(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002085
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】無機金属化合物膜形成性組成物、これを用いた無機金属化合物膜の製造方法、及び無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させる方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/471 20060101AFI20231228BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20231228BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20231228BHJP
C09D 7/63 20180101ALI20231228BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20231228BHJP
H01L 21/47 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01L21/471
C09D1/00
C09D7/65
C09D7/63
C09D7/61
H01L21/47
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101067
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】山内 賢一
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】廖 曰淳
(72)【発明者】
【氏名】高橋 道仁
(72)【発明者】
【氏名】伊熊 直彦
(72)【発明者】
【氏名】山之内 篤史
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【テーマコード(参考)】
4J038
5F058
【Fターム(参考)】
4J038AA001
4J038HA161
4J038HA316
4J038JA25
4J038KA06
4J038KA09
4J038KA20
4J038MA09
4J038PB09
4J038PC03
5F058AB05
5F058AF04
5F058AF06
5F058BB05
5F058BC09
5F058BD12
5F058BF46
(57)【要約】
【課題】400℃以下での加熱において体積収縮が抑制された無機金属化合物膜を与える無機金属化合物膜形成性組成物、これを用いた無機金属化合物膜の製造方法、及び無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させる方法を提供すること。
【解決手段】、無機金属化合物粒子と、分散剤と、溶剤と、を含有する無機金属化合物膜形成性組成物において、そのサイズが50nm以下であり、金属窒化物粒子、金属炭化物粒子、金属ホウ化物粒子、金属炭窒化物粒子、及び金属ホウ窒化物粒子からなる群より選択される少なくとも1種を無機金属化合物粒子として用い、無機金属化合物膜形成性組成物の固形分における、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合を25質量%以上とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機金属化合物粒子と、分散剤と、溶剤と、を含有する無機金属化合物膜形成性組成物であり、
前記無機金属化合物粒子のサイズは、50nm以下であり、
前記無機金属化合物粒子は、金属窒化物粒子、金属炭化物粒子、金属ホウ化物粒子、金属炭窒化物粒子、及び金属ホウ窒化物粒子からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記無機金属化合物膜形成性組成物の固形分において、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である無機金属化合物膜形成性組成物。
【請求項2】
前記分散剤が、キャッピング剤、高分子系分散剤、及び界面活性剤からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1に記載の無機金属化合物膜形成性組成物。
【請求項3】
前記無機金属化合物粒子に含まれる金属は、亜鉛、イットリウム、ハフニウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、タンタル、チタン、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、アンチモン、錫、インジウム、タングステン、銅、バナジウム、クロム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、スカンジウム、及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の無機金属化合物膜形成性組成物。
【請求項4】
前記無機金属化合物粒子は、チタン窒化物粒子、タングステン窒化物粒子、ホウ素窒化物粒子、タングステン炭化物粒子、ジルコニウム窒化物粒子、タングステンホウ化物粒子、タングステン炭窒化物粒子、アルミニウム窒化物粒子、タンタル窒化物粒子、タングステンホウ炭化物粒子、及びタングステンホウ窒化物粒子からなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1又は2に記載の無機金属化合物膜形成性組成物。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の無機金属化合物膜形成性組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を加熱する加熱工程と、
を含む、無機金属化合物膜の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程における加熱温度が400℃以上である、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記無機金属化合物膜がメタルハードマスクである、請求項5に記載の製造方法。
【請求項8】
無機金属化合物膜形成性組成物からなる塗膜を形成し、前記塗膜を加熱して得られる無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させる方法であって、
無機金属化合物粒子と、分散剤と、溶剤と、を含有するように前記無機金属化合物膜形成性組成物を構成することを含み、
前記無機金属化合物粒子のサイズは、50nm以下であり、
前記無機金属化合物粒子に含まれる無機金属化合物は、金属窒化物、金属炭化物、及び金属ホウ化物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
前記無機金属化合物膜形成性組成物の固形分において、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機金属化合物膜形成性組成物、これを用いた無機金属化合物膜の製造方法、及び無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、半導体デバイス製造等におけるエッチング加工では、フォトレジストや電子線レジスト等のレジスト材料を用いて、フォトリソグラフィー技術によって形成された、パターン化されたレジスト膜がエッチングマスクとして使用されている。
良好にエッチング加工を行うためには、同じ種類のエッチャントに対するエッチングレートとして、エッチングマスクのエッチングレートが、エッチング対象物のエッチングレートよりもかなり低いことが望まれる。
