(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018954
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/475 20060101AFI20240201BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20240201BHJP
A61F 13/472 20060101ALI20240201BHJP
A61F 13/533 20060101ALI20240201BHJP
A61F 13/47 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61F13/475 120
A61F13/15 140
A61F13/472
A61F13/533 100
A61F13/533 200
A61F13/47 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023083680
(22)【出願日】2023-05-22
(31)【優先権主張番号】P 2022120400
(32)【優先日】2022-07-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003247
【氏名又は名称】弁理士法人小澤知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋野 央
(72)【発明者】
【氏名】野本 貴志
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】林 俊久
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA03
3B200BA03
3B200BA13
3B200BA14
3B200BB21
3B200CA11
3B200DA14
3B200DA25
3B200DB05
3B200DF02
(57)【要約】
【課題】トップシートの液残りを抑制しつつ、吸収コアの吸収性能を維持し易い吸収性物品を提供する。
【解決手段】吸収性物品(1)は、液透過性のトップシート(11)、液不透過性のバックシート(21)、及びトップシートとバックシートの間に配置された吸収コア(31)を有する。トップシートの非肌面よりも非肌側かつ吸収コアの非肌面よりも肌側において、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い低液透過性、又は肌側から非肌側へ体液を透過させない液不透過性を有する液透過調整部(300)が設けられている。液透過調整部は、吸収コアを幅方向に三等分した領域のうち、幅方向の中央に位置する幅中央領域(RC1)に配置されている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及び前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収コアを有する吸収性物品であって、
前記トップシートの非肌面よりも非肌側かつ前記吸収コアの非肌面よりも肌側において、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い低液透過性、又は肌側から非肌側へ体液を透過させない液不透過性を有する液透過調整部が設けられており、
前記液透過調整部は、前記吸収コアを幅方向に三等分した領域のうち、前記幅方向の中央に位置する幅中央領域に配置されている、吸収性物品。
【請求項2】
前記吸収性物品の平面視において、前記液透過調整部が配置された領域の前記吸収性物品の剛性は、前記液透過調整部の周囲の前記吸収性物品の領域の剛性よりも高い、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及び前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収コアを有する吸収性物品であって、
前記トップシートの非肌面よりも非肌側かつ前記吸収コアの非肌面よりも肌側において、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い低液透過性、又は肌側から非肌側へ体液を透過させない液不透過性を有する液透過調整部が設けられており、
前記液透過調整部の少なくとも一部は、吸収コアに設けられており、
前記液透過調整部が設けられた吸収コアの単位面積あたりの吸収量は、前記液透過調整部の周囲の吸収コアの単位面積あたりの吸収量よりも低く、
前記吸収性物品の平面視において、前記液透過調整部が配置された領域の前記吸収性物品の剛性は、前記液透過調整部の周囲の前記吸収性物品の領域の剛性よりも高い、吸収性物品。
【請求項4】
前記液透過調整部の少なくとも一部は、前記吸収コアよりも肌側に配置された液不透過性のシートによって構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記液透過調整部の少なくとも一部は、前記吸収コアに付された疎水性の塗布剤、又は前記吸収コアと前記トップシートの間に配置されたシートに付された疎水性の塗布剤の少なくとも一方によって構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記液透過調整部の少なくとも一部は、少なくとも前記吸収コアを厚さ方向に圧縮した圧搾部によって構成されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記液透過調整部は、前記トップシートと前記吸収コアの間に設けられている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記液透過調整部は、前記吸収コアに設けられている、請求項1又は請求項2に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記トップシートと前記吸収コアの間に配置された補助シートを有し、
前記液透過調整部の少なくとも一部は、前記トップシートと前記補助シートの間に設けられている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記液透過調整部は、前記吸収コアの幅方向の中心を跨いでいる、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記液透過調整部は、前後方向に延びている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記液透過調整部は、幅方向に間隔を空けて複数設けられている、請求項11に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記液透過調整部は、幅方向に延び、かつ前後方向に間隔を空けて複数配置されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記液透過調整部の前記幅方向の長さは、前記吸収コアの幅方向の長さに対する50%以下である、請求項13に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記液透過調整部は、着用者の排泄口と対向して配置される排泄口対向域に設けられている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項16】
前記液透過調整部は、前後方向の中心を跨がないように設けられている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項17】
前記液透過調整部よりも非肌側において前記液透過調整部と重なる領域には、着用者の健康状態を検査するための検査部材が配置されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項18】
前記液透過調整部は、前記吸収性物品の肌側から視認可能であり、前記吸収性物品の非肌側から視認不可能である、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の吸収性物品。
【請求項19】
液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及び前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収コアを有する吸収性物品であって、
前記トップシートの非肌面よりも非肌側かつ前記吸収コアの非肌面よりも肌側には、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い低液透過性、又は肌側から非肌側へ体液を透過させない液不透過性を有する液透過調整部と、着用者の健康状態を検査するための検査部材と、が設けられており、
前記液透過調整部は、前記検査部材と厚さ方向に重なって配置された液不透過性のシートによって構成されている、吸収性物品。
【請求項20】
前記検査部材は、排泄物に含まれる成分である排泄物成分に基づいて呈色する表示部を有し、
前記液透過調整部を構成する液不透過性のシートは、前記表示部の肌側を覆う肌側シートを有する、請求項19に記載の吸収性物品。
【請求項21】
前記肌側シートは、第1肌側シートと、前記第1肌側シートよりも肌側に配置された第2肌側シートと、を有し、
前記第2肌側シートは、前記第1肌側シートの肌側を覆っており、
前記吸収性物品の幅方向において、前記第2肌側シートの両側の外側縁は、前記第1肌側シートの外側縁よりも外側に位置する、請求項20に記載の吸収性物品。
【請求項22】
前記検査部材は、排泄物に含まれる成分である排泄物成分に基づいて呈色する表示部を有し、
前記液透過調整部を構成する液不透過性のシートは、前記表示部の非肌側を覆う非肌側シートを有する、請求項19に記載の吸収性物品。
【請求項23】
前記非肌側シートは、第1非肌側シートと、前記第1非肌側シートよりも肌側に配置された第2非肌側シートと、を有し、
前記第2非肌側シートは、前記第1非肌側シートの非肌側を覆っており、
前記吸収性物品の幅方向において、前記第2非肌側シートの両側の外側縁は、前記第1非肌側シートの外側縁よりも外側に位置する、請求項22に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、液透過調整部を有する吸収性物品が開示されている。特許文献1の液透過調整部は、トップシートに設けられている。トップシートは、綿繊維100重量%からなるスパンレース不織布に撥水剤が塗布されてなるとともに、少なくとも排泄口対応部分に、表裏を貫通する多数の開孔が、吸収性物品の長手方向に長い縦長の形状で形成されている。撥水剤が付された領域は、肌当接面の吸水度を低くなり、周囲よりも体液の吸収性能が低下する。また、開孔によって体液を非肌側に導くことで、トップシートの液残りを抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述の吸収性物品は、以下の問題があった。
トップシート上に排出された体液のうち、開孔を介して非肌側に導かれた体液は、トップシート上に残らず、トップシートの液残りを抑制できる。しかし、撥水剤が付された領域上の体液は、トップシート内に引き込まれ難く、トップシート上に体液が液のこりし易い。よって、トップシートに残った体液による肌トラブルのおそれがある。
【0005】
また、トップシートの開孔を介して引き込まれた体液は、吸収コアに導かれ、吸収コアによって保持される。出願人が鋭意研究したところ、吸収コアは、体液を吸収することで、その剛性や厚さが変化する。体液を吸収した後の吸収コアは、吸収前の吸収コアと比較して、剛性や厚さを維持できず、使用後まで、狙いの状態を維持できないことがある。
【0006】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、トップシートの液残りを抑制しつつ、吸収コアの吸収性能を維持し易い吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る吸収性物品は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及び前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収コアを有する。前記トップシートの非肌面よりも非肌側かつ前記吸収コアの非肌面よりも肌側において、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い低液透過性、又は肌側から非肌側へ体液を透過させない液不透過性を有する液透過調整部が設けられている。前記液透過調整部は、前記吸収コアを前記幅方向に三等分した領域のうち、前記幅方向の中央に位置する幅中央領域に配置されている。
【0008】
他態様に係る吸収性物品は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及び前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収コアを有する。前記トップシートの非肌面よりも非肌側かつ前記吸収コアの非肌面よりも肌側において、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い低液透過性、又は肌側から非肌側へ体液を透過させない液不透過性を有する液透過調整部が設けられている。前記液透過調整部は、吸収コアに設けられている。前記液透過調整部が設けられた吸収コアの単位面積あたりの吸収量は、前記液透過調整部の周囲の吸収コアの単位面積あたりの吸収量よりも低い。前記液透過調整部が配置された領域の前記吸収性物品の剛性は、前記液透過調整部の周囲の領域の前記吸収性物品の剛性よりも高い。
【0009】
更に他態様に係る吸収性物品は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及び前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収コアを有する。前記トップシートの非肌面よりも非肌側かつ前記吸収コアの非肌面よりも肌側には、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い低液透過性、又は肌側から非肌側へ体液を透過させない液不透過性を有する液透過調整部と、着用者の健康状態を検査するための検査部材と、が設けられている。前記液透過調整部は、前記検査部材と厚さ方向に重なって配置された液不透過性のシートによって構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る吸収性物品の肌側から見た平面図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態に係る吸収性物品の非肌側から見た平面図である。
【
図5】
図5は、変形例に係る吸収性物品を示した図である。
【
図6】
図6は、第2実施形態に係る吸収性物品の肌側から見た平面図である。
【
図7】
図7は、第2実施形態に係る吸収性物品の非肌側から見た平面図である。
【
図12】
図12は、検査部材の幅方向に沿った断面の断面写真である。
【
図14】
図14は、検査部材の呈色態様を説明するための図である。
【
図15】
図15は、吸収性物品を装着した着用物品を着用した状態における幅方向に沿った断面を模式的に示した図である。
【
図19】
図19は、人工体液の透過試験を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)実施形態の概要
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
態様1に係る発明は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及び前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収コアを有する吸収性物品である。前記トップシートの非肌面よりも非肌側かつ前記吸収コアの非肌面よりも肌側において、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い低液透過性、又は肌側から非肌側へ体液を透過させない液不透過性を有する液透過調整部が設けられている。前記液透過調整部は、前記吸収コアを前記幅方向に三等分した領域のうち、前記幅方向の中央に位置する幅中央領域に配置されている。液透過調整部は、周囲と比較して体液を移行させ難い。液透過調整部は、吸収コアの非肌面よりも肌側に位置している。吸収コアのうち、当該液透過調整部よりも非肌側に位置する吸収コアは、体液が導かれ難く、体液の吸収量が少なくなる。通常、吸収コアは、体液を吸収することで、その剛性や厚さが変化する。体液を吸収した後の吸収コアは、吸収前の吸収コアと比較して、剛性や厚さを維持できず、使用後まで、狙いの状態を維持できないことがある。しかし、液透過調整部を設けることで、体液を吸収した前と後で吸収コアの変化を抑制できる部分を、吸収コアに設けることができる。吸収コアの幅中央領域は、体液が排出され易く、体液の吸収による変化が大きい。当該幅中央領域に液透過調整部を設けることで、使用前の状態を使用後でも維持し易くなる。また、液透過調整部よりも肌側に配置されたトップシート等において体液の引き込み性を確保し、吸収性物品の表面の液残りを抑制できる。よって、吸収性物品の表面に残った体液による肌トラブルを抑制できる。
【0012】
態様2に係る発明は、態様1に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記吸収性物品の平面視において、前記液透過調整部が配置された領域の前記吸収性物品の剛性は、前記液透過調整部の周囲の領域の前記吸収性物品の剛性よりも高い。液透過調整部が配置された領域の前記吸収性物品の剛性が周囲よりも高いため、着用時に体からの圧力によって変形することが減り、着用前の状態をより維持し易い。
【0013】
態様3に係る発明は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及び前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収コアを有する吸収性物品である。前記トップシートの非肌面よりも非肌側かつ前記吸収コアの非肌面よりも肌側において、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い低液透過性、又は肌側から非肌側へ体液を透過させない液不透過性を有する液透過調整部が設けられている。前記液透過調整部の少なくとも一部は、吸収コアに設けられている。前記液透過調整部が設けられた吸収コアの単位面積あたりの吸収量は、前記液透過調整部の周囲の吸収コアの単位面積あたりの吸収量よりも低い。前記吸収性物品の平面視において、前記液透過調整部が配置された領域の吸収性物品の剛性は、前記液透過調整部の周囲の領域の吸収性物品の剛性よりも高い。液透過調整部が設けられた吸収コアの単位面積あたりの吸収量が低いため、液透過調整部を設けることで、体液を吸収した前と後で吸収コアの変化を抑制できる部分を、吸収コアに設けることができる。また、液透過調整部が配置された領域の吸収性物品の剛性が周囲よりも高いため、着用時に体からの圧力によって変形することが減り、着用前の状態をより維持し易い。
【0014】
好ましい態様によれば、態様4に係る発明は、態様1から態様3のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部の少なくとも一部は、前記吸収コアよりも肌側に配置された液不透過性のシートによって構成されている。本態様によれば、液不透過性のシートによって肌側からの体液の吸収が抑制され、当該シートが配置された領域の吸収性物品の剛性を確保できる。
【0015】
好ましい態様によれば、態様5に係る発明は、態様1から態様3のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部の少なくとも一部は、前記吸収コアに付された疎水性の塗布剤、又は前記吸収コアと前記トップシートの間に配置されたシートに付された疎水性の塗布剤の少なくとも一方によって構成されている。本態様によれば、疎水性の塗布剤によって肌側からの体液の吸収が抑制され、当該塗布剤が配置された領域の吸収性物品の剛性を確保できる。
【0016】
好ましい態様によれば、態様6に係る発明は、態様1から態様3のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部の少なくとも一部は、少なくとも前記吸収コアを厚さ方向に圧縮した圧搾部によって構成されている。本態様によれば、圧搾部からなる液透過調整部は、その剛性が高く、吸収コアの剛性を確保できる。また、圧搾部が設けられていない領域と比較して肌側から非肌側への体液の移行速度を低下できる。
【0017】
好ましい態様によれば、態様7に係る発明は、態様1から態様3のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部は、前記トップシートと前記吸収コアの間に設けられている。本態様によれば、少なくとも液透過調整部と厚さ方向に重なる領域の吸収コアの体液の吸収を抑制でき、かつ液透過調整部と吸収コアが別体で設けられているため、吸収コアの吸収性能を確保し易い。
【0018】
好ましい態様によれば、態様8に係る発明は、態様1から態様3のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部は、前記吸収コアに設けられている。本態様によれば、液透過調整部の存在によって吸収コアで吸収し難くなり、吸収コアの剛性を維持できる。
【0019】
好ましい態様によれば、態様9に係る発明は、態様1から態様3のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記トップシートと前記吸収コアの間に配置された補助シートを有する。前記液透過調整部の少なくとも一部は、前記トップシートと前記補助シートの間に設けられている。本態様によれば、吸収コアから離れた位置に液透過調整部を設けることができ、吸収コアで体液を吸収する可能性が低減し、体液の吸収前後における吸収コアの剛性の変化を更に低減することができる。
【0020】
好ましい態様によれば、態様10に係る発明は、態様1から態様9のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部は、前記吸収コアの前記幅方向の中心を跨いでいる。吸収コアの幅方向の中心は、両脚によって挟まれた際等、力が集中し易い部分である。加えて、吸収コアの幅方向の中心は、体液が排出され易い領域である。吸収コアの幅方向の中心を跨いで液透過調整部が設けられていることにより、力に対する変形を抑制し、また、体液の吸収による剛性等の変化を抑制できる。
【0021】
好ましい態様によれば、態様11に係る発明は、態様1から態様10のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部は、前記前後方向に延びている。本態様によれば、前記液透過調整部によって体液を前後方向に拡散し、前後方向の広い領域で体液を吸収できる。体液の吸収範囲が広くなることで、局所的に体液を多く保持する領域が形成されることを抑制し、吸収コアの剛性などを維持し易い。
【0022】
