結果を含むこと
を特徴とする請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法。
r=(m1/M1)×100・・・(1)
【請求項4】
上記使用済ポリマー材は、エチレン酢酸ビニル及びポリエチレンテレフタレートの少なくとも何れかを含むこと
を特徴とする請求項1記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項5】
上記使用済ポリマー材は、太陽光パネル由来の廃材であること
を特徴とする請求項4記載のアスファルト混合物の製造方法。
【請求項6】
骨材と、熱可塑性を有する使用済ポリマー材と、アスファルト組成物と、を混合して生成されるアスファルト混合物を製造する際に、上記使用済ポリマー材を加熱するときの上限温度を設定する使用済ポリマー材の加熱温度設定方法であって、
容器に載せた上記使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に上記容器を反転して上記容器に対する上記使用済ポリマー材の付着性を評価する評価工程を有し、
上記評価した結果に基づいて、上記使用済ポリマー材の上限温度を設定すること
を特徴とする使用済ポリマー材の加熱温度設定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済ポリマー材を含むアスファルト混合物の製造方法及び使用済ポリマー材の加熱温度設定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路舗装に用いられるアスファルト混合物は、一般的に骨材とアスファルトで構成されている。また、これに加えて、過去にプラスチック材をアスファルト混合物に混入する技術が開示されている。
【0003】
特許文献1では、プラスチック成形材の破砕品を骨材の一部として使用する技術が開発されている。特許文献1の開示技術によれば、廃プラスチックを熱変形温度以上に加熱して軟化させ、骨材同士の空隙を埋めた舗装としている。
【0004】
特許文献2では、ガス管(PE:ポリエチレン)の廃材、あるいはPP(ポリプロピレン)やPS(ポリスチレン)の成形品のようなプラスチック材を破砕し、骨材の一部と代替してアスファルト混合物に配合する技術が開発されている。特許文献2の開示技術においても、プラスチック材を熱変形温度以上に加熱して軟化させて、骨材間の空隙を埋めている。
【0005】
特許文献3では、枝付き構造のプラスチック材をアスファルト混合物に配合する技術が開発されている。特許文献3の開示技術によれば、プラスチック材の形状を枝状にすることで、熱可塑性プラスチックの軟化に頼ることなく、アスファルト混合物中の骨材間隙に入り込み、舗設することができるとされている。
【0006】
これらの技術によれば、廃棄物の中でも処理が困難なプラスチック廃材(使用済ポリマー材とも言う)を有効に利用することができるとされている。
【0007】
一方、プラスチック廃材として排出される熱可塑性樹脂には、アスファルト混合物を作製する温度領域では十分に軟化せず、また枝付き構造のように特定の形状に加工することが難しいものがある。例えば、太陽光パネルを構成するバックシートや封止材に用いられるような熱可塑性プラスチックである。これらのプラスチックは、強度や耐用年数の向上を目的に架橋率を高めており、熱変形温度が高くなっている。このため、通常のアスファルト混合物製造時の加熱温度では、骨材間空隙を埋められるほど十分に軟化しない。一方、上記の温度においてわずかに軟化することもあり、この場合プラスチック同士が結合してしまい、アスファルト混合物中に均一に分散させることができなくなる。また太陽光パネル由来の廃プラスチックは、供用時の形状がシート状であることから、枝付き構造を持たせるような破砕・加工が難しい。したがって、このような樹脂を用いて従来のプラスチック材入りアスファルト混合物の作製方法に従うと、プラスチックが骨材の隙間を埋めることができず、アスファルト混合物の強度や耐久性などの所望の品質を確保が難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平6-193007号公報
【特許文献2】特開平10-88000号公報
