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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020732
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】FRP物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 70/46 20060101AFI20240207BHJP
   B29C 43/12 20060101ALI20240207BHJP
   B29C 43/34 20060101ALI20240207BHJP
   B29C 70/44 20060101ALI20240207BHJP
   B29C 51/30 20060101ALI20240207BHJP
   B29C 43/36 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
B29C70/46
B29C43/12
B29C43/34
B29C70/44
B29C51/30
B29C43/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123133
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100152146
【弁理士】
【氏名又は名称】伏見 俊介
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】加地 暁
(72)【発明者】
【氏名】高野 恒男
(72)【発明者】
【氏名】本間 孝志
【テーマコード(参考)】
4F202
4F204
4F205
【Fターム(参考)】
4F202AA36
4F202AB11
4F202AC03
4F202AD16
4F202AG08
4F202AM28
4F202CA03
4F202CA09
4F202CA17
4F202CB01
4F202CK81
4F202CN01
4F202CP06
4F204AA36
4F204AC03
4F204AD16
4F204AG08
4F204AM28
4F204FA01
4F204FA13
4F204FB01
4F204FG09
4F204FN11
4F204FN15
4F204FN17
4F204FQ15
4F204FQ37
4F205AA36
4F205AC03
4F205AD16
4F205AG08
4F205AM28
4F205HA09
4F205HA25
4F205HA33
4F205HA37
4F205HA45
4F205HB01
4F205HF30
4F205HK03
4F205HK04
4F205HK05
4F205HK33
(57)【要約】
【課題】本発明は、新規な成形方法を用いたFRP物品の製造方法を提供するものである。
【解決手段】本発明のFRP物品の製造方法は、熱硬化性のプリプレグ2、ワックスからなるコア1、および、開口11を通して外部とつながる成形キャビティ12を有する成形型10を準備すること、成形型10をプリプレグ2とコア1でチャージすること、前記チャージした成形型10を真空バギングすること、および、前記真空バギングした成形型10を大気圧以上の雰囲気圧力下で加熱してプリプレグ2を硬化させることを含み、前記成形型のチャージにおいては、コア1の表面の一部と成形キャビティ12の表面との間にプリプレグ2が挟まれるとともに開口11がプリプレグ2によって塞がれないようにされ、前記加熱によりコア1の少なくとも一部が融解する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱硬化性のプリプレグ、ワックスからなるコア、および、成形キャビティを有する成形型を準備すること、
前記成形型を前記プリプレグと前記コアでチャージすること、
前記チャージした成形型を真空バギングすること、および、
前記真空バギングした成形型を大気圧以上の雰囲気圧力下で加熱して前記プリプレグを硬化させること
を含み、
前記成形型は、前記成形キャビティを前記成形型の外部につなげる開口を有しており、
前記成形型のチャージにおいては、前記コアの表面の一部と前記成形キャビティの表面との間に前記プリプレグが挟まれるとともに前記開口が前記プリプレグによって塞がれないようにされ、
前記加熱により前記コアの少なくとも一部が融解する、
FRP物品の製造方法。
【請求項2】
前記成形型のチャージの前に、前記コアをポリマーフィルムで包む、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記成形型のチャージは、前記開口を通して、前記コアの一部が前記成形型の外側に出るように行われる、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記成形型のチャージにおいては、前記開口をピストンで塞ぐ、請求項1または2に記載の製造方法。
【請求項5】