好ましい態様によれば、態様12に係る発明は、態様11に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部は、前記幅方向に間隔を空けて複数設けられている。本態様によれば、液透過調整部は、幅方向に間隔を空けて配置され、液透過調整部間に液透過調整部が配置されていない領域が存在する。脚等によって幅方向の内側に向かう力を受けた際に、幅方向の外側に位置する液透過調整部が変形した場合であっても、幅方向の内側に位置する液透過調整部が変形せずにその性能を発揮することができ、いずれかの液透過調整部によって液透過調整部の性能を維持できる。
【0023】
好ましい態様によれば、態様13に係る発明は、態様1から態様10のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部は、前記幅方向に延び、かつ前記前後方向に間隔を空けて複数配置されている。本態様によれば、液透過調整部は、前後方向に間隔を空けて配置され、液透過調整部間に液透過調整部が配置されていない領域が存在する。吸収性物品が身体の前側から後側に亘って身体の丸みに沿って配置されても、液透過調整部が変形せずにその性能を発揮することができ、いずれかの液透過調整部によって液透過調整部の性能を維持できる。また、液透過調整部間の領域において体液を非肌側に引き込みつつ、液透過調整部によって体液を幅方向に拡散し、幅方向の広い領域で体液を吸収できる。また、液透過調整部の剛性が高い形態にあっては、液透過調整部によって脚から力に対向し、吸収コアの過度な変形を抑制できる。
【0024】
好ましい態様によれば、態様14に係る発明は、態様1から態様13のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部の前記幅方向の長さは、前記吸収コアの幅方向の長さに対する50%以下である。本態様によれば、液透過調整部の幅方向の長さが吸収コアの幅方向全域に対する50%以下であるため、液透過調整部が着用者の足等に触れ難く、直接力を受けることを避けられるため、液透過調整部の形状をより維持し易い。加えて、液透過調整部の前記幅方向の長さが長すぎると、液透過調整部の比率が高くなり、吸収コアへの体液の引き込み性が低下し、伝え漏れ等の漏れが発生するおそれがある。しかし、液透過調整部の前記幅方向の長さが吸収コアの幅方向全域に対する50%以下であるため、他の領域において体液の引き込み性を確保し、漏れを抑制できる。
【0025】
好ましい態様によれば、態様15に係る発明は、態様1から態様14のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。液透過調整部は、着用者の排泄口と対向して配置される排泄口対向域に設けられている。排泄口対向域は、体液が最も導かれ易く、体液を吸収し易い部分である。液透過調整部が排泄口対向域に設けられていることによって、一番体液を吸収し変形しやすい場所における剛性を使用前に近い状態で維持でき、着用時のよれを効果的に抑制できる。
【0026】
好ましい態様によれば、態様16に係る発明は、態様1から態様14のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部は、前記前後方向の中心を跨がないように設けられている。液透過調整部は、吸収性物品の前後方向の中心を跨がないように設けられているため、体液が比較的多く排出される吸収性物品の前後方向の中心において体液を吸収でき、液の引き込み性の低下に起因した違和感を抑制できる。また、液透過調整部が吸収コアの前後方向の中心よりも前側に位置している形態にあっては、使用者が装着操作や着用時に液透過調整部の存在に気づき易い。
【0027】
好ましい態様によれば、態様17に係る発明は、態様1から態様16のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部よりも非肌側において前記液透過調整部と厚さ方向に重なる領域には、着用者の健康状態を検査するための検査部材が配置されている。本態様によれば、液透過調整部と厚さ方向に重なる領域に検査部材が配置されていることで、検査部材に過度な体液が触れることを避け、誤反応を抑制することができる。加えて、液透過調整部がよれ難い構成となっているため、検査部材に過度な圧力がかかることを避けることができ、検査部材に折り皺が発生することを避けることができる。
【0028】
好ましい態様によれば、態様18に係る発明は、態様1から態様17のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記液透過調整部は、前記吸収性物品の肌側から視認可能であり、前記吸収性物品の非肌側から視認不可能である。本態様によれば、吸収性物品の肌側から液透過調整部を視認できるため、装着時に液透過調整部の位置を把握できる。また、吸収性物品の非肌側から液透過調整部を視認できないため、液透過調整部の視認可否によって感覚的に吸収性物品の肌面と非肌面を把握でき、装着時の操作性を向上できる。
【0029】
態様19に係る発明は、吸収性物品である。吸収性物品は、液透過性のトップシート、液不透過性のバックシート、及び前記トップシートと前記バックシートの間に配置された吸収コアを有する。前記トップシートの非肌面よりも非肌側かつ前記吸収コアの非肌面よりも肌側には、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い液透過調整部と、着用者の健康状態を検査するための検査部材と、が設けられている。前記液透過調整部は、前記検査部材と厚さ方向に重なって配置された液不透過性のシートによって構成されている。液透過調整部は、周囲と比較して体液を移行させ難い。液透過調整部は、吸収コアの非肌面よりも肌側に位置している。吸収コアのうち、当該液透過調整部よりも非肌側に位置する吸収コアは、体液が導かれ難く、体液の吸収量が少なくなる。液透過調整部を設けることで、体液を吸収した前と後で吸収コアの変化を抑制できる部分を設け、液透過調整部を構成する液不透過性のシートを検査部材に対して厚さ方向に重ねて配置することで、検査部材の厚さ方向の外側からの体液が直に検査部材に到達しにくくなり、検査部材の検査精度を向上できる。
【0030】
好ましい態様によれば、態様20に係る発明は、態様19に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記検査部材は、排泄物に含まれる成分である排泄物成分に基づいて呈色する表示部を有する。前記液透過調整部を構成する液不透過性のシートは、前記表示部の肌側を覆う肌側シートを有する。本態様によれば、肌側シートによって表示部の肌側を覆うことで、表示部の肌側から表示部側に直に排泄物が到達することを抑制できる。そのため、表示部に直に到達した排泄物によって表示部の視認性が低下することを抑制できる。
【0031】
好ましい態様によれば、態様21に係る発明は、態様20に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記肌側シートは、第1肌側シートと、前記第1肌側シートよりも肌側に配置された第2肌側シートと、を有する。前記第2肌側シートは、前記第1肌側シートの肌側を覆っている。前記吸収性物品の幅方向において、前記第2肌側シートの両側の外側縁は、前記第1肌側シートの外側縁よりも外側に位置する。吸収性物品は、脚によって挟まれ、幅方向Wの外側から内側に向かう力を受ける。このとき、第1非肌側シートの外側縁と第2非肌側シートの外側縁が幅方向にずれており、幅方向Wに間隔を空けて複数の変形基点が設けられ、幅方向Wの外側から受ける力を徐々に弱め、検査部材の形状を維持できると共に、脚に対する当たりを和らげ着用時の違和感を抑制できる。また、第2肌側カバーシートによって、検査部材の肌側からの排泄物の浸入を抑制し易く、意図しない経路から排泄物が検査部材に到達することを抑制できる。
【0032】
好ましい態様によれば、態様22に係る発明は、態様19から態様21のいずれかに係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記検査部材は、排泄物に含まれる成分である排泄物成分に基づいて呈色する表示部を有する。前記液透過調整部を構成する液不透過性のシートは、前記表示部の非肌側を覆う非肌側シートを有する。本態様によれば、非肌側シートによって表示部の非肌側を覆うことで、表示部の非肌側から表示部側に直に排泄物が到達することを抑制できる。そのため、表示部に直に到達した排泄物によって表示部の視認性が低下することを抑制できる。
【0033】
好ましい態様によれば、態様23に係る発明は、態様22に係る発明において、以下の特徴を有してよい。前記非肌側シートは、第1非肌側シートと、前記第1非肌側シートよりも肌側に配置された第2非肌側シートと、を有する。前記第2非肌側シートは、前記第1非肌側シートの非肌側を覆っている。前記吸収性物品の幅方向において、前記第2非肌側シートの両側の外側縁は、前記第1非肌側シートの外側縁よりも外側に位置する。吸収性物品は、脚によって挟まれ、幅方向Wの外側から内側に向かう力を受ける。このとき、第1非肌側シートの外側縁と第2非肌側シートの外側縁が幅方向にずれており、幅方向Wに間隔を空けて複数の変形基点が設けられ、幅方向Wの外側から受ける力を徐々に弱め、検査部材の形状を維持できると共に、脚に対する当たりを和らげ着用時の違和感を抑制できる。また、第2非肌側カバーシートによって、検査部材の非肌側からの排泄物の浸入を抑制し易く、意図しない経路から排泄物が検査部材に到達することを抑制できる。
【0034】
(2)第1実施形態に係る吸収性物品
以下、図面を参照して、実施形態に係る吸収性物品1Xについて説明する。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれ得る。吸収性物品1Xは、生理用ナプキン、パンティライナー、失禁パッド、糞便パッド、使い捨ておむつ、ショーツ型ナプキン等の吸収性物品であってよい。吸収性物品1Xは、下着のような着用物品に装着されて使用される物品であってもよいし、着用物品に装着されずに使用される吸収性物品であってもよい。実施形態の吸収性物品1Xは、パンティライナーである。なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。また、断面図においては、説明の便宜上、各構成部材を離間して示しているが、実際の製品においては、各構成部材は当接している。
【0035】
図1は、吸収性物品1Xの肌側T1から見た平面図である。
図2は、吸収性物品1Xの非肌側T2から見た平面図である。
図3は、
図1に示すP-P線に沿った断面図である。
図4は、
図1に示すQ-Q線に沿った断面図である。ここで、「肌側」は、使用中に着用者の肌に面する側に相当する。「非肌側」は、使用中に着用者の肌とは反対に向けられる側に相当する。吸収性物品1Xは、互いに直交する前後方向L、幅方向W、及び厚さ方向Tを有する。吸収性物品1Xの前後方向Lにおいて、使用者の下腹部に当接する側を「前側」といい、使用者の臀部に当接する側を「後側」という。
【0036】
吸収性物品1Xは、前側域S1、後側域S2及び股下域S3を有する。股下域S3は、着用者の排泄口、例えば膣口に対向して配置される排泄口対向域S5を含む。股下域S3は、吸収性物品1Xが着用物品に装着されたときに着用物品の股下に配置され、着用者の両脚の間に配置される領域である。前側域S1は、股下域S3よりも前側に位置する。前側域S1の前端縁は、吸収性物品1Xの前端縁を規定する。後側域S2は、股下域S3よりも後方に位置する。後側域S2の後端縁は、吸収性物品1Xの後端縁を規定する。股下域S3は、着用者の排泄口に当接する排泄口対向域S5を含む。股下域S3は、ウイングを有する吸収性物品にあっては、ウイングが設けられた領域であってよく、吸収コアが幅方向の内側に括れる括れ部を有する形態にあっては、括れ部が設けられた領域であってよい。または、股下域S3は、吸収性物品を前後方向Lに三等分した領域のうち中央に位置する領域であってよい。排泄口対向域S5は、排泄口としての膣口、排尿口に対向する領域であり、吸収コア31の幅方向Wの中心を跨いでいる。排泄口対向域S5は、実際に着用する着用者の排泄口に対向して配置されていなくてよく、設計上、着用者の排泄口に対向して配置される領域であってよい。
【0037】
なお、本発明における外側部とは、幅方向Wにおける外側縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、外側縁とは、幅方向Wにおける外側縁である。なお、前後方向に一定の範囲を占める構成部材の外側縁は、当該構成部材において幅方向の外側に位置する点を、構成部材全体に亘って繋いだ縁である。本発明における内側部とは、幅方向Wにおける内縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、内側縁とは、幅方向Wにおける内縁である。なお、前後方向に一定の範囲を占める構成部材の内側縁は、当該構成部材において幅方向の内側に位置する点を、構成部材全体に亘って繋いだ縁である。また、本発明における前端部及び後端部は、前後方向Lにおける縁を含む前後方向Lに一定の範囲を占める部分であり、前端縁及び後端縁は、前後方向Lにおける縁である。外端部は、前端部及び後端部を含んでおり、外端縁は、前端縁及び後端縁を含んでいる。また、内側辺は、内側縁を含み、かつ前後方向Lに沿って延びる辺である。外側辺は、外側縁を含み、かつ前後方向Lに沿って延びる辺である。なお、本明細書において、「前後方向Lに沿って」という用語は、前後方向Lに対して45°未満の角度を持った方向を意味し、「幅方向Wに沿って」という用語は、幅方向Wに対して45°未満の角度を持った方向を意味する。
【0038】
吸収性物品1Xは、吸収コア31、トップシート11及びバックシート21を少なくとも有する。吸収性物品1Xは、縦長の形状である。トップシート11は、液透過性のシートである。トップシート11は、本実施形態のように、吸収性物品1Xの肌面全体を1枚のシートによって覆う構成であってもよいし、吸収コア31の幅方向Wの中央を覆うセンターシートと、センターシートよりも幅方向Wの外側に配置されるサイドシートと、を有していてもよい。トップシート11は、不織布、織布、有孔プラスチックシート、メッシュシート等、液体を透過する構造を有する任意のシート状の材料から構成される。
【0039】
バックシート21は、吸収コア31よりも非肌側T2に配置され、液不透過性のシートである。バックシート21は、液不透過性のシートである。バックシート21は、ポリエチレンシート、ポリプロピレン等を主体としたラミネート不織布、通気性の樹脂フィルム、スパンボンド、又はスパンレース等の不織布に通気性の樹脂フィルムが接合されたシートなどを用いることができる。
【0040】
吸収コア31は、吸収体を構成する。吸収コア31は、液体を吸収する吸収材料によって構成されてよい。吸収コア31を構成する吸収材料は、例えば、親水性繊維、パルプ及び高吸水性高分子(SAP)から形成できる。吸収体は、吸収コア31を覆うコアラップシートを有してもよいし、本実施形態のようにコアラップシートを有していなくてもよい。吸収コア31は、吸収コア31を幅方向Wに三等分した領域を有する。三等分した領域は、幅方向Wの中央に位置する幅中央領域RC1と、幅中央領域RC1よりも幅方向Wの外側に配置された幅サイド領域RS1と、を有してよい。
【0041】
図2等に示すように、吸収性物品1Xは、吸収性物品1Xを下着等の着用物品に止着するための止着部25を有してよい。止着部25は、バックシート21の非肌側T2に設けられ、吸収性物品1Xを着用物品に止着するための止着手段である。止着手段は、メカニカルファスナ、接着剤(例えば、HMA型接着剤)を例示できる。止着部25は、幅方向Wに延び、前後方向Lに間隔を空けて複数設けられてよい。また、変形例において、止着部25は、前後方向Lに延び、幅方向Wに間隔を空けて複数設けられてもよい。
【0042】
本実施形態の吸収性物品1Xは、トップシート11の液残りを抑制しつつ吸収コア31の吸収性能を維持し易く構成されている。トップシート11の液残りを抑制しつつ吸収コア31の吸収性能を維持し易くするための構成は、大別して第1形態と第2形態を挙げることができる。第1形態と第2形態の吸収性物品1Xは、いずれも液透過調整部300を有する。液透過調整部300は、トップシート11の非肌面よりも非肌側T2かつ吸収コア31の非肌面よりも肌側T1において、周囲よりも肌側T1から非肌側T2への体液の移行速度が低く構成された部分である。液透過調整部300は、平面視における周囲の領域(幅方向Wに隣接する領域、及び前後方向Lに隣接する領域)よりも肌側T1から非肌側T2への体液の移行速度が低い部分である。液透過調整部300は、周囲よりも肌側から非肌側への体液の移行速度が低い低液透過性、又は肌側から非肌側へ体液を透過させない液不透過性を有する。すなわち、液透過調整部300は、周囲の領域よりも低い透過性で体液を透過させてもよいし、体液を非肌側に透過させなくてもよい。液不透過性を有するシートは、例えば、液不透過性の樹脂フィルムを例示できるが、液不透過性及び通気性を有するシートであってもよい。液不透過性及び通気性を有するシートは、例えば、表面に微細な連通孔を形成し、水蒸気及び空気を透過させ、水を遮蔽するシートを例示できる。
【0043】
ここで、液透過調整部300は、体液の引き込み性が低いことによって体液の吸収速度を低くした構成と、引き込んだ体液を非肌側T2に移行し難くすることによって体液の吸収速度を低くした構成と、に大別できる。そのため、液透過調整部300の特定は、例えば、以下の第1の特定方法及び第2の特定方法を例示できる。第1の特定方法は、体液の引き込み性が低い液透過調整部300を特定する方法である。液透過調整部300は、トップシート11の非肌面から吸収コア31の非肌面までの間に設けられる。そのため、液透過調整部300の特定にあたって、まず、吸収性物品1Xからトップシート11を取り除くとともに、吸収コア31の非肌面よりも非肌側T2の部材(本実施形態では、バックシート21)を取り除く。トップシート11の非肌面から吸収コア31の非肌面までの間の部材(以下、対象部材とする)を取り出し、対象部材を可能な限り各資材に分解する。例えば、資材としては、吸収コア31、コアラップシート、補助シート、これら以外のシート(例えば、樹脂フィルム)、接着剤、撥水剤を例示できる。各資材が接合されている場合には、分解に際して冷却又は加熱することによって接着剤等の接合状態を解除して分解する。また、接着剤、撥水剤等の塗布された材料は、単独で取り出すことができないため、いずれかの資材にされた状態とする。対象部材から取り出した各資材をそれぞれ平らな面上に載置し、各資材の肌側T1の面上に擬似体液を1滴、滴下する。擬似体液が資材の上に玉状で残っている時間が60秒以上である場合には、資材が体液を引き込み難いため、当該資材が液透過調整部300であると判断する。一方、擬似体液が当該資材に60秒未満で引き込まれた場合、当該資材上に60秒以上残っているが60秒未満で玉状の形状が崩れた場合には、当該資材が液透過調整部300でないと判断する。
【0044】
第2の特定方法は、引き込んだ体液を非肌側T2に移行し難い液透過調整部300を特定する。まず、第1の特定方法と同様に、対象部材を取り出す。第2の特定方法は、第1の特定方法と異なり、対象部材を各資材に分解せずに、対象部材の状態で特定する。非肌側T2に移行し難いか否かは、周囲に対して速度が低いか否か、又は体液を透過させないか否かである。対象部材を領域に区画する。体液によって滲まないインク(例えば、油性インク)を用いて対象部材の非肌面に線を引き、50mm×50mmの領域に区画する。次いで、対象部材の非肌面が視認できるように浮かせた状態で対象部材を配置する。具体的には、体液を引き込まない紐状の部材(例えば、複数本の樹脂製の糸)を、間隔を空けて複数架け渡し、当該紐状の部材上に対象部材を載置する。紐状の部材上に対象部材を載置した状態で、資材の肌側T1の面上に擬似体液を5ml滴下する。対象部材の非肌側T2から観察する。任意の区画が周囲の区画に対して体液の到達時間が遅い場合には、周囲に対して到達速度が遅いため、任意の区画に抵透過性の液透過調整部300が設けられていると判断する。または、任意の区画において体液が非肌側の面に到達しない場合には、任意の区画に液不透過性の液透過調整部300が設けられていると判断する。なお、区画を比較して到達時間の差があれば、長い時間の区画に低液透過性の液透過調整部300が設けられていると判断してもよいが、好適には、第1の区画の到達時間と第2の区画の到達時間と比較した際に、短い時間に対する1.2倍以上の場合には、長い時間の区画に低液透過性の液透過調整部300が設けられていると判断してもよいし、第1の区画の到達時間と第2の区画の到達時間と比較した際に、短い時間に対する差が5秒以上の場合には、長い時間の区画に液透過調整部300が設けられていると判断してもよい。なお、5mlの擬似体液では、非肌側T2に擬似体液が到達したか否かを確認し難い場合には、滴下60秒後に追加で5mlの擬似体液を滴下する。また、対象部材の状態で体液の透過状態を視認し難い場合には、バックシートを取り外した状態で観察してもよい。
【0045】
ここで擬似体液は、人工経血を用いることができる。人工経血は、イオン水、グリセリン、カルボメチルセルロースナトリウム、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、色素赤102号、色素赤2号、色素黄5号(各色素は、株式会社丸紅商会製)を適量混合したものを使用できる。また、擬似体液の粘度は、22~26mPa・s程度であってよい。当該粘度は、粘度測定器(芝浦システム社製 ビスメトロン 型式VGA-4)を用いて測定できる。
【0046】
図3及び
図4に示すように、本実施形態の吸収性物品1Xは、肌側T1から非肌側T2に向かって、トップシート11、HMA(ホットメルト)型接着剤56、樹脂フィルム50、HMA型接着剤56、吸収コア31、HMA型接着剤56、バックシート21、止着部25が配置されている。よって、対象部材は、分解時におけるトップシート11とバックシート21に当接するHMA型接着剤の配置状態によるが、少なくとも、樹脂フィルム50、HMA型接着剤56、及び吸収コア31を有する。対象部材の状態で、第2の特定方法を実施することにより、樹脂フィルム50が配置された区画の到達速度が遅く、樹脂フィルム50が配置された領域に液透過調整部300が設けられていると判断できる。または、第1の特定方法を実施することにより、樹脂フィルム50の体液の引き込み性が低く、樹脂フィルム50が液透過調整部300を構成すると判断できる。
【0047】
