(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021189
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ポリマー、該ポリマー及び溶媒を含む非感光性絶縁膜形成組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 65/40 20060101AFI20240208BHJP
C08F 290/14 20060101ALI20240208BHJP
H01B 3/30 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
C08G65/40
C08F290/14
H01B3/30 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022123851
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】菅原 峻
(72)【発明者】
【氏名】安達 勲
【テーマコード(参考)】
4J005
4J127
5G305
【Fターム(参考)】
4J005AA24
4J005BA00
4J127AA01
4J127AA03
4J127BB041
4J127BB081
4J127BB191
4J127BC031
4J127BC131
4J127BD211
4J127BF241
4J127BF24Y
4J127BG051
4J127BG05X
4J127BG141
4J127BG14X
4J127BG311
4J127BG31X
4J127CB301
4J127CC291
4J127EA03
4J127FA37
5G305AA06
5G305AB10
5G305BA04
5G305CA27
5G305CA32
5G305CA54
5G305CC02
5G305CC04
5G305CD01
5G305CD05
5G305CD12
5G305DA22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】低比誘電率化や低誘電正接化を達成できる非感光性絶縁膜形成組成物に有用なポリマー、該ポリマーを含む非感光性絶縁膜形成組成物、及び該組成物から得られる非感光性樹脂膜を提供すること。
【解決手段】下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー、該ポリマー及び溶媒を含む非感光性絶縁膜形成組成物。
[式中、Xは特定のフェノール化合物の残基を表し、Ar
Nは、特定含窒素複素環からなる群から選択される一種又は二種以上の2価の有機基を表す。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー。
【化28】
[式中、Xは下記式(2a)又は式(2b)で表される2価の有機基を表し、
【化29】
式中、Ar
Nは、下記式(2c)~(2f):
【化30】
からなる群から選択される一種又は二種以上の2価の有機基を表す。
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は炭化水素基を表し、これら四つの炭化水素基の炭素数の合計が13~80であり、*は酸素原子との結合手を表す。)]
【請求項2】
式(2a)及び(2b)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に炭素数4以上の炭化水素基を表す、請求項1に記載のポリマー。
【請求項3】
前記式(1)で表される繰り返し単位構造の少なくとも一部が、下記式(1-1)で表わされる、請求項1に記載のポリマー。
【化31】
(式中、Xは請求項1の定義と同じである。)
【請求項4】
前記炭素数4以上の炭化水素基は、炭素数4~20のアルキル基、又は炭素数1~10のアルキル基を少なくとも1つ有するアリール基である、請求項2に記載のポリマー。
【請求項5】
さらに下記式(3)で表される繰り返し単位構造を有する、請求項1に記載のポリマー。
【化32】
(式中、Zは単結合又は2価の有機基を表し、Ar
Nは請求項1の定義と同じである。)
【請求項6】
前記式(3)で表される繰り返し単位構造の少なくとも一部が、下記式(3-1)で表わされる、請求項5に記載のポリマー。
【化33】
(式中、Zは請求項5の定義と同じである。)
【請求項7】
前記式(3)において、Zは下記式(4a)乃至式(4m)からなる群から選択される一種又は二種以上の2価の基を表す、請求項5に記載のポリマー。
【化34】
(式中、黒丸「・」はベンゼン環との結合手を表す。)
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか一項に記載のポリマー及び溶媒を含む非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項9】
さらに架橋剤を含む請求項8に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項10】
前記架橋剤がビスマレイミド化合物である請求項9に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【請求項11】
請求項8~10のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物である、非感光性絶縁膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非感光性絶縁膜形成組成物に有用なポリマー、該ポリマーを含む非感光性絶縁膜形成組成物、及び該組成物から得られる非感光性樹脂膜に関する。
【背景技術】
【0002】
シアン酸エステル化合物と、ビスマレイミド化合物とを併用する熱硬化性樹脂(例えば、特許文献1)は「BTレジン」と呼ばれ、加工性、耐熱性、電気特性に優れた熱硬化性樹脂として、高機能のプリント配線基板用材料等の絶縁材料として幅広く使用されている。しかし、近年の通信機器の高速通信化に伴い、伝送周波数の高周波数化に対応するために、BTレジンの低比誘電率化や低誘電正接化が求められている。
【0003】
かかる課題に対して、特許文献2では、BTレジンと、ガラス転移温度が260℃以上310℃以下である環状オレフィン系樹脂と、硬化触媒とを含む熱硬化性樹脂組成物により、低比誘電率化や低誘電正接化の課題を解決できたとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭54-30440号公報
【特許文献2】特開2017-88647号公報
【特許文献3】特開2017-137486号公報
【特許文献4】特開平3-163568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、BTレジンを含む組成物の改良だけでは、電気特性の改善に限界がある。
【0006】