【0003】
しかし、上記のレジスト材料を用いて形成されたレジスト膜をエッチングマスクとして用いる場合、エッチャントと、エッチング対象物の組み合わせによっては、エッチング対象物のエッチングレートと、エッチングマスクのエッチングレートとが大差ない場合がある。
このような場合、一般的に種々のエッチャントに対して低いエッチングレートを示す、ハードマスクと称されるエッチングマスクが使用されることが多い。ハードマスクとしては、例えば、酸化ジルコニウムナノ粒子等の金属酸化物ナノ粒子を無機金属化合物粒子として含む無機金属化合物膜からなるハードマスクが公知である(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の無機金属化合物膜は、金属酸化物ナノ粒子のような無機金属化合物粒子を含む組成物からなる塗膜を加熱して形成される。本発明者らが検討したところ、従来の金属酸化物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が大きいため、450℃の高温において本焼成した際に面内均一性が低くなり、その結果、本焼成後の金属酸化物膜をドライエッチングにおけるハードマスクとして使用した場合に、均一にドライエッチングを行うことが困難であることが判明した。
【0006】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、400℃以下での加熱において体積収縮が抑制された無機金属化合物膜を与える無機金属化合物膜形成性組成物、これを用いた無機金属化合物膜の製造方法、及び無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させる方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、無機金属化合物粒子と、分散剤と、溶剤と、を含有する無機金属化合物膜形成性組成物において、そのサイズが50nm以下であり、金属窒化物粒子、金属炭化物粒子、金属ホウ化物粒子、金属炭窒化物粒子、及び金属ホウ窒化物粒子からなる群より選択される少なくとも1種を無機金属化合物粒子として用い、無機金属化合物膜形成性組成物の固形分における、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合を25質量%以上とすることにより上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0008】
本発明の第1の態様は、無機金属化合物粒子と、分散剤と、溶剤と、を含有する無機金属化合物膜形成性組成物であり、
無機金属化合物粒子のサイズは、50nm以下であり、
無機金属化合物粒子は、金属窒化物粒子、金属炭化物粒子、金属ホウ化物粒子、金属炭窒化物粒子、及び金属ホウ窒化物粒子からなる群より選択される少なくとも1種であり、
無機金属化合物膜形成性組成物の固形分において、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である無機金属化合物膜形成性組成物である。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様にかかる無機金属化合物膜形成性組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
塗膜を加熱する加熱工程と、
を含む、無機金属化合物膜の製造方法である。
【0010】
本発明の第三の態様は、無機金属化合物膜形成性組成物からなる塗膜を形成し、塗膜を加熱して得られる無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させる方法であって、
無機金属化合物粒子と、分散剤と、溶剤と、を含有するように無機金属化合物膜形成性組成物を構成することを含み、
無機金属化合物粒子のサイズは、5nm以下であり、
無機金属化合物粒子に含まれる無機金属化合物は、金属窒化物、金属炭化物、及び金属ホウ化物からなる群より選択される少なくとも1種であり、
無機金属化合物膜形成性組成物の固形分において、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、400℃以下での加熱において体積収縮が抑制された無機金属化合物膜を与える無機金属化合物膜形成性組成物、これを用いた無機金属化合物膜の製造方法、及び無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させる方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<無機金属化合物膜形成性組成物>
無機金属化合物膜形成性組成物は、無機金属化合物粒子と、分散剤と、溶剤と、を含有する。無機金属化合物膜形成性組成物は、400℃以下での加熱において体積収縮が抑制された無機金属化合物膜を与えることができる。
【0013】
無機金属化合物膜形成性組成物の固形分において、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合は、25質量%以上であり、好ましく30質量%以上であり、より好ましく40質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上であり、特に好ましくは60質量%以上である。当該割合が上記の範囲内であると、無機分質量の割合を高く設定でき、その結果、得られる無機金属化合物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。当該割合の上限は、特に限定されず、90質量%でよく、80質量%でも75質量%でもよい。
【0014】
[無機金属化合物粒子]
無機金属化合物粒子は、無機金属化合物からなり、後述する所定の要件を満たす粒子であれば特に限定されない。
無機金属化合物粒子は、一次粒子であっても、二次粒子であっても、三次粒子であってもよい。一次粒子は単一の粒子からなる。二次粒子は、一次粒子の凝集物である。三次粒子は、一次粒子と、二次粒子との凝集物、又は二次粒子の凝集物である。
典型的には、無機金属化合物粒子は、無機金属化合物ナノ粒子の集合体である、無機金属化合物ナノクラスターであってよい。無機金属化合物ナノクラスターは、無機金属化合物から形成される複数の面から構成される集合体をいう。
【0015】
無機金属化合物粒子のサイズは、50nm以下であり、15nm以下が好ましく、10nm以下がさらに好ましい。無金属化合物粒子のサイズの下限は、特に限定されない。無機化合物粒子のサイズは、例えば、2nm以上であってよく、3nm以上であってもよい。
無機金属化合物膜形成性組成物が、上記のサイズの無機金属化合物粒子を含むことにより、400℃以下の低温での加熱において金属化合物膜の体積収縮が良好に抑制され、450℃の高温において本焼成した際に面内均一性が高い。その結果として、本焼成後の金属化合物膜をドライエッチングにおけるハードマスクとして使用した場合に、均一にドライエッチングを行いやすい。
【0016】
無機金属化合物粒子のサイズは、透過型電子顕微鏡(TEM)により無機金属化合物粒子を観察するTEM法により測定できる。
より具体的には、無機金属化合物粒子の分散液の観察用プレート上に塗布した後、プレート上の分散液を乾燥させる。乾燥されたプレートをTEMにより観察する。
得られた観察画像において、100個以上の無機金属化合物粒子のサイズを測定する。ここで、フェレ径の最大値を無機金属化合物粒子のサイズとする。測定された、100個以上の無金属化合物粒子のサイズの数平均値を、無機金属化合物粒子のサイズとする。
【0017】
無機金属化合物粒子は、結晶質であっても、非晶質であってもよい。また、無金属化合物粒子は、結晶質部分と、非晶質部分とを含んでいてもよい。エッチング後にゆがみの少ないパターン化された無機金属化合物膜を形成しやすいことから、無機金属化合物粒子が、非晶質部分を含むのが好ましく、非晶質であるのがより好ましい。
