(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002074
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】樹脂付き金属箔の製造方法、積層板の製造方法、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 15/08 20060101AFI20231228BHJP
B32B 38/18 20060101ALI20231228BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20231228BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B32B15/08 101Z
B32B38/18 Z
H05K1/03 630H
H05K3/00 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101053
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田端 栞
(72)【発明者】
【氏名】染川 淳生
(72)【発明者】
【氏名】日▲高▼ 圭芸
(72)【発明者】
【氏名】中村 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 香織
(72)【発明者】
【氏名】篠崎 陽佳
【テーマコード(参考)】
4F100
【Fターム(参考)】
4F100AB01A
4F100AB17
4F100AB33
4F100AB33A
4F100AK01
4F100AK01B
4F100AL09
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA02
4F100CA23
4F100EH46
4F100EJ27
4F100EJ27A
4F100EJ27B
4F100EJ28
4F100EJ28A
4F100EJ28B
4F100EJ42
4F100EJ86
4F100EJ99
4F100EJ99A
4F100EJ99B
4F100GB41
4F100JB13
4F100JB13B
4F100JB16
4F100JL04
4F100JL04A
4F100JL04B
4F100YY00A
4F100YY00B
(57)【要約】 (修正有)
【課題】反り量を十分に小さくすることができ、保管後においても反り量を小さく維持できる樹脂付き金属箔の製造方法、並びに前記金属箔を用いる積層板、プリント配線板及び半導体パッケージの製造方法を提供する。
【解決手段】金属箔1と、該金属箔の一方の面側に熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される樹脂層2と、を有する樹脂付き金属箔10の製造方法であって、前記樹脂付き金属箔の反りを低減させるための反り矯正処理を含み、前記反り矯正処理は、前記樹脂付き金属箔の金属箔側の面に反り矯正治具6を押し当て、該反り矯正治具を樹脂層側に押し込んだ状態で前記樹脂付き金属箔を搬送し、前記反り矯正治具上を通過させることによって、前記樹脂付き金属箔を、前記反り矯正治具を軸にして連続的に屈曲させる処理であり、前記反り矯正処理を、前記樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向が2以上になる条件で2回以上行う、樹脂付き金属箔の製造方法である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属箔と、該金属箔の一方の面側に熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される樹脂層と、を有する樹脂付き金属箔の製造方法であって、
前記樹脂付き金属箔の反りを低減させるための反り矯正処理を含み、
前記反り矯正処理は、前記樹脂付き金属箔の金属箔側の面に反り矯正治具を押し当て、該反り矯正治具を樹脂層側に押し込んだ状態で前記樹脂付き金属箔を搬送し、前記反り矯正治具上を通過させることによって、前記樹脂付き金属箔を、前記反り矯正治具を軸にして連続的に屈曲させる処理であり、
前記反り矯正処理を、前記樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向が2以上になる条件で2回以上行う、樹脂付き金属箔の製造方法。
【請求項2】
前記2回以上行う反り矯正処理が、
前記樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向をXとする反り矯正処理(1)と、
前記樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向をYとする反り矯正処理(2)と、を含み、
前記方向Xと前記方向Yとがなす角度が、60~120°である、
請求項1に記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
【請求項3】
前記方向Xと前記方向Yとがなす角度が、80~100°である、請求項2に記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
【請求項4】
前記樹脂付き金属箔を搬送する方向Zと前記方向Xとがなす角度、及び前記樹脂付き金属箔を搬送する方向Zと前記方向Yとがなす角度が、各々、30~150°である、請求項2に記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
【請求項5】
前記反り矯正治具が板状であり、前記反り矯正処理において、前記板状の反り矯正治具の端部を前記樹脂付き金属箔の金属箔側の面に押し当てる、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
【請求項6】
前記反り矯正治具を樹脂層側に押し込む距離が、1~25mmである、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂付き金属箔の搬送速度が、1~15m/分である、請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
【請求項8】
