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特開2024-18972光源、計測装置、散乱吸収体計測装置、血流推定装置、異物測定装置、癌検診装置、感情推定装置および集中度推定装置
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  • 特開-光源、計測装置、散乱吸収体計測装置、血流推定装置、異物測定装置、癌検診装置、感情推定装置および集中度推定装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024018972
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】光源、計測装置、散乱吸収体計測装置、血流推定装置、異物測定装置、癌検診装置、感情推定装置および集中度推定装置
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/183 20060101AFI20240201BHJP
   A61B 5/026 20060101ALI20240201BHJP
   A61B 5/16 20060101ALI20240201BHJP
   H01S 5/062 20060101ALI20240201BHJP
   A61B 10/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01S5/183
A61B5/026 120
A61B5/16 120
H01S5/062
A61B10/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023096438
(22)【出願日】2023-06-12
(31)【優先権主張番号】P 2022121208
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100127111
【弁理士】
【氏名又は名称】工藤 修一
(72)【発明者】
【氏名】櫻野 勝之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】軸谷 直人
(72)【発明者】
【氏名】原坂 和宏
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
5F173
【Fターム(参考)】
4C017AA11
4C017AA12
4C017AB06
4C017AC26
4C017BB12
4C017BC11
4C017BC14
4C017BC16
4C038PQ03
4C038PS00
5F173AC03
5F173AC13
5F173AC35
5F173AC42
5F173AC52
5F173AF92
5F173AF96
5F173AH03
5F173AP67
5F173AR36
(57)【要約】      (修正有)
【課題】散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な短パルス光源を提供する。
【解決手段】本発明に係る光源は、散乱体もしくは透明体である被検体に対して、光を照射するための光源であって、光強度のピークが1/e^2となるパルス幅が200psec以下である面発光レーザを備えることを特徴とする。
【選択図】図4A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
散乱体もしくは透明体である被検体に対して、光を照射するための光源装置であって、
面発光レーザと、
前記面発光レーザの駆動を制御する光源制御部と、
を備え、
前記面発光レーザの発光において、光強度のピークに対して1/e^2の光強度となる時間幅が200psec以下である
ことを特徴とする光源装置。
【請求項2】
前記面発光レーザの発光において、前記ピークから1nsec後の光強度が、
前記ピークの光強度に対して1/100以下である
ことを特徴とする請求項1に記載の光源装置。
【請求項3】
前記面発光レーザは、
活性層と、前記活性層を挟んで対向する複数の反射鏡と、電源装置に接続され、前記活性層に電流を注入することが可能な電極対と、を有し、
前記光源制御部により電流が注入される期間を電流注入期間、前記電流注入期間の後であって前記活性層に注入される電流値が前記電流注入期間における電流値よりも低下する期間を電流減少期間として、
前記電流注入期間にレーザ発振せず、前記電流減少期間にレーザ発振する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項4】
前記面発光レーザは、光の射出方向に垂直な面内に、相対的に屈折率の高い高屈折領域と、該高屈折領域よりも屈折率が低く、該高屈折領域を取り囲む低屈折領域を有し、
前記低屈折領域は酸化狭窄により形成されており、
前記高屈折領域の厚さは35nm以下であり、
前記低屈折領域と前記高屈折領域との境界の先端部から3μmの位置における前記低屈折領域の厚さは、前記高屈折領域の厚さの2倍以下である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の光源装置。
【請求項5】
面発光レーザと、前記面発光レーザの駆動を制御する光源制御部と、を備え、パルス光を複数回対象物の内部へ照射する光源装置と、
前記対象物の内部を伝搬した散乱光を検出し、検出タイミングの情報を含む検出信号を出力する検出器と、
前記検出信号が入力される信号処理部と、
を備え、
前記パルス光は、前記面発光レーザが射出する、光強度のピークに対して1/e^2の強度となる時間幅が200psec以下の光である
ことを特徴とする計測システム。
【請求項6】
前記面発光レーザの発光において、前記ピークから1nsec後の光強度が、前記ピークの光強度に対して1/100以下である
ことを特徴とする請求項5に記載の計測システム。
【請求項7】
前記面発光レーザは、
活性層と、前記活性層を挟んで対向する複数の反射鏡と、電源装置に接続され、前記活性層に電流を注入することが可能な電極対と、を有し、
前記光源制御部により電流が注入される期間を電流注入期間、前記電流注入期間の後であって前記活性層に注入される電流値が前記電流注入期間における電流値よりも低下する期間を電流減少期間として、
前記電流注入期間にレーザ発振せず、前記電流減少期間にレーザ発振する、
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の計測システム。
【請求項8】
前記検出器が1または複数の画素を有するSPADセンサである
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の計測システム。
【請求項9】
前記検出器は、複数の前記パルス光に対応する複数の前記散乱光を検出して前記検出信号を出力し、
前記信号処理部は、前記検出信号に基づいて時間分解分光計測を行う
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の計測システム。
【請求項10】
前記検出器は、単一光子の入射タイミングの検出を繰り返し、
前記信号処理部は、前記検出信号に基づいて、入射タイミングと検出頻度のプロファイルを生成する
ことを特徴とする請求項5又は6に記載の計測システム。
【請求項11】
前記信号処理部は、前記プロファイルに基づいて散乱係数及び吸収係数を算出し、該散乱係数及び該吸収係数に基づいて、前記対象物の内部のヘモグロビン量を算出する
ことを特徴とする請求項10に記載の測定システム。
【請求項12】
前記信号処理部は、
前記ヘモグロビン量の時間変化に基づいて前記対象物内の血流量を測定する
ことを特徴とする請求項11に記載の測定システム。
【請求項13】
前記信号処理部は、前記検出信号に基づき対象物内の異物を検出する請求項5又は6に記載の測定システム。
【請求項14】
前記異物は生体内の癌である請求項13に記載の測定システム。
【請求項15】
前記信号処理部は、前記検出信号に基づき人の精神状態を推定する請求項5又は6に記載の測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源、計測装置、散乱吸収体計測装置、血流推定装置、異物測定装置、癌検診装置、感情推定装置および集中度推定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、対象物の内部に赤外線を入射して、返ってきた光信号から対象物の内部の情報血流状態を観測するNIRS(Near-infrared spectroscopy:近赤外分光法)技術がある。近赤外光は生体に対して高い透過性を示すため、生体組織における血流や酸素代謝変化を測定することができる。NIRSにより取得された皮膚血流や脳血流の情報に基づき感情等の心理状態を推定する研究も行われている。
【0003】
従来のNIRSは、CW(Continuous Wave:連続光)を用いたCW方式が主流であるが、TD(Time Domain:時間領域)方式の検討が行われている。CW方式では、対象物の浅い箇所を通って戻った光が主に検出されるのに対し、TD方式は、より深い箇所を通った光を検出することが可能で、生体内の情報を取得するのに有効であると考えられている。
【0004】
TD方式では、連続光ではなく、パルス状の光が利用される。特許文献1では、散乱吸収体に対してその内部情報を非侵襲的に計測するためのパルス光を所定の光照射位置から照射する単一の光照射手段、及び前記光照射手段から照射されて前記散乱吸収体の内部を伝搬した光をそれぞれ所定の光検出位置で検出する複数の光検出手段をそれぞれ有するN個(Nは2以上の整数)の計測モジュールが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許4167144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に利用可能な短パルス光源の検討は十分に行われていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る光源は、散乱体もしくは透明体である被検体に対して、光を照射するための光源であって、光強度のピークが1/e^2となるパルス幅が200psec以下である面発光レーザを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な短パルス光源を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態を説明する図である。
