(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024020968
(43)【公開日】2024-02-15
(54)【発明の名称】極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/20 20060101AFI20240207BHJP
H05G 2/00 20060101ALI20240207BHJP
【FI】
G03F7/20 503
G03F7/20 521
H05G2/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123546
(22)【出願日】2022-08-02
(71)【出願人】
【識別番号】300073919
【氏名又は名称】ギガフォトン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105212
【弁理士】
【氏名又は名称】保坂 延寿
(72)【発明者】
【氏名】中野 真生
(72)【発明者】
【氏名】若林 理
【テーマコード(参考)】
2H197
4C092
【Fターム(参考)】
2H197AA10
2H197BA03
2H197BA11
2H197CA10
2H197CB16
2H197CC16
2H197DC02
2H197DC12
2H197GA01
2H197GA04
2H197GA05
2H197GA12
2H197GA17
2H197GA18
2H197GA20
2H197GA24
2H197HA03
4C092AA06
4C092AA15
4C092AB10
4C092AC09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】EUV光のパルスエネルギー安定性が悪化することを抑制し得る、また合体不良が抑制されることでターゲット物質のデブリが発生することが抑制され得る極端紫外光生成装置を提供する。
【解決手段】極端紫外光生成装置は、固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成するタンクと、タンク内の液体ターゲット物質から液滴ターゲットを連続的に生成して、パルスレーザ光が集光するプラズマ生成領域に向けて出力するノズルと、を含み、液滴ターゲットを含む複数の液滴ターゲットが合体するように複数の液滴ターゲットに速度差を与える液滴ターゲット生成装置と、複数の液滴ターゲットがプラズマ生成領域に到達するまでに複数の液滴ターゲットの合体が完了するような1回の補給量の固体ターゲット物質をタンクに補給する固体ターゲット補給装置と、を備える。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成するタンクと、前記タンク内の液体ターゲット物質から液滴ターゲットを連続的に生成して、パルスレーザ光が集光するプラズマ生成領域に向けて出力するノズルと、を含み、前記液滴ターゲットを含む複数の液滴ターゲットが合体するように前記複数の液滴ターゲットに速度差を与える液滴ターゲット生成装置と、
前記複数の液滴ターゲットが前記プラズマ生成領域に到達するまでに前記複数の液滴ターゲットの合体が完了するような1回の補給量の固体ターゲット物質を前記タンクに補給する固体ターゲット補給装置と、
を備える、極端紫外光生成装置。
【請求項2】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記補給量を記憶し、記憶した前記補給量に従って前記固体ターゲット補給装置を制御するプロセッサをさらに備える、極端紫外光生成装置。
【請求項3】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記複数の液滴ターゲットの合体の状態を、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給と同期して検出する検出装置と、
前記検出装置の検出結果に基づいて前記補給量を決定し、前記補給量に従って前記固体ターゲット補給装置を制御するプロセッサと、
をさらに備える、極端紫外光生成装置。
【請求項4】
請求項3に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記検出装置は、前記液滴ターゲットの通過信号を出力する光センサを含む、
極端紫外光生成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の試行補給量を増加させながら、前記光センサから出力された液滴ターゲットの通過信号を前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給と同期して取得し、前記液滴ターゲットの合体が完了している場合の前記試行補給量の最大値を前記補給量として決定する、
極端紫外光生成装置。
【請求項6】
請求項3に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記検出装置は、前記液滴ターゲットを撮像するイメージセンサを含む、
極端紫外光生成装置。
【請求項7】
請求項6に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の試行補給量を増加させながら、前記イメージセンサで撮像された液滴ターゲットの画像を前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給と同期して取得し、前記液滴ターゲットの合体が完了している場合の前記試行補給量の最大値を前記補給量として決定する、
極端紫外光生成装置。
【請求項8】
請求項3に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記検出装置は、前記プラズマ生成領域で生成される極端紫外光の状態を検出するEUVセンサを含む、
極端紫外光生成装置。
【請求項9】
請求項8に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の試行補給量を増加させながら、前記EUVセンサで計測された極端紫外光のパルスエネルギーを前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給と同期して取得し、前記パルスエネルギーの安定性が許容範囲内である場合の前記試行補給量の最大値を前記補給量として決定する、
極端紫外光生成装置。
【請求項10】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
プロセッサをさらに備え、
前記液滴ターゲット生成装置は、前記タンク及び前記ノズルの少なくとも1つに配置されたヒーターをさらに含み、
前記プロセッサは、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給と同期して、前記ヒーターに供給される電力を一時的に変更する、
極端紫外光生成装置。
【請求項11】
請求項10に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記複数の液滴ターゲットの合体の状態を、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給及び前記電力の変更と同期して検出する検出装置をさらに備え、
前記プロセッサは、前記検出装置の検出結果に基づいて前記補給量を決定して前記固体ターゲット補給装置を制御する、
極端紫外光生成装置。
【請求項12】
請求項11に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の試行補給量を増加させながら、前記検出装置から出力された検出結果を前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給及び前記電力の変更と同期して取得し、前記液滴ターゲットの合体が完了している場合の前記試行補給量の最大値を前記補給量として決定する、
極端紫外光生成装置。
【請求項13】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
プロセッサをさらに備え、
前記液滴ターゲット生成装置は、前記ノズルに振動を与える加振装置をさらに含み、
前記プロセッサは、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給と同期して、前記加振装置に入力される駆動波形を一時的に変更する、
極端紫外光生成装置。
【請求項14】
請求項13に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記駆動波形は矩形波であり、
前記プロセッサは、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給と同期して、前記矩形波のデューティを変更する、
極端紫外光生成装置。
【請求項15】
請求項13に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記駆動波形は搬送波を変調して得られた被変調波であり、
前記プロセッサは、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給と同期して、前記搬送波のパラメータ及び変調のパラメータの少なくとも1つを変更する、
極端紫外光生成装置。
【請求項16】
請求項13に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記複数の液滴ターゲットの合体の状態を、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給及び前記駆動波形の変更と同期して検出する検出装置をさらに備え、
前記プロセッサは、前記検出装置の検出結果に基づいて前記補給量を決定して前記固体ターゲット補給装置を制御する、
極端紫外光生成装置。
【請求項17】
請求項16に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記プロセッサは、前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の試行補給量を増加させながら、前記検出装置から出力された検出結果を前記固体ターゲット補給装置から前記タンクへの固体ターゲット物質の補給及び前記駆動波形の変更と同期して取得し、前記液滴ターゲットの合体が完了している場合の前記試行補給量の最大値を前記補給量として決定する、
極端紫外光生成装置。
【請求項18】
請求項1に記載の極端紫外光生成装置であって、
前記固体ターゲット補給装置は、前記補給量の固体ターゲット物質を収容する収容部を含み、前記収容部に収容された固体ターゲット物質を前記タンクに移動させることで、前記補給量の固体ターゲット物質を前記タンクに補給する
極端紫外光生成装置。
【請求項19】
電子デバイスの製造方法であって、
固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成するタンクと、前記タンク内の液体ターゲット物質から液滴ターゲットを連続的に生成して、パルスレーザ光が集光するプラズマ生成領域に向けて出力するノズルと、を含み、前記液滴ターゲットを含む複数の液滴ターゲットが合体するように前記複数の液滴ターゲットに速度差を与える液滴ターゲット生成装置と、
前記複数の液滴ターゲットが前記プラズマ生成領域に到達するまでに前記複数の液滴ターゲットの合体が完了するような1回の補給量の固体ターゲット物質を前記タンクに補給する固体ターゲット補給装置と、
を備える極端紫外光生成装置によって極端紫外光を生成し、
極端紫外光を露光装置に出力し、
電子デバイスを製造するために、前記露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【請求項20】
電子デバイスの製造方法であって、
固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成するタンクと、前記タンク内の液体ターゲット物質から液滴ターゲットを連続的に生成して、パルスレーザ光が集光するプラズマ生成領域に向けて出力するノズルと、を含み、前記液滴ターゲットを含む複数の液滴ターゲットが合体するように前記複数の液滴ターゲットに速度差を与える液滴ターゲット生成装置と、
前記複数の液滴ターゲットが前記プラズマ生成領域に到達するまでに前記複数の液滴ターゲットの合体が完了するような1回の補給量の固体ターゲット物質を前記タンクに補給する固体ターゲット補給装置と、
を備える極端紫外光生成装置によって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、
前記検査の結果を用いてマスクを選定し、
前記選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写する
ことを含む、電子デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外光生成装置、及び電子デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、10nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、波長約13nmの極端紫外(EUV)光を生成するEUV光生成装置と縮小投影反射光学系(reduced projection reflection optics)とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にパルスレーザ光を照射することによって生成されるプラズマが用いられるLPP(Laser Produced Plasma)式の装置の開発が進んでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015-053292号公報
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/0221587号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2020/0363728号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2006/0133967号明細書
【特許文献5】実公昭62-036058号公報
【概要】
【0005】
本開示の1つの観点に係る極端紫外光生成装置は、固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成するタンクと、タンク内の液体ターゲット物質から液滴ターゲットを連続的に生成して、パルスレーザ光が集光するプラズマ生成領域に向けて出力するノズルと、を含み、液滴ターゲットを含む複数の液滴ターゲットが合体するように複数の液滴ターゲットに速度差を与える液滴ターゲット生成装置と、複数の液滴ターゲットがプラズマ生成領域に到達するまでに複数の液滴ターゲットの合体が完了するような1回の補給量の固体ターゲット物質をタンクに補給する固体ターゲット補給装置と、を備える。
【0006】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成するタンクと、タンク内の液体ターゲット物質から液滴ターゲットを連続的に生成して、パルスレーザ光が集光するプラズマ生成領域に向けて出力するノズルと、を含み、液滴ターゲットを含む複数の液滴ターゲットが合体するように複数の液滴ターゲットに速度差を与える液滴ターゲット生成装置と、複数の液滴ターゲットがプラズマ生成領域に到達するまでに複数の液滴ターゲットの合体が完了するような1回の補給量の固体ターゲット物質をタンクに補給する固体ターゲット補給装置と、を備える極端紫外光生成装置によって極端紫外光を生成し、極端紫外光を露光装置に出力し、電子デバイスを製造するために、露光装置内で感光基板上に極端紫外光を露光することを含む。
【0007】
本開示の1つの観点に係る電子デバイスの製造方法は、固体ターゲット物質を溶融させて液体ターゲット物質を生成するタンクと、タンク内の液体ターゲット物質から液滴ターゲットを連続的に生成して、パルスレーザ光が集光するプラズマ生成領域に向けて出力するノズルと、を含み、液滴ターゲットを含む複数の液滴ターゲットが合体するように複数の液滴ターゲットに速度差を与える液滴ターゲット生成装置と、複数の液滴ターゲットがプラズマ生成領域に到達するまでに複数の液滴ターゲットの合体が完了するような1回の補給量の固体ターゲット物質をタンクに補給する固体ターゲット補給装置と、を備える極端紫外光生成装置によって生成した極端紫外光をマスクに照射してマスクの欠陥を検査し、検査の結果を用いてマスクを選定し、選定したマスクに形成されたパターンを感光基板上に露光転写することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【
図1】
図1は、LPP式のEUV光生成システムの構成を概略的に示す。
【
図2】
図2は、比較例に係るEUV光生成システムのうちの液滴ターゲット生成装置及びその周辺の構成を示す。
【
図3】
