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特開2024-19868衛星放送受信用の周波数変換装置、及び電力測定システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024019868
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】衛星放送受信用の周波数変換装置、及び電力測定システム
(51)【国際特許分類】
   H04B 1/18 20060101AFI20240206BHJP
   H04B 1/26 20060101ALI20240206BHJP
   H04N 21/61 20110101ALI20240206BHJP
   H04N 21/238 20110101ALI20240206BHJP
【FI】
H04B1/18 B
H04B1/18 Z
H04B1/26 H
H04N21/61
H04N21/238
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122610
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100143568
【弁理士】
【氏名又は名称】英 貢
(72)【発明者】
【氏名】長坂 正史
(72)【発明者】
【氏名】亀井 雅
【テーマコード(参考)】
5C164
5K062
【Fターム(参考)】
5C164FA04
5C164SB21P
5C164TA05S
5C164TA22P
5K062AA09
5K062AB01
5K062AD05
5K062AE01
(57)【要約】
【課題】衛星放送受信アンテナを介して得られる衛星放送信号に対し周波数変換を施す衛星放送受信用の周波数変換装置、及びその周波数変換装置を備える電力測定システムを提供する。
【解決手段】本発明の衛星放送受信用の周波数変換装置1は、所定のイメージ帯域に受信利得を有する干渉波受信アンテナ11と、干渉波受信アンテナ11を介して得られた受信信号から衛星放送信号における被干渉チャンネルを特定する被干渉チャンネル選局手段(干渉波検知部12及び周波数決定部13/13a)と、その被干渉チャンネルの信号について周波数変換を施し、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号を生成する被干渉チャンネル周波数変換手段(第2周波数変換部17及び帯域通過フィルタ18)と、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号に基づく信号を1本の同軸ケーブルで所定の宅内配信システムに送出する出力手段(混合器21等)と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
衛星放送受信アンテナを介して得られる衛星放送信号に対し周波数変換を施す衛星放送受信用の周波数変換装置であって、
衛星放送受信に対してイメージ干渉を生じさせる予め定めた対象偏波のイメージ帯域に受信利得を有する干渉波受信アンテナと、
帯域通過フィルタを用いて前記干渉波受信アンテナを介して得られた受信信号から当該イメージ帯域の信号を干渉波検知信号として抽出し、所定の閾値以上の信号電力を有する当該干渉波検知信号を基に衛星放送受信における被干渉チャンネルの選局を行い、当該衛星放送信号における対象偏波の被干渉チャンネルの信号について、標準規格上で定められた第1の局部発振周波数を用いる中間周波数とは別の、中間周波数帯域の所定の空き帯域内の所定の中間周波数に周波数変換を施すのに必要な第2の局部発振周波数を導出する被干渉チャンネル選局手段と、
当該衛星放送信号における対象偏波の被干渉チャンネルの信号について、前記第2の局部発振周波数の信号を用いて周波数変換を施し、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号を生成する被干渉チャンネル周波数変換手段と、
前記被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号についてそのまま、又は更に別の中間周波数帯域の所定の新たな空き帯域に周波数変換を施して、或いは被干渉チャンネルの前記第1の局部発振周波数を用いる中間周波数信号から置き換えるように更に周波数変換を施して、1本の同軸ケーブルで所定の宅内配信システムに送出する出力手段と、
を備えることを特徴とする周波数変換装置。
【請求項2】
前記出力手段は、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号について、被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号とそのまま混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の周波数変換装置。
【請求項3】
前記衛星放送信号は、12GHz帯の衛星放送における少なくとも右旋円偏波の各チャンネルの信号を含み、
前記被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号の中心周波数は、12GHz帯の衛星放送における右旋円偏波の中間周波数帯域と左旋円偏波の中間周波数帯域との間に配置されていることを特徴とする、請求項2に記載の周波数変換装置。
【請求項4】
前記出力手段は、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号について、標準規格上で定められた中間周波数とは更に別の中間周波数帯域の所定の新たな空き帯域に周波数変換を施した当該被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号を生成し、被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号と混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の周波数変換装置。
【請求項5】
前記衛星放送信号は、12GHz帯の衛星放送における少なくとも右旋円偏波の各チャンネルの信号を含み、
前記被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号の中心周波数は、右旋円偏波の中間周波数帯域内の空き帯域に配置されていることを特徴とする、請求項4に記載の周波数変換装置。
【請求項6】
前記出力手段は、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号について、標準規格上で定められた当該第1の局部発振周波数を用いる被干渉チャンネルの中間周波数信号の帯域へと更に周波数変換を施して被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号を生成し、当該第1の局部発振周波数を用いる被干渉チャンネルの中間周波数信号から前記被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号へと置き換えるようにして、被干渉チャンネル以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号と混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の周波数変換装置。
【請求項7】
前記衛星放送信号は、12GHz帯の衛星放送における少なくとも右旋円偏波の各チャンネルの信号を含み、
前記イメージ帯域に対する対象偏波は、12GHz帯の衛星放送における右旋円偏波のみを対象とするように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の周波数変換装置。
【請求項8】
請求項1に記載の周波数変換装置と、
当該周波数変換装置の出力から得られる各チャンネルの中間周波数信号の受信電力を測定する電力測定器と、
を備えることを特徴とする電力測定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衛星放送受信アンテナを介して得られる衛星放送信号に対し周波数変換を施す周波数変換装置、及びその周波数変換装置を備える電力測定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
現行の衛星放送は12GHz帯の電波を用いており、その12GHz帯の衛星放送信号は衛星放送受信アンテナを介して受信された後、同軸ケーブルを用いて宅内配信システムへと送出し受信機まで伝送するために、衛星放送受信アンテナのLNB(Low noise block converter)によって、衛星放送信号の放送用周波数を中間周波数(IF)帯域に周波数変換するようになっている。このようなLNBは、周波数変換装置とも称される。
【0003】
また、東経110度静止軌道上から送信される衛星放送は、現状、BSデジタル放送(以下、「BS」と略す)と広帯域CSデジタル放送(以下、「CS」と略す)があり、いずれも右旋円偏波及び左旋円偏波を用いている。
【0004】
尚、右旋円偏波と左旋円偏波は共用できるため、右旋円偏波と左旋円偏波を用いることで同一周波数でも別チャンネルの衛星放送波を伝送することができ、周波数の有効利用が可能となる。
【0005】
そこで、BS及びCSの左旋用IFの周波数がARIB STD-B63で規定されている(例えば、非特許文献1参照)。そして、右旋用IFの周波数を1032.23MHz~2070.25MHz、左旋用IFの周波数を2224.41MHz~3223.25MHzに変換する周波数変換装置は、ARIB STD-B63に例示されている。
【0006】
図9(a)には、12GHz帯衛星放送サービス(BS/CS)における衛星放送信号の放送用周波数として、右旋円偏波(右旋)及び左旋円偏波(左旋)の各放送チャンネル(BS右旋は1~23の奇数番号ch、BS左旋は2~24の偶数番号ch、CS右旋は2~26の偶数番号ch、及びCS左旋は1~25の奇数番号ch)の周波数配置を示している。即ち、BS・CSの右旋は、11.71023GHz~12.74825GHzであり、BS・CSの左旋は、11.72941GHz~12.72825GHzである。以下、右旋及び左旋を識別せずに総括する場合、便宜上、衛星放送信号の放送用周波数帯域は11.7GHz~12.75GHzとして説明する。
【0007】
また、図9(b)には、ARIB STD-B63(非特許文献1)にて望ましいとされるLNB出力として、衛星放送信号の放送用周波数から変換されるIF帯域を示している。図9(b)に示すように、LNB出力として、右旋円偏波(右旋)の受信には10.678GHzの局部発振周波数(LO)を用い、左旋円偏波(左旋)の受信には9.505GHzのLOを用いて、衛星放送信号の放送用周波数をIF帯域へと周波数変換を行うことが望ましいとされる。即ち、BS・CSの右旋のIF帯域は、1032.23MHz~2070.25MHzとなり、BS・CSの左旋のIF帯域は、2224.41MHz~3223.25MHzとなる。
【0008】
つまり、このような衛星放送受信用のLNBにおける周波数変換では、その入力となる衛星放送信号の放送用周波数帯域とLOとの差が、出力のIF帯域となる。
【0009】
ところで、右旋円偏波のイメージ帯域にあたる9GHz帯は、主にレーダーの周波数割り当てがある。市販の一般的な衛星放送受信アンテナの受信特性を実測した結果として、この9GHz付近のレーダーによる無線周波(RF)信号が、衛星放送受信に対する干渉波となり、LNB出力に現れることが報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0010】
