IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友金属鉱山株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-フレキシブル基板の製造方法 図1
  • 特開-フレキシブル基板の製造方法 図2
  • 特開-フレキシブル基板の製造方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019554
(43)【公開日】2024-02-09
(54)【発明の名称】フレキシブル基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 15/08 20060101AFI20240201BHJP
   H05K 3/18 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
B32B15/08 E
H05K3/18 H
H05K3/18 E
H05K3/18 J
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023211286
(22)【出願日】2023-12-14
(62)【分割の表示】P 2019193126の分割
【原出願日】2019-10-24
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001704
【氏名又は名称】弁理士法人山内特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 智治
(57)【要約】
【課題】高周波特性に優れるとともに、ベースフィルムと配線との密着性を高めることが可能なフレキシブル基板の製造方法を提供する。
【解決手段】フレキシブル基板の製造方法は、次の工程(1)~(4)を包含する。(1)第1下地金属層形成工程:高周波対応ベースフィルム11に、ニッケルクロム合金層14を形成し、第1基板を製造する工程。(2)第2下地金属層形成工程:第1基板に、下地銅層15を形成し、第2基板を製造する工程。(3)銅導体層形成工程:第2基板に銅導体層13を形成し、第3基板を製造する工程。(4)熱プレス工程:第3基板をあらかじめ定められた温度および圧力により加熱および加圧する工程。熱プレス工程を含むことにより、高周波対応ベースフィルム11とニッケルクロム合金層14との間の密着性を高めることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の工程(1)~(4);
(1)第1下地金属層形成工程:高周波対応ベースフィルムの少なくとも一方の面に、乾式めっき法によりニッケルクロム合金層を形成し、第1基板を製造する工程、
(2)第2下地金属層形成工程:前記第1基板の前記ニッケルクロム合金層がある面に、乾式めっき法により下地銅層を形成し、第2基板を製造する工程、
(3)銅導体層形成工程:前記第2基板の前記下地銅層がある面に湿式めっき法により銅導体層を形成し、第3基板を製造する工程、
(4)熱プレス工程:前記第3基板を、該第3基板に対向するように付着防止フィルムが設けられ、かつ内部にヒータが埋設された、一対の熱プレス板を用いて挟み込むことによりあらかじめ定められた温度および圧力により加熱および加圧する工程、
を包含する、
ことを特徴とするフレキシブル基板の製造方法。
【請求項2】
前記ニッケルクロム合金層の厚さが2nm以上4nm以下であり、
前記ニッケルクロム合金層におけるクロムの重量パーセントは12%以上50%以下であり、
前記下地銅層の厚さが50nm以上500nm以下であり、
前記熱プレス工程では、300℃以上360℃以下の温度で、かつ1MPa以上5MPa以下の圧力で加熱および加圧する、
ことを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル基板の製造方法。
【請求項3】
高周波対応ベースフィルムが、LCP(Liquid Crystal Plymer)、またはPEEK(Poly Ether Ether Ketone)である、
ことを特徴とする請求項1または2に記載のフレキシブル基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレキシブル基板の製造方法に関する。さらに詳しくは、高周波特性に優れたフレキシブル基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォン、携帯電話、タブレット端末などの携帯用電子端末におけるデータの送受信量が増大している。この送受信量に対応するため、これらの携帯用電子端末での通信速度は、より高速であること、すなわち高周波の無線通信であることが求められる。そのためこれらの携帯型電子端末に用いられる電子部品は、高周波の無線通信が行われた場合に伝送損失をより低くすることが求められる。
