(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020033
(43)【公開日】2024-02-14
(54)【発明の名称】不活性ガスシール水槽
(51)【国際特許分類】
B65D 90/00 20060101AFI20240206BHJP
C02F 1/00 20230101ALI20240206BHJP
B65D 88/08 20060101ALI20240206BHJP
【FI】
B65D90/00 H
C02F1/00 J
B65D88/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022122893
(22)【出願日】2022-08-01
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(72)【発明者】
【氏名】永田 浩一
【テーマコード(参考)】
3E170
【Fターム(参考)】
3E170AA03
3E170AB02
3E170AB28
3E170GB01
3E170GB04
3E170JA09
3E170RA02
3E170VA20
(57)【要約】
【課題】 地震による破損の可能性を低減し、メンテナンスの安全性と作業性を向上させた不活性ガスシール水槽を提供する。
【解決手段】 不活性ガスシール水槽1は、シール水槽本体2と、このシール水槽本体2の側部に取り付けられた水槽入口ノズル3及び循環水入口ノズル4とを有する。この水槽入口ノズル3及び循環水入口ノズル4には,それぞれ伸縮継手3B,4Bを有する水槽入口配管3A及び循環水入口配管4Aが接続されていて、この水槽入口配管3A及び循環水入口配管4Aにはそれぞれ伸縮継手3B,4Bを有している。また、シール水槽本体2の側部には水槽出口ノズル6が取り付けられていて、この水槽出口ノズル6には、伸縮継手6Bを有する水槽出口配管6Aが接続している。シール水槽本体2の頂部には窒素ガス源8Aに連通した窒素ガスシール配管8が接続している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脱ガスした純水を貯溜するシール水槽本体と、このシール水槽本体に接続した水槽入口配管及び水槽出口配管と、不活性ガス供給管を有し、シール水槽本体内に水槽入口配管から供給された純水に酸素や炭酸ガスが純水中に再溶解するのを防止するために上部空間に不活性ガス供給管から不活性ガスを充填可能とした不活性ガスシール水槽であって、
前記水槽入口配管と前記水槽出口配管とが前記シール水槽本体の側面に接続している、不活性ガスシール水槽。
【請求項2】
前記シール水槽本体の側面に循環水入口配管が接続されている、請求項1に記載の不活性ガスシール水槽。
【請求項3】
前記シール水槽本体の側面にオーバーフロー配管が接続されているとともに該オーバーフロー配管の末端に不活性ガスのシールポットを有する、請求項1に記載の不活性ガスシール水槽。
【請求項4】
前記水槽入口配管及び前記水槽出口配管が、前記シール水槽本体の高さ方向1/2以下の位置で該シール水槽本体に接続されている、請求項1に記載の不活性ガスシール水槽。
【請求項5】
前記水槽入口配管及び前記水槽出口配管に伸縮継手が設けられている、請求項1に記載の不活性ガスシール水槽。
【請求項6】
前記オーバーフロー配管に伸縮継手が設けられている、請求項3に記載の不活性ガスシール水槽。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,脱ガスした純水あるいは超純水を一時的に貯溜しておくための窒素ガスなどの不活性ガスでシールされる不活性ガスシール水槽に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体等の電子産業分野で用いられている超純水や半導体洗浄用の純水は、前処理した原水を一次純水装置で処理したり、さらに二次純水装置(サブシステム)を備えた超純水製造装置で処理したりすることにより製造されている。このような一次純水装置では、原水中から溶存電解質、微粒子、コロイダル物質、高分子有機物、発熱物質の他、さらには溶存ガス、特に溶存酸素を可能な限り除去することが要求される。例えば、酸素が溶解している純水で半導体ウエハー等を洗浄すると、当該ウエハーの酸化が促進され歩留りが悪くなる。そこで、一次純水装置には、膜式脱気装置のような脱気設備が付設されている。そして、これらの脱気設備によって溶存ガスの取り除かれた純水は、次段のサブシステムに送られるまでの間、あるいはユースポイントにおいて使用されるまでの間、ライン中に設けられた純水を貯留する水槽内に一時的に貯溜される。ところが、この水槽内には酸素や炭酸ガス等が微量ではあるが存在するので、純水中に再溶解するおそがある。そこで、純水の水槽内に窒素ガスのような不活性ガスを圧入し、純水の水面上を不活性ガスでシールすることが一般的に採用されている。
