(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002086
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】犠牲膜形成用組成物、及びこれを用いた犠牲膜の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20231228BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20231228BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G03F7/004 531
G03F7/004 501
G03F7/039 601
G03F7/004 503A
G03F7/20 521
G03F7/20 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101068
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000220239
【氏名又は名称】東京応化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】野田 国宏
(72)【発明者】
【氏名】山内 賢一
(72)【発明者】
【氏名】原口 咲栄子
(72)【発明者】
【氏名】山之内 篤史
(72)【発明者】
【氏名】塩田 大
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
【Fターム(参考)】
2H197CA05
2H197CA06
2H197CA08
2H197CA09
2H197CA10
2H197CE01
2H197GA01
2H197HA03
2H225AC31
2H225AC72
2H225AF16P
2H225AF23P
2H225AF43P
2H225AF78P
2H225AH05
2H225AJ13
2H225AJ53
2H225AL03
2H225AL12
2H225AL22
2H225AN39P
2H225AP08P
2H225BA20P
2H225CA12
2H225CB05
2H225CC03
2H225CC16
(57)【要約】 (修正有)
【課題】優れたドライエッチング選択性を有し、パターン形成能が良好であり、ギャップフィル特性に優れる犠牲膜形成用組成物、及びこれを用いた犠牲膜の製造方法を提供する。
【解決手段】犠牲膜形成用組成物は、式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、光酸発生剤と、溶剤と、を含有する。式中、環Z1は、芳香族炭化水素環、R3a、R3b、R4a、R4b、R5a、及びR5bは、それぞれ独立に、炭素原子数1~8のアルキル基を表す。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、
光酸発生剤と、
溶剤と、
を含有する犠牲膜形成用組成物。
【化1】
(式(1)中、
環Z
1は、芳香族炭化水素環を表し、
R
1a及びR
1bは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルキル基を表し、
R
2a及びR
2bは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、
R
3a、R
3b、R
4a、R
4b、R
5a、及びR
5bは、それぞれ独立に、炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
k1及びk2は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を表し、
m1及びm2は、それぞれ独立に、0以上6以下の整数を表す。)
【請求項2】
更に、フィラーを含有する請求項1に記載の犠牲膜形成用組成物。
【請求項3】
前記フィラーは、キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子である請求項2に記載の犠牲膜形成用組成物。
【請求項4】
前記金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属は、亜鉛、イットリウム、ハフニウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、タンタル、チタン、ケイ素、アルミニウム、アンチモン、錫、インジウム、タングステン、銅、バナジウム、クロム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、及びマグネシウムからなる群より選択される少なくとも1種である請求項3に記載の犠牲膜形成用組成物。
【請求項5】
更に、下記式(2)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物を含有する請求項1に記載の犠牲膜形成用組成物。
【化2】
(式(2)中、
環Z
2は、芳香族炭化水素環を表し、
R
1c及びR
1dは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルキル基を表し、
R
2c及びR
2dは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、
k3及びk4は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を表し、
m3及びm4は、それぞれ独立に、0以上6以下の整数を表す。)
【請求項6】
前記犠牲膜は、ハードマスクである請求項1に記載の犠牲膜形成用組成物。
【請求項7】
請求項1から5のいずれか1項に記載の犠牲膜形成用組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を選択的に露光する露光工程と、
露光後の前記塗膜を現像してパターンを形成する現像工程と、
を含む犠牲膜の製造方法。
【請求項8】
更に、前記パターンを140℃以上の温度で加熱する加熱工程を含む請求項7に記載の犠牲膜の製造方法。
【請求項9】
前記犠牲膜は、平坦化膜として形成されている請求項7に記載の犠牲膜の製造方法。
【請求項10】
前記犠牲膜は、ハードマスクである請求項7に記載の犠牲膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犠牲膜形成用組成物、及びこれを用いた犠牲膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス製造等におけるエッチング加工では、リソグラフィー技術によってパターン形成した犠牲膜をエッチングマスクとしてエッチングを行うことにより、被エッチング基体に所定のパターンを形成する場合がある。犠牲膜としては、例えば、ハードマスクが挙げられる。ハードマスクとしては、例えば、酸化ジルコニウムナノ粒子等の金属酸化物ナノ粒子を含む金属酸化物膜からなるハードマスクが公知である(特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
犠牲膜は、エッチングマスクとして十分に機能するためには、良好なパターン形成能を有するだけでなく、被エッチング基体に対するエッチング選択性が高く維持されることが求められる。ホールやトレンチ等を有する基板や他部材が設けられた基板等の、段差を有する基板上に犠牲膜を形成する場合、犠牲膜は、基板上の凹凸を埋めるギャップフィル特性に優れることが要求される。
【0005】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、優れたドライエッチング選択性を有し、パターン形成能が良好であり、ギャップフィル特性に優れる犠牲膜形成用組成物、及びこれを用いた犠牲膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その結果、所定の第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、光酸発生剤と、溶剤と、を含有する犠牲膜形成用組成物により上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のものを提供する。
【0007】
本発明の第一の態様は、下記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、
光酸発生剤と、
溶剤と、
