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特開2024-21117処理対象物の表面改質方法、及びプラズマ処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021117
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】処理対象物の表面改質方法、及びプラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/08 20060101AFI20240208BHJP
   H05H 1/24 20060101ALI20240208BHJP
   B01J 19/12 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B01J19/08 E
H05H1/24
B01J19/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123711
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002631
【氏名又は名称】弁理士法人イイダアンドパートナーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】西岡 将輝
【テーマコード(参考)】
2G084
4G075
【Fターム(参考)】
2G084AA03
2G084AA07
2G084BB14
2G084CC14
2G084DD25
2G084DD51
2G084DD55
2G084FF02
2G084HH05
2G084HH08
2G084HH20
2G084HH23
2G084HH25
2G084HH28
2G084HH29
2G084HH34
2G084HH42
2G084HH45
2G084HH52
4G075AA30
4G075BA05
4G075BA06
4G075BA10
4G075BB10
4G075BD03
4G075CA26
4G075CA47
4G075DA02
4G075DA05
4G075EB44
4G075EC06
4G075FB02
4G075FB04
4G075FB06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】処理対象物を表面処理するに当たり、面内各部ごとに改質状態を制御することを可能とする、処理対象物の表面改質方法、及びこの表面改質方法を行うプラズマ処理装置を提供すること。
【解決手段】マイクロ波リアクタアレイを構成する複数のマイクロ波リアクタ2の各々にガスを供給してプラズマを生成し、生成したプラズマを処理対象物W(ただし、半導体製造用基板、及びフラットパネルディスプレイ製造用基板を除く。)に照射して前記処理対象物の表面を改質することを含む、処理対象物の表面改質方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波リアクタアレイを構成する複数のマイクロ波リアクタの各々にガスを供給してプラズマを生成し、生成したプラズマを処理対象物(ただし、半導体製造用基板、及びフラットパネルディスプレイ製造用基板を除く。)に照射して前記処理対象物の表面を改質することを含む、処理対象物の表面改質方法。
【請求項2】
前記の各マイクロ波リアクタにより生成した各プラズマを、前記処理対象物の互いに異なる位置に吐出する、請求項1に記載の処理対象物の表面改質方法。
【請求項3】
前記表面改質のための処理が、殺菌処理、滅菌処理、酸化処理、窒化処理、炭化処理、クリーニング処理、親水化処理、疎水化処理、官能基導入処理、粒子分散性向上処理、架橋構造の導入処理、及びコーティングの前処理から選ばれる処理である、請求項1又は2に記載の処理対象物の表面改質方法。
【請求項4】
処理対象物(ただし、半導体製造用基板、及びフラットパネルディスプレイ製造用基板を除く。)を支持するステージと、
処理ガスを供給するガス供給源と、
共振器と、前記共振器の中心軸に沿って延伸し、前記共振器を貫通する反応管であって、前記ガス供給源から処理ガスが供給される反応管と、を有する複数のマイクロ波リアクタと、
前記複数のマイクロ波リアクタの各々にマイクロ波を供給する複数のマイクロ波供給源と、
前記複数のマイクロ波リアクタの各々に対応し、前記反応管のうち前記共振器に包囲されたプラズマ化領域において生成されたプラズマを、前記処理対象物の互いに異なる位置に吐出する複数のプラズマ吐出口と
を備えるプラズマ処理装置を用いて、前記処理対象物の表面改質方法を実施する、請求項1又は2に記載の処理対象物の表面改質方法。
【請求項5】
処理対象物(ただし、半導体製造用基板、及びフラットパネルディスプレイ製造用基板を除く。)を支持するステージと、
処理ガスを供給するガス供給源と、
共振器と、前記共振器の中心軸に沿って延伸し、前記共振器を貫通する反応管であって、前記ガス供給源から処理ガスが供給される反応管と、を有する複数のマイクロ波リアクタと、
前記複数のマイクロ波リアクタの各々にマイクロ波を供給する複数のマイクロ波供給源と、
