(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018916
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】吸収体、液体受け部及び液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240201BHJP
B41J 2/165 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B41J2/17 207
B41J2/165 207
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023051909
(22)【出願日】2023-03-28
(31)【優先権主張番号】P 2022122064
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】児玉 裕美
(72)【発明者】
【氏名】石嶋 有希子
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EA27
2C056JA01
2C056JC11
2C056JC23
(57)【要約】
【課題】吸収体の交換などを行う際のメンテンナンス性を向上できる吸収体を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッドから吐出された液体を吸収する吸収体811であって、3層以上を積層させてなり、最上層801及び最下層802は、不織布であるとともに、積層方向に当該層を貫通する貫通孔を有し、内層820は、前記最上層及び前記最下層よりも液体吸収力が高い多孔質構造を有することを特徴とする。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドから吐出された液体を吸収する吸収体であって、
3層以上を積層させてなり、
最上層及び最下層は、不織布であるとともに、積層方向に当該層を貫通する貫通孔を有し、
内層は、前記最上層及び前記最下層よりも液体吸収力が高い多孔質構造を有する
ことを特徴とする吸収体。
【請求項2】
画像形成に寄与しない液体を吸収する
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項3】
前記内層は、天然セルロース繊維を含む乾式不織布ウエブ又は乾式不織布マットであり、見かけ密度が0.08g/cm3以上0.50g/cm3以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項4】
前記最上層及び前記最下層の厚みは、0.3mm以上0.8mm以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項5】
前記内層の厚みは、4.5mm以上である
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項6】
前記内層は、エアレイド不織布である
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項7】
前記内層は、前記最上層側の表面及び前記最下層側の表面に穴が設けられており、
前記穴は、前記内層を貫通せず、内層の厚みに対して1/3以下の深さである
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項8】
前記内層における前記最上層側の表面に設けられた前記穴は、前記最上層が有する前記貫通孔と同一の位置に設けられており、
前記内層における前記最下層側の表面に設けられた前記穴は、前記最下層が有する前記貫通孔と同一の位置に設けられている
ことを特徴とする請求項7に記載の吸収体。
【請求項9】
前記最上層が有する貫通孔は、積層方向の上側から見た場合の開孔率が10%以上70%以下であり、
前記最下層が有する貫通孔は、積層方向の下側から見た場合の開孔率が10%以上70%以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項10】
前記最上層が有する貫通孔は、積層方向の上側から見た場合の直径が1.5mm以下、又は、積層方向の上側から見た場合の面積が1.766mm2以下であり、
前記最下層が有する貫通孔は、積層方向の下側から見た場合の直径が1.5mm以下、又は、積層方向の下側から見た場合の面積が1.766mm2以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
【請求項11】
前記最上層が有する貫通孔は、積層方向の上側から見た場合の直径が0.5mm以上1.5mm以下、又は、積層方向の上側から見た場合の面積が0.196mm2以上1.766mm2以下であり、
前記最下層が有する貫通孔は、積層方向の下側から見た場合の直径が0.5mm以上1.5mm以下、又は、積層方向の下側から見た場合の面積が0.196mm2以上1.766mm2以下である
ことを特徴とする請求項10に記載の吸収体。
【請求項12】
前記内層において、前記最上層に接する層を第1の内層とし、前記最下層に接する層を第2の内層としたとき、
前記最上層と前記第1の内層とが、熱融着性物質により接着ないし固着されており、
前記最下層と前記第2の内層とが、熱融着性物質により接着ないし固着されている
ことを特徴とする請求項1に記載の吸収体。
ただし、前記第1の内層と前記第2の内層は、同一の層であってもよい。
【請求項13】
請求項1~12のいずれかに記載の吸収体を有し、前記吸収体は分割されている
ことを特徴とする液体受け部。
【請求項14】
請求項1~12のいずれかに記載の吸収体と、
前記最下層の下部に前記最下層と接するように設けられたホルダー部材と、
前記吸収体及び前記ホルダー部材を収容する収容容器と、を有し、
前記吸収体は、分割されており、
前記吸収体及び前記ホルダー部材が共に前記収容容器に収容された状態で前記液体を吸収する
ことを特徴とする液体受け部。
【請求項15】
請求項1~12のいずれかに記載の吸収体と、
前記最下層の下部に前記最下層と接するように設けられたホルダー部材と、を有し、
前記ホルダー部材は、金属からなり、防さび加工がされているとともに、前記吸収体の側面から前記吸収体を固定する爪を有する
ことを特徴とする液体受け部。
【請求項16】
請求項1~12のいずれかに記載の吸収体と、
液体を吐出する液体吐出手段と、を有する
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項17】
前記吸収体は、前記液体吐出手段のメンテナンスによって排出される液体を吸収する
ことを特徴とする請求項16に記載の液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収体、液体受け部及び液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置としての例えば印刷装置においては、液体吐出ヘッドのメンテナンスとして、印刷に寄与しない液体を吐出する空吐出(フラッシング、パージなどと称される動作を含む)を、吸収部材を配置した空吐出受けに対して行うようにしている。
【0003】
近年、インクの高粘度化により、フラッシング滴を吸収する吸収体上にインクが堆積してしまう問題が生じている。堆積したインクに起因して、記録媒体が汚れてしまう。そこで、吸収体の吸収能力向上のため、吸収体に空隙を設ける、融着度の異なる吸収体から成る積層構造を設ける、などの技術が提案されている(例えば特許文献1~3)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、吸収体の最上層でインクが乾燥してインクが堆積することを防ぐため、吸収体の最下層へインクの浸透を促進するものであった。そのため、吸収体の最下層までインクが到達し、吸収体を収容する収容容器が汚れてしまい、吸収体を交換するなどのメンテナンス時に、手や他の部材が汚れるなどの問題が生じていた。また、手や他の部材が汚れないようにするため、慎重に作業を行う必要があり、作業効率が低くなっていた。このように、従来では、吸収体を交換するなどのメンテナンス時に手や他の部材が汚れにくく、作業効率を向上させるといったメンテナンス性の向上が求められている。
【0005】
