(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021335
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】スクレーパ装置
(51)【国際特許分類】
A22C 21/00 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124091
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 紀行
(72)【発明者】
【氏名】高梨 功史
(72)【発明者】
【氏名】岩木 さやか
【テーマコード(参考)】
4B011
【Fターム(参考)】
4B011FA03
(57)【要約】
【課題】食鳥屠体の被処理部に付いた肉の除去を自動化する。
【解決手段】本開示の少なくとも一実施形態に係るスクレーパ装置は、保持具に保持された食鳥屠体の搬送方向の直交方向に互いに対向して配置され、食鳥屠体の被処理部を挟み込むようにして被処理部に付いた肉を除去するための一対のスクレーパを備える。本開示の少なくとも一実施形態に係るスクレーパ装置は、搬送方向に移動する食鳥屠体の被処理部の形状に倣って一対のスクレーパの上記直交方向のずれを許容するように一対のスクレーパを支持する支持部を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持具に保持された食鳥屠体の搬送方向の直交方向に互いに対向して配置され、前記食鳥屠体の被処理部を挟み込むようにして前記被処理部に付いた肉を除去するための一対のスクレーパと、
前記搬送方向に移動する前記食鳥屠体の前記被処理部の形状に倣って前記一対のスクレーパの前記直交方向のずれを許容するように前記一対のスクレーパを支持する支持部と、
を備えるスクレーパ装置。
【請求項2】
前記一対のスクレーパで前記被処理部を挟み込むように前記一対のスクレーパを前記直交方向に移動させるための第1駆動部、
を備える
請求項1に記載のスクレーパ装置。
【請求項3】
前記支持部は、
前記一対のスクレーパの内の一方のスクレーパが先端に取り付けられた一方の腕部、及び、前記一対のスクレーパの内の他方のスクレーパが先端に取り付けられた他方の腕部、と含む一対の腕部と、
前記一対のスクレーパが前記直交方向に移動するように前記一対の腕部のそれぞれを回動可能に軸支する一対の軸支部と、
を有し、
前記第1駆動部は、前記一方の腕部の基端と前記他方の腕部の基端との間の距離を変更するように構成されている
請求項2に記載のスクレーパ装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記一対の軸支部のそれぞれを中心として回動する前記一対の腕部の回動範囲を規制する規制部材を有する
請求項3に記載のスクレーパ装置。
【請求項5】
前記第1駆動部は、前記一方の腕部の基端と前記他方の腕部の基端とにだけ拘束されている
請求項3又は4に記載のスクレーパ装置。
【請求項6】
前記一対のスクレーパを前記保持具に向かって接近するように移動させるための第2駆動部、
を備える
請求項1乃至4の何れか一項に記載のスクレーパ装置。
【請求項7】
前記一対のスクレーパの内の一方のスクレーパは、前記一方のスクレーパの先端面と前記一対のスクレーパの内の他方のスクレーパに面した側面との接続部が面取りされており、
前記他方のスクレーパは、前記他方のスクレーパの先端面と前記一方のスクレーパに面した側面との接続部が面取りされている
請求項1乃至4の何れか一項に記載のスクレーパ装置。
【請求項8】
前記被処理部は、胸骨稜軟骨部位である、
請求項1乃至4の何れか一項に記載のスクレーパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鶏などの家禽類からなる食鳥屠体の解体処理に関するスクレーパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、鶏などの家禽類からなる食鳥屠体を解体し、肉部と骨部を分離する解体処理工程は、食鳥屠体を脱羽放血し、内蔵などの除去(中抜き)等の前処理を行い、その後、解体及び脱骨を行っている。この解体・脱骨処理は人手で行うと作業効率が悪いので、自動化が進められている(例えば特許文献1参照)。
