(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002084
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】金属酸化物膜形成性組成物、金属酸化物膜形成性組成物の製造方法、及び金属酸化物膜形成性組成物を用いた金属酸化物膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/316 20060101AFI20231228BHJP
C09D 1/04 20060101ALI20231228BHJP
C09D 7/40 20180101ALI20231228BHJP
【FI】
H01L21/316 U
C09D1/04
C09D7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101066
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山内 賢一
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】高橋 道仁
(72)【発明者】
【氏名】原口 咲栄子
(72)【発明者】
【氏名】山之内 篤史
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【テーマコード(参考)】
4J038
5F058
【Fターム(参考)】
4J038AA011
4J038HA161
4J038PB09
4J038PC03
5F058BA20
5F058BB05
5F058BB06
5F058BC03
5F058BF46
5F058BH01
5F058BH20
(57)【要約】
【課題】洗浄後の残留金属を低減することができる金属酸化物膜形成性組成物、金属酸化物膜形成性組成物の製造方法、及び金属酸化物膜形成性組成物を用いた金属酸化物膜の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、金属酸化物ナノ粒子と、キャッピング剤と、ポリカルボン酸化合物と、溶剤と、を含有し、前記金属酸化物ナノ粒子のサイズは、5nm以下であり、前記キャッピング剤は、アルコキシシラン、フェノール、アルコール、カルボン酸、及びカルボン酸ハライドからなる群から選択される少なくとも1種を含み、前記ポリカルボン酸化合物において、任意の2個のカルボキシ基を連結する分子鎖の少なくとも1個は、ヘテロ原子を有し又は有しない側鎖中にアルキル基を有し、前記金属酸化物膜形成性組成物の固形分において、無機分質量の割合が25質量%以上である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物ナノ粒子、キャッピング剤、ポリカルボン酸化合物、及び溶剤を含有する金属酸化物膜形成性組成物であり、
前記ポリカルボン酸化合物は、前記キャッピング剤として含まれるか、又は、前記キャッピング剤とは別に含まれており、
前記金属酸化物ナノ粒子のサイズは、5nm以下であり、
前記キャッピング剤は、アルコキシシラン、フェノール、アルコール、カルボン酸、及びカルボン酸ハライドからなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記ポリカルボン酸化合物において、任意の2個のカルボキシ基を連結する分子鎖の少なくとも1個は、ヘテロ原子を有し又は有しない側鎖中にアルキル基を有し、
前記金属酸化物膜形成性組成物の固形分において、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である金属酸化物膜形成性組成物。
【請求項2】
前記金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属は、亜鉛、イットリウム、ハフニウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、タンタル、チタン、ケイ素、アルミニウム、アンチモン、錫、インジウム、タングステン、銅、バナジウム、クロム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、スカンジウム、及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の金属酸化物膜形成性組成物。
【請求項3】
前記ポリカルボン酸化合物は、側鎖を有するコハク酸であって、該側鎖は、ヘテロ原子を有し又は有せず、かつ、アルキル基を有する請求項1に記載の金属酸化物膜形成性組成物。
【請求項4】
前記コハク酸は、スピクリスポール酸である請求項3に記載の金属酸化物膜形成性組成物。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の金属酸化物膜形成性組成物の製造方法であって、
前記金属酸化物ナノ粒子、前記キャッピング剤、及び前記溶剤を含有する第一の分散液と、前記ポリカルボン酸化合物及び前記溶剤を含有するポリカルボン酸化合物溶液と、前記溶剤と、を混合する第一の混合工程、又は、
前記金属酸化物ナノ粒子、前記ポリカルボン酸化合物、及び前記溶剤を含有する第二の分散液と、前記溶剤と、を混合する第二の混合工程
を含む製造方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載の金属酸化物膜形成性組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と
前記塗膜を加熱する加熱工程と、
を含む、金属酸化物膜の製造方法。
【請求項7】
更に、エッジリンス及びバックリンスの少なくとも一方を行う洗浄工程を含む請求項6に記載の金属酸化物膜の製造方法。
【請求項8】
前記金属酸化物膜が犠牲膜又は永久膜である請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物膜形成性組成物、金属酸化物膜形成性組成物の製造方法、及び金属酸化物膜形成性組成物を用いた金属酸化物膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイス製造等におけるエッチング加工では、フォトレジストや電子線レジスト等のレジスト材料を被エッチング基体表面に塗布し、リソグラフィー技術によってパターン形成したレジスト膜をエッチングマスクとしてエッチングを行うことにより、被エッチング基体に所定のパターンを形成している。
【0003】
ここで、被エッチング基体のエッチングレートによっては、被エッチング基体に対するレジスト膜のエッチング選択性の問題から、レジスト膜がエッチングマスクとして十分に機能しない場合がある。このため、そのような被エッチング基体をエッチングする場合には、ハードマスクと称されるエッチングマスクを設け、被エッチング基体に対するエッチングマスクのエッチング選択性を高く維持することが行われている。ハードマスクとしては、例えば、酸化ジルコニウムナノ粒子等の金属酸化物ナノ粒子を含む金属酸化物膜からなるハードマスクが公知である(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
