(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019126
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】樹脂組成物、樹脂シート、積層体、シート硬化物及び回路基板材料
(51)【国際特許分類】
C08L 53/00 20060101AFI20240201BHJP
C08L 23/02 20060101ALI20240201BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240201BHJP
C08L 23/04 20060101ALI20240201BHJP
C08L 25/04 20060101ALI20240201BHJP
C08F 2/44 20060101ALI20240201BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240201BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08L53/00
C08L23/02
C08L23/00
C08L23/04
C08L25/04
C08F2/44 Z
C08J5/18 CER
C08J5/18 CES
H05K1/03 610H
H05K1/03 630H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023122669
(22)【出願日】2023-07-27
(31)【優先権主張番号】P 2022119507
(32)【優先日】2022-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100142309
【弁理士】
【氏名又は名称】君塚 哲也
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】早川 裕子
(72)【発明者】
【氏名】牛島 麻友香
【テーマコード(参考)】
4F071
4J002
4J011
【Fターム(参考)】
4F071AA12X
4F071AA21
4F071AA22X
4F071AA75
4F071AA78
4F071AC02
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4F071AE02
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4F071AF62
4F071AG05
4F071AG28
4F071AG34
4F071AH13
4F071BA02
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4J002AA011
4J002AA012
4J002AC031
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4J011PA65
4J011PA79
4J011PB30
4J011QA03
4J011QA11
4J011QA19
4J011QA21
4J011QA27
4J011QA46
(57)【要約】
【課題】低誘電特性及び耐熱性を有し、かつ線熱膨張係数の低いシート硬化物及び回路基板材料、並びに、低誘電特性及び耐熱性を有し、かつ線熱膨張係数の低い前記シート硬化物及び前記回路基板材料を製造可能な樹脂組成物、樹脂シート及び積層体を提供する。
【解決手段】本発明の一態様に係る樹脂組成物は、結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びエチレン系重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)と、ビニル系架橋剤(C)と、を含有する。本発明の別の一態様に係る樹脂シートは、前記樹脂組成物からなる。また、本発明の別の一態様に係る積層体は、前記樹脂シートの一方又は両方の面に、離型フィルムを備える。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びエチレン系重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)と、ビニル系架橋剤(C)と、を含有する、樹脂組成物。
【請求項2】
前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)が、ポリオレフィンの側鎖にシクロヘキサンを有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)が、少なくとも1種の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び少なくとも1種の水素化共役ジエンポリマーブロック単位を含む樹脂共重合体、又はこの樹脂共重合体の不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方による変性体である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位の水素化レベルが90%以上である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記水素化共役ジエンポリマーブロック単位の水素化レベルが95%以上である、請求項3に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記熱可塑性樹脂(B)として、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が10質量%以上70質量%以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
前記ビニル系架橋剤(C)として、単官能脂肪族(メタ)アクリレート化合物、2官能芳香族ビニル化合物及びトリアルケニルイソシアヌレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
前記ビニル系架橋剤(C)が、分子内に極性官能基を有しない、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項10】
前記ビニル系架橋剤(C)の極性官能基当量(ビニル系架橋剤(C)の分子量/極性官能基の分子量)が2以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の樹脂組成物からなる、樹脂シート。
【請求項12】
請求項11に記載の樹脂シートの一方又は両方の面に、離型フィルムを備える、積層体。
【請求項13】
請求項11に記載の樹脂シートを硬化させてなる、シート硬化物。
【請求項14】
請求項11に記載の樹脂シートからなる絶縁層と、導体とを積層してなる、回路基板材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂シート、積層体、シート硬化物及び回路基板材料に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子機器の高性能・高機能化に伴い、通信速度及び情報伝達量の向上のために、通信周波数の高周波化が進んでいる。
回路基板にデジタル信号を流すと、送信されたデジタル信号の一部が回路基板中で熱変換され、伝送損失が発生する。伝送損失の量は比誘電率及び誘電正接の積で表されるため、低損失通信を実現するには、比誘電率及び誘電正接の低い材料、すなわち低誘電特性を有する部材が必要となる。特に高周波領域における伝送信号はより熱に変換されやすい特徴があるため、より低誘電特性を有する材料が求められている。
一方、電気・電子機器内の回路の高集積化に伴い、電気・電子機器内部の発熱量も大きくなっているため、回路基板材料は耐熱性を有することも求められる。
【0003】
低誘電特性を有する材料としては、例えば、エポキシ化合物とシアネート化合物とが配合されたポリフェニレンエーテル樹脂組成物(例えば、特許文献1参照)や、マレイミド樹脂(例えば、特許文献2参照)等の熱硬化系樹脂、環状オレフィン系樹脂組成物(例えば、特許文献3参照)等の熱可塑性樹脂が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010-059363号公報
【特許文献2】特開2012-255059号公報
【特許文献3】国際公開第2006/095511号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の熱硬化系樹脂は、熱可塑性樹脂に比べて比誘電率及び誘電正接が高い傾向があり、低誘電特性とするためには無機粒子等を大量に添加する必要があった。
一方、従来の熱可塑性樹脂は、低誘電特性ではあるものの、耐熱性が良好でない場合があった。
また、上記材料を回路基板材料に用いる場合、銅箔等の導体と積層して用いるため、導体との剥離や変形が生じないように、線熱膨張係数を低減することが求められる。
【0006】
そこで、本発明は、低誘電特性及び耐熱性を有し、かつ線熱膨張係数の低いシート硬化物及び回路基板材料、並びに、低誘電特性及び耐熱性を有し、かつ線熱膨張係数の低い前記シート硬化物及び前記回路基板材料を製造可能な樹脂組成物、樹脂シート及び積層体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の環状ポリオレフィン樹脂共重合体と、熱可塑性樹脂に特定の架橋剤を添加することにより、上記課題を解決し得ることを見出した。
【0008】
