(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021346
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】ターミナルおよび管理システムおよび管理方法
(51)【国際特許分類】
B65G 63/00 20060101AFI20240208BHJP
B66C 13/12 20060101ALI20240208BHJP
B66C 13/22 20060101ALI20240208BHJP
B66C 19/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B65G63/00 G
B66C13/12 Z
B66C13/22 Z
B66C19/00 B
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124112
(22)【出願日】2022-08-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-08-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】坂口 善樹
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA03
3F204CA07
3F204DA02
3F204DA08
3F204GA01
(57)【要約】
【課題】荷役効率の低下を抑制できるターミナルおよび管理システムおよび管理方法を提供する。
【解決手段】多数の荷役作業データが示す荷役作業の開始から終了までの荷役効率が基準を下回らない制約条件を満たした上で、割当られた複数の荷役作業データが示す荷役作業を実行する複数の荷役作業時間とそれらの複数の荷役作業時間の合間で荷役作業を実行しない隙間時間とが組み込まれた作業スケジュールを複数の荷役機器ごとに作成するデータ処理を実行するとともに、複数の隙間時間の少なくとも一つに供給機器から荷役機器に水素ガスを供給する供給作業を設定する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素ガスを燃料とする複数の荷役機器と、この荷役機器に水素ガスを供給する供給機器と、多数の荷役作業データの中の複数の荷役作業データを前記荷役機器ごとに割り当てる管理システムとを備えるターミナルにおいて、
前記管理システムは、前記多数の荷役作業データが示す荷役作業の開始から終了までの荷役効率が基準を下回らない制約条件を満たした上で、割当られた前記複数の荷役作業データが示す荷役作業を実行する複数の荷役作業時間とそれらの複数の荷役作業時間の合間で荷役作業を実行しない隙間時間とが組み込まれた作業スケジュールを複数の前記荷役機器ごとに作成するデータ処理を実行するとともに、
複数の前記隙間時間の少なくとも一つに前記供給機器から前記荷役機器に水素ガスを供給する供給作業を設定する構成を備えることを特徴とするターミナル。
【請求項2】
前記管理システムが、前記荷役作業データが示す荷役作業ごとに必要となる必要時間を推定して、この必要時間と現在時刻に基づき前記供給作業の開始時刻を設定するとともに前記開始時刻を前記供給機器に通知する請求項1に記載のターミナル。
【請求項3】
前記供給機器が、車両と、この車両に搭載される水素タンクとを有していて、
前記管理システムが、前記供給作業の前記開始時刻の前に前記供給機器に対して前記供給作業の対象となる前記荷役機器までの移動を通知する請求項2に記載のターミナル。
【請求項4】
多数の荷役作業データの中の複数の荷役作業データを、水素ガスを燃料とする複数の荷役機器ごとに割り当てる管理システムにおいて、
前記多数の荷役作業データが示す荷役作業の開始から終了までの荷役効率が基準を下回らない制約条件を満たした上で、割当られた前記複数の荷役作業データが示す荷役作業を実行する複数の荷役作業時間とそれらの複数の荷役作業時間の合間で荷役作業を実行しない隙間時間とが組み込まれた作業スケジュールを複数の前記荷役機器ごとに作成するデータ処理を実行するとともに、
複数の前記隙間時間の少なくとも一つに供給機器から前記荷役機器に水素ガスを供給する供給作業を設定する構成を備えることを特徴とする管理システム。
【請求項5】
前記荷役作業データが示す荷役作業ごとに必要となる必要時間を推定して、この必要時間と現在時刻に基づき前記供給作業の開始時刻を設定する請求項4に記載の管理システム。
【請求項6】
前記管理システムが、前記荷役機器に割り当てられる複数の前記荷役作業データを時系列で並べた際に互いに隣接する複数の前記荷役作業データどうしをまとめて複数のデータグループを設定して、隣接する二つの前記データグループの間にある前記隙間時間に前記供給作業を設定する請求項4または5に記載の管理システム。
【請求項7】
対象となる前記荷役機器において、前記供給作業の後の前記データグループの終了までに必要となる水素ガスの量である必要量を推定して、この必要量とこの荷役機器の水素ガスの残量との差分となる水素ガスの量を下限値として、前記供給作業で前記荷役機器に供給される水素ガスの量である供給量を算出する請求項6に記載の管理システム。
【請求項8】
対象となる前記荷役機器において、この荷役機器に搭載されている水素タンクの圧力と前記供給機器に搭載されている水素タンクの圧力との差から前記荷役機器に供給可能な水素ガスの量の最大値を算出して、前記供給作業が設定されている前記隙間時間の間に前記供給機器から前記荷役機器に供給可能な水素ガスの量の最大値を算出して、算出された二つの最大値のうち小さい方を上限値として、前記供給作業で前記荷役機器に供給される水素ガスの量である供給量を算出する請求項6に記載の管理システム。
【請求項9】
多数の荷役作業データの中の複数の荷役作業データを、水素ガスを燃料とする複数の荷役機器ごとに割り当てる管理方法において、
前記多数の荷役作業データが示す荷役作業の開始から終了までの荷役効率が基準を下回らない制約条件を満たした上で、割当られた前記複数の荷役作業データが示す荷役作業を実行する複数の荷役作業時間とそれらの複数の荷役作業時間の合間で荷役作業を実行しない隙間時間とが組み込まれた作業スケジュールを複数の前記荷役機器ごとに作成するデータ処理を実行するとともに、