を含有する犠牲膜形成用組成物である。
【0008】
【化1】
(式(1)中、
環Z
1は、芳香族炭化水素環を表し、
R
1a及びR
1bは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルキル基を表し、
R
2a及びR
2bは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、
R
3a、R
3b、R
4a、R
4b、R
5a、及びR
5bは、それぞれ独立に、炭素原子数1~8のアルキル基を表し、
k1及びk2は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を表し、
m1及びm2は、それぞれ独立に、0以上6以下の整数を表す。)
【0009】
本発明の第二の態様は、第一に係る犠牲膜形成用組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、
前記塗膜を選択的に露光する露光工程と、
露光後の前記塗膜を現像してパターンを形成する現像工程と、
を含む犠牲膜の製造方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、優れたドライエッチング選択性を有し、パターン形成能が良好であり、ギャップフィル特性に優れる犠牲膜形成用組成物、及びこれを用いた犠牲膜の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<犠牲膜形成用組成物>
本発明に係る犠牲膜形成用組成物は、式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、光酸発生剤と、溶剤と、を含有する。本発明に係る犠牲膜形成用組成物は、優れたドライエッチング選択性を有し、パターン形成能が良好であり、ギャップフィル特性に優れる。
【0012】
[式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物]
上記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0013】
上記式(1)中、環Z1が表す芳香族炭化水素環としては、特に限定されず、例えば、ナフタレン環又はベンゼン環が挙げられる。
【0014】
上記式(1)中、R1a及びR1bとしてのハロゲン原子の具体例としては、塩素原子、フッ素原子、臭素原子、及びヨウ素原子が挙げられる。
上記式(1)中、R1a及びR1bとしてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、及びtert-ブチル基等の炭素原子数1以上6以下のアルキル基が挙げられる。
R1a及びR1bは、同一でも異なっていてもよい。
k1が2以上である場合、2以上のR1aは同一でも異なっていてもよく、k2が2以上である場合、2以上のR1bは同一でも異なっていてもよい。
k1及びk2は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数であり、0又は1であることが好ましく、0であることが好ましい。
k1及びk2は、同一でも異なっていてもよい。
【0015】
上記式(1)中、R2a及びR2bとしてのアルキル基は、直鎖状であっても、分岐鎖状であってもよく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、及びtert-ヘキシル基等の炭素原子数1以上18以下のアルキル基が挙げられ、炭素原子数1以上8以下のアルキル基が好ましく、炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましい。
R2a及びR2bは、同一でも異なっていてもよい。
m1が2である場合、2つのR2aは同一でも異なっていてもよく、m2が2である場合、2つのR2bは同一でも異なっていてもよい。
m1及びm2は、それぞれ独立に、0以上6以下の整数であり、0以上3以下の整数であることが好ましく、0又は1であることがより好ましい。
m1及びm2は、同一でも異なっていてもよい。
【0016】
上記式(1)中、R3a、R3b、R4a、R4b、R5a、及びR5bが表す炭素原子数1~8のアルキル基としては、特に限定されず、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基等が挙げられ、合成容易性及び安定性等の点で、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、sec-ペンチル基、tert-ペンチル基、n-ヘキシル基、イソヘキシル基、sec-ヘキシル基、tert-ヘキシル基等の炭素原子数1以上6以下のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基等の炭素原子数1以上3以下のアルキル基がより好ましく、メチル基が更により好ましい。
【0017】
式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物としては、例えば、下記式(1-1)で表される第三級アルキルオキシカルボニル基変性ビスナフトールフルオレン化合物、下記式(1-2)で表される第三級アルキルオキシカルボニル基変性ビスフェノールフルオレン化合物等が挙げられる。なお、式(1-1)において、ナフタレン環に結合しているR2a、R2b、-O-CO-O-C(R3a)(R4a)(R5a)や-O-CO-O-C(R3b)(R4b)(R5b)は、ナフタレン環を構成する2個の六員環のうちフルオレン環に結合していない六員環に結合している。
【0018】
【化2】
(式中、R
1a、R
1b、R
2a、R
2b、R
3a、R
3b、R
4a、R
4b、R
5a、R
5b、k1、k2、m1、及びm2は、前記の通りである。)
【0019】
式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の具体例は、以下の通りであるが、これに限定されるものではない。
【化3】
【0020】
上記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の使用量は特に限定されず、犠牲膜形成用組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは10~95質量%であり、更により好ましくは15~92質量%である。上記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の使用量が上記の範囲内であると、得られる犠牲膜は、ギャップフィル特性が向上しやすく、かつ、ドライエッチング選択性が向上しやすい。
【0021】
[式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の製造方法]
上記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物は、例えば、下記式(7)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と下記式(8)で表される二炭酸ジ(第三級アルキル)化合物とを反応させることにより製造される。この反応は、例えば、塩基(例えば、トリエチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチル-4-アミノピリジン等の有機塩基)の存在下、溶剤(例えば、ジクロロメタン等のアルキルハライド系溶剤、テトラヒドロ(THF)等のエーテル系溶剤、メタノール等のアルコール系溶剤)中で行ってもよい。
【化4】
(式中、Z1、R1a、R1b、R2a、R2b、k1、k2、m1、及びm2は、前記の通りである。)
【化5】
(式中、R3a、R3b、R4a、R4b、R5a、及びR5bは、前記の通りである。)
【0022】
[光酸発生剤]
以下、光酸発生剤について説明する。光酸発生剤としては特に限定されない。
光酸発生剤は、下記式(ai)で表されるカチオン部を有するオニウム塩であるのが好ましい。光酸発生剤としてのオニウム塩を構成するアニオン部は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。
(Ra01)p+1-Ra02+・・・(ai)
(式(ai)中、Ra01は、それぞれ独立に、1価の有機基であり、Ra02は、IUPAC表記法による元素周期律表の15族~17族の原子価pの元素であり、Ra01の少なくとも1つは置換基を有してもよいアリール基である。)
