IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本放送協会の特許一覧

特開2024-20013検査装置、検査システム、及びプログラム
<>
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図1
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図2
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図3
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図4
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図5
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図6
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図7A
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図7B
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図8
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図9
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図10
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図11
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図12
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図13
  • 特開-検査装置、検査システム、及びプログラム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020013
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】検査装置、検査システム、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20240206BHJP
【FI】
G01N21/956 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122859
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100161148
【弁理士】
【氏名又は名称】福尾 誠
(74)【代理人】
【識別番号】230128026
【弁護士】
【氏名又は名称】駒木 寛隆
(72)【発明者】
【氏名】岡田 拓也
(72)【発明者】
【氏名】深川 弘彦
(72)【発明者】
【氏名】清水 貴央
(72)【発明者】
【氏名】大野 拓
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 翼
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA73
2G051AB01
2G051AB20
2G051CA04
2G051CB07
2G051EA08
2G051EA11
2G051EA17
2G051EC01
2G051ED09
(57)【要約】
【課題】シュリンクとダークスポットを区別して高い精度で劣化部分を解析することを可能にする。
【解決手段】検査装置10は、発光素子の発光面の撮像画像である発光面画像を取得し、前記発光面画像を二値化して、前記発光面画像における発光領域及び非発光領域を検出し、前記発光面画像において検出された前記発光領域の輪郭のうち、その内部の面積が最も大きいものを発光領域のエッジとして抽出し、前記二値化された前記発光面画像において、前記エッジの外側に存在する前記非発光領域である第1の劣化部分と、前記エッジの内側に存在する前記非発光領域である第2の劣化部分と、を区別して、前記非発光領域の解析を行い、前記解析の結果を出力する、制御部11を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光素子の発光面の撮像画像である発光面画像を取得し、
前記発光面画像を二値化して、前記発光面画像における発光領域及び非発光領域を検出し、
前記発光面画像において検出された前記発光領域の輪郭のうち、その内部の面積が最も大きいものを発光領域のエッジとして抽出し、
前記二値化された前記発光面画像において、前記エッジの外側に存在する前記非発光領域である第1の劣化部分と、前記エッジの内側に存在する前記非発光領域である第2の劣化部分と、を区別して、前記非発光領域の解析を行い、
前記解析の結果を出力する、
制御部を備える、検査装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第1の劣化部分に当たる前記非発光領域について、前記解析として、当該非発光領域の幅の算出を行う、請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の劣化部分に当たる前記非発光領域について、前記解析として、当該非発光領域の面積の算出を行う、請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記第2の劣化部分に当たる前記非発光領域の各々について、前記解析として、当該非発光領域の面積の算出を行う、請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記制御部は、