前記プリプレグの樹脂マトリックスがゲル化する前に、前記加熱による前記コアの融解が始まる、請求項1~4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記ワックスの融解温度が30~120℃の範囲内である、請求項1~5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記雰囲気圧力が2気圧以上である、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記加熱にオートクレーブが使用される、請求項1~7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
前記加熱に加圧機構を有さないオーブンが使用される、請求項1~6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項10】
前記加熱が行われる間に、前記成形型を覆うバギングフィルムの内側の継続的または一時的な真空吸引が行われる、請求項1~9のいずれかに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、FRP物品の製造方法、とりわけFRP管に適した製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繊維強化樹脂(FRP; Fiber Reinforced Plastic)は、軽量かつ力学特性に優れていることから、自動車用の補強部材(reinforcement)を含む様々な用途で使用されており、近年その重要度はますます高くなっている。
【0003】
プリプレグを固体ワックスからなるコア(中子)と共に成形型に入れ、プレス機で加圧しながら加熱して、ワックスの融解に伴い発生する内圧を加えた状態でプリプレグを硬化させる、中空FRP成形品の製造方法が知られている(特許文献1)。
超高分子量ポリエチレンからなる熱膨張性のマンドレルと、該マンドレルの外側に配される外型としての銅パイプとの間に、樹脂マトリックスが熱可塑性であるプリプレグを介在させたものを、オーブン中で加熱することにより、FRTP(Fiber Reinforced Thermoplastic)からなるパイプを成形する方法が知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/079824号
【特許文献2】特開平5-293908号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
密閉式の成形型内でワックスコアを融解させる方法では、成形キャビティの内圧が、プレス機により外部から加える圧力よりも高くなることによって、成形中に成形型が開く問題が発生し得る。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、開放式の成形型を用いた場合であっても、成形中に融解するワックスコアを用いることでプリプレグを加圧しながら硬化させ、ボイドの少ない中空のFRP物品を製造し得ることを見出し、本発明を完成させた。
本発明の一態様によれば、熱硬化性のプリプレグ、ワックスからなるコア、および、成形キャビティを有する成形型を準備すること、前記成形型を前記プリプレグと前記コアでチャージすること、前記チャージした成形型を真空バギングすること、および、前記真空バギングした成形型を大気圧以上の雰囲気圧力下で加熱して前記プリプレグを硬化させることを含み、前記成形型は、前記成形キャビティを前記成形型の外部につなげる開口を有しており、前記成形型のチャージにおいては、前記コアの表面の一部と前記成形キャビティの表面との間に前記プリプレグが挟まれるとともに前記開口が前記プリプレグによって塞がれないようにされ、前記加熱により前記コアの少なくとも一部が融解する、FRP物品の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0007】
中空のFRP物品の製造に好ましく用い得る新規な製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、コアを模式的に示す斜視図である。
図2図2は、成形型を模式的に示す断面図である。
図3図3は、コアの周囲にプリプレグを配置する様子を模式的に示す斜視図である。
図4図4は、図2の成形型をプリプレグおよびコアでチャージする様子を模式的に示す断面図である。
図5図5は、コアをポリマーフィルムで包み、その周囲にプリプレグを配置する様子を模式的に示す斜視図である。
図6図6は、図2の成形型をプリプレグおよびコアでチャージする様子を模式的に示す断面図である。
図7図7は、プリプレグおよびコアでチャージした成形型を真空バギングする様子を模式的に示す断面図である。
図8図8は、ピストンを成形型の開口に差し込んだ様子を模式的に示す断面図である。