金属酸化物ナノ粒子を含む従来の金属酸化物膜は、例えばスピンナーを用いて金属酸化物ナノ粒子を含む組成物を基板の表面に塗布し、得られた塗膜を加熱して形成される。この組成物は基板の端面(エッジ)に付着したり、基板の裏面に回り込んで付着したりすることがあるため、エッジリンスやバックリンス等で除去することが行われている。本発明者らが検討したところ、従来の金属酸化物ナノ粒子を含む組成物では、エッジリンスやバックリンスを行っても、金属酸化物ナノ粒子が除去しきれておらず、装置を汚染することが判明した。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、洗浄後の残留金属を低減することができる金属酸化物膜形成性組成物、金属酸化物膜形成性組成物の製造方法、及び金属酸化物膜形成性組成物を用いた金属酸化物膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、所定のサイズの金属酸化物ナノ粒子と、所定のキャッピング剤と、溶剤と、を含有し、前記金属酸化物膜形成性組成物の固形分において、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である金属酸化物膜形成性組成物において、所定のポリカルボン酸化合物を含有させることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
[1]金属酸化物ナノ粒子、キャッピング剤、ポリカルボン酸化合物、及び溶剤を含有する金属酸化物膜形成性組成物であり、
前記ポリカルボン酸化合物は、前記キャッピング剤として含まれるか、又は、前記キャッピング剤とは別に含まれており、
前記金属酸化物ナノ粒子のサイズは、5nm以下であり、
前記キャッピング剤は、アルコキシシラン、フェノール、アルコール、カルボン酸、及びカルボン酸ハライドからなる群から選択される少なくとも1種を含み、
前記ポリカルボン酸化合物において、任意の2個のカルボキシ基を連結する分子鎖の少なくとも1個は、ヘテロ原子を有し又は有しない側鎖中にアルキル基を有し、
前記金属酸化物膜形成性組成物の固形分において、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である金属酸化物膜形成性組成物。
【0009】
[2]前記金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属は、亜鉛、イットリウム、ハフニウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、タンタル、チタン、ケイ素、アルミニウム、アンチモン、錫、インジウム、タングステン、銅、バナジウム、クロム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、スカンジウム、及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種である上記[1]に記載の金属酸化物膜形成性組成物。
【0010】
[3]前記ポリカルボン酸化合物は、側鎖を有するコハク酸であって、該側鎖は、ヘテロ原子を有し又は有せず、かつ、アルキル基を有する上記[1]又[2]に記載の金属酸化物膜形成性組成物。
【0011】
[4]前記コハク酸は、スピクリスポール酸である上記[3]に記載の金属酸化物膜形成性組成物。
【0012】
[5]上記[1]から[4]のいずれか1つに記載の金属酸化物膜形成性組成物の製造方法であって、
前記金属酸化物ナノ粒子、前記キャッピング剤、及び前記溶剤を含有する第一の分散液と、前記ポリカルボン酸化合物及び前記溶剤を含有するポリカルボン酸化合物溶液と、前記溶剤と、を混合する第一の混合工程、又は、
前記金属酸化物ナノ粒子、前記ポリカルボン酸化合物、及び前記溶剤を含有する第二の分散液と、前記溶剤と、を混合する第二の混合工程
を含む製造方法。
【0013】
[6]上記[1]から[4]のいずれか1つに記載の金属酸化物膜形成性組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と
前記塗膜を加熱する加熱工程と、
を含む、金属酸化物膜の製造方法。
【0014】
[7]更に、エッジリンス及びバックリンスの少なくとも一方を行う洗浄工程を含む上記[6]に記載の金属酸化物膜の製造方法。
【0015】
[8]前記金属酸化物膜が犠牲膜又は永久膜である上記[6]又は[7]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、洗浄後の残留金属を低減することができる金属酸化物膜形成性組成物、金属酸化物膜形成性組成物の製造方法、及び金属酸化物膜形成性組成物を用いた金属酸化物膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<金属酸化物膜形成性組成物>
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、金属酸化物ナノ粒子と、キャッピング剤と、ポリカルボン酸化合物と、溶剤と、を含有する。本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、洗浄後の残留金属を低減することができる。
【0018】
このような効果が得られるメカニズムは必ずしも明らかではないが、本発明者らは次の様なものによるものと推定している。
すなわち、上記のポリカルボン酸化合物において、任意の2個のカルボキシ基を連結する分子鎖の少なくとも1個は、ヘテロ原子を有し又は有しない側鎖中にアルキル基を有するため、ポリカルボン酸化合物がキャッピング剤とは別に含まれる場合、キャッピング剤に覆われた金属酸化物ナノ粒子よりも先に上記化合物が基板に吸着し、上記化合物のアルキル基を有する側鎖が基板に垂直に配置する。これにより、キャッピング剤に覆われた金属酸化物ナノ粒子が基板に吸着することが抑制され、洗浄工程の際に金属酸化物ナノ粒子の除去が促進されると推定している。
また、ポリカルボン酸化合物がキャッピング剤として含まれる場合は、金属酸化物ナノ粒子を覆うポリカルボン酸化合物のアルキル基を有する側鎖により、金属酸化物ナノ粒子の基板への吸着が抑制され、洗浄工程の際に金属酸化物ナノ粒子の除去が促進されると推定している。
【0019】
前記金属酸化物膜形成性組成物の固形分において、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合は、25質量%以上であり、好ましく30質量%以上であり、より好ましく40質量%以上である。当該割合が上記の範囲内であると、無機分質量の割合を高く設定でき、その結果、得られる金属酸化物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。当該割合の上限は、特に限定されず、90質量%でよく、80質量%でも75質量%でもよい。
【0020】
[金属酸化物ナノ粒子]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、金属酸化物ナノ粒子を含有する。なお、金属酸化物ナノ粒子は金属酸化物からなり、キャッピング剤は含まない。金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属としては、特に限定されず、例えば、亜鉛、イットリウム、ハフニウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、タンタル、チタン、ケイ素、アルミニウム、アンチモン、錫、インジウム、タングステン、銅、バナジウム、クロム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、スカンジウム、マグネシウムが挙げられ、製膜性、安定性等の観点から、亜鉛、イットリウム、ハフニウム、及びジルコニウムが好ましく、ジルコニウムがより好ましい。上記金属は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0021】