【0023】
カチオン部である式(ai)中のRa01はRa02に結合している有機基を表す。Ra01が複数存在する場合の複数のRa01は同一であっても異なってもよい。Ra01としては、置換基を有してもよい炭素原子数6以上14以下のアリール基(芳香族炭化水素基)、置換基を有していてもよい炭素原子数1以上18以下のアルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数7以上12以下のアラルキル基、置換基を有してもよい炭素原子数2以上18以下のアルケニル基、及び置換基環基を有してもよい炭素原子数2以上18以下のアルキニル基が挙げられる。式(ai)で表されるカチオンをカチオン部として有する光酸発生剤において、Ra01としては、炭素原子数6以上14以下のアリール基、炭素原子数1以上18以下のアルキル基、炭素原子数2以上18以下のアルケニル基、及び炭素原子数2以上18以下のアルキニル基が好ましい。
【0024】
Ra01としての、アリール基、アラルキル基、アルキル基、アルケニル基、及びアルキニル基が有してもよい置換基としては、炭素原子数1以上18以下のアルキル基、炭素原子数1以上18以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3以上18以下の脂肪族環式基、炭素原子数3以上18以下のハロゲン化脂肪族環式基、炭素原子数2以上18以下のアルケニル基、炭素原子数2以上18以下のアルキニル基、炭素原子数6以上14以下のアリール基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、炭素原子数1以上18以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリールオキシ基、炭素原子数2以上19以下の脂肪族アシル基、炭素原子数7以上15以下の芳香族アシル基、炭素原子数2以上19以下の脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数7以上15以下の芳香族アシルオキシ基、炭素原子数1以上18以下のアルキルチオ基、炭素原子数6以上14以下のアリールチオ基、窒素原子に結合する1又は2の水素原子が炭素原子数1以上18以下の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、及びハロゲン原子が挙げられる。
【0025】
これらの置換基の中では、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、脂肪族環式基、ハロゲン化脂肪族環式基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、脂肪族アシルオキシ基、芳香族アシルオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、及びハロゲン原子が好ましい。具体的には、メチル基、メトキシ基、フェニル基、アセチル基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が好ましい。
【0026】
式(ai)において、Ra01が複数存在する場合、複数のRa01はRa02とともに環を形成してもよい。複数のRa01と、Ra02とが形成する環は、その環構造中に、-O-、-S-、-SO-、-SO2-、-NH-、-CO-、-COO-、及び-CONH-からなる群より選択される以上の結合を含んでいてもよい。
【0027】
式(ai)中のRa02は、元素周期律表(IUPAC表記法)の15族~17族で原子価pの元素である。なお、Ra02としての、元素周期律表(IUPAC表記法)の15族~17族の元素は、ハードコート形成用組成物の製造条件下、及び保管条件下、ハードコートの形成条件下において、安定に存在し得る元素である。
Ra02は、有機基Ra01と結合してオニウムイオンを形成する。元素周期律表(IUPAC表記法)の15族~17族の元素のうち、Ra02として好ましい元素は、S(硫黄)、N(窒素)、I(ヨウ素)、及びP(リン)である。対応するオニウムイオンとしては、スルホニウムイオン、アンモニウムイオン、ヨードニウムイオン、及びホスホニウムイオンである。これらは、安定で取り扱いが容易なため好ましい。架橋反応性能に優れる点で、スルホニウムイオン、及びヨードニウムイオンがより好ましく、スルホニウムイオンが特に好ましい。
つまり、前述の式(ai)において、Ra02が硫黄であり、pが2であるのが好ましい。
【0028】
スルホニウムイオンの具体例としては、トリフェニルスルホニウム、トリ-p-トリルスルホニウム、トリ-o-トリルスルホニウム、トリス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、1-ナフチルジフェニルスルホニウム、2-ナフチルジフェニルスルホニウム、トリス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、トリ-1-ナフチルスルホニウム、トリ-2-ナフチルスルホニウム、トリス(4-ヒドロキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(p-トリルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-(4-メトキシフェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルビス(4-メトキシフェニル)スルホニウム、4-(フェニルチオ)フェニルジ-p-トリルスルホニウム、[4-(4-ビフェニリルチオ)フェニル]-4-ビフェニリルフェニルスルホニウム、[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、ビス[4-(ジフェニルスルホニオ)フェニル]スルフィド、ビス〔4-{ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]スルホニオ}フェニル〕スルフィド、ビス{4-[ビス(4-フルオロフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メチルフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、ビス{4-[ビス(4-メトキシフェニル)スルホニオ]フェニル}スルフィド、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイル-2-クロロフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルビス(4-フルオロフェニル)スルホニウム、4-(4-ベンゾイルフェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジ-p-トリルスルホニウム、7-イソプロピル-9-オキソ-10-チア-9,10-ジヒドロアントラセン-2-イルジフェニルスルホニウム、2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、4-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル)チオフェニル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルフェニルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(4-tert-ブチルベンゾイル)フェニルチオ]フェニルジフェニルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジ-p-トリルスルホニウム、4-[4-(ベンゾイルフェニルチオ)]フェニルジフェニルスルホニウム、5-(4-メトキシフェニル)チアアンスレニウム、5-フェニルチアアンスレニウム、5-トリルチアアンスレニウム、5-(4-エトキシフェニル)チアアンスレニウム、及び5-(2,4,6-トリメチルフェニル)チアアンスレニウム等のトリアリールスルホニウム;ジフェニルフェナシルスルホニウム、ジフェニル4-ニトロフェナシルスルホニウム、ジフェニルベンジルスルホニウム、及びジフェニルメチルスルホニウム等のジアリールスルホニウム;フェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルベンジルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニル(2-ナフチルメチル)メチルスルホニウム、2-ナフチルメチルベンジルスルホニウム、2-ナフチルメチル(1-エトキシカルボニル)エチルスルホニウム、フェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-ヒドロキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-メトキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、4-アセトカルボニルオキシフェニルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルメチルフェナシルスルホニウム、2-ナフチルオクタデシルフェナシルスルホニウム、及び9-アントラセニルメチルフェナシルスルホニウム等のモノアリールスルホニウム;ジメチルフェナシルスルホニウム、フェナシルテトラヒドロチオフェニウム、ジメチルベンジルスルホニウム、ベンジルテトラヒドロチオフェニウム、及びオクタデシルメチルフェナシルスルホニウム等のトリアルキルスルホニウム等が挙げられる。