つまり、当該LNBにおける周波数変換では、右旋では9GHz付近の干渉波(尚、左旋では7GHz付近に干渉波が存在する。)の干渉波も周波数変換されることになる。特に、レーダーの等価等方放射電力(EIRP)は大きいため、9GHz付近の干渉波は、BS/CSの衛星放送受信の品質に劣化を生じさせる可能性がある。このため、衛星放送受信における右旋のIF信号において、当該9GHz付近の干渉波に基づく干渉波信号が混合し、イメージ干渉として現れることがある。
【0011】
図10は、12GHz帯衛星放送における右旋のイメージ干渉の周波数関係を示す図である。図10の上段には、当該LNBの入力となる12GHz帯衛星放送におけるBS・CS右旋の放送用周波数帯の11.7GHz~12.75GHzと、右旋受信に用いる局部発振周波数(LO)の10.678GHzと、右旋の干渉波としての9GHz付近との周波数関係を示している。また、図10の下段には、当該LNBにおける周波数変換(ブロックコンバート)により出力される中間周波数帯域の1.03223GHz~2.07025GHz(以下、「BS・CS右旋IF」と略す)に対して、上記9GHz付近の右旋の干渉波が同様に周波数変換されて干渉波信号としてイメージ干渉する様子を示している。
【0012】
このようなイメージ干渉の影響を低減するため、ARIB STD-B63の12章では、イメージ妨害抑圧比が規定されており、その抑圧比は55dBとされている(例えば、非特許文献1参照)。従来技術として、LNBで周波数変換を行う前に、フィルタを用いてイメージ帯域自体を抑圧する方法がある。この場合、右旋の衛星放送信号に影響を与えるイメージ帯域は9GHz帯であるため、そのフィルタの要求条件は、12GHz帯を劣化なく通過させ、且つ9GHz帯を十分に抑圧することである。既に、現在市販されている衛星放送受信アンテナのLNBは、このようなフィルタを実装しており、ARIB STD-B63の規格値であるイメージ妨害抑圧比55dBを実現している。
【0013】
しかしながら、右旋の衛星放送信号に影響を与える9GHz付近の干渉波は、衛星放送12GHz帯からは十分離れているとはいえず、イメージ妨害抑圧比(55dB)では衛星放送の受信信号に劣化が生じる可能性がある。ここで、左旋の7GHz付近の干渉波は、当該LNBによる周波数変換が為されたとしても、衛星放送12GHz帯(11.7GHz~12.75GHz)からは十分離れているため、高いイメージ妨害抑圧比が得られていることは実測結果からも確認済みである。
【0014】
尚、従来の衛星放送受信を想定した周波数変換装置として、2つのIF帯域(低域側IF、高域側IF)について、高域側IFへの干渉を回避するため、複数回の周波数変換により、高域側IFを低域側IFと重なる周波数に変換するものが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0015】
また、BS左旋円偏波の受信信号を分割した上で、可変の局部発振周波数を用いて周波数変換し、地上デジタルテレビジョン放送で使用していない周波数帯域にBS左旋IFを配置する周波数変換装置も開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特許第6242186号公報
【特許文献2】特許第6257191号公報
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】“高度広帯域衛星デジタル放送用受信装置(望ましい仕様) 標準規格 ARIB STD-B63 1.9版”、[online]、令和元年12月5日改定、[令和4年6月28日検索]、インターネット〈URL:https://www.arib.or.jp/kikaku/kikaku_hoso/std-b63.html〉
【非特許文献2】水木 也寸志,外、“市販BSアンテナの9GHz帯でのアンテナ放射パターン測定”、一般社団法人 電子情報通信学会、信学技法 vol.121, no.128, SAT2021-23, pp.18-23、2021年7月21日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
上述したように、右旋の衛星放送信号に影響を与えるイメージ帯域にあたる9GHz帯は、主にレーダーに周波数割り当てがある。一般にレーダーの出力電力は大きく強力な干渉波となるため、ARIB STD-B63の周波数変換装置で規定されているイメージ妨害抑圧比(55dB)では、衛星放送の受信信号に劣化が生じる可能性がある。
【0019】
また、上述したように、現在市販されている衛星放送受信アンテナのLNBで周波数変換を行う前に、大型のフィルタを用いてイメージ帯域自体を抑圧する方法も考えられる。しかしながら、この方法では、12GHz帯の挿入損失増加による信号劣化のほか、衛星放送受信アンテナの大型化とコスト増大につながるため、好ましくない。
【0020】
尚、特許文献1に開示される周波数変換装置は、複数回の周波数変換により高域側IFを低域側IFと重なる周波数に変換するものであり、IF帯域における干渉(2.4GHz帯無線LANなど)の回避を可能とするが、12GHz帯衛星放送の受信時に生じる上述したイメージ干渉については回避できない。また、特許文献1に開示される周波数変換装置では、信号出力が2系統になるため2本の同軸ケーブルが必要となり、既存の宅内配信システムとして一般的な1本の同軸ケーブルで宅内伝送することができないため、汎用性の観点で課題がある。
【0021】
更に、特許文献2に開示される周波数変換装置は、可変の局部発振周波数を用いて周波数変換し、地上デジタルテレビジョン放送で使用していない周波数帯域にBS左旋IFを配置するものであり、右旋がARIB STD-B63の周波数変換装置と同じ構成である以上、上述した9GHz帯の干渉波によるイメージ干渉によって、衛星放送の受信信号に劣化が生じる可能性がある。
【0022】
従って、本発明の目的は、上述の問題に鑑みて、イメージ干渉の影響を低減する衛星放送受信用の周波数変換装置、及びその周波数変換装置を備える電力測定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本発明の周波数変換装置は、衛星放送受信アンテナを介して得られる衛星放送信号に対し周波数変換を施す衛星放送受信用の周波数変換装置であって、衛星放送受信に対してイメージ干渉を生じさせる予め定めた対象偏波のイメージ帯域に受信利得を有する干渉波受信アンテナと、帯域通過フィルタを用いて前記干渉波受信アンテナを介して得られた受信信号から当該イメージ帯域の信号を干渉波検知信号として抽出し、所定の閾値以上の信号電力を有する当該干渉波検知信号を基に衛星放送受信における被干渉チャンネルの選局を行い、当該衛星放送信号における対象偏波の被干渉チャンネルの信号について、標準規格上で定められた第1の局部発振周波数を用いる中間周波数とは別の、中間周波数帯域の所定の空き帯域内の所定の中間周波数に周波数変換を施すのに必要な第2の局部発振周波数を導出する被干渉チャンネル選局手段と、当該衛星放送信号における対象偏波の被干渉チャンネルの信号について、前記第2の局部発振周波数の信号を用いて周波数変換を施し、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号を生成する被干渉チャンネル周波数変換手段と、前記被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号についてそのまま、又は更に別の中間周波数帯域の所定の新たな空き帯域に周波数変換を施して、或いは被干渉チャンネルの前記第1の局部発振周波数を用いる中間周波数信号から置き換えるように更に周波数変換を施して、1本の同軸ケーブルで所定の宅内配信システムに送出する出力手段と、を備えることを特徴とする。
【0024】
また、本発明の周波数変換装置において、前記出力手段は、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号について、被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号とそのまま混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成されていることを特徴とする。
【0025】
また、本発明の周波数変換装置において、前記衛星放送信号は、12GHz帯の衛星放送における少なくとも右旋円偏波の各チャンネルの信号を含み、前記被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号の中心周波数は、12GHz帯の衛星放送における右旋円偏波の中間周波数帯域と左旋円偏波の中間周波数帯域との間に配置されていることを特徴とする。
【0026】
また、本発明の周波数変換装置において、前記出力手段は、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号について、標準規格上で定められた中間周波数とは更に別の中間周波数帯域の所定の新たな空き帯域に周波数変換を施した当該被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号を生成し、被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号と混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成されていることを特徴とする。
【0027】
また、本発明の周波数変換装置において、前記衛星放送信号は、12GHz帯の衛星放送における少なくとも右旋円偏波の各チャンネルの信号を含み、前記被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号の中心周波数は、右旋円偏波の中間周波数帯域内の空き帯域に配置されていることを特徴とする。
【0028】
また、本発明の周波数変換装置において、前記出力手段は、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号について、標準規格上で定められた当該第1の局部発振周波数を用いる被干渉チャンネルの中間周波数信号の帯域へと更に周波数変換を施して被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号を生成し、当該第1の局部発振周波数を用いる被干渉チャンネルの中間周波数信号から前記被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号へと置き換えるようにして、被干渉チャンネル以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号と混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成されていることを特徴とする。
【0029】
また、本発明の周波数変換装置において、前記衛星放送信号は、12GHz帯の衛星放送における少なくとも右旋円偏波の各チャンネルの信号を含み、前記イメージ帯域に対する対象偏波は、12GHz帯の衛星放送における右旋円偏波のみを対象とするように構成されていることを特徴とする。
【0030】
また、本発明の電力測定システムは、本発明の周波数変換装置と、当該周波数変換装置の出力から得られる各チャンネルの中間周波数信号の受信電力を測定する電力測定器と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明によれば、標準規格上のイメージ妨害抑圧比では信号劣化が生じるような強い干渉波がある場合でも衛星放送の信号を劣化なく受信することができ、イメージ帯域を用いる他の機器(イメージ干渉の原因となっていたレーダー機器等)との共用が容易になる。
【0032】
また、本発明によれば、衛星放送の受信信号に関するイメージ干渉の影響を回避した中間周波数信号についても、1本の同軸ケーブルを用いる既存の宅内配信システムを通じて受信機に伝送することができ、本発明による周波数変換装置の出力周波数は、標準規格(ARIB STD-B63)上で規定されている中間周波数帯域(1032~3224MHz)に含まれることから、汎用性の高いものとなる。つまり、既設の宅内配信システムを改修する必要がないため、衛星放送受信アンテナの周波数変換装置を置き換えるだけでよく、イメージ干渉の課題を低コストに解決できる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