図3は、ロードロック装置の構成例を概略的に示す。
【
図4】
図4は、ノズルの加振装置に与えられる駆動電圧の波形図である。
【
図5】
図5は、複数の液滴ターゲットが合体する様子を模式的に示す。
【
図6】
図6は、比較例におけるEUV光生成プロセッサ、液滴ターゲット生成プロセッサ、及び固体ターゲット補給プロセッサによる連携の概要を示すタイムチャートである。
【
図7】
図7は、比較例におけるEUV光生成プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、液滴ターゲット生成装置を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図9】
図9は、固体ターゲット補給装置を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図10】
図10は、比較例における液滴ターゲット生成プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、タンクの温度T及び圧力P、及び駆動波形のデューティDを制御する動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図12】
図12は、比較例における固体ターゲット補給プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図13】
図13は、第1の実施形態に係るEUV光生成システムのうちの液滴ターゲット生成装置及びその周辺の構成を示す。
【
図14】
図14は、第1の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ、液滴ターゲット生成プロセッサ、及び固体ターゲット補給プロセッサによる連携の概要を示すタイムチャートである。
【
図15】
図15は、第1の実施形態におけるEUV光生成プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図16】
図16は、固体ターゲット補給装置を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図17】
図17は、合体ターゲットを計測する動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図18】
図18は、ターゲット通過信号の時間波形の例を示すグラフである。
【
図19】
図19は、合体ターゲットを計測する他の動作を示すフローチャートである。
【
図20】
図20は、第1の実施形態における固体ターゲット補給プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図21】
図21は、第2の実施形態において用いられるターゲット計測システムの構成を概略的に示す。
【
図22】
図22は、第2の実施形態におけるターゲット検査プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図23】
図23は、第3の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ、液滴ターゲット生成プロセッサ、及び固体ターゲット補給プロセッサによる連携の概要を示すタイムチャートである。
【
図24】
図24は、第3の実施形態におけるEUV光生成プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図25】
図25は、1回の固体ターゲット補給量Qtを再設定する動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図26】
図26は、EUV光のパルスエネルギー安定性Eσを計測する動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図27】
図27は、第4の実施形態に係るEUV光生成システムのうちの液滴ターゲット生成装置及びその周辺の構成を示す。
【
図28】
図28は、第4の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ、液滴ターゲット生成プロセッサ、及び固体ターゲット補給プロセッサによる連携の概要を示すタイムチャートである。
【
図29】
図29は、第4の実施形態におけるEUV光生成プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図30】
図30は、液滴ターゲット生成装置を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図31】
図31は、加熱関数H(t)の例を示すグラフである。
【
図32】
図32は、第4の実施形態における液滴ターゲット生成プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図33】
図33は、タンクの温度T及び圧力P、及び駆動波形のデューティDを制御する動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図34】
図34は、第2の実施形態において固体ターゲット物質の補給時にタンクの温度制御を行う場合のフローチャートである。
【
図35】
図35は、第3の実施形態において固体ターゲット物質の補給時にタンクの温度制御を行う場合のフローチャートである。
【
図36】
図36は、第5の実施形態に係るEUV光生成システムのうちの液滴ターゲット生成装置及びその周辺の構成を示す。
【
図37】
図37は、第5の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ、液滴ターゲット生成プロセッサ、及び固体ターゲット補給プロセッサによる連携の概要を示すタイムチャートである。
【
図38】
図38は、液滴ターゲット生成装置を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図39】
図39は、デューティ変更関数D(t)の例を示すグラフである。
【
図40】
図40は、第5の実施形態における液滴ターゲット生成プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図41】
図41は、タンクの温度T及び圧力P、及び駆動波形のデューティDを制御する動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図42】
図42は、第6の実施形態に係るEUV光生成システムのうちの液滴ターゲット生成装置及びその周辺の構成を示す。
【
図43】
図43は、第6の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ、液滴ターゲット生成プロセッサ、及び固体ターゲット補給プロセッサによる連携の概要を示すタイムチャートである。
【
図44】
図44は、液滴ターゲット生成装置を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図45】
図45は、搬送波周波数変更関数fc(t)の例を示すグラフである。
【
図46】
図46は、第6の実施形態における液滴ターゲット生成プロセッサの動作を示すフローチャートである。
【
図47】
図47は、タンクの温度T及び圧力P、及び搬送波周波数fcを制御する動作の詳細を示すフローチャートである。
【
図48】
図48は、各実施形態において用いることができる固体ターゲット補給装置の計量器の構成を概略的に示す。
【
図49】
図49は、各実施形態において用いることができる固体ターゲット補給装置の代替的な構成を概略的に示す。
【
図50】
図50は、各実施形態において用いることができるロードロック装置の代替的な構成例を概略的に示す。
【
図51】
図51は、各実施形態において用いることができるロードロック装置の代替的な構成例を概略的に示す。
【
図52】
図52は、各実施形態において用いることができる液滴ターゲット生成装置の代替的な構成例を概略的に示す。
【
図53】
図53は、各実施形態の液滴ターゲット生成装置において用いることができる圧力調節器の構成を概略的に示す。
【
図54】
図54は、EUV光生成システムに接続された露光装置の構成を概略的に示す。
【
図55】
図55は、EUV光生成システムに接続された検査装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
<内容>
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
1.2 動作
2.比較例
2.1 構成
2.1.1 固体ターゲット補給装置8
2.1.2 液滴ターゲット生成装置26
2.1.3 CWレーザ光源41及び通過センサユニット42
2.1.4 パルス光源43及び撮像ユニット44
2.1.5 EUVセンサ40
2.1.6 EUV光利用装置プロセッサ65
2.2 各種プロセッサの動作
2.2.1 概要
2.2.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
2.2.3 液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作
2.2.4 固体ターゲット補給プロセッサ85の動作
2.3 比較例の課題
3.ターゲット計測結果を用いて設定される補給量Qt
3.1 構成
3.2 各種プロセッサの動作
3.2.1 概要
3.2.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
3.2.3 補給量Qtの下限値の計算例
3.2.4 固体ターゲット補給プロセッサ85の動作
3.3 作用
4.ターゲット計測システムを用いて設定される補給量Qt
4.1 構成
4.2 動作
4.3 作用
5.EUV光のパルスエネルギー安定性Eσに基づいて設定される補給量Qt
5.1 各種プロセッサの動作
5.1.1 概要
5.1.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
5.1.3 固体ターゲット補給プロセッサ85の動作
5.2 作用
6.固体ターゲット物質27aの補給時のタンク260の温度制御
6.1 構成
6.2 各種プロセッサの動作
6.2.1 概要
6.2.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
6.2.3 液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作
6.3 第2の実施形態への適用
6.4 第3の実施形態への適用
6.5 作用
7.固体ターゲット物質27aの補給時の駆動波形のデューティ制御
7.1 構成
7.2 各種プロセッサの動作
7.2.1 概要
7.2.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
7.2.3 液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作
7.3 作用
8.固体ターゲット物質27aの補給時の駆動波形の変調制御
8.1 構成
8.2 各種プロセッサの動作
8.2.1 概要
8.2.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
8.2.3 液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作
8.2.4 被変調波の例
8.2.4.1 PM変調波Vpm(t)
8.2.4.2 FM変調波Vfm(t)
8.2.4.3 AM変調波Vam(t)
8.3 作用
9.その他
9.1 固体ターゲット補給装置8の計量器82
9.2 1回の補給量Qtが固定された固体ターゲット補給装置8
9.3 シャッタ831を含むロードロック装置83
9.4 小タンク260st及びノズル266にそれぞれヒーター267st及び267nzが配置された液滴ターゲット生成装置26
9.5 圧力調節器261
9.6 EUV光利用装置6
9.7 補足
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成及び動作の全てが本開示の構成及び動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.EUV光生成システム11の全体説明
1.1 構成
図1に、LPP式のEUV光生成システム11の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、レーザ装置3とともに用いられる。本開示においては、EUV光生成装置1及びレーザ装置3を含むシステムを、EUV光生成システム11と称する。EUV光生成装置1は、チャンバ2及び液滴ターゲット生成装置26を含む。チャンバ2は、密閉可能な容器である。液滴ターゲット生成装置26は、ターゲット物質を含むターゲット27をチャンバ2内部に供給する。ターゲット物質の材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、又は、それらの内のいずれか2つ以上の組合せを含んでもよい。
【0012】
チャンバ2の壁には、貫通孔が備えられている。その貫通孔は、ウインドウ21によって塞がれ、ウインドウ21をレーザ装置3から出力されるパルスレーザ光32が透過する。チャンバ2の内部には、回転楕円面形状の反射面を備えたEUV集光ミラー23が配置される。EUV集光ミラー23は、第1及び第2の焦点を備える。EUV集光ミラー23の表面には、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成される。EUV集光ミラー23は、その第1の焦点がプラズマ生成領域25に位置し、その第2の焦点が中間集光点292に位置するように配置される。EUV集光ミラー23の中央部には貫通孔24が備えられ、貫通孔24をパルスレーザ光33が通過する。
【0013】
EUV光生成装置1は、EUV光生成プロセッサ5、ターゲットセンサ4等を含む。EUV光生成プロセッサ5は、制御プログラムが記憶されたメモリ501と、制御プログラムを実行するCPU(central processing unit)502と、を含む処理装置である。EUV光生成プロセッサ5は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。ターゲットセンサ4は、ターゲット27の存在、軌跡、位置、速度の内の少なくとも1つを検出する。ターゲットセンサ4は、撮像機能を備えてもよい。
【0014】
また、EUV光生成装置1は、チャンバ2の内部とEUV光利用装置6の内部とを連通させる接続部29を含む。EUV光利用装置6の例については、
図54及び
図55を参照しながら後述する。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が備えられる。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点に位置するように配置される。
【0015】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光伝送装置34、レーザ光集光ミラー22、ターゲット27を回収するためのターゲット回収部28等を含む。レーザ光伝送装置34は、パルスレーザ光32の伝送状態を規定するための光学素子と、この光学素子の位置、姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備える。
【0016】
1.2 動作
図1を参照して、EUV光生成システム11の動作を説明する。レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光伝送装置34を経て、パルスレーザ光32としてウインドウ21を透過してチャンバ2内に入射する。パルスレーザ光32は、レーザ光路に沿ってチャンバ2内を進み、レーザ光集光ミラー22で反射されて、パルスレーザ光33としてターゲット27に照射される。
【0017】
液滴ターゲット生成装置26は、ターゲット27をチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力する。ターゲット27には、パルスレーザ光33が照射される。パルスレーザ光33が照射されたターゲット27はプラズマ化し、そのプラズマから放射光251が放射される。放射光251に含まれるEUV光は、EUV集光ミラー23によって他の波長域の光に比べて高い反射率で反射される。EUV集光ミラー23によって反射されたEUV光を含む反射光252は、中間集光点292で集光され、EUV光利用装置6に出力される。なお、1つのターゲット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスが照射されてもよい。
【0018】