複数の前記隙間時間の少なくとも一つに供給機器から前記荷役機器に水素ガスを供給する供給作業を設定する構成を備えることを特徴とする管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ガスを燃料とする荷役機器を有するターミナルと、この荷役機器を管理する管理システムおよび管理方法に関するものであり、詳しくは荷役効率の低下を抑制できるターミナルおよび管理システムおよび管理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素の排出量を抑制したコンテナターミナルが種々提案されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1には、コンテナターミナルに敷設されるトロリ線から電気の供給を受けて動作する門型クレーンの構成が開示されている。門型クレーン等の荷役機器を電動化することで、コンテナターミナルにおける二酸化炭素の排出量を抑制できる。
【0003】
既設のコンテナターミナルにトロリ線を敷設する際には、長期間にわたり荷役作業ができなくなる不具合があった。一方で門型クレーンの燃料を水素ガスに変更することで二酸化炭素の排出量を抑制することが検討されている。
【0004】
水素ガスは軽油に比べて容積に対するカロリーが低いため、荷役作業中に門型クレーンが燃料切れとなる可能性がある。また門型クレーンに対する燃料供給作業の頻度が軽油よりも水素ガスの方が高くなる。門型クレーンの燃料を水素ガスに変更すると、コンテナターミナルにおける荷役効率が低下する可能性があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特開2003-137494号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題を鑑みてなされたものであり、その目的は荷役効率の低下を抑制できるターミナルおよび管理システムおよび管理方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するためのターミナルは、水素ガスを燃料とする複数の荷役機器と、この荷役機器に水素ガスを供給する供給機器と、多数の荷役作業データの中の複数の荷役作業データを前記荷役機器ごとに割り当てる管理システムとを備えるターミナルにおいて、前記管理システムは、前記多数の荷役作業データが示す荷役作業の開始から終了までの荷役効率が基準を下回らない制約条件を満たした上で、割当られた前記複数の荷役作業データが示す荷役作業を実行する複数の荷役作業時間とそれらの複数の荷役作業時間の合間で荷役作業を実行しない隙間時間とが組み込まれた作業スケジュールを複数の前記荷役機器ごとに作成するデータ処理を実行するとともに、複数の前記隙間時間の少なくとも一つに前記供給機器から前記荷役機器に水素ガスを供給する供給作業を設定する構成を備えることを特徴とする。
【0008】
上記の目的を達成するための管理システムは、多数の荷役作業データの中の複数の荷役作業データを、水素ガスを燃料とする複数の荷役機器ごとに割り当てる管理システムにおいて、前記多数の荷役作業データが示す荷役作業の開始から終了までの荷役効率が基準を下回らない制約条件を満たした上で、割当られた前記複数の荷役作業データが示す荷役作業を実行する複数の荷役作業時間とそれらの複数の荷役作業時間の合間で荷役作業を実行しない隙間時間とが組み込まれた作業スケジュールを複数の前記荷役機器ごとに作成するデータ処理を実行するとともに、複数の前記隙間時間の少なくとも一つに供給機器から前記荷役機器に水素ガスを供給する供給作業を設定する構成を備えることを特徴とする。
【0009】
上記の目的を達成するための管理方法は、多数の荷役作業データの中の複数の荷役作業データを、水素ガスを燃料とする複数の荷役機器ごとに割り当てる管理方法において、前記多数の荷役作業データが示す荷役作業の開始から終了までの荷役効率が基準を下回らない制約条件を満たした上で、割当られた前記複数の荷役作業データが示す荷役作業を実行する複数の荷役作業時間とそれらの複数の荷役作業時間の合間で荷役作業を実行しない隙間時間とが組み込まれた作業スケジュールを複数の前記荷役機器ごとに作成するデータ処理を実行するとともに、複数の前記隙間時間の少なくとも一つに供給機器から前記荷役機器に水素ガスを供給する供給作業を設定する構成を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、荷役機器が荷役作業を行っていない隙間時間に、燃料を供給する供給作業を行える。予め供給作業を行うタイミングが決定されているため、事前に供給作業の準備を行える。荷役効率の低下を抑制するには有利である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】管理システムの構成を例示する説明図である。
【
図3】管理システムにおけるデータ処理のフローを例示する説明図である。
【
図4】多数の荷役作業データを例示する説明図である。
【
図5】門型クレーンの作業スケジュールを例示する説明図である。
【
図6】
図3のフローの変形例を例示する説明図である。
【
図7】門型クレーンでコンテナを荷役する状況を例示する説明図である。
【
図8】推定ステップで処理されるデータを例示する説明図である。
【
図9】門型クレーンの作業スケジュールを例示する説明図である。
【
図10】
図9とは別の門型クレーンの作業スケジュールを例示する説明図である。
【
図11】移動型の供給機器の概略を例示する説明図である。
【
図12】移動型の供給機器の作業スケジュールを例示する説明図である。
【
図13】構内シャシの作業スケジュールを例示する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、ターミナルおよび管理システムおよび管理方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
【0013】
図1に例示するようにターミナル1は、コンテナ2が蔵置される複数の蔵置レーン3と、コンテナ船4が接岸する岸壁5とを備えている。コンテナ2は荷役機器6により荷役される。荷役機器6は、例えば岸壁5に配置される岸壁クレーン6a、蔵置レーン3に沿って走行する門型クレーン6b、およびターミナル1の中を走行する構内シャシ6cを含む。本明細書において荷役機器6は上記に限らず、荷役に使用される機器であればよく、例えばストラドルキャリアやフォークリフトやトプリフターやリーチスタッカーも含む概念である。荷役機器6はオペレータにより直接または遠隔で操作される有人の荷役機器6であってもよく、自動制御により制御される無人の荷役機器6であってもよい。
【0014】
複数の荷役機器6は水素ガスを燃料として動作する構成を有している。荷役機器6は、例えば燃料電池や、例えば水素エンジンと発電機を組み合わせた機構等を有している。ターミナル1において、すべての荷役機器6が水素ガスを燃料とする場合に限らない。一部の荷役機器6が給電ケーブルから供給される電気で動作して、他の荷役機器6が水素ガスを燃料として動作する構成であってもよい。