図1】本発明による実施例1の衛星放送受信用の周波数変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】本発明による実施例1の衛星放送受信用の周波数変換装置による周波数変換に係る12GHz帯衛星放送における右旋の周波数関係を示す図である。
図3】本発明による実施例2の衛星放送受信用の周波数変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図4】本発明による実施例2の衛星放送受信用の周波数変換装置による周波数変換に係る12GHz帯衛星放送における右旋の周波数関係を示す図である。
図5】本発明による実施例2の衛星放送受信用の周波数変換装置において、被干渉チャンネルに関して周波数変換した中間周波数信号についてダウンコンバータにおける周波数変換により再配置する様子を示す図である。
図6】本発明による実施例3の衛星放送受信用の周波数変換装置の概略構成を示すブロック図である。
図7】本発明による実施例3の衛星放送受信用の周波数変換装置による周波数変換に係る12GHz帯衛星放送における右旋の周波数関係を示す図である。
図8】本発明による実施例3の衛星放送受信用の周波数変換装置において、被干渉チャンネルに関して周波数変換した中間周波数信号についてダウンコンバータにおける周波数変換により再配置する様子を示す図である。
図9】(a)は12GHz帯衛星放送サービス(BS/CS)における衛星放送信号の放送用周波数の周波数配置を示す図であり、(b)はARIB STD-B63にて望ましいとされるLNB出力として、衛星放送信号の放送用周波数から変換される中間周波数(IF)帯域を示す図である。
図10】12GHz帯衛星放送における右旋のイメージ干渉の周波数関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
〔衛星放送受信用の周波数変換装置〕
まず、本発明による衛星放送受信用の周波数変換装置1は、衛星放送受信アンテナ10を介して得られる衛星放送信号に対し周波数変換を施すように構成されるが、イメージ干渉の影響を低減するために、別途設けた干渉波受信アンテナ11を介して衛星放送受信に対してイメージ干渉を生じさせる予め定めた対象偏波のイメージ帯域の干渉波を検知して衛星放送信号における被干渉チャンネルを特定する。そして、本発明に係る周波数変換装置1は、衛星放送受信アンテナ10を介して得られる衛星放送信号における対象偏波の被干渉チャンネルの信号について、標準規格上で定められた第1の局部発振周波数(LO1)を用いる中間周波数とは別の、中間周波数帯域の所定の空き帯域に再配置する第2の局部発振周波数(LO2)を用いて周波数変換を施して、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)を生成する。そして、本発明に係る周波数変換装置1は、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)についてそのまま、又は更に別の中間周波数帯域の所定の新たな空き帯域に周波数変換を施して、或いは被干渉チャンネルの中間周波数信号から置き換えるように更に周波数変換を施して、1本の同軸ケーブルで所定の宅内配信システムに送出する出力手段を備えるように構成される。
【0035】
例えば、本発明に係る周波数変換装置1における出力手段は、後述する実施例1では、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)について、被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号とそのまま混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成される。
【0036】
或いは、本発明に係る周波数変換装置1における出力手段は、後述する実施例2では、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)について、標準規格上で定められた中間周波数とは更に別の中間周波数帯域の所定の新たな空き帯域に周波数変換を施した当該被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号(fc2’)を生成し、被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号と混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成される。
【0037】
或いは、本発明に係る周波数変換装置1における出力手段は、後述する実施例3では、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)について、標準規格上で定められた当該第1の局部発振周波数(LO1)を用いる被干渉チャンネルの中間周波数信号の帯域へと更に周波数変換を施して被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号(fc3)を生成し、当該第1の局部発振周波数を用いる被干渉チャンネルの中間周波数信号から前記被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号(fc3)へと置き換えるようにして、被干渉チャンネル以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号と混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成される。
【0038】
後述する各実施例において、この被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)、新たな第2の中間周波数信号(fc2’)、及び第3の中間周波数信号(fc3)の各周波数は、それ以外の他チャンネルの中間周波数と同様に、標準規格(ARIB STD-B63)上で定められた中間周波数帯域(1032~3224MHz)に含まれる。
【0039】
特に、本発明に係る衛星放送受信用の周波数変換装置1は、干渉波受信アンテナ11を介して右旋円偏波の衛星放送受信に対してイメージ干渉を生じさせる干渉波を検知して右旋円偏波の被干渉チャンネルを特定し、周波数解析によりそのイメージ干渉を受ける衛星放送信号における被干渉チャンネルの中心周波数を求める。そして、本発明に係る周波数変換装置1は、求めた中心周波数から衛星放送信号における被干渉チャンネルを中間周波数帯域の当該所定の空き帯域に配置するための第2の局部発振周波数(LO2)を導出し、この局部発振周波数(LO2)を基に可変設定される局部発振器(後述する第2周波数変換部17)により被干渉チャンネルの周波数変換を行い、当該第2の中間周波数信号(fc2)を生成する。
【0040】
以下、図面を参照しながら、本発明による衛星放送受信用の周波数変換装置1として、好適な各実施例を具体的に説明する。
【0041】
(実施例1)
図1は、本発明による実施例1の衛星放送受信用の周波数変換装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0042】
図1に示す実施例1の周波数変換装置1は、既存のLNBと同様に、衛星放送受信アンテナ10を介して受信した12GHz帯の衛星放送信号について偏波分離部10aによる偏波分離後の右旋円偏波(右旋)と左旋円偏波(左旋)の各チャンネルの受信信号を入力し、標準規格上で定められた中間周波数帯域へと周波数変換を施し偏波毎の各チャンネルの中間周波数信号を生成する機能を有する。
【0043】
現在の12GHz帯衛星放送(BS/CS)は、右旋円偏波(右旋)と左旋円偏波(左旋)を使用しており、衛星放送用の周波数は、11.7~12.75GHz(12GHz帯)である。そして、実施例1の周波数変換装置1は、右旋と左旋の12GHz帯の各受信信号を入力する。衛星放送では周波数変換装置1の出力に用いる同軸ケーブルが12GHz帯の信号を伝送できないため、実施例1の周波数変換装置1は、入力した右旋と左旋の12GHz帯の各受信信号に対して周波数変換を施して、標準規格ARIB STD-B63上で規定されている1.0GHz~3.2GHzの中間周波数(IF)帯域の信号に変換して出力する。12GHz帯衛星放送のIF周波数は、ARIB STD-B63で規定されており、周波数変換に用いる局部発振周波数(LO)は、右旋用が10.678GHz、左旋用が9.505GHzである。
【0044】
ただし、実施例1の周波数変換装置1は、干渉波受信アンテナ11を介して衛星放送受信に対してイメージ干渉を生じさせる予め定めた対象偏波のイメージ帯域(即ち、本例では右旋の受信に係る9GHz帯)の信号を検出し、衛星放送受信における被干渉チャンネルを特定するようにしている。そして、実施例1の周波数変換装置1は、衛星放送信号における被干渉チャンネルについては当該右旋の中間周波数帯域と左旋の中間周波数帯域との間(図9に示すCS右旋IFとBS左旋IFとの間)の所定の空き帯域(2.071GHz~2.224GHz)に周波数変換を施した第2の中間周波数信号(fc2)を別途生成し、当該偏波毎の各チャンネルの中間周波数信号と混合して外部出力する。この周波数変換装置1によって混合生成した出力信号は、1本の同軸ケーブルを用いて、図示しない受信機まで伝送する宅内配信システムへと送出するように構成される。
【0045】
より具体的に、図1に示す実施例1の周波数変換装置1は、干渉波受信アンテナ11、干渉波検知部12、周波数決定部13、分配器14、第1周波数変換部15、低域通過フィルタ16、第2周波数変換部17、帯域通過フィルタ18、第3周波数変換部19、高域通過フィルタ20、及び混合器21を備える。
【0046】
まず、実施例1の周波数変換装置1には、衛星放送受信アンテナ10を介して受信した12GHz帯の衛星放送信号について偏波分離部10aによる偏波分離後の右旋円偏波及び左旋円偏波でそれぞれ受信した各チャンネルの受信信号が分配器14に入力される。衛星放送受信アンテナ10は、12GHz帯衛星放送を受信可能なアンテナであり、本例では12GHz帯の右旋及び左旋の双方の衛星放送受信に対応したパラボラアンテナを例示している。また、衛星放送受信アンテナ10と偏波分離部10aは、アンテナ装置として一体となって構成されていてもよいし、別体として構成されていてもよい。
【0047】
分配器14は、偏波分離部10aによって偏波分離された12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の各チャンネル(11.7GHz~12.75GHz)の受信信号を入力し、第1周波数変換部15、及び第2周波数変換部17へ分配出力する。
【0048】
第1周波数変換部15は、分配器14から入力される12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の各チャンネルの受信信号に対して、標準規格上の右旋用の第1の局部発振周波数(LO1=10.678GHz)の信号を用いて周波数変換を施し、1.03223GHz~2.07025GHzとなる右旋の中間周波数(IF)帯域の信号を生成して低域通過フィルタ16に出力する。
【0049】
低域通過フィルタ16は、第1周波数変換部15から入力される右旋のIF帯域の信号に対して、余分な高域の不要波及び雑音成分を除去する低域通過フィルタ処理を施し、混合器21に出力する。
【0050】