そこで本発明は、吸収体の交換などを行う際のメンテンナンス性を向上できる吸収体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の吸収体は、液体吐出ヘッドから吐出された液体を吸収する吸収体であって、3層以上を積層させてなり、最上層及び最下層は、不織布であるとともに、積層方向に当該層を貫通する貫通孔を有し、内層は、前記最上層及び前記最下層よりも液体吸収力が高い多孔質構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、吸収体の交換などを行う際のメンテンナンス性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の一例の概略構成図である。
【
図2】同印刷装置の印刷手段の部分の平面説明図である。
【
図4】吸収体の一例を示す断面概略図(A)及び(B)である。
【
図5A】内層の厚みを変えた場合の一例を説明する断面概略図(a)及び(b)である。
【
図5B】内層の厚みを変えた場合の一例を説明する断面概略図(a)及び(b)である。
【
図6A】最上層及び最下層の厚みを変えた場合の一例を説明する断面概略図(a)~(c)である。
【
図6B】最上層及び最下層の厚みを変えた場合の一例を説明する断面概略図(a)~(c)である。
【
図7】内層に設けられた穴の一例を説明する断面概略図(a)及び(b)である。
【
図8A】内層に設けられた穴の深さを変えた場合の一例を説明する断面概略図(a)~(c)である。
【
図8B】内層に設けられた穴の深さを変えた場合の一例を説明する断面概略図(a)~(c)である。
【
図9A】貫通孔の開孔率を変えた場合の一例を説明する断面概略図(a)~(c)である。
【
図9B】貫通孔の開孔率を変えた場合の一例を説明する断面概略図(a)~(c)である。
【
図10A】内層に設けられた穴の大きさを変えた場合の一例を説明する断面概略図(a)~(c)である。
【
図10B】内層に設けられた穴の大きさを変えた場合の一例を説明する断面概略図(a)~(c)である。
【
図11】貫通孔及び穴の配置の一例を説明する平面概略図(a)~(c)である
【
図12】液体受け部の一例を説明する斜視概略図(a)及び(b)である。
【
図13】ホルダー部材の一例を説明する斜視概略図である。
【
図14】本発明に係る液体受け部の一例を説明する断面概略図である。
【
図15】吸収体の交換の例を説明する斜視概略図である。
【
図16】吸収体の配置例を示す平面概略図(a)及び側面概略図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る吸収体、液体受け部及び液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0010】
本発明の吸収体は、液体吐出ヘッドから吐出された液体を吸収する吸収体であって、3層以上を積層させてなり、最上層及び最下層は、不織布であるとともに、積層方向に当該層を貫通する貫通孔を有し、内層は、前記最上層及び前記最下層よりも液体吸収力が高い多孔質構造を有することを特徴とする。本発明によれば、吸収体の交換などを行う際のメンテンナンス性を向上できる。本発明の吸収体は、液体吸収体、インク吸収体、廃インク吸収体などと称されてもよい。本発明の吸収体は、画像形成に寄与しない液体を吸収することが好ましい。
【0011】
本発明に係る液体を吐出する装置としての印刷装置の一例について
図1ないし
図3を参照して説明する。
図1は同印刷装置の一例の概略構成図、
図2は同印刷装置の印刷手段の部分の平面説明図、
図3は同じく印刷手段の部分の側面説明図である。
【0012】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続紙などのシート材510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入されたシート材510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、シート材510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、シート材510を乾燥する乾燥手段507と、シート材510を搬出する搬出手段509などを備えている。
【0013】
シート材510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0014】
このシート材510は、印刷手段505において、ヘッドユニット550及びヘッドユニット555に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が形成される。ヘッドユニット555から吐出される処理液で後処理が行われてもよい。
【0015】
ここで、ヘッドユニット550には、例えば、搬送方向上流側から4色分のフルライン型ヘッドアレイ551(551A、551B、551C、551D)が配置されている。
【0016】
各ヘッドアレイ551は、液体吐出手段であり、それぞれ、搬送されるシート材510に対して、例えば、ブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0017】
ヘッドアレイ551は、例えば、液体を吐出する複数のノズル104を千鳥状に2列配列した液体吐出ヘッド(これを、単に「ヘッド」ともいう。)100をベース部材552上に千鳥状に並べて配置したものであるが、これに限らない。
【0018】
ヘッドアレイ551の間には、ヘッド100のメンテナンスを行うためのメンテナンスユニット561(561A~561D)が配置されている。メンテナンスユニット561は、ヘッド100のノズル面101aをキャッピングするキャップ563などを備えている。
【0019】
メンテナンスユニット561は
図3の矢印方向に往復移動可能に配置され、ヘッドアレイ551は上下方向に昇降可能に配置され、キャッピングを行うときにはヘッドアレイ551が上昇して、メンテナンスユニット561がヘッド100の下方に移動する。そして、ヘッドアレイ551が下降してヘッド100のノズル面101aがキャップ563でキャッピングされる。
【0020】
また、ヘッドアレイ551の下方には、ヘッド100のノズル104から吐出される空吐出滴を受ける空吐出受け800が配置されている。
【0021】
空吐出受け800は、本発明の液体受け部の一例である。本発明の液体受け部は、本発明の吸収体を有している。本発明の吸収体は、液体吐出ヘッドから吐出された液体を吸収する場合に好適に用いられる。液体吐出ヘッドから吐出される液体は、画像形成に寄与する液体の他、画像形成に寄与しない液体が挙げられ、本発明の吸収体は、画像形成に寄与しない液体を吸収する場合に好適に用いられる。例えば、本発明の吸収体は、ヘッド100のノズル104から吐出される空吐出滴を受けて、空吐出された液体を吸収する。画像形成に寄与しない液体を吐出することを空吐出とも称し、空吐出は、フラッシング、パージなどと称される動作を含む。
【0022】
また、本発明の吸収体は、液体吐出ヘッドから吐出された液体を吸収する場合に限られず、印刷装置から発生する廃インク全般を吸収することができる。本発明の吸収体は、インクジェット方式の画像形成装置の廃インクの吸収に好適であるが、その使用用途は、インクジェット方式の画像形成装置に限られない。なお、画像形成に寄与しない液体を廃インクとも称する。また、液体としては、例えばインクが挙げられる。
【0023】
また、「液体」は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。 より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、上述のインクジェット用インクの他、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0024】
次に、本発明の吸収体について、例を挙げつつ説明する。
本発明の吸収体は、3層以上を積層させてなり、最上層及び最下層は、不織布であるとともに、積層方向に当該層を貫通する貫通孔を有し、内層は、前記最上層及び前記最下層よりも液体吸収力が高い多孔質構造を有する。
【0025】
図4は、本発明の吸収体の一例を示す断面概略図である。
図4(A)と
図4(B)は、貫通孔803、804の形状が異なっている。本例の吸収体811は、最上層801、内層820、最下層802を積層させてなる。内層は、1層でもよいし、複数の層であってもよい。内層が1層の場合は、符号820で示すことにしている。