【0003】
携帯型電子端末では、狭い空間に部品を配置する必要性が高く、樹脂フィルムをベースとしたFPC(Flexible Printed Circuit)が用いられている。そして、従来多くのFPCでは、ポリイミドフィルムがベースフィルムとして用いられている。このポリイミドフィルムが用いられたFPCでは、ベースフィルムに乾式めっきをして下地金属層を形成した後、湿式めっきをして金属層を形成する製造方法が、多く採用されていた。
【0004】
しかし、上記のポリイミドフィルムは誘電特性が悪いため、高周波の無線通信で用いられた場合、伝送損失が大きくなるという問題がある。この問題を解決するため、ベースフィルムとして、誘電特性の良いLCP(Liquid Crystal Plymer)、またはPEEK(Poly Ether Ether Ketone)を用いたFPCが検討されている。特許文献1では、上記のベースフィルムを用いた金属張積層体の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008-110602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
LCP等をベースフィルムに用いてFPCを製造する主な製造方法としては、ベースフィルムに銅箔をラミネート法で貼り合わせる製造方法と、上記したように乾式めっきと湿式めっきとを組み合わせる製造方法がある。
【0007】
上記の方法のうち、ベースフィルムに銅箔をラミネート法で貼り合わせる製造方法では、密着性を上げるために銅箔表面の凹凸を大きくする必要があるが、この凹凸により伝送損失が大きくなるという課題がある。すなわち密着力を上げることと、伝送損失を下げることを両立させることが難しいという問題がある。これに対し、乾式めっきと湿式めっきとを組み合わせる製造方法では、ベースフィルムの材質に依存する問題、すなわち誘電特性がいいとされているLCPなどでは、乾式めっきとの間の密着力が低くなるという問題がある。
【0008】
本発明は上記事情に鑑み、高周波特性に優れるとともに、ベースフィルムと配線との密着性を高めることが可能なフレキシブル基板の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1発明のフレキシブル基板の製造方法は、次の工程(1)~(4);(1)第1下地金属層形成工程:高周波対応ベースフィルムの少なくとも一方の面に、乾式めっき法によりニッケルクロム合金層を形成し、第1基板を製造する工程、(2)第2下地金属層形成工程:前記第1基板の前記ニッケルクロム合金層がある面に、乾式めっき法により下地銅層を形成し、第2基板を製造する工程、(3)銅導体層形成工程:前記第2基板の前記下地銅層がある面に湿式めっき法により銅導体層を形成し、第3基板を製造する工程、(4)熱プレス工程:前記第3基板を、該第3基板に対向するように付着防止フィルムが設けられ、かつ内部にヒータが埋設された、一対の熱プレス板を用いて挟み込むことによりあらかじめ定められた温度および圧力により加熱および加圧する工程、を包含することを特徴とする。
第2発明のフレキシブル基板の製造方法は、第1発明において、前記ニッケルクロム合金層の厚さが2nm以上4nm以下であり、前記ニッケルクロム合金層におけるクロムの重量パーセントは12%以上50%以下であり、前記下地銅層の厚さが50nm以上500nm以下であり、前記熱プレス工程では、300℃以上360℃以下の温度で、かつ1MPa以上5MPa以下の圧力で加熱および加圧することを特徴とする。
第3発明のフレキシブル基板の製造方法は、第1発明または第2発明において、高周波対応ベースフィルムが、LCP(Liquid Crystal Plymer)、またはPEEK(Poly Ether Ether Ketone)であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
第1発明によれば、フレキシブル基板の製造方法が、湿式めっき法により銅層を形成された第3積層板を、あらかじめ定められた温度および圧力により、加熱および加圧する熱プレス工程を含むことにより、高周波対応ベースフィルムとニッケルクロム合金層との間の密着性を高めることができる。すなわち、高周波に対応することが可能なフレキシブル基板であるとともに、ベースフィルムと配線との密着性を高めたものを得ることができる。