前記第2の劣化部分に当たる前記非発光領域の各々に対し、当該非発光領域を識別するための識別情報を付与し、
前記識別情報が付与された前記非発光領域の各々に対し、前記解析として、当該非発光領域の面積の算出を行う、
請求項4に記載の検査装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記発光面画像における輝度の分布に基づき当該発光面画像を二値化するための閾値を決定し、
前記決定された閾値に基づき、前記発光面画像を二値化する、
請求項1に記載の検査装置。
【請求項7】
発光素子に対し電力を供給して、前記発光素子を発光させる定常電源と、
前記発光素子の発光面を撮像する撮像装置と、
前記定常電源及び前記撮像装置と通信可能に接続された検査装置と、
を有する検査システムであって、
前記検査装置は、
前記発光素子の発光面の撮像画像である発光面画像を前記撮像装置から取得し、
前記発光面画像を二値化して、前記発光面画像における発光領域及び非発光領域を検出し、
前記発光面画像において検出された前記発光領域の輪郭のうち、その内部の面積が最も大きいものを発光領域のエッジとして抽出し、
前記二値化された前記発光面画像において、前記エッジの外側に存在する前記非発光領域である第1の劣化部分と、前記エッジの内側に存在する前記非発光領域である第2の劣化部分と、を区別して、前記非発光領域の解析を行い、
前記解析の結果を出力する、
制御部を備える、検査システム。
【請求項8】
コンピュータに、
発光素子の発光面の撮像画像である発光面画像を取得する処理と、
前記発光面画像を二値化して、前記発光面画像における発光領域及び非発光領域を検出する処理と、
前記発光面画像において検出された前記発光領域の輪郭のうち、その内部の面積が最も大きいものを発光領域のエッジとして抽出する処理と、
前記二値化された前記発光面画像において、前記エッジの外側に存在する前記非発光領域である第1の劣化部分と、前記エッジの内側に存在する前記非発光領域である第2の劣化部分と、を区別して、前記非発光領域の解析を行う処理と、
前記解析の結果を出力する処理と、
を実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、検査装置、検査システム、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「EL」(Electro Luminescence)と称する。)素子は、薄くてフレキシブルな基板上に作製できるため、様々なアプリケーションが期待されている。特に、有機EL素子を用いた表示装置(以下、「有機EL表示装置」と称する。)は、液晶表示装置と比べてコントラストが高くて視野角が広いため、大画面テレビ及びモバイルデバイスへの利用拡大が進んでいる。
【0003】
一般的に有機EL素子は空気中の水分によって劣化することが知られている。そのため、有機EL表示装置においては、水分が透過しにくいガラスを接着させることで有機EL素子を厳密に封止する必要がある。
【0004】
一方で、プラスチックフィルムなどのフレキシブル基板上に作製された有機EL素子は、ガラスを用いて封止することが難しいため、水分が透過しやすくなる。その結果、有機EL素子まで水分が到達することで素子が劣化してしまうおそれがある。
【0005】
特に、有機EL素子の電極金属又は有機膜が水分子と反応した部分は非発光領域となる。非発光領域は、素子端部及び基板上の微小な異物粒子付近で時間的に拡大していく。このような素子端部に生じた劣化はシュリンクと呼ばれる。素子上の微小な異物粒子付近に生じた劣化はダークスポットと呼ばれる。これらの劣化は、発生してしまうと重大な画質破綻を引き起こす。
【0006】
したがって、様々な形態の有機EL表示装置を実現するためには、シュリンク及びダークスポットに対する高精度の解析と解析に基づく水分耐性に優れた有機EL素子の開発が急務となっていた。
【0007】
有機EL表示装置の製造時に欠損品判定を行うことを目的として、シュリンク又はダークスポットの検出に関する技術が知られている(特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009-277528号公報
【特許文献2】特開2013-062086号公報
【特許文献3】特開2014-164998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、従来の構成はシュリンクとダークスポットを区別して高い精度で劣化部分を解析することにつき改善の余地があった。
【0010】
本開示の目的は、シュリンクとダークスポットを区別して高い精度で劣化部分を解析することを可能にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示によれば、検査装置は、
(1)発光素子の発光面の撮像画像である発光面画像を取得し、前記発光面画像を二値化して、前記発光面画像における発光領域及び非発光領域を検出し、前記発光面画像において検出された前記発光領域の輪郭のうち、その内部の面積が最も大きいものを発光領域のエッジとして抽出し、前記二値化された前記発光面画像において、前記エッジの外側に存在する前記非発光領域である第1の劣化部分と、前記エッジの内側に存在する前記非発光領域である第2の劣化部分と、を区別して、前記非発光領域の解析を行い、前記解析の結果を出力する、制御部を備える、検査装置である。
【0012】
(2)(1)の検査装置において、前記制御部は、前記第1の劣化部分に当たる前記非発光領域について、前記解析として、当該非発光領域の幅の算出を行ってもよい。
【0013】
(3)(1)又は(2)に記載の検査装置において、前記制御部は、前記第1の劣化部分に当たる前記非発光領域について、前記解析として、当該非発光領域の面積の算出を行ってもよい。
【0014】