図2】本実施形態のブロック図である。
図3】本実施形態のフローを示す図である。
図4A】理想の投光波形と理想の受光波形(深い位置と浅い位置)を示す図である。
図4B】投光波形(理想の波形と比較例の波形)を示す図である。
図4C】比較例の投光波形の場合の受光波形(深い位置と浅い位置)を示す図である。
図5】面発光レーザの構成を説明する図である。
図6】ガンマスイッチ型面発光レーザの酸化狭窄部の説明図である。
図7】比較例の酸化狭窄部の説明図である。
図8】計測に利用した回路図である。
図9】比較例の計測波形である。
図10】ガンマスイッチ型面発光レーザの計測波形である。
図11】ガンマスイッチ型面発光レーザの動作原理(構造による屈折率分布)を説明する図である。
図12】ガンマスイッチ型面発光レーザの動作原理(屈折率分布の変化)を説明する図である。
図13】ガンマスイッチ型面発光レーザの計測波形の詳細を説明する図である。
図14】(a)光源モジュール(b)光検出モジュールを示す図である。
図15】光源モジュールと光検出モジュールを示す図である。
図16】本実施形態の設置イメージを示す図である。
図17】本実施形態の計測する部位を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
(実施の形態)
本発明の実施形態を説明する。本実施形態は、被検体に赤外線を入射して、返ってきた光信号を観測するNIRS(Near-infrared spectroscopy:近赤外光スペクトロスコピー)技術に際して、以下の特徴を有する。
【0011】
投光する光源として、単パルスかつ、光強度がピーク強度の1/e^2となる時間幅が200psec以下と短く、裾引きのないパルスレーザ光を用いることで、パルスレーザ光を標的媒体へ打ち込んだとき返ってくる光信号が、打ち込んだパルスレーザ光の裾引きによる影響を受けずにより低いレベルまで計測が可能となる特徴を有している。ここで、従来の短パルス光源では、ピーク強度に対する強度が1/2となる時間幅である半値全幅(FWHM)をパルス幅として示すことが主流であったが、後述するように、本発明者らはFWHMが小さいことだけでは短パルス光源に必要な特性として不十分であることを見出した。そこで本明細書では、投光波形において、光強度がピーク強度の1/e^2となる時間幅を1/e^2パルス幅として以降説明を行う。
【0012】
上記記載の本実施形態の特徴について、以下の図面を用いて詳細に解説する。
【0013】
図1は、測定システムの一例である、TD-NIRS(Time Domain Near Infrared Spectroscopy)システム1の全体構成ついて示した図である。
【0014】
投光手段の一例である光源モジュール50は、レーザ光源501を含み、標的媒体70に対して照射光(レーザ光)を照射する。光源モジュール50からの投光波形10は、縦軸に光の強度と横軸に時間経過を表し、光が存在する時間幅101を示している。本実施形態の投光波形10の特徴は、光強度がピーク強度の1/e^2となる時間幅が200psec以下である。または、ピーク強度の1/1000の強度になる経過時間が2nsec以下である裾引きのない短パルスである。パルスの形状については詳しく後ほど述べる。
【0015】
レーザ光源501は、数十nsec毎に繰り返し発振するが、その期間には一つのパルスしか発振せず、1つのパルス発光の後は余分な光を発しないことを特徴とする。具体的には、ガンマスイッチ型の面発光レーザ(VCSEL:Vertical Cavity Surface Emitting Laser)を用いることで、理想的な短パルスレーザ光を実現できる。ガンマスイッチ型面発光レーザの特徴については詳しく後述する。
【0016】
標的媒体70に照射された短パルスレーザ光は、標的媒体内で散乱、吸収されて入射方向に戻る。受光手段の一例である光検出モジュール60は、光検出器601を含み、標的媒体70から出た散乱光の一部を光検出器601によって検出する。光検出器601は、検出タイミングに関する情報を含む検出信号を出力する。
【0017】
本実施形態では、光検出器601として、ガイガーモードAPDであるSPAD(Single Photon Avalanche Diode)を採用したが、これに限定されず、アバランシェPD(APD:Avalanche Photo Diode)や、光電子増倍管(PMT)等を用いることができる。検出する光は微弱であるため、高感度であり、信号を増幅できる検出器が好ましい。加えて、高い時間分解能をもつ検出器が好ましい。
【0018】
この時、光伝搬経路には、標的媒体の深さ10~30mmという浅い位置を伝搬する経路70Sと深さ40mmを超える深い位置を伝搬する経路70Dが存在する。光の伝搬経路は、平均光路長によって飛行時間(ToF:Time of Flight)が異なり、標的媒体のより深い領域を経由してきた信号20Dは時間遅延が長い。
【0019】
本実施形態では、単一光子計測が可能な検出器(SPAD等)により光子の入射タイミング測定を繰り返し行い、入射タイミングと検出頻度の関係をプロットしたプロファイルを受光波形とする。受光波形20の時間幅は、1~10nsec程度である。受光波形20の後半部分に位置する傾き部分21は、深い位置を伝搬する経路70Dを経由した散乱光を含む。この傾き部分21を分析し、その経過時間と傾斜角度から、深い領域70Dの吸収係数μaとその深さを示す平均光路長を算出する。具体的には、投光から受光までの経過時間、光信号の減少量、投光―受光間距離に基づいて、光拡散方程式へのフィッティングを行う。ここで、吸収係数μaは、入射した光量がどの程度減少したかを示し、mm^-1を単位とする絶対値で算出される。吸収係数μaが絶対値として算出できるため、同一人物の時間毎の変化や、個人毎による違いを評価することが可能となる。
【0020】
図1では、照射位置と受光位置を隣接して配置しているが、これに限定されない。その一例として、甲状腺の癌などの検査の場合には、首を挟み対向する位置に、照射位置と受光位置を配置し、透過光を含むように光学系を配置する方が、一般的である。また、前腕のコンパートメント症候群の検査の場合にも対向する配置の方が適している。これら場合も、先に示した浅い部分と深い部分が経過時間によって分離できるように、光伝搬経路が異なる部分に関しては、分離して検出することができる。
【0021】
光源モジュール50および光検出モジュール60には、それぞれにアパーチャを有しており、迷光を防ぐ構成になっている。それらの配置は、お互いに近くにあることが好ましく、隣接している例もある。
【0022】
図2は、実施形態のTD-NIRSシステム1の機能ブロック図である。TD-NIRSシステム1は、光源制御部30と、1つまたは複数の光源モジュール50と、1つまたは複数の光検出モジュール60と、回路部分40と、を有する。
【0023】
TD-NIRSシステム1は、例えば脳血流量を定量的に測定する装置であって、光源モジュール50から出力された短パルスレーザ光を被検体(例えば頭部)に照射する構成になっており、被検体の内部を伝播した短パルスレーザ光を光検出モジュール60で検出する構成になっている。
【0024】
TD-NIRSシステム1の回路部分40は、制御部41、信号処理部42、記憶部44、信号伝達部43を含む。電源31は、電池や外部電源であり、光源制御部30を駆動するドライバ電源32、光源モジュール50のVCSELを駆動するVCSEL電源33、光検出モジュール60を駆動する光検出電源34、回路部分40を駆動する回路部分電源35等を供給する。
【0025】
制御部41は、TD-NIRSシステム1の全体の動作を制御する。例えば、光源モジュール50と光検出モジュール60の動作タイミングの制御、データの取得、取得したデータの信号処理部42及び信号伝達部43への転送、処理命令の生成及び出力などを行う。
【0026】
光源制御部30は、光源のドライバであり、制御部41からのトリガ信号を受けて、光源モジュール50の面発光レーザ(VCSEL)52に電流を流し、発光させる。光源制御部30と面発光レーザ52により光源装置が構成される。信号処理部42には、光検出器601からの検出信号が入力される。また、信号処理部42は、光検出器601からの検出信号に基づく測定結果を記憶部44に保存された事前計算の結果と比較して測定対象物の光物性値を算出、または推定する。
【0027】
記憶部44は、事前に計算した光物性値と光量比の関係を記憶する。信号伝達部43は、計測結果をスマートフォン、PCなど外部の情報処理装置に結果を転送する。または、コマンドを受信する。信号処理部42と制御部41と信号伝達部43と記憶部44の動作は、たとえばプロセッサで実現される。また、信号伝達部43によって、検出器で取得したデータを外部の情報処理装置の信号処理部42に送信し、光物性値の推定等の処理を行ってもよい。また、外部の情報処理装置として、スマートフォンやPCを利用する他に、クラウド上で処理を行い、結果をスマートフォンやPCへ送信するようにしてもよい。
【0028】
記憶部44はメモリで実現され、プロセッサに内蔵されたメモリであってもよいし、外部のメモリであってもよい。
【0029】
図3にTD-NIRSシステム1の処理フロー図を示す。はじめに、光源モジュール50から短パルスレーザ光を出力し被検体に照射する(S1)。短パルスレーザ光は被検体の内部を伝播して、光検出モジュール60で検出される。
【0030】
発光(短パルス発光)は、ピーク強度が100mW程度になるように、電流値を決定している。被検体内部を伝播する遅れ時間を考慮した測定期間の間、全てのSPADの検出値を読み取り(S2)平均化する。
【0031】