無機金属化合物粒子の形状は特に限定されない。無機金属化合物粒子の形状としては、球状、多面体形状、棒状、薄片状、不定形状等のいずれでもよい。
【0018】
無機金属化合物粒子に含まれる金属元素としては、特に限定されない。なお、しばしば、半金属元素として、金属元素と区別されることがある、ホウ素、ケイ素、ゲルマニウム、ヒ素、アンチモン、及びテルルについても、本出願では金属元素であるとする。
無機金属化合物粒子に含まれる金属元素としては、例えば亜鉛、イットリウム、ハフニウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、タンタル、チタン、ケイ素、ホウ素、アルミニウム、アンチモン、錫、インジウム、タングステン、銅、バナジウム、クロム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、スカンジウム、及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種であるが挙げられる。
エッチング選択比の点から、これらの元素の中では、チタン、ホウ素、及びタングステンが好ましい。
【0019】
無機金属化合物粒子の好適な具体例としては、チタン窒化物粒子、タングステン窒化物粒子、ホウ素窒化物粒子、タングステン炭化物粒子、ジルコニウム窒化物粒子、タングステンホウ化物粒子、タングステン炭窒化物粒子、アルミニウム窒化物粒子、タンタル窒化物粒子、タングステンホウ炭化物粒子、及びタングステンホウ窒化物粒子からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。
なお、無機金属化合物粒子に含まれる金属原子が、複数の原子価を取り得る場合、同じ種類の金属元素から構成される無機金属化合物として、複数種の金属原子化合物が存在する場合がある。
例えば、窒化タングステンについて、W2N3(六方晶系)、WN(六方晶系)、W3N4(立方晶系)等が存在する。
【0020】
無機金属化合物粒子の製造方法は特に限定されない。無機金属化合物粒子の製造方法としては、公知の種々の方法を採用し得る。無機金属化合物粒子のサイズは、例えば、原料の使用比率、温度条件、反応時間、撹拌速度等の種々の合成条件を適宜調整することにより調整できる。
また、無機金属化合物粒子としては、市販品を用いることもできる。
【0021】
無機金属化合物粒子の使用量は、無機金属化合物膜形成性組成物の固形分における、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である限り、特に限定されない。
無機金属化合物粒子の使用量は、無機金属化合物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、60質量%以上99.9質量%以下であり、好ましくは65質量%以上95質量%以下である。無機金属化合物の使用量が上記の範囲内であると、得られる無機金属化合物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。
【0022】
[分散剤]
無機金属化合物膜形成性組成物は、分散剤を含む。分散剤としては、公知の種々の分散液において、分散安定化の目的で使用されている添加剤を特に限定なく用いることができる。好ましい分散剤としては、キャッピング剤、高分子系分散剤、及び界面活性剤が挙げられる。
分散剤の使用量は、無機金属化合物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、0.1質量%以上40質量%以下であり、好ましくは5質量%以上35質量%以下である。上記範囲内で、分散剤として、キャッピング剤、高分子系分散剤、及び界面活性剤をそれぞれ単独で用いてもよいし、2種又は3種組み合わせて用いてもよい。無機金属化合物の使用量が上記の範囲内であると、得られる無機金属化合物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。
【0023】
キャッピング剤は、無機金属化合物粒子の表面に結合し、立体障害効果等により無機金属化合物粒子の分散を安定化させる。
高分子系分散剤は、無機金属化合物粒子に吸着された状態、又は無機金属化合物粒子から遊離している状態での立体障害効果等により無機金属化合物粒子の分散を安定化させる。
界面活性剤は、溶剤の表面張力を低下させることによる、無機金属化合物粒子と溶剤との濡れ性の向上や、無機金属化合物粒子に吸着された状態、又は無機金属化合物粒子から遊離している状態での立体障害効果等により無機金属化合物粒子の分散を安定化させる。
【0024】
なお、本明細書において、無機金属化合物の表面に結合し得る化合物であって、高分子系分散剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれにも該当しない化合物を、「キャッピング剤」とする。
「高分子系分散剤」は、ポリアルキレンオキシド鎖以外のポリマー鎖を有する分散剤である。
「界面活性剤」は、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、及び両性界面活性剤のいずれかに該当する。界面活性剤は、無機金属化合物粒子の表面に結合し得ても、結合し得なくてもよい。
【0025】
分散剤が、キャッピング剤を含むのが好ましく、界面活性剤を含むのも好ましい。
以下、キャッピング剤、及び界面活性剤について説明する。
【0026】
〔キャッピング剤〕
無機金属化合物膜形成性組成物において、無機金属化合物粒子の一部又は全部は、キャッピング剤で覆われていてもよい。キャッピング剤は、アルコキシシラン、フェノール、アルコール、カルボン酸、及びカルボン酸ハライドからなる群から選択される少なくとも1種を含む。無機金属化合物膜形成性組成物が、無機金属化合物粒子とともに、キャッピング剤を含有すると、得られる無機金属化合物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。
【0027】
キャッピング剤の具体例としては、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェネチルフェニルトリメトキシシラン、フェネチルエチルトリエトキシシラン、3-{2-メトキシ[ポリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリメトキシシラン、3-{2-メトキシ[ポリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリエトキシシラン、3-{2-メトキシ[トリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリメトキシシラン、3-{2-メトキシ[トリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、1-ヘキセニルトリメトキシシラン,1-ヘキセニルトリエトキシシラン、1-オクテニルトリメトキシシラン、1-オクテニルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ヘプタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、オレイルアルコール、n-ドデシルアルコール、n-ヘキサデカノール(セタノール)、n-オクタデカノール、ベンジルアルコール、フェノール、及びトリエチレングリコールモノメチルエーテル等のフェノール類又はアルコール類;ラウリルホスホン酸、ステアリルホスホン酸等のホスホン酸類;ラウリルメルカプタン、ステアリルメルカプタン等のメルカプタン類;オクタン酸、酢酸、プロピオン酸、2-[2-(メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、オレイン酸、ラウリン酸、安息香酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸等の酸類;及びこれらの酸類の酸クロライド等の、これらの酸類の酸ハライド類が挙げられ、好ましくは、フェノール類、アルコール類、又は酸類として挙げた化合物である。