従って、本発明は、低比誘電率化や低誘電正接化を達成できる非感光性絶縁膜形成組成物に有用なポリマー、該ポリマーを含む非感光性絶縁膜形成組成物、及び該組成物から得られる非感光性樹脂膜を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記の課題を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、特定の芳香族複素環と特定の架橋性置換基とを含む繰り返し単位構造を有するポリマーを採用することにより、低比誘電率で、低誘電正接の硬化膜を与える非感光性樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明は以下を包含する。
【0009】
[1]
下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー。
【化1】
[式中、Xは下記式(2a)又は式(2b)で表される2価の有機基を表し、
【化2】
式中、Ar
Nは、下記式(2c)~(2f):
【化3】
からなる群から選択される一種又は二種以上の2価の有機基を表す。
(式中、R
1、R
2、R
3及びR
4は炭化水素基を表し、これら四つの炭化水素基の炭素数の合計が13~80であり、*は酸素原子との結合手を表す。)]
【0010】
[2]
式(2a)及び(2b)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立に炭素数4以上の炭化水素基を表す、[1]に記載のポリマー。
【0011】
[3]
前記式(1)で表される繰り返し単位構造の少なくとも一部が、下記式(1-1)で表わされる、[1]に記載のポリマー。
【化4】
(式中、Xは[1]の定義と同じである。)
【0012】
[4]
前記炭素数4以上の炭化水素基は、炭素数4~20のアルキル基、又は炭素数1~10のアルキル基を少なくとも1つ有するアリール基である、[2]に記載のポリマー。
【0013】
[5]
さらに下記式(3)で表される繰り返し単位構造を有する、[1]に記載のポリマー。
【化5】
(式中、Zは単結合又は2価の有機基を表し、Ar
Nは[1]の定義と同じである。)
【0014】
[6]
前記式(3)で表される繰り返し単位構造の少なくとも一部が、下記式(3-1)で表わされる、[5]に記載のポリマー。
【化6】
(式中、Zは[5]の定義と同じである。)
【0015】
[7]
前記式(3)において、Zは下記式(4a)乃至式(4m)からなる群から選択される一種又は二種以上の2価の基を表す、[5]に記載のポリマー。
【化7】
(式中、黒丸「・」はベンゼン環との結合手を表す。)
【0016】
[8]
[1]乃至[7]のいずれか一項に記載のポリマー及び溶媒を含む非感光性絶縁膜形成組成物。
【0017】
[9]
さらに架橋剤を含む[8]に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【0018】
[10]
前記架橋剤がビスマレイミド化合物である[9]に記載の非感光性絶縁膜形成組成物。
【0019】
[11]
[8]~[10]のいずれか一項に記載の非感光性絶縁膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物である、非感光性絶縁膜。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、低比誘電率で、低誘電正接の硬化物を与える非感光性樹脂組成物に有用なポリマー、該ポリマーを含む非感光性絶縁膜形成組成物、該組成物から得られる非感光性樹脂膜を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[I]ポリマー
(I-1)
本発明の一態様であるポリマーは、下記式(1)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化8】
式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーの重量平均分子量は、通常、500~100,000、好ましくは600~80,000、800~60,000、又は1,000~50,000である。
【0022】
(I-2)
式(1)中、
Xは下記式(2a)又は式(2b):
【化9】
で表される2価の有機基を表し、個々の繰り返し単位構造毎に異なっていても同じであってもよい。
【0023】
式(2a)、(2b)中、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ炭化水素基を表し、これら四つの炭化水素基の炭素数の合計が13~80であり、*は酸素原子との結合手を表す。
【0024】
かかる炭化水素基には、直鎖状又は分岐状、飽和又は不飽和の炭化水素基が包含されるが;好ましくは、置換基を有していてもよい、直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、脂環式アルキル基、又は芳香族炭化水素基であり;より好ましくは、置換基を有していてもよい直鎖状アルキル基、分岐鎖状アルキル基、芳香族炭化水素基である。例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基、n-ウンデシル基、n-ドデシル基、n-トリデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-ノナデシル基、n-エイコサニル基、ベヘニル基、トリアコンチル基、テトラコンチル基、トリル基、4-エチルフェニル基、4-n-プロピルフェニル基、4-n-ブチルフェニル基、4-t-ブチルフェニル基等を例示できる。
【0025】
置換基としては、炭素数1~10のアルキル基や炭素数6~10のアリール基等を例示できる。
【0026】
R1、R2、R3及びR4の4つの炭化水素基の炭素数の合計は、低誘電率、低誘電正接の観点からは13以上であり、好ましくは32以上である。他方、R1、R2、R3及びR4の4つの炭化水素基の炭素数の合計は、相溶性の観点からは80以下、より好ましくは48以下である。
【0027】
上記炭素数の合計に関する規定に加えて、式(2a)及び(2b)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数4以上の炭化水素基であることを要求することが好ましく、炭素数8以上の炭化水素基であることを要求することがより好ましい。
【0028】
あるいは上記炭素数の合計に関する規定に加えて、式(2a)及び(2b)中、R1、R2、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数4~20のアルキル基、又は炭素数1~10のアルキル基を少なくとも1つ有するアリール基であることが好ましく、炭素数8~18のアルキル基、又は炭素数4~10のアルキル基を少なくとも1つ有するアリール基であることがより好ましい。
【0029】
(I-3)
式(1)中、Ar
Nは、下記式(2c)~(2f):
【化10】
からなる群から選択される一種又は二種以上の2価の有機基を表し、個々の繰り返し単位構造毎に異なっていても同じであってもよい。
【0030】
ここで、原料の入手しやすさの観点からは、式(2c)のピリミジン-4,6-ジイル基が好ましい。
【0031】
このため、前記式(1)で表される繰り返し単位構造の少なくとも一部が、下記式(1-1):