【0015】
ターミナル1は、管理棟7と、外来シャシ8の入退場を管理するゲート9とを備えている。管理棟7には荷役機器6の作業スケジュールを管理する管理システム10が設置されている。
図1では説明のため管理システム10を破線で示している。
【0016】
ターミナル1は、荷役機器6に水素ガスを供給する複数の供給機器11を備えている。供給機器11は、例えば水素タンクを搭載した車両を有する移動型の供給機器11aで構成される。移動型の供給機器11aは、荷役機器6の近傍まで移動して、水素ガスの供給を行うことができる。供給機器11は、例えば地表面に固定されるディスペンサと水素タンクとを有する固定型の供給機器11bで構成されてもよい。固定型の供給機器11bは、移動してきた荷役機器6に水素ガスの供給を行うことができる。
【0017】
本発明のターミナル1は、コンテナターミナルに限定されない。ターミナル1は、製鉄所等の製品出荷用の岸壁や、石炭などのバラ荷用の岸壁を含む。
【0018】
図2に例示するように管理システム10は公知の種々のコンピュータで構成できる。管理システム10は、中央演算処理部(CPU)12、主記憶部(メモリ)13、補助記憶部(例えばHDD)14、入力部(キーボード15、マウス)および出力部(ディスプレイ16、プリンタ)を有している。従来の管理システムに機能を追加したり、プログラムを変更することで本発明の管理システム10として利用できる。
【0019】
図3に例示するフローを参照しながら管理システム10が行う処理について説明する。以下、荷役機器6が門型クレーン6bである場合を例に説明する。管理システム10が処理を開始すると(スタート)、まず読込ステップS1で多数の荷役作業データの読み込みが行われる。具体的には補助記憶部14から主記憶部13に荷役作業データが読み込まれる。荷役作業データは、コンテナ船4や外来シャシ8などの輸送機器の発着予定日時や、蔵置レーン3などの保管設備での荷物の入出庫予定数に基づいて管理システム10により作成されてもよい。この場合は、読込ステップS1で補助記憶部14から主記憶部13に輸送機器の発着予定日時等が読み込まれて、主記憶部13と中央演算処理部12とが荷役作業データの作成を行う。
【0020】
図4に例示するように荷役作業データは、荷役作業の対象となるコンテナ2のコンテナ番号や、蔵置レーン3におけるコンテナ2の位置や、作業内容等が含まれている。また1、2等のように作業項目名が荷役作業データに含まれていてもよい。
【0021】
例えば作業項目名1では、3レーン2列5行3段のXXXU1234567のコンテナ2を外来シャシ8に搬出する作業が門型クレーン6bにより行われる。作業項目名2では、外来シャシ8からYYYU2345679のコンテナ2を5レーン3列4行5段に搬入する作業が門型クレーン6bにより行われる。なお門型クレーン6bの走行方向における位置を列、走行方向を直角に横断する横行方向における位置を行、上下方向における位置を段として、コンテナ2の位置は規定されている。
【0022】
割当ステップS2では、多数の荷役作業データが荷役機器6ごとに割り当てられる。例えば作業項目名1の荷役作業データは3レーンで荷役作業を行う門型クレーン6bに割り当てられ、作業項目名2の荷役作業は5レーンで荷役作業を行う門型クレーン6bに割り当てられる。荷役機器6が構内シャシ6cで構成される場合も同様に、構内シャシ6cごとにそれぞれ複数の荷役作業データが割り当てられる。
【0023】
作成ステップS3では、荷役機器6ごとに作業スケジュールが作成される。多数の荷役作業データが示す荷役作業の開始から終了までの荷役効率が基準を下回らない制約条件を満たした上で、複数の荷役作業データが示す荷役作業を実行する複数の荷役作業時間と、荷役作業時間の合間で荷役作業を実行しない隙間時間とを組み合わせた作業スケジュールを複数の荷役機器6ごとに作成するデータ処理を管理システム10が実行する。作成ステップS3で作業スケジュールを作成する方法は既存の方法を利用してもよい。その際、荷役作業時間のみならず隙間時間を組み合わせた作業スケジュールを作成する点で従来とは異なる。
【0024】
荷役効率の基準は任意に設定できる。この基準は、明らかに荷役効率が低下するような作業スケジュールを排除できればよい。制約条件は、ターミナル1において処理できる荷物の数が多くなるように設定されたり、多数の荷役作業の終了時刻を極力遅らせないように設定されたり、荷役効率の低下への影響の度合いが小さくなるように設定されてもよい。数理計画問題(最適化問題)では解が満たす条件であり、管理システム10による演算を限定できる。
【0025】
荷役効率とは、単位時間あたりに荷役できるコンテナ2等の荷物の数や、単位時間あたりの燃料の消費量で評価できる。
【0026】
作業スケジュールは、機械学習の予測モデルまたは数理最適化で作成できる。多数の荷役作業データごとに消費される燃料の消費量を予測して、多数の荷役作業の予定実行時刻と予測した燃料の消費量とから機械学習により生成された予測モデルを用いて、複数の荷役作業時間と隙間時間とを設定して、作業スケジュールが作成されてもよい。または蓄積された多数の作業スケジュールを学習データとする機械学習により生成された予測モデルと、多数の荷役作業データとを用いて、複数の荷役作業時間と隙間時間とが設定されて作業スケジュールが作成されてもよい。または多数の荷役作業データと最適化アルゴリズムとを用いて、複数の荷役作業時間と隙間時間とが設定されて作業スケジュールが作成されてもよい。学習データは、蓄積した多数の作業スケジュールを用いる。機械学習は、条件付きであればよい。最適化問題でもあるため、予測モデルに代えて、最急降下法、遺伝的アルゴリズム、ベイズ最適化などを用いてもよい。
【0027】
設定ステップS4では、作業スケジュールにおいて設定されている複数の隙間時間の中から少なくとも一つを選択して、この隙間時間の間に供給機器11から荷役機器6に水素ガスを供給する供給作業が設定される。作成ステップS3と設定ステップS4とが同時に実行されて、荷役作業時間と隙間時間とが設定される際に供給作業が同時に設定されてもよい。
【0028】
通知ステップS5では、作成された作業スケジュールが各荷役機器6および供給機器11に通知される。
図2に例示するように管理システム10が通信機17を備えていて、この通信機17を介して荷役機器6および供給機器11に作業スケジュールを通知する構成としてもよい。荷役機器6および供給機器11は、管理システム10から作業スケジュールを受領するための通信機等の機器を有している。
【0029】