【0028】
キャッピング剤の使用量は、無機金属化合物膜形成性組成物の固形分における、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である限り、特に限定されない。
キャッピング剤の使用量は、無機金属化合物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、10質量%以上35質量%以下であり、好ましくは13質量%以上31質量%以下であり、より好ましくは、16質量%以上30質量%以下である。キャッピング剤の使用量が上記の範囲内であると、有機分質量の割合が高くなりすぎず、その結果、得られる無機金属化合物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。
【0029】
〔高分子系分散剤〕
高分子系分散剤としては、従来より、種々の無機粒子や、顔料等の分散用に用いられている高分子系分散剤を特に限定なく用いることができる。
高分子系分散剤としては、ポリアミドアミン、ポリアミドアミン塩、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、高分子量不飽和酸エステル、変性ポリウレタン、変性ポリエステル、変性ポリ(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル系共重合体、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、及び、顔料誘導体等を挙げられる。
高分子系分散剤は、その構造から、直鎖状高分子系分散剤、末端変性型高分子系分散剤、グラフト型高分子系分散剤、及び、ブロック型高分子系分散剤に分類できる。
【0030】
高分子分散剤の具体例としては、DISPERBYK-102、DISPERBYK-103、DISPERBYK-106、DISPERBYK-108、DISPERBYK-109、DISPERBYK-110、DISPERBYK-111、DISPERBYK-118、DISPERBYK-140、DISPERBYK-142、DISPERBYK-145、DISPERBYK-161、DISPERBYK-162、DISPERBYK-163、DISPERBYK-164、DISPERBYK-167、DISPERBYK-168、DISPERBYK-170、DISPERBYK-171、DISPERBYK-174、DISPERBYK-180、DISPERBYK-182、DISPERBYK-184、DISPERBYK-185、DISPERBYK-2000、DISPERBYK-2001、DISPERBYK-2008、DISPERBYK-2009、DISPERBYK-2013、DISPERBYK-2022、DISPERBYK-2025、DISPERBYK-2050、DISPERBYK-2055、DISPERBYK-2096、DISPERBYK-2150、DISPERBYK-2152、DISPERBYK-2155、DISPERBYK-2163、DISPERBYK-2164、DISPERBYK-2200、BYK-P104、BYK-P104S、BYK-P105、BYK-9076、BYK-9077、及びBYK-220S(いずれもビックケミー社製)等が挙げられる。
【0031】
高分子分散剤の使用量は、無機金属化合物膜形成性組成物の固形分における、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である限り、特に限定されない。
高分子分散剤の使用量は、無機金属化合物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、10質量%以上35質量%以下であり、好ましくは18質量%以上28質量%以下である。
【0032】
〔界面活性剤〕
界面活性剤としては、従来より、種々の無機粒子や、顔料等を含む分散液に配合されている界面活性剤を特に限定なく用いることができる。
また、無機金属化合物膜形成性組成物が界面活性剤を含む場合、無機金属化合物膜形成性組成物の塗布性、消泡性、及びレベリング性等が改良され得る。
界面活性剤としては、例えば、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤が好ましい。
【0033】
シリコーン系界面活性剤の具体例としては、BYK-077、BYK-085、BYK-300、BYK-301、BYK-302、BYK-306、BYK-307、BYK-310、BYK-320、BYK-322、BYK-323、BYK-325、BYK-330、BYK-331、BYK-333、BYK-335、BYK-341、BYK-344、BYK-345、BYK-346、BYK-348、BYK-354、BYK-355、BYK-356、BYK-358、BYK-361、BYK-370、BYK-371、BYK-375、BYK-380、及びBYK-390(いずれもビックケミー社製)等が挙げられる。
【0034】
フッ素系界面活性剤の具体例としては、F-114、F-177、F-410、F-411、F-450、F-493、F-494、F-443、F-444、F-445、F-446、F-470、F-471、F-472SF、F-474、F-475、F-477、F-478、F-479、F-480SF、F-482、F-483、F-484、F-486、F-487、F-172D、MCF-350SF、TF-1025SF、TF-1117SF、TF-1026SF、TF-1128、TF-1127、TF-1129、TF-1126、TF-1130、TF-1116SF、TF-1131、TF-1132、TF-1027SF、TF-1441、及びTF-1442(DIC社製);ポリフォックスシリーズのPF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520(オムノバ社製)等が挙げられる。
【0035】
界面活性剤の使用量は、無機金属化合物膜形成性組成物の固形分における、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合が25質量%以上である限り、特に限定されない。
界面活性剤は、無機金属化合物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、0.01質量%以上0.15質量%以下であり、好ましくは0.05質量%以上0.1質量%以下である。
【0036】
[基材]
無機金属化合物膜形成性組成物は、塗膜形成性や塗布性の調整の目的で、基材を含有してもよい。基材は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。基材としては、特に限定されず、樹脂等の重合体や低分子化合物等の非重合体を用いることができる。
【0037】
基材の質量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、好ましくは700以上40000以下であり、より好ましくは900以上30000以下であり、さらにより好ましくは1000以上20000以下である。Mwが上記範囲内であると、塗膜形成性及び塗布性が良好となりやすい。また、Mwが4000以下である重合体又は非重合体を用いることで、凹凸基板に対するギャップフィリング性が良好となりやすい。なお、本明細書において、Mwとしては、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の値を採用する。
