(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019119
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】通信システム及び試験測定システム
(51)【国際特許分類】
H04B 7/06 20060101AFI20240201BHJP
H04B 7/08 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H04B7/06 982
H04B7/08 982
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023122520
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】63/392,838
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/401,516
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18/357,978
(32)【優先日】2023-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】391002340
【氏名又は名称】テクトロニクス・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】TEKTRONIX,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(74)【代理人】
【識別番号】100093045
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 良男
(72)【発明者】
【氏名】キース・アール・ティンズリー
(57)【要約】
【課題】通信システムの校正を効率的に実行する。
【解決手段】通信システムは、既知の特定の送信シーケンスを使用できる受信機によってのみ検出可能な既知の特定の送信シーケンスが特定の周波数スペクトラムに広がって含まれる通信信号を規定のシグナリング・プロトコルを使用して複数のアンテナ素子によってターゲット受信機に送信する処理と、既知の特定の送信シーケンスに基づいて、上記通信信号の受信におけるエラーを示すフィードバックをターゲット受信機から受信する処理とを行うように夫々構成される1つ以上の送信機10と、通信信号が送られたときの複数のアンテナ素子18の構成及びフィードバックを使用して、送信機の事前構成された設定を予測する機械学習システム12とを含む。試験測定システムは基地局に位置し、信号発生器は、所定の変調フォーマットを有する1つ以上の信号を生成し、受信機は、1つ以上の信号を受信し、機械学習システム12は、校正マトリックスを策定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通信システムであって、
既知の特定の送信シーケンスを使用できる受信機によってのみ検出可能な上記既知の特定の送信シーケンスが特定の周波数スペクトラムに広がって含まれる通信信号を規定のシグナリング・プロトコルを使用して複数のアンテナ素子によってターゲット受信機に送信する処理と、
上記既知の特定の送信シーケンスに基づいて、上記通信信号の受信における誤差を示すフィードバックを上記ターゲット受信機から受信する処理と
を行うように夫々構成される1つ以上の送信機と、
上記通信信号が送られたときの上記複数のアンテナ素子の構成及び上記フィードバックを使用して、上記通信システムにおける上記送信機の事前構成された設定を予測する機械学習システムと
を具える通信システム。
【請求項2】
上記既知の特定の送信シーケンスの帯域幅が、上記通信信号よりも狭い帯域幅を有する請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
上記事前構成された設定が、上記アンテナ素子の位相及び角度並びにチャンネル状態情報の中の1つ以上を含む請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
上記送信機が、上記ターゲット受信機から遠隔にあるか又は上記ターゲット受信機と同じ場所に位置するかのいずれか一方である請求項1に記載の通信システム。
【請求項5】