図5に例示するように管理システム10で作成される作業スケジュールは、荷役作業時間の他に、隙間時間が設定されている。この作業スケジュールは2レーンで荷役作業を行う門型クレーン6bのものである。
図5に例示する実施形態では、隙間時間の一つに供給作業R1が設定されている。供給作業R1に対応する荷役作業データには、例えば5列など供給作業を行う位置が指定されていてもよい。
【0030】
門型クレーン6bが有人クレーンである場合、門型クレーン6bのモニタに作業スケジュールが表示される。オペレータは作業スケジュールを確認しながら荷役作業を行う。作業スケジュールの例えば上から下に向かって順番に荷役作業が行われる。
【0031】
荷役効率が基準を下回らない制約条件を満たした作業スケジュールに、荷役作業を行わない隙間時間が組み込まれている。この隙間時間を利用して荷役機器6に水素ガスを供給する供給作業を行える。多数の荷役作業データが示す荷役作業を実行する最中に不足した燃料を補充するのではなく、複数の荷役作業時間の合間に設けた隙間時間を利用して次の荷役作業時間で消費する燃料を補充することが可能となる。また供給作業を行うタイミングが予め決定されるため、事前に供給作業の準備を行うことができる。これにより燃料の補充に起因した荷役効率の低下を抑制するには有利になる。
【0032】
門型クレーン6bの荷役作業の中には一連の連続する作業が存在する。
図1に例示するコンテナ船4から所定の蔵置レーン3に、または所定の蔵置レーン3からコンテナ船4に、複数のコンテナ2が連続して搬送されることがある。このようなコンテナ船4とターミナル1との間で行われる荷役を、以下本船荷役ということがある。コンテナ船4の係留時間が短くなるほど、ターミナル1において処理できる荷物の量が増えて荷役効率を向上できる。そのため本船荷役は短時間で集中して行われることが望ましい。
【0033】
本船荷役を効率的に行うために、蔵置レーン3に蔵置されている複数のコンテナ2が並べ替えられることがある。一つの蔵置レーン3の中でコンテナ2の位置が変更されたり、ある蔵置レーン3から別の蔵置レーン3にコンテナ2の位置が変更されたりする。このような蔵置レーン3で行われる荷役を、以下並べ替え荷役ということがある。
【0034】
ターミナル1の外部から外来シャシ8によりコンテナ2が蔵置レーン3に運び込まれたり、蔵置レーン3のコンテナ2が外来シャシ8によりターミナル1の外部に運び出されたりすることがある。このような蔵置レーン3と外来シャシ8との間で行われる荷役を、以下外来荷役ということがある。
【0035】
本船荷役や並べ替え荷役や外来荷役などの一連の連続する荷役作業が、まとめられてデータグループとして設定されてもよい。
図5ではデータグループごとに作業項目名に異なるアルファベットを付与している。例えばA1-3は外来荷役であり、B1-5は並べ替え荷役であり、C1-4が本船荷役である。
【0036】
データグループは、対象となる荷役機器6に割り当てられる複数の荷役作業データを時系列で並べた際に互いに隣接するものをまとめて構成される。データグループは、荷役作業データに基づき作成ステップS3で設定される。例えば門型クレーン6bの列がほとんど変わらない荷役作業データが連続する場合に、これらの荷役作業データを同一のデータグループとして管理システム10がまとめる。データグループは例えば多数の荷役作業データを各荷役機器6に割り当てる割当ステップS2で設定されてもよい。
【0037】
データグループは例えば読込ステップS1で設定されてもよい。例えば本船荷役として複数の荷役作業データが設定される際に、同一のデータグループとして予め紐付けられる。
【0038】
図5に例示する荷役作業データおよびデータグループの表示方法および含まれる情報は一例であり、本発明はこれに限定されない。荷役作業データ等の表示方法は適宜変更可能であり、荷役作業データ等に含まれる情報は適宜追加可能である。
【0039】
図6に例示するように管理システム10は、作業スケジュールの荷役作業データに基づき、その荷役作業において荷役機器6が必要とする水素ガスの量である必要量P1を推定する推定ステップS6を有していてもよい。推定ステップS6では、作成ステップS3で作成された作業スケジュールの荷役作業データごとにその荷役作業で消費される水素ガスの量である必要量P1[kg]が推定される。必要量P1は例えば水素ガスの重量として推定される。推定ステップS6では、例えば荷役機器6の仕事量から必要量P1を推定できる。推定ステップS6は必須の構成要件ではない。
【0040】
図7に例示するようにある列で停止している門型クレーン6bが、3行2段のコンテナ2を構内シャシ6cに搬出する。
図7では説明のためコンテナ2の移動経路を破線で示している。荷役対象のコンテナ2の位置が決まれば、このコンテナ2が吊り上げられる高さおよび行方向(
図7左右方向)に移動する距離から門型クレーン6bの仕事量を決定できる。この仕事量から必要量P1が推定ステップS6で推定される。上記と同様に門型クレーン6bが列方向(
図7手前奥方向)に走行する場合も、門型クレーン6bの自重と走行距離から仕事量が決定されて、この仕事量から必要量P1が推定ステップS6で推定される。コンテナ2や門型クレーン6bを移動させる距離が大きいほど仕事量は大きくなり、水素ガスの消費量は大きくなる。
【0041】
推定ステップS6が、荷役対象のコンテナ2の重量を考慮した仕事量を決定して、この仕事量から必要量P1を推定する構成を有していてもよい。従来の管理システムにおいても、コンテナ番号ごとにそのコンテナ2の中身を含めた重量が記録されていることがある。管理システム10は例えば荷役作業データからコンテナ2の重量を取得できる。例えば4tの空コンテナと、規定近くまで荷物が詰められている25tのコンテナとでは必要量P1に違いが出てくる。推定ステップS6における必要量P1の推定の精度を向上するには有利である。なお推定ステップS6で重量が考慮されない場合は、例えば15tなどコンテナ2の重量を予め決めておいて、推定ステップS6が仕事量を決定する構成にしてもよい。
【0042】
図2に例示するように荷役機器6は搭載されている水素タンクにおける水素ガスの残量P2を測定する残量センサ18を有している。管理システム10は、この残量センサ18から通信機17を介して残量P2を取得できる。推定ステップS6において管理システム10が残量P2を取得する構成を有していてもよい。残量センサ18は、例えば水素タンクの内部の圧力を測定する圧力センサや、水素タンクおよび内部の水素ガスの重量を測定する重量センサで構成される。
【0043】
推定ステップS6が、荷役作業データごとにその作業に必要となる必要時間P3[min]を推定する構成を有していてもよい。推定ステップS6では、荷役作業データの内容から門型クレーン6bの走行距離やコンテナ2の移動距離を判別して、その作業に必要な必要時間P3が推定される。次に必要時間P3に比例して水素ガスが消費されるという仮定に基づき、推定ステップS6で必要量P1が推定されてもよい。
