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特開2024-18940シャローフライ用油脂組成物、シャローフライ用油脂組成物の製造方法およびシャローフライ用油脂組成物を用いたフライ時間を短縮する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018940
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】シャローフライ用油脂組成物、シャローフライ用油脂組成物の製造方法およびシャローフライ用油脂組成物を用いたフライ時間を短縮する方法
(51)【国際特許分類】
   A23D 9/00 20060101AFI20240201BHJP
   A23D 9/013 20060101ALI20240201BHJP
   A23L 5/10 20160101ALI20240201BHJP
   A23L 35/00 20160101ALN20240201BHJP
   A23L 13/00 20160101ALN20240201BHJP
   A23L 17/00 20160101ALN20240201BHJP
   A23L 17/40 20160101ALN20240201BHJP
【FI】
A23D9/00 506
A23D9/013
A23L5/10 D
A23L35/00
A23L13/00 A
A23L17/00 A
A23L17/40 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023072409
(22)【出願日】2023-04-26
(31)【優先権主張番号】P 2022120911
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】302042678
【氏名又は名称】株式会社J-オイルミルズ
(72)【発明者】
【氏名】土倉 則子
(72)【発明者】
【氏名】松嶋 みゆき
(72)【発明者】
【氏名】桐山 知樹
(72)【発明者】
【氏名】草間 健
(72)【発明者】
【氏名】加茂 修一
(72)【発明者】
【氏名】石田 弘樹
(72)【発明者】
【氏名】平岡 香織
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 久美子
【テーマコード(参考)】
4B026
4B035
4B036
4B042
【Fターム(参考)】
4B026DC06
4B026DG02
4B026DG04
4B026DG05
4B026DK01
4B026DK10
4B026DP10
4B026DX01
4B035LC16
4B035LE17
4B035LG07
4B035LG09
4B035LG12
4B035LG34
4B035LG35
4B035LK12
4B035LK15
4B035LP07
4B035LP27
4B036LF13
4B036LH08
4B036LH13
4B036LP03
4B036LP12
4B042AD18
4B042AE03
4B042AG03
4B042AG07
4B042AG72
4B042AH01
4B042AK05
4B042AK06
4B042AK12
4B042AK14
4B042AP05
4B042AP19
(57)【要約】
【課題】
シャローフライに適した油脂組成物を提供する。より具体的には、シャローフライのフライ時間を短縮することができる油脂組成物を提供する。
【解決手段】
食用油脂およびグリセリン脂肪酸エステルを含むシャローフライ用油脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
食用油脂およびグリセリン脂肪酸エステルを含むシャローフライ用油脂組成物。
【請求項2】
前記グリセリン脂肪酸エステルを、前記シャローフライ用油脂組成物中に0.05質量%以上5質量%以下含む、請求項1に記載の前記シャローフライ用油脂組成物。
【請求項3】
前記グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸がオレイン酸および縮合リシノレイン酸から選ばれる1種または2種である、請求項1または2に記載のシャローフライ用油脂組成物。
【請求項4】