【0026】
<層の材質等>
最上層801及び最下層802は、不織布であるとともに、積層方向に当該層を貫通する貫通孔803、804を有している。最上層801が有する貫通孔を貫通孔803と表記し、最下層802が有する貫通孔を貫通孔804と表記している。
図4(A)では、貫通孔803及び貫通孔804が柱状であり、
図4(B)では、貫通孔803及び貫通孔804が錘状である。貫通孔の形状は、これらに限られず、適宜変更することができる。また、貫通孔の形状は、同一であってもよいし、複数の形状が混在していてもよい。
【0027】
以下の説明では、最上層801及び最下層802をシート層と称することがある。シート層と表記した場合、最上層801と最下層802を区別なく説明するものである。また、シート層について数値規定をした場合、特に断りのない限り、最上層801及び最下層802がその数値規定を満たすことが好ましいという意味である。
【0028】
最上層801及び最下層802を構成する不織布としては、適宜選択することができる。例えば、合成繊維製シート、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、エアレイド不織布等を用いることができる。最上層801と最下層802は、同種の不織布としてもいし、異なる不織布としてもよい。
【0029】
また、最上層801及び最下層802は、バルキー性に富んだ合成繊維シートにしてもよく、バルキー性に富んだ合成繊維シートとは、例えば、加工によりかさを高くし、毛糸のような風合いを持たせた合成繊維シートが挙げられる。バルキー性に富んだ合成繊維シートの場合、比較的、目が粗いため、液体を素早く内層に伝達させることができ、最上層801及び最下層802に液体が溜まりにくくすることができる。そのため、液体の乾燥と浸透が繰り返された場合でも、液体の吸収速度が速く、安定した吸収効果を発揮する。
【0030】
最上層801が貫通孔803を有していることにより、最上層801中の液体が内層に浸透しやすくなる。最上層801が貫通孔803を有していない場合、最上層801中の液体が内層に浸透しにくくなり、吸収体811の表面で液体が乾燥し、液体が最上層801の表面に堆積してしまう。この場合、吸収体811の液体吸収力が低下してしまう。
【0031】
最下層802が貫通孔804を有していることにより、最下層802の乾燥性を向上させることができ、内層を浸透する液体が吸収体811の下部に到達する前に液体を乾燥させることができる。最下層802が貫通孔804を有していない場合、吸収体811の裏側(最下層802側)の乾燥性が低下し、液体が吸収体811の下部に到達しやすくなる。この場合、収容容器が液体で汚れやすくなる。また、吸収体811を両面使用できなくなる。
【0032】
また、本例では最上層801、最下層802と分けて表記しているが、最上層801を最下層にしてもよいし、最下層802を最上層にしてもよい。すなわち、本例の吸収体811は、両面を使用することができる。このため、吸収体811を収容容器に設置させる際に、どちらの面を上にするかを気にすることなく設置することができ、作業効率を向上させることができる。このことも、メンテナンス性の向上に寄与する。
【0033】
貫通孔の形成方法としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、例えば針で刺して貫通孔を開けてもよいし、熱を持った針などで溶融させながら貫通孔を開けてもよい。また、最上層、内層、最下層を積層させてから貫通孔を形成してもよいし、積層させる前に貫通孔を形成してもよい。
【0034】
内層は、最上層801及び最下層802よりも液体吸収力が高い多孔質構造を有する。この場合、最上層801から内層に液体が浸透しやすくなり、最下層802の下部に液体が溜まりにくくなる。内層の液体吸収力が、最上層801及び最下層802の液体吸収力以下である場合、内層に液体が浸透せず、最上層801の表面に液体が堆積してしまい、吸収体811の液体吸収力が低下する。また、最下層802の下部に液体が溜まってしまい、収容容器が汚れやすくなる。
【0035】
液体吸収力の測定は、以下のようにして行う。
30mm×150mmの試験片の片面片隅にモデルインク(特開2020-049937の開示に基づいて調合した顔料インク)を2cc注入し、70℃24H乾燥を交互に繰り返し、その都度インクの吸液速度を測定する。このように測定することで、シート層(最上層及び最下層)の液体吸収力と、内層の液体吸収力を比較することができる。
【0036】
内層が複数の層である場合、内層全体を1つの層として考えて液体吸収力を求め、シート層の液体吸収力と比較する。内層が複数の層である場合、各層の液体吸収力を求めて平均値を取って比較してもよい。内層が複数の層である場合、全ての層がシート層よりも液体吸収力が高いことが好ましい。ただし、内層が複数の層である場合、全ての層が多孔質構造を有していることを要する。
【0037】
本例では、吸収体811を収容容器から外す際に、手や他の部材が汚れにくくすることができる。また、本例では、吸収体811を収容容器から外す際に、手や他の部材が汚れにくくすることができるため、作業効率を向上させることができる。従って、本例では、メンテナンス性を向上させることができる。なお、吸収体811を収容容器から外す場合としては、特に制限されるものではないが、例えば、吸収体811を交換する場合などが挙げられる。
【0038】
内層の構成としては、多孔質構造であればよく、適宜選択することができる。
内層は、例えば、主支持繊維と熱融着性物質と増粘性物質とから構成することができる。上記主支持繊維は、任意の天然セルロース繊維及び合成繊維が使用可能である。例えば、木材パルプ、リンター、その他各種の非木材植物繊維等が包含される。
熱融着性物質としては熱融着性繊維や熱融着性粉体が含まれる。熱融着性繊維と熱融着性粉体を混合して用いてもよい。
【0039】
上記熱融着性繊維として、芯部であるポリプロピレン繊維(融点160℃)を被覆層であるポリエチレン層(融点130℃)で被覆した複合繊維であってもよい。複合繊維を使用する場合には、外側の被覆層が溶融し芯部は溶融しない温度、例えば140℃の熱風を加えて被覆層のみを溶融する。この場合、芯部は溶融しないため安定した繊維として残存しているので強固な不織布を得ることができる。
【0040】
増粘性物質としては、公知の増粘性物質を使用可能である。例えば、カルボキシル・メチル・セルロース(CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリアクリル酸ソーダあるいはポリエチレンオキサイド(PEO)が好適である。これら増粘性物質は、少量で優れた増粘性が得られ、また常温水における溶解性、及び安価であるという点において優れている。
【0041】
内層は、天然セルロース繊維を含むことが好ましく、内層の各層が天然セルロース繊維を主体として形成されていることが好ましい。主体とあるのは、例えば、内層の各層において、30質量%以上の場合、主体として形成されているといえる。
【0042】
内層は、天然セルロース繊維を含む乾式不織布ウエブであることが好ましく、又は、天然セルロース繊維を含む乾式不織布マットであることが好ましい。この場合、内層の液体吸収力を更に高めることができ、収容容器が液体で汚れることをより抑制することができる。
【0043】
乾式不織布は、不織布の材料となる繊維を乾いた状態で作製したものであり、作製後の乾式不織布は湿式不織布と区別される。内層に乾式不織布ウエブ又は乾式不織布マットを用いる場合も、天然セルロース繊維を主体として形成されていることがより好ましい。
【0044】
内層は、エアレイド不織布であることが好ましい。エアレイド不織布は、エアレイド製法で作製された不織布である。エアレイド製法以外の製法、例えばサーマルボンド製法やケミカルボンド製法で内層を作製した場合、繊維が同方向に並んでいるため、上からの圧力で吸収体がへたりやすい。一方、エアレイド製法では、繊維をエアーで吹き付けることで繊維の向きをバラバラに置き、更に厚みを圧縮している。このため、吸収体811に弾力性を付与することができ、吸収体811の形状を保ちやすくなり、吸収体811が圧力でへたりにくくなる。また、エアレイド製法で作製することで、耐久性を向上させることができる。
【0045】
