(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021309
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】食鳥処理装置
(51)【国際特許分類】
A22C 21/00 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124047
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 紀行
(72)【発明者】
【氏名】高梨 功史
(72)【発明者】
【氏名】岩木 さやか
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011FA03
4B011FA05
(57)【要約】
【課題】食鳥屠体の首の肉部の歩留まりを向上できる食鳥処理装置を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る食鳥処理装置は、保持具に保持された食鳥屠体の肩甲骨周りの肉部を肩甲骨から分離するためのスクレーパ部と、肉部を肩甲骨から分離する際に保持具に向かってスクレーパ部が進行する進行方向の上流側に向かうにつれて、保持具から離れる方向に向かって延在する刃先を有し、スクレーパ部に乗り上げた肉部における肩甲骨間の皮を刃先で切開するための切開刃と、を備える。
【選択図】
図7A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持具に保持された食鳥屠体の肩甲骨周りの肉部を前記肩甲骨から分離するためのスクレーパ部と、
前記肉部を前記肩甲骨から分離する際に前記保持具に向かって前記スクレーパ部が進行する進行方向の上流側に向かうにつれて、前記保持具から離れる方向に向かって延在する刃先を有し、前記スクレーパ部に乗り上げた前記肉部における前記肩甲骨間の皮を前記刃先で切開するための切開刃と、
を備える食鳥処理装置。
【請求項2】
前記切開刃は、前記スクレーパ部に固定されている、
請求項1に記載の食鳥処理装置。
【請求項3】
前記スクレーパ部は、前記進行方向と交差する方向に離間して配置された一対のスクレーパ部材を備え、
前記切開刃は、前記一対のスクレーパ部材のいずれか一方に固定されている、
請求項1又は2に記載の食鳥処理装置。
【請求項4】
前記一対のスクレーパ部材の前記進行方向の下流側の端面は、前記進行方向の上流側に向かうにつれて、前記保持具の移動方向下流側に向かって延在する、
請求項3に記載の食鳥処理装置。
【請求項5】
前記一対のスクレーパ部材は、前記一対のスクレーパ部材の前記進行方向の下流側の端面の内、前記保持具の移動方向上流側の端部を含む一部の領域にだけ刃先が形成されている、
請求項4に記載の食鳥処理装置。
【請求項6】
前記切開刃とは前記スクレーパ部を挟んで反対側に位置する肉部案内部、
を備える、
請求項1又は2に記載の食鳥処理装置。
【請求項7】
前記スクレーパ部に対して前記保持具の移動方向上流側に位置していて、前記食鳥屠体の首部を起こすための姿勢調整装置、
を備え、
前記姿勢調整装置は、
前記保持具が移動する軌跡の上方に位置し、前記食鳥屠体の首部を案内するためのガイド部材と、
前記軌跡の上方かつ前記ガイド部材に対して前記保持具の移動方向下流側に位置し、前記移動方向下流側に向かって通路幅が狭くなる先細通路と、
を有する、
請求項1又は2に記載の食鳥処理装置。
【請求項8】
前記姿勢調整装置は、前記保持具に対して相対的に前記移動方向上流側に向かって移動して前記首部を起こす、
請求項7に記載の食鳥処理装置。
【請求項9】
前記先細通路は、前記移動方向と交差する方向に離間して配置された一対の壁部によって構成され、
前記一対の壁部の一方と他方との相対位置は不変である、
請求項7に記載の食鳥処理装置。
【請求項10】
前記一対の壁部の一方と他方とは、上方から見たときの前記保持具の中心位置が通過する中心線に対して非対称に形成されており、
前記一対の壁部の一方は、前記保持具の移動方向下流側に向かうにつれて前記一対の壁部の他方に向かって徐々に近づくように形成されている、
請求項9に記載の食鳥処理装置。
【請求項11】
前記先細通路と前記ガイド部材との相対位置は不変である、