(4)(1)から(3)のいずれかの検査装置において、前記制御部は、前記第2の劣化部分に当たる前記非発光領域の各々について、前記解析として、当該非発光領域の面積の算出を行ってもよい。
【0015】
(5)(4)の検査装置において、前記制御部は、前記第2の劣化部分に当たる前記非発光領域の各々に対し、当該非発光領域を識別するための識別情報を付与し、前記識別情報が付与された前記非発光領域の各々に対し、前記解析として、当該非発光領域の面積の算出を行ってもよい。
【0016】
(6)(1)から(5)のいずれかの検査装置において、前記制御部は、前記発光面画像における輝度の分布に基づき当該発光面画像を二値化するための閾値を決定し、前記決定された閾値に基づき、前記発光面画像を二値化してもよい。
【0017】
本開示によれば、検査システムは、
(7)発光素子に対し電力を供給して、前記発光素子を発光させる定常電源と、前記発光素子の発光面を撮像する撮像装置と、前記定常電源及び前記撮像装置と通信可能に接続された検査装置と、を有する検査システムであって、前記検査装置は、前記発光素子の発光面の撮像画像である発光面画像を前記撮像装置から取得し、前記発光面画像を二値化して、前記発光面画像における発光領域及び非発光領域を検出し、前記発光面画像において検出された前記発光領域の輪郭のうち、その内部の面積が最も大きいものを発光領域のエッジとして抽出し、前記二値化された前記発光面画像において、前記エッジの外側に存在する前記非発光領域である第1の劣化部分と、前記エッジの内側に存在する前記非発光領域である第2の劣化部分と、を区別して、前記非発光領域の解析を行い、前記解析の結果を出力する、制御部を備える、検査システムである。
【0018】
本開示によれば、プログラムは、
(8)コンピュータに、発光素子の発光面の撮像画像である発光面画像を取得する処理と、前記発光面画像を二値化して、前記発光面画像における発光領域及び非発光領域を検出する処理と、前記発光面画像において検出された前記発光領域の輪郭のうち、その内部の面積が最も大きいものを発光領域のエッジとして抽出する処理と、前記二値化された前記発光面画像において、前記エッジの外側に存在する前記非発光領域である第1の劣化部分と、前記エッジの内側に存在する前記非発光領域である第2の劣化部分と、を区別して、前記非発光領域の解析を行う処理と、前記解析の結果を出力する処理と、を実行させるプログラムである。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、シュリンクとダークスポットを区別して高い精度で劣化部分を解析することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示の一実施形態に係る検査システムの構成例を示す図である。
図2図1の検査装置の動作例を示すフローチャートである。
図3】発光面画像の輝度の分布の一例を示すヒストグラムである。
図4】発光面の二値化画像の一例を示す図である。
図5図4の二値化画像から抽出された発光領域のエッジの一例を示す図である。
図6図2のシュリンク解析処理の一例を示すフローチャートである。
図7A】劣化前の発光面画像の一例を示す図である。
図7B】劣化後の発光面画像の一例を示す図である。
図8】有機EL素子の構造の一例を示す図である。
図9】有機EL素子における劣化幅の時間変化の一例を示すグラフである。
図10】有機EL素子における発光領域の面積の時間変化の一例を示すグラフである。
図11図2のダークスポット解析処理の一例を示すフローチャートである。
図12】発光面の二値化画像の一例を示す図である。
図13図12の二値化画像から抽出された非発光領域の輪郭の一例を示す図である。
図14】有機EL素子における非発光領域の面積の時間変化の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照して説明する。各図面中、同一の構成又は機能を有する部分には、同一の符号を付している。本実施形態の説明において、同一の部分については、重複する説明を適宜省略又は簡略化する場合がある。
【0022】
(検査システムの概要)
図1は、本開示の一実施形態に係る検査システム1の構成例を示す図である。検査システム1は、検査装置10、撮像装置20、定常電源30、及び端子台40を備える。検査システム1は、端子台40に固定された発光素子としての有機EL素子Sの発光面において生じたシュリンク(第1の劣化部分)及びダークスポット(第2の劣化部分)の検出及び解析を行う。
【0023】
検査装置10は、撮像装置20が撮像した有機EL素子Sの発光面の画像を解析して、有機EL素子Sの発光面において生じたシュリンク及びダークスポットを解析するコンピュータ(情報処理装置)である。検査装置10は、PC(Personal Computer)、WS(Workstation)又はタブレット端末等の汎用の情報処理装置によって構成されるが、専用の他の電子機器であってもよい。検査装置10は、撮像装置20及び定常電源30と通信可能に接続される。
【0024】
撮像装置20は、有機EL素子Sの発光面を撮像し、発光面画像を取得する装置である。撮像装置20は、有機EL素子Sの発光面を撮像するのに適した位置に固定される。撮像装置20は、検査装置10の指示に基づき、定期的に有機EL素子Sの発光面画像を取得する。撮像装置20は、撮像により取得した発光面画像を検査装置10へ送信する。検査装置10は撮像装置20から受信した発光面画像を後述の記憶部12に保存して解析する。
【0025】
撮像装置20は、例えば、専用の高画素数のカメラとしてもよいし、あるいは、例えば1000万画素以上の汎用的なデジタルカメラとしてもよい。本実施形態では、撮像装置20は、カラーの発光面画像の撮像を行うが、白黒(モノクロ、グレースケール)の又は二値化された発光面画像を撮像してもよい。
【0026】