一般にエアレイド製法は、その構成繊維を解繊して空気の流れにのせて搬送し、金網又は細孔を有するスクリーンを通過させる。その後、ワイヤーメッシュ上に落下堆積させるエアレイ法によりウエブを形成し、該ウエブにおける前記繊維同士の交点を熱融着や熱接着等の所定手段によって結合させるものである。あるいは、ウエブの形成前後を問わず、エアレイド不織布を構成する繊維以外の熱融着性物質(例えばバインダー成分)を添加し、これに加熱等により接着性を生じさせ、繊維同士を接着ないし結合させてエアレイド不織布を作製することも可能である。
【0046】
従って、エアレイド製法で作製された内層と、エアレイド製法以外の製法で作製された内層とを区別するには、例えば、繊維の向きにより区別することができる。エアレイド製法で作製された内層は、繊維がバラバラの方向になっている。この他にも、エアレイド製法で作製された内層は、繊維同士の交点が熱により結合されている、又は、繊維同士の交点が熱融着性物質によって結合されている。
【0047】
最上層801及び最下層802についても、エアレイド製法で作製されていることが好ましい。この場合、上記のように、吸収体811に弾力性を付与することができ、吸収体811の形状を保ちやすくなり、吸収体811が圧力でへたりにくくなる。また、エアレイド製法で作製することで、耐久性を向上させることができる。
【0048】
内層は、見かけ密度が0.08g/cm3以上0.50g/cm3以下であることが好ましい。内層の見かけ密度がこの範囲である場合、内層中の液体に対して狙いの浸透性にすることができる。例えば、液体が吸収体内部に浸透して吸収体811の厚さの2/5以上浸透する前に、最下層802に設けられている貫通孔804の乾燥性によって浸透がストップする。これにより、液体が内層の内部に浸透できるとともに、液体が吸収体811の下部に到達することを低減できる。
【0049】
なお、上記において、吸収体811の厚さの2/5以上とあるのは、最上層801の最表面の地点から、積層方向の下方に向かって、吸収体811の厚さの2/5以上の地点を意味する。下記の同様の記載についても同じである。また、内層が複数の層である場合、複数の層を1つの層と考えて、見かけ密度が上記の範囲を満たすことが好ましい。
【0050】
内層の見かけ密度が0.08g/cm3より小さい場合、空隙が多くなりすぎて吸収体811の内部に液体が浸透しすぎてしまう。このため、最下層802に設けられている貫通孔804による乾燥性が追い付かず、吸収体811の最表面から吸収体811の厚さの2/5以上の下方に液体が浸透してしまう。
【0051】
内層の見かけ密度が0.50g/cm3より大きい場合、空隙が少なくなりすぎるため、液体吸収力が低下してしまう。このため、吸収体811の最表面から吸収体811の厚さの1/5以上の下方へ液体が浸透しにくくなり、吸収体811の表面で液体が乾燥し、わずかに堆積してしまう。
見かけ密度の測定は、JIS K 6767 : 1995の見かけ密度測定方法に従って測定を実施した。
【0052】
<厚み>
内層の厚みは、適宜選択することができ、例えば4.5mm以上であることが好ましい。この場合、内層中の液体に対して狙いの浸透性にすることができる。例えば、液体が吸収体内部に浸透して吸収体811の厚さの2/5以上浸透する前に、最下層802に設けられている貫通孔804の乾燥性によって浸透がストップする。これにより、液体が内層の内部に浸透できるとともに、液体が吸収体811の下部に到達することを低減できる。また、使用途中でも吸収体811の両面を使用でき、交換頻度を削減できる。
【0053】
なお、内層が複数の層である場合、内層を合計した厚みが4.5mm以上であることが好ましい。内層の厚みは、一般的な方法で測定する。
【0054】
内層の厚みが4.5mmより大きい場合、吸収体811の最表面から吸収体811の厚さの1/5以上の下方へ液体が浸透しにくくなり、吸収体811の表面で液体が乾燥し、わずかに堆積してしまう。
内層の厚みの上限値としては、適宜選択することができるが、例えば30mm以下であることが好ましい。この場合、液体吸収力を確保しつつ、吸収体及び液体受け部が大型化することを防止できる。
【0055】
図5A及び
図5Bは、内層820の厚みについて説明する図である。
図5A(A)及び
図5B(A)は、内層820の厚みが大きい場合であり、
図5A(B)及び
図5B(B)は、内層820の厚みが小さい場合である。
【0056】
最上層801及び最下層802の厚みとしては、適宜選択することができ、例えば、0.3mm以上0.8mm以下であることが好ましい。この場合、内層まで液体が到達することができ、更に、液体が吸収体811の厚さの2/5以上の下方へ浸透することを抑制できる。
【0057】
最上層801及び最下層802の厚みが0.3mmより小さい場合、例えば、吸収体811の裏面(最下層802側)での乾燥効果が薄れて、液体が吸収体811の厚さの2/5以上の下方へ浸透しやすくなる。
最上層801及び最下層802の厚みが0.8mmより大きい場合、液体が吸収体811の厚さの1/5以上の下方へ浸透しにくくなり、吸収体811の表面で液体が乾燥し、わずかに堆積してしまう。
なお、最上層801の厚みと最下層802の厚みは、同じであってもよいし、異なっていてもよい。最上層801及び最下層802の厚みは、一般的な方法で測定する。
【0058】
図6A及び
図6Bは、最上層801及び最下層802の厚みについて説明する図である。
図6Aの(a)から(c)に向かって最上層801及び最下層802の厚みが小さくなっている。同様に、
図6Bの(a)から(c)に向かって最上層801及び最下層802の厚みが小さくなっている。
【0059】
<内層の穴>
内層は、最上層801側の表面及び最下層802側の表面に穴(凹部と称してもよい)が設けられていることが好ましく、内層に設けられた穴は、内層を貫通せず、内層の厚みに対して1/3以下の深さであることが好ましい。内層における最上層801側の表面に、内層を貫通しない穴が設けられていることにより、最上層801から液体を浸透させやすくなり、内層中の液体に対して狙いの浸透性にすることができる。また、内層における最下層802側の表面に、内層を貫通しない穴が設けられていることにより、吸収体811の裏面の乾燥性を向上させることができる。
【0060】
内層に設けられた穴の深さが内層の厚みに対して1/3以下である場合、最上層801から内層まで液体が浸透しやすくなり、かつ、液体が吸収体811の厚さの2/5以上の下方へ浸透することを抑制できる。また、液体が吸収体811の厚さの2/5以上の下方へ浸透することを抑制できるため、使用途中でも吸収体811を両面使用することができる。穴の深さが内層の厚さの1/3よりも大きい場合、液体が吸収体811の厚さの2/5以上の下方へ浸透してしまい、両面使用することができなくなる。
【0061】
吸収体811の両面を使用することができる場合、例えば吸収体811の表面に液体の堆積が生じた場合、ひっくり返して裏面を使用することで、吸収体811の使用を継続することができる。そのため、吸収体811を長期使用することができ、コストを低減できる。
【0062】
図7は、内層が有する穴831、832を説明するための図である。
図7(a)は内層が1層の場合の例であり、
図7(b)は内層が複数の層(3層)の場合の例である。
【0063】
例えば
図7(a)に示すように、内層820は、最上層801側の表面に穴831が設けられている。この穴831は内層820を貫通しない深さになっており、内層820の厚みに対して1/3以下の深さになっている。
同様に、内層820は、最下層802側の表面に穴832が設けられている。この穴832は内層820を貫通しない深さになっており、内層820の厚みに対して1/3以下の深さになっている。なお、最下層802側の表面に設けられた穴832について、深さとあるのは、積層方向の上方への深さになる。
【0064】
図7(b)に示すように、内層が複数の層である場合も同様に、穴831、832が設けられることが好ましい。この例における内層は、最上層801に接する層を例えば第1の内層821とし、最下層802に接する層を例えば第2の内層822とし、更に内部の層を例えば第3の内層823としている。図示する例では、第1の内層821に穴831が設けられ、第2の内層822に穴832が設けられている。
【0065】