【0029】
アンモニウムイオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウム、エチルトリメチルアンモニウム、ジエチルジメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、及びテトラエチルアンモニウム等のテトラアルキルアンモニウム;N,N-ジメチルピロリジニウム、N-エチル-N-メチルピロリジニウム、及びN,N-ジエチルピロリジニウム等のピロリジニウム;N,N’-ジメチルイミダゾリニウム、N,N’-ジエチルイミダゾリニウム、N-エチル-N’-メチルイミダゾリニウム、1,3,4-トリメチルイミダゾリニウム、及び1,2,3,4-テトラメチルイミダゾリニウム等のイミダゾリニウム;N,N’-ジメチルテトラヒドロピリミジニウム等のテトラヒドロピリミジニウム;N,N’-ジメチルモルホリニウム等のモルホリニウム;N,N’-ジエチルピペリジニウム等のピペリジニウム;N-メチルピリジニウム、N-ベンジルピリジニウム、及びN-フェナシルピリジウム等のピリジニウム;N,N’-ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム;N-メチルキノリウム、N-ベンジルキノリウム、及びN-フェナシルキノリウム等のキノリウム;N-メチルイソキノリウム等のイソキノリウム;ベンジルベンゾチアゾニウム、及びフェナシルベンゾチアゾニウム等のチアゾニウム;ベンジルアクリジウム、及びフェナシルアクリジウム等のアクリジウムが挙げられる。
【0030】
ホスホニウムイオンの具体例としては、テトラフェニルホスホニウム、テトラ-p-トリルホスホニウム、テトラキス(2-メトキシフェニル)ホスホニウム、テトラキス(3-メトキシフェニル)ホスホニウム、及びテトラキス(4-メトキシフェニル)ホスホニウム等のテトラアリールホスホニウム;トリフェニルベンジルホスホニウム、トリフェニルフェナシルホスホニウム、トリフェニルメチルホスホニウム、及びトリフェニルブチルホスホニウム等のトリアリールホスホニウム;トリエチルベンジルホスホニウム、トリブチルベンジルホスホニウム、テトラエチルホスホニウム、テトラブチルホスホニウム、テトラヘキシルホスホニウム、トリエチルフェナシルホスホニウム、及びトリブチルフェナシルホスホニウム等のテトラアルキルホスホニウム等が挙げられる。
【0031】
ヨードニウムイオンの具体例としては、ジフェニルヨードニウム、ジ-p-トリルヨードニウム、ビス(4-ドデシルフェニル)ヨードニウム、ビス(4-メトキシフェニル)ヨードニウム、(4-オクチルオキシフェニル)フェニルヨードニウム、ビス(4-デシルオキシ)フェニルヨードニウム、4-(2-ヒドロキシテトラデシルオキシ)フェニルフェニルヨードニウム、4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、及び2,4,6-トリメチルフェニル(4-ニトロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムイオンが挙げられる。
【0032】
光酸発生剤としては、例えば、下記式(aii)で表されるアニオン部を有する含ガリウムオニウム塩や、下記式(aiii)で表されるアニオン部を有する含ホウ素オニウム塩が挙げられる。
【化6】
(式(aii)中、R
a03、R
a04、R
a05、及びR
a06は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよい複素環基であり、R
a03、R
a04、R
a05、及びR
a06のうちの少なくとも1つが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。)
【化7】
(式(aiii)中、R
a07、R
a08、R
a09、及びR
a010は、それぞれ独立に、置換基を有していてもよい炭化水素基、又は置換基を有していてもよい複素環基であり、R
a07、R
a08、R
a09、及びR
a010のうちの少なくとも1つが置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基である。)
【0033】
式(aii)中のRa03~Ra06としての炭化水素基又は複素環基の炭素原子数は特に限定されないが、1以上50以下が好ましく、1以上30以下がより好ましく、1以上20以下が特に好まししい。
Ra03~Ra06としての炭化水素基の具体例としては、直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルケニル基、直鎖状又は分岐鎖状のアルキニル基、芳香族炭化水素基、脂環式炭化水素基、及びアラルキル基等が挙げられる。
前述の通り、Ra03~Ra06のうちの少なくとも1つは置換基を有してもよい芳香族基であり、Ra03~Ra06の3つ以上が置換基を有してもよい芳香族基であるのがより好ましく、Ra03~Ra06の全てが置換基を有してもよい芳香族基であるのが特に好ましい。
【0034】
Ra03~Ra06としての炭化水素基、又は複素環基が有していてもよい置換基としては、炭素原子数1以上18以下のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3以上18以下のハロゲン化脂肪族環式基、ニトロ基、水酸基、シアノ基、炭素原子数1以上18以下のアルコキシ基、炭素原子数6以上14以下のアリールオキシ基、炭素原子数2以上19以下の脂肪族アシル基、炭素原子数7以上15以下の芳香族アシル基、炭素原子数2以上19以下の脂肪族アシルオキシ基、炭素原子数7以上15以下の芳香族アシルオキシ基、炭素原子数1以上18以下のアルキルチオ基、炭素原子数6以上14以下のアリールチオ基、窒素原子に結合する1又は2の水素原子が炭素原子数1以上18以下の炭化水素基で置換されていてもよいアミノ基、及びハロゲン原子が挙げられる。
Ra3~Ra6としての炭化水素基が芳香族炭化水素基である場合、当該芳香族炭化水素基は、炭素原子数1以上18以下のアルキル基、炭素原子数2以上18以下のアルケニル基、及び炭素原子数2以上18以下のアルキニル基からなる群から選択される1以上の置換基で置換されていてもよい。
【0035】
Ra03~Ra06としての炭化水素基が置換基を有する場合、置換基の数は特に限定されず,1であっても2以上の複数であってもよい。置換基の数が複数である場合、当該複数の置換基は、それぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0036】
Ra03~Ra06がアルキル基である場合の好適な具体例としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、及びn-イコシル基等の直鎖アルキル基;イソプロピル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert-ペンチル基、イソヘキシル基、2-エチルヘキシル基、及び1,1,3,3-テトラメチルブチル基等の分岐鎖アルキル基が挙げられる。
【0037】
Ra03~Ra06がアルケニル基、又はアルキニル基である場合の好適な例としては、アルキル基として好適な上記の基に対応するアルケニル基、及びアルキニル基が挙げられる。
【0038】