また、食鳥屠体の上半身から手羽付き胸肉及びササミが分離された後の食鳥屠体から、通称「ヤゲン」と称される胸骨稜軟骨部位を分離する装置が知られている(例えば特許文献2参照)。胸骨稜軟骨部位は、焼き鳥として賞味されたり、あるいは変形性関節症やリューマチに効用があると言われるグルコサミン等の原料として利用されたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6216056号公報
【特許文献2】特開2013-017452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、手羽付き胸肉及びササミが分離された後の食鳥屠体における胸骨稜軟骨部位には、ササミの肉がわずかに残る。従来、胸骨稜軟骨部位に残った肉は人手で除去している。そのため、胸骨稜軟骨部位に残った肉の除去のように、食鳥屠体の被処理部に付いた肉の除去の自動化が求められている。
【0005】
本開示の少なくとも一実施形態は、上述の事情に鑑みて、食鳥屠体の被処理部に付いた肉の除去を自動化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るスクレーパ装置は、
保持具に保持された食鳥屠体の搬送方向の直交方向に互いに対向して配置され、前記食鳥屠体の被処理部を挟み込むようにして前記被処理部に付いた肉を除去するための一対のスクレーパと、
前記搬送方向に移動する前記食鳥屠体の前記被処理部の形状に倣って前記一対のスクレーパの前記直交方向のずれを許容するように前記一対のスクレーパを支持する支持部と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示の少なくとも一実施形態によれば、食鳥屠体の被処理部に付いた肉の除去を自動化できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】スクレーパ装置がコーンから離反した退避位置にあるときのスクレーパ装置及び搬送装置を側方から見た図である。
【
図2】スクレーパ装置が残肉を除去する除去位置にあるときのスクレーパ装置及び搬送装置を側方から見た図である。
【
図3】
図1に示した、退避位置にあるときのスクレーパ装置をチェーンコンベアの搬送方向(矢印a方向)の下流側から見た図である。
【
図4】
図2に示した、除去位置にあるときのスクレーパ装置をチェーンコンベアの搬送方向(矢印a方向)の下流側から見た図である。
【
図5】
図2に示した、除去位置にあるときのスクレーパ装置の斜視図である。
【
図6A】
図2のA-A矢視図であり、一対のスクレーパが第3方向にずれていない場合を表している。
【
図6B】
図2のA-A矢視図であり、一対のスクレーパが第3方向にずれている場合の一例を表している。
【
図6C】
図2のA-A矢視図であり、一対のスクレーパが第3方向にずれている場合の他の一例を表している。
【
図7】一対のスクレーパと胸骨稜軟骨部位とをチェーンコンベアの搬送方向(矢印a方向)の下流側から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本開示の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0010】
(搬送装置1)
先ず、一実施形態に係るスクレーパ装置を説明する前に、食鳥屠体を搬送する搬送装置について説明する。
図1は、スクレーパ装置100がコーン12から離反した退避位置にあるときのスクレーパ装置100及び搬送装置1を側方から見た図である。
図2は、スクレーパ装置100が残肉を除去する除去位置にあるときのスクレーパ装置100及び搬送装置1を側方から見た図である。
【0011】
搬送装置1は、矢印a方向に一定速度で移動するチェーンコンベア10を有している。チェーンコンベア10にはその搬送方向に沿って等間隔に複数の円錐形状のコーン12(保持具)が取り付けられている。コーン12はリンク機構14により搬送方向前方又は後方へ任意の角度で傾斜可能に構成されている。チェーンコンベア10の始端部(不図示)に位置するコーン12には、中抜きされかつ脚部が分離された食鳥屠体が載置される。
【0012】