第1形態は、液透過調整部300が幅中央領域RC1に配置されていることを特徴とする。液透過調整部300は、周囲より非肌側T2に体液の移行速度が低く、周囲と比較して体液を移行させ難い。液透過調整部300は、吸収コア31の非肌面よりも肌側T1に位置している。吸収コア31のうち、液透過調整部300よりも非肌側T2に位置する吸収コア31は、体液が導かれ難く、体液の吸収量が少なくなる。また、液透過調整部300が吸収コアの非肌面に設けられている場合には、吸収コア31の非肌面から肌側T1に向かう一定の範囲において体液の吸収を抑制できる。通常、吸収コア31は、体液を吸収することで、その剛性や厚さが変化する。体液を吸収した後の吸収コア31は、吸収前の吸収コア31と比較して、剛性や厚さを維持できず、使用後まで、狙いの状態を維持できないことがある。しかし、液透過調整部300を設けることで、体液を吸収した前と後で吸収コア31の変化を抑制できる部分を、吸収コア31に設けることができる。吸収コア31の幅中央領域RC1は、幅サイド領域RS1と比較して体液が排出され易く、体液の吸収による変化が大きい。幅中央領域RC1に液透過調整部300を設けることで、使用前の状態を使用後でも維持し易くなる。また、液透過調整部300よりも肌側T1に配置されたトップシート11等において体液の引き込み性を確保し、吸収性物品1Xの表面の液残りを抑制できる。よって、吸収性物品1Xの表面に残った体液による肌トラブルを抑制できる。本実施の形態の吸収性物品1Xは、第1形態の構成を有しており、液透過調整部300を構成する樹脂フィルム50が幅中央領域RC1に設けられている。なお、第1形態において、液透過調整部300は、少なくとも幅中央領域RC1の一部に設けられていればよく、幅中央領域RC1の幅方向Wの一部に設けられていてもよいし、幅中央領域RC1の幅方向Wの全域に設けられていてもよい。また、液透過調整部300は、幅中央領域RC1と幅サイド領域RS1の両方に設けられていてもよい。
【0048】
第2形態は、液透過調整部300の少なくとも一部が吸収コア31に設けられていること、液透過調整部300を構成する領域の吸収コアの単位面積あたりの吸収量が液透過調整部300を構成する領域の吸収コアの単位面積あたりの吸収量よりも低いこと、及び、吸収性物品の平面視にて液透過調整部300が配置された領域の吸収性物品の剛性が液透過調整部300の周囲の領域の吸収性物品の剛性よりも高いことを特徴とする。液透過調整部300を構成する領域の吸収コアの単位面積あたりの吸収量が低いため、液透過調整部300を設けることで体液を吸収した前と後で吸収コア31の変化を抑制できる部分を、吸収コア31に設けることができる。また、液透過調整部300が配置された領域の吸収性物品の剛性が周囲よりも高いため、液透過調整部300が配置された領域が着用時に体からの圧力によって変形することが減り、着用前の状態をより維持し易い。また、液透過調整部300は、トップシート11よりも非肌側T2に位置しており、着用者の肌に直接当たりにくい。トップシート11の剛性が液透過調整部300自体の剛性(例えば、圧搾部)よりも低い形態にあっては、液透過調整部300自体の剛性が高くなっていてもトップシート11の柔らかさで、剛性の高まっているところを着用者が感じ難くなり、着用中の違和感及び肌トラブルを抑制できる。
【0049】
ここで単位面積あたりの吸収量は、以下の方法で測定できる。まず、吸収コア31を取り出し、10mm×10mmの領域に区画し、各区画にて切断し、試験片を作成する。各試験片の重さ及び平面視の寸法を測定する。各試験片の全体を擬似体液に浸す。擬似体液は、上述と同様のものを用いることができる。60秒経過した後に各試験片を取り出し、金網等の上で1分間静置する。その後試験片の重さを測定する。当該方法によって単位面積あたりの吸収量を特定する。なお、試験片の吸水繊維の坪量が均一ではない場合には、(吸収後重量―吸収前重量)/(吸収前重量)によって算出できる吸収倍率を吸収量として比較してもよい。
【0050】
また、剛性は、ガーレー剛性であってよい。吸収性物品の平面視にて液透過調整部300が配置された領域の吸収性物品の剛性が液透過調整部300の周囲の領域の吸収性物品の剛性よりも高い構成は、吸収コアが体液を吸収してない状態において、当該剛性の関係を満たしていればよい。剛性は、例えば、以下の方法で測定できる。使用器具にはYasuda Seiki Ltd.,製のGurley’s Stiffness Testerを用いる。手順は、測定対象を、25mm×38mmとなるようにカットし、N=5で採取する。より詳細には、平面視にて液透過調整部が配置された領域の吸収性物品の剛性を測定する際は、平面視にて液透過調整部が配置された領域を含むように、吸収性物品の厚さ方向の全体を切り出す。平面視にて液透過調整部が配置された領域が、25mm×38mmを満たさない場合には、液透過調整部が配置された領域の最大領域で切り出す。液透過調整部の周囲の領域の吸収性物品の剛性を測定する際は、液透過調整部が配置された領域と同じ寸法で切り出す。なお、サンプルは、シワの無い部分を用い、ハサミでカットする。サンプルは、体液を吸収していない状態のものとする。次いで、サンプルの上端がチャック上部端に位置するように器具にセットする。この場合、サンプルの下端に振り子がかかるようになる。メモリが3~6の間になるように補助重りを取り付ける。スイッチを押し、サンプルから振り子の回転ロッドが離れる瞬間の目盛りを読む。装置のLEFT、RIGHTについて測定する。3検体を測定する。計算方法は、縦、横方向のそれぞれについて、LEFT、RIGHTの平均値を出す。本実施形態では、以下の式により計算した。なお。重りを入れた場所の位置は1インチ目がi、2インチ目がii、4インチ目がiiiである。
【数1】
【0051】
第2形態の具体的な構成としては、例えば、吸収コア31に低坪量部(スリットを含む)を形成し、当該低坪量部と厚さ方向に重なる領域に高剛性部を配置した構成を例示できる。高剛性部は、吸収コアと別資材(樹脂フィルム)によって構成されてよいもよいし、吸収コア(低坪量部を有する吸収コアと別の吸収コア、又は低坪量部が形成された吸収コアの肌側又は非肌側に位置する部分)によって構成されてよい。高剛性部は、平面視における周囲よりも剛性が高く構成されていればよい。低坪量部と高剛性部は、液透過調整部300を構成する。よって、第2形態の吸収性物品の液透過調整部300は、少なくとも一部が吸収コア31に設けられていればよく、吸収コア31に設けられていない部分を有していてもよい。第2形態の具体的な他の構成としては、吸収コア31の一部に撥水剤(例えば、シリコン)を含浸させる構成を例示できる。撥水剤を含む領域の吸収コアの単位面積あたりの吸収量は、撥水剤を含む領域の周囲の吸収コアの単位面積あたりの吸収量よりも低く、吸収性物品の平面視において、撥水剤を含む領域の吸収性物品の剛性は、撥水剤を含む領域の周囲の前記吸収性物品の領域の剛性よりも高い。撥水剤を含む領域は、液透過調整部を構成する。よって、当該構成によっても、含浸した領域の剛性を高めることともに吸水量を低くできる。
【0052】
液透過調整部は、吸収性物品の肌側から視認可能であり、吸収性物品の非肌側から視認不可能であってよい。液透過調整部は、吸収性物品の使用前において、吸収性物品の肌側から視認可能であってよい。本態様によれば、吸収性物品の肌側から液透過調整部を視認できるため、装着時に液透過調整部の位置を把握できる。また、吸収性物品の非肌側から液透過調整部を視認できないため、液透過調整部の視認可否によって感覚的に吸収性物品の肌面と非肌面を把握でき、装着時の操作性を向上できる。
【0053】
次いで、第1形態及び第2形態において、好ましくは、採用できる構成について説明する。なお、特段の言及がない限り、以下において説明する構成は、第1形態及び第2形態においても適用可能である。また、液透過調整部300の構成及び位置は、適宜変更可能であり、
図5において、変形例に係る吸収性物品を示す。なお、変形例に係る吸収性物品は、第1形態及び第2形態のいずれにも適用可能な変形例であってよい。
【0054】
第1形態の吸収性物品は、第2形態の吸収性物品と同様に、液透過調整部300が配置された領域の剛性が液透過調整部300の周囲の領域の剛性よりも高くてもよい。本態様によれば、着用時に体からの圧力によって変形することが減り、着用前の状態をより維持し易い。また、トップシート11の柔らかさで剛性の高まっているところを着用者が感じにくくなり、着用中の違和感を抑制できる。また、第2形態の吸収性物品においても、第1形態の吸収性物品と同様に、液透過調整部300は、幅中央領域RC1に配置されてよい。幅中央領域RC1に液透過調整部300を設けることで、使用前の状態を使用後でもより維持し易くなる。
【0055】
図1に示すように、液透過調整部300は、吸収コア31の幅方向Wの中心1CWを跨がっていてもよい。吸収コア31の幅方向Wの中心は、両脚によって挟まれた際等、力が集中し易い部分である。加えて、吸収コア31の幅方向Wの中心は、体液が排出され易い領域である。吸収コア31の幅方向Wの中心を跨いで液透過調整部300が設けられていることにより、力に対する変形を抑制し、また、体液の吸収による剛性等の変化を抑制できる。なお、複数の液透過調整部300が設けられた形態にあっては、そのうち1つの液透過調整部300が吸収コア31の幅方向Wの中心1CWを跨がっていればよい。また、
図5(A)に示すように、変形例において、液透過調整部300は、吸収コア31の幅方向Wの中心1CWを跨がずに設けられていてもよい。体液が比較的多く排出される吸収性物品1Xの幅方向Wの中心において体液を吸収でき、液の引き込み性の低下に起因した違和感を抑制できる。
【0056】
図1に示すように、液透過調整部300は、前後方向Lに延びてよい。すなわち、液透過調整部300は、縦長であってよい。液透過調整部300によって体液を前後方向Lに拡散し、前後方向Lの広い領域で体液を吸収できる。体液の吸収範囲が広くなることで、局所的に体液を多く保持する領域が形成されることを抑制し、吸収コア31の剛性等を体液の吸収後でもより維持し易くなる。また、
図5(A)に示すように、吸収性物品1Aの液透過調整部300は、前後方向Lに延び、かつ幅方向Wに間隔を空けて複数設けられていてよい。当該構成によれば、液透過調整部300は、幅方向Wに間隔を空けて配置され、液透過調整部300間に液透過調整部300が配置されていない領域が存在する。脚等によって幅方向Wの内側に向かう力を受けた際に、幅方向Wの外側に位置する液透過調整部300が変形した場合であっても、幅方向Wの内側に位置する液透過調整部300が変形せずにその性能を発揮することができ、いずれかの液透過調整部300によって液透過調整部300の性能を維持できる。また、液透過調整部300間の領域において体液を非肌側T2に引き込みつつ、液透過調整部300によって体液を前後方向Lに拡散し、前後方向Lの広い領域で体液を吸収できる。
図5(B)に示すように、吸収性物品1Bの液透過調整部300は、吸収コア31の前後方向Lの全域に連続して設けられていてもよい。当該構成によれば、使用前の吸収コア31の状態を維持できる領域を、吸収コア31の前後方向Lの全域に亘って連続して設けることができる。
【0057】
本実施形態の液透過調整部300は、吸収コア31の全域に設けられてなく、吸収性物品の前後方向Lの中心1CLから一定の範囲に設けられている。
図4に示すように、液透過調整部300の前端縁300Fは、吸収コア31の前端縁31Fよりも後側に位置し、液透過調整部300の後端縁300Rは、吸収コア31の後端縁31Rよりも前側に位置している。当該構成によれば、液透過調整部300よりも前後方向Lの外側の領域において、体液を引き込み、かつ吸収できる。また、比較的体液が多く排出される領域に液透過調整部300を設け、その前後方向Lの外側に液透過調整部300を設けないことにより、液透過調整部300を介して前後方向Lの外側に体液を拡散し、吸収コア31の広い範囲で体液を保持できる。よって、吸収コア31が局所的に体液を吸収せず、吸収コア31の全体に亘って体液を吸収でき、体液吸収後の吸収コア31全体に亘って変形やよれを抑制できる。また、液透過調整部300は、複数の止着部25を跨がって配置されてよい。すなわち、液透過調整部300と止着部25厚さ方向Tに重なる領域と、止着部25が配置されず、液透過調整部300が配置された領域と、止着部25が配置され、液透過調整部300が配置されていない領域と、が設けられていてもよい。
【0058】
好適には、止着部25は、液透過調整部300の外縁を跨がって配置されてよい。液透過調整部300の剛性が高い形態にあっては、液透過調整部300の外縁(境界)が肌に当たることによって違和感が生じるおそれがある。しかし、液透過調整部300の外縁(境界)を跨がって止着部が配置されていることにより、止着部によって液透過調整部300の外縁を着用物品に止着し、当該着用物品が液透過調整部300の外縁に密着することで、肌に対する違和感を抑制できる。より好適には、止着部25は、液透過調整部300の幅方向の外側縁を跨がってよく、液透過調整部300の前後方向の外端縁を跨がってよい。液透過調整部300の外縁全体に違和感を抑制できる。なお、液透過調整部300の外縁を跨がる構成は、外縁全体を跨がってなくてよく、少なくとも一部を跨がっていればよい。
【0059】
図5(C)に示すように、変形例において、吸収性物品1Cの液透過調整部300は、幅方向Wに沿って延びてよい。すなわち、液透過調整部300は、横長であってよい。当該構成によれば、液透過調整部300によって体液を幅方向Wに拡散し、幅方向Wの広い領域で体液を吸収できる。体液の吸収範囲が広くなることで、局所的に体液を多く保持する領域が形成されることを抑制し、体液吸収後の吸収コア31の剛性等を維持し易い。
図5(C)に示すように、変形例において、吸収性物品1Cの液透過調整部300は、幅方向Wに延び、かつ吸収コア31の幅方向Wの全域に連続して設けられていてもよい。当該構成によれば、使用前の吸収コア31の状態を維持できる領域を、吸収コア31の幅方向Wの全域に亘って連続して設けることができる。
図5(D)に示すように、変形例において、吸収性物品1Dの液透過調整部300は、幅方向Wに延び、かつ吸収コア31の幅方向Wの一部の領域に配置されてもよい。比較的体液が多く排出される領域に液透過調整部300を設け、その幅方向Wの外側に液透過調整部300を設けないことにより、液透過調整部300を介して幅方向Wの外側に体液を拡散し、吸収コア31の広い範囲で体液を保持できる。
【0060】
図5(D)に示すように、吸収性物品1Dの液透過調整部300は、幅方向Wに延び、かつ前後方向Lに間隔を空けて複数設けられていてよい。当該構成によれば、液透過調整部300は、前後方向Lに間隔を空けて配置され、液透過調整部300間に液透過調整部300が配置されていない領域が存在する。吸収性物品1Dが身体の前側から後側に亘って身体の丸みに沿って配置された際に、液透過調整部300が変形せずにその性能を発揮することができ、いずれかの液透過調整部300によって液透過調整部300の性能を維持できる。また、液透過調整部300間の領域において体液を非肌側T2に引き込みつつ、液透過調整部300によって体液を幅方向Wに拡散し、幅方向Wの広い領域で体液を吸収できる。また、液透過調整部300の剛性が高い形態にあっては、脚によって挟まれた際における液透過調整部300の変形を抑制でき、吸収コア31の形状をより使用前の状態で維持できる。液透過調整部300の前後方向Lのピッチは、止着部25の前後方向Lのピッチと異なっていてもよい。すなわち、液透過調整部300と止着部25厚さ方向Tに重なる領域と、止着部25が配置されず、液透過調整部300が配置された領域と、止着部25が配置され、液透過調整部300が配置されていない領域と、が設けられていてもよい。
【0061】
図5(E)に示すように、変形例において、吸収性物品1Eの液透過調整部300は、格子状に配置されていてもよい。当該構成によれば、液透過調整部300が設けられた領域と、液透過調整部300が設けられていない領域と、が、それぞれ前後方向L及び幅方向Wに延びるため、前後方向L及び幅方向Wの広い範囲に亘って体液を拡散できるとともに、液透過調整部300が設けられていない領域において体液の引き込み性を確保できる。
【0062】
また、液透過調整部300は、着用者の排泄口と対向して配置される排泄口対向域S5に設けられてよい。本実施形態のように、吸収性物品が前後方向Lの中心を通り、かつ幅方向Wに延びる線に対して線対称の形態にあっては、吸収性物品1が前後方向Lの中心に排泄口対向域S5が配置されているものとする。すなわち、液透過調整部300は、吸収性物品1の前後方向Lの中心1CLを跨がっていてよい。排泄口対向域S5は、体液が最も導かれ易く、体液を吸収し易い部分である。液透過調整部300が排泄口対向域S5に設けられていることによって、一番体液を吸収し変形しやすい場所における剛性を使用前に近い状態で維持でき、着用時のよれを効果的に抑制できる。
【0063】
図5(F)に示すように、変形例において、吸収性物品1Fの液透過調整部300は前後方向Lの中心を跨がないように配置されてよい。当該構成によれば、体液が比較的多く排出される吸収性物品1の前後方向Lの中心1CLにおいて体液を吸収でき、液の引き込み性の低下に起因した違和感を抑制できる。また、
図5(F)に示すように、吸収性物品1Fの液透過調整部300が吸収コア31の前後方向の中心よりも前側に位置している形態にあっては、使用者が装着操作や着用時に液透過調整部300の存在に気づき易くなる。
【0064】
液透過調整部300の前後方向Lの長さは、吸収性物品1の前後方向Lの長さに対する50%以下であってよい。液透過調整部300は、吸収性物品1の前後方向Lの長さに対する50%以下であり、吸収コア31の前後方向の全体に占める割合が低い。着用時、吸収性物品1の前後方向Lに沿う断面形状は、身体の形状に沿う曲線状となる。液透過調整部300の前後方向Lの長さを比較的短くすることで、液透過調整部300の変形を抑制しつつ吸収コア31全体を身体のカーブに沿わせ易い。また、好適には、液透過調整部300の前後方向Lの長さは、吸収性物品1の前後方向Lの長さに対する40%以下であってよく、より好適には、30%以下であってよい。
【0065】
液透過調整部300の前後方向Lの長さは、身体のカーブに沿って配置し易くするために、90mm以下であってよく、好適には、80mm以下であってよい。また、体液の前漏れ及び後漏れを抑制するために、液透過調整部300の外端縁と吸収コア31の外端縁との距離は、20mm以上であってよく、好適には、30mm以上であってよく、より好適には、40mm以上であってよい。また、液透過調整部300による吸収コア31の形状を維持する性能を確保するために、液透過調整部300の前後方向Lの長さは、30mm以上であってよく、好適には40mm以上であってよく、より好適には、50mm以上であってよい。
【0066】
液透過調整部300の幅方向Wの長さは、吸収コア31の幅方向Wの長さに対する50%以下であってよい。液透過調整部300の幅方向Wの長さが吸収コア31の幅方向Wの全域に対する50%以下であるため、液透過調整部300が着用者の足等に触れ難く、直接力を受けることを避けられるため、液透過調整部300を維持し、吸収コア31のよれを低減することができる。加えて、液透過調整部300の幅方向Wの長さが長すぎると、液透過調整部300の比率が高くなり、吸収コア31への体液の引き込み性が低下し、伝え漏れ等の漏れが発生するおそれがある。しかし、液透過調整部300の幅方向Wの長さが吸収コア31の幅方向W全域に対する50%以下であるため、他の領域において体液の引き込み性を確保し、漏れを抑制できる。また、好適には、液透過調整部300の幅方向Wの長さは、吸収コア31の幅方向Wの長さに対する40%以下であってよく、より好適には、吸収コア31の幅方向Wの長さに対する30%以下であってよい。
【0067】
液透過調整部300の幅方向Wの長さは、排泄口に対する違和感を抑制するために、40mm以下であってよく、好適には、30mm以下、より好適には、20mm以下であってよい。液透過調整部300の幅方向Wの長さは、脚に対する違和感を抑制するために、60mm以下であってよく、好適には、40mm以下であってよく、より好適には、30mm以下であってよい。更に、脚に対する違和感を抑制するために、液透過調整部300の外側縁と吸収性物品の外側縁との距離は、20mm以上であってよく、好適には、30mm以上であってよく、より好適には、40mm以上であってよい。また、体液の横漏れを抑制するために、液透過調整部300の外側縁と吸収コア31の外側縁との距離は、20mm以上であってよく、好適には、30mm以上であってよく、より好適には、40mm以上であってよい。また、液透過調整部300による吸収コア31の形状を維持する性能を確保するために、液透過調整部300の幅方向Wの長さは、5mm以上であってよく、好適には10mm以上であってよく、より好適には、15mm以上であってよい。
【0068】
液透過調整部300は、対象部材に配置された少なくともいずれかの資材によって構成されてよい。液透過調整部300は、1つの資材に設けられていてもよいし、複数の資材に設けられていてもよい。液透過調整部300はトップシート11の非肌面と吸収コア31の非肌面の間に設けられていればよく、その範囲内での厚さ方向Tの位置は限定されない。液透過調整部300は、トップシート11の非肌面と吸収コア31の非肌面の間において厚さ方向Tに連続して設けられていてもよいし、厚さ方向Tの一部に設けられていてもよい。
【0069】
図3及び
図4に示すように、液透過調整部300は、トップシート11と吸収コア31の間に設けられてよい。当該構成によれば、少なくとも液透過調整部300と厚さ方向に重なる領域の吸収コア31の体液の吸収を抑制でき、かつ液透過調整部300と吸収コア31が別体で設けられているため、吸収コア31の吸収性能を確保し易い。トップシート11と吸収コア31の間に設けられる液透過調整部300は、具体的には、例えば、補助シート、コアラップシート、本実施形態の樹脂フィルム、接着剤、及び撥水剤を例示できる。また、親水性繊維を有する不織布に撥水剤を塗布したもの、及び親水性繊維を有する不織布の一部を溶着加工等によってフィルム化したものを、液透過調整部300として用いてもよい。
【0070】
変形例において、
図5(G)に示すように、吸収性物品1Gの液透過調整部300は、吸収コア31に設けられてよい。本態様によれば、吸収コア31の一部が液透過調整部300である場合は、体液を吸収コア31で吸収し難くなるため、吸収コア31の剛性を維持できる。また、液透過調整部300よりも肌側T1に配置されたトップシート11等において体液の引き込み性を確保し、吸収性物品1の表面の液残りを抑制できる。よって、吸収性物品1の表面に残った体液による肌トラブルを抑制できる。
【0071】
変形例において、
図5(H)に示すように、吸収性物品1Hは、トップシート11と吸収コア31の間に配置された補助シート15を有し、液透過調整部300は、トップシート11と補助シート15の間に設けられてよい。本態様によれば、吸収コア31から離れた位置に液透過調整部300を設けることができ、吸収コア31で体液を吸収する可能性が低減し、体液の吸収前後における吸収コア31の剛性の変化を更に低減することができる。
【0072】
液透過調整部300は、本実施の形態のように、吸収コア31よりも肌側T1に配置された液不透過性のシートによって構成されてよい。液不透過性のシートは、液を透過させない液不透過性を有するシートである。液不透過性のシートは、例えば、本実施形態の樹脂フィルム50を例示でき、他の構成としては、セロハンを例示できる。当該構成によれば、液不透過性のシートによって肌側からの体液の吸収が抑制され、当該シートと厚さ方向に重なる領域の吸収コア31の剛性を確保できる。
【0073】
また、液透過調整部300は、吸収コア31に付された疎水性の撥水剤、吸収コア31とトップシート11の間に配置されたシートに付された疎水性の塗布剤の少なくとも一方によって構成されてよい。当該構成によれば、疎水性の塗布剤によって肌側からの体液の吸収が抑制され、当該接着剤と厚さ方向に重なる領域の吸収コア31の剛性を確保できる。疎水性の塗布剤は、例えば、接着剤(HMA型接着剤)、撥水剤(シリコン)を例示できる。塗布剤によって液透過調整部300を構成する形態は、周囲よりも塗布剤の塗布領域よりも厚くする(資材の内側まで含浸させる)構成、周囲よりも単位面積あたりの塗布剤の面積率を高くする構成(周囲の領域は、スパイラル等の間欠塗工で、液透過調整部300に対応する領域は、非間欠塗工)、周囲に塗布剤を塗布せずに、液透過調整部300を構成する領域のみに塗布する構成を例示できる。