干渉波受信アンテナ11は、衛星放送受信に対してイメージ干渉を生じさせる予め定めた対象偏波のイメージ帯域(即ち、本例では右旋の受信に係る9GHz帯)の信号に対応する受信利得を有し、受信した信号を干渉波検知部12に出力する。本例では、干渉波受信アンテナ11は、予め定めた右旋円偏波のイメージ帯域にあたる9GHz帯に受信利得を持つアンテナであればよく、ホーンアンテナやマイクロストリップアンテナなどで実現できる。
【0051】
干渉波検知部12は、帯域通過フィルタを用いて干渉波受信アンテナ11を介して得られた受信信号から当該イメージ帯域にあたる9GHz帯の信号を干渉波検知信号として抽出し、その干渉波検知信号の信号電力を測定する。そして、干渉波検知部12は、測定結果として所定の閾値以上の信号電力を有する干渉波検知信号が得られた場合に、干渉波(本例では、レーダーによる9GHz帯の放射電波)の存在が有るとして検知する。そして、干渉波検知部12は、その干渉波検知信号の周波数解析を行って得られた9GHz帯の周波数(fi)を周波数決定部13に出力する。このような干渉波検知部12は、いわゆるスペクトラムアナライザと同じ機能を有するものであるが、測定周波数は9GHz帯に限定されるため小型化が可能である。
【0052】
ただし、現時点では9GHz帯のみがイメージ帯域にあたることから、この9GHz帯のみをイメージ帯域として説明するが、将来的にその他のイメージ帯域が発生しても対応できるように、干渉波受信アンテナ11は8GHz帯~9GHz帯に対して受信感度を持つアンテナとし、干渉波検知部12は外部設定で、干渉波検知信号として抽出するイメージ帯域を指定設定する可変帯域通過フィルタを有する構成とすることが好ましい。
【0053】
周波数決定部13は、対象偏波の衛星放送受信に用いる第1の局部発振周波数(即ち、右旋用のLO1)の情報、及び衛星放送の各チャンネルの中心周波数をリストとして保持しており、干渉波検知部12から得られる干渉波検知信号の周波数(fi)に応じて、イメージ干渉を受ける対応する衛星放送受信における対象偏波の中心周波数(fc1)を決定する。そして、周波数決定部13は、その中心周波数(fc1)を持つ対象偏波の被干渉チャンネルの信号について、標準規格上で定められた第1の局部発振周波数(LO1)を用いる中間周波数とは別の、中間周波数帯域の所定の空き帯域内の所定の中間周波数(fc2)に周波数変換を施すのに必要な第2の局部発振周波数(LO2)を導出する。本例では、中間周波数帯域の所定の空き帯域として、右旋の中間周波数帯域と左旋の中間周波数帯域との間(図9に示すCS右旋IFとBS左旋IFとの間)を当該所定の空き帯域とする。そして、周波数決定部13は、第2の局部発振周波数(LO2)及び被干渉チャンネルの中心周波数(fc1)の情報を第2周波数変換部17に出力する。即ち、周波数決定部13は、干渉波受信アンテナ11及び干渉波検知部12を介して得られた所定の閾値以上の信号電力を有する干渉波検知信号を基に、衛星放送受信における被干渉チャンネルの選局を行う。
【0054】
従って、干渉波検知部12及び周波数決定部13は、帯域通過フィルタを用いて干渉波受信アンテナ11を介して得られた受信信号から当該イメージ帯域の信号を干渉波検知信号として抽出し、所定の閾値以上の信号電力を有する当該干渉波検知信号を基に衛星放送受信における被干渉チャンネルの選局を行い、当該衛星放送信号における対象偏波の被干渉チャンネルの信号について、標準規格上で定められた第1の局部発振周波数(LO1)を用いる中間周波数とは別の、中間周波数帯域の所定の空き帯域内の所定の中間周波数に周波数変換を施すのに必要な第2の局部発振周波数(LO2)を導出する「被干渉チャンネル選局手段」として機能する。
【0055】
第2周波数変換部17は、分配器14から入力される12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の各チャンネルの受信信号に対して、周波数決定部13によって導出された第2の局部発振周波数(LO2)の信号を用いて周波数変換を施し、周波数変換後の右旋円偏波の各チャンネルの中間周波数帯域の信号を、被干渉チャンネルの中心周波数(fc1)の情報とともに帯域通過フィルタ18に出力する。
【0056】
帯域通過フィルタ18は、第2周波数変換部17から入力されるLO2を用いた周波数変換後の右旋円偏波の各チャンネルの中間周波数帯域の信号に対して、被干渉チャンネルの中心周波数(fc1)の情報を基に、被干渉チャンネルに対応する中間周波数信号成分(中心周波数fc2=fc1-LO2の中間周波数信号成分)のみを抽出する帯域通過フィルタ処理を施し、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号を生成して混合器21に出力する。この被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号は、右旋の中間周波数帯域と左旋の中間周波数帯域との間(図9に示すCS右旋IFとBS左旋IFとの間)の空き帯域(2.071GHz~2.224GHz)内の所定のIF周波数(例えば、中心周波数fc2=2.188GHz)となっている。
【0057】
ここで、本例では現時点で課題とする右旋9GHzの1つのイメージ帯域によって影響を受ける1つの被干渉チャンネルを対象としているが、将来的に複数の被干渉チャンネルがイメージ干渉の対象となりうるときは個別に、それぞれの被干渉チャンネルを対象とするよう第2周波数変換部17及び帯域通過フィルタ18を1セットとして複数セットを設けるようにする。
【0058】
尚、本例では、説明の便宜上、第2周波数変換部17と帯域通過フィルタ18は、個別の機能部として説明しているが、一体の機能部とすることもできる。即ち、第2周波数変換部17及び帯域通過フィルタ18は、12GHz帯の衛星放送信号における対象偏波(本例では、右旋円偏波)の被干渉チャンネルの信号について、周波数決定部13によって導出された第2の局部発振周波数(LO2)の信号を用いて周波数変換を施し、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号を生成する「被干渉チャンネル周波数変換手段」として構成されるものであればよい。
【0059】
第3周波数変換部19は、分配器14から入力される12GHz帯の左旋円偏波の各チャンネルの受信信号に対して、標準規格上の左旋用の第3の局部発振周波数(LO3=9.505GHz)の信号を用いて周波数変換を施し、2.224GHz~3.223GHzとなる左旋のIF帯域の信号を生成して高域通過フィルタ20に出力する。
【0060】
高域通過フィルタ20は、第3周波数変換部19から入力される左旋のIF帯域の信号に対して、余分な低域の不要波及び雑音成分を除去する高域通過フィルタ処理を施し、混合器21に出力する。
【0061】
混合器21は、低域通過フィルタ16から入力される低域通過フィルタ処理後の右旋のIF帯域の信号と、帯域通過フィルタ18から入力されるイメージ干渉の影響を回避した被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)と、高域通過フィルタ20から入力される高域通過フィルタ処理後の左旋のIF帯域の信号と、を混合(合波)して外部出力する。この周波数変換装置1によって混合生成した出力信号は、1本の同軸ケーブルを用いて、図示しない受信機まで伝送する宅内配信システムへと送出するように構成される。
【0062】
従って、実施例1に係る混合器21は、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)について、被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号とそのまま混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成された「出力手段」として機能する。
【0063】
つまり、実施例1の周波数変換装置1は、従来技術における一般的な周波数変換(LNB)と比較して、干渉波受信アンテナ11、干渉波検知部12、及び周波数決定部13、分配器14、第2周波数変換部17、及び帯域通過フィルタ18を備える点で相違している。
【0064】
実施例1の周波数変換装置1では、イメージ干渉の課題は右旋の周波数変換で生じるため、左旋については従来技術における一般的な周波数変換(LNB)と比較して、その構成を変更しておらず同様としている。即ち、実施例1の周波数変換装置1は、右旋の衛星放送波のうち、9GHz帯の干渉波から影響を受けるチャンネルを、当該干渉波の影響を受けない別のIF帯域の信号に変換・生成することで、イメージ干渉を回避できるようにしている。
【0065】
図2を参照して、実施例1の周波数変換装置1における、当該干渉波の影響を受けない別のIF帯域の信号に変換・生成する動作について説明する。
図2は、本発明による実施例1の衛星放送受信用の周波数変換装置による周波数変換に係る12GHz帯衛星放送における右旋の周波数関係を示す図である。
【0066】
図2の上段には、実施例1の周波数変換装置1の入力となる12GHz帯衛星放送におけるBS・CS右旋の放送用周波数帯の11.7GHz~12.75GHzと、右旋受信に用いる第1の局部発振周波数(LO1)の10.678GHzと、右旋の干渉波としての周波数fi(9GHz付近)との周波数関係を示している。また、図2の下段には、実施例1の周波数変換装置1における周波数変換(ブロックコンバート)により出力されるIF帯域の1.03223GHz~2.07025GHz(「BS・CS右旋IF」)に対して、上記fi(9GHz付近)の右旋の干渉波が同様に周波数変換されて干渉波信号としてイメージ干渉する様子を示すとともに、BS・CS右旋IF帯域で9GHz帯のイメージ干渉の影響を受ける被干渉チャンネルについては、当該干渉波の影響を受けない別の中間周波数(中心周波数fc2=2.188GHz)とする、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号に変換・生成する様子を示している。
【0067】
まず、実施例1の周波数変換装置1は、干渉波受信アンテナ11、干渉波検知部12、及び周波数決定部13を備え、干渉波受信アンテナ11、及び干渉波検知部12は、衛星放送受信アンテナ10とは別の受信系統で周波数(fi)の干渉波を検知するようになっている。そして、周波数決定部13は、対象偏波の衛星放送受信に用いる第1の局部発振周波数(即ち、右旋用のLO1)の情報、及び衛星放送の各チャンネルの中心周波数をリストとして保持しており、干渉波検知部12から得られる干渉波検知信号の周波数(fi)に応じて、イメージ干渉を受ける対応する衛星放送受信における対象偏波の中心周波数(fc1)を決定する。
【0068】
fc1は、干渉波検知信号の周波数(fi)と、第1の局部発振周波数(LO1)の10.678GHzとから、以下のように求まる。尚、0.0345GHzは、1チャンネルの占有帯域幅である。
fc1-0.0345÷2 ≦ fi+(10.678-fi)×2 ≦ fc1+0.0345÷2 (単位:GHz)
よって、21.33875-fi ≦ fc1 ≦ 21.37325-fi (単位:GHz)
【0069】
また、周波数決定部13は、第2周波数変換部17において衛星放送受信における中心周波数(fc1)を持つ対象偏波の被干渉チャンネルの信号について右旋の中間周波数帯域と左旋の中間周波数帯域との間(図9に示すCS右旋IFとBS左旋IFとの間)の空き帯域(2.071GHz~2.224GHz)内の所定のIF周波数(fc2)に周波数変換を施すのに必要な第2の局部発振周波数(LO2)を導出する。
【0070】
そして、第2周波数変換部17、及び帯域通過フィルタ18は、12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の被干渉チャンネルの信号について、周波数決定部13によって導出された第2の局部発振周波数(LO2)の信号を用いて周波数変換を施し、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)を生成する。
【0071】
