(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002114
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】硬化性組成物と硬化物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 83/10 20060101AFI20231228BHJP
C08F 220/28 20060101ALI20231228BHJP
C08G 65/329 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08L83/10
C08F220/28
C08G65/329
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101116
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 友喜
(72)【発明者】
【氏名】難波 遼
(72)【発明者】
【氏名】中村 牧人
(72)【発明者】
【氏名】神守 広一郎
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 高
(72)【発明者】
【氏名】砂山 佳孝
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
4J100
【Fターム(参考)】
4J002BG072
4J002CH053
4J002CP171
4J002FD010
4J002FD020
4J002FD030
4J002FD330
4J002GJ02
4J002HA02
4J005AA02
4J005BB04
4J005BD03
4J005BD08
4J100AL03P
4J100AL05Q
4J100AL05R
4J100AL08S
4J100BA77S
4J100CA03
4J100CA06
4J100DA01
4J100DA04
4J100DA09
4J100EA03
4J100FA03
4J100FA19
4J100JA05
(57)【要約】
【課題】耐候性に優れる反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体を配合しつつ、硬化性組成物とした際に、伸び特性に優れた硬化物が得られる硬化性組成物の製造方法、及び硬化物の製造方法を提供する。
【解決手段】(メタ)アクリル酸エステルと、反応性ケイ素基含有モノマーとを、少なくとも1つのハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物を開始剤として、ハロゲン化第四級アンモニウム塩の存在下でリビングラジカル重合させて、反応性ケイ素基を1分子あたり、平均0.5個以上有する(メタ)アクリレート重合体(A)を得、得られた(メタ)アクリレート重合体(A)と、末端に反応性ケイ素基を2個以上含む末端原子団を有する、オキシアルキレン重合体(B)とを、(メタ)アクリレート重合体(A)の質量とオキシアルキレン重合体(B)との質量の比[A/B]が、10/90~90/10となるように混合する硬化性組成物の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下式1で表される反応性ケイ素基を有さない単量体であって、かつ(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルと、
1分子中に少なくとも1個の下式1で表される反応性ケイ素基を有し、かつ重合性不飽和基を有する反応性ケイ素基含有モノマーとを、
少なくとも1つのハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物を開始剤として、ハロゲン化第四級アンモニウム塩の存在下でリビングラジカル重合させて、下式1で表される反応性ケイ素基を1分子あたり、平均0.5個以上有する(メタ)アクリレート重合体(A)を得、
得られた(メタ)アクリレート重合体(A)と、
ポリオキシアルキレン鎖を骨格とし、前記ポリオキシアルキレン鎖の末端に下式1で表される反応性ケイ素基を2個以上含む末端原子団を有し、下式f1で表されるシリル化率が50モル%超97モル%以下である、オキシアルキレン重合体(B)とを、
前記(メタ)アクリレート重合体(A)の質量と前記オキシアルキレン重合体(B)との質量の比[A/B]が、10/90~90/10となるように混合する硬化性組成物の製造方法。
-SiR
1
3-aX
a ・・・式1
(式1中、R
1は加水分解性基を含まない、炭素数1~20の1価の有機基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子又は加水分解性基を表し、aは1~3の整数である。aが1の場合、2つのR
1は互いに同一でも異なっていてもよく、aが2又は3の場合、Xは互いに同一でも異なっていてもよい。)
【数1】
【請求項2】
前記オキシアルキレン重合体(B)の前記末端原子団が下式2、下式3又は下式4で表される1以上である、請求項1に記載の硬化性組成物の製造方法。
【化1】
(式2中、R
2,R
3はそれぞれ独立に炭素数1~6の2価の連結基を示し、前記連結基中の炭素原子に結合している原子は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子である。R
4,R
5はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1~10の炭化水素基を示す。nは1から10の整数を示す。R
1、X、aは、各々式1におけるR
1、X、aと同一であり、複数のSiR
1
3-aX
aは、互いに同一でも異なっていてもよい。
式3、式4中、R
6は2価の連結基を示し、前記R
6が有する2つの結合手は、それぞれ、前記連結基内の炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子に結合している。R
7は、それぞれ独立に水素、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、またはシリル基を示す。R
1、X、aは、各々式1におけるR
1、X、aと同一であり、複数のSiR
1
3-aX
aは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【請求項3】
前記(メタ)アクリル酸エステルの100質量部に対して、前記反応性ケイ素基含有モノマー0.1~20質量部を添加して重合させ、前記(メタ)アクリレート重合体(A)を得る、請求項1又は2に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項4】
前記リビングラジカル重合が、可逆的錯体形成媒介重合である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項5】
前記ハロゲン化第四級アンモニウム塩が、ヨウ化第四級アンモニウム塩である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項6】
前記ヨウ化第四級アンモニウム塩が、下式7で表される化合物である、請求項5に記載の硬化性組成物の製造方法。
R18
4N+(X2)- ・・・式7
(式7中、R18は、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、又は炭素数5~10のヘテロアリール基を表す。上記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基はそれぞれ置換基を有していてもよく、置換基を有する場合、前記炭素数は置換基の炭素原子の数を含む。4つのR18は、互いに同一でも異なっていてもよい。X2は、ハロゲン原子を表す。)
【請求項7】
前記ヨウ化第四級アンモニウム塩が、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、及びヨウ化テトラオクチルアンモニウムから選ばれる1種以上である、請求項5に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項8】
前記(メタ)アクリル酸エステルの100質量部に対して、前記ヨウ化第四級アンモニウム塩0.1~5.0重量部を添加して重合させ、前記(メタ)アクリレート重合体(A)を得る、請求項5に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項9】
前記開始剤として、1つのハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物を用いて、前記(メタ)アクリレート重合体(A)を得る、請求項1又は2に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項10】
前記(メタ)アクリル酸エステルと、前記反応性ケイ素基含有モノマーの一部とを、前記(メタ)アクリル酸エステルと前記反応性ケイ素基含有モノマーの合計の反応率が30~90mol%に達するまで重合させ、次いで、残りの前記反応性ケイ素基含有モノマーを添加してさらに重合させて、前記(メタ)アクリレート重合体(A)を得る、請求項9に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項11】
前記開始剤として有機ヨウ素化合物を用いて、前記(メタ)アクリレート重合体(A)を得る、請求項1又は2に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項12】
前記(メタ)アクリレート重合体(A)は、前記式1で表される反応性ケイ素基を1分子あたり平均0.5~6.0個有する、請求項1又は2に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項13】
前記(メタ)アクリレート重合体(A)の数平均分子量が6,000~300,000である、請求項1又は2に記載の硬化性組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1又は2に記載の硬化性組成物の製造方法で得られた硬化性組成物を硬化させる、硬化物の製造方法。
【請求項15】
前記硬化物が、シーラント用である、請求項14に記載の硬化物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化性組成物の製造方法、及び硬化物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
分子中に少なくとも1個の反応性ケイ素基を有する重合体は、室温においても、湿分等による反応性ケイ素基の加水分解反応等を伴うシロキサン結合の形成によって架橋し、ゴム状の硬化物が得られることが知られている。
【0003】
これらの反応性ケイ素基を有する重合体の中で、オキシアルキレン重合体、不飽和炭化水素重合体、(メタ)アクリレート重合体は、既に工業的に生産され、シーリング材、接着剤、塗料等の用途に広く使用されている(例えば、特許文献1)。これらの反応性ケイ素基を有する重合体を含む硬化性組成物をシーリング材として用いる場合には、硬化性、被着物に対する接着性、耐候性に加えて、硬化物が充分な伸び特性を有することや、繰り返し伸縮耐久性に優れること等が求められる。
【0004】
近年、耐候性をより良好とする観点から、前記オキシアルキレン重合体に、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体を一定量配合した硬化性組成物が提案されている(例えば、特許文献2、3等)。しかしながら、このような硬化性組成物は、硬化物の伸び特性及び繰り返し伸縮耐久性が低いという問題がある。
【0005】
反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体は、通常、ラジカル重合にて製造される。アゾ化合物や過酸化物等のラジカル開始剤を用いる従来のフリーラジカル重合は、その高い反応性ゆえに、反応性ケイ素基の導入位置や数を制御することが難しく、分子鎖内部に反応性ケイ素基を有する重合体が生成してしまう。このように分子鎖内部に反応性ケイ素基が導入された(メタ)アクリレート重合体を含む硬化性組成物は、重合体同士が末端部以外で架橋して充分な伸縮性が得られず、結果として、硬化物の伸び特性や、繰り返し伸縮耐久性が低下する。
【0006】
斯かる課題に対し、リビングラジカル重合により、反応性ケイ素基の導入位置やその数を制御した、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体の製造方法が提案されている。例えば、特許文献4には、リビングラジカル重合の1つである、RAFT重合(Reversible Addition-Fragmentation Chain Transfer Polymerization)にて反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体を製造する方法が記載されている。特許文献4によれば、RAFT剤(チオ化合物等)を開始剤として用いてリビングラジカル重合することにより、分子の末端部に架橋性官能基が導入された(メタ)アクリレート重合体を製造できる。
【0007】
また、特許文献5には、ATRP重合(Atom Transfer Radical Polymerization)にて反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体を製造する方法が記載されている。特許文献5にも、重合体末端に反応性ケイ素基を選択的に導入できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平05-287187号公報
【特許文献2】特開平04-069667号公報
【特許文献3】国際公開第2016/002907号
【特許文献4】国際公開第2019/208386号
【特許文献5】特開2018-162394号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献4又は5の方法で得られた反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体は製造時に副資材量が多くなるという課題があると共に、副資材量を減らすために濾過処理工程を減らした該重合体を含む硬化性組成物は、硬化物の伸び特性が充分ではない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、製造時の副資材量が少ない反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体を配合しつつ、硬化性組成物とした際に、耐候性に優れ、かつ伸び特性に優れた硬化物が得られる硬化性組成物の製造方法、及び硬化物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の態様を有する。
