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特開2024-20840表面修飾カーボンブラック、カーボンブラック分散体及びブラックレジスト組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020840
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】表面修飾カーボンブラック、カーボンブラック分散体及びブラックレジスト組成物
(51)【国際特許分類】
   C09C 1/48 20060101AFI20240207BHJP
   C09D 17/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
C09C1/48
C09D17/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123327
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002354
【氏名又は名称】弁理士法人平和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長田 裕仁
(72)【発明者】
【氏名】伊部 武史
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA02
4J037CB01
4J037CB09
4J037CB10
4J037EE03
4J037EE12
4J037EE43
4J037FF05
4J037FF15
4J037FF23
(57)【要約】
【課題】優れた分散性及び分散安定性を有するカーボンブラックを提供する。
【解決手段】カーボンブラックの表面の一部又は全部に二重結合含有重合反応性モノマーの重合体が存在し、二重結合含有重合反応性モノマーの重合体がカリックスアレーン化合物を含有する、表面修飾カーボンブラック。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックの表面の一部又は全部に二重結合含有重合反応性モノマーの重合体が存在し、前記二重結合含有重合反応性モノマーの重合体がカリックスアレーン化合物を含有する、表面修飾カーボンブラック。
【請求項2】
前記カリックスアレーン化合物が下記式(1)で表される化合物である、請求項1記載の表面修飾カーボンブラック。
【化3】
(式中Rは水素原子、炭素数1~12のアルキル基又はアリール基である。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基である。nは3~6の整数である。)
【請求項3】
前記Rがフェニル基又は炭素数2~10のアルキル基である、請求項2記載の表面修飾カーボンブラック。
【請求項4】
前記二重結合含有重合反応性モノマーが、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジルやグリシジルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、4-ビニルシクロヘキセン1,2-エポキシド、エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレート、2-オキセタニルプロピル(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール及びジ(メタ)アクリル酸1,3ブチレングリコールから選択される1種以上である、請求項1~3のいずれか記載の表面修飾カーボンブラック。
【請求項5】
前記二重結合含有重合反応性モノマーが、スチレン化合物、アクリレート及びメタクリレートから選択される1種以上である、請求項4記載の表面修飾カーボンブラック。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか記載の表面修飾カーボンブラックと、分散媒とを含む、カーボンブラック分散体。
【請求項7】
請求項1~5のいずれか記載の表面修飾カーボンブラックを含む、ブラックレジスト組成物。
【請求項8】
請求項7記載のブラックレジスト組成物の硬化膜。
【請求項9】
(A)カーボンブラック、(B)カリックスアレーン化合物、(C)二重結合含有重合反応性モノマー、(D)溶剤及び(E)重合開始剤を含む混合物を調製して、前記(C)二重結合含有重合反応性モノマーを重合させる工程を有する、表面修飾カーボンブラックの製造方法。
【請求項10】
前記(B)カリックスアレーン化合物が下記式(1)で表される化合物である、請求項9記載の製造方法。
【化4】
(式中Rは水素原子、炭素数1~12のアルキル基又はアリール基である。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基である。nは3~6の整数である。)
【請求項11】
前記Rがフェニル基又は炭素数2~10のアルキル基である、請求項10記載の製造方法。
【請求項12】
前記(C)二重結合含有重合反応性モノマーが、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジルやグリシジルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、4-ビニルシクロヘキセン1,2-エポキシド、エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレート、2-オキセタニルプロピル(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール及びジ(メタ)アクリル酸1,3ブチレングリコールから選ばれる1種以上のモノマーである、請求項9~11のいずれか記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面修飾カーボンブラック、カーボンブラック分散体、ブラックレジスト組成物及び表面修飾カーボンブラックの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、カーボンブラックは着色顔料や遮光材料として、印刷インキ、塗料、プラスチック成型材料等の分野で広く使用されている。これらの製品において着色性、光吸収性能を向上させるためにはカーボンブラックを溶剤や樹脂中に均一に分散させる必要がある。例えば、液晶表示素子、センサー等に使用されるカラーフィルタのブラックマトリクス形成用のカーボンブラック分散液において、更なる輝度向上を目的にカーボンブラックの分散性及び分散安定性の向上が求められている。しかしながら、一般にカーボンブラックは分散性が悪いため、表面処理による分散性の向上が検討されてきた。