【0003】
このような従来の不活性ガスシール水槽の一例を
図3に示す。
図3において、不活性ガスシール水槽21は、円筒状の密閉可能なシール水槽本体22と、このシール水槽本体22の頂部から挿入した水槽入口配管23及び循環水配管24を有し、水槽入口配管23及び循環水配管24は、不活性ガスシール水槽21の頂部から水槽入口配管23が貯留している純水Wに水没するように不活性ガスシール水槽21の下部にまで延在しており、これにより水槽入口配管23及び循環水配管24から注入される純水がシール水槽本体22に貯留されている純水Wの液面をたたくことがないようになっている。また、シール水槽本体22の頂部には窒素ガス源25Aに連通した窒素ガスシール配管25、圧力検出手段26Aに連通した窒素ガスパイロット配管26、及び外部環境27Aに開閉可能に連通した通気配管27が接続している。一方、シール水槽本体22の側面側には、窒素ガスのシールポット28Aに連通し、途中に伸縮継手28Bが設けられたオーバーフロー配管28が接続しているとともに、水槽出口ノズル28及び予備ノズル29が接続している。そして、水槽入口配管23及び循環水配管24には、伸縮継手23A,24Aを設けることで、地震などによる振動を減衰する構造としている。なお、31A,31B,31Cは、それぞれ予備配管である。
【0004】
上述したような不活性ガスシール水槽21において、水槽入口配管23からシール水槽本体22内に脱気した純水Wを供給して貯留し、この貯溜された純水Wの水面の上方空間に不活性ガスとしての窒素ガス源25Aから供給される窒素ガスを窒素ガスシール配管25から圧入することで、既存の空気を排出して不活性ガスシール水槽21内で、酸素や炭酸ガスが純水W中に再溶解するのを防止している。そして、不活性ガスシール水槽21内の純水Wを、水槽出口ノズル28に接続した純水送出管(図示せず)からユースポイントや紫外線殺菌装置、カートリッジポリシャー、限外濾過膜装置等を組み合わせてなるサブシステムに送水し、未使用の純水Wは必要に応じ循環水配管24から還流される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この不活性ガスシール水槽21では、水槽入口配管23及び循環水配管24をシール水槽本体22の頂面から挿入しているので、バルブの流量調整などの操作やメンテナンス時にはシール水槽本体(タンク)22の上部にアクセスする必要があり、高所であるので作業場の安全性の点で問題があり、作業性の点でも改善の余地がある、という問題点があった。また、水槽入口配管23及び循環水配管24には、途中に伸縮継手23A,24Aを設けてあるので、地震などがあってもある程度の振動を減衰することが可能であるが、シール水槽本体22が揺れると、水槽入口配管23及び循環水配管24の接続箇所にその変異分の応力がかかるため、配管破損を生じる虞がある、という問題点があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、地震などによる破損の可能性を低減し、メンテナンスの安全性と作業性を向上させた、脱ガスした純水あるいは超純水を一時的に貯溜しておくための不活性ガスでシールされた不活性ガスシール水槽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的に鑑み、本発明は、脱ガスした純水を貯溜するシール水槽本体と、このシール水槽本体に接続した水槽入口配管及び水槽出口配管と、不活性ガス供給管を有し、シール水槽本体内に水槽入口配管から供給された純水に酸素や炭酸ガスが純水中に再溶解するのを防止するために上部空間に不活性ガス供給管から不活性ガスを充填可能とした不活性ガスシール水槽であって、前記水槽入口配管と前記水槽出口配管とが前記シール水槽本体の側面に接続している、不活性ガスシール水槽を提供する(発明1)。
【0008】
かかる発明(発明1)によれば、水槽入口配管と水槽出口配管とをシール水槽本体の側面に接続することにより、地震などによりシール水槽本体が振動しても水槽入口配管と水槽出口配管への影響を最小限に抑制することができ、地震による不活性ガスシール水槽の破損などの可能性を低減することができる。また、水槽入口配管を側面から接続しているので、バルブの流量調整などの操作やメンテナンス時には、タンクの側部から作業すればよいので、メンテナンスの安全性と作業性を向上させることができる。