前記複数のマイクロ波リアクタの各々に対応し、前記反応管のうち前記共振器に包囲されたプラズマ化領域において生成されたプラズマを、前記処理対象物の互いに異なる位置に吐出する複数のプラズマ吐出口と
を備えるプラズマ処理装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理対象物の表面改質方法、及びプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種デバイス、フィルムなどに用いる基板は、目的に応じて種々の表面改質が施される。基板を表面処理することにより、基板表面の殺菌ないし滅菌、クリーニング、親水化、疎水化、炭化、窒化などの表面改質が可能となる。また、基板表面に官能基を導入して密着性や化学反応性を付与したり、化学反応を生じさせたりして表面改質することもできる。また、各種粒子を表面処理することにより粒子の分散性を制御することも可能となる。
このような表面改質方法としては、薬品等を作用させて表面を改質したり、各種ガスのプラズマを照射することにより表面を改質したりする方法が知られている。なかでもプラズマ照射による表面処理は、高効率に表面処理を行うことができる手法として広く用いられている。
【0003】
マイクロ波は、非接触の内部加熱方式で、被加熱対象物を直に、短時間に加熱することができる。そのため、マイクロ波処理を化学反応などに応用することが検討され、実際に実用化されてきている。例えば、空胴共振器内にマイクロ波を照射した定在波を形成し、電界強度分布が極大の部分に沿って配した流通管内の流体を高効率に加熱して、流体の化学反応を進行させることが提案されている(例えば特許文献1)。
また、マイクロ波を用いてプラズマを生成することが知られている(例えば特許文献2)。気体中にマイクロ波を照射することにより電子が加速されて分子や原子と衝突し、これらの分子や原子は電離したり、励起されたりして種々の活性状態(電離によって生じた荷電粒子の気体)を作り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005-322582号公報
【特許文献2】特開2015-50010号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プラズマ照射装置を用いて基板等の表面改質を行う場合、プラズマ処理容器内に基板等を入れて、目的の表面全体にプラズマが照射される。しかしこの方法では、基板の表面全体を同じような改質状態とすることができるにとどまり、基板の面内の各部ごとに、表面の改質状態を制御することが難しい。
本発明は、処理対象物(被処理物)を表面処理するに当たり、面内各部ごとに改質状態を制御することを可能とする、処理対象物の表面改質方法、及びこの表面改質方法を行うプラズマ処理装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題は、以下の手段により解決された。
[1]
マイクロ波リアクタアレイを構成する複数のマイクロ波リアクタの各々にガスを供給してプラズマを生成し、生成したプラズマを処理対象物(ただし、半導体製造用基板、及びフラットパネルディスプレイ製造用基板を除く。)に照射して前記処理対象物の表面を改質することを含む、処理対象物の表面改質方法。
[2]
前記の各マイクロ波リアクタにより生成した各プラズマを、前記処理対象物の互いに異なる位置に吐出する、[1]に記載の処理対象物の表面改質方法。
[3]
前記表面改質のための処理が、殺菌処理、滅菌処理、酸化処理、窒化処理、炭化処理、クリーニング処理、親水化処理、疎水化処理、官能基導入処理、粒子分散性向上処理、架橋構造の導入処理、及びコーティングの前処理から選ばれる処理である、[1]又は[2]に記載の処理対象物の表面改質方法。
[4]
処理対象物(ただし、半導体製造用基板、及びフラットパネルディスプレイ製造用基板を除く。)を支持するステージと、
処理ガスを供給するガス供給源と、
共振器と、前記共振器の中心軸に沿って延伸し、前記共振器を貫通する反応管であって、前記ガス供給源から処理ガスが供給される反応管と、を有する複数のマイクロ波リアクタと、
前記複数のマイクロ波リアクタの各々にマイクロ波を供給する複数のマイクロ波供給源と、
前記複数のマイクロ波リアクタの各々に対応し、前記反応管のうち前記共振器に包囲されたプラズマ化領域において生成されたプラズマを、前記処理対象物の互いに異なる位置に吐出する複数のプラズマ吐出口と
を備えるプラズマ処理装置を用いて、前記処理対象物の表面改質方法を実施する、[1]~[3]のいずれかに記載の処理対象物の表面改質方法。
[5]
処理対象物(ただし、半導体製造用基板、及びフラットパネルディスプレイ製造用基板を除く。)を支持するステージと、
処理ガスを供給するガス供給源と、
共振器と、前記共振器の中心軸に沿って延伸し、前記共振器を貫通する反応管であって、前記ガス供給源から処理ガスが供給される反応管と、を有する複数のマイクロ波リアクタと、
前記複数のマイクロ波リアクタの各々にマイクロ波を供給する複数のマイクロ波供給源と、
前記複数のマイクロ波リアクタの各々に対応し、前記反応管のうち前記共振器に包囲されたプラズマ化領域において生成されたプラズマを、前記処理対象物の互いに異なる位置に吐出する複数のプラズマ吐出口と