第2発明によれば、300℃以上360℃以下の温度で、かつ1MPa以上5MP以下圧力で加熱および加圧することにより、高周波対応ベースフィルムとニッケルクロム合金層との密着力をより高めることができる。
第3発明によれば、高周波対応ベースフィルムがLCPまたはPEEKであることにより、これらのフィルムは入手性がいいので、高周波に対応可能なベースフィルムを容易に入手することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の製造方法を構成する熱プレス工程の一例の説明図である。
図2】本発明の実施形態に係るフレキシブル基板の製造方法で製造されたフレキシブル基板の拡大断面図である。
図3】表皮効果を説明するための、FPC上の配線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。ただし、以下に示す実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのフレキシブル基板の製造方法を例示するものであって、本発明はフレキシブル基板の製造方法を以下のものに特定しない。なお、各図面が示す部材の大きさまたは位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。
【0013】
(第1実施形態)
図2には、本発明の第1実施形態に係るフレキシブル基板の製造方法により製造した高周波対応フレキシブル基板10の断面図を示す。図2に示すように、高周波対応フレキシブル基板10は、高周波対応ベースフィルム11と、この高周波対応ベースフィルム11の両面に形成されている下地金属層12と、この下地金属層12に重畳して形成されている銅導体層13と、を含んで構成されている。下地金属層12は、たとえば、高周波対応ベースフィルム11側に設けられているニッケルクロム合金層14と下地銅層15とを積層して構成されている。なお、図2には高周波対応ベースフィルム11の両面に下地金属層12等が形成されているものが開示されているが、高周波対応ベースフィルム11の少なくとも一方の面に下地金属層12等が形成されているものの製造方法も本発明に含まれる。
【0014】
(高周波対応ベースフィルム11)
本実施形態に係る製造方法で用いられる高周波対応ベースフィルム11は、ポリイミドフィルムに対して、誘電特性が良いものが該当する。例えば、LCP(Liquid Crystal Plymer)、またはPEEK(Poly Ether Ether Ketone)が、高周波対応ベースフィルム11として好適である。これらのフィルムは、誘電特性が良く、高周波の無線通信に使用された場合でも伝送損失が大きくならない。ほかにも、ポリマー、PET(Polyethylene Terephthalate)、PEN(Polyethylene Naphthalate)、PTFE(Polytetrafluoroethylene)、COP(Cyclo Olefin Polymers)、SPS(Syndiotactic Polystyrene)、COC(Cyclic Olefin Copolymer)などのフィルムを用いることが可能である。
【0015】
高周波対応ベースフィルム11がLCPまたはPEEKであることにより、これらのフィルムは入手性がいいので、高周波に対応可能なベースフィルムを容易に入手することができる。
【0016】
(第1下地金属層形成工程)
本実施形態に係る製造方法では、第1下地金属層形成工程において、高周波対応ベースフィルム11の両面に乾式めっき法によりニッケルクロム合金層14を形成し、第1基板を製造する。すなわち本実施形態における第1基板は、高周波対応ベースフィルム11の両面に、ニッケルクロム合金層14のみが形成された状態の基板である。
【0017】
ニッケルクロム合金層14は、乾式メッキであるスパッタリングにより形成されるのが好ましい。なおニッケルクロム合金層14の形成は、他の乾式めっきである真空蒸着、イオンプレーティングであっても問題ない。
【0018】
ニッケルクロム合金層14の厚さは2nm以上50nm以下であることが好ましい。さらにニッケルクロム合金層14の厚さは2nm以上4nm以下であることが、より好ましい。ニッケルクロム合金層14の厚さが2nm未満である場合は、その後の各処理工程時に密着性の問題が生じやすい。また50nmよりも厚い場合は、配線加工時にニッケルまたはクロムの除去が困難になるとともに、ニッケルクロム合金層14にクラックまたはそりが生じやすくなり、この点において、高周波対応ベースフィルム11と下地金属層12との密着性の問題が生じやすくなる。加えてニッケルクロム合金層14の厚さが50nmよりも大きいと、高周波での通信に影響を与える。この影響を少なくするためにニッケルクロム合金層14の厚さは4nm以下がより好ましい。