請求項7に記載の食鳥処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鶏などの家禽類からなる食鳥屠体の解体処理するための食鳥処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鶏などの家禽類からなる食鳥屠体を解体し、肉部と骨部を分離する解体処理工程は、食鳥屠体を脱羽放血し、内蔵などの除去(中抜き)等の前処理を行い、その後、解体及び脱骨を行っている。この解体・脱骨処理は人手で行うと作業効率が悪いので、自動化が進められている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献に記載の肩甲骨筋入れ装置では、食鳥屠体の肩甲骨周りの肉部を肩甲骨から分離することができる。このようにして肩甲骨周りの肉部を肩甲骨から分離した後、肩甲骨間の皮を切開する工程を経て肩甲骨間の皮が肉部の外側から切開される。その際、食鳥屠体の首の肉部を傷つけてしまうおそれがある。首の肉部の内、傷がついた部分をカットして除去すると、首の肉部の残りの部分が大きく割れて、首の肉部の商品価値が低下してしまうおそれがある。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、食鳥屠体の首の肉部の歩留まりを向上できる食鳥処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る食鳥処理装置は、
保持具に保持された食鳥屠体の肩甲骨周りの肉部を前記肩甲骨から分離するためのスクレーパ部と、
前記肉部を前記肩甲骨から分離する際に前記保持具に向かって前記スクレーパ部が進行する進行方向の上流側に向かうにつれて、前記保持具から離れる方向に向かって延在する刃先を有し、前記スクレーパ部に乗り上げた前記肉部における前記肩甲骨間の皮を前記刃先で切開するための切開刃と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、食鳥屠体の首の肉部の歩留まりと品質を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】一実施形態に係る食鳥処理装置の全体概要図である。
【
図4B】
図4Aとは異なる方向から見たときの一対のスクレーパ部材の斜視図である。
【
図5】筋入れ部によって肩甲骨周りの肉部を肩甲骨から分離する様子、及び肩甲骨間の皮を切開する様子を表した模式的な断面図である。
【
図7A】移首部を姿勢調整装置によって起こす動作について説明するための図である。
【
図7B】移首部を姿勢調整装置によって起こす動作について説明するための図である。
【
図7C】移首部を姿勢調整装置によって起こす動作について説明するための図である。
【
図7D】移首部を姿勢調整装置によって起こす動作について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
図1は、一実施形態に係る食鳥処理装置の全体概要図である。
図2は、一実施形態に係る筋入れ部の斜視図である。
図3は、
図2中のA―A線に沿う断面図である。
食鳥処理装置10は、水平方向に配置された無端状のチェーンコンベア12を備えている。チェーンコンベア12は始端で駆動スプロケット14に巻回され、駆動スプロケット14はモータ16によって駆動される。図中、チェーンコンベア12の往路は矢印a方向へ移動する。無端状のチェーンコンベア12の終端は、従動スプロケット(不図示)に巻回されている。
チェーンコンベア12には、「コーン」と呼ばれる複数の固定治具20が等間隔に装着される。図示した実施形態では、固定治具20の上半分は円錐形を有し、チェーンコンベア12に対して垂直方向に立設されるが、搬送途中で必要に応じ傾斜可能に構成される。
チェーンコンベア12は固定治具20の搬送経路を形成し、固定治具20はこの搬送経路に沿って搬送される。
【0011】
前処理工程で脚部が分離され、かつ中抜きされて上半身だけとなった家禽類、例えば鶏の食鳥屠体(以下「ワーク」と言う。)wが、チェーンコンベア12の始端で作業員によって各固定治具20に載置固定される。ワークwは胸部が搬送方向上流側又は下流側(図示した実施形態では搬送方向下流側)に向いた状態で固定治具20に載置されて保持される。なお、固定治具20は、保持具とも称する。
例示的な実施形態では、チェーンコンベア12の基準点からの固定治具20の搬送距離を検出するための搬送距離検出部を備えている。
上記搬送距離検出部は、例えば、モータ16に設けられモータ16の累計回転数を検出するエンコーダ18で構成される。エンコーダ18でモータ16の累計回転数を計測することで、例えばモータ位置を基準点としてモータ位置からの各固定治具20の移動量(搬送距離)を検出できる。