コーン12には、不図示のリンク機構によりコーン先端側とコーン基端側との間を移動可能なフック16が設けられている。フック16は、食鳥屠体がコーン12に載置された後に、食鳥屠体の胸骨中央を係止して食鳥屠体をコーン12に固定する。食鳥屠体は複数のコーン12の夫々に載置固定された状態で搬送され、搬送中にチェーンコンベア10に面して搬送方向に順々に配置された複数の処理部で解体・脱骨処理される。コーン12に固定された食鳥屠体は、先ず、食鳥屠体から手羽付き胸肉を分離する処理工程が行われる。この手羽付き胸肉分離工程が行われると、コーン12には手羽付き胸肉が分離された食鳥屠体ガラが残される。
【0013】
手羽付き胸肉分離工程が行われると、食鳥屠体ガラに対して、肋骨とササミとの間を筋入れして分離するササミ横筋入れ工程が行われ、ササミと肋骨とが分離される。
ササミと肋骨とが分離されると、ヤゲン筋入れ工程が行われ、胸骨稜軟骨部位20とササミとが分離される。そして、ササミ縦筋入れ工程によって、鎖骨とササミとが分離される。鎖骨とササミとが分離されると、食鳥屠体ガラからササミを採取するササミ取り工程が行われる。このササミ取り工程が行われると、コーン12には手羽付き胸肉、及びササミが分離された食鳥屠体ガラ(以下「ワークw」という。)が残される。
【0014】
ササミ取り工程が行われると、ワークwに対して、ヤゲン残肉除去工程が行われる。ヤゲン残肉除去工程では、後述するようにスクレーパ装置100の一対のスクレーパ111、112によって胸骨稜軟骨部位20の両側の表面に残っている残肉を除去する。
【0015】
ヤゲン残肉除去工程が行われると、ワークwから胸骨稜軟骨部位20を分離するヤゲン分離工程が行われて、ワークwから胸骨稜軟骨部位20が分離される。
【0016】
(スクレーパ装置100)
次に、一実施形態に係るスクレーパ装置100について説明する。
図3は、
図1に示した、退避位置にあるときのスクレーパ装置100をチェーンコンベア10の搬送方向(矢印a方向)の下流側から見た図であり、一対のスクレーパ111、112を開いた状態を示している。
図4は、
図2に示した、除去位置にあるときのスクレーパ装置100をチェーンコンベア10の搬送方向(矢印a方向)の下流側から見た図であり、除去位置において一対のスクレーパ111、112を閉じた状態を示している。
図5は、
図2に示した、除去位置にあるときのスクレーパ装置100の斜視図であり、除去位置において一対のスクレーパ111、112を閉じた状態を示している。
図6Aは、
図2のA-A矢視図であり、一対のスクレーパ111、112が後述する第3方向Dr3にずれていない場合を表している。
図6Bは、
図2のA-A矢視図であり、一対のスクレーパ111、112が後述する第3方向Dr3にずれている場合の一例を表している。
図6Cは、
図2のA-A矢視図であり、一対のスクレーパ111、112が後述する第3方向Dr3にずれている場合の他の一例を表している。
図7は、一対のスクレーパ111、112と胸骨稜軟骨部位20とをチェーンコンベア10の搬送方向(矢印a方向)の下流側から見た図である。なお、説明の便宜上、
図7では、一対のスクレーパ111、112と胸骨稜軟骨部位20とをわずかに離間させた状態で描いている。
【0017】
一実施形態に係るスクレーパ装置100は、一対のスクレーパ111、112と、一対のスクレーパを支持する支持部120と、第1駆動部151と、第2駆動部152とを備える。
説明の便宜上、各図における方向を以下のように定義する。チェーンコンベア10の搬送方向(矢印a方向)を第1方向Dr1とする。なお、第1方向Dr1のことを単に搬送方向と称することがある。
第1方向Dr1から見たときの、コーン12とスクレーパ装置100とが離間している方向であって第1方向Dr1と直交する方向を第2方向Dr2とする。
第1方向Dr1及び第2方向Dr2のそれぞれに対して直交する方向を第3方向Dr3とする。
なお、本実施形態においては、第2方向Dr2は鉛直方向と一致し、第1方向Dr1及び第3方向Dr3は、水平方向と一致する。
図1から
図4において紙面上側が鉛直方向上側であり、紙面下側が鉛直方向下側である。第2方向Dr2のことを単に上下方向と称することがある。
【0018】
(支持部120)
支持部120は、固定基板121と、揺動基板123と、一対の腕部131、132とを有する。
【0019】
(固定基板121)
固定基板121は、第2方向Dr2に延在する例えば板状の部材であり、上部がブラケット31を介して搬送装置1が取り付けられている不図示のフレームに固定されている。