上記通信信号を受信し、上記通信信号を反射して上記ターゲット受信機に戻すための反射器を更に具える請求項1に記載の通信システム。
【請求項6】
基地局に位置する試験測定システムであって、
所定の変調フォーマットを有する1つ以上の信号を生成するように構成された信号発生器と、
上記1つ以上の信号を反射して上記基地局に向けて戻すように構成された1つ以上の反射器に上記1つ以上の信号を送信するように構成された複数のアンテナ素子からなる送信機と、
上記1つ以上の信号を受信するように構成された受信機と、
送信された上記1つ以上の信号、受信された上記1つ以上の信号及び送信された上記1つ以上の信号に対して行われた任意の調整を使用して校正マトリックスを策定するように構成された機械学習システムと
を具える試験測定システム。
【請求項7】
上記1つ以上の反射器又は上記受信機のうちのいずれか一方が、調整器として機能し、送信される上記信号に対して調整を行うように構成される、請求項8に記載の試験測定システム。
【請求項8】
上記調整器が、
上記送信機から上記1つ以上の信号を受信する処理と、
望ましくない位相シフト及び振幅変動を調整する処理と、
上記基地局にある上記機械学習システムに上記調整を返す処理と
を行うように構成される請求項7に記載の試験測定システム。
【請求項9】
上記信号発生器が任意波形発生器(AWG)を有し、上記受信機がリアルタイム・スペクトラム・アナライザ(RTSA)を有する請求項6に記載の試験測定システム。
【請求項10】
上記1つ以上の反射器のうちの少なくとも1つが、再構成可能なインテリジェント・サーフェス(RIS)を有する請求項6に記載の試験測定システム。
【請求項11】
上記1つ以上の反射器が、それぞれが上記基地局との見通し線内にある第1の反射器及び第2の反射器を有し、上記試験測定システムが、
上記基地局と上記第1の反射器との間の第1のチャンネル及び上記基地局と上記第2の反射器との間の第2のチャンネルのチャンネル性能を求める処理と、
上記第1のチャンネル及び上記第2のチャンネルの性能を使用して、非見通し線ノードと上記第1の反射器及び上記第2の反射器との間のチャンネルを校正する処理と
を行うように更に構成される請求項10に記載の試験測定システム。
【請求項12】
上記信号発生器が、上記既知の特定の送信シーケンスを使用できる受信機によってのみ検出可能となる上記既知の特定の送信シーケンスが特定の周波数スペクトラムに広がって含まれるように上記1つ以上の信号を生成するように更に構成され、
上記受信機が、上記既知の特定の送信シーケンスを含む上記信号を受信するように更に構成される請求項6に記載の試験測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信システム用の試験測定システムに関し、より詳細には、通常動作中のこれらのシステムの校正のためのシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
WiFi/5G/6G/IoTベースのワイヤレス通信は、21世紀の世界市場の普遍的且つ重要な構成要素になろうとしており、これらのシステムは、企業、商業団体、及び国がいつどんな時でもユーザに情報を提供するように金融、物流、及び政府の通信のバックボーンとなる。また、これらのワイヤレス・システムは、必要なシステム性能を提供するために最新技術を活用する。これらは、MIMO(Multiple Input/Multiple Output:多入力/多出力)及び直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)技術などの変調技法を使用する。MIMOシステムは単純に、シングル・キャリア(SC)又はマルチ・キャリア(MC)位相振幅変調波形を作成する位相アレイ・アンテナ・システムの膨大なセットであり、これらはすべて、優れたワイヤレス・データ・レートを提供するように設計される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】「メタマテリアル」、公益社団法人 日本化学会、[online]、[2023年7月27日検索]、インターネット<https://www.chemistry.or.jp/division-topics/2015/02/post-36.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらのシステムは、初期アクセス(IA:Initial Access)と呼ばれる動的に変化するRF環境において、目標の性能指標を確実にするシステム・セットアップ、すなわちビーム・アライメントを通じてピーク性能を確保するには、校正を絶え間なく拡充させながら行う必要があるという大きな問題が存在する。