金属酸化物ナノ粒子は、金属酸化物ナノクラスターであることが好ましい。本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物が、キャッピング剤とともに、金属酸化物ナノクラスターを含有すると、得られる金属酸化物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。本明細書において、金属酸化物ナノクラスターとは、金属酸化物の集合体であって、金属酸化物から形成される複数の面から構成される集合体をいう。
【0022】
金属酸化物ナノクラスターに対するX線回折測定により、上記の面に相当する回折ピークが検出される。金属酸化物ナノクラスターは、結晶、微結晶、又は非晶質を含んでもよい。金属酸化物ナノクラスターに含まれる成分に応じて、金属酸化物ナノクラスターのX線回折パターンには、金属原子の面(結晶面)に起因するピーク、ブロードな盛り上がり、又はブロードなハローパターンが検出される。ある試料のX線回折パターンにピークのみならず、ブロードな盛り上がりやブロードなハローパターンさえも検出されない場合、その試料には、金属酸化物ナノクラスターが含まれないと、本明細書では判断するものとする。
【0023】
金属酸化物ナノ粒子のサイズは、5nm以下であり、好ましくは4nm以下であり、より好ましくは3nm以下である。金属酸化物ナノ粒子のサイズの下限は、特に限定されず、例えば、0.5nm以上でよく、1nm以上でも2nm以上でもよい。金属酸化物ナノ粒子のサイズが5nmを超えると、得られる金属酸化物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されにくいため、450℃の高温において本焼成した際に面内均一性が低くなりやすいと考えられ、結果として、本焼成後の金属酸化物膜をドライエッチングにおけるハードマスクとして使用した場合に、均一にドライエッチングを行うことが困難となりやすい。本明細書において、金属酸化物ナノ粒子のサイズとは、X線散乱強度分布測定により検出されたスペクトルにおける散乱ピークの半値幅からHalder-Wagner法で算出された値をいう。
【0024】
金属酸化物ナノ粒子の使用量は特に限定されず、金属酸化物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、45~75質量%であり、好ましくは50~72質量%である。金属酸化物ナノ粒子の使用量が上記の範囲内であると、得られる金属酸化物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。
【0025】
[キャッピング剤]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物において、金属酸化物ナノ粒子の一部又は全部は、キャッピング剤に覆われているものと推測される。キャッピング剤は、アルコキシシラン、フェノール、アルコール、カルボン酸、及びカルボン酸ハライドからなる群から選択される少なくとも1種を含む。本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物が、金属酸化物ナノ粒子とともに、キャッピング剤を含有すると、得られる金属酸化物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。
【0026】
キャッピング剤の具体例としては、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェネチルフェニルトリメトキシシラン、フェネチルエチルトリエトキシシラン、3-{2-メトキシ[ポリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリメトキシシラン、3-{2-メトキシ[ポリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリエトキシシラン、3-{2-メトキシ[トリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリメトキシシラン、3-{2-メトキシ[トリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、1-ヘキセニルトリメトキシシラン,1-ヘキセニルトリエトキシシラン、1-オクテニルトリメトキシシラン、1-オクテニルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ヘプタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、オレイルアルコール、n-ドデシルアルコール、n-オクタデカノール、ベンジルアルコール、フェノール、及びトリエチレングリコールモノメチルエーテル等のフェノール類又はアルコール類;オクタン酸、酢酸、プロピオン酸、2-[2-(メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、オレイン酸、ラウリン酸、安息香酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、スピクリスポール酸等のカルボン酸類;及びこれらのカルボン酸類の酸クロライド等の、これらのカルボン酸類のカルボン酸ハライド類が挙げられ、好ましくは、フェノール類、アルコール類、又はカルボン酸類として挙げた化合物である。
【0027】
キャッピング剤の使用量は特に限定されず、金属酸化物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、10~35質量%であり、好ましくは18~28質量%である。キャッピング剤の使用量が上記の範囲内であると、有機分質量の割合が高くなりすぎず、その結果、得られる金属酸化物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。
【0028】
前記金属酸化物膜形成性組成物の固形分において、前記金属酸化物ナノ粒子と前記キャッピング剤との合計に対する前記金属酸化物ナノ粒子の質量比は、例えば、50質量%以上であり、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更により好ましくは65質量%以上である。上記質量比の上限は、例えば、95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。
【0029】
[ポリカルボン酸化合物]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、ポリカルボン酸化合物を含有する。ポリカルボン酸化合物において、任意の2個のカルボキシ基を連結する分子鎖の少なくとも1個は、ヘテロ原子を有し又は有しない側鎖中にアルキル基を有する。このようなポリカルボン酸化合物を含有することにより、洗浄後の残留金属を低減することができる。
【0030】
ポリカルボン酸化合物は、キャッピング剤として含まれるか、又は、キャッピング剤とは別に含まれる。キャッピング剤として含まれる場合、本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物において、金属酸化物ナノ粒子の一部又は全部は、ポリカルボン酸化合物に覆われているものと推測される。なお、キャッピング剤とは別に含まれるとは、キャッピング剤(ポリカルボン酸化合物を除く)とポリカルボン酸化合物の両方が含まれることを意味する。
【0031】
ヘテロ原子としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子が挙げられる。