【0003】
分散性向上を目的としたカーボンブラックの表面処理として、アミノ基を有するアルキル基タイプの表面処理剤による表面修飾が検討されている(例えば、特許文献1)。しかしながら、上記表面処理剤による表面修飾では、分散性向上のために必要な表面修飾密度が得られないため、分散性の向上は不十分であった。
【0004】
表面修飾密度の向上を目的に、カーボンブラック表面のカルボキシル基とアミン系表面処理剤を反応させる方法も検討されている(例えば、特許文献2)。しかしながら、この方法では、カーボンブラック表面のカルボキシル基を塩素化する必要があるため、工程が煩雑になり、また、残留した塩素がマイグレーションを発生させ、液晶表示素子やカメラ等の故障の原因となる可能性がある。
【0005】
一方で、カーボンブラックの表面処理を反応溶剤中で実施することにより、表面修飾密度を向上させることも検討されている(例えば、特許文献3)。しかしながら、この方法ではスルホン化剤由来の残留硫黄が、塩素と同様にマイグレーションを発生させるおそれがあり、また、溶剤親和基の長さが十分でないため、最先端の液晶表示素子やセンサー等の輝度を満足させるための分散性には到達していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11-256067号公報
【特許文献2】特開2004-346219号公報
【特許文献3】特開平10-2110112号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、液晶表示素子の高精細化、センサー等の高感度化に伴い、より優れた分散性及び分散安定性を有するカーボンブラック及びその分散体が求められている。
本発明は、優れた分散性及び分散安定性を有するカーボンブラック及びその分散体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、カーボンブラック、カリックスアレーン化合物及び二重結合含有重合反応性モノマーを含む混合物を反応させることにより、優れた分散性及び分散安定性を有する表面修飾カーボンブラックが得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
すなわち本発明は、カーボンブラックの表面の一部又は全部に二重結合含有重合反応性モノマーの重合体が存在し、前記二重結合含有重合反応性モノマーの重合体がカリックスアレーン化合物を含有する、表面修飾カーボンブラックに関する。
また、本発明は、上記の表面修飾カーボンブラックを含む、カーボンブラック分散体に関する。
また、本発明は、上記の表面修飾カーボンブラックを含む、ブラックレジスト組成物に関する。
また、本発明は、(A)カーボンブラック、(B)カリックスアレーン化合物、(C)二重結合含有重合反応性モノマー、(D)溶剤及び(E)重合開始剤を含む混合物を調製して、前記(C)二重結合含有重合反応性モノマーを重合させる工程を有する、表面修飾カーボンブラックの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分散性及び分散安定性に優れるカーボンブラック及びその分散体が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を損なわない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。
本願明細書において「(メタ)アクリレート」とは、アクリレートとメタクリレートの一方又は両方を意味する。
【0012】
1.表面修飾カーボンブラック
本発明の一実施形態に係る表面修飾カーボンブラックは、カーボンブラックの表面の一部又は全部に二重結合含有重合反応性モノマーの重合体が存在し、かつ二重結合含有重合反応性モノマーの重合体がカリックスアレーン化合物を含有することを特徴とする。これにより、優れた分散性及び分散安定性を有するカーボンブラックとすることができる。以下、構成成分について説明する。
【0013】
[(a)カーボンブラック]
カーボンブラックは特に限定されるものではなく、市販のオイルファーネスブラック、ガスファーネスブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等、各種を用いることができる。また、通常行われているオゾン処理、プラズマ処理、液相酸化処理されたカーボンブラックを用いてもよい。カーボンブラックは1種単独で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0014】
カーボンブラックの配合量は、(a)カーボンブラック、(b)カリックスアレーン化合物及び(c)二重結合含有重合反応性モノマーの重合体の合計質量に対し、40質量%以上94.9質量%以下の範囲であることが好ましく、60質量%以上89.5質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0015】
カーボンブラックの形状は特に制限はなく、導電性改良用、インキ用(遮光用)、繊維着色用、樹脂マスターバッチ用等、用途に応じて選択できる。
カーボンブラックの市販品としては、例えば、三菱化学株式会社製のMA7、MA8、MA11、MA100、MA100R、MA220、MA230、MA600、#5、#10、#20、#25、#30、#32、#33、#40、#44、#45、#47、#50、#52、#55、#650、#750、#850、#950、#960、#970、#980、#990、#1000、#2200、#2300、#2350、#2400、#2600、#3050、#3150、#3250、#3600、#3750、#3950、#4000、#4010、OIL7B、OIL9B、OIL11B、OIL30B、OIL31B等が挙げられ、エボニックデグサジャパン株式会社製のPrintex3、Printex3OP、Printex30、Printex30OP、Printex40、Printex45、Printex55、Printex60、Printex75、Printex80、Printex85、Printex90、Printex A、Print ex L、Printex G、Printex P、Printex U、Printex V、PrintexG、SpecialBlack550、SpecialBlack 350、SpecialBlack250、SpecialBlack100、SpecialBlack6、SpecialBlack5、SpecialBlack4、Color Black FW1、Colo r Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW18、Color