(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001969
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/48 20100101AFI20231228BHJP
【FI】
H01L33/48
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100861
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100172188
【弁理士】
【氏名又は名称】内田 敬人
(72)【発明者】
【氏名】山岡 賢介
(72)【発明者】
【氏名】由宇 広樹
【テーマコード(参考)】
5F142
【Fターム(参考)】
5F142AA02
5F142AA66
5F142AA76
5F142BA32
5F142CB23
5F142CD02
5F142CD15
5F142CF13
5F142CF23
5F142CG24
5F142DA13
5F142FA14
5F142FA21
5F142FA24
5F142FA32
(57)【要約】
【課題】信頼性が高い発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】発光装置の製造方法は、第1構造体を準備する工程と、第2構造体を準備する工程と、発光素子を移載する工程と、を備える。第1構造体は、第1基板、第1基板の第1面に配置された剥離層、および、剥離層を介して第1基板に固定された1以上の発光素子を含む。発光素子は剥離層に対向する第3面および第3面の反対側の第4面を有する。平面視で第4面は第3面よりも大きい。平面視で剥離層は第4面を内包する。第2構造体は第2基板を含む。発光素子を移載する工程においては、第1基板の第1面を第2基板の上面に対向させた状態で、第1基板の第2面側から剥離層にレーザ光を照射することにより、剥離層を除去して、発光素子を第1基板から第2基板に移載する。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1面および前記第1面の反対側の第2面を有する第1基板、前記第1面に配置された剥離層、および、前記剥離層を介して前記第1基板の前記第1面側に固定された1以上の発光素子を含み、前記1以上の発光素子は前記剥離層に対向する第3面および前記第3面の反対側の第4面を有し、平面視で前記第4面は前記第3面よりも大きく、平面視で前記剥離層は前記第4面を内包する第1構造体を準備する工程と、
上面を有する第2基板を含む第2構造体を準備する工程と、
前記1以上の発光素子が前記第1基板と前記第2基板の間に配置されるように前記第1基板の前記第1面を前記第2基板の前記上面に対向させた状態で、前記第1基板の前記第2面側から前記剥離層にレーザ光を照射することにより、前記剥離層を除去して、前記1以上の発光素子を前記第1基板から前記第2基板に移載する工程と、
を備えた発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記1以上の発光素子は複数の前記発光素子であり、
前記剥離層は、それぞれが各前記発光素子と対をなして配置される複数の層を有し、
平面視で、各前記層は各前記発光素子の前記第4面を内包する請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記1以上の発光素子は複数の前記発光素子であり、
平面視で、前記剥離層は前記複数の発光素子の全ての前記第4面を内包する請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1構造体は、前記剥離層と前記発光素子との間に配置された光減衰層をさらに含み、
前記移載する工程の後、前記光減衰層を除去する工程をさらに備えた請求項1~3のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記発光素子は、前記第3面と前記第4面とを接続する第5面をさらに有し、
前記光減衰層は前記第5面を覆う請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記第1構造体は、前記剥離層と前記光減衰層との間に配置された接着層をさらに含む請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1構造体を準備する工程は、
支持基板、前記支持基板上に配置された1以上の半導体積層体、前記1以上の半導体積層体の前記支持基板と対向する面の反対側の面に配置された電極部、ならびに、前記支持基板上であって、各前記半導体積層体および各前記電極部の周囲に配置され各前記半導体積層体および各前記電極部を保持する前記光減衰層を含み、前記電極部の電極面が前記光減衰層から露出する第3構造体を準備する工程と、
前記第1基板および前記剥離層を含む第4構造体を準備する工程と、
前記第3構造体における前記電極部の前記電極面と前記第4構造体における前記剥離層とを対向させた状態で、前記電極部の前記電極面を前記剥離層に接着する工程と、
前記接着する工程の後、前記支持基板を除去する工程と、
を有する請求項4に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記1以上の発光素子は複数の前記発光素子であり、
前記移載する工程においては、前記剥離層における前記複数の発光素子のそれぞれに対応する部分にガルバノ方式でレーザ光の出射方向を制御しながら前記レーザ光を照射する請求項1~3のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記レーザ光は、前記発光素子の前記第3面に対して斜めに照射される請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記レーザ光の強度分布はトップハット型である請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記第2構造体は前記第2基板の上面側に配置される粘着層をさらに含み、
前記移載する工程において、前記1以上の発光素子を前記粘着層を介して前記第2基板に接着させる請求項1~3のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板上に複数の発光素子が配置された発光装置が開示されている。このような発光装置では、信頼性の向上が要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の実施形態は、信頼性が高い発光装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に係る発光装置の製造方法は、第1構造体を準備する工程と、第2構造体を準備する工程と、発光素子を移載する工程と、を備える。前記第1構造体は、第1面および前記第1面の反対側の第2面を有する第1基板、前記第1面に配置された剥離層、および、前記剥離層を介して前記第1基板の前記第1面側に固定された1以上の前記発光素子を含む。前記1以上の発光素子は前記剥離層に対向する第3面および前記第3面の反対側の第4面を有する。平面視で前記第4面は前記第3面よりも大きい。平面視で前記剥離層は前記第4面を内包する。前記第2構造体は、上面を有する第2基板を含む。前記発光素子を移載する工程においては、前記1以上の発光素子が前記第1基板と前記第2基板の間に配置されるように前記第1基板の前記第1面を前記第2基板の前記上面に対向させた状態で、前記第1基板の前記第2面側から前記剥離層にレーザ光を照射することにより、前記剥離層を除去して、前記1以上の発光素子を前記第1基板から前記第2基板に移載する。