【0074】
図5(G)に示すように、変形例において、吸収性物品1Gの液透過調整部300は、少なくとも吸収コア31を厚さ方向に圧縮した圧搾部35によって構成されてよい。圧搾部35は、吸収コア31のみを圧縮されていてもよいし、吸収コア31と他のシート(例えば、コアラップシート、補助シート等)を共に圧縮されていてもよい。圧搾部35からなる液透過調整部300は、その剛性が高く、吸収コア31の剛性をより確保でき、また、圧搾部が設けられていない領域と比較して肌側から非肌側への体液の移行速度を低下できる。より好適には、圧搾部35の形成時に、圧搾部35を設ける箇所にシリコンを塗布し、当該シリコンを圧搾部に転写してもよい。当該構成によれば、液透過調整部300における体液の移行速度をより低下できる。また、他の好適な形態としては、圧搾部35を形成する資材(吸収コア31等)に熱可塑性樹脂を含む場合に、圧搾部35の形成時に熱可塑性樹脂を溶解させてもよい。当該構成によれば、液透過調整部300における体液の移行速度をより低下できる。
【0075】
図5(I)に示すように、液透過調整部300よりも非肌側T2において液透過調整部300と領域には、着用者の健康状態を検査するための検査部材60が配置されてよい。
図5(I)に示す形態では、検査部材60の肌側T1に、液透過調整部300を構成する樹脂フィルム50が配置されている。液透過調整部300と重なる領域に検査部材60が配置されていることで、検査部材60に過度な体液が触れることを避け、誤反応を抑制することができる。加えて、液透過調整部300がよれ難い構成にあっては、検査部材60に過度な圧力がかかることを避けることができ、検査部材60に折り皺が発生することを避けることができる。当該検査部材は、例えば、着用者の健康状態(を示す色)を指示薬により表示する部材であってよく、例えば、特開2020-022585号公報に記載の検査部材を適用できる。なお、検査部材60の少なくとも一部を液透過調整部300が覆っていればよく、好適には、検査部材60の全体を液透過調整部300が覆っていてもよい。
【0076】
(3)第2実施形態に係る吸収性物品
次いで、第2実施形態に係る吸収性物品1について説明する。第2実施形態に係る吸収性物品1は、検査部材60を有している。
図6は、吸収性物品1の肌側T1から見た平面図である。
図7は、吸収性物品1の非肌側T2から見た平面図である。
図8は、
図6に示すA-A線に沿った断面図である。
図9は、
図6に示すB-B線に沿った断面図である。
図10は、
図1に示すC-C線に沿った断面図である。
図11は、
図10に示すD部分の拡大図である。吸収性物品1は、前後方向Lと幅方向Wと厚さ方向Tとを有してよい。前後方向Lは、着用者の前側(腹側)から後側(背側)に延びる方向、又は着用者の後側から前側に延びる方向である。幅方向Wは、前後方向Lと直交する方向である。厚さ方向Tは、前後方向L及び幅方向Wに直交する方向である。厚さ方向Tは、肌側T1と非肌側T2に延びる。肌側はT1、使用時に、着用者の肌に面する側に相当する。非肌側T2は、使用時に、肌側とは反対側、すなわち着用者の肌とは反対に向けられる側に相当する。
【0077】
吸収性物品1は、前側域S1、後側域S2及び股下域S3を有する。股下域S3は、着用者の排泄口、例えば膣口に対向して配置される領域である。吸収性物品1が着用物品に装着されたときに着用物品の股下に配置され、着用者の両脚の間に配置される領域である。前側域S1は、股下域S3よりも前側に位置する。前側域S1の前端縁は、吸収性物品1の前端縁を規定する。後側域S2は、股下域S3よりも後方に位置する。後側域S2の後端縁は、吸収性物品1の後端縁を規定する。股下域S3は、吸収性物品1を前後方向に三等分した領域のうち中央に位置する領域であってよい。また、ウイングを有する吸収性物品にあっては、股下域S3は、ウイングが設けられた領域であってよい。
【0078】
なお、本発明における外側部とは、幅方向Wにおける外側縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、外側縁とは、幅方向Wにおける外側縁である。なお、前後方向に一定の範囲を占める構成部材の外側縁は、当該構成部材において幅方向の外側に位置する点を、構成部材全体に亘って繋いだ縁である。本発明における内側部とは、幅方向Wにおける内縁を含む幅方向Wに一定の範囲を占める部分であり、内側縁とは、幅方向Wにおける内縁である。なお、前後方向に一定の範囲を占める構成部材の内側縁は、当該構成部材において幅方向の内側に位置する点を、構成部材全体に亘って繋いだ縁である。また、本発明における前端部及び後端部は、前後方向Lにおける縁を含む前後方向Lに一定の範囲を占める部分であり、前端縁及び後端縁は、前後方向Lにおける縁である。外端部は、前端部及び後端部を含んでおり、外端縁は、前端縁及び後端縁を含んでいる。また、内側辺は、内側縁を含み、かつ前後方向Lに沿って延びる辺である。外側辺は、外側縁を含み、かつ前後方向Lに沿って延びる辺である。なお、本明細書において、「前後方向Lに沿って」という用語は、前後方向Lに対して45°未満の角度を持った方向を意味し、「幅方向Wに沿って」という用語は、幅方向Wに対して45°未満の角度を持った方向を意味する。
【0079】
吸収性物品1は、吸収コア31と、トップシート11と、バックシート21と、を少なくとも有してよい。吸収性物品1は、縦長の形状であってよい。吸収コア31は、液体を吸収する吸収材料を含む。吸収材料は、例えば、パルプ及び高吸収性ポリマーの少なくとも一方により構成されてよい。吸収コア31は、エアレイドパルプシートによって構成されてよい。吸収コア31は、コアラップシートによって厚さ方向に挟まれていてもよい。
【0080】
トップシート11は、吸収性物品1の肌側の面を構成し、着用者の肌に当接する。トップシート11は、例えば、スパンレース不織布、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布などにより構成されてよい。トップシート11の可視光透過率は、60%以上であってよい。トップシート11の可視光透過率は、好ましくは、70%以上であってよいし、さらに好ましくは、80%以上であってよい。トップシート11の坪量は、90g/m2以下であってよいし、30g/m2以下であってよいし、17g/m2以下であってよい。トップシート11の厚さは、5mm以下であってよい。トップシート11の構成については、後述にて詳細に説明する。
【0081】
可視光透過率は、例えば、分光光度計(日本分光(株) V-570)を用いて測定できる。具体的には、30mm×30mmにカットされた測定対象を用いて可視透過率を測定できる。以下において、可視光線の波長の範囲は、380nmから750nmとする。測定条件は、以下の通りとしてよい。
・測光モード:Abs
・レスポンス:Medium
・バンド幅:2.0nm
・近赤外:8.0nm
・走査速度:1000nm/min
・開始波長:830nm
・終了波長:350nm
・データ取り込間隔:1.0nm
【0082】
バックシート21は、吸収性物品1の非肌側T2の面を構成する。着用物品に装着される吸収性物品1にあっては、バックシート21は、着用物品に当接する。バックシート21は、例えば、液不透過性のフィルムによって構成されてよく、液不透過性及び通気性を有するシートであってよい。液不透過性及び通気性を有するシートとしては、例えば、ポリエチレン樹脂と炭酸カルシウムで構成されたフィルムで、表面に微細な連通孔を形成し、水蒸気及び空気を透過させ、水を遮蔽するシートを例示できる。バックシート21の非肌側の面には、吸収性物品1を着用物品(下着等)に接合するための止着部25が設けられていてよい。止着部25は、ホットメルト型接着剤等の接着剤が付された部分であってもよいし、メカニカルファスナ等の係合部材が設けられた部分であってよい。止着部25は、幅方向Wに延び、前後方向Lに間隔を空けて複数配置されてよい。
【0083】
吸収性物品1は、吸収コア31よりも肌側T1に配置された補助シート15を有してよい。補助シート15は、トップシート11から吸収コア31への体液の引き込み性を高める。補助シート15は、エアスルー不織布によって構成されてよい。補助シートは、検査部材60よりも非肌側T2であって、吸収コア31よりも肌側T1に配置されてよい。
【0084】
吸収性物品1は、少なくともトップシート11を厚さ方向Tに圧縮した圧搾部35が形成された圧搾領域と、圧搾部35が形成されていない非圧搾領域と、を有してよい。圧搾領域は、
図6に示す平面視において圧搾部35が配置された領域であり、非圧搾領域は、平面視にて圧搾部が配置されてない領域である。圧搾部35は、少なくともトップシート11を圧縮していればよく、トップシート11と補助シート15を圧縮していてもよいし、トップシート11と吸収コア31を圧縮していてもよい。本実施の形態の圧搾部35は、トップシート11と補助シート15を圧縮して構成されている。圧搾部35は、吸収性物品1の幅方向Wの中心を挟んだ両側にそれぞれ配置されてよい。
【0085】
吸収性物品1は、着用者の健康状態を検査する検査部材60を有する。検査部材60は、排泄物に基づく呈色(色の変化)によって着用者の健康状態を表示する。検査部材60は、指示薬を保持又は含有できる部材を有していればよく、例えば、紙、不織布、織布などのいずれかの材料により構成されてよい。排泄物(検体)は、例えば、血液(経血)、尿、大便、汗、おりものなどが挙げられる。健康状態を示す項目は、例えば、体調関連(pH、鉄欠乏性貧血、腎機能、心筋梗塞、炎症・感染症、栄養状態評価など)、妊娠関連(生理周期予測、排卵予測など)、精神関連(鬱傾向、薬物など)が挙げられる。検出対象は、例えば、尿中老廃物(尿比重)、白血球、水素イオン(pH)、蛋白質、ブドウ糖、ケトン体、ウロビリノーゲン、ビリルビン、尿潜血、亜硝酸塩、ステロイド、ペプチド、芳香族化合物、FSH(卵胞刺激ホルモン)、BUN(Urea nitorogen)、AlB(Albumin)、LPS(リポ多糖)、hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)、LH(黄体形成ホルモン)、U-ALB、CRP(C-リアクディブ・プロテイン)、ミオグロビン、CK-MB、トロポニンI、トロポニンT、ヘモグロビン、ストレップA、HBs抗体、HIV抗体、TP抗体、ロタウイルス、インフルエンザウイルス、アデノウイルス、DNA、O-157、コカイン、マリファナ、モルヒネ、フェリチン、IgA(免疫グロブリンA)などが一例として挙げられる。検出対象は、健康状態を示す項目に応じて決定される化学物質(無機物、有機物)であり、他の化学物質と反応することで、呈色を引き起こす。検査部材60は、健康状態を検査するために、例えば、イムノクロマト法、又は試験紙法を用いることができる。
【0086】
本実施の形態の検査部材60は、おりものから黄体形成ホルモン(LH)を検出するためのイムノクロマト法を用いた検査部材である。検査部材60は、0.05mIU/mL~10.0mIU/mLの黄体形成ホルモンを陽性として検出してよい。吸収性物品1は、従来の尿中黄体形成ホルモン(LH)の検査キットとは異なり、日常使用される物品なので、非常に簡便に排卵日の予測を行うことができ、また、心理的な抵抗感が比較的少なくなるという効果ももたらす。さらに、尿を用いた従来の排卵日予測の検出のために試験片に尿をあてるなどの操作が必要となり、また比較的長い時間(例えば10分)を要する場合があるが、吸収性物品1によれば、吸収性物品1を装着するだけでおりものの排出に伴って検出反応が行われるので、排卵日の予測がより簡便になる。例えば、吸収性物品1によれば、検査結果を確認するために10分間待つのではなく、吸収性物品1の装着後10分間を超えた時点で、トイレに行くタイミングなどに合わせて検出結果の確認ができるので簡便である。また、従来の尿を用いる場合とは異なり、本件吸収性物品は、手の汚れを気にせずに検出できるという利点も有する。よって、簡便な排卵日予測を可能にする吸収性物品を提供することができる。
【0087】
加えて、出願人が鋭意研究した結果、おりものから検出した黄体形成ホルモン(LH)は、排卵日から5日前から排卵日当日までの予測日を立てることができる。これに対して、尿から検出した黄体形成ホルモン(LH)は、排卵日を含む2日である。より詳細には、尿からLHを検出するための検査部材は、一般的に、20.0mIU/mL~100.0mIU/mLの黄体形成ホルモンを陽性として検出することが知られている。すなわち、尿に含まれるLH量の範囲は、おりものに含まれるLH量の範囲よりも広いため、尿からLHを検出するための検査部材は、ノイズを除くために、おりもの中のLHを検出する検査部材に比べて、感度を低く保つ必要である。尿中のLHを検出する検査部材は、fertile window以外のピークも拾ってしまうおそれがあり、おりものと同様の数値範囲に検査機器の感度を設計することが難しい。よって、尿中のLHを検出する検査部材は、排卵日2日前よりも前からの予測は尿では困難である。これに対して、おりものから黄体形成ホルモン(LH)を検出する検査部材は、排卵日から5日前から3日前の予測日を特定することができる。そのため、おりものから黄体形成ホルモン(LH)を検出する検査部材は、排卵日から5日前から3日前の予測日を特定することができる。排卵日から5日前から3日前を特定できるため、妊活を計画立てて予定できる。従前のように、排卵日当日又は前日に把握できる形態と比較して、当日等に妊活を予定しなければならない負担を軽減したり、予め計画できないことで妊活ができなかったりすることを抑制したりして、精神的な負担を軽減しつつ妊活の実行力を高めることができる。また、生理周期に基づく排卵日の予測は、排卵日の2週間前程度での特定となってしまう。個体差を考慮すると2週間という離れた期間で予測することはその精度の確からしさが低くなってしまう場合がある。また計画を立てるという点からも2週間は長すぎるという欠点がある。これに対して、おりものから黄体形成ホルモン(LH)を検出する検査部材は、排卵日から5日前から3日前の予測日を特定することができ、排卵日に近い日程で排卵日の予測を立てることができ、排卵日予測の精度を高め、妊活の実行力を高めることができる。
【0088】
図11に示すように、検査部材60は、排泄物に含まれる成分である排泄物成分を移動させ、表示部62に導く移動部66と、移動部66から導かれた排泄物成分に基づいて呈色する表示部62と、を有してよい。表示部62は、着用者の健康状態を表示する。表示部62は、呈色後の色によって着用者の健康状態を表示してもよく、呈色の有無によって着用者の健康状態を表示してもよい。着用者は、呈色後の色及び/又は呈色の有無を目視により判定することで健康状態を確認できる。表示部62は、排泄物成分及び標識抗体の少なくとも一方に基づいて呈色する指示薬を含んでよい。指示薬は、排泄物に含まれる検出対象又は検出対象を由来とするもの(例えば、検出対象と抗体とが抗原抗体反応を起こして形成される複合体)と反応することにより呈色する化学物質(無機物、有機物)を含んでよい。また、指示薬は、排泄物と共に移動した標識抗体(検出対象と抗原抗体反応を起こす化学物質)と反応することにより呈色する化学物質(無機物、有機物)を含んでよい。
【0089】
検査部材60は、排泄物を接触させる接触部64を有してよい。接触部64は、例えばパッド(サンプルパッド又は検体パッドと称されてよい)により構成されてよい。接触部64は、排泄物を引き込み、当該排泄物において検査に必要な排泄物成分を移動部66に導くように構成してよい。表示部62は、検出対象が異なる複数の表示部により構成されてよい。表示部62は、例えば、第1表示部62Aと第2表示部62Bとを有してよい。第1表示部62Aは、第2表示部62Bよりも接触部64の近くに位置する。
【0090】
移動部66は、排泄物成分が毛細管現象により移動してよい。なお、排泄物成分は、検出対象を含んでよい。移動部66は、排泄物成分が接触部64から表示部62まで移動する表示移動部66Aと、排泄物成分が表示部62から離れる方向へ移動する終端移動部66Bと、を有してよい。表示移動部66Aは、接触部64から第1表示部62Aまでの第1表示移動部66A1と、複数の表示部62の間(実施形態では、第1表示部62Aから第2表示部62B)を排泄物成分が移動する第2表示移動部66A2とを有してよい。終端移動部66Bは、表示部62を通過した排泄物成分等が移動する部分である。
【0091】
健康状態を検査するために、例えば、イムノクロマト法を用いることができる。イムノクロマト法では、排泄物が接触する接触部64は、サンプルパッド又は検体パッドにより構成されてよい。接触部64に接触した排泄物成分が表示移動部66Aを移動する。具体的には、排泄物成分は、第1表示移動部66A1において表示部62まで移動する。表示部62は、検出対象(抗原)と反応する抗体(標識抗体)を含む。標識抗体は、第1表示移動部66A1に含まれてよい。第1表示移動部66A1のうち標識抗体を含む部分は、例えばコンジュゲードパッドにより構成されてよい。第1表示移動部66A1では、排泄物成分、排泄物成分に含まれる検出対象と抗原抗体反応を起こして形成された複合体、及び、標識抗体が毛細管現象により移動してよい。これらの化学物質が移動する部分は、例えばメンブレンにより構成されてよい。本実施の形態の移動部66は、コンジュゲードパッド66Xとメンブレン66Yとを有し、標識抗体は、コンジュゲードパッド66Xに含まれている。
【0092】
表示部62は、指示薬(補足抗体)を含む領域である。第1表示部62Aは、複合体を補足(結合)する補足抗体を含んでよい。第1表示部62Aは、複合体が補足抗体により補足されることで呈色する。第1表示部62Aは、テストラインと称されてよい。第1表示部によって補足されなかった複合体、標識抗体及び排泄物成分は、第2表示移動部66A2を移動して、第1表示部62Aから第2表示部62Bへ到達してよい。
【0093】
第2表示部62Bは、第1表示部62Aと別の補足抗体を含んでよい。第2表示部62Bの補足抗体は、第1表示部62Aで補足された複合体と別の複合体を補足してもよいし、標識抗体を補足してよい。第2表示部62Bは、第1表示部62Aと別の補足抗体により、複合体又は標識抗体が補足されることで呈色する。標識抗体を補足する第2表示部62Bは、コントロールラインと称されてよく、検査が正しく完了したかを判別するための表示であり、検査が正しく完了に呈色する。表示部62を通過した排泄物成分(すなわち、補足抗体により補足されなかった成分)は、終端移動部66Bを移動する。終端移動部66Bは、メンブレン66Yにより構成されてよい。また、検査部材60は、表示部62を通り過ぎた排泄物成分を吸収する吸収部67を有してよい。吸収部67の代わりに、表示部62を通り過ぎた排泄物成分は、吸収コア31に吸収されてもよい。イムノクロマト法が用いられる場合、表示部62と接触部64とは異なる位置に配置されている。
【0094】
検査部材60は、移動部66から表示部62への排泄物成分の移動方向である第1方向と、第1方向と直交する第2方向と、を有する。第1方向は、排泄物成分の移動方向に延びる方向であり、本実施の形態では、吸収性物品1の前後方向Lに沿う方向である。すなわち、本実施の形態の第1方向は、前後方向Lであり、第2方向は、幅方向Wである。しかし、変形例において、第1方向は、幅方向Wであってよく、第2方向は、前後方向Lであってよい。検査部材60は、第1方向の長さが第2方向の長さよりも長くてよい。
【0095】
検査部材60の幅方向Wに沿う長さは、1mm以上10mm以下であってよい。個体差はあるものの一般的な小陰唇等の幅は、10mm程度である。一般的な小陰唇等の幅よりも検査部材の幅方向Wに沿う長さを短くすることで、着用時の違和感を低減できる。検査部材60の幅方向Wに沿う長さ幅は、着用者の視認性や加工性の観点からは、好ましくは2mm以上であってよい。好適には、検査部材の幅方向Wに沿う長さは、3mm以下であってよい。検査部材の幅方向Wに沿う長さが3mm以下であることで、検出のために保持される必要のある液量が、比較的低減されている。したがって、量が少なく粘性が高くかつLH量が少ないおりものを検出対象とした場合であっても、良好にLHの検出を行うことができる。
【0096】
次いで、好適な検査部材の構成について詳細に説明する。
図12は、検査部材60の幅方向Wに沿った断面の断面写真である。
図12は、メンブレン66Yが配置された領域の断面である。
図13は、検査部材60の幅方向Wに沿った断面を模式的に示した図である。
図13(A)は、
図11に示すF―F線に沿った断面図であり、
図13(B)は、
図11に示すG―G線に沿った断面図であり、
図13(C)は、H―H線に沿った断面図である。なお、
図13の断面図は、模式図であり、実際の検査部材60の肌側の面は、
図12に示すように、滑らかに傾斜した曲線状であってよい。より詳細には、検査部材60の肌側の面は、検査部材の外側縁60Eから幅方向の内側に向かって、非肌側T2から肌側T1に向かって曲線状に傾斜する形状であってよく、検査部材の外側縁60Eから幅方向の内側に向かう一定範囲のサイド領域の平均厚さは、センター領域の平均厚さよりも薄くてよい。本実施の形態の検査部材60は、接触部64としてのサンプルパッド64Zと、移動部66としてのコンジュゲードパッド66X及びメンブレン66Yと、を有する。サンプルパッド64Zは、検査部材60の前後方向の一方の端部(本実施の形態では後端部)に配置されている。サンプルパッド64Zの非肌側T2に、コンジュゲードパッド66Xが配置されている。コンジュゲードパッド66Xは、サンプルパッド64Zの前後方向Lの他方の端部(本実施の形態では前端部)と厚さ方向に重なっており、サンプルパッド64Zの一方の端部と厚さ方向Tにおいて重なっていない。よって、サンプルパッド64Z内に引き込まれた排泄物は、サンプルパッド64Z内を通過した後に、コンジュゲードパッド66Xに導かれる。コンジュゲードパッド66Xの非肌側T2に、メンブレン66Yが配置されている。メンブレン66Yは、コンジュゲードパッド66Xの他方の端部と厚さ方向Tに重なっており、コンジュゲードパッド66Xの一方の端部と厚さ方向において重なっていない。メンブレン66Yの一方の端部と、サンプルパッド64Zの他方の端部と、は、前後方向Lに離間している。そのため、排泄物成分は、サンプルパッド64Z、コンジュゲードパッド66X及びメンブレン66Yの順で移動する。メンブレン66Yの肌側T1の面には、第1表示部62Aと、第2表示部62Bと、が設けられている。第1表示部62Aと、第2表示部62Bと、は、前後方向Lに間隔を空けて配置されている。
【0097】
本実施の形態の検査部材60は、検査肌側シート68と、検査非肌側シート69と、吸収部67と、を有している。検査肌側シート68は、液不透過性のフィルムによって構成されている。検査肌側シート68は、検査部材60の肌側T1の面を構成し、サンプルパッド64Z、コンジュゲードパッド66X、メンブレン66Y、吸収部67、及び検査非肌側シート69のいずれよりも肌側T1に配置されている。検査肌側シート68は、サンプルパッド64Zの一部の領域(サンプルパッド64Zにおいてコンジュゲードパッド66Xによって覆われていない領域)の肌側T1を覆わずに、サンプルパッド64Zにおいてコンジュゲードパッド66Xによって覆われた領域、コンジュゲードパッド66X、メンブレン66Y、吸収部67の全体に亘って肌側T1を覆っている。検査非肌側シート69は、検査部材60の非肌側T2の面を構成し、サンプルパッド64Z、コンジュゲードパッド66X、メンブレン66Y、吸収部67、及び検査肌側シート68のいずれよりも非肌側に配置されている。検査非肌側シート69は、サンプルパッド64Z、コンジュゲードパッド66X、メンブレン66Y、吸収部67、検査肌側シート68の全体に亘って非肌側T2を覆っている。吸収部67は、メンブレン66Yの前後方向Lの他方の端部と厚さ方向Tに重なっており、メンブレン66Yの一方の端部と厚さ方向Tにおいて重なっていない。吸収部67は、メンブレン66Yよりも肌側T1に配置されている。