EUV光生成プロセッサ5は、EUV光生成システム11全体を制御する。EUV光生成プロセッサ5は、ターゲットセンサ4の検出結果を処理する。ターゲットセンサ4の検出結果に基づいて、EUV光生成プロセッサ5は、ターゲット27が出力されるタイミング、ターゲット27の出力方向等を制御する。さらに、EUV光生成プロセッサ5は、レーザ装置3の発振タイミング、パルスレーザ光32の進行方向、パルスレーザ光33の集光位置等を制御する。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御が追加されてもよい。
【0019】
2.比較例
2.1 構成
図2は、比較例に係るEUV光生成システム11のうちの液滴ターゲット生成装置26及びその周辺の構成を示す。本開示の比較例とは、出願人のみによって知られていると出願人が認識している形態であって、出願人が自認している公知例ではない。液滴ターゲット生成装置26は、固体ターゲット補給装置8、EUVセンサ40、CWレーザ光源41、通過センサユニット42、パルス光源43、及び撮像ユニット44とともに用いられる。通過センサユニット42及び撮像ユニット44は本開示における検出装置に相当する。
【0020】
2.1.1 固体ターゲット補給装置8
固体ターゲット補給装置8は、固体ターゲット容器81と、計量器82と、ロードロック装置83と、固体ターゲット補給プロセッサ85と、を含む。固体ターゲット補給プロセッサ85は図示しないメモリ及びCPUを含み、その構成はEUV光生成プロセッサ5と同様である。
【0021】
固体ターゲット容器81は、スズなどの固体ターゲット物質27aを収容する容器である。固体ターゲット物質27aは、例えば、互いにほぼ同じ大きさの球形の粒であってもよい。あるいは、球形以外の形状の粒、ペレット、あるいはインゴットであってもよい。固体ターゲット容器81の内部の温度はターゲット物質の融点より低い温度である。固体ターゲット容器81の内部の圧力は、大気圧と同程度である。
【0022】
計量器82は固体ターゲット容器81の下端に配置されている。固体ターゲット容器81は、計量器82を介して供給管86に接続され、供給管86はロードロック装置83に接続されている。ロードロック装置83はさらに供給管87に接続され、供給管87は液滴ターゲット生成装置26のタンク260に接続されている。
【0023】
計量器82は、通常時は固体ターゲット容器81から供給管86への固体ターゲット物質27aの供給を止めている。
計量器82は、固体ターゲット物質27aを計量しながら供給管86へ移動させることができる。固体ターゲット物質27aの計量は、固体ターゲット物質27aの粒の数を数えることを含む。計量された固体ターゲット物質27aは重力によって移動し、供給管86を通過してロードロック装置83に移動する。計量器82は、予め決められた量の固体ターゲット物質27aを通過させたら、固体ターゲット物質27aの通過を止める。1回の固体ターゲット補給量QtはEUV光生成プロセッサ5によって設定される。
【0024】
図3は、ロードロック装置83の構成例を概略的に示す。ロードロック装置83は、圧力調節器88と、ロードロック室89と、を含み、供給管86及び87の間に配置されている。供給管86には入口バルブ861が配置され、供給管87には出口バルブ871が配置されている。圧力調節器88は、ロードロック室89と図示しない不活性ガスボンベとの間に配管を介して接続される。ロードロック室89はさらに図示しない排気ポンプに接続されてもよい。ロードロック室89は、計量器82から供給される固体ターゲット物質27aを収容可能に構成されている。ロードロック室89の内部の温度はターゲット物質の融点より低い温度である。
【0025】
入口バルブ861及び出口バルブ871は、一方を開く前に必ず他方を閉じるように、固体ターゲット補給プロセッサ85によって制御される。入口バルブ861を開いた状態で固体ターゲット物質27aを計量器82からロードロック室89へ移動させることができる。固体ターゲット物質27aがロードロック室89に収容され、入口バルブ861及び出口バルブ871が閉じられた状態で、ロードロック室89の内部を液滴ターゲット生成装置26のタンク260の内部と同じ圧力とするよう、圧力調節器88が固体ターゲット補給プロセッサ85によって制御される。その後、出口バルブ871を開くと、固体ターゲット物質27aをロードロック室89からタンク260へ移動させることができる。これにより、タンク260内の圧力の変動が抑制される。
【0026】
2.1.2 液滴ターゲット生成装置26
図2を再び参照し、液滴ターゲット生成装置26は、タンク260と、液滴ターゲット生成プロセッサ265と、ノズル266と、ヒーター267と、温度センサ268と、加振装置269と、を含む。液滴ターゲット生成プロセッサ265は、図示しないメモリ及びCPUを含み、その構成はEUV光生成プロセッサ5と同様である。
【0027】
タンク260は、ロードロック室89から供給管87を介して供給されるターゲット物質を収容する容器である。タンク260は、供給管87の一部を介して圧力調節器261に接続されている。圧力調節器261は液滴ターゲット生成装置26の外部のガスボンベG1に接続されている。ガスボンベG1は、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの高圧の希ガスを加圧ガスとして収容している。液滴ターゲット生成プロセッサ265が圧力調節器261を制御することにより、タンク260の内部の圧力が所定の圧力に調節される。所定の圧力は、ガスボンベG1から供給されたガスの圧力より低く、大気圧より高い圧力である。
【0028】
ヒーター267はタンク260に取り付けられている。ヒーター267は、ヒーター電源263に接続される。タンク260に配置された温度センサ268の出力に基づいて液滴ターゲット生成プロセッサ265が温度調節器262を制御し、温度調節器262がヒーター電源263を制御することにより、タンク260の内部の温度が制御される。これにより、タンク260において固体ターゲット物質27aが溶融されて液体ターゲット物質27bとなる。タンク260の目標温度TtはEUV光生成プロセッサ5によってターゲット物質の融点より高い温度に設定される。なお、図示しない別のヒーターがノズル266に取り付けられてもよい。
【0029】
タンク260にはレベルセンサLVが配置されている。レベルセンサLVは、タンク260内の液体ターゲット物質27bの残量が下限値以下になった場合に、固体ターゲット物質27aの補給を要求する信号を生成する。この信号は固体ターゲット補給プロセッサ85に送信される。
【0030】
ノズル266は、タンク260の重力方向における下端部に配置されている。ノズル266の先端は、チャンバ2(
図1参照)の内部に開口している。ノズル266には圧電素子を含む加振装置269が取り付けられ、加振装置269は駆動電源264に接続されている。駆動電源264は液滴ターゲット生成プロセッサ265によって制御される。タンク260の内部の液体ターゲット物質27bは、圧力調節器261から供給されるガスの圧力とチャンバ2の内部の圧力との差によって、ノズル266の先端の開口から吐出される。加振装置269によってノズル266に振動を与えると、ノズル266から吐出されたジェット状の液体ターゲット物質27bは液滴状に分離され、液滴ターゲット271となる。
【0031】
図4は、ノズル266の加振装置269に与えられる駆動電圧の波形図である。横軸は時間tを示し、縦軸は電圧Vを示す。駆動電圧は矩形波で与えられてもよい。駆動電圧の周期をTcとし、繰り返し周波数をfとすると、周期Tcは1/fで与えられる。駆動電圧の1周期あたりのオン時間をTonとする。(Ton/Tc)×100で与えられる比率を駆動波形のデューティDと呼ぶ。デューティDを変更する場合は、周期Tcは変更せずにオン時間Tonを変更する。
【0032】
図5は、複数の液滴ターゲット271が合体する様子を模式的に示す。加振装置269に与えられる駆動波形を調整することで、複数の液滴ターゲット271にわずかな速度差が生じ得る。複数の液滴ターゲット271に速度差が生じると、隣り合う液滴ターゲット同士が合体して合体ターゲット272を生成し得る。合体ターゲット272は、さらに隣接する液滴ターゲット271と合体する。合体ターゲット272の前後に液滴ターゲット271がなくなった状態を合体完了といい、このときの合体ターゲット272がターゲット27に相当する。合体完了の前に合体ターゲット272の前後に存在していた液滴ターゲット271をサテライトという。
【0033】
ノズル266の先端から合体完了した最初のターゲット27までの距離を合体距離Lcとする。合体完了したターゲット27の速度をVdとすると、合体完了したターゲット27間の間隔である合体完了ターゲット間距離Ldは以下の式で与えられる。
Ld=Vd・Tc
このように、駆動電圧の周期Tcに応じて合体完了ターゲット間距離Ldが決まる。
【0034】
2.1.3 CWレーザ光源41及び通過センサユニット42
図2を再び参照し、CWレーザ光源41及び通過センサユニット42は、ターゲット27又は液滴ターゲット271の軌道を挟んで互いに反対側に配置されている。
【0035】
CWレーザ光源41は、CWレーザ413と、集光レンズ411と、を含む。集光レンズ411は、CWレーザ413から出力されたレーザ光をターゲット27又は液滴ターゲット271の軌道及びその周辺に集光する。
【0036】
通過センサユニット42は、受光光学系421と、光センサ423と、を含む。受光光学系421は、ターゲット27又は液滴ターゲット271の軌道を通った光を光センサ423の受光部に導く。CWレーザ413から出力されたレーザ光の光路をターゲット27又は液滴ターゲット271が通過すると、レーザ光の一部がターゲット27又は液滴ターゲット271によって遮られ、光センサ423が受光する光の強度が低下する。これによりターゲット27又は液滴ターゲット271の通過タイミングが検出され、通過タイミング信号がEUV光生成プロセッサ5に出力される。
【0037】
2.1.4 パルス光源43及び撮像ユニット44
パルス光源43及び撮像ユニット44は、プラズマ生成領域25を挟んで互いに反対側に配置されている。
【0038】
パルス光源43は、フラッシュランプ433と、コリメータレンズ431と、を含む。フラッシュランプ433は、通過センサユニット42で検出された通過タイミングに対して所定の遅延時間でフラッシュ発光するように、EUV光生成プロセッサ5によって制御される。この遅延時間は、EUV光生成プロセッサ5がフラッシュランプ433との間に接続された図示しない遅延回路を介して制御信号を送信することで実現される。コリメータレンズ431は、フラッシュランプ433からの出力光がプラズマ生成領域25及びその周辺に照射されるようにその出力光を平行光とする。
【0039】
撮像ユニット44は、転写光学系441と、シャッタ442と、イメージセンサ443と、を含む。転写光学系441は、プラズマ生成領域25に到達したターゲット27又は液滴ターゲット271の反転像がイメージセンサ443の受光面に形成されるように配置されている。シャッタ442は、フラッシュ発光と同期して所定時間だけ開くように、EUV光生成プロセッサ5によって制御される。イメージセンサ443は、その受光面に入射する光の強度分布データを画像として出力する。ターゲット27がプラズマ生成領域25に位置しているとき、ターゲット27の反転像に相当する部分が暗く、他は明るい画像となる。これによりターゲット27又は液滴ターゲット271の画像がEUV光生成プロセッサ5に出力される。
【0040】
2.1.5 EUVセンサ40
EUVセンサ40は、プラズマ生成領域25に受光面を向けられた図示しないエネルギー計測器と、プラズマ生成領域25とエネルギー計測器との間に配置された図示しないEUV光透過フィルタと、を含む。レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31が、簡略化して図示されたレーザ光集光ミラー22によってパルスレーザ光33として集光され、プラズマ生成領域25に到達したターゲット27に照射されると、EUV光が生成される。EUVセンサ40は、プラズマ生成領域25から放出されたEUV光のパルスエネルギーEeuv(k)を検出し、EUV光生成プロセッサ5に出力する。
【0041】
2.1.6 EUV光利用装置プロセッサ65
EUV光利用装置6(
図1参照)は、EUV光利用装置プロセッサ65を含む。EUV光生成プロセッサ5は、EUV光利用装置プロセッサ65との間で信号を送受信し、EUV光利用装置6にEUV光を出力するか否かを決定する。
【0042】
2.2 各種プロセッサの動作
2.2.1 概要
図6~
図12を参照しながら、比較例におけるEUV光生成プロセッサ5、液滴ターゲット生成プロセッサ265、及び固体ターゲット補給プロセッサ85の動作を説明する。これらのプロセッサは互いに信号を送受信しながら連携して動作する。
【0043】
図6は、比較例におけるEUV光生成プロセッサ5、液滴ターゲット生成プロセッサ265、及び固体ターゲット補給プロセッサ85による連携の概要を示すタイムチャートである。
図6においては上端から下方へ向かって時間が経過する。EUV光生成プロセッサ5の動作は、
図7~
図9を参照しながら説明するように、S1200(液滴ターゲット生成装置26を起動)、S1300(固体ターゲット補給装置8を起動)、及びS2100(EUV光を生成)を含む。
【0044】
S1200において、EUV光生成プロセッサ5はタンク260の目標温度Ttを液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する。液滴ターゲット生成プロセッサ265は、
図10及び
図11を参照しながら説明するように、S336において目標温度Ttに従った制御を行い、タンク260の温度Tが安定したらフラグF1=1をEUV光生成プロセッサ5に送信する。EUV光生成プロセッサ5は、フラグF1=1を受信したらS1200の処理を終了する。但し、その後も液滴ターゲット生成プロセッサ265の処理は続けられて、タンク260の温度Tが維持される。
【0045】
S1300において、EUV光生成プロセッサ5は1回の固体ターゲット補給量QtをN0・Qminに設定し、固体ターゲット補給プロセッサ85に送信する。固体ターゲット補給プロセッサ85は、
図12を参照しながら説明するように、タンク260内の残量が下限値以下になると、補給量Qtの固体ターゲット物質27aをタンク260に移動させる。その後も固体ターゲット補給プロセッサ85の処理は続けられて、タンク260内の残量が減れば固体ターゲット物質27aが補給される。
【0046】
S2100において、EUV光生成プロセッサ5はEUV光生成装置1を制御してEUV光を生成させ、EUV光利用装置6に出力させる。この動作は、液滴ターゲット生成プロセッサ265及び固体ターゲット補給プロセッサ85の動作とともに、EUV光利用装置6からEUV光停止信号を受信するまで繰り返される。
【0047】
2.2.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
図7は、比較例におけるEUV光生成プロセッサ5の動作を示すフローチャートである。
S1000において、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光利用装置6へEUV光生成NG信号を出力する。EUV光生成NG信号は後述のS1800で解除されるまで有効な信号である。
【0048】
S1100において、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光生成装置1を起動させる。EUV光生成装置1の起動は以下の動作を含む。
(a)EUVセンサ40、CWレーザ光源41、通過センサユニット42、パルス光源43、撮像ユニット44等の各種装置の起動
(b)パルス光源43及び撮像ユニット44等の各種遅延時間の設定
(c)EUV光の目標パルスエネルギーの設定
(d)レーザ装置3の起動
【0049】
S1200において、EUV光生成プロセッサ5は、液滴ターゲット生成装置26を起動させる。S1200の詳細については
図8を参照しながら説明する。
S1300において、EUV光生成プロセッサ5は、固体ターゲット補給装置8を起動させる。S1300の詳細については
図9を参照しながら説明する。
【0050】
S1500において、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光生成装置1を制御してEUV光を生成させる。EUV光の生成は以下の動作を含む。
(a)レーザ装置3への発光トリガの出力
(b)EUV光のパルスエネルギーEeuv(k)の計測
(c)EUV光のパルスエネルギーEeuv(k)の計測結果に基づくパルスレーザ光のパルスエネルギーのフィードバック制御
但し、S1500においては図示しないシャッタを閉じておき、EUV光利用装置6にはEUV光を出力させない。
【0051】
S1600において、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光がOKであるか、例えばEUV光のパルスエネルギーEeuv(k)が安定しているか否かを判定する。EUV光がOKでない場合(S1600:NO)、EUV光生成プロセッサ5はS1500に処理を戻す。EUV光がOKである場合(S1600:YES)、EUV光生成プロセッサ5はS1800に処理を進める。本開示のフローチャートに含まれる分岐において、「N」はNOの場合の分岐先を示し、「Y」はYESの場合の分岐先を示す。