【発明の効果】
【0006】
本開示の実施形態によれば、信頼性が高い発光装置の製造方法を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図5】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図6】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図7】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す平面図である。
【
図8】
図7に示すVIII-VIII線による端面図である。
【
図9】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図10】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図11】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図12】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図13】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図14】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図15】第1の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図16A】発光素子の移載後のリワーク工程を模式的に示す端面図である。
【
図16B】発光素子の移載後のリワーク工程を模式的に示す端面図である。
【
図16C】発光素子の移載後のリワーク工程を模式的に示す端面図である。
【
図16D】発光素子の移載後のリワーク工程を模式的に示す端面図である。
【
図17】第1の実施形態の第1の変形例に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図18】第1の実施形態の第1の変形例に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図19】第1の実施形態の第2の変形例において使用するガルバノレーザ装置を模式的に示す図である。
【
図20】第1の実施形態の第2の変形例に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図22】第2の実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜め上側から見た斜視図である。
【
図23】第2の実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜め下側から見た斜視図である。
【
図27A】第2の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【
図27B】第2の実施形態に係る発光装置の製造方法を模式的に示す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態に係る発光装置の製造方法について説明する。以下では、本実施形態の技術思想を具現化するための形態を例示するものであって、以下に限定するものではない。また、実施形態に記載されている構成部の寸法、材質、形状、又はその相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本開示の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。なお、各図面が示す部材の大きさ又は位置関係等は、説明を明確にするため誇張していることがある。また、以下の説明において、同一の名称又は符号については、同一もしくは同質の部材を示しており詳細説明を適宜省略する。また、断面図として、切断面のみを示す端面図を示す場合がある。
【0009】
以下の説明において、特定の方向又は位置を示す用語(例えば、「上」、「下」及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる場合がある。しかしながら、それらの用語は、参照した図面における相対的な方向又は位置を分かり易さのために用いているに過ぎない。参照した図面における「上」、「下」等の用語による相対的な方向又は位置の関係が同一であれば、本開示以外の図面や実際の製品等において、参照した図面と同一の配置でなくてもよい。本明細書において「上(または下)」と表現する位置関係は、例えば、2つの部材があると仮定した場合に、2つの部材が接している場合と、2つの部材が接しておらず一方の部材が他方の部材の上方(または下方)に位置している場合と、の双方を含む場合がある。また、複数に分割される各層に対して分割前と分割後で同じ用語を用いることがある。
【0010】
<第1の実施形態>
図1~
図6は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す端面図である。
図7は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す平面図である。
図8は、
図7に示すVIII-VIII線による端面図である。
図9~
図15は、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す端面図である。
【0011】
第1の実施形態に係る発光装置1の製造方法は、第1構造体10を準備する工程と、第2構造体20を準備する工程と、発光素子50を移載する工程と、を備える。
【0012】
(第1構造体を準備する工程)
第1構造体10を準備する工程は、第3構造体30を準備する工程と、第4構造体40を準備する工程と、第3構造体30と第4構造体40とを接着させる工程と、支持基板60を除去する工程と、を含む。また、上記により準備される第1構造体10は、第1面11aおよび第2面11bを有する第1基板11、第1面11aに配置された剥離層12、および第1基板11の第1面11a側に剥離層12を介して固定された1以上の発光素子50を含む。
以下、詳細に各工程を説明する。
【0013】
先ず、
図1に示すように、支持基板60と、支持基板60の上面60a上に配置される1以上の発光素子50と、を準備する。支持基板60は、例えばシリコン基板またはサファイア基板である。支持基板60は、成長基板であってよい。支持基板60は、上面60aを有し、例えば平板状の基板である。1以上の発光素子50となる部分の形成方法は、例えば、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)法により支持基板60の上面60aに半導体積層膜を成長させ、その上に電極部52を形成する。次に、RIE(Reactive Ion Etching)法などのドライエッチングやウェットエッチングにより半導体積層膜の一部を除去する。これにより、1以上の発光素子50となる部分(以下、単に「発光素子50」ともいう。)が形成される。1以上の発光素子50は、例えば、平面視において互いに直交する2方向に沿って行列状に配列されている。
【0014】