【0009】
上記発明(発明1)においては、前記シール水槽本体の側面に循環水入口配管が接続されていることが好ましい(発明2)。
【0010】
かかる発明(発明2)によれば、循環水入口配管もシール水槽本体の側面に接続することにより、地震などによりシール水槽本体が振動しても循環水入口配管への影響を最小限に抑制することができ、地震による破損の可能性を低減することができる。
【0011】
上記発明(発明1)においては、前記シール水槽本体の側面にオーバーフロー配管が接続されているとともに該オーバーフロー配管の末端に不活性ガスのシールポットを有することが好ましい(発明3)。
【0012】
かかる発明(発明3)によれば、シール水槽本体内の不活性ガスの圧力をシールポットで適正に保持することができる。
【0013】
上記発明(発明1)においては、前記水槽入口配管及び前記水槽出口配管が、前記シール水槽本体の高さ方向1/2以下の位置で該シール水槽本体に接続されていることが好ましい(発明4)。
【0014】
かかる発明(発明4)によれば、水槽入口配管及び前記水槽出口配管が比較的低い位置で接続されているので、バルブの流量調整などの操作やメンテナンス時におけるタンクの側部からの作業の作業性をより向上させることができる。
【0015】
上記発明(発明1)においては、前記水槽入口配管及び水槽出口配管に伸縮継手が設けられていることが好ましい(発明5)。
【0016】
かかる発明(発明5)によれば、地震などにより不活性ガスシール水槽が振動しても水槽入口配管及び水槽出口配管の振動を減衰することができるので、地震による破損の可能性をさらに低減することができる。また、シール水槽本体は、該シール水槽本体内に充填される水の水位が上下することにより水槽自体が微妙に変形するが、この際の応力を伸縮継手により吸収することができるので、不活性ガスシール水槽にかかる負荷を低減することができる。
【0017】
上記発明(発明3)においては、前記オーバーフロー配管に伸縮継手が設けられていることが好ましい(発明6)。
【0018】
かかる発明(発明6)によれば、地震などにより不活性ガスシール水槽が振動してもオーバーフロー配管の振動を減衰することができるので、地震による破損の可能性をさらに低減することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の不活性ガスシール水槽は、水槽入口配管と水槽出口配管とがシール水槽本体の側面に接続されているので、地震による破損の可能性を低減することができる。また、バルブの流量調整などの操作やメンテナンス時には、タンクの側部から作業すればよいので、メンテナンスの安全性と作業性を向上させることができる。これらにより不活性ガスシール水槽における装置の保全性と作業の安全性及び作業性を向上させた不活性ガスシール水槽となっている。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の一実施形態による不活性ガスシール水槽を概略的に示す縦断面図である。
【
図3】従来の本発明の一実施形態による不活性ガスシール水槽を概略的に示す縦断面図である。
【0021】
以下、本発明の一実施形態による不活性ガスシール水槽について
図1及び
図2を参照して詳細に説明する。
【0022】
(不活性ガスシール水槽)
図1は、本発明の一実施形態による不活性ガスシール水槽を概略的に示す側面図であり、
図2は同平面図である。
図1及び
図2において、不活性ガスシール水槽1は、円筒状の密閉可能なシール水槽本体2と、このシール水槽本体2の側部に取り付けられた水槽入口ノズル3及び循環水入口ノズル4とを有する。この水槽入口ノズル3及び循環水入口ノズル4にはそれぞれ一次純水装置(図示せず)に連通した水槽入口配管3A及びユースポイントなどから還流する循環水入口配管4Aが接続されていて、この水槽入口配管3A及び循環水入口配管4Aはそれぞれ伸縮継手3B,4Bを有している。さらに、本実施形態においては、この水槽入口ノズル3及び循環水入口ノズル4の挿入端部(先端部)は、水平方向では、後述する水槽出口ノズルから遠ざかる方向に向けて屈折しており、さらに30~60°程度、例えば45°上方に屈折している。これにより、後述する水槽出口ノズルから遠ざかる方向に向けて純水Wを吐出可能となっている。
【0023】