固定基板121の下部には、揺動軸支部122が設けられている。揺動軸支部122は、第3方向Dr3に延在する揺動中心軸AX2周りに揺動基板123を揺動可能に軸支部である。
【0020】
(揺動基板123)
揺動基板123は、固定基板121の揺動軸支部122で揺動可能に軸支された例えば板状の部材であり、後述するように一対の腕部131、132のそれぞれを回動中心軸AX1周りに回動可能に軸支する一対の軸支部125、126を有する。
揺動基板123は、第2駆動部152によって揺動中心軸AX2周りに揺動するように構成されている。第2駆動部152は、例えばエアシリンダなどのアクチュエータであり、シリンダの基端部152aが固定基板121に取り付けられ、ロッドの先端部152bが揺動基板123に取り付けられている。第2駆動部152のロッドが伸縮することで、揺動基板123は、揺動中心軸AX2周りに揺動する。
【0021】
(一対の腕部131、132)
一対の腕部131、132は、一方の腕部131と他方の腕部132とを有する。一対の腕部131、132のそれぞれは、主として第1方向Dr1に延在している。
一方の腕部131は、先端131a、すなわち第1方向Dr1の下流側の端部に後述する一対のスクレーパ111、112の内の一方のスクレーパ111が取り付けられている。一方の腕部131は、基端131b、すなわち第1方向Dr1の上流側の端部に後述する第1駆動部151が取り付けられている。
他方の腕部132は、先端132a、すなわち第1方向Dr1の下流側の端部に後述する一対のスクレーパ111、112の内の他方のスクレーパ112が取り付けられている。他方の腕部132は、基端132b、すなわち第1方向Dr1の上流側の端部に後述する第1駆動部151が取り付けられている。
【0022】
一方の腕部131は、先端131aと基端131bとの間の位置で、一対の軸支部125、126の内の一方の軸支部125によって回動中心軸AX1周りに回動可能に軸支されている。
他方の腕部132は、先端132aと基端132bとの間の位置で、一対の軸支部125、126の内の他方の軸支部126によって回動中心軸AX1周りに回動可能に軸支されている。
【0023】
一対の腕部131、132は、第1駆動部151によってそれぞれ回動中心軸AX1周りに回動するように構成されている。第1駆動部151は、例えばエアシリンダなどのアクチュエータであり、例えばシリンダの基端部151aが一方の腕部131の基端131bに取り付けられ、ロッドの先端部151bが他方の腕部132の基端132bに取り付けられている。第1駆動部151のロッドが伸縮することで、一対の腕部131、132は、それぞれ回動中心軸AX1周りに回動する。
【0024】
なお、第1駆動部151は、一方の腕部131の基端131bと他方の腕部132の基端132bとにピン接合されている。
一実施形態に係るスクレーパ装置100では、第1駆動部151は、一方の腕部131の基端131bと他方の腕部132の基端132bとにだけ拘束されている。
【0025】
第1駆動部151のロッドが伸長すると、一方の腕部131の先端131aに取り付けられた一方のスクレーパ111と、他方の腕部132の先端132aに取り付けられた他方のスクレーパ112とが第3方向Dr3に沿って互いに接近するように移動する。
第1駆動部151のロッドが縮退すると、一方の腕部131の先端131aに取り付けられた一方のスクレーパ111と、他方の腕部132の先端132aに取り付けられた他方のスクレーパ112とが第3方向Dr3に沿って互いに離間するように移動する。
【0026】
すなわち、第1駆動部151は、後述するように一対のスクレーパ111、112で胸骨稜軟骨部位20を挟み込むように一対のスクレーパ111、112を第3方向Dr3に移動させるための駆動部である。
これにより、後述するように一対のスクレーパ111、112で胸骨稜軟骨部位20を挟み込んで胸骨稜軟骨部位20に付いている肉を効率的に除去できる。
【0027】
一実施形態に係るスクレーパ装置100では、支持部120(揺動基板123)は、一対の軸支部125、126を有する。そして、第1駆動部151は、一方の腕部131の基端131bと他方の腕部132の基端132bとの間の距離を変更するように構成されている。
これにより、比較的簡単な構成によって一対のスクレーパ111、112を第3方向Dr3に移動させて後述するように胸骨稜軟骨部位20を挟み込むことができる。