発光素子50は、半導体積層体51および電極部52を含む。半導体構造体10は、InxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)などの窒化物半導体を含む。半導体構造体10は、p型層と、n型層と、p型層とn型層との間に位置する発光層とを含む。発光層は、例えば、複数の障壁層と複数の井戸層とを含み、障壁層と井戸層とが交互に積層された多重量子井戸構造とすることができる。電極部52は、p型層に接続されたp側電極と、n型層に接続されたn側電極を含む。電極部52は、半導体積層体51の反対側にある電極面52aを有する。
【0015】
発光素子50は、支持基板60と対向する第4面50b、第4面50bの反対側の第3面50a、および第3面50aと第4面50bとを接続する第5面50cを有する。電極部52は第3面50a側に配置されている。第5面50cは、凹部または凸部を含んでいてよい。
【0016】
平面視で、第4面50bは第3面50aよりも大きい。また、平面視で、第4面50bの外形は、第3面50aの外形の外側に位置する。第3面50aの平面積に対する第4面50bの平面積は、例えば、1.1倍~2倍であり、1.1倍~1.5倍であることが好ましく、1.1倍~1.2倍であることがより好ましい。第1の実施形態では、第5面50cは支持基板60の上面60aに直交する方向に対して傾斜している。一例では、発光素子50の形状は四角錐台形である。発光素子50の形状が四角錐台形である場合、第4面50bは四角錐台形の下面、第3面50aは四角錐台形の上面、第5面50cは四角錐台形の側面に対応する。
【0017】
次に、
図2に示すように、支持基板60の上面60a上に光減衰層13を配置する。光減衰層13は、半導体積層体51および電極部52を覆う。第1の実施形態では、光減衰層13は、隣り合う発光素子50間の支持基板60の上面60aと、発光素子50の第3面50aおよび第5面50cと、を被覆しており、半導体積層体51および電極部52を内包している。光減衰層13は、例えば、樹脂部材である。光減衰層13は、例えば、黒色の樹脂部材であってよい。光減衰層13は、例えば、主成分として、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、又はポリイミド樹脂を含むことができる。
【0018】
次に、
図3に示すように、電極部52の上方に配置されている光減衰層13を除去する。光減衰層13の除去は、例えば、研削装置を用いて行う。このとき、光減衰層13が除去されると共に、電極部52も電極面52a側から除去されて、電極部52に新たな電極面52bが形成される。電極部52の上方に配置されている光減衰層13を除去することで、電極部52の電極面52bが光減衰層13から露出する。第1の実施形態では、電極部52の電極面52b、各発光素子50の電極面52b間に入り込む光減衰層13の上面、および隣り合う発光素子50間に入り込む光減衰層13の上面は同一面上に位置している。このようにして、第3構造体30が準備される。
【0019】
第3構造体30は、支持基板60、支持基板60上に配置される1以上の発光素子50、および光減衰層13を含む。光減衰層13は、各発光素子50の周囲に配置され、各発光素子50を保持する。光減衰層13は、各発光素子50の電極部52間、および、隣り合う発光素子50間に入り込んでいる。光減衰層13は、後の工程で支持基板60を除去する際に、各発光素子50が離散することを抑制し、発光素子50の位置を固定する役割を有する。電極部52の電極面52bは光減衰層13から露出している。
【0020】
次に、
図4に示すように、第4構造体40を準備する。第4構造体40を準備する工程は、第3構造体30を準備する工程の前でもよく、後でもよく、または同時でもよい。第4構造体40は、第1基板11および剥離層12を含む。第1基板11は、後述するレーザ光80を透過可能な基板であり、例えば、サファイア基板である。第1基板11は、第1面11aと第1面11aの反対側にある第2面11bを有する。剥離層12は、第1基板11の第1面11a上に配置されている。剥離層12は、例えば、後述するレーザ光80を吸収しレーザーアブレーションにより除去可能な部材であればよく、例えば感光性樹脂である。
【0021】
次に、
図5に示すように、第3構造体30における電極部52の電極面52bと、第4構造体40における剥離層12とを対向させた状態で、接着層70を介して電極部52の電極面52bと剥離層12とを接着する。接着層70は、上面において、第3構造体30の電極部52の電極面52b、各発光素子50の電極部52間に入り込む光減衰層13、および隣り合う発光素子50間に入り込む光減衰層13と接している。また、接着層70は、下面において、剥離層12の上面と接している。
【0022】
接着層70は、例えばシート状の部材である。第3構造体30と第4構造体40を接着する直前の状態において、接着層70は、第3構造体30側に配置されていてもよく、第4構造体40側に配置されていてもよい。接着層70は、公知の部材から形成されてよい。接着層70は、例えばシリコーン樹脂、シリコーン変性樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、メチルペンテン樹脂、ポリノルボルネン樹脂などの熱可塑性樹脂を主成分として含む。
【0023】
次に、
図6に示すように、支持基板60を除去する。支持基板60は、例えば、LLO(Laser Lift Off)法、研削、研磨、エッチング等の方法によって除去することができる。これにより、支持基板60を除去した側の面において、発光素子50の第4面50bおよび発光素子50間の光減衰層13が外部に露出する。
【0024】
次に、
図7および
図8に示すように、光減衰層13、接着層70および剥離層12を選択的に除去して、発光素子50毎に個片化する。光減衰層13等の選択的な除去は、例えば、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法や、RIE法などのエッチングにより行う。第1の実施形態では、隣り合う発光素子50間において、光減衰層13、接着層70および剥離層12が分割される。これにより、隣り合う発光素子50間において、第1基板11の上面11aが外部に露出している。また、複数の層12aに分割された各層12aは、発光素子50と対をなして配置されている。このようにして、第1構造体10が準備される。第1構造体10において、剥離層12は複数の層12aの総称である。
【0025】
第1構造体10は、第1基板11および複数の構造体15を含む。第1基板11は第1面11aおよび第1面11aの反対側にある第2面11bを有する。複数の構造体15は、第1基板11の第1面11a上に配置されている。構造体15は、第1基板11の第1面11a側から順に、剥離層12の層12a、接着層70および発光素子50を含み、発光素子50の周囲に配置される光減衰層13を含む。剥離層12は、第1基板11の第1面11aに配置されている。また、発光素子50は接着層70および剥離層12の層12aを介して、第1基板11の第1面11a側に固定されている。光減衰層13は、接着層70と発光素子50との間に配置されている。また、光減衰層13は、発光素子50の第3面50aおよび第5面50cを覆い、第4面50bは覆っていない。接着層70は剥離層12と光減衰層13との間、および、剥離層12と発光素子50との間に配置されている。
【0026】
発光素子50は、剥離層12に対向する第3面50a、第3面50aの反対側の第4面50b、および第3面50aと第4面50bとを接続する第5面50cを有する。発光素子50の第3面50a側には電極部52が配置されており、電極部52の電極面52bは接着層70に接している。平面視で、第4面50bは第3面50aよりも大きい。また、平面視で、剥離層12の各層12aは、発光素子50の第4面50bを内包する。