【化11】
で表わされることが好ましい。ここで、式(1-1)中、Xは式(1)と同じ定義を有する。
【0032】
(I-4)
本発明の一態様であるポリマーは、式(1)の繰り返し単位構造に加えて、硬化性付与の観点から、任意選択的に、下記式(3):
【化12】
の繰り返し単位構造を含んでいてもよい。ここで、Zは単結合又は2価の有機基を表し、Ar
Nは式(1)の定義と同じであるが、式(1)のAr
Nとは独立して、個々の繰り返し単位構造毎に異なっていても同じであってもよい。
【0033】
より好ましくは、式(3)で表される繰り返し単位構造の少なくとも一部が、下記式(3-1):
【化13】
で表わされる。ここで、Zは、式(3)における定義と同じである。
【0034】
式(1)の繰り返し構造単位と式(3)の繰り返し構造単位のモル比は、硬化性付与の観点から、1:0.1~1:9であることが好ましく、1:0.5~1:4であることがより好ましい。
【0035】
(I-5)
式(3)又は式(3-1)のZとしては、下記式(4a)乃至式(4m):
【化14】
からなる群から選択される2価の基が好ましく、個々の繰り返し単位構造毎に異なっていても同じであってもよい。
【0036】
(I-6)
式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーは、公知の方法によって調製することができる。
【0037】
(I-6-1)
例えば、Y-ArN-Yで表される化合物と、HO-X-OHで表される化合物とを、適宜選択して求核置換反応をさせることにより調製することができる。ここで、ArN及びXは式(1)中の定義と同じであり、Yは塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表す。Y-ArN-Yで表される化合物、及びHO-X-OHで表される化合物はそれぞれ一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0038】
この求核置換反応においては、Y-ArN-Yで表される化合物1モルに対して、HO-X-OHで表される化合物で表される化合物を通常0.1乃至10モル、好ましくは0.1乃至2モルの割合に設定して用いることができる。
【0039】
(I-6-2)
更に任意選択的に式(3)で表わされる繰り返し単位構造も追加的に含まれるポリマーは、Y-Ar
N-Yで表される化合物と、HO-X-OH及びHO-B-OHで表される化合物とを、適宜選択して求核置換反応をさせることにより調製することができる。ここで、Ar
N及びXは式(1)中の定義と同じであり、Yは塩素原子、臭素原子などのハロゲン原子を表し、HO-B-OHは、下記式(3-2):
【化15】
[Zは式(3)における定義と同一である。]
を表す。Y-Ar
N-Yで表される化合物、HO-X-OHで表される化合物、及びHO-B-OHで表わされる化合物はそれぞれ一種を用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0040】
この求核置換反応においては、Y-ArN-Yで表される化合物1モルに対して、HO-X-OHで表される化合物で表される化合物及びHO-B-OHで表される化合物で表される化合物の合計を通常0.1乃至10モル、好ましくは0.1乃至2モルの割合に設定して用いることができる。
【0041】
(I-6-3)
求核置換反応で用いられる触媒としては、塩基性又は酸性の触媒を用いることが出来るが、塩基性の触媒を用いることが好ましい。
【0042】
塩基性の触媒としては、固体塩基触媒が挙げられ、例えば水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム八水和物、水酸化バリウム八水和物、水酸化マグネシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
【0043】
酸性の触媒としては、例えば硫酸、リン酸、過塩素酸等の鉱酸類、p-トルエンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸一水和物、メタンスルホン酸等の有機スルホン酸類、蟻酸、シュウ酸等のカルボン酸類を使用することができる。
【0044】
触媒の使用量は、使用する触媒の種類によって異なるが、Y-ArN-Yで表される化合物100質量部に対して、通常0.001乃至10,000質量部、好ましくは0.01乃至1,000質量部、より好ましくは0.05乃至100質量部である。
【0045】
(I-6-4)
求核置換反応は無溶剤でも行われるが、通常は溶剤を用いて行われる。溶剤としては反応基質を溶解することができ、反応を阻害しないものであれば特に限定されない。例えば、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、1,2-ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサン、N,N-ジメチルアセトアミド等が挙げられる。縮合反応温度は通常40℃乃至200℃、好ましくは50℃乃至180℃である。反応時間は反応温度によって異なるが、通常5分乃至500時間、好ましくは5分乃至200時間である。
【0046】
(I-6-5)
HO-X-OH,すなわち、下記式(5a),(5b):
【化16】
(R
1、R
2、R
3及びR
4は式(2a),(2b)におけるR
1,R
2,R
3及びR
4の定義と同一である。)
のビスフェノール系化合物は、例えば、下記反応式に示されるように、イソフタル酸エステル又はテレフタル酸エステルにグリニャール試薬(例えば、下記式で例示されるR
nMgBr、ここで、R
nはR
1、R
2、R
3及びR
4を表す。)を用いた付加反応を行って、R
1~R
4置換基を有するジオール誘導体を合成後、酸存在下、該ジオール誘導体の2分子のフェノールへの求電子置換反応により調製できる。
【0047】
【0048】
(I-7)
なお、特許文献3には、4,6-ジクロロピリミジンと各種ビスフェノール[実施例1(ビスフェノール-AP:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルエタン)、実施例11(ビスフェノール-AF:2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン)、実施例12(ビスフェノール-Z:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、実施例13(ビスフェノール-TMC:1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン)、実施例14(BPFL:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン)]と、を反応して得られるポリマーが開示されている。しかし、本願発明の一態様であるポリマーでは、式(1)中におけるXでは三つのベンゼン環が2つの2価の連結基[―C(R1)(R2)―及び―C(R3)(R4)―]で連結している点、及びR1、R2、R3及びR4の4つの炭化水素基の炭素数の合計が13~80と比較的大きい点で異なっている。また、特許文献3では、高い無色透明性が求められる用途、例えば耐熱透明フィルム、透明回路基板、レンズ、太陽電池基板等の用途に好ましく適用できる、着色を抑制した色相に優れる成形体を製造できる樹脂組成物、重合体の製造方法及び成形体を提供することを課題としており、本願発明とはその方向性が全く異なる。