平均化された数値を記録媒体に格納する(S3)。その信号波形から信号処理部42によって吸収係数μaを演算する(S4)。μaからヘモグロビン量を算出(S5)が出来るため、酸素化ヘモグロビン、脱酸素化ヘモグロビンの割合から酸素飽和度を測定したり、ヘモグロビン量の経時変化から脳血流量を測定したりすることが出来る。被験者にタスクを与えた状態で、計測を数分間継続して実施することで、人の脳の賦活部位を吸収係数の変化として検出することができる。これによって、タスクに対する脳の反応から、被験者の性質などを判断できる。
【0032】
次に、投光波形10と受光波形20の関係と、その光伝搬経路(70S、70D)の関係について説明する。なお、前述の受光波形20と同様、受光波形(20S、20D)は入射タイミングと検出頻度の関係のプロファイルである。図4Aでは、投光波形(理想波形)10Mとして、投光波形を矩形で示しており、短パルスの理想化モデルとしている。この投光波形(理想波形)は、短パルスで裾引きがないパルス形状である。具体的には、図4Aに示す矩形のように、パルス幅は1nsec以下であり、その裾の部分も、ピークの1/1000以下になるような波形を指す。本実施形態の投光波形の詳細は後述する。
【0033】
次に、図4Aに示した受光波形(20Sと20D)について説明する。ここでは、標的媒体を人の頭部など生体を模した例について説明する。標準媒体の換算散乱係数や、吸収係数は、人の生体媒体の代表的な数値を用いて、標準媒体に対して、光源モジュール50の光出射部(例えば後述の窓部54)と光検出モジュール60の光入射部(例えば後述の接触部材64の開口)を隣接して配置し、表面から深さは数100mm以上ある大きな散乱吸収体としている。ただし、媒体はこれに限定することはなく、散乱体や透明体であれば、以下に述べる効果を同様に発現する。
【0034】
図4Aには、光検出モジュール60で検出する受光波形を、浅い領域からの信号20Sおよび深い領域からの信号20Dとして、区別して記している。受光波形(浅い部分からの信号)20Sは、光源モジュール50の光出射部と光検出モジュール60の光入射部との距離に依存するが、距離が近い本実施形態の場合、投光波形10Mの投光から数100psec後には波形のピークを迎える。その後、指数関数的に検出強度を低下させ、2nsec程度すると、光強度は3桁近く低下する。
【0035】
それに対し、40mmなどの深い位置を経由した散乱光は、時間遅れが2nsec程度発生する。図4Aに示す受光波形(深い位置からの信号)20Dに示すように、その強度も浅い部分からの信号に対し、3桁程度低下して検出される。図4Aに示すような理想的な投光波形であれば、図に示すように、投光から2nsec程度経過した後の浅い領域からの信号20Sに対し、深い領域からの信号20Dは、わずかながら大きい。
【0036】
このため、理想形の波形であれば、深い領域の20Dを検出することができる。また、この時、浅い領域の信号20Sと深い領域の信号20Dとは、時間経過が2nsec程度異なるため、高精度に時間分解した検出によって、それぞれを独立して検出することができる。浅い位置での脳活動の賦活の有無に影響を受けることなく、深い位置の脳活動の賦活を正確に検出することができる。
【0037】
図4Bは、投光波形(比較例)10Rを説明する図である。投光波形(比較例)には、いわゆる裾引きが存在している。裾引きとは、発光強度が小さくなる経過時間が長く、パルス幅に比べて長時間発光が続く状態を示す。光通信やレーザプロジェクターなどの一般的なレーザの利用シーンでは、光強度が1/5程度に低下すれば、裾引きがあっても、その用途に対しては問題がなかった。しかし、本実施形態の場合には、その裾引きとして、ピーク強度の1/1000程度の強度であっても、後述する本実施形態の信号検出においては問題となる。半値全幅(FWHM)が数100psec程度の所謂短パルス光だとしても、1/e^2パルス幅や、ピーク強度の1/1000の強度に低下するまでの経過時間である「裾」の部分が数nsecを超えるような長い投光波形では、後述の課題が発生する。
【0038】
次に裾引きの投光波形の場合に発生する課題について説明する。投光波形(比較例)10Rは、半値全幅(FWHM)が約500psec程度である。また、ピーク強度に対し、1/10の強度となる時間幅は1.1nsec、1/100では2.1nsec、1/1000では3.6nsec程度である。
これは一般的な裾引き波形であり、この投光波形(比較例)は、半導体レーザをGaN基板のトランジスターで駆動した一般的なゲインスイッチ型のレーザ光である。
【0039】
図4Cは、投光波形(比較例)に対する受光波形である。受光波形(深い部分からの信号)20Dは、投光波形による影響は大きくなく、図に示すように概ね変化しない。それに対し、受光波形(浅い部分からの信号)20Sの波形形状が大きく変化している。特に、図4Aの約2nsec程度における、ピーク強度から3桁程度、強度が減少していた部分が、図4Cでは著しく影響を受けている。
【0040】
図4Bの投光波形(比較例)10Rの場合である図4Cの受光波形(浅い部分からの信号)20Sは、2nsecでは、2桁程度しか低減していない。これは投光波形(比較例)10Rの2nsecの強度もピーク強度に対して、2桁程度の低下であることが影響を与えている。
【0041】
受光波形(浅い部分からの信号)20Sに対し、受光波形(深い部分からの信号)20Dは、どの時間期間に対しても、小さく、信号が埋もれてしまっている。この状態では、受光波形(深い部分からの信号)20Dを正確に検出することが困難となる。
【0042】
上記理由により、深い部分からの信号を得るには、図4Aに示すように、投光波形に「裾引き」がないことが重要であることが分かる。
【0043】
投光は人体に入れるため光量に制限があるため、より深い領域の信号を得るためには、図4Aに示すような投光側の影響がないことが必要である。
【0044】
投光ピークからの落ち具合が、NIRS信号として取得できる情報に大きな影響を与える。投光波形の裾引きの部分の光のうち、深い部分を通った光による信号を利用することも考えられるが、強度が低い分信号の精度が低く利用しにくい。
【0045】
上述の検討から、本発明者らは、FWHMよりもさらに低い強度における時間幅が短パルス光源において重要な特性であることを見出した。具体的には、光強度がピーク強度の1/e^2となる時間幅が200psec以下である光源が好ましい。また、発光ピークから1nsecの時点で、1/100以下に光強度が減衰するパルス光を出力する光源が好ましい。
【0046】
発光ピークから1nsecでの光強度が1/100以下になることで大きな効果をもたらす応用例を以下に示す。脳を計測する際には、頭部の皮膚血流が問題になる。皮膚血流は、頭皮に存在する血流で、脳計測する際には、計測誤差を誘引するアーチファクトとして課題となっている。皮膚血流の深さは1mm、脳血流は頭蓋骨および脳髄液の厚さの奥になるのでその深さは20mm程度である。
【0047】
光源モジュール50と光検出モジュール60をできるだけ近傍に配置したことを想定すると、深さの相違が1mmと20mmとでは、伝搬経路の長さは往復分として、2mmと40mmとの相違がある。
【0048】
これにより、受光波形において、皮膚血流と、脳血流と、それぞれが反映する位置が異なる。皮膚血流は伝搬経路が2mm程度で、数100psecの位置である。それに対し、脳血流の伝搬経路40mmでは、1nsec程度の位置である。投光波形において、発光ピークから1nsecにおける光強度が十分に低下していることが必要で、具体的には、発光ピークから1nsecでの光強度が1/100まで低下していることで、皮膚血流の影響があったとしても、脳血流の変化の方が支配的になっているため、皮膚血流による悪影響は限定的になる。これにより、皮膚血流と脳血流とを正確に分離できる。
【0049】
逆に、発光ピークからの裾引きが1nsecを超えていると、この脳血流が反映される位置に、皮膚血流の変化が反映され、区別がつかなくなる。
【0050】
次に、より深い位置での判別を可能とする例を示す。この深い位置での判別には、投光波形は、投光から2nsecの位置で発光ピークの1/1000以下の強度になることが必要となる。その具体例として、脳の部位毎に賦活状態を判別する応用例を以下に記す。脳血流においても脳の部位に、深い位置と浅い位置がある。例えば、深い位置としては帯状回のように40mm程度深い位置がある。それに対し、DLPFC(Dorsolateral prefrontal cortex:背外側前頭前野)などの前頭葉の大脳皮質の位置は20mm程度である。この2つの位置を同時に独立して検出することで、脳機能を多面的に理解することが可能となる。
【0051】
脳の組織の光学定数を測定することで、光伝搬経路のシミュレーションを行うことが可能である。帯状回など40mm程度の深い位置を経由した光が戻ってくる時間経過は、約2nsecである。投光波形における裾引き部分の光の浅い位置を経由した光がこの時間帯に存在すると、検出された光が浅い部分からの光か、もしくは深い位置の光かが、判断できない。この2nsec程度の時間帯に戻ってくる浅い位置を経由する光の量をできるだけ小さくする必要がある。
【0052】
生体などの散乱体では、40mm程度の深い位置からの光強度は、浅い位置からの約1/1000であることが知られている。浅い位置と深い位置との分離を可能とするには、光源の裾引きである2nsec後の光強度を1/1000にする必要がある。これによって、浅い位置の信号に対し、深い位置との信号が強くなり、正確に検出することが可能となる。
【0053】
また、光源は、散乱体もしくは透明体である被検体に対して、光を照射するための光源であって、光強度がピークの1/e^2となる時間幅である1/e^2パルス幅が200psec以下である面発光レーザであることが好ましい。
【0054】
本実施形態では、1/e^2パルス幅が、200psecであり、単純に2分すると、ピークの立下りは100psecとなる。ピークからおよそ100psec後において、投光波形における光強度が1/e^2にまで低下していることによって、光路長として数mmの距離を分離することが可能となる。皮膚の構造として、真皮層と呼ばれる層は、厚さが約2mm程度とされていて、その奥に皮下脂肪や筋肉層がある。本実施形態の光源により、真皮層と皮下脂肪や筋肉層との分離をすることが可能となる。
