(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018924
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】GLP-1分泌促進用組成物
(51)【国際特許分類】
A23L 33/17 20160101AFI20240201BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240201BHJP
A61K 38/05 20060101ALI20240201BHJP
A61K 38/06 20060101ALI20240201BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A23L33/17
A61P43/00 105
A61K38/05
A61K38/06
A61P3/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023062955
(22)【出願日】2023-04-07
(31)【優先権主張番号】P 2022120034
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002480
【氏名又は名称】弁理士法人IPアシスト
(72)【発明者】
【氏名】比良 徹
(72)【発明者】
【氏名】村井 佳奈
(72)【発明者】
【氏名】田口 颯
【テーマコード(参考)】
4B018
4C084
【Fターム(参考)】
4B018MD20
4B018ME03
4C084AA02
4C084BA01
4C084BA14
4C084BA15
4C084CA59
4C084MA52
4C084NA14
4C084ZC01
4C084ZC35
(57)【要約】 (修正有)
【課題】GLP-1分泌促進能を有する新たなオリゴペプチドを含む、GLP-1分泌促進用組成物を提供する。
【解決手段】Trp-Tyr、Gln-Tyr、Trp-Asn、Tyr-Lys、Asn-Ile、Pro-Met、Phe-Tyr、Val-Tyr、Gln-Leu、Trp-Phe、Gly-Trp、Gln-Gly、Lys-Phe、Gln-Lys、Lys-Ala、Asp-Ala、Asp-Phe、Asp-Asn、Asp-Val、Glu-Leu、及びGly-Gluよりなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有する、GLP-1分泌促進用組成物を提供する。GLP-1分泌促進用組成物は、GLP-1の分泌を促進する能力を有することから、生体に投与する又は摂取させることによって、糖尿病や肥満といった代謝異常疾患に対する予防又は改善効果を発揮することが期待される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Trp-Tyr、Gln-Tyr、Trp-Asn、Tyr-Lys、Asn-Ile、Pro-Met、Phe-Tyr、Val-Tyr、Gln-Leu、Trp-Phe、Gly-Trp、Gln-Gly、Lys-Phe、Gln-Lys、Lys-Ala、Asp-Ala、Asp-Phe、Asp-Asn、Asp-Val、Glu-Leu、及びGly-Gluよりなる群から選択されるアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有し、オリゴペプチドが2~3個のアミノ酸からなる、GLP-1分泌促進用組成物。
【請求項2】
Trp-Tyr、Gln-Tyr、Trp-Asn、Gln-Leu、Pro-Met、Lys-Ala、Gly-Trp、Phe-Tyr、Asn-Ile、Tyr-Lys、Gln-Lys、Gln-Gly、Lys-Phe、及びTrp-Pheよりなる群から選択されるアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有し、オリゴペプチドが2~3個のアミノ酸からなる、GLP-1分泌促進用組成物。
【請求項3】
Trp-Tyr、Gln-Tyr、Trp-Asn、Gln-Leu、Pro-Met、Lys-Ala、Gly-Trp、Phe-Tyr、Asn-Ile、Lys-Phe、及びTrp-Pheよりなる群から選択されるアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有し、オリゴペプチドが2~3個のアミノ酸からなる、GLP-1分泌促進用組成物。
【請求項4】
Phe-Trp-Tyr、Phe-Tyr-Trp、Trp-Phe-Tyr、Trp-Tyr-Phe、及びTyr-Trp-Pheよりなる群から選択される少なくとも1種のトリペプチドを含有する、GLP-1分泌促進用組成物。
【請求項5】
Phe-Trp-Tyr、Trp-Tyr-Phe、及びTyr-Trp-Pheよりなる群から選択される少なくとも1種のトリペプチドを含有する、GLP-1分泌促進用組成物。
【請求項6】
トリペプチドTyr-Phe-Trpを含有する、GLP-1分泌促進用組成物。