本例では、第2の中間周波数信号の中心周波数(fc2)に関して、一般的な宅内配信システムが対応している同軸ケーブルで信号伝送可能な周波数(3.224GHz以下)であり、且つ他のIF信号と重複がない一例として、fc2(=fc1-LO2)=2.188GHzとした。尚、fc2は、イメージ干渉を回避でき、実施例1においては同軸ケーブルで信号伝送可能な周波数であり、且つ被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルに関するIF信号と重複がない空き帯域であればよく、上記のfc2=2.188GHzは一例である。ただし、fc2について、上述したように、右旋の中間周波数帯域と左旋の中間周波数帯域との間(図9に示すCS右旋IFとBS左旋IFとの間)の空き帯域に設定することで、イメージ干渉を確実に回避しつつ、当該一般的な宅内配信システムへの信号伝送上の品質も保たれる点で好ましい。
【0072】
最終的に、実施例1に係る混合器21によって、イメージ干渉の影響を回避した被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)は、標準規格上の右旋及び左旋の中間周波数(IF)帯域の信号と混合(合波)されて、図示しない受信機まで伝送する宅内配信システムへと送出される。これにより、イメージ干渉を受けるチャンネルの信号も、干渉を受ける前の状態で宅内に配信できるようになる。尚、本実施例において、受信機は、選局動作で当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)に基づくチャンネルを受信して表示できることが必要になる。
【0073】
従って、実施例1の周波数変換装置1によれば、標準規格上のイメージ妨害抑圧比では信号劣化が生じるような強い干渉波がある場合でも衛星放送の信号を劣化なく受信することができ、イメージ帯域を用いる他の機器(イメージ干渉の原因となっていたレーダー機器等)との共用が容易になる。
【0074】
また、実施例1の周波数変換装置1によれば、衛星放送の受信信号に関するイメージ干渉の影響を回避した中間周波数信号についても、1本の同軸ケーブルを用いる既存の宅内配信システムを通じて受信機に伝送することができ、実施例1の周波数変換装置1の出力周波数は、現行の標準規格(ARIB STD-B63)上で規定されている中間周波数帯域(1032~3224MHz)に含まれることから、汎用性の高いものとなる。
【0075】
(実施例2)
宅内配信システムによっては、右旋用のIF(右旋IF)の受信のみに対応したものもある。右旋IFのみに対応した宅内配信システムの上限周波数は2.1GHzである場合があり、この場合は、上述した実施例1のような中心周波数fc2=2.188GHzとする上述した被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号をそのまま伝送することができない。
【0076】
そこで、この課題を解決した構成を実施例2として説明する。
図3は、本発明による実施例2の衛星放送受信用の周波数変換装置1の概略構成を示すブロック図である。図3に示す実施例2の衛星放送受信用の周波数変換装置1は、干渉波受信アンテナ11、干渉波検知部12、周波数決定部13、分配器14、第1周波数変換部15、低域通過フィルタ16、帯域除去フィルタ16a、第2周波数変換部17、帯域通過フィルタ18、ダウンコンバータ18a、及び混合器21を備える。図3は、図1と同様の構成要素には同一の参照番号を付している。
【0077】
図3に示す実施例2の衛星放送受信用の周波数変換装置1は、図1に示す実施例1と比較して、帯域除去フィルタ16a、及びダウンコンバータ18aを更に備える点で相違しており、その他の構成要素は同様に動作する。尚、図3に示す実施例2の周波数変換装置1は、宅内配信システムが右旋のみに対応しているという想定のため、図1に示す左旋に関する構成要素(第3周波数変換部19、及び高域通過フィルタ20)は設けていない例としている。ただし、実施例1,2で想定する宅内配信システムのいずれにも適用可能な周波数変換装置1とするときは、図3に示す周波数変換装置1において、図1に示す左旋に関する構成要素(第3周波数変換部19、及び高域通過フィルタ20)を設けたものとすることができる。
【0078】
まず、実施例2の周波数変換装置1には、衛星放送受信アンテナ10を介して受信した12GHz帯の衛星放送信号について偏波分離部10aによる偏波分離後の右旋円偏波で受信した各チャンネルの受信信号が分配器14に入力される。衛星放送受信アンテナ10は、12GHz帯衛星放送を受信可能なアンテナであり、本例では12GHz帯の右旋及び左旋の双方の衛星放送受信に対応したパラボラアンテナを例示している。また、衛星放送受信アンテナ10と偏波分離部10aは、アンテナ装置として一体となって構成されていてもよいし、別体として構成されていてもよい。また、本例では、右旋のみを扱う例として代表して説明することから、衛星放送受信アンテナ10は、右旋の衛星放送受信のみに対応したアンテナとしてもよく、偏波分離部10aが省略された形態であってもよい。
【0079】
図3に示す実施例2に係る干渉波受信アンテナ11、干渉波検知部12、周波数決定部13、分配器14、第1周波数変換部15、低域通過フィルタ16、第2周波数変換部17、帯域通過フィルタ18、及び混合器21の各動作は実施例1と同様であることから、簡潔に説明する。
【0080】
分配器14は、実施例1と同様に、偏波分離部10aによって偏波分離された12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の各チャンネル(11.7GHz~12.75GHz)の受信信号を入力し、第1周波数変換部15、及び第2周波数変換部17へ分配出力する。
【0081】
第1周波数変換部15は、実施例1と同様に、分配器14から入力される12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の各チャンネルの受信信号に対して、標準規格上の右旋用の第1の局部発振周波数(LO1=10.678GHz)の信号を用いて周波数変換を施し、1.03223GHz~2.07025GHzとなる右旋の中間周波数(IF)帯域の信号を生成して低域通過フィルタ16に出力する。
【0082】
低域通過フィルタ16は、実施例1と同様に、第1周波数変換部15から入力される右旋のIF帯域の信号に対して、余分な高域の不要波及び雑音成分を除去する低域通過フィルタ処理を施し、帯域除去フィルタ16aに出力する。
【0083】
帯域除去フィルタ16aは、低域通過フィルタ16から入力される低域通過フィルタ処理後の右旋のIF帯域の信号に対して、その右旋のIF帯域内の所定の空き帯域(後述する「fc2’=1510.72MHz」付近)の信号(不要波とノイズ)を除去するように動作する帯域除去フィルタ処理を施し、混合器21に出力する。この帯域除去フィルタ16aによって右旋のIF帯域の信号に対して1510.72MHz付近の不要波とノイズを除去することで、この帯域へと再配置する後述の「被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号」のC/N改善に寄与するようになる。つまり、実施例2では、詳細に後述するが、実施例2では、一旦、帯域通過フィルタ18で生成した「被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)」について、ダウンコンバータ18aにより、干渉波の影響を受けず、且つ2.1GHz以下となるように再配置した「被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号(fc2’)」を生成するものとなっている。
【0084】
干渉波受信アンテナ11、干渉波検知部12、及び周波数決定部13は、実施例1と同様に構成され、更なる詳細な説明は省略する。即ち、実施例2に係る周波数決定部13は、実施例1と同様に、対象偏波の衛星放送受信に用いる第1の局部発振周波数(即ち、右旋用のLO1)の情報、及び衛星放送の各チャンネルの中心周波数をリストとして保持しており、干渉波受信アンテナ11及び干渉波検知部12を介して得られた干渉波検知信号を基に、衛星放送受信における被干渉チャンネルの選局を行い、第2の局部発振周波数(LO2)及び被干渉チャンネルの中心周波数(fc1)の情報を第2周波数変換部17に出力する。
【0085】
第2周波数変換部17は、実施例1と同様に、分配器14から入力される12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の各チャンネルの受信信号に対して、周波数決定部13によって導出された第2の局部発振周波数(LO2)の信号を用いて周波数変換を施し、周波数変換後の右旋円偏波の各チャンネルの中間周波数帯域の信号を、被干渉チャンネルの中心周波数(fc1)の情報とともに帯域通過フィルタ18に出力する。
【0086】
帯域通過フィルタ18は、実施例1と同様に、第2周波数変換部17から入力されるLO2を用いた周波数変換後の右旋円偏波の各チャンネルの中間周波数帯域の信号に対して、被干渉チャンネルの中心周波数(fc1)の情報を基に、被干渉チャンネルに対応する中間周波数信号成分(中心周波数fc2=fc1-LO2の中間周波数信号成分)のみを抽出する帯域通過フィルタ処理を施すが、実施例2ではダウンコンバータ18aに対して出力する。帯域通過フィルタ18が出力する被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号は、実施例1と同様に、右旋の中間周波数帯域と左旋の中間周波数帯域との間(図9に示すCS右旋IFとBS左旋IFとの間)の空き帯域(2.071GHz~2.224GHz)内の所定のIF周波数(例えば、中心周波数fc2=2.188GHz)となっている。
【0087】
尚、実施例2においても、説明の便宜上、第2周波数変換部17と帯域通過フィルタ18は、個別の機能部として説明しているが、一体の機能部とすることもできる。即ち、第2周波数変換部17及び帯域通過フィルタ18は、12GHz帯の衛星放送信号における対象偏波(本例では、右旋円偏波)の被干渉チャンネルの信号について、周波数決定部13によって導出された第2の局部発振周波数(LO2)の信号を用いて周波数変換を施し、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号を生成する「被干渉チャンネル周波数変換手段」として構成されるものであればよい。
【0088】
ダウンコンバータ18aは、アナログ/デジタル変換器(A/D)181、及びデジタル/アナログ変換器(D/A)182を有し、帯域通過フィルタ18から入力されるイメージ干渉の影響を回避した被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)についてA/D181によりデジタル信号に変換した後、D/A182に伴うデジタル処理で、帯域除去フィルタ16aにより信号(不要波及びノイズ)除去した右旋の中間周波数帯域内の空き帯域(図9に示すBS右旋IFとCS右旋IFとの間の空き帯域1489MHz~1532MHz)内の所定のIF周波数(例えば、中心周波数1510.72MHz)へとダウンコンバートし、アナログ信号に戻した被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号(fc2’)を生成して混合器21に出力する。
【0089】
尚、このダウンコンバータ18aは、広帯域の周波数変換(ブロックコンバート)とは異なり、帯域幅34.5MHzの1チャンネル分のみを周波数変換するように構成することができる。即ち、A/D181では34.5MHzの帯域幅でデジタルサンプリングし、D/A182では所望の周波数に直接変換すればよく、フィルタやミキサなどのアナログデバイスを用いずに実現することができる。
【0090】