【0038】
〔アクリル系樹脂(a-IV)〕
アクリル系樹脂(a-IV)としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位、及び/又は(メタ)アクリル酸エステル等の他のモノマーに由来する構成単位を含むものを用いることができる。(メタ)アクリル酸は、アクリル酸、又はメタクリル酸である。アクリル系樹脂(a-IV)中の構成単位を与えるモノマーとしては、典型的には下記式(a-4-1)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0039】
【0040】
上記式(a-4-1)中、Ra9は、水素原子又はメチル基である。Ra10は、水素原子又は1価の有機基である。この有機基は、該有機基中にヘテロ原子等の炭化水素基以外の結合や置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。Ra11は、-O-、又は-NRa12-で表される基である。Ra12は、水素原子、又は炭素原子数1以上6以下のアルキル基である。
【0041】
Ra10の有機基中の炭化水素基以外の置換基としては、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されず、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシ基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミノ基(-NH2、-NHR、-NRR’:R及びR’はそれぞれ独立に炭化水素基を示す)等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
【0042】
また、Ra10としての有機基は、アクリロイルオキシ基、メタアクリロイルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基等の反応性の官能基を有していてもよい。
アクリロイルオキシ基やメタクリロイルオキシ基等の、不飽和二重結合等を有するアシル基は、例えば、エポキシ基を有する構成単位を含むアクリル系樹脂(a-IV)における、エポキシ基の少なくとも一部に、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸を反応させることにより製造することができる。
エポキシ基の少なくとも一部に、不飽和カルボン酸を反応させた後に、反応により生成した基に多塩基酸無水物を反応させてもよい。
【0043】
多塩基酸無水物の具体例としては、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水イタコン酸、無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3-メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、4-メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、3-エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、4-エチルヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、3-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、4-メチルテトラヒドロ無水フタル酸、3-エチルテトラヒドロ無水フタル酸、及び4-エチルテトラヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0044】
また、アクリル系樹脂(a-IV)が有する、アクリル酸やメタクリル酸等の不飽和カルボン酸に由来する構成単位に対して、エポキシ基と不飽和二重結合とを有する化合物を反応させることによって、アクリル系樹脂(a-IV)に不飽和二重結合を導入することができる。エポキシ基と不飽和二重結合とを有する化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレートや、後述する式(a-4-1a)~(a-4-1o)で表される化合物を用いることができる。
【0045】
Ra10としては、アルキル基、アリール基、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ポリシクロアルキルアルキル基、アラルキル基、又は複素環基が好ましく、これらの基は、ハロゲン原子、水酸基、アルキル基、又は複素環基で置換されていてもよく、これらの基に酸素原子が結合してエポキシ基が形成されてもよい。また、これらの基がアルキレン部分を含む場合、アルキレン部分は、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合により中断されていてもよい。
【0046】
アルキル基が、直鎖状又は分岐鎖状のものである場合、その炭素原子数は、1以上20以下が好ましく、1以上15以下がより好ましく、1以上10以下が特に好ましい。好適なアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、イソオクチル基、sec-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、イソノニル基、n-デシル基、イソデシル基等が挙げられる。
【0047】
シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ポリシクロアルキルアルキル基、及びこれらの基以外の脂環式基含有基において、これらの基に含まれる脂環式基の好適な例としては、シクロペンチル基、及びシクロヘキシル基等単環の脂環式基や、アダマンチル基、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基、ビシクロ-[2.1.1]-ヘキシル基、ビシクロ-[2.2.1]-ヘプチル基、ビシクロ-[2.2.2]-オクチル基、ビシクロ-[3.3.0]-オクチル基、ビシクロ-[4.3.0]-ノニル基、及びビシクロ-[4.4.0]-デシル基等のポリシクロアルキル基が挙げられる。
【0048】
式(a4-1)で表され、シクロアルキル基、ポリシクロアルキル基、シクロアルキルアルキル基、ポリシクロアルキルアルキル基、及びこれらの基以外の脂環式基含有基をRa10として有する化合物の好適な例としては、下記式(a-4-1a)~(a-4-1h)で表される化合物が挙げられる。これらの中でも、下記式(a-4-1c)~(a-4-1h)で表される化合物が好ましく、下記式(a-4-1c)、又は下記式(a-4-1d)で表される化合物がより好ましい。
【0049】
【0050】
上記式中、Ra20は水素原子又はメチル基を示し、Ra21は単結合又は炭素原子数1~6の2価の脂肪族飽和炭化水素基を示し、Ra22は水素原子又は炭素原子数1~5のアルキル基を示す。Ra21としては、単結合、直鎖状又は分枝鎖状のアルキレン基、例えばメチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、エチルエチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基が好ましい。Ra22としては、例えばメチル基、エチル基が好ましい。
【0051】
ポリシクロアルキル(メタ)アクリレート(A-1)に由来する構成単位及び/又はアラルキル(メタ)アクリレート(A-2)に由来する構成単位を含むアクリル系樹脂を含有するのが好ましい。アクリル系樹脂は、(A-1)に由来する構成単位を含む場合、例えば、上記式(a-4-1c)~(a-4-1h)のいずれかで表され、Ra21として単結合を有する化合物である(A-1)に由来する構成単位を含むのが本発明の効果の点で、好ましい。