Black FW200、Color Black S160、Color Black S170等が挙げられ、キャボットジャパン株式会社製のMonarch120、Monarch280、Monarch460、Monarch800、Monarch880、Monarch900、Monarch1000、Monarch1100、Monarch1300、Monarch1400、Monarch4630、REGAL99、REGAL99R、REGAL415、REGAL415R、REGAL250、REGAL250R、REGAL330、REGAL400R、REGAL55R0、REGAL660R、BLACK PEARLS480、PEARLS130、VULCAN XC72R、ELFTEX-8等が挙げられ、コロンビヤンカーボン社製のRAVEN11、RAVEN14、RAVEN15、RAVEN16、RAVEN22RAVEN30、RAVEN35、RAVEN40、RAVEN410、RAVEN420、RAVEN450、RAVEN500、RAVEN780、RAVEN850、RAVEN890H、RAVEN1000、RAVEN1020、RAVEN1040、RAVEN1060U、RAVEN1080U、RAVEN1170、RAVEN1190U、RAVEN1250、RAVEN1500、RAVEN2000、RAVEN2500U、RAVEN3500、RAVEN5000、RAVEN5250、RAVEN5750、RAVEN7000等が挙げられる。
【0016】
[(b)カリックスアレーン化合物]
カリックスアレーン化合物は、後述する二重結合含有重合反応性モノマーの重合体に含有されている。重合体がカリックスアレーン化合物を含有していることは、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)や、ガスクロマトグラフ質量分析(GC-MS)により確認できる。
カリックスアレーン化合物は、下記式(1)で表される化合物が好ましい。
【0017】
【化1】
(式中Rは水素原子、炭素数1~12のアルキル基又はアリール基である。R及びRはそれぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基である。nは3~6の整数である。)
【0018】
上記式(1)中のRは、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基等のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基等のアリール基等が挙げられる。中でも、Rは、炭素数1~11のアルキル基又はアリール基であることが好ましく、炭素数が2~9である直鎖のアルキル基又はフェニル基であることがより好ましい。
が置換基を有する場合、置換基としてはアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。具体例としては後述するRで例示する基が挙げられる。
【0019】
上記式(1)のR及びRはそれぞれ、水素原子、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、又はアラルキル基である。
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、へキシル基、シクロへキシル基が挙げられる。炭素原子数は、例えば1~9が好ましい。
アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ブトキシ基、ペンチルオキシ基、へキシルオキシ基、シクロへキシルオキシ基が挙げられる。炭素原子数は、例えば1~9が好ましい。
【0020】
アリール基としては、例えば、環を形成する炭素原子数が6~14であるものが挙げられる。アリール基は上述したアルキル基及びアルコキシ基や、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。具体的には、フェニル基、ヒドロキシフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ヒドロキシアルコキシフェニル基、アルコキシフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ジヒドロキシナフチル基が挙げられる。
【0021】
アラルキル基は、アルキル基(C2n+1)の水素原子の1つ以上がアリール基で置換されているアルキル基を意味する。該アリール基は上述したアルキル基及びアルコキシ基や、ヒドロキシ基等の置換基を有していてもよい。具体的には、フェニルメチル基、ヒドロキシフェニルメチル基、ジヒドロキシフェニルメチル基、トリルメチル基、キシリルメチル基、ナフチルメチル基、ヒドロキシナフチルメチル基、ジヒドロキシナフチルメチル基、フェニルエチル基、ヒドロキシフェニルエチル基、ジヒドロキシフェニルエチル基、トリルエチル基、キシリルエチル基、ナフチルエチル基、ヒドロキシナフチルエチル基、ジヒドロキシナフチルエチル基が挙げられる。炭素原子数は、例えば7~15が好ましい。
【0022】
一実施形態において、上記式(1)のR及びRは水素原子であることが好ましい。
【0023】
上記式(1)で表される化合物は、下記式(2)で表されるレゾルシン誘導体(レゾルシンは慣用名であり、許容慣用名はレゾルシノール、IUPAC名は1,3-ジヒドロキシベンゼンである。)とアルデヒド化合物から合成できる。
【0024】
【化2】
(式中R及びRは、上記式(1)のR及びRと同一である。)
【0025】
一実施形態において、上記式(2)で表される化合物のR及びRは共に水素原子であることが好ましい。
また、一実施形態において、アルデヒド化合物は、置換基を有していてもよいアルキル基又は置換基を有していてもよいアリール基を有するアルデヒド化合物が好ましく、炭素数1~12のアルキル基又はアリール基を有するアルデヒド化合物がより好ましく、炭素数3~10のアルキル基を有する脂肪族アルデヒド化合物又はフェニル基を有するアルデヒド化合物を用いることがさらに好ましい。
【0026】
カリックスアレーン化合物は、1種で使用してもよく、また、2種以上を組み合わせて使用してもよい。カリックスアレーン化合物は市販品として入手することができ、また、公知の合成方法によっても入手することができる。
カリックスアレーン化合物の配合量は、(a)カーボンブラック、(b)カリックスアレーン化合物及び(c)二重結合含有重合反応性モノマーの合計質量に対し、0.1質量%以上20質量%以下の範囲であることが好ましく、0.5質量%以上10質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0027】