請求項1~4のいずれか1項に記載の樹脂付き金属箔の製造方法によって得られた樹脂付き金属箔を用いて絶縁層を形成する、積層板の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の積層板の製造方法によって得られた積層板に配線パターンを形成する、プリント配線板の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載のプリント配線板の製造方法によって得られたプリント配線板に半導体素子を搭載する、半導体パッケージの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本実施形態は、樹脂付き金属箔の製造方法、積層板の製造方法、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の小型化及び高性能化によって、プリント配線板には従来にも増して配線密度の高度化及び高集積化と共に、基板の薄型化が求められている。
これらの要求を満たすため、ガラスクロス等の繊維基材を使用せず、金属箔上に樹脂層を形成した樹脂付き金属箔がプリント配線板の製造に使用されている。樹脂付き金属箔は、ガラスクロス等の繊維基材を含まないために薄型化が可能であると共に、絶縁層の平滑性及び微細配線性に優れるため、配線密度の高度化及び高集積化にも適している。さらには、樹脂付き金属箔はガラスクロス等の繊維基材を含有しないために誘電特性に優れ、高周波化対応が必要なプリント配線板等に適用されている。
【0003】
樹脂付き金属箔は、通常、金属箔上に溶剤を含む熱硬化性樹脂組成物を塗布した後、加熱乾燥することによって製造する。このとき、熱硬化性樹脂組成物は、溶剤の揮発及び熱硬化性樹脂組成物がBステージ化することに起因して体積が収縮するため、樹脂付き金属箔が樹脂層側に反ることがある。このような反りの発生は、樹脂付き金属箔を用いてプリント配線板を製造する際の生産性を低下させる要因となるため、抑制されることが望まれる。
【0004】
特許文献1には、樹脂付き金属箔の端部の反りを抑制する方法として、金属箔の表面に熱硬化性樹脂組成物を塗布し、乾燥炉を通過させることによって加熱乾燥してBステージ化させる樹脂付き金属箔の製造方法において、乾燥炉内の入口近傍での加熱温度と比べて、乾燥炉の入口から出口までの全長に対する80%の距離の位置での加熱温度が100℃以上高くなり、かつこの位置から出口までの間において加熱温度が30℃以上低くなるようにすることを特徴とする樹脂付き金属箔の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の技術によると、端部の反りが低減した樹脂付き金属箔を製造することができるとされている。しかしながら、特許文献1の製造方法においては、その乾燥条件に適合する種類の材料のみしか使用できないという制約があるため、使用する材料選択の自由度に劣る。
【0007】
そこで、本発明者等は、より生産性に優れる、反りが低減された樹脂付き金属箔の製造方法について検討してきた。本発明者等の検討によると、反りが発生した樹脂付き金属箔に対して特定の機械的処理を加えることによって反り量を低減できることが判明しているが、反り量の低減が十分では無いと共に、保管中に反りが元に戻る場合があり、改善が望まれている。
【0008】
本実施形態は、このような現状に鑑み、反り量を十分に小さくすることができ、保管後においても反り量を小さく維持できる樹脂付き金属箔の製造方法、並びに、該製造方法によって製造された樹脂付き金属箔を用いる積層板の製造方法、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、上記の課題を解決すべく検討を進めた結果、本開示によって上記の課題を解決できることを見出した。
本開示は、下記[1]~[10]の実施形態を含む。
[1]金属箔と、該金属箔の一方の面側に熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される樹脂層と、を有する樹脂付き金属箔の製造方法であって、
前記樹脂付き金属箔の反りを低減させるための反り矯正処理を含み、
前記反り矯正処理は、前記樹脂付き金属箔の金属箔側の面に反り矯正治具を押し当て、該反り矯正治具を樹脂層側に押し込んだ状態で前記樹脂付き金属箔を搬送し、前記反り矯正治具上を通過させることによって、前記樹脂付き金属箔を、前記反り矯正治具を軸にして連続的に屈曲させる処理であり、
前記反り矯正処理を、前記樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向が2以上になる条件で2回以上行う、樹脂付き金属箔の製造方法。
[2]前記2回以上行う反り矯正処理が、
前記樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向をXとする反り矯正処理(1)と、
前記樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向をYとする反り矯正処理(2)と、を含み、
前記方向Xと前記方向Yとがなす角度が、60~120°である、
上記[1]に記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
[3]前記方向Xと前記方向Yとがなす角度が、80~100°である、上記[2]に記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
[4]前記樹脂付き金属箔を搬送する方向Zと前記方向Xとがなす角度、及び前記樹脂付き金属箔を搬送する方向Zと前記方向Yとがなす角度が、各々、30~150°である、上記[2]又は[3]に記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
[5]前記反り矯正治具が板状であり、前記反り矯正処理において、前記板状の反り矯正治具の端部を前記樹脂付き金属箔の金属箔側の面に押し当てる、上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
[6]前記反り矯正治具を樹脂層側に押し込む距離が、1~25mmである、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
[7]前記樹脂付き金属箔の搬送速度が、1~15m/分である、上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂付き金属箔の製造方法。
[8]上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂付き金属箔の製造方法によって得られた樹脂付き金属箔を用いて絶縁層を形成する、積層板の製造方法。
[9]上記[8]に記載の積層板の製造方法によって得られた積層板に配線パターンを形成する、プリント配線板の製造方法。