【0098】
検査部材60の標識抗体は、着色に寄与する分子が結合された着色抗体を有してよい。標識抗体は、着色抗体のみによって構成されていてもよいし、着色抗体以外の抗体を有してもよい。着色抗体は、呈色前の状態から着色しているものである。着色抗体は、着色抗体が配置された部材(例えば、コンジュゲードパッド)と異なる色で着色されてよい。着色抗体の色は、例えば、青色、赤色、黄色、白色によって着色を例示できる。吸収性物品1の平面視において、着色抗体が配置された部分と、着色抗体の周囲(本実施の形態においては、コンジュゲードパッドにおける着色抗体が配置されていない部分)に対する色差が3.0以上であってよい。本実施の形態の着色抗体が配置された部分は、コンジュゲードパッド66Xである。着色抗体が抗原抗体反応を起こして形成された複合体は、着色抗体に基づいて着色された色となる。
【0099】
図14は、表示部62の呈色態様の一例を、検査部材60を肌側T1から見た状態の平面図において示している。
図14において、着色抗体によって着色した領域をR1で示し、後述する着色領域をR20で示している。
図14(A)は、第1表示部62Aと第2表示部62Bの両方が呈色反応を示す前(以下、呈色前とする)の検査部材60を示しており、
図14(B)は、検査中の状態を示しており、
図14(C)は、第1表示部62Aと第2表示部62Bの両方が呈色反応を示した後(以下、呈色後とする)の吸収性物品1を示している。
図14(C)では、検出対象を検出した場合(テストラインが呈色した場合)の呈色態様を示している。
図14(A)に示す呈色前の状態では、第1表示部62A及び第2表示部62Bは、周囲と一体化している。第1表示部62A及び第2表示部62Bが周囲と一体化した状態は、第1表示部62Aと、周囲のメンブレン66Yと、の色差が3.0未満の状態、及び第2表示部62Bと、周囲のメンブレンと、の色差が3.0未満の状態である。一方、第1表示部62A及び第2表示部62Bが周囲に対して区別して認識可能(一体化していない)状態は、第1表示部62Aと、周囲のメンブレン66Yと、の色差が3.0以上の状態、及び第2表示部62Bと、周囲のメンブレン66Yと、の色差が3.0以上の状態である。呈色前の状態では、着用者は、第1表示部62A及び第2表示部62Bを認識し難い。
【0100】
図14(B)に示すように、検査中は、コンジュゲードパッド66Xから複合体と着色抗体が移動し、着色抗体と着色抗体によって着色された複合体とによってメンブレン66Yの肌面が着色された状態となる。着用者は、検査中に着色抗体及び着色された複合体を視認でき、検査が進行されていることを把握できる。更に、検査が進行すると、複合体及び着色抗体は、第2表示移動部66A2を移動し、終端移動部66Bに移動する。
図14(C)は、呈色後の状態であり、第1表示部62Aは、複合体によって呈色し、第2表示部62Bは、標識抗体(着色抗体を含む)によって呈色する。第1表示部62A及び第2表示部62Bによって補足されなかった複合体及び標識抗体は、吸収部67まで移動し、吸収部67によって吸着される。このように、着色抗体を有することにより、着用者は、検査過程を把握することができる。表示部は、複合体と標識抗体の少なくとも一方を補足して呈色する。複合体が有色となることで、複合体を補足して呈色した色が目立ち易くなる。また、着色抗体を補足して呈色した色も目立ち易くなる。よって、呈色後の表示部をより目立たせることができ、着用者は、検査結果をより簡便に把握し易くなる。
【0101】
しかし、着用者によっては、使用前の検査部材60を視認した際に、着色抗体を視認することで、呈色反応前にも関わらず、呈色反応後のように錯覚するおそれがあった。本実施の形態に係る吸収性物品1は、着用者の誤認識を防ぐように構成されている。より詳細には、吸収性物品1は、移動部66に設けられた着色抗体の肌側T1を覆う着色領域R20を有する。着色領域R20は、検査部材60の使用前において、すなわち、着色抗体が移動する前の状態において、着色抗体の肌側T1を覆っていればよく、検査過程において移動した着色抗体の肌側T1を覆っていなくてもよい。吸収性物品1の使用前において、移動部66に設けられた着色抗体の肌側T1が着色領域R20によって覆われていることにより、着用者が使用前の吸収性物品1を肌側T1から視認した際に、着色領域R20の背面側に着色抗体が配置され、着色抗体を直に視認し難い。着用者は、使用前に、着色抗体を視認し難く、吸収性物品1の使用前において検査部材60が既に反応したと認識する誤認識を抑制できる。
【0102】
着色領域R20は、吸収性物品1の使用前に吸収性物品1の肌側T1から視認可能に構成されている。そのため、着用者は、着色領域R20を視認することで、検査部材60を有する吸収性物品1であることを認識でき、検査部材60の存在、検査結果を把握すべきことを認識できる。吸収性物品1は、検査を行う場合のみならず、日常使用されるものであり、検査部材60を有する吸収性物品1と検査部材60を有しない吸収性物品の両方を適宜使用することがある。使用者は、着色領域R20を視認することで検査部材60を有する吸収性物品1であることを認識できる。また、検査を行うために検査部材60を有する吸収性物品を装着しても、着用中に検査中であることを失念する場合がある。このような場合でも吸収性物品1の取り替え時等、吸収性物品1を視認した際に、検査部材60の存在を改めて気づき、検査結果を適切に把握することができる。
【0103】
なお、着色領域R20は、吸収性物品1を構成する部材のうち、着色抗体の肌側T1に位置する部材に設けられていればよい。着色領域R20は、検査部材60自体に設けられていてもよいし、検査部材60よりも肌側T1に配置された部材(例えば、トップシート、後述する肌側カバーシート等)に設けられていてもよい。着色領域R20は、1層のシートに設けられていてもよいし、複数層に設けられ、着色領域が厚さ方向に重なっていてもよい。また、着色領域R20は、顔料等によってシート自体が着色された部分であってもよいし、印刷等によってシートに部分的に着色された部分であってもよい。着色領域R20は、呈色前に、着色抗体の少なくとも一部を覆っていればよいが、好適には、着色抗体の全体(着色抗体によって着色した領域R1全体)を覆ってよい。また、着色に寄与する分子と結合されていない抗体と着色抗体の両方を有する形態にあっては、着色領域R20は、着色抗体を少なくとも覆っていればよく、着色に寄与する分子と結合されていない抗体を覆っていなくてもよい。本実施の形態の着色領域R20は、検査部材を構成する検査肌側シート68の非肌面に設けられている。検査肌側シート68は、透明の樹脂フィルムによって構成されている。透明の樹脂フィルムにおいてインク等で着色された部分が着色領域R20を構成し、着色されていない部分が高透過領域R25を構成する。呈色前において、着色領域R20は、コンジュゲードパッド66Xにおける着色抗体によって着色された領域R1を覆っている。
【0104】
検査部材60は、吸収性物品1の使用前において、吸収性物品1の肌側T1から視認可能であってよい。なお、吸収性物品1の使用前においては、表示部62は、呈色する前の状態である。そのため、吸収性物品の使用前の検査部材60の視認性は、表示部62の呈色前の検査部材60の視認性と置き換えることができる。なお、吸収性物品1の使用前において検査部材60を視認可能な状態は、呈色前の検査部材60の少なくとも一部を視認可能な状態であればよい。また、検査部材60の存在を使用者が把握できればよく、検査部材60を直に視認できる構成のみならず、検査部材60によって吸収性物品1の肌側の面が隆起しており、当該隆起した部分によって検査部材の存在を認識可能である状態も含む。吸収性物品1の使用前において、吸収性物品1の肌側T1から検査部材60を視認可能であるため、装着時に吸収性物品1の検査部材60の位置を把握できる。着用者が検査部材60の存在を意識して吸収性物品1を装着することで、検査部材60を適切な位置に配置できる。
【0105】
呈色後の表示部62は、吸収性物品1の肌側T1から視認可能であってよい。呈色後の表示部62が吸収性物品1の肌側T1から視認可能であるため、吸収性物品1を着用物品から剥がしたり吸収性物品1を着用物品から脱いだりせずに、着用者が吸収性物品1の肌側T1から吸収性物品1を視認することで検査結果を容易に把握できる。なお、表示部62は、少なくとも呈色後において吸収性物品1の肌側T1から視認可能であればよく、呈色前において吸収性物品1の肌側T1から視認不可能であってもよいし、呈色前において吸収性物品1の肌側T1から視認可能であってもよい。
【0106】
なお、吸収性物品1の肌側から視認可能な状態は、視認性を評価する対象物(例えば、検査部材60の視認性を評価する場合は、検査部材)よりも肌側に位置する部材を重ねた状態の可視光透過率が60%以上であってよい。または、吸収性物品1の肌側から視認可能な状態は、昼白色(色温度目安 4600~5400K(ケルビン))で明るく照明された室内(目安:500~750lx(ルクス))で約30~50cmの距離で、良好な視力(1.0以上)を両眼に有する被験者が吸収性物品1の肌側T1から対象物を見たときに視認できる事を意味している。
【0107】
検査部材60は、トップシート11よりも非肌側T2であって、バックシート21よりも肌側T1に配置されてよい。検査部材60は、吸収性物品1の肌側T1からトップシート11を介して視認される。トップシート11の可視光透過率は、60%以上であってよい。これにより、着用者は、トップシート11を介して、表示部の呈色後の色をより明瞭に視認することができるため、表示部62が呈色したか否かをより把握し易くできる。トップシート11と呈色後の表示部62との色差が0.6以上であってよく、好適には、3.0以上であってよい。本構成によれば、呈色後の表示部62の色がトップシート11の色と類似し難くなり、呈色後の表示部62を視認し易くできる。使用者は、検査部材60を吸収性物品から取り出すことなく、表示部が呈色したか否かを把握し易くなり、使用者の健康状態を簡便に精度よく確認し易くなる。
【0108】
検査部材60は、表示部62の呈色前の状態において、吸収性物品1の肌側T1から視認可能であり、吸収性物品1の非肌側T2から視認不可能であってよい。表示部62の呈色前の状態において吸収性物品1の肌側T1から検査部材60を視認できるため、装着時に吸収性物品1の検査部材60の位置を把握でき、検査部材60を適切な位置に配置できる。表示部62の呈色前の状態において、吸収性物品1の非肌側T2から検査部材60を視認できないため、検査部材60の視認可否によって感覚的に吸収性物品1の肌面と非肌面を把握でき、装着時の操作性を向上できる。また、着色抗体は、吸収性物品1の使用前において、吸収性物品1の非肌側T2から視認不可能であってよい。よって、吸収性物品1の非肌側T2から視認した際においても、吸収性物品1の使用前における誤認識を抑制できる。
【0109】
吸収性物品1の非肌側T2から視認不可能な状態は、視認性を評価する対象物(例えば、検査部材60の視認性を評価する場合は、検査部材)よりも非肌側T2に位置する部材を重ねた状態の可視光透過率が20%以下であってよい。または、吸収性物品1の非肌側から視認不可能な状態は、昼白色(色温度目安 4600~5400K(ケルビン))で明るく照明された室内(目安:500~750lx(ルクス))で約30~50cmの距離で、良好な視力(1.0以上)を両眼に有する被験者が吸収性物品1の非肌側T2から対象物を見たときに視認できない事を意味している。
【0110】
検査部材60は、吸収コア31より肌側T1に配置されてよい。検査部材60は、吸収コア31よりも肌側T1に位置し、吸収コア31によって肌側T1を覆われていない。そのため、吸収性物品1の肌側T1から視認した際における検査部材60の視認性を確保し易い。吸収性物品1の装着時には、着用者が、検査部材60の存在を意識して吸収性物品1を装着でき、検査部材60を適切な位置に配置できる。また、検査部材60の検査後には、着用者が検査結果を容易に把握できる。
【0111】
トップシート11及びバックシート21は、繊維を有するシートによって構成され、バックシート21の平均繊維間距離は、トップシート11の繊維間距離よりも小さくてよい。当該構成によれば、表示部62の呈色前及び表示部62の呈色後において、吸収性物品1の肌側T1から検査部材60を視認し易く、吸収性物品1の非肌側T2から検査部材60を視認し難くなる。吸収性物品1の肌側T1からの検査部材60の視認性を確保し易くなるとともに、吸収性物品1の肌面と非肌面の識別性を高めることによる装着時の操作性を向上できる。平均繊維間距離の評価は、例えば、測定対象の面(トップシート11の肌側の面)を、マイクロスコープを用いる方法で平均繊維間距離を測定し、バックシート21の非肌側の面を、マイクロスコープを用いる方法で平均繊維間距離を測定することで可能である。マイクロスコープを用いる方法は、マイクロスコープ(KEYENCE製 VHX-2000、レンズ VH-Z20W絞り開放)の3D画像連結機能を用いて、試料の肌側の面から深度100μmまで焦点が一致している拡大画像を得て、その拡大画像を基に焦点が一致している繊維の外側を抽出した。そこに形成された面を繊維空間とする。その繊維空間の最大内接円の直径を繊維空間距離とし、繊維空間100カ所分の平均値を平均繊維間距離とする。また、バックシート21の繊維密度は、トップシート11の繊維密度よりも高くてよい。バックシート21の繊維が密であり、トップシート11の繊維が疎であるため、バックシート21を介しての視認性が低く、トップシート11を介しての視認性が高くなり、吸収性物品1の肌側T1から検査部材60を視認し易く、吸収性物品1の非肌側T2から検査部材60を視認し難くなる。
【0112】
図13に示すように、検査部材60は、検査部材60を第2方向(本実施の形態では、幅方向W)に五等分した領域のうち、検査部材60の第2方向の中央に位置するセンター領域RCと、検査部材60の第2方向の両端部に位置するサイド領域RSと、を有する。センター領域RCは、検査部材60の第2方向の中心を跨いでいる。サイド領域RSは、検査部材60の第2方向の外端縁から第2方向の内側(本実施の形態のように、第2方向が幅方向の形態にあっては、検査部材の幅方向の外側縁60Eから幅方向の内側)に延びている。表示部62は、少なくともセンター領域RCに配置されてよい。表示部62は、センター領域RCよりも第2方向の外側に延びてよく、センター領域RCとサイド領域RSの間にも配置されていてもよいし、センター領域RCからサイド領域RSまで連続して配置されていてもよい。
【0113】
検査部材60のセンター領域RCの平均厚さは、検査部材60のサイド領域RSの平均厚さよりも厚くてよい。センター領域RCは、サイド領域RSのよりも平均厚さが厚く、排泄物成分が移動する空間の容積を広く確保できる。よって、センター領域RCにおいて排泄物成分が第1方向に沿って移動し易く、センター領域RCにおける表示部62において呈色反応を示しやすい。検査部材60の第2方向の中央に位置するセンター領域RCにおいて呈色反応を示すことで、着用者が呈色反応を視認し易く、検査結果の視認性を向上できる。加えて、検査部材の第2方向の端縁は、その周囲に吸収コア、トップシート11等の排泄物を吸収する領域が配置されており、周囲の領域で吸収された排泄物によって視認性が低下するおそれがある。一方、センター領域RCは、周囲の領域で吸収された排泄物と離れた位置であり、当該排泄物によって視認性が低下し難い。よって、センター領域RCの表示部62において呈色反応を示すことで、着用者は、検査結果を容易に把握できる。なお、平均厚さは、第2方向に沿った断面の断面写真(例えば、
図12参照)を用いて、各領域において10カ所測定し、その平均値としてよい。センター領域RCの厚さ及びサイド領域RSの厚さは、各領域における検査部材60の肌側の面と、検査部材60の非肌側の面と、の厚さ方向に沿った距離である。また、表示部の厚さは、表示部の肌側の面と、表示部の非肌側の面と、の厚さ方向に沿った距離である。トップシート11の厚さは、トップシート11の肌側の面と、トップシート11の面と、の厚さ方向に沿った距離である。サイド領域RSは、検査部材の第2方向の両端部にそれぞれ配置されている。少なくとも一方のサイド領域の平均厚さがセンター領域RCの平均厚さよりも薄くてよいが、好適には、両方のサイド領域の平均厚さがセンター領域RCの平均厚さよりも薄くてよい。
【0114】
検査部材60は、
図11等に示すように、移動部66、表示部62等のそれぞれの機能を有する部材を複数有して構成されている。トップシート11は、検査部材の少なくとも一部を覆っていればよいが、検査部材60の全域を覆ってもよい。サイド領域RSの平均厚さがセンター領域RCの平均厚さよりも薄く、トップシート11が検査部材60の全域を覆っている構成においては、着用時に着用者の動き等によって検査部材60に外力がかかった場合であっても、検査部材60の端縁が引っかかり難くなる。よって、検査部材60の端縁におけるめくれ及び検査部材を構成する部材同士の位置ずれを抑制でき、検査精度を維持できる。また、検査部材の端縁のめくれ及びよれを抑制することで、各構成部材の厚さ及び密度が局所的に変化することを抑制できる。当該厚さ及び密度が局所的に変化すると、当該変化した部分で排泄物成分の移動が停滞したり、呈色反応がし難くなったりするおそれがある。しかし、各構成部材の厚さ及び密度が局所的に変化することを抑制し、検査精度の低下を抑制できる。
【0115】
センター領域RCの密度は、サイド領域RSの密度よりも低い。当該密度は、平均厚さを測定した断面を含む範囲において、各領域を同じ平面寸法で切り出し、各領域の重量と、上記平均厚さと、を用いて算出できる。センター領域RCがサイド領域RSよりも構成部材内及び構成部材間が疎となり、サイド領域RSがセンター領域RCよりも構成部材内及び構成部材間が密になる。検査部材60において移動する排泄物成分は、比較的疎であるセンター領域RCにおいて移動し易く、比較的密であるサイド領域RSにおいて移動し難い。よって、センター領域RCにおいて排泄物成分が第1方向に移動し易く、センター領域RCにおける表示部において呈色反応を示しやすい。検査部材の第2方向の中央において呈色反応を示すことで、着用者が呈色反応を視認し易く、検査結果の視認性を向上できる。
【0116】
第2方向に沿った断面において、センター領域RCの表示部62の平均厚さは、サイド領域RSの表示部62の平均厚さよりも厚くてよい。センター領域RCにおける表示部62において呈色反応を示しやすい。検査部材60の第2方向の中央において呈色反応を示し易いことで、着用者が呈色反応を視認し易く、検査結果の視認性を向上できる。本実施の形態のように、メンブレン上に配置された指示薬によって表示部が構成されている形態にあっては、センター領域RCのメンブレンの平均厚さがサイド領域RSのメンブレンの平均厚さよりも厚くてよい。
【0117】
サイド領域RSを覆う領域におけるトップシート11の平均厚さは、センター領域RCを覆う領域におけるトップシート11の平均厚さよりも厚くてよい。センター領域RCを覆うトップシート11の平均厚さが薄いため、トップシート11において体液を保持し続けずに、トップシート11側から検査部材60側に迅速に体液を導くことができる。そのため、センター領域RCにおける表示部62において呈色反応を示しやすい。検査部材60の第2方向の中央において呈色反応を示すことで、着用者が呈色反応を視認し易く、検査結果の視認性を向上できる。サイド領域RSは、検査部材の第2方向の両端部にそれぞれ配置されている。少なくとも一方のサイド領域を覆うトップシート11の平均厚さが、センター領域RCを覆うトップシート11の平均厚さよりも厚くてよいが、好適には、両方のサイド領域を覆う両方のトップシート11の平均厚さがセンター領域RCを覆うトップシート11の平均厚さよりも厚くてよい。
【0118】
サイド領域RSを覆う領域におけるトップシート11の平均厚さがセンター領域RCを覆う領域におけるトップシート11の平均厚さよりも厚く、検査部材60の全域をトップシート11によって覆っている構成においては、サイド領域RSを覆うトップシート11の厚さが比較的厚いため、トップシート11によって検査部材の端縁への外力を吸収し、検査部材の端縁におけるめくれ及び検査部材を構成する部材同士の位置ずれを抑制できる。
【0119】
センター領域RCを覆う領域におけるトップシート11の密度は、サイド領域RSを覆う領域におけるトップシート11の密度よりも高くてよい。センター領域RCを覆うトップシート11の密度が比較的高く、サイド領域RSを覆うトップシート11の密度が比較的低いため、トップシート11においてサイド領域RSからセンター領域RC側に排泄物を導き、第2方向の中央に排泄物成分を導いて検査部材の第2方向の中央における呈色反応を促進できる。
【0120】
検査部材60の第2方向の中央の呈色反応をより促進するために、第2方向の中央における表示部62を目立つように構成してよい。例えば、センター領域RCにおける表示部62の面積比率をサイド領域RSにおける表示部62の面積比率よりも高く構成してよい。または、表示部62を構成する指示薬の坪量を異ならせてよく、センター領域RCにおける指示薬の坪量をサイド領域RSの指示薬の坪量よりも高くてよい。
【0121】
第1方向は、前後方向Lであり、第2方向は、幅方向Wであってよい。吸収性物品は、着用時に脚によって挟まれ、幅方向の外側から内側に向かう力を受け易い。そのため、検査部材の幅方向の端縁である外側縁は、検査部材の幅方向の中央と比較して外力を受け易い。しかし、サイド領域の平均厚さがセンター領域の平均厚さよりも薄い形態にあっては、比較的薄いサイド領域が外力を受け難く、検査部材の外側部における変形を抑制し、排泄物成分の移動を阻害せずに排泄物成分に基づく呈色反応を示すことができる。また、サイド領域を覆う領域におけるトップシートの平均厚さがセンター領域を覆う領域におけるトップシートの平均厚さよりも厚い形態にあっては、比較的厚いトップシートによってサイド領域に係る外力を吸収し、検査部材の外側部における変形を抑制し、排泄物成分の移動を阻害せずに排泄物成分に基づく呈色反応を示すことができる。また、検査部材の外側部に位置するサイド領域の密度が高い形態にあっては、検査部材の外側部における変形を抑制し、排泄物成分の移動を阻害せずに排泄物成分に基づく呈色反応を示すことができる。
【0122】
