IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日鉄住金エレクトロデバイス株式会社の特許一覧 ▶ 日本碍子株式会社の特許一覧

特開2024-19155パッケージおよびパッケージの製造方法
<>
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図1
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図2
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図3
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図4
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図5
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図6
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図7
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図8
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図9
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図10
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図11
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図12
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図13
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図14
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図15
  • 特開-パッケージおよびパッケージの製造方法 図16
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019155
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】パッケージおよびパッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/06 20060101AFI20240201BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20240201BHJP
   H01L 23/373 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01L23/06 B
H01L25/04 C
H01L23/36 M
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023124465
(22)【出願日】2023-07-31
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2022/029336
(32)【優先日】2022-07-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】WO
(71)【出願人】
【識別番号】391039896
【氏名又は名称】NGKエレクトロデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(74)【代理人】
【識別番号】100134991
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 和樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148507
【弁理士】
【氏名又は名称】喜多 弘行
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正和
(72)【発明者】
【氏名】小阪田 明義
(72)【発明者】
【氏名】三原 芳和
【テーマコード(参考)】
5F136
【Fターム(参考)】
5F136BA03
5F136BB05
5F136EA13
5F136EA23
5F136FA03
5F136FA04
(57)【要約】
【課題】放熱板とセラミック枠体との間の線膨張係数の差異に起因しての反りを十分かつ容易に抑制することができる、パッケージおよびパッケージの製造方法を提供する。
【解決手段】放熱板11は、金属を含有する焼結材料からなり、放熱面P1と、厚み方向において前記放熱面P1と反対の主面P2とを有する。セラミック枠体21は、前記放熱板11の前記主面P2上に配置され、キャビティCVを囲む内面P3を有し、セラミック枠体21を含む。前記放熱板11は、第1の組成比で複数の元素を含有し、第1の線膨張係数を有する第1の層と、前記第1の層と前記セラミック枠体21との間に配置され、前記第1の組成比と異なる第2の組成比で前記複数の元素を含有し、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する第2の層と、を含む。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビティを有するパッケージであって、
金属を含有する焼結材料からなり、放熱面と、厚み方向において前記放熱面と反対の主面とを有する放熱板と、
前記放熱板の前記主面上に配置され、前記キャビティを囲む内面を有するセラミック枠体と、
を備え、
前記放熱板は、
第1の組成比で複数の元素を含有し、第1の線膨張係数を有する第1の層と、
前記第1の層と前記セラミック枠体との間に配置され、前記第1の組成比と異なる第2の組成比で前記複数の元素を含有し、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する第2の層と、
を含む、パッケージ。
【請求項2】
請求項1に記載のパッケージであって、
前記放熱板の前記第1の層は、前記放熱板の前記放熱面と、前記厚み方向における前記放熱板のセンター位置との間に配置されており、
前記放熱板の前記第2の層は、前記センター位置と前記セラミック枠体との間に配置されている、パッケージ。
【請求項3】
請求項1または2に記載のパッケージであって、
前記複数の元素は、銅と、タングステンおよびモリブデンからなる群から選ばれた少なくとも1つの高融点金属と、を含む、パッケージ。
【請求項4】
請求項1または2に記載のパッケージであって、
前記放熱板の前記主面は、前記キャビティに面するキャビティ面と、前記セラミック枠体に直接に接合された接合面とを含む、パッケージ。
【請求項5】
請求項1または2に記載のパッケージであって、
前記焼結材料は焼結金属材料である、パッケージ。
【請求項6】
請求項1または2に記載のパッケージであって、
前記セラミック枠体は、前記内面と反対の外面を有しており、前記放熱板は、前記セラミック枠体の前記外面に平らにつながった側面を有している、パッケージ。