【0027】
(第2構造体を準備する工程)
次に、
図9に示すように、第2構造体20を準備する。第2構造体20を準備する工程は、第1構造体10を準備する工程の前でもよく、後でもよく、または同時でもよい。第2構造体20は、第2基板21および粘着層22を含む。第2基板21は、例えばガラス基板である。第2基板21は上面21aを有し、粘着層22は第2基板21の上面21aに配置されている。粘着層22は、例えば、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂を母材として含む樹脂部材を用いることができる。
【0028】
(発光素子を移載する工程)
次に、
図10に示すように、第1構造体10を第2構造体20に対向させる。具体的には、発光素子50が第1基板11と第2基板21との間に配置されるように、第1基板11の第1面11aと第2基板21の上面21aとを対向させる。このとき、第1構造体10は第2構造体20から離隔して配置される。すなわち、発光素子50は粘着層22から離隔している。
【0029】
この状態で、第1基板11の第2面11b側から、剥離層12に対してレーザ光80を照射する。レーザ光80は、第1基板11を透過し、剥離層12を除去することができる光である。レーザ光80の照射は、例えば中長波レーザを使用して行われる。レーザ光80は、例えば、150nm以上1600nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光であり、150nm以上600nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光であることが好ましく、250nm以上400nm以下の波長範囲に発光ピーク波長を有する光であることがさらに好ましい。レーザ光80は、第1基板11の第2面11bから第1面11aに向かう方向において第1基板11を透過して、剥離層12に到達する。レーザ光80は、例えば、1回の照射において、1つの層12aのみに照射される。なお、レーザ光80は、1回の照射において、2つ以上の層12aに照射されてもよく、すべての層12aに対して照射されてもよい。また、レーザ光80は、各層12aに対して2回以上照射されてもよい。
【0030】
これにより、
図11に示すように、レーザ光80が照射された剥離層12の層12aが除去される。この場合の除去は、例えば、剥離層12の層12aが昇華し消失する形態を含む。層12aが昇華して除去される場合、発光素子50が第1基板11から離れると共に、層12aの昇華に伴う体積膨張により、発光素子50が第2基板21に向かって付勢される。この結果、発光素子50は第1基板11から第2基板21に向けて移動する。なお、第1基板11を第2基板21の上方に配置した場合には、発光素子50は重力によっても第2基板21に向けて付勢される。なお、発光素子50が移載される限りにおいて、剥離層12の層12aは、すべてが除去されてもよく、一部のみが除去されてもよい。また、レーザ光80により、剥離層12に加えて、剥離層12の下方に配置される接着層70の少なくとも一部を除去してもよい。
【0031】
第1基板11から離れた発光素子50は第2構造体20の粘着層22に到達し、粘着層22を介して第2基板21に接着される。以後、剥離層12のその他の層12aに対してレーザ光80の照射を繰り返すことにより、複数の発光素子50を順次、第1基板11から第2基板21に移動させる。このようにして、1以上の発光素子50は第1基板11から第2基板21に移載される。なお、光減衰層13および接着層70の少なくとも一部は、発光素子50上に残存している。
【0032】
次に、
図12に示すように、光減衰層13を除去する。光減衰層13を除去する方法は、例えば、RIE法などのエッチング法である。光減衰層13を除去することで、光減衰層13上に配置されている接着層70も同時に除去される。なお、RIE法で光減衰層13を除去した後に、純水等を用いて洗浄工程を行ってもよい。
【0033】
次に、
図13に示すように、第2基板21上に配置された発光素子50を配線基板31上に配置する。具体的には、上面に配線を有する配線基板31を準備し、発光素子50の電極部52を下にした状態で発光素子50を配線基板31の上面上に配置する。発光素子50の電極部52と配線基板31上の配線とが電気的に接続される。発光素子50の電極部52および配線基板31上の配線の電気的な接続は、例えば接合部材を介して行われる。接合部材は、例えば、金または銅からなる。
【0034】
次に、
図14に示すように、粘着層22とともに第2基板21を除去する。このようにして、本実施形態に係る発光装置1が製造される。なお、発光装置1は、後述する第2の実施形態のように、発光素子50からの光の少なくとも一部を波長変換する蛍光体を含む蛍光体部材や、発光素子50の周囲に配置される光反射性の高い樹脂部材を備えていてもよい。
【0035】
第1構造体10、第2構造体20、第3構造体30および第4構造体40は、上記製造により準備してもよく、また譲受等により準備してもよい。
【0036】
また、
図15に示すように、レーザ光80を照射する工程において、一部の発光素子50に対してレーザ光を照射しなくてもよい。具体的には、発光装置1を製造する工程は、第1構造体10を準備する工程において、各発光素子50の検査を行い、この検査で不良となる発光素子50Nを検出する工程と、1以上の発光素子を移載する工程において、検査において不良と判定された発光素子50Nに対応する剥離層12の層12a以外の層12aに対してレーザ光80を照射する工程と、を備えていてよい。検査は、発光素子50の外観を検査する外観検査であってもよく、発光素子50の電気的特性を評価する電気的特性評価であってもよい。これにより、不良の発光素子50Nの移載は行わず、それ以外の良品の発光素子50のみを移載することができる。このようにして、外観検査等において不良と判定された発光素子50Nを除去できるため、良品の発光素子50のみを後の工程で使用することができる。なお、同様に、良品となる発光素子50を検査で検出し、良品となる発光素子50に対応する剥離層12の層12aに対してレーザ光80を照射して、良品となる発光素子50のみを移載してもよい。
【0037】
また、発光装置1を製造する工程は、1以上の発光素子50を移載する工程の後に、リワーク工程をさらに含んでいてよい。リワーク工程は、移載後の第2基板21上の発光素子50の移載状態を検査し、移載状態が不良の発光素子50Rまたは発光素子50が配置されていない領域Rを検出する工程と、移載状態が不良の発光素子50Rがある場合はこの発光素子50Rを除去する工程と、除去された発光素子50Rが配置されていた領域または発光素子50が配置されていない領域Rに新たな発光素子50を配置する工程と、を含む。
【0038】
図16A~
図16Dは、発光素子の移載後のリワーク工程を示す端面図である。
具体的には、
図16Aに示すように、移載後の第2基板21上の発光素子50の移載状態を検査し、移載状態が不良の発光素子50Rまたは発光素子50が配置されていない領域Rを検出する。移載状態が不良の発光素子50Rは、移載後の位置が基準位置からいずれかの方向にずれている発光素子を含んでいる。また、領域Rは、本来、発光素子50が配置されているべき領域であるが、実際には発光素子50が配置されていない領域である。まずは、外観検査することにより、このような移載状態が不良の発光素子50Rおよび領域Rを検出する。
【0039】
