IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭硝子株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-車両用アンテナ 図1
  • 特開-車両用アンテナ 図2
  • 特開-車両用アンテナ 図3
  • 特開-車両用アンテナ 図4
  • 特開-車両用アンテナ 図5
  • 特開-車両用アンテナ 図6
  • 特開-車両用アンテナ 図7
  • 特開-車両用アンテナ 図8
  • 特開-車両用アンテナ 図9
  • 特開-車両用アンテナ 図10
  • 特開-車両用アンテナ 図11
  • 特開-車両用アンテナ 図12
  • 特開-車両用アンテナ 図13
  • 特開-車両用アンテナ 図14
  • 特開-車両用アンテナ 図15
  • 特開-車両用アンテナ 図16
  • 特開-車両用アンテナ 図17
  • 特開-車両用アンテナ 図18
  • 特開-車両用アンテナ 図19
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020774
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】車両用アンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 1/32 20060101AFI20240207BHJP
【FI】
H01Q1/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123213
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】船津 聡史
【テーマコード(参考)】
5J046
【Fターム(参考)】
5J046AA03
5J046AB17
5J046LA01
5J046QA07
5J046TA05
(57)【要約】
【課題】枠状の樹脂板に取り付けられ、導電膜を備えるガラス板構成体において、所定周波数帯における電波を所望の利得で受信できる車両用アンテナを提供する。
【解決手段】車両用アンテナ1は、第1主面と第2主面とを有する第1ガラス板、及び、第2主面側に配置される導電膜54を含むガラス板構成体20と、第1ガラス板の平面視において、ガラス板構成体20の周辺部21と重なる枠状の樹脂板10と、給電部41、エレメント42、及びアース部43を有するアンテナ40と、を備え、ガラス板構成体20は、第1ガラス板の平面視において、導電膜54を含む導電領域20Aを有し、アース部43は、導電膜54と電気的に接続され、給電部41及びエレメント42は、導電領域20A以外に配置される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する第1ガラス板、及び、前記第2主面側に配置される導電膜を含むガラス板構成体と、
前記第1ガラス板の平面視において、前記ガラス板構成体の周辺部と重なる枠状の樹脂板と、
給電部、前記給電部と接続したエレメント、及びアース部を有するアンテナと、を備え、
前記ガラス板構成体は、前記第1ガラス板の平面視において、前記導電膜を含む導電領域を有し、
前記アース部は、前記導電膜と電気的に接続され、
前記給電部及び前記エレメントは、前記導電領域以外に配置される、車両用アンテナ。
【請求項2】
前記ガラス板構成体は、前記第1ガラス板の平面視において、前記導電膜を含まない非導電領域を有し、
前記給電部及び前記エレメントは、前記非導電領域及び前記樹脂板の少なくとも一方に配置される、請求項1に記載の車両用アンテナ。
【請求項3】
前記非導電領域は、前記第1ガラス板の平面視において、前記ガラス板構成体の端辺に沿って所定幅の帯状で延伸しており、
前記エレメントは、前記非導電領域に配置される、請求項2に記載の車両用アンテナ。
【請求項4】
前記非導電領域は、前記所定幅が5mm~140mmで形成される、請求項3に記載の車両用アンテナ。
【請求項5】
前記エレメントは、前記非導電領域の端辺と略平行に延伸し、前記第1ガラス板の平面視において、前記導電領域と前記非導電領域の境界から5mm以上離れて配置される、請求項4に記載の車両用アンテナ。
【請求項6】
前記ガラス板構成体は、前記第1ガラス板の前記第2主面側に、樹脂を含む中間膜、第2ガラス板をこの順に有し、
前記第2ガラス板は、前記中間膜側の第3主面と、前記中間膜側とは反対側の第4主面とを有する、請求項1に記載の車両用アンテナ。
【請求項7】
前記導電膜は、前記第2主面及び前記第3主面の少なくとも一方に配置される、請求項6に記載の車両用アンテナ。
【請求項8】
前記アンテナは、前記第4主面に配置される、請求項6に記載の車両用アンテナ。
【請求項9】
前記アンテナは、前記第2主面又は前記第3主面に配置される、請求項6に記載の車両用アンテナ。
【請求項10】
前記導電膜は、前記第2主面又は前記第3主面のうち、前記アンテナとは異なる主面に配置される、請求項9に記載の車両用アンテナ。
【請求項11】
前記中間膜は、第1中間膜と第2中間膜と、を有し、
前記導電膜は、前記第1中間膜と前記第2中間膜との間に配置される、請求項6に記載の車両用アンテナ。
【請求項12】
前記導電膜は、調光フィルムに含まれる導体である、請求項11に記載の車両用アンテナ。
【請求項13】
前記エレメントの長さLは、前記アンテナが受信する周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ、前記ガラス板構成体の波長短縮率をk、としたとき、
0.70×(1/4)×λ×k ≦ L ≦ 1.30×(1/4)×λ×k
を満足する、請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用アンテナ。
【請求項14】
前記導電膜は、シート抵抗が5Ω/□以下である、請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用アンテナ。
【請求項15】
前記導電膜は、熱線反射膜を含む、請求項14に記載の車両用アンテナ。
【請求項16】
前記導電膜は、シート抵抗が5Ω/□より高く、
前記第1ガラス板の平面視において、前記導電領域の外周に前記導電膜よりも低抵抗となる導電枠を有する、請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用アンテナ。
【請求項17】
前記導電膜は、低放射膜用の導体を含む、請求項16に記載の車両用アンテナ。
【請求項18】
前記非導電領域は、前記ガラス板構成体を車両に取り付けたときに、水平方向に延伸する、請求項2から5のいずれか1項に記載の車両用アンテナ。
【請求項19】
前記非導電領域は、前記ガラス板構成体を車両に取り付けたときに、鉛直方向に対して0°~75°の範囲で傾く、請求項2から5のいずれか1項に記載の車両用アンテナ。
【請求項20】
前記アンテナは、VHF帯及びUHF帯の周波数の少なくとも一方の電波を受信する、請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用アンテナ。
【請求項21】