Ra03~Ra06が芳香炭化水素基である場合の好適な例としては、フェニル基、α-ナフチル基、β-ナフチル基、ビフェニル-4-イル基、ビフェニル-3-イル基、ビフェニル-2-イル基、アントリル基、及びフェナントリル基等が挙げられる。
【0039】
Ra03~Ra06が脂環式炭化水素基である場合の好適な例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、シクロオクチル基、シクロノニル基、及びシクロデシル基等のシクロアルキル基;ノルボルニル基、アダマンチル基、トリシクロデシル基、及びピナニル基等の架橋式脂肪族環式炭化水素基が挙げられる。
【0040】
Ra03~Ra06がアラルキル基である場合の好適な例としては、ベンジル基、フェネチル基、α-ナフチルメチル基、β-ナフチルメチル基、α-ナフチルエチル基、及びβ-ナフチルエチル基等が挙げられる。
【0041】
Ra03~Ra06が複素環基である場合の好適な例としては、チエニル基、フラニル基、セレノフェニル基、ピラニル基、ピロリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ピリジル基、ピリミジル基、ピラジニル基、インドリル基、ベンゾフラニル基、ベンゾチエニル基、キノリル基、イソキノリル基、キノキサリニル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、アクリジニル基、フェノチアジニル基、フェナジニル基、キサンテニル基、チアントレニル基、フェノキサジニル基、フェノキサチイニル基、クロマニル基、イソクロマニル基、ジベンゾチエニル基、キサントニル基、チオキサントニル基、及びジベンゾフラニル基等が挙げられる。
【0042】
式(aiii)中のRa07~Ra010としては、式(aii)中のRa03~Ra06について前述した基と同様の基が挙げられる。
【0043】
以上説明した式(aii)で表されるアニオン部の好適な具体例としては、
テトラキス(4-ノナフルオロビフェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(1-ヘプタフルオロナフチル)ガリウムアニオン、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ガレートアニオン、
テトラキス(2-ノナフェニルビフェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(2-ヘプタフルオロナフチル)ガリウムアニオン、
テトラキス(7-ノナフルオロアントリル)ガリウムアニオン、
テトラキス(4’-(メトキシ)オクタフルオロビフェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(2,3-ビス(ペンタフルオロエチル)ナフチル)ガリウムアニオン、
テトラキス(2-イソプロポキシ-ヘキサフルオロナフチル)ガリウムアニオン、
テトラキス(9,10-ビス(ヘプタフルオロプロピル)ヘプタフルオロアントリル)ガリウムアニオン、
テトラキス(9-ノナフルオロフェナントリル)ガレートアニオン、
テトラキス(4-[トリ(イソプロピル)シリル]-テトラフルオロフェニル)ガリウムアニオン、
テトラキス(9,10-ビス(p-トリル)-ヘプタフルオロフェナントリル)ガリウムアニオン、
テトラキス(4-[ジメチル(t-ブチル)シリル]-テトラフルオロフェニル)ガリウムアニオン、
モノフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ガリウムアニオン、及び
モノパーフルオロブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ガリウムアニオン等が挙げられ、より好ましくは、以下のアニオンが挙げられる。
【化8】
【0044】
また、式(aiii)で表されるアニオン部の好適な具体例としては、
テトラキス(4-ノナフルオロビフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(1-ヘプタフルオロナフチル)ホウ素アニオン、
テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(3,4,5-トリフルオロフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(2-ノナフェニルビフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(2-ヘプタフルオロナフチル)ホウ素アニオン、
テトラキス(7-ノナフルオロアントリル)ホウ素アニオン、
テトラキス(4’-(メトキシ)オクタフルオロビフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(2,4,6-トリス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(2,3-ビス(ペンタフルオロエチル)ナフチル)ホウ素アニオン、
テトラキス(2-イソプロポキシ-ヘキサフルオロナフチル)ホウ素アニオン、
テトラキス(9,10-ビス(ヘプタフルオロプロピル)ヘプタフルオロアントリル)ホウ素アニオン、
テトラキス(9-ノナフルオロフェナントリル)ホウ素アニオン、
テトラキス(4-[トリ(イソプロピル)シリル]-テトラフルオロフェニル)ホウ素アニオン、
テトラキス(9,10-ビス(p-トリル)-ヘプタフルオロフェナントリル)ホウ素アニオン、
テトラキス(4-[ジメチル(t-ブチル)シリル]-テトラフルオロフェニル)ホウ素アニオン、
モノフェニルトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素アニオン、及び
モノパーフルオロブチルトリス(ペンタフルオロフェニル)ホウ素アニオン等が挙げられ、より好ましくは、以下のアニオンが挙げられる。
【化9】
【0045】
上記以外のアニオン部の好適な例としては、SbF6
-、PF6
-、BF4
-、(CF3CF2)2PF4
-、(CF3CF2)3PF3
-、((CF3)2CF)2PF4
-、((CF3)2CF)3PF3
-、(CF3CF2CF2)2PF4
-、(CF3CF2CF2)3PF3
-、((CF3)2CFCF2)2PF4
-、((CF3)2CFCF2)3PF3
-、(CF3CF2CF2CF2)2PF4-、(CF3CF2CF2CF2)3PF3
-、トリフルオロメタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロエタンスルホン酸アニオン、ヘプタフルオロプロパンスルホン酸アニオン、ノナフルオロブタンスルホン酸アニオン、ペンタフルオロフェニルスルホン酸アニオン、p-トルエンスルホン酸アニオン、ベンゼンスルホン酸アニオン、カンファースルホン酸アニオン、メタンスルホン酸アニオン、エタンスルホン酸アニオン、プロパンスルホン酸アニオン、ブタンスルホン酸アニオン、(CF3SO2)3C-、(C2F5SO2)3C-、(C3F7SO2)3C-、(C4F9SO2)3C-、(CF3SO2)2N-、(C2F5SO2)2N-、(C3F7SO2)2N-、及び(C4F9SO2)2N-が挙げられる。
【0046】
また、以上説明した式(ai)で表されるカチオン部の好適な具体例としては、
4-イソプロピルフェニル(p-トリル)ヨードニウム、
4-イソブチルフェニル(p-トリル)ヨードニウム等のヨードニウムイオン;
[4-(2-チオキサントニルチオ)フェニル]ジフェニルスルホニウム、
2-[(ジ-p-トリル)スルホニオ]チオキサントン、
2-[(ジフェニル)スルホニオ]チオキサントン、
4-(9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イル)チオフェニル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-2-イルフェニルスルホニウム等のチオキサントン骨格含有スルホニウムイオン;
詳しくは後述の式(a1)で表されるカチオン部;
その他、以下に示すスルホニウムイオン;が挙げられる。
【0047】
【0048】