【0055】
また、その表面にある表皮層は数百ミクロンであり、目視ではその表皮しか見えないため、その奥の真皮層の情報を分離することによるメリットも大きい。光強度がピーク強度の1/e^2に低下する時間が100psec程度であるため、表皮層の影響がでるピークから100psec以前と、真皮層が現れる200psec以降とを分離することも可能となる。これにより目視では見えない真皮層の血行状態を独立に定量化でき、皮膚に対する総合的な判断が可能となる。
【0056】
次に、本実施形態で利用される光源であるガンマスイッチ型の面発光レーザについて説明する。以下にガンマスイッチ型面発光レーザの概念および本実施形態の投光波形について説明する。
【0057】
1ns以下の短パルス化を実現する手段として、ゲインスイッチング、Qスイッチング、モードロックなどがある。ゲインスイッチングは、緩和振動現象を利用して100ps以下のパルス幅(FWHM)を実現する手段である。パルス電流の制御だけで実現できるため、Qスイッチングやモードロックに比べて構成が簡易である。
【0058】
しかし、ゲインスイッチングでは、緩和振動現象を利用するため先頭のパルス以後に複数のパルス列が出力されやすい。あるいは緩和振動がおさまった後に減衰が遅いテール光(裾引き)が出力されやすい。
【0059】
本実施形態に係る構造を図5に示す。本実施形態に係る面発光レーザ100は、例えば酸化狭窄を採用した垂直共振器型面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)である。面発光レーザ100は、n型GaAs基板110と、n型分布ブラッグ反射鏡(distributed Bragg reflector:DBR)120と、活性層130と、p型DBR140と、酸化狭窄層150と、上部電極160と、下部電極170とを有する。
【0060】
本実施形態においては、n型GaAs基板110の表面に垂直な方向に光が射出される。以下、n型GaAs基板110の表面に垂直な方向を縦方向、n型GaAs基板110の表面に平行な方向を横方向又は面内方向ということがある。
【0061】
n型DBR120はn型GaAs基板110上にある。n型DBR120は、例えば複数のn型半導体膜を積層して構成された半導体多層膜反射鏡である。活性層130はn型DBR120上にある。活性層130は、例えば、複数の量子井戸層及び障壁層を含む。活性層130は共振器に含まれる。p型DBR140は活性層130上にある。p型DBR140は、例えば複数のp型半導体膜を積層して構成された半導体多層膜反射鏡である。共振器中において、活性層130は、発振光の定在波の腹と節の中間よりも腹側となる位置に設けられている。活性層130を定在波の腹となる位置に設けた場合、発光効率が最も高くなる。
【0062】
上部電極160はp型DBR140の上面に接触する。下部電極170はn型GaAs基板110の下面に接触する。上部電極160と下部電極170との対は、電極対の一例である。ただし、電極の位置はこれには限定されず、活性層に電流を注入できる位置にあればよい。例えば、DBRを介してではなく共振器のスペーサ層に直接電極を配置するイントラキャビティ構造であってもよい。
【0063】
p型DBR140は、例えば酸化狭窄層150を含む。酸化狭窄層150はAlを含有する。酸化狭窄層150は、光の射出方向に垂直な面内に、酸化領域151と、非酸化領域152とを含む。酸化領域151は、環状の平面形状を有し、非酸化領域152を取り囲む。非酸化領域152は、p型AlAs層155と、縦方向でp型AlAs層155を間に挟む2つのp型Al0.85Ga0.15As層156とから構成される。酸化領域151はAlOxから構成される。酸化領域151の屈折率は非酸化領域152の屈折率よりも低い。例えば、酸化領域151の屈折率は1.65であり、p型AlAs層155の屈折率は2.96であり、p型Al0.85Ga0.15As層156の屈折率は3.04である。
【0064】
平面視で、メサ180の酸化領域151の内縁の内側の部分は高屈折領域の一例であり、メサ180の酸化領域151の内縁の外側の部分は低屈折領域の一例である。なお、p型Al0.85Ga0.15As層156に代えて、p型AlxGa1-xAs層(0.70≦x≦0.90)が設けられてもよい。本実施形態では、p型DBR140、活性層130及びn型DBR120がメサ180を構成している。ただし、酸化狭窄により電流狭窄領域を形成する本実施形態においては、少なくとも酸化狭窄層150および酸化狭窄層150より上に位置する半導体層がメサ形状に形成されていればよい。また、少なくとも活性層がメサに含まれるよう形成することで、活性層で発生した光が横方向へ漏れることを防ぐことができる。
【0065】
ここで、酸化狭窄層150について詳細に説明する。図6は、本実施形態における酸化狭窄層及びその近傍を示す断面図である。
【0066】
図6に示すように、酸化領域151は、平面視で、環状の外側領域153と、環状の内側領域154とを有する。外側領域153はメサ180の側面に露出する。外側領域153は、断面視で表面の接触面が酸化領域151の外側に位置するように厚さが変化する領域であり、内側領域154は、断面視で表面の接触面が酸化領域151の内側に位置するように厚さが変化する領域である。内側領域154は外側領域153の内側にある。内側領域154の厚さは、外側領域153との境界において外側領域153の厚さと一致し、メサ180の中心に近づくほど薄くなっている。
【0067】
内側領域154は、断面視で、内縁から外側領域153との境界にかけて徐々に厚くなるテーパ形状を有する。非酸化領域152は外側領域153の内側にある。非酸化領域152の一部は縦方向で内側領域154を挟む。非酸化領域152の他の一部は平面視で内側領域154の内縁の内側にある。例えば、非酸化領域152の厚さは35nm以下である。
【0068】
外側領域153の厚さは非酸化領域152の厚さより大きくてもよい。なお、本開示において、非酸化領域152の厚さとは、酸化領域151の内縁(内側領域154の内縁)よりもメサ180の中心側の部分の厚さである。例えば、メサ180の側面から酸化領域151の内縁までの距離は、約8μm~11μmの範囲である。
【0069】
酸化領域151は、例えばp型AlAs層及びp型Al0.85Ga0.15As層の酸化狭窄により形成されている。例えば、高温水蒸気環境下でのp型AlAs層及びp型Al0.85Ga0.15As層の酸化処理により酸化領域151を形成できる。なお、同一のp型AlAs層及びp型Al0.85Ga0.15As層を酸化したとしても、酸化の条件により、p型AlAs層及びp型Al0.85Ga0.15As層から得られる酸化狭窄層の構造は相違し得る。
【0070】
従って、酸化により酸化狭窄層150となる層、例えばp型AlAs層及びp型Al0.85Ga0.15As層の酸化前の構造が同一であっても、酸化の条件によっては、酸化領域151及び非酸化領域152を備えた酸化狭窄層150が得られないことがある。
【0071】
ここで、比較例と比較しながら、本実施形態の作用効果について説明する。図7は、比較例における酸化狭窄層及びその近傍を示す断面図である。
【0072】
比較例では、酸化狭窄層150が、酸化領域151及び非酸化領域152に代えて、酸化領域951及び非酸化領域952を有する。酸化領域951は、環状の平面形状を有し、非酸化領域952を取り囲む。非酸化領域952は、p型AlAs層955と、縦方向でp型AlAs層955を間に挟む2つのp型Al0.85Ga0.15As層956とから構成される。酸化領域951はAlOxから構成される。
【0073】
酸化領域951は、平面視で、環状の外側領域953と、環状の内側領域954とを有する。外側領域953はメサ180の側面に露出する。外側領域953の厚さは面内方向で一定である。内側領域954は外側領域953の内側にある。内側領域954の厚さは、外側領域953との境界において外側領域953の厚さと一致し、メサ180の中心に近づくほど薄くなっている。
【0074】
内側領域954は、断面視で、内縁から外側領域953との境界にかけて徐々に厚くなるテーパ形状を有する。非酸化領域952は外側領域953の内側にある。非酸化領域952の一部は縦方向で内側領域954を挟む。非酸化領域952の他の一部は平面視で内側領域954の内縁の内側にある。例えば、メサ180の側面から酸化領域951の内縁までの距離は、約8μm~11μmの範囲である。酸化領域951及び非酸化領域952の厚さは酸化狭窄層150の厚さと等しい。
【0075】
まず、本実施形態及び比較例についての実測結果について説明する。図8は、実測に用いた回路を示す等価回路図である。
【0076】
この回路では、第1実施形態又は比較例に対応する面発光レーザ11に直列に電流モニタ用の抵抗12が接続されている。また、抵抗12に並列に電圧計13が接続されている。また、面発光レーザ11から出力された光は広帯域の高速フォトダイオードで受光して電圧信号に変換し、その電圧信号をオシロスコープで観測した。
【0077】
図9は、比較例についての実測結果を示す図である。図9(a)は、パルス電流の幅が約2nsの場合の実測結果を示し、図9(b)は、パルス電流の幅が約9nsの場合の実測結果を示し、図9(c)は、パルス電流の幅が約17nsの場合の実測結果を示す。図9(a)~(c)の実測において、バイアス電流の大きさ及びパルス電流の振幅は共通である。図9には、抵抗12を流れる電流及び高速フォトダイオードで測定した光出力を示す。抵抗12を流れる電流は、電圧計13を用いて算出できる。
【0078】
図9に示すように、比較例では、パルス電流の幅の大きさに関係なく、パルス電流が注入された直後に光パルスが出力され、その後はパルス電流の注入が停止するまでは平衡状態になり、一定のテール光が出力されている。先頭の光パルスは緩和振動によるものであり、典型的なゲインスイッチング駆動である。電流のパルス幅を変えても、光パルスが発生するタイミングは変わらない。緩和振動により生じる光パルスは、レーザ共振器内のキャリア密度がしきい値キャリア密度を超えた直後に生じるためである。