本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びエチレン系重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)と、ビニル系架橋剤(C)と、を含有する、樹脂組成物。
[2]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)が、ポリオレフィンの側鎖にシクロヘキサンを有する、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)が、少なくとも1種の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び少なくとも1種の水素化共役ジエンポリマーブロック単位を含む樹脂共重合体、又はこの樹脂共重合体の不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方による変性体である、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位の水素化レベルが90%以上である、上記[3]に記載の樹脂組成物。
[5]前記水素化共役ジエンポリマーブロック単位の水素化レベルが95%以上である、上記[3]又は[4]に記載の樹脂組成物。
[6]前記熱可塑性樹脂(B)として、スチレン系熱可塑性エラストマーを含む、上記[1]~[5]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[7]前記スチレン系熱可塑性エラストマーのスチレン含有量が10質量%以上70質量%以下である、上記[1]~[6]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[8]前記ビニル系架橋剤(C)として、単官能脂肪族(メタ)アクリレート化合物、2官能芳香族ビニル化合物及びトリアルケニルイソシアヌレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、上記[1]~[7]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[9]前記ビニル系架橋剤(C)が、分子内に極性官能基を有しない、上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[10]前記ビニル系架橋剤(C)の極性官能基当量(ビニル系架橋剤(C)の分子量/極性官能基の分子量)が2以上である、上記[1]~[9]のいずれか1つに記載の樹脂組成物。
[11]上記[1]~[10]のいずれか1つに記載の樹脂組成物からなる、樹脂シート。
[12]上記[11]に記載の樹脂シートの一方又は両方の面に、離型フィルムを備える、積層体。
[13]上記[11]に記載の樹脂シートを硬化させてなる、シート硬化物。
[14]上記[11]に記載の樹脂シートからなる絶縁層と、導体とを積層してなる、回路基板材料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、低誘電特性及び耐熱性を有し、かつ線熱膨張係数の低いシート硬化物及び回路基板材料、並びに、低誘電特性及び耐熱性を有し、かつ線熱膨張係数の低い前記シート硬化物及び前記回路基板材料を製造可能な樹脂組成物、樹脂シート及び積層体を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に本発明について詳細に説明するが、以下の説明は、本発明の実施の形態の一例であり、本発明はその要旨を超えない限り、以下の記載内容に限定されるものではない。
以下において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0011】
<樹脂組成物>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物(以下、「本組成物」ともいう。)は、結晶融解ピーク温度が100℃未満である環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びエチレン系重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種の熱可塑性樹脂(B)と、ビニル系架橋剤(C)とを含有する。
本組成物からなるシート硬化物及び回路基板材料の耐熱性が良好となる理由は定かではないが、本組成物を硬化させると、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)及び熱可塑性樹脂(B)と絡み合ったビニル系架橋剤(C)によって疑似的に架橋密度が高くなり、弾性率が向上するからであると考えられる。
また、本組成物からなるシート硬化物及び回路基板材料の線熱膨張係数が低くなる理由は定かではないが、硬化物中に脂環式構造を多く含むほど線熱膨張係数が低くなる傾向がある。そのため、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)を含有することで、熱可塑性樹脂(B)を単独で使用するよりも相対的に脂環式構造が増加するからであると考えられる。
以下、本組成物の各成分について説明する。
【0012】
1.環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)
本組成物の環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)の含有量は、シート硬化物の線熱膨張係数を低くする観点から、本組成物の樹脂成分のうち10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましく、20質量%以上がさらに好ましい。一方、シート硬化物の成形性の観点からは、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)の含有量は、90質量%以下が好ましく、80質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
なお、本発明において「樹脂成分」とは、本組成物に含まれる環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)及び必要に応じて添加されるその他の樹脂をいう。
【0013】
環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)における「環状」とは、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)が有する脂環式構造、具体的には、ポリオレフィンの側鎖に有する脂環式構造のことをいう。当該脂環式構造の好適な例としては、シクロアルカン、ビシクロアルカン、多環式化合物等が挙げられる。これらのなかでも、シクロアルカンが好ましく、シクロヘキサンがより好ましい。
また、当該脂環式構造は、後述する水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位が有する、芳香族環の水素化により生じる脂環式構造であることがより好ましい。
【0014】
環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)は、結晶融解ピーク温度が100℃未満である。
環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)の結晶融解ピーク温度は、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、65℃以上がさらに好ましい。また、結晶融解ピーク温度は、90℃以下が好ましく、85℃以下がより好ましい。
本発明における結晶融解ピーク温度とは、加熱速度10℃/分で測定される示差走査熱量測定(DSC)において、結晶融解ピークが検出されたときの温度である。本組成物の環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)は、結晶融解ピークが100℃未満に存在するものであればよく、例えば、100℃未満と、100℃以上の2点に結晶融解ピークが存在する場合も含まれる。
【0015】
なお、公知の環状ポリオレフィンとしては、単環式ノルボルネン系単量体又は多環式ノルボルネン系単量体由来の繰返し単位を有する開環重合体の水素添加物(例えば、国際公開第2012/046443号、国際公開第2012/033076等)が挙げられる。この環状ポリオレフィンは、重合体の主鎖に脂環式構造を有するものであり、結晶融解ピーク温度が100℃未満に存在しないか、あるいは非晶性である。
一方、本組成物の環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)は、ポリオレフィンの側鎖に脂環式構造を有するために、結晶融解ピーク温度が100℃未満に存在する。
【0016】
環状ポリオレフィン樹脂共重合体の誘電正接(A)は、10GHzにおいて0.005未満であることが好ましく、0.001未満であることがより好ましい。誘電正接が小さければ小さいほど誘電損失も小さくなるため、回路基板材料とした際の電気信号の伝達効率、高速化が得られるために好ましい。誘電正接の下限は特に限定されず、0以上であればよい。
【0017】
上記誘電正接は、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)を厚み300μmのシート状に成形して試験片とし、粘弾性スペクトロメーターで動的粘弾性を測定することによって求めた値である。測定条件は、実施例に記載の条件と同じであってよい。
【0018】