【0012】
幾つかの実施形態では、
図2、8及び10に示すように、チェーンコンベア12の上方に筋入れ部22が設けられている。
筋入れ部22は、チェーンコンベア12の上方に上下動可能に設けられたスクレーパ部24と、スクレーパ部24を上下方向へ移動させるための駆動装置と、スクレーパ部24に取り付けられた切開刃60と、姿勢調整装置40とを備えている。
上記駆動装置は、例えば、
図2に示すように、支持台28に支持されたサーボモータ26で構成される。サーボモータ26は、支持台36を上下に貫通するネジ軸26aを回転させる。ネジ軸26aには、ネジ軸26aの回転によってネジ軸26a上を摺動する可動ブロック30が設けられる。ブラケット32は、一端が軸32aを介して可動ブロック30に回動可能に装着され、他端からスクレーパ部24が垂下される。
【0013】
例示的な構成では、筋入れ部22は、スクレーパ部24、及びスクレーパ部24に取り付けられた切開刃60をワークwの搬送方向下流側に後退可能に弾性的に支持する弾性支持部を備えている。
上記弾性支持部は、支持台28に固定されたエアシリンダ34で構成され、エアシリンダ34のピストンロッド34aは下方に向けて支持台28を貫通し、スクレーパ部24が固定された側のブラケット32の端部に結合されている。これにより、ワークwからスクレーパ部24に一定以上の反力が加わると、スクレーパ部24は搬送方向下流側(矢印b方向)へ逃げることができる。
また、筋入れ部22は、固定治具20に固定されたワークwがスクレーパ部24下方の肉分離位置に来たタイミングに合わせて、サーボモータ26を作動させてスクレーパ部24、及びスクレーパ部24に取り付けられた切開刃60を下降させワークwの肩甲骨表面に沿わせスクレーパ部24を移動させるように構成されている。例示的な実施形態では、エンコーダ18で検出した検出値に基づいてスクレーパ部24にかかる動作を可能にする不図示の同期装置を備える。
かかる構成により、上記肉分離位置に来たワークwの肩甲骨周りの肉部をスクレーパ部24で肩甲骨から分離するとともに、肩甲骨間の皮を切開刃60で切開する。スクレーパ部24、及び切開刃60については後で詳述する。
【0014】
例示的な実施形態では、スクレーパ部24は、チェーンコンベア12によって形成される固定治具20の搬送経路に沿い、固定治具20の中心を通る中心線C(
図3参照)を挟み中心線Cの両側に配置された一対のスクレーパ部材24a及び24bで構成される。スクレーパ部材24a及び24bは例えば長尺板状に形成され、ワークwの搬送方向(矢印a方向)下流側に向けて互いの間隔が徐々に狭まる向きに配置されている。
かかる形状のスクレーパ部材24a及び24bが下降した時、ワークwの肩甲骨の表面に接触し、肩甲骨の表面に付着した肉部を肩甲骨から歩留まり良く分離できる。
【0015】
図示した実施形態では、
図2に示すように、一対のスクレーパ部材24a及び24bに隣接して補強棒48が併設されている。
【0016】
図4Aは、一対のスクレーパ部材24a及び24bの斜視図である。
図4Bは、
図4Aとは異なる方向から見たときの一対のスクレーパ部材24a及び24bの斜視図である。
図示した実施形態では、一対のスクレーパ部材24a及び24bの内の一方のスクレーパ部材24aは、平坦な長尺板状に形成されたスクレーパ部材本体部25aと、スクレーパ部材本体部25aにおけるワークwの搬送方向(矢印a方向)下流側の端部から一対のスクレーパ部材24a及び24bの内の他方のスクレーパ部材24bに向かって伸びる背面板部25cとを有する。
一対のスクレーパ部材24a及び24bの内の他方のスクレーパ部材24bは、平坦な長尺板状に形成されたスクレーパ部材本体部25bを有する。
【0017】
図4A及び
図4Bによく示されているように、一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bにおける下方の端面251a及び251bは、上方に向かうにつれて、ワークwの搬送方向(矢印a方向)下流側に向かって延在するように形成されている。
なお、一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bにおける下方の端面251a及び251bは、肉部を肩甲骨から分離する際に固定治具20に向かってスクレーパ部24が進行する進行方向(矢印c方向)の下流側に位置している。