ヘテロ原子を有し又は有せず、かつ、アルキル基を有する側鎖としては、-X-Rで表される基が挙げられる。Xは、単結合、又は、-O-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-NH-、-CONH-、-NHCO-、-NHCONH-、-S-、-SO-、及び-SO2-からなる群より選択される2価の基を表す。Rは、アルキル基を表す。Rに係るアルキル基としては、直鎖状、分枝状もしくは環状のいずれであってもよいが、直鎖状が好ましい。また、Rに係るアルキル基としては、炭素原子数1以上15以下(好ましくは炭素原子数6以上14以下)のアルキル基が挙げられ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基等が挙げられる。
【0032】
ポリカルボン酸化合物が有するカルボキシ基の数は、特に限定されず、2つ以上であればよいが、2つ又は3つが好ましく、2つがより好ましい。
【0033】
ポリカルボン酸化合物としては、側鎖を有する脂肪族ジカルボン酸であって、該側鎖が、ヘテロ原子を有し又は有せず、かつ、アルキル基を有するものが好ましい。脂肪族ジカルボン酸としては、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸等が挙げられ、なかでも、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸が好ましく、コハク酸がより好ましい。
【0034】
側鎖を有するコハク酸であって、該側鎖が、ヘテロ原子を有し又は有せず、かつ、アルキル基を有するものとしては、2-メチルコハク酸、2-エチルコハク酸、2-プロピルコハク酸、2-ブチルコハク酸、2-ペンチルコハク酸、2-ヘキシルコハク酸、2-ヘプチルコハク酸、2-オクチルコハク酸、2-ノニルコハク酸、2-デシルコハク酸等;2,3-ジメチルコハク酸、2,3-ジエチルコハク酸、2,3-ジプロピルコハク酸、2,3-ジブチルコハク酸、2,3-ジペンチルコハク酸、2,3-ジヘキシルコハク酸、2,3-ジヘプチルコハク酸、2,3-ジオクチルコハク酸、2,3-ジノニルコハク酸、2,3-ジデシルコハク酸等;スピクリスポール酸等が挙げられる。なかでも、2-オクチルコハク酸、スピクリスポール酸が好ましい。
【0035】
ポリカルボン酸化合物の使用量は特に限定されず、金属酸化物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、1~30質量%であり、好ましくは5~20質量%である。ポリカルボン酸化合物の使用量が上記の範囲内であると、洗浄後の残留金属を低減させやすい。
【0036】
金属酸化物膜形成性組成物の固形分において、金属酸化物ナノ粒子とポリカルボン酸化合物との合計に対する金属酸化物ナノ粒子の質量比は、例えば、50質量%以上であり、好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更により好ましくは65質量%以上である。上記質量比の上限は、例えば、95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。
【0037】
[溶剤]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、塗布性や粘度の調整の目的で、溶剤を含有する。溶剤としては、典型的には有機溶剤が用いられる。有機溶剤の種類は、金属酸化物膜形成性組成物に含まれる成分を均一に溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。
【0038】
溶剤として使用し得る有機溶剤の好適な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチル部炭酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0039】
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物における溶剤の使用量は特に限定されない。金属酸化物膜形成性組成物の塗布性の点等から、溶剤の使用量は、金属酸化物膜形成性組成物全体に対して、例えば、30~99.9質量%であり、好ましくは50~98質量%である。
【0040】
[基材]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、塗膜形成性や塗布性の調整の目的で、更に基材を含有してもよい。基材は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。基材としては、特に限定されず、以下で述べる樹脂等の重合体や低分子化合物等の非重合体を用いることができる。
【0041】
基材の質量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、好ましくは700以上40000以下であり、より好ましくは900以上30000以下であり、更により好ましくは1000以上20000以下である。Mwが上記範囲内であると、塗膜形成性及び塗布性が良好となりやすい。また、Mwが4000以下である重合体又は非重合体を用いることで、凹凸基板に対するギャップフィリング性が良好となりやすい。なお、本明細書において、Mwとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値を採用する。
【0042】
〔アクリル系樹脂(a-IV)〕
アクリル系樹脂(a-IV)としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び/又は(メタ)アクリル酸エステル等の他のモノマーに由来する構成単位を含むものを用いることができる。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、又はメタクリル酸である。アクリル系樹脂(a-IV)中の構成単位を与えるモノマーとしては、典型的には下記式(a-4-1)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0043】
【0044】
上記式(a-4-1)中、Ra9は、水素原子又はメチル基である。Ra10は、水素原子又は1価の有機基である。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。Ra11は、-O-、又は-NRa12-で表される基である。Ra12は、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。
【0045】
Ra10の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミノ基(-NH2、-NHR、-NRR’:R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基を示す)等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0046】
また、Ra10としての有機基は、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基等の反応性の官能基を有していてもよい。
アクリロイルオキシ基やメタクリロイルオキシ基等の、不飽和二重結合等を有するアシル基は、例えば、エポキシ基を有する構成単位を含むアクリル系樹脂(a-IV)における、エポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸を反応させることにより製造することができる。