【0079】
図10は、本実施形態についての実測結果を示す図である。図10(a)は、パルス電流の幅が約0.8nsの場合の実測結果を示し、図10(b)は、パルス電流の幅が1.3nsの場合の実測結果を示し、図10(c)は、パルス電流の幅が2.5nsの場合の実測結果を示す。図10(a)~(c)の実測において、バイアス電流の大きさ及びパルス電流の振幅は共通である。図10には、抵抗12を流れる電流及び高速フォトダイオードで測定した光出力を示す。抵抗12を流れる電流は、電圧計13を用いて算出できる。
【0080】
図10に示すように、本実施形態では、パルス電流が注入されている状態では光出力が生じておらず、パルス電流の注入が減少した直後に光パルスが出力されている。また、光パルスが出力された後のテール光はほぼ見られない。ゲインスイッチングによる光出力であれば、パルス電流の幅を変えたとしても、光パルスが生じるタイミングは変わらない。これに対し、本実施形態では、パルス電流の注入が減少したことをきっかけとして光パルスが出力されている。従って、本実施形態における光出力は、緩和振動現象を利用した通常のゲインスイッチングではないといえる。
【0081】
このように、第1実施形態と比較例とでは、光出力の機構及び態様が明確に相違している。この相違は、下記のように説明される。
【0082】
面発光レーザでは、レーザ光は共振器中を酸化狭窄層と垂直方向に伝搬する。このため、酸化狭窄層が厚いほど、屈折率差に依存する等価的な導波路長が長くなり、横方向の光閉じ込め作用が大きくなる。酸化狭窄層を含むDBRを等価的な導波路構造と見なした場合、図11(a)のように等価屈折率差が大きいときには、レーザ光の電界強度分布は中央付近に集められる。これに対し、図11(b)のように等価屈折率差が小さいときには、レーザ光の電界強度分布は周辺の酸化領域にまで広がる。
【0083】
本実施形態と比較例とを比較すると、第1実施形態では、酸化狭窄層150が内側領154を含むため、本実施形態において、等価屈折率差が小さくなる。従って、比較例では、図11(a)に示すように、レーザ光の電界強度分布が中央付近に集められるのに対し、第1実施形態では、図11(b)に示すように、レーザ光の電界強度分布が酸化領域151にまで広がる。
【0084】
ここで、横方向の光閉じ込め係数を「面発光レーザ素子の中心を通る横方向断面における電界の積分強度」に対する「電流通過領域と同じ半径領域中における電界の積分強度」の割合とし、式(1)で定義する。ここで、aは電流通過領域の半径に相当し、Φは基板に垂直な方向を回転軸とした回転方向を表す。
【0085】
【数1】
【0086】
次に、パルス電流の注入が停止された際に起きる現象のモデルについて説明する。パルス電流が注入されている状態では、酸化狭窄層により電流経路はメサの中央付近に集中し、キャリア密度が高い状態となっている。このとき、キャリア密度の高い非酸化領域では、キャリアプラズマ効果により屈折率が小さくなる作用が生じる。キャリアプラズマ効果は、自由キャリア密度に比例して屈折率が低下する現象である。例えば文献「Kobayashi, Soichi, et al. "Direct frequency modulation in AlGaAs semiconductor lasers." IEEE Transactions on Microwave Theory and Techniques 30.4 (1982): 428-441」によると、屈折率の変化量は式(2)で示される。ここで、Nはキャリア密度である。
【0087】
【数2】
【0088】
図12に、パルス電流が注入されている期間(図12(a))と、パルス電流の注入が停止されて減少する期間(図12(b))とでの等価屈折率及び電界強度分布を模式的に示す。パルス電流が注入されている期間では、酸化狭窄層により生じる等価屈折率差(n1-n0)を打ち消す方向にキャリアプラズマ効果が作用して、等価屈折率差は(n2-n0)となっている。この状態でパルス電流の注入が減少すると、キャリアプラズマ効果の作用がなくなり、等価屈折率差は(n1-n0)に戻る。これにより、メサの周辺部まで広がっていた光子がメサの中央部に集められ、非酸化領域での光子密度が上昇する。
【0089】
つまり、横方向光閉じ込めが強い状態に変化する。パルス電流の注入が停止すると、共振器内に蓄積されたキャリアはキャリア寿命時間をかけて減少する。しかし、キャリア密度が完全に減衰する前に横方向光閉じ込めが強くなると誘導放出が始まり、蓄積されていたキャリアが一気に消費されて光パルスが出力される。パルス電流が注入されている期間は電流注入期間の一例であり、パルス電流の注入が停止されて減少する期間は電流減少期間の一例である。
【0090】
本実施形態においては、光パルス出力が生じた後に継続的な光パルス列が生じにくい。光パルスが生じるときにはパルス電流の注入が減少しており、緩和振動が生じにくいためである。
【0091】
また、光パルス出力が生じた後にテール光が生じにくい。光パルスが生じた後にはパルス電流の注入が減少しており、キャリア密度が増加しにくいためである。
【0092】
また、パルス電流の注入を停止した直後に光パルスが出力されるため、光パルスが出力されるタイミングを任意に制御することができる。
【0093】
また、第1実施形態により生じる光パルスの幅は、注入したパルス電流幅よりも短い。大電流化した場合でもパルス電流幅を短くする必要がないため、寄生インダクタンスの影響を受けにくい。
【0094】
なお、従来のゲインスイッチングにおいて、テール光の出力を抑制するために、光パルスが出力された直後に電流注入を停止することが考えられる。理想的には数100psec幅の電流パルスとする方法である。しかし、寄生成分による電流波形への影響があるため、このようなパルス幅の小さい電流パルスを作ることは難しい。特に、電流の大きさが10A以上と大きい場合には、光パルスが出力された直後に100ps以下の時間で電流の注入を停止することは難しい。大きなコンデンサが必要なため回路構成が大きくなってしまうデメリットがあり、本実施形態の応用例であるウェアラブルセンサには不向きと言えるが、多量の電荷をためることのできるコンデンサを使用し、ため込んだ電荷を瞬間的に流す回路構成とすることで、大電流かつ短い電流パルスを生成し得る。
【0095】
それに対し、ガンマスイッチ型の面発光レーザにおける光パルスの立ち上がり時間は、しきい値キャリア密度Nthがキャリア寿命時間よりも早く減少すると短くなる。つまり、横方向光閉じ込め係数Γrの増加が速いほど立ち上がり時間が短くなる。光パルスの減衰時間は、光子寿命時間に依存する。これにより、入力する電流パルス幅が長くても良いので、回路構成の仕様が緩和され、ウェアラブルセンサなどの小型センサへの応用が可能となる。
【0096】
光パルスの実測結果の例を図13に示す。光パルス幅として、半値全幅(FWHM)101Hと1/e^2パルス幅101Mをそれぞれ矢印で示している。
【0097】
実測結果における半値全幅(FWHM)と、1/e^2パルス幅は、40~60psの半値全幅と、80~110psの1/e^2パルス幅が得られた。半値全幅に対する1/e^2パルス幅の比率(1/e^2パルス幅/半値全幅)は1.7~1.8程度であった。ガウス関数式の定義に基づけば、半値全幅に対する1/e^2パルス幅の比率は1.70となるため、本実施形態の光パルスはガウス関数に近い波形であると言える。一方、比較例(図9(a)、(b)、(c))の実測結果では、パルス光の後に一定のテール光が出力されるため、電流注入を停止するまで光強度はピーク値の1/e^2以下とならない。つまり、比較例における1/e^2パルス幅はパルス電流の幅に依存するため、ピコ秒オーダの光パルス幅を得ることは難しい。
【0098】
また、図13に、ピーク位置から光強度がピークの1/1000となる位置までの時間経過を101Lとして矢印で示している。このグラフの数値から読み取ると、ピーク位置から約130psec後に1/1000以下に低減している。先述したように本実施形態の面発光レーザは、以後、次のパルスが来るまで光を発しないため、当然、計測に必要な2nsec以後も光が1/1000以下になっている。この形状は、図4Aで示した理想形の光パルスと同等であることが分かる。
【0099】
次にSPADセンサによる受光波形について説明する。ゲーティングによって1bin当り、例えば、40psecの受光時間をシフトしていき、受光波形を得る場合、測定を繰り返すことで、ヒストグラムを得ることが出来る。
【0100】
この時、SPADセンサは1画素の出力を繰り返して積算するものでもよいが、多数(例えば1000)の画素分のカウント数を合算して出力するSiPM(Silicon Photomultiplier)構造のSPADアレイであると、より計測効率が高い。またその組み合わせでも良い。SPADアレイ数に、繰り返し測定数を掛け合わせたものが、受光波形のダイナミックレンジとなる。
【0101】
人体からの受光信号強度は、入射信号強度の4~5桁落ちとなるため、より深い領域(ToFの遅れが大きい)の信号を得るためには、受光波形のダイナミックレンジが少なくとも2~3桁は必要となる。そのため、SPADアレイ数×繰り返し測定数は10E6~8程度必要となる。以上の要件は、例えば、「Ban, Han, Barrett, Geoffrey, Borisevich, Alex, Chaturvedi, Ashutosh, Dahle, Jacob, et al.; ”Kernel Flow: a high channel count scalable TD-fNIRS system” Proc. Of SPIE Vol. 11663 116630B-19」に記載されている。
【0102】
繰り返し測定数が多くなると測定時間が多くかかるので、なるべくSPADアレイ数を大きくすることが必要となるが、一方で受光波形の下限値はSPADデバイスのDark Count(DR:暗状態カウント数)によって決まるため、Dark Count×アレイ数となり、ダイナミックレンジの低減につながる。
【0103】