図示する例において、穴831の深さは第1の内層821を貫通しない程度の深さになっており、穴832の深さは第2の内層822を貫通しない程度の深さになっている。ただし、穴の深さはこれに限られず、適宜変更してもよい。穴831、832は、内層を貫通しない深さであることが好ましく、ここでは第1~第3の内層を1つの内層として考えて、この内層全体を貫通しない深さであることが好ましい。そのため、穴831が第1の内層821を貫通する深さであっても、内層全体の厚みの1/3以下であれば好ましい例である。穴832についても同様である。
【0066】
なお、
図4においても内層820に穴831、832が設けられている。
図4に示す例では、穴831、832は、内層820の厚みに対して1/3以下の深さになっている。
【0067】
図8A及び
図8Bは、穴831、832の深さについて説明する図である。
図8A(a)及び
図8B(a)は、内層820が穴を有していない例である。
図8A(a)及び
図8B(b)は、内層820が穴831、832を有しており、穴831、832の深さが内層820の厚みの1/3以下である。
図8A(c)及び
図8B(c)は、内層820が穴831、832を有しており、穴831、832の深さが内層820の厚みの1/3を超える。
図8A及び
図8Bに示す例では、(b)が内層820の厚みの1/3以下であり、好ましい例である。
【0068】
穴831、832の形成方法としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。穴の開け方は、例えば、針で刺して穴を開けてもよいし、熱を持った針などで溶融させながら穴を開けてもよい。また、最上層801、内層、最下層802を積層させた後に穴831、832を形成してもよいし、積層させる前に穴831、832を形成してもよい。
【0069】
穴831、832の形状は、図示されるような円形であってもよいし、その他の形状であってもよい。その他の形状としては、特に制限されるものではないが、例えば三角形、四角形、星形などが挙げられる。
【0070】
また、最上層801に設けられる貫通孔803と、内層に設けられる穴831とを同時に形成してもよく、最下層802に設けられる貫通孔804と、内層に設けられる穴832とを同時に形成してもよい。
図8A及び
図8Bに示す例では、貫通孔803と穴831を同時に形成しており、貫通孔804と穴832を同時に形成している。貫通孔と穴を同時に形成する場合、貫通孔と穴とを同一の位置にさせやすくなる。
【0071】
最上層801に設けられる貫通孔803と内層に設けられる穴831との位置関係は、適宜変更することができるが、貫通孔803と穴831が同一の位置であることが好ましい。この場合、最上層801から液体が内層に浸透しやすくなる。
同様に、最下層802に設けられる貫通孔804と内層に設けられる穴832との位置関係は、適宜変更することができるが、貫通孔804と穴832が同一の位置であることが好ましい。この場合、吸収体811の裏面(最下層802側)の乾燥性を向上させることができる。
【0072】
すなわち、内層における最上層801側の表面に設けられた穴831は、最上層801が有する貫通孔803と同一の位置に設けられており、かつ、内層における最下層802側の表面に設けられた穴832は、最下層802が有する貫通孔804と同一の位置に設けられていることが好ましい。この場合、吸収体811の吸収効果を損なわず、更に吸収体811の裏面まで液体が浸透することを抑制できる。また、使用途中でも吸収体811の両面を使用することが可能になる。また、交換頻度やランニングコストを下げることができる。
【0073】
上記において、同一の位置とは、貫通孔と穴とが完全に一致する場合に限られず、貫通孔と穴とが互いに一部でも重なる場合も含むものとする。例えば、
図7(a)では、貫通孔803と穴831とが一部重なっている場合であり、貫通孔804と穴832とが一部重なっている場合である。
図7(b)では、貫通孔803と穴831とが完全に一致した場合であり、貫通孔804と穴832とが完全に一致した場合である。
図7(a)及び(b)どちらも、貫通孔と穴が同一の位置に設けられた場合の例である。
【0074】
<貫通孔>
最上層801及び最下層802が有する貫通孔803、804の形状、大きさ、個数、配置等は、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。以下、好ましい例を挙げつつ説明する。
【0075】
最上層801が有する貫通孔803は、積層方向の上側から見た場合の開孔率が10%以上70%以下であることが好ましい。
最下層802が有する貫通孔804は、積層方向の下側から見た場合の開孔率が10%以上70%以下であることが好ましい。
【0076】
以下、積層方向の上側から見た場合の貫通孔803の開孔率を第1の開孔率とも称し、積層方向の下側から見た場合の貫通孔804の開孔率を第2の開孔率とも称する。また、最上層801が有する貫通孔803を第1の貫通孔と称してもよいし、最下層802が有する貫通孔804を第2の貫通孔と称してもよい。
【0077】
第1の開孔率が10%以上70%以下である場合、液体の浸透性を確保できるとともに、最上層801の下の層から貫通孔803を介して毛羽立ちが出てくることを防止できる。毛羽立ちが生じると、液体吐出ヘッドに接触する場合があり、画像品質に影響を与えたり、装置が故障したりする恐れがある。
第1の開孔率が10%よりも小さい場合、液体の浸透性が下がり、液体が吸収体811の厚さの1/5以上の下方へ浸透しにくくなる。このため、吸収体811の表面で液体が乾燥し、わずかに堆積してしまう。
第1の開孔率が70%を超える場合、貫通孔803の開孔が大きくなりすぎ、最上層801の下の層から毛羽立ちがわずかに出てきて、液体吐出ヘッドに接触する場合がある。
【0078】
同様に、第2の開孔率が10%以上70%以下である場合、液体の浸透性を確保できるとともに、最下層802の下の層から貫通孔804を介して毛羽立ちが出てくることを防止できる。最下層802側では、毛羽立ちが生じても液体吐出ヘッドに接触することはないが、ひっくり返して使用する場合、すなわち、最下層802を最上層にして使用する場合に、毛羽が液体吐出ヘッドに接触することを防止できる。
【0079】
上記のことから、最上層801が有する貫通孔803は、積層方向の上側から見た場合の開孔率(第1の開孔率)が10%以上70%以下であり、かつ、最下層802が有する貫通孔804は、積層方向の下側から見た場合の開孔率(第2の開孔率)が10%以上70%以下であることがより好ましい。この場合、液体の浸透性を確保できるとともに、毛羽が液体吐出ヘッドに接触することを防止でき、また両面を使用する際にも、液体の浸透性の確保と毛羽の接触防止の利点がある。
なお、第1の開孔率と第2の開孔率は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
図9A及び
図9Bは、開孔率について説明する図である。
図9A(a)及び
図9B(a)は、第1の開孔率及び第2の開孔率が70%を超える例である。
図9A(a)及び
図9B(b)は、第1の開孔率及び第2の開孔率が10%以上70%以下の例である。
図9A(c)及び
図9B(c)は、第1の開孔率及び第2の開孔率が10%未満の例である。従って、
図9A(b)及び
図9B(b)は、開孔率が10%以上70%以下の例であり、好ましい例である。
【0081】
最上層801が有する貫通孔803は、積層方向の上側から見た場合の直径が1.5mm以下、又は、積層方向の上側から見た場合の面積が1.766mm2以下であることが好ましい。この場合、狙いとする液体の浸透性を得ることができ、例えば、液体が吸収体811の厚さの1/5以上の下方へ浸透させることができ、吸収体811の表面で液体が堆積することを抑制できる。また、最上層801よりも下の層から貫通孔803を介して毛羽立ちが生じることを防止できる。
【0082】
最上層801が有する貫通孔803は、積層方向の上側から見た場合の直径が0.5mm以上1.5mm以下、又は、積層方向の上側から見た場合の面積が0.196mm2以上1.766mm2以下であることがより好ましい。この場合、液体の浸透性について、より好ましい狙いを達成することができ、例えば、液体が吸収体811の厚さの1/5以上の下方へ浸透させることができるとともに、液体が吸収体811の厚さの2/5以上の下方へ浸透することを抑制できる。また、この場合、吸収体811の表面で液体が堆積することをより抑制できる。
【0083】