【0049】
また、特許文献4には、式(1-1)~(1-16)に、三つのベンゼン環が2つの二価の連結基で連結しているビスフェノール系化合物が開示されている。しかし、特許文献4に記載の発明は、このビスフェノール系化合物そのものを摩擦帯電付与部材として用いる発明であり、本願発明の一態様であるポリマーのようにビスフェノール系化合物をコポリマーの繰り返し構造単位として用いるものとは全く異なるものである。
【0050】
[II]非感光性絶縁膜形成組成物
本発明の一態様である非感光性絶縁膜形成組成物は、下記式(1)で表される繰り返し単位構造:
【化18】
を有するポリマー及び溶媒を含む。任意選択的に更に架橋剤等のその他の成分を含んでいてもよい。
【0051】
本発明の一態様である非感光性絶縁膜形成組成物は、半導体装置への適用の他、多層回路の層間絶縁膜、フレキシブル銅張板のカバーコート、ソルダーレジスト膜、及び液晶配向膜等の用途にも有用である。
【0052】
ここで、非感光性絶縁膜形成組成物にいう「非感光性」とは、光重合開始剤を含まない組成物を意味する。
【0053】
各成分を以下に順に説明する。
【0054】
(II-1)ポリマー
前記[I]において、すでに説明した。
【0055】
(II-2)溶媒
溶媒としては、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマーに対する溶解性の点から、有機溶媒を用いることが好ましい。具体的には、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジエチレングリコールジメチルエーテル、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、γ-ブチロラクトン、α-アセチル-γ-ブチロラクトン、メチルラクテート、エチルラクテート、テトラメチル尿素、1,3-ジメチル-2-イミダゾリノン、N-シクロヘキシル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリジノン、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられ、これらは単独又は2種以上の組合せで用いることができる。好ましくは沸点230℃以下の溶媒が望ましく、より好ましくは沸点200℃以下の溶媒が望ましい。
【0056】
上記溶媒は、非感光性絶縁膜形成組成物の所望の塗布膜厚及び粘度に応じて、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対し、例えば、30質量部~1500質量部の範囲、好ましくは40質量部~1000質量部、より好ましくは50質量部~300質量部の範囲で用いることができる。
【0057】
(II-3)その他の成分
実施の形態では、非感光性絶縁膜形成組成物は、上記式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー、溶媒以外の成分をさらに含有してもよい。その他の成分としては、例えば、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー以外の樹脂成分(「その他樹脂成分」)、熱重合開始剤、ヒンダードフェノール化合物、架橋剤、フィラーなどが挙げられる。
【0058】
(II-3-1)その他樹脂成分
実施の形態では、非感光性絶縁膜形成組成物は、前記式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー以外の樹脂成分(「その他樹脂成分」)をさらに含有してもよい。
【0059】
非感光性絶縁膜形成組成物に含有させることができる樹脂成分としては、例えば、ポリイミド、ポリオキサゾール、ポリオキサゾール前駆体、フェノール樹脂、ポリアミド、エポキシ樹脂、シロキサン樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。
【0060】
このような樹脂を配合する場合、樹脂成分の配合量は、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対して、好ましくは0.01質量部~20質量部の範囲である。
【0061】
(II-3-2)熱重合開始剤
実施の形態では、熱重合を促進し硬化性を高めるために、非感光性絶縁膜形成組成物に熱重合開始剤を配合することができる。
【0062】
熱重合開始剤としては、例えば、ケトンパーオキサイド類(メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等)、ジアシルパーオキサイド類(アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等)、ハイドロパーオキサイド類(過酸化水素、tert-ブチルハイドパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド類(ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等)、パーオキシケタール類(ジブチルパーオキシシクロヘキサン等)、アルキルパーエステル類(パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ-2-エチルシクロヘキサン酸-tert-アミルエステル等)、過硫酸塩類(過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等)、アゾ系化合物(アゾビスイソブチロニトリル、および2,2’-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等)が挙げられるが、これらに限定されない。また、前記熱重合開始剤としては、市販品を使用することができる。このような熱重合開始剤は、一種を単独で使用することもできるし、あるいは二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0063】
熱重合開始剤の配合量は、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対し、好ましくは1質量部~10質量部であり、より好ましくは1質量部~5質量部である。
【0064】
(II-3-3)架橋剤
実施の形態では、架橋密度を上げて硬化性を高めるために、非感光性絶縁膜形成組成物に架橋剤を配合することができる。
【0065】
このような架橋剤としては、熱重合開始剤によりラジカル重合反応する多官能ビニルエーテル化合物、多官能アリルエーテル化合物、及びビスマレイミド化合物が好ましい。
【0066】