前記ガラス板構成体は、リアガラスである、請求項1から12のいずれか1項に記載の車両用アンテナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の開口部、とくに車両用窓ガラスには、Low-E(Low Emissivity)、熱線反射膜などの(透明)導電膜がコーティングされたり、電気的(アクティブ)に可視光線透過率を変化できる調光フィルム等を備えたり、熱的/光学的な付加価値が提供されている。このような導電膜をアンテナとして利用するものとしては、例えば、下記特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1に開示された車両窓アセンブリは、ガラス・プライ、及びガラス・プライの表面上に位置付けられた導電性被覆を含む。導電性被覆は、車両枠の内側金属縁部から間隔をおいて配置されるように適合された外側周縁部を有して、アンテナ・スロットを画定する。導電性被覆は、外側周縁部に隣接する少なくとも1つの除去部分を含み、除去部分は、アンテナ・スロットを所望の共振周波数に同調させるように寸法付けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2013-544045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、ガラスなどの誘電体に導電膜をコーティングすると、従来の車両用窓ガラスのように、車両用窓ガラスに線条の導体パターンを配置して所定の放送波の電波を受信する、ガラスアンテナとしての所望のアンテナ利得が得られない場合があった。
また、特許文献1に開示された技術は、車両枠の内側金属縁部においてアンテナのグランドを取ることができる。しかしながら、仮に、車両枠が樹脂製の場合は、車両枠からアンテナのグランドを取ることができず、所望のアンテナ利得が安定して得られない場合があった。
【0006】
本発明は、枠状の樹脂板に取り付けられ、導電膜を備えるガラス板構成体において、所定周波数帯における電波を所望の利得で受信できる車両用アンテナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために、以下の構成を備える。
[1]第1主面と前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する第1ガラス板、及び、前記第2主面側に配置される導電膜を含むガラス板構成体と、前記第1ガラス板の平面視において、前記ガラス板構成体の周辺部と重なる枠状の樹脂板と、給電部、前記給電部と接続したエレメント、及びアース部を有するアンテナと、を備え、前記ガラス板構成体は、前記第1ガラス板の平面視において、前記導電膜を含む導電領域を有し、前記アース部は、前記導電膜と電気的に接続され、前記給電部及び前記エレメントは、前記導電領域以外に配置される、車両用アンテナ。
【0008】
[2]前記ガラス板構成体は、前記第1ガラス板の平面視において、前記導電膜を含まない非導電領域を有し、前記給電部及び前記エレメントは、前記非導電領域及び前記樹脂板の少なくとも一方に配置される、[1]に記載の車両用アンテナ。
【0009】
[3]前記非導電領域は、前記第1ガラス板の平面視において、前記ガラス板構成体の端辺に沿って所定幅の帯状で延伸しており、前記エレメントは、前記非導電領域に配置される、[2]に記載の車両用アンテナ。
【0010】
[4]前記非導電領域は、前記所定幅が5mm~140mmで形成される、[2]に記載の車両用アンテナ。
【0011】
[5]前記エレメントは、前記非導電領域の端辺と略平行に延伸し、前記第1ガラス板の平面視において、前記導電領域と前記非導電領域の境界から5mm以上離れて配置される、[4]に記載の車両用アンテナ。
【0012】
[6]前記ガラス板構成体は、前記第1ガラス板の前記第2主面側に、樹脂を含む中間膜、第2ガラス板をこの順に有し、前記第2ガラス板は、前記中間膜側の第3主面と、前記中間膜側とは反対側の第4主面とを有する、[1]から[5]のいずれかに記載の車両用アンテナ。
【0013】
[7]前記導電膜は、前記第2主面及び前記第3主面の少なくとも一方に配置される、[6]に記載の車両用アンテナ。
【0014】
[8]前記アンテナは、前記第4主面に配置される、[6]又は[7]に記載の車両用アンテナ。
【0015】
[9]前記アンテナは、前記第2主面又は前記第3主面に配置される、[6]又は[7]に記載の車両用アンテナ。
【0016】
[10]前記導電膜は、前記第2主面又は前記第3主面のうち、前記アンテナとは異なる主面に配置される、[9]に記載の車両用アンテナ。
【0017】
[11]前記中間膜は、第1中間膜と第2中間膜と、を有し、前記導電膜は、前記第1中間膜と前記第2中間膜との間に配置される、[6]から[10]のいずれかに記載の車両用アンテナ。
【0018】
[12]前記導電膜は、調光フィルムに含まれる導体である、[11]に記載の車両用アンテナ。
【0019】
[13]前記エレメントの長さLは、前記アンテナが受信する周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ、前記ガラス板構成体の波長短縮率をk、としたとき、0.70×(1/4)×λ×k ≦ L ≦ 1.30×(1/4)×λ×kを満足する、[1]から[12]のいずれかに記載の車両用アンテナ。
【0020】
[14]前記導電膜は、シート抵抗が5Ω/□以下である、[1]から[13]のいずれかに記載の車両用アンテナ。
【0021】
[15]前記導電膜は、熱線反射膜を含む、[14]に記載の車両用アンテナ。
【0022】
[16]前記導電膜は、シート抵抗が5Ω/□より高く、前記第1ガラス板の平面視において、前記導電領域の外周に前記導電膜よりも低抵抗となる導電枠を有する、[1]から[13]のいずれかに記載の車両用アンテナ。
【0023】
[17]前記導電膜は、低放射膜用の導体を含む、[16]に記載の車両用アンテナ。
【0024】
[18]前記非導電領域は、前記ガラス板構成体を車両に取り付けたときに、水平方向に延伸する、[2]から[17]のいずれかに記載の車両用アンテナ。
【0025】
[19]前記非導電領域は、前記ガラス板構成体を車両に取り付けたときに、鉛直方向に対して0°~75°の範囲で傾く、[2]から[18]のいずれかに記載の車両用アンテナ。
【0026】
[20]前記アンテナは、VHF帯及びUHF帯の周波数の少なくとも一方の電波を受信する、[1]から[19]のいずれかに記載の車両用アンテナ。
【0027】
[21]前記ガラス板構成体は、リアガラスである、[1]から[20]のいずれかに記載の車両用アンテナ。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、枠状の樹脂板に取り付けられ、導電膜を備えるガラス板構成体において、所定周波数帯における電波を所望の利得で受信できる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の第1実施形態による車両用アンテナの平面図である。
図2】本発明の第1実施形態による車両用アンテナの分解斜視図である。
図3図1に示す矢視III-III断面図である。
図4】本発明の第2実施形態による車両用アンテナの分解斜視図である。
図5】本発明の第2実施形態による車両用アンテナの断面図である。
図6】本発明の第3実施形態による車両用アンテナの分解斜視図である。
図7】本発明の第3実施形態による車両用アンテナの断面図である。
図8】本発明の第4実施形態による車両用アンテナの分解斜視図である。
図9】本発明の第1実施例による車両用アンテナの平面図である。
図10】第1実施例による車両用アンテナのFM放送波の周波数帯におけるアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図11】第1実施例による車両用アンテナのDAB規格のバンドIIIにおけるアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図12】本発明の第2実施例による車両用アンテナの平面図である。
図13】第2実施例による車両用アンテナのFM放送波の周波数帯におけるアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図14】第2実施例による車両用アンテナ1のDAB規格のバンドIIIにおけるアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図15】本発明の第3実施例による車両用アンテナ1の平面図である。