[10]上記[9]に記載のプリント配線板の製造方法によって得られたプリント配線板に半導体素子を搭載する、半導体パッケージの製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本実施形態によれば、反り量を十分に小さくすることができ、保管後においても反り量を小さく維持できる樹脂付き金属箔の製造方法、並びに、該製造方法によって製造された樹脂付き金属箔を用いる積層板の製造方法、プリント配線板の製造方法及び半導体パッケージの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】樹脂付き金属箔の一態様を示す模式図である。
【
図2】樹脂付き金属箔の別の一態様を示す模式図である。
【
図3】反り矯正処理の一態様を示す断面模式図である。
【
図4】反り矯正治具の一態様を示す断面模式図である。
【
図5】反り矯正処理の一態様を示す平面模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書中に記載されている「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前に記載される数値を最小値、「~」の後に記載される数値を最大値として含む数値範囲を示す。
例えば、数値範囲「X~Y」(X、Yは実数)という表記は、X以上であるY以下である数値範囲を意味する。そして、本明細書における「X以上」という記載は、X及びXを超える数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、本明細書における「Y以下」という記載は、Y及びY未満の数値を意味する。
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の下限値又は上限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本明細書において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において「樹脂組成物」とは、後述する各成分の混合物、当該混合物をBステージ化させた物を含む。ここで、本明細書においてB-ステージ化とは、JIS K6900(1994年)にて定義されるB-ステージの状態にすることであり、半硬化とも称される。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本実施形態に含まれる。
本明細書に記載されている作用機序は推測であって、本実施形態に係る樹脂組成物の効果を奏する機序を限定するものではない。
【0013】
[樹脂付き金属箔の製造方法]
本実施形態の樹脂付き金属箔の製造方法は、
金属箔と、該金属箔の一方の面側に熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される樹脂層と、を有する樹脂付き金属箔の製造方法であって、
前記樹脂付き金属箔の反りを低減させるための反り矯正処理を含み、
前記反り矯正処理は、前記樹脂付き金属箔の金属箔側の面に反り矯正治具を押し当て、該反り矯正治具を樹脂層側に押し込んだ状態で前記樹脂付き金属箔を搬送し、前記反り矯正治具上を通過させることによって、前記樹脂付き金属箔を、前記反り矯正治具を軸にして連続的に屈曲させる処理であり、
前記反り矯正処理を、前記樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向が2以上になる条件で2回以上行う、樹脂付き金属箔の製造方法である。
【0014】
本実施形態の製造方法によると、反り量が十分に小さく、保管後においても反り量が小さく維持される樹脂付き金属箔を製造することができる。その理由については定かではないが、次のように推測される。
本実施形態の製造方法が含む反り矯正処理においては、樹脂付き金属箔を、金属箔を内側にして屈曲させるため、外側の樹脂層に対しては延伸する負荷がかかり、これによって樹脂層の体積収縮によって生じた応力が解放されると考えられる。このとき、樹脂層に生じている現象は定かでは無いが、樹脂層には目視では確認できない程度の微細なクラックが発生し、延伸方向における応力が不可逆的に解放されていると考えられる。
しかしながら、当該反り矯正処理を、樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向を1つのみとして行うと、反りの低減量が小さいことに加えて、保管中に反りが大きくなる傾向にある。この原因として、屈曲する軸の方向を1つのみとする反り矯正処理は延伸される方向と直交する方向の応力が残存し易く、保管中における硬化の進行、残溶剤の揮発等に起因する樹脂層の体積収縮によって、上記残存する応力が増大することが考えられる。
一方、本実施形態の製造方法は、樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向を2以上になるように2回以上の反り矯正処理を施す。そのため、1回目の反り矯正処理によって解放されなかった方向の応力を2回目以降の反り矯正処理によって解放することが可能である。その結果、保管中に樹脂層の体積収縮が生じたとしても、反りが大きくなることを抑制できたと考えられる。
【0015】
以下、本実施形態の製造方法で製造する樹脂付き金属箔を構成する各部材について説明し、その後、反り矯正処理ついて詳述する。
【0016】
図1は、本実施形態の製造方法で得られる樹脂付き金属箔の一態様である樹脂付き金属箔10の模式図である。樹脂付き金属箔10は、金属箔1の一方の面上に樹脂層2が形成された構成を有する。
図2は、本実施形態の製造方法で得られる樹脂付き金属箔の別の一態様である樹脂付き金属箔20の模式図である。樹脂付き金属箔20は、金属箔1の一方の面上に樹脂層2が形成された構成を有する。さらに、金属箔1の樹脂層2とは反対側の面には、剥離層3とキャリア箔4とが、この順で積層された構成を有する。
本実施形態の製造方法で得られる樹脂付き金属箔は、金属箔1と樹脂層2とが直接積層していてもよく、金属箔1と樹脂層2との間に、他の層を有していてもよい。
【0017】
<金属箔>
金属箔としては、例えば、銅箔、錫箔、錫鉛合金箔、ニッケル箔等が挙げられる。これらの中でも、銅箔が好ましい。銅箔としては、銅の含有量が95質量%以上の銅箔であることが好ましい。
金属箔は、JIS規格(プリント配線板用電解銅箔:JIS C6512、プリント配線板用圧延銅箔:JIS C6513)又はIPC規格(IPC 4562規格Grade1,2,3)に準拠したものであることが、半導体パッケージに利用するという観点から好ましい。
【0018】
金属箔の樹脂層を形成する面は、密着性の観点から、粗化処理されていてもよい。