次に、移載状態が不良の発光素子50Rを含む場合は、
図16Bに示すように、移載状態が不良の発光素子50Rを除去する。発光素子50Rを除去する方法は、例えば、粘着シート85を介して押圧部86を発光素子50Rに押し付けることにより、発光素子50Rを粘着シート85に接着させる。次に、押圧部86及び粘着シート85を第2基板21から離す。これにより、発光素子50Rが粘着シート85と共に第2基板21から除去される。
【0040】
次に、
図16Cに示すように、除去された発光素子50Rが配置されていた領域または領域Rに新たな発光素子50を配置する。新たな発光素子50を配置する方法は、例えば、新たな発光素子50を含む第1構造体10を準備し、発光素子50Rが配置されていた領域または領域Rに対応する発光素子50に対してレーザ光80を照射して、再度移載工程を行う。これにより、
図16Dに示すように、第2基板21上における発光素子50が配置されるべき全ての領域に、良品の発光素子50が配置される。
【0041】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態に係る発光装置1においては、発光素子50の第4面50bが第3面50aよりも大きい。また、第5面50cは、第3面50aに対して傾斜し、かつ、第3面50aから第4面50bに向かう方向において広がるように設けられている。これにより、発光素子50の発光層からの光が、第5面50cで効率的に反射されることになり、発光面である第4面50bに向かいやすい。この結果、発光装置1は光の取り出し効率が高くなる。
【0042】
また、レーザ光を照射する工程において、平面視で剥離層12の層12aは発光素子50の第4面50bを内包する。そのため、層12aが除去されるまで、発光素子50はレーザ光80に直接照射されることがない。これにより、レーザ光80による発光素子50の損傷を抑制できる。この結果、発光装置1は信頼性が向上する。
【0043】
さらに、本実施形態においては、レーザ光80を照射する工程において、光減衰層13が発光素子50の第3面50aおよび第5面50cを覆っているため、層12aを透過したレーザ光80の一部が光減衰層13において吸収される。この結果、発光素子50に到達するレーザ光80が減少し、発光素子50の損傷を抑制できる。これによっても、発光装置1の信頼性が向上する。
【0044】
<第1の実施形態の第1の変形例>
図17および
図18は、本変形例に係る発光装置の製造方法を示す端面図である。
本変形例は、剥離層12が一枚の連続層となっている点で、第1の実施形態と異なる。本変形例では、第1構造体10において、剥離層12は、複数の層12aに分割されておらず、1枚の連続層となっている。
【0045】
本変形例における剥離層12は、例えば、
図7および
図8に示す工程において、光減衰層13および接着層70をエッチングする際に、剥離層12を完全に分割しないようにエッチングすることで形成される。剥離層12は、連続した層であればよく、厚さ方向の一部がエッチング等により除去されていてもよい。この場合、平面視で、剥離層12は第1構造体10に含まれる複数の発光素子50の全ての第4面50bを内包する。
【0046】
そして、剥離層12における1つの発光素子50に対応する部分12bに、レーザ光80を照射する。これにより、
図18に示すように、剥離層12の部分12bが昇華し、発光素子50が第1基板11から第2基板21に移動する。本変形例における上記以外の製造方法、構成および作用効果は、第1の実施形態と同様である。
【0047】
<第1の実施形態の第2の変形例>
図19は、本変形例において使用するガルバノ方式のレーザ装置を示す図である。
図20は、本変形例に係る発光装置の製造方法を示す端面図である。
図21は、レーザ光の強度分布を示す図である。
【0048】
本変形例は、レーザ光80を照射する工程において、ガルバノ方式のレーザ装置を用いる点で、第1の実施形態と異なる。具体的には、レーザ光80を照射する工程において、ガルバノ方式でレーザ光80の出射方向を制御しながら、剥離層12における複数の発光素子50のそれぞれに対応する部分にレーザ光80を照射する。
【0049】
図19に示すように、ガルバノ方式のレーザ照射装置90においては、例えば2つのガルバノミラー91および92と、レンズ93が設けられている。レーザ照射装置90から見てレーザ光80が入射する方向を「X方向」とし、第1構造体10の上面からレンズ93に向かう方向を「Z方向」とし、X方向およびZ方向と直交する方向を「Y方向」とする。
【0050】
ガルバノミラー91はZ方向に延びる回転軸91cを中心に任意の角度に回転可能である。ガルバノミラー92は、X方向に延びる回転軸92cを中心に任意の角度に回転可能である。レンズ93は、ガルバノミラー92から出射したレーザ光が入射する位置に配置されている。
【0051】
ガルバノミラー91には、X方向からレーザ光80が入射する。ガルバノミラー91は、レーザ光80の反射方向を、Y方向について制御する。ガルバノミラー91によって反射されたレーザ光80はガルバノミラー92に入射する。ガルバノミラー92は、レーザ光80の反射方向を、X方向について制御する。ガルバノミラー92によって反射されたレーザ光80は、レンズ93によって照射対象位置に集光される。本変形例においては、照射対象位置には第1構造体10が配置される。
【0052】
図20に示すように、ガルバノ方式のレーザ照射装置90から出射されたレーザ光80は、剥離層12における各発光素子50に対応する部分、例えば、層12aに順次照射される。これにより、層12aが除去され、発光素子50は第1構造体10から第2構造体20に移動する。
【0053】
ガルバノ方式のレーザ照射装置90を用いる場合、レーザ光80の照射可能領域の端部側に配置された発光素子50に対しては、この発光素子50の第3面50aに対して、レーザ光80は斜めに照射される。この場合、レーザ光80は、発光素子50の第5面50cに照射されやすくなる。しかし、本開示の発光装置の製造方法においては、第5面50c上に光減衰層13を配置することで、斜めに照射されるレーザ光80を光減衰層13で効果的に吸収することができる。これにより、レーザ光80による発光素子50の損傷を抑制することができる。
【0054】
第1の実施形態と同様に、第1構造体10において不良の発光素子50Nが検出されている場合には、良品の発光素子50に対応する剥離層12の層12aに対してのみレーザ光80を照射してよい。ガルバノ方式のレーザ照射装置90においては、照射対象を選択して照射を行うことができるため、良品の発光素子50を効率良く選択的に照射することができる。ガルバノ方式のレーザ照射装置90では、2枚のガルバノミラーの角度を変化させることで任意の発光素子に対してレーザ光を照射することができるため、例えばノズルを移動させながらレーザ光を照射するレーザ照射装置と比べてレーザ光の照射にかかる時間を短縮することができる。
【0055】
また、第1の実施形態と同様に、1以上の発光素子50を移載する工程の後に、リワーク工程をさらに含んでいてよい。リワーク工程における新たな発光素子50を配置する工程においても、ガルバノ方式のレーザ照射装置90を用いて選択的に移載することができる。
【0056】
図21に示すように、レーザ光80の強度分布はトップハット型であることが好ましい。これにより、剥離層12の昇華の過程が安定し、発光素子50の移載の精度が向上する。例えば、第2基板21における発光素子50の移載位置の精度を向上させると共に、発光素子50が第2基板21に到達したときに発光素子50が傾斜することを抑制できる。本変形例における上記以外の製造方法、構成および作用効果は、第1の実施形態と同様である。