[(c)二重結合含有重合反応性モノマーの重合体]
二重結合含有重合反応性モノマーの重合体は、カーボンブラックの表面の全部又は一部を覆うように(コア-シェル構造)存在する。
重合体がカーボンブラックの表面の全部又は一部に存在することは、熱重量測定装置(TGA)評価による重量減少により確認できる。
二重結合含有重合反応性モノマーの重合体は、該モノマーを重合させてなるオリゴマーであってもよく、ポリマーであってもよい。ここで、オリゴマーとは重合度が2~100程度の重合体を意味し、ポリマーとは重合度が100超である重合体を意味する。
【0028】
二重結合含有重合反応性モノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン等のスチレン化合物、ジビニルベンゼン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸グリシジルやグリシジルビニルエーテル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル、4-ビニルシクロヘキセン1,2-エポキシド、エポキシシクロヘキセニル(メタ)アクリレート、2-オキセタニルプロピル(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリル酸エチレングリコール、ジ(メタ)アクリル酸1,3ブチレングリコール等が挙げられる。なかでも、スチレン化合物又は(メタ)アクリレートが好ましい。
二重結合含有重合反応性モノマーは、1種を単独で用いてもよく、また、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明の一実施形態において、二重結合含有重合反応性モノマーの重合体の重量平均分子量は、300以上が好ましく、5,000以下であることが好ましい。
本発明の一実施形態において、(c)二重結合含有重合反応性モノマーの重合体の平均重合度は、3以上が好ましく、50以下であることが好ましい。
【0030】
本発明の一実施形態において、二重結合含有重合反応性モノマーの重合体の配合量は、(a)カーボンブラック、(b)カリックスアレーン化合物及び(c)二重結合含有重合反応性モノマーの合計質量に対し、5質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましく、10質量%以上30質量%以下の範囲であることがより好ましい。
【0031】
一実施形態において、表面修飾カーボンブラックは、実質的に(a)カーボンブラック、(b)カリックスアレーン化合物及び(c)二重結合含有重合反応性モノマーの重合体のみからなっていてもよい。
ここで、実質的に成分(a)~(c)のみからなるとは、表面修飾カーボンブラックに占める成分(a)~(c)の割合が90質量%以上、95質量%以上、99質量%以上又は100質量%であることを意味する。なお、成分(a)~(c)の割合が100質量%である場合、不可避的不純物を含んでいてもよい。
【0032】
本発明の表面修飾カーボンブラックは、遮光性、導電性、耐久性、漆黒性等が要求される分野、例えば、グラビアインキ、オフセットインキ、磁気記録媒体用バックコート、静電トナー、インクジェット、自動車用塗料、導電性カーボンブラック、液晶表示素子・センサー向け着色顔料、遮光材料、ブラックレジスト、塗料、プラスチック成型材料、印刷インキ、包装材、粘着剤、負極材等に好適に使用することができる。
【0033】
2.表面修飾カーボンブラックの製造方法
本発明の一実施形態に係る表面修飾カーボンブラックの製造方法は、(A)カーボンブラック、(B)カリックスアレーン化合物、(C)二重結合含有重合反応性モノマー、(D)溶剤及び(E)重合開始剤を含む混合物(反応系)を調製して、(C)二重結合含有重合反応性モノマーを重合させる工程を有する。
【0034】
本実施形態では、カリックスアレーン化合物の存在下、二重結合含有重合反応性モノマーを重合させることにより、カーボンブラックの分散性が向上する。これは、カーボンブラック表面の一部又は全部が、二重結合含有重合反応性モノマーの重合体で被覆された状態となったためである。カリックスアレーン化合物を配合しない場合、本発明の効果は発現しない。重合反応において、カリックスアレーン化合物がどのように関与しているかは定かではないが、化学結合や分子間相互作用によりカーボンブラック表面にカリックスアレーン化合物が吸着し、又はカーボンブラックの周囲にカリックスアレーン化合物が存在することにより、カーボンブラック表面の全部又は一部で二重結合含有重合反応性モノマーの重合反応が発生すると推測される。また、式(1)で表されるカリックスアレーン化合物は、上記のようにカーボンブラック及び二重結合含有重合反応性モノマーの反応を介在していると推測できることから、ある種の触媒作用のような効果をもたらしていると推測される。
【0035】
本実施形態において、(A)カーボンブラック、(B)カリックスアレーン化合物及び(C)二重結合含有重合反応性モノマーの詳細及び配合量は、上述した表面修飾カーボンブラックの(a)カーボンブラック、(b)カリックスアレーン化合物及び(c)二重結合含有重合反応性モノマーと同様である。
【0036】
[(D)溶剤]
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ブチロラクトン等のケトン類;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコ-ル、tert-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコールエーテル類;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル、2-オキシプロピオン酸ブチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;ジエチレルグリコールモノメチルエーテル、ジエチレルグリコールモノエチルエーテル、ジエチレルグリコールジメチルエーテル、ジエチレルグリコールジエチルエーテル、ジエチレルグリコールメチルエチルエーテル等のジエチレングリコール類;トルエン、キシレン等の芳香族類;ジメチルアセチアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の極性溶剤が挙げられる。
上記の溶剤の選択は、沸点、原料を考慮して適宜選択される。
上記の溶剤は、1種単独で用いることも2種以上併用することもできる。
(D)溶剤の配合量は、成分(A)~(C)及び(E)の合計100質量部に対し、30質量部以上150質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0037】