【0052】
S1800において、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光利用装置6へEUV光生成OK信号を出力する。S1000のEUV光生成NG信号は解除される。
S1900において、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光利用装置6からEUV光生成信号を受信したか否かを判定する。EUV光生成信号を受信していない場合(S1900:NO)、受信するまで待機する。EUV光生成信号を受信した場合(S1900:YES)、EUV光生成プロセッサ5はS2100に処理を進める。
【0053】
S2100において、EUV光生成プロセッサ5はEUV光生成装置1を制御してEUV光を生成させる。この処理はS1500と同様である。但し、S2100においては図示しないシャッタを開け、EUV光利用装置6にEUV光を出力させる。
【0054】
S2200において、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光利用装置6からEUV光停止信号を受信したか否かを判定する。EUV光停止信号を受信していない場合(S2200:NO)、EUV光生成プロセッサ5はS2100に処理を戻す。EUV光停止信号を受信した場合(S2200:YES)、EUV光生成プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了する。
【0055】
図8は、液滴ターゲット生成装置26を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。
図8は
図7のS1200のサブルーチンに相当する。
S1201において、EUV光生成プロセッサ5は、液滴ターゲット生成装置26の各種機器を起動させる。
【0056】
S1202において、EUV光生成プロセッサ5は、タンク260の目標温度TtをT0に設定し、液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する。ターゲット物質がスズである場合、T0は例えば260℃である。
S1204において、EUV光生成プロセッサ5は、タンク260の目標圧力PtをP0に設定し、液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する。
S1205において、EUV光生成プロセッサ5は、加振装置269に与えられる駆動電圧の駆動波形のデューティDtをD0に設定し、液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する。
S1202~S1205で設定された値に従い、
図10及び
図11において液滴ターゲット生成プロセッサ265の処理が行われる。
【0057】
S1207において、EUV光生成プロセッサ5は、タンク260の温度T及び圧力Pがそれぞれの目標値で安定したか否かを判定する。具体的には液滴ターゲット生成プロセッサ265からフラグF1の値を受信する。フラグF1=0であれば(S1207:NO)、温度T及び圧力Pが安定するまで待機する。フラグF1=1であれば(S1207:YES)、温度T及び圧力Pが安定したと判定し、本フローチャートの処理を終了して
図7に示される処理に戻る。
【0058】
図9は、固体ターゲット補給装置8を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。
図9は
図7のS1300のサブルーチンに相当する。
S1301において、EUV光生成プロセッサ5は、固体ターゲット補給装置8の各種機器を起動させる。
S1331において、EUV光生成プロセッサ5は、1回の固体ターゲット補給量QtをN0・Qminに設定し、設定された値を固体ターゲット補給プロセッサ85に送信する。Qminは固体ターゲット物質27aの1個あたりの質量であり、N0は1回の補給量として設定された固体ターゲット物質27aの粒の個数である。
S1331で設定された値に従い、
図12において固体ターゲット補給プロセッサ85の処理が行われる。
S1331の後、EUV光生成プロセッサ5は、本フローチャートの処理を終了して
図7に示される処理に戻る。
【0059】
2.2.3 液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作
図10は、比較例における液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作を示すフローチャートである。
S300において、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、EUV光生成プロセッサ5から目標温度Tt、目標圧力Pt、及びデューティDtを受信する。
【0060】
S330において、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、タンク260の温度T及び圧力P、及び駆動波形のデューティDを制御する。S330の詳細については
図11を参照しながら説明する。
S340において、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、温度T及び圧力Pがそれぞれの目標値で安定したか否かを判定する。温度T及び圧力Pが安定していない場合(S340:NO)、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S350においてフラグF1を0に設定し、S330に戻る。温度T及び圧力Pが安定した場合(S340:YES)、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S360においてフラグF1を1に設定し、S370に処理を進める。
【0061】
S370において、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、液滴ターゲット271の生成を終了するか否かを判定する。EUV光生成プロセッサ5がEUV光利用装置6からEUV光停止信号を受信した場合は液滴ターゲット271の生成を終了し(S370:YES)、液滴ターゲット生成プロセッサ265は本フローチャートの処理を終了する。液滴ターゲット271の生成を終了しない場合(S370:NO)、液滴ターゲット生成プロセッサ265はS330に処理を戻す。すなわち、温度T及び圧力Pが安定した後であっても(S340:YES)、液滴ターゲット271の生成が行われる限りは、温度T、圧力P、及びデューティDの制御(S330)が行われる。
【0062】
図11は、タンク260の温度T及び圧力P、及び駆動波形のデューティDを制御する動作の詳細を示すフローチャートである。
図11は
図10のS330のサブルーチンに相当する。
液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S336においてタンク260の温度Tが目標温度Ttに近づくように温度調節器262を制御し、S337において、タンク260の圧力Pが目標圧力Ptに近づくように圧力調節器261を制御し、S338において、デューティDがDtとなるように駆動波形を制御する。
その後、液滴ターゲット生成プロセッサ265は本フローチャートの処理を終了し、
図10に示される処理に戻る。
【0063】
2.2.4 固体ターゲット補給プロセッサ85の動作
図12は、比較例における固体ターゲット補給プロセッサ85の動作を示すフローチャートである。
【0064】
S500において、固体ターゲット補給プロセッサ85は、ロードロック室89(
図3参照)の入口バルブ861及び出口バルブ871を閉め、ロードロック室89の内部を大気圧の気体で満たす。
【0065】
S502において、固体ターゲット補給プロセッサ85は、一回の固体ターゲット補給量QtをEUV光生成プロセッサ5から受信して記憶する。比較例のように、補給量Qtが固体ターゲット補給装置8の起動時(
図9参照)に1回設定されるだけである場合は、補給量Qtを受信するのは最初の1回だけでもよい。補給量Qtがその後更新される本開示の処理については後述する。
【0066】
S504において、固体ターゲット補給プロセッサ85は、タンク260内の液体ターゲット物質27bの残量が下限値以下になったか否かを判定する。残量が下限値より多い場合(S504:NO)、固体ターゲット補給プロセッサ85は、S502に処理を戻す。残量が下限値以下になった場合(S504:YES)、固体ターゲット補給プロセッサ85は、S506に処理を進める。
【0067】
S506において、固体ターゲット補給プロセッサ85は、入口バルブ861を開け、ロードロック室89に補給量Qtの固体ターゲット物質27aを移動させる。
S508において、固体ターゲット補給プロセッサ85は、入口バルブ861を閉め、ロードロック室89内の気体を排気する。ここで、ロードロック室89内が大気で満たされていた場合は、ほとんどの大気が排気されるような圧力となるまで排気してもよい。その後、固体ターゲット補給プロセッサ85はロードロック室89を不活性ガスで目標圧力Ptまで加圧するよう圧力調節器88を制御する。
【0068】
S510において、固体ターゲット補給プロセッサ85は、出口バルブ871を開け、液滴ターゲット生成装置26のタンク260に補給量Qtの固体ターゲット物質27aを移動させる。ロードロック室89が目標圧力Ptまで加圧されているので、出口バルブ871を開けたときのタンク260内の圧力変動は抑制される。
S512において、固体ターゲット補給プロセッサ85は、出口バルブ871を閉め、ロードロック室89を大気圧の気体で満たす。
【0069】
S514において、固体ターゲット補給プロセッサ85は、固体ターゲット補給制御を終了するか否かを判定する。EUV光生成プロセッサ5がEUV光利用装置6からEUV光停止信号を受信した場合は固体ターゲットの補給を終了し(S514:YES)、固体ターゲット補給プロセッサ85は本フローチャートの処理を終了する。固体ターゲットの補給を終了しない場合(S514:NO)、固体ターゲット補給プロセッサ85はS502に処理を戻す。すなわち、固体ターゲット物質27aを一度補給した後であっても、タンク260内の残量が再度下限値以下になれば、固体ターゲット物質27aの補給が行われる。
【0070】
2.3 比較例の課題
ロードロック装置83に含まれる入口バルブ861及び出口バルブ871の寿命は開閉回数に依存する。開閉回数はできるだけ少ないことが望ましいため、1回の固体ターゲット補給量Qtはできるだけ大きいことが望ましい。
【0071】
しかし、補給量Qtを大きくし過ぎると、液滴ターゲット271の合体不良が生じることがわかった。液滴ターゲット271の合体不良とは、液滴ターゲット生成装置26のノズル266の先端の開口からプラズマ生成領域25までの距離よりも、液滴ターゲット271の合体距離Lc(
図5参照)が長くなる現象である。この場合、プラズマ生成領域25において合体完了していない合体ターゲット272又は液滴ターゲット271にパルスレーザ光33が照射されることになる。
【0072】
液滴ターゲット271の合体不良が生じると、EUV光のパルスエネルギーEeuv(k)が意図せずに変動してしまう。EUV光利用装置6が露光装置である場合は露光性能に、EUV光利用装置6が検査装置である場合は検査性能に、それぞれ悪影響を及ぼす可能性がある。
また、液滴ターゲット271の合体不良が生じると、プラズマ化されないターゲット物質のデブリが多く発生し、チャンバ2内の光学部品を汚染する可能性がある。
【0073】
以下に説明する幾つかの実施形態においては、液滴ターゲット271がプラズマ生成領域25に到達するまでに液滴ターゲット271の合体が完了するような1回の補給量Qtの固体ターゲット物質27aをタンク260に補給する。
【0074】
3.ターゲット計測結果を用いて設定される補給量Qt
3.1 構成
図13は、第1の実施形態に係るEUV光生成システム11のうちの液滴ターゲット生成装置26及びその周辺の構成を示す。第1の実施形態においては、固体ターゲット補給プロセッサ85からEUV光生成プロセッサ5に向けて固体ターゲット補給信号を送信する信号線が設けられている。他の点については、第1の実施形態の構成は比較例と同様である。
【0075】
3.2 各種プロセッサの動作
3.2.1 概要
図14~
図20を参照しながら、第1の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ5、液滴ターゲット生成プロセッサ265、及び固体ターゲット補給プロセッサ85の動作を説明する。
【0076】
図14は、第1の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ5、液滴ターゲット生成プロセッサ265、及び固体ターゲット補給プロセッサ85による連携の概要を示すタイムチャートである。
【0077】
EUV光生成プロセッサ5がS1200において液滴ターゲット生成装置26を起動させる処理、及び液滴ターゲット生成プロセッサ265がS336において目標温度Ttに従った制御を行う処理は、比較例と同様である。
【0078】
EUV光生成プロセッサ5の動作は、
図15~
図19を参照しながら説明するように、S1300a(固体ターゲット補給装置8を起動)に含まれるS1306a(試行補給量N・Qminの送信)、S1310a(液滴ターゲット271の計測)、及びS1328a(補給量Nmax・Qminの送信)を含む。
【0079】
(a)S1306aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は1回の固体ターゲット補給量Qtを試行補給量N・Qminに設定し、固体ターゲット補給プロセッサ85に送信する。
(b)固体ターゲット補給プロセッサ85は、
図20を参照しながら説明するように、タンク260内の残量が下限値以下になると、試行補給量N・Qminに設定された補給量Qtの固体ターゲット物質27aをタンク260に移動させ、併せて固体ターゲット補給信号を送信する。
(c)固体ターゲット補給信号を受信したEUV光生成プロセッサ5は、S1310aにおいて合体ターゲット272を計測し、合体が完了しているか否かを判定する。
【0080】
その後、Nの値に1を加算して(a)~(c)の動作を行うことが繰り返される。
S1328aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は1回の固体ターゲット補給量QtをNmax・Qminに設定し、固体ターゲット補給プロセッサ85に送信する。
【0081】
EUV光生成プロセッサ5がS2100においてEUV光を生成させる処理は、比較例と同様である。固体ターゲット補給プロセッサ85は、タンク260内の残量が下限値以下になると、Nmax・Qminに設定された補給量Qtの固体ターゲット物質27aをタンク260に移動させる。これらの動作は、EUV光利用装置6からEUV光停止信号を受信するまで繰り返される。
【0082】
3.2.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
図15は、第1の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ5の動作を示すフローチャートである。比較例と第1の実施形態との違いは、固体ターゲット補給装置8を起動させる処理として、S1300の代わりにS1300aの処理が行われる点である。
【0083】
図16は、固体ターゲット補給装置8を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。
図16は
図15のS1300aのサブルーチンに相当する。
S1301において、EUV光生成プロセッサ5は、比較例と同様に各種機器を起動させる。
【0084】
S1302aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、固体ターゲット物質27aの粒の個数を示すカウンタNの値を0にセットし、Nの値が0である場合の合体状態を示すフラグF(N)を0にセットする。
【0085】
S1304aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、Nの値に1を加算してNの値を更新する。
S1306aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、1回の固体ターゲット補給量Qtを試行補給量N・Qminに設定し、設定された値を固体ターゲット補給プロセッサ85に送信する。
【0086】
S1308aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、固体ターゲット補給信号を固体ターゲット補給プロセッサ85から受信したか否かを判定する。固体ターゲット補給信号を受信していない場合(S1308a:NO)、EUV光生成プロセッサ5は固体ターゲット補給信号を受信するまで待機する。固体ターゲット補給信号を受信した場合(S1308a:YES)、EUV光生成プロセッサ5はS1310aに処理を進める。