【0019】
高周波での通信が行われる場合、表皮効果により配線を通過する電流は、より表皮付近を流れることになる。図3には、表皮効果を説明するための、FPC上の配線の断面図を示す。すなわち、図3は、フレキシブル基板に対しエッチング等を行った後のFPCの上に存在する配線のうちの一つを取り上げた断面図となる。高周波対応ベースフィルム11上に、ニッケルクロム合金層14と下地銅層15とからなる下地金属層12が設けられており、この下地金属層12に重畳して銅導体層13が設けられている。
【0020】
例えば表皮効果が発生すると、電流は、表皮部分(図3でドット表示をした部分)で流れやすく、内部で流れにくくなる。実際には、表皮効果は段階的に表れるものであるが、図3では理解しやすくするために、表皮部分とその他の部分で分けて記載している。ここで表皮部分にはニッケルクロム合金層14が含まれることとなり、電気抵抗を考慮すると、ニッケルクロム合金層14の抵抗は銅導体層13等よりも高く、電流は流れにくい。しかし、高周波での通信においては、表皮部分に流れる電流が大きくなるため、抵抗が高いニッケルクロム合金層14がない、またはできるだけ薄くするほうが配線全体の抵抗の減少につながると推定される。このため、ニッケルクロム合金層14の厚さは4nm以下がより好ましい。
【0021】
ニッケルクロム合金層14におけるクロムの重量パーセントは12パーセント以上50パーセント以下であることが好ましい。
【0022】
(第2下地金属層形成工程)
本実施形態に係る製造方法では、第2下地金属層形成工程において、第1基板の両面に乾式めっき法により下地銅層15を形成し、第2基板を製造する。すなわち本実施形態における第2基板は、第1基板の両面に、下地銅層15のみが形成された状態の基盤である。
【0023】
下地銅層15は、乾式メッキであるスパッタリングにより形成されるのが好ましい。なお下地銅層15の形成は、他の乾式めっきである真空蒸着、イオンプレーティングであっても問題ない。
【0024】
下地銅層15の厚さは、50nm以上500nm以下であることが好ましい。下地銅層15の厚さが50nm未満である場合、ピンホールによる欠陥の軽減効果が少なくなるとともに、その後に行われる湿式めっきの際に通電不良を引き起こす可能性がある。また、500nmを超えると、下地銅層15にクラックまたはそりが生じやすくなり、この点において高周波対応ベースフィルム11と下地金属層12との密着性の問題を生じやすくなる。
【0025】
(銅導体層形成工程)
本実施形態に係る製造方法では、銅導体層形成工程において、第2基板の両面に湿式めっきにより銅導体層13を形成し、第3基板を製造する。すなわち本実施形態における第3基板は、第2基板の両面に、銅導体層13のみが形成された状態の基盤である。
【0026】
銅導体層13は、下地金属層12の表面に直接形成されている。本実施形態に係る製造方法で製造された高周波対応フレキシブル基板10が、セミアディティブ法によりフレキシブル配線基板となる場合は、銅導体層13の厚さは2μm前後である。これは高周波対応フレキシブル基板10のハンドリング性が良好になるからである。また、本実施形態に係る製造方法で製造された高周波対応フレキシブル基板10が、サブトラクティブ法によりフレキシブル配線基板となる場合は、銅導体層13の厚さは8μm前後である。なお高周波対応フレキシブル基板10は、これらの厚さに限定されない。本実施形態に係る製造方法で実施される湿式めっきは、公知の電気めっきである。
【0027】
(熱プレス工程)
図1には、本実施形態に係る製造方法を構成する熱プレス工程の一例の説明図である。本実施形態における熱プレス工程では、銅導体層13までが形成された第3基板の両面から熱プレス板21が用いられ、あらかじめ定められた温度および圧力により加熱および加圧する工程である。この工程を経て得られた高周波対応フレキシブル基板10は、高周波に対応することが可能であるとともに、高周波対応ベースフィルム11と配線(本実施形態ではニッケルクロム合金層14、下地銅層15、銅導体層13を含む)との密着性を高めることができる。
【0028】
なお熱プレス工程の一例として、図1に示したような熱プレス板21で挟み込む方法が示されたが、熱プレスの方法はこれに限定されない。例えば、ロール状のもので第3基板を所定の圧力で挟み込みながら、この挟み込まれた第3基板の温度を所定の温度に上げるようにする方法が該当する。
【0029】
