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特開2024-1964ベクトルポテンシャル発生装置、ベクトルポテンシャルコイル配置方法、ベクトルポテンシャルトランス、および非接触給電システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001964
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】ベクトルポテンシャル発生装置、ベクトルポテンシャルコイル配置方法、ベクトルポテンシャルトランス、および非接触給電システム
(51)【国際特許分類】
   H01F 5/00 20060101AFI20231228BHJP
   A61N 2/04 20060101ALI20231228BHJP
   H01F 27/28 20060101ALI20231228BHJP
   H01F 30/10 20060101ALI20231228BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01F5/00 F
A61N2/04
H01F5/00 J
H01F27/28 K
H01F27/28 123
H01F30/10 C
H01F38/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100853
(22)【出願日】2022-06-23
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 公益社団法人応用物理学会東北支部,2021年(令和3年)応用物理学会東北支部第76回学術講演会予稿集,第92頁~第93頁,令和3年11月25日 2021年(令和3年)応用物理学会東北支部第76回学術講演会,令和3年12月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000107804
【氏名又は名称】スミダコーポレーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504165591
【氏名又は名称】国立大学法人岩手大学
(74)【代理人】
【識別番号】100114971
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修
(72)【発明者】
【氏名】大坊 真洋
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 旭飛
(72)【発明者】
【氏名】金子 卓樹
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 正樹
(72)【発明者】
【氏名】デトモド ティタポーン
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 健治
(72)【発明者】
【氏名】芳井 義治
【テーマコード(参考)】
4C106
5E043
【Fターム(参考)】
4C106AA06
4C106BB25
4C106CC03
4C106EE01
4C106FF01
5E043AA02
5E043AB01
5E043BA01
(57)【要約】
【課題】 ベクトルポテンシャルの印加対象の制約が少ないベクトルポテンシャル発生装置を得る。
【解決手段】 ベクトルポテンシャルコイル11は、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルであり、強磁性体部材11Aは、そのソレノイドコイル内でそのコイル軸に沿って延びている。電源装置は、ベクトルポテンシャルコイル11に電流を導通させる。そして、ベクトルポテンシャルコイル11および強磁性体部材11Aは、周方向において開口部14を備える。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルコイルと、
前記ソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿って延びる強磁性体部材と、
前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させる電源装置とを備え、
前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材は、周方向において開口部を備えること、
を特徴とするベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項2】
前記ベクトルポテンシャルコイルを含む、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルと、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルのソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿ってそれぞれ延びる複数の強磁性体部材とを備え、
前記電源装置は、前記複数のベクトルポテンシャルコイルに対して電流を導通させること、
を特徴とする請求項1記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項3】
前記コイル軸は円弧状であり、
前記コイル軸を含む円の中心から見た前記ベクトルポテンシャルコイルの一端から他端までの角度は、360度未満であること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項4】
前記強磁性体部材は、導電性を有し、
前記ベクトルポテンシャルコイルの一端と前記強磁性体部材の一端とが互いに電気的に接続されており、
前記電源装置は、前記ベクトルポテンシャルコイルの他端および前記強磁性体部材の他端に電圧を印加して前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項5】
前記強磁性体部材は、前記ベクトルポテンシャルコイルの外側に延びて閉磁路を形成することを特徴とする請求項1または請求項2記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項6】
前記ベクトルポテンシャルコイルは、同一の湾曲した前記コイル軸に沿ってそれぞれ延びる内側ソレノイドコイルおよび外側ソレノイドコイルを備え、
前記内側ソレノイドコイルの一端と前記外側ソレノイドコイルの一端が互いに電気的に接続されており、
前記電源装置は、前記内側ソレノイドコイルの他端および前記外側ソレノイドコイルの他端に電圧を印加して前記ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させること、
を特徴とする請求項1または請求項2記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項7】
前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材を支持する支持体をさらに備え、
前記支持体は、人体の頭部に貼着されることなく、前記人体の脳にベクトルポテンシャルを発生させる位置に前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材を配置すること、
を特徴とする請求項1記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項8】
湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルコイルおよび前記ソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿って延びる強磁性体部材を支持する支持体で、人体の頭部に前記支持体を貼着することなく、前記人体の脳にベクトルポテンシャルを発生させる位置に前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材を配置すること、
を特徴とするベクトルポテンシャルコイル配置方法。
【請求項9】
それぞれのコイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルと、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させる電源装置とを備え、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、直線状または曲線状の配列方向に沿って配列されること、
を特徴とするベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項10】
前記複数のソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿ってそれぞれ延びる複数の強磁性体部材をさらに備えることを特徴とする請求項9記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項11】
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、それぞれ、直線状のコイル軸に沿って巻回されており、また、前記コイル軸の方向に沿って、巻回方向の傾斜角が徐々に変化するように巻回されていることを特徴とする請求項9または請求項10記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項12】
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、円弧状の配列方向に沿って、前記配列方向の円弧を含む円についての所定の中心角の範囲において配列されており、
前記所定の中心角は、180度未満のいずれかの角度であること、
を特徴とする請求項9または請求項10記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項13】
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、それぞれ、湾曲したコイル軸に沿って巻回されており、前記コイル軸の湾曲内側方向が互いに交差するように配列されていることを特徴とする請求項9または請求項10記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項14】
前記複数のベクトルポテンシャルコイルを支持する支持体をさらに備え、
前記支持体は、人体の頭部に貼着されることなく、前記人体の脳にベクトルポテンシャルを発生させる位置に前記複数のベクトルポテンシャルコイルを配置すること、
を特徴とする請求項9記載のベクトルポテンシャル発生装置。
【請求項15】
それぞれのコイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルを支持する支持体で、人体の頭部に前記支持体を貼着することなく、前記人体の脳にベクトルポテンシャルを発生させる位置に前記複数のベクトルポテンシャルコイルを配置すること、
を特徴とするベクトルポテンシャルコイル配置方法。
【請求項16】
請求項1または請求項9記載のベクトルポテンシャル発生装置と、
受電側装置とを備え、
前記受電側装置は、前記ベクトルポテンシャル発生装置により発生したベクトルポテンシャルを感受し、前記ベクトルポテンシャルによって2次電圧を誘起される2次導体部材と、前記2次電圧で得られる電力を負荷に供給する電源回路とを備えること、
を特徴とする非接触給電システム。
【請求項17】
湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルコイルと、
前記ソレノイドコイル内で前記コイル軸に沿って延びる強磁性体部材と、
前記ベクトルポテンシャルコイルの発生する前記ベクトルポテンシャルを感受し、前記ベクトルポテンシャルによって2次電圧を誘起される2次導体部材とを備え、
前記ベクトルポテンシャルコイルおよび前記強磁性体部材は、周方向において開口部を備えること、
を特徴とするベクトルポテンシャルトランス。
【請求項18】
それぞれのコイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルと、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルの発生する前記ベクトルポテンシャルを感受し、前記ベクトルポテンシャルによって2次電圧を誘起される2次導体部材とを備え、
前記複数のベクトルポテンシャルコイルは、直線状または曲線状の配列方向に沿って配列されること、
を特徴とするベクトルポテンシャルトランス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベクトルポテンシャル発生装置、ベクトルポテンシャルコイル配置方法、ベクトルポテンシャルトランス、および非接触給電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ソレノイドコイルを周回させたベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させてベクトルポテンシャルを発生するベクトルポテンシャル発生装置が開発されており、ベクトルポテンシャルを利用して電力を伝達するベクトルポテンシャルトランスや、ベクトルポテンシャルによる生体深部への刺激が提案されている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
また、ベクトルポテンシャルコイルに直列に接続される戻り電流用導体によって、ベクトルポテンシャルコイルの内部領域(ソレノイドコイルの巻回、つまり、コイル軸の巻回によって形成される中空領域)を実質的に無磁場状態にするベクトルポテンシャル発生装置も開発されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
また、時間変化するベクトルポテンシャルによって電圧が誘起されることを利用してベクトルポテンシャルを検出するベクトルポテンシャル検出装置も開発されている(例えば特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2015/099147
【特許文献2】特許第6205572号明細書
【特許文献3】特許第6950925号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述のベクトルポテンシャルコイルは1周以上周回しており、発生したベクトルポテンシャルを良好な強度で印加する対象(例えば2次側の導体)を、略円環状のベクトルポテンシャルコイルの内部領域に配置する必要があり、ベクトルポテンシャルの印加対象が、ベクトルポテンシャルコイルの内部領域に挿入できるものに制約されてしまっている。