【請求項7】
キャビティを有するパッケージであって、
金属を含有する焼結材料からなり、放熱面と、厚み方向において前記放熱面と反対の主面とを有する放熱板と、
前記放熱板の前記主面上に配置され、前記キャビティを囲む内面を有するセラミック枠体と、
を備え、
前記放熱板は、
前記放熱板の前記放熱面と、前記厚み方向における前記放熱板のセンター位置との間に配置され、第1の線膨張係数を有する第1の層と、
前記センター位置と前記セラミック枠体との間に配置され、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する第2の層と、
を含む、パッケージ。
【請求項8】
キャビティを有するパッケージの製造方法であって、前記パッケージは、金属を含有する焼結材料からなり放熱面と前記放熱面と反対の主面とを有する放熱板と、前記放熱板の前記主面上に配置され、前記キャビティを囲む内面を有するセラミック枠体と、を備え、前記放熱板は、第1の線膨張係数を有する第1の層と、前記第1の層と前記セラミック枠体との間に配置され、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する第2の層と、を含み、前記製造方法は、
焼成されることによって前記放熱板の前記第1の層とされることになる第1のグリーンシートを形成する工程と、
焼成されることによって前記放熱板の前記第2の層とされることになる第2のグリーンシートを形成する工程と、
焼成されることによって前記セラミック枠体とされることになるセラミックグリーンシートを形成する工程と、
前記第1のグリーンシートと、前記第2のグリーンシートと、前記セラミックグリーンシートとが積層された積層体を形成する工程と、
前記積層体を焼成する工程と、
を備える、パッケージの製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載のパッケージの製造方法であって、
前記積層体を形成する工程の前に、前記セラミックグリーンシートから、前記キャビティに対応する部分を除去する工程をさらに備える、パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パッケージおよびパッケージの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力用半導体素子などの電子部品を収納するために、キャビティを有するパッケージがしばしば用いられる。パッケージのキャビティ中へ電子部品が搭載された後、パッケージに蓋体が接合されることによって、キャビティが気密に封止される。これにより、外部環境から保護された電子部品を有する電子装置が得られる。ヒートシンク板(言い換えれば放熱基板または放熱板)の底面(電子部品が搭載された面と反対の面)は、通常、それを支持する支持部材へ取り付けられることになる。支持部材は、例えば、実装ボードまたは放熱部材である。支持部材は、ヒートシンクの底面へ熱的に接触させられる。ヒートシンクを介することによって電子部品からの熱が効率的にパッケージの外部へ(典型的には支持部材へ)と排出される。これにより、電子部品の温度上昇が、例えば150℃程度までに抑えられる。一方で、電子装置が置かれた外部環境によっては、パッケージの温度は氷点下温度にまで低下する。よって電子装置は、これら温度差に起因したヒートサイクルに耐える必要がある。
【0003】
特開2005-150133号公報(特許文献1)の技術によれば、まず、ヒートシンク板と、セラミック枠体と、外部接続端子とが互いに接続される。これにより、キャビティを有するパッケージが準備される。ヒートシンク板とセラミック枠体とは、約780℃~900℃での銀(Ag)-銅(Cu)ろう付けによって接合される。このパッケージ上に半導体素子が実装され、そしてセラミック枠体の上面部に蓋体が接着される。ヒートシンクは、セラミックと熱膨張係数が近似する材料からなる。当該材料としては、Cuと他の金属との複合金属板(クラッド材料)などが例示されている。
【0004】
特開2018-041868号公報(特許文献2)は、電子部品に適用される放熱基板を開示している。放熱基板の一表面側には、銀ろうを含む接合部を介してセラミックス基板が接合される。銀ろう付けは、加熱されながら行われる。この加熱後の冷却において放熱基板およびセラミックス基板はそれぞれ収縮する。ここで、この放熱基板は、Cu層と、金属Aからなる金属A層と、が交互に積層されることによって構成されたクラッド材料からなる。当該公報によれば、この構成によって、前述した収縮にともなう反り変形が抑制される。金属Aは、MoまたはWである。放熱基板の製造方法は、Cu板と金属A板を接合する工程を有している。この工程は、Cu板と金属A板を交互に重ねて高温で1軸方向に加圧する熱間プレス加工を施す。
【0005】
なお、半導体発光素子用のヒートシンク板(言い換えれば、放熱板または放熱基板)としては、下記のように、金属酸化物を含有するものも提案されている。
【0006】
特開2009-88205号公報(特許文献3)によれば、焼成工程を用いて製造される放熱基板が開示されている。放熱基板は、金属酸化物を主成分とする素体と、素体の内部の全体にわたって配置されると共に薄片状部を有する複数の金属塊とを有している。複数の金属塊は、その厚み方向が所定の方向に揃っていることを特徴とする。この特徴により、熱伝導率に異方性が発現することとなる。上記金属酸化物は、例えば、ZnO、Al、SiOまたはZrOである。ZnOは白色であるので、半導体発光素子からの光を、より反射することができる。また、金属塊が銀または銀合金からなる場合、金属酸化物としてZnOを用いることによって、放熱基板がしなりやすくなり、よって放熱基板を割れにくくすることができる。この放熱基板の製造方法は、薄片状金属粉および金属酸化物が分散されたスラリーを用意する工程と、スラリーをドクターブレード法によってフィルム上に塗布することでグリーンシートを形成する工程と、グリーンシートを焼成する工程とを有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005-150133号公報
【特許文献2】特開2018-041868号公報
【特許文献3】特開2009-88205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記特開2018-041868号公報の技術によれば、放熱基板の積層構造における各層の材料はCu板または金属A板(具体的には、Mo板またはW板)のいずれかである。よって、各層の線膨張係数の設計の融通性が低い。仮に、多くの種類の金属A板を適用することが可能であるならば、設計の融通性は、ある程度確保されるかもしれない。しかしながら、多くの種類の金属板を準備することは、製造上、大きな負担となりやすい。よって、当該公報の技術では、放熱基板(放熱板)と、それに取り付けられたセラミック基板との間の線膨張係数の差異に起因しての反りを十分かつ容易に抑制することが困難である。
【0009】
本発明は以上のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、放熱板とセラミック枠体との間の線膨張係数の差異に起因しての反りを十分かつ容易に抑制することができる、パッケージおよびパッケージの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