粗化処理は、金属箔の表面に粗化粒子を形成することによって施すことができる。
粗化粒子としては、例えば、銅、ニッケル、リン、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、コバルト及び亜鉛から選択される単体からなる電着粒、又はこれらのうちのいずれか1種以上を含む合金からなる電着粒が好ましい。
粗化粒子は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
金属箔は、上記の粗化処理に加え、例えば、ニッケル、コバルト、銅及び亜鉛から選択される単体、これらのうちのいずれか1種以上を含む合金等によって、二次粒子、三次粒子、防錆層、耐熱層等を形成したものであってもよい。
また、上記の各層に加えて、さらに表面に、クロメート処理、シランカップリング処理等の表面処理を施したものであってもよい。
【0020】
金属箔の厚さは、樹脂付き金属箔の用途等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、好ましくは0.1~35μm、より好ましくは0.3~15μm、さらに好ましくは0.5~5μm、特に好ましくは1~2μmである。
金属箔の厚さが上記下限値以上であると、本実施形態の製造方法によって得られる樹脂付き金属箔の取り扱い性がより一層向上する傾向にある。一方、金属箔の厚さが上記上限値以下であると、本実施形態の製造方法によって得られる樹脂付き金属箔が、より基板の薄型化に適合したものとなる傾向にある。
【0021】
<キャリア箔>
キャリア箔は、金属箔の厚さが薄い場合に取り扱い性を向上させるために必要に応じて設けられる支持体に相当するものである。そのため、キャリア箔は、プリント配線板等の製造過程で取り除かれる。なお、本実施形態において、キャリア箔は樹脂付き金属箔を構成する金属箔には含めないものとする。
キャリア箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔、ニッケル箔等が挙げられる。これらの中でも、銅箔が好ましい。
【0022】
キャリア箔の厚さは、樹脂付き金属箔の取り扱い性を向上させる観点及び生産コストの観点から、好ましくは5~50μm、より好ましくは7~35μm、さらに好ましくは10~25μmである。
キャリア箔の厚さが上記下限値以上であると、本実施形態の製造方法によって得られる樹脂付き金属箔の取り扱い性がより一層向上する傾向にある。一方、キャリア箔の厚さが上記上限値以下であると、本実施形態の製造方法によって得られる樹脂付き金属箔のコストをより低減できる傾向にある。
【0023】
<剥離層>
剥離層は、キャリア箔を金属箔から剥離し易くするために金属箔とキャリア層との間に必要に応じて設けられる層である。なお、本実施形態において、剥離層は樹脂付き金属箔を構成する金属箔には含めないものとする。
剥離層としては、例えば、クロム、ニッケル、コバルト、鉄、モリブデン、チタン、タングステン、リン、銅及びアルミニウムから選択される1種以上の金属を含む層が挙げられる。これらの金属は、合金、水和物、酸化物等であってもよい。剥離層は、1層であってもよく、複数層であってもよい。
剥離層は、例えば、電気めっき、無電解めっき、浸漬めっき等の湿式めっき;スパッタリング、化学的蒸着法(CVD;Chemical Vapor Deposition)、物理的蒸着法(PDV;Physical Vapor Deposition)等の乾式めっきなどによって形成することができる。
【0024】
<樹脂層>
樹脂層は、金属箔の一方の面側に、熱硬化性樹脂組成物を用いて形成される層である。樹脂層は、通常、プリント配線板等の用途における絶縁層として使用される。
樹脂層の厚さは、樹脂付き金属箔の用途等に応じて適宜調整すればよく、特に限定されないが、好ましくは5~70μm、より好ましくは10~50μm、さらに好ましくは15~30μmである。
樹脂層の厚さが上記下限値以上であると、本実施形態の製造方法によって得られる樹脂付き金属箔から形成される絶縁層の絶縁性がより一層向上する傾向にある。一方、樹脂層の厚さが上記上限値以下であると、本実施形態の製造方法によって得られる樹脂付き金属箔が、より一層基板の薄型化に適合したものとなる傾向にある。
【0025】
樹脂層の形成に使用する熱硬化性樹脂組成物の組成は、樹脂付き金属箔の用途等に応じて、適宜決定すればよい。
熱硬化性樹脂組成物が含有する熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和イミド樹脂、シアネート樹脂、イソシアネート樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、オキセタン樹脂、アミノ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アリル樹脂、ジシクロペンタジエン樹脂、シリコーン樹脂、トリアジン樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、エポキシ樹脂、不飽和イミド樹脂が好ましく、不飽和イミド樹脂がより好ましく、マレイミド樹脂がさらに好ましい。マレイミド樹脂は、マレイミド化合物とジアミン化合物とをマイケル付加させてなるプレポリマーであってもよい。
熱硬化性樹脂は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0026】
熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂以外にも、例えば、無機充填材、硬化剤、硬化促進剤、熱可塑性樹脂、エラストマー、有機充填材、難燃剤、その他の添加剤等を含有していてもよい。これらは、各々について、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、タルク、マイカ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、ホウ酸アルミニウム、ホウ珪酸ガラス等が挙げられる。
硬化剤としては、例えば、フェノール化合物、アミン化合物、酸無水物等が挙げられる。硬化剤は、熱硬化性樹脂の種類に応じて、適宜選択することが好ましい。
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類及びその誘導体;有機リン系化合物;第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。
熱可塑性樹脂及びエラストマーとしては、例えば、ポリフェニレンエーテル及びその誘導体、ポリブタジエン及びその誘導体、スチレン系熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