犠牲膜形成用組成物中の光酸発生剤の含有量の上限は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、硬化時の犠牲膜の着色をより抑制しやすい点から、犠牲膜形成用組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、50質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、15質量%以下が更により好ましい。犠牲膜形成用組成物中の光酸発生剤の含有量の下限は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、犠牲膜形成用組成物のパターン形成能が向上しやすい点から、0.10質量%以上が好ましく、0.35質量%以上がより好ましく、0.50質量%以上が更により好ましい。
【0049】
[溶剤]
本発明に係る犠牲膜形成用組成物は、塗布性や粘度の調整の目的で、溶剤を含有する。溶剤としては、典型的には有機溶剤が用いられる。有機溶剤の種類は、犠牲膜形成用組成物に含まれる成分を均一に溶解又は分散させることができれば、特に限定されない。
【0050】
溶剤として使用し得る有機溶剤の好適な例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール-n-プロピルエーテル、エチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、プロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-プロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノ-n-ブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノエチルエーテル等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等の(ポリ)アルキレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等の他のエーテル類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン等のケトン類;2-ヒドロキシプロピオン酸メチル、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル等の乳酸アルキルエステル類;2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチル部炭酸メチル、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n-ブチル、酢酸イソブチル、蟻酸n-ペンチル、酢酸イソペンチル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸n-プロピル、酪酸イソプロピル、酪酸n-ブチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、ピルビン酸n-プロピル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、2-オキソブタン酸エチル等の他のエステル類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド等のアミド類等が挙げられる。これらの有機溶剤は、単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0051】
本発明に係る犠牲膜形成用組成物における溶剤の使用量は特に限定されない。犠牲膜形成用組成物の塗布性の点等から、溶剤の使用量は、犠牲膜形成用組成物全体に対して、例えば、30~99.9質量%であり、好ましくは50~98質量%である。
【0052】
[フィラー]
犠牲膜形成用組成物は、フィラーを含んでもよい。フィラーは、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。犠牲膜形成用組成物が、フィラーを含有すると、得られる犠牲膜は、ドライエッチング選択性が向上しやすい。
【0053】
フィラーは、無機フィラーでも有機フィラーでもよく、犠牲膜のドライエッチング選択性の観点から、無機フィラーであることが好ましく、キャッピング剤で表面処理された金属酸化物ナノ粒子であることが好ましい。
【0054】
フィラーの平均粒子径は、好ましくは5nm以下であり、より好ましくは4nm以下であり、更により好ましくは3nm以下である。フィラーの平均粒子径の下限は、特に限定されず、例えば、0.5nm以上でよく、1nm以上でも2nm以上でもよい。フィラーの平均粒子径が上記範囲内であると、得られる犠牲膜は、ドライエッチング選択性がより向上しやすい。本明細書において、フィラーの平均粒子径とは、Malvern Zetasizer Nano S等の動的光散乱(DLS)装置により測定された値をいう。
【0055】
上記金属酸化物ナノ粒子に含まれる金属としては、特に限定されず、例えば、亜鉛、イットリウム、ハフニウム、ジルコニウム、ランタン、セリウム、ネオジム、ガドリニウム、ホルミウム、ルテチウム、タンタル、チタン、ケイ素、アルミニウム、アンチモン、錫、インジウム、タングステン、銅、バナジウム、クロム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、レニウム、イリジウム、ゲルマニウム、ガリウム、タリウム、マグネシウムが挙げられ、製膜性、安定性等の観点から、ハフニウム、ジルコニウム、チタン、及び錫が好ましく、ジルコニウムがより好ましい。上記金属は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0056】
上記金属酸化物ナノ粒子は、金属原子と酸素原子とからなるものであってもよいし、金属原子と酸素原子と金属原子及び酸素原子以外の原子とからなるものであってもよい。金属原子及び酸素原子以外の原子としては、例えば、窒素原子が挙げられる。よって、上記金属酸化物ナノ粒子は、金属酸化物からなるものであっても、金属酸窒化物等からなるものであってもよい。
【0057】
本発明に係る犠牲膜形成用組成物が上記金属酸化物ナノ粒子を含有する場合、上記金属酸化物ナノ粒子の表面の一部又は全部は、キャッピング剤に覆われているものと推測される。キャッピング剤は、アルコキシシラン、フェノール、アルコール、カルボン酸、及びカルボン酸ハライドからなる群から選択される少なくとも1種を含む。本発明に係る犠牲膜形成用組成物において、金属酸化物ナノ粒子がキャッピング剤で表面処理されていると、金属酸化物ナノ粒子は、溶剤への分散性が安定しやすい。
【0058】
キャッピング剤の具体例としては、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-ドデシルトリメトキシシラン、n-ドデシルトリエトキシシラン、n-ヘキサデシルトリメトキシシラン、n-ヘキサデシルトリエトキシシラン、n-オクタデシルトリメトキシシラン、n-オクタデシルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェネチルフェニルトリメトキシシラン、フェネチルエチルトリエトキシシラン、3-{2-メトキシ[ポリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリメトキシシラン、3-{2-メトキシ[ポリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリエトキシシラン、3-{2-メトキシ[トリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリメトキシシラン、3-{2-メトキシ[トリ(エチレンオキシ)]}プロピルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、1-ヘキセニルトリメトキシシラン,1-ヘキセニルトリエトキシシラン、1-オクテニルトリメトキシシラン、1-オクテニルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-アクリロイルプロピルトリエトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、及び3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン;フェノール等のフェノール類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール、n-ヘプタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、n-ドデシルアルコール、n-オクタデカノール、ベンジルアルコール、及びトリエチレングリコールモノメチルエーテル等の不飽和基非含有アルコール類;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、アリルアルコール、オレイルアルコール、エチレングリコールモノアリルエーテル、プロピレングリコールモノアリルエーテル、及び3-アリルオキシプロパノール等の不飽和基含有アルコール類;オクタン酸、酢酸、プロピオン酸、2-[2-(メトキシエトキシ)エトキシ]酢酸、オレイン酸、ラウリン酸、安息香酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸等の酸類;及びこれらの酸類の酸クロライド等の、これらの酸類の酸ハライド類が挙げられ、好ましくは、アルコキシシラン、不飽和基含有アルコール類、又は酸類として挙げた化合物である。