【特許文献3】特開2001-335694号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで、本開示は上述した点に鑑みて案出したものであり、その目的とするところは、使用済ポリマー材を含むアスファルト混合物において、必要な品質を確保できる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一態様によれば、容器に載せた少なくとも熱可塑性を有する使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に上記容器を反転して上記容器に対する上記使用済ポリマー材の付着性を評価した評価結果を取得し、上記評価結果に基づいて設定された上記使用済ポリマー材の加熱温度の上限温度以下の温度に加熱された上記使用済ポリマー材と、骨材およびアスファルト組成物を混合してアスファルト混合物を生成することを特徴とするアスファルト混合物に関する技術を提供することができる。
【発明の効果】
【0011】
本開示によれば、使用済ポリマー材を含むアスファルト混合物において、必要な品質を確保できる技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態において好適に用いられるアスファルト混合物の製造システムの一例を示す概略図である。
図2】本実施形態において好適に用いられるアスファルト混合物の製造方法の一例を示す図である。
図3】本実施形態において評価工程を説明するための図であり、図3(a)は、プラスチック材を載せた容器の一例を示す図であり、図3(b)は、加熱後に反転させた容器の一例を示す図である。
図4図4は、トレイを反転した後の供試体を示す写真であり、図4(a)は、供試体No.2を示す写真であり、図4(b)は、供試体No.3の写真である。
図5図5は、トレイを反転した後の供試体を示す写真であり、図5(a)は、供試体No.4の写真であり、図5(b)は、供試体No.5を示す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、アスファルト混合物の製造方法および使用済ポリマー材の加熱温度設定方法の実施の形態について詳細に説明する。
【0014】
本実施形態におけるアスファルト混合物は、骨材と、使用済ポリマー材と、アスファルト組成物とを混合して生成される。以下、各構成について説明する。
【0015】
(アスファルト組成物)
アスファルト組成物は、例えばストレートアスファルト、プロパン脱れきアスファルト等の溶剤脱れきアスファルト、溶剤脱れき油、ブローンアスファルト、セミブローンアスファルト、さらにSBS(スチレンーブタジエンースチレン共重合体)、EEA(エチレンエチルアクリレート)等を添加し補強した改質アスファルト等のアスファルトがそれぞれ、または、組み合わせて適宜用いられる。
【0016】
本実施形態におけるアスファルト混合物全体に対するアスファルト組成物の含有量は、必要に応じて所定量含まれるが、例えば3.0重量%以上9.5重量%以下であることが好ましい。3.0重量%以上とすることで、アスファルトが骨材を十分に把握することが可能となり、石飛びなどにより舗装の早期損傷が発生することを回避可能となる。また、9.5重量%以下とすることで、骨材と比して軟質なアスファルトが過剰となることを抑制でき、交通荷重によるわだち掘れの発生を回避することが可能となる。
【0017】
(ストレートアスファルト)
ストレートアスファルトは、JIS K 2207に定められるアスファルト又はこれらの混合物を使用することができる。本実施形態においてこのストレートアスファルトは針入度グレード40~60から200~300相当品まで使用することができる。
【0018】
(溶剤脱れき油)
溶剤脱れき油は、減圧蒸留残油を溶剤を用いて抽出した留分(高粘度潤滑油留分)に相当する(「第2版 石油辞典」,石油学会編,2005年,p.542 参照)。溶剤としてプロパン、またはプロパンとブタンを用いる場合がある。
【0019】
(溶剤脱れきアスファルト)
溶剤脱れきアスファルトは、減圧蒸留残油から溶剤脱れき油(高粘度潤滑油留分)を抽出した残渣分に相当する(「第2版 石油辞典」,石油学会編,2005年,p.542 参照)。特に溶剤としてプロパン、またはプロパンとブタンを用いた場合に、プロパン脱れきアスファルトと呼ぶ。
