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  • 特開-逆浸透膜装置の運転方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021389
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】逆浸透膜装置の運転方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 61/10 20060101AFI20240208BHJP
   B01D 71/10 20060101ALI20240208BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20240208BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20240208BHJP
   B01D 65/02 20060101ALI20240208BHJP
   C02F 5/00 20230101ALI20240208BHJP
   C02F 5/08 20230101ALI20240208BHJP
   C02F 5/14 20230101ALI20240208BHJP
   C02F 5/10 20230101ALI20240208BHJP
   C02F 1/44 20230101ALI20240208BHJP
【FI】
B01D61/10
B01D71/10
B01D71/02
B01D63/00 510
B01D65/02 530
C02F5/00 620B
C02F5/00 620C
C02F5/08 F
C02F5/14 B
C02F5/14 C
C02F5/10 620D
C02F5/10 620C
C02F5/00 610G
C02F1/44 C
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124183
(22)【出願日】2022-08-03
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-09-20
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和3年度、独立行政法人科学技術振興機構 研究成果展開事業 センター・オブ・イノベーションプログラム「世界の豊かな生活環境と地球規模の持続可能性に貢献するアクア・イノベーション拠点」委託研究開発、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504180239
【氏名又は名称】国立大学法人信州大学
(71)【出願人】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】川勝 孝博
(72)【発明者】
【氏名】石井 一輝
(72)【発明者】
【氏名】安池 友時
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 守信
(72)【発明者】
【氏名】竹内 健司
(72)【発明者】
【氏名】北野 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】古田 健
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA04C
4D006KA33
4D006KA52
4D006KA54
4D006KA57
4D006KC02
4D006KD30
4D006KE11R
4D006MA03
4D006MA09
4D006MC05X
4D006MC11X
4D006MC48
4D006MC56X
4D006MC62
4D006NA41
4D006PA01
(57)【要約】
【課題】逆浸透膜へのスケール付着を抑制し、膜性能の安定化を図ることができる逆浸透膜装置の運転方法を提供する。
【解決手段】逆浸透膜エレメントを有する逆浸透膜装置にスケール成分を含む被処理水を通水して処理水を得る逆浸透膜装置の運転方法であって、該逆浸透膜エレメントは、逆浸透膜及び流路材を備えており、該逆浸透膜の緻密層は、カーボンナノチューブ及びセルロースナノファイバーを含有し、該流路材は、カーボンナノチューブを含有する逆浸透膜装置の運転方法において、前記被処理水にスケール分散剤を添加することを特徴とする逆浸透膜の運転方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
逆浸透膜エレメントを有する逆浸透膜装置にスケール成分を含む被処理水を通水して処理水を得る逆浸透膜装置の運転方法であって、
該逆浸透膜エレメントは、逆浸透膜及び流路材を備えており、
該逆浸透膜の緻密層は、カーボンナノチューブ及びセルロースナノファイバーを含有し、
該流路材は、カーボンナノチューブを含有する
逆浸透膜装置の運転方法において、
前記被処理水にスケール分散剤を添加することを特徴とする逆浸透膜の運転方法。
【請求項2】
定期的にフラッシングを行うことを特徴とする請求項1に記載の逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項3】