【0059】
金属酸化物ナノ粒子をキャッピング剤で表面処理する際のキャッピング剤の使用量は特に限定されない。好ましくは、金属酸化物ナノ粒子の表面のヒドロキシ基のほぼ全てと反応するのに十分な量のキャッピング剤が使用される。
【0060】
犠牲膜形成用組成物中のフィラーの含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、犠牲膜形成用組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、5質量%以上99質量%以下が好ましく、30質量%以上98質量%以下がより好ましく、60質量%以上97質量%以下が更により好ましい。当該含有量が上記の範囲内であると、得られる犠牲膜は、ドライエッチング選択性がより向上しやすい。なお、フィラーが上記金属酸化物ナノ粒子である場合、上記含有量は、金属酸化物ナノ粒子の表面に存在するキャッピング剤の含有量を含む。
【0061】
[式(2)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物]
犠牲膜形成用組成物は、下記式(2)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物を含んでもよい。上記ヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記ヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物を使用することで、犠牲膜形成用組成物のドライエッチング選択性、パターン形成能、及びギャップフィル特性を良好に維持しつつ、上記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の使用量を低く抑えやすい。
【0062】
【0063】
上記式(2)中、
環Z2は、芳香族炭化水素環を表し、
R1c及びR1dは、それぞれ独立に、ハロゲン原子、シアノ基、又はアルキル基を表し、
R2c及びR2dは、それぞれ独立に、アルキル基を表し、
k3及びk4は、それぞれ独立に、0以上4以下の整数を表し、
m3及びm4は、それぞれ独立に、0以上6以下の整数を表す。
【0064】
上記式(2)中、環Z2が表す芳香族炭化水素環は、上記環Z1と同様である。
【0065】
上記式(2)中、R1c及びR1dは、上記R1a及び上記R1bと同様である。
【0066】
上記式(2)中、R2c及びR2dは、上記R2a及び上記R2bと同様である。
【0067】
上記式(2)中、k3及びk4は、上記k1及び上記k2と同様である。
【0068】
上記式(2)中、m3及びm4は、上記m1及び上記m2と同様である。
【0069】
式(2)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物としては、例えば、下記式(2-1)で表されるビスナフトールフルオレン化合物、下記式(2-2)で表されるビスフェノールフルオレン化合物等が挙げられる。なお、式(2-1)において、ナフタレン環に結合しているR2c、R2d、及び-OHは、ナフタレン環を構成する2個の六員環のうちフルオレン環に結合していない六員環に結合している。
【0070】
【化12】
(式中、R
1c、R
1d、R
2c、R
2d、k3、k4、m3、及びm4は、前記の通りである。)
【0071】
式(2)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の具体例は、以下の通りであるが、これに限定されるものではない。
【化13】
【0072】
上記式(2)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の使用量は特に限定されず、犠牲膜形成用組成物における溶剤以外の成分の合計に対して、好ましくは1~99質量%であり、より好ましくは15~90質量%であり、更により好ましくは20~85質量%である。上記式(2)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の使用量が上記の範囲内であると、犠牲膜形成用組成物のドライエッチング選択性、パターン形成能、及びギャップフィル特性をより良好に維持しつつ、上記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物の使用量をより低く抑えやすい。
【0073】
[その他の成分]
本発明に係る金属酸化物膜形成性組成物には、必要に応じて、分散剤、界面活性剤、熱重合禁止剤、消泡剤、シランカップリング剤、着色剤(顔料、染料)、架橋剤、酸発生剤等の添加剤を含有させることができる。いずれの添加剤も、従来公知のものを用いることができる。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、ノニオン系等の化合物が挙げられ、熱重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノエチルエーテル等が挙げられ、消泡剤としては、シリコーン系、フッ素系化合物等が挙げられる。
【0074】
本発明に係る犠牲膜形成用組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記式(1)で表される第三級アルキルオキシカルボニルオキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、光酸発生剤と、溶剤と、任意にフィラーと、任意に上記式(2)で表されるヒドロキシ基含有芳香族炭化水素環変性フルオレン化合物と、任意にその他の成分とを均一に混合する方法が挙げられる。
【0075】
<犠牲膜の製造方法>
本発明に係る犠牲膜の製造方法は、本発明に係る犠牲膜形成用組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を選択的に露光する露光工程と、露光後の前記塗膜を現像してパターンを形成する現像工程と、を含む。
【0076】
前記塗膜は、例えば、半導体基板等の基板上に犠牲膜形成用組成物を塗布することにより、形成することができる。塗布方法としては、ロールコータ、リバースコーター、バーコーター等の接触転写型塗布装置や、スピンナー(回転式塗布装置、スピンコーター)、ディップコーター、スプレーコーター、スリットコーター、カーテンフローコーター等の非接触型塗布装置を用いる方法が挙げられる。
【0077】
基板としては、金属膜、金属炭化膜、金属酸化膜、金属窒化膜、又は金属酸化窒化膜を含むものであることが好ましい。前記基板を構成する金属は、ケイ素、チタン、タングステン、ハフニウム、ジルコニウム、クロム、ゲルマニウム、銅、アルミニウム、インジウム、ガリウム、ヒ素、パラジウム、鉄、タンタル、イリジウム、モリブデン、又はこれらの合金等が挙げられるが、ケイ素、ゲルマニウム、ガリウムを含むことが好ましい。また、基板表面は凹凸形状を有していてもよく、凹凸形状はパターン化された有機系材料であってもよい。
【0078】
次いで、必要に応じて、溶剤等の揮発成分を除去して塗膜を乾燥させる。乾燥方法は特に限定されず、例えば、ホットプレートにて80℃以上140℃以下、好ましくは90℃以上130℃以下の温度にて60秒以上150秒以下の範囲内の時間乾燥する方法が挙げられる。ホットプレートによる加熱の前に、真空乾燥装置(VCD)を用いて室温にて減圧乾燥を行ってもよい。
【0079】
露光工程では、上記塗膜を選択的に露光する。選択的な露光は、例えば、所望のマスクパターンを介して行うことができる。露光は、i線、KrFエキシマレーザーを用いて行うことができる。