【0044】
図6に例示する実施形態では、管理システム10は設定ステップS4において、必要量P1と残量P2との値に基づき作業スケジュールに供給作業Rを設定する。この実施形態では管理システム10は、作成ステップS3において荷役作業時間と隙間時間とを設定した後に、設定ステップS4において供給作業を設定する。
【0045】
図8に例示するように推定ステップS6では荷役作業データごとに水素ガスの必要量P1が推定されることになる。またこの必要量P1を積算することで、所定の荷役作業データまでに必要となる水素ガスの量を推定することができる。門型クレーン6bの残量センサ18から管理システム10が取得した残量P2の値が例えば3.2kgの場合、作業項目名C2のとき必要量P1の積算が3.45kgとなり残量P2を超える。設定ステップS4では必要量P1が残量P2を超える前の位置、つまりC2より前の時刻tに設定されている隙間時間に供給作業Rが挿入される。例えば作業項目名のA3とB1の間、またはB2とB3の間、またはB5とC1の間の隙間時間に供給作業Rが設定される。複数の隙間時間に供給作業Rがそれぞれ設定されてもよい。必要量P1の積算値が残量P2を超えない範囲であれば、作業スケジュールにおけるどの隙間時間に供給作業Rが設定されてもよい。
【0046】
図8に例示される表は作業スケジュールとして管理されるものではない。しかし必要に応じて作業スケジュールに必要量P1や必要時間P3が表示される状態に変更してもよい。設定ステップS4において供給作業Rが挿入された作業スケジュールは、通知ステップS5において管理システム10から各荷役機器6および各供給機器11に送信される。
【0047】
管理システム10は、作業スケジュールの隙間時間に供給作業Rを設定できる。荷役機器6の作業項目の一つとして予め供給作業Rを設定することができる。荷役機器6の燃料が切れる前に、燃料を補給するスケジュールを設定できるため、供給作業Rはフィードフォワードで制御されているとも言える。荷役機器6が燃料切れになり動作不能となる事態を回避できるため、荷役効率の低下を抑制するには有利である。
【0048】
供給機器11が移動型である場合、荷役機器6が荷役作業を行っている最中に供給機器11aの移動や供給作業Rのための準備を行うことができる。またターミナル1に貯留されている燃料が不足している場合には、ターミナル1の外部に対する燃料の注文等を事前に行える。荷役効率の低下を抑制するには有利である。
【0049】
図8に例示するように設定ステップS4が、推定ステップS6から必要時間P3を取得して、この必要時間P3と現在時刻から供給作業Rの開始時刻tを設定する構成を有していてもよい。例えば現在行われている作業項目名がB3であり、現在時刻が10時14分であり、供給作業R2までの必要時間P3の積算が6分である場合、設定ステップS4は供給作業R2の開始時刻tを10時20分に設定する。
【0050】
設定ステップS4により作業スケジュールに時刻tを付与できる。供給作業Rの開始時刻tが設定されるため、例えば門型クレーン6bが燃料の供給を受ける場所に、移動型の供給機器11aを予め移動させて待機させることができる。作業者により移動型の供給機器11aが運転される場合は、管理システム10から供給機器11aに開始時刻tが通知される構成を有していてもよい。移動型の供給機器11aは、管理システム10から送られる通知を受領するための通信機等の機器を有している。
【0051】
設定ステップS4が、供給作業Rの開始時刻tに加えて、各荷役作業データに開始時刻tを付与する構成を有していてもよい。コンテナ船4が岸壁5に接岸してその後、荷役作業を開始できる時刻tが予め決まっている場合がある。この時刻tに基づき所定の荷役作業データの開始時刻tを設定する構成を設定ステップS4が有していてもよい。
図8に例示するようにデータグループCが本船荷役であり、コンテナ船4との荷役を開始できる時刻tが11時である場合、C1の作業は少なくとも11時以降となることが明らかである。C1の開始時刻tが例えば11時に設定される。
【0052】
荷役作業データの項目が実行されて消化される度に、設定ステップS4において供給作業Rおよび各荷役作業データの開始時刻tを修正する構成を有していてもよい。このとき設定ステップS4と推定ステップS6とが繰り返し実行される。作業に必要な時間が推定された必要時間P3とずれていたり、作業に遅れが生じた場合であっても、開始時刻tの精度を維持しやすくなる。荷役作業データの項目が実行されて例えば供給作業R2の項目が近づくほど、供給作業R2における開始時刻tの精度を向上できる。
【0053】
設定ステップS4において、データグループの間の隙間時間に供給作業Rが挿入される構成を有していてもよい。この場合、
図8における作業項目名A3とB1との間やB5とC1との間の隙間時間に供給作業Rが挿入される。B2とB3との間の隙間時間には供給作業Rは挿入されない。
【0054】
本船荷役など短時間で連続する一連の荷役作業を行う必要がある場合は、その途中で供給作業Rが行われないため、荷役効率を向上するには有利である。供給作業Rの際に不具合等が発生して時間通りに作業を完了できなかったとしても、一連の荷役作業の途中ではないため、荷役作業に与える影響を抑制できる。
【0055】
図6に例示するように管理システム10が、供給作業Rで供給する水素ガスの量である供給量P4[kg]を算出する演算ステップS7を実行する構成を有していてもよい。演算ステップS7は必須の構成要件ではない。演算ステップS7において供給量P4が算出される際に下限値が設定される構成を有していてもよい。このとき演算ステップS7は、供給作業Rの後のデータグループの終了までの必要量P1を推定ステップS6から取得する。この必要量P1と残量P2との差分となる水素ガスの量を下限値として供給量P4を演算ステップS7は算出する。算出された供給量P4は作業スケジュールにデータとして紐づけされる。供給機器11は、管理システム10から供給作業Rに関する通知を受ける際に、例えば供給作業Rの開始時刻tとともに供給量P4の情報を受け取る構成にしてもよい。
【0056】
具体例について以下に説明する。
図8に例示する作業項目名B5とC1との間に供給作業R2が行われる場合、演算ステップS7はデータグループCの終了時までの必要量P1を推定ステップS6から取得する。作業項目名B3の作業が完了した時点である場合、現在の残量P2とB4-5(0.7kg)およびC1-16(8.0kg)における必要量P1を演算ステップS7は取得する。現在の残量P2が例えば2.0kgであり、必要量P1が0.7+8.0=8.7kgの場合、この差分である6.7kgが供給量P4の下限値として演算ステップS7で算出される。供給作業R2では6.7kg以上の燃料が荷役機器6に供給される。