定常電源30は、端子台40に固定された有機EL素子Sに対して、任意の電流又は電圧を印加して、有機EL素子Sを発光させる装置である。定常電源30は、有機EL素子Sに対して、例えば、電流は0-10000μA、電圧は0-20Vの範囲の電力を安定供給することができてもよい。定常電源30が有機EL素子Sに対して供給する電力の電流及び電圧は、検査装置10によってモニタリング制御されてもよい。
【0027】
端子台40は、有機EL素子Sの発光面を撮像装置20に向けて固定する台である。本実施形態では、端子台40に1画素の有機EL素子Sが固定される例を説明するが、検査システム1は、複数がその有機EL素子Sの発光面を解析してもよい。
【0028】
上記のような検査システム1において、検査装置10は、撮像装置20により取得された発光面画像に対して画像処理を行い、発光面画像の端部から生じた非発光領域(シュリンク)と発光面内に生じた非発光領域(ダークスポット)とを検出する。具体的には、検査装置10は、発光領域のエッジを抽出して、発光領域の輪郭を特定し、その輪郭の外側に存在する非発光領域をシュリンクと判定し、内側に存在する非発光領域をダークスポットと判定する。ここで、シュリンクは、測定開始時(劣化前)の発光領域の輪郭と、測定時(劣化後)の発光領域の輪郭との間の領域に相当する。したがって、検査システム1によれば、シュリンク及びダークスポットを区別して、シュリンク幅及びダークスポット面積等の時間変化を高精度に取得することが可能である。なお、本実施形態では、発光素子の一例として有機EL素子の検査する例を説明するが、検査装置10は、有機EL素子以外の発光素子を検査してもよい。
【0029】
(検査装置の構成)
図1に示すように、検査装置10は、制御部11、記憶部12、通信部13、入力部14、及び出力部15を備える。
【0030】
制御部11は、1つ以上のプロセッサを含む。一実施形態において「プロセッサ」は、汎用のプロセッサ、又は特定の処理に特化した専用のプロセッサであるが、これらに限定されない。制御部11は、検査装置10を構成する各構成部と通信可能に接続され、検査装置10全体の動作を制御する。
【0031】
記憶部12は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、ROM(Read-Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)等の任意の記憶モジュールを含む。記憶部12は、例えば、主記憶装置、補助記憶装置、又はキャッシュメモリとして機能してもよい。記憶部12は、検査装置10の動作に用いられる任意の情報を記憶する。例えば、記憶部12は、システムプログラム、アプリケーションプログラム、通信部13によって受信された各種情報(例えば、撮像装置20によって撮像された発光面画像)等を記憶してもよい。記憶部12は、検査装置10に内蔵されているものに限定されず、外付けのデータベース又は外付け型の記憶モジュールであってもよい。
【0032】
通信部13は、任意の通信技術によってスキャナ等の他の装置と通信接続可能な、任意の通信モジュールを含む。通信部13は、さらに、他の装置との通信を制御するための通信制御モジュール、及び他の装置との通信に必要となる識別情報等の通信用データを記憶する記憶モジュールを含んでもよい。
【0033】
入力部14は、操作者の入力操作を受け付けて、操作者の操作に基づく入力情報を取得する1つ以上の入力インターフェースを含む。例えば、入力部14は、物理キー、静電容量キー、ポインティングディバイス、又は、出力部15のディスプレイと一体的に設けられたタッチスクリーン等であるが、これらに限定されない。
【0034】
出力部15は、操作者に対して情報を出力し、操作者に通知する1つ以上の出力インターフェースを含む。例えば、出力部15は、情報を画像として出力するディスプレイ等であるが、これらに限定されない。このようなディスプレイは、例えば、液晶パネルディスプレイ又は有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイ等としてもよい。なお、上述の入力部14及び出力部15の少なくとも一方は、検査装置10と一体に構成されてもよいし、別体として設けられてもよい。
【0035】
検査装置10の機能は、本実施形態に係るコンピュータプログラム(プログラム)を、制御部11に含まれるプロセッサで実行することにより実現されうる。すなわち、検査装置10の機能は、ソフトウェアにより実現されうる。コンピュータプログラムは、検査装置10の動作に含まれるステップの処理をコンピュータに実行させることで、各ステップの処理に対応する機能をコンピュータに実現させる。すなわち、コンピュータプログラムは、コンピュータを本実施形態に係る検査装置10として機能させるためのプログラムである。コンピュータプログラムは、コンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録しておくことができる。コンピュータプログラムをサーバのストレージに格納しておき、ネットワークを介して、サーバから他のコンピュータにプログラムを転送することにより、プログラムは流通されてもよい。
【0036】
検査装置10の一部又は全ての機能が、制御部11に含まれる専用回路により実現されてもよい。すなわち、検査装置10の一部又は全ての機能が、ハードウェアにより実現されてもよい。また、検査装置10は単一の情報処理装置により実現されてもよいし、複数の情報処理装置の協働により実現されてもよい。
【0037】
(検査装置の動作例)
図2は、図1の検査装置10の動作例を示すフローチャートである。図2を参照して説明する検査装置10の動作は、本実施形態に係る検査方法の少なくとも一部に相当し得る。図2の各ステップは、検査装置10の制御部11の制御に基づき実行される。
【0038】