図16】第3実施例による車両用アンテナ1のFM放送波の周波数帯における垂直偏波のアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図17】第3実施例による車両用アンテナのDAB規格のバンドIIIにおける垂直偏波のアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図18】第4実施例による車両用アンテナのFM放送波の周波数帯における垂直偏波のアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図19】第4実施例による車両用アンテナのDAB規格のバンドIIIにおける垂直偏波のアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態による車両用アンテナについて説明する。なお、理解の容易のため、図面における各部の縮尺は、実際とは異なる場合がある。平行、直角、直交、水平、垂直、上下、左右などの方向には、実施形態の効果を損なわない程度のずれが許容される。角部の形状は、直角に限られず、弓状に丸みを帯びてもよい。平行、直角、直交、水平、垂直には、略平行、略直角、略直交、略水平、略垂直が含まれてもよい。
【0031】
略平行、略水平とは、例えば、基準線(平行線、水平線)に対する角度が±15°以下を含んでもよく、±10°の範囲でもよく、±5°の範囲でもよく、±3°の範囲でもよい。基準線(平行線、水平線)に対する角度が0°に近づくと例えばアンテナの意匠性が向上する。
略直角、略直交、略垂直とは、例えば、2つの基準線又は基準面がなす角度の90°に対し±15°以下を含んでもよく、90°に対し±10°の範囲でもよく、90°に対し±5°の範囲でもよく、90°に対し±3°の範囲でもよい。2つの基準線又は基準面がなす角度に対する角度が90°に近づくと例えばアンテナの意匠性が向上する。
【0032】
また、以下では、図中に設定したXYZ座標を必要に応じて参照しつつ各部材の位置関係について説明することがある。このXYZ座標系において、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向を表す。X軸方向とY軸方向とZ軸方向は、互いに直交する。XY平面、YZ平面、ZX平面は、それぞれ、X軸方向及びY軸方向に平行な仮想平面、Y軸方向及びZ軸方向に平行な仮想平面、Z軸方向及びX軸方向に平行な仮想平面を表す。
【0033】
以下では、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向は、それぞれ、車両用アンテナの後述するガラス板構成体の左右方向(水平方向)、ガラス板構成体の上下方向(垂直方向)、ガラス板構成体の厚さ方向(主面の法線方向)を表す。また、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。
【0034】
本実施形態における車両用アンテナの適用例として、車両の後部に取り付けられるリアガラスが挙げられる。しかし、本実施形態における車両用アンテナは、車両の前部に取り付けられるウィンドシールド、車両の側部に取り付けられるサイドガラス、車両の天井部に取り付けられるルーフガラスでもよい。なお、車両用アンテナを適用できる車両用窓ガラスは、これらの例に限られない。
【0035】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態による車両用アンテナ1の平面図である。図2は、本発明の第1実施形態による車両用アンテナ1の分解斜視図である。図3は、図1に示す矢視III-III断面図である。
図1に示す車両用アンテナ1は、車両の後部に取り付けられるリアガラスに適用されている。なお、図1では、車両用アンテナ1を、車内側からの視点(車内視)で示している。車両用アンテナ1は、車両の車体側に設けられた図示しない信号処理装置(アンプモジュール)と、伝送線路2を介して接続されている。
【0036】
伝送線路2は、例えば同軸ケーブルであるが、マイクロストリップライン、ストリップライン、コプレーナライン、スロットライン等も使用できる。以降、とくにことわりが無い場合、伝送線路2は同軸ケーブルとして説明する。伝送線路2は、内部導体2aと、絶縁体を介して内部導体2aの外側を覆う外部導体2bと、を備える。内部導体2aは、後述するアンテナ40の給電部41と接続されている。また、外部導体2bは、後述するアンテナ40のアース部43と、接続線2cを介して接続されている。
【0037】
車両用アンテナ1は、樹脂板10と、ガラス板構成体20と、デフォッガ30と、アンテナ40と、を備える。なお、ガラス板構成体20がリアガラス以外の窓ガラスである場合、デフォッガ30は必須ではない。ガラス板構成体20は、平面視において略四角形の外形を有する。ガラス板構成体20の周辺部21は、上下方向に対向する上縁22及び下縁23と、水平方向に対向する左縁24及び右縁25とを含む。
【0038】
樹脂板10は、車両の後部の少なくとも一部を構成している。樹脂板10は、Z軸方向から視て矩形の開口11を有し、ガラス板構成体20の周辺部21と厚さ方向(Z軸方向)で重なる枠状に形成されている。開口11の周縁には、ガラス板構成体20の周辺部21を収容する収容溝12が形成されている。
【0039】
収容溝12は、図3に示すように、樹脂板10の外表面10a側に形成されている。Z軸方向の正側は、車外側を表し、Z軸方向の負側は、車内側を示している。外表面10aは、車外側を向く面であり、内表面10bは、車内側を向く面である。ガラス板構成体20の周辺部21は、樹脂板10の収容溝12に、ウレタン樹脂等の接着剤13を介して取り付けられている。
【0040】
図1に示すように、デフォッガ30は、ガラス板構成体20に設けられる導電パターンを有する。デフォッガ30は、通電加熱式のものであって、第1バスバー31a及び第2バスバー31bと、第1バスバー31aと第2バスバー31bとの間に配置された複数のヒータ線32と、を有する。ヒータ線32は、第1バスバー31aと第2バスバー31bとの間に配置され、第1バスバー31a及び第2バスバー31bを介して電圧(直流電圧)が印加されることでヒータ線32に直流電流が流れ、ガラス板構成体20を加熱する。このように、ガラス板構成体20が加熱されることで、ガラス板構成体20の結露(曇り)が取り除かれる。
【0041】
第1バスバー31a及び第2バスバー31bは、ガラス板構成体20の左右両側に配置されている。第1バスバー31aは、ガラス板構成体20の左縁24に沿って上下方向に延在している。第2バスバー31bは、ガラス板構成体20の右縁25に沿って上下方向に延在している。第1バスバー31a及び第2バスバー31bは、互いに並走するように水平方向に延在するヒータ線32に給電する。なお、ヒータ線32の数は、図示する7本より多くても少なくてもよい。
【0042】
アンテナ40は、所定周波数帯の電波を受信可能に形成されている。アンテナ40は、1つの周波数帯の電波を受信可能に形成されてもよいし、異なる2つ以上の周波数帯の電波を受信可能に形成されてもよい。異なる2つの周波数帯は、一部の周波数帯が重なる組み合わせでもよいし、全く重ならない周波数帯の組み合わせでもよい。以降、特に断りがない場合、アンテナ40は、所定周波数帯の電波として、異なる2つの周波数帯の電波を受信可能に形成されており、その2つの異なる周波数帯における周波数でそれぞれ共振するものとして説明し、本明細書における第2実施形態以降の各アンテナについても同様とする。例えば、アンテナ40は、VHF帯(30MHz~300MHz)の電波と、UHF帯(300MHz~3GHz)の電波の少なくとも一方を受信する。