【0028】
(一対のスクレーパ111、112)
一対のスクレーパ111、112は、それぞれ主として第2方向Dr2に延在する板状の部材である。一対のスクレーパ111、112は、一方のスクレーパ111と、他方のスクレーパ112とを有する。
一対のスクレーパ111、112は、先端部111a、112aがそれぞれ一対の腕部131、132の先端131a、132aから下方に向かって突出するように一対の腕部131、132の先端131a、132aに取り付けられている。
【0029】
図7によく示すように、一方のスクレーパ111は、下側を向いた先端面111dと、他方のスクレーパ112に面した側面111sと、先端面111dと側面111sとの接続部であって面取りされた接続部111cとを有する。
他方のスクレーパ112は、下側を向いた先端面112dと、一方のスクレーパ111に面した側面112sと、先端面112dと側面112sとの接続部であって面取りされた接続部112cとを有する。
【0030】
接続部111c、112cは、それぞれ
図7に示す例では角面取りされているが、丸面取りされていてもよい。
なお、一対のスクレーパ111、112では、胸骨稜軟骨部位20に当接した時の面圧を上げるために、先端面111d、112d、及び接続部111c、112cの先端面の近傍の厚さを先端面111d、112d、及び接続部111c、112cから遠い領域における厚さよりも薄くするとよい。
また、側面111s、112sの内、胸骨稜軟骨部位20に当接する領域の厚さを該領域から遠い領域における厚さよりも薄くしてもよい。
【0031】
(胸骨稜軟骨部位20の両側の表面に残っている残肉の除去について)
このように構成される一実施形態に係るスクレーパ装置100では、次のようにして胸骨稜軟骨部位20の両側の表面に残っている残肉を除去する。
なお、一実施形態に係るスクレーパ装置100では、各部の以下の動作を可能とする不図示の制御装置を備えている。
【0032】
まず、
図1に示すように、スクレーパ装置100は、退避位置においてワークwが所定の位置に搬送されてくるまで待機する。なお、一実施形態に係るスクレーパ装置100では、第2駆動部152のロッドを縮退させることで、揺動基板123、一対の腕部131、132、及び一対のスクレーパ111、112は、揺動中心軸AX2周りに
図1及び
図2における時計方向に揺動して、退避位置に移動する。
また、退避位置では、第1駆動部151のロッドは縮退していて、
図3に示すように、一対のスクレーパ111、112は開いた状態となっている。
【0033】
ワークwが所定の位置に到達すると、スクレーパ装置100は、除去位置に移動して、胸骨稜軟骨部位20の両側の表面に残っている残肉を除去する。具体的には、スクレーパ装置100は、ワークwが所定の位置に到達すると、第2駆動部152のロッドを伸長させることで、揺動基板123、一対の腕部131、132、及び一対のスクレーパ111、112は、揺動中心軸AX2周りに
図1及び
図2における反時計方向に揺動して、除去位置に移動する。これにより、一対のスクレーパ111、112は、先端部111a、112aがそれぞれワークwの上面に当接する。なお、この時、第1駆動部151のロッドは縮退していて、
図3に示すように、一対のスクレーパ111、112は開いた状態となっている。
【0034】
このように、一実施形態に係るスクレーパ装置100では、第2駆動部152は、一対のスクレーパ111、112をコーン12に向かって接近するように移動させるための駆動部である。
これにより、胸骨稜軟骨部位20に対して一対のスクレーパ111、112を適切な位置に移動できので、胸骨稜軟骨部位20に付いている肉を効率的に除去できる。
【0035】
スクレーパ装置100は、除去位置に移動した後、第1駆動部151のロッドを伸長させて、
図4及び
図7に示すように、一対のスクレーパ111、112を閉じさせる。これにより、一方のスクレーパ111の側面111sと、他方のスクレーパ112の側面112sとで胸骨稜軟骨部位20の側面を挟み込む。
この状態でワークwが搬送方向下流側に移動することで、一対のスクレーパ111、112の先端面111d、112d、接続部111c、112c、及び側面111s、112sで胸骨稜軟骨部位20の両側の表面に残っている残肉が除去される。
【0036】