【0020】
(ブローンアスファルト)
ブローンアスファルトは、例えば、JIS K 2207に定められるアスファルトである。
【0021】
(セミブローンアスファルト)
セミブローンアスファルトは、例えば、「舗装設計施工指針(平成18年度版)」,社団法人日本道路協会発行,平成18年2月24日,p.223,付表-8.1.12に定められるセミブローンアスファルトである。
【0022】
(骨材)
骨材は、石、砂、粉砕石灰石等のフィラーを含む。骨材は、2.36mmふるいに留まる粗骨材と、2.36mmふるいを通過する細骨材と、75μmふるいを通過するフィラーを含む。一般にアスファルト混合物に混合されるものとして用いられるものであればよい。
【0023】
(使用済ポリマー材)
使用済ポリマー材は、熱可塑性を有する。熱可塑性樹脂(プラスチック材)または熱可塑性エラストマーなどの熱可塑性ポリマーであって、アスファルト混合物に混合されて骨材の代替材料として用いられる。このため、使用済ポリマー材は骨材と同程度の粒度を有することが好ましい。使用済みポリマーがプラスチック材の場合は、エチレン酢酸ビニル及びポリエチレンテレフタレートの少なくとも何れかを含むことが好ましい。使用済ポリマー材は、例えば太陽光パネル由来の廃材である。使用済ポリマー材は、例えば太陽光パネルのバックシートや封止材由来の廃材である。
【0024】
アスファルト混合物に含まれる使用済ポリマー材の重量比は、0.1~3.0%である。使用済ポリマー材は、骨材と比べて柔らかいため、骨材の代替として混合物に配合する際、その重量比が大きすぎると混合物の強度が低下するなど、所望の性能が得られなくなる可能性がある。このため、アスファルト混合物に含まれる使用済ポリマー材の重量比は、0.1~3.0%であることが好ましい。アスファルト混合物中の使用済みポリマー剤の重量比の範囲は、より好ましくは0.1~1.0%である。
【0025】
上述した成分組成で構成されるアスファルト混合物は、例えば、道路舗装の所定基面上に舗設される。
【0026】
(アスファルト混合物の製造システム100)
図1に示すように、上述した成分組成で構成されるアスファルト混合物の製造システム100は、主に、骨材加熱容器101と、使用済ポリマー材加熱容器102と、アスファルト加熱容器103と、第1混合装置104と、第2混合装置105と、制御装置106と、を備える。
【0027】
骨材加熱容器101は、所定の温度(例えば175℃)で骨材を加熱できる。
【0028】
使用済ポリマー材加熱容器102は、所定の温度(例えば140℃)で使用済ポリマー材を加熱できる。
【0029】
アスファルト加熱容器103は、所定の温度(例えば155℃)でアスファルトを加熱できる。
【0030】
第1混合装置104は、加熱した骨材と加熱した使用済ポリマー材とを混合する。第1混合装置104は、骨材加熱容器101と使用済ポリマー材加熱容器102に接続されてもよい。
【0031】
第2混合装置105は、混合した骨材と使用済ポリマー材とに、加熱したアスファルトを混合してアスファルト混合物を生成する。第2混合装置105は、アスファルト加熱容器103と、第1混合装置104とに接続されてもよい。
【0032】
制御装置108は、骨材加熱容器101と、使用済ポリマー材加熱容器102と、アスファルト加熱容器103と、第1混合装置104と、第2混合装置105と、を制御する。
【0033】
制御装置108は、各種材料の温度管理や供給量などを制御する装置であり、有線または無線などによって、電気的に骨材加熱容器101と、使用済ポリマー材加熱容器102と、アスファルト加熱容器103と、第1混合装置104と、第2混合装置105と、相互に接続されている。
【0034】
また、制御装置108は、所定パラメータを記憶するHDD,CDなどの記憶装置(記憶部)110と、各パラメータを読み出して対象装置を制御する処理を行うCPUなどの処理装置(処理部)109と、各パラメータや必要データの入力や必要処理を実施させる信号を入力するためのUI等用いた入力装置(入力部)111を少なくとも有している。また、図示しないディスプレイやプリンターなどの出力装置を有していても良い。なお、処理装置109、記憶装置110、入力装置111のそれぞれは相互に電気的に接続されている。