[(E)重合開始剤]
重合開始剤としては、種々のものを使用することができ、例えば、過酸化アセチル、過酸化ジアシル、過酸化クミル、過酸化t-ブチル、過酸化プロピオニル、過酸化ベンゾイル、過酸化2-クロロベンゾイル、過酸化3-クロロベンゾイル、過酸化4-クロロベンゾイル、過酸化2,4-ジクロロベンゾイル、過酸化4-ブロモメチルベンゾイル、過酸化ラウロイル、ペルオキシ炭酸ジイソプロピル、テトラリンヒドロペルオキシド、t-ブチルペルオキシ-2-エチルヘキサノエート、1-フェニル-2-メチルプロピル-1-ヒドロペルオキシド、過トリフェニル酢酸t-ブチル、t-ブチルヒドロペルオキシド、過ギ酸t-ブチル、過酢酸t-ブチル、過安息香酸t-ブチル、過2-エチルヘキサン酸t-ブチル、過フェニル酢酸t-ブチル、過4-メトキシ酢酸t-ブチル等の過酸化物;2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスプロパン、1,1’-アゾ(メチルエチル)ジアセテート、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)硝酸塩、2,2’-アゾビスイソブタン、2,2’-アゾビスイソブチルアミド、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオン酸メチル、2,2’-ジクロロ-2,2’-アゾビスブタン、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2,2’-アゾビスイソ酪酸ジメチル、2-(4-メチルフェニルアゾ)-2-メチルマロノジニトリル、4,4’-アゾビス-4-シアノ吉草酸、3,5-ジヒドロキシメチルフェニルアゾ-2-メチルマロノジニトリル、1,1’-アゾビス-1-シクロヘキサンカルボニトリル、1,1’-アゾビス-1-フェニルエタン、1,1’-アゾビスクメン、4-ニトロフェニルアゾベンジルシアノ酢酸エチル、フエニルアゾジフェニルメタン、フェニルアゾトリフェニルメタン、4-ニトロトリフェニルアゾトリフェニルメタン、1,1’-アゾビス-1,2-ジフェニルエタン等のアゾ化合物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソ酪酸ジメチル、フェニルアゾトリフェニルメタン等のアゾ化合物、Mn(acac)等の金属キレート化合物等が挙げられる。
必要に応じて、ラウリルメルカプタン、チオグリセロール、2-メルカプトエタノール、エチルチオグリコール酸、オクチルチオグリコール酸等の連鎖移動剤や、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング基を有するチオール化合物を連鎖移動剤等の添加剤として用いてもよい。
(E)重合開始剤の配合量は、成分(C)100質量部に対し、0.1質量部以上5質量部以下の範囲であることが好ましい。
【0038】
本実施形態では、上記の各成分を含む混合物を、例えば、加熱しながら混合撹拌することにより、(C)二重結合含有重合反応性モノマーを重合させる。混合撹拌の方法としては、公知の方法により行うことが好ましい。
【0039】
本実施形態の製造方法において、反応温度は使用する各原料により異なるが、反応速度、溶剤選択性(溶剤沸点)、ゲル化防止の観点から、40℃以上200℃以下で行うことが好ましい。より好ましくは70℃以上170℃以下である。
本発明の製造方法において、反応時間は、反応の完全終了、反応再現性、製造時費用の観点から、好ましくは4時間以上、より好ましくは12時間以上である。また、好ましくは32時間以下、より好ましくは24時間以下である。
反応終了後は得られた固形物について水洗や再沈殿操作、乾燥を行い、表面修飾カーボンブラックを精製することが好ましい。
【0040】
3.カーボンブラック分散体
本発明の一実施形態に係るカーボンブラック分散体(以下、単に「分散体」という場合がある)は、上記の表面修飾カーボンブラック及び分散媒を含む分散体である。
分散媒としては本発明の表面修飾カーボンブラックを分散可能な液体であれば特に限定されないが、例えば、上述した本発明の表面修飾カーボンブラックの製造方法で使用される溶剤が好ましい。
分散媒は1種のみ使用してもよく、また、2種以上を混合して使用してもよい。
【0041】
カーボンブラック分散体における表面修飾カーボンブラックの濃度は、特に限定はなく、カーボンブラックの用途に合わせて適宜調整することができる。通常、分散媒100質量部に対し1質量部以上50質量部以下である。
【0042】
表面修飾カーボンブラックを分散媒に分散させる方法としては特に限定されず、公知の方法を採用することができる。分散機としては、例えば、せん断応力によりカーボンブラック粒子を微分散させる3本ロールミルや2本ロールミル、ガラスビーズやジルコニアビーズ等のメディアの衝撃力によりカーボンブラック粒子を微分散させるボールミル、アトライター、サンドミル、コボールミル、バスケットミル、振動ミル、ペイントコンディショナー等や、せん断応力、キャビテーション、衝突力、ポテンシャルコア等を発生させるような回転羽根によって微分散させるディスパー、ホモジナイザー、クレアミックス(R)等や、カーボンブラック粒子同士又はカーボンブラック粒子とビヒクルや分散機壁面の衝突力やせん断力によって微分散させるニーダー、エクストルーダー、ジェットミル等や、超音波により微分散させる超音波分散機等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。
【0043】
本実施形態に係るカーボンブラック分散体は、上述した表面修飾カーボンブラック及び分散媒以外の成分を含んでもよい。例えば、バインダー成分、分散剤、潤滑剤、活性剤、架橋剤、レベリング剤、消泡剤、溶剤、潤滑剤、レベリング剤、消泡剤、防腐剤等が挙げられる。
【0044】
4.ブラックレジスト組成物
本発明の一実施形態に係るブラックレジスト組成物は、本発明の表面修飾カーボンブラックを含む。
本実施形態では、本発明の表面修飾カーボンブラックが優れた分散性及び分散安定性を有することにより、光沢があり、またムラのない塗膜(硬化物)を形成することができる。
本実施形態のブラックレジスト組成物は、本発明の表面修飾カーボンブラックを含んでいればよく、他の成分等は特に限定されない。また、本実施形態のブラックレジスト組成物は、公知の方法により製造することができる。例えば、特開2015-227406号公報を参照できる。
【0045】
本実施形態のブラックレジスト組成物は、本発明の表面修飾カーボンブラック、アルカリ可溶性樹脂、溶媒、重合性化合物、光重合開始剤等、公知の構成部材を含む。