一実施形態に係るスクレーパ装置100では、一方のスクレーパ111は、先端面111dと側面111sとの接続部であって面取りされた接続部111cを有し、他方のスクレーパ112は、先端面112dと側面112sとの接続部であって面取りされた接続部112cを有する。
これにより、胸骨稜軟骨部位20の形状に合わせて接続部111c、112cを面取りしておくことで、接続部111c、112cで胸骨稜軟骨部位20が傷つくことを抑制できるとともに、効率的に肉を除去できる。
【0037】
スクレーパ装置100は、残肉の除去後、退避位置に退避して、次のワークwが所定の位置に到達するまで待機し、次のワークwが所定の位置に到達すると、上述した動作を再び実行する。
【0038】
(一対のスクレーパ111、112の第3方向Dr3へのずれの許容について)
一実施形態に係るスクレーパ装置100では、一対のスクレーパ111、112で胸骨稜軟骨部位20の側面を挟み込んでいるときに胸骨稜軟骨部位20の形状に倣って一対のスクレーパ111、112の第3方向Dr3へのずれの許容するように構成されている。
上述したように、一実施形態に係るスクレーパ装置100では、一対の腕部131、132は、それぞれ先端131a、132aと基端131b、132bとの間の位置で、一対の軸支部125、126によって回動中心軸AX1周りに回動可能に軸支されている。そのため、第1駆動部151のロッドが伸長すると、
図4及び
図6A乃至
図6Cに示すように、一対のスクレーパ111、112は閉じるように、第3方向Dr3に沿って移動する。
【0039】
この時、一対のスクレーパ111、112が例えば胸骨稜軟骨部位20を挟まない状態で閉じた場合、
図6Aに示すように、第2方向Dr2から見たときの一対のスクレーパ111、112は、チェーンコンベア10によって形成されるコーン12の搬送経路に沿い、コーン12の中心を通る中心線Cを挟んで対向する。
上述したように、一実施形態に係るスクレーパ装置100では、第1駆動部151は、一方の腕部131の基端131bと他方の腕部132の基端132bとにだけ拘束されている。すなわち、一実施形態に係るスクレーパ装置100では、第1駆動部151は、一対の腕部131、132以外の構造物には拘束されていないため、一対の腕部131、132とともに自由に動くことができる。
そのため、
図6B及び
図6Cに示すように、一対の腕部131、132が回動中心軸AX1周りに回動することで、一対のスクレーパ111、112が第3方向Dr3に沿って中心線Cから離れるようにずれることができる。
これにより、胸骨稜軟骨部位20においてワークwの外側、すなわち第2方向Dr2に向かって突出する部位21が第2方向Dr2から見たときに上記中心線Cからずれるように変形していた場合であっても、胸骨稜軟骨部位20の形状に倣って一対のスクレーパ111、112の第3方向Dr3へのずれが許容される。
【0040】
なお、一対のスクレーパ111、112が第3方向Dr3に沿って中心線Cから離れるようにずれる場合、一対の軸支部125、126を挟んで一対のスクレーパ111、112とは反対側に位置する第1駆動部151も第3方向Dr3に沿って移動することになる。上述したように、一実施形態に係るスクレーパ装置100では、第1駆動部151は、一対の腕部131、132以外の構造物には拘束されていないため、一対の腕部131、132とともに自由に動くことができる。そのため、一対のスクレーパ111、112が第3方向Dr3にずれることを第1駆動部151が妨げない。
【0041】
一実施形態に係るスクレーパ装置100は、一対の軸支部125、126のそれぞれを中心として回動する一対の腕部131、132の回動範囲を規制する規制部材141を備える。
具体的には、規制部材141は、以下に述べる突出部148、149の回動範囲を規制する4本の規制ボルト141a、141b、141c、141dである。4本の規制ボルト141a、141b、141c、141dは、それぞれ揺動基板123に固定されている。
一方の腕部131は、一方の軸支部125の回動中心軸AX1を中心とする径方向外側に延在し、一方の腕部131に固定された一方の突出部148を有する。
他方の腕部132は、他方の軸支部126の回動中心軸AX1を中心とする径方向外側に延在し、他方の腕部132に固定された他方の突出部149を有する。
【0042】