を備えるプラズマ処理装置。
【発明の効果】
【0007】
本発明の処理対象物の表面改質方法、及びこの表面改質方法を行う本発明のプラズマ処理装置は、処理対象物(被処理物)を表面処理するに当たり、面内各部ごとに改質状態を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】プラズマ処理装置の構成例を示す断面図である
図2】マイクロ波リアクタアレイを一方向に見た平面図である。
図3】マイクロ波リアクタ本体の断面図である。
図4】マイクロ波供給源の構成例を示すブロック図である。
図5】マイクロ波リアクタ本体の断面斜視図である。
図6】処理対象物の表面改質方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態を説明する。なお、図面において各部の寸法および縮尺は、説明の便宜上、実際と相違する場合がある。また、図面は、理解を容易にするために模式的に示すことがある。さらに、本発明の範囲は、本発明で規定すること以外は、以下に例示する形態に限られない。
以降の説明では、相互に直交するX軸、Y軸およびZ軸を想定する。X軸、Y軸およびZ軸は、以降の説明で例示される全図において共通であり、相互に直交する3軸方向である。図1に例示される通り、任意の地点からみてX軸に沿う一方向をX1方向と表記し、X1方向と反対の方向をX2方向と表記する。X軸方向は、X1方向およびX2方向の両方向を含む方向である。同様に、任意の地点からY軸に沿って相互に反対の方向をY1方向およびY2方向と表記する。Y軸方向は、Y1方向およびY2方向の両方向を含む方向である。また、任意の地点からZ軸に沿って相互に反対の方向をZ1方向およびZ2方向と表記する。Z軸方向は、Z1方向およびZ2方向の両方向を含む方向である。さらに、X軸とY軸とを含むX-Y平面は水平面に相当する。Z軸は鉛直方向に沿う軸線である。
【0010】
[プラズマ処理装置]
図1は、本発明の処理対象物の表面改質方法(以下、単に「本発明の表面改質方法」と称す。)を行うのに好適な一実施形態に係るプラズマ処理装置1の構成例を示す断面図である。
【0011】
本発明のプラズマ処理装置、及び表面改質方法の処理の対象となる処理対象物は、半導体製造用基板、及びフラットパネルディスプレイ製造用基板でなければ特に制限されない。本発明に用いられる処理対象物は、例えば、平板状の基板、表面が球面状若しくは凹凸状の基板、粒子、粉体、医療器具、又は食品加工器具等である。また、処理対象物の材質も特に制限はなく、樹脂等の有機材料であってもよく、セラミック、又は金属等の無機材料であってもよい。上記の「半導体製造用基板」とは、半導体の製造工程で用いられる基板を意味する。したがって、「半導体製造用基板」は、ウェハ、及び半導体製造工程で用いられるその他の基板を含む。「フラットパネルディスプレイ製造用基板」とは、フラットパネルディスプレイの製造工程で用いられる基板を意味する。したがって、「フラットパネルディスプレイ製造用基板」は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、フィールドエミッションディスプレイ、電子ペーパ等の各種のフラットパネルディスプレイ、及び当該フラットパネルディスプレイの製造工程で用いられるその他の基板を含む。また、上記の「半導体製造工程で用いられる基板」及び「フラットパネルディスプレイの製造工程で用いられる基板」は、製造工程中の露光処理に用いられるフォトマスクである基板やダミー基板を含む。ダミー基板としては、基板処理装置の各種設定条件や性能をテストするためのダミー基板や、基板処理装置の処理パラメータの設定を目的として処理がなされるダミー基板を含む。
なお、上記「処理対象物」は、処理対象物の表面改質方法を実施する装置それ自体あるいは装置の構成部材それ自体を意味するものではない。すなわち、真空チャンバーなどの処理容器の壁、ガスシャワーヘッド(処理容器内に処理ガスを供給する部材)、処理対象物である基板を設置するステージなど、処理対象物の表面改質方法を実施する装置自体が備える構造体は、上記「処理対象物」には含まれない。
【0012】
プラズマ処理装置1は、複数のマイクロ波リアクタ2と、ステージ30と、ガス供給源40と、複数のマイクロ波供給源50と、複数のプラズマ吐出口42とを有する。プラズマ処理装置1は、処理容器(図示略)に収容されてもよい。当該処理容器は、例えば、真空チャンバーである。
【0013】
マイクロ波リアクタ2は、共振器11と、反応管12とを有する。共振器11、反応管12、及び後述するマイクロ波供給源50は、マイクロ波リアクタ本体3(以下、リアクタ本体3と称す。)を構成する。リアクタ本体3は、マイクロ波リアクタ2内に配される。共振器11内には、誘電体17が配されてもよい。共振器11内に誘電体17が配されることにより、誘電体17による波長短縮効果によって共振器11の小型化が図れる。
【0014】