【0057】
演算ステップS7では供給量P4が例えば下限値の6.7kgとして設定される。供給量P4は、下限値に例えば1.0kgなど予め設定される量を加算した量で設定されてもよい。この場合の供給量P4は6.7+1.0=7.7kgとなる。供給量P4は、下限値に例えば120%など予め設定される倍率を乗算した量で設定されてもよい。この場合の供給量P4は6.7*1.20=8.04kgとなる。
【0058】
演算ステップS7において下限値が設定される構成により、供給作業R2の後に控えているデータグループCの作業中に、荷役機器6が燃料切れになり動作不能となる事態を回避できる。荷役効率の低下を抑制するには有利である。
【0059】
演算ステップS7において供給量P4が算出される際に、上限値が設定される構成を有していてもよい。このとき演算ステップS7は、供給作業Rの後のデータグループの開始時刻tを作業スケジュールから取得する。この開始時刻tまでに荷役機器6に供給可能な水素ガスの量を上限値として供給量P4が演算ステップS7で算出される。算出された供給量P4は作業スケジュールにデータとして紐づけされる。
【0060】
具体例について以下に説明する。
図8に例示する作業項目名B5とC1との間に供給作業R2が行われる場合、演算ステップS7はデータグループCにおける例えば11時などの開始時刻tを作業スケジュールから取得する。この開始時刻tである11時までに供給作業R2が終了すれば、データグループCにおける荷役作業は遅れることなく開始される。供給作業R2の開始時刻tが例えば10時20分と作業スケジュールに設定されている場合、供給作業R2は40分間行うことが可能となる。
【0061】
作成ステップS3において、複数の荷役作業時間の合間で荷役作業を実行しない隙間時間を設定する際に、上記の演算ステップS7と同様の方法を利用してもよい。つまり荷役作業データのうち開始時刻tが予め設定されているものがある場合、その前の時刻に隙間時間を設定できる。
【0062】
供給作業Rには、供給機器11と荷役機器6とを水素ガス用の配管で連結する作業等も含まれる。水素ガスを供給できる時間は供給作業R1の時間よりも短くなり例えば35分間となる。この時間で供給可能な水素ガスの量である例えば59.5kgが供給量P4の上限値となる。供給作業R2では59.5kg以下の燃料が荷役機器6に供給される。
【0063】
演算ステップS7では供給量P4が例えば上限値の59.5kgとして設定される。供給量P4は、上限値に例えば5.0kgなど予め設定される量を減算した量で設定されてもよい。この場合の供給量P4は59.5-5.0=54.5kgとなる。供給量P4は、上限値に例えば90%など予め設定される倍率を乗算した量で設定されてもよい。この場合の供給量P4は59.5*0.9=53.55kgとなる。
【0064】
供給作業R2の後のデータグループの開始時刻tが設定されていない場合、供給量P4の上限値は荷役機器6の水素タンクを満タンにする量に設定されてもよい。門型クレーン6bの水素タンクの容量が例えば100kgの場合、残量P2がほぼゼロの状態から満タンにすると例えば約1時間かかる。
【0065】
演算ステップS7において上限値を設定される構成により、供給作業R2の後に控えているデータグループCの開始時刻tに間に合う範囲で、荷役機器6に燃料を供給できる。荷役効率の低下を抑制するには有利である。
【0066】
供給機器11が複数台の荷役機器6に対して供給作業Rを行う場合は、供給機器11が次の供給作業Rに間に合う範囲で供給可能な水素ガスの量を上限値として供給量P4が演算ステップS7で算出されてもよい。供給機器11の稼働率を向上するには有利である。
【0067】
荷役機器6に搭載されている水素タンクの圧力と供給機器11に搭載されている圧力の差から、荷役機器6に供給可能な水素ガスの量の最大値を算出する構成を演算ステップS7が有していてもよい。このとき演算ステップS7では、前述の差圧に基づき算出される水素ガスの量の最大値と、供給作業Rが設定されている隙間時間の間に供給機器11から荷役器6に供給可能な水素ガスの量の最大値とが算出される。差圧に基づく水素ガスの量の最大値と、隙間時間に基づく水素ガスの量の最大値とが比較されて、小さい方が上限値として演算ステップ7で設定される。
【0068】
この構成によれば荷役機器6に対して差圧で水素ガスを充填する場合に、隙間時間を利用して設定された供給量P4を、実際には荷役機器6に供給できないという不具合を回避できる。演算ステップ7において供給量P4を算出する際に、差圧を利用する構成は必須の構成要件ではない。例えば供給機器11が圧縮機を有していて荷役機器6に対して水素ガスが加圧供給される場合は、隙間時間のみを利用して設定された供給量P4を荷役機器6に供給できる。
【0069】
演算ステップS7において、下限値および上限値の両方が設定されて、これに基づき供給量P4が算出される構成を有していてもよい。この場合、供給量P4は例えば上限値の例で示された量に設定されてもよい。前述の例によれば供給量P4は59.5kgに設定される。供給量P4が、上限値と下限値との平均値となる量で設定されてもよい。前述の例によれば供給量P4は(6.7+59.5)/2=33.1kgに設定される。供給量P4を上限値よりも、上限値と下限値との平均値となる量で設定する方が、供給作業Rの時間が短くなるので、供給機器11aは他の門型クレーン6bの供給作業Rを行える。
【0070】
例えば供給作業R2の次のデータグループCを実行するために必要な水素ガスの量に対して、供給作業R2を行える時間が短い場合など、下限値が上限値を上回る場合がありうる。作業スケジュールを進めることが困難となる。このような場合に、作業スケジュールの大幅な変更を求める通知を送信する構成を管理システム10が有していてもよい。コンテナ2を蔵置する蔵置レーン3を変更して異なる荷役機器6で荷役を行うなどの対応を、管理棟7の作業者が行う。蔵置レーン3の変更等の作業を、割当ステップS2の再度の実行により実現してもよい。
【0071】
一方で作業スケジュールを作成する範囲を例えば24時間後までなど予め広く設定しておくことで、下限値が上限値を上回ることを回避しやすくなる。
【0072】
図6に例示するように演算ステップS7で算出される供給量P4に基づき、供給作業Rに必要となる必要時間P3を推定する構成を推定ステップS6が有していてもよい。このとき設定ステップS4において、前述の必要時間P3と現在時刻から供給作業Rの終了時刻tが設定される構成を有していてもよい。