【0006】
具体的には、例えば、64個程度の送信要素及び64個程度の受信要素にわたるような、大規模なMIMOシステムは、典型的な測定スコープ又はスペクトラム分析機器と同様に、定期的なアライメント(整合)及び再校正が必要である。この校正動作には、時間、費用、及び労力がかかる。性能指標の要求が増大するにつれて、必要なアクションを実行するためにシステムをオフライン状態に移行することは不可能になってくる。これは、所有者、システム・インテグレーション・プロバイダ、又はサービス・プロバイダにとって収益の損失を意味する。本願の実施形態は、これらの問題に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の実施形態は、一般に、公称又は通常のワイヤレス通信動作と連携してMIMOビーム・システムのアライメント(整合)を可能にするインライン式(サイレント)校正方法、すなわち、上記システム又はサポート機器を「オフライン」に置く必要なしに、このようなMIMOシステムを「そのままの状態で(in situ)」校正する方法を含む。校正は、限定するものではないが、対応する最適な信号振幅、位相、又は、これら両方の組み合わせを含んでも良い。
【0008】
実施形態によれば、典型的な大気ノイズから検出可能な、「カラード・ノイズ(colored noise:有色ノイズ)」としてマスクされる、相関性の高いデータ・シーケンスの送信及び受信が可能になる。「カラード・ノイズ」という用語は、「ホワイト・ノイズ」ではない、あらゆるノイズを意味し、ホワイト・ノイズは、典型的には未加工で検出不可能であり、所望の信号を乱す統計誤差、すなわち、厄介な項(nuisance terms)として組み込まれる。データ・シーケンスがノイズ中を伝播するとき、このノイズが、検出可能であれば、独自のRF受信機での強力なタイミング回復が可能になる。これが、ソース、つまり校正中のユニットにフィードバックを提供する。
【0009】
校正は、通常、送信ビーム幅が正確且つ精密であることを確実にするための位相シフタの修正を含む。受信機は、符号語(code word)とも呼ばれる送信シーケンス、又は、独特の時間特性及び周波数特性を有する既知の特定の送信シーケンスを「知っている」。先験的なアンテナ・ビーム角度に対応する送信コードの自己相関により、受信機が受信したものと受信機が期待したものとの間に「誤差」又は不一致が生じる。次いで、受信機は、送信機にフィードバックを提供することができる。次いで、送信機は、位相シフタ、又はアレイ内のアンテナ素子を調整して、誤差を補正する。
【0010】
ほとんどの手法では、受信信号の精度を高めるために送信機が「ビームを操縦する(steer:ステアリング)」ための調整を行うことになるが、受信機が調整を行う場合もあることに留意すべきである。一実施形態では、受信機は、送信機がアンテナ・アレイ内の位相シフタを調整できるように、位相/タイミング差を送信機に返す。受信機は、イーサネット(登録商標)又は光リンクなどの別のチャンネルで、このフィードバックを送る場合がある。別の実施形態では、受信機は、受信機のアレイに位相差を適用して、受信機のアレイを送信機信号とアライメント(整合)させる。
【0011】
実施形態の一態様は、機械学習システムを使用して、通信システム内の送信機を事前に構成(preconfigure)する。送信された符号語から収集されたデータ、受信された符号語に存在する誤差、及び誤差を補正するために行われた調整を使用して機械学習(ML)システム又はモデルをトレーニングし、システムが動作するエリア内の1平方メートル又は1平方キロメートルごとに事前に構成された設定(preconfigured settings)を提供することができる。送信機が、携帯電話又は自動車内などにあって移動する場合、MLシステムは、送信機の事前設定(preconfiguration)を提供して、ダウンタイム(停止時間)が、ほとんどなしで又は全くなしで、校正プロセスを高速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】送信機の通常動作中に校正及びビーム・ステアリングを実行するように構成された送信機を示す図である。
【
図2】校正のために反射器を使用する伝送システムの一実施形態を示す図である。