多官能ビニルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、プロピレングリコールジビニルエーテル、ブチレングリコールジビニルエーテル、ヘキサンジオールジビニルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジビニルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジビニルエーテル、トリメチロールプロパントリビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、グリセリントリビニルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ポリエチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、ビニルベンジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、4-メトキシビニルベンジルエーテル、2-メトキシビニルベンジルエーテル、1,4-ジビニルオキシメチルベンゼン、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0067】
多官能アリルエーテル化合物としては、例えば、エチレングリコールジアリルエーテル、ジエチレングリコールジアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、プロピレングリコールジアリルエーテル、ブチレングリコールジアリルエーテル、ヘキサンジオールジアリルエーテル、ビスフェノールAアルキレンオキシドジアリルエーテル、ビスフェノールFアルキレンオキシドジアリルエーテル、トリメチロールプロパントリアリルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、グリセリントリアリルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、ジペンタエリスリトールペンタアリルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル、ポリエチレングリコールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールジアリルエーテル、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、アリルベンジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、4-メトキシアリルベンジルエーテル、2-メトキシアリルベンジルエーテル、1,4-ジアリルオキシメチルベンゼン、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジトリメチロールプロパンテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル、エチレンオキシド付加ジペンタエリスリトールヘキサアリルエーテル等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0068】
ビスマレイミド化合物としては、例えば、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ポリフェニルメタンマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、2,2-ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)プロパン、ビス(4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル)スルホン、4,4’-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、等の化合物を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0069】
架橋剤の配合量は、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対し、好ましくは1質量部~200質量部であり、より好ましくは1質量部~100質量部である。
【0070】
(II-3-4)フィラー
フィラーとしては、例えば無機フィラーが挙げられ、具体的にはシリカ、窒化アルミニウム、窒化ボロン、ジルコニア、アルミナなどのゾルが挙げられる。
【0071】
(II-3-5)ヒンダードフェノール化合物
実施の形態では、ラジカル架橋部位の重合禁止剤として、ヒンダードフェノール化合物を任意に非感光性絶縁膜形成組成物に配合することができる。
【0072】
ヒンダードフェノール化合物としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、2,5-ジ-t-ブチル-ハイドロキノン、オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネ-ト、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、4、4’-メチレンビス(2、6-ジ-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオ-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデン-ビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス〔3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6-ヘキサンジオール-ビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,2-チオ-ジエチレンビス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、N,N’ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、ペンタエリスリチル-テトラキス〔3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-イソプロピルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-s-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-(1-エチルプロピル)-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス[4-トリエチルメチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(3-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-4-フェニルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5,6-トリメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5-エチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-6-エチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5,6-ジエチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,5-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-5-エチル-3-ヒドロキシ-2-メチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオン等が挙げられるが、これに限定されるものではない。