【0018】
後述するように、一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bがワークwに侵入する際に一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bの下方の端面251a及び251bの内、ワークwの搬送方向(矢印a方向)上流側の端部252a及び252bから侵入することになる。そのため、端面251a及び251bが上方に向かうにつれてワークwの搬送方向(矢印a方向)下流側に向かって延在するように形成されていれば、一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bがワークwに侵入し易くなる。これにより、肉部を肩甲骨から分離する際、一対のスクレーパ部材が肩甲骨の表面に到達し易くなり、分離された肉部の歩留まりを向上できる。
【0019】
図4A及び
図4Bによく示されているように、一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bは、下方の端面251a及び251bの内、ワークwの搬送方向(矢印a方向)上流側の端部252a及び252bを含む一部の領域R1にだけ刃先253a及び253bが形成されている。
上述したように一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bがワークwに侵入する際に下方の端面251a及び251bの内、ワークwの搬送方向(矢印a方向)上流側の端部252a及び252bから侵入することになる。そのため、この端部252a及び252bに形成されている刃先253a及び253bによって肉部を切断できるので、一対の一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bがワークwに侵入し易くなる。これにより、肉部を肩甲骨から分離する際、一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bが肩甲骨の表面に到達し易くなり、分離された肉部の歩留まりを向上できる。
また、下方の端面251a及び251bの内、上記一部の領域R1以外の領域R2には刃先253a及び253bが形成されていないため、該領域R2によって肩甲骨を削ってしまうおそれが少なくなる。これにより、肩甲骨が削られて肉部に異物として付着するおそれが少なくなる。
【0020】
背面板部25cには、肩甲骨間の皮を切開するための切開刃60と、肉部案内部70とが取り付けられている。
図5は、筋入れ部22によって肩甲骨wb周りの肉部wmを肩甲骨wbから分離する様子、及び肩甲骨wb間の皮wsを切開する様子を表した模式的な断面図である。
図示した実施形態では、切開刃60は、上方、すなわち肉部wmを肩甲骨wbから分離する際に固定治具20に向かってスクレーパ部24が進行する進行方向(矢印c方向)の上流側に向かうにつれて、固定治具20から離れる方向、すなわちワークwの搬送方向(矢印a方向)下流側に向かって延在する刃先61を有する。
【0021】
図示した実施形態では、肉部案内部70は、切開刃60とはスクレーパ部24を挟んで反対側に位置していて、ワークwの搬送方向(矢印a方向)下流側から見たときに、スクレーパ部24と重複するように配置された板状の部材71を有する。この部材71は、ワークwの搬送方向(矢印a方向)下流側から見たときに、少なくとも一部の領域が切開刃60に対して上記進行方向(矢印c方向)の上流側に位置するように配置されている。また、
図4Bによく示されているように、部材71は、少なくとも一部の領域が、切開刃60を挟んで切開刃60の厚さ方向(矢印d方向)の一方側の領域と他方側の領域に位置するように配置されている。
【0022】
スクレーパ部24、及びスクレーパ部24に取り付けられた切開刃60を下降させワークwの肩甲骨wbの表面に沿わせスクレーパ部24を移動させることで、
図5に示すように、一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bは、皮付きの肉部wmを肩甲骨wbから分離させる。
肩甲骨wbから分離した付きの肉部wmは、一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bに乗り上げて、一対のスクレーパ部材本体部25a及び25bと肉部案内部70との間に案内されて、切開刃60で切開される。
【0023】