【0043】
本実施形態のアンテナ40は、VHF帯の電波として、例えばFM放送波(76MHz~108MHz)の電波を受信する。また、本実施形態のアンテナ40は、VHF帯の電波として、例えばDAB規格のバンドIII(174MHz~240MHz)の電波を受信する。なお、アンテナ40は、UHF帯として地上デジタルテレビ放送波(470MHz~710MHz)の電波や、MF帯としてAM放送波(522kHz~1710kHz)の電波などを受信してもよい。
【0044】
図2に示すように、ガラス板構成体20は、第1ガラス板51と、第2ガラス板52と、中間膜53と、導電膜54と、を備える。なお、図2では、ガラス板構成体20の構成要素を、Z軸方向に分離して示している。
第1ガラス板51は、Z軸方向の正側を向く第1主面51aと、Z軸方向において第1主面51aとは反対側(Z軸方向の負側)を向く第2主面51bと、を有する板状の誘電体である。第1ガラス板51は、透明でも半透明でもよい。第1主面51aは、車外側を向く面であり、第2主面51bは、車内側を向く面である。
【0045】
ガラス板構成体20は、第1ガラス板51の第2主面51b側に、導電膜54、中間膜53、及び第2ガラス板52を、この順に有する合わせガラスが例示できる。第2ガラス板52は、Z軸方向の正側を向く第3主面52aと、Z軸方向において第3主面52aとは反対側(Z軸方向の負側)を向く第4主面52bと、を有する板状の誘電体である。第2ガラス板52は、透明でも半透明でもよい。第3主面52aは、車外側を向く面であり、第4主面52bは、車内側を向く面である。なお、第1ガラス板51及び第2ガラス板52は、従来公知の無機ガラス、有機ガラスを選択できる。例えば、第1ガラス板51がソーダライムガラス等の無機ガラスであって、第2ガラス板52がポリカーボネート樹脂等の有機ガラスでもよい。以降、とくに断わりが無い場合、第1ガラス板51及び第2ガラス板52は、無機ガラスとして説明する。
【0046】
第2ガラス板52の第4主面52b側には、デフォッガ30、アンテナ40、及び遮光部26が設けられている。遮光部26は、例えば、可視光を遮光する遮光層であり、第2ガラス板52の第4主面52bの周縁に沿って枠状に形成されている。言い換えると、遮光部26の内縁は、樹脂板10の開口11の内縁よりも内側にある。遮光層は、不透明な着色セラミック層であって、色は任意であるが、黒色、茶色、灰色、濃紺等の濃色又は白色が好ましく、黒色がより好ましい。
【0047】
ガラス板構成体20の平面視において、遮光部26は、アンテナ40、デフォッガ30の少なくとも一部が重なる。図1に示す例では、遮光部26上にアンテナ40、デフォッガ30の少なくとも一部(第1バスバー31a及び第2バスバー31b)が形成されている。ガラス板構成体20の平面視において、遮光部26がアンテナ40、デフォッガ30の少なくとも一部と重なることにより、重なる部分が視認しにくくなるので、リアガラスや車両のデザイン性などの見栄えが向上するため好ましく、全てが重なるとより好ましい。なお、遮光部26は、第1ガラス板51の第2主面51b、及び、第2ガラス板52の第3主面52aの少なくとも一方に設けられてもよい。
【0048】
中間膜53は、図2に示すように、第1ガラス板51と第2ガラス板52との間に介在する透明又は半透明な誘電体である。第1ガラス板51と第2ガラス板52とは、中間膜53によって接合される。中間膜53は、例えば、熱可塑性のポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)などが挙げられる。なお、中間膜53の比誘電率は、2.4以上3.5以下が好ましい。中間膜53は、導電膜54と第2ガラス板52との間に配置されてもよいし、第1ガラス板51と導電膜54との間に配置されてもよい。言い換えると、導電膜54は、図2に示す配置に限らず、第2ガラス板52の第3主面52a側に配置してもよい。さらに、中間膜53は、導電膜54と第2ガラス板52との間と、第1ガラス板51と導電膜54との間との両方に配置されてもよい。
【0049】
図2において、導電膜54は、第1ガラス板51に対して第2主面51b側にある平面状導体である。導電膜54は、第2主面51bに接する導体でもよいし、不図示の、透明または半透明の誘電体を介して第2主面51b側に配置される導体でもよい。また、導電膜54は、透明でも半透明でもよい。導電膜54としては、熱線反射用の導電膜(熱線反射膜)、低放射用の導電膜(Low-E(Low Emissivity)コート)、可視光線透過率をアクティブに変化できる調光フィルムに含まれる導電膜などが挙げられる。
【0050】
本実施形態の導電膜54は、車外側に配置された第1ガラス板51の第2主面51bに設けられ、車外側から車内側に向かう太陽光などに含まれる熱線を反射する熱線反射膜である。熱線反射膜としては、金属膜が代表的であり、金属膜としては、銀(Ag)膜が挙げられる。熱線反射膜は、複数種類の膜を積層した積層体でもよく、ポリエチレンテレフタレート(PET)などの樹脂フィルムに蒸着処理等でコーティングされたものでもよい。この導電膜54のシート抵抗は、5Ω/□(ohms per square)以下が好ましい。
【0051】
導電膜54は、他のガラス板構成体20(第1ガラス板51、第2ガラス板52、中間膜53)よりも面積が小さい。例えば、導電膜54は、他のガラス板構成体20と左右方向の寸法が同じであるが、他のガラス板構成体20より上下方向の寸法が短くてもよい。具体的に、導電膜54は、その下縁がガラス板構成体20の下縁23と一致し、その上縁22aがガラス板構成体20の上縁22よりも低い位置でもよい。このようにして、ガラス板構成体20には、第1ガラス板51の平面視において、導電膜54を含む導電領域20Aと、導電膜54を含まない非導電領域20Bと、が形成されている。なお、ガラス板構成体20の平面視において、導電膜54の各外縁は、必ずしもガラス板構成体20の左縁24、右縁25及び下縁23と一致しなくてもよく、これらの縁のうち少なくとも1つの縁よりも内側に配置されてもよい。
【0052】
図1に示す例において、非導電領域20Bは、第1ガラス板51の平面視において、ガラス板構成体20の上縁22に沿って所定幅の帯状で延伸している。非導電領域20Bは、例えば、5mm~140mmの幅で形成されることが好ましく、5mm~120mmの幅で形成されることがより好ましく、5mm~100mmの幅で形成されることがさらに好ましい。非導電領域20Bの幅とは、上下方向の非導電領域20Bの寸法(図2に示すガラス板構成体20の上縁22から導電膜54の上縁22aまでの上下方向の距離)を意味する。なお、非導電領域20Bは、ガラス板構成体20の端辺であれば、上縁22に限らず、下縁23、左縁24、右縁25の少なくともいずれか一つに形成されてもよい。
【0053】
アンテナ40は、第2ガラス板52の第4主面52b側に設けられるガラスアンテナである。アンテナ40は、ガラス板構成体20を車両に取り付けたときに、デフォッガ30より上側の領域に配置されている。なお、ガラス板構成体20を車両に取り付けたときとは、樹脂板10が車両後部のバックドアの少なくとも一部を構成する場合、そのバックドアが閉じられたときである。非導電領域20Bは、ガラス板構成体20を樹脂板10に取り付けたときに、水平方向に延伸する。また、非導電領域20Bは、ガラス板構成体20を車両に取り付けたときに、鉛直方向に対して0°~75°の範囲で傾くように配置される。なお、該傾斜角度は、0°~60°の範囲でもよく、0°~45°の範囲でもよく、0°~30°の範囲でもよい。
【0054】