【0073】
供給作業Rの終了時刻tが設定されるため、他の供給機器11に対する次の供給作業Rの作業スケジュールを設定することが可能となる。複数の荷役機器6に対する供給作業Rの開始時刻tおよび終了時刻tを予め設定できるため、供給機器11の稼働率を向上するには有利である。
【0074】
具体的には一台目の荷役機器6の供給作業Rの終了時刻tのあとの時刻に二台目の荷役機器6の供給作業Rを作業スケジュールに設定できる。供給機器11の数は一つに限定されない。複数の供給機器11をターミナル1が有していてもよい。それぞれの荷役機器6の作業スケジュールにおいて、同一時刻での隙間時間の重複数は供給機器11の台数に基づくことが望ましい。複数の荷役機器6の隙間時間に供給作業Rが設定されたものの、供給機器11の数が足らずに作業スケジュールどおりに供給作業を実行できなくなる不具合を回避できる。
【0075】
複数の荷役機器6に設定される作業スケジュールの一例を
図9および10に示す。門型クレーン6bがオペレータにより操作される有人クレーンである場合は、この作業スケジュールを確認しながらオペレータは荷役作業を行う。
図9および
図10に例示されるように作業スケジュールには、供給作業Rの開始時刻および終了時刻が設定されるとともに、供給作業Rを行う位置である列が設定されている。供給作業Rにともない門型クレーン6bが移動することを避けるため、列は例えば直前の作業項目を終了した位置に設定されることが望ましい。
【0076】
複数の荷役機器6において、供給作業Rの優先度が設定される。優先度は、例えば本船荷役を行う荷役機器6の方が高く、外来荷役、並べ替え荷役の順に優先度が低くなる状態に設定できる。管理システム10により優先度の高い荷役機器6から供給作業Rの設定が行われる。供給機器11が移動型である場合は、供給機器11aの移動ルートの効率を上げるための指標を前述の優先度に影響させてもよい。供給機器11aの移動ルートが最短となる状況を実現しつつ、優先度の高い荷役機器6に対して優先的に供給作業Rを行うことが可能となる。
【0077】
図11に例示するように移動型の供給機器11aは、車両20と、この車両20に搭載される水素タンク21を有していてもよい。この実施形態では、供給機器11aは二台の車両20で構成されている。一台目の車両20は、20ftコンテナの中に配置される複数の水素タンク21を有している。この水素タンク21には、例えば82MPaなど高圧に圧縮された水素ガスが充填されている。車両20は、例えば一本あたり12.5kgの水素ガスを充填される水素タンク21を16本搭載される。
【0078】
二台目の車両20は、水素タンク21から供給される水素ガスを冷却するプレクーラ22と、プレクーラ22で冷却された水素ガスを荷役機器6に供給するディスペンサ23と、プレクーラ22およびディスペンサ23に電気を供給する蓄電池24とを有している。車両20に搭載される20ftコンテナの中にプレクーラ22等は配置されてもよい。
図11では説明のため水素ガスを搬送する配管を太線で示し、蓄電池24に接続される電源ケーブルを破線で示している。
【0079】
管理システム10から送られる情報に従って供給作業Rの開始時刻tの前に、二台の車両20で構成される供給機器11aは門型クレーン6bの近傍まで移動する。二台の車両20は作業者により運転される有人車両で構成されても、自動制御により運転される無人車両で構成されてもよい。
【0080】
供給機器11aに通知される作業スケジュールの一例を
図12に示す。車両20が作業者により運転される有人車両である場合は、この作業スケジュールを確認しながら作業者は供給作業Rを行う。作業スケジュールには、供給の対象となる荷役機器番号と、それぞれの供給作業Rにおける開始時刻および終了時刻が設定されるとともに、供給作業Rを行う位置および供給量P4が設定されている。管理システム10は、供給作業Rの開始時刻の前に供給機器11aに対して、供給作業を行う位置までの移動を通知することになる。供給作業Rを行う位置は、蔵置レーンの番号とその列とが設定される。供給機器11aは、供給作業Rの開始時刻までに指定されている位置まで移動する。
【0081】
図11に例示するように供給作業Rを開始する際には作業者が、水素タンク21とプレクーラ22とを配管で連結して、ディスペンサ23と荷役機器6とを配管で連結する。水素タンク21から荷役機器6に水素ガスが差圧で充填される。供給作業Rを終了する際には作業者が、プレクーラ22や荷役機器6に連結されている配管の連結を解除する。
【0082】
移動型の供給機器11aの車両20は門型クレーン6bより移動が容易であるため、門型クレーン6bの近傍まで車両20が移動して供給作業Rを行うことができる。供給作業Rは蔵置レーン3の延在方向の途中部分で行うことができる。門型クレーン6bよりも走行速度の速い車両20が移動するため、供給作業Rを効率よく行うには有利である。
【0083】
この実施形態では供給機器11aが水素ガスを差圧で荷役機器6に供給する構成であるため、圧縮機が不要となる。圧縮機の電源が不要となるため、供給作業Rを任意の場所で行うことが可能となる。圧縮機は例えば110kwの電源が必要であり、450Vの電源ケーブルに接続される必要がある。供給機器11aが圧縮機を備える場合は、450Vの電源ケーブルのある場所でしか供給作業を行えない。なおプレクーラ22およびディスペンサ23は10kw程度の電源で動作可能であり、車両20に搭載される蓄電池24からの給電で動作が可能となる。
【0084】
供給機器11aが二台の車両20で構成されるため、水素タンク21の残量が少なくなった場合は、水素タンク21を搭載される別の車両20を手配することで供給作業Rを継続できる。ディスペンサ23等を搭載した一台の車両20に対して、水素タンク21を搭載した複数台の車両20を準備することで、供給作業Rを効率よく行える。供給機器11aの稼働率を向上するには有利である。
【0085】
供給機器11aを構成する車両20は二台に限らない。一台の車両20で構成されてもよい。この車両20に40ftコンテナを搭載して、この40ftコンテナの中にディスペンサ23等の機器と水素タンク21とが配置されてもよい。
【0086】
図1に例示するように供給機器11aの車両20が走行する供給用レーン25をターミナル1が有していてもよい。供給用レーン25は蔵置レーン3に沿ってその側方に形成される。供給用レーン25と蔵置レーン3との間に、構内シャシ6cや外来シャシ8が走行する荷役用レーン26が形成される状態となる。車両20と構内シャシ6c等とはそれぞれ専用のレーンを走行することになる。供給作業Rを行っている車両20が、構内シャシ6c等の走行を妨げることがない。荷役効率の低下を抑制するには有利である。ターミナル1が供給用レーン25を有さず、供給機器11aを構成する車両20が荷役用レーン26を走行して門型クレーン6bに接近してもよい。