これらの中でも、1,3,5-トリス(4-t-ブチル-3-ヒドロキシ-2,6-ジメチルベンジル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)-トリオンが特に好ましい。
【0073】
ヒンダードフェノール化合物の配合量は、式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対し、0.1質量部~20質量部であることが好ましく、ラジカル架橋部位の反応性の観点から0.5質量部~10質量部であることがより好ましい。ヒンダードフェノール化合物の式(1)で表される繰り返し単位構造を有するポリマー100質量部に対する配合量が0.1質量部以上である場合、例えば溶液中での望まないラジカル架橋反応が防止され、一方、20質量部以下である場合には架橋反応に好ましい。
【0074】
[III]非感光性絶縁膜
前記[II]に記載の非感光性絶縁膜形成組成物を用いて塗布膜を形成し、それを焼成することによって、低比誘電率で、低誘電正接の硬化物である非感光性絶縁膜を得ることができる。
【0075】
塗布膜の形成にあたっては、組成物の粘度と表面張力、所望する薄膜の厚さ等を考慮し、ドロップキャスト法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等といった各種ウェットプロセス法の中から最適なものを採用すればよい。
【0076】
また、通常、塗布膜の形成は、常温、常圧の不活性ガス雰囲気下で行われるが、組成物中の化合物が分解したり、組成が大きく変化したりしない限り、大気雰囲気下(酸素存在下)で行ってもよく、加熱しながら行ってもよい。
【実施例0077】
以下、合成例、比較合成例、実施例および比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
【0078】
なお、使用した分析装置およびその測定条件等は以下のとおりである。
【0079】
(1)1H-NMR測定
装置:Bruker社製 AVANCE III HD
測定周波数:500MHz
測定溶媒:重水素化クロロホルム(CDCl3、関東化学(株)製)、または重水素化DMSO(DMSO-d6、関東化学(株)製)
内部標準:テトラメチルシラン(δ=0.00ppm)
【0080】
(2)重量平均分子量測定
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと略記する。)により測定した。
装置:日本分光(株)製GPCシステム
カラム:Shodex(登録商標)KF-804LおよびKF-803L
カラムオーブン:40℃
流量:1mL/分
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/mL
試料注入量:20μL
標準物質:単分散ポリスチレン
検出器:示差屈折計
【0081】
<合成例1>(モノマー(A1)の合成)
【化19】
1Lナスフラスコにマグネシウム(富士フイルム和光純薬(株)製)8.88gとヨウ素(東京化成工業(株)製)0.77gを加え、窒素置換した。1-ブロモオクタン(東京化成工業(株)製)64.1gを溶解した脱水ジエチルエーテル(関東化学(株)製)200mLの溶液を滴下して加え、室温で30分攪拌した。次に、イソフタル酸ジメチル(東京化成工業(株)製)11.7gを溶解した脱水ジエチルエーテル(関東化学(株)製)100mLの溶液を滴下して、室温で19時間攪拌した。0℃に冷却しながら純水を加えて反応を停止し、5M塩酸65mLを加えた。有機層をジエチルエーテルで抽出し、続いて水・飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。濾過で有機層を分離したのち、溶媒を留去することで、化合物(A1)を黄色液体として得た(34.3g、収率97%)。
1H-NMR(500MHz、CDCl
3):δ 7.19-7.33(m,4H)、1.70-1.88(m,8H)、1.14-1.33(m,48H)、0.85(t,12H,J=8.0Hz).
【0082】
<合成例2>(モノマー(B1)の合成)
【化20】
500mLナスフラスコに合成例1で得られた化合物(A1)14.1gと5当量のフェノール11.3gを加え、さらに濃塩酸8.5mLを入れ、80℃で24時間攪拌した。反応溶液に水を120mL加え、ヘキサンで抽出した後、有機層を水で洗浄し無水硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過で有機層を分離したのち、溶媒を留去することで粗生成物を得た。シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:4)で精製した後、化合物(B1)を黄色固体として得た(10.2g、収率57%)。
1H-NMR(500MHz、CDCl
3):δ 7.13(t,1H,J=8.0Hz)、6.98(d,2H,J=8.0Hz)、6.92(d,4H,J=8.0Hz)、6.77(s,1H)、6.64(d,4H,J=8.0Hz)、4.55-4.67(m,2H)、1.83-1.98(m,8H)、1.11-1.30(m,40H)、0.81-0.96(m,20H).
【0083】
<合成例3>(モノマー(A2)の合成)
【化21】
1-ブロモオクタンを1-ブロモドデカンに変えた以外は合成例1と同様の方法で合成し、化合物(A2)を白色固体として得た(44.1g、収率90%)。
1H-NMR(500MHz、CDCl
3):δ 7.19-7.33(m,4H)、1.70-1.88(m,8H)、1.14-1.33(m,72H)、0.85-0.92(m,20H).
【0084】
<合成例4>(モノマー(B2)の合成)
【化22】
化合物(A1)を化合物(A2)に変えた以外は合成例2と同様の方法で合成し、化合物(A2)を黄色固体として得た(19.1g、収率62%)。
1H-NMR(500MHz、CDCl
3):δ 7.13(t,1H,J=8.0Hz)、6.98(d,2H,J=8.0Hz)、6.92(d,4H,J=8.0Hz)、6.74(s,1H)、6.64(d,4H,J=8.0Hz)、4.74(s,2H)、1.81-1.99(m,8H)、1.09-1.34(m,72H)、0.81-0.96(m,20H).