【0052】
式(a-4-1)で表される化合物が、エポキシ基を有する鎖状の基をRa10として有する場合の、式(a-4-1)で表される化合物の具体例としては、グリシジル(メタ)アクリレート、2-メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4-エポキシブチル(メタ)アクリレート、6,7-エポキシヘプチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エポキシアルキルエステル類が挙げられる。
【0053】
また、式(a-4-1)で表される化合物は、脂環式エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステルであってもよい。脂環式エポキシ基を構成する脂環式基は、単環であっても多環であってもよい。単環の脂環式基としては、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。また、多環の脂環式基としては、ノルボルニル基、イソボルニル基、トリシクロノニル基、トリシクロデシル基、テトラシクロドデシル基等のポリシクロアルキルが挙げられる。
【0054】
式(a-4-1)で表される化合物が脂環式エポキシ基を含む(メタ)アクリレートである場合の具体例としては、例えば下記式(a-4-1i)~(a-4-1m)で表される化合物が挙げられる。
【0055】
【0056】
また、式(a-4-1)で表される化合物の他の具体例としては、(メタ)アクリル酸、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、モノ2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、ジ2-(メタ)アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、グリセリンジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物、O-フェニルフェノールグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、グリセリンポリグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、1-アクリロイルオキシエチル(メタ)アクリレート、1,2,3-プロパントリオール1,3―ジ(メタ)アクリレート、2-カルボキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマーが挙げられる。
【0057】
アクリル系樹脂(a-IV)中の構成単位を与える化合物として、本発明の効果の点で、好ましくは、(メタ)アクリル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタル酸、炭素原子数1~5のアルキル(メタ)アクリレート、ポリシクロアルキル(メタ)アクリレート(A-1)、又はアラルキル(メタ)アクリレート(A-2)が挙げられる。ポリシクロアルキル(メタ)アクリレート(A-1)としては、例えば、上記式(a-4-1c)~(a-4-1h)のいずれかで表され、Ra21として単結合を有する化合物が挙げられ、アラルキル(メタ)アクリレート(A-2)としては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0058】
アクリル系樹脂(a-IV)において、上記好ましい化合物に由来する構成単位の量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、全構成単位の量に対して、例えば、10質量%以上であり、30質量%以上が好ましい。上限は適宜設定すればよく、例えば、100質量%以下でもよく、90質量%以下であってもよい。
【0059】
また、アクリル系樹脂(a-IV)は、(メタ)アクリル酸エステル以外のモノマーを重合させたものであってもよい。このようなモノマーとしては、(メタ)アクリルアミド類、不飽和カルボン酸類、アリル化合物、ビニルエーテル類、ビニルエステル類、スチレン類等が挙げられ、ビニルエーテル類又はスチレン類が好ましい。これらのモノマーは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0060】
(メタ)アクリルアミド類としては、(メタ)アクリルアミド、N-アルキル(メタ)アクリルアミド、N-アリール(メタ)アクリルアミド、N,N-ジアルキル(メタ)アクリルアミド、N,N-アリール(メタ)アクリルアミド、N-メチル-N-フェニル(メタ)アクリルアミド、N-ヒドロキシエチル-N-メチル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0061】
不飽和カルボン酸類としては、クロトン酸等のモノカルボン酸;マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等のジカルボン酸;これらジカルボン酸の無水物;等が挙げられる。
【0062】
アリル化合物としては、酢酸アリル、カプロン酸アリル、カプリル酸アリル、ラウリン酸アリル、パルミチン酸アリル、ステアリン酸アリル、安息香酸アリル、アセト酢酸アリル、乳酸アリル等のアリルエステル類;アリルオキシエタノール;等が挙げられる。
【0063】
ビニルエーテル類としては、ヘキシルビニルエーテル、オクチルビニルエーテル、デシルビニルエーテル、エチルヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、クロロエチルビニルエーテル、1-メチル-2,2-ジメチルプロピルビニルエーテル、2-エチルブチルビニルエーテル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールビニルエーテル、ジメチルアミノエチルビニルエーテル、ジエチルアミノエチルビニルエーテル、ブチルアミノエチルビニルエーテル、ベンジルビニルエーテル、テトラヒドロフルフリルビニルエーテル等のアルキルビニルエーテル;ビニルフェニルエーテル、ビニルトリルエーテル、ビニルクロロフェニルエーテル、ビニル-2,4-ジクロロフェニルエーテル、ビニルナフチルエーテル、ビニルアントラニルエーテル等のビニルアリールエーテル;等が挙げられる。
【0064】
ビニルエステル類としては、ビニルブチレート、ビニルイソブチレート、ビニルトリメチルアセテート、ビニルジエチルアセテート、ビニルバレレート、ビニルカプロエート、ビニルクロロアセテート、ビニルジクロロアセテート、ビニルメトキシアセテート、ビニルブトキシアセテート、ビニルフェニルアセテート、ビニルアセトアセテート、ビニルラクテート、ビニル-β-フェニルブチレート、安息香酸ビニル、サリチル酸ビニル、クロロ安息香酸ビニル、テトラクロロ安息香酸ビニル、ナフトエ酸ビニル等が挙げられる。
【0065】
スチレン類としては、スチレン;メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレン、エチルスチレン、ジエチルスチレン、イソプロピルスチレン、ブチルスチレン、ヘキシルスチレン、シクロヘキシルスチレン、デシルスチレン、ベンジルスチレン、クロロメチルスチレン、トリフルオロメチルスチレン、エトキシメチルスチレン、アセトキシメチルスチレン等のアルキルスチレン;メトキシスチレン、4-メトキシ-3-メチルスチレン、ジメトキシスチレン等のアルコキシスチレン;クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレン、テトラクロロスチレン、ペンタクロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ヨードスチレン、フルオロスチレン、トリフルオロスチレン、2-ブロモ-4-トリフルオロメチルスチレン、4-フルオロ-3-トリフルオロメチルスチレン等のハロスチレン;等が挙げられる。