前記グリセリン脂肪酸エステルがポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよびポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種または2種以上である、請求項1または2に記載のシャローフライ用油脂組成物。
【請求項5】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリンの平均重合度が2以上15以下である、請求項4に記載のシャローフライ用油脂組成物。
【請求項6】
前記グリセリン有機酸脂肪酸エステルがグリセリンクエン酸モノオレイン酸エステルである、請求項4に記載のシャローフライ用油脂組成物。
【請求項7】
前記グリセリン脂肪酸エステルのHLBが3以上10以下である、請求項1または2に記載のシャローフライ用油脂組成物。
【請求項8】
シャローフライに供する揚げ種がバッターにより被覆される、請求項1または2に記載のシャローフライ用油脂組成物。
【請求項9】
食用油脂にグリセリン脂肪酸エステルを添加する工程を含むシャローフライ用油脂組成物の製造方法。
【請求項10】
食用油脂にグリセリン脂肪酸エステルを添加する工程を含む製造方法で得られる油脂組成物を用いた、フライ時間を短縮する方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シャローフライ用油脂組成物、シャローフライ用油脂組成物の製造方法およびシャローフライ用油脂組成物を用いたフライ時間を短縮する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、調理の簡便化に対する需要が高まっている。特に、フライ調理はフライ油の処理や調理場の清掃などの観点から、なるべく少量のフライ油でフライ調理をしたいという要望がある。しかし、少量のフライ油でフライ調理(以下シャローフライとも記載)をすると、揚げ種投入による油温低下や揚げ種全体がフライ油に浸らないことから、揚げ時間を長くしないと生焼けになる、外観や食感が不良になるといった課題がある。
【0003】
シャローフライの課題を解決する手段として、特許文献1には、小麦粉、小麦粉以外の穀粉0.5~50質量%、乳化剤0.3~10質量%及び膨張剤0.05~5質量%を含有する揚げ物用ミックスが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2017/204324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1はシャローフライ用の油脂組成物については開示も示唆もない。さらに、フライ時間の短縮については記載されていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意検討したところ、特定の乳化剤を含む油脂組成物を用いると、シャローフライをしても外観や食感を損なわず、かつ火通りがよくフライ時間を短縮できることを見出した。また、当該油脂組成物をフライ調理に供すると、フライ時の油ハネが抑制されることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下のシャローフライ用油脂組成物、シャローフライ用油脂組成物の製造方法、シャローフライ用油脂組成物を用いた、フライ時間を短縮する方法が提供される。
[1]
食用油脂およびグリセリン脂肪酸エステルを含むシャローフライ用油脂組成物。
[2]
前記グリセリン脂肪酸エステルを、前記シャローフライ用油脂組成物中に0.05質量%以上5質量%以下含む、[1]に記載の前記シャローフライ用油脂組成物。
[3]
前記グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸がオレイン酸および縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種または2種である、[1]または[2]に記載のシャローフライ用油脂組成物。
[4]
前記グリセリン脂肪酸エステルがポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよびポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種または2種以上である、[1]乃至[3]いずれか1項に記載のシャローフライ用油脂組成物。
[5]