アルカリ可溶性樹脂とは、レジストのパターン化時に使用する現像液であるアルカリ性溶液に対して可溶な樹脂である。
アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシノール、フロログリシノール、ハイドロキノン等の芳香族ヒドロキシ化合物誘導体とホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等のアルデヒド化合物とを縮合して得られるノボラック樹脂;o-ビニルフェノール、m-ビニルフェノール、p-ビニルフェノール、α-メチルビニルフェノール等のビニルフェノール化合物誘導体の重合体又は共重合体;アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸系重合体又は共重合体;ポリビニルアルコール;これら各種樹脂の水酸基の一部を介してキノンジアジド基、ナフトキノンアジド基、芳香族アジド基、芳香族シンナモイル基等の放射性線感応性基を導入した変性樹脂;分子中にカルボン酸、スルホン酸等の酸性基を含むウレタン樹脂;フルオレン骨格、エポキシ(メタ)アクリレート及び酸無水物重縮合体を有する樹脂等が挙げられる。
これらアルカリ可溶性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0046】
ブラックレジスト組成物用の溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、シクロヘプタノン、2-ヘプタノン、メチルイソブチルケトン、ブチロラクトン等のケトン類;メタノール、エタノール、n-プロピルアルコール、iso-プロピルアルコール、n-ブチルアルコール、iso-ブチルアルコ-ル、tert-ブチルアルコール、ペンタノール、ヘプタノール、オクタノール、ノナノール、デカノール等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル等のアルコールエーテル類;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸プロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、プロピオン酸ブチル、酪酸メチル、酪酸エチル、酪酸ブチル、酪酸プロピル、乳酸エチル、乳酸ブチル等のエステル類、2-オキシプロピオン酸メチル、2-オキシプロピオン酸エチル、2-オキシプロピオン酸プロピル、2-オキシプロピオン酸ブチル、2-メトキシプロピオン酸メチル、2-メトキシプロピオン酸エチル、2-メトキシプロピオン酸プロピル、2-メトキシプロピオン酸ブチル等のモノカルボン酸エステル類;セロソルブアセテート、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブエステル類;プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコール類;ジエチレルグリコールモノメチルエーテル、ジエチレルグリコールモノエチルエーテル、ジエチレルグリコールジメチルエーテル、ジエチレルグリコールジエチルエーテル、ジエチレルグリコールメチルエチルエーテル等のジエチレングリコール類;トリクロロエチレン、フロン溶剤、HCFC、HFC等のハロゲン化炭化水素類;パーフロロオクタンの様な完全フッ素化溶剤類、トルエン、キシレン等の芳香族類;ジメチルアセチアミド、ジメチルホルムアミド、N-メチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の極性溶剤が挙げられる。
これらの溶剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
重合性化合物とは、例えば紫外線等の活性エネルギー線照射により重合又は架橋反応可能な光重合性官能基を有する化合物である。
上記の重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸、モノヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステル、不飽和カルボン酸と多価カルボン酸及び前述の脂肪族ポリヒドロキシ化合物、芳香族ポリヒドロキシ化合物等の多価ヒドロキシ化合物とのエステル化反応により得られるエステル、ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有する重合性化合物、酸基を有する重合性化合物等が挙げられる。
重合性化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0048】
前記脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステルが挙げられる。
また、これらアクリレートの(メタ)アクリル酸の部分を、イタコン酸に代えたイタコン酸エステル、クロトン酸に代えたクロトン酸エステル、或いは、マレイン酸に代えたマレイン酸エステル等も挙げられる。
【0049】
前記芳香族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルとしては、例えば、ハイドロキノンジ(メタ)アクリレート、レゾルシンジ(メタ)アクリレート、ピロガロールトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
不飽和カルボン酸、多価カルボン酸及び多価ヒドロキシ化合物のエステル化反応により得られるエステルは、単一物であっても、混合物であってもよい。このようなエステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸、フタル酸及びエチレングリコールから得られるエステル、(メタ)アクリル酸、マレイン酸及びジエチレングリコールから得られるエステル、(メタ)アクリル酸、テレフタル酸及びペンタエリスリトールから得られるエステル、(メタ)アクリル酸、アジピン酸、ブタンジオール及びグリセリンから得られるエステル等が挙げられる。
【0050】
前記ポリイソシアネート化合物と(メタ)アクリロイル基含有ヒドロキシ化合物とを反応させたウレタン骨格を有する重合性化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート;シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート;トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネートと、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシ〔1,1,1-トリ(メタ)アクリロイルオキシメチル〕プロパン等の(メタ)アクリロイル基を有するヒドロキシ化合物との反応物が挙げられる。