【0087】
S1310aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、合体ターゲット272を計測し、合体の状態を検出する。合体不良であればフラグF(N)=0が設定され、合体完了であればフラグF(N)=1が設定される。S1310aの詳細については
図17~
図19を参照しながら説明する。
【0088】
S1321aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、前回のフラグF(N-1)及び今回のフラグF(N)の値がそれぞれ0及び1であるか否かを判定する。F(N-1)及びF(N)の値がそれぞれ0及び1である場合(S1321a:YES)、EUV光生成プロセッサ5はS1322aに処理を進める。それ以外の場合(S1321a:NO)、EUV光生成プロセッサ5はS1324aに処理を進める。
【0089】
S1322aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、合体完了となる固体ターゲット物質27aの粒の個数の最小値Nminを現在のNの値に設定する。最小値Nminは、S1304aにおいてNを1ずつ増加させながら合体の状態を計測し、S1321aにおいて合体不良(F(N-1)=0)から合体完了(F(N)=1)となったときのNの値である。
なお、第1の実施形態においては、1回の固体ターゲット補給量Qtを決定するために合体ターゲット272を計測するとき(S1310a)に、液滴ターゲット生成プロセッサ265の処理は変更されない点で第4の実施形態と異なる。このため、N=1で合体完了となり、最小値Nminは1となる可能性が高い。
【0090】
S1324aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、前回のフラグF(N-1)及び今回のフラグF(N)の値がそれぞれ1及び0であるか否かを判定する。F(N-1)及びF(N)の値がそれぞれ1及び0である場合(S1324a:YES)、EUV光生成プロセッサ5はS1326aに処理を進める。それ以外の場合(S1324a:NO)、EUV光生成プロセッサ5はS1304aに処理を戻す。
【0091】
S1326aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、合体完了となる固体ターゲット物質27aの粒の個数の最大値Nmaxを前回のNの値であるN-1に設定する。最大値Nmaxは、S1304aにおいてNを1ずつ増加させながら合体の状態を計測し、S1324aにおいて合体完了(F(N-1)=1)から合体不良(F(N)=0)となったときのN-1の値である。
【0092】
S1328aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、1回の固体ターゲット補給量QtをNmax・Qminに設定し、設定された値を固体ターゲット補給プロセッサ85に送信する。
S1328aの後、EUV光生成プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了し、
図15に示される処理に戻る。
【0093】
図17は、合体ターゲット272を計測する動作の詳細を示すフローチャートである。
図17は
図16のS1310aのサブルーチンに相当する。
S1311aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、ターゲット通過信号の時間波形を計測する。
【0094】
S1313aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、ターゲット通過信号からサテライトが観測されたか否かを判定する。
サテライトが観測された場合(S1313a:YES)、EUV光生成プロセッサ5は処理をS1314aに進める。S1314aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は合体不良と判定し、フラグF(N)の値を0に設定する。
サテライトが観測されなかった場合(S1313a:NO)、EUV光生成プロセッサ5は処理をS1315aに進める。S1315aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は合体完了と判定し、フラグF(N)の値を1に設定する。
【0095】
S1314a又はS1315aの後、EUV光生成プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了し、
図16に示される処理に戻る。
【0096】
図18は、ターゲット通過信号の時間波形の例を示すグラフである。
図18の横軸は時間tを示し、縦軸は光強度Iを示す。ターゲット通過信号の時間波形は、通常時は高い光強度Iを有するが、液滴ターゲット271又は合体ターゲット272が通過するときだけ光強度Iが低くなる。
図18に示されるように、光強度Iが大幅に下がった部分の前後に、光強度Iがわずかに下がった部分を含むようなターゲット通過信号を得た場合には、合体ターゲット272の前後にサテライトである液滴ターゲット271があるので、S1314aにおいて合体不良と判断される。
【0097】
図19は、合体ターゲット272を計測する他の動作を示すフローチャートである。
図19は
図16のS1310aのサブルーチンに相当する。
S1312aにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、合体ターゲット272及びその付近の画像を取得する。
S1313a~S1315aの処理は、
図17を参照しながら説明したのと同様である。
【0098】
3.2.3 補給量Qtの下限値の計算例
図16~
図19においては、液滴ターゲット271の合体が完了する試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを1回の固体ターゲット物質27aの補給量Qtとする場合について説明したが、補給量Qtはこれに限定されない。ロードロック装置83に含まれる入口バルブ861及び出口バルブ871の寿命が十分に長い場合、補給量Qtは、Nmin・Qmin以上、Nmax・Qmin以下の範囲内であればよい。Nmin・Qminは、液滴ターゲット271の合体が完了する試行補給量N・Qminの最小値であり、S1322aで得られたNminを用いて算出される。
【0099】
固体ターゲット物質27aの補給タイミングは、レベルセンサLVの出力に基づいて決定される場合について説明したが、本開示はこれに限定されない。補給周期Tsを予め設定しておき、前回の補給から補給周期Tsの時間が経過したか否かに基づいて、固体ターゲット物質27aの補給タイミングが決定されてもよい。
【0100】
ノズル266における単位時間当たりの液体ターゲット物質27bの吐出量Qvは、タンク260の内部とチャンバ2の内部との圧力差やノズル266の開口の大きさが変わらなければ一定である。従って、補給周期Tsは、以下の式で算出できる。
Ts=Qt/Qv
【0101】
ロードロック装置83に含まれる入口バルブ861及び出口バルブ871の開閉可能回数、すなわちこれらのバルブの寿命をNb回とする。これらのバルブを補給周期Tsで開閉したとき、これらのバルブの寿命期間Lifeは以下の式で算出できる。
Life=Ts・Nb
=(Qt/Qv)・Nb
【0102】
そこで、補給量Qtは以下の式で与えられる。
Qt=(Life/Nb)・Qv
ロードロック装置83の交換周期を1年間以上としたい場合、固体ターゲット物質27aの補給量Qtの最小値Q1yは以下のように算出できる。
Q1y=(365・24・3600/Nb)・Qv
【0103】
3.2.4 固体ターゲット補給プロセッサ85の動作
図20は、第1の実施形態における固体ターゲット補給プロセッサ85の動作を示すフローチャートである。比較例と第1の実施形態との違いは、S510において固体ターゲット物質27aを移動させた後、第1の実施形態においては、S511aにおいて固体ターゲット補給信号をEUV光生成プロセッサ5へ送信する処理が加わっている点である。
他の点については、第1の実施形態は比較例と同様である。
【0104】
3.3 作用
(1)第1の実施形態によれば、EUV光生成装置1は、液滴ターゲット生成装置26と、固体ターゲット補給装置8と、を備える。液滴ターゲット生成装置26は、固体ターゲット物質27aを溶融させて液体ターゲット物質27bを生成するタンク260と、タンク260内の液体ターゲット物質27bから液滴ターゲット271を連続的に生成して、パルスレーザ光33が集光するプラズマ生成領域25に向けて出力するノズル266と、を含み、複数の液滴ターゲット271が合体するように複数の液滴ターゲット271に速度差を与える。固体ターゲット補給装置8は、複数の液滴ターゲット271がプラズマ生成領域25に到達するまでに複数の液滴ターゲット271の合体が完了するような1回の補給量Qtの固体ターゲット物質27aをタンク260に補給する。
これによれば、固体ターゲット物質27aをタンク260に供給した際に液滴ターゲット271の合体不良が抑制されるような補給量Qtとすることにより、EUV光のパルスエネルギー安定性Eσが悪化することを抑制し得る。
また、合体不良が抑制されるので、ターゲット物質のデブリが発生することが抑制され得る。
ターゲット物質をスズとした場合、プラズマ生成領域25に到達するまでに合体が完了する1回の固体ターゲット物質27aの補給量Qtの望ましい範囲は、体積では0.112cm3以上0.336cm3以下、質量では0.825g以上2.475g以下と表される。
【0105】
(2)第1の実施形態によれば、EUV光生成装置1は、補給量Qtを記憶し、記憶した補給量Qtに従って固体ターゲット補給装置8を制御する固体ターゲット補給プロセッサ85を備える。
これによれば、補給量Qtを制御することで、EUV光生成装置1の運転環境の変化に柔軟に対応できる。
【0106】
(3)第1の実施形態によれば、EUV光生成装置1は、通過センサユニット42又は撮像ユニット44と、EUV光生成プロセッサ5と、固体ターゲット補給プロセッサ85と、を備える。通過センサユニット42又は撮像ユニット44は、複数の液滴ターゲット271の合体の状態を、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給と同期して検出する。EUV光生成プロセッサ5は、通過センサユニット42又は撮像ユニット44の検出結果に基づいて補給量Qtを決定し、固体ターゲット補給プロセッサ85は、補給量Qtに従って固体ターゲット補給装置8を制御する。
これによれば、液滴ターゲット271の合体の状態を検出し、検出結果に基づいて補給量Qtを決定することで、適切な補給量Qtを決定できる。
【0107】
(4)第1の実施形態によれば、EUV光生成装置1は、液滴ターゲット271の通過信号を出力する光センサ423を含む。
これによれば、EUV光を生成しなくても、光センサ423によりサテライトの有無を観察することにより、合体の状態を直接計測して適切な補給量Qtを決定できる。
【0108】
(5)第1の実施形態によれば、EUV光生成プロセッサ5は、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの試行補給量N・Qminを増加させながら、光センサ423から出力された液滴ターゲット271の通過信号を固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給と同期して取得する。EUV光生成プロセッサ5は、液滴ターゲット271の合体が完了している場合の試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを補給量Qtとして決定する。
これによれば、試行補給量N・Qminを増加させながら光センサ423で合体の状態を計測することにより、合体が完了する補給量Qtの範囲を正確に求めることができる。そして、合体が完了している場合の試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを1回の補給量Qtとすることで、補給回数が多くなることを抑制して固体ターゲット補給装置8の寿命低下を抑制し得る。
【0109】
(6)第1の実施形態によれば、EUV光生成装置1は、液滴ターゲット271を撮像するイメージセンサ443を含む。
これによれば、EUV光を生成しなくても、イメージセンサ443によりサテライトの有無を観察することにより、合体の状態を直接計測して適切な補給量Qtを決定できる。
【0110】
(7)第1の実施形態によれば、EUV光生成プロセッサ5は、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの試行補給量N・Qminを増加させながら、イメージセンサ443で撮像された液滴ターゲット271の画像を固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給と同期して取得する。EUV光生成プロセッサ5は、液滴ターゲット271の合体が完了している場合の試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを補給量Qtとして決定する。
これによれば、試行補給量N・Qminを増加させながらイメージセンサ443で合体の状態を計測することにより、合体が完了する補給量Qtの範囲を正確に求めることができる。そして、合体が完了している場合の試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを1回の補給量Qtとすることで、補給回数が多くなることを抑制して固体ターゲット補給装置8の寿命低下を抑制し得る。
その他の点については、第1の実施形態は比較例と同様である。
【0111】
4.ターゲット計測システムを用いて設定される補給量Qt
4.1 構成
図21は、第2の実施形態において用いられるターゲット計測システムの構成を概略的に示す。ターゲット計測システムは、液滴ターゲット生成装置26、固体ターゲット補給装置8、CWレーザ光源41、及び通過センサユニット42を含む。これらの構成要素は第1の実施形態と同様である。さらに、ターゲット計測システムは、EUV光生成プロセッサ5の代わりにこれと同様の構成を有するターゲット検査プロセッサ75を含む。
ターゲット計測システムは、EUV光を生成するために必要な構成要素の一部を備えていなくてもよい。例えば、ターゲット計測システムは、レーザ装置3、レーザ光集光ミラー22等を含まなくてよい。
【0112】
4.2 動作
図22は、第2の実施形態におけるターゲット検査プロセッサ75の動作を示すフローチャートである。ターゲット検査プロセッサ75は、EUV光の生成のための処理は行わない。
図15におけるS1000、S1100、S1500~S2200の処理は、
図22においては行われない点で、第1及び第2の実施形態の処理は異なる。
【0113】
図22のS1200において、ターゲット検査プロセッサ75は、液滴ターゲット生成装置26を起動させる。この処理は、ターゲット検査プロセッサ75が行うこと以外の点については比較例において対応する処理と同様である。
S1300aにおいて、ターゲット検査プロセッサ75は、固体ターゲット補給装置8を起動させる。この処理は、ターゲット検査プロセッサ75が行うこと以外の点については第1の実施形態において対応する処理と同様である。
S2400bにおいて、ターゲット検査プロセッサ75は、1回の固体ターゲット補給量Qtをパラメータ保存サーバー95に送信する。
【0114】
EUV光生成装置1のEUV光生成プロセッサ5は、パラメータ保存サーバー95から1回の固体ターゲット補給量Qtを受信し、この補給量Qtを当該EUV光生成装置1に含まれる固体ターゲット補給プロセッサ85に送信することで、液滴ターゲット271の合体不良が起こらないような補給量Qtを設定することができる。
他の点については、第2の実施形態は第1の実施形態と同様である
【0115】
4.3 作用
第2の実施形態によれば、ターゲット計測システムを用いて液滴ターゲット271の合体の状態を検出し、検出結果に基づいて補給量Qtを決定できる。この補給量Qtは、同型の液滴ターゲット生成装置26を備えたEUV光生成装置1における固体ターゲット物質27aの補給量Qtとして使用できる。
その他の点については、第2の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0116】
5.EUV光のパルスエネルギー安定性Eσに基づいて設定される補給量Qt
5.1 各種プロセッサの動作
5.1.1 概要
図23は、第3の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ5、液滴ターゲット生成プロセッサ265、及び固体ターゲット補給プロセッサ85による連携の概要を示すタイムチャートである。第3の実施形態に係るEUV光生成システム11の構成は第1の実施形態と同様である。
【0117】