ステップS1において、制御部11は、有機EL素子Sの発光面画像を取得する。具体的には、制御部11は、撮像装置20を制御して有機EL素子Sの撮像を行わせ、その発光面の画像を取得させて、検査装置10へ送信させる。制御部11は、取得した発光面画像を記憶部12に保存してもよい。
【0039】
ステップS2において、制御部11は、ステップS1で取得した発光面画像を白黒化(モノクロ化、グレースケール化)する。一般的な赤緑青の色で構成されるデジタル画像を処理する場合、色の違いによる検出誤差を防ぐために、解析対象の画像は、ます、白黒化されることが望ましい。そこで、例えば、制御部11は、カラーの発光面画像から輝度又はコントラスト等の情報を抽出して、輝度情報のみからなるグレースケールの発光面画像を取得してもよい。なお、撮像装置20が白黒(モノクロ、グレースケール)の又は二値化された発光面画像を取得した場合、制御部11は、ステップS2の処理を省略してもよい。
【0040】
ステップS3において、制御部11は、白黒の発光面画像を二値化して、二値化画像を取得する。二値化画像は、各ピクセルの画素値が[0]又は[1]の画素からなる画像である。制御部11は、画像領域において発光領域と非発光領域を検出するために発光面画像の二値化を行う。制御部11は、輝度がある閾値以上の画素を黒(画素値[1])、閾値未満の画素を白(画素値[0])として、発光面画像の二値化を行う。このような二値化の閾値は、発光面画像の輝度の分布に応じて適応的に決定されてもよい。例えば、解析対象の有機EL素子Sの発光輝度が時間的に減衰する場合、閾値を一定とすると、時間の経過に応じて、発光領域の輝度が閾値を下回り、検査装置10が発光領域を検出できなくなる可能性がある。
【0041】
このような問題を解決するために、制御部11は、発光面画像の画像信号レベル(例えば、輝度)の分布を示すヒストグラムから閾値を決定してもよい。図3は、発光面画像の輝度の分布の一例を示すヒストグラムである。図3において、横軸は8ビットのレベルで表された輝度の値を示し、縦軸はその輝度を有する点の個数(頻度)を示す。同一の有機EL素子Sの発光面における発光領域の輝度はほぼ均一であるので、図3のように、輝度の分布は信号レベルがほぼ0(PMIN)の領域と一定の信号レベル(PMAX)付近に二分される。このような場合、二値化の閾値Tは、例えば、T=((PMAX-PMIN)))/2としてもよい。このように、検査装置10は、発光面画像の輝度の分布に応じて適応的に二値化の閾値Tを決定して二値化を行うことで、有機EL素子Sの発光領域の輝度が変化したとしても、発光面画像を適切に二値化して、非発光領域と発光領域とを区別することができる。
【0042】
図4は、発光面の二値化画像の一例を示す図である。図4の二値化画像は、発光領域101と、非発光領域102,103を含んでいる。図4の非発光領域102,103はダークスポットに相当する。
【0043】
ステップS4において、制御部11は、二値化された発光面画像から発光領域のエッジを抽出する。発光面画像の二値化により、検査装置10は、発光領域と非発光領域とを区別して、それぞれの面積を算出することが可能である。しかし、非発光領域は、シュリンクの領域とダークスポットの領域の両方を含むため、このままでは、シュリンクとダークスポットを区別して解析することができない。そこで、シュリンクに基づく非発光領域と、ダークスポットに基づく非発光領域とを区別するために、制御部11は、二値化された発光領域のエッジを抽出する。エッジとは、発光面画像において検出された発光領域の輪郭のうち、その内部の面積が最も大きいものをいう。ここで、エッジは、画素値[0]と画素値[1]とが隣接している際の[1]の部分から抽出される。このように抽出された隣接する画素値[1]の画素を結んだラインにおいて、最も面積が大きく、かつ、閉じたラインは、発光領域のエッジに相当する。撮像時のノイズなどによる影響で閉じたラインが存在しない場合、制御部11は、公知のモルフォロジー処理を施すことで輪郭に相当するエッジを検出してもよい。
【0044】
図5は、図4の二値化画像から抽出された発光領域101のエッジ111の一例を示す図である。図5に示すように、エッジ111は、図4の発光領域101の輪郭に相当する。
【0045】
ステップS5において、制御部11は、シュリンクとダークスポットとのいずれの種類の劣化を解析するかを判定する。例えば、制御部11は、入力部14を介してユーザからシュリンクとダークスポットとのいずれの解析が指示されたかに基づき、解析する劣化の種類を判定してもよい。あるいは、シュリンクとダークスポットとの両方の解析を行う場合、制御部11は、まずシュリンク及びダークスポットのいずれか一方(例えば、シュリンク)の解析を行い、次に、他方(例えば、ダークスポット)の解析を行ってもよい。
【0046】
ステップS6において、制御部11は、有機EL素子Sの発光面におけるシュリンクを解析するシュリンク解析処理を行う。シュリンク解析処理において、制御部11は、シュリンクによる劣化幅又は非発光領域の面積等を算出する。シュリンク解析処理の詳細は後述する。
【0047】
ステップS7において、制御部11は、有機EL素子Sの発光面におけるダークスポットを解析するダークスポット解析処理を行う。ダークスポット解析処理において、制御部11は、ダークスポットに対してラベリングを行い、ラベルにより識別された各ダークスポットの面積等を算出する。ダークスポット解析処理の詳細は後述する。
【0048】
ステップS8において、制御部11は、ステップS6のシュリンク解析処理又はステップS7のダークスポット解析処理の結果を出力する。例えば、制御部11は、シュリンクによる劣化幅又は非発光領域の面積等、あるいは、ラベルにより識別された各ダークスポットの面積等を出力部15のディスプレイに表示してもよい。その際、制御部11は、例えば、有機EL素子Sの発光面の画像を、シュリンクに基づく非発光領域と、ダークスポットに基づく非発呼子領域とを区別可能に色分けするなどして、出力部15のディスプレイに表示してもよい。ステップS8の処理を終えると、制御部11は、図2のフローチャートの処理を終了する。