【0057】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、前述の第1の実施形態に係る発光装置の製造方法の具体例である。
【0058】
先ず、本実施形態に係る発光装置の構成について説明する。
図22は、本実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜め上側から見た斜視図である。
図23は、本実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜め下側から見た斜視図である。
図24は、
図22の領域XXIVを示す一部拡大上面図である。
図25は、
図22に示すXXV-XXV線による断面図である。
図26Aは、
図25の領域XXVIAを示す一部拡大断面図である。
図26Bは、
図26Aの領域XXVIBを示す一部拡大断面図である。
【0059】
本実施形態においては、説明の便宜上、XYZ直交座標を採用する。パッケージ基板110の長手方向を「X方向」とし、短手方向を「Y方向」とし、厚さ方向を「Z方向」とする。Z方向のうち、パッケージ基板110の下面110bから上面110aに向かう方向を「上」ともいい、その逆方向を「下」ともいうが、この表現も便宜的なものであり、重力の方向とは無関係である。
【0060】
図22~
図24に示すように、本実施形態に係る発光装置101は、パッケージ基板110と、パッケージ基板110の上面上に配置される配線基板120と、配線基板120の上面上に配置される複数の発光素子130と、発光素子130間に配置されるとともに発光素子130の側面を被覆する光反射性部材140と、複数の発光素子130の上方に配置される波長変換部材150と、パッケージ基板110と配線基板120とを電気的に接続する複数のワイヤ160と、ワイヤ160を被覆する被覆部材170と、を備える。なお、
図22においては、図示の便宜上、被覆部材170の一部および波長変換部材150の一部を省略しており、ワイヤ160の一部および発光素子130の一部を可視化している。
【0061】
パッケージ基板110の平面視の形状は、例えば、矩形である。パッケージ基板110は、例えば、母材としてセラミックス又は樹脂等の絶縁基体111を含む。パッケージ基板110は、パッケージ基板110の上面110aに複数の第1パッド112を含み、下面110bに複数の第2パッド113を含む。第1パッド112および第2パッド113は、絶縁基体111の内部に配置された銅(Cu)等の導電性のビア等により電気的に接続されている。
【0062】
また、パッケージ基板110の上面110aおよび下面110bには、例えば、銅からなる放熱部114が露出している。放熱部114には、例えば、熱伝導性に優れるアルミニウムや銅等の材料を用いることができる。平面視で、放熱部114はパッケージ基板110の中央部に配置されている。第1パッド112および第2パッド113は、Y方向において、放熱部114の両側に配置されている。第1パッド112および第2パッド113は、例えば、パッケージ基板110の長辺に沿って配列されている。
【0063】
配線基板120は、パッケージ基板110の放熱部114上に配置されている。配線基板120は、例えば、集積回路が内蔵されたシリコン基板であり、例えば、特定用途向け集積回路基板(Application Specific Integrated Circuit基板:ASIC基板)である。配線基板120の下面は、放熱部114の上面に、例えば接合部材を介して接合されている。接合部材には、例えば、シリコーン銀ペーストを用いる。配線基板120の上面121の中央部には、各発光素子130に対応する電極が配置されている。また、配線基板120の上面121の外周部には、外部接続用パッド122が配置されている。
【0064】
ワイヤ160は、パッケージ基板110の第1パッド112と、配線基板120の外部接続用パッド122とに接続されている。ワイヤ160は、例えば、金(Au)からなる。例えば、ワイヤ160の数は第1パッド112および外部接続用パッド122の数と同じである。
【0065】
被覆部材170の平面視の形状は、配線基板120の外縁に沿った枠状である。被覆部材170は、パッケージ基板110の上面および配線基板120の上面に配置され、パッケージ基板110の第1パッド112、ワイヤ160および配線基板120の外部接続用パッド122を覆っている。平面視において、被覆部材170は中央部が開口する枠状であり、被覆部材170の開口から波長変換部材150が露出している。
【0066】
図25に示すように、被覆部材170は、被覆部材170の外枠を構成する第1樹脂枠171と、被覆部材170の内枠を構成する第2樹脂枠172と、第1樹脂枠171と第2樹脂枠172との間に配置された保護樹脂部173と、を含む。第1樹脂枠171は、パッケージ基板110に配置されている。第2樹脂枠172は、配線基板120上に配置されている。保護樹脂部173は、パッケージ基板110の上面、配線基板120の上面およびワイヤ160の表面を連続して覆っている。第1樹脂枠171および第2樹脂枠172は、例えば、透光性樹脂である。保護樹脂部173においては、例えば、母材となる透光性樹脂中に光反射性物質が含有されている。透光性樹脂には、例えば、ジメチルシリコーン樹脂を用いることができる。光反射性物質は、例えば、酸化アルミニウムである。
【0067】
図22、
図24、
図25に示すように、複数の発光素子130は、配線基板120の上面121の中央部上に配置されている。複数の発光素子130は、例えば行列状に配列されている。一例では、発光素子130が64行64列に配列されたセグメントが4つ配置されており、発光素子130は合計で16,384個配置されている。一例では、各発光素子130のサイズは、40μm以上50μm以下である。一例では、隣り合う発光素子130間の距離は4μm以上8μm以下である。発光素子130は、配線基板120の上面121に露出した電極に接続されている。発光素子130は、例えば、発光ダイオードであり、例えば、青色の光を出射する。
【0068】
図26Aに示すように、発光素子130は、上面131と、上面131と反対側の下面132と、上面131と下面132との間に配置された側面133と、を有する。上面131は第4面に相当し、下面132は第3面に相当し、側面133は第5面に相当する。側面133は、下面132から上面131に向かって広がるように傾斜している。側面133は、4面配置されている。発光素子130の下面132は配線基板120の上面121に対向している。発光素子130は、接合部139を介して、配線基板120の電極に接続されている。このため、発光素子130の下面132は配線基板120の上面121から離れている。接合部139は、例えば、金または銅からなる。
【0069】
光反射性部材140は、配線基板120の上面121と発光素子130の下面132との間、および、隣接する発光素子130の側面133間に配置されている。光反射性部材140においては、母材141中に、光反射性物質142が含まれている。光反射性部材140における光反射性物質142の濃度は、50質量%以上70質量%以下であることが好ましく、例えば、60質量%である。母材141は、例えば、ジメチルシリコーン樹脂である。光反射性物質142は、例えば、酸化チタンである。
【0070】