【0007】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、ベクトルポテンシャルの印加対象の制約が少ないベクトルポテンシャル発生装置およびベクトルポテンシャルコイル配置方法、並びに、そのベクトルポテンシャル発生装置を利用可能なベクトルポテンシャルトランス、および非接触給電システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るベクトルポテンシャル発生装置は、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルコイルと、そのソレノイドコイル内でそのコイル軸に沿って延びる強磁性体部材と、ベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させる電源装置とを備える。そして、ベクトルポテンシャルコイルおよび強磁性体部材は、周方向において開口部を備える。
【0009】
本発明に係るベクトルポテンシャルコイル配置方法は、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルコイルおよびソレノイドコイル内でコイル軸に沿って延びる強磁性体部材を支持する支持体で、人体の頭部にその支持体を貼着することなく、人体の脳にベクトルポテンシャルを発生させる位置にベクトルポテンシャルコイルおよび強磁性体部材を配置する。
【0010】
本発明に係るベクトルポテンシャル発生装置は、それぞれのコイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルと、その複数のベクトルポテンシャルコイルに電流を導通させる電源装置とを備える。そして、その複数のベクトルポテンシャルコイルは、直線状または曲線状の配列方向に沿って配列される。
【0011】
本発明に係るベクトルポテンシャルコイル配置方法は、それぞれのコイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルを支持する支持体で、人体の頭部にその支持体を貼着することなく、人体の脳にベクトルポテンシャルを発生させる位置に複数のベクトルポテンシャルコイルを配置する。
【0012】
本発明に係る非接触給電システムは、上記のいずれかのベクトルポテンシャル発生装置と、受電側装置とを備える。そして、受電側装置は、ベクトルポテンシャル発生装置により発生したベクトルポテンシャルを感受し、ベクトルポテンシャルによって2次電圧を誘起される2次導体部材と、その2次電圧で得られる電力を負荷に供給する電源回路とを備える。
【0013】
本発明に係るベクトルポテンシャルトランスは、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであるベクトルポテンシャルコイルと、そのソレノイドコイル内でそのコイル軸に沿って延びる強磁性体部材と、そのベクトルポテンシャルを感受し、そのベクトルポテンシャルによって2次電圧を誘起される2次導体部材とを備える。そして、ベクトルポテンシャルコイルおよび強磁性体部材は、周方向において開口部を備える。
【0014】
本発明に係るベクトルポテンシャルトランスは、それぞれのコイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである複数のベクトルポテンシャルコイルと、その複数のベクトルポテンシャルコイルの発生するベクトルポテンシャルを感受し、そのベクトルポテンシャルによって2次電圧を誘起される2次導体部材とを備える。そして、その複数のベクトルポテンシャルコイルは、直線状または曲線状の配列方向に沿って配列される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ベクトルポテンシャルの印加対象の制約が少ないベクトルポテンシャル発生装置およびベクトルポテンシャルコイル配置方法、並びに、そのベクトルポテンシャル発生装置を利用可能なベクトルポテンシャルトランス、および非接触給電システムが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本発明の実施の形態に係るベクトルポテンシャル発生装置10の構成を示すブロック図である。
図2図2は、図1に示すベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す図である。
図3図3は、実施の形態1におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。
図4図4は、実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置10によるベクトルポテンシャルの印加の一例を示す図である。
図5図5は、本発明の実施の形態2に係る非接触給電システムの構成を示すブロック図である。
図6図6は、図5に示す非接触給電システムにおけるベクトルポテンシャルコイル装置1および2次導体部材21の一例を示す図である。
図7図7は、本発明の実施の形態4に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図8図8は、本発明の実施の形態5に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図9図9は、本発明の実施の形態6に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図10図10は、本発明の実施の形態7に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図11図11は、実施の形態7に係るベクトルポテンシャル発生装置10を内蔵したベッドの一例を示す図である。
図12図12は、本発明の実施の形態8に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図13図13は、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
図14図14は、本発明の実施の形態10に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す正面図である。
図15図15は、本発明の実施の形態10に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す上面図である。
図16図16は、本発明の実施の形態10に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0018】
実施の形態1.
【0019】
図1は、本発明の実施の形態に係るベクトルポテンシャル発生装置10の構成を示すブロック図である。図1に示すベクトルポテンシャル発生装置10は、ベクトルポテンシャルコイル装置1および電源装置2を備える。
【0020】
図2は、図1に示すベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す図である。ベクトルポテンシャルコイル装置1は、例えば図2に示すようなベクトルポテンシャルコイル(以下、VPコイルともいう)11を備える。VPコイル11は、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルである。
【0021】
図3は、実施の形態1におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の一例を示す図である。例えば図3に示すように、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、上述のVPコイル11とともに、強磁性体部材11Aを備える。強磁性体部材11Aは、上述のソレノイドコイル内で上述のコイル軸に沿って延びる形状を有し、強磁性体材料で形成されている。