環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)のメルトフローレート(MFR)は特に限定されないが、通常、0.1g/10分以上であり、成形方法や成形体の外観の観点から、好ましくは0.5g/10分以上である。また、前記メルトフローレート(MFR)は、通常、200g/10分以下であり、材料強度の観点から、好ましくは100g/10分以下、より好ましくは90.0g/10分以下である。前記MFRを上記範囲内にすることによって、後述する熱可塑性樹脂との相溶性が良好となる。
MFRは、ISO R1133に従って、測定温度230℃、測定荷重2.16kgの条件で測定することで求められる。
【0019】
<環状ポリオレフィン(a)>
本組成物の環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)としては、低誘電特性の観点から、少なくとも1種の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び少なくとも1種の水素化共役ジエンポリマーブロック単位を含む環状ポリオレフィン(以下、「環状ポリオレフィン(a)」ともいう)、又は当該環状ポリオレフィン(a)の不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方による変性体(以下、「変性環状オレフィン(a’)」ともいう)が好ましい。
【0020】
本発明において「ブロック」とは、コポリマーの構造的又は組成的に異なった重合セグメントからのミクロ相分離を表すコポリマーの重合セグメントをいう。ミクロ相分離は、ブロックコポリマー中で重合セグメントが混じり合わないことにより生ずる。
なお、ミクロ相分離とブロックコポリマーは、PHYSICS TODAYの1999年2月号32-38頁の“Block Copolymers-Designer Soft Materials”で広範に議論されている。
【0021】
環状ポリオレフィン(a)は、水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(以下「ブロックA」ともいう)及び水素化共役ジエンポリマーブロック単位(以下「ブロックB」ともいう)からなるジブロックコポリマー、ブロックA及びブロックBの少なくとも一方を2以上含むトリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、ペンタブロックコポリマー等が挙げられる。
環状ポリオレフィン(a)は、ブロックAを少なくとも2個含むことが好ましく、例えば、A-B-A型、A-B-A-B型、A-B-A-B-A型などが好適に挙げられる。
【0022】
また、環状ポリオレフィン(a)は、それぞれの末端に芳香族ビニルポリマーからなるセグメントを含むことが好ましい。このため、本組成物の水素化ブロックコポリマーは、少なくとも2個の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(ブロックA)を有し、この2個の水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(ブロックA)の間には、少なくとも1つの水素化共役ジエンポリマーブロック単位(ブロックB)を有することが好ましい。これらの観点から、環状ポリオレフィン(a)は、A-B-A型又はA-B-A-B-A型がより好ましい。
【0023】
環状ポリオレフィン(a)における水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(ブロックA)の含有率は、好ましくは30~99モル%、より好ましくは40~90モル%である。なかでも、さらに好ましくは50モル%以上、よりさらに好ましくは60モル%以上である。
水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位(ブロックA)の比率が上記下限以上であれば剛性が低下することがなく、耐熱性や線熱膨張率も良好となる。一方、前記の比率が上記上限以下であれば柔軟性が良好となる。
【0024】
また、環状ポリオレフィン(a)における水素化共役ジエンポリマーブロック単位(ブロックB)の含有率は、好ましくは1~70モル%、より好ましくは10~60モル%である。なかでも、さらに好ましくは50モル%以下、よりさらに好ましくは40モル%以下である。
水素化共役ジエンポリマーブロック単位(ブロックB)の比率が上記下限以上であれば柔軟性が良好となる。一方、前記の比率が上記上限以下であれば剛性が低下することがなく、耐熱性や線熱膨張率も良好となる。
【0025】
環状ポリオレフィン(a)を構成する水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位及び水素化共役ジエンポリマーブロック単位はそれぞれ、後に詳述する芳香族ビニルモノマー及び1,3-ブタジエンなどの共役ジエンモノマーから構成されるポリマーブロックを水素化することで得ることができる。
また、環状ポリオレフィン(a)は官能基のないブロックコポリマーであることが好ましい。「官能基のない」とは、ブロックコポリマー中に如何なる官能基も存在しない、即ち、炭素原子と水素原子以外の原子を含む基が存在しないことを意味する。
【0026】
以下、水素化する前の芳香族ビニルポリマーブロック単位及び共役ジエンポリマーブロック単位を形成するためのモノマーについて説明する。
【0027】
(芳香族ビニルモノマー)
水素化前の芳香族ビニルポリマーブロック単位の原料となる芳香族ビニルモノマーは、下記一般式(1)で示されるモノマーである。
【0028】
【0029】
上記一般式(1)において、Rは水素又はアルキル基であり、Arはフェニル基、ハロフェニル基、アルキルフェニル基、アルキルハロフェニル基、ナフチル基、ピリジニル基又はアントラセニル基である。
【0030】
上記Rがアルキル基である場合、炭素数は好ましくは1~6であり、上記アルキル基はハロ基、ニトロ基、アミノ基、ヒドロキシ基、シアノ基、カルボニル基及びカルボキシル基のような官能基で単置換若しくは多重置換されていてもよい。
また、上記Arは、フェニル基又はアルキルフェニル基が好ましく、フェニル基がより好ましい。
【0031】
芳香族ビニルモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン(全ての異性体を含み、特にp-ビニルトルエンが好ましい)、エチルスチレン、プロピルスチレン、ブチルスチレン、ビニルビフェニル、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン(全ての異性体を含む)、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。
【0032】
(共役ジエンモノマー)
水素化前の共役ジエンポリマーブロック単位の原料となる共役ジエンモノマーは、2個の共役二重結合を持つモノマーであればよく、特に限定されるものではない。
共役ジエンモノマーとしては、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン(イソプレン)、2-メチル-1,3-ペンタジエンとその類似化合物、及びこれらの混合物が挙げられる。これらのなかでも、1,3-ブタジエンが好ましい。
【0033】
なお、共役ジエンモノマーとして1,3-ブタジエンを用いる場合、その重合体であるポリブタジエンは、1,4-結合単位([-CH2-CH=CH-CH2-])と1,2-結合単位([-CH2-CH(CH=CH2)-])とが存在するため、水素化により、前者はポリエチレンの繰り返し単位と同様の構造(エチレン構造)を与え、後者は1-ブテンを重合した際の繰り返し単位と同様の構造(1-ブテン構造)を与える。したがって、本組成物における水素化共役ジエンポリマーブロックは、エチレン構造及び1-ブテン構造の少なくともいずれか一方を含むことが好ましい。
また、共役ジエンモノマーとしてイソプレンを用いる場合、その重合体であるポリイソプレンは、1,4-結合単位([-CH2-C(CH3)=CH-CH2-])、3,4-結合単位([-CH2-CH(C(CH3)=CH2)-])及び1,2-結合単位([-CH2-C(CH3)(CH=CH2)-])が存在し、水素化により得られる3種の繰り返し単位の少なくともいずれかを含むものとなる。
【0034】
(ブロック構造)
環状ポリオレフィン(a)は、SBS、SBSB、SBSBS、SBSBSB、SIS、SISIS、及びSISBS(ここで、Sはポリスチレン、Bはポリブタジエン、Iはポリイソプレンを意味する。)のようなトリブロックコポリマー、テトラブロックコポリマー、ペンタブロックコポリマー等のマルチブロックコポリマーの水素化によって製造されることが好ましい。ブロックは、線状ブロックでもよく、分岐していてもよい。分岐している場合の重合連鎖は、コポリマーの骨格に沿ってどの位置に結合していてもよい。また、ブロックは、線状ブロックのほかに、テーパーブロック、又はスターブロックであってもよい。
【0035】
環状ポリオレフィン(a)を構成する水素化前のブロックコポリマーは、芳香族ビニルポリマーブロック単位及び共役ジエンポリマーブロック単位以外の1又は複数の追加ブロック単位を含んでいてもよい。例えば、トリブロックコポリマーの場合には、これらの追加ブロック単位はトリブロックポリマー骨格のどの位置に結合していてもよい。
【0036】
前記水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位の好ましい例としては、水素化ポリスチレンを挙げることができ、前記水素化共役ジエンポリマーブロック単位の好ましい例としては、水素化ポリブタジエン又は水素化ポリイソプレンを挙げることができ、水素化ポリブタジエンがより好ましい。