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリンの平均重合度が2以上15以下である、[4]に記載のシャローフライ用油脂組成物。
[6]
前記グリセリン有機酸脂肪酸エステルがグリセリンクエン酸モノオレイン酸エステルである、[4]に記載のシャローフライ用油脂組成物。
[7]
前記グリセリン脂肪酸エステルのHLBが3以上10以下である、[1]乃至[6]いずれか1項に記載のシャローフライ用油脂組成物。
[8]
シャローフライに供する揚げ種がバッターにより被覆される、[1]乃至[7]いずれか1項に記載のシャローフライ用油脂組成物。
[9]
食用油脂にグリセリン脂肪酸エステルを添加する工程を含むシャローフライ用油脂組成物の製造方法。
[10]
食用油脂にグリセリン脂肪酸エステルを添加する工程を含む製造方法で得られる油脂組成物を用いた、フライ時間を短縮する方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、グリセリン脂肪酸エステルを含むシャローフライ用油脂組成物、グリセリン脂肪酸エステルを添加する工程を含むシャローフライ用油脂組成物の製造方法、グリセリン脂肪酸エステルを含むシャローフライ用油脂組成物を用いた、フライ時間を短縮する方法を提供することができる。
また、本発明のグリセリン脂肪酸エステルを含むシャロ―フライ用油脂組成物によれば、フライ時の油ハネを抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。なお、これらの各構成の任意の組み合わせや、本発明の表現を方法、装置などの間で変換したものもまた本発明の態様として有効である。
また、本明細書において数値範囲の上限値および下限値を示したときは、上限値および下限値を適宜組み合わせることができ、それにより得られた数値範囲も開示しているものとする。
【0010】
本発明におけるシャローフライとは、フライ調理において、少量のフライ油でフライ調理を行う調理法である。例えば、フライパンや鍋などの調理器具の底面から、フライ油の高さ最も高い部分が10mm以下のものをいう。例えば、油の高さが揚げ種の厚さの20%以上90%であるものをいう。
【0011】
本発明のシャローフライ用油脂組成物は、食用油脂とグリセリン脂肪酸エステルを含むことを特徴とする。
以下、シャローフライ用油脂組成物中の各成分について説明する。
【0012】
(食用油脂)
シャローフライ用油脂組成物に用いられる原料油脂としては、食品に供される油脂であれば特に限定されないが、例えば、菜種油、大豆油、コーン油、米油、落花生油、紅花油、ひまわり油、綿実油、ごま油、ぶどう種子油、亜麻仁油、えごま油、クルミ油、カボチャ種子油、椿油、茶実油、オリーブ油、小麦胚芽油、パームオレイン、パーム油、パーム核油、ヤシ油、サル脂、カカオ脂、シア脂などの植物油脂;牛脂、豚脂、鶏脂、乳脂、魚油などの動物油脂;中鎖脂肪酸トリグリセリドなどの合成油脂などが挙げられる。
また、これらの油脂を、硬化、分別およびエステル交換から選ばれる1種または2種以上の処理をした加工油脂を使用することができる。これらの原料油脂は、1種または2種以上を混合して用いてもよい。好ましくは菜種油、大豆油、コーン油、ひまわり油、パームオレインから選ばれる1種または2種以上を含み、より好ましくは菜種油、大豆油、コーン油、パームオレインから選ばれる1種または2種以上を含み、さらに好ましくは菜種油または大豆油から選ばれる1種または2種を含む。
【0013】
(グリセリン脂肪酸エステル)
グリセリン脂肪酸エステルは乳化剤の1種である。本実施形態において、シャローフライ用油脂組成物に含まれるグリセリン脂肪酸エステルの含有量は、シャローフライ用油脂組成物中に0.05質量%以上5質量%であり、好ましくは0.08質量%以上3質量%以下であり、より好ましくは0.08質量%以上2質量%以下であり、さらに好ましくは0.1質量%以上1質量%以下である。
【0014】
グリセリン脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、特に限定されないが、好ましくは炭素数が12以上22以下の脂肪酸であり、より好ましくは炭素数が14以上20以下の脂肪酸であり、さらに好ましくは炭素数が18の脂肪酸であり、さらにより好ましくはオレイン酸および縮合リシノレイン酸から選ばれる1種または2種である。
【0015】