【請求項7】
飲食品組成物、医薬組成物又は医薬部外品組成物である、請求項1~6のいずれか一項に記載のGLP-1分泌促進用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オリゴペプチドを含むGLP-1分泌促進用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
GLP-1(Glucagon-likepeptide-1)は、食物の摂取に伴って、主に小腸遠位及び大腸に存在する腸管内分泌L細胞(L細胞)から分泌される内分泌生理活性ペプチドである。GLP-1は、膵ランゲルハンス島β細胞からのインスリン分泌を促し、また膵α細胞からのグルカゴン分泌を抑制して食後の血中グルコース濃度の上昇を抑制する。さらに、GLP-1は、胃内容物の排出抑制、食欲及び摂食の抑制、中枢神経系の機能改善、心筋収縮力の改善、血管弛緩反応の改善、血小板凝集の抑制、血栓形成の抑制、動脈硬化の改善、収縮期血圧の低下等の作用を有することが知られている。このような多様な作用から、GLP-1は、様々な疾患の予防又は改善のために用いることができると期待されている。
【0003】
GLP-1は蛋白質分解酵素であるDPP-4(dipeptidylpeptidase-4)により分解され易く、生体内での半減期は短い。そのため、GLP-1の利用においては体外からの投与よりもGLP-1の産生又は分泌を促進させることが有効であると考えられ、GLP-1の産生又は分泌を促進させることができる物質に関心が寄せられている。
【0004】
GLP-1の分泌促進能を有する物質としては、トウモロコシタンパク質Zein加水分解物(特許文献1)、乳由来ミセラカゼイン(特許文献2)、マンニトール(特許文献3)、プロピオン酸等の有機酸、オルニチン等のアミノ酸その他の化合物(非特許文献4)が知られている。また、Gly-Sar、Gly-Leu、Gly-Phe又はLeu-Gly-Gly等のオリゴペプチドがGLP-1分泌促進能を有することも知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-182742
【特許文献2】WO2018/159546
【特許文献3】特開2021-161070
【特許文献4】特開2020-097531
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】E. Diakogiannaki, et al., Diabetologia, 2013, vol. 56, 2688-2696
【発明の概要】
【0007】
本発明者らは、GLP-1分泌促進能を有する新たなオリゴペプチドを見出した。
【0008】
本開示は以下の発明を提供する。
項1. Trp-Tyr(WY)、Gln-Tyr(QY)、Trp-Asn(WN)、Tyr-Lys(YK)、Asn-Ile(NI)、Pro-Met(PM)、Phe-Tyr(FY)、Val-Tyr(VY)、Gln-Leu(QL)、Trp-Phe(WF)、Gly-Trp(GW)、Gln-Gly(QG)、Lys-Phe(KF)、Gln-Lys(QK)、Lys-Ala(KA)、Asp-Ala(DA)、Asp-Phe(DF)、Asp-Asn(DN)、Asp-Val(DV)、Glu-Leu(EL)、及びGly-Glu(GE)よりなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有する、GLP-1分泌促進用組成物。
項2. Trp-Tyr(WY)、Gln-Tyr(QY)、Trp-Asn(WN)、Gln-Leu(QL)、Pro-Met(PM)、Lys-Ala(KA)、Gly-Trp(GW)、Phe-Tyr(FY)、Asn-Ile(NI)、Tyr-Lys(YK)、Gln-Lys(QK)、Gln-Gly(QG)、Lys-Phe(KF)、及びTrp-Phe(WF)よりなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有する、項1に記載の組成物。
項3. Trp-Tyr(WY)、 Gln-Tyr(QY)、Trp-Asn(WN)、Gln-Leu(QL)、Pro-Met(PM)、Lys-Ala(KA)、Gly-Trp(GW)、Phe-Tyr(FY)、Asn-Ile(NI)、Lys-Phe(KF)、及びTrp-Phe(WF)よりなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有する、項1に記載の組成物。
項4. オリゴペプチドが2~10個のアミノ酸からなる、項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
項5. オリゴペプチドが2~5個のアミノ酸からなる、項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
項6. オリゴペプチドがジペプチドである、項1~3のいずれか一項に記載の組成物。