混合器21は、帯域除去フィルタ16aから入力される帯域除去フィルタ処理後の右旋のIF帯域の信号と、ダウンコンバータ18aから入力されるイメージ干渉の影響を回避した被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号(fc2’)と、を混合(合波)して外部出力する。この周波数変換装置1によって混合生成した出力信号は、1本の同軸ケーブルを用いて、図示しない受信機まで伝送する宅内配信システムへと送出するように構成される。
【0091】
従って、実施例2に係る帯域除去フィルタ16a、ダウンコンバータ18a及び混合器21は、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)について、標準規格上で定められた中間周波数とは更に別の中間周波数帯域の所定の新たな空き帯域に周波数変換を施した当該被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号(fc2’)を生成し、被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号と混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成された「出力手段」として機能する。
【0092】
つまり、実施例2の周波数変換装置1は、右旋の衛星放送波のうち、9GHz帯の干渉波からイメージ干渉の影響を受ける被干渉チャンネルを、実施例1と同様に、一旦、当該イメージ干渉の影響を受けない別のIF信号(被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号)に変換・生成し、加えて実施例2では、右旋IFのみに対応した宅内配信システムにも受信可能なIF帯域の信号とするために、その変換・生成した当該別のIF信号(被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号)を他のIF信号と重複しない2.1GHz以下の空き帯域へとダウンコンバートして、新たな別のIF信号(被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号)として伝送するようにしている。
【0093】
図4及び図5を参照して、実施例2の周波数変換装置1における、被干渉チャンネルの信号を、一旦、実施例1と同様に当該干渉波の影響を受けない別のIF信号(被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号)に変換・生成し(図4)、更に実施例2では他のIF信号と重複しない2.1GHz以下の空き帯域へとダウンコンバート(図5)して、新たな別のIF信号(被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号)を生成する動作について説明する。
【0094】
まず、図4は、実施例1に係る図2と内容的には同様であり、図4の上段には、実施例2の周波数変換装置1の入力となる12GHz帯衛星放送におけるBS・CS右旋の放送用周波数帯の11.7GHz~12.75GHzと、右旋受信に用いる第1の局部発振周波数(LO1)の10.678GHzと、右旋の干渉波としての周波数fi(9GHz付近)との周波数関係を示している。また、図4の下段には、実施例2の周波数変換装置1における周波数変換(ブロックコンバート)により出力されるIF帯域の1.03223GHz~2.07025GHz(「BS・CS右旋IF」)に対して、上記fi(9GHz付近)の右旋の干渉波が同様に周波数変換されて干渉波信号としてイメージ干渉する様子を示すとともに、BS・CS右旋IF帯域で9GHz帯のイメージ干渉の影響を受ける被干渉チャンネルについては、一旦、当該干渉波の影響を受けない別の中間周波数(中心周波数fc2=2.188GHz)とする、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号に変換・生成する様子を示している。
【0095】
図4に関して、実施例2の周波数変換装置1は、実施例1と同様に、干渉波受信アンテナ11、干渉波検知部12、及び周波数決定部13を備え、干渉波受信アンテナ11、及び干渉波検知部12は、衛星放送受信アンテナ10とは別の受信系統で干渉波を検知するようになっている。周波数決定部13は、対象偏波の衛星放送受信に用いる第1の局部発振周波数(即ち、右旋用のLO1)の情報、及び衛星放送の各チャンネルの中心周波数をリストとして保持しており、干渉波検知部12から得られる干渉波検知信号の周波数(fi)に応じて、イメージ干渉を受ける対応する衛星放送受信における対象偏波の中心周波数(fc1)を決定する。
【0096】
また、周波数決定部13は、実施例1と同様に、第2周波数変換部17において衛星放送受信における中心周波数(fc1)を持つ対象偏波の被干渉チャンネルの信号について右旋の中間周波数帯域と左旋の中間周波数帯域との間(図9に示すCS右旋IFとBS左旋IFとの間)の空き帯域(2.071GHz~2.224GHz)内の所定のIF周波数(fc2)に周波数変換を施すのに必要な第2の局部発振周波数(LO2)を導出する。
【0097】
また、実施例2に係る第2周波数変換部17、及び帯域通過フィルタ18についても実施例1と同様に構成される。即ち、第2周波数変換部17、及び帯域通過フィルタ18は、12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の被干渉チャンネルの信号について、周波数決定部13によって導出された第2の局部発振周波数(LO2)の信号を用いて周波数変換を施し、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(中心周波数fc2=2.188GHz)を抽出・生成する。
【0098】
しかし、この中心周波数fc2=2.188GHzとする被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号は、2.1GHzを上限とする宅内配信システムへ伝送することができない。
【0099】
そこで、実施例2の周波数変換装置1では、ダウンコンバータ18aによって、帯域通過フィルタ18から入力される被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)について、2.1GHz以下であり、且つ他のIF信号と重複しない周波数へとダウンコンバートした、被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号(fc2’)を生成する。
【0100】
ここで、実施例2では、第2の中間周波数信号の中心周波数(fc2)に関して、説明の便宜上、実施例1と同様とする例を説明しているが、実施例2においては第2の中間周波数信号を周波数変換装置1の外部へと出力するものではないことから、同軸ケーブルの伝送可能範囲を超える帯域を用いることもできる。即ち、実施例2に係る第2の中間周波数信号の周波数(fc2)は、イメージ干渉を回避でき、且つ被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルに関するIF信号と重複がない空き帯域であればよく、上記のfc2=2.188GHzは一例である。
【0101】
図5は、本発明による実施例2の衛星放送受信用の周波数変換装置1において、被干渉チャンネルに関して周波数変換した中間周波数についてダウンコンバータ18aにおける周波数変換により再配置する様子を示す図である。
【0102】
図5の上段には、実施例2の周波数変換装置1において、BS・CS右旋IF帯域で9GHz帯のイメージ干渉の影響を受ける被干渉チャンネルについて、一旦、当該干渉波の影響を受けない別の中間周波数(中心周波数fc2=2.188GHz)の被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号に変換・生成された状態を示している。また、図5の下段には、実施例2の周波数変換装置1におけるダウンコンバータ18aにより、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(中心周波数fc2=2188.00MHz)を中心周波数fc2’=1510.72MHzとする、被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号に変換・生成する様子を示している。
【0103】
図5から理解されるように、実施例2の周波数変換装置1では、ダウンコンバータ18aによって、帯域通過フィルタ18から入力されるイメージ干渉の影響を回避した被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)について、右旋の中間周波数帯域内の空き帯域(図9に示すBS右旋IFとCS右旋IFとの間の空き帯域1489MHz~1532MHz)内の所定のIF周波数(例えば、中心周波数1510.72MHz)に変換した中心周波数fc2’=1510.72MHzとする、被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号(fc2’)を生成して混合器21に出力する。
【0104】
最終的に、実施例2に係る混合器21によって、イメージ干渉の影響を回避した被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号(fc2’)は、標準規格上の右旋IF帯域の信号と混合(合波)されて、図示しない受信機まで伝送する宅内配信システムへと送出される。これにより、イメージ干渉を受けるチャンネルの信号も、干渉を受ける前の状態で宅内に配信できるようになる。尚、本実施例において、受信機は、選局動作で当該被干渉チャンネルに関する新たな第2の中間周波数信号(fc2’)に基づくチャンネルを受信して表示できることが必要になる。
【0105】
このように、実施例2の周波数変換装置1は、右旋の被干渉チャンネルを一旦、中心周波数fc2=2.188GHzに変換し、更に、ダウンコンバータ18aにより、2.1GHz以下の中心周波数(fc2’)となるように再変換(再配置)する。尚、実施例2に関する上述した説明では、中心周波数fc2’=1510.72MHzとする例を説明したが、BS右旋IFとCS右旋IFの間に再配置するものであればよい。
【0106】
従って、実施例2の周波数変換装置1によれば、標準規格上のイメージ妨害抑圧比では信号劣化が生じるような強い干渉波がある場合でも衛星放送の信号を劣化なく受信することができ、イメージ帯域を用いる他の機器(イメージ干渉の原因となっていたレーダー機器等)との共用が容易になる。
【0107】
また、実施例2の周波数変換装置1によれば、衛星放送の受信信号に関するイメージ干渉の影響を回避した中間周波数信号についても、1本の同軸ケーブルを用いる既存の宅内配信システムを通じて受信機に伝送することができ、実施例2の周波数変換装置1の出力周波数は、現行の標準規格(ARIB STD-B63)上で規定されている中間周波数帯域(1032~3224MHz)に含まれるだけでなく、2.1GHz以下の中間周波数帯域を上限とする宅内配信システムへも伝送することができることから、汎用性の高いものとなる。
【0108】
(実施例3)
宅内配信システム経由で受信する受信機によっては、既存の衛星放送で用いられているチャンネルの周波数以外は受信できないものがある。即ち、実施例1に係る2188MHzや、実施例2に係る1510.72MHzの中間周波数信号を直接受信できない場合がある。
【0109】
そこで、この課題を解決した構成を実施例3として説明する。
図6は、本発明による実施例3の衛星放送受信用の周波数変換装置1の概略構成を示すブロック図である。図6に示す実施例3の衛星放送受信用の周波数変換装置1は、干渉波受信アンテナ11、干渉波検知部12、周波数決定部13a、分配器14、第1周波数変換部15、可変帯域除去フィルタ16b、第2周波数変換部17、帯域通過フィルタ18、ダウンコンバータ18b、及び混合器21を備える。図6は、図3と同様の構成要素には同一の参照番号を付している。