アンテナ40は、図1に示すように、給電部41、給電部41と接続したエレメント42、及びアース部43を有する。給電部41は、矩形状に形成された導体パターンであり、伝送線路2の内部導体2aと接続されている。なお、給電部41の形状は、円形や他の多角形等の他の形状でもよい。図1において、給電部41は、ガラス板構成体20の非導電領域20Bであって、ガラス板構成体20の左縁24近傍に配置されているが、給電部41及びアース部43が、ガラス板構成体20の右縁25近傍に配置されてもよい。さらに、アンテナ40は、アース部43と接続して任意の方向に延伸する(不図示)の導電パターン(エレメント)を有してもよい。
【0055】
エレメント42は、給電部41から、ガラス板構成体20の左縁24及び上縁22に沿ってL字状に屈曲する線条の導体パターンである。エレメント42の上縁22に沿う部分は、非導電領域20Bと略平行に左右方向に延伸し、第1ガラス板51の平面視において、導電領域20Aと非導電領域20Bの境界20Cから5mm以上離れて配置されるとよく、10mm以上離れてもよく、15mm以上離れてもよい。また、該距離は離れすぎると導電領域20Aの面積が狭くなるので100mm以下であればよく、90mm以下であれば好ましく、80mm以下であればより好ましい。なお、境界20Cとは、図2に示す導電膜54の上縁22a部分であって、導電領域20Aと非導電領域20Bとの境界線である。
【0056】
エレメント42の長さLは、アンテナ40が受信する周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ、ガラス板構成体20の波長短縮率をk、としたとき、下の関係式(1)を満足するとよい。これにより、車両用アンテナ1のアンテナ特性を向上できる。具体的に、エレメント42の垂直部分はアンテナ特性の低域改善エレメントとして機能する。さらに、エレメント42の水平部分はアンテナ特性のピークシフトエレメントとして機能する。
0.70×(1/4)×λ×k ≦ L ≦ 1.30×(1/4)×λ×k …(1)
【0057】
また、長さLは、
0.72×(1/4)×λ×k ≦ L ≦ 1.28×(1/4)×λ×k …(1a)
を満足するとより好ましい。
また、長さLは、
0.74×(1/4)×λ×k ≦ L ≦ 1.26×(1/4)×λ×k …(1b)
を満足するとさらに好ましい。
【0058】
エレメント42の長さLは、エレメント42の上下方向に延びる部分の長さと、エレメント42の左右方向に延びる部分の長さとの合計である。アンテナ40が受信する周波数帯の電波の空気中の波長λは、例えば、アンテナ40がFM放送波(76MHz~108MHz)の電波を受信する場合、その中心周波数(92MHz)での空気中の波長は、約3.26mである。ガラス板構成体20の波長短縮率kは、例えば、0.64である。
【0059】
なお、エレメント42は、所定周波数帯の電波を受信可能であれば、L字状の導体パターンに限らず、非導電領域20Bにおいて任意のパターンを形成できる。例えば、エレメント42の導体パターンは、左縁24に沿った延長線上に開放端を有する直線状のエレメントでもよいし、導体パターンが分岐して2以上の開放端を有してもよい。また、給電部41及びエレメント42の少なくとも一部は、ガラス板構成体20の非導電領域20Bのみならず、誘電体である樹脂板10上に延伸又は配置されていてもよい。さらに、給電部41及びエレメント42が、樹脂板10上に配置される場合、ガラス板構成体20における、非導電領域20Bの有無については不問であり、例えば、ガラス板構成体20には導電領域20Aのみ有し、非導電領域20Bを有しなくてもよい。
【0060】
アース部43は、矩形状に形成された導体パターンであり、伝送線路2の外部導体2bと直接または接続線2cを介して接続されている。なお、アース部43の形状は、円形や他の多角形等の他の形状でもよい。アース部43は、ガラス板構成体20の導電領域20Aであって、ガラス板構成体20の左縁24近傍において、給電部41の下側に配置されているが、この配置に限らない。
【0061】
アース部43は、第1ガラス板51の平面視において、第2ガラス板52、中間膜53を挟み、導電膜54と重なり、導電膜54に容量結合されている。この構成によれば、ガラス板構成体20を取り付ける窓枠が樹脂板10であっても、ガラス板構成体20の構成要素の導電膜54からグランドを取ることができる。第1実施形態では、伝送線路2の内部導体2aをアンテナ40の給電部41に接続し、且つ、伝送線路2の外部導体2bをアンテナ40のアース部43に接続し、導電膜54と容量結合されたアース部43からグランドを取ることで、車両用アンテナ1の利得の低下を抑制している。
【0062】
以上の通り、第1実施形態の車両用アンテナ1は、第1主面51aと第2主面51bとを有する第1ガラス板51、及び、第2主面51b側に配置される導電膜54を含むガラス板構成体20と、第1ガラス板51の平面視において、ガラス板構成体20の周辺部21と重なる枠状の樹脂板10と、給電部41、給電部41と接続したエレメント42、及びアース部43を有するアンテナ40と、を備え、ガラス板構成体20は、第1ガラス板51の平面視において、導電膜54を含む導電領域20Aと、導電膜54を含まない非導電領域20Bと、を有し、アース部43は、導電膜54と電気的に接続され、給電部41及びエレメント42は、導電領域20A以外であって、非導電領域20B及び樹脂板10の少なくとも一方に配置される。この構成によれば、枠状の樹脂板10に取り付けられ、導電膜54を備えるガラス板構成体20において、アンテナ40は、所定周波数帯における電波を所望の利得で受信できる。
【0063】
また、第1実施形態では、非導電領域20Bは、第1ガラス板51の平面視において、ガラス板構成体20の端辺(上縁22)に沿って所定幅の帯状で延伸しており、エレメント42は、非導電領域20Bに配置される。この構成によれば、ガラス板構成体20の略全体に熱的/光学的な機能を付加しつつ、ガラス板構成体20の端辺に沿う端領域において線条のエレメント42を配置する非導電領域20Bを設けて、車両用アンテナ1の利得の低下を抑制できる。
【0064】
また、非導電領域20Bは、5mm~140mmの幅で形成されるとよい。これにより、エレメント42を配置するスペースを充分に確保できる。さらに、エレメント42は、非導電領域20Bの端辺と略平行に延伸し、第1ガラス板51の平面視において、導電領域20Aと非導電領域20Bの境界20Cから5mm以上離れて配置されるとよい。この構成によれば、エレメント42が導電領域20Aから影響を受け難くなる。
【0065】
また、第1実施形態では、エレメント42の長さLは、アンテナ40が受信する周波数帯の中心周波数における空気中の波長をλ、ガラス板構成体20の波長短縮率をk、としたとき、0.70×(1/4)×λ×k ≦ L ≦ 1.30×(1/4)×λ×kを満足するとよい。この構成によれば、車両用アンテナ1のアンテナ特性を向上できる。
【0066】
また、第1実施形態では、ガラス板構成体20は、第1ガラス板51の第2主面51b側に、樹脂を含む中間膜53、第2ガラス板52をこの順に有し、第2ガラス板52は、中間膜53側の第3主面52aと、中間膜53側とは反対側の第4主面52bとを有する。アンテナ40は、第2ガラス板52の第4主面52bに配置される。アンテナ40が、第2ガラス板52の第4主面52b(車内面)に配置されることで、アンテナ40を外部から保護できる。
【0067】
また、第1実施形態では、導電膜54は、シート抵抗が5Ω/□以下である。この構成によれば、導電膜54がアンテナ40のグランドとして充分に機能できる。また、導電膜54は、第1ガラス板51の第2主面51bに配置される熱線反射膜が挙げられる。この構成によれば、車内側に入射する太陽光などに含まれる熱線を効果的に反射できる。
【0068】