図23において、EUV光生成プロセッサ5がS1200において液滴ターゲット生成装置26を起動させる処理、及び液滴ターゲット生成プロセッサ265がS336において目標温度Ttに従った制御を行う処理は、比較例と同様である。
【0118】
S1300(固体ターゲット補給装置8を起動)においては比較例と同様に1回の固体ターゲット補給量QtがN0・Qminに設定される。その後、EUV光の生成が行われ、S1700c(1回の固体ターゲット補給量Qtを再設定)に含まれるS1706a(試行補給量N・Qminの送信)、S1710c(EUV光のパルスエネルギー安定性Eσを計測)、及びS1728a(補給量Nmax・Qminの送信)が行われる。
【0119】
EUV光生成プロセッサ5がS2100においてEUV光を生成させる処理は、比較例と同様である。
【0120】
5.1.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
図24は、第3の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ5の動作を示すフローチャートである。比較例と第3の実施形態との違いは、S1600においてEUV光がOKとなった後、S1700cの処理が行われる点である。
【0121】
図25は、1回の固体ターゲット補給量Qtを再設定する動作の詳細を示すフローチャートである。
図25は
図24のS1700cのサブルーチンに相当する。
S1701cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光生成装置1にEUV光の生成を開始させる。EUV光の生成はS1729cまで続けられる。
【0122】
S1702aからS1708aまでの処理は、第1の実施形態(
図16参照)におけるS1302aからS1308aまでの処理と同様である。
S1708aにおいて固体ターゲット補給信号を受信した場合、EUV光生成プロセッサ5は、S1710cにおいてEUV光のパルスエネルギー安定性Eσを計測する。パルスエネルギー安定性Eσから合体の状態が判定され、合体不良であればフラグF(N)=0が設定され、合体完了であればフラグF(N)=1が設定される。S1710cの詳細については
図26を参照しながら説明する。
【0123】
S1721aからS1728aまでの処理は、第1の実施形態(
図16参照)におけるS1321aからS1328aまでの処理と同様である。
S1728aにおいて1回の固体ターゲット補給量QtをNmax・Qminに設定した後、EUV光生成プロセッサ5は、S1729cにおいてEUV光の生成を終了させる。
S1729cの後、EUV光生成プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了し、
図24に示される処理に戻る。
【0124】
図26は、EUV光のパルスエネルギー安定性Eσを計測する動作の詳細を示すフローチャートである。
図26は
図25のS1710cのサブルーチンに相当する。
S1711cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光のパルス数をカウントするカウンタkの値を0にセットする。
【0125】
S1712cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、レーザ装置3に発光トリガを出力したか否かを判定する。発光トリガを出力していない場合(S1712c:NO)、EUV光生成プロセッサ5は発光トリガを出力するまで待機する。発光トリガを出力した場合(S1712c:YES)、EUV光生成プロセッサ5はS1713cに処理を進める。
【0126】
S1713cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、カウンタkの値に1を加算してkの値を更新する。
S1714cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、EUVセンサ40によって、EUV光のパルスエネルギーEeuv(k)を計測する。
【0127】
S1715cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、カウンタkの値がkmax以上であるか否かを判定する。カウンタkの値がkmax未満である場合(S1715c:NO)、EUV光生成プロセッサ5は、S1712cに処理を戻す。カウンタkの値がkmax以上である場合(S1715c:YES)、EUV光生成プロセッサ5は、S1716cに処理を進める。
【0128】
S1716cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光のパルスエネルギーEeuv(k)のkmax個の値の平均値Eeuvav及び標準偏差Eeuvσを算出する。
S1717cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光のパルスエネルギー安定性Eσを以下の式により算出する。
Eσ=Eeuvσ/Eeuvav×100%
【0129】
S1718cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、EUV光のパルスエネルギー安定性Eσが許容範囲内であるか、例えば閾値Eσtr以下であるか否かを判定する。
パルスエネルギー安定性Eσが許容範囲内でない場合(S1718c:NO)、EUV光生成プロセッサ5はS1719cに処理を進める。S1719cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は合体不良と判定し、フラグF(N)の値を0に設定する。
パルスエネルギー安定性Eσが許容範囲内である場合(S1718c:YES)、EUV光生成プロセッサ5はS1720cに処理を進める。S1720cにおいて、EUV光生成プロセッサ5は合体完了と判定し、フラグF(N)の値を1に設定する。
【0130】
S1719c又はS1720cの後、EUV光生成プロセッサ5は本フローチャートの処理を終了し、
図25に示される処理に戻る。
【0131】
5.1.3 固体ターゲット補給プロセッサ85の動作
1回の固体ターゲット補給量Qtを受信した固体ターゲット補給プロセッサ85の動作は、第1の実施形態と同様である。
【0132】
5.2 作用
(8)第3の実施形態によれば、EUV光生成装置1は、プラズマ生成領域25で生成されるEUV光の状態を検出するEUVセンサ40を含む。
これによれば、EUV光の状態を検出することにより、光センサ423やイメージセンサ443の信号からサテライトを検出する信号処理を行わなくても合体の状態を検出し、適切な補給量Qtを決定できる。
【0133】
(9)第3の実施形態によれば、EUV光生成プロセッサ5は、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの試行補給量N・Qminを増加させながら、EUVセンサ40で計測されたEUV光のパルスエネルギーEeuv(k)を固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給と同期して取得する。EUV光生成プロセッサ5は、パルスエネルギー安定性Eσが許容範囲内である場合の試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを補給量Qtとして決定する。
これによれば、試行補給量N・Qminを増加させながらEUV光のパルスエネルギー安定性Eσを計測することにより、合体が完了する補給量Qtの範囲を適切に求めることができる。そして、パルスエネルギー安定性Eσが許容範囲内である場合の試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを1回の補給量Qtとすることで、補給回数が多くなることを抑制して固体ターゲット補給装置8の寿命低下を抑制し得る。
その他の点については、第3の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0134】
6.固体ターゲット物質27aの補給時のタンク260の温度制御
6.1 構成
図27は、第4の実施形態に係るEUV光生成システム11のうちの液滴ターゲット生成装置26及びその周辺の構成を示す。第4の実施形態においては、固体ターゲット補給プロセッサ85から出力された固体ターゲット補給信号がEUV光生成プロセッサ5だけでなく液滴ターゲット生成プロセッサ265にも入力されるように信号線が設けられている。また、EUV光生成プロセッサ5から液滴ターゲット生成プロセッサ265に向けて加熱関数H(t)を送信する別の信号線が設けられている。他の点については、第4の実施形態の構成は第1の実施形態と同様である。
【0135】
6.2 各種プロセッサの動作
6.2.1 概要
図28は、第4の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ5、液滴ターゲット生成プロセッサ265、及び固体ターゲット補給プロセッサ85による連携の概要を示すタイムチャートである。
【0136】
図28に示されるように、S1200dにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、タンク260の目標温度Ttに加えて加熱関数H(t)を液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する。液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S336において目標温度Ttに従った制御を行う。
【0137】
固体ターゲット補給プロセッサ85から出力された固体ターゲット補給信号は、EUV光生成プロセッサ5だけでなく液滴ターゲット生成プロセッサ265にも入力される。固体ターゲット補給信号を受信した液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S334dにおいてヒーター267に供給される電力を一時的に大きくするよう加熱関数H(t)に従って制御する。S334dの後、S336において液滴ターゲット生成プロセッサ265は目標温度Ttに従った制御を行う。
【0138】
その後、固体ターゲット補給プロセッサ85から固体ターゲット補給信号が出力されるたびに、S334dによる制御が一時的に行われ、その後S336による制御が行われる。S334dによる一時的な制御は、EUV光生成プロセッサ5が1回の固体ターゲット補給量Qtを決定するために合体ターゲット272を計測するとき(S1310a)にも、1回の固体ターゲット補給量QtがNmax・Qminに決定された後、EUV光を生成させるとき(S2100)にも行われる。
【0139】
6.2.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
図29は、第4の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ5の動作を示すフローチャートである。第1の実施形態と第4の実施形態の違いは、液滴ターゲット生成装置26を起動させる処理として、S1200の代わりにS1200dの処理が行われる点である。
S1300aの処理は第1の実施形態と同様である。なお、第4の実施形態においては、1回の固体ターゲット補給量Qtを決定するために合体ターゲット272を計測するとき(S1310a)に、液滴ターゲット生成プロセッサ265の処理がS334dにおいて一時的に変更される。このため、N=1で合体完了とはならず、最小値Nminが1より大きい値となる可能性がある。
【0140】
図30は、液滴ターゲット生成装置26を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。
図30は
図29のS1200dのサブルーチンに相当する。
第4の実施形態においては、比較例及び第1の実施形態において液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信した目標値に加えて、固体ターゲット補給時の加熱関数H(t)も液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する(S1203d)。
他の点については、
図30の処理は
図8と同様である。
【0141】
図31は、加熱関数H(t)の例を示すグラフである。加熱関数H(t)は、例えば、時間tに対するヒーター電力Wの関数である。固体ターゲット補給信号を受信した時の時間tを0とする。加熱関数H(t)は、時間tが0からte1となるまでの一定時間に、ヒーター電力Wを一定値とするような関数であってもよい。
【0142】
6.2.3 液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作
図32は、第4の実施形態における液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作を示すフローチャートである。第4の実施形態においては、S300において受信した目標値に加えて、S310dにおいて固体ターゲット補給時の加熱関数H(t)も受信する。さらに、S320dにおいて、タイマーtの初期値をte1に設定する。ここではタイマーtの動作をスタートすることはなく、初期値の設定のみ行う。
【0143】
比較例及び第1の実施形態においては、タンク260の温度T、圧力P、及び駆動波形のデューティDを制御する処理としてS330の処理が行われるのに対し、第4の実施形態においてはS330dの処理が行われる。
図33を参照しながら説明するように、S330dにおいては、タイマーtの値に応じて、S336の処理を行うか、S334dの処理を行うかが選択される。
その他の点については、
図32は
図10と同様である。
【0144】
図33は、タンク260の温度T及び圧力P、及び駆動波形のデューティDを制御する動作の詳細を示すフローチャートである。
図33は
図32のS330dのサブルーチンに相当する。
【0145】
S331dにおいて、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、固体ターゲット補給プロセッサ85から固体ターゲット補給信号を受信したか否かを判定する。
【0146】
固体ターゲット補給信号を受信していない場合(S331d:NO)、液滴ターゲット生成プロセッサ265はS333dに処理を進める。
【0147】
固体ターゲット補給信号を受信した場合(S331d:YES)、液滴ターゲット生成プロセッサ265はS332dに処理を進める。
S332dにおいて、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、タイマーtをリセット及びスタートする。すなわち、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、タイマーtの値を0にリセットし、その後の時間の経過に応じたタイマーtの更新をスタートする。
S332dの後、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S333dに処理を進める。
【0148】
S333dにおいて、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、タイマーtの値がte1以上であるか否かを判定する。
【0149】
タイマーtの値がte1以上である場合(S333d:YES)、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S336に処理を進めてタンク260の温度Tが目標温度Ttに近づくように温度調節器262を制御する。タイマーtの値がte1以上である場合(S333d:YES)とは、タイマーtの値がte1に設定された後(S320d)、タイマーtが一度もリセットされていない場合と、タイマーtがリセットスタート(S332d)されてから時間te1が経過した場合と、のいずれかである。
【0150】
タイマーtの値がte1未満である場合(S333d:NO)、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S334dに処理を進めて加熱関数H(t)に従って温度調節器262を制御する。タイマーtの値がte1未満である場合(S333d:NO)とは、タイマーtがリセットスタート(S332d)されてから時間te1が経過していない場合である。これにより、固体ターゲット補給信号を受信してから一定期間だけ、加熱関数H(t)に従った制御が行われる。
【0151】
S334d又はS336の後、液滴ターゲット生成プロセッサ265はS337に処理を進める。S337及びS338の処理は、
図11を参照しながら説明したものと同様である。S338の後、液滴ターゲット生成プロセッサ265は本フローチャートの処理を終了し、
図32に示される処理に戻る。
他の点については、第4の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0152】
6.3 第2の実施形態への適用