そして、環状ポリオレフィン(a)の好ましい一態様としては、スチレンとブタジエンの水素化トリブロック又は水素化ペンタブロックコポリマーを挙げることができ、他の如何なる官能基又は構造的変性剤も含まないことが好ましい。
【0037】
(水素化レベル)
環状ポリオレフィン(a)は、ブタジエンなどの共役ジエンに由来する二重結合に加えて、スチレンなどに由来する芳香族環も水素化されるものであり、実質的に完全に水素化されている。具体的には、以下に示す水素化レベルを達成しているものをいう。
前記水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位の水素化レベルは、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、特に好ましくは99.5%以上である。
前記水素化共役ジエンポリマーブロック単位の水素化レベルは、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、更に好ましくは99.5%以上である。
このように高レベルの水素化をすることによって、誘電損失を低減することができ、剛性と耐熱性も良好となる。
なお、水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位の水素化レベルとは、芳香族ビニルポリマーブロック単位が水素化によって飽和される割合を示す。水素化共役ジエンポリマーブロック単位の水素化レベルとは、共役ジエンポリマーブロック単位が水素化によって飽和される割合を示す。
なお、各ブロック単位の水素化レベルは、プロトンNMRを用いて決定される。
【0038】
環状ポリオレフィン(a)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本組成物における環状ポリオレフィン(a)としては、市販のものを用いることができ、具体的には三菱ケミカル社製:テファブロック(商標登録)が挙げられる。
【0039】
<変性環状ポリオレフィン(a’)>
本組成物の環状ポリオレフィン樹脂共重合体として、変性された変性環状ポリオレフィン(a’)を用いてもよい。変性環状ポリオレフィン(a’)は、前述した環状ポリオレフィン(a)の、不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方による変性体である。
環状ポリオレフィン(a)を変性することによりポリマーの極性が大きくなるので、銅箔等の金属層との接着性向上が期待できる。
【0040】
(環状ポリオレフィン(a)の変性操作)
以下、環状ポリオレフィン(a)の変性操作について説明する。この変性操作は、環状ポリオレフィン(a)に、変性剤として不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方を添加して反応させることによって行われることが好ましい。
【0041】
[変性剤]
前記変性剤としての不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸類等の不飽和カルボン酸、及びこれらの無水物が挙げられる。
また、酸無水物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸類が挙げられる。
なお、ナジック酸類又はその無水物としては、エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸)、メチル-エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸)等及びその無水物が挙げられる。
【0042】
これらの不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方の中では、アクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸が好ましい。
不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
[変性方法]
上記環状ポリオレフィン(a)を上記の不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方で変性することにより、変性環状ポリオレフィン(a’)を得ることができる。変性の方法としては、溶液変性、溶融変性、電子線や電離放射線の照射による固相変性、超臨界流体中での変性等が好適に用いられる。
中でも設備やコスト競争力に優れた溶融変性が好ましく、連続生産性に優れた押出機を用いた溶融混練変性がより好ましい。
このとき用いられる装置としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、ロールミキサーが挙げられる。中でも連続生産性に優れた単軸押出機、二軸押出機が好ましい。
【0044】
一般に、環状ポリオレフィン(a)への不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方による変性は、環状ポリオレフィン(a)を構成するブロック単位の1つである水素化共役ジエンポリマーブロック単位の炭素-水素結合を開裂させて炭素ラジカルを発生させ、これに不飽和官能基が付加するというグラフト反応によって行われる。
炭素ラジカルの発生源としては、上述した電子線や電離放射線の他、高温度とする方法や、有機過酸化物、無機過酸化物、アゾ化合物等のラジカル発生剤を用いることもできる。ラジカル発生剤としては、コストや操作性の観点から有機過酸化物を用いることが好ましい。
【0045】
上記アゾ化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスジメチルバレロニトリル、アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、ジアゾニトロフェノールが挙げられる。
上記無機過酸化物としては、例えば、過酸化水素、過酸化カリウム、過酸化ナトリウム、過酸化カルシウム、過酸化マグネシウム、過酸化バリウムが挙げられる。
【0046】
上記有機過酸化物としては、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル及びケトンパーオキサイド群に含まれるものが挙げられる。
具体的には、キュメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジtert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3等のジアルキルパーオキサイド;ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエイト、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイドが挙げられる。
これらのラジカル発生剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
[溶融混練変性]
一般的に用いられる溶融混練変性の操作は、環状ポリオレフィン(a)、不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方、有機過酸化物を配合し、混練機、押出機に投入し、加熱溶融混練しながら押出を行ない、先端ダイスから出てくる溶融樹脂を水槽等で冷却して変性環状ポリオレフィン(a’)を得るものである。
【0048】
環状ポリオレフィン(a)と不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方との配合比率は、環状ポリオレフィン(a)100質量部に対し、不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方が0.2~5質量部である。
環状ポリオレフィン(a)に対する不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方の配合比率が上記下限以上であれば、本発明の効果を奏するために必要な所定の変性率が得られる。また、前記配合比率が上記上限以下であれば、未反応の不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方が残留することがなく、誘電特性としても好ましい。
【0049】
上記不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方と上記有機過酸化物との配合比率は、上記不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方100質量部に対し、上記有機過酸化物が20~100質量部である。
上記不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方に対する上記有機過酸化物の配合比率が上記下限以上であれば、本発明の効果を奏するために必要な所定の変性率が得られる。また、前記配合比率が上記上限以下であれば、環状ポリオレフィン(a)の劣化が生じず、色相が悪化することがない。
【0050】
また、溶融混練変性条件としては、例えば、単軸押出機、二軸押出機においては150~300℃の温度にて押出すことが好ましい。
【0051】
[変性率]
上記不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方による変性環状ポリオレフィン(a’)の変性率は0.1~2質量%が好ましい。
上記変性率が上記下限以上であれば、ポリマーの極性が大きくなり、銅箔等の金属層との接着性が向上するので好ましい。また、上記変性率が上記上限以下であれば、環状ポリオレフィン(a)の誘電損失の悪化を防止できる。また、臭気の発生や色の悪化も防ぐことができる。