エポキシ基の少なくとも一部に、不飽和カルボン酸を反応させた後に、反応により生成した基に多塩基酸無水物を反応させてもよい。
【0047】
多塩基酸無水物の具体例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4-エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-エチルテトラヒドロ無水フタル酸、及び4-エチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0048】
また、アクリル系樹脂(a-IV)が有する、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸に由来する構成単位に対して、エポキシ基と不飽和二重結合とを有する化合物を反応させることによって、アクリル系樹脂(a-IV)に不飽和二重結合を導入することができる。エポキシ基と不飽和二重結合とを有する化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートや、後述する式(a-4-1a)~(a-4-1o)で表される化合物を用いることができる。
【0049】
Ra10としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ポリシクロアルキルアルキル基、アラルキル基、又は複素環基が好ましく、これらの基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよく、これらの基に酸素原子が結合してエポキシ基が形成されてもよい。また、これらの基がアルキレン部分を含む場合、アルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0050】
アルキル基が、直鎖状又は分岐鎖状のものである場合、その炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上15以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましい。好適なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基等が挙げられる。
【0051】
シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ポリシクロアルキルアルキル基、及びこれらの基以外の脂環式基含有基において、これらの基に含まれる脂環式基の好適な例としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等単環の脂環式基や、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、ビシクロ-[2.1.1]-ヘキシル基、ビシクロ-[2.2.1]-ヘプチル基、ビシクロ-[2.2.2]-オクチル基、ビシクロ-[3.3.0]-オクチル基、ビシクロ-[4.3.0]-ノニル基、及びビシクロ-[4.4.0]-デシル基等のポリシクロアルキル基が挙げられる。
【0052】
式(a4-1)で表され、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ポリシクロアルキルアルキル基、及びこれらの基以外の脂環式基含有基をRa10として有する化合物の好適な例としては、下記式(a-4-1a)~(a-4-1h)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(a-4-1c)~(a-4-1h)で表される化合物が好ましく、下記式(a-4-1c)、又は下記式(a-4-1d)で表される化合物がより好ましい。
【0053】
【0054】
上記式中、Ra20は水素原子又はメチル基を示し、Ra21は単結合又は炭素原子数1~6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra22は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を示す。Ra21としては、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra22としては、例えばメチル基、エチル基が好ましい。
【0055】
ポリシクロアルキル(メタ)アクリレート(A-1)に由来する構成単位及び/又はアラルキル(メタ)アクリレート(A-2)に由来する構成単位を含むアクリル系樹脂を含有するのが好ましい。アクリル系樹脂は、(A-1)に由来する構成単位を含む場合、例えば、上記式(a-4-1c)~(a-4-1h)のいずれかで表され、Ra21として単結合を有する化合物である(A-1)に由来する構成単位を含むのが本発明の効果の点で、好ましい。
【0056】
式(a-4-1)で表される化合物が、エポキシ基を有する鎖状の基をRa10として有する場合の、式(a-4-1)で表される化合物の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エポキシアルキルエステル類が挙げられる。
【0057】
また、式(a-4-1)で表される化合物は、脂環式エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。脂環式エポキシ基を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等のポリシクロアルキルが挙げられる。
【0058】
式(a-4-1)で表される化合物が脂環式エポキシ基を含む(メタ)アクリレートである場合の具体例としては、例えば下記式(a-4-1i)~(a-4-1m)で表される化合物が挙げられる。
【0059】
【0060】
また、式(a-4-1)で表される化合物の他の具体例としては、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、モノ2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ジ2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、O-フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,2,3-プロパントリオール1,3―ジ(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
【0061】
アクリル系樹脂(a-IV)中の構成単位を与える化合物として、本発明の効果の点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、炭素原子数1~5のアルキル(メタ)アクリレート、ポリシクロアルキル(メタ)アクリレート(A-1)、又はアラルキル(メタ)アクリレート(A-2)が挙げられる。前記(A-1)としては、例えば、上記式(a-4-1c)~(a-4-1h)のいずれかで表され、Ra21として単結合を有する化合物が挙げられ、前記(A-2)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0062】
アクリル系樹脂(a-IV)において、上記好ましい化合物に由来する構成単位の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、全構成単位の量に対して、例えば、10質量%以上であり、30質量%以上が好ましい。上限は適宜設定すればよく、例えば、100質量%以下でもよく、90質量%以下であってもよい。
【0063】