波長変換部材150は、発光素子130の上面131および光反射性部材140の上面143を被覆している。波長変換部材150は、発光素子130の上面131、側面133の上部、および、光反射性部材140の上面143に接している。波長変換部材150においては、母材151中に、蛍光体152が含まれている。母材151は、例えば、ジメチルシリコーン樹脂である。蛍光体152は、例えば、YAG(Yttrium Aluminum Garnet:イットリウム・アルミニウム・ガーネット)を含み、発光素子130からの青色の光を吸収して、黄色の光を放射する。
【0071】
図26Bに示すように、隣り合う発光素子130間において、光反射性部材140の上面143は、Z方向、すなわち、配線基板120から波長変換部材150に向かう方向において、発光素子130の上面131と下面132との間に位置する。これにより、発光素子130の側面133のうち、下部は光反射性部材140によって被覆され、上部は波長変換部材150によって被覆される。
【0072】
次に、第2実施形態に係る発光装置の製造方法について説明する。
図27A及び
図27Bは、本実施形態に係る発光装置の製造方法を示す端面図である。
本実施形態に係る発光装置の製造方法は、配線基板120の上面上に配置された1以上の発光素子130を準備する素子準備工程と、発光素子130の側面を光反射性部材140で被覆する光反射性部材配置工程と、配線基板120をパッケージ基板110の上面上に配置する基板配置工程と、パッケージ基板110の第1パッド112と配線基板120の外部接続用パッド122とをワイヤ160で電気的に接続するワイヤ接続工程と、複数の発光素子130上に波長変換部材150を配置する波長変換部材配置工程と、ワイヤ160を被覆する被覆部材170を配置する被覆部材配置工程と、を備える。
【0073】
(素子準備工程)
素子準備工程は、第1の実施形態と同様であるため、第1の実施形態の図を参照して説明する。先ず、
図1に示すように、支持基板60上に複数の発光素子130(第1の実施形態では発光素子50)を形成する。次に、
図2~
図8に示す工程により、発光素子130を含む第1構造体10を作製する。このとき、平面視で、発光素子130の上面131(第4面)は下面132(第3面)よりも大きく、剥離層12は発光素子130の上面131を内包する。一方、
図9に示すように、第2基板21を含む第2構造体20を作製する。
【0074】
次に、
図10および
図11に示すように、レーザ光80を照射することにより剥離層12の一部を除去して、発光素子130を第1基板11から第2基板21に移載する。レーザ光80の照射には、ガルバノ方式のレーザ照射装置90を用いてもよい。次に、
図12に示すように、光減衰層13を除去する。次に、
図13に示すように、発光素子130を第2基板21から配線基板120(第1の実施形態では配線基板31)に移載する。このようにして、
図14に示すように、配線基板120の上面上に配置された1以上の発光素子130を準備することができる。
【0075】
(光反射性部材配置工程)
次に、
図27Aに示すように、配線基板120の上面121において、1以上の発光素子130が配置された領域を囲むようにレジスト膜181を配置する。レジスト膜181の形状は、例えば、平面視で枠状とし、レジスト膜181の厚さは発光素子130の高さと同程度とする。
【0076】
次に、複数の発光素子130上に未硬化の光反射性樹脂材料182を配置する。未硬化の光反射性樹脂材料182は、例えば、透光性の樹脂材料からなる母材と、母材中に含有された光反射性物質とを含む。
【0077】
次に、配線基板120の上面に対して略垂直な方向からノズル200を用いて気体183を噴射しつつ、ノズル200を水平方向に移動させる。このように、気体183を配線基板120の上面121に吹き付けることにより、未硬化の光反射性樹脂材料182が水平方向に沿って延ばし拡げられる。ノズル200の移動は、例えば複数回繰り返してもよい。これにより、未硬化の光反射性樹脂材料182を配線基板120と発光素子130との間、および、発光素子130間に配置することができる。
【0078】
次に、発光素子130の上面上に配置された光反射性樹脂材料182を除去する。光反射性樹脂材料182を除去する方法は、例えば、
図27Bに示すように、発光素子130の上面上に配置された光反射性樹脂材料182に対して、ノズル201から固体の二酸化炭素184を吹き付けることにより除去する。その後、ウェットエッチング等によりレジスト膜181を除去する。
【0079】
(基板配置工程)
次に、
図22に示すように、パッケージ基板110上に配線基板120を配置する。好ましくは、パッケージ基板110の中央部に配置されている放熱部114上に配線基板120を配置する。配線基板120は、金属ペースト等の公知の接合部材を介してパッケージ基板110に固定することができる。接合部材としては、例えば、シリコーン銀ペーストが挙げられる。
【0080】
(ワイヤ接続工程)
次に、パッケージ基板110上の第1パッド112と配線基板120上の外部接続用パッド122とをワイヤ160で電気的に接続する。ワイヤ接続工程は、配線基板120上に設けられる外部接続用パッド122にワイヤ160の一端を接続した後、パッケージ基板110上に設けられる第1パッド112にワイヤ160の他端を接続させることが好ましい。上記の順番でワイヤ160を接続させることで、ワイヤの頂部160を外部接続用パッド122の近くに配置させやすくなる。これにより、後述する被覆部材配置工程において、ワイヤ160の下方に配置される樹脂量が抑えられ、被覆部材170の熱膨張に起因したワイヤの断線を抑制することができる。
【0081】
(波長変換部材配置工程)
次に、複数の発光素子130上に波長変換部材150を配置する。波長変換部材配置工程は、例えば、予め所定の大きさに加工されたシート状の波長変換部材150を準備し、発光素子130上に波長変換部材150を配置する。波長変換部材150は、発光素子130上に、樹脂等の接着剤を介して固定されてもよく、また接着剤を介さずに波長変換部材150のタック性等を利用して固定されてもよい。
【0082】
(被覆部材配置工程)
次に、ワイヤ160を被覆する被覆部材170を配置する。被覆部材配置工程は、第1樹脂枠171を形成する工程と、第2樹脂枠172を形成する工程と、保護樹脂部173を形成する工程と、を備える。
【0083】
第1樹脂枠171を形成する工程は、配線基板120の上面121における複数の発光素子130が配置される領域と外部接続用パッド122との間において、複数の発光素子130が配置される領域に沿うように未硬化の第1樹脂材料を配置する。第1樹脂材料の配置は、例えば、ディスペンサを用いて行うことができる。また、第1樹脂材料は、例えば、透光性の樹脂材料である。
【0084】
第2樹脂枠172を形成する工程は、パッケージ基板110の上面において第1パッド112の外側に未硬化の第2樹脂材料を配置する。第2樹脂材料の配置は、例えば、ディスペンサを用いて行うことができる。また、第2樹脂材料は、例えば、透光性の樹脂材料である。なお、第1樹脂材料と第2樹脂材料は同じ樹脂材料を用いることが好ましい。これにより、第1樹脂枠形成工程と第2樹脂枠形成工程において、樹脂材料を入れ替える等の工程を省略することができ、製造におけるタクトを短くすることができる。
【0085】
次に、第1樹脂材料(第1樹脂枠171)と第2樹脂材料(第2樹脂枠172)との間において、ワイヤ160を被覆するように未硬化の保護樹脂を配置する。保護樹脂の配置は、例えば、ディスペンサを用いて行うことができる。また、保護樹脂は、例えば、酸化チタン等の光反射性物質を含む光反射性を有する樹脂材料である。保護樹脂は、例えば、第1樹脂材料および第2樹脂材料よりも低粘度の樹脂を用いることができる。保護樹脂は、配線基板120とパッケージ基板110とに亘って配置され、配線基板120の側面を被覆する。