また、第1実施形態では、非導電領域20Bは、ガラス板構成体20を車両に取り付けたときに、水平方向に延伸する。また、非導電領域20Bは、ガラス板構成体20を車両に取り付けたときに、鉛直方向に対して0°~75°の範囲で傾く。この構成によれば、FM放送波やDAB規格のバンドIIIなどの垂直偏波を効果的に受信できる。
【0069】
〔第2実施形態〕
図4は、本発明の第2実施形態による車両用アンテナ1の分解斜視図である。図5は、本発明の第2実施形態による車両用アンテナ1の断面図である。なお、図4及び図5においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0070】
図4及び図5に示すように、第2実施形態の車両用アンテナ1は、中間膜53が、第1中間膜53aと第2中間膜53bと、を有し、導電膜54は、第1中間膜53aと第2中間膜53bとの間に配置される点で、上述した実施形態と異なる。第2実施形態の導電膜54は、例えば、交流電圧を印加することによって可視光透過率を制御できる調光フィルムに含まれる導体が挙げられる。なお、図4図5では省略しているが、調光フィルムには、外部から交流電圧を印加するハーネスが、ガラス板構成体20に接続されるように配置される。以下では、調光フィルムを例示するが、第1中間膜53aと第2中間膜53bとの間に配置される導電膜54としては、フィルムアンテナなどがある。
【0071】
調光フィルムは、一対の樹脂基板と、各々の対向する樹脂基板の主面に備えられた一対のITO(Indium Tin Oxide)、透明導電性ポリマー、金属層と誘電体層との積層膜、銀ナノワイヤー、及び、銀又は銅のメタルメッシュ等の導電膜と、一対の導電膜に挟持された調光層を有する。調光層は、光学異方性を有する液晶等の分子層である。分子層は、例えば、高分子分散型液晶(PDLC)、高分子ネットワーク型液晶(PNLC)、ゲストホスト型液晶が挙げられる。あるいは、光学異方性を有する分子として、ヨウ素等を用いてよい。調光フィルムは、このような分子層を含む、懸濁粒子デバイス(Suspended Particle Device:SPD)を有してもよい。
【0072】
図4及び図5において、導電膜54は便宜上、1層で表示しているが、調光フィルムの場合、一対の導電膜を指す。さらに、第1中間膜53a及び第2中間膜53bは、例えば、透明のポリビニルブチラール(PVB)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの接着層であり、第1ガラス板51の第2主面51bと第2ガラス板52の第3主面52aに配置される。第1中間膜53a及び第2中間膜53bは、第1ガラス板51、導電膜54、及び第2ガラス板52を接着して、これらの積層構成によって合わせガラスとなる、ガラス板構成体20を形成している。
【0073】
アンテナ40は、給電部41、エレメント42、及びアース部43を有する。給電部41及びエレメント42は、ガラス板構成体20の非導電領域20Bに配置されている。また、アース部43は、ガラス板構成体20の導電領域20Aに配置されている。第2実施形態においても、図示しない伝送線路2の内部導体2aがアンテナ40の給電部41に接続され、伝送線路2の外部導体2bがアンテナ40のアース部43に接続されている。これにより、調光フィルムの導電膜54から容量結合によりグランドを取ることで、車両用アンテナ1の利得の低下を抑制できる。
【0074】
以上の通り、第2実施形態の車両用アンテナ1では、中間膜53は、第1中間膜53aと第2中間膜53bと、を有し、導電膜54は、第1中間膜53aと第2中間膜53bとの間に配置される。導電膜54は、調光フィルムに含まれる導体である。この構成によれば、ガラス板構成体20の可視光線透過率をアクティブに変化しつつ、この調光フィルムに含まれる導電膜54を用いてアンテナ40のグランドを取ることができる。
【0075】
〔第3実施形態〕
図6は、本発明の第3実施形態による車両用アンテナ1の分解斜視図である。図7は、本発明の第3実施形態による車両用アンテナ1の断面図である。なお、図6及び図7においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0076】
図6及び図7に示すように、第3実施形態の車両用アンテナ1は、導電膜54が、第2ガラス板52の第3主面52aに配置されている点で、上述した実施形態と異なる。第3実施形態のガラス板構成体20は、第1ガラス板51の第2主面51b側に、中間膜53、導電膜54、及び第2ガラス板52を、この順に有している。導電膜54は、低放射用の導電膜(Low-E(Low Emissivity)コート)が挙げられる。
【0077】
ここで低放射とは、放射による伝熱を低減することをいう。Low-Eコートなどの低放射膜は、放射による伝熱を抑制することで、断熱性を確保する。低放射膜は、一般的なものであってよく、例えば、透明誘電体膜、赤外線反射膜、及び透明誘電体膜をこの順で含む積層膜であってよい。透明誘電体膜としては、金属酸化物や金属窒化物が代表的である。金属酸化物としては、酸化亜鉛や酸化スズが代表的である。赤外線反射膜としては、金属膜が代表的である。金属膜としては、銀(Ag)が代表的である。ここで、赤外線反射膜は、透明誘電体膜同士の間に、1層以上形成されてよい。
【0078】
この導電膜54は、シート抵抗が5Ω/□より高い場合が多く、アンテナ40のグランドとして機能し難い特性がある。このため、第3実施形態では、第1ガラス板51の平面視において、導電領域20Aの外周に導電膜54よりも低抵抗となる導電枠54aを備えるとよい。導電枠54aは、第2ガラス板52の第3主面52a側にある枠状導体であり、例えば、第2ガラス板52に対して第3主面52a側に導電膜54と同一層に配置されてもよいし、導電膜54に対して第2ガラス板52の第3主面52aとは反対側(中間膜53側)に配置されてもよい。
【0079】
導電枠54aは、第3主面52aに接しても、不図示の誘電体を介して第3主面52a側に配置されてもよく、導電膜54に接してもよい。導電枠54aは、第1ガラス板51の平面視で導電膜54の外縁に沿った内縁を有する。導電枠54aは、例えば、銅、銀などの金属材料によって形成されているが、これらに限らず、透明又は半透明となる導電材料を用いてもよい。
【0080】
導電枠54aのシート抵抗の上限値は、導電膜54のシート抵抗よりも低ければよく、例えば、2Ω/□以下がよく、1Ω/□以下がより好ましい。このように、導電枠54aと導電膜54の電気抵抗の大小については、例えば、シート抵抗を指標にして比較できる。なお、導電枠54aの幅は、適宜設計できるが、例えば、1mm~20mmとしてもよく、2mm~15mmとしてもよく、3mm~10mmとしてもよく、3mm~7mmとしてもよい。
【0081】
アンテナ40は、給電部41、エレメント42、及びアース部43を有し、給電部41及びエレメント42は、ガラス板構成体20の非導電領域20Bに配置されている。また、アース部43は、ガラス板構成体20の導電領域20Aであって、第1ガラス板51の平面視で、導電枠54aに重なって配置される。なお、アース部43から接地エレメントを延伸させてもよく、この接地エレメントが、第1ガラス板51の平面視で、導電枠54aに重なって配置されてもよい。第3実施形態においても、図示しない伝送線路2の内部導体2aがアンテナ40の給電部41に接続され、伝送線路2の外部導体2bがアンテナ40のアース部43に接続されている。アース部43が、導電枠54aと容量結合してグランドを取ることで、車両用アンテナ1の利得の低下を抑制できる。
【0082】