さらに、シール水槽本体2の側面側には、窒素ガスのシールポット5Aに連通していて途中に伸縮継手5Bが設けられたオーバーフロー配管5が接続しているとともに、水槽出口ノズル6及び予備ノズル7が設けられている。この水槽出口ノズル6及び予備ノズル7には、伸縮継手6B,7Bを有する水槽出口配管6A及び予備配管7Aが接続している。なお、水槽入口ノズル3、循環水入口ノズル4、オーバーフロー配管5、水槽出口ノズル6及び予備ノズル7の位置は、全てを縦断面図に表すため、
図1においては便宜上、平面における角度とは変更して図示している。
【0024】
また、シール水槽本体2の頂部には不活性ガス源としての窒素ガス源8Aに連通した窒素ガスシール配管8、圧力検出手段9Aに連通した窒素ガスパイロット配管9、及び外部環境10Aに連通した開閉可能な通気配管10が接続している。
【0025】
(不活性ガスシール水槽の使用方法)
上述したような不活性ガスシール水槽1において、図示しない純水製造装置(超純水製造装置であってもよい)から水槽入口配管3Aを経由して水槽入口ノズル3からシール水槽本体2内に脱気した純水Wを供給して貯留する。続いて、この貯溜された純水Wの水面の上方空間に不活性ガス源としての窒素ガス源8Aから供給される窒素ガス(N2)を窒素ガスシール配管8から圧入して、既存の空気を排出するととともに窒素ガス(N2)でシールする。これにより、純水Wを不活性ガスシール水槽1内に貯留している間に酸素や炭酸ガスが純水W中に再溶解するのを防止する。そして、不活性ガスシール水槽1内の純水Wを、水槽出口ノズル6に接続した水槽出口配管からからユースポイントや紫外線殺菌装置、カートリッジポリシャー、限外濾過膜装置等を組み合わせてなるサブシステムに送水する。そして、使用されなかった純水Wは、必要に応じて循環水入口配管4Aから循環水入口ノズル4を経由して還流される。
【0026】
このとき、シール水槽本体2内に貯留された純水Wの量が過剰とならないようにオーバーフロー配管5から余剰の純水Wを排出する。あるいは窒素ガス(N2)によるシール水槽本体2の内圧を窒素ガスパイロット配管9の圧力検出手段9Aで監視するとともにシールポット5Aにより内圧をほぼ大気圧と同等に維持する。
【0027】
この不活性ガスシール水槽1では、水槽入口ノズル3、循環水入口ノズル4及び水槽出口ノズル6がシール水槽本体2の側面に設けられているので、水槽入口ノズル3のバルブの流量調整などの操作やメンテナンスをタンクの側部からアクセスして行うことができ、特に本実施形態においては、シール水槽本体2の高さの1/2以下であるので、メンテナンスの安全性と作業性を向上したものとなっている。
【0028】
しかも、地震などにより不活性ガスシール水槽1(シール水槽本体2)が振動しても水槽入口ノズル3、循環水入口ノズル4、水槽出口ノズル6及び予備ノズル7への影響を最小限に抑制することができ、地震による破損の可能性が低減されている。さらに、水槽入口配管3A、循環水入口配管4A、水槽出口配管6A及び予備配管7Aに伸縮継手3B,4B,6B,7Bが設けられているので、地震などによりシール水槽本体2が振動しても水槽入口配管3A、循環水入口配管4A及び水槽出口配管6Aの振動をさらに減衰することができるだけでなく、シール水槽本体2は、該シール水槽本体2内に充填される純水Wの水位が上下することにより水槽自体が微妙に変形するが、この際の応力を伸縮継手により吸収することができるので、不活性ガスシール水槽1にかかる負荷を低減することができる。
【0029】
さらに、本実施形態においては、オーバーフロー配管5にも伸縮継手5Bが設けられているので、地震などによりシール水槽本体2が振動してもオーバーフロー配管5の振動を減衰することができるので、地震による破損の可能性をさらに低減することができる。
【0030】
以上、本発明の不活性ガスシール水槽1について、上記実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は前記実施形態に限らず、種々の変更が可能である。例えば、シール水槽本体2は、円筒状に限らず四角筒状など種々の形状に適用可能である。また、シール水槽本体2に貯留するのは脱気した純水Wに限らず、希薄なアンモニア水などの薬液であってもよい。なお、本明細書中において、脱気した純水Wとして超純水も含む。
【符号の説明】
【0031】
1 不活性ガスシール水槽
2 シール水槽本体
3 水槽入口ノズル
3A 水槽入口配管
3B 伸縮継手
4 循環水入口ノズル
4A 循環水入口配管
4B 伸縮継手
5 オーバーフロー配管
5A シールポット
5B 伸縮継手
6 水槽出口ノズル
6A 水槽出口配管
6B 伸縮継手
7 予備ノズル
7A 予備配管
7B 伸縮継手
8 窒素ガスシール配管
8A 窒素ガス源
9 窒素ガスパイロット配管
9A 圧力検出手段
10 通気配管
10A 外部環境
W 純水