【0110】
図6に示す実施例3の衛星放送受信用の周波数変換装置1は、図3に示す実施例2と比較して、周波数決定部13の代わりに一部機能を追加した周波数決定部13aを備える点、帯域除去フィルタ16aの代わりに可変帯域除去フィルタ16bを備える点、及びダウンコンバータ18aの代わりに一部機能を追加したダウンコンバータ18bを備える点で相違しており、その他の構成要素は同様に動作する。尚、図6に示す実施例3の周波数変換装置1は、宅内配信システムが右旋の既存の衛星放送で用いられているチャンネルの周波数のみに対応しているという想定のため、図1に示す左旋に関する構成要素(第3周波数変換部19、及び高域通過フィルタ20)は設けていない例としている。ただし、実施例1,2,3で想定する宅内配信システムのいずれにも適用可能な周波数変換装置1とするときは、図6に示す周波数変換装置1において、図1に示す左旋に関する構成要素(第3周波数変換部19、及び高域通過フィルタ20)を設けたものとすることができる。
【0111】
まず、実施例3の周波数変換装置1には、衛星放送受信アンテナ10を介して受信した12GHz帯の衛星放送信号について偏波分離部10aによる偏波分離後の右旋円偏波で受信した各チャンネルの受信信号が分配器14に入力される。衛星放送受信アンテナ10は、12GHz帯衛星放送を受信可能なアンテナであり、本例では12GHz帯の右旋及び左旋の双方の衛星放送受信に対応したパラボラアンテナを例示している。また、衛星放送受信アンテナ10と偏波分離部10aは、アンテナ装置として一体となって構成されていてもよいし、別体として構成されていてもよい。また、本例では、右旋のみを扱う例として代表して説明することから、衛星放送受信アンテナ10は、右旋の衛星放送受信のみに対応したアンテナとしてもよく、偏波分離部10aが省略された形態であってもよい。
【0112】
図6に示す実施例3に係る干渉波受信アンテナ11、干渉波検知部12、分配器14、第1周波数変換部15、低域通過フィルタ16、第2周波数変換部17、帯域通過フィルタ18、及び混合器21の各動作は実施例2と同様であることから、簡潔に説明する。
【0113】
分配器14は、実施例1,2と同様に、偏波分離部10aによって偏波分離された12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の各チャンネル(11.7GHz~12.75GHz)の受信信号を入力し、第1周波数変換部15、及び第2周波数変換部17へ分配出力する。
【0114】
第1周波数変換部15は、実施例1,2と同様に、分配器14から入力される12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の各チャンネルの受信信号に対して、標準規格上の右旋用の第1の局部発振周波数(LO1=10.678GHz)の信号を用いて周波数変換を施し、1.03223GHz~2.07025GHzとなる右旋の中間周波数(IF)帯域の信号を生成して低域通過フィルタ16に出力する。
【0115】
低域通過フィルタ16は、実施例1,2と同様に、第1周波数変換部15から入力される右旋のIF帯域の信号に対して、余分な高域の不要波及び雑音成分を除去する低域通過フィルタ処理を施し、可変帯域除去フィルタ16bに出力する。
【0116】
可変帯域除去フィルタ16bは、後述する周波数決定部13aからの周波数制御信号に基づいて、低域通過フィルタ16から入力される低域通過フィルタ処理後の右旋のIF帯域の信号に対して、LO1を用いた被干渉チャンネルの中間周波数帯域(中心周波数fc3=fc1-LO1)の信号を除去するように可変動作する可変帯域除去フィルタ処理を施し、混合器21に出力する。
【0117】
干渉波受信アンテナ11、及び干渉波検知部12は、実施例1,2と同様に構成され、更なる詳細な説明は省略する。
【0118】
実施例3に係る周波数決定部13aは、実施例1,2と同様に、対象偏波の衛星放送受信に用いる第1の局部発振周波数(即ち、右旋用のLO1)の情報、及び衛星放送の各チャンネルの中心周波数をリストとして保持しており、干渉波受信アンテナ11及び干渉波検知部12を介して得られた干渉波検知信号を基に、衛星放送受信における被干渉チャンネルの選局を行い、局部発振周波数(LO2)及び被干渉チャンネルの中心周波数(fc1)の情報を第2周波数変換部17に出力する。ただし、実施例3に係る周波数決定部13aは、実施例1,2とは異なり、中心周波数fc3(=fc1-LO1)とする標準規格上の被干渉チャンネルの中間周波数帯域を示す情報を周波数制御信号として、可変帯域除去フィルタ16b及びダウンコンバータ18bに出力する機能を有する。
【0119】
第2周波数変換部17は、実施例1,2と同様に、分配器14から入力される12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の各チャンネルの受信信号に対して、周波数決定部13aによって導出された第2の局部発振周波数(LO2)の信号を用いて周波数変換を施し、周波数変換後の右旋円偏波の各チャンネルの中間周波数帯域の信号を、被干渉チャンネルの中心周波数(fc1)の情報とともに帯域通過フィルタ18に出力する。
【0120】
帯域通過フィルタ18は、実施例1,2と同様に、第2周波数変換部17から入力されるLO2を用いた周波数変換後の右旋円偏波の各チャンネルの中間周波数帯域の信号に対して、被干渉チャンネルの中心周波数(fc1)の情報を基に、被干渉チャンネルに対応する中間周波数信号成分(中心周波数fc2=fc1-LO2の中間周波数信号成分)のみを抽出する帯域通過フィルタ処理を施すが、実施例3ではダウンコンバータ18bに対して出力する。帯域通過フィルタ18が出力する被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号は、実施例1,2と同様に、右旋の中間周波数帯域と左旋の中間周波数帯域との間(図9に示すCS右旋IFとBS左旋IFとの間)の空き帯域(2.071GHz~2.224GHz)内の所定のIF周波数(例えば、中心周波数fc2=2.188GHz)となっている。
【0121】
尚、実施例3においても、説明の便宜上、第2周波数変換部17と帯域通過フィルタ18は、個別の機能部として説明しているが、一体の機能部とすることもできる。即ち、第2周波数変換部17及び帯域通過フィルタ18は、12GHz帯の衛星放送信号における対象偏波(本例では、右旋円偏波)の被干渉チャンネルの信号について、周波数決定部13aによって決定された第2の局部発振周波数(LO2)の信号を用いて周波数変換を施し、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号を生成する「被干渉チャンネル周波数変換手段」として構成されるものであればよい。
【0122】
ダウンコンバータ18bは、実施例2と同様に、アナログ/デジタル変換器(A/D)181、及びデジタル/アナログ変換器(D/A)182を有するが、実施例3では、帯域通過フィルタ18から入力されるイメージ干渉の影響を回避した被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号についてA/D181によりデジタル信号に変換した後、周波数決定部13aからの周波数制御信号に基づいて、D/A182に伴うデジタル処理で、可変帯域除去フィルタ16bにより信号除去した被干渉チャンネルの中間周波数帯域の信号へとダウンコンバートし、アナログ信号に戻した被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号(中心周波数fc3=fc1-LO1)を生成して混合器21に出力する。
【0123】
尚、このダウンコンバータ18bは、広帯域の周波数変換(ブロックコンバート)とは異なり、帯域幅34.5MHzの1チャンネル分のみを周波数変換するように構成することができる。即ち、A/D181では34.5MHzの帯域幅でデジタルサンプリングし、D/A182では周波数決定部13aからの周波数制御信号に基づいた周波数に直接変換すればよく、フィルタやミキサなどのアナログデバイスを用いずに実現することができる。
【0124】
混合器21は、可変帯域除去フィルタ16bから入力される可変帯域除去フィルタ処理後の右旋のIF帯域の信号(LO1を用いた被干渉チャンネルの中間周波数信号が除去されている。)と、ダウンコンバータ18bから入力されるイメージ干渉の影響を回避した被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号(fc3)と、を混合(合波)して外部出力する。この周波数変換装置1によって混合生成した出力信号は、1本の同軸ケーブルを用いて、図示しない受信機まで伝送する宅内配信システムへと送出するように構成される。
【0125】
従って、実施例3に係る可変帯域除去フィルタ16b、ダウンコンバータ18b及び混合器21は、当該被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)について、標準規格上で定められた当該第1の局部発振周波数(LO1)を用いる被干渉チャンネルの中間周波数信号の帯域へと更に周波数変換を施して被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号(fc3)を生成し、当該第1の局部発振周波数(LO1)を用いる被干渉チャンネルの中間周波数信号から当該被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号(fc3)へと置き換えるようにして、被干渉チャンネル以外の他チャンネルの標準規格上で定められた中間周波数信号と混合して1本の同軸ケーブルで送出可能に出力するように構成された「出力手段」として機能する。
【0126】
つまり、実施例3の周波数変換装置1は、右旋の衛星放送波のうち、9GHz帯の干渉波からイメージ干渉の影響を受ける被干渉チャンネルを、実施例1,2と同様に、一旦、当該干渉波の影響を受けない別のIF信号(被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号)に変換・生成し、加えて実施例3では、既存の衛星放送で用いられているチャンネルの周波数以外は受信できない宅内配信システムにも受信可能なIF帯域の信号とするために、その変換・生成した当該別のIF信号(被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号)について更にダウンコンバートして、被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号を変換・生成し、LO1を用いた元の被干渉チャンネルの中間周波数信号から置き換えるようにして伝送するものとしている。
【0127】
図7及び図8を参照して、実施例3の周波数変換装置1における、被干渉チャンネルの信号を、一旦、実施例1,2と同様に当該干渉波の影響を受けない別のIF信号(被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号)に変換・生成し(図7)、更に実施例3ではLO1を用いた元の被干渉チャンネルの中間周波数信号から置き換えるようにダウンコンバート(図8)して、新たな別のIF信号(被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号)を生成する動作について説明する。
【0128】