【0035】
次に、上述した成分組成で構成されるアスファルト混合物の製造方法について図2を用いて説明する。
【0036】
(骨材加熱工程:S101)
骨材加熱工程S101では、骨材加熱容器101は、骨材を175℃で加熱する。
【0037】
(設定工程:S102)
設定工程S102では、容器に載せた使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に容器を反転して容器に対する使用済ポリマー材の付着性を評価した評価結果を取得し、取得した評価結果に基づいて使用済ポリマー材を加熱するときの上限温度を設定する。設定工程S102は、評価工程S1021を有する。使用済ポリマー材は、熱可塑性を有するため、加熱温度が高すぎる場合には、使用済ポリマー材が一部溶け出して、使用済ポリマー材の熱可塑性成分同士が接着して、だまになるおそれがある。これを抑制するため、適正に加熱の上限温度を設定することが必要となる。またポリマーを高温に加熱すると、熱分解等の変性が起きる恐れがあるため、加熱温度上限は200℃以下が好ましく、更に好ましくは骨材の加熱温度と等しくするのが良い。
【0038】
評価工程S1021では、容器に載せた使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に容器を反転して容器に対する使用済ポリマー材の付着性を評価する。
【0039】
評価工程S1021では、図3(a)に示すように、容器8に載せた使用済ポリマー材の重量M1を測定する。容器8の形状としては、例えばバットのような平たい容器が用いられることが好ましい。具体的には容器8として皿状、板材状のものが用いられてよい。容器8の材料としては、容器の材料としては、加熱温度に耐えられる物であればよく、例えばアルミ、ステンレス等の金属、または金属で表面被覆された物が好ましい。容器8の重量M2とする。
【0040】
評価工程S1021は、使用済ポリマー材を載せた容器8を恒温槽にて、1時間、所定の温度で加熱する。そして、図3(b)に示すように、評価工程S1021は、容器8を反転する。加熱温度が高すぎる場合、容器8を反転したとしても、使用済ポリマー材の一部が溶けて容器8に付着したり、使用済ポリマー材同士が接着してしまい、落下しないことがある。加熱温度が適正である場合には、容器8を反転したとき、容器8に使用済ポリマー材が付着せずに落下する。したがって、使用済ポリマー材の付着性を評価することで、加熱温度が適正か否かを把握することができる。
【0041】
評価工程S1021では、使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に容器8を反転したときに容器8に付着した使用済ポリマー材の重量m1を測定する。ここで、容器8を反転した後の容器8の重量M3とする。容器8に付着した使用済ポリマー材の重量m1=(重量M3-重量M2)となる。評価工程S1021では、重量M1と重量m1とに基づいて、使用済ポリマー材の付着性を評価してもよい。
【0042】
そして、評価工程S1021では、付着率rをr=(m1/M1)×100としたとき、付着率rに基づいて、使用済ポリマー材の付着性を評価する。付着率rには予め閾値を設定しておく。例えば閾値を10%と設定したとき、付着率rが10%以下の場合、付着性が低く、使用可能と評価し、付着率rが10%を超える場合、付着性が高く、使用不可と評価する。このような範囲とすることで、加熱時に保存容器に付着してしまうことによってミキサーに投入できなくなってしまうことを回避することが可能となる。付着率としては好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、なおより好ましくは1%以下である。
【0043】
このように、評価結果は、容器8に載せた使用済ポリマー材の重量M1と、使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に容器8を反転したときに容器8に付着した使用済ポリマー材の重量m1と、を測定し、数式r=(m1/M1)×100で示される付着率rに基づいて、使用済ポリマー材の付着性を評価した結果を含む。評価結果は、使用済みポリマー材を加熱したときの加熱温度と、当該加熱温度で加熱した使用済ポリマー材の使用の可否との関係を含む。