グリセリン脂肪酸エステルのHLBは、3以上10以下であり、4以上9以下であることが好ましく、5以上8以下であることがより好ましい。
【0016】
グリセリン脂肪酸エステルの種類としては、モノグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよびグリセリン縮合リシノレイン酸エステルなどが挙げられるが、好ましくはポリグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステルおよびポリグリセリ縮合リシノレイン酸エステルから選ばれる1種または2種以上である。
【0017】
前記ポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリンの平均重合度は2以上15以下であり、好ましくは2以上13以下であり、より好ましくは2以上10以下である。
【0018】
グリセリン有機酸脂肪酸エステルとしては、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステルなどが挙げられるが、好ましくはグリセリンクエン酸脂肪酸エステルである。また、グリセリンクエン酸脂肪酸エステルとしては、グリセリンクエン酸モノオレイン酸エステルが好ましい。
【0019】
本発明のシャローフライ用油脂組成物には、本発明の目的および効果を阻害しない範囲で、食用油脂およびグリセリン脂肪酸エステル以外の成分を含んでもよい。たとえば、シリコーン、前記グリセリン脂肪酸エステル以外の乳化剤、香料、酵素製剤、アルカリ製剤、リン酸塩、増粘剤、色素、酸化防止剤、静菌剤、調味料などの通常食品に用いられる成分が挙げられる。
【0020】
(揚げ種)
一般的にフライ調理は、野菜などをそのまま素揚げする方法、揚げ種にブレッダーをまぶしてフライする方法、揚げ種にバッターを被覆してフライする方法が知られている。本実施形態において、フライ調理に適用される食品としては、例えば、野菜の素揚げ;穀粉と水、卵、砂糖などを混ぜた生地を揚げるドーナツ、揚げパン、アメリカンドッグ、クルトン;米を主成分とする生地を揚げる揚げ米菓;揚げ種にブレッダーをまぶしてフライする唐揚げ、竜田揚げ、揚げ豆腐;揚げ種にバッターを被覆するフリッター類、トンカツ、チキンカツ、チキン南蛮、魚フライ、天ぷら、コロッケ、メンチカツ、チキンナゲットなどが挙げられるが、好ましくは揚げ種にバッターを被覆してフライするものが好ましい。揚げ種として用いられる具材としては、エビ、イカ、ホタテ、キス、ハゼ、アジ、アナゴなどの魚介類、ニンジン、玉ねぎ、ナス、インゲン、サツマイモ、カボチャ、ジャガイモ、ゴボウ、アスパラガスなどの野菜類、シイタケ、マイタケ、エノキなどのキノコ類、牛肉、豚肉、鶏肉、鴨肉などの肉類、これらを加工した魚介類のすり身やクリームコロッケの中具、カレーパンの生地などが挙げられる。
【0021】
(シャローフライ用油脂組成物の製造方法)
本発明のシャローフライ用油脂組成物は、食用油脂にグリセリン脂肪酸エステルを添加する工程を含むことを特徴とする。例えば、食用油脂を60℃程度に加温して、グリセリン脂肪酸エステルを所定量添加した後、攪拌して充分に溶解して製造することができる。また、食用油脂の一部と所定量のグリセリン脂肪酸エステルを60℃程度に加温し、攪拌して充分に溶解した後に、食用油脂を所定量になるまで加えて製造することができる。
【0022】
(フライ時間の短縮方法)
本発明のシャローフライ用油脂組成物を用いてシャローフライすると、グリセリン脂肪酸エステルを添加しない油脂組成物でシャローフライしたものと比較して、フライ時間を短縮することができる。具体的には、本発明のシャローフライ用油脂組成物でフライすると、揚げ種の火通りが早くなる。
【0023】
フライ時間は、好ましくは1分以上20分以下であり、より好ましくは4分以上20分以下である。
【0024】
シャローフライの温度は、好ましくは150℃以上200℃以下であり、より好ましくは160℃以上200℃以下である。
【0025】
(油ハネ抑制方法)
本発明のシャロ―フライ用油脂組成物を用いてシャロ―フライすると、グリセリン脂肪酸エステルを添加しない油脂組成物でシャロ―フライしたものと比較して、フライ調理時の油ハネを抑制することができる。具体的には、本発明のシャロ―フライ用油脂組成物でフライすると揚げ種からの水抜けをスムーズなものとし、突沸を抑制することができる。