態様1は、キャビティ(CV)を有するパッケージ(51~55)であって、放熱板(11)と、セラミック枠体(21~25)とを備える。前記放熱板(11)は、金属を含有する焼結材料からなり、放熱面(P1)と、厚み方向において前記放熱面(P1)と反対の主面(P2)とを有する。前記セラミック枠体(21~25)は、前記放熱板(11)の前記主面(P2)上に配置され、前記キャビティ(CV)を囲む内面(P3)を有する。前記放熱板(11)は、第1の組成比で複数の元素を含有し、第1の線膨張係数を有する第1の層と、前記第1の層と前記セラミック枠体(21~25)との間に配置され、前記第1の組成比と異なる第2の組成比で前記複数の元素を含有し、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する第2の層と、を含む。
【0011】
態様2は、態様1に記載のパッケージ(51~55)であって、前記放熱板(11)の前記第1の層は、前記放熱板(11)の前記放熱面(P1)と、前記厚み方向における前記放熱板(11)のセンター位置との間に配置されており、前記放熱板(11)の前記第2の層は、前記センター位置と前記セラミック枠体(21~25)との間に配置されている。
【0012】
態様3は、態様1または2に記載のパッケージ(51~55)であって、前記複数の元素は銅と、タングステンおよびモリブデンからなる群から選ばれた少なくとも1つの高融点金属と、を含む。
【0013】
態様4は、態様1から3のいずれか1項に記載のパッケージ(51~55)であって、前記放熱板(11)の前記主面(P2)は、前記キャビティ(CV)に面するキャビティ面(P2a)と、前記セラミック枠体(21~25)に直接に接合された接合面(P2b)とを含む。
【0014】
態様5は、態様1から4のいずれか1項に記載のパッケージ(51~55)であって、前記焼結材料は焼結金属材料である。
【0015】
態様6は、態様1から5のいずれか1項に記載のパッケージ(51~55)であって、前記セラミック枠体(21~25)は、前記内面(P3)と反対の外面(P4a)を有しており、前記放熱板(11)は、前記セラミック枠体(21~25)の前記外面(P4a)に平らにつながった側面(P4b)を有している。
【0016】
態様7は、キャビティ(CV)を有するパッケージ(51~55)であって、放熱板(11)と、セラミック枠体(21~25)とを備える。前記放熱板(11)は、金属を含有する焼結材料からなり、放熱面(P1)と、厚み方向において前記放熱面(P1)と反対の主面(P2)とを有する。前記セラミック枠体(21~25)は、前記放熱板(11)の前記主面(P2)上に配置され、前記キャビティ(CV)を囲む内面(P3)を有する。前記放熱板(11)は、第1の層と、第2の層とを含む。前記第1の層は、前記放熱板(11)の前記放熱面(P1)と、前記厚み方向における前記放熱板(11)のセンター位置との間に配置され、第1の線膨張係数を有する。前記第2の層は、前記センター位置と前記セラミック枠体(21~25)との間に配置され、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する。
【0017】
態様8は、キャビティ(CV)を有するパッケージ(51~55)の製造方法である。前記パッケージ(51~55)は、金属を含有する焼結材料からなり放熱面(P1)と前記放熱面(P1)と反対の主面(P2)とを有する放熱板(11)と、前記放熱板(11)の前記主面(P2)上に配置され、前記キャビティ(CV)を囲む内面(P3)を有するセラミック枠体(21~25)と、を備える。前記放熱板(11)は、第1の線膨張係数を有する第1の層と、前記第1の層と前記セラミック枠体(21~25)との間に配置され、前記第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する第2の層と、を含む。前記製造方法は、焼成されることによって前記放熱板(11)の前記第1の層とされることになる第1のグリーンシートを形成する工程と、焼成されることによって前記放熱板(11)の前記第2の層とされることになる第2のグリーンシートを形成する工程と、焼成されることによって前記セラミック枠体(21~25)とされることになるセラミックグリーンシート(21G)を形成する工程と、前記第1のグリーンシートと、前記第2のグリーンシートと、前記セラミックグリーンシート(21G)とが積層された積層体を形成する工程と、前記積層体を焼成する工程と、を備える。
【0018】
態様9は、態様8に記載のパッケージ(51~55)の製造方法であって、前記積層体(SG)を形成する工程の前に、前記セラミックグリーンシート(21G)から、前記キャビティ(CV)に対応する部分を除去する工程をさらに備える。
【発明の効果】
【0019】
上記態様によれば、放熱板とセラミック枠体との間の線膨張係数の差異に起因してのパッケージの反りを、十分かつ容易に抑制することができる。
【0020】
この発明の目的、特徴、態様、および利点は、以下の詳細な説明と添付図面とによって、より明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態1に係る半導体モジュールの構成を、キャビティ内部が見えるようにその一部の図示を省略して示す概略斜視図である。
図2図1の半導体モジュールの線II-IIに沿う概略断面図である。
図3図2の半導体モジュールの部品としてのパッケージの構成を示す概略断面図である。
図4図3の一部拡大図である。
図5】本実施の形態1のパッケージの製造方法を概略的に示すフロー図である。
図6】本実施の形態1のパッケージの製造方法の一工程を例示する概略部分断面図である。
図7図6の一部拡大図である。
図8】本実施の形態1のパッケージの製造方法の一工程を例示する概略部分断面図である。
図9】本実施の形態1のパッケージの製造方法の一工程を例示する概略部分断面図である。
図10】比較例のパッケージの構成を示す概略断面図である。
図11図10のパッケージを用いた半導体モジュールの構成を示す概略断面図である。
図12】実施の形態1に係るパッケージが有する放熱板およびセラミック枠体の構成を示す概略断面図である。
図13】実施の形態2に係るパッケージの構成を、図12と同様の視野で示す概略断面図である。
図14】実施の形態3に係るパッケージの構成を、図12と同様の視野で示す概略断面図である。
図15】実施の形態4に係るパッケージの構成を、図12と同様の視野で示す概略断面図である。
図16】実施の形態5に係るパッケージの構成を、図12と同様の視野で示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。なお本明細書において、金属は、特段の記載がない限り、純金属および合金のいずれをも意味し得る。
【0023】
<実施の形態1>
(半導体モジュールの構成)