また、アクリル系樹脂(a-IV)は、(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーを重合させたものであってもよい。このようなモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられ、ビニルエーテル類又はスチレン類が好ましい。これらのモノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0064】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-アリール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-アリール(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0065】
不飽和カルボン酸類としては、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。
【0066】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0067】
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0068】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0069】
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0070】
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は金属酸化物ナノ粒子を含むため、基材がアクリル系樹脂であっても基板加工に必要なエッチング耐性を付与できるが、エッチング耐性の向上等の点で、基材として、芳香環を含む重合体、芳香環を含む非重合体、又はこれらの両方を追加で用いてもよい。
【0071】
芳香環を含む非重合体としては、ビスフェニルフルオレン骨格、ビスナフチルフルオレン骨格、メチレンジナフタレン骨格、テトラベンゾナフタレン骨格、又はカリックスアレーン骨格を有する化合物(X)が挙げられる。これらの化合物は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基、プロパルギル基、ジグリシジルアミノ基、ジプロパルギルアミノ基等の重合性基又は前記重合性基を含む有機基であることが硬化性等の点で好ましい。
【0072】
芳香環を含む重合体としては、
・化合物(X)を構成する骨格を繰り返し構造として有する樹脂、
・ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、ビフェニル骨格、及び/又はアントラセン骨格を繰り返し構造として有する樹脂、
・化合物(X)の縮合体
等が挙げられる。縮合体は、化合物(X)に対し、アルデヒド類、アルコキシ基を有する化合物類、アルカノイルオキシ基を有する化合物類、トリオキサン類、及びフルオレノン類からなる群より選択される1種以上を作用させることにより得られる。また、芳香環を含む重合体としては、公知のノボラック樹脂等を用いてもよい。
【0073】
〔ノボラック樹脂(a-II)〕
ノボラック樹脂(a-II)としては、従来から感光性組成物に配合されている種々のノボラック樹脂を用いることができる。ノボラック樹脂(a-II)としては、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」という。)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られるものが好ましい。
【0074】
(フェノール類)
ノボラック樹脂(a-II)を作製する際に用いられるフェノール類としては、例えば、フェノール;o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール類;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール類;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール類;2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、並びにp-tert-ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;2,3,5-トリメチルフェノール、及び3,4,5-トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、及びフロログリシノール等の多価フェノール類;アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、及びアルキルハイドロキノン等のアルキル多価フェノール類(いずれのアルキル基も炭素原子数1以上4以下である。);α-ナフトール;β-ナフトール;ヒドロキシジフェニル;並びにビスフェノールA等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0075】
(アルデヒド類)
ノボラック樹脂(a-II)を作製する際に用いられるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、及びアセトアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0076】
(酸触媒)
ノボラック樹脂(a-II)を作製する際に用いられる酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び亜リン酸等の無機酸類;蟻酸、シュウ酸、酢酸、ジエチル硫酸、及びパラトルエンスルホン酸等の有機酸類;並びに酢酸亜鉛等の金属塩類等が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0077】
基材の使用量は特に限定されず、金属酸化物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、0.5~35質量%であり、好ましくは1~25質量%であり、より好ましくは2~15質量%である。基材の使用量が上記の範囲内であると、有機分質量の割合が高くなりすぎず、その結果、得られる金属酸化物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。
【0078】
前記金属酸化物膜形成性組成物の固形分において、前記金属酸化物ナノ粒子と前記基材との合計に対する前記金属酸化物ナノ粒子の質量比は、例えば、45質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、更により好ましくは65質量%以上である。上記質量比の上限は、例えば、95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。
【0079】
[界面活性剤]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、塗布性、消泡性、レベリング性等を向上させるため、更に界面活性剤(表面調整剤)を含有してもよい。界面活性剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤が挙げられる。
【0080】