【0022】
VPコイル11を導通する電流によるベクトルポテンシャルは、電流から離れるにつれて弱くなるが、上述のようにVPコイル11および強磁性体部材11A、湾曲しているため、湾曲の内側方向(円弧状の場合はその曲率中心)では、VPコイル11の各位置の電流で発生したベクトルポテンシャルが重なり合うので強度が大きくなる。また、強磁性体部材11の実効透磁率に応じてベクトルポテンシャルが増強されるため、湾曲の内側方向(円弧状の場合はその曲率中心)では、ベクトルポテンシャルの強度が大きくなる。
【0023】
図1に示す電源装置2は、商用電源や電池(1次電池または2次電池)などの電力に基づいて電流を生成し、その電流(ここでは、所定の周波数の交流電流)をVPコイル11に導通させる。なお、電源装置2が電池の電力で電流をVPコイル11に導通させる場合、当該ベクトルポテンシャル発生装置10を、その電池を内蔵したポータブルな装置としてもよい。
【0024】
そして、例えば図3に示すように、VPコイル11および強磁性体部材11Aは、周方向において開口部14を備える。つまり、VPコイル11のコイル軸は1周以上周回されていない。
【0025】
例えば、上述のコイル軸は円弧状であり、そのコイル軸(つまり、円弧)を含む円の中心から見たVPコイル11(のコイル軸)の一端から他端までの角度(中心角)は、360度未満とされ、同様に、そのコイル軸を含む円の中心から見た強磁性体部材11Aの一端から他端までの角度(中心角)は、360度未満とされる。これにより、開口部14が形成される。例えば、その中心角は、180度でもよく、また、180度未満でもよい。ただし、中心角が大きいほど、湾曲内側方向のベクトルポテンシャルの強度が大きくなるため、中心角が大きいほうが好ましい。この中心角は、0度より大きく360度未満のいずれかの角度とされ、さらに、(a)0度より大きく180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(b)0度より大きく90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(c)0度より大きく45度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(d)0.5度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(e)0.5度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(f)0.5度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(e)0.5度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(f)0.5度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(g)2度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(h)2度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(i)2度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(j)2度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(k)2度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよく、あるいは、(l)5度以上であり360度未満のいずれかの角度とされてもよく、さらに、(m)5度以上であり180度以下のいずれかの角度とされてもよく、(n)5度以上であり90度以下のいずれかの角度とされてもよく、(o)5度以上であり45度以下のいずれかの角度とされてもよく、(p)5度以上であり25度以下のいずれかの角度とされてもよい。また、湾曲内側方向からの、VPコイル11へのベクトルポテンシャルの印加対象の着脱を考慮した場合、開口部14が大きいほうが好ましい(つまり、印加対象の形状やサイズに応じて、上述のコイル軸の曲率半径および/または上述の中心角が決定される)。
【0026】
図4は、実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置10によるベクトルポテンシャルの印加の一例を示す図である。例えば図4に示すように、この開口部14に、ベクトルポテンシャルの印加対象(図4では、人体の足101)が配置される。
【0027】
また、実施の形態1では、強磁性体部材11Aは、導電性を有するパーマロイなどの材料で形成されており、VPコイル11の一端と強磁性体部材11Aの一端(端部11A1)とが互いに電気的に接続されており、電流の経路となる。そして、電源装置2は、VPコイル11の他端および強磁性体部材11Aの他端に電圧を印加してVPコイル11に電流を導通させる。ここでは、電源装置2は、VPコイル11の他端に電気的に接続された端子12と強磁性体部材11Aの他端(端部11A2)に電気的に接続された端子13とに電圧を印加してVPコイル11に電流を導通させる。
【0028】
また、VPコイル11のコイル軸は1周以上周回していないので、VPコイル11の両端の距離が大きくなるが、強磁性体部材11Aが電流の経路とされ、VPコイル11のいずれか一方の端部側に2つの端子12,13が配置されているため、電源装置2からVPコイル11および強磁性体部材11Aまでの配線を流れる経路が囲む面積が比較的狭くなり、この配線を流れる電流に起因して発生する不要な磁場が抑制される。
【0029】
次に、実施の形態1に係るベクトルポテンシャル発生装置10の動作について説明する。
【0030】
電源装置2は、ベクトルポテンシャル発生装置10における上述の端子12,13に所定の電圧を印加し、VPコイル11および強磁性体部材11Aに電流を導通させる。
【0031】
VPコイル11を導通する電流によって磁場がコイル軸に沿って発生し、その電流に平行にベクトルポテンシャルが発生し、VPコイル11の湾曲内側方向における(つまり、開口部14周辺の)ベクトルポテンシャルの強度が、VPコイル11の湾曲外側方向におけるベクトルポテンシャルより大きくなる。
【0032】
そのため、この開口部14に配置されたベクトルポテンシャルの印加対象に効果的にベクトルポテンシャルが印加される。
【0033】
以上のように、上記実施の形態1によれば、VPコイル11は、湾曲したコイル軸に沿って延びるソレノイドコイルであり、強磁性体部材11Aは、そのソレノイドコイル内でそのコイル軸に沿って延びている。電源装置2は、VPコイル11に電流を導通させる。そして、VPコイル11および強磁性体部材11Aは、周方向(つまり、1周未満で周回しているVPコイル11および強磁性体部材11Aの周方向)において開口部14を備える。
【0034】
これにより、開口部14において、あるいは、開口部14を介してVPコイル11の内部領域に、ベクトルポテンシャルの印加対象を配置させることができるため、ベクトルポテンシャルの印加対象の制約が少ない。
【0035】
例えば、人体の肩などにベクトルポテンシャルを印加したい場合において、円環状のVPコイルを使用するには人体の胴が中空部に入る比較的大きいVPコイルが必要になるが、実施の形態1に示すようなVPコイル11を使用することで、比較的小さいVPコイル11でそのような箇所にも効果的にベクトルポテンシャルを印加できる。
【0036】
実施の形態2.