上述した食鳥処理装置10によれば、スクレーパ部24に乗り上げた肉部wmにおける肩甲骨wb間の皮wsを切開刃60によってワークwの内側から切開できる。これにより、ワークwの首部wnの肉部を傷つけ難くなるので、ワークwの首部wnの肉部の歩留まりと品質を向上できる。
また、上述した食鳥処理装置10によれば、従来、2工程で行っていた肩甲骨wb周りの肉部wmを肩甲骨wbから分離する工程と肩甲骨wb間の皮wsを切開する工程とを1工程で実施できるので、ワークwの処理効率が向上する。
【0024】
上述した食鳥処理装置10では、切開刃60は、スクレーパ部24に固定されている。
これにより、スクレーパ部24に乗り上げた肉部wmにおける肩甲骨wb間の皮wsを容易に切開できる。
【0025】
また、上述した食鳥処理装置10では、スクレーパ部24は、上記進行方向(矢印c方向)と交差する方向に離間して配置された一対のスクレーパ部材24a及び24bを備えている。切開刃60は、一対のスクレーパ部材24a及び24bのいずれか一方、(図示した実施形態ではスクレーパ部材24a)に固定されている。
これにより、一対のスクレーパ部材24a及び24bをワークwの肩甲骨wbの位置及び向きに合わせて配置できるため、肉部wmを肩甲骨wbから分離する際、一対のスクレーパ部材24a及び24bを肩甲骨wbの表面に確実に倣わせることができる。これによって、分離された肉部wmの歩留まりを向上できる。
【0026】
上述した食鳥処理装置10では、肉部wmを肩甲骨wbから分離する際に皮wsのついた肉部wmを肉部案内部70によって切開刃60に案内できるので、切開刃60による肩甲骨wb間の皮wsの切開の確実性を向上できる。
【0027】
(姿勢調整装置40について)
図6は、
図2中のB―B線に沿う断面図である。
図示した実施形態では、食鳥処理装置10は、スクレーパ部24に対してワークwの搬送方向(矢印a方向)上流側に位置していて、ワークwの首部wnを起こすための姿勢調整装置40を備える。姿勢調整装置40は、固定治具20が移動する軌跡の上方に位置し、ワークwの首部wnを案内するためのガイド部材41と、上記軌跡の上方かつガイド部材41に対して搬送方向(矢印a方向)下流側に位置し、該搬送方向下流側に向かって通路幅Pwが狭くなる先細通路42と、を有する。
【0028】
すなわち、食鳥屠体の姿勢調整装置40は、食鳥屠体(ワークw)の内側に挿入された状態で食鳥屠体(ワークw)を内側から保持するための保持具である固定治具20と、固定治具20が移動する軌跡の上方に位置し、食鳥屠体(ワークw)の首部wnを案内するためのガイド部材41と、上記軌跡の上方かつガイド部材41に対して固定治具20の移動方向下流側に位置し、該移動方向下流側に向かって通路幅Pwが狭くなる先細通路42と、を備える。
【0029】
図示した実施形態では、ガイド部材41はワークwの搬送方向(矢印a方向)と直交する方向に離間した一対の第1板部材41a及び41bを有する。一対の第1板部材41a及び41bは、それぞれワークwの搬送方向上流側から下流側に向かうにつれて第1板部材41a及び41b同士の間隔が狭くなるように配置されている。
一対の第1板部材41a及び41bのそれぞれの搬送方向下流側には、先細通路42を形成するための一対の第2板部42a及び42bが接続されている。
【0030】
図示した実施形態では、一対の第2板部42a及び42bは、それぞれ搬送方向下流側に向かって搬送方向(矢印a方向)と平行に延在している。図示した実施形態では、一対の第2板部42a及び42bの一方の第2板部42aに、突出板部43が取り付けられている。突出板部43は、搬送方向上流側から下流側に向かうにつれて一対の第2板部42a及び42bの他方の第2板部42bとの間隔が狭くなるように形成されている。したがって、先細通路42は、突出板部43と他方の第2板部42bとによって搬送方向下流側に向かって通路幅Pwが狭くなるように形成されている。
なお、突出板部43及び他方の第2板部42bは、先細通路42を構成する一対の壁部である。
図示した実施形態では、突出板部43と他方の第2板部42bとの相対位置は不変である。
【0031】
図示した実施形態では、一対の壁部の一方と他方、すなわち突出板部43及び他方の第2板部42bは、上方から見たときの固定治具20の中心位置が通過する中心線、すなわち固定治具20の中心を通る中心線Cに対して非対称に形成されている。一対の壁部の一方である突出板部43は、移動方向下流側に向かうにつれて一対の壁部の他方である他方の第2板部42bに向かって徐々に近づくように形成されている。