【実施例0026】
以下に、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれに限定するものではない。
【0027】
(グリセリン脂肪酸エステル)
表1には、以下の試験で使用したグリセリン脂肪酸エステルをまとめて示す。
【0028】
【表1】
【0029】
また、試験で用いた食用油脂を以下に示す。
【0030】
(食用油脂)
大豆油:精製大豆油、株式会社J-オイルミルズ製
菜種油:精製菜種油、株式会社J-オイルミルズ製
パームオレイン:ヨウ素価67、株式会社J-オイルミルズ製
【0031】
(シャローフライ用油脂組成物の調製方法)
所定の配合になるように、食用油脂にグリセリン脂肪酸エステルを添加して実施例のシャローフライ用油脂組成物を得た。具体的には、以下の方法で調製した。
(1)所定量のグリセリン脂肪酸エステルを、60℃に加温した。
(2)所定量の約1/10量の食用油脂を60℃に加温し、(1)のグリセリン脂肪酸エステルを加えて攪拌し完全に溶解させた。
(3)常温の食用油脂を、所定の配合になるように、攪拌しながら(2)に加えた。
【0032】
<試験1>
表2に示す配合で実施例1-1のシャローフライ用油脂組成物を調製した。
【0033】
表2に記載した油量の対照例、比較例および実施例1-1のシャローフライ用油脂組成物を、直径26cmの平底フライパンに入れ、180℃に加熱した。加熱した油脂に、厚さ15mmの冷凍コロッケ(Newポテトコロッケ60、味の素冷凍食品株式会社製)を各フライパンに4個ずつ入れて5分間フライした。フライ後、油切りをして内部温度の測定を行った。
【0034】
なお、内部温度の測定は以下の手順で行った。
ハンディ型温度計(商品名:携帯用温度計DP-350、理化工業株式会社製)のプローブ部をフライ後のコロッケの長軸方向に深さ70mmまで差し込み、温度を測定した。
内部温度の評価結果を表2に示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示したとおり、対照例1の油脂から油量を少なくした比較例1では、内部温度が低く、火通りが悪くなっていた。一方、実施例1-1のシャローフライ用油脂組成物でフライしたコロッケは、比較例1の油量と同じにも関わらず、対照例1よりも内部温度が高く、火通りがよくなっていた。
【0037】
<試験2>
表3に示す配合で実施例2-1のシャローフライ用油脂組成物を調製した。
【0038】
表3に記載した油量の対照例、比較例および実施例2-1のシャローフライ用油脂組成物を、直径28cmの平底フライパンに入れ、160℃に加熱した。加熱した油脂に、厚さ15mmの冷凍コロッケ(Newポテトコロッケ60、味の素冷凍食品株式会社製)を各フライパンに5個ずつ入れて5分間フライした。フライ後、油切りをして外観および食感の評価を行った。評価結果を表3に示す。
【0039】
【表3】
【0040】
表3に示したとおり、対照例2の油脂から油量を少なくした比較例2でフライしたコロッケの食感および外観が不良であったのに対し、実施例2-1のシャローフライ用油脂組成物でフライしたコロッケは、比較例2の油量と同じにも関わらず、対照例2と同等の外観および食感であった。試験1および試験2の結果から、本発明のシャローフライ用油脂組成物でフライをすると、油量を少なくしても火通りがよく、外観および食感の良好な揚げ物が得られることが示された。
【0041】
<試験3>
表4に示す配合で実施例2-1~実施例2-3のシャローフライ用油脂組成物を調製した。
【0042】
以下に示す(チキン南蛮の調製方法)および(トンカツの調製方法)に従って、チキン南蛮およびトンカツを調製した。
【0043】
(チキン南蛮の調製方法)
(1)皮を取った鶏むね肉(約300g、厚さ約25mm~30mm)に、小麦粉(商品名:日清クッキングフラワー、株式会社日清製粉ウェルナ製)、卵の順に衣付けした。
(2)直径28cmのフライパンに、表4に記載した油量の対照例、比較例および実施例3-1~実施例3-3のシャローフライ用油脂組成物を入れ160℃に加熱した。
(3)衣付けした肉をフライパンに投入し、片面8分、裏返して7分、計15分揚げた。
【0044】
(トンカツの調製方法)
下記手順により、トンカツを調製した。
(1)豚ヒレブロックを5cm×7cm×厚さ2cmになるようにカットした(一切れ約40g)。