[1]下式1で表される反応性ケイ素基を有さない単量体であって、かつ(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステルと、
1分子中に少なくとも1個の下式1で表される反応性ケイ素基を有し、かつ重合性不飽和基を有する反応性ケイ素基含有モノマーとを、
少なくとも1つのハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物を開始剤として、ハロゲン化第四級アンモニウム塩の存在下でリビングラジカル重合させて、下式1で表される反応性ケイ素基を1分子あたり、平均0.5個以上有する(メタ)アクリレート重合体(A)を得、
得られた(メタ)アクリレート重合体(A)と、
ポリオキシアルキレン鎖を骨格とし、前記ポリオキシアルキレン鎖の末端に下式1で表される反応性ケイ素基を2個以上含む末端原子団を有し、下式f1で表されるシリル化率が50モル%超97モル%以下である、オキシアルキレン重合体(B)とを、
前記(メタ)アクリレート重合体(A)の質量と前記オキシアルキレン重合体(B)との質量の比[A/B]が、10/90~90/10となるように混合する硬化性組成物の製造方法。
-SiR
1
3-aX
a ・・・式1
(式1中、R
1は加水分解性基を含まない、炭素数1~20の1価の有機基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子又は加水分解性基を表し、aは1~3の整数である。aが1の場合、2つのR
1は互いに同一でも異なっていてもよく、aが2又は3の場合、Xは互いに同一でも異なっていてもよい。)
【数1】
[2]前記オキシアルキレン重合体(B)の前記末端原子団が下式2、下式3又は下式4で表される1以上である、[1]に記載の硬化性組成物の製造方法。
【化1】
(式2中、R
2,R
3はそれぞれ独立に炭素数1~6の2価の連結基を示し、前記連結基中の炭素原子に結合している原子は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子である。R
4,R
5はそれぞれ独立に水素原子、又は炭素数1~10の炭化水素基を示す。nは1から10の整数を示す。R
1、X、aは、各々式1におけるR
1、X、aと同一であり、複数のSiR
1
3-aX
aは、互いに同一でも異なっていてもよい。
式3、式4中、R
6は2価の連結基を示し、前記R
6が有する2つの結合手は、それぞれ、前記連結基内の炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子に結合している。R
7は、それぞれ独立に水素、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、またはシリル基を示す。R
1、X、aは、各々式1におけるR
1、X、aと同一であり、複数のSiR
1
3-aX
aは、互いに同一でも異なっていてもよい。)
[3]前記(メタ)アクリル酸エステルの100質量部に対して、前記反応性ケイ素基含有モノマー0.1~20質量部を添加して重合させ、前記(メタ)アクリレート重合体(A)を得る、[1]又は[2]に記載の硬化性組成物の製造方法。
[4]前記リビングラジカル重合が、可逆的錯体形成媒介重合である、[1]~[3]のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
[5]前記ハロゲン化第四級アンモニウム塩が、ヨウ化第四級アンモニウム塩である[1]~[4]のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
[6]前記ヨウ化第四級アンモニウム塩が、下式7で表される化合物である、[5]に記載の硬化性組成物の製造方法。
R
18
4N
+(X
2)
- ・・・式7
(式7中、R
18は、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、又は炭素数5~10のヘテロアリール基を表す。上記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基はそれぞれ置換基を有していてもよく、置換基を有する場合、前記炭素数は置換基の炭素原子の数を含む。4つのR
18は、互いに同一でも異なっていてもよい。X
2は、ハロゲン原子を表す。)
[7]前記ヨウ化第四級アンモニウム塩が、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、及びヨウ化テトラオクチルアンモニウムから選ばれる1種以上である、[5]又は[6]に記載の硬化性組成物の製造方法。
[8]前記(メタ)アクリル酸エステルの100質量部に対して、前記ヨウ化第四級アンモニウム塩0.1~5.0重量部を添加して重合させ、前記(メタ)アクリレート重合体(A)を得る、[5]~[7]のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
[9]前記開始剤として、1つのハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物を用いて、前記(メタ)アクリレート重合体(A)を得る、[1]~[8]のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
[10]前記(メタ)アクリル酸エステルと、前記反応性ケイ素基含有モノマーの一部とを、前記(メタ)アクリル酸エステルと前記反応性ケイ素基含有モノマーの合計の反応率が30~90mol%に達するまで重合させ、次いで、残りの前記反応性ケイ素基含有モノマーを添加してさらに重合させて、前記(メタ)アクリレート重合体(A)を得る、[9]に記載の硬化性組成物の製造方法。
[11]前記開始剤として有機ヨウ素化合物を用いて、前記(メタ)アクリレート重合体(A)を得る、[1]~[10]のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
[12]前記(メタ)アクリレート重合体(A)は、前記式1で表される反応性ケイ素基を1分子あたり平均0.5~6.0個有する、[1]~[11]のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
[13]前記(メタ)アクリレート重合体(A)の数平均分子量が6,000~300,000である、[1]~[12]のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法。
[14][1]~[13]のいずれか1項に記載の硬化性組成物の製造方法で得られた硬化性組成物を硬化させる、硬化物の製造方法。
[15]前記硬化物が、シーラント用である、[14]に記載の硬化物の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明の硬化性組成物の製造方法及び硬化物の製造方法によれば、耐候性に優れる反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体を配合しつつ、伸び特性に優れた硬化物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書及び特許請求の範囲における以下の用語の定義は以下のとおりである。
「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートの総称である。
「(メタ)アクリル酸」は、アクリル酸及びメタアクリル酸の総称である。同様に、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステルはアクリル酸アルキルエステル及びメタクリル酸アルキルエステルの総称であり、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルは、アクリル酸アルコキシアルキルエステル及びメタアクリル酸アルコキシアルキルエステルの総称であり、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの総称である。
副資材とは、触媒、塩基、溶媒、吸着剤、添加剤などの重合体の製造工程に使用するもので、重合したポリマーに構造上組み込まれない原料を指す。ただし、未反応モノマーについては副資材に含まないものとする。
【0013】
「ポリオキシアルキレン鎖」とは、アルキレンオキシド等の環状エーテルの開環付加重合によって形成された重合体の骨格を成す鎖を意味し、後述の末端原子団中の環状エーテルの開環付加重合によって形成された部分を含まない。
「オキシアルキレン重合体」とは、ポリオキシアルキレン鎖を含む骨格と前記骨格に結合する末端原子団を有する。
「末端原子団」は、前記ポリオキシアルキレン鎖の酸素原子のうち、前記オキシアルキレン重合体の分子末端に最も近い酸素原子を含み得る原子団を意味する。但し、原子団が開始剤の残基を含む場合は、末端原子団とはみなさない。
【0014】
「活性水素含有基」は、炭素原子に結合する水酸基、カルボキシ基、アミノ基、第一級アミンから1個の水素原子を除去した1価の官能基及びスルファニル基からなる群より選ばれる少なくとも1種の基である。
「活性水素」とは、前記活性水素含有基に基づく水素原子、及び水の水酸基に基づく水素原子である。
【0015】
重合体の数平均分子量(以下、「Mn」と記す。)及び質量平均分子量(以下、「Mw」と記す。)は、GPC測定によって得られるポリスチレン換算分子量である。分子量分布は、MwとMnより算出した値であり、Mnに対するMwの比率(以下、「Mw/Mn」と記す。)である。
「~」で表される数値範囲は、~の前後の数値を下限値及び上限値とする数値範囲を意味する。
【0016】
本発明の硬化性組成物の製造方法は、特定条件のリビングラジカル重合により反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体(A)を得、得られた(メタ)アクリレート重合体(A)と、反応性ケイ素基を2個以上含む末端原子団を有する、オキシアルキレン重合体(B)とを、混合する製造方法である。
【0017】
[反応性ケイ素基]
本明細書及び特許請求の範囲における反応性ケイ素基は、下式1で表される。
-SiR1
3-aXa ・・・式1
(式1中、R1は加水分解性基を含まない、炭素数1~20の1価の有機基を表し、Xは水酸基、ハロゲン原子又は加水分解性基を表し、aは1~3の整数である。aが1の場合、2つのRは互いに同一でも異なっていてもよく、aが2又は3の場合、Xは互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0018】
式1において、R1で表される、加水分解性基を含まない、炭素数1~20の1価の有機基としては、炭化水素基、ハロ炭化水素基又はトリオルガノシロキシ基が挙げられる。このうち、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1-クロロアルキル基又はトリオルガノシロキシ基が好ましい。
【0019】
R1は、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、クロロメチル基、トリメチルシロキシ基、トリエチルシロキシ基又はトリフェニルシロキシ基がより好ましい。得られる硬化性組成物の硬化性及び安定性のバランスがより良好となる観点から、R1は、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基がより好ましい。また、硬化物の硬化速度がより早くなる観点から、R1は、クロロメチル基であることが好ましい。容易に入手できる観点からは、R1は、メチル基であることが特に好ましい。
【0020】
式1において、Xは水酸基、ハロゲン原子又は加水分解性基を表す。
加水分解性基としては、例えば、アルコキシ基、アシルオキシ基、ケトキシメート基、アミノ基、アミド基、酸アミド基、アミノオキシ基、スルファニル基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。このうち、Xとしては、加水分解性が穏やかで取扱いやすい観点から、アルコキシ基が好ましい。アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基及びイソプロポキシ基が好ましく、メトキシ基及びエトキシ基がより好ましい。アルコキシ基がメトキシ基又はエトキシ基であると、シロキサン結合を速やかに形成し硬化物中に架橋構造を形成させることが容易であり、硬化物の物性値が良好となりやすい。
【0021】
式1において、aは1~3の整数である。aが1の場合、2つのR1は互いに同一でも異なっていてもよく、aが2又は3の場合、Xは互いに同一でも異なっていてもよい。
硬化性が良好となりやすいことから、aは2であることが好ましい。
【0022】
式1で表される反応性ケイ素基としては、例えば、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基、エチルジメトキシシリル基、エチルジエトキシシリル基、メチルジイソプロポキシシリル基、メトキシメチルジエトキシシリル基、メトキシメチルジメトキシシリル基、クロロメチルジメトキシシリル基、クロロメチルジエトキシシリル基、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、等が挙げられる。このうち、活性が高く良好な硬化性が得られやすい観点から、メチルジメトキシシリル基、メチルジエトキシシリル基が好ましく、メチルジメトキシシリル基がより好ましい。
【0023】
[(メタ)アクリレート重合体(A)の製造方法]
(メタ)アクリレート重合体(A)(以下、単に「重合体(A)」という場合がある。)は、反応性ケイ素基を有さない単量体であって、かつ(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1種の(メタ)アクリル酸エステル(以下、「(メタ)アクリル酸エステル(M)」という場合がある。)と、1分子中に少なくとも1個の反応性ケイ素基を有し、かつ重合性不飽和基を有する反応性ケイ素基含有モノマー(以下、「モノマー(S)」という場合がある。)とを、少なくとも1つのハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物を開始剤(以下、「開始剤(I)」という場合がある。)として、ハロゲン化第四級アンモニウム塩(以下、「触媒(C)」という場合がある。)の存在下でリビングラジカル重合させて製造する。