上記変性環状ポリオレフィン(a’)の変性率は、上記変性環状ポリオレフィン(a’)をメチルエステル化処理した後、プロトンNMRにて測定することができる。
【0052】
2.熱可塑性樹脂(B)
本組成物の熱可塑性樹脂(B)は、スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー及びエチレン系重合体からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
【0053】
本組成物の熱可塑性樹脂(B)の含有量は、シート硬化物の成形性の観点から、本組成物の樹脂成分のうち10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。一方、シート硬化物の線熱膨張係数を低くする観点からは、90質量%以下が好ましく、85質量%以下がより好ましく、80質量%以下がさらに好ましい。
【0054】
本組成物における環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)の質量比は、(A)/(B)=10/90~90/10が好ましく、15/85~80/20がより好ましく、20/80~70/30がさらに好ましい。前記質量比が上記範囲内であると、シート硬化物の成形性、誘電特性及び線熱膨張係数のバランスが良好となる。
【0055】
上記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体(SIS)及びこれらを水添したスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン-イソブチレン-スチレン-ブロック共重合体(SIBS)等が挙げられる。
【0056】
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ハードセグメントとしてポリオレフィンを含み、ソフトセグメントとしてゴム成分を含む。
上記オレフィン系熱可塑性エラストマーは、ポリオレフィンとゴム成分との混合物(ポリマーブレンド)であってもよく、ポリオレフィンとゴム成分とを架橋反応させた架橋物であってもよく、ポリオレフィンとゴム成分とを重合させた重合体であってもよい。
上記ポリオレフィンとしては、ポリプロピレン、ポリエチレン等が挙げられる。
上記ゴム成分としては、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、ブチルゴム、プロピレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-イソプレンゴム等のジエン系ゴム、エチレン-プロピレン非共役ジエンゴム、エチレン-ブタジエン共重合体ゴム等が挙げられる。
【0057】
上記エチレン系重合体としては、エチレンの単独重合体、及びエチレンと他の単量体との共重合体が挙げられる。
上記エチレンと他の単量体との共重合体は、エチレンを主成分とすることが好ましい。ここで、「エチレンを主成分とする」とは、共重合体中にエチレン構造単位を50mol%以上、好ましくは60mol%以上含有することをいう。
また、エチレンと共重合する他の単量体は、エチレンと共重合可能な単量体であれば特に限定されない。
上記エチレン系重合体の好ましい例としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン系触媒を用い重合して得られたポリエチレン等が挙げられる。その中でも特に、柔軟性が高い点から、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いることが好ましい。
【0058】
上記の中でも、低誘電特性及び加工しやすさの観点から、スチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましい。
また、上記で例示した熱可塑性樹脂(B)の中でも、特に熱可塑性樹脂(B)自体がビニル系架橋剤(C)と反応しにくいような組み合わせを選択した場合には、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、ビニル系架橋剤(C)とが相互侵入高分子網目構造(以下、「セミIPN構造」ともいう。)を形成し、低誘電特性と耐熱性をより良好にできると考えられる。セミIPN構造は、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、ビニル系架橋剤(C)とが化学的結合を形成するのではなく、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、ビニル系架橋剤(C)の分子鎖同士が互いに部分的かつ物理的に絡み合った構造である。このセミIPN構造を形成することで、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)及び熱可塑性樹脂(B)の低誘電特性を維持しながら、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)又は熱可塑性樹脂(B)単体に比べて疑似的に架橋密度が高くなるため、弾性率が向上して耐熱性が良好となると考えられる。この観点からは、熱可塑性樹脂(B)としてスチレン系熱可塑性エラストマーが好ましく、スチレン-イソブチレン-スチレン-ブロック共重合体(SIBS)又はスチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)がより好ましく、スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS)がさらに好ましい。
【0059】
熱可塑性樹脂(B)としてスチレン系熱可塑性エラストマーを用いる場合、スチレン含有量は、10質量%以上が好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、スチレン含有量は、70質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましく、40質量%以下がよりさらに好ましい。
スチレン含有量が上記範囲内であると、誘電正接が低く、弾性率も適度な値となるため、低誘電特性と耐熱性を両立でき、ハンドリング性も良好となる。
【0060】
熱可塑性樹脂(B)は、公知の方法により変性されていてもよい。変性体としては、例えば、上記例示した熱可塑性樹脂(B)と不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方との反応物が挙げられる。
熱可塑性樹脂(B)を変性することによりポリマーの極性が大きくなるので、銅箔等の金属層との接着性向上が期待できる。
【0061】
上記不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、α-エチルアクリル酸、マレイン酸、フマール酸、テトラヒドロフタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ナジック酸類等の不飽和カルボン酸、及びこれらの無水物が挙げられる。
また、酸無水物としては、具体的には、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、無水ナジック酸類が挙げられる。
なお、ナジック酸類又はその無水物としては、エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2,3-ジカルボン酸(ナジック酸)、メチル-エンドシス-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボン酸(メチルナジック酸)等及びその無水物が挙げられる。
【0062】
これらの不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方の中では、アクリル酸、マレイン酸、ナジック酸、無水マレイン酸、無水ナジック酸が好ましい。
不飽和カルボン酸及びその無水物の少なくとも一方は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0063】
熱可塑性樹脂(B)の24℃における貯蔵弾性率は、0.1MPa以上が好ましく、1MPa以上がより好ましい。また、前記貯蔵弾性率は、2000MPa未満が好ましく、1500MPa未満がより好ましく、1000MPa未満がさらに好ましく、500MPa未満がよりさらに好ましく、300MPa未満がいっそう好ましく、100MPa未満がよりいっそう好ましく、50MPa未満がさらにいっそう好ましい。
貯蔵弾性率を上記の上限値未満とすることで、得られるシート硬化物の柔軟性が良好となる。また、貯蔵弾性率を上記の下限値以上とすることで、得られるシート硬化物の耐熱性やハンドリング性が良好となる。
【0064】
上記貯蔵弾性率は、熱可塑性樹脂(B)を厚み300μmのシート状に成形して試験片とし、粘弾性スペクトロメーターで動的粘弾性を測定することによって求めた値である。測定条件は、実施例に記載の条件と同じであってよい。
【0065】
熱可塑性樹脂(B)の密度は0.98g/cm3以下が好ましく、0.95g/cm3以下がより好ましく、0.91g/cm3以下がさらに好ましい。一方、前記密度の下限は特に限定されないが、0.80g/cm3以上が好ましい。
密度が上記の値以下であることで、得られるシート硬化物の柔軟性が良好となる。
【0066】
上記密度は、熱可塑性樹脂(B)を厚み300μmのシート状に成形して試験片とし、ASTM D792に準拠して測定することができる。
【0067】