また、本発明に係る犠牲膜形成用組成物の組成を適切に調整することにより、ArFエキシマレーザー、F2エキシマレーザー、EUV(極紫外線)、VUV(真空紫外線)、EB(電子線)、X線、軟X線等の放射線を用いて露光を行うこともできる。
【0080】
露光後は、適宜、PEB処理(露光後加熱処理)を施してもよい。PEB処理の条件は、組成物中の各成分の種類、配合割合、塗布膜厚等によって異なるが、例えば、加熱温度は、60~150℃(好ましくは70~140℃)で、加熱時間は、例えば、0.5~60分間(好ましくは1~50分間)程度である。
【0081】
現像工程では、露光後の前記塗膜を現像してパターンを形成する。これにより、不要な部分を溶解及び除去する。
【0082】
現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水、エチルアミン、n-プロピルアミン、ジエチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、ピロール、ピペリジン、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノナン等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。また、上記アルカリ類の水溶液にメタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒や界面活性剤を適当量添加した水溶液を現像液として使用することもできる。現像液としては、0.1~10質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液が好ましい。
【0083】
現像時間は、本発明に係る犠牲膜形成用組成物の組成や塗膜の膜厚等によっても異なるが、通常、1~30分間である。現像方法は、液盛り法、ディッピング法、パドル法、スプレー現像法等のいずれでもよい。
【0084】
現像後は、適宜、流水洗浄を30~90秒間行い、エアーガンやオーブン等を用いて乾燥させる。
【0085】
本発明に係る犠牲膜の製造方法は、前記パターンを140℃以上の温度で加熱する加熱工程を含んでもよい。加熱を行う際の温度は、140℃以上が好ましく、145℃以上がより好ましく、148℃以上が更により好ましい。上限は適宜設定すればよく、例えば、350℃以下でよく、好ましくは300℃以下である。加熱時間は、典型的には、30秒以上60分以下が好ましく、60秒以上40分以下がより好ましい。加熱工程は、単一の加熱温度下で行うものであってもよいし、加熱温度の異なる複数段階からなるものであってもよい。
【0086】
以上のように形成される犠牲膜は、ドライエッチング選択性に優れるため、例えば、ハードマスクとして好適に利用される。また、上記犠牲膜は、ギャップフィル特性に優れるため、特に、ホールやトレンチ等を有する基板や他部材が設けられた基板等の、段差を有する基板上で平坦化膜として形成しやすい。
【実施例0087】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0088】
[犠牲膜形成用組成物の調製]
(有機成分)
・BNF-B:下記式1-Aで表される変性ビスナフトールフルオレン化合物
下記2-Aで表されるビスナフトールフルオレンと下記式3-Aで表される二炭酸ジ-tert-ブチルとを、N,N-ジメチル-4-アミノピリジンの存在下、ジクロロメタン中で反応させて、下記式1-Aで表される変性ビスナフトールフルオレン化合物を得た。
・BNF:下記式2-Aで表されるビスナフトールフルオレン
【0089】
【0090】
・H1:下記式で表されるアクリル系樹脂(重量平均分子量:1000、重量平均分子量/数平均分子量=1.7)
【化15】
(式中、n及びmは、各々、対応する構成単位の数を表し、n:m=3:7である。)
【0091】
(光酸発生剤)
・光酸発生剤1:下記式で表されるオニウム塩
【化16】
・光酸発生剤2:下記式で表されるオニウム塩
【化17】
・光酸発生剤3:下記式で表されるオニウム塩
【化18】
【0092】
(溶剤)
・PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0093】
(フィラー)
・ZrMSA:キャッピング剤MSAで表面処理されたZrO2粒子
特開2018-193481号公報の段落[0223]の記載に基づき、室温まで冷却して得たZrO2のスラリーを遠心分離しウェットケーキAを得た。ウェットケーキAの質量の0.2倍の2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸(下記式参照;以下、単に「MSA」ともいう。)をキャッピング剤としてウェットケーキAに加えて撹拌した。再沈殿後、遠心分離によりウェットケーキBを得た。ウェットケーキBを一晩減圧乾燥し、粉末として、キャッピング剤MSAで表面処理されたZrO2粒子(平均粒子径2.5nm)を得た。
【0094】
【0095】
(ハードマスク材料)
・DLC:ダイヤモンドライクカーボン
・SiN:窒化ケイ素
【0096】
表1に示す種類及び質量(単位:g)で、有機成分、光酸発生剤、溶剤、及び任意にフィラーを混合及び撹拌し、Φ0.2μmのメンブレンフィルターで濾過して、組成物を得た。
【0097】
[犠牲膜の作製]
(実施例1~6、比較例1)
6インチのシリコンウェハ上に組成物を滴下し、スピンコートを行った。その後、ホットプレートを用い、100℃で2分間、プリベークを行った。得られた塗膜に対し、露光機(製品名:TME-150R、TOPCON社製)を使用し、30μmのラインパターンが形成されたネガマスクを介して、500mJ/cm2の露光量で、高圧水銀灯によりブロードバンド光を照射した。露光した塗膜を100℃で2分間の露光後ベーク(以下、「PEB」ともいう。)に供し、更に、2.38質量%テトラメチルアンモニウムヒドロキシド水溶液で30秒間現像した。現像後、150℃で30分間、ポストベークを行って、膜厚100nm程度のラインパターンとして犠牲膜を得た。但し、実施例4では、PEBもポストベークも行わなかった。
【0098】
(比較例2) DLCの成膜
ベンゼンガスを膜の原料とするイオン化蒸着法により気相成膜を行って、膜厚100nm程度のダイヤモンドライクカーボン膜として犠牲膜を得た。上記気相成膜において、Preheat温度を200℃とし、蒸着時間を12時間とした。
【0099】
(比較例3) SiNの成膜
ビスジエチルアミノシランを膜の原料とするALD法により気相成膜を行って、膜厚100nm程度の窒化ケイ素膜として犠牲膜を得た。上記気相成膜において、ステージ温度を350℃とし、サイクル数を2000回とした。
【0100】
[膜厚の測定]
膜厚は、犠牲膜の断面をSEMで観察することで測定した。
【0101】
[パターン形成能の評価]
犠牲膜をSEMで観察し、パターン形成能を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
+(良好):線幅30μmのラインパターンが形成された。
-(不良):線幅30μmのラインパターンが形成されなかった。
【0102】
[ドライエッチング選択性の評価]
実施例1~3及び比較例1~3の犠牲膜に対して、(株)SUMCO製RIE-200NLを用い、圧力:5Pa、出力:200W、CF4ガス:50mL/分にて1分間エッチングを行って、減膜量を測定し、式:(比較例3の犠牲膜の減膜量)/(実施例1~3及び比較例1~3のいずれかの犠牲膜の減膜量)により選択比を算出して、比較例3の犠牲膜、即ち、窒化ケイ素からなる犠牲膜に対するドライエッチング選択性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
+(良好):選択比が2以上であった。
-(不良):選択比が2未満であった。
【0103】
[ギャップフィル特性の評価]
幅40nm、深さ200nmのトレンチが形成された6インチのシリコンウェハを用いた以外は、上記[犠牲膜の作製]と同様にして、犠牲膜を得た。トレンチが形成された部分の犠牲膜の断面をSEMで観察し、ギャップフィル特性を下記の基準で評価した。結果を表1に示す。
+(良好):犠牲膜がトレンチに均質に埋め込まれていた。
-(不良):トレンチ内に犠牲膜の埋め込み不良が観察された。
【0104】
【0105】
表1から分かる通り、実施例の犠牲膜は、優れたドライエッチング選択性を有し、パターン形成能が良好であり、ギャップフィル特性に優れるのに対し、比較例の犠牲膜は、ドライエッチング選択性、パターン形成能、又はギャップフィル特性に劣ることが確認された。