(2)カットした肉に、小麦粉(商品名:日清クッキングフラワー、株式会社日清製粉ウェルナ製)、卵、パン粉(商品名;フライスター7、フライスター株式会社製)の順に衣付けした。
(3)直径28cmのフライパンに、表4に記載した油量の対照例、比較例および実施例3-1~実施例3-3のシャローフライ用油脂組成物を入れ180℃に加熱した。
(4)衣付けした肉をフライパンに投入し、片面3分ずつ計6分揚げた。
【0045】
チキン南蛮およびトンカツ調製直後、それぞれカットし、内部の様子を観察した。その結果を表4に示す。
【0046】
【表4】
【0047】
表4に示すように、対照例3の油脂から油量を少なくした比較例3では、チキン南蛮およびトンカツの内部が生であったのに対し、実施例3-1~実施例3-3のシャローフライ用油脂組成物でフライしたチキン南蛮およびトンカツは、比較例3の油量と同じにも関わらず、対照例3と同様に完全に火が通っていた。すなわち、本発明のシャローフライ用油脂組成物でフライをすると、フライ時間の短縮が可能となった。また、O-50Dが0.05質量%以上含まれているシャローフライ用油脂組成物を用いてフライ調理することでフライ時間の短縮効果が認められた。
【0048】
<試験4>
表5に示す配合で実施例4-1~実施例4-2のシャローフライ用油脂組成物を調製した。
【0049】
上述した(チキン南蛮の調製方法)において対照例、比較例および実施例の油脂組成物を対照例4、比較例4、実施例4-1~実施例4-2に替えた以外は同じ手順でチキン南蛮を調製し、フライ直後にチキン南蛮をカットして内部の様子を観察した。その結果を表5に示す。
【0050】
【表5】
【0051】
表5に示すように、食用油脂として菜種油を用い、グリセリン脂肪酸エステルとして623M、DO-100Vを添加して調製したシャローフライ用油脂組成物を用いてフライした場合にも、フライ時間の短縮効果が認められた。
【0052】
<試験5>
表6に示す配合で実施例5-1のシャローフライ用油脂組成物を調製した。
【0053】
上述した(チキン南蛮の調製方法)において対照例、比較例および実施例の油脂組成物を対照例5、比較例5、実施例5-1に替えた以外は同様の手順でチキン南蛮を調製し、フライ直後にチキン南蛮をカットして内部の様子を観察した。その結果を表6に示す。
【0054】
【表6】
【0055】
表6に示すように、食用油脂としてパームオレインを用い、グリセリン脂肪酸エステルとしてO-50Dを添加して調製したシャローフライ用油脂組成物を用いてフライした場合にも、フライ時間の短縮効果が認められた。
【0056】
<試験6>
表7に示す配合で実施例6-1のシャロ―フライ用油脂組成物を調製した。
【0057】
表7に記載した油量の対照例、比較例および実施例6-1のシャロ―フライ用油脂組成物を、直径24cmの平底フライパンに入れ、160℃に加熱した。加熱した油脂に、厚さ15mmの冷凍コロッケ(Newポテトコロッケ60、味の素冷凍食品株式会社製)を各フライパンに5個ずつ入れて5分間フライした。フライ後、油切りをして内部温度の測定、外観および食感の評価を行った。内部温度の測定は、試験1に記載の方法にて行った。評価結果を表7に示す。
【0058】
【表7】
【0059】
表7に示したとおり、菜種油のみを用いて油量を少なくした比較例6では、内部温度が低く、火通りが悪かった。一方、実施例6-1のシャロ―フライ用油脂組成物でフライしたコロッケは、比較例6の油量と同じにも関わらず、対照例6よりも内部温度が高く、火通りが良好であった。
【0060】
また、対照例6から油量を少なくした比較例6でフライしたコロッケの食感および外観が不良であったのに対し、実施例6-1のシャロ―フライ用油脂組成物でフライしたコロッケは、比較例6の油量と同じにも関わらず、対照例6と同等の外観を有し、食感に関しては対照例6よりも優れていた。この結果から、本発明のシャロ―フライ用油脂組成物でフライすると、油量を少なくしても火通りがよく、外観および食感の良好な揚げ物が得られることが示された。
【0061】
<試験7>
表8に示す配合で実施例7-1~実施例7-7のシャロ―フライ用油脂組成物を調製した。
【0062】
上述した(チキン南蛮の調製方法)において、対照例、比較例および実施例の油脂組成物を対照例7、比較例7、実施例7-1~実施例7-7に替え、26cmの平底フライパンを利用した以外は同じ手順でチキン南蛮を調製し、フライ直後にチキン南蛮の内部温度を測定し、さらにカットして内部の様子を観察した。その結果を表8に示す。