【0037】
図5は、本発明の実施の形態2に係る非接触給電システムの構成を示すブロック図である。図5に示すように、実施の形態2に係る非接触給電システムは、上述のベクトルポテンシャル発生装置10と、受電側装置30とを備える。受電側装置30は、ベクトルポテンシャルの印加対象としての2次導体部材21と、電源回路22と、負荷23とを備える。
【0038】
2次導体部材21は、ベクトルポテンシャル発生装置10により交流電流で発生したベクトルポテンシャルを感受し、上述の特許文献3に示されているようにベクトルポテンシャルの時間変化によって2次電圧(交流電圧)を誘起される。
【0039】
図6は、図5に示す非接触給電システムにおけるベクトルポテンシャルコイル装置1および2次導体部材21の一例を示す図である。
【0040】
この実施の形態では、例えば図6に示すように、2次導体部材21は、直線状の導電性のある部材であって、ベクトルポテンシャル発生装置10により発生したベクトルポテンシャルに対して平行になるように(つまり、VPコイル11のコイル軸を含む平面に対して垂直な方向になるように)配置される。なお、2次導体部材21は、VPコイル11のコイル軸の曲率中心に配置されるのが好ましい。
【0041】
また、電源回路22は、2次導体部材21の端子21A,21Bに接続され、端子21A,21B間に発生する電圧(つまり、上述の2次電圧)で得られる電力を負荷23に供給する。電源回路22は、例えば整流平滑回路を備え、その2次電圧で得られる電力を直流電力に変換し、その直流電力を負荷23に供給する。
【0042】
次に、実施の形態2に係る非接触給電システムの動作について説明する。
【0043】
実施の形態1で述べたように、ベクトルポテンシャル発生装置10により、比較的強度の大きいベクトルポテンシャルが、開口部14またはその周辺に配置された受電側装置30の2次導体部材21に発生する。これにより、2次導体部材21において、2次電圧が発生する。電源回路22は、この2次電圧に基づく電力を負荷23に供給する。
【0044】
以上のように、上記実施の形態2によれば、受電側装置30では、2次導体部材21は、ベクトルポテンシャル発生装置10により発生したベクトルポテンシャルを感受し、ベクトルポテンシャルによって2次電圧を誘起され、電源回路22は、その2次電圧で得られる電力を負荷23に供給する。
【0045】
これにより、ベクトルポテンシャル発生装置10から受電側装置30へ非接触で給電される。
【0046】
実施の形態3.
【0047】
本発明の実施の形態3に係るベクトルポテンシャルトランスは、上述のVPコイル11、上述の強磁性体部材11A、および上述の2次導体部材21を備える。これにより、VPコイル11(つまり、1次側)から2次導体部材21(つまり、2次側)へ電力を伝達する。このベクトルポテンシャルトランスは、VPコイル11、強磁性体部材11A、および2次導体部材21を備える1つの装置となっており、VPコイル11および強磁性体部材11Aと2次導体部材21との相対的な位置関係は固定となっている。
【0048】
なお、実施の形態3に係るベクトルポテンシャルトランスにおいて使用されるVPコイル11は、1つでも複数でもよく、また、他の実施の形態のいずれかのVPコイル11を適宜使用してもよい。
【0049】
実施の形態4.
【0050】
図7は、本発明の実施の形態4に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0051】
実施の形態4では、例えば図7に示すように、VPコイル11(つまり、ソレノイドコイル)の内部に、強磁性体部材11Bが配置されている。この強磁性体部材11Bは、強磁性体部材11Aと同様に、VPコイル11のコイル軸に沿った形状を有し、さらに、VPコイル11の外側(湾曲外側方向)に延びて閉磁路を形成している。
【0052】
強磁性体部材11Bは、導電性のある強磁性材料(例えばパーマロイなどといった金属磁性体)の部材であり、VPコイル11の一方のコイル端側の接続点11B1と、VPコイル11の他方のコイル端側の接続点11B2とを有し、接続点11B1において、VPコイル11の一方のコイル端が、強磁性体部材11Bに電気的に接続されている。
【0053】
また、VPコイル11の他方のコイル端が端子12に電気的に接続され、強磁性体部材11Bの接続点11B2が引き出し線を介して端子13に電気的に接続されており、電源装置2は、端子12,13に電圧を印加して、VPコイル11に電流を導通させる。
【0054】
なお、この強磁性体部材11Bには、VPコイル11の湾曲外側方向においてギャップ11B3が形成されており、ギャップ11B3によって、強磁性体部材11Bにおける、VPコイル11の湾曲の外側の部分を電流が導通しないようになっている。
【0055】
また、強磁性体部材11Bにおける内側部分と外側部分との移行部分は、磁束の漏洩や曲げ加工による透磁率減少の影響を小さくするために、急峻な屈曲箇所のないように、連続的に滑らかな曲線状とされることが好ましい。また、強磁性体部材11Bは複数部材を連結して形成されるようにしてもよい。
【0056】
なお、実施の形態4に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1は、実施の形態1~3のいずれにも適用可能である。
【0057】
実施の形態5.
【0058】
図8は、本発明の実施の形態5に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0059】
実施の形態5では、例えば図8に示すように、VPコイル11は、同一の湾曲したコイル軸に沿ってそれぞれ延びコイル径の互いに異なる内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を備え、内側ソレノイドコイル11-1の一方のコイル端と外側ソレノイドコイル11-2の一方のコイル端とが電気的に接続されている。内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2は、それぞれ1本のVPコイルとして機能するものであり、したがって、実施の形態5のVPコイル11は、電気的には、2本のVPコイルを同相で直列接続した構成となっている。
【0060】
さらに、実施の形態5では、例えば図8に示すように、VPコイル11(内側ソレノイドコイル11-1)の内部に、強磁性体部材11Cが配置されている。この強磁性体部材11Cは、上述の強磁性体部材11Aと同様のものである。ただし、VPコイル11と強磁性体部材11Cとは電気的に接続されておらず、強磁性体部材11Cは、導電性を有していなくてもよい。
【0061】
電源装置2は、内側ソレノイドコイル11-1の他端および外側ソレノイドコイルの他端11-2に電圧を印加してVPコイル11に電流を導通させる。具体的には、電源装置2は、内側ソレノイドコイル11-1の他端に電気的に接続された端子12および外側ソレノイドコイルの他端11-2に電気的に接続された端子13に電圧を印加してVPコイル11に電流を導通させる。
【0062】
なお、実施の形態5に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1は、実施の形態1~3のいずれにも適用可能である。
【0063】
実施の形態6.