前記被処理水は、前記スケール成分として、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム及びシリカの少なくとも1種を含有する請求項1に記載の逆浸透膜装置の運転方法
【請求項4】
前記スケール分散剤がリン酸基もしくはスルホン酸基を有することを特徴とする請求項1に記載の逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項5】
前記スケール分散剤が2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸であることを特徴とする請求項1に記載の逆浸透膜装置の運転方法。
【請求項6】
前記スケール分散剤の添加量が0.5~20mg/Lであることを特徴とする請求項1~5のいずれかの逆浸透膜装置の運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スケール成分を含む被処理水を逆浸透膜装置により処理する逆浸透膜装置の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜システムは、海水、かん水の淡水化や、工業用水および超純水の製造、排水回収などに広く用いられている。逆浸透膜装置の運転を継続すると、カルシウム塩やシリカなどのスケールが逆浸透膜に付着してくる。
【0003】
カルシウムスケールやシリカスケールの逆浸透膜への付着を抑制する方法として、酸性条件での運転がある。供給水pH5付近で運転することによって、カルシウムスケールやシリカスケールの生成速度が遅くなり、膜性能が安定化する。しかし、この方法では、供給水に酸剤を添加しなければならず、濃縮水や透過水のpHを中性に戻すためにアルカリ剤が必要となるため、薬品コストがかかる。また、酸性条件では、逆浸透膜の阻止性能が悪くなるという問題もある。
【0004】
特許文献1、2には、供給水のランゲリア指数をスケール生成し難い値とし、定期的にフラッシングを行うことにより、逆浸透膜へのスケール付着を抑制することが記載されている。しかし、特許文献1、2の方法では、供給水のランゲリア指数を変える操作が必要である。
【0005】
特許文献3には、カーボンナノチューブとセルロースナノファイバーを緻密層に含む逆浸透膜が記載されている。特許文献4には、カーボンナノチューブを含む流路材が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-160179号公報
【特許文献2】特開2016-179442号公報
【特許文献3】特許第6999958号公報
【特許文献4】国際公開2019/131917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、逆浸透膜(以下、RO膜ということがある。)へのスケール付着を抑制し、膜性能の安定化を図ることができる逆浸透膜装置の運転方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明者は、フッ化カルシウムスケールやシリカスケールの生成とRO膜への付着を抑制する方法を検討した結果、カーボンナノチューブとセルロースナノファイバーを含有するRO膜とカーボンナノチューブを含む流路材を併用した膜エレメントを有する逆浸透膜装置に、分散剤添加被処理水を通水することにより、スケールによるRO膜汚染を大きく低減できることを見出した。また、被処理水やその他の水を非加圧で濃縮側に供給するフラッシングを行うことによって、RO膜汚染をさらに低減できることも見出した。
【0009】
本発明はかかる知見に基づくものであり、次を要旨とする。
【0010】
[1] 逆浸透膜エレメントを有する逆浸透膜装置にスケール成分を含む被処理水を通水して処理水を得る逆浸透膜装置の運転方法であって、
該逆浸透膜エレメントは、逆浸透膜及び流路材を備えており、
該逆浸透膜の緻密層は、カーボンナノチューブ及びセルロースナノファイバーを含有し、
該流路材は、カーボンナノチューブを含有する
逆浸透膜装置の運転方法において、
前記被処理水にスケール分散剤を添加することを特徴とする逆浸透膜の運転方法。
【0011】
[2] 定期的にフラッシングを行うことを特徴とする[1]に記載の逆浸透膜装置の運転方法。
【0012】
[3] 前記被処理水は、前記スケール成分として、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム及びシリカの少なくとも1種を含有する[1]に記載の逆浸透膜装置の運転方法
【0013】
[4] 前記スケール分散剤がリン酸基もしくはスルホン酸基を有することを特徴とする[1]に記載の逆浸透膜装置の運転方法。
【0014】
[5] 前記スケール分散剤が2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸であることを特徴とする[1]に記載の逆浸透膜装置の運転方法。
【0015】
[6] 前記スケール分散剤の添加量が0.5~20mg/Lであることを特徴とする[1]~[5]のいずれかの逆浸透膜装置の運転方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によると、RO膜へのスケールの付着が抑制され、逆浸透膜装置の性能の安定化を図ることができる。
【0017】
本発明においてスケール付着が抑制される機構は以下の通りであると推察される。