図34は、第2の実施形態において固体ターゲット物質27aの補給時にタンク260の温度制御を行う場合のフローチャートである。第2の実施形態に第4の実施形態の温度制御を適用するには、
図21に示される構成において固体ターゲット補給プロセッサ85から出力された固体ターゲット補給信号がターゲット検査プロセッサ75だけでなく液滴ターゲット生成プロセッサ265にも入力されるように信号線を追加し、また、ターゲット検査プロセッサ75から液滴ターゲット生成プロセッサ265に向けて加熱関数H(t)を送信する別の信号線を追加すればよい。
【0153】
図34に示されるように、
図22のS1200をS1200d(
図29及び
図30参照)に置き換えることにより、第2の実施形態において固体ターゲット物質27aの補給時にタンク260の温度制御を行うことができる。
液滴ターゲット生成プロセッサ265の処理は
図32及び
図33と同様でよい。
固体ターゲット補給プロセッサ85の処理は
図20と同様でよい。
【0154】
6.4 第3の実施形態への適用
図35は、第3の実施形態において固体ターゲット物質27aの補給時にタンク260の温度制御を行う場合のフローチャートである。
図35に示されるように、
図24のS1200をS1200d(
図29及び
図30参照)に置き換えることにより、第3の実施形態において固体ターゲット物質27aの補給時にタンク260の温度制御を行うことができる。
液滴ターゲット生成プロセッサ265の処理は
図32及び
図33と同様でよい。
固体ターゲット補給プロセッサ85の処理は
図20と同様でよい。
【0155】
6.5 作用
(10)第4の実施形態によれば、液滴ターゲット生成装置26は、タンク260及びノズル266の少なくとも1つに配置されたヒーター267をさらに含む。液滴ターゲット生成プロセッサ265は、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給と同期して、ヒーター267に供給される電力を一時的に変更する。
これによれば、固体ターゲット物質27aの補給と同期して、ヒーター267に供給される電力を一時的に変更することで、合体が完了する補給量Qtの最小値と最大値が共に大きくなり、1回でより多くの補給量Qtの固体ターゲット物質27aをタンク260に供給し得る。
【0156】
(11)第4の実施形態によれば、EUV光生成装置1は、複数の液滴ターゲット271の合体の状態を、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給及び電力の変更と同期して検出する通過センサユニット42又は撮像ユニット44を備える。EUV光生成プロセッサ5は、通過センサユニット42又は撮像ユニット44の検出結果に基づいて補給量Qtを決定し、固体ターゲット補給プロセッサ85は固体ターゲット補給装置8を制御する。
これによれば、電力の変更と同期して合体の状態を検出し、検出結果に基づいて補給量Qtを決定することで、適切な補給量Qtを決定できる。
【0157】
(12)第4の実施形態によれば、EUV光生成プロセッサ5は、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの試行補給量N・Qminを増加させながら、通過センサユニット42又は撮像ユニット44から出力された検出結果を固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給及び電力の変更と同期して取得する。EUV光生成プロセッサ5は、液滴ターゲット271の合体が完了している場合の試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを補給量Qtとして決定する。
これによれば、試行補給量N・Qminを増加させながら合体の状態を計測することにより、合体が完了する補給量Qtの範囲を正確に求めることができる。そして、合体が完了している場合の試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを1回の補給量Qtとすることで、補給回数が多くなることを抑制して固体ターゲット補給装置8の寿命低下を抑制し得る。
その他の点については、第4の実施形態は第1の実施形態と同様である。
【0158】
7.固体ターゲット物質27aの補給時の駆動波形のデューティ制御
7.1 構成
図36は、第5の実施形態に係るEUV光生成システム11のうちの液滴ターゲット生成装置26及びその周辺の構成を示す。第5の実施形態においては、EUV光生成プロセッサ5から液滴ターゲット生成プロセッサ265に向けて加熱関数H(t)の代わりにデューティ変更関数D(t)を送信する信号線が設けられている。他の点については、第5の実施形態の構成は第4の実施形態と同様である。
【0159】
7.2 各種プロセッサの動作
7.2.1 概要
図37は、第5の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ5、液滴ターゲット生成プロセッサ265、及び固体ターゲット補給プロセッサ85による連携の概要を示すタイムチャートである。
【0160】
図37に示されるように、S1200dにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、駆動波形のデューティDtとデューティ変更関数D(t)とを液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する。液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S335eにおいてデューティDtに従った制御を行う。
【0161】
固体ターゲット補給信号を受信した液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S334eにおいて駆動波形のデューティDを一時的に変更するようデューティ変更関数D(t)に従って制御する。S334eの後、S335eにおいて液滴ターゲット生成プロセッサ265はデューティDtに従った制御を行う。
【0162】
その後、固体ターゲット補給プロセッサ85から固体ターゲット補給信号が出力されるたびに、S334eによる制御が一時的に行われ、その後S335eによる制御が行われる。S334eによる一時的な制御は、EUV光生成プロセッサ5が1回の固体ターゲット補給量Qtを決定するために合体ターゲット272を計測するとき(S1310a)にも、1回の固体ターゲット補給量QtがNmax・Qminに決定された後、EUV光を生成させるとき(S2100)にも行われる。
【0163】
7.2.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
図38は、液滴ターゲット生成装置26を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。EUV光生成プロセッサ5の基本的な動作は
図29を参照しながら説明したものと同様である。
図38は
図29のS1200dのサブルーチンに相当する。
第5の実施形態においては、固体ターゲット補給時の加熱関数H(t)の代わりに、固体ターゲット補給時のデューティ変更関数D(t)を液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する(S1206e)。
【0164】
図39は、デューティ変更関数D(t)の例を示すグラフである。デューティ変更関数D(t)は、時間tに対するデューティDの関数である。デューティ変更関数D(t)は、時間tが0からte1となるまでの一定時間に、デューティDをもとのデューティD0と異なる値に変更する関数であってもよい。
【0165】
7.2.3 液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作
図40は、第5の実施形態における液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作を示すフローチャートである。第5の実施形態においては、S300において受信した目標値に加えて、S310eにおいて固体ターゲット補給時のデューティ変更関数D(t)も受信する。
【0166】
第4の実施形態におけるS330dの代わりに、第5の実施形態においてはS330eの処理が行われる。
その他の点については、
図40は
図32と同様である。
【0167】
図41は、タンク260の温度T及び圧力P、及び駆動波形のデューティDを制御する動作の詳細を示すフローチャートである。
図41は
図40のS330eのサブルーチンに相当する。
【0168】
S333dにおいて、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、タイマーtの値がte1以上であるか否かを判定する。
【0169】
タイマーtの値がte1以上である場合(S333d:YES)、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S335eに処理を進めてデューティDがDtとなるように加振装置269の駆動波形を制御する。
【0170】
タイマーtの値がte1未満である場合(S333d:NO)、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S334eに処理を進めてデューティ変更関数D(t)に従って駆動波形のデューティDを制御する。
【0171】
S334e又はS335eの後、液滴ターゲット生成プロセッサ265はS336に処理を進める。S336及びS337の処理は、
図11を参照しながら説明したものと同様である。S337の後、液滴ターゲット生成プロセッサ265は本フローチャートの処理を終了し、
図40に示される処理に戻る。
【0172】
7.3 作用
(13)第5の実施形態によれば、液滴ターゲット生成装置26が、ノズル266に振動を与える加振装置269をさらに含む。液滴ターゲット生成プロセッサ265は、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給と同期して、加振装置269に入力される駆動波形を一時的に変更する。
これによれば、固体ターゲット物質27aの補給と同期して、加振装置269に入力される駆動波形を一時的に変更することで、合体が完了する補給量Qtの最小値と最大値が共に大きくなり、1回でより多くの補給量Qtの固体ターゲット物質27aをタンク260に供給し得る。
【0173】
(14)第5の実施形態によれば、駆動波形は矩形波であり、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給と同期して、矩形波のデューティDを変更する。
これによれば、矩形波のデューティDを変更することで、簡素な処理で駆動波形の変更を行い得る。
その他の点については、第5の実施形態は第4の実施形態と同様である。
【0174】
8.固体ターゲット物質27aの補給時の駆動波形の変調制御
8.1 構成
図42は、第6の実施形態に係るEUV光生成システム11のうちの液滴ターゲット生成装置26及びその周辺の構成を示す。第6の実施形態において、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、駆動電源264に与える駆動信号の駆動波形として、変調により生成された被変調波を生成する。そして、固体ターゲット補給信号に同期して、搬送波周波数fc等の変調パラメータを変更することで駆動波形を一時的に変更する。以下では搬送波周波数fcを変更する場合について説明した後、それ以外の変調パラメータを変更する場合について説明する。
【0175】
図42に示されるように、第6の実施形態においては、EUV光生成プロセッサ5から液滴ターゲット生成プロセッサ265に向けて加熱関数H(t)の代わりに搬送波周波数変更関数fc(t)を送信する信号線が設けられている。他の点については、第6の実施形態の構成は第4の実施形態と同様である。
【0176】
8.2 各種プロセッサの動作
8.2.1 概要
図43は、第6の実施形態におけるEUV光生成プロセッサ5、液滴ターゲット生成プロセッサ265、及び固体ターゲット補給プロセッサ85による連携の概要を示すタイムチャートである。
【0177】
図43に示されるように、S1200dにおいて、EUV光生成プロセッサ5は、搬送波周波数fcと搬送波周波数変更関数fc(t)とを液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する。液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S335fにおいて搬送波周波数fcに従った制御を行う。
【0178】
固体ターゲット補給信号を受信した液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S334fにおいて搬送波周波数fcを一時的に変更するよう搬送波周波数変更関数fc(t)に従って制御する。S334fの後、S335fにおいて液滴ターゲット生成プロセッサ265は搬送波周波数fcに従った制御を行う。
【0179】
その後、固体ターゲット補給プロセッサ85から固体ターゲット補給信号が出力されるたびに、S334fによる制御が一時的に行われ、その後S335fによる制御が行われる。S334fによる一時的な制御は、EUV光生成プロセッサ5が1回の固体ターゲット補給量Qtを決定するために合体ターゲット272を計測するとき(S1310a)にも、1回の固体ターゲット補給量QtがNmax・Qminに決定された後、EUV光を生成させるとき(S2100)にも行われる。
【0180】
8.2.2 EUV光生成プロセッサ5の動作
図44は、液滴ターゲット生成装置26を起動させる動作の詳細を示すフローチャートである。EUV光生成プロセッサ5の基本的な動作は
図29を参照しながら説明したものと同様である。
図44は
図29のS1200dのサブルーチンに相当する。
第6の実施形態においては、駆動波形のデューティDの代わりに、搬送波周波数fcを液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する(S1205f)。
第6の実施形態においては、固体ターゲット補給時の加熱関数H(t)の代わりに、固体ターゲット補給時の搬送波周波数変更関数fc(t)を液滴ターゲット生成プロセッサ265に送信する(S1206f)。
【0181】
図45は、搬送波周波数変更関数fc(t)の例を示すグラフである。搬送波周波数変更関数fc(t)は、時間tに対する搬送波周波数fcの関数である。搬送波周波数変更関数fc(t)は、時間tが0からte1となるまでの一定時間にわたって、搬送波周波数fcをもとの搬送波周波数fc0と異なる値に変更する関数であってもよい。
【0182】
8.2.3 液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作
図46は、第6の実施形態における液滴ターゲット生成プロセッサ265の動作を示すフローチャートである。第6の実施形態においては、S300fにおいてデューティDの代わりに搬送波周波数fcを受信し、S310fにおいて固体ターゲット補給時の搬送波周波数変更関数fc(t)を受信する。
【0183】
第4の実施形態におけるS330dの代わりに、第6の実施形態においてはS330fにおいてタンク260の温度T及び圧力P、及び搬送波周波数fcを制御する処理が行われる。
その他の点については、
図46は
図32と同様である。
【0184】
図47は、タンク260の温度T及び圧力P、及び搬送波周波数fcを制御する動作の詳細を示すフローチャートである。
図47は
図46のS330fのサブルーチンに相当する。
【0185】
S333dにおいて、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、タイマーtの値がte1以上であるか否かを判定する。
【0186】
タイマーtの値がte1以上である場合(S333d:YES)、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S335fに処理を進めて搬送波周波数fcがfc0となるように加振装置269の駆動波形を制御する。
【0187】
タイマーtの値がte1未満である場合(S333d:NO)、液滴ターゲット生成プロセッサ265は、S334fに処理を進めて搬送波周波数変更関数fc(t)に従って駆動波形を制御する。
【0188】
S334f又はS335fの後、液滴ターゲット生成プロセッサ265はS336に処理を進める。S336及びS337の処理は、
図11を参照しながら説明したものと同様である。S337の後、液滴ターゲット生成プロセッサ265は本フローチャートの処理を終了し、
図46に示される処理に戻る。
【0189】
8.2.4 被変調波の例
液滴ターゲット生成プロセッサ265が駆動電源264に出力する駆動信号は、次の式で定義される搬送波Vc(t)及び信号波Vs(t)を用いて得られたものであって、搬送波Vc(t)を信号波Vs(t)で変調して得られた被変調波であってもよい。
Vc(t)=Vcm×sin(2π×fc×t)
Vs(t)=Vsm×cos(2π×fs×t)