検査部材60は、吸収性物品1の前後方向Lの中心に対して前後方向の一方側に偏倚して配置され、接触部64は、検査部材60の前後方向の他方側の端部に配置されてよい。例えば、検査部材60は、吸収性物品1の前後方向Lの中心に対して前側に偏倚し、接触部64は、検査部材60の後端部に配置されてよい。または、検査部材60は、吸収性物品1の前後方向Lの中心に対して後側に偏倚し、接触部64は、検査部材60の前端部に配置されてよい。接触部64は、検査部材の前後方向の他方側の端部に配置され、吸収性物品の前後方向の中心側に位置し、排泄口の近傍に配置され易い。よって、接触部によって円滑に排泄物を引き込むことができる。好適には、検査部材60は、吸収性物品1の前後方向Lの中心に対して前側に偏倚してよい。当該構成によれば、着用者は、検査部材60が視界に入りやすく、検査部材60の存在を容易に把握でき、かつ検査結果を容易に視認できる。接触部64の他方側の端部は、後述する肌側シートによって覆われず、非肌側シートによって覆われてよい。接触部の他方側の端部は、液不透過性の非肌側シートによって覆われ、非肌側からの排泄物が触れることを抑制しつつ、肌側シートによって覆われていないため、肌側からの排泄物がより接触し易くなる。
【0123】
検査部材60は、吸収性物品1の幅方向Wの中央部に配置されてよい。なお、検査部材60の少なくとも一部が吸収性物品1の幅方向Wの中央部に配置されてよい。当該構成によれば、接触部64を排泄口に対向して配置し易くなる。検査部材60を排泄口に対向して配置することで、検査部材60に排泄物を導き易く、検査部材の検査後には、着用者が検査結果を容易に把握できる。吸収性物品1の幅方向Wの中央部は、吸収性物品1の幅方向Wの中心を含み、当該中心から幅方向の外側に10mmずつの範囲であってよい。好適には、吸収性物品1の幅方向Wの中心を跨いで配置されてよい。検査部材60の接触部64は、股下域S3に配置されてよい。
【0124】
吸収性物品の平面視において、検査部材60は、吸収性物品1の前後方向Lに対して傾斜して配置されてよい。検査部材60が前後方向Lに対して傾斜して配置された形態は、検査部材60の幅方向Wの外側縁が前後方向Lに平行でなく傾斜している形態であってもよいし、検査部材60の前端部における幅方向Wの中心と検査部材60の後端部における幅方向Wの中心と、を繋ぐ検査中心線が前後方向Lに平行でなく傾斜している形態であってよい。検査部材60が吸収性物品1の前後方向Lに対して傾斜していることで、吸収性物品1の他の構成部材(例えば、トップシート、吸収コア)の外縁に対して検査部材60が目立ち易くなり、使用者が検査部材60の存在を把握しやすくなる。なお、好適には、検査部材60の前後方向Lの長さは、検査部材60の幅方向Wの長さよりも長くてよい。検査部材60が傾斜している状態を着用者が把握し易い。また、検査部材60の検査中心線と、前後方向Lと、がなす角度は、20度以下であってよく、好適には、3度以上10度以下であってよい。
【0125】
圧搾部35は、幅方向Wにおいて検査部材60を挟んで配置された第1圧搾部351及び第2圧搾部352を有してよい。第1圧搾部351と第2圧搾部352は、幅方向Wに間隔を空けて配置され、第1圧搾部351と第2圧搾部352の間に検査部材60が配置されてよい。
図8に示すように、第1圧搾部351と検査部材60の幅方向の距離G11は、第2圧搾部352と検査部材60の幅方向Wの距離G12と異なってよい。なお、距離G11と距離G12を比較する際は、幅方向Wに平行に延びる同一仮想線上で比較する。また、第1圧搾部351及び第2圧搾部352がそれぞれ複数設けられている形態にあっては、吸収性物品1の幅方向の中心を通り、かつ前後方向Lに延びる中心線に対して線対称の形状の圧搾部同士で比較する。第1圧搾部351及び第2圧搾部352は、前後方向Lに延びてよい。第1圧搾部351及び第2圧搾部352が前後方向Lに延びることにより、第1圧搾部及び第2圧搾部に対して検査部材を相対的により目立たせ易くなる。なお、圧搾部35が前後方向Lに延びる構成は、前後方向に延びる線状のみならず、間隔を空けて配置された複数の圧搾部の集合体が前後方向に延びて配置されたものも含む。
【0126】
検査部材60の外側部には、幅方向Wの外側に突出する凸部と、凸部よりも幅方向Wの内側に凹む凹部と、が形成されてよい。凸部と凹部は、前後方向Lに並んで交互に形成されてよい。当該構成によれば、検査部材60の外側部が目立ち易くなり、使用者が検査部材60の存在を把握しやすくなる。なお、凸部の幅方向の長さ及び凹部の幅方向の長さは、20μm以上60μm以下であってよく、凸部の前後方向の長さ及び凹部の前後方向の長さは、50μm以上400μm以下であってよい。
【0127】
前後方向Lに沿った断面において、検査部材60の肌側の面は、検査部材60の前後方向Lの中央から検査部材60の外端部に向かって非肌側T2に傾斜してよい。検査部材60の前後方向Lの外側に向かって非肌側T2に傾斜しているため、検査部材60の肌側の面に体液が到達した際に、当該体液を検査部材60の前後方向Lの外側に導きつつ非肌側T2に導くことができる。よって、検査部材60上に体液が残り続け難く、意図しない経路から検査部材60内に体液が到達することを抑制できる。また、検査部材60上に体液が残り続け難く、体液が残り続けることによる視認性の低下を抑制できる。
【0128】
図12及び
図13に示すように、幅方向Wに沿った断面において、検査部材60の肌側の面は、検査部材60の幅方向Wの中央から検査部材60の外側部に向かって非肌側T2に傾斜してよい。検査部材60の幅方向Wの外側に向かって非肌側T2に傾斜しているため、検査部材60の肌側の面に体液が到達した際に、当該体液を検査部材60の幅方向Wの外側に導きつつ非肌側T2に導くことができる。よって、検査部材60上に体液が残り続け難く、意図しない経路から検査部材60内に体液が到達することを抑制できる。また、検査部材60上に体液が残り続け難く、体液が残り続けることによる視認性の低下を抑制できる。検査部材の肌側の面が非肌側に傾斜しているか否かを判別する際は、検査部材の前後方向に沿った断面又は幅方向に沿った断面の写真によって傾斜して部分を有するかを視認して確認してよい。また、検査部材を前後方向又は幅方向に五等分し、中央に位置する部分の肌面の位置と、端部に位置する肌面の位置と、を比較して検査部材の肌側の面が非肌側に傾斜しているかを判断してよい。検査部材の肌側の面が非肌側に傾斜する構成は、検査部材の端部が中央よりも押圧されて密度が高い構成であってもよいし、検査部材の端部の資材数又は材料の坪量が中央よりも少ない構成であってもよい。
【0129】
また、
図13に示すように、肌側シートは、肌側シートの幅方向Wの中央から肌側シートの幅方向Wの外側縁に向かって非肌側に傾斜してよい。肌側シート上に排出された排泄物は、肌側シートに沿って幅方向の中央から幅方向の側方に向かって非肌側に導かれる。よって、排泄物が直に移動部に導かれることを抑制しつつ、検査部材の幅方向の側方から非肌側に導くことができる。
【0130】
移動部66に設けられた着色抗体の色は、着色領域R20の色と同系色であってよい。本構成によれば、同系色の着色領域R20によって着色抗体を隠蔽し、着色抗体を目立ち難くすることができる。移動部に設けられた着色抗体の色と、着色領域の色と、を比較する際は、移動部に設けられた着色抗体自体の色、すなわち、着色領域によって覆われていない状態の着色抗体と、着色領域と、の色と、を比較する。同系色は、同一色を含む。本明細書において、色が「異なる」とは、マンセル表色系(100色相)において、色相が5以上(好ましくは8以上、より好ましくは10以上)、明度が1以上(好ましくは2以上、より好ましくは3以上)、又は、彩度が1以上(好ましくは2以上、より好ましくは3以上)、離れていることをいう。また、本明細書において、色が「類似する」又は「同系色」とは、マンセル表色系(100色相)において、色相が5未満、明度が1未満、又は、彩度が1未満の離れていることをいい、色が同一の場合を含む。あるいは、色が「異なる」とは、色差ΔEでいえば、ΔEが1以上であり、好ましくはΔEが2以上であり、より好ましくはΔEが3以上であり、更に好ましくはΔEが5以上であってもよい。その場合、色が「類似する」又は「同系色」とは、色差ΔEが1未満である。なお、白色系の色は、L*が70以上の色であり、好ましくは80以上の色であり、より好ましくは90以上の色である。ただし、上記の色差は、以下のとおり測定される。
(1)X-Rite社製 X-Rite eXact Standerd(測定径:1.5mm)を準備する。
(2)サンプルの測定すべき部分のCIE L*a*b*座標を、位置を変えて10点以上測定し、それらの平均値([L1*,a1*,b1*])を算出する。
(3)サンプルの対比すべき部分のL*a*b*座標を、位置を変えて10点以上測定し、それらの平均値([L2*,a2*,b2*])を算出する。
(4)色差ΔEを、次の式:
【数2】
により算出する。
【0131】
移動部66に設けられた着色抗体の色と着色領域R20の色の色差は、3.0以上であってよい。着色領域R20によって着色抗体を隠蔽する効果を得つつ、着色抗体の色と着色領域R20の色が異なるため、検査中における着色抗体が移動する過程、及び検査完了後における複合体による呈色を、着用者が把握しやすくなる。そのため、使用前における誤認識を抑制しつつ、検査結果の視認性を向上できる。
【0132】
着色領域R20において着色抗体と厚さ方向Tに重なった領域と、着色領域R20において着色抗体と重ならない領域と、の色差は、3.0以上であってよい。着色領域R20によって着色抗体を隠蔽する効果を得つつ、着色抗体が配置された領域を着用者が把握できる。着用者は、着色抗体が配置された領域を把握し、着色抗体が配置された領域を触れないように装着する等、検査に影響を及ぼす部分を把握して吸収性物品を慎重に扱うことができる。よって、検査精度の低下を抑制できる。
【0133】
第1表示部62A及び第2表示部62Bの肌側T1は、着色領域R20によって覆われてなくてよい。すなわち、着色領域R20は、第1表示部62A及び第2表示部62Bと厚さ方向Tに重ならない領域に配置されてよい。本構成によれば、吸収性物品1の肌側T1からの第1表示部62A及び第2表示部62Bの視認性を確保し、着用者が検査結果を把握することができる。
【0134】
吸収性物品1の肌側T1の面における着色領域R20が配置された領域の明度は、呈色後の第1表示部62Aが配置された領域の明度よりも低くてよい。着色領域R20が配置された領域の明度が、第1表示部62Aが配置された領域の明度が低いことにより、呈色後において吸収性物品1の肌側T1から視認した際に、第1表示部62Aが着色領域R20よりも目立ち難い。よって、吸収性物品の使用前に吸収性物品の肌側T1から着色された標識抗体が視認されることを抑制しつつ、呈色後に第1表示部62Aを目立たせることができ、検査結果を着用者が容易に把握できる。また、吸収性物品1の肌側T1の面における着色領域R20が配置された領域の明度は、呈色後の第2表示部62Bが配置された領域の明度よりも低くてよい。着色領域R20が配置された領域の明度が、第2表示部62Bが配置された領域の明度よりも低いことにより、呈色後において吸収性物品の肌側から視認した際に、第2表示部62Bが着色領域R20よりも目立ち易い。よって、吸収性物品の使用前に吸収性物品の肌側から着色された標識抗体が視認されることを抑制しつつ、呈色後に第2表示部62Bを目立たせることができ、検査結果を着用者が容易に把握できる。
【0135】
また、変形例において、吸収性物品の肌側T1の面における着色領域R20が配置された領域の明度は、呈色後の第1表示部62Aが配置された領域の明度よりも高くてよい。本態様によれば、着色領域R20が配置された領域の明度が、第1表示部62Aが配置された領域の明度よりも高く、呈色後において吸収性物品の肌側から視認した際に、着色領域R20が第1表示部62Aよりも目立ち易い。表示部を覆わない着色領域R20が目立つことで、着色領域R20と第1表示部62Aを着用者が区別して認識し易く、検査結果を着用者が容易に把握できる。また、吸収性物品の肌側の面における着色領域R20が配置された領域の明度は、呈色後の第2表示部62Bが配置された領域の明度よりも高くてよい。本態様によれば、着色領域R20が配置された領域の明度が、第2表示部62Bが配置された領域の明度よりも高く、呈色後において吸収性物品の肌側から視認した際に、着色領域R20が第2表示部62Bよりも目立ち易い。表示部を覆わない着色領域R20が目立つことで、着色領域R20と第2表示部62Bを着用者が区別して認識し易く、検査結果を着用者が容易に把握できる。
【0136】
明度は、マンセル表色系における明度であってよく、色見本と比較して目視で判定する視感測色法によって測定することができる。具体的には、例えば日本色研事業株式会社発行のマンセルシステム色彩の定規拡充版を用いて、視覚的に等間隔の数値スケールのマンセル記号(色見本)と測定対象物の色(色相、明度及び彩度)とを比較しながら視感で判定することができる。
【0137】
着色領域R20は、液不透過性のシートに設けられてよい。本構成によれば、着色抗体の肌側T1は、液不透過性のシートによって覆われる。そのため、排泄物が、着色抗体の肌側T1から直に着色抗体側に到達することを抑制できる。排泄物は、所定の経路(本実施の形態においては、接触部)を経た後に、着色抗体が設けられた領域に到達する。検査に必要な排泄物成分以外も着色抗体が設けられた領域に到達することに起因した検査精度の低下を抑制し、検査精度を向上できる。本実施の形態において着色領域R20が設けられたシートは、液不透過性の検査肌側シート68である。検査肌側シート68は、接触部64の一部の領域の肌側T1を覆わず、移動部66及び表示部62を覆っている。よって、排泄物は、接触部64を介して移動部66及び表示部62に導かれ、排泄物が直に移動部及び表示部に到達することを抑制できる。接触部は、フィルターの役割を担い、排泄物から検査に必要な排泄物成分を移動部及び表示部に導くことができる。
【0138】
着色領域R20が設けられた液不透過性のシートは、着色領域R20よりも可視光透過率が高い高透過領域R25を有してよい。表示部62は、高透過領域R25によって覆われてよい。高透過領域は、液不透過性のシートにおいて着色領域が設けられていない領域であってよい。表示部62は、高透過領域R25によって覆われているため、表示部62の視認性を確保できる。また、表示部62の肌側T1も液不透過性のシートによって覆うことで、排泄物が表示部の肌側から直に表示部側に到達することを抑制できる。高透過領域R25は、表示部62の少なくとも一部を覆ってよいが、好適には,表示部62の全域を覆ってよい。
【0139】
着色領域R20は、移動部の着色抗体を覆う第1着色領域R21と、吸収部67の肌側T1を覆う第2着色領域R22と、を有してよい。吸収部67を第2着色領域R22によって覆うことで、着用者が吸収性物品1を肌側T1から視認した際に、着色された吸収部67を視認し難くなる。着色された吸収部67を視認し難くすることで、相対的に表示部62を目立たせ、検査結果の視認性を高めることができる。
【0140】
第1着色領域R21と第2着色領域R22は、前後方向Lに間隔を空けて配置されてよい。前後方向Lにおける着色領域R20間に、表示部62が配置されてよい。移動部66と吸収部67を着色領域R20によって覆い、その着色領域R20間に表示部62を配置することで、移動部66及び吸収部67を隠蔽し、相対的に表示部62を目立たせ、着用者が、検査結果に着目しやすくなる。
【0141】
また、表示部62を前後方向Lに挟んで第1着色領域R21と第2着色領域R22を設けることで、検査結果が示される範囲を着用者に示すことができる。第1表示部62Aと第2表示部62Bは、複合体及び標識抗体を補足することで呈色し、呈色前は、吸収性物品1の肌側T1から視認し難く構成されている。そのため、着用者は、検査結果が示される領域を把握しにくいことがある。しかし、第1着色領域R21と第2着色領域R22によって表示部62を挟むことで、検査結果を示す領域を第1着色領域R21と第2着色領域R22が区画し、着用者は、検査結果が示される領域を把握し易くなる。第1着色領域R21の面積及び第2着色領域R22の面積は、第1表示部62Aの面積と第2表示部62Bの面積とを合せた合計面積よりも大きくてよい。第1着色領域R21の面積及び第2着色領域R22の面積を大きくすることで、検査結果が示される領域がより明確になる。本実施の形態のように、縦長の検査部材60にあっては、第1着色領域R21の前後方向Lの長さ及び第2着色領域R22の前後方向Lの長さは、第1表示部62Aの前後方向Lの長さと第2表示部62Bの前後方向Lの長さとを合せた合計長さよりも長くてよい。第1着色領域R21の前後方向Lの長さ及び第2着色領域R22の前後方向Lの長さを長くすることで、検査結果が示される領域がより明確になる。
【0142】
吸収性物品1は、検査部材の表示部62の肌側T1を覆う疎水性を有する第1疎水部71を備えてよい。第1疎水部71が表示部62の肌側T1を覆うことで、表示部62の肌側T1から表示部62に直に排泄物が到達することを抑制できる。そのため、表示部62に直に到達した排泄物によって表示部62の視認性が低下することを抑制できる。なお、第1疎水部71は、表示部62の少なくとも一部の肌側T1を覆っていればよいが、好適には、表示部62(第1表示部62A及び第2表示部62B)の全域の肌側T1を覆ってよい。
【0143】
本実施の形態の第1疎水部71は、肌側カバーシート18と、検査肌側シート68と、によって構成されている。第1疎水部71は、肌側カバーシート18と、検査肌側シート68と、の一方のみによって構成されていてもよい。肌側カバーシート18と検査肌側シート68はいずれも液不透過性のシートであり、本発明の「肌側シート」を構成する。すなわち、肌側シートは、表示部62の肌側T1を覆っている。表示部62の肌側T1を液不透過性の肌側シートによって覆うことにより、表示部62の肌側T1から表示部62に直に排泄物が到達することを抑制できる。「肌側シート」は、「液透過調整部」を構成する液不透過性のシートである。肌側シートは、検査部材に対して厚さ方向に重ねて配置されてよい。肌側シートを検査部材に対して厚さ方向に重ねて配置することで、吸収性物品の肌側からの体液が直に検査部材に到達しにくくなり、検査部材の検査精度を向上できる。なお、肌側カバーシート18は、検査部材60と別体のシートであり、検査肌側シート68よりも肌側T1に位置する。検査肌側シート68は、検査部材60を構成するシートである。検査肌側シート68は、本発明の「第1肌側シート」を構成し、肌側カバーシート18は、本発明の「第2肌側シート」を構成する。
【0144】
疎水部(第1疎水部71、第2疎水部72、及び第3疎水部73を含む)は、周囲よりも液の透過が低減された低液透過性を有する部分であってもよいし、液を透過させない液不透過性を有する部分であってもよい。疎水部は、疎水性の塗布剤が付された部分であってもよいし、液不透過性のシートが配置された部分であってもよい。疎水性の塗布剤は、例えば、接着剤(HMA型接着剤)、撥水剤(シリコン)を例示できる。
図8において、第1疎水部71、第2疎水部72、及び第3疎水部73の幅方向の範囲を示している。
【0145】
第1疎水部71は、少なくとも表示部62の肌側T1を覆っていればよく、検査部材60の表示部62以外の領域の肌側T1を覆ってよい。第1疎水部71は、移動部66の肌側T1を覆ってよい。移動部が第1疎水部71によって肌側T1を覆われており、排泄物が直に移動部に到達し難く、検査精度を向上できる。また、第1疎水部71は、接触部64の少なくとも一部の肌側T1を覆っていなくてよい。第1疎水部71が接触部64の少なくとも一部の肌側T1を覆っていないため、排泄物は、少なくとも接触部64の一部を介して接触部64内に導かれ、接触部64を介して移動部66に導かれる。第1疎水部71が移動部66の肌側T1を覆っているため、移動部66に直に排泄物が到達することを抑制できる。そのため、接触部64を介して検査に必要な排泄物成分を移動部66に導くことができ、検査精度を向上できる。検査精度が向上することで、正確な検査結果を迅速に示すことができ、使用者は、検査結果を容易に把握できる。なお、第1疎水部71は、移動部66の少なくとも一部の肌側T1を覆っていればよいが、好適には、移動部66の全域の肌側T1を覆ってよい。
【0146】
第1疎水部71は、接触部64の一部以外の部分の肌側T1を覆って配置されてよい。接触部64における所定の領域(一部)のみに直に排泄物が接触するように構成でき、接触部64の一部以外の部分においては、必要な成分のみを移動部66側に移動させるフィルター機能を発揮しやすい。
【0147】
第1疎水部71を構成する肌側シート(本実施の形態では、肌側カバーシート18)は、検査部材60よりも肌側T1に配置され、接触部64、移動部66、及び表示部62を跨がって配置されてよい。肌側シートは、接触部64、移動部66、及び表示部62を跨がっており、接触部64から表示部62まで連続している。第1疎水部71が連続して設けられているため、第1疎水部71間の隙間から排泄物が検査部材側に浸入することを抑制し、意図しない経路から排泄物が検査部材に到達することを抑制できる。なお、第1疎水部71を構成する肌側シートは、接触部64の肌側の一部を覆ってよく(接触部の全域を覆わなくてよく)、好適には、接触部の全体面積に対する50%未満を覆ってよく、より好適には、接触部の全体面積に対する20%未満を覆ってよく、更に好適には、接触部の全体面積に対する10%未満を覆ってよい。
【0148】
図11に示すように、肌側シートと表示部62の間には、中空部HPが形成されてよい。すなわち、肌側シートの非肌側の面と、表示部62肌側の面と、は、厚さ方向Tにおいて間隔を空けて配置されてよい。本構成によれば、着用時の圧力によって吸収性物品1の肌側T1から検査部材60側に力が掛かった際に、中空部HPによって肌側T1からの圧力を吸収できる。着用時の圧力によって表示部62が潰れることを抑制でき、表示部62によって検査結果を表示できる。本実施の形態では、表示部62よりも前側の領域では、メンブレン66Yと検査肌側シート68の間に、吸収部67と第2着色領域R22が配置されており、表示部62よりも後側の領域では、メンブレン66Yと検査肌側シート68の間に、コンジュゲードパッド66Xとサンプルパッド64Zが配置されている。よって、表示部62と肌側シートの間には、中空部HPが形成され、表示部62は、肌側シートによって押圧されないように構成されている。好適には、サンプルパッド64Zの厚さ及びコンジュゲードパッド66Xの厚さは、0.5mm以上であってよい。中空部HPは、検査部材を構成する部材同士間に形成された空間である。中空部HPは、肌側シートと表示部62の間(検査肌側シート68と表示部の間)以外の領域に設けられてよく、
図13に示すように、サンプルパッド64Zと検査非肌側シート69の間、コンジュゲードパッド66Xと着色領域R20の間、及びメンブレン66Yと検査肌側シート68の間に設けられてよい。
【0149】
第1疎水部71を構成する肌側シートの可視光透過率は、吸収コア31の可視光透過率よりも高くてよい。第1疎水部71を構成する肌側シートの可視光透過率が比較的高いため、肌側シートの存在によって検査部材60の視認性が低下することを抑制できる。肌側シートによって表示部62を覆うことで、高い可視光透過率によって検査部材60の視認性の低下を抑制しつつ、肌側T1から直に到達した排泄物によって表示部62の視認性が低下することを抑制できる。
【0150】
吸収性物品1は、検査部材60の表示部62の非肌側T2を覆う疎水性を有する第2疎水部72を備えてよい。吸収コア31は、第2疎水部72よりも非肌側T2に配置されてよい。第2疎水部72が表示部62の非肌側T2を覆い、検査部材60と吸収コア31の間に配置されているため、吸収コア31において吸収した排泄物が直に表示部62に移動することを抑制できる。吸収コア31において吸収した排泄物によって表示部62の視認性が低下することを抑制できる。検査部材60は、吸収コア31よりも肌側T1に位置し、吸収コア31によって肌側T1を覆われていない。そのため、吸収性物品1の肌側T1から視認した際における表示部62の視認性を確保し易い。使用者は、検査結果を容易に把握できる。なお、第2疎水部72は、表示部62の少なくとも一部の非肌側T2を覆っていればよいが、好適には、表示部62(第1表示部62A及び第2表示部62B)の全域の非肌側T2を覆ってよい。