【
図3】非見通し線のノード用のチャンネルを構成するために反射器を使用する伝送システムの一実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、そのような方法で動作するように構成された送信機10の一実施形態を示す。機械学習(ML)システム12は、トレーニング済みモデルから構成されても良いし、又は、トレーニング済みモデルから導出され、必要に応じて送信機がアクセスできるように記憶されたデータを有するだけでも良い。通信システム全体が進化及び変化し続けるにつれて、MLシステム12は、再トレーニングを含むアップデートを受信しても良い。システムは、何らかの形式のRFエネルギー変調を使用して、通信信号を送信する。MIMOシステムでは、通常、システムはアンテナのアレイ内の複数のアンテナ・コンポーネントで同じ信号を送信する。同じ信号の複数の複製を送ることにより、誤差を最小化でき、無線伝送の容量を向上させる。MIMOシステムは、より一般的になっている。3GPP(登録商標)、つまり、3rd Generation Partnership Project は、リリース8でMIMOを追加しており、IEEE規格802.11n、LTE(Long Term Evolution)システム、及び第5世代(5G)技術を使用するWi-Fiネットワークはすべて、MIMOをサポートしている。
【0014】
MIMOシステムは、RF周波数範囲内の電磁エネルギーの何らかの形式の変調を使用して通信システムを送信する。通信信号は、直交周波数分割多重(OFDM:Orthogonal Frequency Division Multiplexing)を含む様々なタイプの周波数分割多重(FDM:Frequency Division Multiplexing)変調、時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)、QAM、PSK(Phase Shift Keying)、及びその他多数などの多くの様々なタイプの変調を使用しても良い。限定を意図するものではなく、また推測されるべきものではないが、OFDMは、実施形態の変調プロトコルの良い例を提供する。直交性とは、OFDMを使用して送られた信号が互いに干渉しないことを意味する。
【0015】
上記で説明したように、本願の実施形態の1つの利点は、変調信号内で送られた符号語(code word)又は既知の特定の送信シーケンスの使用にある。送信機又はシステムを校正するのに、送信機又はシステムをオフラインにしなければならない状況を回避するため、変調信号内で符号語を送ることによって、符号語を「知っている」受信機は、符号語を復号して送信中の誤差(error:エラー)を特定することができ、誤差は通常、送信側の位相シフタと受信側の位相シフタとの間の不一致を表す。受信機は、自己相関を実行して伝送チャンネルにアクセスし、受信された符号と期待される符号との間に差異が存在するかどうかを判定する。このような符号ベースのプロトコルの一例は、CDMA(code-division multiple access:符号分割多元接続)である。
【0016】
送信機は、信号の周波数スペクトラム全体に符号データを拡散することによって、変調信号内の符号語を「隠す」ことができる。符号を「知らない」受信機は、このノイズに気付かない。これにより、送信機の校正中にシステムをオンラインに保つことが可能になる。
図1において、送信機は、MLシステムによって提供される予測に基づいてアンテナを構成しても良い。14などの符号語は、16において送信側で逆高速フーリエ変換(IFFT:Inverse Fast Fourier Transform)による変換を受け、この変換は、受信機側のFFTと一致する。次いで、信号は、OFDMなどを用いて多重化され、18などのアンテナ素子を通じて送信される。信号の主要部分は、正確な通信信号を提供するためにシステムが制御するローブ20を形成する。
【0017】
通信システムは、
図2に示すように、互いに遠隔にあるか又は同じ場所に位置する図示されていない送信機及び受信機を含んでも良く、上記の通り、校正を受けることができる。別の実施形態では、システムは、同じ場所に位置する送信機及び受信機を有しても良い。次いで、システムを校正するために、基地局30は、36などの試験測定装置を含んでも良い。試験測定装置は、異なるタイプの装置を組み合わせて1つとして作用する「複合」装置を備えても良く、又は、単一の装置を備えても良い。