図1は、実施の形態1に係る半導体モジュール90の構成を示す概略斜視図である。図2は、図1の半導体モジュール90の線II-IIに沿う概略断面図である。半導体モジュール90は、パッケージ51および半導体素子8を有している。また半導体モジュール90は、半導体素子8の配線部材としてのワイヤ9を有していてよい。また半導体モジュール90は、キャビティCVを封止するための蓋体80を有していてよい。蓋体80はパッケージ51へ接着層70によって取り付けられていてよい。なお図1においては、パッケージ51が有するキャビティCVの内部が部分的に見えるように、蓋体80および接着層70の図示が部分的に省略されている。
【0024】
半導体素子8はパワー半導体素子であってよく、この場合、半導体モジュール90はパワーモジュールである。パワー半導体素子は高周波(RF:Radio Frequency)用であってよく、この場合、半導体モジュール90はRFパワーモジュールである。なお、図1および図2においては1つの半導体素子8が図示されているが、パッケージ51へは複数の半導体素子8が実装されていてよい。また半導体素子8以外の素子、例えば受動素子、も実装されていてよい。
【0025】
(パッケージの構成)
図3は、半導体モジュール90(図2)の部品としてのパッケージ51の構成を示す概略断面図である。半導体モジュール90の製造のためにパッケージ51が準備された時点では、図3に示されているように、半導体素子8は未だ実装されていなくてよい。パッケージ51は、蓋体80によって封止されることになるキャビティCVを有している。パッケージ51は放熱板11とセラミック枠体21とを有している。
【0026】
放熱板11は、金属を含有する焼結材料からなる。例えば、焼結材料は銅(Cu)および高融点金属を含有している。高融点金属は、Cuよりも高い融点を有している。高融点金属は、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)の少なくともいずれかであっていてよい。焼結材料は、非金属を含有している必要はない。言い換えれば、焼結材料は焼結金属材料であってよい。言い換えれば、焼結材料は、実質的に金属からなる焼結材料であってよい。焼結金属材料は、CuおよびWを含有していてよく、例えば、CuおよびWの合金、すなわち銅タングステン合金であってよい。放熱板11の放熱性能を高めるためには、放熱板11の材料は、大きな熱伝導率を有していることが好ましい。このように高い熱伝導率は、放熱板11が十分な比率でCuを含有することによって容易に得られる。一方、放熱板11が十分な比率でWを含有することによって、放熱板11の線膨張係数を、アルミナなどのセラミックの線膨張係数に近づけることができる。線膨張係数のこの近似性は、放熱板11とセラミック枠体21との間の熱応力の抑制に有用である。アルミナなどのセラミックの線膨張係数に近づけるため、焼結材料は非金属を含んでいてもよい。非金属は、例えば、アルミナおよび/またはシリカなどのセラミックであってよい。
【0027】
放熱板11は、放熱面P1と、放熱面P1と反対の主面P2とを有している。放熱板11の放熱面P1は、典型的には、支持部材(図示せず)に取り付けられることになる。支持部材は、例えば、実装ボードまたは放熱部材である。放熱板11は、支持部材への取り付けのための固定具(例えば、ねじ)が通る貫通部(図示せず)を有していてよい。
【0028】
セラミック枠体21は、セラミックからなる枠体である。パッケージ51の枠体としてセラミック枠体21を用いることによって、パッケージ51の耐熱性および絶縁性を高めることができる。セラミック枠体21の材料は、主成分としてアルミナを含有してよく、またセラミック枠体21の焼結を促進するために、微量のシリカ、および/または、マンガン元素を含む微量の添加剤を含有してよい。
【0029】
セラミック枠体21は放熱板11の主面P2上に配置されている。セラミック枠体21は、キャビティCVを囲む内面P3と、内面P3と反対の外面P4aとを有している。放熱板11は、セラミック枠体21の外面P4aに平らにつながった側面P4bを有していてよい。セラミック枠体21の外縁は、厚み方向に垂直な面内方向において、図1に示されているように矩形形状を有していてよい。矩形形状の各辺の大きさは、例えば、4mm以上40mm以下である。セラミック枠体21の厚みは、例えば、0.1mm以上、1mm以下である。
【0030】
放熱板11の主面P2は、キャビティCVに面するキャビティ面P2aと、セラミック枠体21に直接に接合された接合面P2bとを含む。よって、セラミック枠体21と放熱板11とは、互いに直接に接合されている。従ってこれらの接合に銀(Ag)ろう材は用いられていない。よって放熱板11の接合面P2bは、Agを含有している必要がない。
【0031】
本発明者は、セラミック枠体21と放熱板11とが互いに十分な強度で接合されていることを確認した。さらに、セラミック枠体21と放熱板11とが互いに直接に接合されていることを、光学顕微鏡観察によって確認した。本明細書における「直接に接合され」との表現は、接合部において、放熱板11およびセラミック枠体21から由来する成分以外の成分が検出されないことを意味する。例えば、放熱板11がCuを含有し、かつセラミック枠体21がシリカおよび/またはマンガンを含有する場合、本発明者の推測では、後述する焼成工程において、溶融Cuと、シリカおよび/またはマンガンとが反応することによって、上述した極めて薄い反応層が形成されているかもしれない。なお上記成分は、後述するように、電子顕微鏡を用いた簡易的な方法、または、エネルギー分散X線分光法(EDX:Energy Dispersive X-ray Spectroscopy)によって検証することができる。
【0032】
パッケージ51はリードフレーム30(金属端子)を有していてよい。リードフレーム30は、セラミック枠体21上に設けられており、セラミック枠体21によって放熱板11から隔てられている。リードフレーム30は、キャビティCVの内部と外部とをつなぐ電気的経路を構成する。リードフレーム30とセラミック枠体21との間には、両者を互いに接合するための接合材(図示せず)が設けられていてよい。この接合材は、例えば、Agシンター接合によって形成されてよく、その場合、上記接合材は、熱硬化性樹脂(例えば、エポキシ樹脂またはシリコン樹脂)とAg粒子との混合物である。また、この接合材に銀ろうが用いられてもよい。この場合、通常は、セラミック枠体21に銀ろう用のメタライズ層が予め形成される。メタライズ層の形成方法の一例としては、まず、セラミック枠体21および放熱板11を形成するための(詳しくは後述される)焼成工程の前に、セラミック枠体21となるグリーンシート上に、メタライズ層となるペーストが印刷される。具体的には、まずW、MoおよびCuの少なくともいずれか1つの金属粉末と、添加材、樹脂、溶剤などとを配合し、さらに必要に応じてセラミック粉末を添加し、混錬することにより、ペーストが作製される。このペーストが、前工程で準備されたグリーンシートに、例えばスクリーン印刷により印刷される。この印刷後、グリーンシートが、例えば温度110℃および時間5分間の条件で、乾燥される。あるいは、このメタライズ層は、セラミック枠体21および放熱板11を形成するための(詳しくは後述される)焼成工程の前に、セラミック枠体21となるグリーンシート上に、金属を含有するグリーンシートを積層することによって、形成されてよい。
【0033】