【0044】
容器8を反転したときの容器8に対する使用済ポリマー材の付着の有無については、例えば目視により評価することもできる。例えば使用済ポリマー材が容器8に付着していない場合、使用済ポリマー材の付着性が低く、使用可能と評価できる。例えば使用済ポリマー材が容器8に大量に付着していた場合、使用済ポリマー材の付着性が高く、使用不可と評価できる。
【0045】
評価工程S1021では、恒温槽で加熱する温度を変えて、同様の測定を行う。
【0046】
設定工程S102では、評価した結果に基づいて、使用済ポリマー材を加熱する上限温度を設定する。設定工程S102では、付着性が低い(又は使用可能)と評価された使用済ポリマー材の加熱温度を、上限温度として設定することができる。予め使用済ポリマー材の付着性が評価されている場合には、設定工程S102では、評価結果を取得し、取得した評価結果に基づいて上限温度を設定してもよい。
【0047】
(使用済ポリマー材加熱工程:S103)
使用済ポリマー材加熱工程S103は、設定工程S102で設定した上限温度以下の温度で、使用済ポリマー材を使用済ポリマー材加熱容器102により加熱する。これにより、使用済ポリマー材が溶け出すのを防止することができる。このため、使用済ポリマー材がだまになるのを抑制でき、骨材やアスファルトと十分に混合することができる。また、アスファルトと混合したときのアスファルトの温度低下を抑制できる。
【0048】
使用済ポリマー材加熱工程S103は、100℃を超える温度で、使用済ポリマー材を加熱してもよい。これにより、使用済ポリマー材に含まれる水分を除去することができる。このため、アスファルト混合物を生成した際に、アスファルト混合物の割れ等を抑制することができる。
【0049】
(混合工程:S104)
混合工程S104は、骨材と使用済ポリマー材とを、第1混合装置104により30秒~1分間程度、ドライミキシングにて混合する。
【0050】
(生成工程:S105)
生成工程S105は、混合工程S104により混合した骨材と使用済ポリマー材とに、アスファルト加熱容器103により加熱されたアスファルトを混合してアスファルト混合物を生成する。生成工程S105は、骨材と使用済ポリマー材とアスファルトとを第2混合装置105により、155℃程度の温度で1分~2分間程度、ウェットミキシングにより混合してアスファルト混合物を生成する。
【0051】
その後、アスファルト混合物が高温の状態で、所定の形状に成型し、冷却させることでアスファルト混合物が完成する。
【0052】
本実施形態におけるアスファルト混合物の製造方法によれば、設定工程は、容器8に載せた使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に容器8を反転して容器8に対する使用済ポリマー材の付着性を評価した評価結果を取得し、取得した評価結果に基づいて、使用済ポリマー材の上限温度を設定する。これにより、使用済ポリマー材を加熱したとき、使用済ポリマー材が一部溶け出すのを防止し、使用済ポリマー材の熱可塑性成分同士が接着して、だまになるのを防止できる。また、アスファルトと混合した際に、アスファルトの温度低下を抑制することができる。このため、アスファルト混合物の品質を確保することが可能となる。ただし使用済ポリマー材の加熱上限温度は200℃以下、好ましくは骨材の加熱温度と等しくするのがよい。
【0053】
本実施形態におけるアスファルト混合物の製造方法によれば、使用済ポリマー材を、100℃を超える温度で、加熱する。これにより、使用済ポリマー材の水分を除去することができる。このため、アスファルト混合物の割れを防止することが可能となる。
【0054】
本実施形態におけるアスファルト混合物の製造方法によれば、アスファルト混合物に含まれる使用済ポリマー材の重量比は、0.1~3.0%である。使用済みポリマー材は、骨材と比べて柔らかいため、骨材の代替として混合物に配合する際、その重量比が大きすぎると混合物の強度が低下するなど、所望の性能が得られなくなる可能性がある。アスファルト混合物中の使用済みポリマー材の重量比の範囲は、好ましくは0.1~1.0%である。