人体に入射することから入射レーザ光量には上限があるため、Dark Count、アレイ数、繰り返し測定数の最適な組み合わせを考慮する必要がある。まず人体皮膚に対する安全から、レーザ出力の上限が例えばピークパワー100~200mWと決まる。
【0104】
次に、Dark Countによって下限が例えば100~1000カウント毎秒と決まる。DRを2~3桁とするために例えばアレイ数を16~64とし、繰り返し測定数を1024~65536回とする。
【0105】
また、本実施形態では、裾引きのない短パルスレーザ光を出力することが可能なので、パルス光を出力する繰り返し周波数を10~100MHz程度とすることができる。繰り返し周波数が大きい方が、時間当たりの測定数を増やすことができ、測定時間を短く抑えることができる。一方で、前述の安全性考慮のため、平均出力パワーの上限には制限がある。平均出力パワーは、レーザ出力のピークパワー×パルス幅÷繰り返し周期として計算され、人体皮膚を対象とする場合、一般的な目安として200μW以下程度に抑える必要がある。例えば、ピークパワー100mW、パルス幅100psec、繰り返し周期100nsec(周波数10MHz)とした場合、平均出力パワーは100μWとなる。また、例えばピークパワー20mW、パルス幅100psec、繰り返し周期10nsec(周波数100MHz)とした場合、平均出力パワーは200μWとなる。ピークパワーの小さいパルス光を使用する場合、ピークパワーの大きいパルス光の場合よりも信号が検出される確率は下がるが、繰り返し周波数を大きく(例えば100MHz)することで、信号カウント数を大きくすることができる。逆に、繰り返し周期を小さく(例えば10~20MHz)する代わりにピークパワーを上限近傍の値とすることで信号が検出される確率を上げて、信号カウント数を大きくすることも可能である。
【0106】
図14は、本発明のTD-NIRSシステム1の投光手段および受光手段について説明する図である。
【0107】
投光手段としての光源モジュール50は、光学素子53と、VCSEL52と、アナログ回路51等を有する。図14(a)は、光源モジュール50の模式図である。光源モジュール50では、発光素子として、VCSELを用いており、VCSELの発振波長は、一例として780nm又は900nmである。この波長は血液中の酸素濃度で吸収係数が大きく変わることから選定している。アナログ回路51は、光源の制御を行うドライバであり、制御部からの駆動命令に基づいて、VCSEL52を駆動する駆動信号を出力する。光学素子53は、必ずしも必須の構成ではないが、VCSEL52から出力される光を集光して被検体内へ照射することが好ましい。
【0108】
光源モジュール50は、配線によって制御部と接続されている。配線は、個別配線であってもよいし、クロック信号線とデータ信号線が束ねられたI2C方式の配線であってもよい。
【0109】
光源モジュールの光学素子53と、VCSEL52と、アナログ回路51は、窓部54を有する筐体の内部に配置されている。本実施形態では、これらの部品は1つの筐体の内部に収容されているが、光学素子53とVCSEL52との間を光ファイバで接続したり、VCSEL52とアナログ回路51との間を配線で接続したりすることで複数の筐体に収納してもよい。
【0110】
窓部54は、たとえば使用波長に対して透明な樹脂で形成されている。窓部54は計測対象(被検体)と接触しており、光学素子53により一方向に集光された光は窓部54を通って被検体の表面に入射する。
【0111】
接触の安定性を高めるために、被検体と窓部54の間に透明ジェルを介在させてもよい。
【0112】
光源モジュール50は、非平行の複数の光束を被検体の略同一位置に照射する。この場合、被検体(散乱体)の略同一位置に照射される互いに非平行の複数の光束は、被検体への入射角度が異なり、異なる伝播経路をたどる。
【0113】
受光手段としての光検出モジュール60は、光学素子63と検出器62とデジタル回路61を有し、受光時間を測定する機能を持つ。図14(b)は、光検出モジュール60の模式図である。
【0114】
光検出モジュール60は、配線によって制御部と接続されており、光源モジュール50から一方向に照射され被検体で散乱された光を検出する構成を有する。
【0115】
本実施形態では、光検出モジュールの光学素子63と、検出器62と、デジタル回路61と、は1つの筐体の内部に収容されているが、光学素子63と検出器62との間を光ファイバで接続したり、検出器62とデジタル回路61との間を配線で接続したりすることで複数の筐体に収納してもよい。
【0116】
筐体は、たとえば遮光性(黒色樹脂など)の材料で形成され、筐体の端部に被検体と接触する接触部材64が設けられている。接触部材64は、たとえば弾性体で形成されている。遮光性を高める観点から、黒いゴム製の部材としてもよい。
【0117】
筐体の先端と接触部材64には開口(アパーチャ)が形成されている。アパーチャは、筐体の先端と接触部材64を貫通する、たとえば直径1mm程度の円形の開口である。
【0118】
アパーチャは、被検体を伝搬して被検体から出射し、光検出モジュール60に入射する光の位置を限定する機能を有する。光検出モジュール60でも、接触部材64と被検体の間に透明ジェルを介在させることで、被検体との接触安定性を向上してもよい。
【0119】
光学素子は、必須の構成ではないが、たとえばレンズや回折光学素子等により、検出器62としての受光素子の受光面に光を集光することが好ましい。受光素子に光が入射すると光量に応じた光電流が流れる。光電流はデジタル回路であるデジタル回路61で検知され、配線から制御部に電気信号が供給される。
【0120】
TD-NIRS信号は、投光手段による光信号が計測対象(被検体)によって散乱、吸収され、光強度、到達時間が変化する。そのため、受光手段は、制御部にToFを精度よく測る機能としてTDC(Time Digital Converter)回路を含む。
【0121】
光検出モジュール60による信号は数十psecオーダでの変化であり、時間精度が必要なため、信号処理部42は光検出モジュール60のデジタル回路61と一体化されていても良い。配線による寄生抵抗、寄生容量成分での信号遅れを防ぐため、同一基板上に配置し、長い配線を避けて、近くに置くことが好ましい。
【0122】
図15は、検出器の構成例である。光源モジュール50から出力された光は、計測対象(被検体)の照射スポットに入射し、被検体の内部のパスを通って、光検出モジュール60の光学素子に入射する。入射光は、光学素子によって検出器に集光される。
【0123】
図16は、ウェアラブル端末の一例である、耳掛け型TD-NIRS装置の実施形態について説明する図である。ただし、図16は、ウェアラブル端末の構造を概念的に示す概略図であって、説明に必要な構成要素のみを適宜図示している。
【0124】
ウェアラブル端末は、上述したように、人体の一部である対象者の「耳」に装着される、耳掛け型の端末である。ウェアラブル端末は、図16に示すように、装着機構を有する筐体80を有している。筐体内には、TD-NIRSシステム1と同様に、投光手段及び受光手段を含む投受光モジュール83を収容している。さらに、筐体には、制御モジュール82も収容されている。制御モジュール82は、制御部41、信号処理部42及び信号伝達部43等が収容されている。または、信号処理部42は筐体内に配置せず、外部の情報処理装置によって構成することで端末をコンパクト化してもよい。
【0125】
受光側としてはSPADセンサを用いるのが好適である。これまでに述べた通り、高感度かつ時間分解能の高いセンサが求められるが、SPADセンサは高感度かつ時間分解能が高いだけでなく、多画素の集積が可能であり、小型化が重要となるウェアラブル端末に適している。
【0126】
筐体は、装着機構によって対象者の耳の前後に着脱可能に装着される。投受光モジュール83が耳の後ろ側に配置されるよう装着することが好ましい。ここで、本実施形態では、利用者が、普段から、ウェアラブル端末を装着して生活していることを前提としている。そのため、筐体は、対象者が激しく動いても外れないように比較的強固に装着され、かつ対象者に負担が掛かりにくいように比較的軽量化されていることが好ましい。さらに、ウェアラブル端末は、防水機能を有していることが好ましい。
【0127】
ウェアラブル端末は、対象者の耳に引っ掛けられた状態で装着される。小型、軽量化されていることで、眼鏡やサングラスを装着しても支障がない。
【0128】
本実施形態では、対象者は、右耳及び左耳のうちの一方(図16の例では右耳)にのみ、ウェアラブル端末を装着している。ただし、ウェアラブル端末は、右耳用と左耳用とを共通の筐体に構成してもよい。
【0129】
また、対象者は、2台のウェアラブル端末を両耳(右耳及び左耳)に装着してもよい。この場合、2台のウェアラブル端末が互いに通信することで互いに協働(連携)し、1台のウェアラブル端末と同様の機能を実現する。
【0130】
ここで、ウェアラブル端末は、電池駆動であることが好ましい。そのため、本実施形態では、ウェアラブル端末は、蓄電池を有し、蓄電池に蓄積された電気エネルギを用いて動作することとする。
【0131】
両耳による2chであれば、各chに共通する信号を抽出することにより、より正確に深い部分(海馬、ブロードマン25野、帯状回といった脳深部)を測定することが出来る。
【0132】
本実施形態におけるTD-NIRSシステム1のアプリケーションとして、血流測定システムの説明を以下に記す。本実施形態では、TD-NIRSシステム1における信号処理部42により、得られた測定対象物の光物性値に基づく情報処理を行う。一例として、得られた光物性値(散乱係数μs’または吸収係数μa)に基づき血流測定、特に脳血流測定を行う。標的媒体は人体の脳血流を想定する。この場合、散乱係数μs’はあまり変動しないため、吸収係数μaの変動から血中ヘモグロビン濃度変化を測定することで脳血流の変化を捉えることが出来る。
【0133】
また、TD-NIRSの場合は、平均光路長によるToFが測定出来るため、その脳血流の変化が脳のどの程度深い領域のものなのかが判別できる。本実施形態の面発光レーザを用いているため、浅い位置と深い位置との判断が容易である。特に、耳の近傍は頭蓋骨の表面に表情筋があり、これがアーチファクトとなる。この浅い位置での信号か、脳内部の信号かを判別することが可能となり、より正確な計測が可能である。