図2は、本実施形態に係るマイクロ波リアクタアレイをZ2方向に見た平面図である。複数のリアクタ本体3の各々は、図2に示されるように、千鳥状に配されてもよい。即ち、複数のプラズマ吐出口42の各々が千鳥状に配されてもよい。上記の「千鳥状の配置」とは、複数のリアクタ本体3(前者)の各々がX軸方向に沿って所定間隔で配され、且つ、当該複数のリアクタ本体3に隣り合い、X軸方向に沿って所定間隔で配された複数のリアクタ本体3(後者)の各々の中心軸Aが、前者のリアクタ本体3間に位置することを意味する。中心軸Aは、共振器11のY軸方向に沿う中心軸である。
図2に示す実施形態では、上述したように、複数のリアクタ本体3の各々が、千鳥状に配されてマイクロ波リアクタアレイを構成する。この構成により、複数のプラズマ吐出口42の各々が処理対象物Wに対して、シャワー状のプラズマガスであるプラズマシャワー43を吐出する。なお、図2では、複数のリアクタ本体3の各々が千鳥状に配されるが、本発明の複数のリアクタ本体の配置はこれに限られない。例えば、複数のリアクタ本体の各々は、直線状、又はハチの巣状に配されてもよい。また、複数のリアクタ本体がX軸方向に沿って配される列数が図2に示されるような2列に限定されず、1列でもよく、2列以上であってもよい。
【0015】
本実施形態では、共振器11内に伝搬したマイクロ波のエネルギーが、共振器11内に閉じ込められれば、共振器11の形状は特に制限されない。共振器11内にマイクロ波のエネルギーを閉じ込めるために、共振器11内にはマイクロ波の定在波が形成されていることが好ましい。当該定在波の種類は特に制限されず、例えば、TM010、TM020、TM110、TE101、TE102、及びTE103等のシングルモードの定在波が挙げられる。
【0016】
図3は、リアクタ本体3の断面図である。共振器11は、共振器11内に供給されるマイクロ波の波長λに基づき特定の定在波が形成されるように内寸が設計され、通常は金属製である。例えば、TM010モードの定在波が形成される場合には、共振器11は、内径がL1であり、高さがH1である円筒状に構成される。内径L1と照射するマイクロ波の周波数f010との関係が例えば下記式(1)で導出される寸法であることで、リアクタ本体3は、TM010モードの定在波を形成することができる。なお、c、ε、μは、それぞれ、光の速度、共振器11内の空間と被照射物とを含む合成の比誘電率、共振器11内の空間と被照射物とを含む合成の比透磁率である。他方、TM010モード以外のTMmn0モード(mは0以上の自然数、nは1以上の自然数)の定在波が形成される場合には高さH1に制約はないが、高さH1を、共振器11内に供給されるマイクロ波の波長λ以下とすることで、TMmnp(mは0以上の自然数、n,pは1以上の自然数)などの高次の定在波の形成が抑制される。
【0017】
010={c/(2π・(εμ)1/2)}×{2.405/(L1/2)} (1)
【0018】
共振器11は必ずしも円筒である必要はなく、金属等の導電性がある外壁により構成される中空部を有する構成であればよい。例えば、共振器11をZ軸方向に見た形状は、多角形状であってもよい。共振器11の寸法は、その用途等に応じて適宜設定されてよいが、複数のリアクタ本体3の各々がアレイ状に配されることが可能な寸法であることが好ましい。また、共振器11をZ軸方向に見た形状は、複数のリアクタ本体3の各々が千鳥状に配されやすいように、図2に示されるような正八角形であることも好ましい。
【0019】
反応管12は、図3に示されるように、共振器11の中心軸C1に沿って延伸し、共振器11の上面S1及び底面S2を貫通する管である。反応管12は、プラズマ処理装置1のうち、後述するガス供給源40から供給されたガスの流路の一部を構成してもよい。反応管12は、例えば誘電体からなる。当該誘電体は特に限定されないが、例えば、石英、アルミナ、及びサファイア等である。
【0020】
ステージ30は、図1に示されるように、複数のプラズマ吐出口42と対向するように設けられる。ステージ30には、処理対象物Wが載置される。ステージ30は、後述する制御装置16の制御に基づき、Y軸方向及びX軸方向に移動可能に構成されてもよい。本実施形態では、ステージ30が処理対象物WをX軸方向に沿って連続的に搬送する搬送機構であってもよい。このような搬送機構は、例えば、ベルトコンベアである。
【0021】
ガス供給源40は、ガス供給管41を介して、複数の反応管12の各々にガスを供給する。反応管12に供給されたガスは、リアクタ本体3によりマイクロ波の作用によってプラズマ化される。プラズマ化されたガス(プラズマシャワー43)は、上述したように、ステージ30上の処理対象物Wに向けて、プラズマ吐出口42から吐出される。
ガス供給源40は、各種ガスを貯留する貯留部(図示略)、バルブ(図示略)、及びマスフローコントローラ(図示略)等を有する。ガス供給源40は、ガス供給管41に供給するガスを切り替え可能に構成される。なお、ガス供給源40に貯留されるガスは特に制限されず、プラズマ化(電離及び励起等)して表面改質作用を示すものを広く適用することができる。例えば、酸素ガス、窒素ガス、水蒸気ガス、一酸化窒素ガス、二酸化窒素ガス、亜酸化窒素ガス、二酸化炭素ガス、アンモニアガス、メタンガス、エチレンガス、フッ化炭素ガス、フッ化窒素ガス、ヘリウムガス、アルゴンガス、キセノンガス、及び空気等を用いることができる。また、ガスは2種以上の混合ガスであってもよい。さらに、ガスには、水、過酸化水素、アルコール等の液体が気化したガス等が混合されてもよく、ミスト状の液体が同伴されてもよい。