ここで、Vcmは搬送波振幅であり、Vsmは信号波振幅であり、fcは搬送波周波数であり、fsは信号波周波数である。搬送波周波数fcは信号波周波数fsの倍数であり、例えば、ターゲット27の速度をv[m/s]とし、ノズル266の開口径をd[mm]としたとき、v/(fc・d)で与えられる値が3以上8以下であることが望ましい。
合体完了ターゲット間距離Ldは以下の式で与えられる。
Ld=Vd/fs
このように、第6の実施形態においては信号波周波数fsに応じて合体完了ターゲット間距離Ldが決まる。
【0190】
8.2.4.1 PM変調波Vpm(t)
駆動信号は、以下のPM変調波Vpm(t)であってもよい。
Vpm(t)=Vcm×sin{2π×fc×t+δθ×Vs(t)+φ}
=Vcm×sin{2π×fc×t+δθ×Vsm×cos(2π×fs×t)+φ}
ここで、δθは最大位相偏移(デビエーション)であり、最大位相偏移δθは0以上π以下である。φは位相差であり、位相差φは0以上2π以下である。
【0191】
図42~
図47においては、搬送波周波数fcを変調パラメータとして一時的に変更する場合について説明した。すなわち、固体ターゲット補給信号を受信した後一定期間内の制御(S334f)においては、搬送波周波数変更関数fc(t)に従って搬送波周波数fcが一時的に変更されることとした。
【0192】
あるいは、S334fにおいて、搬送波周波数fcの代わりに最大位相偏移δθを変更することで、駆動波形を変更してもよい。この場合、搬送波周波数変更関数fc(t)の代わりに最大位相偏移変更関数δθ(t)に従って最大位相偏移δθが一時的に変更される。
【0193】
あるいは、S334fにおいて、搬送波周波数fcの代わりに位相差φを変更することで、駆動波形を変更してもよい。この場合、搬送波周波数変更関数fc(t)の代わりに位相差変更関数φ(t)に従って位相差φが一時的に変更される。
【0194】
あるいは、搬送波周波数fc、最大位相偏移δθ、及び位相差φのうちの2つ以上の組み合わせを変更することで駆動波形を一時的に変更してもよい。
【0195】
8.2.4.2 FM変調波Vfm(t)
駆動信号は、以下のFM変調波Vfm(t)であってもよい。
Vfm(t)=Vcm×sin{2π×fc×t+δf×∫Vs(t)+φ}
=Vcm×sin{2π×fc×t+δf/fs×sin(2π×fs×t)+φ}
ここで、δfは最大周波数偏移(デビエーション)であり、最大周波数偏移δfは0以上搬送波周波数fc以下である。φは位相差であり、位相差φは0以上2π以下である。
【0196】
搬送波周波数fc、最大周波数偏移δf、及び位相差φのうちの1つ、あるいはこれらのうちの2つ以上の組み合わせを変更することで駆動波形を一時的に変更してもよい。
【0197】
8.2.4.3 AM変調波Vam(t)
駆動信号は、以下のAM変調波Vam(t)であってもよい。
Vam(t)={Vcm+Vs(t+φ)}×sin(2π×fc×t)
={Vcm+Vsm×cos(2π×fs×t+φ)}×sin(2π×fc×t)
ここで、Vsm/Vcmで与えられる比率を変調度といい、変調度は0以上1以下である。φは位相差である。
【0198】
搬送波周波数fc、変調度Vsm/Vcm、及び位相差φのうちの1つ、あるいはこれらのうちの2つ以上の組み合わせを変更することで駆動波形を一時的に変更してもよい。
【0199】
8.3 作用
(15)第6の実施形態によれば、駆動波形は搬送波Vc(t)を信号波Vs(t)で変調して得られた被変調波である。液滴ターゲット生成プロセッサ265は、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給と同期して、搬送波Vc(t)のパラメータ及び信号波Vs(t)のパラメータの少なくとも1つを変更する。
これによれば、搬送波Vc(t)のパラメータ及び信号波Vs(t)のパラメータの少なくとも1つを変更することで、簡素な処理で駆動波形の変更を行い得る。
【0200】
(16)第6の実施形態によれば、EUV光生成装置1は、複数の液滴ターゲット271の合体の状態を、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給及び駆動波形の変更と同期して検出する通過センサユニット42又は撮像ユニット44を備える。EUV光生成プロセッサ5は、通過センサユニット42又は撮像ユニット44の検出結果に基づいて補給量Qtを決定し、固体ターゲット補給プロセッサ85は固体ターゲット補給装置8を制御する。
これによれば、駆動波形の変更と同期して合体の状態を検出し、検出結果に基づいて補給量Qtを決定することで、適切な補給量Qtを決定できる。
【0201】
(17)第6の実施形態によれば、EUV光生成プロセッサ5は、固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの試行補給量N・Qminを増加させながら、通過センサユニット42又は撮像ユニット44から出力された検出結果を固体ターゲット補給装置8からタンク260への固体ターゲット物質27aの補給及び駆動波形の変更と同期して取得する。EUV光生成プロセッサ5は、液滴ターゲット271の合体が完了している場合の試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを補給量Qtとして決定する。
これによれば、試行補給量N・Qminを増加させながら合体の状態を計測することにより、合体が完了する補給量Qtの範囲を正確に求めることができる。そして、合体が完了している場合の試行補給量N・Qminの最大値Nmax・Qminを1回の補給量Qtとすることで、補給回数が多くなることを抑制して固体ターゲット補給装置8の寿命低下を抑制し得る。
その他の点については、第6の実施形態は第4の実施形態と同様である。
【0202】
9.その他
9.1 固体ターゲット補給装置8の計量器82
図48は、各実施形態において用いることができる固体ターゲット補給装置8の計量器82の構成を概略的に示す。計量器82は、固体ターゲット容器81と供給管86との間に位置するシャッタ821と、シャッタ821を開閉するアクチュエータ822と、供給管86の途中に配置された渦電流式センサ823と、を含む。アクチュエータ822及び渦電流式センサ823は固体ターゲット補給プロセッサ85によって制御される。
【0203】
渦電流式センサ823は、供給管86の外側から供給管86にむけてパルス状の第1の磁界を連続的に発生させる。第1の磁界によって供給管86又はその内部に渦電流が発生し、渦電流によって第2の磁界が発生する。この渦電流及び第2の磁界は、供給管86の内部に固体ターゲット物質27aがあるか否かによって変化する。渦電流式センサ823は第2の磁界を検出し、供給管86の内部を固体ターゲット物質27aが通過したか否かを判定する。
渦電流式センサ823を用いることで、供給管86に孔をあけなくても供給管86の内部の固体ターゲット物質27aを検出できる。
【0204】
固体ターゲット補給プロセッサ85は、渦電流式センサ823の出力に基づいて、1回の固体ターゲット補給量Qtに相当する固体ターゲット物質27aが計量器82を通過したか否かを判定する。補給量Qtに相当する固体ターゲット物質27aが通過した場合、シャッタ821を閉める。
【0205】
9.2 1回の補給量Qtが固定された固体ターゲット補給装置8
図49は、各実施形態において用いることができる固体ターゲット補給装置8の代替的な構成を概略的に示す。固体ターゲット補給装置8は、供給管87に接続された圧力容器826を含む。圧力容器826の内部には、複数の収容部825と、複数の収容部825を一体的に移動させる移動機構824と、が設けられている。圧力容器826と供給管87との間にシャッタ821が配置され、シャッタ821はアクチュエータ822によって開閉されるように構成されている。移動機構824及びアクチュエータ822は固体ターゲット補給プロセッサ85によって制御される。
【0206】
この固体ターゲット補給装置8においては計量器82及びロードロック装置83が設けられていない。圧力調節器88は配管を介して圧力容器826に接続され、圧力容器826の内部を液滴ターゲット生成装置26のタンク260の内部と同じ圧力とするよう調整している。圧力容器826の内部の温度はターゲット物質の融点より低い温度である。
【0207】
複数の収容部825の各々は、第2の実施形態において説明したターゲット計測システム等の計測結果を用いて予め設定された1回の固体ターゲット補給量Qtに相当する固体ターゲット物質27aを収容する。複数の収容部825のうちの1つの収容部825が供給管87との接続部に位置するように移動機構824が複数の収容部825を移動させる。シャッタ821が開かれると、当該1つの収容部825に収容されていた1回の固体ターゲット補給量Qtに相当する固体ターゲット物質27aがすべて供給管87を通ってタンク260に補給される。
【0208】
このように、固体ターゲット補給装置8は、補給量Qtの固体ターゲット物質27aを収容する収容部825を含み、収容部825に収容された固体ターゲット物質27aをタンク260に移動させることで、1回分の補給量Qtの固体ターゲット物質27aをタンク260に補給してもよい。
これによれば、収容部825に収容された固体ターゲット物質27aをそのままタンク260に移動させるので、固体ターゲット物質27aの計量器82又はその制御を省略又は簡略化し得る。
【0209】
9.3 シャッタ831を含むロードロック装置83
図50及び
図51は、各実施形態において用いることができるロードロック装置83の代替的な構成例を概略的に示す。
図50及び
図51に示されるロードロック装置83は、
図3を参照しながら説明した構成に加えて、シャッタ831及びアクチュエータ832を含む。シャッタ831は、ロードロック室89の下端付近に位置する。アクチュエータ832は、シャッタ831を駆動することにより、
図50に示される閉状態と、
図51に示される開状態とに、シャッタ831を切り替えられるように構成されている。
【0210】
図20のS506において入口バルブ861を開ける前に、シャッタ831は閉状態とされる。入口バルブ861を開けて固体ターゲット物質27aがロードロック室89に移動するとき、シャッタ831が閉状態とされているため、出口バルブ871に固体ターゲット物質27aが衝突して出口バルブ871が損傷することが抑制される。
S510において出口バルブ871を開けた後、シャッタ831が開状態とされることで、ロードロック室89内の固体ターゲット物質27aは出口バルブ871を素通りしてタンク260に移動する。これにより、出口バルブ871が損傷することが抑制される。さらに、この例の場合は、シャッタ831を開けるタイミングで固体ターゲット補給信号を送信する。
【0211】
9.4 小タンク260st及びノズル266にそれぞれヒーター267st及び267nzが配置された液滴ターゲット生成装置26
図52は、各実施形態において用いることができる液滴ターゲット生成装置26の代替的な構成例を概略的に示す。
液滴ターゲット生成装置26は、大タンク260lt、小タンク260st、及びノズル266を含む。大タンク260ltは、固体ターゲット物質27aを内部で溶融させて液体ターゲット物質27bとする。小タンク260stは、大タンク260ltで溶融された液体ターゲット物質27bをノズル266に向けて通過させる。ノズル266は、小タンク260stを通過した液体ターゲット物質27bを吐出する。大タンク260ltと小タンク260stとの間にはフィルタFが配置されている。
【0212】
大タンク260lt、小タンク260st、及びノズル266には、それぞれヒーター267lt、267st、及び267nzが配置されている。ヒーター267lt、267st、及び267nzは、それぞれヒーター電源263lt、263st、及び263nzに接続されており、大タンク260lt、小タンク260st、及びノズル266をターゲット物質の融点より高い所定温度にまで加熱する。温度調節器262が、ヒーター267lt、267st、及び267nzにそれぞれ配置されたセンサ268lt、268st、及び268nzの出力に基づいてヒーター電源263lt、263st、及び263nzを制御することにより、大タンク260lt、小タンク260st、及びノズル266の温度が制御される。
【0213】
第4の実施形態において、少なくともノズル266に配置されたヒーター267nzを、固体ターゲット物質27aの補給と同期した温度制御の対象としてもよい。あるいは、ノズル266及び小タンク260stに配置されたヒーター267nz及び267stをそのような温度制御の対象としてもよい。このような液滴ターゲット生成装置26を採用する場合、固体ターゲット物質27aを補給した場合のノズル266及び小タンク260stの温度の安定性が改善され、サテライトの発生が抑制される。その結果、1回の固体ターゲット物質27aの補給量Qtを多くすることができる。
【0214】
9.5 圧力調節器261
図53は、各実施形態の液滴ターゲット生成装置26において用いることができる圧力調節器261の構成を概略的に示す。圧力調節器261は、圧力制御プロセッサ620と、バルブVa及びVbと、圧力計Pと、を含む。ロードロック装置83に含まれる圧力調節器88についても同様でよい。
【0215】
圧力制御プロセッサ620は、制御プログラムが記憶されたメモリ621と、制御プログラムを実行するCPU622と、を含む処理装置である。圧力制御プロセッサ620は本開示に含まれる各種処理を実行するために特別に構成又はプログラムされている。
【0216】
ガスボンベG1と図示しない排気装置との間の配管にバルブVa及びVbが配置され、バルブVa及びVbの間に、供給管87に接続された配管L3が接続されている。配管L3に圧力計Pが配置されている。
【0217】
バルブVa及びVbの両方を開けるとガスボンベG1から排気装置へガスが漏れていくが、バルブVaの開度とバルブVbの開度との関係に応じて、配管L3に供給されるガス圧が変化する。圧力計Pによって検出されたガス圧に基づいて圧力制御プロセッサ620がバルブVa及びVbを制御することにより、配管L3に供給されるガス圧を調整することができる。
【0218】
9.6 EUV光利用装置6
図54は、EUV光生成システム11に接続された露光装置6aの構成を概略的に示す。
図54において、EUV光利用装置6(
図1参照)としての露光装置6aは、マスク照射部608とワークピース照射部609とを含む。マスク照射部608は、EUV光生成システム11から入射したEUV光によって、反射光学系を介してマスクテーブルMTのマスクパターンを照明する。ワークピース照射部609は、マスクテーブルMTによって反射されたEUV光を、反射光学系を介してワークピーステーブルWT上に配置された図示しないワークピース上に結像させる。ワークピースはフォトレジストが塗布された半導体ウエハ等の感光基板である。露光装置6aは、マスクテーブルMTとワークピーステーブルWTとを同期して平行移動させることにより、マスクパターンを反映したEUV光をワークピースに露光する。以上のような露光工程によって半導体ウエハにデバイスパターンを転写することで電子デバイスを製造できる。
【0219】
図55は、EUV光生成システム11に接続された検査装置6bの構成を概略的に示す。
図55において、EUV光利用装置6(
図1参照)としての検査装置6bは、照明光学系603と検出光学系606とを含む。照明光学系603は、EUV光生成システム11から入射したEUV光を反射して、マスクステージ604に配置されたマスク605を照射する。ここでいうマスク605はパターンが形成される前のマスクブランクスを含む。検出光学系606は、照明されたマスク605からのEUV光を反射して検出器607の受光面に結像させる。EUV光を受光した検出器607はマスク605の画像を取得する。検出器607は例えばTDI(time delay integration)カメラである。以上のような工程によって取得したマスク605の画像により、マスク605の欠陥を検査し、検査の結果を用いて、電子デバイスの製造に適するマスクを選定する。そして、選定したマスクに形成されたパターンを、露光装置6aを用いて感光基板上に露光転写することで電子デバイスを製造できる。
【0220】
9.7 補足
上述の説明は、制限ではなく単なる例示を意図している。従って、特許請求の範囲を逸脱することなく本開示の実施形態に変更を加えることができることは、当業者には明らかである。また、本開示の実施形態を組み合わせて使用することも当業者には明らかである。
【0221】
本明細書及び特許請求の範囲全体で使用される用語は、明記が無い限り「限定的でない」用語と解釈されるべきである。たとえば、「含む」、「有する」、「備える」、「具備する」などの用語は、「記載されたもの以外の構成要素の存在を除外しない」と解釈されるべきである。また、修飾語「1つの」は、「少なくとも1つ」又は「1又はそれ以上」を意味すると解釈されるべきである。また、「A、B及びCの少なくとも1つ」という用語は、「A」「B」「C」「A+B」「A+C」「B+C」又は「A+B+C」と解釈されるべきである。さらに、それらと「A」「B」「C」以外のものとの組み合わせも含むと解釈されるべきである。