【0032】
図7A、
図7B、
図7C、及び
図7Dは、移動方向下流側に向かって倒れている首部wnを姿勢調整装置40によって起こす動作について説明するための図である。
固定治具20に装着されたワークwは、背側を移動方向下流側にむけているため、首部wnが移動方向下流側に向かって倒れている。そのため、上述したように肩甲骨wb周りの肉部wmの分離、及び肩甲骨wb間の皮wsの切開を行う際に、倒れている首部wnが邪魔になるおそれがある。
そこで、幾つかの実施形態に係る食鳥処理装置10では、肩甲骨wb周りの肉部wmの分離、及び肩甲骨wb間の皮wsの切開を行う直前に首部wnを姿勢調整装置40によって起こすようにしている。
【0033】
固定治具20に装着されたワークwは、
図7Aに示すように移動方向下流側に向かって移動して、
図7Bに示すように姿勢調整装置40に到達すると、首部wnの根元部分nbがガイド部材41で案内されて先細通路42に導かれる。
図示した実施形態では、首部wnが先細通路42を通過する際に移動方向下流側に向かって通路幅Pwが狭くなるため首部wnが徐々に先細通路42を通過し難くなることで、移動方向下流側に向かって倒れていた首部wnを移動方向上流側に向かって起こすことができる。
具体的には、
図7Cに示すように、首部wnの根元部分nbが先細通路42で引っかかると、ワークwにおける根元部分nbよりも下方の部分が根元部分nbよりも移動方向下流側に移動することで、首部wnは、根元部分nbを中心に図示時計方向(矢印e方向)に回動することとなる。その結果、
図7Dに示すように根元部分nbよりも先端側の首部wnが図示時計方向に回動して起き上がる。
なお、根元部分nbが先細通路42を通過した後、首部wnは移動方向下流側に向かって再び倒れようとする。しかし、姿勢調整装置40よりも移動方向下流側に位置するスクレーパ部24やブラケット32等に首部wnが当たることで、首部wnの倒れは規制される。
【0034】
上述した食鳥処理装置10では、肉部wmを肩甲骨wbから分離する直前に姿勢調整装置40によってワークwの首部wnを起こすことで、肉部wmを肩甲骨wbから分離する際に首部wnが邪魔にならないため、肉部wmを肩甲骨wbから分離する確実性が向上する。
【0035】
上述した食鳥処理装置10では、姿勢調整装置40は、固定治具20に対して相対的に移動方向上流側に向かって移動して首部wnを起こすとよい。すなわち、上述した食鳥処理装置10では、姿勢調整装置40は不動であって、固定治具20が移動方向下流側に向かって移動してもよいし、姿勢調整装置40自身が移動方向上流側に向かって移動してもよい。上述した食鳥処理装置10では、姿勢調整装置40と固定治具20との移動方向への相対的な移動によって首部wnを起こすことできる。
これにより、簡素な構成の姿勢調整装置40によって容易に首部wnを起こすことができる。
【0036】
上述した姿勢調整装置40では、突出板部43と他方の第2板部42bとの相対位置が不変であるので、突出板部43と他方の第2板部42bとを相対的に移動させる必要がなく、姿勢調整装置40の構成を簡素化できる。
また、上述した姿勢調整装置40では、先細通路42とガイド部材41との相対位置は不変であるので、先細通路42とガイド部材41とを相対的に移動させる必要がなく、姿勢調整装置40の構成を簡素化できる。
【0037】
上述した姿勢調整装置40では、上述したように、突出板部43及び他方の第2板部42bが固定治具20の中心を通る中心線Cに対して非対称に形成されていることで、同じ通路幅Pwであっても、対称に形成されている場合よりも首部wnが先細通路42を通過する際の抵抗を大きくすることができる。
首部wnが先細通路42を通過する際の抵抗を大きくすることで首部wnをより確実に起こすことができる。しかし、首部wnが先細通路42を通過する際の抵抗を大きくするために先細通路42の通路幅Pwを狭くしてしまうと、食鳥屠体毎に首部wnの太さが異なるため、食鳥屠体によっては抵抗が過剰に大きくなって、食鳥屠体に掛かる負担を不必要に大きくしてしまうおそれがある。そこで、突出板部43と他方の第2板部42bとが上方から見たときに中心線Cに対して非対称に形成されていれば、通路幅Pwをある程度確保しつつ、首部wnが先細通路42を通過する際の抵抗を大きくすることができるので、首部wnが先細通路42を通過する際に食鳥屠体に掛かる負担を抑制できる。