【0049】
以上のように、本実施形態に係る検査装置10は、二値化された発光面画像における発光領域の輪郭を特定し、その輪郭の外側に存在する非発光領域をシュリンクと判定し、内側に存在する非発光領域をダークスポットと判定する。ここで、シュリンクは、測定開始時(劣化前)の発光領域の輪郭と、測定時(劣化後)の発光領域の輪郭との間の領域に相当する。その上で、検査装置10は、非発光領域の種類に応じた劣化の解析を行う。したがって、検査装置10は、シュリンクとダークスポットを区別して高い精度で解析することが可能である。
【0050】
(シュリンク解析処理)
次に、図2のステップS6で実行されるシュリンク解析処理の詳細について、図6を参照して説明する。図6は、図2のシュリンク解析処理の一例を示すフローチャートである。図6を参照して説明する検査装置10の動作は、本実施形態に係る検査方法の少なくとも一部に相当し得る。図6の各ステップは、検査装置10の制御部11の制御に基づき実行される。
【0051】
ステップS11において、制御部11は、有機EL素子Sの発光面において形成されたシュリンクの方向が一次元と二次元のいずれに当たるかを判定する。制御部11は、一次元と判定された場合(ステップS11で一次元)はステップS12へ進み、二次元と判定された場合(ステップS11で二次元)はステップS15へ進む。
【0052】
ここで、一次元の方向のシュリンクとは、シュリンクが上下(Y方向)又は左右(X方向)の一方に存在する場合をいう。二次元の方向のシュリンクとは、シュリンクが上下(Y方向)及び左右(X方向)の両方に存在する場合をいう。シュリンクの方向が一次元又は二次元のいずれとなるかは、有機EL素子Sの構造及び成膜条件等に依存する。例えば、一次元のシュリンクは、例えば、複数の有機EL素子が並んで成膜されていることで一方向からのみ水分が侵入することにより生じ得る。二次元のシュリンクは、例えば、単一の素子が成膜されている場合に生じ得る。
【0053】
一次元のシュリンクについて、図7A図7B及び図8を参照して説明する。図7Aは、劣化前の発光面画像の一例を示す図である。図7Bは、劣化後の発光面画像の一例を示す図である。図8は、有機EL素子の構造の一例を示す図である。
【0054】
図7Aが示す劣化前の発光面画像は、発光領域101及び非発光領域102,103を含んでいる。非発光領域102,103はいずれもダークスポットである。劣化前の発光面画像の発光領域101の範囲は輪郭120で画される。
【0055】
図7Bが示す劣化後の発光面画像においては、発光領域101のY軸正方向側及びY軸負方向側に非発光領域131,132が存在する。これらの非発光領域131,132は、いずれもY方向(上下)に広がった発光面画像の端部から生じた非発光領域であるから、一次元のシュリンクに該当する。一次元のシュリンクについて、制御部11は、各非発光領域131,132の劣化幅141,142を算出してもよい。なお、図7Bでは、図7Aのダークスポットに当たる非発光領域103が拡大した非発光領域104が存在する。
【0056】
図8の例では、ガラス基板51の上(Z軸の正方向)に複数の透明電極52が設けられ、透明電極52の上(Z軸の正方向)に反射電極53が設けられている。有機EL素子54は、透明電極52と反射電極53の間に形成される。このような構造の場合、有機EL素子54にはY軸の正方向及び負方向から水分が侵入しやすいため、Y方向の一次元のシュリンクが発生しやすい。
【0057】
ステップS11では、制御部11は、図2のステップS4で抽出した発光領域のエッジを解析して、劣化がX方向又はY方向の一方に進んでいる場合は一次元のシュリンクと判定し、X方向及びY方向の両方に進んでいる場合は二次元のシュリンクと判定する。制御部11は、一次元と判定された場合(ステップS11で一次元)、ステップS12以降の処理において一次元の劣化幅を算出する。劣化幅を算出することで、水分子の拡散などの詳細な解析を行うことが可能となる。制御部11は、二次元と判定された場合(ステップS11で二次元)、ステップS15以降の処理において、抽出した発光面の輪郭から発光領域及び非発光領域の面積を算出する。なお、制御部11は、シュリンクの方向が一次元の場合であっても、発光面の輪郭から面積を算出してもよい。検査装置10は、定期的に取得された発光面画像に対してこのような解析を行うことにより、発光面の保持率と劣化速度を求めることができる。ここで、保持率とは、有機EL素子Sの発光面全体に対する発光領域の割合である。劣化速度は、劣化が進む速度である。
【0058】
ステップS12において、制御部11は、発光面画像における劣化により浸食された発光領域の端部の頂点座標を検出する。以下、一例として、有機EL素子Sの発光面が図7BのようなY方向の一次元のシュリンクを有する場合を説明する。このような場合、制御部11は、図2のステップS4で抽出した発光領域のエッジとY軸に平行な各直線との交点のY座標を取得する。
【0059】
ステップS13において、制御部11は、ステップS12で取得された、劣化により浸食された発光領域の端部の各頂点座標の平均値を算出する。この処理は、図7Bの発光領域101のような丸みを帯びた形状の発光領域を長方形で近似し、その長方形の4つの頂点(x1,y1),(x1,y2),(x2,y1),(x2,y2)(x1<x2,y1<y2)を検出する処理に対応する。例えば、シュリンクが発光面画像において上下方向(Y方向)に進行しており、有機EL素子Sの幅がLの場合、制御部11は、x1=0、x1=L、エッジのY軸負方向側の端部のY座標の平均値をy1、Y軸正方向側の端部のY座標の平均値をy2としてもよい。
【0060】