【0024】
<(メタ)アクリル酸エステル(M)>
(メタ)アクリル酸エステル(M)は、式1で表される反応性ケイ素基を有さない単量体であって、かつ(メタ)アクリル酸アルキルエステル及び(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルからなる群より選択される少なくとも1種の単量体である。
(メタ)アクリル酸エステル(M)は、分子内に反応性ケイ素基を有さない単量体であることが好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、置換基を有していてもよい、炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。より具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸-t-ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸イソデシル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸テトラデシル、(メタ)アクリル酸ヘキサデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、反応に影響を与えにくい観点から、(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、置換基を有していてもよい、炭素数1~18の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、及び(メタ)アクリル酸ステアリルから選択される少なくとも1つの単量体であることがより好ましい。なお、置換基を有する場合、前記炭素数は置換基の炭素原子の数を含む。
【0026】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルにおいて、「アルコキシアルキル」とは、「-R-OR’」で表される基を意味する。
ここで、Rはアルキレン基を、R’は、アルキル基を示す。
【0027】
(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、置換基を有していてもよい、炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基に、炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、あるいは少なくとも1つのエーテル性酸素原子を含む炭素数1~20の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基が直接結合した基を有する、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが挙げられる。
【0028】
なお、前記各基が置換基を有する場合、前記炭素数は置換基の炭素原子の数を含む。より具体的には、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、メトキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、メトキシポリオキシプロピレン(メタ)アクリレート、ポリオキシブチレン(メタ)アクリレート、メトキシポリオキシブチレン(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、重合体(A)の低粘度化の観点から、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、メトキシポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、メトキシポリオキシプロピレン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸エステル(M)は、分子内に反応性ケイ素基を有さない(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ドデシル、及び(メタ)アクリル酸ステアリルから選択される少なくとも1つの単量体であることがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(M)は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0030】
<モノマー(S)>
本発明の第1の実施形態において、モノマー(S)は、1分子中に少なくとも1個の式1で表される反応性ケイ素基を有し、かつ重合性不飽和基を有する単量体である。
モノマー(S)は、1分子中に少なくとも1個の式1で表される反応性ケイ素基を有し、かつ、(メタ)アクリル酸エステル(M)と共重合可能な重合性不飽和基を少なくとも1個有する単量体であれば、特に限定されない。
【0031】
モノマー(S)としては、例えば、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、トリス(2-メトキシエトキシ)ビニルシランが挙げられる。
【0032】
その他の例としては、式1で表される反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル、式1で表される反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルが挙げられる。
より具体的には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基に、式1で表される反応性ケイ素基が直接結合した化合物、又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルのアルコキシアルキル基に、式1で表される反応性ケイ素基が直接結合した化合物が挙げられる。
【0033】
前記反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおけるアルキル基としては、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。また、前記反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルにおけるアルコキシアルキル基としては、炭素数1~8の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基に、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基が直接結合したアルコキシアルキル基であることが好ましい。これらのアルキル基又はアルコキシアルキル基は、式1で表される反応性ケイ素基以外の置換基を有していてもよい。なお、置換基を有する場合、前記炭素数は置換基の炭素原子の数を含む。
【0034】
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステル又は(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステルとしては、例えば、3-(メチルジメトキシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(メチルジエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0035】
硬化性が良好となりやすい観点から、モノマー(S)としては、式1で表される反応性ケイ素基を含む炭素数1~8のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルであることが好ましく、3-(ジメトキシメチルシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、3-(メチルジエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレート、又は3-(トリエトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートであることが特に好ましい。
モノマー(S)は、1種を単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0036】
モノマー(S)が有する式1で表される反応性ケイ素基の数は、硬化性組成物の伸び特性の観点から、1~6個であることが好ましく、1~4個であることがより好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル(M)100質量部に対する、モノマー(S)の割合は、0.1~20質量部であることが好ましく、0.3~15質量部であることがより好ましく、1.0~10質量部であることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル(M)100質量部に対するモノマー(S)の割合が前記範囲内であれば、重合体(A)中の反応性ケイ素基の数をより制御しやすい。
【0037】
また、(メタ)アクリル酸エステル(M)1gに対する、モノマー(S)の割合(mmol/g)は、0.01~1.00mmol/gであることが好ましく、0.02~0.50mmol/gであることより好ましく、0.05~0.30mmol/gであることが特に好ましい。(メタ)アクリル酸エステル(M)1gに対する、モノマー(S)の割合が前記範囲内であれば、伸び特性が良好となりやすい。なお、前記の値は、仕込みのモノマー(S)の合計モル量(mmol)/仕込みの(メタ)アクリル酸エステル(M)の合計質量(g)で求めることができる。
【0038】
<開始剤(I)>
開始剤(I)は、少なくとも1つのハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物である。
開始剤(I)が有する少なくとも1つのハロゲン原子が脱離して炭素ラジカルが発生し、リビングラジカル重合にて重合が進行する。従って、開始剤(I)が有する「少なくとも1つハロゲン原子」とは、開始剤から脱離して、炭素ラジカルを生成しうるハロゲン原子のことを意味する。
【0039】
このようなハロゲン原子は、開始剤(I)中の炭素原子とイオン結合を形成している。すなわち、開始剤(I)中の炭素原子がカチオンの状態となり、ハロゲン原子はハロゲン化物イオンとして、前記炭素原子にイオン結合をしている。
ハロゲン原子は、ヨウ素原子であることが好ましい。すなわち、開始剤(I)は、有機ヨウ素化合物であることが好ましい。
【0040】
開始剤(I)が1つのハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物である場合、開始剤(I)上に1つの炭素ラジカルが生成し、前記炭素ラジカルと、(メタ)アクリル酸エステル(M)及びモノマー(S)から選択される少なくとも1つの単量体とが反応して、重合が進行する。また、開始剤(I)が2つのハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物である場合、開始剤(I)上に2つの炭素ラジカルが生成する。この場合、開始剤(I)の2か所の反応点(ラジカル)を起点として、均等かつ直鎖状に重合が進行していくと考えられる。
開始剤(I)が有するハロゲン原子の数は、1~4であることが好ましく、1~2であることがより好ましく、1つであることが特に好ましい。
【0041】
開始剤(I)は、分子内に硫黄原子を含まない有機ハロゲン化物とすることも可能である。開始剤(I)が分子内に硫黄原子を含まないことにより、得られる反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体を硬化性組成物とした際に、伸び特性及び繰り返し伸縮耐久性に優れた硬化物が得られやすくなる。
【0042】
開始剤(I)のハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はフッ素原子が挙げられる。このうち、フッ素原子、又はヨウ素原子が好ましく、ヨウ素原子が特に好ましい。開始剤(I)が2個以上のハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物である場合、2個以上のハロゲン原子は同じであってもよく、異なっていてもよい。また、開始剤(I)と有機触媒のハロゲン原子とは同じであってもよく、異なっていてもよい。開始剤(I)のハロゲン原子は有機触媒と同じハロゲン原子であることが好ましい。
【0043】
開始剤(I)の分子量は、48~800であることが好ましく、48~500であることがより好ましく、140~500であることが特に好ましい。なお、開始剤(I)の前記分子量は、化合物の分子式量から算出される計算値である。
【0044】
開始剤(I)の具体例としては、塩化メチル、塩化メチレン、クロロホルム、クロロエタン、ジクロロエタン、トリクロロエタン、ブロモメチル、ジブロモメタン、ブロモホルム、ブロモエタン、ジブロモエタン、トリブロモエタン、テトラブロモエタン、ブロモトリクロロメタン、ジクロロジブロモメタン、クロロトリブロモメタン、ヨードトリクロロメタン、ジクロロジヨードメタン、ヨードトリブロモメタン、ジブロモジヨードメタン、ブロモトリヨードメタン、ヨードホルム、ジヨードメタン、ヨウ化メチル、塩化イソプロピル、塩化t-ブチル、臭化イソプロピル、臭化t-ブチル、トリヨードエタン、ヨウ化エチル、ジヨードプロパン、ヨウ化イソプロピル、ヨウ化t-ブチル、ブロモジクロロエタン、クロロジブロモエタン、ブロモクロロエタン、ヨードジクロロエタン、クロロジヨードエタン、ジヨードプロパン、クロロヨードプロパン、ヨードジブロモエタン、ブロモヨードプロパン、2-ヨード-2-ポリエチレングリコシルプロパン、2-ヨード-2-アミジノプロパン、2-ヨード-2-シアノブタン、2-ヨード-2-シアノ-4-メチルペンタン、2-ヨード-2-シアノ4-メチル-4-メトキシペンタン、4-ヨード-4-シアノ-ペンタン酸、メチル-2-ヨードイソブチレート、2-ヨード-2-メチルプロパンアミド、2-ヨード-2,4-ジメチルペンタン、2-ヨード-2-シアノブタノール、シアノ-4-メチルペンタン、2-ヨード-2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド4-メチルペンタン、2-ヨード-2-メチル-N-(1,1-ビス(ヒドロキシメチル)-2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド4-メチルペンタン、2-ヨード-2-(2-イミダソリン-2-イル)プロパン、2-ヨード-2-(2-(5-メチル-2-イミダソリン-2-イル)プロパン、エチル-2-ヨードプロピオネート、エチル-2-ヨード-2-メチルプロピオネート、エチレングリコールビス(2-ヨードイソブチレート)、1,4-ジヨードオクタフルオロブタン、ジエチル2,5-ジヨードアジペート、2-ヨードイソブチロニトリル、2-ヨードイソペンタニトリル、2-ヨード-2,4-ジメチルペンタニトリル、フルオロヨードメタン、ジフルオロヨードメタン、トリフルオロヨードメタン、ヨードペンタフルオロエタン、ヘプタフルオロ-1-ヨードプロパン、ヘプタフルオロ-2-ヨードプロパン、1-ヨードノナフルオロブタン、2-ヨードノナフルオロブタン、1-ヨードパーフルオロヘキサン、2-ヨードパーフルオロヘキサン、3-ヨードパーフルオロヘキサン等が挙げられる。2-ヨードイソブチロニトリル、2-ヨードイソペンタニトリル、2-ヨード-2,4-ジメチルペンタニトリル、エチル-2-ヨードプロピオネート、エチル-2-ヨード-2-メチルプロピオネート、1-ヨードノナフルオロブタン又は1-ヨードパーフルオロヘキサンが好ましい。