【0151】
実施の形態の第2疎水部72は、非肌側カバーシート19と、検査非肌側シート69と、によって構成されている。第2疎水部72は、非肌側カバーシート19と、検査非肌側シート69と、の一方のみによって構成されていてもよい。非肌側カバーシート19と検査非肌側シート69はいずれも液不透過性のシートであり、本発明の「非肌側シート」を構成する。すなわち、非肌側シートは、表示部62の非肌側T2を覆っている。表示部62の非肌側T2を液不透過性の非肌側シートによって覆うことにより、吸収コア31において吸収した排泄物が表示部62に移動することを抑制し、吸収コア31から移動した排泄物によって表示部62の視認性が低下することを抑制できる。「非肌側シート」は、「液透過調整部」を構成する液不透過性のシートである。非肌側シートは、検査部材に対して厚さ方向に重ねて配置されてよい。非肌側シートを検査部材に対して厚さ方向に重ねて配置することで、検査部材の非肌側からの体液が直に検査部材に到達しにくくなり、検査部材の検査精度を向上できる。なお、非肌側カバーシート19は、検査部材60と別体のシートであり、検査非肌側シート69よりも非肌側T2に位置する。検査非肌側シート69は、検査部材60を構成するシートである。検査非肌側シート69は、本発明の「第1非肌側シート」を構成し、非肌側カバーシート19は、本発明の「第2非肌側シート」を構成する。
【0152】
第2疎水部72は、少なくとも表示部62の非肌側T2を覆っていればよく、検査部材60の表示部62以外の領域の非肌側T2を覆ってよい。第2疎水部72は、接触部64の非肌側T2及び移動部66の非肌側T2を覆ってよい。第2疎水部72が接触部64の非肌側T2及び移動部66の非肌側T2を覆っているため、吸収コア31において吸収した排泄物が接触部64及び移動部66に移動することを抑制できる。そのため、接触部64を介して検査に必要な排泄物成分を移動部66に導くことができ、検査精度を向上できる。検査精度が向上することで、正確な検査結果を迅速に示すことができ、使用者は、検査結果を容易に把握できる。なお、第2疎水部72は、移動部66の少なくとも一部の非肌側T2及び接触部64の少なくとも一部の非肌側T2を覆っていればよいが、好適には、移動部66の全域の非肌側T2、及び接触部64の全域の非肌側T2を覆ってよい。
【0153】
非肌側シートとしての非肌側カバーシート19は、検査部材60の非肌側T2を覆っており、検査部材60の幅方向Wの外側縁を跨いで配置されてよい。検査部材60と別体の非肌側カバーシート19によって検査部材の非肌側から排泄物が検査部材に浸入することを抑制できる。また、肌側シートとしての肌側カバーシート18は、検査部材60の肌側T1を覆っており、検査部材60の幅方向Wの外側縁を跨いで配置されてよい。検査部材60と別体の肌側カバーシート18によって検査部材60の肌側T1から排泄物が検査部材60に浸入することを抑制できる。
【0154】
非肌側カバーシート19の曲げ剛性は、検査部材60のサイド領域の曲げ剛性よりも低くてよい。検査部材60の非肌側T2を覆う非肌側カバーシート19の曲げ剛性が比較的低いため、検査部材60よりも非肌側T2の領域が柔軟に変形し易く、検査部材60の硬さを感じさせ難くできる。また、サイド領域の曲げ剛性が比較的高いため、検査部材60のめくれを抑制できる。また、非肌側カバーシート19の曲げ剛性は、検査非肌側シート69の曲げ剛性よりも低くてよい。非肌側カバーシート19は、検査非肌側シート69よりも非肌側T2に配置されている。検査部材60の非肌側T2を覆う非肌側カバーシート19の曲げ剛性が比較的低いため、検査部材60よりも非肌側のT2領域が柔軟に変形し易く、検査部材60の硬さをより感じさせ難くできる。
【0155】
また、肌側カバーシート18の曲げ剛性は、検査部材60のサイド領域の曲げ剛性よりも低くてよい。検査部材60の肌側T1を覆う肌側カバーシート18の曲げ剛性が比較的低いため、検査部材60よりも肌側T1の領域が柔軟に変形し易く、検査部材60の硬さを感じさせ難くできる。また、サイド領域の曲げ剛性が比較的高いため、検査部材60のめくれを抑制できる。また、肌側カバーシート18の曲げ剛性は、検査肌側シート68の曲げ剛性よりも低くてよい。肌側カバーシート18は、検査肌側シート68よりも肌側T1に配置されている。検査部材60の肌側T1を覆う肌側カバーシート18の曲げ剛性が比較的低いため、検査部材60よりも肌側T1の領域が柔軟に変形し易く、検査部材60の硬さをより感じさせ難くできる。
【0156】
ここで曲げ剛性は、KES法によって測定することができる。具体的にはカトーテック(株)製KES-FB2-AUTO-A曲げ測定試験機を用いて行うことができ、カバーシート、検査部材それぞれを測定可能なサイズのサンプルを用意する。検査部材の曲げ剛性は、抗体がある部分を含むようにサンプルを切り出し、抗体を含む部分の剛性を測定することが好ましい。次に、各サンプルにおいて横方向の曲げ剛性を測定できるように、測定試験機のチャック間に各サンプルを固定する。最大曲率+2.5cm-1まで表側に曲げ、次に、最大曲率-2.5cm-1まで裏側に曲げた後に元に戻す。曲げ剛性値は、表側に曲げはじめて曲率に対する曲げモーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きと、裏側に曲げはじめて曲率に対する曲げモーメントの傾きがほぼ一定になったときの傾きとの平均値から算出する。各サンプルにつき5回繰り返し、その平均値を曲げ剛性とする。
【0157】
肌側シート及び非肌側シートは、少なくとも検査部材60よりも幅方向の外側において当接してよい。本実施の形態では、肌側シートとしての肌側カバーシート18と、非肌側シートとしての非肌側カバーシート19と、が検査部材60よりも幅方向Wの外側において当接している。互いに当接した肌側シート及び非肌側シートによって検査部材60の肌側T1、非肌側T2及び側方からの排泄物の浸入を抑制し、意図しない経路から排泄物が検査部材に到達することを抑制できる。なお、肌側シート及び非肌側シートは、少なくとも検査部材よりも前後方向の外側において互いに当接してもよい。本実施の形態では、肌側カバーシート18及び非肌側カバーシート19が検査部材60よりも幅方向Wの外側において当接している。互いに当接した肌側カバーシート18及び非肌側カバーシート19によって検査部材60の肌側T1、非肌側T2及び側方からの排泄物の浸入を抑制し、意図しない経路から排泄物が検査部材60に到達することを抑制できる。好適には、肌側カバーシート18及び非肌側カバーシート19は、検査部材60よりも幅方向Wの外側において接合されてよい。当該接合は、接着剤による接合、熱溶着等の溶着による接合を例示できる。当該構成によれば、検査部材60の肌側、非肌側及び側方からの排泄物の浸入をより抑制でき、検査精度をより向上できる。
【0158】
幅方向Wにおいて、肌側シートの外側縁と非肌側シートの外側縁は、ずれてよい。すなわち、肌側カバーシート18の外側縁は、非肌側カバーシート19の外側縁と、検査非肌側シート69の外側縁と、の少なくともいずれか一方と幅方向Wにずれてよい。検査肌側シート68の外側縁は、非肌側カバーシート19の外側縁と、検査非肌側シート69の外側縁と、の少なくともいずれか一方と幅方向にずれてよい。吸収性物品1は、脚によって挟まれ、幅方向Wの外側から内側に向かう力を受ける。このとき、非肌側シートの外側縁と肌側シートの外側縁が幅方向にずれており、幅方向Wに間隔を空けて複数の変形基点が設けられ、幅方向Wの外側から受ける力を徐々に弱め、検査部材60の形状を維持できると共に、脚に対する当たりを和らげ着用時の違和感を抑制できる。また、肌側カバーシート18の外側縁と検査肌側シート68の外側縁が幅方向Wにおいてずれてもよく、非肌側カバーシート19の外側縁と検査非肌側シート69の外側縁が幅方向Wにおいてずれてもよい。当該構成によれば、シートの外側縁がより段階的に配置され、より多くの変形基点を設け、幅方向の外側から検査部材に向かう力を徐々に弱めることができる。
【0159】
検査部材60の前後方向の外端縁は、第1非肌側シート(検査非肌側シート69)、第2非肌側シート(非肌側カバーシート19)、第1肌側シート(検査肌側シート68)、及び第2肌側シート(肌側カバーシート18)の少なくともいずれかによって覆われてよい。検査部材の外端縁をいずれかのシートによって覆うことにより、検査部材の剛性による着用時の違和感を抑制できる。前後方向Lにおいて、第1非肌側シートの外端縁、第2非肌側シートの外端縁、第1肌側シートの外端縁、及び第2肌側シートの外端縁は、ずれてよい。なお、4層のシートの外端縁の少なくともいずれがずれていればよく、好適には、各シートの外端縁が全てずれてよい。第1非肌側シートの外端縁、第2非肌側シートの外端縁、第1肌側シートの外端縁、及び第2肌側シートの外端縁が前後方向にずれているため、前後方向に間隔を空けて複数の変形基点を設け、検査部材を有する吸収性物品を身体の前後の丸みに沿って配置できる。
【0160】
吸収性物品1は、検査部材60の幅方向Wの両側にそれぞれ配置され、疎水性を有する第3疎水部73を備えてよい。第3疎水部73は、検査部材60の幅方向Wの外側縁よりも幅方向の外側に配置され、検査部材60の側方からの排泄物の浸入を抑制する。各第3疎水部73の幅方向Wの長さは、検査部材60の幅方向Wの長さよりも長くてよい。第3疎水部73の幅方向Wの長さが検査部材60の幅方向Wの長さよりも長く、検査部材60から幅方向Wの外側に延びる広い範囲に亘って検査部材の側方からの排泄物の浸入を抑制できる。検査部材の側方に隣接して排泄物が配置され難く、検査部材の側方に排泄物が滞留することによって検査部材の視認性が低下することを抑制できる。実施の形態の第3疎水部73は、非肌側カバーシート19における検査部材よりも幅方向Wの外側に延出した部分と、肌側カバーシート18における検査部材よりも幅方向Wの外側に延出した部分と、によって構成されている。
【0161】
検査部材60の肌側T1は、トップシート11よりも通気性の低いシートによって覆われてよい。トップシート11よりも通気性の低いシートは、トップシート11よりも低い通気性を有してもよいし、非通気性であってもよい。トップシート11よりも通気性の低いシートによって検査部材60の肌側を覆うことで、検査部材60の肌側T1からの検査部材60の乾燥を防ぐことができる。検査部材60が適度な湿度を維持することができ、排泄物及び排泄物成分が導かれた際に、当該排泄物成分等を円滑に移動させることができ、適切に検査を行うことができる。本実施の形態では、トップシート11よりも非肌側T2かつ検査部材60よりも肌側T1に、肌側カバーシート18が配置されている。肌側カバーシート18は、透明の樹脂フィルムによって構成されており、肌側カバーシート18の通気性は、トップシート11の通気性よりも低い。肌側カバーシート18は、トップシート11よりも通気性の低いシートを構成している。また、肌側カバーシート18の幅方向の長さ及び前後方向の長さが、肌側カバーシート18の周囲に配置された部材(例えば、トップシート11、補助シート15、吸収コア31)よりも短く、周囲に配置された部材の通気性が肌側カバーシート18の通気性よりも高い。当該周囲に配置された部材の通気性が高いことで吸収性物品内の体液の流動性及び通気性を確保できる。
【0162】
図11に示すように、肌側カバーシート18は、検査肌側シートと同様に、サンプルパッド64Zの一部の領域(サンプルパッドにおいてコンジュゲードパッドによって覆われていない領域)の肌側T1を覆わずに、サンプルパッド64Zにおいてコンジュゲードパッド66Xによって覆われた領域、コンジュゲードパッド66X、メンブレン66Y、吸収部67の全体に亘って肌側T1を覆っている。肌側カバーシート18によっても排泄物が直に移動部66及び表示部62に到達することを抑制できる。また、肌側カバーシート18の幅は、検査部材60の幅よりも長く、肌側カバーシート18の両側の外側縁は、検査部材60の外側縁よりも幅方向Wの外側に位置してよい。肌側カバーシート18によって検査部材の肌側及び側方からの排泄物の浸入を抑制し、意図しない経路から排泄物が検査部材60に到達することを抑制できる。吸収性物品の幅方向において、肌側カバーシート18の両側の外側縁は、検査肌側シート68の外側縁よりも外側に位置してよい。肌側カバーシート18によって、検査部材60の肌側T1及び側方からの排泄物の浸入を抑制し、意図しない経路から排泄物が検査部材60に到達することを抑制できる。
【0163】
肌側カバーシート18は、トップシート11と検査部材60の間に配置されており、吸収性物品1の肌側T1からトップシート11を介して視認可能に構成されてよい。着用者は、肌側カバーシート18の存在を把握することで、検査部材60が保護されている心証を持ち、安心して吸収性物品1を使用できる。樹脂フィルムからなる肌側カバーシート18によれば、吸収性物品1の肌側T1から吸収性物品1を視認した際に、樹脂フィルムの光の乱反射により肌側カバーシート18が目立ち易い。よって、着用者は、肌側カバーシート18に着目することで検査部材60の存在及び検査部材60の位置を把握できる。
【0164】
検査部材60は、吸収コア31よりも肌側T1に配置されており、吸収性物品1は、検査部材60と吸収コア31の間に配置された液不透過性の非肌側カバーシート19を有してよい。検査部材60の非肌側T2を液不透過性の非肌側カバーシート19によって覆うことにより、吸収コア31において吸収した排泄物が表示部62に移動することを抑制できる。吸収コア31において吸収した排泄物によって表示部62の視認性が低下することを抑制できる。また、接触部64を介して必要な排泄物成分を表示部62に導くことができ、検査精度を向上できる。
【0165】
検査部材60は、吸収コア31よりも肌側T1に配置されており、検査部材60の非肌側T2は、吸収コア31よりも通気性の低いシートによって覆われてよい。吸収コア31よりも通気性の低いシートは、吸収コア31よりも低い通気性を有してもよいし、非通気性であってもよい。吸収コア31よりも通気性の低いシートによって検査部材60の非肌側T2を覆うことで、検査部材60の非肌側T2からの検査部材60の乾燥を防ぐことができる。検査部材60が適度な湿度を維持することができ、排泄物及び排泄物成分が導かれた際に、排泄物成分等を円滑に移動させることができ、適切に検査を行うことができる。本実施の形態では、非肌側カバーシート19は、樹脂フィルムによって構成されており、非肌側カバーシート19の通気性は、吸収コア31の通気性よりも低い。非肌側カバーシート19が吸収コア31よりも通気性の低いシートを構成している。また、非肌側カバーシート19の幅方向の長さ及び前後方向の長さは、非肌側カバーシート19の周囲に配置された部材(例えば、トップシート11、補助シート15、吸収コア31)よりも短く、周囲に配置された部材の通気性が非肌側カバーシート19の通気性よりも高い。当該周囲に配置された部材の通気性が高いことで吸収性物品内の体液の流動性及び通気性を確保できる。
【0166】
バックシート21の通気性は、肌側カバーシート18及び非肌側カバーシート19の少なくともいずれか一方の通気性よりも高くてよい。肌側カバーシート18及び非肌側カバーシート19の少なくともいずれか一方によって検査部材の乾燥を抑制しつつ、吸収コアが体液を吸収した後の蒸れをバックシートによって抑制する効果を両立できる。
【0167】
図11に示すように、肌側カバーシート18は、検査肌側シート68よりも後側にずれてよい。肌側カバーシート18は、検査部材60の前端縁よりも前側に延出してよい。また、非肌側カバーシート19は、検査非肌側シート69よりも後側にずれてよい。非肌側カバーシート19は、検査部材60の後端縁よりも後側に延出してよい。非肌側カバーシート19は、サンプルパッド64Z、コンジュゲードパッド66X、メンブレン66Yの全体の非肌側T2を覆っている。非肌側カバーシート19の幅は、検査部材60の幅よりも長く、非肌側カバーシート19の両側の外側縁は、検査部材60の外側縁よりも幅方向Wの外側に位置してよい。非肌側カバーシート19によって、検査部材60の非肌側T2及び側方からの排泄物の浸入を抑制し、意図しない経路から排泄物が検査部材60に到達することを抑制できる。吸収性物品の幅方向において、非肌側カバーシート19の両側の外側縁は、検査非肌側シート69の外側縁よりも外側に位置してよい。非肌側カバーシート19によって、検査部材60の非肌側T2及び側方からの排泄物の浸入を抑制し、意図しない経路から排泄物が検査部材60に到達することを抑制できる。
【0168】
本実施の形態の検査部材60は、着用者の健康状態をおりものから検査する。上述のように、おりものは、排泄物中において健康状態を検査する対象として好適である一方、排出される量が少なく、検知し難いことがあった。また、おりものは、排泄物の中において粘度が高く、検査部材60に到達し難く、適切な検査結果を得難いことがあった。そのため、本実施の形態のトップシート11は、おりものを用いて健康状態を適切に検査できるように構成されている。次いで、トップシート11の構成について詳細に説明する。
【0169】
トップシート11は、検査部材60よりも肌側T1に配置され、着用者の肌面に当接する。着用者から排泄されたおりものは、トップシート11の肌面上に付され、トップシート11を透過して検査部材60側に導かれる。トップシート11は、トップシート11の肌側の面に接触した、23℃で、15~30Pa・sの粘度(以下、所定粘度とする)を有する人工体液を、6%以上トップシートの非肌側の面に透過させる。出願人が鋭意研究した結果、一般的なおりものの粘度は、23℃で、15~30Pa・sであり、当該所定粘度の人工体液は、おりものに類する透過態様を呈することがわかった。トップシート11は、肌側T1の面に接した当該所定粘度の人工体液を6%以上の高い比率でトップシート11の非肌側の面に透過させることができる。よって、尿及び経血と比較して粘度が高いおりものであってもトップシート11を透過して検査部材60側に導くことができ、また、少量のおりものであっても高い比率でトップシート11を透過して検査部材60側に導くことができ、おりものに基づいて適切な検査結果を得ることができる。トップシートを透過する人工体液を測定する人口体液の透過試験については、後述にて詳細に説明する。
【0170】
十分な量の人口体液を測定対象とする場合、粘度は、以下のように測定する。
(1)以下の機器を準備する。
Thermo Fisher SCIENTIFIC株式会社製 HAAKE RheoStress 1(センサー:Cone φ60mm、1°angle C60/1)
(2)機器に付属の容器に、測定対象の抗菌液を38ml入れ、測定子を人口体液に浸す。
(3)以下の条件で、粘度の測定を行う。
温度23℃、湿度60%、剪断速度:10.0(l/s)
【0171】
トップシート11は、トップシート11の肌側の面が1.60~1.70kPaの圧力で着用者側に押圧された押圧状態において、トップシート11の肌側の面に接触した人工体液を6%以上トップシート11の非肌側の面に透過させるように構成されてよい。着用時に、吸収性物品1には、種々の力がかかる。出願人が鋭意研究した結果、着用者が姿勢を変えた場面、吸収性物品1を装着した着用物品を引き上げた場面等、種々の場面において、トップシート11の肌側の面が少なくとも1.60~1.70kPaの圧力で着用者側に押圧された押圧状態となる。このとき、トップシート11の肌側T1の面に接触した人工体液を6%以上トップシート11の非肌側の面に透過させるため、トップシート11を透過したおりものを検査部材60側に導くことができ、おりものに基づいて適切な検査結果を得ることができる。
【0172】
吸収性物品1は、着用物品Sの内面に止着されて使用される吸収性物品であってよい。押圧状態は、吸収性物品1のトップシート11の肌側の面と着用者の肌面とが当接するように、着用物品Sの外面を着用者側に押圧した状態であってよい。
図15は、吸収性物品1を装着した着用物品Sを着用者が着用した状態における幅方向に沿った断面を模式的に示している。
図15は、吸収性物品1が着用者側に押圧された状態と、吸収性物品1が着用者側に押圧されていない状態と、を示している。なお、
図10においては、説明の便宜上、吸収性物品1においては、検査部材60、肌側カバーシート18及び非肌側カバーシート19以外の部材を省略して示している。また、
図15に示すVは、膣口、Sは、着用物品、Fは、着用者の指を模式的に示したものである。
【0173】
図15(A)は、吸収性物品1を装着した着用物品Sを着用者側に押圧していない状態、すなわち、通常の着用状態の一例を示している。おりものシートは、生理用ナプキンと異なり、吸収する排泄物の量が少なく、また、生理ナプキンのように特定の期間に使用されず、日常使いされるものである。そのため、生理用ナプキンが生理用ショーツと共に使用される形態と異なり、日常使用する下着に取り付けられて使用されることが多い。そのため、おりものシートは、生理用ナプキンが生理用ショーツで押圧されるように着用者側に押圧されずに、
図15(A)に示すように、着用者と吸収性物品1の間に隙間が生じ易い。また、膣口Vの周囲の陰毛によって着用者と吸収性物品1の間に隙間が生じ易い。
【0174】
着用者は、検査部材60による検査を行うために、意図的に、吸収性物品1のトップシート11の肌側の面と着用者の肌面とが当接するように、着用物品Sの外面を着用者側に押圧することができる。この着用者による押圧は、一般的に、デリケートな陰部に対して過度な力をかけないように指で押圧することが多く、吸収性物品1のトップシートの肌側の面と着用者の肌面との隙間を埋めるように押圧する。
図15(B)は、着用物品の非肌側の面に指を当てた状態であり、
図15(C)は、指によって着用物品Sの外面を着用者側に押圧した状態を示している。出願人が鋭意研究した結果、着用者が指で着用物品Sの外面を着用者側に押圧した際に、トップシート11が少なくとも1.60~1.70kPaの圧力で着用者側に押圧された押圧状態となる。当該押圧状態において、トップシート11を透過したおりものを検査部材60側に導くことにより、おりものに基づいて適切な検査結果を得ることができる。
【0175】
トップシート11と検査部材60は、当接してよい。検査部材60の少なくとも一部の肌側の面が、トップシート11の非肌側の面に当接していればよい。本実施の形態の吸収性物品1は、トップシート11と検査部材60の間に肌側カバーシート18が配置されている。肌側カバーシート18は、接触部64としてのサンプルパッド64Zの一部を覆っていない。そのため、肌側カバーシート18が配置されていない領域において、トップシート11と検査部材60は、当接している。本構成によれば、トップシート11を介しておりものを検査部材60に直接導くことができ、検査部材60へ排泄物を迅速かつ確実に導くことができる。なお、トップシート11と検査部材60が当接した部分には、体液の透過性を確保するために、接着剤が付されてないことが好ましい。
【0176】
検査部材60の幅方向Wの長さは、女性の指幅よりも短くてよい。吸収性物品の前後方向Lに沿うように指を着用物品Sに当てて押圧した際に、指の幅は、検査部材60の幅方向Wに沿うように配置される。検査部材60の幅方向Wの長さが女性の指幅よりも短いことにより、検査部材60の全体を指で押圧できる。ここで、本明細書において「指幅」とは、指の厚さではないことを意味し、具体的には爪の広がり方向の指の幅のことをいう。着用物品の外面に指を当てて押圧する動作に鑑みて、「指幅」は、一般的な女性の中指幅、人差し指幅、薬指幅の少なくともいずれかであればよく、例えば、10mm~18mmに設定される。