蓋体80(図1および図2)は、セラミック材料からなっていてよく、このセラミック材料は主成分としてアルミナを含んでいてよく、例えば、実質的にアルミナである。あるいは、蓋体80は樹脂を含んでいてよい。樹脂は、例えば、液晶ポリマーである。なお当該樹脂中に無機フィラーが分散されていてもよく、無機フィラーは、例えばシリカ粒である。樹脂中に無機フィラーが分散されていることによって、蓋体80の強度および耐久性を高めることができる。
【0034】
半導体素子8(図2)は、パッケージ51の放熱板11の主面P2のキャビティ面P2a(図3)上に実装されることになる。実装された半導体素子8と、セラミック枠体21の内面P3との間の距離L1(図2)は、25μm以下であってよい。距離L1はゼロであってもよい。言い換えれば、半導体素子8とセラミック枠体21の内面P3とは接触していてもよい。
【0035】
半導体素子8の実装は、例えば、はんだ材(図示せず)を用いて行われてよい。半導体素子8の実装後、半導体素子8をリードフレーム30へ電気的に接続するために、ワイヤ9(図2)が形成されてよい。この形成はワイヤボンディングによって行われてよい。続いてパッケージ51へ蓋体80が取り付けられてよい。この取り付けは、接着層70を用いて行われてよい。接着層70は熱硬化性樹脂であってよい。接着層70は、セラミック枠体21上に、キャビティCVを囲むように設けられる。接着層70は、図2に示されているように、セラミック枠体21上にリードフレーム30を介して設けられる部分を有していてよい。接着層70の、蓋体80とパッケージ51との間での厚みは、例えば、100μm以上360μm以下である。
【0036】
(放熱板の構成)
図4は、パッケージ51を示す図3の一部拡大図である。放熱板11は複数の層LF1~LF9を含む。ここでは、放熱板11に含まれる複数の層の数が9つの場合について詳しく説明するが、この数は放熱板11の設計に応じて選択されてよい。層LF1~LF9は、厚み方向において、放熱面P1から主面P2へと順に積層されている。複数の層LF1~LF9のそれぞれは、後述する複数のグリーンシートLG1~LG9(図7)に対応している。グリーンシートLG1~LG9(図7)の界面は、グリーンシートの積層体SGの積層界面である。この積層界面は、焼成工程後には、明確な境界としてはほとんど認識できなくなる。
【0037】
各層の組成比は以下のように測定することができる。図4のような断面を走査型電子顕微鏡の反射電子モードで観察すると、原子番号の違いに応じたコントラストの画像が得られる。組成がCuおよびWを含む場合、Cuよりも原子番号の大きいWの方が、反射電子の信号強度が高い。よって、Cuの割合が低い層、すなわちWの割合が高い層は、明るい画像となる。一方、Cuの割合が高い層、すなわちWの割合が低い層は、暗い画像となる。このコントラストに基づいて組成比を評価することができる。より厳密な評価方法としては、例えば、各層について、厚み方向における数点でEDXによる成分分析が行われてよい。そして、当該層の上記複数点における組成比の平均値が、各層の組成比として用いられてよい。
【0038】
複数の層LF1~LF9の構成としては様々なものがあり得るが、以下において、第1~第3の例を挙げる。なおこれら第1~第3の例においては、層LF1~LF9の各々は、共通して複数の元素を含有している。これら複数の元素は、銅(Cu)と、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)からなる群から選ばれた少なくとも1つの高融点金属と、を含む。以下の説明においては主に、これら複数の元素が、CuおよびWを含み、具体的にはCuおよびWの2つである場合を例として説明する。言い換えれば、以下の説明においては主に、層LF1~LF9が銅タングステン(CuW)合金である場合を例として説明する。変形例として、Wの代わりに、またはWと共に、Moが用いられてよい。CuW合金の組成比の値は、CuW合金におけるCuの重量パーセントで表すものとする。ここで、放熱板11は焼結材料からなるので、セラミック枠体を製造するための標準的な製造装置を有していれば、それを用いることによって、放熱板11の焼結材料の組成比を容易に調整することができる。
【0039】
(複数の層の構成の第1の例)
第1の例においては、層LF1から層LF9へと線膨張係数が徐々に増加するように放熱板11が構成されている。ここで、層LF1~LF9のそれぞれが有する組成比を組成比C1~C9と称する。本例においては、組成比C1から組成比C9へと組成比(Cu含有量)が徐々に大きくされる。これにより層LF1から層LF9へと線膨張係数が徐々に増加する。
【0040】
ここで、mおよびnを条件1≦m<n≦9を満たす整数とし、層LFmを第1の層とみなし、層LFnを第2の層とみなすと、本例から、以下の特徴が読み取れる。
-第1の層LFmは、第1の組成比Cmで元素CuおよびWを含有する。第2の層LFnは、第1の層LFmとセラミック枠体21との間に配置されており、第1の組成比Cmと異なる第2の組成比Cnで元素CuおよびWを含有する。
-第1の層LFmは第1の線膨張係数を有する。第2の層LFnは、第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する。
【0041】
さらに、条件1≦m<5かつ5<n≦9も満たすmおよびnに着目すると、本例から、以下の特徴も読み取れる。
-第1の層LFmは、放熱面P1と、厚み方向における放熱板11のセンター位置(図4における層LF5の位置)との間に配置されている。第2の層LFnは、センター位置(図4における層LF5の位置)とセラミック枠体21との間に配置されている。
【0042】
(複数の層の構成の第2の例)
第2の例においては、層LF1~LF6およびLF9が第1の線膨張係数を有し、層LF7~LF8が第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有するように、放熱板11が構成されている。本例においては、層LF1~LF6およびLF9は組成比Cmを有しており、層LF7~LF8は、組成比Cmよりも大きい組成比Cnを有している。これにより、層LF1~LF6およびLF9の線膨張係数に比して、層LF7~LF8の線膨張係数の方が大きくなる。ここで、セラミック枠体21と放熱板11との線膨張係数の差が大き過ぎると、セラミック枠体21と放熱板11との間で剥離が生じることがある。また、パッケージ51の微妙な反り量の調整を行う必要が生じることがある。これらの問題を解決するため、層LF7~LF8の線膨張係数よりも小さい線膨張係数を有するLF9が積層されている。
【0043】
ここで、層LF1~LF6を第1の層とみなし、層LF7~LF8を第2の層とみなすと、本例から、以下の特徴が読み取れる。
-第1の層LF1~LF6は、第1の組成比Cmで元素CuおよびWを含有する。第2の層LF7~LF8は、第1の層LF1~LF6とセラミック枠体21との間に配置されており、第1の組成比Cmと異なる第2の組成比Cnで元素CuおよびWを含有する。
-第1の層LF1~LF6は第1の線膨張係数を有する。第2の層LF7~LF8は、第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する。
-第1の層LF1~LF6のうち層LF1~LF4に着目すると、上記第1の層LF1~LF6のうち第1の層LF1~LF4は、放熱面P1と、厚み方向における放熱板11のセンター位置(図4における層LF5の位置)との間に配置されている。第2の層LF7~LF8は、センター位置(図4における層LF5の位置)とセラミック枠体21との間に配置されている。