図9図9は、ワックスで形成した栓を、コアと一緒にポリマーフィルムで包んで用いる様子を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のいくつかの実施形態について適宜図面を参照しながら説明する。図面における寸法比は、説明の便宜上のものであり、実際のものとは異なる場合がある。また、図面において、同一の構成については同じ符号を用いて示し、重複する構成について説明を省略することがある。
【0010】
1.FRP物品の製造方法
本発明の一態様は、次の(a)~(d)のステップを含むFRP物品の製造方法に関する。
(a)熱硬化性のプリプレグ、ワックスからなるコア、および、成形キャビティを有する成形型を準備すること。
(b)前記成形型を前記プリプレグと前記コアでチャージすること。
(c)前記チャージした成形型を真空バギングすること。
(d)前記真空バギングした成形型を大気圧以上の雰囲気圧力下で加熱して前記プリプレグを硬化させること。
(a)~(d)の各ステップの詳細は次の通りである。
【0011】
(a)プリプレグ、コア、成形型の準備
出発材料として、熱硬化性樹脂を含有する樹脂マトリックスと繊維補強材とからなる熱硬化性のプリプレグを準備する。
プリプレグは所定の形状にカットされる。
【0012】
コアは、ワックスで形成される。ワックスにはフィラーが配合されていてもよい。
プリプレグの樹脂マトリックスの硬化特性に応じて、ワックスが有するべき融解温度は異なる。なぜなら、プリプレグを硬化させるステップ(d)において、プリプレグの樹脂マトリックスがゲル化する前に、コアの融解が始まることが好ましいからである。
ゲル化とは、樹脂マトリックスに含まれる熱硬化性樹脂成分が反応して3次元架橋構造を形成することであり、ゲル化によって樹脂マトリックスは流動性を失う。
例えばFRP管を成形する場合であれば、図1に示すような円柱状のコアを準備する。
【0013】
図2は、図1に示すコア1を用いてFRP管を成形する場合に用いる成形型の断面図である。
図2に示すように、成形型10は、開口11と、開口11を通して成形型10の外部とつながった成形キャビティ12を有する。成形型10は2個の部分型13,14からなる分割型であり、それら部分型13,14を組み合わせたときに成形キャビティ12が形成される。
成形型が有する部分型の数は2個には限定されず、3個以上の部分型からなる成形型を準備してもよい。
【0014】
(b)成形型のチャージ
準備した成形型を、準備したプリプレグおよびコアでチャージする。
チャージは、コアの表面の一部と成形キャビティの表面との間にプリプレグが挟まれ、かつ、成形型の開口がプリプレグによって塞がれないように行われる。
【0015】
コア1と成形型10を用いてFRP管を成形する場合であれば、プリプレグ2を図3に示すようにコア1の周囲に配置した後、図4に示すように、コア1と共に成形型10の成形キャビティ12内に配置する。
プリプレグ2は、積層された複数のプリプレグシートからなってもよい。
【0016】
好適例では、成形中にコアが融解したときに、液体になったワックスが望まない場所へ流れ込まないよう、図5に示すようにコア1をポリマーフィルム3で包んでその周囲にプリプレグ2を配置し、図6に示すように成形型10をそれらコア1、ポリマーフィルム3およびプリプレグ2でチャージしてもよい。
図4及び図6に示す一例のように、開口11を通してコア1の一部を成形型10の外側に出すのは好ましい態様であるが、必須ではない。
【0017】
部分型どうしの結合は、ねじ止め、クランプなど適宜な方法で行い得る。
プリプレグは、所定の形状に成形すべき部分が成形キャビティ内に配置されていればよく、製品に使用しない部分が成形キャビティの外に出ていても構わない。
【0018】
(c)チャージした成形型の真空バギング
コアとプリプレグでチャージした成形型を真空バギングする。
具体的には、図7に示すようにコア1とプリプレグ2でチャージした成形型10をブリーザークロス21と一緒にバギングフィルム20で覆い、真空口金22を真空ポンプ(図示せず)に接続し、バギングフィルム20の内側を吸引する。バギングフィルム20の内側が真空に保たれるようにバルブ23を閉じてから、真空口金22と真空ポンプの接続を外す。
【0019】
(d)プリプレグの硬化
真空バギングした成形型をオートクレーブに入れ、加圧しながら加熱する。
オートクレーブ内の圧力は、好ましくは2気圧以上、より好ましくは3気圧以上、更に好ましくは6気圧以上である。オートクレーブ内の圧力は、例えば10気圧以下とし得るが、限定するものではない。
オートクレーブ内の温度と加熱時間は、プリプレグが十分に硬化するように設定される。
【0020】
コアが融解し始めると、液状となったワックスが圧力媒体として作用し、成形キャビティ内の圧力と成形型の外部の圧力とがバランスする。つまり、成形型の外部の圧力と等しい圧力でプリプレグが成形型の内面に押し付けられる。
コアの融解が始まるのは、プリプレグの樹脂マトリックスがゲル化により流動性を失う前であることが好ましい。プリプレグは加圧された状態で硬化するので、ボイドがなく、表面外観が良好な硬化物が得られる。