前記直径が1.5mmよりも大きい場合、又は、前記面積が1.766mm2よりも大きい場合、最上層801よりも下の層から貫通孔803を介して毛羽立ちが生じ、液体吐出ヘッドに接触する場合がある。
【0084】
最下層802が有する貫通孔804についても上記と同様の数値範囲を満たすことが好ましい。
最下層802が有する貫通孔804は、積層方向の下側から見た場合の直径が1.5mm以下、又は、積層方向の下側から見た場合の面積が1.766mm2以下であることが好ましい。この場合、吸収体811の裏面の乾燥性を向上させることができる。また、両面を使用する際、最下層802を最上層にした場合に、毛羽立ちが生じることを防止できる。
【0085】
最下層802が有する貫通孔804は、積層方向の下側から見た場合の直径が0.5mm以上1.5mm以下、又は、積層方向の下側から見た場合の面積が0.196mm2以上1.766mm2以下であることがより好ましい。この場合、吸収体811の裏面の乾燥性を更に向上させることができる。また、両面を使用する際、最下層802を最上層にした場合に、液体の浸透性について、より好ましい狙いを達成することができるとともに、毛羽立ちが生じることを防止できる。
【0086】
特に好ましいのは、最上層801が有する貫通孔803と、最下層802が有する貫通孔804とが同時に上記の数値範囲を満たす場合である。
例えば、最上層801が有する貫通孔803は、積層方向の上側から見た場合の直径が1.5mm以下、又は、積層方向の上側から見た場合の面積が1.766mm2以下であり、かつ、最下層802が有する貫通孔804は、積層方向の下側から見た場合の直径が1.5mm以下、又は、積層方向の下側から見た場合の面積が1.766mm2以下であることが更に好ましい。
また、最上層801が有する貫通孔803は、積層方向の上側から見た場合の直径が0.5mm以上1.5mm以下、又は、積層方向の上側から見た場合の面積が0.196mm2以上1.766mm2以下であり、かつ、最下層802が有する貫通孔804は、積層方向の下側から見た場合の直径が0.5mm以上1.5mm以下、又は、積層方向の下側から見た場合の面積が0.196mm2以上1.766mm2以下であることが特に好ましい。
【0087】
図10A及び
図10Bは、貫通孔803、804の大きさについて説明する図である。
図10A(a)及び
図10B(a)は、貫通孔803、804の直径が1.5mmを超える例である。
図10A(a)及び
図10B(b)は、貫通孔803、804の直径が0.5mm以上1.5mm以下の例である。
図10A(c)及び
図10B(c)は、貫通孔803、804の直径が0.5mm未満の例である。従って、
図10A(b)及び
図10B(b)は、直径が0.5mm以上1.5mm以下の例であり、好ましい例である。
【0088】
貫通孔についての測定方法は、以下のように行う。
最上層801が有する貫通孔803は、積層方向の上側から見た場合の直径又は面積を測定し、最下層802が有する貫通孔804は、積層方向の下側から見た場合の直径又は面積を測定する。直径の測定方法は、例えば、ノギスや定規を用いて行うことができる。また、求めた面積から開孔率を求めることができる。
【0089】
ただし、最上層801、最下層802は不織布であるため、最上層801、最下層802は多孔質構造を有しているともいえる。貫通孔とそれ以外とを区別するには、例えば目視で行うことができる。開孔率の測定についても同様にして、貫通孔とそれ以外とを目視で区別して開孔率を求めることができる。
【0090】
最上層801及び最下層802が有する貫通孔803、804の配置、並びに、内層が有する穴831、832の配置等は、適宜変更することができる。
図11に一例を示す。
図11は、吸収体811を上から見た場合の平面概略図である。本発明の吸収体811は、両面を使用することができるため、ここでする説明は、最下層802が有する貫通孔804の配置にも適用される。その場合、吸収体811を下から見た場合の平面概略図であるといえる。
【0091】
図11(a)では、貫通孔803が規則的に均等に並んでいる。
図11(b)では、貫通孔803が千鳥配列になっている。
図11(c)では、貫通孔803が不規則的に並んでいる。このように、最上層801及び最下層802が有する貫通孔803、804の配置は適宜変更することができる。
【0092】
同様に、内層が有する穴831、832の配置等は、適宜変更することができる。
図11は最上層801の平面概略図としているが、内層を上から見た場合の平面概略図としてもよい。この場合、貫通孔803を穴831に読み替えればよい。なお、
図11では、貫通孔803と穴831を同一の位置に配置した例としているため、符号は803、831と表記されている。上述したように、貫通孔803と穴831の位置は同一であることが好ましいが、同一でなくてもよい。
【0093】
更に、
図11は最上層801の平面概略図としているが、内層を下から見た場合の平面概略図としてもよい。この場合、貫通孔803を穴832に読み替えればよい。また、貫通孔804と穴832の位置は同一であることが好ましいが、同一でなくてもよい。
【0094】
また、貫通孔803、804及び穴831、832の形状は、図示されるような円形であってもよいし、その他の形状であってもよい。その他の形状としては、特に制限されるものではないが、例えば三角形、四角形、星形などが挙げられる。
【0095】
<最上層及び最下層と内層との接合>
最上層801及び最下層802と内層とは、接合されていることが好ましい。
内層において、最上層801に接する層を第1の内層とし、最下層802に接する層を第2の内層としたとき、最上層801と第1の内層とが、熱融着性物質により接着ないし固着されており、最下層802と第2の内層とが、熱融着性物質により接着ないし固着されていることが好ましい。ただし、第1の内層と第2の内層は、同一の層であってもよい。
【0096】
この場合、最上層801及び最下層802と内層とが分離することを防止でき、例えば吸収体811の交換の際に扱いやすくなり、メンテナンス性が向上する。また、最上層801及び最下層802と内層とが離れることを抑制でき、液体の浸透性や乾燥性が損なわれることを防止できる。なお、上記の接合とあるのは、接着や固着を含むものとする。
【0097】
熱融着性物質としては、例えばホットメルト系接着剤が挙げられ、この他にも、熱融着性繊維や熱融着性粉体が含まれる。熱融着性繊維と熱融着性粉体を混合して用いてもよい。
熱融着性物質により接着ないし固着する方法としては、適宜選択することができる。例えば、内層と最上層801や最下層802とを、ホットメルト系接着剤や熱融着性粉体を介して熱を加えて相互に接合させる。
【0098】
<評価>
次に、上記の数値範囲について、いくつか評価を行った。結果を以下に示す。
評価に用いた吸収体のサンプルとしては、最上層、内層(1層)、最下層の3層とし、下記の表1に示す構成とした。また、内層は天然セルロース繊維を主体とした乾式不織布ウエブとした。
【0099】
<<毛羽の発生の評価>>
サンプル表面に毛羽が発生しているかどうかを目視で観察を行う。評価基準は下記である。B以上を実使用上問題ないレベルとする。
[評価基準]
A:毛羽がまったく発生していない
B:所々に毛羽が発生
C:ほぼ全面に毛羽が発生
【0100】
<<浸透深さの評価>>
モデルインク(特開2020-049937の開示に基づいて調合した顔料インク)をディスポーザブルシリンジ(テルモシリンジSS-20ESZP)内に満たし、注射針(テルモシリンジSS-01T2613S付属)を装着して、気液抜きを実施した。32℃、30%RHに調整された環境下、インクを満たしたディスポーザブルシリンジを、シリンジの押出方向が実験台と水平になるようにシリンジポンプへセットし、0.5μl/minの滴下条件で、吸収体に15時間インクを滴下した。滴下後の吸収体の断面をカットし、吸収体内部にどこまで浸透しているかを下記の評価基準により評価した。C以上が実使用上問題ないレベルである。
【0101】
[評価基準]
A:吸収体の厚さの1/5~2/5まで浸透している
B:吸収体の厚さの1/5以下で浸透している(ほとんど浸透していない)
C:吸収体の厚さの2/5~1/2まで浸透している
D:吸収体の厚さの1/2以上浸透している(浸透しすぎている)
【0102】
なお、上記の吸収体の厚さの1/5とあるのは、吸収体の最表面から下方に向かって、吸収体の厚さの1/5の地点である。すなわち、吸収体の最表面を基点としている。
【0103】
<<堆積性評価>>