【0022】
マイクロ波供給源50は、共振器11の近傍に配され、アンテナ13(例えばループアンテナ)を介して共振器11内にマイクロ波を供給する。複数のマイクロ波供給源50の各々は、制御装置16に接続され、制御装置16により制御される。
【0023】
制御装置16は、プラズマ処理装置1の各要素(例えば、複数のマイクロ波供給源50、ガス供給源40、及びステージ30等)を制御する単数又は複数のプロセッサを有する。制御装置16及び後述する制御回路57は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、SPU(Sound Processing Unit)、DSP(Digital Signal Processor)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、又はASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の1種類以上のプロセッサを有する。
【0024】
制御装置16は、記憶装置、通信装置等と共にコンピュータシステムを構成する。本実施形態では、制御装置16が、記憶装置に記憶されたプログラムを実行することによって、後述する本発明の表面改質方法(ステップSt1~St3)等の各種処理をプラズマ処理装置1に実行させる。制御装置16は、例えば、サーバ装置、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、又はタブレット端末等の情報処理装置であってもよい。
記憶装置は、制御装置16が実行するプログラムと制御装置16が使用するデータとを記憶する単数または複数のメモリである。記憶装置は、例えば磁気記録媒体、又は半導体記録媒体等の通常の記録媒体で構成される。記憶装置は、複数種の記録媒体の組合せにより構成されてもよい。また、記憶装置は、可搬型の記憶媒体、又は制御装置16と通信可能な外部記憶媒体等であってもよい。
通信装置は、プラズマ処理装置1の各要素(例えば、複数のマイクロ波供給源50、ガス供給源40、及びステージ30等)と通信可能に接続される通信回路である。通信装置は、これらの各要素との接続における入出力インターフェースとして機能する。
なお、制御装置16は、インターネットなどのネットワークに接続される通信インターフェースをさらに有し、このネットワークを介してサーバ装置等の外部接続機器に接続されてもよい。この場合、制御装置16と外部接続機器との間で各種のデータが交換されてもよい。
【0025】
図4は、マイクロ波供給源50の構成例を示すブロック図である。マイクロ波供給源50は、発振器51、出力調整器52、増幅器53、アイソレータ54、パワーモニター55、整合器56、制御回路57、及び電力供給部58を有する。
発振器51は、後述する制御回路57から指定された所定周波数のマイクロ波を出力調整器52に発振する。発振器51は、例えば、マグネトロン等のマイクロ波発生器、又は半導体固体素子を用いたマイクロ波発生器を用いることができる。具体的には、発振器51は、例えば、VCO(Voltage Controlled oscillator:電圧制御発振器)、VCXO(Voltage controlled Crystal oscillator)、PLL(Phase locked loop)発振器、又はLC発振器であってもよく、マイクロ波の周波数を微調整できるという観点から、VCO、VCXO、又はPLL発振器であることが好ましい。
出力調整器52は、制御回路57の制御に基づき、発振器51から発振されたマイクロ波を共振器11に供給可能な出力に調整する。増幅器53は、出力調整器52により出力が調整されたマイクロ波を必要出力まで増幅する。増幅器53の構成に特に制限はなく、例えば、高周波トランジスタ回路で構成される半導体固体素子を用いることが好ましい。
アイソレータ54は、共振器11からの反射波によって増幅器53が破損することを防止する安全装置である。すなわち、アイソレータ54は、一方向(アンテナ13方向)にマイクロ波が供給されるようにする装置である。
パワーモニター55は、共振器11に供給する入射波電力と、共振器11からの反射波電力とを測定する。整合器56は、アンテナ13を介して共振器11に接続され、共振器11からの反射波を抑制するためにインピーダンスを整合するための装置である。具体的には、整合器56は、発振器51~パワーモニター55のインピーダンスと、アンテナ13のインピーダンスとを整合させる(合わせる)ための装置である。整合器56は、パワーモニター55から得られる反射波電力を最小となるように調整する。
なお、アイソレータ54、パワーモニター55、及び整合器56の一部又は全ては、必要に応じて省略されてもよい。また、出力調整器52は、増幅器53とアイソレータ54との間に設けられてもよい。この場合、出力調整器52は、増幅器53の増幅率を調整することで、出力調整を行うことができる。
【0026】