有機充填材としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子;アクリロニトリルブタジエンの共重合物として、アクリロニトリルとブタジエンとを共重合した架橋NBR粒子、アクリロニトリルとブタジエンとアクリル酸等のカルボン酸とを共重合したもの;ポリブタジエン、NBR、シリコーンゴム等をコアとし、アクリル酸誘導体をシェルとした、いわゆるコア-シェルゴム粒子;などが挙げられる。
難燃剤としては、例えば、リン系難燃剤、金属水和物、ハロゲン系難燃剤等が挙げられる。
その他の添加剤としては、ベンゾトリアゾール系等の紫外線吸収剤;ヒンダードフェノール系酸化防止剤、スチレン化フェノール酸化防止剤等の酸化防止剤;ベンゾフェノン類、ベンジルケタール類、チオキサントン系等の光重合開始剤;スチルベン誘導体等の蛍光増白剤、尿素化合物、シランカップリング剤等の密着性向上剤などが挙げられる。
【0027】
熱硬化性樹脂組成物中における熱硬化性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の総和100質量部に対して、好ましくは30~95質量部、より好ましくは40~90質量部、さらに好ましくは50~80質量部である。
熱硬化性樹脂組成物中における熱可塑性樹脂の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の総和100質量部に対して、好ましくは1~40質量部、より好ましくは5~37質量部、さらに好ましくは15~35質量部である。
熱硬化性樹脂組成物中におけるエラストマーの含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の総和100質量部に対して、好ましくは1~30質量部、より好ましくは3~25質量部、さらに好ましくは5~20質量部である。
熱硬化性樹脂組成物中における硬化促進剤の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の総和100質量部に対して、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.1~4質量部、さらに好ましくは0.5~3質量部である。
熱硬化性樹脂組成物中における無機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の総和100質量部に対して、好ましくは20~300質量部、より好ましくは30~150質量部、さらに好ましくは40~100質量部である。
熱硬化性樹脂組成物中における有機充填材の含有量は、熱硬化性樹脂組成物中の樹脂成分の総和100質量部に対して、好ましくは20~300質量部、より好ましくは30~150質量部、さらに好ましくは40~100質量部である。
ここで、本明細書において、「樹脂成分」とは、樹脂及び硬化反応によって樹脂を形成する化合物を意味し、例えば、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂、エラストマー等が樹脂成分に相当する。また、熱硬化性樹脂組成物が、任意成分として、上記成分以外に樹脂又は硬化反応によって樹脂を形成する化合物を含有する場合、これらの任意成分も樹脂成分に含まれる。一方、硬化促進剤、無機充填材及び有機充填材は、樹脂成分には含めないものとする。
【0028】
熱硬化性樹脂組成物は、層形成を容易にするために有機溶剤を含有していてもよい。なお、有機溶剤を含有する熱硬化性樹脂組成物を「樹脂ワニス」と称する場合がある。
有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル系溶剤;セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール系溶剤;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等のアミド系溶剤などが挙げられる。有機溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、溶解性の観点から、トルエン、メチルイソブチルケトンが好ましい。
【0029】
熱硬化性樹脂組成物が有機溶剤を含有する場合、その固形分含有量は、特に限定されないが、塗工性及び樹脂層の厚さ制御を容易にするという観点から、好ましくは25~80質量%、より好ましくは30~65質量%、さらに好ましくは35~50質量%である。
なお、本実施形態における固形分とは、溶剤以外の成分を意味し、25℃付近の室温で液状、水飴状又はワックス状のものも含む。
【0030】
熱硬化性樹脂組成物は、上記各成分を、必要に応じて有機溶剤と配合し、公知の撹拌機等を用いて混合する方法によって、製造することができる。混合する際には、各成分は撹拌しながら溶解又は分散させてもよい。また、原料を混合する順序、混合温度、混合時間等の条件は、特に限定されず、原料の種類等に応じて任意に設定すればよい。
次に、本実施形態の製造方法について説明する。
【0031】
<反り矯正処理前の樹脂付き金属箔の準備>
反り矯正処理前の樹脂付き金属箔は、例えば、金属箔上に樹脂ワニスを塗布した後、加熱乾燥することによって得られる。なお、ここでの加熱乾燥によって、樹脂ワニスに含有される有機溶剤を除去すると共に、熱硬化性樹脂をB-ステージ化することが好ましい。
加熱乾燥における加熱温度は、生産性及び熱硬化性樹脂を適度にB-ステージ化するという観点から、好ましくは80~200℃、より好ましくは90~170℃、さらに好ましくは100~150℃である。
加熱乾燥における加熱時間は、生産性及び熱硬化性樹脂を適度にB-ステージ化するという観点から、好ましくは0.5~30分間、より好ましくは1~10分間、さらに好ましくは2~5分間である。
但し、加熱乾燥における加熱温度及び加熱時間は、樹脂層に使用する材料の種類、有機溶剤の含有量、得られる樹脂付き金属箔の用途等に応じて調整される条件であるため、上記の範囲に限定されるものではない。
なお、金属箔、熱硬化性樹脂組成物及び樹脂層の好適な態様は上記した通りである。
【0032】
<反り矯正処理>
次に、反り矯正処理について、図面を参照しながら説明する。
図3には、樹脂付き金属箔10に対して、反り矯正処理を施す方法を説明するための断面模式図が示されている。なお、以下の図面では、便宜上、反り矯正処理前及び反り矯正処理後の樹脂付き金属箔は、いずれも樹脂付き金属箔10と示す。また、反り矯正処理前の樹脂付き金属箔10は、樹脂層2側に反り上がっているものとする。