熱可塑性樹脂(B)の誘電正接は10GHzにおいて0.003未満が好ましく、0.002未満がより好ましく、0.001未満がさらに好ましい。一方、前記誘電正接の下限は特に限定されず、0以上であればよい。
誘電正接が小さければ小さいほど誘電損失が小さいので、本組成物を回路基板材料とした際の電気信号の伝達効率、高速化が得られる。
【0068】
上記誘電正接は、熱可塑性樹脂(B)を厚み300μmのシート状に成形して試験片とし、JIS C2565:1992に準拠して温度23℃、周波数10GHzの条件で測定して求めた値である。
【0069】
3.ビニル系架橋剤(C)
本組成物におけるビニル系架橋剤(C)の含有量は、本組成物の樹脂成分100質量部に対して1質量部以上30質量部未満であり、中でも3質量部以上25質量部以下が好ましく、5質量部以上20質量部以下がより好ましく、10質量部以上18質量部以下がさらに好ましい。
ビニル系架橋剤(C)の含有量が上記範囲内であると、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)及び熱可塑性樹脂(B)との相容性が良好となり、疑似的に架橋密度を高くしやすくなるため、得られるシート硬化物の耐熱性が良好となる。
本組成物のビニル系架橋剤(C)は、質量平均分子量(Mw)が100以上4000以下であることが好ましい。
上記質量平均分子量(Mw)は、120以上が好ましい。また、上記質量平均分子量(Mw)は、3000以下が好ましく、2000以下がより好ましく、1000以下がさらに好ましく、800以下がよりさらに好ましく、600以下がいっそう好ましい。
ビニル系架橋剤(C)の質量平均分子量(Mw)が上記範囲内であることで、硬化時に環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、ビニル系架橋剤(C)の分子鎖同士が絡み合いやすくなり、疑似的に架橋密度を高くしやすくなるため、得られるシート硬化物の耐熱性が良好となる。
なお、架橋剤が一部架橋したものや重合物でない場合、「ビニル系架橋剤(C)の質量平均分子量(Mw)」とはビニル系架橋剤(C)として用いる化合物の分子量を意味する。
【0070】
ビニル系架橋剤(C)は、分子内にビニル基を有する架橋剤であり、分子内にアクリル基又はメタクリル基を有する架橋剤も含む。ビニル系架橋剤(C)は、単官能、2官能、及び3官能以上の多官能のいずれであってもよい。
【0071】
単官能のビニル系架橋剤(C)としては、例えば、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ステアリルアクリレート、及びイソステアリルアクリレート等の単官能脂肪族(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0072】
2官能のビニル系架橋剤(C)としては、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びジビニルビフェニル等の2官能芳香族ビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート等の2官能脂肪族(メタ)アクリレート化合物;シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化プロポキシ化水添ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等の2官能脂環式(メタ)アクリレート化合物;エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールAFジ(メタ)アクリレート、エトキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート等の2官能芳香族(メタ)アクリレート化合物;エトキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート等の2官能複素環式(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0073】
3官能以上のビニル系架橋剤(C)としては、トリアリルシアヌレート、及びトリアリルイソシアヌレート等のトリアルケニルイソシアヌレート化合物;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、及びジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多官能脂肪族(メタ)アクリレート化合物;エトキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、及びエトキシ化プロポキシ化イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート等の多官能複素環式(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0074】
上記の中でも、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)及び熱可塑性樹脂(B)との相容性の観点から、単官能脂肪族(メタ)アクリレート化合物、2官能芳香族ビニル化合物、及びトリアルケニルイソシアヌレート化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、低誘電特性の観点から、トリアルケニルイソシアヌレート化合物がより好ましい。
【0075】
単官能脂肪族(メタ)アクリレート化合物としては、炭素数が8以上25以下のアルキル基を有するものが好ましい。当該炭素数は、10以上がより好ましく、12以上がさらに好ましく、15以上がよりさらに好ましい。また、当該炭素数は、20以下がより好ましい。具体的には、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート及びイソステアリルアクリレートからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、イソステアリルアクリレートがより好ましい。アルキル基の炭素数が上記範囲内であると、硬化時に環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、ビニル系架橋剤(C)の相容性が良好となり、分子鎖同士が絡み合いやすくなり、疑似的に架橋密度を高くしやすくなるため、得られるシート硬化物の耐熱性が良好となる。
2官能芳香族ビニル化合物としては、ジビニルベンゼンが好ましい。
トリアルケニルイソシアヌレート化合物としては、トリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0076】
ビニル系架橋剤(C)は、分子内に極性官能基を有しないか、あるいは極性官能基数が少ないことが好ましい。ビニル系架橋剤(C)が環状構造を有する場合は、置換基に極性官能基を有しないか、あるいは極性官能基が少ないことが好ましい。
極性官能基が少ないと、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)及び熱可塑性樹脂(B)との相容性が良好となり、得られるシート硬化物の誘電正接も低くなる。
極性官能基とは、陰性原子(例えば、窒素、酸素、塩素、フッ素等)を有し、正味の双極子を有する官能基を意味する。例えば、エステル基、カルボニル基、カルボキシル基、ヒドロキシ基、アミド基、アミノ基等が挙げられる。
ビニル系架橋剤(C)がエステル基を有する場合、ビニル系架橋剤(C)の極性官能基当量(ビニル系架橋剤(C)の分子量/極性官能基の分子量(極性官能基が複数ある場合は、その合計量))は2以上が好ましく、3以上がより好ましく、4以上がさらに好ましく、5以上がよりさらに好ましく、6以上がいっそう好ましい。
【0077】
4.有機過酸化物(D)
本組成物は、硬化反応の促進を目的として、有機過酸化物(D)を含有してもよい。
上記有機過酸化物としては、例えば、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル及びケトンパーオキサイド群に含まれるものが挙げられる。
具体的には、キュメンハイドロパーオキサイド、tert-ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジtert-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5-ビス(tert-ブチルパーオキシ)-2,5-ジメチル-3-ヘキシン等のジアルキルパーオキサイド;ラウリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;tert-ブチルパーオキシアセテート、tert-ブチルパーオキシベンゾエイト、tert-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等のパーオキシエステル;シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイドが挙げられる。
【0078】
本組成物における有機過酸化物(D)の含有量は、本組成物の樹脂成分100質量部に対して0.01質量部以上5質量部以下が好ましく、0.05質量部以上3質量部以下がより好ましく、0.1質量部以上1質量部以下がさらに好ましい。
有機過酸化物(D)の含有量が上記範囲内であると、硬化反応を促進させつつ、シート硬化物の誘電特性を低く維持することができる。
【0079】
5.溶剤(E)
本組成物から塗布工程を経て樹脂シートを製造する場合には、溶剤(E)を含有してもよい。