モデルインク(特開2020-049937の開示に基づいて調合した顔料インク)をディスポーザブルシリンジ(テルモシリンジSS-20ESZP)内に満たし、注射針(テルモシリンジSS-01T2613S付属)を装着して、気液抜きを実施した。32℃、30%RHに調整された環境下、インクを満たしたディスポーザブルシリンジを、シリンジの押出方向が実験台と水平になるようにシリンジポンプへセットし、0.5μl/minの滴下条件で、吸収体に15時間インクを滴下した。滴下後の吸収体への堆積の有無を確認し、下記の評価基準により堆積性を評価した。C以上が実用上問題ないレベルである。
【0104】
[評価基準]
A:吸収体にインクが吸収され、堆積していない
B:吸収体上にインクが一部残留しているが、流動性があり、堆積はしていない
C:吸収体上にインクがわずかに堆積している
D:吸収体上のインクの流動性がほとんどなく、堆積している
【0105】
結果を表1に示す。なお、表中、シート層とあるのは、最上層及び最下層を意味し、ここで行った評価では、最上層と最下層を同じ構成とした。また、表中、内層の穴の深さは、最上層側と最下層側とで同じにしている。また、表中の数値は、上記のようにして測定した。
【0106】
【0107】
上記の結果から例えば以下のことがわかる。
実施例3、4の結果から、内層の見かけ密度は、0.08g/cm3以上0.50g/cm3以下が好ましい。
実施例5、6の結果から、最上層及び前記最下層の厚みは、0.3mm以上0.8mm以下であることが好ましい。
実施例7の結果から、内層の厚みは、4.5mm以上であることが好ましい。
実施例8の結果から、内層の穴の深さは、内層の厚みに対して1/3以下の深さであることが好ましい。
実施例9、10の結果から、開孔率は10%以上70%以下であることが好ましい。なお、この開孔率は、第1の開孔率と第2の開孔率に相当する。
実施例2、11の結果から、貫通孔の面積は0.196mm2以上1.766mm2以下であることが好ましい。
実施例1、12の結果から、内層の製法はエアレイド製法であることが好ましい。
【0108】
比較例1は、最上層に貫通孔が設けられているが、最下層には貫通孔が設けられていない。そのため、乾燥効果が弱くなり、液体が浸透しすぎてしまう。
比較例2は、最下層に貫通孔が設けられているが、最上層には貫通孔が設けられていない。そのため、液体の浸透効果が弱くなり、液体が堆積してしまう。
【0109】
<液体受け部の詳細例>
次に、本発明の液体受け部の一実施形態について説明する。
本発明の液体受け部は、本発明の吸収体を有している。また、本発明の液体受け部が有する吸収体は、分割されていることが好ましい。分割された吸収体をブロックなどとも称する。本発明の吸収体を有することにより、メンテナンス性を向上させることができる。また、吸収体が分割されていることで、交換が必要なブロックのみを交換することができるため、メンテナンス性が更に向上する。
【0110】
図12は、液体受け部840の一例を示す斜視概略図である。図示する例では、吸収体811が分割されており、それぞれ符号811a~811dで示している。これらの吸収体811a~811dをブロックなどと称してもよい。
【0111】
図12(a)では、吸収体811が分割されて、吸収体811a~811dが並列に配置されている。また、吸収体811a~811dは、トレイ841に収容されている。トレイ841は、収容容器の一例である。
【0112】
図12(b)では、シート材510の搬送方向を図中の黒矢印で示している。図示するように、分割された吸収体811a~811dを搬送方向と垂直な方向(平面の方向)に並べて配置している。
【0113】
吸収体811は、例えば、空吐出滴が着弾される面内に複数のブロックに分割され、各ブロックがトレイ841に並べて配置されている。各ブロックは互いに側面が接触して配置されている。ここでは個片化されたブロックに分割されている。
【0114】
本発明の液体受け部840は、吸収体811の最下層の下部に最下層と接するように設けられたホルダー部材を有していてもよい。また、ホルダー部材は、金属からなることが好ましく、板金からなることがより好ましい。また、ホルダー部材は、防さび加工がされているとともに、吸収体811の側面から吸収体811を固定する爪を有していることが好ましい。
【0115】
このようなホルダー部材を用いることにより、吸収体811を良好に固定することができ、また吸収体811を取り外しやすくなるため、メンテナンス性が向上する。また、防さび加工がされていることにより、液体が接触してもさびにくくなり、耐久性が向上する。
【0116】
ホルダー部材は、金属でも樹脂でもよいが、液体(例えばインク)による腐食を抑制するために、金属で形成する場合は、耐腐食性の高いSUS材や防錆加工を施した材料を使用することが好ましい。防さび加工の方法は特に制限されるものではなく、例えば、有機被膜でも無機被膜、電気防食でもよい。
【0117】
また、ホルダー部材は、網状や多孔性の板材を使用して形成されてもよく、この場合、ホルダー部材の下側からの通気性が上がり、吸収体811の乾燥を促進させることもできる。
【0118】
図13は、ホルダー部材842の一例を示す斜視概略図である。このホルダー部材842は、板金で構成されている。また、図示するように、爪843を有しており、爪843は、吸収体811を側面から固定する。なお、側面から固定するとあるのは、吸収体811をホルダー部材842に設置したときに、吸収体811が全く移動しない、ズレないことまでをも要するものではなく、吸収体811がホルダー部材842から落ちない程度の固定でよい。爪843が吸収体811を支持するなどと表記してもよい。
【0119】
図14は、液体受け部840の一例を示す断面概略図である。図示するように、トレイ841は、吸収体811とホルダー部材842を収容している。このように、吸収体811とホルダー部材842がトレイ841に収容された状態で液体を吸収する。
なお、図中、ホルダー部材842が有する爪843の図示を省略している。
【0120】
また、
図13に示すように、ホルダー部材842は、穴844を有している。この穴844は、トレイ841からホルダー部材842の取り外しを容易にするために設けられている。ホルダー部材842には、シート材510の搬送方向と直交する方向の端部に差し込める穴844が形成されている。
【0121】
また、ホルダー部材842は、吸収体811側の表面に凸部を有していてもよい。凸部により、吸収体811の底面に更に穴が開き、乾燥性が向上する。また、吸収体811がホルダー部材842上で安定して固定される。このような凸部は、特に制限されないが、例えば針状であることが好ましい。
【0122】
ホルダー部材842は、吸収体811を固定するだけでなく、吸収体811の高さ調整を行ってもよい。例えば、ホルダー部材842とトレイ841との間に空間を設け、吸収体811の位置を高くしてもよい。ホルダー部材842とトレイ841との間の空間に、予備の吸収体811を収納してもよい。
【0123】
図12(b)に示すように、シート材510の搬送方向と垂直な方向(平面の方向)に吸収体811が分割されている。シート材510の搬送方向と垂直な方向を、液体受け部840の長手方向とも称する。吸収体811は、長手方向において、少なくとも3つ以上のブロックに分割することが好ましい。また、吸収体811は、長手方向だけでなく、短手方向(シート材510の搬送方向に沿った方向)に分割されていてもよい。
【0124】
吸収体811を細かく分割するほど、液体を吸収する箇所と、液体を吸収しない箇所とを切り分けることができるため、吸収体811の吸収効率を向上させることができ、吸収体811の交換頻度を下げることができる。
図12に示す例では、長手方向に4つのブロックに分割している。
【0125】
図15は、吸収体のブロックの一部を交換する場合の模式説明図である。図は、交換対象の吸収体811のブロック、ここでは例えば吸収体811aをトレイ841から取り外した状態を示している。例えば、吸収体811aと吸収体811bとを交換する。入れ替えると称してもよい。液体の堆積が多いブロック(例えば吸収体811a)を、液体の堆積が少ないブロック(例えば吸収体811b)と交換することで、吸収体811を全て交換する必要がなく、吸収体811を長期に使用することができる。図中の両矢印は、吸収体のブロックを交換することを模式的に示している。
【0126】