一方の腕部131が一方の軸支部125の回動中心軸AX1を中心に回動すると、該回動中心軸AX1を中心として一方の突出部148も回動する。
一方の突出部148の回動範囲は、2本の規制ボルト141a、141bで規制され、他方の突出部149の回動範囲は、他の2本の規制ボルト141c、141dで規制される。
【0043】
一方の突出部148よりも搬送方向(第1方向Dr1)の下流側に位置する規制ボルト141aは、
図6Bに示すように、その先端部が一方の突出部148に搬送方向(第1方向Dr1)の下流側から当接することで、一方の腕部131の図示反時計方向への回動を規制する。
一方の突出部148よりも搬送方向(第1方向Dr1)の上流側に位置する規制ボルト141bは、
図6Cに示すように、その先端部が一方の突出部148に搬送方向(第1方向Dr1)の上流側から当接することで、一方の腕部131の図示時計方向への回動を規制する。
【0044】
他方の突出部149よりも搬送方向(第1方向Dr1)の下流側に位置する規制ボルト141cは、
図6Cに示すように、その先端部が他方の突出部149に搬送方向(第1方向Dr1)の下流側から当接することで、他方の腕部132の図示時計方向への回動を規制する。
他方の突出部149よりも搬送方向(第1方向Dr1)の上流側に位置する規制ボルト141dは、
図6Bに示すように、その先端部が他方の突出部149に搬送方向(第1方向Dr1)の上流側から当接することで、他方の腕部132の図示反時計方向への回動を規制する。
【0045】
このように、一実施形態に係るスクレーパ装置100では、一対のスクレーパ111、112の第3方向Dr3への移動範囲を制限できる。
【0046】
このように、一実施形態に係るスクレーパ装置100は、第3方向Dr3に互いに対向して配置され、ワークwの被処理部である胸骨稜軟骨部位20を挟み込むようにして胸骨稜軟骨部位20に付いた肉を除去するための一対のスクレーパ111、112を備える。一実施形態に係るスクレーパ装置100は、搬送方向(矢印a方向)に移動するワークwの胸骨稜軟骨部位20の形状に倣って一対のスクレーパ111、112の第3方向Dr3のずれを許容するように一対のスクレーパ111、112を支持する支持部120を備える。
これにより、胸骨稜軟骨部位20が傷つくことを抑制しつつ、胸骨稜軟骨部位20に付いている肉を効率的に除去できる。
【0047】
本開示は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した一実施形態に係るスクレーパ装置100では、胸骨稜軟骨部位20に残っている肉を除去するように構成されているが、胸骨稜軟骨部位20以外の部位に残っている肉を除去するように構成されていてもよい。また、上述した一実施形態に係るスクレーパ装置100では、食鳥屠体に残っている肉を除去するように構成されているが、食鳥屠体以外の家畜屠体に残っている肉を除去するように構成されていてもよい。
【0048】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
(1)本開示の少なくとも一実施形態に係るスクレーパ装置100は、保持具(コーン12)に保持された食鳥屠体(ワークw)の搬送方向の直交方向に互いに対向して配置され、食鳥屠体(ワークw)の被処理部(胸骨稜軟骨部位20)を挟み込むようにして被処理部(胸骨稜軟骨部位20)に付いた肉を除去するための一対のスクレーパ111、112を備える。本開示の少なくとも一実施形態に係るスクレーパ装置100は、搬送方向に移動する食鳥屠体(ワークw)の被処理部(胸骨稜軟骨部位20)の形状に倣って一対のスクレーパ111、112の上記直交方向(第3方向Dr3)のずれを許容するように一対のスクレーパ111、112を支持する支持部120を備える。
【0049】
上記(1)の構成によれば、食鳥屠体(ワークw)の被処理部(胸骨稜軟骨部位20)の形状に倣って一対のスクレーパ111、112が動くので、被処理部(胸骨稜軟骨部位20)が傷つくことを抑制しつつ、被処理部(胸骨稜軟骨部位20)に付いている肉を効率的に除去できる。
【0050】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、一対のスクレーパ111、112で被処理部(胸骨稜軟骨部位20)を挟み込むように一対のスクレーパ111、112を上記直交方向(第3方向Dr3)に移動させるための第1駆動部151、を備えるとよい。