項7. Trp-Tyr(WY)、Gln-Tyr(QY)、Trp-Asn(WN)、Tyr-Lys(YK)、Asn-Ile(NI)、Pro-Met(PM)、Phe-Tyr(FY)、Val-Tyr(VY)、Gln-Leu(QL)、Trp-Phe(WF)、Gly-Trp(GW)、Gln-Gly(QG)、Lys-Phe(KF)、Gln-Lys(QK)、Lys-Ala(KA)、Asp-Ala(DA)、Asp-Phe(DF)、Asp-Asn(DN)、Asp-Val(DV)、Glu-Leu(EL)、及びGly-Glu(GE)よりなる群から選択される少なくとも1種のジペプチドを含む、GLP-1分泌促進用組成物。
項8. Trp-Tyr(WY)、Gln-Tyr(QY)、Trp-Asn(WN)、Gln-Leu(QL)、Pro-Met(PM)、Lys-Ala(KA)、Gly-Trp(GW)、Phe-Tyr(FY)、Asn-Ile(NI)、Tyr-Lys(YK)、Gln-Lys(QK)、Gln-Gly(QG)、Lys-Phe(KF)、及びTrp-Phe(WF)よりなる群から選択される少なくとも1種のジペプチドを含む、GLP-1分泌促進用組成物。
項9. Trp-Tyr(WY)、Gln-Tyr(QY)、Trp-Asn(WN)、Gln-Leu(QL)、Pro-Met(PM)、Lys-Ala(KA)、Gly-Trp(GW)、Phe-Tyr(FY)、Asn-Ile(NI)、Lys-Phe(KF)、及びTrp-Phe(WF)よりなる群から選択される少なくとも1種のジペプチドを含む、GLP-1分泌促進用組成物。
項10. Trp-Tyr(WY)、Gln-Tyr(QY)、Trp-Asn(WN)、Tyr-Lys(YK)、Asn-Ile(NI)、Pro-Met(PM)、Phe-Tyr(FY)、Val-Tyr(VY)、Gln-Leu(QL)、Trp-Phe(WF)、Gly-Trp(GW)、Gln-Gly(QG)、Lys-Phe(KF)、Gln-Lys(QK)、Lys-Ala(KA)、Asp-Ala(DA)、Asp-Phe(DF)、Asp-Asn(DN)、Asp-Val(DV)、Glu-Leu(EL)、及びGly-Glu(GE)よりなる群から選択されるアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有し、オリゴペプチドが2~3個のアミノ酸からなる、項1に記載の組成物。
項11. Trp-Tyr(WY)、Gln-Tyr(QY)、Trp-Asn(WN)、Gln-Leu(QL)、Pro-Met(PM)、Lys-Ala(KA)、Gly-Trp(GW)、Phe-Tyr(FY)、Asn-Ile(NI)、Tyr-Lys(YK)、Gln-Lys(QK)、Gln-Gly(QG)、Lys-Phe(KF)、及びTrp-Phe(WF)よりなる群から選択されるアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有し、オリゴペプチドが2~3個のアミノ酸からなる、項1に記載の組成物。
項12. Trp-Tyr(WY)、 Gln-Tyr(QY)、Trp-Asn(WN)、Gln-Leu(QL)、Pro-Met(PM)、Lys-Ala(KA)、Gly-Trp(GW)、Phe-Tyr(FY)、Asn-Ile(NI)、Lys-Phe(KF)、及びTrp-Phe(WF)よりなる群から選択されるアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有し、オリゴペプチドが2~3個のアミノ酸からなる、項1に記載の組成物。
項13. Phe-Trp-Tyr(FWY)、Phe-Tyr-Trp(FYW)、Trp-Phe-Tyr(WFY)、Trp-Tyr-Phe(WYF)、及びTyr-Trp-Phe(YWF)よりなる群から選択される少なくとも1種のトリペプチドを含有する、項1に記載の組成物。
項14. Phe-Trp-Tyr(FWY)、Trp-Tyr-Phe(WYF)、及びTyr-Trp-Phe(YWF)よりなる群から選択される少なくとも1種のトリペプチドを含有する、項1に記載の組成物。
項15. トリペプチドTyr-Phe-Trp(YFW)を含有する、GLP-1分泌促進用組成物。
項16. 飲食品組成物、医薬組成物又は医薬部外品組成物である、項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【0009】
本発明のGLP-1分泌促進用組成物は、GLP-1の分泌を促進する能力を有することから、生体に投与する又は摂取させることによって、糖尿病や肥満といった代謝異常疾患に対する予防又は改善効果を発揮することが期待される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ジペプチドのGLP-1分泌促進能を示すグラフである。
【
図2】ジペプチド(KF、GW、WF)のGLP-1分泌促進能の用量依存性を示すグラフである。
【
図3】ジペプチドの細胞傷害性を評価した結果を示すグラフである。
【