【0033】
図3において、2つのロール5、5が離して設置され、樹脂付き金属箔10は、樹脂層2面が2つのロール5、5側を向き、2つのロール5、5と接触する状態で配置されている。そして、樹脂付き金属箔10の金属箔1側の面には、反り矯正治具6が押し当てられ、反り矯正治具6は、樹脂付き金属箔10の樹脂層2側に押し込まれている。
反り矯正治具6が押し込まれた樹脂付き金属箔10は、反り矯正治具6との接触位置において、2つのロール5、5と接触する樹脂層2の上面の高さを基準として、金属箔1の下面の高さが距離8になるように押し上げられている。樹脂付き金属箔10は、反り矯正治具6との接触位置において、金属層1を内側にして屈曲している。
当該状態で、樹脂付き金属箔10を方向Zに搬送し、反り矯正治具6上を通過させることによって、樹脂付き金属箔10は、反り矯正治具6を軸に、金属箔1を内側にして連続的に屈曲されることになる。
【0034】
(ロール5,5)
2つのロール5,5は、その間に反り矯正治具6が配置されるように離して設置される。
反り矯正治具6の両隣にロールを配置することによって、反り矯正治具6を樹脂層2側に押し込む際に、樹脂付き金属箔10を2つのロール5,5で押さえつけることができ、樹脂付き金属箔10の反りを効果的に低減することができる。また、2つのロール5,5の位置を調整することによって、樹脂付き金属箔10が、反り矯正治具6との接点において屈曲する角度であったり、樹脂付き金属箔10と反り矯正治具6との接触面積等を調整することができる。
2つのロール5,5の距離5’は、ロール5の中心からもう一方のロール5の中心までの距離である。距離5’は、反り低減の観点から、好ましくは50~300mm、より好ましくは60~200mm、さらに好ましくは70~200mmである。
2つのロール5,5の材質及び形状は特に限定されず、公知の材質及び形状を適用可能である。
【0035】
(反り矯正治具6)
反り矯正治具6は、2つのロール5,5の間に位置する。
反り矯正治具6は、2つのロール5,5の中間点から±5mmの範囲内に位置することが好ましく、2つのロール5,5の中間点に位置することがより好ましい。
【0036】
反り矯正治具6を樹脂層2側に押し込む距離8は、反り低減の観点から、好ましくは1~25mm、より好ましくは2~20mm、さらに好ましくは3~18mmである。
【0037】
反り矯正治具6の材質としては、例えば、金属、樹脂、木材等が挙げられる。これらの中でも、耐久性の観点から、金属、樹脂が好ましく、金属がより好ましい。
【0038】
反り矯正治具6は板状であり、反り矯正処理において、板状の反り矯正治具6の端部を樹脂付き金属箔10の金属箔1側の面に押し当てることが好ましい。
図4(a)及び(b)に、板状の反り矯正治具の断面模式図を示す。
図4(a)に示される反り矯正治具6の金属箔10と接触する端部は、断面視において略三角状である。なお、反り矯正治具6の端部とは、
図4(a)の点線で囲った領域を指す。
金属箔10と接触する略三角状の頂点の角度7は、特に限定されないが、好ましくは30~80°、より好ましくは40~75°である。
反り矯正治具の端部の断面形状は上記形状以外であってもよく、例えば、
図4(b)に示される反り矯正治具6aのように、円弧状であってもよい。円弧状の円直径dは、好ましくは1~7mm、より好ましくは1~6mm、さらに好ましくは2~5mmである。
【0039】
樹脂付き金属箔10の金属箔1と反り矯正治具6との間には、金属箔1の表面を傷付けないようにする観点から、テフロン(登録商標)シート等の保護フィルムを設置することが好ましい。保護フィルムの厚みは、特に限定されないが、反り低減効果を阻害しないようにするという観点から、好ましくは0.3~3mm、より好ましくは0.4~2mm、さらに好ましくは0.5~1.5mmである。
【0040】
(樹脂付き金属箔の搬送速度)
樹脂付き金属箔の搬送速度は、特に限定されないが、好ましくは1~15m/分、より好ましくは1~10m/分、さらに好ましくは1~5m/分である。
【0041】
(樹脂付き金属箔の屈曲軸方向)
本実施形態の製造方法においては、反り矯正処理を、樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向が2以上になる条件で2回以上行う。
樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向が2以上になる条件で2回以上の反り矯正処理を含むものであれば、反り矯正処理の回数は特に限定されず、例えば、2~5回であってもよく、2~3回であってもよいが、2回であることが好ましい。
【0042】
本実施形態の製造方法においては、前記2回以上行う反り矯正処理が、樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向をXとする反り矯正処理(1)と、樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向をYとする反り矯正処理(2)と、を含み、方向Xと方向Yとがなす角度が、30~150°であることが好ましく、60~120°であることがより好ましく、80~100°であることがさらに好ましく、90°であることが特に好ましい。
【0043】
以下、
図5(a)及び(b)を参照しながら、反り矯正処理として、反り矯正処理(1)及び反り矯正処理(2)を行い、方向Xと方向Yとがなす角度が90°である態様を例に説明する。
なお、
図5(a)及び(b)において、ロール5、5の図示は省略している。
【0044】
図5(a)は、反り矯正処理(1)を説明するための平面模式図である。
樹脂付き金属箔10は、その長手方向を搬送方向Zとして搬送され、反り矯正治具6は、樹脂付き金属箔10の屈曲軸の方向Rが、搬送方向Zと直交する方向になるように設置されている。この向きで反り矯正処理(1)を実施することによって、樹脂付き金属箔10は、
図5(a)における屈曲軸の方向R、すなわち、樹脂付き金属箔10の短手方向を軸に、金属箔1を内側にして連続的に屈曲されることになる。該反り矯正処理(1)において樹脂付き金属箔10が屈曲する軸の方向をXとする。当該処理後、反り矯正処理(2)を行う。
【0045】
図5(b)は、反り矯正処理(2)を説明するための平面模式図である。
反り矯正処理(1)を施した樹脂付き金属箔10は、その短手方向を搬送方向Zとして搬送され、反り矯正治具6は、樹脂付き金属箔10の屈曲軸の方向Rが、搬送方向Zと直交する方向になるように設置されている。この向きで反り矯正処理(2)を実施することによって、樹脂付き金属箔10は、