ステップS14において、制御部11は、非発光領域の劣化幅を算出する。具体的には、劣化前の発光領域101の輪郭120(図7A図7B)のY軸方向の長さをNとすると、制御部11は、非発光領域の劣化幅Lを、L={N-(y2-y1)}/2により算出してもよい。換言すると、例えば、図7Bの発光領域101についての劣化幅は、劣化幅141,142の平均値として算出される。
【0061】
このように、検査装置10は、非発光領域の劣化幅を、劣化により浸食された発光領域の端部の平均座標に基づき算出することにより、定期的に発光面画像を取得した場合に撮像装置20のブレなどが発生しても、精度よく劣化幅を求めることが可能である。さらに、測定初期の位置を基準にして劣化幅及び劣化速度を求めることができる。ここで、劣化速度とは、単位時間当たりに劣化幅が増大した量である。
【0062】
また、制御部11は、図7Bのように、シュリンクの浸食により発光領域が丸み又は凹凸を有する場合であっても、発光領域の端部の座標(図7Bの例ではY座標)と初期の端部の座標(劣化前の発光領域101の輪郭120のY座標)との差分を平均化する。そのため、制御部11は、劣化の進み度合を示す適切な指標として用いることが可能な劣化幅を算出することができる。
【0063】
ステップS14の処理を終えると、制御部11は、シュリンク解析処理を終了し、図2のステップS8進む。
【0064】
ステップS15において、制御部11は、発光領域の面積を算出する。ここで、制御部11は、図2のステップS4で抽出した発光領域のエッジにより画定される領域の面積を発光領域の面積として算出してもよい。すなわち、制御部11は、発光領域のエッジにより画定される領域にダークスポットが含まれる場合であっても、そのようなダークスポットを含む領域の面積を算出してもよい。
【0065】
ステップS16において、制御部11は、非発光領域の面積を算出する。制御部11は、例えば、発光面画像全体の面積から、ステップS15において算出された発光領域の面積を減算することにより、非発光領域の面積を算出してもよい。ステップS16の処理を終えると、制御部11は、シュリンク解析処理を終了し、図2のステップS8進む。
【0066】
図9は、有機EL素子Sにおける劣化幅の時間変化の一例を示すグラフである。図9の例では、時間が進行するにつれて、有機EL素子Sにおける劣化幅が増大している。図10は、有機EL素子Sにおける発光領域の面積の時間変化の一例を示すグラフである。図9の例では、時間が進行するにつれて、有機EL素子Sにおける発光領域の面積が減少している。図2のステップS6におけるシュリンク解析処理を実行後、制御部11は、図2のステップS8において、例えば、図9図10のようなグラフを解析結果として出力部15のディスプレイに表示出力してもよい。これにより、ユーザは、シュリンクの時間的変化を容易に把握することができる。
【0067】
なお、図6の例では、制御部11が、劣化方向が一次元のシュリンクについては非発光領域の劣化幅を算出し、二次元のシュリンクについては非発光領域の面積を算出する例を説明したが、解析の内容はこれに限られない。例えば、制御部11は、劣化方向が一次元のシュリンクについて非発光領域の面積を算出してもよい。また、制御部11は、劣化方向が一次元のシュリンクについて非発光領域の劣化幅を算出してもよい。
【0068】
(ダークスポット解析処理)
次に、図2のステップS7で実行されるダークスポット解析処理の詳細について、図11を参照して説明する。図11は、図2のダークスポット解析処理の一例を示すフローチャートである。図11を参照して説明する検査装置10の動作は、本実施形態に係る検査方法の少なくとも一部に相当し得る。図6の各ステップは、検査装置10の制御部11の制御に基づき実行される。
【0069】
ステップS21において、制御部11は、図2のステップS4で抽出した発光領域のエッジの内部に含まれる、各非発光領域の輪郭を抽出する。エッジの内部に含まれる非発光領域はダックスポットに当たる。制御部11は、エッジの内側において閉じた各非発光領域の輪郭を抽出して、各ダークスポットを検出する。ここで、ノイズなどの誤検出を防ぐために、制御部11は、予め定められた最小検出面積を上回る非発光領域をダークスポットとして検出するようにしてもよい。最小検出面積は、例えば、発光面画像の画素数に応じて定められてもよい。あるいは、制御部11は、小さな非発光領域であっても、連続して撮像された発光面画像において続けて検出された非発光領域は、ダークスポットとして検出し、その輪郭を抽出してもよい。
【0070】
図12は、発光面の二値化画像の一例を示す図である。図12の二値化画像は、発光領域101と、ダークスポットに当たる非発光領域105,106を有する。図13は、図12の二値化画像から抽出された非発光領域の輪郭の一例を示す図である。図13においては、2つの非発光領域の輪郭112,113が抽出されている。
【0071】
ステップS22において、制御部11は、ステップS22で検出された各輪郭に対してラベリングを行う。すなわち、制御部11は、ステップS22で検出された各輪郭に対して、輪郭を識別するためのラベル(識別情報)を付与する。
【0072】
ダークスポットに当たる劣化の時間経過を観測するためには、検出された各輪郭が同一のダークスポットであることを確認する必要がある。そこで、制御部11は、検出された円輪郭の、例えば、中心座標に基づき、各輪郭に対してラベリングを施す。ここで、検出された円輪郭の中心座標は、撮像装置20のブレ又は検出誤差によって一定画素分(例えば、数十画素)ずれてしまう可能性がある。そこで、制御部11は、異なる時間に撮像された複数の発光面画像において、予め定められた円輪郭検出の許容半径以内に中心座標が存在する各ダークスポットは同一のダークスポットと判定して、それらの輪郭に対し、同一のラベルを割り振るようにしてもよい。
【0073】