【0038】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば上述した実施形態では、姿勢調整装置40は、肩甲骨wb周りの肉部wmの分離、及び肩甲骨wb間の皮wsの切開を行う直前に首部wnを起こすことに用いられている。しかし、姿勢調整装置40の用途は、上述した用途に限定されず、食鳥処理の過程における他の工程のために用いられてもよい。
【0039】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係る食鳥処理装置10は、保持具(固定治具20)に保持された食鳥屠体(ワークw)の肩甲骨wb周りの肉部wmを肩甲骨wbから分離するためのスクレーパ部24と、肉部wmを肩甲骨wbから分離する際に保持具(固定治具20)に向かってスクレーパ部24が進行する進行方向の上流側に向かうにつれて、保持具(固定治具20)から離れる方向に向かって延在する刃先61を有し、スクレーパ部24に乗り上げた肉部wmにおける肩甲骨wb間の皮wsを刃先61で切開するための切開刃60と、を備える。
【0040】
上記(1)の構成によれば、スクレーパ部24に乗り上げた肉部wmにおける肩甲骨wb間の皮wsを切開刃60によって食鳥屠体(ワークw)の内側から切開できる。これにより、食鳥屠体(ワークw)の首部wnの肉部を傷つけ難くなるので、食鳥屠体(ワークw)の首部wnの肉部の歩留まりと品質を向上できる。
また、上記(1)の構成によれば、従来、2工程で行っていた肩甲骨wb周りの肉部wmを肩甲骨wbから分離する工程と肩甲骨wb間の皮wsを切開する工程とを1工程で実施できるので、食鳥屠体の処理効率が向上する。
【0041】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、切開刃60は、スクレーパ部24に固定されているとよい。
【0042】
上記(2)の構成によれば、スクレーパ部24に乗り上げた肉部wmにおける肩甲骨wb間の皮wsを容易に切開できる。
【0043】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、スクレーパ部24は、上記進行方向と交差する方向に離間して配置された一対のスクレーパ部材24a及び24bを備えているとよい。切開刃60は、一対のスクレーパ部材24a及び24bのいずれか一方に固定されているとよい。
【0044】
上記(3)の構成によれば、一対のスクレーパ部材24a及び24bを食鳥屠体(ワークw)の肩甲骨wbの位置及び向きに合わせて配置できるため、肉部wmを肩甲骨wbから分離する際、一対のスクレーパ部材24a及び24bを肩甲骨wbの表面に確実に倣わせることができる。これによって、分離された肉部wmの歩留まりを向上できる。
また、上記(3)の構成によれば、切開刃60を一対のスクレーパ部材24a及び24bのいずれか一方に容易に固定できる。
【0045】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、一対のスクレーパ部材24a及び24bの上記進行方向の下流側の端面251a及び251bは、上記進行方向の上流側に向かうにつれて、保持具(固定治具20)の移動方向下流側に向かって延在するとよい。
【0046】
上記(4)の構成によれば、一対のスクレーパ部材24a及び24bが食鳥屠体(ワークw)に侵入する際に一対のスクレーパ部材24a及び24bの上記進行方向の下流側の端面(端面251a及び251b)の内、保持具(固定治具20)の移動方向上流側の端部252a及び252bから侵入することになるので、一対のスクレーパ部材24a及び24bが食鳥屠体(ワークw)に侵入し易くなる。これにより、肉部wmを肩甲骨wbから分離する際、一対のスクレーパ部材24a及び24bが肩甲骨wbの表面に到達し易くなり、分離された肉部wmの歩留まりを向上できる。
【0047】
(5)幾つかの実施形態では、上記(4)の構成において、一対のスクレーパ部材24a及び24bは、一対のスクレーパ部材24a及び24bの上記進行方向の下流側の端面(端面251a及び251b)の内、保持具(固定治具20)の移動方向上流側の端部252a及び252bを含む一部の領域R1にだけ刃先253a及び253bが形成されているとよい。
【0048】
上記(5)の構成によれば、肉部wmを肩甲骨wbから分離する際、一対のスクレーパ部材24a及び24bが肩甲骨wbの表面に到達し易くなり、分離された肉部wmの歩留まりを向上できる。