【0045】
開始剤(I)は下式6で表される化合物を含むことが好ましい。
(R11)(R12)(R13)C-X1 ・・・式6
(式6中、X1はハロゲン原子を表し、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、又は炭素数5~10のヘテロアリール基を表す。これらアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基は置換基を有していてもよく、R11及びR12は同時に水素原子にはならない。R11及びR12の各基における前記炭素数は、各基が置換基を有する場合、置換基の炭素原子の数を含む。R13は、水素原子、ハロゲン原子、メチル基、シアノ基、カルボキシ基、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が酸素原子に結合したアルコキシ基がカルボニル基の炭素原子に直接結合したアルコキシカルボニル基、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基における2個以上の水素原子がハロゲン原子に置換されたポリハロアルキル基を表す。前記アルコキシ基は置換基を有していてもよく、置換基を有する場合、前記炭素数は置換基の炭素原子の数を含む。前記ポリハロアルキル基におけるハロゲン原子としては、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子、又はフッ素原子が挙げられ、塩素原子、ヨウ素原子、又はフッ素原子が好ましい。)
【0046】
式6において、X1はヨウ素原子が好ましく、R11及びR12は、それぞれ独立して、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、又は炭素数6~10のアリール基が好ましく、R13は、水素原子、メチル基、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が酸素原子に結合したアルコキシ基がカルボニル基の炭素原子に直接結合したアルコキシカルボニル基、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のポリフルオロアルキル基、又はシアノ基が好ましく、炭素数1~4の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基が酸素原子に結合したアルコキシ基がカルボニル基の炭素原子に直接結合したアルコキシカルボニル基、炭素数1~6の直鎖状又は分岐鎖状のポリフルオロアルキル基、又はシアノ基がより好ましい。
【0047】
式6で表される好ましい化合物の具体例としては、(CH3)2(CN)C-I、(CH3CH2)(CH3)(CN)C-I、((CH3)2CHCH2)(CH3)(CN)C-I、(CH3)(Ph)CH-I、(CH3CH2)-O-C(=O)-CH(CH3)-I、(CH3CH2)-O-C(=O)-C(CH3)2-I、CF3CF2CF2CF2-Iが挙げられる。(CH3)2(CN)C-I、(CH3CH2)(CH3)(CN)C-I、(CH3CH2)-O-C(=O)-CH(CH3)-I、(CH3CH2)-O-C(=O)-C(CH3)2-I、CF3CF2CF2CF2-Iがより好ましい。
【0048】
開始剤(I)は、エチレングリコールビス(2-ヨードイソブチレート)、1,4-ジヨードオクタフルオロブタン、ジエチル2,5-ジヨードアジペート又は前記式(3)で表される化合物であることが好ましく、エチレングリコールビス(2-ヨードイソブチレート)、1,4-ジヨードオクタフルオロブタン、(CH3)2(CN)C-I、(CH3CH2)(CH3)(CN)C-I、((CH3)2CHCH2)(CH3)(CN)C-I、(CH3CH2)-O-C(=O)-CH(CH3)-I、(CH3CH2)-O-C(=O)-C(CH3)2-I又はCF3CF2CF2CF2-Iであることがより好ましく、(CH3)2(CN)C-I、(CH3CH2)(CH3)(CN)C-I、(CH3CH2)-O-C(=O)-CH(CH3)-I、(CH3CH2)-O-C(=O)-C(CH3)2-I、CF3CF2CF2CF2-Iであることが特に好ましい。
開始剤(I)は1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0049】
開始剤(I)の配合量は、(メタ)アクリル酸エステル(M)の合計量(100質量部)に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。開始剤(I)の配合量を前記範囲内とすることにより、開始剤の失括による影響を抑えることで分子量を制御しやすくなる。
【0050】
開始剤(I)は、例えば、アゾ化合物を含むラジカル開始剤と、ハロゲンとを反応させて得られる。アゾ化合物であるラジカル開始剤と、ヨウ素とを反応させて、前記開始剤(I)を調製することが好ましい。
前記開始剤(I)の調製では、開始剤(I)を反応系中(in-situ)で調製しても良い。このように、反応系中で開始剤(I)を調製することにより、重合反応を制御しやすい。
【0051】
開始剤(I)を調製する工程は、(メタ)アクリル酸エステル(M)とモノマー(S)とを重合する工程の前に行われることが好ましい。すなわち、アゾ化合物を含むラジカル開始剤と、ハロゲンとを反応させて、開始剤(I)を調製し、前記開始剤(I)と有機触媒の存在下で、(メタ)アクリル酸エステル(M)及びモノマー(S)を重合することが好ましい。
【0052】
アゾ化合物のラジカル開始剤に対するハロゲンの添加量は、ラジカル開始剤1質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましく、0.05~10質量部であることがより好ましく、0.1~5質量部であることが特に好ましい。
アゾ化合物及びハロゲンの反応条件は、例えば、反応温度が40~150℃、好ましくは50~140℃であり、反応時間が0.1~10時間、好ましくは0.3~5時間とすることが可能である。
【0053】
開始剤(I)を得るためのアゾ化合物のラジカル開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル(以下、「AIBN」ともいう。)、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、2,2’-アゾビス-N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド、ジメチル-2,2’-アゾビス-2-メチルプロピオンアミド、1,1’-アゾビス-シクロヘキサン-1-カルボニトリルが挙げられる。反応系における溶解性の観点から、AIBN、2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリルが好ましい。
【0054】
<触媒(C)>
触媒(C)は、ハロゲン化第四級アンモニウム塩である。ハロゲン化第四級アンモニウム塩を触媒として使用することにより、ポリマー構造を制御しやすくなる。
【0055】
触媒(C)は、下式7で表される化合物であることが好ましい。
R18
4N+(X2)- ・・・式7
(式7中、R18は、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルコキシ基、炭素数6~10のアリール基、又は炭素数5~10のヘテロアリール基を表す。上記アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基はそれぞれ置換基を有していてもよく、置換基を有する場合、前記炭素数は置換基の炭素原子の数を含む。4つのR18は、互いに同一でも異なっていてもよい。また、X2は、ハロゲン原子を表す。)
【0056】
式7において、4つのR18は、それぞれ独立して、置換基を有していてもよい、炭素数1~10の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基であることが好ましい。また、X2は、前記開始剤(I)のハロゲン原子X1と同じであることが好ましい。X1とX2が、共にヨウ素原子であることがより好ましい。
【0057】
式7で表される化合物の中でも、下式5で表される化合物が好ましい。
R8
4N+I- ・・・式5
(式5中、R8は炭素数1~8のアルキル基であり、4つのR8は、互いに同一でも異なっていてもよい。)
【0058】
触媒(C)は、ヨウ化テトラメチルアンモニウム、ヨウ化テトラブチルアンモニウム、及びヨウ化テトラオクチルアンモニウムから選ばれる1種以上からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましく、ヨウ化テトラブチルアンモニウムを含むことがより好ましい。触媒(C)が、上記の化合物を含むことにより、ポリマー構造を制御しやすい。
【0059】
触媒(C)の量は、開始剤(I)の含有量100質量部に対して、0.1~50質量部であることが好ましく、0.3~20質量部であることがより好ましい。触媒(C)の量が、開始剤(I)の含有量100質量部に対して、0.1~50質量部であれば、重合体(A)のMw/Mnを制御しやすい。
【0060】
触媒(C)が、ヨウ化第四級アンモニウム塩である場合、(メタ)アクリル酸エステル(M)の100質量部に対して、ヨウ化第四級アンモニウム塩0.1~5.0重量部を添加して重合させることが好ましい。
触媒(C)の量が、(メタ)アクリル酸エステル(M)の100質量部に対して0.1~5.0質量部であれば、ポリマーの分子量を所望の範囲としやすい。
【0061】
<その他の成分>
重合体(A)の製造方法において、本発明の効果を損なわない範囲で、(メタ)アクリル酸エステル(M)及びモノマー(S))、開始剤(I)、及び触媒(C)以外のその他の成分を反応系に添加してもよい。
その他の成分としては、例えば、反応制御剤、溶媒が挙げられる。これらその他の成分は、必要に応じて、1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
【0062】
反応制御剤としては、例えば、ヨウ素、テトラブチルアンモニウムトリヨージドが挙げられる。このような反応制御剤を用いる場合、重合開始時に反応系に投入されることが好ましい。また、その量は、(メタ)アクリル酸エステル(M)10000モルに対して、0.5~5モルの範囲であることが好ましい。
溶媒としては、従来リビングラジカル重合で用いられる溶媒を、特に限定なく使用できる。
【0063】
<製造工程>
重合体(A)の製造方法において、モノマー(S)は、重合開始時及び重合途中のいずれか一方又は両方において反応系に添加することができる。
開始剤(I)として、1つのハロゲン原子を有する有機ハロゲン化物を用いて、重合体(A)を得る場合、複数回に分けて、モノマー(S)を反応系に添加することが好ましい。これにより、重合体(A)内に反応性ケイ素基を、間隔をおいて導入することができ、より良好な伸び特性を得ることができる。
【0064】
モノマー(S)は2回に分けて反応系に添加することが好ましい。すなわち、(メタ)アクリル酸エステル(M)と、モノマー(S)の少なくとも一部とを含む単量体混合物を、開始剤(I)及び触媒(C)の存在下で重合させ(工程(i))、次いで、残りのモノマー(S)を反応系に添加してさらに重合させる(工程(ii))ことが好ましい。
【0065】
モノマー(S)を2回に分けて反応系に添加する場合、1回目の添加は、反応開始時であることが好ましい。これにより、1回目に添加するモノマー(S)が導入される箇所と、2回目に添加するモノマー(S)が導入される箇所との間隔を充分に得ることができる。
【0066】
モノマー(S)を2回に分けて反応系に添加する場合、2回目の添加のタイミングは、(メタ)アクリル酸エステル(M)とモノマー(S)の合計の反応率が30~90mol%に達したときであることが好ましく、40~85mol%に達した時であることがより好ましく、50~80mol%に達したときであることが特に好ましい。
【0067】
2回目の添加を(メタ)アクリル酸エステル(M)とモノマー(S)の合計の反応率が30mol%以上に達したときとすることで、1回目に添加するモノマー(S)が導入される箇所と2回目に添加するモノマー(S)が導入される箇所との間隔を充分に得ることができる。
(メタ)アクリル酸エステル(M)とモノマー(S)の合計の反応率が90mol%以下に達したときとすることで、2回目に添加するモノマー(S)を充分に反応させることができる。
【0068】
反応率は、1H-NMRを用いて、単量体に相当するピーク面積の値と、重合体に相当するピーク面積の値とを、以下の式f2に当てはめて算出した値のことを指す。
反応率=(重合体のピーク面積)/((単量体のピーク面積の合計)+(重合体のピーク面積))×100 ・・・式f2
【0069】
(メタ)アクリル酸エステル(M)とモノマー(S)の合計の反応率とは、(メタ)アクリル酸エステル(M)とモノマー(S)の合計のピーク面積から算出した反応率を意味する。
(メタ)アクリレート重合体(A)の製造方法において、式f2における「((単量体のピーク面積の合計)+(重合体のピーク面積))」は、重合開始時における(メタ)アクリル酸エステル(M)のピーク面積とモノマー(S)のピーク面積の合計に対応する。
また、反応が進行したある時点での式f2における「((単量体のピーク面積の合計))」は、その時点で残存している(メタ)アクリル酸エステル(M)のピーク面積とモノマー(S)のピーク面積の合計に対応する。