【0177】
検査部材60の非肌側を覆う非肌側カバーシート19の幅方向Wの長さは、指幅よりも短くてよい。本構成によれば、吸収性物品1の前後方向Lに沿うように指を着用物品に当てて押圧した際に、非肌側カバーシート19を介して指によって検査部材60の幅方向Wの全体を押圧できる。また、検査部材60の肌側T1を覆う肌側カバーシート18の幅方向Wの長さは、指幅よりも短くてよい。
図15(C)に示すように、着用物品Sの外面を着用者側に押圧した際に、肌側カバーシート18が面状に配置され、当該面に沿って検査部材60も排泄口に対向して配置され易い。また、肌側カバーシート18の幅方向Wの長さが検査部材60よりも長い形態によれば、検査部材60の幅方向Wの全体に亘って検査部材60を排泄口に対向するように押圧できる。
【0178】
検査部材60は、吸収性物品1の幅方向Wの中心を跨いで配置されてよい。着用者が指を当てて押圧する際は、排泄口Vに当てることを意識し、吸収性物品1の幅方向Wの中心に当たるように指を配置し易い。そのため、吸収性物品1の幅方向Wの中心を跨いで配置された検査部材を押圧動作によって着用者側に押圧できる。検査部材60は、検査部材60の前後方向Lの長さが幅方向Wの長さよりも長い縦長形状であってよい。吸収性物品1の前後方向Lに沿うように指を着用物品に当てて押圧した際に、検査部材60に沿わせて指を配置し易く、検査部材60の前後方向Lに延びる一定の範囲を指で押圧でき、検査部材60を身体に対してより近づけて配置できる。
【0179】
トップシート11は、繊維を有するシートによって構成されており、トップシート11の平均繊維間距離は、女性の陰毛の平均径よりも長くてよい。陰毛の平均径は、成人女性の平均径であってよく、具体的には、90μm~120μmである。本構成によれば、トップシート11の平均繊維間距離が女性の陰毛の平均径よりも長いため、トップシート11が着用者の肌に接した際に、陰毛がトップシート11内に入り込み易くなる。陰毛に付着したおりものがトップシート11に移行し易くなる。好適には、トップシート11の肌側の面における平均繊維間距離は、女性の陰毛の平均径よりも長くてよい。吸収性物品の肌側の面が着用者側に押圧された際に陰毛がトップシート内により入りやすくなる。
【0180】
検査部材60の接触部64及びトップシート11は、繊維を有するシートによって構成され、トップシート11の平均繊維間距離は、接触部64の平均繊維間距離よりも長くてよい。吸収性物品1に排出された排泄物は、トップシート11を介して接触部64に導かれる。トップシート11内の排泄物が、平均繊維間距離が狭い接触部64に移行し易くなり、少量のおりものであっても検査部材60により到達し易くなる。トップシート11の繊維密度は、接触部64の繊維密度よりも高くてよい。排泄物は、繊維密度が比較的高いトップシート11から繊維密度が比較的低い接触部64に移行し易く、少量のおりものであっても検査部材60により到達し易くなる。
【0181】
接触部64は、非圧搾領域においてトップシート11に接してよい。なお、接触部64の少なくとも一部が非圧搾領域においてトップシート11に接していればよく、圧搾領域においてトップシート11に接触部の一部が接していてもよい。非圧搾領域におけるトップシート11は、圧搾領域におけるトップシート11と比較して圧搾部35による凹凸が形成されてなく、接触部64に面で接しやすい。トップシート11内の排泄物が接触部64に移行し易くなり、少量のおりものであっても検査部材60により到達し易くなる。
【0182】
接触部64を覆う領域におけるトップシート11の平均厚さは、移動部66を覆う領域におけるトップシート11の平均厚さよりも厚くてよい。接触部64を覆うトップシート11は、平均厚さが厚く、排泄物を保持する空間の容積を広く確保できる。よって、接触部64を覆う領域におけるトップシート11において排泄物を引き込む量が多くなり、トップシート11から接触部64に排泄物が移行し易くなる。
【0183】
非肌側カバーシート19は、液不透過性のシートであり、検査部材60の幅方向Wの全域を覆ってよい。非肌側カバーシート19の両側の外側縁は、検査部材60の外側縁よりも幅方向Wの外側に延出してよい。本構成によれば、検査部材60の幅方向Wの全域に亘って、検査部材60の非肌側T2を液不透過性のシートによって覆うことで、検査部材60に到達した排泄物が検査部材60よりも非肌側T2に透過することを抑制し、排泄物が検査部材60内にて移動し易くなる。
【0184】
人工体液のトップシート11に対する接触角は、人工体液の着用者の肌に対する接触角よりも小さくてよい。ここで、「接触角」は、濡れ性を評価し、接触角が小さいほど、濡れやすく、人工体液を引き込み易くなる。接触角の評価は、上述の人工体液を用いる。出願人が鋭意研究した結果、PETプレートが、皮膚と非常に近い親水性を示すことがわかったため、肌に対する接触角は、PETプレートに対する接触角とする。接触角は、以下の通り測定される。(1)25℃の恒温室に、自動接触角計CA-V型(協和界面科学株式会社製)と、ポリエチレンテレフタラート製のプレート(以下、「PETプレート」と称する)と、トップシートと、を準備する。なお、PETプレートは、PET-6010(タキロンシーアイ株式会社製,サイズ:41.5×80.0×1.0mm)である。(2)PETプレートとトップシートのそれぞれに対して、シリンジを用いて拭取性向上剤を約2μL滴下し、滴下から5秒後に、自動接触角計CA-V型を用いて、θ/2法により拭取性向上剤の接触角を測定する。(3)測定を、PETプレートとトップシートのそれぞれにおいて異なる場所で10回行い、それらの平均値を接触角として採用する。
【0185】
本実施の形態の検査部材60は、おりものから黄体形成ホルモンを検出するためのイムノクロマト法を用いた検査部材である。イムノクロマト法の検査部材は、排泄物に含まれる成分である排泄物成分と抗原抗体反応によって複合体を形成し、当該複合体が移動した先で指示薬によって呈色し、検査結果を表示する。そのため、試験紙による検査よりも必要な排泄物の量が多い。しかし、本発明によれば、少量のおりものであっても検査部材に導くことができ、イムノクロマト法を用いた検査を実行できる。
【0186】
吸収性物品1は、使用前に折り目を基点に折り畳まれてよく、検査部材60のうち少なくとも表示部62は、折り目と重ならない領域に配置されてよい。折り目による折り癖が表示部62に形成されず、表示部62の視認性を確保できる。また、好適には、検査部材60は、折り目と重ならない領域に配置されてよい。折り目による折り癖が検査部材60に形成されず、検査部材60を身体に沿うように配置し易く、少量のおりものであっても検査部材に導き易くなる。検査部材60と厚さ方向に重なる領域には、止着部25が配置されてよい。検査部材60が配置された領域を着用物品に止着部25を介して止着し、着用物品を介して検査部材60を着用者側に押圧でき、少量のおりものであっても検査部材に導き易くなる。
【0187】
吸収性物品は、接着剤によって排泄物の移行を阻害しないように構成されていることが好ましい。
図8に示すように、吸収性物品を構成する構成部材同士は、接着剤が付された接着領域によって互いに接合されている。より詳細には、トップシート11と肌側カバーシート18の間には、第1接着領域551が設けられている。肌側カバーシート18と検査部材60の間には、接着領域が設けられていない。検査部材60と非肌側カバーシート19の間には、第2接着領域552が設けられている。非肌側カバーシート19と補助シート15の間には、接着領域が設けられてない。補助シート15と吸収コア31の間には、第3接着領域553が設けられている。吸収コア31とバックシート21の間には、第4接着領域554が設けられている。
図11に示すように、移動部66、表示部62、接触部64及び吸収部67が互いに接する面は、接着剤が配置されていない非接着領域が設けられている。より詳細には、移動部66と表示部62が接する面は、非接着領域が設けられており、移動部66と接触部64が接する面は、非接着領域が設けられており、移動部66と吸収部67が接する面は、非接着領域が設けられている。本態様によれば、構成部材同士が接する面に接着剤が配置されていないため、接着剤の存在によって排泄物成分の移動が阻害されることを抑制し、正確かつ精度よく検査を行うことができる。
【0188】
次いで、このように構成された検査部材の好適な製造方法について説明する。なお、以下の製造方法の工程の一部を説明し、当該工程以外の工程については、周知の製造方法における工程を採用することができる。製造方法は、検査非肌側シート69を構成するシートが連続した検査非肌側連続シートと、検査肌側シート68を構成するシートが連続した検査肌側連続シートと、の間に、移動部、表示部、及び吸収部を構成する部材を配置する積層工程と、積層工程によって積層された積層体を、検査部材の第2方向の端縁に沿って切断する切断工程と、を少なくとも有する。切断工程は、厚さ方向Tに積層体を押圧して、積層体を切断する。当該製造方法によれば、積層体を切断する過程で、検査部材の第2方向の端縁が押圧され、検査部材の第2方向の端部であるサイド領域RSがセンター領域RCよりも押圧され、サイド領域RSの厚さがセンター領域RCの厚さよりも薄くなる。また、サイド領域RSがセンター領域RCよりも押圧され、サイド領域RSの密度がセンター領域RCの密度よりも高くなる。好適には、積層工程は、接触部64と移動部66が接する面、移動部を構成する構成部材同士(コンジュゲードパッド66Xとメンブレン66Y)が接する面、移動部66と表示部62が接する面、及び移動部66と吸収部67が接する面に接着剤を配置せず、切断工程は、積層体を溶断し、検査部材の第2方向の端縁を溶断によって接合してよい。接触部64と移動部66が接する面、移動部を構成する構成部材同士(コンジュゲードパッド66Xとメンブレン66Y)が接する面、移動部66と表示部62が接する面、及び移動部66と吸収部67が接する面は、排泄物成分が移動する部分であり、当該構成によれば、接着剤によって排泄物の透過が阻害されることを抑制できる。また、検査部材の第2方向の端縁を溶断によって接合することで、接着剤を用いずに構成部材間を接合でき、接着剤によって排泄物の透過が阻害されることを抑制できる。なお、積層工程において、検査非肌側連続シートと検査肌側連続シートとの間に、移動部、表示部、及び吸収部を構成する工程は、検査部材の寸法に切断された状態の移動部、表示部、及び吸収部を配置してもよいし、移動部、表示部、及び吸収部を構成する部材が連続した連続体を配置してもよい。積層体が、検査非肌側連続シート、検査肌側連続シート、及び他の連続体を有する形態にあっては、切断工程において、当該連続体も共に切断してよい。当該製造方法によれば、切断工程において、検査非肌側連続シート及び検査肌側連続シートと共に当該連続体も切断しつつ、接合することができる。
【0189】
(4) 実施形態に係る収容体
次いで、実施形態に係る収容体(以下、収容体とする)100について説明する。なお、以下の説明において、上述の実施形態と共通の構成については、同符号を用いて説明を省略する。
図16は、第1形態に係る収容体100の正面図であり、
図17は、第1形態に係る収容体100の背面図である。収容体100は、吸収性物品1と、吸収性物品を収容する収容本体101と、を有する。収容本体101は、吸収性物品1を個別に包装する包装体100X(
図18参照)であってもよいし、吸収性物品又は包装体を複数収容するものであってもよい。第1形態の収容体100は、吸収性物品を包装シートによって個別に包装した包装体100Xを複数収容している。
図18は、第2形態の収容体100Xを示しており、吸収性物品1を個別に包装する包装体が収容体を構成し、包装シートが収容本体を構成する。
図18(A)は、収容体100Xの正面図であり、
図18(B)は、収容体100Xの正背面である。収容本体101は、紙によって構成されていてもよいし、樹脂フィルムによって構成されていてもよい。好適には、収容体100Xの収容本体(包装シート)は、使用前の検査部材の劣化を抑制するために、アルミラミネート資材(PET12/AL6/CPP30)によって構成されてよい。
【0190】
収容本体101は、収容体の外面から視認可能なデザイン部110を有する。デザイン部110は、印刷によって構成されていてもよいし、収容本体101を構成する基材(例えば、樹脂フィルム)に付されたシールによって構成されていてもよい。デザイン部110は、吸収性物品を示した物品デザイン部120を有してよい。物品デザイン部120は、吸収性物品の少なくとも一部を示していればよく、吸収性物品1の全体を示していてもよいし、検査部材60を含む部分等、吸収性物品1の部分を示したものであってもよい。物品デザイン部120は、検査部材60の表示部62を示した表示デザイン部130と、着色領域を示した着色デザイン部140と、を有してよい。着用者は、吸収性物品1の使用時、購入時等に、収容体の外面に付された物品デザイン部120を視認する。物品デザイン部120は、表示デザイン部130及び着色デザイン部140を有している。そのため、着用者は、吸収性物品1の機能(検査部材60を有すること)、検査部材60の状態(着色領域R20によって覆われた状態)と、を使用前に把握することができる。着用者は、吸収性物品1の検査部材60の状態を使用前に把握できるため、実際の吸収性物品1を視認した際に、使用前から反応してしまっているという誤認識を抑制できる。
【0191】
表示デザイン部130は、呈色前の表示部を示す前表示デザイン部131と、呈色後の表示部を示す後表示デザイン部132と、を有してよい。後表示デザイン部132は、呈色後の第1表示部62Aを少なくとも示してよく、好適には、呈色後の第1表示部62A及び呈色後の第2表示部62Bの両方を示してよい。本構成によれば、呈色前の表示部の状態と呈色後の表示部の状態とを着用者に示すことができ、着用者は、検査部材の機能、使用方法等を理解でき、安心して吸収性物品を使用することができる。
【0192】
後表示デザイン部130は、適切な呈色反応を示した状態を示す第1後表示デザイン部と、適切でない呈色後の表示部を示す第2後表示デザイン部と、を有してよい。第1後表示デザイン部は、適切な呈色反応を示した状態を示すものであり、具体的には、第1表示部と第2表示部の両方が呈色した状態を示してよい。第2後表示デザイン部は、適切でない呈色反応を示した状態を示すものであり、具体的には、第1表示部が呈色し、第2表示部が呈色していない状態、第1表示部及び第2表示部を含む表示部全体が呈色した状態、表示部の幅方向の中央が呈色し、表示部の幅方向の側部が呈色していない状態を例示できる。本構成によれば、物品デザイン部によって、適切な呈色状態と、適切でない呈色状態と、を着用者に示すことができ、着用者は、検査部材の機能、使用方法等を理解でき、安心して吸収性物品を使用することができる。
【0193】
収容本体101のデザイン部110は、検査部材の使用方法、検査部材の機能、検査結果の判別方法の少なくともいずれかを含む検査説明部150を有してしてよい。検査説明部は、文字であってもよいし、イラストであってもよい。検査説明部を有することにより、着用者は、検査部材の機能、使用方法等をより理解でき、安心して吸収性物品を使用することができる。
【0194】
デザイン部110は、押圧表示部160を有してよい。押圧表示部160は、吸収性物品1のトップシート11の肌側の面と着用者の肌面を当接させるために着用物品Sの外面を着用者側に押圧した状態を示す。本実施の形態の押圧表示部160は、
図17及び
図18に示すように、収容体100の背面及び収容体100Xの背面に付されたイラストであり、着用者が指を衣服の外側に当て、衣服側から着用物品の外面を着用者側に押圧した状態を示す。着用者が押圧表示部160を視認することで、吸収性物品1のトップシート11の肌側の面と着用者の肌面とが当接するように、着用物品Sの外面を着用者側に押圧した状態を把握でき、当該押圧状態を実行し易くなる。着用者が押圧状態を実行することで、おりものを検査部材60に導き易く、おりものに基づいて適切な検査結果を得ることができる。
【0195】
デザイン部110は、押圧表示部160と合わせて、着用物品の外面を着用者側に押圧する押圧動作の説明と、押圧動作を着用者に促す説明と、の少なくとも一方を含む動作説明部161を含んでよい。着用者は、動作説明部161によって押圧動作を簡便に理解でき、着用者が押圧状態を実行することで、おりものを検査部材に導き易く、おりものに基づいて適切な検査結果を得ることができる。
【0196】
(5) 吸収性物品用シート
本発明は、吸収性物品において好適に用いられる吸収性物品用シートであってよい。吸収性物品用シートは、吸収性物品用シートの肌側の面に接触した、所定粘度(23℃で、15~30Pa・sの粘度)を有する人工体液を、6%以上吸収性物品用シートの非肌側の面に透過させる。吸収性物品用シートは、上述の吸収性物品におけるトップシートの構成を採用することができる。吸収性物品用シートは、検査部材を有する吸収性物品において特に好適に用いることできる。本態様の吸収性物品用シートによれば、肌側の面に接した所定粘度の人工体液を6%以上の高い比率でシートの非肌側の面に透過させることができる。よって、尿及び経血と比較して粘度が高いおりものであってもシートを透過させることができる。特に、検査部材の肌側に当該吸収性物品用シートを用いることで、おりものを高い比率でシートを透過させて検査部材側に導くことができ、着用者の健康状態をおりものから適切に検査することが可能となる。
【0197】
吸収性物品用シート、及び上記実施形態の吸収性物品を構成するトップシート11は、撥水性を有しないことが好ましい。より詳細には、吸収性物品用シート及びトップシート11は、撥水処理が施されていなくてよい。撥水処理方法は特に制限されず、通常の方法を広く採用することができる。具体的には、シリコンオイル、フッ素樹脂、メチルハイドロジェンポリシロキサン等の撥水性処理剤又はこれらの成分を含む油剤を用いる方法が例示される。吸収性物品用シート及びトップシート11は、親水処理されていてよい。親水処理は、例えば、親水性の油剤を含んでよい。シートが撥水処理されていないことにより、より体液を引き込み易くなり、また、シート親水処理されていることにより、体液を引き込み易くなる。
【0198】
トップシート11の好適な構成としては、エアスルー不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、スパンレース不織布を例示できる。また、トップシート11は、厚さ方向に貫通する開孔が形成されていてもよい。トップシート11は、後述する透過試験において、人工体液を6%以上透過してよいが、好適には、10%以上透過してよく、より好適には、14%以上透過してよい。本実施の形態においてより好適な不織布としては、厚さ0.1mm以上0.2mm以下、繊維の坪量が8g/m2以上12g/m2以下、ポリプロピレン繊維のスパンボンド不織布を例示できる。
【0199】
次いで、
図19に基づいて、人工体液の透過試験を説明する。
図19は、透過試験の試験装置を模式的に示している。試験装置は、トップシート(吸収性物品用シートの測定にあっては、当該吸収性物品用シート、以下同様)を載置する円筒状の治具401と、デジタルフォースゲージ(SHIMPO(日本電産シンポ)製)402と、デジタルフォースゲージを支持するフォースゲージスタンド(SHIMPO(日本電産シンポ)製)(図示せず)と、デジタルフォースゲージ402の先端部403に取り付けた平板(アクリル板)404と、平板404のトップシート11側の面に貼り付けた人工皮革(イデアテックスジャパン株式会社のPBZ13001)405と、を備える。試験装置を予めセットする。具体的には、フォースゲージスタンドにデジタルフォースゲージ402を固定した後、デジタルフォースゲージ402の先端部403にアクリル板(30mm×30mm)404を固定し、更にアクリル板の上に人工皮革(30mm×30mm)405を固定する。また、透過試験を行うトップシート11を準備する。吸収性物品からトップシート11を剥がして、トップシート11のみを取り出す。このとき、接着剤によってトップシートが剥がれない場合は、トップシートを冷却し(例えば,コールドスプレーを噴射し)、トップシート11を取り出す。トップシートの寸法は、円筒の治具上における寸法(円筒の治具の寸法以上)とする。
【0200】
透過試験は、トップシート11の肌側の面が上になるようにトップシート11を円筒の治具401上に配置して、トップシート11を治具上に固定する。例えば、トップシート11の両端部をセロハンテープで治具に固定する。次いで、トップシート11の肌側の面上に人工体液を0.5mg滴下する。
図19(A)は、治具上に設置したトップシート11に人工体液410を滴下した状態を示している。次いで、デジタルフォースゲージ402を100mm/minで降下させ、トップシート11と接するデジタルフォースゲージが1.60~1.70kPaの数値を示す条件下で、デジタルフォースゲージの降下を停止する。
図19(B)は、デジタルフォースゲージの降下を停止した状態を示している。トップシート11の非肌側の面上に配置された人工体液は、トップシート11を透過した人工体液であり、薬さじを用いて当該人工体液を取り、当該人工体液の重さを測定する。トップシート11の人工体液を透過させる透過率は、トップシート11の非肌側の面上の人工体液の重量/トップシート11の肌面上に滴下した人工体液の重量によって求めることができる。5枚のサンプルを用いて、当該透過試験を5回行い、その平均値を用いる。
【0201】
以上、上述の実施形態を用いて本発明について詳細に説明したが、当業者にとっては、本発明が本明細書中に説明した実施形態に限定されるものではないということは明らかである。本発明は、特許請求の範囲の記載により定まる本発明の趣旨及び範囲を逸脱することなく修正及び変更態様として実施することができる。したがって、本明細書の記載は、例示説明を目的とするものであり、本発明に対して何ら制限的な意味を有するものではない。
【符号の説明】
【0202】
1 :吸収性物品
11 :トップシート
15 :補助シート
18 :肌側カバーシート(第2肌側シート)
19 :非肌側カバーシート(第2非肌側シート)
21 :バックシート
31 :吸収コア
35 :圧搾部
50 :樹脂フィルム(液不透過性のシート)
60 :検査部材
62 :表示部
62A :第1表示部
62B :第2表示部
64 :接触部
64Z :サンプルパッド
66 :移動部
66X :コンジュゲードパッド
66Y :メンブレン
67 :吸収部
68 :検査肌側シート(第1肌側シート)
69 :検査非肌側シート(第1非肌側シート)
71 :第1疎水部
72 :第2疎水部
73 :第3疎水部
100 :収容体
101 :収容本体
110 :デザイン部
120 :物品デザイン部
130 :表示デザイン部
131 :前表示デザイン部
132 :後表示デザイン部
140 :着色デザイン部
160 :押圧表示部
300 :液透過調整部
L :前後方向
RC :センター領域
RS :サイド領域
R20 :着色領域
R21 :第1着色領域
R22 :第2着色領域
R25 :高透過領域
RC1 :幅中央領域
HP :中空部
S1 :前側域
S2 :後側域
S3 :股下域
S5 :排泄口対向域
T :厚さ方向
T1 :肌側
T2 :非肌側
W :幅方向