成形キャビティの内圧は成形型の外部の圧力を超えないから、成形中に成形型が開くことはない。
【0021】
一例では、真空口金を真空ポンプに接続した状態のまま、真空バギングした成形型をオートクレーブに入れ、オートクレーブ内で成形型を加熱しながら、成形型を覆うバギングフィルムの内側を真空吸引してもよい。この真空吸引は、成形型を加熱する間じゅう継続してもよいし、あるいは、一時的であってもよい。
【0022】
(e)取出し
プリプレグの硬化が完了したら、成形型をオートクレーブから取り出し、バギングフィルムを剥がし、成形型を開いて、成形品(硬化したプリプレグ)を取り出す。
コアに含まれるワックスの融解温度より成形品の温度が高い状態ではコアが柔らかいので、成形品からコアを容易に抜くことができる。ワックスが固化するまで冷ましてから成形型を開く場合には、成形品を取り出した後で再び加熱してコアを軟化させ、成形品から抜き取ればよい。
【0023】
2.各種の実施形態
(1)プリプレグ
一方向プリプレグ(UDプリプレグ)、織物プリプレグ、不織布プリプレグ、SMC(sheet molding compound)およびトウプリプレグを含む様々なプリプレグを用いることができる。
プリプレグの繊維補強材に用いられる繊維の典型例は炭素繊維、ガラス繊維およびアラミド繊維であるが、植物繊維のような天然繊維を用いたプリプレグも好ましく使用することができる。
プリプレグの繊維含有量は、例えば、30~70wt%の範囲内である。
【0024】
同種のシート状プリプレグを積層して使用することができる。UDプリプレグを積層するときは、要求に応じて、プライ間で繊維方向を揃えてもよいし、クロスプライまたはアングルプライを採用してもよい。
異種のプリプレグ、すなわち繊維補強材の形態、繊維の種類、繊維含有量、マトリックス樹脂の少なくともいずれかが異なるプリプレグを組み合わせて用いることもできる。
【0025】
(2)プリプレグの樹脂マトリックス
プリプレグの樹脂マトリックスに用いられる熱硬化性樹脂の典型例はエポキシ樹脂、ユリア樹脂、ビニルエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂およびフェノール樹脂であるが、これらに限定されるものではない。これらの熱硬化性樹脂は2種以上を混合して用いることができる。
樹脂マトリックスには、硬化剤に加えて、増粘剤、反応性希釈剤、低収縮剤、難燃剤、消泡剤、脱泡剤、離型剤、粒子状充填剤、着色剤、シランカップリング剤等、必要に応じて様々な添加剤が添加され得る。
【0026】
(3)ワックス
作業環境温度は通常28℃以下であるから、コアに用いられるワックスには28℃で融解しないことが求められる。このことから、ワックスの融解温度は、好ましくは30℃以上である。
ワックスは、成形温度よりも低い温度で融解することが求められる。ワックスの融解温度が低い程、プリプレグの樹脂マトリックスがゲル化する前に、コアが確実に融解し始める。樹脂マトリックスがゲル化する温度は120℃より高いことが多いので、ワックスの融解温度は好ましくは120℃以下、より好ましくは110℃以下、更に好ましくは100℃以下である。
【0027】
ワックスの種類に限定はない。使用可能なワックスは、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスのような石油ワックス、フィッシャー・トロプシュ・ワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、脂肪酸アミドワックス、ヒドロキシ脂肪酸アミドワックス、脂肪酸エステルワックスのような合成ワックス、石油ワックスや合成ワックスを化学的に変成させてなる酸化パラフィンワックスや酸化ポリオレフィンワックスのようなワックス、これらのワックスに合成樹脂をブレンドしてなるワックス、異種ワックスをブレンドしてなるワックスを含む。
【0028】
(4)ポリマーフィルム
コアをポリマーフィルムで覆うときの方法には、例えば以下がある。
・コアをポリマーフィルムで包み、包んだ状態が崩れないように、耐熱テープで止める。密封はしてもよいが、必須ではない。耐熱テープで止める代わりに、接着剤を用いてもよいし、融着してもよい。
・コアをポリマーからなるシュリンクチューブの内側に配置した状態でシュリンクチューブを熱収縮させ、更に該シュリンクチューブの両端を融着で閉じる。
・コアの表面に低温硬化型の液状ゴムを塗布し、コアが融解しない温度で硬化させる。液状ゴムの硬化物がポリマーフィルムとなる。
・コアの表面にUV硬化型エラストマーの原料液を塗布し、UV照射して硬化させる。UV硬化型エラストマーの硬化物がポリマーフィルムとなる。
【0029】
ポリマーフィルムが成形温度において伸び変形可能であると、シール効果がより高くなる。この伸び変形は、弾性的であっても塑性的であってもよく、その両方の性質を有してもよい。
ポリマーフィルムの好ましい材料には、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、フッ素ゴムのような合成ポリマーが含まれ、更には、これらのポリマーからなるエラストマーが含まれる。