【0070】
工程(i)と工程(ii)で投入するモノマー(S)は、同じであってもよく、異なっていてもよい。工程(i)で投入するモノマー(S)(重合開始時に反応系に投入されるモノマー(S))と、工程(ii)で投入するモノマー(S)(重合途中に反応系に投入されるモノマー(S))とは同じであることが好ましい。
【0071】
工程(i)及び(ii)を行う場合、工程(i)で投入する(メタ)アクリル酸エステル(M)の量は、開始剤(I)1モルに対して、10~1000モル当量であることが好ましく、50~500モル当量であることがより好ましい。また、モノマー(S)の投入量は、開始剤(I)1モルに対して、0.1~10モル当量であることが好ましく、0.3~8モル当量であることがより好ましい。
【0072】
工程(i)及び(ii)を行う場合、工程(ii)で投入するモノマー(S)の投入量は、開始剤(I)1モルに対して、0.01~5.00モル当量であることが好ましく、0.10~3.00モル当量であることがより好ましい。
工程(i)で投入するモノマー(S)と工程(ii)で投入するモノマー(S)の質量の比[i/ii]は、0.1~10.0であることが好ましく、0.2~5.0であることがより好ましく、1であることが特に好ましい。
【0073】
なお、(メタ)アクリル酸エステル(M)として2種以上の単量体を併用する場合、前記モル当量の値は、2種以上の(メタ)アクリル酸エステル(M)の合計量の値である。また、モノマー(S)においても(メタ)アクリル酸エステル(M)と同様に、2種以上のモノマー(S)を用いた場合の前記モル等量の値は2種以上のモノマー(S)の合計量の値である。
(メタ)アクリル酸エステル(M)とモノマー(S)の投入量が前記範囲内であれば、重合体(A)のMnを適切な範囲に調整しやすい。また、硬化性組成物の伸び特性が発現しやすい。
【0074】
工程(i)における重合温度は、重合の反応速度と分子量分布とを制御しやすい観点から、100~150℃であることが好ましく、110~140℃であることがより好ましい。また、工程(i)における重合時間は、(メタ)アクリル酸エステル(M)及びモノマー(S)の合計の反応率が30~90mol%となるまでの時間であれば特に限定されない。
【0075】
また、工程(ii)における重合温度は、工程(i)と同じく、重合の反応速度と分子量分布とを制御しやすい観点から、100~150℃であることが好ましく、110~140℃であることがより好ましい。工程(ii)における重合時間は、工程(i)及び(ii)で投入した全ての単量体の反応率により、適宜調整される。通常は、反応率が90mol%以上となるまでの時間である。
【0076】
(メタ)アクリル酸エステル(M)と、モノマー(S)とを重合させ、重合体(A)を含む溶液を得、前記溶液に含まれる溶媒を減圧除去することで、重合体(A)が得られる。重合体(A)を含む溶液について、溶液に含まれる溶媒を減圧除去する前に、精製してもよい。
精製方法としては、得られた重合体(A)を含む溶液を、精製溶媒で洗浄する方法が挙げられる。精製溶媒としては、その後の減圧工程において、容易に除去されやすいことから、メタノール、エタノール、イソプロパノールが挙げられる。
精製後、重合体(A)を含む溶液を、-101.3~-95kPaの減圧下、70~95℃で、1~4時間減圧乾燥することが好ましい。これらの工程を経て、重合体(A)を得ることができる。
【0077】
重合体(A)の製造方法は、リビングラジカル重合による重合方法である。リビングラジカル重合の中でも、可逆的錯体形成媒介重合(RCMP:Reversible Complexation Mediated Polymerization)であることが好ましい。可逆的錯体形成媒介重合は、モノマー(S)の種類や、モノマー(S)を投入するタイミングなどを調整しやすい観点で、重合体(A)を含む硬化性組成物から得られる硬化物の伸び特性や伸縮耐久性を所望の値に設計しやすい。
また、重合体(A)の製造方法は、重合後の触媒除去が不要であるため、副資材量を低減することができ、製造コスト的にも有利である。
【0078】
[重合体(A)]
本発明の重合体(A)は、上記の方法により得られ、従来の方法、例えば、特許文献4、5の方法で得られた重合体よりも、硬化性組成物とした際に、硬化物の伸び特性に優れている。
【0079】
重合体(A)は、反応性ケイ素基を含むブロック共重合体単位(P1)(以下、「単位(P1)」と記載する)と、反応性ケイ素基を含まないブロック共重合体単位(P2)(以下、「単位(P2)」と記載する)とを、構成単位として含んでいる。また、単位(P1)と単位(P2)とが、(P1)-(P2)-(P1)となる構造単位を含むことが好ましい。
【0080】
単位(P1)は、反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリル酸エステルを構成単量体として含む単位であることが好ましい。また、単位(P1)は、モノマー(S)と、(メタ)アクリル酸エステル(M)及びモノマー(S)から選択される少なくとも1つの単量体とが重合した、ブロック共重合体単位であることが好ましい。また、単位(P1)における反応性ケイ素基は、前述の式1で表される反応性ケイ素基と同じであり、好ましい例もまた同じである。
【0081】
単位(P2)は、反応性ケイ素基を有さない(メタ)アクリル酸エステルを主な構成単量体として含む単位であることが好ましい。単位(P2)は、(メタ)アクリル酸エステル(M)のみが重合した、ブロック共重合体単位であることが好ましい。
【0082】
重合体(A)は、式1で表される反応性ケイ素基を1分子あたり平均0.5個以上有する。式1で表される反応性ケイ素基の1分子あたり平均数は、0.8個以上であることが好ましく、0.9個以上であることがより好ましく、1.0個以上であることが特に好ましい。式1で表される反応性ケイ素基の1分子あたり平均数は、10.0個以下であることが好ましく、8.0個以下であることがより好ましく、6.0個以下であることが特に好ましい。
【0083】
重合体(A)の1分子あたりの反応性ケイ素基の平均数が、0.5個以上10.0個以下であれば、硬化性組成物の伸び物性がより良好となりやすい。
重合体1分子あたりの反応性ケイ素基の平均数は、1H-NMRにより、重合体中の反応性ケイ素基の濃度(mol/g)を測定し、以下の式f3から算出した値のことを指す。
重合体1分子あたりの反応性ケイ素基の平均数=(重合体中の反応性ケイ素基の濃度(mol/g))×(重合体の数平均分子量(Mn)) ・・・式f3
【0084】
重合体(A)のMnは、1,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、6,000以上であることがさらに好ましく、10,000以上であることが特に好ましい。
重合体(A)のMnは、300,000以下であることが好ましく、100,000以下であることがより好ましく、60,000であることがさらに好ましく、40,000以下であることが特に好ましい。
重合体(A)のMnが1,000~300,000であれば、硬化性組成物の作業性が良好となりやすい。
【0085】
重合体(A)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.0~3.0であることが好ましく、1.3~2.4であることがより好ましい。上記製造方法で得られた重合体(A)は、分子量分布の幅が狭く、低分子量成分が少ないという特徴を有しやすい。また、重合体(A)は、後述する反応性ケイ素基を有するオキシアルキレン重合体(B)との相溶性にも優れている。
【0086】
<オキシアルキレン重合体(B)>
オキシアルキレン重合体(B)(以下、単に「重合体(B)」という場合がある。)は、ポリオキシアルキレン鎖を骨格とし、ポリオキシアルキレン鎖の末端に式1で表される反応性ケイ素基を2個以上含む末端原子団を有し、シリル化率が50モル%超97モル%以下である。
【0087】
[ポリオキシアルキレン鎖]
重合体(B)の骨格を成すポリオキシアルキレン鎖は、活性水素を2個以上有する開始剤の残基と、環状エーテルの開環付加重合により形成される。
前記開始剤としては、水酸基を2個以上有する開始剤が好ましく、水酸基を2~6個有する開始剤がより好ましく、水酸基を2個又3個有する開始剤がさらに好ましい。
【0088】
水酸基を2個有する開始剤としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、低分子量のポリオキシプロピレングリコールが例示できる。
水酸基を3個以上有する開始剤としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、低分子量のポリオキシエチレントリオール、ポリオキシプロピレントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、シュクロースが例示できる。
【0089】
環状エーテルとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-ブチレンオキシド、2,3-ブチレンオキシド等のアルキレンオキシド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキシド以外の環状エーテルが例示できる。エチレンオキシド、プロピレンオキシドが好ましく、プロピレンオキシドがより好ましい。
【0090】
ポリオキシアルキレン鎖は2種以上のオキシアルキレン基を有する共重合鎖であってもよい。共重合鎖はブロック共重合鎖であってもよく、ランダム共重合鎖であってもよい。 重合体Aのポリオキシアルキレン鎖としては、ポリオキシプロピレン鎖、ポリオキシエチレン鎖、ポリ(オキシ-2-エチルエチレン)鎖、ポリ(オキシ-1、2-ジメチルエチレン)鎖、ポリ(オキシテトラメチレン)鎖、ポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)鎖、ポリ(オキシプロピレン・オキシ-2-エチルエチレン)鎖が例示できる。ポリオキシプロピレン鎖及びポリ(オキシエチレン・オキシプロピレン)鎖が好ましく、ポリオキシプロピレン鎖がより好ましい。
【0091】
重合体(B)の分子末端の数は、2~6個が好ましく、2個又は3個がより好ましく、2個がさらに好ましい。重合体(B)の分子末端の数は開始剤に存在する活性水素の数と同じである。
分子末端の数が2個である重合体(B)は、重合体(B)におけるポリオキシアルキレン鎖が直鎖状であることを意味する。直鎖状のポリオキシアルキレン鎖は活性水素を2個有する開始剤の残基と環状エーテルの開環付加重合により形成されたポリオキシアルキレン鎖を有し、2つの末端を有する。
【0092】
[末端原子団]
末端原子団は、重合体(B)の分子末端に存在し、上述したように、ポリオキシアルキレン鎖の酸素原子のうち、重合体(B)の分子末端に最も近い酸素原子を含み得る原子団である。重合体(B)は、末端原子団として、式1で表される反応性ケイ素基を2個以上含む末端原子団(以下「マルチ原子団」という場合がある。)を有する。末端原子団がマルチ原子団か否かは、GPCで測定した分子量と粘度より官能基数を確認し、1H-NMRで反応性ケイ素基に由来するプロトンのピークを測定し、ピーク強度から反応性ケイ素基の濃度を算出することにより確認できる。
【0093】
重合体(B)は、マルチ原子団として、下式2、下式3又は下式4で表される1以上を含むことが好ましい。末端原子団の構造は、例えば、29Si-NMRで測定することにより確認できる。
【0094】
【0095】
式2におけるR2,R3はそれぞれ独立に炭素数1~6の2価の連結基を示し、前記連結基中に存在する炭素原子に結合している原子は、炭素原子、水素原子、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子である。
R2,R3としては-CH2-、-C2H4-、-C3H6-、-C4H8-、-C5H10-、-C6H12-、-C(CH3)2-、-CH2O-、-CH2-O-CH2-、-CH2-O-CH2-O-CH2-、-C=C-、-C≡C-、-C(=O)-、-C(=O)-O-、-C(=O)-NH-、-CH=N-、-CH=N-N=CH-が例示できる。
R2は-CH2-O-CH2-、-CH2O-、-CH2-が好ましく、―CH2-O-CH2-がより好ましい。
R3は、-CH2-、-C2H4-が好ましく、-CH2-がより好ましい。
【0096】
式2におけるR4,R5は、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~10の1価の炭化水素基である。
前記炭化水素基としては、直鎖又は分岐の炭素数1~10のアルキル基が好ましい。
直鎖のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基が例示できる。
分岐のアルキル基としては、イソプロピル基、s-ブチル基、t-ブチル基、2-メチルブチル基、2-エチルブチル基、2-プロピルブチル基、3-メチルブチル基、3-エチルブチル基、3-プロピルブチル基、2-メチルペンチル基、2-エチルペンチル基、2-プロピルペンチル基、3-メチルペンチル基、3-エチルペンチル基、3-プロピルペンチル基、4-メチルペンチル基、4-エチルペンチル基、4-プロピルペンチル基、2-メチルヘキシル基、2-エチルヘキシル基、2-プロピルヘキシル基、3-メチルヘキシル基、3-エチルヘキシル基、3-プロピルヘキシル基、4-メチルヘキシル基、4-エチルヘキシル基、4-プロピルヘキシル基、5-メチルヘキシル基、5-エチルヘキシル基、5-プロピルヘキシル基が例示できる。
R4,R5はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基が好ましく、水素原子又はメチル基がより好ましい。
【0097】
式2におけるnは1~10の整数を示し、1~7が好ましく、1~5がより好ましく、1がさらに好ましい。
R1、X、aは、各々式1におけるR1、X、aと同一であり、複数のSiR1
3-aXaは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0098】
【0099】
式3、式4におけるR6は2価の連結基を示し、前記R6が有する2つの結合手は、それぞれ、前記連結基内の炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子に結合している。
ここで、R6が有する2つの結合手は、それぞれ、連結基内の炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子に結合しているとは、R6が有する2つの結合手が、それぞれ、連結基内の炭素原子、酸素原子、窒素原子、または硫黄原子上に存在することを意味する。