図4】トリペプチド(FWY、FYW、WFY、WYF、YFW、YWF)のGLP-1分泌促進能を示すグラフである。図左はトリペプチド濃度1 mM又は5 mMにおける、図右はトリペプチド濃度10 mMにおけるGLP-1分泌促進能を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に示す説明は、代表的な実施形態又は具体例に基づくことがあるが、本発明はそのような実施形態又は具体例に限定されるものではない。本明細書において示される各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。また、本明細書において「~」又は「-」を用いて表される数値範囲は、特に断りがない場合、その両端の数値を上限値及び下限値として含む範囲を意味する。
【0012】
本開示は、WY、QY、WN、YK、NI、PM、FY、VY、QL、WF、GW、QG、KF、QK、KA、DA、DF、DN、DV、EL、及びGEよりなる群から選択される少なくとも1つのアミノ酸配列をそのアミノ酸配列に含むオリゴペプチドを含有する、GLP-1分泌促進用組成物を提供する。ある実施形態において、GLP-1分泌促進用組成物は、GLP-1分泌促進剤、GLP-1分泌刺激用組成物、GLP-1分泌刺激剤と表すこともできる。
【0013】
GLP-1は、プレプログルカゴン(preproglucagon)からプロセッシングによって37アミノ酸残基のペプチド(GLP-1(1-37))を生じ、さらにGLP-1(1-37)のN末端側6アミノ酸残基が切断されてGLP-1(7-37)又はGLP-1(7-36)となることで生理活性を発揮する。本開示におけるGLP-1は、GLP-1分泌細胞から分泌されるものであるかぎり、前記のいずれのアミノ酸長のGLP-1であってもよい。
【0014】
本開示において、GLP-1分泌促進能とは、GLP-1分泌細胞、例えばマウス大腸内分泌細胞株であるGLUTag細胞やマウス小腸内分泌細胞癌由来のSTC-1細胞等からのGLP-1分泌量を増加させる能力を意味する。本開示におけるオリゴペプチドのGLP-1分泌促進能は、オリゴペプチドが存在する環境下にGLP-1分泌細胞を置いた場合に、オリゴペプチドを含まないこと以外は同一の環境下にGLP-1分泌細胞を置いた場合と比較して、環境中でより多くのGLP-1が検出されることによって、確認することができる。オリゴペプチドのGLP-1分泌促進能の確認は、例えば、オリゴペプチドを含有する緩衝液又は培地、オリゴペプチドを含有しない緩衝液又は培地のそれぞれを用いてGLP-1分泌細胞をインキュベートし、両方の緩衝液又は培地に含まれるGLP-1を検出又は測定し、比較することによって行うことができる。
【0015】
ある実施形態において、オリゴペプチドは、GLP-1分泌細胞からのGLP-1の分泌を1.5倍以上、好ましくは1.8倍以上、より好ましくは2倍以上、さらに好ましくは2.5倍以上、一層好ましくは3倍以上、より一層好ましくは4倍以上、特に好ましくは5倍以上に増加させることができる。別の実施形態において、オリゴペプチドは、GLP-1を分泌しない状態にあるGLP-1分泌細胞に作用して、GLP-1を分泌させることができる。
【0016】
オリゴペプチドのGLP-1分泌促進能は、オリゴペプチドを生体に投与した又は摂取させたときの血中GLP-1量の増加を測定することによって確認することもできる。
【0017】
GLP-1の検出は、公知の方法、例えば抗GLP-1抗体を用いたELISA等の免疫化学的手法によって行うことができる。
【0018】
本開示において、オリゴペプチドは、複数個のアミノ酸残基から、例えば2~20個、好ましくは2~10個、より好ましくは2~5個、さらに好ましくは2、3又は4個のアミノ酸残基から構成される。
【0019】
オリゴペプチドは、WY、QY、WN、YK、NI、PM、FY、VY、QL、WF、GW、QG、KF、QK、KA、DA、DF、DN、DV、EL、及びGEよりなる群から選択されるジペプチドであってもよく、前記ジペプチドのN末端側及び/又はC末端側に1又は複数個のアミノ酸残基が付加されたオリゴペプチドであってもよい。また、オリゴペプチドは、4個以上のアミノ酸残基から構成されるとき、WY、QY、WN、YK、NI、PM、FY、VY、QL、WF、GW、QG、KF、QK、KA、DA、DF、DN、DV、EL、及びGEよりなる群から選択される2種以上をそのアミノ酸配列に含んでもよい。
【0020】
好ましい実施形態において、オリゴペプチドは、WY、QY、WN、QL、PM、KA、GW、FY、NI、YK、QK、QG、及びKF、及びWFよりなる群から選択されるジペプチドであるか、あるいは前記ジペプチドのN末端側及び/又はC末端側に1又は複数個のアミノ酸残基が付加されたオリゴペプチドである。
【0021】