まず、図7は、実施例1,2に係る図2,4と内容的には同様であり、図7の上段には、実施例3の周波数変換装置1の入力となる12GHz帯衛星放送におけるBS・CS右旋の放送用周波数帯の11.7GHz~12.75GHzと、右旋受信に用いる第1の局部発振周波数(LO1)の10.678GHzと、右旋の干渉波としての周波数fi(9GHz付近)との周波数関係を示している。また、図7の下段には、実施例3の周波数変換装置1における周波数変換(ブロックコンバート)により出力されるIF帯域の1.03223GHz~2.07025GHz(「BS・CS右旋IF」)に対して、上記fi(9GHz付近)の右旋の干渉波が同様に周波数変換されて干渉波信号としてイメージ干渉する様子を示すとともに、BS・CS右旋IF帯域で9GHz帯のイメージ干渉の影響を受ける被干渉チャンネルについては、一旦、当該干渉波の影響を受けない別の中間周波数(中心周波数fc2=2.188GHz)とする、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号に変換・生成する様子を示している。
【0129】
図7に関して、実施例3の周波数変換装置1は、実施例1,2と同様に、干渉波受信アンテナ11、及び干渉波検知部12を備え、干渉波受信アンテナ11、及び干渉波検知部12は、衛星放送受信アンテナ10とは別の受信系統で干渉波を検知するようになっている。そして、実施例3に係る周波数決定部13aは、実施例1,2と同様に、対象偏波の衛星放送受信に用いる第1の局部発振周波数(即ち、右旋用のLO1)の情報、及び衛星放送の各チャンネルの中心周波数をリストとして保持しており、干渉波検知部12から得られる干渉波検知信号の周波数(fi)に応じて、イメージ干渉を受ける対応する衛星放送受信における対象偏波の中心周波数(fc1)を決定する。
【0130】
そして、周波数決定部13aは、実施例1,2と同様に、第2周波数変換部17において衛星放送受信における中心周波数(fc1)を持つ対象偏波の被干渉チャンネルの信号について右旋の中間周波数帯域と左旋の中間周波数帯域との間(図9に示すCS右旋IFとBS左旋IFとの間)の空き帯域(2.071GHz~2.224GHz)内の所定のIF周波数(fc2)に周波数変換を施すのに必要な第2の局部発振周波数(LO2)を導出する。
【0131】
また、第2周波数変換部17、及び帯域通過フィルタ18についても実施例1,2と同様に構成される。即ち、第2周波数変換部17、及び帯域通過フィルタ18は、12GHz帯の衛星放送信号における右旋円偏波の被干渉チャンネルの信号について、周波数決定部13aによって導出された第2の局部発振周波数(LO2)の信号を用いて周波数変換を施し、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(中心周波数fc2=2.188GHz)を抽出・生成する。
【0132】
しかし、この中心周波数fc2=2.188GHzとする被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号は、既存の衛星放送で用いられているチャンネルの周波数以外は受信できない受信機には対応できない。
【0133】
そこで、実施例3の周波数変換装置1では、実施例3に係る周波数決定部13aによって、中心周波数fc3(=fc1-LO1)とする標準規格上の被干渉チャンネルの中間周波数帯域を示す情報を周波数制御信号として、可変帯域除去フィルタ16b及びダウンコンバータ18bに出力する。そして、可変帯域除去フィルタ16bは、周波数決定部13aからの周波数制御信号に基づいて、低域通過フィルタ16から入力されるLO1を用いた被干渉チャンネルの中間周波数帯域(中心周波数fc3=fc1-LO1)の信号について除去するように可変動作する。また、ダウンコンバータ18bは、帯域通過フィルタ18から入力される被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(fc2)について、周波数決定部13aからの周波数制御信号に基づいて、可変帯域除去フィルタ16bにより信号除去した被干渉チャンネルの中間周波数帯域(中心周波数fc3=fc1-LO1)へとダウンコンバートし、第3の中間周波数信号を生成する。
【0134】
ここで、実施例3では、第2の中間周波数信号の中心周波数(fc2)に関して、説明の便宜上、実施例1と同様とする例を説明しているが、実施例3においては第2の中間周波数信号を周波数変換装置1の外部へと出力するものではないことから、同軸ケーブルの伝送可能範囲を超える帯域を用いることもできる。即ち、実施例3に係る第2の中間周波数信号の周波数(fc2)は、イメージ干渉を回避でき、且つ被干渉チャンネル及びそれ以外の他チャンネルに関するIF信号と重複がない空き帯域であればよく、上記のfc2=2.188GHzは一例である。
【0135】
図8は、本発明による実施例3の衛星放送受信用の周波数変換装置1において、被干渉チャンネルに関して周波数変換した中間周波数についてダウンコンバータ18bにおける周波数変換により再配置する様子を示す図である。
【0136】
図8の上段には、実施例3の周波数変換装置1において、BS・CS右旋IF帯域で9GHz帯のイメージ干渉の影響を受ける被干渉チャンネルについて、一旦、当該干渉波の影響を受けない別の中間周波数(中心周波数fc2=2.188GHz)の被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号に変換・生成された状態を示している。また、図8の下段には、実施例3の周波数変換装置1におけるダウンコンバータ18bにより、被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号(中心周波数fc2=2188.00MHz)を中心周波数fc3(=fc1-LO1)とする、被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号に変換・生成する様子を示している。即ち、被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号の中心周波数(fc3)は、当該第1の局部発振周波数(LO1)を用いる被干渉チャンネルの中間周波数信号と一致する周波数を有する。
【0137】
図8から理解されるように、実施例3の周波数変換装置1では、ダウンコンバータ18bによって、帯域通過フィルタ18から入力されるイメージ干渉の影響を回避した被干渉チャンネルに関する第2の中間周波数信号について、可変帯域除去フィルタ16bにより信号除去した被干渉チャンネルの中間周波数帯域(中心周波数fc3=fc1-LO1)へとダウンコンバートした被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号を生成し、LO1を用いた元の被干渉チャンネルの中間周波数信号から、当該被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号へと置き換えるように混合器21に出力する。
【0138】
最終的に、混合器21によって、イメージ干渉の影響を回避した被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号(fc3)は、標準規格上の右旋IF帯域の信号(LO1を用いた元の被干渉チャンネルの中間周波数信号は除去されている。)と混合(合波)されて、図示しない受信機まで伝送する宅内配信システムへと送出される。これにより、イメージ干渉を受けるチャンネルの信号も、干渉を受ける前の状態で宅内に配信できるようになる。また、受信機は、既存の衛星放送で用いられているチャンネルの周波数以外は受信できない仕様でも、通常の選局動作で当該被干渉チャンネルに関する第3の中間周波数信号に基づくチャンネルを受信して表示できる。
【0139】
このように、実施例3の周波数変換装置1は、右旋の被干渉チャンネルを一旦、中心周波数fc2=2.188GHzに変換し、更に、ダウンコンバータ18bにより、LO1を用いた元の被干渉チャンネルの中間周波数信号から置き換えるように変換(再配置)する。
【0140】
従って、実施例3の周波数変換装置1によれば、標準規格上のイメージ妨害抑圧比では信号劣化が生じるような強い干渉波がある場合でも衛星放送の信号を劣化なく受信することができ、イメージ帯域を用いる他の機器(イメージ干渉の原因となっていたレーダー機器等)との共用が容易になる。
【0141】
また、実施例3の周波数変換装置1によれば、衛星放送の受信信号に関するイメージ干渉の影響を回避した中間周波数信号についても、1本の同軸ケーブルを用いる既存の宅内配信システムを通じて受信機に伝送することができ、実施例3の周波数変換装置1の出力周波数は、現行の標準規格(ARIB STD-B63)上で規定されている中間周波数帯域(1032~3224MHz)に含まれるだけでなく、既存の衛星放送で用いられているチャンネルの周波数で宅内配信システムへ伝送することができることから、汎用性の高いものとなる。
【0142】
〔本発明に係る周波数変換装置を備える電力測定システム〕
上述した各実施例の周波数変換装置1は、既設の宅内配信システムを改修する必要なく、衛星放送受信アンテナ10の既存の周波数変換装置を置き換えるだけで、イメージ干渉の課題を低コストに解決することができる。そこで、応用として、既設の衛星放送受信アンテナ10の向きの調整やイメージ干渉の影響度の検査を用途とする、各実施例の周波数変換装置1を備える電力測定システムとして構成することもできる。
【0143】
即ち、図示を省略するが、本発明に係る電力測定システムは、各実施例に係る周波数変換装置1と、その出力から得られる各チャンネルの中間周波数信号の受信電力を測定する電力測定器と、を備える構成とすることができる。この場合、各実施例に係る周波数変換装置1における混合器21は、出力先として宅内配信システムとする代わりに当該電力測定器とすればよいが、出力先として分配器(図示略)を用いて宅内配信システムと電力測定器の双方とする構成が好適である。これにより、イメージ干渉の影響を受信電力で確認できるとともに、宅内配信システム経由の受信機でもイメージ干渉の影響の有無を映像上で確認することができ、利便性の高い電力測定システムを構成することができる。
【0144】
従って、本発明に係る電力測定システムによれば、高精度に衛星放送受信アンテナ10の向きを調整することや、レーダー等の影響の有無を容易に判別することができるようになる。
【0145】
上述の実施例については代表的な例として説明したが、本発明の趣旨及び範囲内で、多くの変更及び置換することができることは当業者に明らかである。例えば、上述した実施例では、12GHz帯衛星放送の右旋円偏波の受信信号に対するイメージ干渉の影響を低減する構成を主として説明したが、同様の技法により、所望であれば12GHz帯衛星放送の左旋円偏波の信号に対するイメージ干渉の影響を低減するように構成することや、その右旋及び左旋の双方の受信信号に対するイメージ干渉の影響を低減する構成とすることもできる。ただし、本発明に係る周波数変換装置1において、イメージ帯域に対する対象偏波は、12GHz帯の衛星放送における右旋円偏波のみを対象とするように構成することで、実用上の観点で利便性が高く、装置コストについても抑えることができる利点がある。従って、本発明は、上述の実施例によって制限するものと解するべきではなく、特許請求の範囲によってのみ制限される。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明によれば、衛星放送受信に係る標準規格上のイメージ妨害抑圧比では信号劣化が生じるような強い干渉波がある場合でもイメージ干渉の影響を回避することができるので、衛星放送受信の用途に有用である。
【符号の説明】
【0147】
1 衛星放送受信用の周波数変換装置
10 衛星放送受信アンテナ
10a 偏波分離部
11 干渉波受信アンテナ
12 干渉波検知部
13,13a 周波数決定部
14 分配器
15 第1周波数変換部
16 低域通過フィルタ
16a 帯域除去フィルタ
16b 可変帯域除去フィルタ
17 第2周波数変換部
18 帯域通過フィルタ
18a,18b ダウンコンバータ
19 第3周波数変換部
20 高域通過フィルタ
21 混合器
181 アナログ/デジタル変換器(A/D)
182 デジタル/アナログ変換器(D/A)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10