【0100】
R6の具体例としては、-(CH2)m-、-O-(CH2)m-、-S-(CH2)m-、-NR20-(CH2)m-、-O-C(=O)-NR20-(CH2)m-、および-NR20-C(=O)-NR20-(CH2)m-が挙げられる。
ここで、R20は、水素原子または炭素原子数1~10の炭化水素基である。R20としての炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、およびイソプロピル基などのアルキル基、フェニル基、およびナフチル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基が挙げられる。mとしては、0~10の整数が好ましく、0~5の整数がより好ましく、0~2の整数がさらに好ましく、0または1が特に好ましく、1が最も好ましい。
【0101】
R6としては、-O-(CH2)m-、-O-C(=O)-NR20-(CH2)m-、および-NR20-C(=O)-NR20-(CH2)m-が好ましく、-O-CH2-が原料が入手しやすいためより好ましい。
【0102】
式3、式4におけるR7は、それぞれ独立に、水素、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、またはシリル基である。
アルキル基の炭素原子数は、1~12が好ましく、1~6がより好ましく、1~4が特に好ましい。アリール基の炭素原子数は、6~12が好ましく、6~10がより好ましい。アラルキル基の炭素原子数は、7~12が好ましい。
【0103】
R7としては、具体的には、水素;メチル基、エチル基、およびシクロヘキシルなどのアルキル基;フェニル基、およびトリル基などのアリール基;ベンジル基、およびフェネチル基などのアラルキル基;トリメチルシリル基などのシリル基が挙げられる。これらの中では、水素、メチル基、およびトリメチルシリル基が好ましく、水素、およびメチル基がより好ましく、水素が原料が入手しやすいためさらに好ましい。
【0104】
式3において、同一の炭素原子に結合する2つのR7のうちの1つが、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、またはシリル基であって、式3における他の2つのR7が水素原子であるのも好ましい。
【0105】
式4において、2つのSiR1
3-aXaが結合する炭素原子に結合するR7が、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基、またはシリル基であって、式4における他の2つのR7が水素原子であるのも好ましい。
【0106】
式3、式4におけるR1、X、aは、各々式1におけるR1、X、aと同一であり、複数のSiR1
3-aXaは、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0107】
[シリル化率と活性水素含有基の数]
オキシアルキレン重合体(B)は、下式f1で表されるシリル化率が50モル%超97モル%以下である。1分子中に含まれる活性水素含有基の数が、平均して0.3個以下であることが好ましい。
【0108】
【0109】
式1で表される反応性ケイ素基の数、活性水素含有基の数、炭素-炭素二重結合の数、炭素-炭素三重結合の数は、各々1H-NMRにより測定できる。
【0110】
重合体(B)のMnは、4,000以上であることが好ましく、4,500以上であることがより好ましく、5,000以上であることがさらに好ましい。
重合体(B)のMnは、40,000以下であることが好ましく、35,000以下であることがより好ましく、30,000以下であることがさらに好ましい。
重合体(B)のMnが、4,000~40,000であれば、重合体(B)を含む硬化性組成物を硬化した際に、伸び特性と強度を両立した硬化物が得られやすい点で好ましい。
【0111】
重合体(B)の分子量分布(Mw/Mn)は、1.00~1.80であることが好ましく、1.05~1.20であることがより好ましい。Mw/Mnが1.00~1.80であれば、粘度が低く、作業性に優れやすい点で好ましい。
【0112】
[重合体(B)の製造方法]
重合体(B)は、開始剤の活性水素に環状エーテルを開環付加重合させたオキシアルキレン重合体(以下、「前駆重合体」ともいう。)の1つの末端に、式1で表される反応性ケイ素基を2個以上導入して得られる。
前駆重合体の1つの末端に、式1で表される反応性ケイ素基を2個以上導入する方法としては、前駆重合体の1つの末端に、不飽和基を2個以上導入した後、前記不飽和基とシリル化剤を反応させて反応性ケイ素基を導入する方法が好ましい。
【0113】
前駆重合体は、水酸基を有する開始剤に環状エーテルを開環付加重合させた、末端基が水酸基である水酸基含有オキシアルキレン重合体が好ましい。開始剤の水酸基の数と、水酸基含有オキシアルキレン重合体の水酸基の数は同じである。
特に、水酸基を2個有する開始剤に、環状エーテルを開環付加重合させた、主鎖が直鎖状である水酸基含有オキシアルキレン重合体が好ましい。
【0114】
前駆重合体の1つの末端に、不飽和基を2個以上導入する方法としては、前駆重合体にアルカリ金属塩を作用させた後、不飽和基を有するエポキシ化合物を反応させ、次いで不飽和基を有するハロゲン化炭化水素化合物を反応させる方法、又は、前駆重合体にアルカリ金属塩を作用させた後、炭素-炭素三重結合を有するハロゲン化炭化水素化合物を反応させる方法が好ましい。
【0115】
前駆重合体の1つの末端に導入した2個以上の不飽和基の各々にシリル化剤とを反応させて、各々式1で表される反応性ケイ素基を導入することにより、1つの末端に、式1で表される反応性ケイ素基を2個以上有する重合体(B)が得られる。
シリル化剤としては、不飽和基と反応して結合を形成し得る基(例えばスルファニル基)及び式1で表される反応性ケイ素基の両方を有する化合物、HSiR1
3-aXa(R1、X及びaは前記式1と同じ)で表されるヒドロシラン化合物が例示できる。
【0116】
重合体(B)の具体的な製造方法に特に限定はないが、例えば、特開2019-156883号公報、国際公開第2019/189492号等に記載の方法により製造することができる。
【0117】
<硬化性組成物の製造方法>
本発明の硬化性組成物の製造方法では、上記特定の製造方法で得られた重合体(A)と、反応性ケイ素基を2個以上含む末端原子団を有する、重合体(B)とを、混合する製造方法である。
【0118】
重合体(A)と重合体(B)を混合するにあたり、重合体(A)の質量と重合体(B)との質量の比[A/B]が、10/90~90/10となるように混合する。比[A/B]は10/90~90/10が好ましく、15/85~85/15がより好ましく、20/80~80/20がさらに好ましい。
比[A/B]が、10/90以上であることにより、機械強度や耐候性に優れやすい点で好ましい。比[A/B]が、90/10以下であることにより、粘度が低くなりやすく、作業性に優れやすい点で好ましい。
【0119】
本発明の硬化性組成物の製造方法においては、本発明の効果を損なわない範囲で、他の任意成分を配合してもよい。
他の任意成分としては、例えば、重合体(A)、重合体(B)以外の重合体、硬化触媒(シラノール縮合触媒)、硬化性化合物、充填剤、可塑剤、チクソ性付与剤、安定剤(酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等)、接着性付与剤、物性調整剤、粘着性付与樹脂、フィラーなどの補強材、表面改質剤、難燃剤、発泡剤、溶剤、シリケートが例示できる。
【0120】
重合体(A)、重合体(B)以外の重合体としては、例えば、反応性ケイ素基を有さない重合体、重合体(A)と異なる方法で製造された反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体が挙げられる。
反応性ケイ素基を有さない重合体としては、例えば、不飽和炭化水素重合体、(メタ)アクリレート重合体、オキシアルキレン重合体が挙げられる。
不飽和炭化水素重合体は、不飽和炭化水素単量体に基づく単位を含む重合体であり、ポリエチレン、ポリプロピレンが例示できる。
【0121】
(メタ)アクリレート重合体としては、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレートを含む単量体の重合体又は共重合体が例示できる。市販の(メタ)アクリレート重合体としては、ARUFON(登録商標) UP-1000、ARUFON UP-1110、ARUFON UP-1171(いずれも東亜合成(株)製)が例示できる。
【0122】
オキシアルキレン重合体としては、ポリエーテルポリオール(例えばポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコール)、上記ポリエーテルポリオールの水酸基を封止してエステル又はエーテルにした誘導体が例示できる。市販のオキシアルキレン重合体としては、プレミノール(登録商標)S3011、プレミノールS4012、プレミノールS4013F(いずれもAGC(株)製)が例示できる。
【0123】
これら反応性ケイ素基を有さない重合体の含有量は、重合体(A)及び重合体(B)の合計100質量部に対して、1~600質量部が好ましく、5~500質量部がより好ましく、10~300質量部がさらに好ましい。上記範囲内であると、硬化反応により得られる硬化物のモデュラスを適正な範囲に調整しやすく、伸び特性及び強度が良好な硬化物が得られやすい。
本発明の硬化性組成物は、重合体(A)以外の反応性ケイ素基を有する(メタ)アクリレート重合体を含まないことが好ましい。
【0124】
硬化性化合物、硬化触媒(シラノール縮合触媒)、充填剤、可塑剤、チクソ性付与剤、安定剤、接着性付与剤、物性調整剤、粘着性付与樹脂、フィラーなどの補強材、表面改質剤、難燃剤、発泡剤、溶剤、シリケート等は、それぞれ、国際公開第2013/180203号、国際公開第2014/192842号、国際公開第2016/002907号、特開2014-88481号公報、特開2015-10162号公報、特開2015-105293号公報、特開2017-039728号公報、特開2017-214541号公報などに記載される従来公知のものを、限定なく組み合わせて用いることができる。各成分は2種類以上を併用してもよい。
【0125】
1液型の硬化性組成物とする場合、重合体(A)、重合体(B)、及び他の任意成分すべてを混合して組成物とする。1液型の硬化性組成物とする場合、水分を含む配合成分を予め脱水乾燥する、又は混合中に減圧脱水することが好ましい。また、硬化性組成物に脱水剤を添加することも好ましい。
【0126】
主剤成分と硬化性成分とに分ける2液型の硬化性組成物とする場合、少なくとも反応性ケイ素基を有する成分(重合体(A)及び重合体(B)を含む。)は、主剤成分に含める。また、少なくとも硬化触媒は、硬化性成分に含める。主剤成分と硬化性成分とは、別々の容器にパッケージングされることが好ましい。
2液型の硬化性組成物とする場合、主剤成分を予め脱水乾燥することが好ましい。また、主剤成分に脱水剤を添加することも好ましい。
【0127】
<硬化物>
本発明の硬化物の製造方法は、本発明の製造方法で得られた硬化性組成物を硬化させて硬化物を得る方法である。
本発明の製造方法により得られた硬化性組成物は、特定の製造方法により得られた重合体(A)を含んでいる。そのため、この硬化性組成物から得られる硬化物は、伸び特性に優れる。
【0128】
そのため、得られる硬化物は、シーラント用(例えば建築用弾性シーリング材、複層ガラス用シーリング材、ガラス端部の防錆・防水用封止材、太陽電池裏面封止材、建造物用密封材、船舶用密封材、自動車用密封材、道路用密封材)、電気絶縁材料(電線・ケーブル用絶縁被覆材)、接着剤等の、伸び特性が要求される分野において、好適に利用できる。
【0129】
本発明の硬化物の製造方法において、硬化反応の条件に特に限定はなく、公知の方法で硬化させることができる。
硬化触媒としては、例えば、錫触媒に代表されるシラノール縮合触媒を使用できる。
【実施例0130】
以下に本発明を、実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されない。
【0131】
<測定方法等>
[数平均分子量および重量平均分子量]
以下の例における数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定することによって得られた、ポリスチレン換算分子量である。分子量分布(Mw/Mn)は、上記MnおよびMwの値からMw/Mnとして算出した。
【0132】
(GPCの測定条件)
使用機種:HLC-8220GPC(東ソー社製)
データ処理装置:SC-8020(東ソー社製)
使用カラム:TSKgel SuperHZ 4000(東ソー社製)の2本と、TSKgel SuperHZ 2500(東ソー社製)の2本を直列で連結して使用した。
カラム温度:40℃
検出器:RI
溶媒:テトロヒドロフラン
流速:0.35ml/分
試料濃度:0.5質量%
試料注入量:20μl
検量線作成用標準サンプル:ポリスチレン「EasiCal(登録商標) PS-2」、アジレント・テクノロジー株式会社製
【0133】
[重合体の粘度]
試料の1mLを採取し、E型粘度計(東機産業社製品名:RE80型)を用い、ローターNo.4の条件で粘度を測定した。校正用標準液としては、JS14000(日本グリース社製品名)を使用した。測定温度は25±2℃とした。
【0134】
[重合体の反応率]
重合体の反応率は、重合体を以下の条件にて1H-NMRにて測定して、モノマーに相当するピーク面積と、ポリマーに相当するピーク面積から以下のように求めた。
(反応率)={(ポリマーに相当するピーク面積/(モノマーに相当するピーク面積+ポリマーに相当するピーク面積))*100
【0135】
(1H-NMRの測定条件)
使用機種:JNM―ECZ400S FT-NMR(JEOL社製)
重溶媒:重クロロホルム
測定ポリマー濃度:約1~10wt%
積算回数:8回
【0136】
[重合体の1分子あたりの反応性ケイ素基の平均数の測定]
1H-NMRを用いて、重合体中の反応性ケイ素基の濃度(mol/g)を測定し、以下のように算出した。
重合体1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数=(重合体中の反応性ケイ素基の濃度(mol/g))×(重合体の数平均分子量(Mn))
【0137】
[水酸基換算分子量]
水酸基を有する開始剤にアルキレンオキシドを重合させたオキシアルキレン重合体(前駆重合体)の水酸基換算分子量は、JIS K 1557(2017年)に基づいて算出された水酸基価より、「56100/(オキシアルキレン重合体の水酸基価)×開始剤の活性水素の数」の式に基づいて算出した。