また、ダークスポットの個数は、ダークスポットの外周(シュリンク)への吸収、ダークスポット同士の合体、及び新たなダークスポットの出現によって、増減する可能性があるため、ダークスポットに対して割り振られるラベルの個数も増減する可能性がある。制御部11は、外周へ吸収されたダークスポットからはラベルを削除してもよい。制御部11は、複数のダークスポットが合体した場合、いずれかのダークスポットのラベルを合体して形成されたダークスポットに付与してもよいし、新たなラベルを形成されたダークスポットに付与してもよい。制御部11は、新たなダークスポットが出現した場合、そのダークスポットに対して新たなラベルを付与してもよい。
【0074】
ステップS23において、制御部11は、ステップS22においてラベリングされた輪郭により画定される各非発光領域の面積を算出する。ステップS23の処理を終えると、制御部11は、ダークスポット検出処理を終了し、図2のステップS8へ進む。
【0075】
図14は、有機EL素子Sにおける非発光領域の面積の時間変化の一例を示すグラフである。図14は、3つの非発光領域(ダークスポット)の面積のグラフ81~83を示している。グラフ81,82は、時間の経過とともにダークスポットの面積が増大している様子を示している。グラフ83は、時間の経過にもかかわらず、ダークスポットの面積がほとんど変化していない様子を示している。なお、複数のダークスポットが合体すると、その面積の時間変化を表すグラスは階段状に増加する形状を有する。ダークスポットが外周に吸収された場合、その面積の時間変化を表すグラフは、外周に吸収された時刻に0となる形状を有する。図2のステップS7におけるダークスポット解析処理を実行後、制御部11は、図2のステップS8において、例えば、図14のようなグラフを解析結果として出力部15のディスプレイに表示出力してもよい。これにより、ユーザは、ダークスポットの時間的変化を容易に把握することができる。また、検査装置10は、ダークスポットの面積及び劣化速度を算出することができる。
【0076】
以上のように、検査システム1は、有機EL素子Sに対し電力を供給して、有機EL素子Sを発光させる定常電源30と、有機EL素子Sの発光面を撮像する撮像装置20と、定常電源30及び撮像装置20と通信可能に接続された検査装置10と、を有する。検査装置10は、有機EL素子の発光面の撮像画像である発光面画像を取得し、発光面画像を二値化して、発光面画像における発光領域及び非発光領域を検出する。検査装置10は、発光面画像において検出された発光領域の輪郭のうち、その内部の面積が最も大きいものを発光領域のエッジとして抽出する。検査装置10は、二値化された発光面画像において、エッジの外側に存在する非発光領域であるシュリンクと、エッジの内側に存在する非発光領域であるダークスポットと、を区別して、非発光領域の解析を行い、解析の結果を出力する。
【0077】
このように、検査システム1は、発光面画像からエッジを抽出し、エッジの外側に存在する非発光領域と、エッジの内側に存在する非発光領域とを区別して、非発光領域の解析を行う。したがって、検査システム1によれば、シュリンクとダークスポットを区別して高い精度で劣化部分を解析することが可能である。また、検査システム1は、コンピュータにより実現されてもよい検査装置10、デジタルカメラにより実現されてもよい撮像装置20、及び定常電源30により構成されるため、紫外線照射などの専用装置を要することなく、低コストで実現することができる。よって、検査システム1によれば、水分耐性に優れた有機EL素子を開発するための、シュリンク及びダークスポットを高精度に分析できる簡便で高速な評価が可能となる。さらに、検査システム1によれば、大量の実験データを定量的に統計処理できるため、水分耐性の優れた有機EL素子の開発に貢献することができる。
【0078】
検査装置10は、シュリンクに当たる非発光領域について、解析として、当該非発光領域の幅及び面積の少なくともいずれかの算出を行ってもよい。したがって、検査装置10によれば、シュリンクに当たる非発光領域の経時変化を適切に解析することができる。
【0079】
検査装置10は、ダークスポットに当たる非発光領域の各々について、解析として、当該非発光領域の面積の算出を行ってもよい。ここで、検査装置10は、ダークスポットに当たる非発光領域の各々に対し、当該非発光領域を識別するための識別情報(ラベル)を付与し、識別情報が付与された非発光領域の各々に対し、解析として、当該非発光領域の面積の算出を行ってもよい。したがって、検査装置10によれば、各ダークスポットを区別して、ダークスポットの経時変化を適切に解析することができる。
【0080】
検査装置10は、発光面画像における輝度の分布に基づき当該発光面画像を二値化するための閾値を決定し、決定された閾値に基づき、発光面画像を二値化してもよい。したがって、検査装置10によれば、有機EL素子Sの発光領域の輝度が経時変化したとしても、発光領域と非発光領域とを正確に区別することができる。
【0081】
本開示は上述の実施形態に限定されるものではない。例えば、フローチャートに記載の複数のステップは、記述に従って時系列に実行する代わりに、各ステップを実行する装置の処理能力に応じて、又は必要に応じて、並列的に又は異なる順序で実行されてもよい。その他、本開示の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。
【符号の説明】
【0082】
1 検査システム
10 検査装置
11 制御部
12 記憶部
13 通信部
14 入力部
15 出力部
20 撮像装置
30 定常電源
40 端子台
51 ガラス基板
52 透明電極
53 反射電極
54 有機EL素子
81~83 グラフ
101 発光領域
102~106 非発光領域
111 エッジ
112,113 輪郭
120 輪郭
131,132 非発光領域
141,142 劣化幅
S 有機EL素子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14