【0051】
上記(2)の構成によれば、一対のスクレーパ111、112で被処理部(胸骨稜軟骨部位20)を挟み込んで被処理部(胸骨稜軟骨部位20)に付いている肉を効率的に除去できる。
【0052】
(3)幾つかの実施形態では、上記(2)の構成において、支持部120は、一対のスクレーパ111、112の内の一方のスクレーパ111が先端に取り付けられた一方の腕部131、及び、一対のスクレーパ111、112の内の他方のスクレーパ112が先端に取り付けられた他方の腕部132、と含む一対の腕部131、132を有する。支持部120は、一対のスクレーパ111、112が上記直交方向(第3方向Dr3)に移動するように一対の腕部131、132のそれぞれを回動可能に軸支する一対の軸支部125、126を有する。第1駆動部151は、一方の腕部131の基端131bと他方の腕部132の基端132bとの間の距離を変更するように構成されているとよい。
【0053】
上記(3)の構成によれば、比較的簡単な構成によって一対のスクレーパ111、112を上記直交方向(第3方向Dr3)に移動させて食鳥屠体(ワークw)の被処理部(胸骨稜軟骨部位20)を挟み込むことができる。
【0054】
(4)幾つかの実施形態では、上記(3)の構成において、一対の軸支部125、126のそれぞれを中心として回動する一対の腕部131、132の回動範囲を規制する規制部材141、を備えるとよい。
【0055】
上記(4)の構成によれば、一対のスクレーパ111、1112の上記直交方向(第3方向Dr3)への移動範囲を制限できる。
【0056】
(5)幾つかの実施形態では、上記(3)又は(4)の構成において、第1駆動部151は、一方の腕部131の基端131bと他方の腕部132の基端132bとにだけ拘束されているとよい。
【0057】
上記(5)の構成によれば、第1駆動部151は、一対の腕部131、132以外には拘束されていないため、一対の腕部131、132とともに自由に動くことができる。これにより、一対のスクレーパ111、112が上記直交方向(第3方向Dr3)にずれることを第1駆動部が妨げない。
【0058】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、一対のスクレーパ111、112を保持具(コーン12)に向かって接近するように移動させるための第2駆動部152、を備えるとよい。
【0059】
上記(6)の構成によれば、被処理部(胸骨稜軟骨部位20)に対して一対のスクレーパ111、112を適切な位置に移動できので、被処理部(胸骨稜軟骨部位20)に付いている肉を効率的に除去できる。
【0060】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、一対のスクレーパ111、112の内の一方のスクレーパ111は、一方のスクレーパ111の先端面111dと一対のスクレーパ111、112の内の他方のスクレーパ112に面した側面111sとの接続部111cが面取りされているとよく、他方のスクレーパ112は、他方のスクレーパ112の先端面112dと一方のスクレーパ111に面した側面112sとの接続部112cが面取りされているとよい。
【0061】
上記(7)の構成によれば、被処理部(胸骨稜軟骨部位20)の形状に合わせて接続部111c、112cを面取りしておくことで、接続部111c、112cで被処理部(胸骨稜軟骨部位20)が傷つくことを抑制できるとともに、効率的に肉を除去できる。
【0062】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、被処理部は、胸骨稜軟骨部位20であってもよい。
【0063】
上記(8)の構成によれば、胸骨稜軟骨部位20が傷つくことを抑制しつつ、胸骨稜軟骨部位20に付いている肉を効率的に除去できる。
【符号の説明】
【0064】
1 搬送装置
12 コーン(保持具)
20 胸骨稜軟骨部位(被処理部)
100 スクレーパ装置
111 スクレーパ(一方のスクレーパ)
111c 接続部
112 スクレーパ(他方のスクレーパ)
112c 接続部
120 支持部
125 軸支部(一方の軸支部)
126 軸支部(他方の軸支部)
131 腕部(一方の腕部)
132 腕部(他方の腕部)
141 規制部材
151 第1駆動部
152 第2駆動部