【0085】
<合成例5>(モノマー(A3)の合成)
【化23】
1Lナスフラスコにマグネシウム(富士フイルム和光純薬(株)製)4.12gとヨウ素(東京化成工業(株)製)0.44gを加え、窒素置換した。1-ブロモ-4-tert-ブチルベンゼン(東京化成工業(株)製)32.8gを溶解したテトラヒドロフラン(関東化学(株)製、特級)155mLの溶液を滴下して加え、室温で30分攪拌した。次に、イソフタル酸ジメチル(東京化成工業(株)製)6.80gを溶解したテトラヒドロフラン(関東化学(株)製、特級)35mLの溶液を滴下して、室温で17時間攪拌した。0℃に冷却しながら純水を加えて反応を停止し、飽和塩化アンモニウム水溶液50mLを加えた。有機層をクロロホルムで抽出し、続いて水・飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。乾燥固体にヘキサンを加えて攪拌した後、濾過で固体をろ取した。ヘキサンで洗浄した後、乾燥することで化合物(A3)を白色固体として得た(20.4g、収率87%)。
1H-NMR(500MHz、CDCl
3):δ 7.40(s,1H)、7.10-7.30(m、19H)、1.30-1.88(s,36H).
【0086】
<合成例6>(モノマー(B3)の合成)
【化24】
500mLナスフラスコに合成例5で得られた化合物(A3)31.1gと5当量のフェノール43.9gを加え、さらに濃塩酸16.3mLを入れ、80℃で24時間攪拌した。反応溶液に水を150mL加え、析出した固体をろ取してメタノールで洗浄した。固体を乾燥し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:酢酸エチル/ヘキサン=1:2)で精製した後、化合物(B3)を白色固体として得た(21.4g、収率56%)。
1H-NMR(500MHz、CDCl
3):δ 7.14(d,8H,J=8.0Hz)、6.94-7.00(m,9H)、7.02(d,2H,J=7.0Hz)、7.02(d,2H,J=7.0Hz)、6.88(d,4H,J=8.0Hz)、6.59(d,4H,J=8.0Hz)、5.64(s,2H)、1.29(s,36H).
【0087】
<合成例7>(ポリマー(P1-1)の合成)
200mL容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン2.50g(16.4mmol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業(株)製)4.85g(15.1mmol)、合成例2で得られた化合物(B1)1.25g(1.7mmol)、炭酸カリウム5.47g(42.0mmol)及びN-エチル-2-ピロリドン20.34gを入れて100℃に昇温し、100℃で43時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン28.72gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-エチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール90.16gと純水84.58gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール13.5gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマー(P1-1)を5.71g得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は21,759であり、収率は57%であった。このポリマーは、下記式(P1)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化25】
【0088】
<合成例8>(ポリマー(P1-2)の合成)
200mL容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン2.50g(16.4mmol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業(株)製)4.31g(13.4mmol)、合成例2で得られた化合物(B1)2.51g(3.4mmol)、炭酸カリウム6.56g(50.3mmol)及びN-メチル-2-ピロリドン25.07gを入れて100℃に昇温し、100℃で20時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン32.57gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-メチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール91.46gと純水89.64gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール30.5gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマー(P1-2)を6.95g得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は35,351であり、収率は69%であった。このポリマーは、前記式(P1)で表される繰り返し単位構造を有する。
【0089】
<合成例9>(ポリマー(P1-3)の合成)
200mL容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン2.50g(16.4mmol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業(株)製)2.69g(8.4mmol)、合成例2で得られた化合物(B1)6.27g(8.4mmol)、炭酸カリウム6.56g(50.3mmol)及びN-メチル-2-ピロリドン28.91gを入れて100℃に昇温し、100℃で20時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン35.99gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-メチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール107.65gと純水112.73gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール32.5gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマー(P1-3)を8.86g得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は21,778であり、収率は88%であった。このポリマーは、前記式(P1)で表される繰り返し単位構造を有する。
【0090】
<合成例10>(ポリマー(P2-1)の合成)