【0051】
前記酸基を有する重合性化合物としては、例えば、脂肪族ポリヒドロキシ化合物と不飽和カルボン酸とのエステルであり、脂肪族ポリヒドロキシ化合物の未反応の水酸基に非芳香族カルボン酸無水物を反応させて酸基を持たせた多官能重合性化合物が好ましい。当該多官能重合性化合物の調製に用いる脂肪族ポリヒドロキシ化合物としてはペンタエリスリトール又はジペンタエリスリトールが好ましい。
前記多官能重合性化合物の酸価は、現像性、硬化性等が良好となることから、0.1~40の範囲が好ましく、5~30の範囲がより好ましい。酸基を有する多官能重合性化合物を2種以上併用する場合、及び酸基を有する多官能重合性化合物と酸基を有しない多官能重合性化合物を併用する場合には、重合性化合物の混合物の酸価が上記の範囲内になるようにすることが好ましい。
【0052】
前記酸基を有する重合性化合物の具体例としては、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート及びジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸エステルを主成分とする混合物が挙げられ、当該混合物はアロニックスTO-1382(東亞合成株式会社製)として市販されている。
【0053】
上記以外の重合性化合物として、エチレンビス(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;フタル酸ジアリル等のアリルエステル;ジビニルフタレート等のビニル基を有する化合物等が挙げられる。
【0054】
重合性化合物の含有量は、レジスト組成物全固形分中の5~80質量%の範囲であることが好ましく、10~70質量%の範囲であることがより好ましく、20~50質量%の範囲であることがさらに好ましい。
【0055】
光重合開始剤とは、露光によって結合開裂及び/又は反応してラジカルを発生する化合物をいう。光重合開始剤を含有させることで、露光部の硬化が促進されて、感度を向上させることができる。
【0056】
光重合開始剤は特に限定されず、公知の光重合開始剤を使用することができる。光重合開始剤として、例えば、ベンジルケタール系光重合開始剤、α-ヒドロキシケトン系光重合開始剤、α-アミノケトン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキシド系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤、アクリジン系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、ベンゾフェノン系光重合開始剤、アセトフェノン系光重合開始剤、芳香族ケトエステル系光重合開始剤又は安息香酸エステル系光重合開始剤等が挙げられる。
【0057】
光重合開始剤は、1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
光重合開始剤の配合量は、良好な感度が得られ、所望のパターンが得られることから、アルカリ可溶性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上であり、より好ましくは5質量部以上ある。また、好ましくは20質量部以下であり、より好ましくは15質量部以下である。
【0058】
コーティング方法については、公知公用のコーティング方法であればいずれの方法も使用でき、例えば、スリットコーター、スリット&スピンコーター、スピンコーター、ロールコーター、静電塗装、バーコーター、グラビアコーター、ダイコーター、ナイフコーター、インクジェット、デイッピング塗布、スプレー塗布、シャワーコーティング、スクリーン印刷、グラビア印刷、オフセット印刷、反転塗工等の方法が挙げられる。
コーティング後、乾燥することにより、ブラックレジスト組成物の硬化膜が得られる。硬化膜は、例えば、表示装置に使用されるブラックマトリックスに好適である。
【実施例0059】
以下、実施例と比較例とにより、本発明を具体的に説明する。
尚、本発明の実施形態は下記実施例に限定されない。
【0060】
[カリックスアレーン化合物の合成]
(合成例1)
冷却管を設置した500mlの4つ口フラスコに、レゾルシン37.5g(0.34mol:富士フィルム和光純薬製、1,3-ジヒドロキシベンゼン)、デシルアルデヒド53.0g(0.34mol:花王ケミカル製、炭素数10の脂肪族アルデヒド)、ブタノール94.0g、95%硫酸3.8gを仕込み、マントルヒーターで、80℃還流下で4時間撹拌反応させた。反応後、酢酸エチルと水を添加し5回分液洗浄を行った。残った樹脂溶液から溶媒を減圧留去した後、真空乾燥を行い、淡赤色粉末のレゾルシンカリックスアレーン粉末(a-1)79.5gを得た。
【0061】
(合成例2)
デシルアルデヒドをヘキシルアルデヒド(0.34mol:花王ケミカル製、炭素数6の脂肪族アルデヒド)に変更した以外は合成例1と同様にして、レゾルシンカリックスアレーン粉末(a-2)76.8gを得た。
【0062】
(合成例3)
デシルアルデヒドをプロピオンアルデヒド(0.34mol:花王ケミカル製、炭素数3の脂肪族アルデヒド)に変更した以外は合成例1と同様にして、レゾルシンカリックスアレーン粉末(a-3)76.1gを得た。
【0063】
(合成例4)
デシルアルデヒドをベンズアルデヒド(0.34mol:富士フィルム和光純薬製、炭素数7の芳香族アルデヒド)に変更した以外は合成例1と同様にして、レゾルシンカリックスアレーン粉末(a-4)77.3gを得た。
【0064】
[表面修飾カーボンブラック及び分散体の製造と評価]
(実施例1)
冷却管を設置した500mlの4つ口フラスコに、レゾルシンカリックスアレーン粉末(a-1)0.6g、ファーネス法で製造したカーボンブラック粉末(b-1)60g(三菱化学製:#3350B(1次粒子径約20nm))、二重結合含有重合反応性モノマー(c-1)(スチレン)12.0g、過酸化ベンゾイル0.02g、トルエン108.4gを仕込み、マントルヒーターで、70℃還流下で4時間撹拌反応させた。反応後、メタノールと水を添加し固形分を沈殿させ、上澄みを除去する作業を3回繰返して洗浄を行った。残った固形分溶液から溶媒を減圧留去した後、真空乾燥を行い、黒色の表面修飾カーボンブラックの粉末(A-1)67.3gを得た。
上記で得た表面修飾カーボンブラックの粉末(A-1)20gと分散媒としてN-メチルピロリドン180gを混合し、超音波ホモジナイザー(ヤマト科学株式会社製:LUH300)による分散処理を10分間行うことで、カーボンブラック分散体(B-1)を得た。