図5(b)における屈曲軸の方向R、すなわち、樹脂付き金属箔10の長手方向を軸に、金属箔1を内側にして連続的に屈曲されることになる。該反り矯正処理(2)において樹脂付き金属箔が屈曲する軸の方向をYとする。
上記のように、反り矯正処理(1)及び反り矯正処理(2)を施すことによって、樹脂付き金属箔10に対しては、短手方向である方向Xと長手方向である方向Yの両方を軸として屈曲する処理が施される。
【0046】
なお、
図5(a)及び(b)の平面模式図において、反り矯正治具6は、樹脂付き金属箔10の屈曲軸の方向Rが、樹脂付き金属箔10の搬送方向Zと直交する方向になるように設置されているが、樹脂付き金属箔10の屈曲軸の方向Rは、搬送方向Zに直交する方向に限定されない。
樹脂付き金属箔10を搬送する方向Zと方向Xとがなす角度、及び樹脂付き金属箔10を搬送する方向Zと方向Yとがなす角度は、特に限定されないが、各々、好ましくは30~150°、より好ましくは40~140°、さらに好ましくは50~130°である。
【0047】
<その他の処理>
本実施形態の製造方法においては、さらに、反り矯正処理前の樹脂付き金属箔又は反り矯正処理を実施して得られた樹脂付き金属箔を、対向する一対のロールの間隙に通すことによって加圧するロールニップ処理を行ってもよい。
反り低減の観点から、該一対のロールのうち、金属箔と接触する側のロールは樹脂ロールであり、樹脂層と接触する側のロールが金属ロールであることが好ましい。
【0048】
樹脂ロール及び金属ロールの形状としては、回転可能な形状であれば特に制限はなく、例えば、円筒体、円柱体等が挙げられる。これらの中でも、得られる樹脂付き金属箔の均質性の観点から、断面が真円である円筒体が好ましい。
樹脂ロールとしては、例えば、フッ素樹脂ロール、ポリイミド樹脂ロール、ポリウレタン樹脂ロール、ポリオレフィン樹脂ロール等が挙げられる。これらの中でも、ポリウレタン樹脂ロールが好ましい。
金属ロールとしては、例えば、ステンレス鋼ロール、クロムモリブデン鋼ロール等が挙げられる。これらの中でも、機械強度、耐摩耗性、取り扱い性等の観点から、ステンレス鋼ロールが好ましい。
金属ロールは、表面の傷及び摩耗を抑制する観点から、表面処理を施されたものであってもよい。金属ロールの表面処理方法としては、例えば、ニッケルメッキ、無電解ニッケルメッキ、ニッケル-ホウ素メッキ、硬質クロムメッキ、パーカーメッキ等が挙げられる。これらの中でも、硬質クロムメッキを施したものが好ましい。
樹脂ロール及び金属ロールは、いずれも表面が平滑であるものが、得られる樹脂付き金属箔の均質性の観点から好ましい。
【0049】
樹脂ロール及び金属ロールのロール径は、特に限定されないが、クラックの発生を防止しつつ反りを低減するという観点から、各々、好ましくは100~500mm、より好ましくは200~400mm、さらに好ましくは250~300mmである。
【0050】
樹脂付き金属箔の搬送速度は、特に限定されないが、生産性及び反り矯正効果の観点から、好ましくは1~15m/分、より好ましくは1~10m/分、さらに好ましくは1~5m/分である。
【0051】
ロール加重は、特に限定されないが、好ましくは0.3~12トン、より好ましくは1~12トン、さらに好ましくは3~12トンである。
ロール加重が上記下限値以上であると、より一層優れた反り矯正効果が得られる傾向にある。一方、ロール加重が上記上限値以下であると、加重による樹脂付き金属箔の意図しない変形を抑制することができる傾向にある。
【0052】
樹脂ロール及び金属ロールは、ロール内部に熱源を有し、ロール表面を加熱できる機構を有するものであってもよい。その場合、樹脂ロール及び金属ロールは加熱してもよいが、樹脂付き金属箔の変質を抑制するという観点からは、加熱しないことが好ましい。
樹脂ロール及び金属ロールのロール表面温度は、特に限定されないが、生産性及び反り矯正効果の観点、並びに樹脂付き金属箔の変質を抑制するという観点から、各々、好ましくは10~40℃、より好ましくは15~35℃、さらに好ましくは20~30℃である。
【0053】
ロールニップ処理は、樹脂付き金属箔を、上記対向する一対のロールの間隙に1回のみ通す処理であってもよく、2回以上通す処理であってもよい。樹脂付き金属箔を上記対向する一対のロールの間隙に2回以上通す場合は、1回目に使用するロールの組み合わせと2回目に使用するロールの組み合わせは、同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0054】
[積層板の製造方法]
本実施形態の積層板の製造方法は、本実施形態の樹脂付き金属箔の製造方法によって得られた樹脂付き金属箔を用いて絶縁層を形成する、積層板の製造方法である。
本実施形態の積層板の製造方法は、例えば、プリプレグ等のコア材に、本実施形態の樹脂付き金属箔を、樹脂層がコア材側になる状態で積層し、加熱加圧成形する方法である。これによって、樹脂層が硬化して絶縁層が形成される。
加熱加圧成形の条件は、特に限定されないが、例えば、温度100~300℃、時間10~300分間、圧力1.5~5MPaとすることができる。
【0055】
[プリント配線板の製造方法]
本実施形態のプリント配線板の製造方法は、本実施形態の積層板の製造方法によって得られた積層板に配線パターンを形成する、プリント配線板の製造方法である。
配線パターンの形成方法としては、サブトラクティブ法、フルアディティブ法、セミアディティブ法(SAP:Semi Additive Process)、モディファイドセミアディティブ法(m-SAP:modified Semi Additive Process)等の公知の方法が挙げられる。
その後、必要に応じて、さらに、本実施形態の樹脂付き金属箔又は別の樹脂付き金属箔を積層した後、加熱加圧成形を繰り返すことによって多層化し、多層プリント配線板を製造することもできる。
【0056】
[半導体パッケージの製造方法]
本実施形態の半導体パッケージの製造方法は、本実施形態のプリント配線板の製造方法によって得られたプリント配線板に半導体素子を搭載する、半導体パッケージの製造方法である。
具体的には、例えば、本実施形態の製造方法によって得られたプリント配線板の所定の位置に、公知の方法によって半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止する方法が挙げられる。
【実施例0057】
以下、実施例を挙げて、本実施形態を具体的に説明する。ただし、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0058】
[反り量の測定]