200mL容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン2.50g(16.4mmol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業(株)製)4.31g(13.4mmol)、合成例4で得られた化合物(B2)3.37g(3.4mmol)、炭酸カリウム6.56g(50.3mmol)及びN-メチル-2-ピロリドン25.07gを入れて100℃に昇温し、100℃で20時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン32.57gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-メチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール800.95gと純水734.09gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール29.5gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマー(P2-1)を7.46g得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は71,283であり、収率は69%であった。このポリマーは、下記式(P2)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化26】
【0091】
<合成例11>(ポリマー(P3-1)の合成)
200mL容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン2.50g(16.4mmol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業(株)製)4.31g(13.4mmol)、合成例6で得られた化合物(B3)2.82g(3.4mmol)、炭酸カリウム6.56g(50.3mmol)及びN-メチル-2-ピロリドン23.42gを入れて100℃に昇温し、100℃で17時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン32.21gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-メチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール800.86gと純水822.09gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール107.4gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマー(P3-1)を6.03g得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は33,556であり、収率は56%であった。このポリマーは、下記式(P3)で表される繰り返し単位構造を有する。
【化27】
【0092】
<合成例12>(ポリマー(P3-2)の合成)
200mL容量の四口フラスコに4,6-ジクロロピリミジン2.50g(16.4mmol)、2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン(小西化学工業(株)製)2.69g(8.4mmol)、合成例6で得られた化合物(B3)7.05g(8.4mmol)、炭酸カリウム6.56g(50.3mmol)及びN-メチル-2-ピロリドン31.26gを入れて100℃に昇温し、100℃で17時間攪拌した。30℃以下に降温した後、テトラヒドロフラン38.53gを入れて希釈し、反応液に生じた沈殿物をろ過により取り除き、反応混合物を得た。得られた反応混合物を6N塩酸/N-メチル-2-ピロリドン(1:9)溶液でpH4に調整した後、メタノール800.88gと純水792.50gに滴下してポリマーを沈殿させた。得られた沈殿物を濾別し、ろ物をメタノール118.4gで二回洗浄し、真空乾燥してポリマー(P3-2)を6.91g得た。このポリマーの分子量をGPC(標準ポリスチレン換算)で測定したところ、重量平均分子量(Mw)は19,919であり、収率は64%であった。このポリマーは、前記式(P3)で表される繰り返し単位構造を有する。
【0093】
<実施例1>
合成例7で得られたポリマー(P1-1)4.21g、2,2-ビス-[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン(ケイ・アイ化成(株)製)0.84gをシクロヘキサノン7.58gに溶解させ、組成物を調製した。その後、孔径5μmのポリテトラフルオロエチレン(以下、本明細書ではPTFEと略称する。)製マイクロフィルターを用いてろ過して、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0094】
<実施例2>
合成例7で得られたポリマー(P1-1)の替わりに合成例8で得られたポリマー(P1-2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0095】
<実施例3>
合成例7で得られたポリマー(P1-1)の替わりに合成例9で得られたポリマー(P1-3)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0096】
<実施例4>
合成例7で得られたポリマー(P1-1)の替わりに合成例10で得られたポリマー(P2-1)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0097】
<実施例5>
合成例7で得られたポリマー(P1-1)の替わりに合成例11で得られたポリマー(P3-1)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0098】
<実施例6>
合成例7で得られたポリマー(P1-1)の替わりに合成例12で得られたポリマー(P3-2)を用いた以外は実施例1と同様の方法で、非感光性樹脂組成物を調製した。
【0099】
<比較例1>
テトラヒドロフラン10.00gに2,2-ビス(4-シアナトフェニル)プロパン9.00gと4,4’-ビスマレイミドフェニルメタン1.00gを溶解して、さらに硬化触媒のアセチルアセトン鉄0.10gを溶解して溶液を調製した。調製した溶液を、シリコンウェハに積層させたアルミ箔上にスピンコーターを用いて塗布し、75℃で5分間プリベークし、更に真空下、100℃で1時間、さらに160℃で4時間ベークして、厚さ10~30μm程度のBTレジン膜を形成した。
【0100】
[電気特性試験]
実施例1~6で調製した非感光性樹脂組成物を、シリコンウェハに積層させたアルミ箔上にスピンコーターを用いて塗布し、100℃で5分間プリベークし、さらに窒素下、230℃で4時間ベークし、膜厚10~40μm程度の膜を形成した。その後6N塩酸中に浸漬させた。それぞれの膜について、塩酸中に浸漬後、アルミが溶解して膜が浮き上がったところを回収し、縦7.5cm、横6.3cmにカットし自立膜を得た。この自立膜を用いてスプリットシリンダー式空洞共振法にて、自立膜取得直後の、10GHzにおける比誘電率及び誘電正接を算出した。比較例1で得られたBTレジン膜についても同様に塩酸処理・カッティングを行い、得られた自立膜を用いてスプリットシリンダー式空洞共振法にて測定を行った。測定結果を以下の表1に示す。なお、測定方法の詳細は以下の通りである。
【0101】
(測定方法)
スプリットシリンダー式空洞共振法
(装置構成)
ベクトルネットワークアナライザ: N5227A PNAネットワークアナライザー(キーサイト・テクノロジーズ・インク製)
共振器: CR-710(EMラボ(株)製)
測定周波数:約10GHz(サンプルの共振周波数に依存)
【0102】
【表1】
表1に示すとおり、本発明のポリマーを含む非感光性樹脂組成物から得られた膜は、比較例1のBTレジン膜に比べ、極性反応基数が減少するため、低比誘電率及び低誘電正接を示すことがわかる。