(1) カーボンナノチューブやセルロースナノファイバーは親水的な材料ではなく、被処理水に対して横滑り(スリッピング)効果をもたらす。
(2) スケール成分はRO膜によって濃縮されて、逆浸透膜の膜面付近でスケール核が生成するが、上記スリッピング効果のためにスケール核が逆浸透膜の膜面に留まり難くなる。これにより、逆浸透膜へのスケール付着が抑制される。
(3) 分散剤の添加により、スケール成分の核の発生が抑制されるため、スケールによる膜汚染が低減される。
(4) フラッシングによって、膜面に残存しているスケール核が排出される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】実施例におけるフローの説明図である。
図2】実施例の結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明で処理対象とする被処理水は、フッ化カルシウム、炭酸カルシウム、シリカなどのスケール成分を1~200mg/L、特に10~100mg/L程度含有する。
【0020】
本発明の逆浸透膜装置の運転方法において使用される逆浸透膜装置の逆浸透膜としては、前記特許文献3に記載のものが好適である。
【0021】
即ち、この逆浸透膜としては、特許文献3に記載された、カーボンナノチューブを含む第1水分散液とセルロースナノファイバーを含む第2水分散液との混合液を多孔性支持体上に塗工して形成した半透膜を設けた半透複合膜であって、半透膜は、架橋ポリアミドと、カーボンナノチューブと、セルロースナノファイバーとを含む半透複合膜が好適である。
【0022】
カーボンナノチューブは、平均直径(繊維径)が5nm以上30nm以下であることが好ましい。セルロースナノファイバーとしては、平均繊維径3nm~200nmのセルロース微細繊維が好ましい。
【0023】
ポリアミドは、芳香族系のポリアミドが好ましい。
【0024】
ポリアミドと、カーボンナノチューブと、セルロースナノファイバーとの合量に占めるカーボンナノチューブの割合は1~30質量%が好ましく、セルロースナノファイバーの割合は1~23.6質量%が好ましい。
【0025】
多孔性支持体としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、酢酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレン
スルフィドスルホンなどを用いることができる。
【0026】
半透複合膜の製造方法は、カーボンナノチューブとセルロースナノファイバーとアミン成分とを含む混合液を得る工程と、前記混合液を多孔性支持体に接触させた後、前記多孔性支持体に付着した前記混合液中のアミン成分を架橋反応させることによって半透複合膜を得る工程と、を含み、前記混合液を得る工程は、カーボンナノチューブを含む第1水分散液とセルロースナノファイバーを含む第2水分散液とを混合する工程を含む方法が好適である。
【0027】
本発明の逆浸透膜装置の運転方法において使用される逆浸透膜装置の流路材は、特許文献4に記載された、ポリプロピレン樹脂と、カーボンナノチューブとを含む成形品からなるメッシュ状の水処理用流路材であって、前記カーボンナノチューブの配合割合は、前記ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、5.3~18質量部である水処理用流路材が好適である。
【0028】
この流路材で用いられるカーボンナノチューブは、好ましくはグラフェンシートを円筒状に巻いたような構造を備えており、直径は、数nm~数十nm、長さは直径の数十倍~数千倍以上である。カーボンナノチューブは、グラフェンシートが実質的に1層である単層カーボンナノチューブと、2層以上である多層カーボンナノチューブに分類される。カーボンナノチューブとしては、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブの何れを使用してもよい。
【0029】
水処理用流路材は、所定の金型を利用し、メッシュ状に成形される。例えば、水処理用流路材は、特許文献4の実施例に記載の方法により製造される。
【0030】
特許文献4の実施例の流路材は、ポリプロピレン及びカーボンナノチューブを含む組成物を成形することにより製造したメッシュ状成形品からなる。
【0031】
本発明で用いられるスケール分散剤としては、ヘキサメタリン酸ソーダやトリポリリン酸ソーダ等の無機ポリリン酸類、ヒドロキシエチリデンジホスホン酸やホスホノブタントリカルボン酸等のホスホン酸類等が好適である。
【0032】
また、スケール分散剤としては、スルホン酸基とカルボキシル基を有するポリマー系スケール分散剤も好適である。
【0033】
スルホン酸基とカルボキシル基を有するポリマーとしては、スルホン酸基を有する単量体と、カルボキシル基を有する単量体との共重合物、或いは、更に、これらの単量体と共重合可能な他の単量体との三元共重合体が挙げられる。
【0034】