【0055】
本実施形態におけるアスファルト混合物の製造方法によれば、評価結果は、容器8に載せた使用済ポリマー材の重量M1と、使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に容器8を反転したときに容器8に付着した使用済ポリマー材の重量m1と、を測定し、以下の数式(1)で示される付着率rに基づいて、上記使用済ポリマー材の付着性を評価した結果を含む。
【0056】
r=(m1/M1)×100・・・(1)
【0057】
これにより、使用済ポリマー材の付着性を定量的に評価できる。このため、上限温度の設定をより高い精度で行うことができる。
【0058】
本実施形態におけるアスファルト混合物の製造方法によれば、使用済ポリマー材は、エチレン酢酸ビニル及びポリエチレンテレフタレートの少なくとも何れかを含む。これにより、100℃を超える温度を上限温度として設定することができる。このため、使用済ポリマー材を加熱したとき、水分を除去することができ、品質のより高いアスファルト混合物を生成できる。
【0059】
本実施形態におけるアスファルト混合物の製造方法によれば、使用済ポリマー材は、太陽光パネル由来の廃材である。これにより、使用済ポリマー、主に廃プラスチック材をアスファルト混合物に再利用することができる。このため、環境負荷を低減できる。
【0060】
本実施形態におけるプラスチック材の加熱温度設定方法によれば、容器8に載せた使用済ポリマー材を所定の温度で加熱した後に容器8を反転して容器8に対する使用済ポリマー材の付着性を評価する評価工程を有し、評価した結果に基づいて、使用済ポリマー材の上限温度を設定する。これにより、使用済ポリマー材を加熱したとき、使用済ポリマー材が一部溶け出すのを防止し、使用済ポリマー材の熱可塑性成分同士が接着して、だまになるのを防止できる。このため、アスファルト混合物の品質を確保することが可能となる。
【実施例0061】
実施例では、使用済ポリマー材の種類を変えて、加熱温度に応じた使用済ポリマー材の付着性を評価した。
【0062】
使用済ポリマー材は、全て太陽光パネル由来の廃材であるプラスチック材を用いた。プラスチック材は、2種類(プラスチック材Aを表1中「A」と表記し、プラスチック材Bを「B」と表記する。表2においても同様)用いた。プラスチック材Aは、EVA(エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂)とPET(ポリエチレンテレフタレート)を主成分とするもので、EVAが約70%、PETが約20%で構成されており、残りの約10%はその他ポリマーや無機物である。プラスチック材Bは、EVAとPETを主成分とするもので、EVAが約50%、PETが約30%で構成されており、残りの約20%はその他ポリマーや無機物である。プラスチック材Aとプラスチック材Bは、由来となった太陽光パネルの製造元が異なる。
【0063】
プラスチック材の付着性を評価する際には、表面にアルミホイルが巻かれた金属製のトレイにプラスチック材を載せ、恒温槽にて1時間、所定の温度で加熱した。
【0064】
トレイに載せたプラスチック材の重量M1と、プラスチック材を所定の温度で加熱した後に容器8を反転したときに容器8に付着したプラスチック材の重量m1を測定した。容器8の重量M2とし、容器8を反転した後の容器8の重量M3としたとき、容器8に付着したプラスチック材の重量m1=(重量M3-重量M2)となる。付着率rは、以下の数式(1)とした。
【0065】
r=(m1/M1)×100・・・(1)
【0066】
本実施例では、プラスチック材の付着性を、目視と、付着率rと、により評価した。目視によりプラスチック材が明らかに付着していないものは、付着性が無いと評価し、表1中の判定「〇」と表記する。目視によりプラスチック材が大量に付着しているものは、付着性が高いと評価し、表1中の判定「×」と表記する。目視によりほぼ無しと評価したものについては、付着率rにより評価した。付着率rが10%以下の場合、付着性が低いと評価し、表1中の判定「〇」と表記する。付着率rが10%を超える場合、付着性が高いと評価し、表1中の判定「×」と表記する。表1に、結果を示す。