【0066】
無機金属化合物膜形成性組成物は無機金属化合物粒子を含むため、基材がアクリル系樹脂であっても基板加工に必要なエッチング耐性を付与できるが、エッチング耐性の向上等の点で、基材として、芳香環を含む重合体、芳香環を含む非重合体、又はこれらの両方を追加で用いてもよい。
【0067】
芳香環を含む非重合体としては、ビスフェニルフルオレン骨格、ビスナフチルフルオレン骨格、メチレンジナフタレン骨格、テトラベンゾナフタレン骨格、又はカリックスアレーン骨格を有する化合物(X)が挙げられる。これらの化合物は置換基を有していてもよく、置換基の例としては、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニルオキシ基、スチリル基、アリル基、プロパルギル基、ジグリシジルアミノ基、ジプロパルギルアミノ基等の重合性基又は重合性基を含む有機基であることが硬化性等の点で好ましい。
【0068】
芳香環を含む重合体としては、
・化合物(X)を構成する骨格を繰り返し構造として有する樹脂、
・ベンゼン骨格、ナフタレン骨格、ビフェニル骨格、及び/又はアントラセン骨格を繰り返し構造として有する樹脂、
・化合物(X)の縮合体、
等が挙げられる。縮合体は、化合物(X)に対し、アルデヒド類、アルコキシ基を有する化合物類、アルカノイルオキシ基を有する化合物類、トリオキサン類、及びフルオレノン類からなる群より選択される1種以上を作用させることにより得られる。また、芳香環を含む重合体としては、公知のノボラック樹脂等を用いてもよい。
【0069】
〔ノボラック樹脂(a-II)〕
ノボラック樹脂(a-II)としては、従来から感光性組成物に配合されている種々のノボラック樹脂を用いることができる。ノボラック樹脂(a-II)としては、フェノール性水酸基を有する芳香族化合物(以下、単に「フェノール類」という。)とアルデヒド類とを酸触媒下で付加縮合させることにより得られるものが好ましい。
【0070】
(フェノール類)
ノボラック樹脂(a-II)を作製する際に用いられるフェノール類としては、例えば、フェノール;o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール等のクレゾール類;2,3-キシレノール、2,4-キシレノール、2,5-キシレノール、2,6-キシレノール、3,4-キシレノール、3,5-キシレノール等のキシレノール類;o-エチルフェノール、m-エチルフェノール、p-エチルフェノール等のエチルフェノール類;2-イソプロピルフェノール、3-イソプロピルフェノール、4-イソプロピルフェノール、o-ブチルフェノール、m-ブチルフェノール、p-ブチルフェノール、並びにp-tert-ブチルフェノール等のアルキルフェノール類;2,3,5-トリメチルフェノール、及び3,4,5-トリメチルフェノール等のトリアルキルフェノール類;レゾルシノール、カテコール、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、ピロガロール、及びフロログリシノール等の多価フェノール類;アルキルレゾルシン、アルキルカテコール、及びアルキルハイドロキノン等のアルキル多価フェノール類(いずれのアルキル基も炭素原子数1以上4以下である。);α-ナフトール;β-ナフトール;ヒドロキシジフェニル;並びにビスフェノールA等が挙げられる。これらのフェノール類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0071】
(アルデヒド類)
ノボラック樹脂(a-II)を作製する際に用いられるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、ベンズアルデヒド、ニトロベンズアルデヒド、及びアセトアルデヒド等が挙げられる。これらのアルデヒド類は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0072】
(酸触媒)
ノボラック樹脂(a-II)を作製する際に用いられる酸触媒としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、及び亜リン酸等の無機酸類;蟻酸、シュウ酸、酢酸、ジエチル硫酸、及びパラトルエンスルホン酸等の有機酸類;並びに酢酸亜鉛等の金属塩類等が挙げられる。これらの酸触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0073】
基材の使用量は特に限定されず、無機金属化合物膜形成性組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、例えば、0.5質量%以上35質量%以下であり、好ましくは1質量%以上25質量%以下であり、より好ましくは2質量%以上15質量%以下である。基材の使用量が上記の範囲内であると、有機分質量の割合が高くなりすぎず、その結果、得られる無機金属化合物膜は、400℃以下の低温での加熱において体積収縮が抑制されやすい。
【0074】
無機金属化合物膜形成性組成物の固形分において、無機金属化合物粒子と基材との合計に対する無機金属化合物粒子の質量比は、例えば、45質量%以上であり、好ましくは50質量%以上であり、より好ましくは60質量%以上であり、さらにより好ましくは65質量%以上である。上記質量比の上限は、例えば、95質量%以下であり、好ましくは90質量%以下である。
【0075】
[溶剤]
無機金属化合物膜形成性組成物は、塗布性や粘度の調整の目的で、溶剤を含有する。溶剤としては、典型的には有機溶剤が用いられる。有機溶剤の種類は、無機金属化合物膜形成性組成物に含まれる成分を均一に溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。
【0076】
溶剤として使用し得る有機溶剤の好適な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチル部炭酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0077】
無機金属化合物膜形成性組成物における溶剤の使用量は特に限定されない。無機金属化合物膜形成性組成物の塗布性の点等から、溶剤の使用量は、無機金属化合物膜形成性組成物全体に対して、例えば、30質量%以上99.9質量%以下であり、好ましくは50質量%以上98質量%以下である。
【0078】
[その他の成分]
本発明に係る無機金属化合物膜形成性組成物には、必要に応じて、前述の分散剤とは別の分散剤、熱重合禁止剤、消泡剤、シランカップリング剤、着色剤(顔料、染料)、無機フィラー、有機フィラー、架橋剤、酸発生剤等の添加剤を含有させることができる。いずれの添加剤も、従来公知のものを用いることができる。熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられ、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0079】
本発明に係る無機金属化合物膜形成性組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、溶剤の存在下で、無機金属化合物粒子をキャッピング剤等の分散剤で処理した後、得られたスラリーに基材、任意に溶剤、及び任意にその他の成分を添加する方法が挙げられる。具体的には、本発明に係る無機金属化合物膜形成性組成物は、例えば、後述の実施例に示す通りにして製造することができる。
【0080】
<無機金属化合物膜の製造方法>