【0134】
TD-NIRSシステムの第1の変形例は、筋肉の血流を測定する測定システムである。本変形例では、標的媒体に筋肉の血流量を想定する。構成要素として、前記被検体に密接するための粘着部を備える。血流量を測定することで筋肉の活動具合が確認出来、リハビリテーションの進捗診断に役立てることが出来る。
【0135】
特に、本実施形態の面発光レーザを利用し、伝搬経路別に筋肉の位置を分離できる機能を活かせる例として、コンパートメント症候群の虚血部位の判断に用いる応用例を以下に説明する。
【0136】
コンパートメント症候群は、外傷によって発生し、筋膜によって閉鎖された区画の内圧が上昇し微小血管の静脈還流障害を起こした状態である。筋肉の虚血が局所的に起きる症状で、現状は、内圧などの計測によって、その部位を判別している。しかし、判断があいまいになるなど不具合があり、処置として行う切開する位置を誤る可能性がある。
【0137】
虚血状態は血液のヘモグロビンの酸素飽和度に変化を観察することで判断することができるため、2波長のNIRSによるスペクトル情報によって、局所的な虚血状態を判断することができる。特に、本実施形態の面発光レーザを利用することで、光伝搬経路の判別ができる利点は大きい。例えば、前腕のコンパートメント症候群では、コンパートメントが、掌側、背側、橈側とある。また、掌側は浅い層と深い層に分かれる。
【0138】
この4つのコンパートメントのどの部分が虚血しているかを定量的に判断することは、非常に価値が高い。前腕のコンパートメントを判断する際には、前腕の直径が80mm程度であれば、光源モジュール50と、光検出モジュール60を前腕の円周に対して、対向する位置に配置して、検出することができる。
【0139】
被検体を挟み対向配置にすることで、透過光を利用することが可能である。透過光は、検出するすべての光が、前腕を横断していることとなるため、皮膚など表面近傍からの情報量が少ない散乱光を低減することができる。反射型の配置の場合には、この表面散乱光が大きく深い位置からの反射光が埋もれてしまう。本変形例では、透過型であるため、筋肉内部の散乱光のみを検出することができ、診断精度が向上する。
【0140】
直径方向の短い伝搬経路と、迂回した長い伝搬経路との相違を、経過時間として判別することができる。つまり、スペクトル情報から虚血している部位が、直径方向かもしくは迂回した方かを区別することができる。被検体を挟んだ対向配置を維持しながら、光源モジュール50、光検出モジュール60の片方もしくは両方を掌側から橈側へ走査する。走査しながらデータを蓄積、比較することで、虚血部位を特定できる。
【0141】
TD-NIRSシステムの第2の変形例は、生体内の異物検出、癌検出を行う測定システム装置である。本変形例では、癌検診への適用を想定する。標的媒体に胸部の血流量を想定する。血流量を測定することで、乳癌の発見に役立てることが出来る。癌細胞周辺は血流量が正常細胞よりも多くなるため、胸部部位による血流量の変化を測定することで乳癌の有無を判別することが出来る。
【0142】
本実施形態の光学センサを用いて、癌のような異物の有無を検知することができる。皮膚の表面に光源モジュール50と光検出モジュール60を所定の送受光間隔で複数配置する。もしくは、光源モジュール50と光検出モジュール60を皮膚表面で走査することで、他の部位と異なる部位を検出することも可能である。
【0143】
生体内に複数の非平行な光を照射し、光検出モジュール60で複数の方向からの光を検出して光量比を求める。前述の通り平均光路長が分かるため、皮膚からどの程度深い領域の癌なのかといった情報を得ることが出来る。
【0144】
本実施形態の面発光レーザを採用することで、深い位置と浅い位置とを分離して検出が可能となる。近年、研究が盛んになっている乳癌の抗癌剤の適応有無の判断の場合には、抗癌剤の投与後の癌細胞の虚血状態を検出する必要がある。この場合、抗癌剤により皮膚の近傍浅い部分での虚血が強いようなアーチファクトが多い時に、深い位置の癌の虚血状態を正確に判断することが難しい。
【0145】
従来のNIRSでは、このような深さ方向の分析は難しい。本変形例では、深い部分と浅い部分とを数10mmのレベルで分離できることができることから、超音波装置による癌の位置特定データとを複合させることで、抗癌剤の適応有無の判断の精度を向上させることができる。
【0146】
TD-NIRSシステムの第3の変形例として、人の精神状態を推定する測定システムを記す。人の精神状態とは、例えば感情や集中度である。本変形例は、標的媒体を脳血流として、その賦活部位によって推定できる心理状態推定を想定する。脳血流量またはヘモグロビンなどの血液内成分の変化と、人間の神経活動との間には密接な関係があることが知られている。
【0147】
特に本変形例では、脳の深い部分にある帯状回の血流量を検出する。図17は人の脳構造の断面図を示す。-Z方向が人の顔方向である。額の部分に光源モジュール50と光検出モジュール60を設置する。投光は+Zへ伝搬する。額から帯状回90までの距離は、大人の男性で、約40~50mmの位置にある。その手前には、DLPFCなどの前頭前野91の大脳皮質の組織があり、この浅い位置の脳血流の変化と、深い位置での帯状回90での脳血流変化を分離することが、従来のNIRSでは難しかった。
【0148】
前述の通り、本実施形態の面発光レーザによって、平均光路長から測定部位の深さ情報を得ることが出来て、なおかつSPADセンサにより、長い平均光路長で減衰した深部からの微小な信号波形を得ることが出来るので、脳深部の血流量が分かる。
【0149】
脳深部に位置する海馬、ブロードマン25野、帯状回といった領域はストレスを感じると賦活するため、ネガティブな感情の推定を行うことが出来る。
【0150】
特に、帯状回とDLPFCとを区別して検出することが重要だと思われる。DLPFCは帯状回より浅い領域に存在し、一般的なNIRSでは、帯状回を独立検出することができない。本実施形態の面発光レーザを利用することで、DLPFCの奥で深い位置の帯状回を独立に計測できる。DLPFCはストレスをコントロールする時に、賦活することが知られている。
【0151】
つまりは、帯状回が賦活していても、DLPFCが賦活している場合には、被験者はストレスをコントロールしていることとなる。このように、人の感情を分析する際には、感じている感情が、本来の感情なのか、それとも、それをコントロールして感じている感情なのかを正しく分析することが重要である。
【0152】
これには、DLPFCと帯状回を同時に個別に計測することが必要である。本実施形態の面発光レーザを利用し、帯状回を個別に測定することで、感情分析を正しく行うことができる。
【0153】
このように、人間の感情の変化に応じて神経細胞の活動が変化することにより、脳血流量または血液内の成分が変化する。したがって、脳血流量または血液内成分の変化などの生体情報を計測できれば、ユーザの心理状態を推定することができる。ユーザの心理状態は、例えば、気分、感情、健康状態、または温度感覚を意味する。
【0154】
気分は、例えば、快、または不快といった気分を含み得る。感情は、例えば、安心、不安、悲しみ、または憤りといった感情を含み得る。健康状態は、例えば、元気、または倦怠といった状態を含み得る。温度感覚は、例えば、暑い、寒い、または蒸し暑いといった感覚を含み得る。
【0155】
これらに派生して、脳活動の程度を表す指標、例えば熟練度、習熟度、および集中度についても同様に推定することが出来る。信号処理回路は、計測部において、脳血流量の変化に基づいて、ユーザの集中度などの心理状態を推定して、推定した当該状態を示す信号を出力してもよい。
【0156】
本開示における血流量推定装置は、非接触でユーザの内部情報を取得する測定機器に適用され得る。本開示における血流量推定装置は、生体または医療センシング、自動車の運転者のセンシング、ゲーム機やアトラスション装置のユーザのセンシング、教育機関における学習者のセンシング、および職場における労働者のセンシングに応用できる。
【0157】
TD-NIRSシステムの第4の変形例として、真皮層の血行診断を行う測定システムを記す。光強度ピークの立下り100psecにおいて、投光波形における光強度がピーク強度の1/e^2にまで低下していることによって、光路長として数mmの距離を分離することが可能となる。皮膚の構造として、真皮層と呼ばれる層は、厚さが約2mm程度とされている。その奥には、筋肉や脂肪などの組織がある。美容の観点から、顔の皮膚はその定量化が重要である。頭皮などを含めて皮膚の血行を良くすることを目的とした化粧品なども多く存在し、その効果の定量化が求められている。皮膚の場合には、血行という表現が一般的であるが、ここでは血流と同意義に利用する。
【0158】
本実施形態の面発光レーザを利用することで、皮膚の血行の状態を、内部の筋肉や脂肪の影響を受けることなく、分離して検出することが可能となる。真皮層の血行状態を正確に定量的に検出することができる。例えば、個人に適する美容液を選択する際に、比較する定量指標としてこの真皮の血行状態を利用することができる。
【0159】
また、皮膚には様々な疾患も存在し、その程度などを定量化する上でも利用できる。例えば、褥瘡や熱傷のステージ判断をする際には、どの深さまで血行不良が起きているかなど、医師の判断が必要である。
【0160】
一般的には目視などでの判断となるが、表面に出ている表皮から目に見えない真皮層の状態を判断するしかない。本実施形態の受光波形を時間経過で分離することで、表皮層の影響を低減した真皮層の血行状態を定量化することも可能である。
【0161】
特に本実施形態の投光波形は、光強度のピークから100psec経過後には、ピーク強度の1/e^2以下になる裾引きのない短パルスであるため、受光波形の100psec以降の波形は高精度に捉えられることができる。これにより、表皮層の影響がでる100psec以前と、真皮層が現れる200psec以降とを正確に分離することができる。これにより目視では見えない真皮層の血行状態を定量化でき、総合的な判断が可能となる。