図2の実施形態において、装置は、任意波形発生器(AWG:arbitrary waveform generator)及びリアルタイム・スペクトラム・アナライザ(RSA:real-time spectrum analyzer)、又は場合によっては高速オシロスコープを備える。AWGは、送信される信号を基地局に提供し、RSAは、受信された信号を分析する。
【0018】
同じ信号を送信及び受信するために、システムは、32などの1つ以上の反射器を採用する。反射器は、到来信号を反射して戻すときに、その入射信号に対して能動的に動作する能動型反射器、又は反射中に位相シフトなどの限定された動作のみを実行する受動型反射器を含んでも良い。基地局は、上記で説明したように他の受信機及び送信機を備えたシステムにおいて動作しても良いが、この方式では、基地局は、組み込み自己テスト(BIST:built-in self-test)を実行することができる。
【0019】
AWGは、信号を生成し、それを32又は34などの1つ以上の反射器に送信する。反射器は、信号を受信して、その信号を反射して戻しても良く、受信機は、受信信号が送信信号と一致するように任意の必要な調整を検出する。これに代えて、反射器は、受信機が受信信号を送信信号と同じように「認識」できるようにするために、受信する信号を調整しても良い。
図1に示すMLシステム12の誤差(error:エラー)及び調整データをシステムが追跡できるようにするために、反射器によって行われた調整は、結果として生じる信号とともに伝播しても良い。
【0020】
システム動作との干渉を回避するために、BISTプロセスは、上記で説明した技法を使用して、又は、限定するものではないが「フリー期間」、つまり、リソース・スロット(リソースの隙間)中に行われても良い。基地局は、信号を送り、それを受信し、ある時点で、受信機、反射器、又は送信機のいずれかで信号を適切なものに変更する(adapt:順応させる)。次いで、RSAは、結果を分析できる。機械学習は、すべての情報を使用して、校正マトリックス及び事前に符号化されたチャンネル状態情報(CSI:channel state information)マトリックス又はビーム・ステアリング予測マトリックス(BPM:beam-steering prediction matrix)を策定する。これは、学習MLチャンネル・パラメータの共有を通じて、3GPP(登録商標)などの規格で使用されている従来の方法ではなく、より高速なCSI及びBPMの推定につながる。
【0021】
このプロセス及びシステムは、
図3に示すような非見通し線(non-line of sight)ターゲット・アンテナにも適応することができる。例示的な実施形態は、様々な変調フォーマットの送信のためにAWGなどの送信源を使用する閉ループ組み込み自己テスト(BIST:Built-in-self-test)方法を含む。ビーム・フォーミング・アンテナは、ダウンレンジ(射程の範囲内)のターゲットに送信する。ターゲット(反射器)は、42などの再構成可能なインテリジェント・サーフェス(RIS:Reconfigurable Intelligent Surface)メタマテリアルから構成されても良い。反射器は、MIMOアンテナの校正のために送信を反射して基地局40に戻しても良い。上記で説明したように、受信機センサは、RSAを備えても良く、ステーションA及びCに配置される。ステーション又はノードA及びCが選択されているのは、これらが3個(A、B、C)で一組のコンポーネントであるからである。ステーションBは、通信障害、建物、又は障害物44を避けるために使用される非見通し線(NLOS:non-line-of-sight)「スマート・リピータ(smart repeater:賢い中継器)」を表す。
【0022】
最初に、プロセスは、MIMOステーションA及びCに含まれる不確実性を先験的に決定する。K1は、AとBとの間の不確実性、すなわち、H(A|B)H(B)=H(B|A)H(A)を表す。K2は、K1と等しくなく、CとBとの間の不確実性、すなわちH(C|B)H(B)=H(B|C)H(C)を表す。校正シグナリングを使用することによって、基地局からステーションA及びCへのチャンネル性能を決定することができ、次の式が有効になる。不確実性が除去されれば、AとCは独立である。H(A,C)=H(A)H(C)。
【0023】