別の好ましい実施形態において、オリゴペプチドは、WY、QY、WN、QL、PM、KA、GW、FY、NI、KF、及びWFよりなる群から選択されるジペプチドであるか、あるいは前記ジペプチドのN末端側及び/又はC末端側に1又は複数個のアミノ酸残基が付加されたオリゴペプチドである。ジペプチドのN末端側及び/又はC末端側に1又は複数個のアミノ酸残基が付加されたオリゴペプチドは、例えばFWY、FYW、WFY、WYF、及びYWFよりなる群から選択されるトリペプチドであり、好ましくは、FWY、WYF、及びYWFよりなる群から選択されるトリペプチドである。
【0022】
オリゴペプチドを構成するアミノ酸残基は、それぞれ独立してL-体又はD-体であってもよいが、いずれもL-体であることが好ましい。また、GLP-1分泌促進用を有する限りにおいて、オリゴペプチドは化学修飾されていてもよい。化学修飾としては、例えば、アミノ酸残基のアミノ基の修飾(ビオチン化、ミリストイル化、パルミトイル化、アセチル化、マレイミド化、メチル化、マロニル化等)、カルボキシル基の修飾(アミド化、エステル化等)、チオール基の修飾(ファルネシル化、ゲラニル化、メチル化、パルミトイル化等)、水酸基の修飾(リン酸化、硫酸化等)、PEG化、グリコシル化等を挙げることができる。これら化学修飾は、公知の方法によって行うことができる。
【0023】
本開示におけるオリゴペプチドは、塩(酸付加塩又は塩基付加塩)の形態であってもよい。酸付加塩としては、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、硫酸塩、ヨウ化水素酸塩、硝酸塩、リン酸塩等の無機酸塩、クエン酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩、ギ酸塩、プロピオン酸塩、安息香酸塩、トリフルオロ酢酸塩、マレイン酸塩、酒石酸塩、メタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、パラトルエンスルホン酸塩等の有機酸塩が挙げられる。塩基付加塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、アンモニウム塩等の無機塩基塩、トリエチルアンモニウム塩、トリエタノールアンモニウム塩、ピリジニウム塩、ジイソプロピルアンモニウム塩等の有機塩基塩等が挙げられる。
【0024】
本開示におけるオリゴペプチドは、溶媒和物の形態であってもよい。溶媒和物における溶媒の例としては、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、酢酸、テトラヒドロフラン、アセトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、アセトアミド、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジメトキシエタン等が挙げられる。
【0025】
本開示におけるオリゴペプチドは、一般的なペプチド合成法によって、例えばFmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)やtBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成方法によって作製することができる。また、オリゴペプチドをその一部に含むタンパク質を低分子化し、得られたオリゴペプチドを含む組成物をそのまま、あるいは濃縮して、GLP-1分泌促進用組成物として用いることもできる。
【0026】
また、YK、QY、PM、WY、WN、VY、QL、WF、GW、QG及びKAは、DPP-4(dipeptidylpeptidase-4)に対する阻害活性を有しており(Lan V.T., et al., Food Chemistry, 2015, vo. 15, no. 175, 66-73 ; Nongonierma A. B., et al., Food Chemistry. 2013, vol. 141, no. 1, 644-653. : Gallego M, et al., Meat Science, 2014, vol. 96, no. 2, 757-761)、GLP-1の分泌誘導に加えて、GLP-1に対するDPP-4の分解を抑制することができる点において好ましいオリゴペプチドである。
【0027】
GLP-1分泌促進用組成物は、WY、QY、WN、YK、NI、PM、FY、VY、QL、WF、GW、QG、KF、QK、KA、DA、DF、DN、DV、EL、及びGEよりなる群から選択される少なくとも1つをそのアミノ酸配列に含む2種以上のオリゴペプチドの任意の組み合わせを含むことができ、組み合わせにおける個々のオリゴペプチドの配合比率は任意である。また、GLP-1分泌促進用組成物は、1又は複数のオリゴペプチドと、例えば特許文献1~4に記載のGLP-1分泌促進能を有する物質等の公知のGLP-1分泌促進能を有する物質との組み合わせを含むものであってもよい。
【0028】
GLP-1分泌促進用組成物は、インビトロ及びインビボで、GLP-1分泌に関する研究のためのリサーチツールとして好適に用いることができる。
【0029】