制御回路57は、発振器51、出力調整器52、増幅器53、アイソレータ54、パワーモニター55、整合器56、及び制御装置16に接続され、発振器51~整合器56の状態を制御及び監視可能に構成される。制御回路57は、マイクロ波供給源50の各要素(例えば、発振器51、出力調整器52、増幅器53、アイソレータ54、パワーモニター55、及び整合器56等)を制御する単数又は複数のプロセッサを有する。また、制御回路57は、電磁界センサ18、温度センサ19、及び表示装置20にも接続される構成であってもよい。電力供給部58は、制御装置16に接続され、制御装置16の制御に基づきマイクロ波供給源50に電力を供給する。
【0027】
電磁界センサ18は、例えば、共振器11の壁部に配される。電磁界センサ18は、共振器11内の電磁界エネルギーを検出し、このエネルギーに応じた信号を制御回路57に送信する。
温度センサ19は、例えば、共振器11内に配される。温度センサ19は、共振器11内の温度分布を測定し、測定した温度分布に応じた信号を制御回路57に送信する。温度センサ19は、例えば、熱画像計測装置、及び放射温度計等である。
表示装置20は、取得した情報を操作者に対して通知することが可能な装置で構成される。表示装置20は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)又は有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等の表示装置である。表示装置20は、制御回路57の処理により得られた結果に基づく情報を表示する。具体的には、表示装置20は、例えば、制御回路57からのアラート情報等を表示する。なお、制御回路57の処理により得られた結果に基づく情報は、制御装置16に出力され、制御装置16が当該情報を表示してもよく、他の表示装置等に表示させてもよい。
【0028】
制御回路57は、発振器51に周波数(発振周波数)を指定する信号を出力する。これにより、発振器51は、この指定された所定周波数のマイクロ波を出力調整器52に発振する。制御回路57から発振器51に対して指定される周波数は、典型的には、共振器11内に形成される定在波の固有周波数である。ここで、共振器11内に形成される定在波の固有周波数を求めるために、パワーモニター55への反射波が極小値となるように、発振器51に指定される周波数が制御回路57により微調整されてもよい。
また、制御回路57は、共振器11に配された電磁界センサ18から取得した信号に基づき発振器51に指定する周波数を微調整して決定してもよい。具体的には、制御回路57は、電磁界センサ18からの信号に基づき、共振器11内に発生した定在波の形成状況(共振状況)を検出してもよい。制御回路57は、検出した形成状況に基づいて、共振器11内に一定の周波数の定在波が立つマイクロ波の周波数を、発振器51にフィードバックする。このフィードバックにより、共振器11内に定在波を安定して発生させることが可能となる。
【0029】
さらに、制御回路57は、所望のプラズマ強度が得られるように、出力調整器52のマイクロ波の出力を制御してもよい。この場合、制御回路57は、パワーモニター55から取得した電力信号に基づくフィードバック制御により出力調整器52の出力を制御してもよい。あるいは、制御回路57は、電磁界センサ18から取得した信号に基づき、出力調整器52の出力を制御してもよい。
【0030】
加えて、制御回路57は、増幅器53にマイクロ波の出力を指示することによって、一定の出力のマイクロ波をアンテナ13に供給できるように調整してもよい。あるいは、制御回路57は、増幅器53の増幅率は変化させず、発振器51と増幅器53との間に配された出力調整器52の減衰率を調整してもよい。
【0031】
また、制御回路57は、温度センサ19から取得した信号に基づき、被加熱対象物を目的温度となるようにフィードバック制御してもよい。ここで、発振器51としてマグネトロンのような大出力を出せる装置が採用された場合、制御回路57は、発振器51に対してマイクロ波出力を調整するような指示を与えてもよい。
【0032】
さらに、制御回路57は、共振器11の反射波の大きさを測定し、その値を利用してもよい。反射波の測定は、例えばアイソレータ54から得られるアイソレーション量が用いられる。制御回路57は、反射波信号が極小となるように、発振器51に指定する周波数を調整することで、マイクロ波のエネルギーが共振器11に効率的に供給される。
【0033】
図5は、リアクタ本体3の断面斜視図である。電力供給部58によりマイクロ波供給源50に電力が供給されると、マイクロ波供給源50から共振器11にアンテナ(図示略)を介してマイクロ波(周波数が300MHz~30GHzである電磁波)が供給され、図5の形態では例えばTM010モードと呼ばれる電場分布(図5中の一点鎖線)が形成される。この電場が形成されることによって、反応管12内のエネルギーが高くなり、反応管12のうち共振器11に包囲された領域(以下、プラズマ化領域と記述する)にエネルギーが集中し、反応管12内を流れるガスが高効率に活性化される。ここで、増幅器53の作用によりマイクロ波電力が大きくなると、プラズマ化領域21におけるガスのプラズマ化量が大きくなり、プラズマ吐出口42から放出されるプラズマガスのプラズマ温度が高くなる。
【0034】