また、上記(5)の構成によれば、一対のスクレーパ部材24a及び24bの上記進行方向の下流側の端面251a及び251bの内、上記一部の領域R1以外の領域R2には刃先253a及び253bが形成されていないため、該領域R2によって肩甲骨wbを削ってしまうおそれが少なくなる。これにより、肩甲骨wbが削られて肉部wmに異物として付着するおそれが少なくなる。
【0049】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、切開刃60とはスクレーパ部24を挟んで反対側に位置する肉部案内部70を備えるとよい。
【0050】
上記(6)の構成によれば、肉部wmを肩甲骨wbから分離する際に皮wsのついた肉部wmを肉部案内部70によって切開刃60に案内できるので、切開刃60による肩甲骨wb間の皮wsの切開の確実性を向上できる。
【0051】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、スクレーパ部24に対して保持具(固定治具20)の移動方向上流側に位置していて、食鳥屠体(ワークw)の首部wnを起こすための姿勢調整装置40を備えるとよい。姿勢調整装置40は、保持具(固定治具20)が移動する軌跡の上方に位置し、食鳥屠体(ワークw)の首部wnを案内するためのガイド部材41と、上記軌跡の上方かつガイド部材41に対して保持具(固定治具20)の移動方向下流側に位置し、該移動方向下流側に向かって通路幅Pwが狭くなる先細通路42と、を有するとよい。
【0052】
上記(7)の構成によれば、首部wnが先細通路42を通過する際に上記移動方向下流側に向かって通路幅Pwが狭くなるため首部wnが徐々に先細通路42を通過し難くなることで、上記移動方向下流側に向かって倒れていた首部wnを上記移動方向上流側に向かって起こすことができる。肉部wmを肩甲骨wbから分離する直前に姿勢調整装置40によって食鳥屠体(ワークw)の首部wnを起こすことで、肉部wmを肩甲骨wbから分離する際に首部wnが邪魔にならないため、肉部wmを肩甲骨wbから分離する確実性が向上する。
【0053】
(8)幾つかの実施形態では、上記(7)の構成において、姿勢調整装置40は、保持具(固定治具20)に対して相対的に上記移動方向上流側に向かって移動して首部wnを起こすとよい。
【0054】
上記(8)の構成によれば、容易に首部wnを起こすことができる。
【0055】
(9)幾つかの実施形態では、上記(7)又は(8)の構成において、先細通路42は、上記移動方向と交差する方向に離間して配置された一対の壁部(突出板部43及び他方の第2板部42b)によって構成されているとよい。そして、一対の壁部(突出板部43及び他方の第2板部42b)の一方(突出板部43)と他方(他方の第2板部42b)との相対位置は不変であるとよい。
【0056】
上記(9)の構成によれば、一対の壁部(突出板部43及び他方の第2板部42b)の一方(突出板部43)と他方(他方の第2板部42b)を相対的に移動させる必要がないので、姿勢調整装置40の構成を簡素化できる。
【0057】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、一対の壁部(突出板部43及び他方の第2板部42b)の一方(突出板部43)と他方(他方の第2板部42b)とは、上方から見たときの保持具(固定治具20)の中心位置が通過する中心線(中心線C)に対して非対称に形成されていてもよく、一対の壁部の一方(突出板部43)は、保持具(固定治具20)の移動方向下流側に向かうにつれて一対の壁部の他方(他方の第2板部42b)に向かって徐々に近づくように形成されていてもよい。
【0058】
上記(10)の構成によれば、通路幅Pwをある程度確保しつつ、首部wnが先細通路42を通過する際の抵抗を大きくすることができるので、首部wnが先細通路42を通過する際に食鳥屠体(ワークw)に掛かる負担を抑制できる。
【0059】
(11)幾つかの実施形態では、上記(7)乃至(10)の何れかの構成において、先細通路42とガイド部材41との相対位置は不変であるとよい。
【0060】
上記(11)の構成によれば、先細通路42とガイド部材41とを相対的に移動させる必要がないので、姿勢調整装置40の構成を簡素化できる。
【符号の説明】
【0061】
10 食鳥処理装置
20 固定治具(保持具)
22 筋入れ部
24 スクレーパ部
24a、24b スクレーパ部材
40 姿勢調整装置
41 ガイド部材
42 先細通路
60 切開刃
70 肉部案内部