図1に示すように、本実施形態に係る熱プレス工程では、高周波対応フレキシブル基板10は、付着防止フィルム23、金属板22を介して、ヒータ20が埋設された一対の熱プレス板21の間に挿入され、加熱・加圧される。
【0030】
付着防止フィルム23は、加熱・加圧時の高周波対応フレキシブル基板10が周りの部材へ付着したり、高周波対応フレキシブル基板10の表面に傷がついたりするのを防止するもので、例えば熱硬化したポリイミドフィルム等が用いられる。金属板22は、熱プレス板21に傷が入るのを防止するためのもので、例えばステンレス(SUS)またはチタン(Ti)の厚さ約2mmの板が用いられる。
【0031】
銅導体層13までが形成された第3基板および上記の各プレス部材を配置した後、第3基板が300℃以上300℃以上360℃以下になるように、かつ図示しないプレス機により熱プレス板21を介して、第3基板に1MPa以上5MPa以下の圧力を印加する。そして第3基板は、あらかじめ定められた時間、例えば10~30分間の間、加熱および加圧される。
【0032】
熱プレス工程により第3基板に、あらかじめ定められた温度および圧力により加熱および加圧されることにより、高周波対応ベースフィルム11とニッケルクロム合金層14との間の密着性が高まるはっきりとした理由は不明である。しかし、高周波対応ベースフィルム11の材料としての流動性が高くなり、ニッケルクロム合金層14との密着性が高くなること、またニッケルクロム合金層14内のニッケルが高周波対応ベースフィルム11に向けて動作し、銅元素が高周波対応ベースフィルム11に拡散することが抑制されること、などが原因と考えらえる。
【0033】
フレキシブル基板の製造方法が、湿式めっき法により銅層を形成された第3積層板を、あらかじめ定められた温度および圧力により、加熱および加圧する熱プレス工程を含むことにより、高周波対応ベースフィルム11とニッケルクロム合金層14との間の密着性を高めることができる。すなわち、高周波に対応することが可能なフレキシブル基板であるとともに、ベースフィルムと配線との密着性を高めたものが得られる。
【0034】
300℃以上360℃以下の温度で、かつ1MPa以上5MP以下圧力で加熱および加圧することにより、高周波対応ベースフィルム11とニッケルクロム合金層14との密着力をより高めることができる。
【0035】
(実施例)
以下、本発明の実施例と比較例を示して説明する。なお、本発明に係るフレキシブル基板の製造方法は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
【0036】
(実施例1)
高周波対応ベースフィルム11として、PEEKが用いられた。第1下地金属層形成工程において、この高周波対応ベースフィルム11の両面に、スパッタリングにより3nmのニッケルクロム合金層14が形成された第1基板が製造された。次に第2下地金属層形成工程において、ニッケルクロム合金層14に重畳して、80nmの下地銅層15が形成された第2基板が製造された。これらのニッケルクロム合金層14と下地銅層15は、下地金属層12を形成している。また実施例1では、ニッケルクロム合金層14のクロムの割合は、20重量パーセントであり、他の金属のほとんどはニッケルである。銅導体層形成工程では、下地金属層12に重畳して、電気銅めっき処理により12μmの銅導体層13が形成された第3基板が製造された。この後、この第3基板に対し、熱プレス工程が実施された。熱プレス工程では、第3基材の温度が340℃となるように、かつ圧力5MPaで、第3基板が加熱および加圧された。これにより高周波対応フレキシブル基板10が得られた。上記の条件を表1に示す。
【0037】
上記の条件で製造された高周波対応フレキシブル基板10について、密着力を測定する試験が行われた。密着力は、JIS C6471の「8.1 銅はくの引きはがし強さ」に記載の試験方法で求められた。実施例1の製造方法で製造された高周波対応フレキシブル基板10では、0.9kN/mの密着力が得られた。結果を表1に示す。密着力として、0.8kN/m以上を合格とされるので、上記の条件で製造された高周波対応フレキシブル基板10は、十分に強い密着力が得られた。
【0038】
(比較例1)
熱プレス工程がない点以外は、実施例1と同じ条件とした。比較例1の条件、および密着力の測定結果を表1に示す。
【0039】
密着力として0.3kN/mとなり、密着力として0.8kN/mが合格であるので、得られた密着力は不十分なものであった。
【0040】
【表1】
【符号の説明】
【0041】
10 高周波対応フレキシブル基板
11 高周波対応ベースフィルム
13 銅導体層
14 ニッケルクロム合金層
15 下地銅層
図1
図2
図3