シリコーン系界面活性剤としては、具体的には、BYK-077、BYK-085、BYK-300、BYK-301、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-335、BYK-341、BYK-344、BYK-345、BYK-346、BYK-348、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358、BYK-361、BYK-370、BYK-371、BYK-375、BYK-380、BYK-390(BYK Chemie社製)等が挙げられる。
【0081】
フッ素系界面活性剤としては、具体的には、F-114、F-177、F-410、F-411、F-450、F-493、F-494、F-443、F-444、F-445、F-446、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-478、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-484、F-486、F-487、F-172D、MCF-350SF、TF-1025SF、TF-1117SF、TF-1026SF、TF-1128、TF-1127、TF-1129、TF-1126、TF-1130、TF-1116SF、TF-1131、TF-1132、TF-1027SF、TF-1441、TF-1442(DIC社製);ポリフォックスシリーズのPF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(オムノバ社製)等が挙げられる。
【0082】
界面活性剤の使用量は特に限定されず、金属酸化物膜形成性組成物の塗布性、消泡性、レベリング性の点等から、金属酸化物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、0.01~0.15質量%であり、好ましくは0.05~0.1質量%である。
【0083】
[その他の成分]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物には、必要に応じて、分散剤、熱重合禁止剤、消泡剤、シランカップリング剤、着色剤(顔料、染料)、無機フィラー、有機フィラー、架橋剤、酸発生剤等の添加剤を含有させることができる。いずれの添加剤も、従来公知のものを用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられ、熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられ、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0084】
<金属酸化物膜形成性組成物の製造方法>
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物の製造方法は、例えば、金属酸化物ナノ粒子、キャッピング剤、及び溶剤を含有する第一の分散液と、ポリカルボン酸化合物及び溶剤を含有するポリカルボン酸化合物溶液と、溶剤と、を混合する第一の混合工程、又は、金属酸化物ナノ粒子、ポリカルボン酸化合物、及び溶剤を含有する第二の分散液と、溶剤と、を混合する第二の混合工程を含む。
【0085】
第一の混合工程では、例えば、溶剤の存在下で、金属酸化物ナノ粒子をキャッピング剤で処理した後、得られたスラリーにポリカルボン酸化合物溶液、溶剤、並びに、それぞれ任意に基材、界面活性剤、及びその他の成分を添加する。
第二の混合工程では、例えば、溶剤の存在下で、金属酸化物ナノ粒子をキャッピング剤としてのポリカルボン酸化合物で処理した後、得られたスラリーに溶剤、並びに、それぞれ任意に基材、界面活性剤、及びその他の成分を添加する。
具体的には、本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物は、例えば、後述の実施例に示す通りにして製造することができる。
【0086】
<金属酸化物膜の製造方法>
本発明に係る金属酸化物膜の製造方法は、本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を加熱する加熱工程と、を含む。
【0087】
前記塗膜は、例えば、半導体基板等の基板上に金属酸化物膜形成性組成物を塗布することにより、形成することができる。塗布方法としては、ロールコータ、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置、スピンコーター)、ディップコーター、スプレーコーター、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。また、金属酸化物膜形成性組成物の粘度を適切な範囲に調整したうえで、インクジェット法、スクリーン印刷法等の印刷法によって金属酸化物膜形成性組成物の塗布を行って、所望の形状にパターニングされた塗膜を形成してもよい。なかでも、金属酸化物膜形成性組成物が基板の端面(エッジ)に付着したり、基板の裏面に回り込んで付着したりしやすく、本発明の効果が発揮されやすい点から、非接触型塗布装置を用いることが好ましく、スピンナーを用いることがより好ましい。
【0088】
基板としては、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、又は金属酸化窒化膜を含むものであることが好ましい。前記基板を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン、又はこれらの合金等が挙げられるが、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウムを含むことが好ましい。また、基板表面は凹凸形状を有していてもよく、凹凸形状はパターン化された有機系材料であってもよい。
【0089】
本発明に係る金属酸化物膜の製造方法は、更に、エッジリンス及びバックリンスの少なくとも一方を行う洗浄工程を含むことが好ましい。洗浄工程は、例えば、塗膜形成工程と加熱工程の間に行われる。
エッジリンスやバックリンスの方法は、従来公知のプロセスであれば特に限定されない。例えば、エッジリンスでは、基板の周縁部に沿って溶剤を塗布し、基板上のエッジビードを除去する方法が挙げられる。溶剤としては、金属酸化物膜形成性組成物に用いた溶剤等を好適に用いることができる。
【0090】
次いで、必要に応じて、溶剤等の揮発成分を除去して塗膜を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、ホットプレートにて80℃以上140℃以下、好ましくは90℃以上130℃以下の温度にて60秒以上150秒以下の範囲内の時間乾燥する方法が挙げられる。ホットプレートによる加熱の前に、真空乾燥装置(VCD)を用いて室温にて減圧乾燥を行ってもよい。
【0091】
このようにして塗膜を形成した後、塗膜を加熱する。加熱を行う際の温度は特に限定されず、400℃以上が好ましく、420℃以上がより好ましく、430℃以上が更により好ましい。上限は適宜設定すればよく、例えば、600℃以下でよく、ドライエッチングの際のエッチングレート制御の点又は面内均一性の点で、好ましくは550℃以下である。加熱時間は、典型的には、30秒以上150秒以下が好ましく、60秒以上120秒がより好ましい。加熱工程は、単一の加熱温度下で行うものであってもよいし、加熱温度の異なる複数段階からなるものであってもよい。
【0092】
以上のように形成される金属酸化物膜は、犠牲膜又は永久膜として好適に利用される。犠牲膜は、例えば、メタルハードマスク又はパターン反転用材料である。永久膜は、例えば、高誘電率膜(High-k膜)である。