【0063】
なお、チキン南蛮の内部温度の測定は以下の手順で行った。
ハンディ型温度計(商品名:携帯用温度計DP-350、理化工業株式会社製)のプローブをフライ後のチキン南蛮の一番厚い部分に垂直に底まで一旦差し込み、底から10mm引き上げた部分にて温度を測定した。内部温度の評価結果を表10に示す。
【0064】
【表8】
【0065】
表8に示すように、対照例7の油脂から油量を少なくした比較例7では、チキン南蛮の内部が生であったのに対し、実施例7-1~実施例7-7のシャロ―フライ用油脂組成物でフライしたチキン南蛮は、比較例7の油量と同じにも関わらず、対照例7と同様に完全に火が通っていた。このことから、菜種油にグリセリン脂肪酸エステルとしてO-50D、CR-500を添加して調製したシャロ―フライ用油脂組成物を用いてフライした場合においても、シャロ―フライが可能であることが明らかとなった。
【0066】
<試験8>
表9に示す配合で実施例8-1および実施例8-2のシャロ―フライ用油脂組成物を調製した。
【0067】
表9に記載した油量の実施例8-1および実施例8-2のシャロ―フライ用油脂組成物を、直径28cmの平底フライパンに入れ、160℃に加熱した。加熱した油脂に、厚さ15mmの冷凍コロッケ(Newポテトコロッケ60、味の素冷凍食品株式会社製)を各フライパンに5個ずつ入れて5分間フライした。フライ後、油切りをして外観および食感の評価を行った。評価結果を表9に示す。
【0068】
【表9】
【0069】
<試験9>
表10に示す配合で実施例9-1および実施例9-2のシャロ―フライ用油脂組成物を調製した。
【0070】
上述した(チキン南蛮の調製方法)において、実施例の油脂組成物を実施例9-1および実施例9-2に替えた以外は同じ手順でチキン南蛮を構成し、フライ直後にチキン南蛮の内部温度を測定し、さらにカットして内部の様子を観察した。内部温度は、試験7に記載の方法にて測定した。その結果を表10に示す。
【0071】
【表10】
【0072】
表9および表10に示すように、大豆油および菜種油を混合した原料油脂にグリセリン脂肪酸エステルとしてO-50D、CR-500を添加して調製したシャロ―フライ用油脂組成物を用いてフライした場合において、火通り、外観および食感の良好なコロッケまたはチキン南蛮が得られた。このことから、大豆油および菜種油の混合油脂を原料油脂としたシャロ―フライ用油脂組成物においても、シャロ―フライが可能であることが明らかとなった。
【0073】
<試験10>
菜種油および実施例7-1~実施例7-3のシャロ―フライ用油脂組成物を用いて、以下に示す(エビの天ぷらの調製方法)に従ってエビの天ぷらを調製し、フライ時の油ハネを油じみの面積率として評価した。得られた評価結果を表11に示す。
【0074】
(エビの天ぷらの調製方法)
(1)てんぷら粉(黄金、昭和産業株式会社製)に1.5倍量の氷水を添加し、1分間攪拌してバッター液を調製した。
(2)冷凍エビ(冷凍むきエビ、ValuePlus製)を常温で解凍した。
(3)解凍したエビを水で洗ってむきエビを得た。
(3)むきエビを6つで25~30gになるようにまとめた。
(4)15.5cmの片手鍋に表11に記載した油量の比較例および実施例7-1~実施例7-3の油脂を入れ170℃に加熱した。
(5)むきエビ6個をバッター液にくぐらせた後、(4)に投入した。
(6)片手鍋の上にA4サイズの紙を片手鍋に蓋をするようにかぶせた。このとき、油面からA4サイズの紙までの距離は、73mmだった。
(7)(6)から1分間経過後、A4サイズの紙をとり、エビの天ぷらを取り出した。
(8)A4サイズの紙を軽くキッチンペーパーで押さえるようにぬぐった。
(9)A4サイズの紙をトレース台に乗せて、画像を撮った。
(10)画像データをImageJに取り込み、片手鍋の開口部に対する油シミの面積率を測定した。
【0075】
【表11】
【0076】
表11に示すように、菜種油にグリセリン脂肪酸エステルとしてO-50Dを0.1質量%以上0.2質量%以下添加したシャロ―フライ用油脂組成物を用いてフライすることにより、菜種油のみを用いた比較例10と比較して、油じみの面積率が低減していた。このことから、本発明のシャロ―フライ用油脂組成物を用いてフライすることにより、シャロ―フライが可能なだけでなくフライ調理時の油ハネをも抑制できることが明らかとなった。