次いで、機械学習システムは、振幅係数、位相係数、又はその両方の補正を通じて、ステーションBをリモートで最適化するためのモデルをサービスとして構築することができる。A及びCの既知のチャンネルを用いて、システムは、H(B|A,C)がH(B)にどの程度近いかを決定することができるが、既知の信号特性を使用してH(A,B,C)を測定し、次いで、H(A)H(C)で除算する。
【0024】
図3に示すように、これにより、閉ループNLOSビーム・ステアリング・アプリケーションを表すH(B|A,C)の最適化が可能になり、H(A,B,C)に含まれる公称CSI指標をH(A)及びH(C)の知識で拡張して、最適なチャンネル条件を実現するとともに、校正された通信を確実にすることができる。
【0025】
実施形態は、校正可能で、遠隔制御されるノードBを使用して、遠距離のRFチャンネルの状態を、MIMOアンテナ・システムの性能を最適化するように形成しても良い。このノードは、望ましくない位相シフト又は様々な振幅を除去し得る。このデータは、事前符号化方法/スキームにおけるRF通信性能を向上させるために従来のCSI基地局協調スキームに渡されるが、これはRISデバイスに限定されない。実施形態は、スマート・リピータを制御するために使用されても良い。「スマート・リピータ」は、継続的な校正又はビーム・ステアリングの不確実性の継続的な理解を必要とする。ここでの実施形態は、これらのニーズを満たすために使用されても良い。
【0026】
実施形態による校正方法は、以下の点で従来のCSIチャンネル推定方法とは異なる。上記で説明したように、MIMOアンテナ・システムの定期的なオフライン校正のための校正信号を送るために、リソース・スロット(リソースの隙間)又は「フリー期間」が使用される。BISTでは、TX-RIS-RXリソースを利用してRF校正信号を送り、RF校正信号を順応させ、RF校正信号を分析する閉ループ・アルゴリズムが採用される。MLシステムは、事前に符号化されたCSIマトリックスの元(seed)として使用される校正マトリックスを導出し、これは、3GPP(登録商標)規格で詳述されている従来の標準的方法によるより高速なCSI推定をもたらす。この方法は、既存の基地局機器を拡張する補助的な/独立したRFソース/シンク(sink)及びデジタル信号処理コンポーネントを使用する。
【0027】
リモート・ノードを使用する実施形態の場合、プロセスは、従来のUE基地局CSI情報以外の手段を通じてH(A)及びH(C)の先験的な決定を行う。次いで、プロセスは、この情報を最適化アルゴリズムにおいて使用して、遠方のNLOSノード、ステーションBの校正を決定する。
【0028】
要約すると、本開示の実施形態による校正方法は、MIMO校正のタスクを遂行するために非OFDM RFシグナリングを採用することによって、3GPP(登録商標)規格(リリース18以降)に含まれる既存のRFチャンネル状態推定方法を補完及び強化する。
【0029】
本開示技術の態様は、特別に作成されたハードウェア、ファームウェア、デジタル・シグナル・プロセッサ又はプログラムされた命令に従って動作するプロセッサを含む特別にプログラムされた汎用コンピュータ上で動作できる。本願における「コントローラ」又は「プロセッサ」という用語は、マイクロプロセッサ、マイクロコンピュータ、ASIC及び専用ハードウェア・コントローラ等を意図する。本開示技術の態様は、1つ又は複数のコンピュータ(モニタリング・モジュールを含む)その他のデバイスによって実行される、1つ又は複数のプログラム・モジュールなどのコンピュータ利用可能なデータ及びコンピュータ実行可能な命令で実現できる。概して、プログラム・モジュールとしては、ルーチン、プログラム、オブジェクト、コンポーネント、データ構造などを含み、これらは、コンピュータその他のデバイス内のプロセッサによって実行されると、特定のタスクを実行するか、又は、特定の抽象データ形式を実現する。コンピュータ実行可能命令は、ハードディスク、光ディスク、リムーバブル記憶媒体、ソリッド・ステート・メモリ、RAMなどのコンピュータ可読記憶媒体に記憶しても良い。当業者には理解されるように、プログラム・モジュールの機能は、様々な実施例において必要に応じて組み合わせられるか又は分散されても良い。更に、こうした機能は、集積回路、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)などのようなファームウェア又はハードウェア同等物において全体又は一部を具体化できる。特定のデータ構造を使用して、本開示技術の1つ以上の態様をより効果的に実施することができ、そのようなデータ構造は、本願に記載されたコンピュータ実行可能命令及びコンピュータ使用可能データの範囲内と考えられる。