また、GLP-1分泌促進用組成物は、生体内でGLP-1の分泌を促進するために、さらには生体内でGLP-1の生理機能を発揮させるために、例として糖代謝の改善、例えばインスリン分泌促進、血糖値低下、筋肉への糖取り込み促進等のために、及び食欲及び摂食の抑制のために用いることができる。
【0030】
さらに、GLP-1分泌促進用組成物は、インビボで、GLP-1の分泌促進が望まれる疾患又は状態の処置のために用いることができる。本開示において、疾患又は状態の処置とは、疾患又は状態の治療、寛解、改善又は予防を目的とする全ての介入を意味する。疾患又は状態の処置は、例えば、疾患又は状態の進行の遅延又は停止、病変の退縮又は消失、発症の予防又は再発の防止等を包含する。
【0031】
GLP-1の分泌促進が望まれる疾患又は状態としては、糖代謝異常を伴う疾患又は症状、例えば高血糖症、2型糖尿病等;脂質代謝異常を伴う疾患又は症状、例えば高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、肥満、脂肪肝等;糖代謝異常と脂質代謝異常の両方を伴う疾患又は状態、例えばメタボリックシンドローム、2型糖尿病を伴う糖尿病性脂質異常症等を挙げることができる。
【0032】
GLP-1分泌促進用組成物は、飲食品組成物、医薬組成物又は医薬部外品組成物であり得る。飲食品組成物は、経口又は経管での摂取が可能なものであればよい。飲食品組成物は、オリゴペプチドに加えて、他の飲食品成分や、飲食品への添加が許容される添加剤等の成分を含有することができる。本開示において、飲食品組成物は、飲料(飲料の濃縮原液及び調整用粉末を含む)、調味料を含む一般的な加工食品、サプリメント、健康食品(機能性飲食品)、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品)を幅広く含むものとして理解される。
【0033】
ある実施形態において、飲食品組成物は、糖代謝異常及び/若しくは脂質代謝異常の改善、又はそれから科学的に導かれる好ましい作用が表示される保健機能食品(特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品)である。
【0034】
飲食品組成物は、例えば、デキストリン、デンプン等の糖類;ゼラチン、大豆タンパク、トウモロコシタンパク等のタンパク質;アラニン、グルタミン、イソロイシン等のアミノ酸類;セルロース、アラビアゴム等の多糖類;大豆油、中鎖脂肪酸トリグリセリド等の油脂類といった成分を添加して任意の形状の飲食品組成物として製造することができる。
【0035】
医薬組成物及び医薬部外品組成物は、オリゴペプチドに加えて、薬学的に許容される添加剤、例えば緩衝剤、安定剤、保存剤、賦形剤等を含有することができる。薬学的に許容される添加剤は当業者に周知であり、当業者が通常の実施能力の範囲内で適宜選択して使用することができる。
【0036】
ある実施形態において、GLP-1分泌促進用組成物は、経口摂取用の組成物であり得る。GLP-1分泌促進用組成物は、例えば搾汁(ジュース)、ペースト、乾燥粉末、エキス等の形態であってもよく、飲食品の形態であってもよく、又は製剤化されていてもよい。経口摂取用のGLP-1分泌促進用組成物の製剤は、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、細粒剤、丸剤、懸濁剤、乳剤、液剤、シロップ剤等の経口剤である。
【0037】
別の実施形態において、GLP-1分泌促進用組成物は、非経口摂取用の組成物であり得る。非経口摂取用のGLP-1分泌促進用組成物の製剤は、例えば、注射剤、点滴剤、経腸剤、外用剤等の非経口製剤である。非経口摂取用のGLP-1分泌促進用組成物の投与経路としては、例えば、血管内投与(好ましくは静脈内投与)、腹腔内投与、筋肉内投与、皮下投与、腸管内投与、経皮投与、局所投与等を挙げることができる。
【0038】
GLP-1分泌促進用組成物は、ヒト及び非ヒト動物、又はこれらに由来する器官、組織若しくは細胞に対して適用することができる。非ヒト動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモットを含むげっ歯類、チンパンジー、アカゲザルを含む霊長類、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジを含む家畜、イヌ、ネコを含む愛玩動物等を挙げることができる。
【0039】
GLP-1分泌促進用組成物は、GLP-1の分泌促進に有効な量のオリゴペプチドを含有する。また、医薬組成物であるGLP-1分泌促進用組成物は、GLP-1の分泌促進が望まれる疾患又は状態の処置に有効な量のオリゴペプチドを含有する。ここで有効量は、用法、対象の年齢、性別、体重、疾患又は状態の種類及び程度、剤形、投与経路その他の要因に応じて適宜決定することができる。GLP-1分泌促進用組成物は、オリゴペプチド以外の有効成分又は生理活性物質を含有してもよい。