溶剤(E)は、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)及びビニル系架橋剤(C)が均一に溶解するものであれば特に限定されないが、トルエン、シクロヘキサン、テトラヒドロフラン、キシレン等が挙げられる。
【0080】
溶剤(E)は、樹脂シートの乾燥時に揮発するように、沸点が200℃以下であることが好ましい。
【0081】
本組成物における溶剤(E)の含有量は、製膜性の観点から、本組成物の樹脂成分100質量部に対して100質量部以上500質量部以下が好ましく、200質量部以上400質量部以下がより好ましい。
【0082】
6.その他の成分
本組成物は、上記以外の成分として、熱可塑性樹脂(B)以外の熱可塑性エラストマー、ビニル系架橋剤(C)以外の架橋剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、酸化防止剤、カップリング剤、可塑剤、難燃剤、着色剤、分散剤、乳化剤、低弾性化剤、希釈剤、消泡剤、イオントラップ剤、増粘剤、レベリング剤、無機粒子、有機粒子等を含有してもよい。
【0083】
ビニル系架橋剤(C)以外の架橋剤としては、例えば、ビスマレイミド化合物、エポキシ化合物等が挙げられる。
【0084】
無機粒子としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、硫酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、ヒドロキシアパタイト、シリカ、マグネシウムシリケート、マイカ、タルク、カオリン、クレー、ガラス粉、アスベスト粉、ゼオライト、珪酸白土等が挙げられる。
有機粒子としては、例えば、(メタ)アクリレート系樹脂粒子、スチレン系樹脂粒子、シリコーン系樹脂粒子、ナイロン系樹脂粒子、ポリエチレン系樹脂粒子、ベンゾグアナミン系樹脂粒子、ウレタン系樹脂粒子等が挙げられる。
【0085】
無機粒子又は有機粒子を含有する場合、その含有量は、本組成物の樹脂成分100質量部に対して1質量部以上250質量部が好ましく、10質量部以上200質量部以下がより好ましく、20質量部以上150質量部以下がさらに好ましい。無機粒子又は有機粒子の含有量が上記下限値以上であると、シート硬化物の誘電特性をさらに低くできるうえに、シート硬化物の線熱膨張係数をさらに低減できる。一方、無機粒子又は有機粒子の含有量が上記上限値以下であると、シート硬化物の成形性が良好となる。
【0086】
<樹脂シート>
本発明の一実施形態に係る樹脂シート(以下、「本樹脂シート」ともいう。)は、本組成物を未硬化の状態でシート状に成形したものである。
【0087】
本樹脂シートの硬化後における厚さは、5~400μmが好ましく、10~350μmがより好ましく、15~300μmがさらに好ましい。
本樹脂シートの硬化後における厚さが上記下限値以上であると、ハンドリング性が良好となる。また、前記厚さが上記上限値以下であると、本樹脂シートを回路基板材料として用いる場合は、基板の段差への追従性が良好となる。
なお、上記厚さは、本樹脂シートを200℃、0.2MPaの条件で30分間熱プレスして得られた硬化物をマイクロメータで測定した値である。
【0088】
本樹脂シートの硬化後における比誘電率は、4以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.0以下がよりさらに好ましい。一方、前記比誘電率の下限は特に限定されず、1以上であればよい。
また、本樹脂シートの硬化後における誘電正接は、0.003以下が好ましく、0.002以下がより好ましく、0.0015以下がよりさらに好ましい。一方、前記誘電正接の下限は特に限定されず、0以上であればよい。
なお、上記比誘電率及び誘電正接は、本樹脂シートを200℃、0.2MPaの条件で30分間熱プレスして得られた硬化物を試験片とし、JIS C2565:1992に準拠して温度23℃、周波数10GHzの条件で測定して求めた値である。
【0089】
本樹脂シートの硬化後における線熱膨張係数は、180ppm/℃以下が好ましく、170ppm/℃以下がより好ましく、160ppm/℃以下がさらに好ましい。さらにその中でも、150ppm/℃以下が好ましく、120ppm/℃以下がさらに好ましく、110ppm/℃以下がよりさらに好ましく、105ppm/℃以下がいっそう好ましい。線熱膨張係数の下限は特に限定されないが、シート硬化物を回路基板材料として用いる場合に、導体との剥離や変形が生じないようにする観点から、10ppm/℃以上が好ましい。
なお、上記線熱膨張係数は、本樹脂シートを200℃、0.2MPaの条件で30分間熱プレスして得られた硬化物を試験片とし、JIS K7197(2012年)に準拠する方法により、熱機械分析によって測定できる。具体的には、熱分析装置「TMA 841」(メトラー・トレド社製)を用いて、サンプル形状は幅5mm×長さ16mmとし、30℃から測定を開始して5℃/分で100℃まで昇温し、一旦、0℃まで冷却した後、150℃まで再昇温した際の再昇温過程での寸法変化を測定し、この結果に基づき、0~120℃における面内方向における熱膨張率の平均値を算出することで求められる。
【0090】
<積層体>
本樹脂シートは、ハンドリング性を良好にするため、一方又は両方の面に離型フィルムを設けて積層体とすることが好ましい。
離型フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル;ポリイミド;ポリカーボネート等を主成分とする樹脂フィルムを用いることができる。これらの表面にシリコーン樹脂離型剤等を塗布して剥離強度を調整してもよい。
離型フィルムの厚さは、1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましく、10~150μmがさらに好ましく、20~120μmがよりさらに好ましい。
離型フィルムは、樹脂シートと接触する面にマット処理、コロナ処理、帯電防止処理を施してあってもよい。
【0091】
上記積層体は、コアに捲回されて捲回体としてもよい。
本発明の一実施形態に係る捲回体において、積層体の長さは、好ましくは10m以上であり、より好ましくは20m以上である。積層体の長さが10m以上であることによって、例えば、本樹脂シートをフレキシブル積層板又はストレッチャブル積層板として用いる場合、電子部材を連続して生産することが可能であり、連続製膜性に優れる。なお、前記長さの上限は特に限定されないが、1000m以下が好ましい。
コアの素材は特に限定されないが、例えば、紙、樹脂含浸紙、アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体(ABS樹脂)、繊維強化プラスチック(FRP)、フェノール樹脂、無機物含有樹脂等が挙げられる。コアには、接着剤を使用してもよい。
【0092】
<樹脂シートの製造方法>
以下、本樹脂シートの製造方法を説明するが、本樹脂シートの製造方法は下記の製造方法に限定されるものではない。
【0093】
[第一の製造方法]
本樹脂シートの第一の製造方法は、樹脂組成物からなる塗工液を調製する塗工液調製工程と、該塗工液をシート状に成形する成形工程と、を含む。
【0094】
(1)塗工液調製工程
塗工液調製工程では、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、ビニル系架橋剤(C)並びに必要に応じて添加される有機過酸化物(D)、溶剤(E)及びその他の成分を攪拌して均一に混合することで、塗工液を得る。
混合には、例えば、ミキサー、ブレンダー、三本ロール混練装置、ボールミル、ニーダー、単軸又は二軸混練機等の一般的な混合・攪拌装置を用いることができ、混合に際しては、必要に応じて加熱してもよい。
【0095】
(2)成形工程
成形工程では、上記塗工液をシート状に成形して、樹脂シートを得る。
上記塗工液をシート状に成形する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、ドクターブレード法、溶剤キャスト法又は押出成膜法等の方法であってよい。好ましい成形方法としては、以下に示す(2-1)塗布工程及び(2-2)乾燥工程を含む方法が挙げられる。
【0096】
(2-1)塗布工程
塗布工程では、離型フィルムの表面に塗工液を塗布して、塗膜を形成する。
塗布方法は、ディップ法、スピンコート法、スプレーコート法、ブレード法等の一般的な方法であってよい。塗布には、スピンコーター、スリットコーター、ダイコーター、ブレードコーター等の塗布装置を用いることができ、これにより、離型フィルム上に所定の膜厚の塗膜を均一に形成することが可能である。
【0097】
(2-2)乾燥工程
乾燥工程では、上記で形成された塗膜から溶剤が除去される。
乾燥温度は特に限定されないが、通常、10~150℃、好ましくは25~120℃、より好ましくは30~110℃である。乾燥温度が上記上限値以下であることで、塗膜中のビニル系架橋剤(C)の架橋反応が抑制される。また、乾燥温度が上記下限値以上であることで、樹脂シートの発泡を抑制し、効果的に溶剤を取り除くことができ、生産性が向上する。
乾燥時間は、塗膜の状態、乾燥環境等によって適宜調整することができる。乾燥時間は、好ましくは1分以上であり、より好ましくは2分以上、さらに好ましくは5分以上、よりさらに好ましくは10分以上、特に好ましくは20分以上、最も好ましくは30分以上である。一方、乾燥時間は、好ましくは4時間以下であり、より好ましくは3時間以下であり、さらに好ましくは2時間以下である。
乾燥時間が上記下限以上であることで、十分に溶剤が除去できる。乾燥時間が上記上限以下であることで、生産性が向上し、製造コストを抑制できる。
樹脂組成物中の溶剤は、ホットプレート、熱風炉、IR加熱炉、真空乾燥機、高周波加熱機など公知の加熱方法で除去することができる。