【0086】
その後、加熱工程により、第1樹脂材料、第2樹脂材料および保護樹脂を固化し、第1樹脂枠171、第2樹脂枠172および保護樹脂部173を含む被覆部材170を形成する。これにより、ワイヤ160を保護する被覆部材170が形成される。
このようにして、本実施形態に係る発光装置101が製造される。
【0087】
本実施形態の作用効果について説明する。
本実施形態に係る発光装置101においても、発光素子130の側面133(第5面)は、下面132(第3面)に対して傾斜し、かつ、下面132(第3面)から上面131(第4面)に向かう方向において広がるように設けられている。これにより、発光素子130の発光層182において発生した光が、側面133で効率的に反射されることになり、発光面である上面131に向かいやすい。この結果、発光装置101は光の取り出し効率が高くなる。
【0088】
また、
図10に示す工程において、平面視で剥離層12は発光素子130の上面131を内包するため、レーザ光80による発光素子130の損傷を抑制できる。さらに、発光素子130の下面132および側面133を光減衰層13によって覆うため、レーザ光80による発光素子130の損傷をより一層抑制できる。この結果、発光装置101は発光素子130の損傷が少なく、信頼性が高い。
【0089】
前述の各実施形態およびその変形例は、本開示を具現化した例であり、本開示はこれらの実施形態および変形例には限定されない。例えば、前述の各実施形態および各変形例において、いくつかの構成要素又は工程を追加、削除又は変更したものも本開示に含まれる。また、前述の各実施形態および各変形例は、相互に組み合わせて実施することができる。
【0090】
実施形態は、以下の態様を含む。
【0091】
(付記1)
第1面および前記第1面の反対側の第2面を有する第1基板、前記第1面に配置された剥離層、および、前記剥離層を介して前記第1基板の前記第1面側に固定された1以上の発光素子を含み、前記1以上の発光素子は前記剥離層に対向する第3面および前記第3面の反対側の第4面を有し、平面視で前記第4面は前記第3面よりも大きく、平面視で前記剥離層は前記第4面を内包する第1構造体を準備する工程と、
上面を有する第2基板を含む第2構造体を準備する工程と、
前記1以上の発光素子が前記第1基板と前記第2基板の間に配置されるように前記第1基板の前記第1面を前記第2基板の前記上面に対向させた状態で、前記第1基板の前記第2面側から前記剥離層にレーザ光を照射することにより、前記剥離層を除去して、前記1以上の発光素子を前記第1基板から前記第2基板に移載する工程と、
を備えた発光装置の製造方法。
【0092】
(付記2)
前記1以上の発光素子は複数の前記発光素子であり、
前記剥離層は、それぞれが各前記発光素子と対をなして配置される複数の層を有し、
平面視で、各前記層は各前記発光素子の前記第4面を内包する付記1に記載の発光装置の製造方法。
【0093】
(付記3)
前記1以上の発光素子は複数の前記発光素子であり、
平面視で、前記剥離層は前記複数の発光素子の全ての前記第4面を内包する付記1に記載の発光装置の製造方法。
【0094】
(付記4)
前記第1構造体は、前記剥離層と前記発光素子との間に配置された光減衰層をさらに含み、
前記移載する工程の後、前記光減衰層を除去する工程をさらに備えた付記1~3のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【0095】
(付記5)
前記発光素子は、前記第3面と前記第4面とを接続する第5面をさらに有し、
前記光減衰層は前記第5面を覆う付記4に記載の発光装置の製造方法。
【0096】
(付記6)
前記第1構造体は、前記剥離層と前記光減衰層との間に配置された接着層をさらに含む付記4または5に記載の発光装置の製造方法。
【0097】
(付記7)
前記第1構造体を準備する工程は、
支持基板、前記支持基板上に配置された1以上の半導体積層体、前記1以上の半導体積層体の前記支持基板と対向する面の反対側の面に配置された電極部、ならびに、前記支持基板上であって、各前記半導体積層体および各前記電極部の周囲に配置され各前記半導体積層体および各前記電極部を保持する前記光減衰層を含み、前記電極部の電極面が前記光減衰層から露出する第3構造体を準備する工程と、
前記第1基板および前記剥離層を含む第4構造体を準備する工程と、
前記第3構造体における前記電極部の前記電極面と前記第4構造体における前記剥離層とを対向させた状態で、前記電極部の前記電極面を前記剥離層に接着する工程と、
前記接着する工程の後、前記支持基板を除去する工程と、
を有する付記4~6のいずれか1つに記載の発光装置の製造方法。
【0098】
(付記8)
前記1以上の発光素子は複数の前記発光素子であり、
前記移載する工程においては、前記剥離層における前記複数の発光素子のそれぞれに対応する部分にガルバノ方式でレーザ光の出射方向を制御しながら前記レーザ光を照射する付記1~7のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【0099】
(付記9)
前記レーザ光は、前記発光素子の前記第3面に対して斜めに照射される付記8に記載の発光装置の製造方法。
【0100】
(付記10)
前記レーザ光の強度分布はトップハット型である付記8または9に記載の発光装置の製造方法。
【0101】
(付記11)
前記第2構造体は前記第2基板の上面側に配置される粘着層をさらに含み、
前記移載する工程において、前記1以上の発光素子を前記粘着層を介して前記第2基板に接着させる付記1~10のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本開示は、例えば、車載ヘッドライト、液晶ディスプレイのバックライト装置、各種照明器具、大型ディスプレイ、広告や行き先案内等の各種表示装置、またはプロジェクタ装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0103】
1 発光装置
10 第1構造体
11 第1基板
11a 第1面
11b 第2面
12 剥離層
12a 層 分割された複数の層12a、発光素子50と対をなして配置される層12a
12b 部分 剥離層12における1つの発光素子50に対応する部分12b
13 光減衰層
15 構造体
20 第2構造体
21 第2基板
21a 上面
22 粘着層
30 第3構造体
31 配線基板
40 第4構造体
50 発光素子
50a 第3面
50b 第4面
50c 第5面
50N 不良の発光素子
51 半導体積層体
52 電極部
52a、52b 電極面
60 支持基板
60a 上面
70 接着層
80 レーザ光
85 粘着シート
86 押圧部
90 レーザ照射装置
91、92 ガルバノミラー
91c、92c 回転軸
93 レンズ
101 発光装置
110 パッケージ基板
110a 上面
110b 下面
111 絶縁基体
112 第1パッド
113 第2パッド
114 放熱部
120 配線基板
121 上面
122 外部接続用パッド
130 発光素子
131 上面
132 下面
133 側面
139 接合部
140 第1樹脂
141 母材
142 光反射性物質
143 上面
150 第2樹脂
151 母材
152 蛍光体
160 ワイヤ
170 第3樹脂
171 第1樹脂枠
172 第2樹脂枠
173 保護樹脂部
181 レジスト膜
182 光反射性樹脂材料
183 気体
184 固体の二酸化炭素
200、201 ノズル