無機金属化合物膜の製造方法は、無機金属化合物膜形成性組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、塗膜を加熱する加熱工程と、を含む。
【0081】
塗膜は、例えば、半導体基板等の基板上に無機金属化合物膜形成性組成物を塗布することにより、形成することができる。塗布方法としては、ロールコータ、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置、スピンコーター)、ディップコーター、スプレーコーター、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。また、無機金属化合物膜形成性組成物の粘度を適切な範囲に調整したうえで、インクジェット法、スクリーン印刷法等の印刷法によって無機金属化合物膜形成性組成物の塗布を行って、所望の形状にパターニングされた塗膜を形成してもよい。
【0082】
基板としては、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、又は金属酸化窒化膜を含むものであることが好ましい。基板を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン、又はこれらの合金等が挙げられるが、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウムを含むことが好ましい。また、基板表面は凹凸形状を有していてもよく、凹凸形状はパターン化された有機系材料であってもよい。
【0083】
次いで、必要に応じて、溶剤等の揮発成分を除去して塗膜を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、ホットプレートにて80℃以上140℃以下、好ましくは90℃以上130℃以下の温度にて60秒以上150秒以下の範囲内の時間乾燥する方法が挙げられる。ホットプレートによる加熱の前に、真空乾燥装置(VCD)を用いて室温にて減圧乾燥を行ってもよい。
【0084】
このようにして塗膜を形成した後、塗膜を加熱する。加熱を行う際の温度は特に限定されず、400℃以上が好ましく、420℃以上がより好ましく、430℃以上がさらにより好ましい。上限は適宜設定すればよく、例えば、600℃以下でよく、ドライエッチングの際のエッチングレート制御の点又は面内均一性の点で、好ましくは550℃以下である。加熱時間は、典型的には、30秒以上150秒以下が好ましく、60秒以上120秒がより好ましい。加熱工程は、単一の加熱温度下で行うものであってもよいし、加熱温度の異なる複数段階からなるものであってもよい。
【0085】
以上のように形成される無機金属化合物膜は、例えば、メタルハードマスク又はパターン反転用材料として好適に利用される。
【0086】
<無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させる方法>
本発明に係る無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させる方法は、前述の通りであり、別の言い方をすれば、無機金属化合物膜形成性組成物からなる塗膜を形成し、塗膜を加熱して得られる無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させる方法であって、無機金属化合物膜形成性組成物が、前述の無機金属化合物膜形成性組成物であるように構成することを含むものである。当該方法により、400℃以下での加熱において無機金属化合物膜の体積収縮率を低減させることができ、400℃以上、特に450℃以上で加熱する際の面内均一性を維持できる。無機金属化合物膜形成性組成物は、前述の通りである。
【実施例0087】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
〔実施例1~10、及び比較例1〕
実施例1~10、及び比較例1において、表1に記載の種類、及びサイズの無機金属化合物粒子を、表1に記載の分散剤で処理した後に、無機金属化合物粒子を固形分濃度が48質量%になるようにPGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)に対し分散させて、無機金属化合物膜形成性組成物を得た。無機金属化合物粒子のサイズは、前述の方法により測定された値であり、分散剤部分は含まれないサイズである。
【0089】
実施例1~10、及び比較例1において、分散剤として下記のA~Cを用いた。
A:DISPERBYK-111
B:3-{2-メトキシ[トリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリメトキシシラン
C:セタノール
【0090】
各実施例、及び各比較例の無機金属化合物膜形成性組成物について、以下の方法により無機分質量の割合を算出した。結果を表1に記す。
[無機分質量の割合の算出]
無機金属化合物膜形成性組成物を白金製サンプルパンに載せ、TG-DTAによる測定を行った。室温から200℃まで10℃/minで昇温し、200℃で5min保持したときの質量を固形分質量とした。次に200℃から710℃まで10℃/minで昇温し、710℃に達したときの質量を無機分質量とした。
これらの測定結果から、式:
有機分重量=固形分重量-無機分重量
により有機分重量を算出した。
下記式:
無機分質量の割合(質量%)=無機分質量/(無機分質量+有機分質量)×100
により、無機分質量と有機分質量との合計に対する無機分質量の割合(質量%)を算出した。
【0091】
<収縮率評価>
6インチのシリコンウェハ上に無機金属化合物膜形成性組成物を滴下し、2秒で500rpmまで加速した後、500rpmで10秒間、スピンコートを行った。その後、ホットプレートを用い、100℃で120秒間、プリベークを行い、焼成温度450℃で90秒間、ポストベークを行って、無機金属化合物膜を得た。なお、下記の「室温」は、室温で90秒間、放置したことを表し、実際にはポストベークを行わなかったことを意味する。
【0092】
得られた無機金属化合物膜の断面をSEMで観察し、膜厚を測定した。焼成温度を室温に設定した場合の膜厚を100%とした場合の、室温での膜厚に対する、焼成温度450℃における膜厚の比率を、収縮率とした。測定された収縮率の値に基づいて、以下の基準により収縮率を評価した。
A:収縮率が、10%未満である。
B:収縮率が、10%以上20%未満である。
C:収縮率が、20%以上である。
【0093】
<凹凸評価>
形成された無機金属化合物膜の断面を250×103倍の倍率で、走査型電子顕微鏡により観察し、以下の基準に従い、無機金属化合物膜の凹凸を評価した。
A:形成された無機金属化合物膜の表面が滑らかな曲線であり、表面の曲線における最小の曲率半径は1000nm以上である。
B:形成された無機金属化合物膜の表面が滑らかな曲線であり、表面の曲線における最小の曲率半径は500nm以上1000nm未満である。
C:形成された無機金属化合物膜の表面の輪郭線が、滑らかでない凸凹を含み、表面の輪郭線における最小の曲率半径は10nm以上500nm未満である。
D:形成された無機金属化合物膜の表面の輪郭線が、滑らかでない凸凹を含み、表面の輪郭線における最小の曲率半径が10nm未満である。
【0094】
【0095】
表1から分かる通り、50nm以下のサイズであり、金属窒化物粒子、金属炭化物粒子、金属ホウ化物粒子、金属炭窒化物粒子、及び金属ホウ窒化物粒子からなる群より選択される無機金属化合物粒子を含む実施例の無機金属化合物膜形成性組成物は、400℃以下での加熱における体積収縮が抑制された無機金属化合物膜を与えた。
他方、50nm超のサイズの無機金属化合物粒子を含む比較例の無機金属化合物膜形成性組成物は、体積収縮が抑制された無機金属化合物膜を与えなかった。