【0098】
なお、樹脂シート表面の汚染防止や、ハンドリング性の観点から、上記乾燥工程後に、樹脂シートの上に離型フィルムが積層されてもよい。
【0099】
[第二の製造方法]
本樹脂シートの第二の製造方法は、樹脂組成物を離型フィルム上に押し出す製膜工程を含む。
【0100】
製膜工程では、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)、熱可塑性樹脂(B)、ビニル系架橋剤(C)及び必要に応じて添加される有機過酸化物(D)及びその他の成分を単軸押出機又は二軸押出機で混練し、熱可塑性樹脂(B)の融点以上、かつ、ビニル系架橋剤(C)の架橋温度未満の温度条件下で、押出機等を用いて離型フィルム上に押し出して製膜を行う。樹脂組成物の押出法は特に限定されないが、より具体的にはTダイ成形が挙げられる。
【0101】
<シート硬化物>
本発明の一実施形態に係るシート硬化物(以下、「本硬化物」ともいう。)は、上記樹脂シートを硬化したものである。
【0102】
上記樹脂シートの硬化温度は、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)及び熱可塑性樹脂(B)が流動せず、かつ、ビニル系架橋剤(C)の架橋反応が進行する温度であればよい。具体的には、上記樹脂シートの硬化温度は、120~300℃が好ましく、140~250℃がより好ましく、150℃~220℃がさらに好ましい。
また、硬化時間は特に限定されないが、10分~1時間が好ましい。
【0103】
<樹脂組成物、樹脂シート及びシート硬化物の用途>
本発明の一実施形態に係る樹脂組成物、樹脂シート及びシート硬化物の用途としては、例えば、銅箔積層板、ストレッチャブル基板、フレキシブルプリント基板、多層プリント配線基板、キャパシタ等の電気・電子機器用回路基板材料、アンダーフィル材料、3D-LSI用インターチップフィル、絶縁シート、制振材、接着剤、ソルダーレジスト、半導体封止材、穴埋め樹脂、部品埋め込み樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0104】
<回路基板材料>
本発明の一実施形態に係る樹脂シートは、導体と積層することにより回路基板材料とすることができる。
【0105】
導体としては、銅、アルミニウム等の導電性金属や、これらの金属を含む合金等からなる金属箔、あるいはメッキやスパッタリングで形成された金属層を用いることができる。
【0106】
電気・電子機器用の回路基板材料として用いる場合、樹脂シートの厚みは、10μm以上500μm以下が好ましい。また、導体の厚みは、0.2μm以上70μm以下が好ましい。
【0107】
<回路基板材料の製造方法>
本発明における回路基板材料は、例えば、次のような方法で製造できる。
本発明の一実施形態に係る樹脂シートを導体に積層した後、樹脂シートを熱硬化し、絶縁層を形成する。絶縁層の上にさらに導体を積層し、こうした層を必要数重ねる。
樹脂シートの硬化温度は、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)及び熱可塑性樹脂(B)が流動せず、かつ、ビニル系架橋剤(C)の架橋反応が進行する温度であればよい。具体的には、樹脂シートの硬化温度は、120~300℃が好ましく、140~250℃がより好ましく、150℃~220℃がさらに好ましい。
また、硬化時間は特に限定されないが、10分~1時間が好ましい。
樹脂シートと導体との積層は、樹脂シートに導電性金属箔を直接重ね合わせる方法であってもよく、接着剤を用いて樹脂シートと導電性金属箔とを接着する方法であってもよい。また、メッキやスパッタリングにより導電性金属層を形成する方法であってもよく、これらの方法を組み合わせて行ってもよい。
また、絶縁層に穴あけ加工してビアホールを形成する工程や、絶縁層の表面を粗化処理する工程を含んでもよい。
【実施例0108】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は本実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例においては、下記の方法により各種物性を測定した。
【0109】
<原料>
[環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)]
・a-1:環状ポリオレフィン(A)として三菱ケミカル社製「テファブロック(登録商標)CP CP402」を用いた。
・結晶融解ピーク温度:75℃
・誘電正接:0.0008(10GHz)
・MFR(230℃、2.16kg):85g/10分
・水素化芳香族ビニルポリマーブロック単位:含有率67モル%、水素化レベル99%以上の水素化ポリスチレン
・水素化共役ジエンポリマーブロック単位:含有率33モル%、水素化レベル99%以上の水素化ポリブタジエン
・ブロック構造:ペンタブロック構造、合計水素化レベル:99%以上
・マレイン酸変性率:1.1質量%
・Mw:55000
【0110】
[熱可塑性樹脂(B)]
・b-1:スチレン-エチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SEBS:旭化成社製、「タフテックH1052」)、スチレン含有量20質量%、貯蔵弾性率(24℃)=6.2MPa、密度=890g/cm3
【0111】
[ビニル系架橋剤(C)]
・c-1:トリアリルイソシアヌレート(TAIC:新菱社製)、質量平均分子量(Mw):250
【0112】
[有機過酸化物(D)]
・d-1:1,3-ジ(tert-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂社製)
【0113】
[溶剤(E)]
・e-1:トルエン(含有率>99.0質量%)
【0114】
<実施例1>
表1に示した割合で原料を配合し、約80℃で加熱して原料を完全に溶解させて樹脂組成物を作製した。作製した樹脂組成物をシリコーン離型処理された厚さ50μmの離形フィルム(三菱ケミカル社製PETフィルム)の離型処理面上にシート状に展開し、樹脂シートを得た。樹脂シートの厚さは、硬化後のシートの厚さが約300μmになるように調整した。
離型フィルム上に展開した樹脂シートを100℃のオーブンで1時間乾燥した後、樹脂シートの上からシリコーン離型処理された厚さ50μmの離型フィルム(三菱ケミカル社製PETフィルム)を、離型処理面が樹脂シート側になるように積層して積層体を形成した。積層体を200℃の熱プレス機で約0.2MPaの圧力をかけながら30分間保持し、樹脂シートを完全に硬化させ、両面の離型フィルムを剥がしてシート硬化物を得た。得られたシート硬化物について、誘電特性、はんだ耐熱性及び線熱膨張係数を評価した。
【0115】
<実施例2~3、比較例1、参考例1>
表1に示した割合に従って原料を配合した以外は実施例1と同様の方法で、シート硬化物を作製した。得られたシート硬化物について、誘電特性、はんだ耐熱性及び線熱膨張係数を評価した。なお、比較例1は、樹脂シートのプレス条件を200℃、約0.2MPa、2分間とした。
【0116】
<測定方法>
(1)誘電特性
シート硬化物の面内方向の比誘電率及び誘電正接を、空洞共振器(AET社製)とネットワークアナライザMS46 122B(アンリツ社製)を用いてTEモードで測定した。測定周波数は10GHzとした。
【0117】
(2)はんだ耐熱性
溶融した260℃のハンダ浴に、2cm角に切り出したシートサンプルを1分間浸漬し、状態の変化を観察した。浸漬後のシートサンプルを目視で確認し以下の基準で評価した。
〇(good):変化がない。
×(poor):大きな変形や樹脂の流れ出しが見られる。
【0118】
(3)線熱膨張係数
シート硬化物の線熱膨張係数を、JIS K7197(2012年)に準拠する方法により、熱機械分析によって測定した。具体的には、熱分析装置「TMA 841」(メトラー・トレド社製)を用いて、サンプル形状は幅5mm×長さ16mmとし、30℃から測定を開始して5℃/分で100℃まで昇温し、一旦、0℃まで冷却した後、150℃まで再昇温した際の再昇温過程での寸法変化を測定し、この結果に基づき、0~120℃における面内方向における熱膨張率の平均値を算出した。
【0119】
【0120】
実施例1~3より、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と熱可塑性樹脂(B)にビニル系架橋剤(C)を添加することで、低誘電特性を維持しながら耐熱性を向上でき、さらには、線熱膨張係数も低下できることが示された。
一方、比較例1より、熱可塑性樹脂(B)をビニル系架橋剤(C)で硬化させない場合には、はんだ耐熱性が得られず、線熱膨張係数も大きくなることが示された。
また、参考例1より、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)を含まず、熱可塑性樹脂(B)とビニル系架橋剤(C)を混合して硬化させると、はんだ耐熱性は得られるが、線熱膨張係数は実施例より劣ることが示された。
【0121】
なお、上記実施例では熱可塑性樹脂(B)としてオレフィン系熱可塑性エラストマー又はエチレン系重合体を用いた例はないが、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)と、熱可塑性樹脂(B)と、ビニル系架橋剤(C)の分子鎖同士が絡まり合うことで耐熱性を向上できるというメカニズム、及び、環状ポリオレフィン樹脂共重合体(A)の存在により相対的に脂環式構造が増加することで線熱膨張係数を低くできるというメカニズムからして、スチレン系熱可塑性エラストマーと同様の効果を期待することができる。