【0044】
(複数の層の構成の第3の例)
第3の例においては、層LF1~LF3が第1の線膨張係数を有し、層LF4~LF9が第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有するように、放熱板11が構成されている。本例においては、層LF1~LF3は組成比Cmを有しており、層LF4~LF9は、組成比Cmよりも大きい組成比Cnを有している。これにより、層LF1~LF3の線膨張係数に比して、層LF4~LF9の線膨張係数の方が大きくなる。
【0045】
ここで、層LF1~LF3を第1の層とみなし、層LF4~LF9を第2の層とみなすと、本例から、以下の特徴が読み取れる。
-第1の層LF1~LF3は、第1の組成比Cmで元素CuおよびWを含有する。第2の層LF4~LF9は、第1の層LF1~LF3とセラミック枠体21との間に配置されており、第1の組成比Cmと異なる第2の組成比Cnで元素CuおよびWを含有する。
-第1の層LF1~LF3は第1の線膨張係数を有する。第2の層LF4~LF9は、第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する。
-第1の層LF1~LF3は、放熱面P1と、厚み方向における放熱板11のセンター位置(図4における層LF5の位置)との間に配置されている。第2の層LF4~LF9のうち層LF6~LF9に着目すると、上記第2の層LF4~LF9のうち第2の層LF6~LF9は、センター位置(図4における層LF5の位置)とセラミック枠体21との間に配置されている。
【0046】
(パッケージの製造方法)
図5は、上記第1~第3の例のパッケージ51(図3)の製造方法を概略的に示すフロー図である。図6図9は、当該製造方法の一工程を例示する概略部分断面図である。
【0047】
ステップST10(図5)にて、焼成されることによって層LF1~LF9(図4)のそれぞれとなるグリーンシートLG1~LG9(後述される図7参照)が形成される。ここで、第1の層および第2の層(前述の第1~第3の例を参照)は、層LF1~LF9に含まれる。よってステップST10(図5)は当然に、焼成されることによって第1の層とされることになる第1のグリーンシートを形成するステップST11(図5)と、焼成されることによって第2の層とされることになる第2のグリーンシートを形成するステップST12(図5)とを含む。またステップST13(図5)にて、焼成されることによってセラミック枠体21とされることになるセラミックグリーンシート21G(後述される図7参照)が形成される。
【0048】
グリーンシートを形成するためには、まずスラリーが準備される。スラリーは、焼結体の成分となる粉末を、樹脂、可塑剤および溶剤などとボールミルによって混合することによって得られる。セラミック枠体21を形成するためのスラリー用の上記粉末は、例えば、主成分のAl粉末と、焼結助剤のSiO粉末および/またはMnCO粉末と、などである。放熱板11の層LF1~LF9を形成するためのスラリー用の上記粉末は、Cu粉末およびW粉末などである。スラリーはドクターブレード法によりグリーンシートに加工される。グリーンシートの平面形状は、目的とする部品の形状に応じて決定される。放熱板11を形成するためのグリーンシートの平面形状は、通常、略矩形形状とされる。セラミック枠体21を形成するためのセラミックグリーンシート21Gの平面形状は、キャビティCV(図3)に対応する部分が除去された枠状形状とされる。具体的には、セラミックグリーンシート21Gは、ドクターブレード法によって単純なシートとして形成された後、キャビティCVに対応する部分が除去される。
【0049】
ステップST20(図5)にて、グリーンシートLG1~LG9(図7)とセラミックグリーンシート21Gとが積層されることによって、積層体SG(図6および図7)が形成される。なお積層体SGは、グリーンシートLG1~LG9の積層体11Gを含む。積層体11Gは、焼成されることによって放熱板11(図4)とされることになるものである。積層体SGにおいて、焼成されることによって第1の層(前述の第1~第3の例を参照)とされることになる第1のグリーンシートと、焼成されることによって第2の層(前述の第1~第3の例を参照)とされることになる第2のグリーンシートと、焼成されることによってセラミック枠体21とされることになるセラミックグリーンシート21Gとが、積層されている。
【0050】
次に、後述するブレイクが行われることになる位置において、刃先CT(図6)による機械加工、またはレーザ加工装置(図示せず)によるレーザ加工を用いて、積層体11Gおよびセラミックグリーンシート21Gの各々の表面にトレンチ(図示せず)が形成されてよい。
【0051】
ステップST30(図5)にて、積層体SG(図6)が焼成される。これにより、積層体SGが焼成体SF(図8)へと変化する。焼成温度は、例えば、1100℃以上1400℃である。焼成温度が1100℃以上であることによって、積層体SGをCuの融点より高い温度へ加熱することができる。これにより、Cuを含有する放熱板11を高品質で形成することができる。一方、焼成温度が1400℃以下であることによって、焼成温度が過度に高いことに起因しての工程上の困難を避けることができる。
【0052】
次に、前述したトレンチを起点としてのブレイク工程が、破線BR(図8)に示すように行われる。その結果、焼成体SFが複数の部分へと分割される。これにより、複数のパッケージ51(図3)に対応する複数の焼成体SFが得られる(図9)。
【0053】
次に、焼成体SFへ、リードフレーム30(図3)が取り付けられる。これにより、パッケージ51(図3)が得られる。
【0054】
なお上記製造方法において、焼成工程後の適当なタイミングで、めっき処理が行われてよい。また上記製造方法は、前述したように一例であり、様々な変形例が適用され得る。例えば、焼成体SFに対してブレイク工程が行われる代わりに、焼成前の積層体SGに対して切断処理が行われてもよい。また、半導体素子8(図2)の実装は、上記製造方法によればブレイク工程後のタイミングで行われることになるが、当該タイミングに代わって、焼成工程後かつブレイク工程の前のタイミングで行われてもよい。
【0055】
図10は、比較例のパッケージ59の構成を示す概略断面図である。図11は、パッケージ59を用いた、比較例の半導体モジュール99の構成を示す概略断面図である。パッケージ59は、放熱板11およびセラミック枠体21(図3:実施の形態1)に代わって、放熱板19およびセラミック枠体29を有している。セラミック枠体29は、セラミック材料からなり、これは典型的にはアルミナである。
【0056】