本発明の吸収体及び液体受け部は、画像形成に寄与しない液体を受けて吸収する。画像形成に寄与しない液体は、例えば、液体吐出ヘッドのメンテナンスとして排出される。液体吐出ヘッドのメンテナンスでは、例えば、画像形成に寄与しない液体、例えばインクを空吐出する。本発明の吸収体及び液体受け部は、空吐出により吐出された空吐出滴を受ける。本発明の吸収体及び液体受け部は、空吐出のみならず、液体を吐出する装置から発生する画像形成に寄与しない液体を全般的に吸収することができる。
【0127】
なお、画像形成に寄与しない液体を廃インク、廃液などと称してもよい。また、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0128】
図16は、吸収体811の配置の一例について説明する図である。
図16(a)は平面概略図であり、
図16(b)は側面概略図である。
図16(a)では、シート材510の搬送方向を矢印で示しており、
図16(b)では、ヘッドアレイ511A~511Dにより吐出される液体を矢印で模式的に示している。なお、図中の座標は説明のために表記している。また、本例の吸収体811は、上記の例と同様に分割されている。
【0129】
連帳紙のようなシート材510に対して印刷を行う装置においては、シート材510がヘッドに対向している状態で吐出を行うことになる。そのため、シート材510が介在していない領域では、ヘッドから吐出された液体はシート材510に着弾せず、吸収体811に着弾する。なお、以下、シート材510に着弾しない液滴を空吐出滴とも称し、空吐出滴を吐出することを空吐出とも称する。
【0130】
吸収体811の大きさ、配置等は、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。例えば、図に示すように、吸収体811の長手方向の長さL1は、ヘッドの並び方向(搬送方向と直交する方向)の長さL2よりも長くしている。また、シート材510の幅をW1とし、中央基準で搬送されるものとすると、吸収体811の両端部のみに空吐出滴が着弾することになる。図示するように、吸収体811の両端部である吸収体811aと吸収体811dに空吐出滴が着弾している。
【0131】
そして、空吐出の繰り返しに伴って、粘度が高い液体など、乾燥ないし堆積しやすい液体を使用している場合、吸収体811の両端部での堆積が進行するおそれがある。堆積が進行した場合、吸収体811の交換等が必要になる。
【0132】
本例の吸収体811は、シート材510の搬送方向と直交する方向において、複数のブロックに分割されている。従って、ヘッドとの対向の態様と、シート材510の介在の有無とにより、空吐出滴が着弾するブロックと、空吐出滴が着弾しないブロックとに分かれる。そのため、吸収体811の交換を行うときには、空吐出滴が着弾するブロック(例えば吸収体811a、811d)と、空吐出滴が着弾しないブロック(例えば吸収体811b、811c)とを交換することで、新規な吸収体とすることができる。なお、交換対象のブロックを別途、新規のブロックに交換してもよい。
【0133】
このような交換について補足する。例えば、
図15に示すように、吸収体811aと吸収体811bとを交換してもよい。例えば吸収体811aに空吐出滴が着弾し、吸収体811bに空吐出滴が着弾していない場合、吸収体811aと吸収体811bとを交換することで、空吐出滴が着弾する箇所に堆積のない吸収体811bを用いることができる。
【0134】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>液体吐出ヘッドから吐出された液体を吸収する吸収体であって、
3層以上を積層させてなり、
最上層及び最下層は、不織布であるとともに、積層方向に当該層を貫通する貫通孔を有し、
内層は、前記最上層及び前記最下層よりも液体吸収力が高い多孔質構造を有する
ことを特徴とする吸収体。
<2>画像形成に寄与しない液体を吸収する
ことを特徴とする<1>に記載の吸収体。
<3>前記内層は、天然セルロース繊維を含む乾式不織布ウエブ又は乾式不織布マットであり、見かけ密度が0.08g/cm3以上0.50g/cm3以下である
ことを特徴とする<1>又は<2>に記載の吸収体。
<4>前記最上層及び前記最下層の厚みは、0.3mm以上0.8mm以下である
ことを特徴とする<1>から<3>のいずれかに記載の吸収体。
<5>前記内層の厚みは、4.5mm以上である
ことを特徴とする<1>から<4>のいずれかに記載の吸収体。
<6>前記内層は、エアレイド不織布である
ことを特徴とする<1>から<5>のいずれかに記載の吸収体。
<7>前記内層は、前記最上層側の表面及び前記最下層側の表面に穴が設けられており、
前記穴は、前記内層を貫通せず、内層の厚みに対して1/3以下の深さである
ことを特徴とする<1>から<6>のいずれかに記載の吸収体。
<8>前記内層における前記最上層側の表面に設けられた前記穴は、前記最上層が有する前記貫通孔と同一の位置に設けられており、
前記内層における前記最下層側の表面に設けられた前記穴は、前記最下層が有する前記貫通孔と同一の位置に設けられている
ことを特徴とする<7>に記載の吸収体。
<9>前記最上層が有する貫通孔は、積層方向の上側から見た場合の開孔率が10%以上70%以下であり、
前記最下層が有する貫通孔は、積層方向の下側から見た場合の開孔率が10%以上70%以下である
ことを特徴とする<1>から<8>のいずれかに記載の吸収体。
<10>前記最上層が有する貫通孔は、積層方向の上側から見た場合の直径が1.5mm以下、又は、積層方向の上側から見た場合の面積が1.766mm2以下であり、
前記最下層が有する貫通孔は、積層方向の下側から見た場合の直径が1.5mm以下、又は、積層方向の下側から見た場合の面積が1.766mm2以下である
ことを特徴とする<1>から<9>のいずれかに記載の吸収体。
<11>前記最上層が有する貫通孔は、積層方向の上側から見た場合の直径が0.5mm以上1.5mm以下、又は、積層方向の上側から見た場合の面積が0.196mm2以上1.766mm2以下であり、
前記最下層が有する貫通孔は、積層方向の下側から見た場合の直径が0.5mm以上1.5mm以下、又は、積層方向の下側から見た場合の面積が0.196mm2以上1.766mm2以下である
ことを特徴とする<10>に記載の吸収体。
<12>前記内層において、前記最上層に接する層を第1の内層とし、前記最下層に接する層を第2の内層としたとき、
前記最上層と前記第1の内層とが、熱融着性物質により接着ないし固着されており、
前記最下層と前記第2の内層とが、熱融着性物質により接着ないし固着されている
ことを特徴とする<1>から<11>のいずれかに記載の吸収体。
ただし、前記第1の内層と前記第2の内層は、同一の層であってもよい。
<13><1>から<12>のいずれかに記載の吸収体を有し、前記吸収体は分割されている
ことを特徴とする液体受け部。
<14><1>から<13>のいずれかに記載の吸収体と、
前記最下層の下部に前記最下層と接するように設けられたホルダー部材と、
前記吸収体及び前記ホルダー部材を収容する収容容器と、を有し、
前記吸収体は、分割されており、
前記吸収体及び前記ホルダー部材が共に前記収容容器に収容された状態で前記液体を吸収する
ことを特徴とする液体受け部。
<15><1>から<12>のいずれかに記載の吸収体と、
前記最下層の下部に前記最下層と接するように設けられたホルダー部材と、を有し、
前記ホルダー部材は、金属からなり、防さび加工がされているとともに、前記吸収体の側面から前記吸収体を固定する爪を有する
ことを特徴とする液体受け部。
<16><1>から<12>のいずれかに記載の吸収体、又は、<12>から<14>のいずれかに記載の液体受け部と、
液体を吐出する液体吐出手段と、を有する
ことを特徴とする液体を吐出する装置。
<17>前記吸収体は、前記液体吐出手段のメンテナンスによって排出される液体を吸収する
ことを特徴とする<16>に記載の液体を吐出する装置。
【符号の説明】
【0135】
510 シート材
811 吸収体
801 最上層
802 最下層
803、804 貫通孔
820 内層
821 第1の内層
822 第2の内層
823 第3の内層
831、832 穴
840 液体受け部
841 トレイ
842 ホルダー部材
【先行技術文献】
【特許文献】
【0136】
【特許文献1】特開平09-158024号公報
【特許文献2】特開2000-135797号公報
【特許文献3】特開2020-049937号公報