以上の通り、第3実施形態の車両用アンテナ1では、導電膜54は、シート抵抗が5Ω/□より高いLow-Eコートなどの低放射膜であり、第1ガラス板51の平面視において、導電領域20Aの外周に導電膜54よりも低抵抗となる導電枠54aを有する。このように、導電枠54aが導電膜54よりも低い電気抵抗を有することで、導電膜54の周囲の導電枠54aに電流が流れやすくなるので、グランドとして充分に機能させることができる。したがって、電気抵抗が比較的高い導電膜54を使用しても、高利得となる車両用アンテナ1が得られる。
なお、上述した第2実施形態の調光フィルムが、高抵抗の導電膜54を使用する場合、第3実施形態と同様に低抵抗の導電枠54aを備えてもよい。この場合、導電枠54aは、調光フィルムの給電線をショートさせないように、第1ガラス板51の第2主面51b、第2ガラス板52の第3主面52aまたは第4主面52bに配置すればよい。なお、導電枠54aは、絶縁シートなどで電気的に分離できれば、又は、調光フィルムの導電膜54の周囲に枠を設けることができれば、調光フィルムと同一面に配置してもよい。
【0083】
〔第4実施形態〕
図8は、本発明の第4実施形態による車両用アンテナ1の分解斜視図である。なお、図8においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0084】
図8に示すように、第4実施形態の車両用アンテナ1は、ガラス板構成体20が、二枚以上のガラス板を用いた合わせガラスではなく、一枚の第1ガラス板51と、導電膜54とで形成されている点で、上述した実施形態と異なる。第4実施形態では、第1ガラス板51の第2主面51bに、導電膜54が配置されている。また、第4実施形態では、ガラス板構成体20に複数本のヒータ線32を備えたデフォッガ30が設けられていない。ただし、導電膜54そのものが、ガラス板構成体20を加熱できる平面状の導電層を形成して(ヒータ線32を備えない)デフォッガとして機能させてもよい。
【0085】
第4実施形態では、第1ガラス板51の第2主面51bに、遮光部26、給電部41及びエレメント42が形成されている。第4実施形態では、伝送線路2の内部導体2aがアンテナ40の給電部41に接続され、伝送線路2の外部導体2bが導電膜54に設けられた図示しないアース部43に直に接続されている。この構成によれば、導電膜54から直にグランドを取ることで、車両用アンテナ1の利得の低下を抑制できる。
【0086】
以上、本発明の実施形態による車両用窓ガラスについて説明したが、本発明は上記実施形態に制限されず、本発明の範囲内で自由に変更が可能である。例えば、各実施形態の一部又は全部を組み合わせて実施してもよい。
【実施例0087】
以下、実施例により本発明の効果をより明らかにする。なお、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施できる。
【0088】
[第1実施例]
図9は、本発明の第1実施例による車両用アンテナ1の平面図である。なお、図9においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0089】
第1実施例の車両用アンテナ1は、樹脂板10と、ガラス板構成体20と、アンテナ40と、を備える。また、ガラス板構成体20は、第1ガラス板51と、導電膜54と、を備える、上述した図8に示すガラス板構成体20のモデルである。すなわち、第1実施例の車両用アンテナ1は、導電膜54とアンテナ40のアース部43を直接接続している。
【0090】
この車両用アンテナ1は、以下の寸法を備える。樹脂板10は、左右方向の寸法と、上下方向の寸法が、それぞれ2,000mmである。樹脂板10の開口11は、樹脂板10の中心に配置され、左右方向の寸法と、上下方向の寸法が、それぞれ1,000mmである。ガラス板構成体20の非導電領域20Bの幅Wは、50mmであり、導電膜54のシート抵抗は、1Ω/□とした。
【0091】
図10は、第1実施例による車両用アンテナ1のFM放送波の周波数帯におけるアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。図10及び後述する図11図13図14図16図17では、横軸に周波数[MHz]、縦軸にアンテナ利得[dB]をとった。図10及び後述する図11図13図14の「H」とは「水平偏波」のアンテナ利得を意味し、「V」とは「垂直偏波」のアンテナ利得を意味し、「ABS」とは「水平偏波」と「垂直偏波」の合計のアンテナ利得を意味する。
【0092】
図10の「La=550」とは、図10によるシミュレーションにおいて、アンテナ40のエレメント42の給電部41から開放端までの長さを550mmに設定したことを意味する。Laは、アンテナ40の垂直偏波の特性に合わせて調整している。図10を参照すると、FM放送波の垂直偏波のアンテナ利得は、平均で-7.78dBと実用レベルで高い値になることが確認できた。すなわち、導電膜54をアンテナ40のグランドとして利用することで高い感度を得ることが確認できた。
【0093】
図11は、第1実施例による車両用アンテナ1のDAB規格のバンドIIIにおけるアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図11の「La=170」とは、図11によるシミュレーションにおいて、アンテナ40のエレメント42の給電部41から開放端までの長さを170mmに設定したことを意味する。Laは、アンテナ40の垂直偏波の特性に合わせて調整している。図11を参照すると、DAB規格のバンドIIIの垂直偏波のアンテナ利得は、平均で-5.65dBと実用レベルで高い値になることが確認できた。すなわち、導電膜54をアンテナ40のグランドとして利用することで高い感度を得ることが確認できた。
【0094】
[第2実施例]
図12は、本発明の第2実施例による車両用アンテナ1の平面図である。なお、図12においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0095】
第2実施例の車両用アンテナ1は、樹脂板10と、ガラス板構成体20と、アンテナ40と、を備える。また、ガラス板構成体20は、第1ガラス板51と第2ガラス板52との間に導電膜54を備える、上述した図2に示すガラス板構成体20のモデルである。すなわち、第2実施例の車両用アンテナ1は、導電膜54とアンテナ40のアース部43を容量結合で電気的に接続している。なお、第2実施例では、アース部43から下側に延び、導電膜54と容量結合する接地エレメント43aを備えている。
【0096】
この車両用アンテナ1は、以下の寸法を備える。樹脂板10は、左右方向の寸法と、上下方向の寸法が、それぞれ2,000mmである。樹脂板10の開口11は、樹脂板10の中心に配置され、左右方向の寸法と、上下方向の寸法が、それぞれ1,000mmである。ガラス板構成体20の非導電領域20Bの幅は、50mmである。導電膜54のシート抵抗は、1Ω/□である。
【0097】
図13は、第2実施例による車両用アンテナ1のFM放送波の周波数帯におけるアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図13の「La=550」とは、図13によるシミュレーションにおいて、アンテナ40のエレメント42の給電部41から開放端までの長さを550mmに設定したことを意味する。Laは、アンテナ40の垂直偏波の特性に合わせて調整している。図13を参照すると、FM放送波の垂直偏波のアンテナ利得は、平均で-7.78dBと実用レベルで高い値になることが確認できた。すなわち、合わせガラス内に配置された導電膜54をアンテナ40のグランドとして利用することで高いアンテナ感度を得ることが確認できた。
【0098】