放熱板19の材料は、熱伝導率の観点からは純銅がよい。しかし銅の線膨張係数はアルミナの線膨張係数よりも大きい。セラミック枠体29と放熱板19とをろう材で接合する工程で、ろう材を溶融させるための加熱後の冷却過程において、ろう材が硬化した後、放熱板19の主面P2側はセラミック枠体29に拘束されて収縮が抑制される一方、放熱面P1側では収縮は抑制されない。その結果、パッケージ59には、図10において上方へ凸状の反りが生じる。そこで、放熱板19の線膨張係数をより小さくしてアルミナの線膨張係数に近づけることが考えられる。例えば、タングステンおよびモリブデンはアルミナよりも線膨張係数が小さいので、放熱板19の材料にこれら金属元素を利用することが考えられる。その場合、放熱板19の材料は、典型的には、含侵法によって形成された銅タングステン合金材料、または、銅と銅モリブデン合金との積層構造を有するクラッド材料である。前者の材料の場合、放熱板19はその全体においてほぼ均一な線膨張係数を有するので、熱応力に起因してのパッケージ59の反りを抑制するように厚み方向において線膨張係数を変化させることはできない。後者の材料の場合、積層構造における各層の線膨張係数の設計の融通性が低い。仮に、多くの種類の金属板をクラッド材料へ適用することが可能であるならば、設計の融通性は、ある程度確保されるかもしれない。しかしながら、多くの種類の金属板を準備することは、製造上、大きな負担となりやすい。よって、熱応力に起因してのパッケージ59の反りを十分かつ容易に抑制することが困難である。
【0057】
セラミック枠体29は放熱板19へ、ろう材26によって接合されている。ろう材26は、その形成時には流動性を有しており、図10に示されているように、セラミック枠体29の内周面(キャビティCVに面する面)よりも内側へと流れ込む。ろう材26のうちキャビティCV内へ流れ込んだ部分は、キャビティCVの縁においてフィレット26fを形成する。流れ込む距離、言い換えればフィレット26fの幅寸法は、25μmよりも大きくなりやすい。よって、フィレット26fと半導体素子8とが互いに干渉する可能性を十分低くするためには、半導体素子8とセラミック枠体29の内面との間の距離L9(図11)を、25μmよりも大きくする必要がある。このように半導体素子8とセラミック枠体29との間に大きな間隔を空けなければならない結果、キャビティCV中の実装面積(半導体素子8を実装することができる領域の面積)が小さくなってしまう。また、ワイヤ9の長さが大きくなり、このことは通常、インダクタンスの意図しない増加のような、電気的特性の悪化につながる。
【0058】
ろう材26としては、典型的には、Agろう材が用いられる。ろう材26がAgを含有する場合において、放熱板19の電位を基準としてリードフレーム30に負電位が長期間印加されると、矢印MG(図11)に示すようにAgマイグレーションが発生しやすい。このAgマイグレーションによって、放熱板19とリードフレーム30との間の電気的絶縁性が不十分となることがある。
【0059】
また、ろう材26が形成される際には、溶融したろう材26の濡れ性が確保されている必要がある。その目的で、セラミック材料からなるセラミック枠体29の、ろう材26に面する表面には、溶融したろう材26に対して高い濡れ性を有するめっき層を形成しておく必要がある。また、このめっき層を形成する準備として、通常、セラミック枠体29にメタライズ層を形成する必要がある。
【0060】
本実施の形態1によれば、前述の第1~第3の例において説明したように、放熱板11が含む第1の層は、第1の組成比で複数の元素を含有し、第1の線膨張係数を有する。さらに、放熱板11が含む第2の層は、第1の層とセラミック枠体21との間に配置され、第1の組成比と異なる第2の組成比で複数の元素を含有し、第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する。これらの特徴によれば、第1の層は第2の層に比して、放熱面P1の近くに配置され、かつ小さな線膨張係数を有する。よって、降温時における放熱板11の放熱面P1側の収縮が小さくなるので、パッケージ51の反り(具体的には、図3における上方へ凸の反り)が抑制される。よって、放熱板11とセラミック枠体21との間の線膨張係数の差異に起因してのパッケージ51の反りが抑制される。この反りは、放熱板11をなす焼結材料の組成比の値および分布を最適化することによって、容易かつ十分に抑制することができる。以上から、放熱板11とセラミック枠体21との間の線膨張係数の差異に起因してのパッケージ51の反りを、十分かつ容易に抑制することができる。
【0061】
また、放熱板11が含む第1の層は、放熱板11の放熱面P1と、厚み方向における放熱板11のセンター位置との間に配置され、第1の線膨張係数を有する。さらに、放熱板11が含む第2の層は、当該センター位置とセラミック枠体21との間に配置され、第1の線膨張係数よりも大きい第2の線膨張係数を有する。これらの特徴によれば、第1の層は第2の層に比して、放熱面P1の近くに配置され、かつ小さな線膨張係数を有する。よって、降温時における放熱板11の放熱面P1側の収縮が小さくなるので、パッケージ51の反り(具体的には、図3における上方へ凸の反り)が抑制される。よって、放熱板11とセラミック枠体21との間の線膨張係数の差異に起因してのパッケージ51の反りが抑制される。この反りは、放熱板11をなす焼結材料の組成比の値および分布を最適化することによって、容易かつ十分に抑制することができる。以上から、放熱板11とセラミック枠体21との間の線膨張係数の差異に起因してのパッケージ51の反りを、十分かつ容易に抑制することができる。
【0062】
また、セラミック枠体21と、放熱板11とが直接に接合される。これにより、セラミック枠体21と、放熱板11との接合に、ろう材26(図11:比較例)を必要としない。よって、キャビティCV内へ流れ込んだろう材26が半導体素子8の実装の妨げとなることが避けられる。よって、半導体素子8とセラミック枠体21の内面P3との間の距離L1(図2)を小さくすることができ、例えば25μm以下とすることができる。言い換えれば、半導体素子8をセラミック枠体21に近接させて実装することができる。よって、キャビティCV中の実装面積を、より大きくすることができる。またワイヤ9の長さが小さくなり、これは通常、電気的特性の良化につながる。また、ろう材26(図11:比較例)を用いる必要がないので、ろう材が含有しているAgのマイグレーション現象が放熱板11とリードフレーム30との間で発生することを避けることができる。また、ろう材26の濡れ性を確保するための層(典型的には、前述しためっき層およびメタライズ層)を必要としない。
【0063】
放熱板11(図2)は、セラミック枠体21の外面P4aに平らにつながった側面P4bを有していてよい。この場合、外面P4aと側面P4bとの間の箇所がパッケージ51の破壊の起点となることを避けつつ、実装面積(半導体素子8などを実装可能な領域の面積)を確保しやすい。このような側面P4bの一部はブレイク工程(図8)における破断面であってよい。側面P4bが外面P4aに平らにつながっていない典型的な形態としては、外面P4aが側面P4bから外側にはみ出している形態、または、外面P4aが側面P4bの内側に位置している形態がある。前者の形態においては、はみ出した部分が破壊の起点となる恐れがある。後者の形態においては、セラミック枠体21の外縁が内側に寄るので、セラミック枠体21の幅が所定の寸法に維持される必要がある限り、セラミック枠体21の内縁も内側に寄り、その結果、実装面積が小さくなる。
【0064】
なお変形例として、セラミック枠体21が取り付けられていない放熱板11(図3)が作製されてよい。例えば、焼成体SFの製造方法において、セラミックグリーンシート21G(図6)の形成を省略することによって、他の部材が取り付けられていない放熱板11が得られる。そのようにして得られた放熱板11へ他の部材が取り付けられてよく、例えば、枠体が取り付けられれば、パッケージが得られる。