【0064】
図9は、本発明の実施の形態6に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0065】
実施の形態6では、例えば図9に示すように、VPコイル11は、実施の形態5と同様の内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を備える。さらに、実施の形態6では、例えば図9に示すように、VPコイル11(内側ソレノイドコイル11-1)の内部に、強磁性体部材11Dが配置されている。この強磁性体部材11Dは、上述の強磁性体部材11Bと同様のものである。ただし、VPコイル11と強磁性体部材11Dとは電気的に接続されておらず、強磁性体部材11Dは、導電性を有していなくてもよく、ギャップは設けられていない。つまり、実施の形態6では、交流電流が内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2を導通し、強磁性体部材11Dを導通しないため、強磁性体部材11Dは導電性やギャップを必要としない。
【0066】
なお、実施の形態6に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1のその他の構成および動作については実施の形態5と同様であるので、その説明を省略する。
【0067】
実施の形態7.
【0068】
図10は、本発明の実施の形態7に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0069】
実施の形態7では、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、複数のVPコイル11を備える。実施の形態7における各VPコイル11は、直線状のコイル軸を有し、コイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである。この複数のVPコイル11は、直線状の配列方向に沿って配列されている。つまり、ベクトルポテンシャルコイル装置1の外形は、略平板状になっている。電源装置2は、複数のVPコイル11に電流を導通させる。なお、複数のVPコイル11は、電気的に、直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。また、複数の電源装置2が複数のVPコイル11に電流をそれぞれ導通させるようにしてもよい。その場合、複数のVPコイル11に導通する交流電流が同期するように、複数の電源装置2が複数のVPコイル11に交流電流をそれぞれ導通させる。さらに、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、上述の強磁性体部材と同様に複数のVPコイル11のコイル軸に沿って延びる複数の強磁性体部材(図示せず)を備える。
【0070】
このように、VPコイル11を複数設けることで、印加対象に印加されるベクトルポテンシャルの強度が大きくなる。
【0071】
図11は、実施の形態7に係るベクトルポテンシャル発生装置10を内蔵したベッドの一例を示す図である。例えば図11に示すように、ベッド201のマットレス211に上述の複数のVPコイル11が内蔵されており、電源装置2がベッド201の本体などに設置される。これにより、ベッド201に寝ている人に対してベクトルポテンシャルが印加される。なお、図11では、ベッド201の長手方向(人体の長手方向)に対して垂直方向に沿ってVPコイル11が配置されているが、ベッド201の長手方向(人体の長手方向)に沿ってVPコイル11が配置されていてもよい。また、図11では、マットレス211にVPコイル11が内蔵されているが、ベッド本体やマットレス211上に置かれるパッドなどにVPコイル11が内蔵されていてもよい。
【0072】
なお、実施の形態7に係るベクトルポテンシャル発生装置10のその他の構成および動作については他の実施の形態のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
【0073】
実施の形態8.
【0074】
図12は、本発明の実施の形態8に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0075】
実施の形態8では、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、複数のVPコイル11を備える。実施の形態8における各VPコイル11は、直線状のコイル軸を有し、コイル軸に沿って延びる複数のソレノイドコイルである。この複数のVPコイル11は、曲線状の(湾曲した)配列方向に沿って配列されている。電源装置2は、複数のVPコイル11に電流を導通させる。なお、複数のVPコイル11は、電気的に、直列に接続されていてもよいし、並列に接続されていてもよい。また、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、上述の強磁性体部材と同様に複数のVPコイル11のコイル軸に沿って延びる複数の強磁性体部材(図示せず)を備える。ここでは、この配列方向は閉曲線であって、円弧状の配列方向に沿って複数のVPコイル11が配列されている。特に、複数のVPコイル11は、配列方向の円弧を含む円についての所定の中心角θの範囲において(ここでは均等な角度間隔で)配列されている。2つのVPコイル11の間の中間位置では2つのVPコイル11のベクトルポテンシャルが相殺されるため、例えば、この中心角θは180度未満のいずれかの角度とされる。
【0076】
例えば、配列された複数のVPコイル11の内側方向の空間内に、人体の腕や脚などの部位が配置され、その部位にベクトルポテンシャルが印加される。
【0077】
なお、例えば図12に示すように、直線状のコイル軸を有する複数のVPコイル11が曲線状の配列方向に沿って、所定の対称面(X軸に垂直でZ軸およびY軸に平行な平面)に対して面対称に配列される場合、配列方向の円弧を含む円についての中心を通り、かつコイル軸に平行な軸上では、複数のVPコイル11により発生するベクトルポテンシャルのベクトル合成の結果、対称面に垂直な方向(図12におけるX軸方向)にベクトルポテンシャルが発生する。したがって、例えば図4に示すような湾曲したコイル軸を有するVPコイル11と、直線状のコイル軸を有し、曲線状の配列方向に沿って所定の対称面に対して面対称に配列される複数のVPコイル11とを組み合わせることで、X軸およびY軸の2次元平面内の所望の方向にベクトルポテンシャルを発生させることができる。
【0078】
なお、実施の形態8に係るベクトルポテンシャル発生装置10のその他の構成および動作については他の実施の形態のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
【0079】
実施の形態9.