図2に示す形態では、複数の複数のプラズマ吐出口42の各々は、上述したように、千鳥状に配される。この構成により、処理対象物Wの面上の互いに異なる位置に向かって、複数のプラズマ吐出口42の各々からリアクタ本体3によりプラズマ化されたガスが吐出される。ここで、制御装置16により複数の電力供給部58の各々の電力が個別に制御されると、複数のマイクロ波供給源50の各々に供給される電力が個別に制御され、複数のプラズマ吐出口42の各々に供給されるガスのプラズマ生成の状態も個別に制御される。これにより、複数のプラズマ吐出口42の各々から吐出されるプラズマガスの状態をプラズマ吐出口42毎に異ならせることができる。従って、処理対象物Wの表面の処理状態を所望のパターンへと制御することができる。
また、プラズマ処理装置1において、X軸方向中央部のプラズマ密度が高く、当該中央部からX1方向及びX2方向に位置する部分のプラズマ密度が低い分布の場合、当該中央部に対応するマイクロ波供給源50からのマイクロ波出力を小さくし、当該中央部からX1方向及びX2方向に位置する部分に対応するマイクロ波供給源50からのマイクロ波出力を大きくすることによって、プラズマ処理装置1全体でのマイクロ波密度の均一化を図ることができ、処理対象物Wに対する表面処理をムラなく均一に行うことができる。他方、処理対象物Wの表面において、表面処理の程度を位置毎に異ならせたい場合は、その処理の程度に合わせて、位置毎にマイクロ波供給源50からのマイクロ波出力が調整されてもよい。
【0035】
以上の説明から理解されるとおり、本発明の表面改質方法は、マイクロ波リアクタアレイを構成する複数のマイクロ波リアクタの各々にガスを供給してプラズマを生成し、生成したプラズマを処理対象物(ただし、半導体製造用基板、及びフラットパネルディスプレイ製造用基板を除く。)に照射して、この処理対象物の表面を改質させる。この方法により、処理対象物を表面処理するに当たり、処理対象物の面内各部ごとに改質状態を制御することができる。
【0036】
[表面改質方法]
次に、本発明の表面改質方法の一実施形態について、図6を適宜参照しながら説明する。なお、以降の説明では、プラズマ処理装置1により、処理対象物Wの表面に親水性の水酸基が導入される場合を例として説明する。
【0037】
本発明の表面改質方法は、図6に示す形態において、ガス供給工程(ステップSt1)と、マイクロ波供給工程(ステップSt2)と、表面改質工程(ステップSt3)とを有する。以下、これら各工程について説明する。
【0038】
<ステップSt1:ガス供給工程>
ガス供給源40は、制御装置16の制御に基づいて、ガス供給管41を介して複数の反応管12の各々にアルゴンガス(処理ガス)を供給する。
【0039】
<ステップSt2:マイクロ波供給工程>
次に、複数のマイクロ波供給源50の各々が、制御装置16の制御に基づいて、それぞれ対応する共振器11に対してマイクロ波を供給する。これにより、各共振器11内に、例えばTM010モードと呼ばれる定在波の電場分布が形成される。
【0040】
<ステップSt3:表面改質工程>
次に、複数の反応管12の各々に供給されたアルゴンガスが、プラズマ化領域21においてプラズマ化される。そして、プラズマ化された励起状態のアルゴンガスが、複数のプラズマ吐出口42の各々から処理対象物Wの表面に向けてプラズマシャワー43としてシャワー状に吐出される。ここで、本実施形態では、複数のプラズマ吐出口42の各々から吐出されるプラズマガスの状態(プラズマ生成量、及び温度等)に差が生じるように、制御装置16がマイクロ波供給源50を制御することで、共振器11の各々に供給されるマイクロ波電力を調整することができる。例えば、処理対象物Wの表面のうち、X軸方向中央部におけるプラズマ処理の効果が、当該中央部に対してX1方向及びX2方向に位置する部分よりも高い場合に、当該中央部に対してX1方向及びX2方向に位置する部分に吐出される励起状態のアルゴンガスの温度を、当該中央部に吐出される励起状態のアルゴンガスの温度よりも高くすることによって、処理対象物Wの表面処理における位置毎の不均衡が解消され、処理対象物Wの表面に対するプラズマ処理の効果が均一化される。
【0041】
上述の実施形態では、処理対象物の表面を、プラズマ化された励起状態のアルゴンガスを用いて改質する例を説明したが、本発明はこの形態に限定されるものではない。プラズマ化されたガスを用いた表面改質それ自体は広く知られているものであり、本発明において、処理対象物、及びプラズマ化するガス種は何ら制限されるものではない。例えば、樹脂の表面改質の1つとして、親水化処理が挙げられる。樹脂表面の疎水性及び親水性の違いは樹脂表面の水酸基(-OH)等の量に起因する。樹脂の分子構造であるC-C結合に、励起状態のアルゴンが接触するとこの結合が切断され、さらに、当該励起状態のアルゴンが分子内及び雰囲気中の酸素(O)及び水分(HO)と反応することで、樹脂表面にC-OHの構造が導入され、親水性が付与される。即ち、樹脂表面が表面親水化処理される。
なお、表面親水化処理については、励起されたアルゴンガスだけでなく、例えば、
・励起された窒素ガス、
・酸素がプラズマされた際に発生する、オゾン若しくは一重項酸素、又は、