【0040】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、これらの実施例は本発明の理解を助けるためのものであって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【実施例0041】
(1)細胞株
マウス大腸内分泌細胞株GLUTag(Dr. DJ. Drucker, University of Tronto, Canadaより供与)を用いた。GLUTag細胞はGLP-1の前駆体であるProglucagon遺伝子を発現しており、種々の生理的刺激に応じてGLP-1を分泌する。GLUTag細胞は、37℃、5% CO2条件下、非働化処理を行った10% FBS(Gibco)を含むDulbecco’s Modified Eagle Medium(DMEM, Gibco)培地で培養した。
【0042】
(2)ジペプチドライブラリーを用いたGLP-1分泌促進能試験
96 wellプレート(CORNING)に0.01%ポリ-L-リシン(PLL)溶液(SIGMA)を20 μL/well添加し、5分後に溶液をアスピレーターで完全に除去した。100μL/wellの滅菌水を添加してアスピレーターで除去する操作を2回行い、2時間以上クリーンベンチ内で風乾して、PLLコーティングプレートを作製した。
【0043】
375種のジペプチドから構成されるジペプチドライブラリーをAnaspec社より購入した。このライブラリーに含まれないジペプチドのうち、FPをBachem AGより、GLをペプチド研究所より、PLをSigma Aldrichより購入した。ジペプチドは、HEPES緩衝液(20 mM Hepes、140 mM NaCl、4.5 mM KCl、1. 2 mM MgCl2、1.2 mM CaCl2、10 mM Glucose、pH 7.4、難溶性ペプチドの場合は0.2%DMSOを添加)に5 mg/mLとなるように溶解して、ジペプチド溶液とした。
【0044】
PLLコーティングされた96 wellプレートにGLUTag細胞懸濁液を0.96×105 cells/wellとなるように播種し、37℃で2日間培養後、培地をアスピレータで吸引除去した。100μL/wellのHEPES緩衝液を添加してからアスピレーターを用いてHEPES緩衝液を除去する操作を2回行った後、ジペプチド溶液25μLをウェルに添加して、CO2インキュベーター内で1時間インキュベートした。また、ポジティブコントロールとして、ジペプチド溶液に代えて70 mM KCl溶液(20 mM Hepes、74.5 mM NaCl、1. 2 mM MgCl2、1.2 mM CaCl2、10 mM Glucose、pH 7.4)を別のウェルに添加した。インキュベート後、ウェル内の液体を全量回収して遠心分離で細胞を除去し、得られた上清試料20μLを-80℃で保存した。
【0045】
解凍した上清試料5μLを、GLP-1 ELISA Kit Wako, High Sensitive(Wako)を用いたELISAに供し、主波長450 nm、参照波長620 nmにおける吸光度を測定した。試験したジペプチドのアミノ酸配列と、ブランク(HEPES緩衝液のみを添加したウェル)の吸光度に対する各ジペプチドを添加したウェルの吸光度の比を、表1に示す。
【表1】
【0046】
ジペプチドYK、NI、QY、PM、WY、EL、DN、WN、FY、GE、VY、QL、DV、WF、DA、QG、KF、DF、QK及びKA(表1中、薄い網掛け)は、ブランクに対する吸光度比が1.5を超えた。これらのジペプチドは、GLUTag細胞のGLP-1産生を促進する能力があると考えられた。
【0047】
(4)GLP-1分泌促進能の再試験
以下の22種類のジペプチドを以下の製造業者から入手して、GLP-1分泌促進能を再試験した。ジペプチドは、HEPES緩衝液(難溶性ペプチドの場合は0.2%DMSOを含むHEPES緩衝液)に5 mg/mLとなるように溶解して、ジペプチド溶液とした。
QL、QK、QG、QY、PM、KA、KF、GW、YK、DN:greiner社
DA、DV:Bachem社
DF、GE:Sigma Aldrich社
FY:Combi-Blocks
VY:渡辺化学工業
WF:Bachem AG
NI、WY、WN、EL:アズワン
GL:ペプチド研究所
【0048】
PLLコーティングされていない48 wellプレートにGLUTag細胞懸濁液を1.5×105 cells/wellとなるように播種し、37℃で2日間培養後、培地をアスピレータで吸引除去した。100μL/wellのHEPES緩衝液を添加してからアスピレーターを用いてHEPES緩衝液を除去する操作を2回行った後、ジペプチド溶液80μLをウェルに添加して、CO2インキュベーター内で1時間インキュベートした。また、ポジティブコントロールとして、ジペプチド溶液に代えて上述の70 mM KCl溶液を別のウェルに添加した。インキュベート後、ウェル内の液体を全量回収して遠心分離で細胞を除去し、得られた上清試料65μLを-80℃で保存した。
【0049】