【0065】
<キャビティに関連しての変形例>
上記実施の形態1のパッケージ51はキャビティCV(図2)を有しているが、変形例として、キャビティCVの有無を問わない構成が用いられてよい。具体的には、キャビティCVを構成するセラミック枠体21に代わってセラミック基体が用いられてよく、その場合、セラミック枠体21の代わりにセラミック基体が放熱板11に取り付けられる。具体的には、放熱板11と、放熱板11の主面P2上に配置されたセラミック基体と、の接合体が用いられてよい。この接合体はキャビティCVを有していなくてよい。セラミック基体は、例えばセラミック平板である。セラミック平板は、放熱板11の主面P2に取り付けられた第1の面と、当該第1の面と反対の第2の面とを有している。セラミック平板の第2の面にはリードフレーム30が取り付けられていてよい。半導体モジュールを作製するために、セラミック平板の第2の面上に半導体素子8が実装されてよい。上記接合体がキャビティCVを有していなくても、例えば、下側(半導体素子8に面することになる側)にキャビティを有する蓋体80(図2参照)が取り付けられることによって、半導体素子8をキャビティ内に封止することができる。
【0066】
<実施の形態2~5>
図12は、前述した本実施の形態1に係るパッケージ51(図3)が有する放熱板11およびセラミック枠体21の構成を示す概略断面図である。なお説明の便宜上、図3の図示よりも図12の図示は簡素化されている。図12と対比しつつ、実施の形態2~6のそれぞれに係るパッケージ52~56の構成について、以下に説明する。
【0067】
図13は、本実施の形態2に係るパッケージ52の構成を示す概略断面図である。パッケージ52は、セラミック枠体21(図12)に代わって、セラミック枠体22を有している。セラミック枠体22(具体的にはその内側部分)は放熱板11の主面P2上に配置されている。厚み方向における位置に関して、セラミック枠体22は、放熱板11の主面P2の上方の位置から、放熱板11の主面P2と放熱面P1との間の範囲内へと延びている。なおセラミック枠体22はさらに延びていてよく、図13に示された例においては、放熱板11の放熱面P1の位置まで延びている。セラミック枠体22は放熱板11の側面P4bから離れている。
【0068】
図14は、本実施の形態3に係るパッケージ53の構成を示す概略断面図である。パッケージ53は、セラミック枠体21(図12)に代わって、セラミック枠体23を有している。セラミック枠体23は、放熱板11の主面P2上に配置された板状の基部23aと、基部23aを介して放熱板11に固定された枠体部23bとを有している。なお基部23aと枠体部23bとの境界(図中、破線)は仮想的なものであってよい。枠体部23bは内面P3を有している。放熱板11の主面P2は、本実施の形態3においては、セラミック枠体23の基部23aに直接に接合された接合面P2bを有している。図14に示された例においては、主面P2の全部が接合面P2bである。また本実施の形態3においては、放熱板11のキャビティ面P2aは、セラミック枠体23の基部23aを介してキャビティCVに面している。よって本実施の形態3においても、キャビティ面P2aは、キャビティCVに面しているといえる。
【0069】
図15は、本実施の形態4に係るパッケージ54の構成を示す概略断面図である。パッケージ54は、セラミック枠体21(図12)に代わって、セラミック枠体24を有している。セラミック枠体24(具体的にはその内側部分)は放熱板11の主面P2上に配置されている。厚み方向における位置に関して、セラミック枠体24は、放熱板11の主面P2の上方の位置から、放熱板11の主面P2と放熱面P1との間の範囲内へと延びている。なおセラミック枠体24はさらに延びていてよく、図15に示された例においては、放熱板11の放熱面P1の位置まで延びている。放熱板11の側面P4bは、セラミック枠体24に直接に接合された接合面を有している。図15に示された例においては、側面P4bの全部が接合面であるが、側面P4bの一部のみが接合面であってもよい。
【0070】
パッケージ54は、下層LY1と上層LY2との積層体を焼成することによって製造され得る。下層LY1は、例えば、次のように形成される。まず、焼成されることによってセラミック枠体24となる材料からなる第1の未焼成層が形成される。次に、第1の未焼成層に、放熱板11が配置される領域に対応した貫通孔が金型を用いて形成される。次に、上記貫通孔を覆うように第1の未焼成層上に、焼成されることによって放熱板11となる部分を含む第2の未焼成層が積層される。次に、上記金型を再度用いて上記貫通孔内に第2の未焼成層の上記部分が押し込まれる。次に、第2の未焼成層のうち、金型によって押し込まれなかった部分、言い換えれば第1の未焼成層の上面上に残存した部分、が除去される。これにより、下層LY1が得られる。上層LY2は、焼成されることによってセラミック枠体24となる材料からなる未焼成層から、キャビティCVに対応する部分を除去することによって得られる。下層LY1と上層LY2との積層体を焼成することによって、パッケージ54が得られる。なお、これに類した工法によって、後述するパッケージ55(図16)も製造され得る。
【0071】
図16は、本実施の形態5に係るパッケージ55の構成を示す概略断面図である。パッケージ55は、放熱板11およびセラミック枠体21(図12)に代わって、放熱板15およびセラミック枠体25を有している。セラミック枠体25(具体的にはその内側部分)は放熱板15の主面P2上に配置されている。放熱板15は、支持部15bと、支持部15bの一部の上に設けられたキャビティ部15aと、を有している。キャビティ部15aと支持部15bとの境界(図16における破線)は、仮想的なものであってよい。放熱板15の主面P2は、キャビティ部15aからなるキャビティ面P2aと、支持部15bからなる接合面P2bと、を有している。放熱板15の主面P2においては、厚み方向において、キャビティ面P2aの位置と、接合面P2bの位置とが異なっており、後者の位置の方が放熱面P1に近い。キャビティ面P2aと接合面P2bとは、互いにおおよそ平行な面であってよい。主面P2はさらに、キャビティ部15aからなりキャビティ面P2aと接合面P2bとを互いにつなぐ側壁面P2cを有していてよい。放熱板15の側壁面P2cは、おおよそ厚み方向に沿っていてよい。側壁面P2cはセラミック枠体25に直接に接合された接合面であってよい。支持部15bの側面P4bは、セラミック枠体25に直接に接合された接合面を有していてよい。
【符号の説明】
【0072】
8 :半導体素子
9 :ワイヤ(配線部材)
11,15:放熱板
21~25:セラミック枠体
31G :セラミックグリーンシート
30 :リードフレーム(金属端子)
51~55:パッケージ
70 :接着層
80 :蓋体
90 :半導体モジュール
CV :キャビティ
P1 :放熱面
P2 :主面
P2a :キャビティ面
P2b :接合面
P3 :内面
P4a :外面
P4b :側面
SF :焼成体
SG :積層体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16