【0087】
図1に例示するようにターミナル1が供給作業Rを行う作業領域27を有していてもよい。作業領域27は蔵置レーン3の延在方向(
図1左右方向)の端部に形成される。この場合、蔵置レーン3ごとに作業領域27が形成される。供給作業Rを行う際には、門型クレーン6bおよび供給機器11aの車両20が作業領域27まで移動する。供給作業Rを行う場所が限定されるため、例えば450Vの電源ケーブルの準備が可能となる。圧縮機を備える車両20で供給機器11aを構成することが可能となる。
【0088】
蔵置レーン3の端部で供給作業Rが行われる。一つの蔵置レーン3において複数の門型クレーン6bが荷役作業を行う場合であっても、供給作業R中の門型クレーン6bが他の門型クレーン6bの荷役作業を妨げることがない。また供給作業R中の供給機器11aが、構内シャシ6c等の走行を妨げることがない。ターミナル1における荷役効率の低下を抑制するには有利である。
【0089】
図13に例示するように荷役機器6が構内シャシ6cである場合も、門型クレーン6bと同様に管理システム10により作業スケジュールが設定される。荷役対象となるコンテナ2のコンテナ番号と、コンテナ2を受け取る受入位置と、コンテナ2を払い出す払出位置とが設定されている。推定ステップS6では構内シャシ6cの走行距離から必要量P1が推定される。推定ステップS6が、構内シャシ6cの走行距離に加えて、荷役するコンテナ2の重量から仕事量を推定して、この仕事量から必要量P1を推定する構成を有していてもよい。設定ステップS4では、複数の隙間時間の少なくとも一つに供給作業Rが設定される。管理システム10が推定ステップS6を実行する構成を有している場合は、構内シャシ6cの水素タンクの残量P2と必要量P1に基づき、作業スケジュールにおいて供給作業Rが設定される。この供給作業Rは隙間時間に設定される。
【0090】
作業スケジュールにおける供給作業Rの指示に従って構内シャシ6cは、固定型の供給機器11bまで走行して、水素ガスの供給を受ける。管理システム10が演算ステップS7を実行する構成を有している場合は、構内シャシ6cは演算ステップS7で設定される供給量P4に合わせた量の水素ガスの供給を受ける。供給機器11bのディスペンサの近傍に、構内シャシ6cを識別するセンサが配置されていてもよい。構内シャシ6cの識別番号に対応する供給量P4に基づき、構内シャシ6cに水素ガスが供給される。作業者により識別番号がディスペンサに入力されて、予め設定されている供給量P4が構内シャシ6cに供給される構成でもよい。
【0091】
固定型の供給機器11bについて作業スケジュールが設定されてもよい。この作業スケジュールには、例えば構内シャシ6cの識別番号と、供給量P4と、供給作業Rの開始時刻および終了時刻などを設定できる。固定型の供給機器11bは、管理システム10から通知されるスケジュールや供給量P4を受領するための通信機等を有している。
【0092】
構内シャシ6cが荷役作業中に燃料切れとなる不具合を回避するには有利である。またそれぞれの構内シャシ6cが供給機器11bから供給作業Rを受ける時刻や供給量P4を作業スケジュールにより調整できる。供給機器11bの近傍で複数の構内シャシ6cが供給作業Rを待っているような状態を回避できる。構内シャシ6cの稼働効率を向上するには有利である。
【0093】
外来シャシ8が水素ガスを燃料とする場合は、荷役機器6に外来シャシ8が含まれてもよい。外来シャシ8は有人シャシまたは無人シャシで構成される。外来シャシ8は、構内シャシ6cと同様の機器等を有していることが望ましい。具体的には管理システム10から送られる作業スケジュールを受領したり、搭載されている水素タンクの残量P2を管理システム10に送信するための通信機等の機器を有することが望ましい。構内シャシ6cと同様に、作業スケジュールにおける供給作業Rの指示に従って外来シャシ8は、固定型の供給機器11bまで走行して水素ガスの供給を受けることができる。
【0094】
外来シャシ8が、構内シャシ6cと同様の機器等を有していない場合であっても荷役機器6に含まれる場合がある。ターミナル1のゲート9において受付をする際に、外来シャシ8の識別番号や、外来シャシ8が荷役対象とするコンテナ番号などが管理システム10に記録される。このとき外来シャシ8の水素タンクの残量P2が管理システム10に記録されてもよい。外来シャシ8は、管理システム10により設定される作業スケジュール等をゲート9で受領する。作業スケジュールにおける供給作業Rの指示に従って外来シャシ8は、水素ガスの供給を受けることができる。管理システム10とデータのやり取りを行う通信機等を外来シャシ8が有していない場合であっても、外来シャシ8はゲート9で作業スケジュール等を受領できる。ターミナル1は、外来シャシ8を荷役機器6として制御に組み込むことが可能となる。
【0095】
荷役機器6および供給機器11が作業者によって制御される場合は、作業者は作業スケジュールを参照しながら作業を行う。荷役機器6等が制御装置により自動制御される場合は、制御装置は作業スケジュールに基づき荷役機器6等を制御する。
【0096】
以上、水素ガスを燃料とする荷役機器6への供給作業Rについて説明した。荷役機器に軽油を供給する場合や、荷役機器の蓄電池を供給機器が充電する場合も、本発明の管理システム10を利用できる。軽油を燃料とする荷役機器は、燃料タンクを小型化しても、荷役効率を低下させることなく軽油の供給を受けられる。
【0097】
供給機器が荷役機器を充電する場合も、水素ガスを燃料とする場合と同様に、充電回数が増加する可能性がある。このような場合であっても、荷役機器を効率よく充電できるため、荷役効率の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0098】
1 ターミナル
2 コンテナ
3 蔵置レーン
4 コンテナ船
5 岸壁
6 荷役機器
6a 岸壁クレーン
6b 門型クレーン
6c 構内シャシ
7 管理棟
8 外来シャシ
9 ゲート
10 管理システム
11 供給機器
11a (移動型の)供給機器
11b (固定型の)供給機器
12 中央演算処理部
13 主記憶部
14 補助記憶部
15 キーボード
16 ディスプレイ
17 通信機
18 残量センサ
19 演算部
20 車両
21 水素タンク
22 プレクーラ
23 ディスペンサ
24 蓄電池
25 供給用レーン
26 荷役用レーン
27 作業領域
P1 必要量
P2 残量
P3 必要時間
P4 供給量
R 供給作業
t 時刻