【0067】
【表1】
【0068】
プラスチック材Aを100℃で加熱した供試体No.1では、表1に示すように、トレイへのプラスチック材の付着は全く無く、判定が「○」であった。
【0069】
図4(a)は、供試体No.2の写真である。プラスチック材Aを175℃で加熱した供試体No.2では、図4(a)に示すように、トレイへのプラスチック材の付着はほぼ無しとなった。表1の付着率の結果から、供試体No.2では、判定が「○」であった。
【0070】
以上から、プラスチック材Aの上限温度としては、175℃以下で設定することができる。
【0071】
図4(b)は、供試体No.3の写真を示す。プラスチック材Bを140℃で加熱した供試体No.3では、図4(b)に示すように、トレイへのプラスチック材の付着はほぼ無しとなった。表1の付着率の結果から、供試体No.3では、判定が「○」であった。
【0072】
図5(a)は、供試体No.4の写真を示す。プラスチック材Bを150℃で加熱した供試体No.4では、図5(a)に示すように、トレイへのプラスチック材の付着はほぼ無しとなった。表1の付着率の結果から、供試体No.4では、判定が「○」であった。
【0073】
図5(b)は、供試体No.5の写真を示す。プラスチック材Bを175℃で加熱した供試体No.5では、図5(b)に示すように、トレイへのプラスチック材の付着は有りとなり、判定が「×」であった。
【0074】
以上から、プラスチック材Bの上限温度としては、150℃以下で設定することができる。
【0075】
プラスチック材は、熱可塑性を有するため、加熱温度が高すぎる場合には、プラスチック材が一部溶け出して、プラスチック材同士が接着して、だまになるおそれがある。プラスチック材の付着性を評価することで、プラスチック材の加熱温度の上限温度を適切に設定することができる。
【0076】
次に、アスファルト混合物の供試体を、舗装設計施工指針(平成18年度版),社団法人日本道路協会発行,平成18年2月24日に記載の「密粒度アスファルト混合物13」を参照して作成した。アスファルト混合物の品質を、「舗装調査・試験法便覧(平成31年度版)〔第3分冊〕」,公益社団法人日本道路協会発行,平成31年3月29日,p.5に定められるマーシャル安定度試験によって得られた標準安定度を用いて8.00以上を基準値として評価した。
【0077】
アスファルト混合物の供試体の作成方法について説明する。作成にあたり、先ず175℃で5時間以上骨材を加熱した。骨材を加熱することで、骨材中の水分を除去するとともに、混合するアスファルトの温度低下を抑制できる。
【0078】
また、所定の温度で5時間以上、プラスチック材を加熱した。プラスチック材を加熱することで、プラスチック材中の水分を除去するとともに、混合するアスファルトの温度低下を抑制できる。実施例1~4の供試体は、上記したプラスチック材の付着性の評価結果に基づいて、設定した上限温度以下の温度で加熱したものである。比較例1の供試体は、上限温度よりも高い温度で加熱したものである。
【0079】
加熱した骨材とプラスチック材とをミキサーによりドライミキシングにて30秒程度混合した。その後、155℃に加熱されたアスファルトを、ミキサーに投入し、ウェットミキシングにて1分間程度、混合した。そして、所定の形状に成型したアスファルト混合物の供試体を作成した。
【0080】
表2に、結果を示す。
【0081】
【表2】
【0082】
実施例1~4は、設定した上限温度以下の温度でプラスチック材を加熱したものである。これにより、実施例1~4では、標準安定度が基準の範囲内となるため、品質を確保することができる。
【0083】
これに対し、比較例1では、設定した上限温度よりも高い温度で加熱したものである。これにより、比較例1では、標準安定度が低下した。また基準値を満たしておらず、舗装の早期損傷が懸念され、品質を確保することができない。
【符号の説明】
【0084】
100 :アスファルト製造システム
101 :骨材加熱容器
102 :使用済ポリマー材加熱容器
103 :アスファルト加熱容器
104 :第1混合装置
105 :第2混合装置
108 :制御装置
109 :処理装置
110 :記憶装置
111 :入力装置
図1
図2
図3
図4
図5