解凍した上清試料10または15μLを、GLP-1 ELISA Kit Wako, High Sensitive(Wako)を用いたELISAに供し、波長主波長450 nm、参照波長620 nmにおける吸光度を測定した。標準品を用いた測定結果から検量線を作成し、上清試料に含まれるGLP-1の濃度を算出した。その結果、QL、QY、PM、KA、GW、FY、NI、WN、及びWYのいずれかを含む緩衝液にてインキュベートした際の上清中GLP-1濃度が、ペプチドを含まない緩衝液にてインキュベートした際(Blank)よりも有意に高いことが確認された(
図1)。また、YK、QK、QG及びKFのいずれかを含む緩衝液にてインキュベートした際の上清中GLP-1濃度は、ペプチドを含まない緩衝液にてインキュベートした際(Blank)よりも、有意ではないものの増加していた。
【0050】
(5)GLP-1分泌促進能の用量依存性に関する試験
ジペプチドKF、GW及びWFについて、濃度1 mg/mL、2 mg/mL、5 mg/mLの溶液を調製し、(4)と同様にGLP-1分泌促進能を試験した。その結果、ジペプチドKF又はGWを含む緩衝液にてインキュベートした際の上清中GLP-1濃度は、ジペプチド濃度が高いほど増加することが確認された。また、ジペプチドWFを含む緩衝液にてインキュベートした際の上清中GLP-1濃度は、ジペプチド濃度2 mg/mLにおいて最も高いことが確認された(
図2)。
【0051】
(6)細胞毒性試験
Cytotoxicity LDH Assay Kit-WST(同仁化学研究所)を製造業者のプロトコールに従って用いて、(4)で試験したジペプチドの細胞毒性を評価した。その結果、いずれにも細胞毒性は検出されなかったことから(
図3)、これらのジペプチド添加時の上清試料中のGLP-1濃度の上昇は傷害された細胞からの漏出ではなく、分泌であることが示された。
【0052】
興味深いことに、初代培養L細胞のGLP-1分泌を促進することが知られているジペプチドGL及びGFは、本実施例においてGLP-1分泌促進活性を示さなかった。ペプチドによるGLP-1の分泌促進には、GLP-1分泌細胞表面に発現しているペプチドトランスポーター-1(PEPT-1)及びカルシウム感知受容体(calcium-sensing receptor;CaSR)が関与するものと推測されている(T. Hira et al., Int. J. Mol. Sci., 2021, 22, 6623)。初代培養のL細胞はPEPT-1、CaSRのいずれも発現している一方、GLUTag細胞はいずれも低発現又は発現していない(E. Diakogiannaki, et al., Diabetologia, 2013, vol. 56, 2688-2696)ことを考慮すると、理論に拘束されるものではないが、本実施例でGLP-1分泌促進能を示したジペプチドは、初代培養L細胞において見られるPEPT-1やCaSRが関与する機構とは異なる機構によってGLP-1分泌を促進したものと推測される。
【0053】
(7)トリペプチドを用いたGLP-1分泌促進能試験
6種類のトリペプチドFWY、FYW、WFY、WYF、YFW及びYWFをgreiner社から入手して、GLP-1分泌促進能を試験した。トリペプチドは、HEPES緩衝液(難溶性ペプチドの場合は0.2%DMSOを含むHEPES緩衝液)に1 mM、5 mM、10 mMとなるように溶解して、トリペプチド溶液とした。また、(4)で用意したジペプチドWFを含む緩衝液も比較のために試験に供した。
【0054】
PLLコーティングされていない48 wellプレートにGLUTag細胞懸濁液を1.5×105 cells/wellとなるように播種し、37℃で2日間培養後、培地をアスピレータで吸引除去した。100μL/wellのHEPES緩衝液を添加してからアスピレーターを用いてHEPES緩衝液を除去する操作を2回行った後、トリペプチド溶液80μLをウェルに添加して、CO2インキュベーター内で1時間インキュベートした。インキュベート後、ウェル内の液体を全量回収して遠心分離で細胞を除去し、得られた上清試料65μLを-80℃で保存した。
【0055】
解凍した上清試料10または15μLを、GLP-1 ELISA Kit Wako, High Sensitive(Wako)を用いたELISAに供し、波長主波長450 nm、参照波長620 nmにおける吸光度を測定した。標準品を用いた測定結果から検量線を作成し、上清試料に含まれるGLP-1の濃度を算出した。その結果、いずれのトリペプチドも、濃度5 mMにおいて、ペプチドを含まない緩衝液(Blank)又はWY溶液にてインキュベートした際よりもGLP-1分泌促進能は高く、特にFWY、WYF及びYWFの5 mM濃度におけるGLP-1分泌促進能は、ブランクの約3~6倍であることが確認された(
図4左)。YFWは1 mMにおいてブランクの2倍のGLP-1分泌促進能を示した。濃度10 mMにおいては、FWY及びWYFが高いGLP-1分泌促進能を示し、WFY、YFW、YWFもブランクよりも有意に高いGLP-1分泌を示した(
図4右)。