【0080】
図13は、本発明の実施の形態9に係るベクトルポテンシャル発生装置10におけるベクトルポテンシャルコイル装置1の構成を示す図である。
【0081】
実施の形態9では、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、複数のVPコイル11を備える。この複数のVPコイル11は、それぞれ、直線状のコイル軸に沿って巻回されており、また、コイル軸の方向に沿って、巻回方向の傾斜角が徐々に変化するように巻回されている。また、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、上述の強磁性体部材と同様に複数のVPコイル11のコイル軸に沿って延びる複数の強磁性体部材(図示せず)を備える。
【0082】
実施の形態9では、例えば図13に示すように、VPコイル11は、直線状のコイル軸に沿って巻回されているが、コイル軸の方向に沿って、巻回方向の傾斜角(コイル軸方向と巻回方向とのなす角度)A0~A5が徐々に変化するように巻回されている。具体的には、VPコイル11の中心の傾斜角が90度となっており、中心から離れるほど、傾斜角が小さくなっている(A0>A1>A2>A3>A4>A5)。これにより、湾曲したVPコイル11と同様に良好な強度で上述のベクトルポテンシャルを印加できる。
【0083】
なお、実施の形態9に係るベクトルポテンシャル発生装置10のその他の構成および動作については他の実施の形態のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
【0084】
実施の形態10.
【0085】
図14は、本発明の実施の形態10に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す正面図である。図15は、本発明の実施の形態10に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す上面図である。図16は、本発明の実施の形態10に係るベクトルポテンシャルコイル装置1におけるベクトルポテンシャルコイルの一例を示す側面図である。
【0086】
実施の形態10に係るベクトルポテンシャルコイル装置1は、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5を備える。例えば図14図16に示すように、この複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5は、それぞれ、湾曲したコイル軸に沿って巻回されており、コイル軸の湾曲内側方向(つまり、コイル軸を含む平面)が互いに交差するように配列されている。例えば、図16に示すように、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸を含む平面がY軸方向に対して平行になり、かつX軸方向に対する、それらの平面の傾斜角の角度間隔が略同一となるように、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5が配置される。また、ここでは、ベクトルポテンシャルコイル31-1についての傾斜角が90度となっている。
【0087】
なお、ここでは、ベクトルポテンシャルコイル装置1は、5本のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5を備えているが、2~4本および6本以上のいずれかの本数Mの、同様のベクトルポテンシャル31-1~31-Mを備えていてもよい。
【0088】
例えば、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸が単一の部分球面(例えば半球面)に含まれるように、コイル軸の形状(曲率など)および配置が決定され、その部分球面を含む球面の中心(つまり、すべてのコイル軸の曲率中心)に、印加対象が配置される。なお、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸が単一の部分球面以外の曲面(部分的な非球面)に含まれるように、コイル軸の形状(曲率など)および配置を決定するようにしてもよい。
【0089】
なお、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5は、上述の実施の形態と同様にして交流電流に応じたベクトルポテンシャルをそれぞれ発生させ、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5によるベクトルポテンシャルが合成され、ベクトルポテンシャルVP(t)が得られる。ここでは、合成されたベクトルポテンシャルVP(t)の振幅が最大となるように(例えば互いに同相で)、電源装置2が複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5に交流電流を導通させる。
【0090】
なお、実施の形態10に係るベクトルポテンシャル発生装置10のその他の構成および動作については他の実施の形態のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。つまり、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5のコイル軸に沿って、上述の強磁性体部材のいずれかがそれぞれ配置されていてもよい。
【0091】
以上のように、上記実施の形態10に係るベクトルポテンシャル発生装置10によれば、複数のベクトルポテンシャルコイル31-1~31-5の湾曲内側方向にベクトルポテンシャルを集中させて、高い強度のベクトルポテンシャルを印加対象に印加させることができる。
【0092】
実施の形態11.