各例で得た樹脂付き金属箔を、500mm×400mmの大きさに切り出し、平坦な机上に置き、4隅の反り上がっている高さを定規で測定し、これらのうちの最大値を反り量(mm)として評価した。反り量は10mm以下が目標値である。
なお、反り量は、樹脂付き金属箔の製造直後に測定したものを「初期値」とし、初期値を測定した樹脂付き金属箔を、温度25℃、湿度60%の条件下で7日間保管した後に測定したものを「7日保管後」とした。
樹脂付き金属箔の製造直後とは、実施例1、実施例2、比較例3及び比較例6においては、反り矯正処理(2)を行った直後、比較例1においては、樹脂層を形成するための乾燥を終えた直後、比較例2及び5においては、反り矯正処理(1)を行った直後を意味し、比較例4においては、ロールニップ処理を行った直後を意味する。
【0059】
[外観の評価]
各例で得た樹脂付き金属箔の樹脂層側の表面を目視にて観察し、樹脂層の剥がれ落ちが無いものを「良好」とした。
【0060】
[熱硬化性樹脂組成物の製造]
製造例1
表1に示す配合割合(単位:質量部)で各成分を混合し、有機溶剤としてトルエン、メチルイソブチルケトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルを用いて固形分濃度40質量%のワニス状の熱硬化性樹脂組成物を作製した。
【0061】
【0062】
[樹脂付き金属箔の製造]
実施例1
(1)反り矯正処理前の樹脂付き金属箔の製造
製造例1で得た熱硬化性樹脂組成物を、キャリア箔付き銅箔(三井金属鉱業株式会社製、商品名「MT18FL-1.5」、銅箔厚さ:1.5μm、キャリア箔厚さ:18μm)の銅箔上に塗布し、130℃で3分間、加熱乾燥することによって、銅箔の一方の面側に厚さ20μmの樹脂層を形成した。
上記で得られた樹脂層を形成したキャリア箔付き銅箔を、反り矯正処理前の樹脂付き金属箔とした。反り矯正処理前の樹脂付き金属箔は樹脂層側に反り上がった状態を呈していた。
【0063】
(2)反り矯正処理の実施
続いて、反り矯正処理前の樹脂付き金属箔に対して、以下の手順で、反り矯正処理(1)及び反り矯正処理(2)を施した。
【0064】
(i)反り矯正処理(1)
図3に示すように、反り矯正処理前の樹脂付き金属箔10を、離して設置された2つのロール5,5側に樹脂層2面が向く状態で搬送できる状態に設置した。
次いで、樹脂付き金属箔10の金属箔1側の面に、板状の反り矯正治具6の端部を押し当て、反り矯正治具6を、樹脂付き金属箔10の樹脂層2側に押し込んだ状態とした。当該状態において、樹脂付き金属箔10を、
図3の搬送方向Zに向けて搬送し、樹脂付き金属箔10を反り矯正治具6上を通過させ、樹脂付き金属箔10を、反り矯正治具6を軸にして連続的に屈曲させた。
なお、反り矯正処理(1)においては、
図5(a)の平面模式図に示すように、樹脂付き金属箔10を、その長手方向を搬送方向Zとして搬送し、反り矯正治具6は、樹脂付き金属箔10の屈曲軸の方向Rが、搬送方向Zと直交する方向になるように設置した。これにより樹脂付き金属箔10を、
図5(a)における屈曲軸の方向R、すなわち、樹脂付き金属箔10の短手方向を軸に、金属箔1を内側にして連続的に屈曲させた。該反り矯正処理(1)において樹脂付き金属箔10が屈曲する軸の方向をXとする。
【0065】
反り矯正治具6及びその他の条件の詳細は以下の通りである。
反り矯正治具6:SUS製の板状(厚さ3mm)であって、端部の断面形状は略三角状である。金属箔10と接触する略三角状の頂点の角度(
図4(a)の7)は50°である。樹脂付き金属箔10と接触する箇所にはテフロン(登録商標)シート(厚み1mm)を被せた。
ロール5,5のロール径:20mm
ロール5,5間の距離:100mm
反り矯正治具6の位置:ロール5,5間の中心点
反り矯正治具6を押し込む距離(
図3の8で示される距離):10mm
【0066】
(ii)反り矯正処理(2)
続いて、
図5(b)の平面模式図に示すように、樹脂付き金属箔10を、その短手方向を搬送方向Zとして搬送し、反り矯正治具6を、樹脂付き金属箔10の屈曲軸の方向Rが、搬送方向Zと直交する方向になるように設置して、上記「反り矯正処理(1)」と同様の手順で反り矯正処理を行った。これにより樹脂付き金属箔10を、
図5(b)における屈曲軸の方向R、すなわち、樹脂付き金属箔10の長手方向を軸に、金属箔1を内側にして連続的に屈曲させた。該反り矯正処理(2)において樹脂付き金属箔10が屈曲する軸の方向をYとする。
上記の反り矯正処理(1)及び反り矯正処理(2)によって、樹脂付き金属箔10に対して、短手方向である方向Xと長手方向である方向Yの両方を軸として屈曲する処理を施した。
【0067】
実施例2
実施例1において、「反り矯正処理(1)」の前に、樹脂付き金属箔に対して、一方が樹脂ロール、他方が金属ロールである一対のロールの間隙を通して加圧するロールニップ処理を行ったこと以外は、実施例1と同様にして樹脂付き金属箔を得た。なお、ロールニップ処理の条件は以下の通りであり、
樹脂層側のロール:ロール径が300mmのステンレス鋼ロール(硬質クロムメッキ)
金属層側のロール:ロール径が300mmのポリウレタン樹脂ロール
送り速度:2.0m/分
ロール加重(トン):10
実施回数:1回
【0068】
比較例1
実施例1において、「反り矯正処理(1)」及び「反り矯正処理(2)」を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして樹脂付き金属箔を得た。
【0069】
比較例2
実施例1において、「反り矯正処理(2)」を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして樹脂付き金属箔を得た。
【0070】
比較例3
実施例1において、「反り矯正処理(1)」を行わなかったこと以外は実施例1と同様にして樹脂付き金属箔を得た。
【0071】
比較例4
実施例2において、「反り矯正処理(1)」及び「反り矯正処理(2)」を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして樹脂付き金属箔を得た。
【0072】
比較例5
実施例2において、「反り矯正処理(2)」を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして樹脂付き金属箔を得た。
【0073】
比較例6
実施例2において、「反り矯正処理(1)」を行わなかったこと以外は実施例2と同様にして樹脂付き金属箔を得た。
【0074】
【0075】
表2に示す結果から、本実施形態の製造方法である実施例1及び2の方法で得られた樹脂付き金属箔は、比較例1~6の樹脂付き金属箔よりも、反り量の初期値が小さく、かつ、7日間保管した後においても小さい反り量を維持できていることが分かる。