【実施例0093】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0094】
[金属酸化物膜形成性組成物の調製]
以下の各分散液の調製は、特開2018-193481号公報の段落[0223]の記載を参照して行った。
【0095】
・Z-1分散液の調製
ZrO2のスラリーを得るための、水とジルコニウム(IV)イソプロポキシドイソプロパノール(Zr(OCH(CH3)2)4(HOCH(CH3)2)とのモル比を、1:3に変更した以外は、特開2018-193481号公報の段落[0223]の記載に基づき、室温まで冷却して得たZrO2のスラリーを遠心分離しウェットケーキAを得た。ウェットケーキAの重量の0.2倍の2-アクリロイルオキシエチルコハク酸(下記式参照)をウェットケーキAに加えて撹拌した。再沈殿後、遠心分離によりウェットケーキBを得た。ウェットケーキBを一晩減圧乾燥し、粉末を得た。得られた乾燥粉末に対して、固形分濃度48質量%になるように、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(以下、「PGMEA」という。)を加えて再分散した後、濾過し、Z-1分散液を得た。
【0096】
【0097】
・Z-1分散液に対するTG-DTA測定
Z-1分散液を白金製サンプルパンに載せ、TG-DTAによる測定を行った。室温から200℃まで10℃/minで昇温し、200℃で5min保持したときの質量を固形分質量とした。次に200℃から710℃まで10℃/minで昇温し、710℃に達したときの質量を無機分質量とした。これらの測定結果から、式:有機分重量=固形分重量-無機分重量により有機分重量を算出し、式:無機分質量/(無機分質量+有機分質量)により、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合(質量%)を算出したところ、70質量%であった。また、式:有機分質量/(無機分質量+有機分質量)により、無機分質量と有機分質量との合計に対する有機分質量の割合(質量%)を算出したところ、30質量%であった。なお、有機分質量は、特開2018-193481号公報の段落[0223]に記載されたベンジルアルコールと、上記の2-アクリロイルオキシエチルコハク酸に由来する。これらがキャッピング剤に該当する。
【0098】
・Z-1分散液に含まれる金属酸化物ナノクラスターのサイズの測定
Z-1分散液を試料として用いて、X線回折装置(SmartLab、株式会社リガク製)により、XRD測定を行った。得られた結果を付属ソフトウェアのPDXLで解析し、Halder-Wagner法にて金属酸化物ナノクラスターのサイズ(結晶子サイズ)を求めたところ、2.5nmであった。
【0099】
・Z-2分散液の調製
2-アクリロイルオキシエチルコハク酸をスピクリスポール酸(下記式参照)に変更した以外は、上述の「Z-1分散液の調製」と同様に操作を行って、Z-2分散液を得た。
【0100】
【0101】
・Z-2分散液に対するTG-DTA測定
Z-1分散液に代えてZ-2分散液を用いた以外は、上述の「Z-1分散液に対するTG-DTA測定」と同様に操作を行ったところ、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合(質量%)は、70質量%と算出され、無機分質量と有機分質量との合計に対する有機分質量の割合(質量%)は、30質量%と算出された。なお、有機分質量は、特開2018-193481号公報の段落[0223]に記載されたベンジルアルコールと、上記のスピクリスポール酸に由来する。これらがキャッピング剤に該当する。
【0102】
・Z-2分散液に含まれる金属酸化物ナノクラスターのサイズの測定
Z-1分散液に代えてZ-2分散液を用いた以外は、上述の「Z-1分散液に含まれる金属酸化物ナノクラスターのサイズの測定」と同様に操作を行ったところ、金属酸化物ナノクラスターのサイズ(結晶子サイズ)は、2.5nmであった。
【0103】
・Z-3分散液の調製
2-アクリロイルオキシエチルコハク酸を2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸(下記式参照)に変更した以外は、上述の「Z-1分散液の調製」と同様に操作を行って、Z-3分散液を得た。
【0104】
【0105】
・Z-3分散液に対するTG-DTA測定
Z-1分散液に代えてZ-3分散液を用いた以外は、上述の「Z-1分散液に対するTG-DTA測定」と同様に操作を行ったところ、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合(質量%)は、70質量%と算出され、無機分質量と有機分質量との合計に対する有機分質量の割合(質量%)は、30質量%と算出された。なお、有機分質量は、特開2018-193481号公報の段落[0223]に記載されたベンジルアルコールと、上記の2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸に由来する。これらがキャッピング剤に該当する。
【0106】
・Z-3分散液に含まれる金属酸化物ナノクラスターのサイズの測定
Z-1分散液に代えてZ-3分散液を用いた以外は、上述の「Z-1分散液に含まれる金属酸化物ナノクラスターのサイズの測定」と同様に操作を行ったところ、金属酸化物ナノクラスターのサイズ(結晶子サイズ)は、2.5nmであった。
【0107】
・活性剤溶液1の調製
スピクリスポール酸(磐田化学工業社製)2質量部と、PGMEA 98質量部とを混合して、活性剤溶液1を得た。
【0108】
・活性剤溶液2の調製
ラウリン酸(下記式参照)2質量部と、PGMEA 98質量部とを混合して、活性剤溶液2を得た。
【0109】
【0110】
・活性剤溶液3の調製
2-オクチルコハク酸(下記式参照)2質量部と、PGMEA 98質量部とを混合して、活性剤溶液3を得た。
【0111】
【0112】
・活性剤溶液4の調製
グルタル酸(下記式参照)2質量部と、PGMEA 98質量部とを混合して、活性剤溶液4を得た。
【0113】
【0114】
表1に示す割合(単位:質量部)で、Z-1分散液、Z-2分散液、又はZ-3分散液に、まず活性剤溶液を加え、次に溶剤PGMEAを加えて、撹拌し、Φ0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、組成物を得た。なお、表1において、括弧内の数字は、固形分の割合(単位:質量部)を表す。
【0115】
[洗浄後の残留金属量(ICP-MS測定)]
8インチのシリコンウェハ上に組成物を滴下し、2秒で1250rpmまで加速した後、1250rpmで30秒間、スピンコートを行った。直後に、シリコンウェハの中央部分から溶剤PGMEAで60秒間リンスを行った。
シリコンウェハの表面をフッ化水素で処理してシリコンウェハ上の残留Zrを全量回収し、ICP-MSで測定を行った。ng単位で残留Zr量を求めた後、シリコンウェハの面積で除することで、残留金属量(単位:原子/cm2)を求めた。
【0116】
[無機分質量の割合]
表1において、「無機分質量の割合」は、組成物の固形分について、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合を示す。具体的には、Z-1分散液、Z-2分散液、又はZ-3分散液の固形分質量と、各活性剤溶液中の各活性剤の質量との合計に対するZ-1分散液、Z-2分散液、又はZ-3分散液の無機分質量の割合(質量%)を算出した。結果を表1に示す。
【0117】
【0118】
表1から分かる通り、実施例では、洗浄後に残留金属が低減されているのに対し、比較例では、十分に低減されていないことが確認された。