【0030】
開示された態様は、場合によっては、ハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア又はこれらの任意の組み合わせで実現されても良い。開示された態様は、1つ以上のプロセッサによって読み取られ、実行され得る1つ又は複数のコンピュータ可読媒体によって運搬されるか又は記憶される命令として実現されても良い。そのような命令は、コンピュータ・プログラム・プロダクトと呼ぶことができる。本願で説明するコンピュータ可読媒体は、コンピューティング装置によってアクセス可能な任意の媒体を意味する。限定するものではないが、一例としては、コンピュータ可読媒体は、コンピュータ記憶媒体及び通信媒体を含んでいても良い。
【0031】
コンピュータ記憶媒体とは、コンピュータ読み取り可能な情報を記憶するために使用することができる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、コンピュータ記憶媒体としては、ランダム・アクセス・メモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)、電気消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、フラッシュメモリやその他のメモリ技術、コンパクト・ディスク読み出し専用メモリ(CD-ROM)、DVD(Digital Video Disc)やその他の光ディスク記憶装置、磁気カセット、磁気テープ、磁気ディスク記憶装置やその他の磁気記憶装置、及び任意の技術で実装された任意の他の揮発性又は不揮発性の取り外し可能又は取り外し不能の媒体を含んでいても良い。コンピュータ記憶媒体としては、信号そのもの及び信号伝送の一時的な形態は除外される。
【0032】
通信媒体とは、コンピュータ可読情報の通信に利用できる任意の媒体を意味する。限定するものではないが、例としては、通信媒体には、電気、光、無線周波数(RF)、赤外線、音又はその他の形式の信号の通信に適した同軸ケーブル、光ファイバ・ケーブル、空気又は任意の他の媒体を含んでも良い。
【0033】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0034】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
実施例
【0035】
以下では、本願で開示される技術の理解に有益な実施例が提示される。この技術の実施形態は、以下で記述する実施例の1つ以上及び任意の組み合わせを含んでいても良い。
【0036】
実施例1は、通信システムであって、既知の特定の送信シーケンスを使用できる受信機によってのみ検出可能な上記既知の特定の送信シーケンスが特定の周波数スペクトラムに広がって含まれる通信信号を規定のシグナリング・プロトコルを使用して複数のアンテナ素子によってターゲット受信機に送信する処理と、上記既知の特定の送信シーケンスに基づいて、上記通信信号の受信における誤差(error:エラー)を示すフィードバックを上記ターゲット受信機から受信する処理とを行うように夫々構成される1つ以上の送信機と、上記通信信号が送られたときの上記複数のアンテナ素子の構成及び上記フィードバックを使用して、上記通信システムにおける上記送信機の事前構成された設定(preconfigured settings)を予測する機械学習システムとを具える。
【0037】
実施例2は、実施例1の通信システムであり、定義されたシグナリング・プロトコルは、直交周波数分割多重(OFDM)、周波数分割多重(FDM)、時分割多重(TDM)、及び直交振幅変調(QAM)のうちの1つを含む。
【0038】
実施例3は、実施例1又は2のいずれかの通信システムであり、既知の特定の送信シーケンスの帯域幅は、通信信号よりも狭い帯域幅を有する。
【0039】
実施例4は、実施例1から3のいずれかの通信システムであり、既知の特定の送信シーケンスは、符号分割多元接続(CDMA)符号語を含む。
【0040】
実施例5は、実施例1から4のいずれかの通信システムであり、事前構成された設定は、アンテナ素子の位相及び角度並びにチャンネル状態情報のうちの1つ以上を含む。
【0041】