【0030】
(5)ピストンを用いる態様
一例では、図8に示すように、成形型10をチャージするとき、成形温度において全く融解しないか、または殆ど融解しない材料からなる、ピストン24を開口11に差し込んでもよい。
プリプレグを硬化させるステップ(d)において、コアが融解し始めた後は、ピストン24を介して、成形型10の外部の圧力と成形キャビティ12内の圧力とがバランスすることになる。
ピストン24には、コア1が融解したときに、液状のワックスが成形型10とバギングフィルム20の隙間に流れ出し難くする働きもある。流れ出たワックスは回収に手間がかかる。
【0031】
(6)コアの膨張を利用する態様
一例では、プリプレグを硬化させるステップ(d)において、コアの融解が始まる前に、コアの熱膨張によってプリプレグが成形キャビティの表面に押し付けられるようにしてもよい。そのためには、成形型をチャージするとき、プリプレグと成形キャビティの表面の間の隙間を十分に小さくすればよい。
他の一例では、図9に示すように、融解温度がコア1を構成するワックスのそれよりも高く、かつ成形温度よりは低いワックスで形成した栓25を、コア1と一緒にポリマーフィルム3で包んで用いることもできる。栓25が成形型10の開口11を塞ぐので、プリプレグを硬化させるステップ(d)では、コア1の融解が始まった後も成形キャビティ12の内圧は上昇を続ける。栓25を構成するワックスの融解が始まると、栓25が成形型10の開口11を塞ぎ得なくなり、成形キャビティ12の内圧が成形型10の外部の圧力とバランスするまで低下する。
コア1を構成するワックスと栓25を構成するワックスが成形後に容易に分別できるよう、これらのワックスは互いに相溶しないことが好ましい。
【0032】
(7)オートクレーブを用いない態様
オートクレーブの代わりに、加圧機構を有さないオーブン(内部が常圧:1気圧)の中に、真空バギングした成形型を入れてプリプレグを硬化させてもよい。硬化中にプリプレグに加わる圧力は1気圧であるが、ボイドの発生を抑制する効果はある。更に、前記(6)項に説明した方法で、コアの膨張もプリプレグを加圧するために利用すれば、ボイドの発生をより効果的に抑えることができる。
【0033】
3.実施形態のまとめ
本発明の好ましい実施形態には以下が含まれるが、限定するものではない。
[実施形態1]熱硬化性のプリプレグ、ワックスからなるコア、および、成形キャビティを有する成形型を準備すること、前記成形型を前記プリプレグと前記コアでチャージすること、前記チャージした成形型を真空バギングすること、および、前記真空バギングした成形型を大気圧以上の雰囲気圧力下で加熱して前記プリプレグを硬化させることを含み、前記成形型は、前記成形キャビティを前記成形型の外部につなげる開口を有しており、前記成形型のチャージにおいては、前記コアの表面の一部と前記成形キャビティの表面との間に前記プリプレグが挟まれるとともに前記開口が前記プリプレグによって塞がれないようにされ、前記加熱により前記コアの少なくとも一部が融解する、FRP物品の製造方法。
[実施形態2]前記成形型のチャージの前に、前記コアをポリマーフィルムで包む、実施形態1に係る製造方法。
[実施形態3]前記成形型のチャージは、前記開口を通して、前記コアの一部が前記成形型の外側に出るように行われる、実施形態1または2に係る製造方法。
[実施形態4]前記成形型のチャージにおいては、前記開口をピストンで塞ぐ、実施形態1または2に係る製造方法。
[実施形態5]前記プリプレグの樹脂マトリックスがゲル化する前に、前記加熱による前記コアの融解が始まる、実施形態1~4のいずれかに係る製造方法。
[実施形態6]前記ワックスの融解温度が30~120℃の範囲内である、実施形態1~5のいずれかに係る製造方法。
[実施形態7]前記雰囲気圧力が2気圧以上であり、10気圧以下であってもよい、実施形態1~6のいずれか係る製造方法。
[実施形態8]前記加熱にオートクレーブが使用される、実施形態1~7のいずれかに係る製造方法。
[実施形態9]前記加熱に加圧機構を有さないオーブンが使用される、実施形態1~6のいずれかに係る製造方法。
[実施形態10]前記加熱が行われる間に、前記成形型を覆うバギングフィルムの内側の継続的または一時的な真空吸引が行われる、実施形態1~9のいずれかに係る製造方法。
【0034】
以上、本発明を具体的な実施形態に即して説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の効果が奏される範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 コア(中子)
10 成形型
11 開口
12 成形キャビティ
13 部分型(上型)
14 部分型(下型)
20 バギングフィルム
21 ブリーザークロス
22 真空口金
23 バルブ
24 ピストン
25 栓
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9