・微量の水分や過酸化水素が導入された、窒素若しくはアルゴンガスがプラズマ化される際に発生するOHラジカル
を用いても樹脂表面に親水性を付与することができる。
プラズマガスを用いた、通常の表面改質の形態はいずれも、本発明のマイクロ波リアクタアレイを用いた表面改質方法に適用することができ、上述した本発明の効果を享受することができる。表面改質の形態は、例えば、「大気圧プラズマの生成制御と応用技術(小駒益弘著、サイエンス&テクノロジー社出版)」に記載され、本発明に適用することができる。
【0042】
本発明の表面改質方法による表面改質の態様は、通常のプラズマ処理による表面改質の態様に対応させることができることは上述の通りである。なお、本発明の表面改質方法には、半導体製造用基板、及びフラットパネルディスプレイ製造用基板に対する表面改質方法は含まれない。したがって、例えば、半導体基板上への成膜、及び半導体加工におけるエッチング処理は含まれない。
本発明の表面改質方法による表面改質の具体的な形態として、例えば、以下の処理(殺菌処理及び滅菌処理、金属表面の酸化処理、窒化処理、炭化処理、クリーニング処理、親水化処理、疎水化処理、官能基導入処理、粒子分散性向上処理、架橋構造の導入処理、並びにコーティングの前処理)を行う形態を挙げることができる。
【0043】
(殺菌処理及び滅菌処理)
殺菌処理及び滅菌処理としては、例えば、医療器具、又は食品加工器具等に付着した、細菌類の殺菌・滅菌・増殖抑制処理、及びウィルスの不活化処理が挙げられる。殺菌処理及び滅菌処理に用いられるガスは、例えば、空気、及び窒素等である。
【0044】
(金属表面の酸化処理、窒化処理、及び炭化処理)
金属表面の窒化処理、及び炭化処理としては、例えば、工具の耐摩耗性向上のための金属表面の窒化処理、及び炭化処理が挙げられる。また、金属表面の酸化処理としては、例えば、耐久性向上のための金属表面の酸化処理(不動態膜の形成)が挙げられる。
【0045】
(クリーニング処理)
クリーニング処理としては、例えば、金属、セラミック、又は樹脂等の表面についた汚れ成分(有機物等)を分解する分解処理が挙げられる。クリーニング処理では、ガスとして酸素を用いた場合、プラズマにより酸化作用の強いオゾンから一重項酸素が生成され、この一重項酸素が表面の汚れ成分を酸化分解することにより、汚れ成分が除去される。
【0046】
(親水化処理)
親水化処理は、例えば、上述した表面親水化処理が挙げられる。例えば、表面親水化処理は、上述したように、励起されたアルゴンガスだけでなく、励起された窒素ガス、又は酸素をプラズマした際に発生する、オゾン若しくは一重項酸素が用いられてもよい。あるいは、微量の水分や過酸化水素が導入された、窒素若しくはアルゴンガスがプラズマ化される際に発生するOHラジカルが用いられてもよい。
【0047】
(疎水化処理)
疎水化処理としては、例えば、金属、セラミック、又は樹脂等の表面に、フッ化炭素など疎水性の分子を導入することで、当該表面に撥水性を付与する処理が挙げられる。
【0048】
(官能基導入処理)
官能基導入処理としては、例えば、新たな化学物質を導入する際の結合部位を用意することを目的として、金属、セラミック、又は樹脂等の表面にヒドロキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、アミノ基、及びニトロ基等の官能基を導入する処理が挙げられる。
【0049】
(粒子分散性向上処理)
粒子分散性向上処理としては、例えば、金属、セラミック、又は樹脂等の粒子の流動性及び分散性を向上させることを目的として、粒子表面の親水性又は疎水性を向上させる処理が挙げられる。
【0050】
(架橋構造の導入処理)
架橋構造の導入処理としては、例えば、樹脂表面に導入された化学物質に残存する官能基同士を架橋反応させ、エーテル結合、及び/又はエステル結合等を形成する処理が挙げられる。樹脂表面に対して架橋構造の導入処理が施されることにより、樹脂表面の耐久性及び耐摩耗性が向上したり、柔軟性が制御されたりすることが期待される。
【0051】
(コーティングの前処理)
コーティングの前処理は、例えば、金属、セラミック、又は樹脂等の表面に塗料又は保護膜を塗布する上での前処理であり、当該表面に対して、プラズマを用いた洗浄を行ったり、官能基を導入したり、活性部位を形成したりする処理である。
【0052】
本明細書に記載された効果は、あくまで説明的または例示的なものであって限定的ではない。つまり、本発明は、上記の効果とともに、または上記の効果に代えて、本明細書の記載から当業者には明らかな他の効果を奏しうる。
【0053】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の技術分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【符号の説明】
【0054】
1…プラズマ処理装置、2…マイクロ波リアクタ、3…マイクロ波リアクタ本体、11…共振器、12…反応管、13…アンテナ、16…制御装置、17…誘電体、21…プラズマ化領域、30…ステージ、40…ガス供給源、41…ガス供給管、42…プラズマ吐出口、43…プラズマシャワー、50…マイクロ波供給源、W…処理対象物。

図1
図2
図3
図4
図5
図6