図14は、第2実施例による車両用アンテナ1のDAB規格のバンドIIIにおけるアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図14の「La=180」とは、図14によるシミュレーションにおいて、アンテナ40のエレメント42の給電部41から開放端までの長さを180mmに設定したことを意味する。Laは、アンテナ40の垂直偏波の特性に合わせて調整している。図14を参照すると、DAB規格のバンドIIIの垂直偏波のアンテナ利得は、平均で-5.89dBと実用レベルで高い値になることが確認できた。すなわち、合わせガラス内に配置された導電膜54をアンテナ40のグランドとして利用することで高いアンテナ感度を得ることが確認できた。
【0099】
[第3実施例]
図15は、本発明の第3実施例による車両用アンテナ1の平面図である。なお、図15においては、上述した実施形態と同様の構成については同一の符号を付してある。
【0100】
第3実施例の車両用アンテナ1は、樹脂板10と、ガラス板構成体20と、アンテナ40と、を備える。また、ガラス板構成体20は、第1ガラス板51と第2ガラス板52との間に導電枠54aを有する導電膜54を備える、上述した図6に示すガラス板構成体20のモデルである。すなわち、第3実施例の車両用アンテナ1は、導電膜54より低抵抗の導電枠54aとアンテナ40のアース部43を直に接続している。
【0101】
この車両用アンテナ1は、以下の寸法を備える。樹脂板10は、左右方向の寸法と、上下方向の寸法が、それぞれ2,000mmである。樹脂板10の開口11は、樹脂板10の中心に配置され、左右方向の寸法と、上下方向の寸法が、それぞれ1,000mmである。ガラス板構成体20の非導電領域20Bの幅は、50mmである。導電膜54のシート抵抗は、15Ω/□である。導電枠54aのシート抵抗は、0Ω/□(PEC:完全電気導体)であり、導電枠54aの幅を10mmとした。
【0102】
図16は、第3実施例による車両用アンテナ1のFM放送波の周波数帯における垂直偏波のアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。図16及び後述する図17の「w/oFrame」とは「導電枠54aが無い」比較例のアンテナ利得を意味し、「w/Frame」とは「導電枠54aが有る」実施例3のアンテナ利得を意味する。
図16の「La=550」とは、図16によるシミュレーションにおいて、アンテナ40のエレメント42の給電部41から開放端までの長さを550mmに設定したことを意味する。Laは、アンテナ40の垂直偏波の特性に合わせて調整している。図16を参照すると、FM放送波の垂直偏波のアンテナ利得は、「導電枠54aが有る」状態において平均で-6.35dBと実用レベルで高い値になることが確認できた。すなわち、高抵抗の導電膜54をアンテナ40のグランドとしてそのまま利用すると感度が低下してしまうが、低抵抗の導電枠54aで導電膜54の周囲を囲うことでアンテナ感度を改善できることを確認できた。
【0103】
図17は、第3実施例による車両用アンテナ1のDAB規格のバンドIIIにおける垂直偏波のアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図17の「La=170」とは、図17によるシミュレーションにおいて、アンテナ40のエレメント42の給電部41から開放端までの長さを170mmに設定したことを意味する。Laは、アンテナ40の垂直偏波の特性に合わせて調整している。図17を参照すると、DAB規格のバンドIIIの垂直偏波のアンテナ利得は、「導電枠54aが有る」状態において平均で-6.41dBと実用レベルで高い値になることが確認できた。すなわち、高抵抗の導電膜54をアンテナ40のグランドとしてそのまま利用すると感度が低下してしまうが、低抵抗の導電枠54aで導電膜54の周囲を囲うことでアンテナ感度を改善できることを確認できた。
【0104】
FM放送波の中心周波数は、92MHzであり、その中心波長(λ)は、約3,258mmとなる。また、DAB規格のバンドIIIの中心周波数は、207MHzであり、その中心波長(λ)は、1,448mmとなる。また、ガラス板構成体20の波長短縮率(k)が0.64とすると、第1実施例~第3実施例のアンテナ40のエレメント42の長さLは、上述した(1)の関係式及び範囲において、好ましい長さに設定されている。
このように、第1実施例~第3実施例によれば、所定周波数帯における電波を所望の利得で受信できる車両用アンテナ1を提供できた。
【0105】
[第4実施例]
第4実施例は、上述した図15に示すモデルにおいて、導電膜54のシート抵抗を変化させたときのアンテナ利得を測定したものである。なお、導電枠54aのシート抵抗は一定である。
【0106】
図18は、第4実施例による車両用アンテナ1のFM放送波の周波数帯における垂直偏波のアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。図18及び後述する図19では、横軸にシート抵抗[Ω/□]、縦軸に垂直偏波の平均利得[dB]をとった。
図18の「La=550」とは、図18によるシミュレーションにおいて、アンテナ40のエレメント42の給電部41から開放端までの長さを550mmに設定したことを意味する。Laは、アンテナ40の垂直偏波の特性に合わせて調整している。図18を参照すると、FM放送波の垂直偏波のアンテナ利得が3dB低下するシート抵抗値は、100Ω/□であることが確認できた。このため、FM放送波の周波数帯の電波を受信する場合、上述した導電枠54aを有する導電膜54のシート抵抗は、100Ω/□以下が好ましいことが確認できた。
【0107】
図19は、第4実施例による車両用アンテナ1のDAB規格のバンドIIIにおける垂直偏波のアンテナ利得のシミュレーション結果を示すグラフである。
図19の「La=170」とは、図19によるシミュレーションにおいて、アンテナ40のエレメント42の給電部41から開放端までの長さを170mmに設定したことを意味する。Laは、アンテナ40の垂直偏波の特性に合わせて調整している。図19を参照すると、DAB規格のバンドIIIの垂直偏波のアンテナ利得が3dB低下するシート抵抗値は、60Ω/□であることが確認できた。このため、DAB規格のバンドIIIの電波を受信する場合、上述した導電枠54aを有する導電膜54のシート抵抗は、60Ω/□以下が好ましいことが確認できた。
【0108】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。
【0109】
例えば、導電膜54として、Low-E膜、熱線反射膜、調光フィルムを例示したが、フィルムヒーターであってもよい。フィルムヒーターは、例えば、合わせガラスの間に配置され、フィルム状の導電膜の両側に電流を供給する一対のバスバーを有する。
また、例えば、第3実施形態では、アース部43を、導電膜54の周囲を囲う導電枠54aと容量結合させたが、アース部43と導電枠54aを容量結合させてもよい。
【符号の説明】
【0110】
1 車両用アンテナ
2 伝送線路
2a 内部導体
2b 外部導体
2c 接続線
10 樹脂板
10a 外表面
10b 内表面
11 開口
12 収容溝
13 接着剤
20 ガラス板構成体
20A 導電領域
20B 非導電領域
20C 境界
21 周辺部
22 上縁
22a 上縁
23 下縁
24 左縁
25 右縁
26 遮光部
30 デフォッガ
31a 第1バスバー
31b 第2バスバー
32 ヒータ線
40 アンテナ
41 給電部
42 エレメント
43 アース部
43a 接地エレメント
51 第1ガラス板
51a 第1主面
51b 第2主面
52 第2ガラス板
52a 第3主面
52b 第4主面
53 中間膜
53a 第1中間膜
53b 第2中間膜
54 導電膜
54a 導電枠
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19