【0162】
TD-NIRSシステムの第5の変形例として、眼球の検査に利用する例を記す。眼球は、硝子体と呼ばれる透明体によって構成されている。その奥にある網膜における諸症状を検査する手法が多く開発されている。特にOCT(Optical Coherence Tomography: 光干渉断層撮影)によって、網膜の3次元計測が、網膜剥離や網膜の薄化症状などに対して、治療上に非常に有効であることが知られてきている。
【0163】
しかし、OCTでは透明体の硝子体の内部に関する諸症状を観察することはできない。OCTでは原理上、反射してくる光のコヒーレンスが維持されている必要があるが、硝子体の内部の異物からの反射光では散乱される成分が強くコヒーレント状態を維持できない。
【0164】
それに対し、本実施形態で用いられる検出原理であるToFを用いることで、散乱された光でもその距離を検出することが可能である。硝子体に存在する異物、例えば出血などが、どの位置に存在するかを定量化することは、その後の治療方法を決定する際に価値がある。本実施形態で記したToFを用いることで透明体に存在する異物が表面からの程度の位置にあるものか検出することが可能となる。
【0165】
以上説明したように、本発明の態様の一例は以下のようになる。
【0166】
<1>
本実施形態にかかる光源装置は、散乱体もしくは透明体である被検体に対して、光を照射するための光源装置であって、面発光レーザと、前記面発光レーザの駆動を制御する光源制御部と、を備え、前記面発光レーザの発光において、光強度のピークに対して1/e^2の光強度となる時間幅が200psec以下であることを特徴とする。これにより、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な短パルス光源を提供することができる。
【0167】
<2>
本実施形態にかかる光源装置は、前記面発光レーザの発光において、前記ピークから2nsec後の光強度が、前記ピークの光強度に対して1/1000以下であることを特徴とする<1>に記載の光源装置である。これにより、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な短パルス光源を提供することができる。
【0168】
<3>
本実施形態にかかる光源装置は、前記面発光レーザは、活性層と、前記活性層を挟んで対向する複数の反射鏡と、電源装置に接続され、前記活性層に電流を注入することが可能な電極対と、を有し、前記光源制御部により電流が注入される期間を電流注入期間、前記電流注入期間の後であって前記活性層に注入される電流値が前記電流注入期間における電流値よりも低下する期間を電流減少期間として、前記電流注入期間にレーザ発振せず、前記電流減少期間にレーザ発振する、ことを特徴とする<1>又は<2>に記載の光源装置である。これにより、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な短パルス光源を提供することができる。
【0169】
<4>
本実施形態にかかる光源装置は、前記面発光レーザは、光の射出方向に垂直な面内に、相対的に屈折率の高い高屈折領域と、該高屈折領域よりも屈折率が低く、該高屈折領域を取り囲む低屈折領域を有し、前記低屈折領域は酸化狭窄により形成されており、前記高屈折領域の厚さは35nm以下であり、前記低屈折領域と前記高屈折領域との境界の先端部から3μmの位置における前記低屈折領域の厚さは、前記高屈折領域の厚さの2倍以下である、ことを特徴とする<1>~<3>のいずれかに一つに記載の光源装置である。これにより、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な短パルス光源を提供することができる。
【0170】
<5>
本実施形態にかかる計測システムは、面発光レーザと、前記面発光レーザの駆動を制御する光源制御部と、を備え、パルス光を複数回対象物の内部へ照射する光源装置と、前記対象物の内部を伝搬した散乱光を検出し、検出タイミングの情報を含む検出信号を出力する検出器と、前記検出信号が入力される信号処理部と、を備え、前記パルス光は、前記面発光レーザが射出する、光強度のピークに対して1/e^2の強度となる時間幅が200psec以下の光であることを特徴とする。これにより、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な計測システムを提供することができる。
【0171】
<6>
本実施形態にかかる計測システムは、前記面発光レーザの発光において、前記ピークから2nsec後の光強度が、前記ピークの光強度に対して1/1000以下であることを特徴とする<5>に記載の計測システムである。これにより、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な計測システムを提供することができる。
【0172】
<7>
本実施形態にかかる計測システムは、前記面発光レーザは、活性層と、前記活性層を挟んで対向する複数の反射鏡と、電源装置に接続され、前記活性層に電流を注入することが可能な電極対と、を有し、前記光源制御部により電流が注入される期間を電流注入期間、前記電流注入期間の後であって前記活性層に注入される電流値が前記電流注入期間における電流値よりも低下する期間を電流減少期間として、前記電流注入期間にレーザ発振せず、前記電流減少期間にレーザ発振する、ことを特徴とする<5>又は<6>に記載の計測システムである。これにより、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な計測システムを提供することができる。
【0173】
<8>
本実施形態にかかる計測システムは、前記検出器が1または複数の画素を有するSPADセンサであることを特徴とする<5>~<7>のいずれか一つに記載の計測システムである。これにより、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な計測システムを提供することができる。
【0174】
<9>
本実施形態にかかる計測システムは、前記検出器は、複数の前記パルス光に対応する複数の前記散乱光を検出して前記検出信号を出力し、前記信号処理部は、前記検出信号に基づいて時間分解分光計測を行うことを特徴とする<5>~<8>のいずれか一つに記載の計測システムである。これにより、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な計測システムを提供することができる。
【0175】
<10>
本実施形態にかかる計測システムは、前記検出器は、単一光子の入射タイミングの検出を繰り返し、前記信号処理部は、前記検出信号に基づいて、入射タイミングと検出頻度のプロファイルを生成することを特徴とする<5>~<9>のいずれか一つに記載の計測システムである。これにより、散乱体もしくは透明体である被検体の内部の測定に好適な計測システムを提供することができる。
【0176】
<11>
本実施形態にかかる測定システムは、前記信号処理部は、前記プロファイルに基づいて散乱係数及び吸収係数を算出し、該散乱係数及び該吸収係数に基づいて、前記対象物の内部のヘモグロビン量を算出することを特徴とする<5>~<10>のいずれか一つに記載の測定システムである。これにより、生体計測に好適な計測システムを提供することができる。
【0177】
<12>
本実施形態にかかる測定システムは、前記信号処理部は、前記ヘモグロビン量の時間変化に基づいて前記対象物内の血流量を測定することを特徴とする<11>に記載の測定システムである。これにより、生体計測に好適な計測システムを提供することができる。
【0178】
<13>
本実施形態にかかる測定システムは、前記信号処理部は、前記検出信号に基づき対象物内の異物を検出する<5>~<12>のいずれか一つに記載の測定システムである。これにより、病変を早期に検出できる計測システムを提供することができる。
【0179】
<14>
本実施形態にかかる測定システムは、前記異物は生体内の癌である<13>に記載の測定システムである。これにより、病変を早期に検出できる計測システムを提供することができる。
【0180】
<15>
本実施形態にかかる測定システムは、前記信号処理部は、前記検出信号に基づき人の精神状態を推定する<5>~<12>のいずれか一つに記載の測定システムである。これにより、被験者の健康を維持することができる計測システムを提供することができる。
【符号の説明】
【0181】
10 投光波形
10M 投光波形(理想形)
10R 投光波形(計測例)
101 投光波形の時間幅
101H 投光波形の時間幅(半値全幅)
101M 投光波形の時間幅(1/e^2パルス幅)
101L ピーク強度の1/1000になるまでにかかる時間
20 受光波形
21 受光波形の傾き部分
22 受光波形の時間幅
20S 受光波形(浅い部分からの信号)
20D 受光波形(深い部分からの信号)
30 光源制御部
31 電源
32 ドライバ電源
33 VCSEL電源
34 SPAD電源
35 回路部分電源
40 回路部分
41 制御部
42 処理部
43 信号伝達部
44 記憶部
50 光源モジュール
51 アナログ回路(ドライバ)
52 面発光レーザ
53 光学素子
54 窓部
60 光検出モジュール
61 デジタル回路(DSP)
62 検出器(SPADセンサ)
63 光学素子
64 接触部材
70 標的媒体
70S 光伝搬経路(浅い位置)
70D 光伝搬経路(深い位置)
80 筐体
83 投受光モジュール
82 制御モジュール
90 帯状回
91 前頭前野
100 面発光レーザ
110 n型GaAs基板
120 n型DBR
130 活性層
140 p型DBR
150 酸化狭窄層
151 酸化領域
152 非酸化領域
153 外側領域
154 内側領域
160 上部電極
170 下部電極
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
図6
図7
図8
図9
図10
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図17