【0093】
実施の形態11では、人体の脳腫瘍(膠芽腫など)の治療のために、ベクトルポテンシャルコイル装置1が、人体の頭部に対して配置される。
【0094】
例えば、実施の形態11では、ベクトルポテンシャル発生装置10は、人体の頭部の形状に合わせた形状の支持体をさらに備え、その支持体に、上述のいずれかのベクトルポテンシャルコイル装置1(VPコイルおよび強磁性体部材、複数のVPコイルなど)が固定される。その支持体としては、頭部に装着されるヘルメット、頭部近傍にVPコイルなどを配置するスタンドなどが使用される。
【0095】
あるいは、上述の支持体は、枕、椅子のヘッドレストなどといった頭部の接触を受ける装置としてもよく、その場合、そのような支持体に上述のベクトルポテンシャルコイル装置1が内蔵される。
【0096】
このような支持体で、人体の脳にベクトルポテンシャルを発生させる位置にベクトルポテンシャルコイル装置1が近接して配置される。つまり、ベクトルポテンシャルコイル装置1に交流電流が導通することで、頭部の内部にある脳に交番するベクトルポテンシャルが発生する。これにより、脳に、交流の電界や交流の電流が印加される。例えば国際公開WO2017/072706に開示されているように、交流の電界を印加することで脳腫瘍の治療が行われており、脳腫瘍の治療に要求される条件(周波数など)が電源装置2によって設定され、そのような条件の交流電界がベクトルポテンシャルコイル装置1によって非侵襲で脳に印加される。例えば国際公開WO2017/072706に開示されているように交流電界を印加するためには、通常、剃髪後に電極パッドが頭部の皮膚に貼られるが、当該実施の形態11によれば、剃髪が不要であるとともに、粘着性のある電極パッドを頭部の皮膚に貼ることも不要となり、交流電界印加による治療時の患者の負担(身体的負担および精神的負担)が軽減される。
【0097】
従来の電極パッドを頭皮に接触させて電流を流す方法では、パットと頭皮の接触抵抗および頭蓋骨の電気抵抗が高く、一方、脳組織はそれらと比べると相対的に低抵抗であるため、電極パットの位置を変えても所望の部位に電流を制御して流すことが本質的に困難であった。一方、別の従来方法として、パルス磁場を外部から非接触・非侵襲で印加する方法もあるが、脳内に誘導されるのは渦電流である。この渦電流はファラデーの電磁誘導とレンツの法則により説明される磁場の変化を打つ消す方向に流れる電流であるため、大脳の表皮に近い部分を流れる渦電流により当初のパルス磁場が打ち消されてしまい、脳の深部に電流を誘起することができなかった。また、大脳は表面が折りたたまれた皺構造となっており、隣接していても皺と皺の間の谷間は深く、電気的には皺間の電気抵抗が高いためパルス磁場では電流を所望の箇所に流すことが困難である。さらに、パルス磁場の磁束は、頭皮に垂直な方向から印加されるので、渦電流は頭皮に平行な面内しか流すことができない。従来の2つの方法は、上記のような問題を抱えているが、当該実施の形態の装置は、ベクトルポテンシャルを発生するので、小脳、脳梁、視床下部などの脳の深部においても、頭蓋骨に邪魔されること無く電界を印加することができる。
【0098】
なお、実施の形態11に係るベクトルポテンシャル発生装置10のその他の構成および動作については他の実施の形態のいずれかと同様であるので、その説明を省略する。
【0099】
なお、上述の実施の形態に対する様々な変更および修正については、当業者には明らかである。そのような変更および修正は、その主題の趣旨および範囲から離れることなく、かつ、意図された利点を弱めることなく行われてもよい。つまり、そのような変更および修正が請求の範囲に含まれることを意図している。
【0100】
例えば、上記実施の形態において、VPコイル11とベクトルポテンシャルの印加対象(足101、2次導体部材21など)との間には磁気遮蔽性のある物体があってもよい。その場合でも、ベクトルポテンシャルは、磁気遮蔽性のある物体を透過するため、磁気遮蔽性のある物体があってもベクトルポテンシャルの印加対象に印加され、2次導体部材21には、ベクトルポテンシャルに基づく電圧が誘起する。
【0101】
また、上記実施の形態において、VPコイル11のコイル軸に沿って配置される強磁性体部材は必要に応じて省略されてもよい。
【0102】
また、上記実施の形態2では、ベクトルポテンシャル発生装置10から2次導体部材21へ電力が伝達されているが、それに加えて、ベクトルポテンシャル発生装置10から2次導体部材21へ電力が伝達されていない期間において、2次導体部材21に交流電流(例えば回生電流など)を導通させて、2次導体部材21からベクトルポテンシャル発生装置10へ電力を伝達させるようにしてもよい。
【0103】
また、上記実施の形態5,6では、VPコイル11が、径方向において、内側ソレノイドコイル11-1および外側ソレノイドコイル11-2の2層構造となっているが、層数が偶数であれば、4層以上の層数でもよい。その場合、すべての層のソレノイドコイル11-iが電気的に直列接続されるように、ソレノイドコイル11-iのいずれかの端部で次層のソレノイドコイル11-(i+1)に接続される。
【産業上の利用可能性】
【0104】
本発明は、例えば、VPコイルを使用したベクトルポテンシャルの発生に適用可能である。
【符号の説明】
【0105】
2 電源装置
10 ベクトルポテンシャル発生装置
11,31-1~31-5 ベクトルポテンシャルコイル
11-1 内側ソレノイドコイル
11-2 外側ソレノイドコイル
11A,11B,11C,11D 強磁性体部材
14 開口部
21 2次導体部材
22 電源回路
23 負荷
30 受電側装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16