【0065】
(実施例2)
レゾルシンカリックスアレーン粉末(a-1)の代わりにレゾルシンカリックスアレーン粉末(a-2)を使用した他は実施例1と同様にして、黒色の表面修飾カーボンブラックの粉末(A-2)68.4gを得た。
得られた表面修飾カーボンブラックの粉末(A-2)について、実施例1と同様にして、カーボンブラック分散体(B-2)を得た。
【0066】
(実施例3)
レゾルシンカリックスアレーン粉末(a-1)の代わりにレゾルシンカリックスアレーン粉末(a-3)を使用した他は実施例1と同様にして、黒色の表面修飾カーボンブラックの粉末(A-3)67.4gを得た。
得られた表面修飾カーボンブラックの粉末(A-3)について、実施例1と同様にして、カーボンブラック分散体(B-3)を得た。
【0067】
(実施例4)
レゾルシンカリックスアレーン粉末(a-1)の代わりにレゾルシンカリックスアレーン粉末(a-4)を使用した他は実施例1と同様にして、黒色の表面修飾カーボンブラックの粉末(A-4)68.3gを得た。
得られた表面修飾カーボンブラックの粉末(A-4)について、実施例1と同様にして、カーボンブラック分散体(B-4)を得た。
【0068】
(実施例5)
カーボンブラック粉末をアセチレン法で製造したカーボンブラック粉末(b-2)(富士フィルム和光純薬製:アセチレンブラック(1次粒子径約40nm))とした以外は、実施例1と同様にして、黒色の表面修飾カーボンブラックの粉末(A-5)66.9gを得た。
得られた表面修飾カーボンブラックの粉末(A-5)について、実施例1と同様にして、カーボンブラック分散体(B-6)を得た。
【0069】
(実施例6)
二重結合含有重合反応性モノマーをメタクリル酸メチル(c-2)とした以外は、実施例1と同様にして、黒色の表面修飾カーボンブラックの粉末(A-6)68.0gを得た。
得られた表面修飾カーボンブラックの粉末(A-6)について、実施例1と同様にして、カーボンブラック分散体(B-6)を得た。
【0070】
(比較例1)
レゾルシンカリックスアレーン粉末(a-1)を用いない以外は実施例1と同様にして、黒色の表面修飾カーボンブラックの粉末(A-7)68.9gを得た。
得られた表面修飾カーボンブラックの粉末(A-7)について、実施例1と同様にして、カーボンブラック分散体(B-7)を得た。
【0071】
(比較例2)
実施例1と同じカーボンブラック粉末(b-1)60g、スルホラン1800g及びスルファミン酸(富士フィルム和光純薬製)5gを混合し、140℃で5時間、凝集粒子の撹拌反応を行い、カーボンブラックの表面を処理した。反応後、表面処理されたカーボンブラックを過剰の溶剤で数回洗浄した後、水中に注ぎ、沈殿物を濾過後、真空乾燥により表面処理カーボンブラック粉末(A-8)を得た。
得られた表面処理カーボンブラックの粉末(A-8)について、実施例1と同様にして、カーボンブラック分散体(B-8)を得た。
【0072】
(分散性の評価)
実施例1~6及び比較例1、2で調製したカーボンブラック分散体の一部について、それぞれ調製日当日に、分散媒としてN-メチルピロリドンを用いて濃度を0.1~0.5kg/cmに希釈した。このカーボンブラック分散液について、ヘテロダインレーザードップラー方式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製、UPAモデル9340型)を用いて分散液中の粒子の平均粒子径を測定した。50%累積度数の値(Dupa50%)を平均粒子径とした。
平均粒子径が200nm未満である場合を分散性良好(〇)、平均粒子径が200nm以上である場合を分散性不良(×)とした。結果を表1に示す。
【0073】
(分散安定性の評価)
上記各例のカーボンブラック分散体について、調製日から4週間が経過した際の平均粒子径を前述と同様の条件で測定し、平均粒子径の変化を評価した。
平均粒子径の変化が+10%未満である場合を分散安定性良好(〇)、平均粒子径の変化が+10%以上である場合を分散安定性不良(×)とした。
結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
表1より、カーボンブラック及びカリックスアレーン化合物の存在下で二重結合含有重合反応性モノマーを重合させた表面修飾カーボンブラックを有する分散体は、カリックスアレーン化合物中のアルデヒド化合物に由来する分子構造の差異によらず(実施例1~4)、また、カーボンブラックの種類や二重結合含有重合反応性モノマーによらず(実施例5~6)、分散性及び分散安定性に優れることがわかる。
また、表1より、カリックスアレーン化合物を存在させず、カーボンブラックの存在下で二重結合含有重合反応性モノマーを重合させた表面修飾カーボンブラックを有する分散体は、分散性及び分散安定性のいずれも不良であることがわかる(比較例1)。また、単にカーボンブラックを表面処理剤で処理しただけの分散体も、分散性及び分散安定性のいずれもが不良であることがわかる(比較例2)。
【0076】
[ブラックレジスト組成物の調製と評価]
(実施例7)
10mlのスクリュー管に、実施例1で得たカーボンブラック分散体(B-1)3gとジペンタエリスリトールヘキサアクリレート0.07g、アルカリ可溶性樹脂としてフルオレン骨格を有するエポキシアクリレートの酸無水物重縮合物(固形分56質量%、新日鐵化学社製V259ME)0.52g、光重合開始剤イルガキュアOXE02(BASFジャパン社製)0.03g、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート1.39gを加えて、マグネチックスターラーで10分撹拌して、ブラックレジスト組成物(C-1)を得た。ブラックレジスト組成物中のカーボンブラック含有量は6質量%である。
【0077】
(実施例8~12、比較例3、4)
実施例2~6及び比較例1、2で得たカーボンブラック分散体(B-2)~(B-8)をそれぞれ用いた以外は、実施例7と同様にして、ブラックレジスト組成物(C-2)~(C-8)を調製した。
【0078】
(塗膜の製膜性の評価)
実施例7~12及び比較例3、4の各例で得られたブラックレジスト組成物を、スピンコーターを用いて乾燥後の膜厚が1μmとなるように150mm×150mmのガラス上に塗布し、これを表面温度90℃のホットプレートで1分乾燥し、塗膜を形成した。得られた塗膜について、製膜性を評価した。
光沢があり、ムラのない膜を製膜性良好(〇)、光沢がない、又は、ムラのある膜を製膜性不良(×)とした。
結果を表2に示す。
【0079】
【表2】
【0080】
表2より、本発明のカーボンブラック分散体を配合したブラックレジスト組成物は、塗膜製膜性に優れていることがわかる(実施例7~12)。