【0138】
[重合体(B)のシリル化率]
シリル化率は、式1で表される反応性ケイ素基の数、活性水素含有基の数、炭素-炭素二重結合の数、炭素-炭素三重結合の数は、各々1H-NMRにより測定できる。
【0139】
[重合体Aの副資材使用合計]
副資材(触媒、塩基、溶媒、吸着剤、添加剤などのポリマー重合の製造工程に使用するもので、重合したポリマーに構造上組み込まれない原料、未反応モノマーを含まない。)は、仕込み量から計算した。
【0140】
[90℃での粘度上昇率]
測定対象の重合体の粘度を測定した(以下、「初期粘度」という。)。
重合体(A)7.5g、重合体(B)7.5gを遊星式攪拌機で10分間均一混合した後、容量24mLのガラス瓶に移し、気相部を窒素で置換して密閉し、90℃の恒温槽内に静置した。静置してから1週間後の混合物を恒温槽から取り出し、室温となるまでさらに静置し、次いで、粘度を測定した(以下、「促進試験後の粘度」という。)。下式により粘度上昇率を算出した。
粘度上昇率(単位:%)=[((促進試験後の粘度)-(初期粘度))/(初期粘度)]×100
【0141】
[硬化性組成物の評価]
被着体として、表面にプライマー(製品名「MP-2000」、セメダイン(株)製)を塗工した表面陽極酸化アルミニウム板を使用し、JIS A 1439(2016年)に準拠して各例の硬化性組成物からH型試験体を作成し、伸び特性試験を行った。
【0142】
具体的には、作製したH型試験体を温度23℃、湿度50%で7日間養生し、更に温度50℃、湿度65%で7日間養生を行った。この作成条件を「標準」と示す。得られた硬化物について、テンシロン試験機にて引張物性の測定(H型試験)をし、50%伸張した時の応力(M50、単位:N/mm2)、最大点伸び(Emax、単位:%)、最大点凝集力(Tmax、単位:N/mm2)を測定した。
【0143】
得られた硬化物について、テンシロン試験機にて引張物性の測定(H型試験)をし、50%伸張した時の応力(M50、単位:N/mm2)、最大点伸び(単位:%)、最大点凝集力(単位:N/mm2)を測定した。M50の値は小さいほど柔軟性が高く、最大点伸びの値は大きいほど伸びが良く、最大点凝集力の値は大きいほど引張強度が高い。
【0144】
<重合体(A)合成例>
[重合体A1の合成]
還流管、攪拌機、温度計を装着した2Lフラスコに、アクリル酸ブチル(以下、「BA」と記載する)800g、アクリル酸ラウリル(以下、「LA」と記載する)100g、アクリル酸ステアリル(以下、「StA」と記載する)100gを仕込んだ。次いで、1-ヨードノナフルオロブタン(以下、「C4F9-I」と記載する)27g、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン(以下、「MPDMS」と記載する)10.4g、ヨウ化テトラブチルアンモニウム(以下、「BNI」と記載する)10.5gをそれぞれ仕込んだ。次いで、フラスコ内を窒素置換したのち、反応系を撹拌しながら、内温を130℃として6時間重合した。重合開始から6時間後の反応率は72mol%であった。次いで、MPDMS10.4gを加えて、さらに130℃で4時間重合させた。得られた重合体の反応率は91mol%であった。次いで、酢酸ブチル12.5gに2,2’-アゾビス-2-メチルブチロニトリル(製品名:「V-59」、富士フィルム和光純薬(株)製)6.2gを溶解させた溶液を、ポリマー溶液に2時間かけて滴下した。滴下後の得られた重合体の反応率は99mol%であった。その後、減圧度0.3kPa、95℃で2時間減圧乾燥し、重合体A1を得た。
【0145】
得られた重合体A1の1kgモノマー(BA、LA、StAの合計量であり、以下同様。)仕込み当たりの副資材使用量の合計は23gであり、重合体A1のMnは15,500、Mw/Mnは2.26、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は1.4個であった。重合後のポリマー粘度を測定した結果、25℃において64Pa・sであった。
【0146】
[重合体A2の合成]
前記重合体(A1)に、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル(製品名:「サンソサイザーEP-S」、新日本理化(株)製)70gを添加し、90℃で1時間攪拌し、重合体A2を得た。
【0147】
得られた重合体A2の1kgモノマー仕込み当たりの副資材使用量の合計は93gであり、重合体A2のMnは15,500、Mw/Mnは2.26、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は1.4個であった。ポリマー粘度を測定した結果、25℃において60Pa・sであった。
【0148】
[重合体A3の合成]
還流管、攪拌機、温度計を装着した2Lフラスコに、CuBr8.4gを仕込み、反応容器内を窒素置換した。次に、アセトニトリル88gを加え、オイルバス中70℃で30分間攪拌した。これにBA160g、LA20g、StA20g、2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル17.6g、ペンタメチルジエチレントリアミン(以下、「PMEDTA」と記載する)0.34gを加え、反応を開始した。70℃で加熱攪拌しながら、BA640g、LA80g、StA80g、PMEDTA1.16gを連続的に添加した。モノマー反応率が96mol%に達した時点で残モノマー、アセトニトリルを70℃で脱気した。得られたポリマーに対し、1,7-オクタジエン107gを添加し、更にアセトニトリル264gを加え、PMEDTA3.4gを追加し、引き続き70℃で加熱攪拌した。10時間後、反応混合物を70℃で加熱脱気し、残モノマー、アセトニトリルを除去した。これをトルエン1000gに希釈し、活性アルミナ1000g充填したカラムに通すことで重合触媒を除去した。重合体溶液を濃縮し、重合体を1000gのメチルシクロヘキサンに溶解させ、キョーワード500SH 10g/キョーワード700SEN-S 10g(共に協和化学(株)製)を加え、6vol%酸素・窒素混合ガス雰囲気下で加熱攪拌し、フィルター濾過することで不溶固形分を除去した。その後、180℃で6時間加熱脱気(減圧度0.3KPa)し、この重合体に、ジメトキシメチルシラン2.6g、オルトギ酸メチル0.86g、[ビス(1,3-ジビニル-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン)]白金錯体触媒のキシレン溶液0.04g(以下、「白金触媒」と記載する)(白金として重合体1kgに対して10mg)を混合し、窒素雰囲気下、80℃で1時間加熱攪拌し、重合体A3を得た。
【0149】
得られた重合体A3の1kgモノマー仕込み当たりの副資材使用量の合計は3386gであり、重合体A3のMnは26,600、Mw/Mnは1.67、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は1.6個であった。精製後のポリマー粘度を測定した結果、25℃において161Pa・sであった。
【0150】
[重合体A4の合成]
還流管、攪拌機、温度計を装着した2Lフラスコに、CuBr8.4gを仕込み、反応容器内を窒素置換した。アセトニトリル88gを加え、オイルバス中70℃で30分間攪拌した。これにBA160g、LA20g、StA20g、2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル35.1g、PMEDTA1.4gを加え、反応を開始した。70℃で加熱攪拌しながら、BA640g、LA80g、StA80g、PMEDTA5.4gを連続的に添加した。モノマー反応率が95mol%に達した時点で残モノマー、アセトニトリルを70℃で脱気した。得られたポリマーに対し、1,7-オクタジエン215gを添加し、更にアセトニトリル352gを加え、PMEDTA6.8gを追加し、引き続き70℃で加熱攪拌した。10時間後、反応混合物を70℃で加熱脱気し、残モノマー、アセトニトリルを除去した。これを酢酸ブチル1000gに希釈し、濾過助剤ラヂオライト900(林化成(株)製)10g充填したカラムに通すことで重合触媒を除去した。重合体溶液にキョーワード500SH 10g/キョーワード700SEN-S 10gを加え、6vol%酸素・窒素混合ガス雰囲気下で加熱攪拌し、フィルター濾過することで不溶固形分を除去した。その後、180℃で6時間加熱脱気(減圧度0.3KPa)し、ジメトキシメチルシラン3.5g、オルトギ酸メチル0.86g、白金触媒0.04gを混合し、窒素雰囲気下、115℃で1時間加熱攪拌し、重合体A4を得た。
【0151】
得られた重合体A4の1kgモノマー仕込み当たりの副資材使用量の合計は1487gであり、重合体A4のMnは14,700、Mw/Mnは1.46、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は1.5個であった。精製後のポリマー粘度を測定した結果、25℃において52Pa・sであった。
【0152】
[重合体A5の合成]
還流管、攪拌機、温度計を装着した2Lフラスコに、BA160g、LA20g、StA20g、変性エタノール81.6g(日本アルコール販売株式会社製)、2,5-ジブロモアジピン酸ジエチル35.1gを入れ、窒素バブリングをしつつ、30分間攪拌を実施し均一溶液とした。別の攪拌容器を用意し、その容器内でCuBr253mg、ヘキサメチルトリス(2-アミノエチル)アミン(以下、「Me6TREN」と記載する)53mg、トリエチルアミン24mg、変性エタノール1.87gを仕込み、窒素気流下で均一な「CuBr2溶液」になるまで攪拌を行った。さらに別の攪拌容器を用意し、その容器内で変性エタノール100g、アスコルビン酸15g、トリエチルアミン17.2gを窒素気流下で30分間攪拌し、均一な「アスコルビン酸溶液」とした。2Lフラスコに調整した「CuBr2溶液」を入れ、10分間攪拌を行い内温が65℃以上になったところで、「アスコルビン酸溶液」を滴下開始することで、重合反応を開始した。重合反応が開始し、重合熱によって内温が75℃に到達した時点で、別途、30分間窒素バブリングを実施していたBA640g、LA80g、StA80gの滴下を開始した。滴下速度は、90分間で追加モノマーの全量800gが丁度滴下されるように調整した。「アスコルビン酸溶液」を断続的に滴下しつつも、80℃以下になるように内温調整をし、モノマー反応率が97mol%に達したところで、アスコルビン酸滴下を一旦終了した。それまでに添加したアスコルビン酸溶液は全モノマー仕込み重量に対して1.6gであった。次に、別の容器でビニルジメトキメチルシシラン386.8g、CuBr2363mg、Me6TREN363mg、トリエチルアミン164mg、変性エタノール12.9gを仕込み、10分間窒素雰囲気下で混合攪拌し、均一な「CuBr2溶液」を調整した。調整した「CuBr2溶液」を2Lフラスコに加え、窒素雰囲気下、内温が60℃~80℃になるように調整しつつ、「アスコルビン酸溶液」61.7gを7時間かけて滴下した。6vol%酸素・窒素混合ガス雰囲気下、20分間、60℃~80℃で加熱攪拌した後、この溶液に変性エタノール918gを追加混合し、均一溶液とした。さらに、キョーワード500SH10g、キョーワード700SEN-S10gを添加し、窒素雰囲気下80℃条件下で1時間加熱攪拌し、フィルター濾過することで不溶固形分を除去し、重合体A5を得た。
【0153】
得られた重合体A5の1kgモノマー仕込み当たりの副資材使用量の合計は1099gであり、重合体A5のMnは15,100、Mw/Mnは1.45、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は1.3個であった。精製後のポリマー粘度を測定した結果、25℃において52Pa・sであった。
【0154】
[重合体A6の合成]
還流管、攪拌機、温度計を装着した2Lフラスコに、BA160g、LA20g、StA20gを加え、窒素バブリングをしつつ、30分間攪拌を実施し均一溶液とした。別の攪拌容器を用意し、そこにCuBr220mg、Me6TREN20mg、変性メタノール0.61gを仕込み、窒素気流下で30分間攪拌し、均一な「CuBr2溶液」とした。さらに別の攪拌容器を用意し、そこに変性メタノール30mg、アスコルビン酸1g、トリエチルアミン1.17gを窒素気流下で30分間攪拌し、均一な「アスコルビン酸溶液」とした。窒素気流下において、2Lフラスコ内温を55℃に設定し、変性メタノール154g、α-ブロモ酪酸エチル9.3g、MPDMS13.9g、上記で調整した「CuBr2溶液」を入れ、30分間攪拌し、均一溶液とした。次に、内温が50℃以上になったところで、上記で調整していた「アスコルビン酸溶液」1.93gを連続滴下し、重合反応を開始した。モノマーの反応率が81mol%に達した時点で、窒素バブリングをしたBA640g、LA80g、StA80g混合液を90分間かけて、さらに連続滴下した。滴下終了後、モノマー反応率98mol%に達するまで重合を行った。次に、MPDMS15.3gを添加し、「アスコルビン酸溶液」0.27gを1.5時間連続滴下した。内温を80℃に変更し、加熱脱気(減圧度0.3KPa)し、溶媒を留去した。これに酢酸ブチル1000gを添加し、均一溶液になるまで加熱混合攪拌した。このポリマー溶液に対して、吸着剤とキョーワード500SH10g、キョーワード700SEN-S10gを添加し、6vol%酸素・窒素混合ガス雰囲気下で加熱攪拌し、フィルター濾過することで不溶固形分を除去し、重合体A6を得た。
【0155】
得られた重合体A6の1kgモノマー仕込み当たりの副資材使用量の合計は1177gであり、重合体A6のMnは15,200、Mw/Mnは1.38、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は1.6個であった。精製後のポリマー粘度を測定した結果、25℃において48Pa・sであった。
【0156】
[重合体A7の合成]
前記重合体A6に、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル30gを添加し、90℃で1時間攪拌し、重合体A7を得た。
得られた重合体A7の1kgモノマー仕込み当たりの副資材使用量の合計は1207gであり、重合体A7のMnは15,200、Mw/Mnは1.38、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は1.6個であった。ポリマー粘度を測定した結果、25℃において44Pa・sであった。
【0157】
[重合体A8の合成]