実施例6は、実施例1から5のいずれかの通信システムであり、送信機は、ターゲット受信機から遠隔にあるか又はターゲット受信機と同じ場所に位置するかのいずれか一方である。
【0042】
実施例7は、実施例1から6のいずれかの通信システムであり、通信信号を受信し、通信信号を反射してターゲット受信機に戻すための反射器を更に具える。
【0043】
実施例8は、基地局に位置する試験測定システムであり、所定の変調フォーマットを有する1つ以上の信号を生成するように構成された信号発生器と、1つ以上の信号を反射して基地局に向けて戻すように構成された1つ以上の反射器に1つ以上の信号を送信するように構成された、複数のアンテナ素子からなる送信機と、1つ以上の信号を受信するように構成された受信機と、送信された1つ以上の信号、受信された1つ以上の信号、及び送信された1つ以上の信号に対して行われた任意の調整を使用して校正マトリックスを策定するように構成された機械学習システムとを具える。
【0044】
実施例9は、実施例8の試験測定システムであり、1つ以上の反射器又は1つの受信機のうちのいずれか一方は、調整器として機能し、送信される信号に対して調整を行うように構成される。
【0045】
実施例10は、実施例9の試験測定システムであり、調整器は、送信機から1つ以上の信号を受信し、望ましくない位相シフト及び振幅変動を調整し、基地局にある機械学習システムに調整を返すように構成される。
【0046】
実施例11は、実施例8から10のいずれかの試験測定システムであり、信号発生器は任意波形発生器(AWG)を有し、受信機はリアルタイム・スペクトラム・アナライザ(RTSA)を有する。
【0047】
実施例12は、実施例8から11のいずれかの試験測定システムであり、1つ以上の反射器のうちの少なくとも1つは、再構成可能なインテリジェント・サーフェスRISを具える。
【0048】
実施例13は、実施例12の試験測定システムであり、RISは、静的又は動的のうちの一方である。
【0049】
実施例14は、実施例12の試験測定システムであり、1つ以上の反射器は、それぞれが基地局との見通し線内にある第1の反射器及び第2の反射器を具え、試験測定システムは、基地局と第1の反射器との間の第1のチャンネル及び基地局と第2の反射器との間の第2のチャンネルのチャンネル性能を求める処理と、第1のチャンネル及び第2のチャンネルの性能を使用して、非見通し線ノードと第1の反射器及び第2の反射器との間のチャンネルを校正する処理とを行うように更に構成される。
【0050】
実施例15は、実施例8から14のいずれかの試験測定システムであり、上記信号発生器が、上記既知の特定の送信シーケンスを使用できる受信機によってのみ検出可能となる上記既知の特定の送信シーケンスが特定の周波数スペクトラムに広がって含まれるように上記1つ以上の信号を生成するように更に構成され、上記受信機が、上記既知の特定の送信シーケンスを含む上記信号を受信するように更に構成される。
【0051】
開示された本件の上述のバージョンは、記述したか又は当業者には明らかであろう多くの効果を有する。それでも、開示された装置、システム又は方法のすべてのバージョンにおいて、これらの効果又は特徴のすべてが要求されるわけではない。
【0052】
加えて、本願の説明は、特定の特徴に言及している。本明細書における開示には、これらの特定の特徴の全ての可能な組み合わせが含まれると理解すべきである。ある特定の特徴が特定の態様又は実施例に関連して開示される場合、その特徴は、可能である限り、他の態様及び実施例との関連においても利用できる。
【0053】
また、本願において、2つ以上の定義されたステップ又は工程を有する方法に言及する場合、これら定義されたステップ又は工程は、状況的にそれらの可能性を排除しない限り、任意の順序で又は同時に実行しても良い。
【0054】
説明の都合上、本開示技術の具体的な態様を図示し、説明してきたが、本発明の要旨と範囲から離れることなく、種々の変更が可能なことが理解できよう。従って、本開示技術は、添付の請求項以外では、限定されるべきではない。
【符号の説明】
【0055】
10 送信機
12 機械学習(ML)システム
14 符号語(code word)
16 逆高速フーリエ変換ブロック
18 アンテナ素子
20 送信信号のローブ
30 基地局
32 反射器
34 反射器
36 試験測定装置
40 基地局
42 反射器
44 通信障害、建物、又は障害物
A ステーション
B ステーション
C ステーション
【外国語明細書】