還流管、攪拌機、温度計を装着した2Lフラスコに、BA160g、LA20g、StA20gを加え、窒素バブリングをしつつ、30分間攪拌を実施し均一溶液とした。別の攪拌容器を用意し、そこにCuBr220mg、Me6TREN20mg、変性メタノール0.61gを仕込み、窒素気流下で30分間攪拌し、均一な「CuBr2溶液」とした。さらに別の攪拌容器を用意し、そこに変性メタノール30mg、アスコルビン酸1g、トリエチルアミン1.17gを窒素気流下で30分間攪拌し、均一な「アスコルビン酸溶液」とした。窒素気流下において、2Lフラスコ内温を55℃に設定し、変性メタノール154g、α-ブロモ酪酸エチル9.3g、MPDMS13.9g、上記で調整した「CuBr2溶液」を入れ、30分間攪拌し、均一溶液とした。次に、内温が50℃以上になったところで、上記で調整していた「アスコルビン酸溶液」1.93gを連続滴下し、重合反応を開始した。モノマーの反応率が81mol%に達した時点で、窒素バブリングをしたBA640g、LA80g、StA80g混合液を90分間かけて、さらに連続滴下した。滴下終了後、モノマー反応率98mol%に達するまで重合を行った。次に、MPDMS15.3gを添加し、「アスコルビン酸溶液」0.27gを1.5時間連続滴下した。この溶液に、4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸ジ2-エチルヘキシル30gを添加し、90℃で1時間攪拌し、重合体A8を得た。
【0158】
得られた重合体A8の1kgモノマー仕込み当たりの副資材使用量の合計は187gであり、重合体A8のMnは19,800、Mw/Mnは2.18、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は1.5個であった。ポリマー粘度を測定した結果、25℃において129Pa・sであった。
【0159】
[重合体A9の合成]
BA800g、LA100g、StA100gと、前記モノマー1000gに対して、MPDMSを24g、2,2’-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル(製品名:「V-65」、富士フィルム和光純薬(株)製)を20.0g混合し、「モノマー混合溶液」を調製した。窒素雰囲気下、70℃に加熱したトルエン154g中に、攪拌しながら「モノマー混合溶液」を2時間かけて滴下して反応させ、さらに2時間、70℃に保ちながら反応させた。次いで、減圧度0.3KPaまで減圧しながら、125℃まで内温を昇温し、2時間脱気して、未反応モノマーや溶媒を除去し、重合体A9を得た。
【0160】
得られた重合体A9のモノマー反応率は99mol%であった。得られた重合体A9の1kgモノマー仕込み当たりの副資材使用量の合計は154gであり、Mnは13,500、Mw/Mnは2.38、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は1.4個であった。重合後のポリマー粘度を測定した結果、25℃において48Pa・sであった。
【0161】
<重合体(B)合成例>
[重合体B1の合成]
Mnが2,000で、末端水酸基を2個有するポリオキシプロピレングリコールを開始剤として使用し、配位子がt-ブチルアルコールの亜鉛ヘキサシアノコバルテート錯体(以下、「TBA-DMC触媒」と記載する)を触媒として使用してプロピレンオキシドを重合し、ポリオキシプロピレンを得た。ポリオキシプロピレンは、両末端に水酸基を有し、水酸基換算分子量は15,000であった。
【0162】
得られたポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.15モル当量のナトリウムメトキシドの濃度が28質量%であるメタノール溶液を添加した。減圧下でメタノールを留去した後、ポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.05モル当量のアリルグリシジルエーテルを添加し、130℃で2時間反応させた。その後、0.28モル当量のナトリウムメトキシドのメタノール溶液を添加してメタノールを除去し、さらに2.10モル当量の塩化アリルを添加して130℃で2時間反応を行い、末端基をアリル基に変換し、減圧下で系中から未反応の塩化アリルを除去し、主鎖末端にアリル基を有するアリル基末端オキシアルキレン重合体を得た。系中には、副生塩としてNaClが含まれていた。次いで、副生塩であるNaCl含むアリル基末端オキシアルキレン重合体の100質量部に対して、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合体を1質量部、及び水を5質量部加え、窒素雰囲気下、液温80℃で撹拌混合して、副生塩であるNaClを水で抽出した。続いて、反応器内に窒素を流しながら、80℃に加温し5時間保持して水分を蒸発させてNaClの結晶を析出させた後、ろ過し、得られたろ液を減圧下で脱水して、主鎖末端にアリル基が導入されたポリオキシプロピレン重合体(重合体Q1)を得た。重合体Q1の1つの主鎖末端に導入されたアリル基は平均2.0個であった。
【0163】
さらに、白金ジビニルジシロキサン錯体の存在下、重合体Q1のアリル基に対して0.80モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下で除去し、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入された重合体B1を得た。
得られた重合体B1のMnは23,000、Mw/Mnは1.07、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は3.2個、シリル化率は80%であった。
【0164】
[重合体B2の合成]
重合体B1と同様にして重合体Q1を得た後、白金ジビニルジシロキサン錯体の存在下、重合体Q1のアリル基に対して0.60モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下で除去し、ジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入された重合体B2を得た。
得られた重合体B2のMnは23,000、Mw/Mnは1.07、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は2.4個、シリル化率は60%であった。
【0165】
[重合体B3の合成]
Mnが2,000で、末端水酸基を2個有するポリオキシプロピレングリコールを開始剤として使用し、TBA-DMC触媒を触媒として使用してプロピレンオキシドを重合し、ポリオキシプロピレンを得た。ポリオキシプロピレンは、両末端に水酸基を有し、水酸基換算分子量は15,000であった。得られたポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.15モル当量のナトリウムメトキシドの濃度が28質量%であるメタノール溶液を添加した。減圧下でメタノールを留去した後、ポリオキシプロピレンの水酸基に対して1.2モル当量の臭化プロパルギルを添加し、130℃で2時間反応させた。主鎖末端にプロパルギル基を有するプロパルギル基末端オキシアルキレン重合体を得た。系中には、副生塩としてNaBrが含まれていた。
【0166】
次いで、副生塩であるNaBrを含むプロパルギル基末端オキシアルキレン重合体の100質量部に対して、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロック共重合体を1質量部、及び水を5質量部加え、窒素雰囲気下、液温80℃で撹拌混合して、副生塩であるNaBrを水で抽出した。続いて、反応器内に窒素を流しながら、80℃に加温し5時間保持して水分を蒸発させてNaBrの結晶を析出させた後、ろ過し、得られたろ液を減圧下で脱水して、主鎖末端にプロパルギル基が導入されたポリオキシプロピレン重合体(重合体Q2)を得た。重合体Q2の1つの主鎖末端に導入されたプロパルギル基は平均1.0個であった。
【0167】
さらに、白金ジビニルジシロキサン錯体の存在下、重合体Q2のプロパルギル基に対して1.60モル当量のジメトキシメチルシランをシリル化剤として添加し、70℃にて5時間反応させた後、未反応のジメトキシメチルシランを減圧下で除去し、反応性ケイ素基としてジメトキシメチルシリル基が主鎖末端に導入された重合体B3を得た。
得られた重合体B3のMnは22,000、Mw/Mnは1.08、1分子当たりの反応性ケイ素基の平均数は3.2個、シリル化率は80%であった。
【0168】
<共通成分>
上記合成例で得た重合体以外に、共通成分として以下の原料を使用した。
[充填剤]
Visolite(登録商標) EL-20:膠質炭酸カルシウム(白石工業(株)製品名)。
ホワイトン(登録商標)SB:重質炭酸カルシウム(白石カルシウム工業(株)製品名)。
R-820:酸化チタン(石原産業(株)製品名)。
バルーン80GCA:有機バルーン(松本油脂(株)製品名)。
【0169】
[可塑剤]
EXCENOL-3020:PPG可塑剤、1分子当たり水酸基を2個有し、水酸基換算分子量が3,000であるオキシアルキレン重合体(AGC(株)製品名)。
ARUFON UP-1110:アクリル可塑剤、Mnが1,500のアクリルポリマー(東亜合成(株)製)。
重合体T:下記[重合体Tの合成]で合成したもの。
サンソサイザー(登録商標)EPS:4,5-エポキシシクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸-ジ-2-エチルヘキシル(新日本理化(株)製品名)。
【0170】
[安定剤]
IRGANOX(登録商標)-1135(酸化防止剤):ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製品名)。
Tinuvin(登録商標)-765(光安定剤):ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)デカンジオアートの混合物(BASF社製品名)。
LA-63P(光安定剤):1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ビペリジノールおよび3,9-ビス(2-ヒドロキシ-1,1-ジメチルエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカンとの混合エステル化合物(製品名:「アデカスタブ(登録商標)LA-63P」、ADEKA(株)製)。
Tinuvin-326(紫外線吸収剤):2-(2’-ヒドロキシ-3’-t-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール(BASF社製品名)。(アミン化合物)。
【0171】
[揺変剤]
ディスパロン(登録商標)#6500:脂肪酸アマイドワックス(楠本化成(株)製品名)。
[脱水剤]
KBM-1003:ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製品名)。
【0172】
[接着性付与剤]
KBM-403:3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製品名)。
KBM-603:3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(信越化学工業(株)製品名)。
【0173】
[アミン化合物]
ラウリルアミン:試薬、純正化学(株)製。
ファーミン(登録商標)CS:ココナットアミン(花王(株)製品名)。
EH-235R-2:ケチミン化合物(ADEKA(株)製品名)。
[酸素硬化性化合物]
桐油:木村商事(株)製。
【0174】
[光硬化性化合物]
M-309:トリメチロールプロパントリアクリレート(製品名:「アロニックス(登録商標)M-309」、東亜合成(株)製品名)。
[硬化触媒]
SCAT-32A:ジブチル錫(メトキシ)モノアルキルマレート(日東化成(株)製品名)。
【0175】
[重合体Tの合成]
n-ブタノールにPOを開環付加重合させて得られたポリオキシプロピレンモノオール(水酸基換算分子量2000)を開始剤として用いた。
開始剤384gと、PO594gを、TBA-DMC触媒0.05gの存在下、120℃で、反応系の圧力が低下しなくなるまで反応させ、ポリオキシプロピレン鎖の末端に水酸基を1分子当たり1個有する前駆重合体(T’)を得た(Mw8100、Mn6900、Mw/Mn1.17)。
【0176】
前駆重合体(T’)に、該前駆重合体(T’)の水酸基に対して1.05倍モルのナトリウムメトキシドを含むメタノール溶液を添加してアルコキシド化した後、加熱減圧してメタノールを留去した。そして、前駆重合体(T’)の水酸基に対して過剰モル当量の塩化アリルを添加して反応させ、ポリオキシプロピレン鎖の末端にアリル基を1分子当たり1個有する前駆重合体(T’’)を得た。
【0177】
次に、塩化白金酸六水和物の存在下、前駆重合体(T’’)のアリル基に対して0.85倍モル当量(シリル化率85モル%)のジメトキシメチルシランを添加し、70℃で5時間反応させ、ポリオキシプロピレン鎖の片末端に反応性シリル基を有する重合体Tを得た(1分子当たりの反応性シリル基の平均個数0.85個)。
【0178】
<硬化性組成物の製造と評価>
表1に示す配合量(単位:質量部)の各重合体及び表2に示す配合量(単位:質量部)の共通成分を添加して、遊星式攪拌機で均一混合し硬化性組成物を調製した。得られた硬化性組成物の硬化物の伸び特性を評価した。結果を表1に示す。なお、表2に示す配合は、重合体(A)及び重合体(B)の合計100質量部に対する値(単位:質量部)である。
【0179】
【0180】
【0181】
表1において、以下の評価基準で評価を行った。
[重合体(A)の副資材使用合計]
○:重合体(A)の副資材使用合計がモノマー仕込み量1Kg当たり100(g)未満。
△:重合体(A)の副資材使用合計がモノマー仕込み量1Kg当たり100(g)以上、500(g)未満。
×:重合体(A)の副資材使用合計モノマー仕込み量1Kg当たりが500(g)以上。
【0182】
[90℃での粘度上昇率]
○:90℃での粘度上昇率が120%以下。
×:90℃での粘度上昇率が120%超、又はゲル化。
【0183】
[Emax]
○:Emaxが500%以上。
×:Emaxが500%未満。
【0184】
[M50]
○:M50が0.08N/mm2以上。
×:M50が0.08N/mm2未満。
【0185】
[Tmax]
○:Tmaxが0.40N/mm2以上。
×:Tmaxが0.40N/mm2未満。
【0186】
表1に示すように、実施例で得られた硬化性組成物の硬化物は、何れも良好な伸び特性を示した。また、重合体の90℃粘度上昇率も抑制されていた。さらに、重合体(A)を得る際の副資材使用量も低かった。