スルホン酸基を有する単量体としては、2-メチル-1,3-ブタジエン-1-スルホン酸などの共役ジエンスルホン酸、3-(メタ)アリルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する不飽和(メタ)アリルエーテル系単量体や2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-ヒドロキシ-3-アクリルアミドプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、イソアミレンスルホン酸、又はこれらの塩など、好ましくは、3-アリルオキシ-2-ヒドロキシ-1-プロパンスルホン酸(HAPS)、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(AMPS)が挙げられ、これらの1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0035】
カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸(AA)、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ビニル酢酸、アトロパ酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、ヒドロキシエチルアクリル酸又はこれらの塩など、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸が挙げられる。
【0036】
また、これらの単量体と共重合可能な単量体としては、イソブチレン等のアルケン類、N-tert-ブチルアクリルアミド(N-tBAA)、N-ビニルホルムアミドなどアミド類が挙げられる。
【0037】
ポリマー系スケール分散剤の重量平均分子量は、1,000~50,000であることが好ましい。
【0038】
本発明では、被処理水に添加するスケール分散剤の添加量は、0.5~20mg/L、特に1~10mg/L程度が好適である。
【0039】
本発明では、定期的にフラッシングを行うことにより、逆浸透膜の膜汚染をさらに低減することができる。
【0040】
なお、フラッシングとは、給水ポンプの稼動を継続したまま、濃縮水排出配管の開閉弁を開とすることにより、RO給水の殆どを膜透過させることなく、膜の一次側(濃縮水側)に流し、濃縮水排出配管から系外へ排出させる操作をさす。この際、RO給水の殆どが膜透過しないので、供給水量のほぼ全量が一次側の膜面を流れることにより、透過水の採水を行う通常運転時より速い流速でかつ多量の水が流れることにより、膜面を閉塞している汚れを効果的に洗い流すことができる。
【0041】
フラッシングの頻度は、特に制限はなく、被処理水の水質やRO処理条件等に応じて適宜決定されるが、通常数時間~10日に一度の割合で1~60分間程度実施することが好ましい。
【実施例0042】
[実施例1、比較例1,2]
<概要>
図1に示す逆浸透膜システムを用い、逆浸透膜エレメントとして下記のものを用い、下記の被処理水を通水し、フラックスの経時変化を測定した。
【0043】
<被処理水>
以下の薬品を混合し、塩酸及び水酸化ナトリウムでpH5.5とした。
塩化カルシウム二水和物(特級、富士フィルム)和光純薬:294mg/L
フッ化ナトリウム(特級、富士フィルム和光純薬):24mg/L
2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸(PBTC、LANXESS):2.5mg/L
【0044】
<実施例1の膜エレメント>
特許文献3の実施例1に記載のカーボンナノチューブとセルロースナノファイバーを緻密層に含む、下記RO膜製造方法により製造されたRO膜と、特許文献4に記載の、下記流路材製造方法により製造されたカーボンナノチューブを含む流路材を使用した以下の構成のスパイラル型逆浸透膜エレメント。膜面積1300cm、エレメント直径5cm、エレメント軸方向長さ30cm。
【0045】
≪RO膜の製造方法≫
特許文献3の実施例1に従って、下記(1)~(5)の工程によりRO膜を製造した。
(1) 第1水分散液を得る工程:
蒸留水10gに、2gの多層カーボンナノチューブ(Cnano社製FT9110、平均直径15nm(平均直径は、走査型電子顕微鏡の撮像を用いて200か所以上の測定値を算術平均した値))を手作業で撹拌(第1混合工程)した後、ロール直径が50mmの3本ロール(株式会社長瀬スクリーン印刷研究所製EXAKT
M-50 I)(ロール温度25以上40℃以下)に投入して、3分間以上10分間以下混練(第2混合工程)して第1水分散液を得た。ロール間隔は0.001mm以上0.01mm未満、ロール速度比はV1=1、V2=1.8、V3=3.3、ロール速度V3は周速1.2m/sであった。
【0046】
(2) 第2水分散液を得る工程:
セルロースナノファイバー(TEMPO酸化セルロースナノファイバー)水分散液を水で希釈してセルロースナノファイバー0.4質量%濃度の水分散液として、ジューサーミキサー(Waring製ブレンダーMX1200XTX)を使用し、回転数20,000rpmで30秒間高速で撹拌することで混合してセルロースナノファイバーを含む第2水分散液を得た。
【0047】
(3) 混合液を得る工程:
蒸留水100gに添加剤(TEA(トリエチルアミン)10質量%、CSA(カンファスルホン酸)20質量%を含む水溶液)105g、SLS(ラウリル硫酸ナトリウム)0.45gを加え、マグネティックスターラーで撹拌・溶解後に、先に得た16.7質量%のカーボンナノチューブを含む第1水分散液1.8gを加え攪拌し、さらに、m-フェニレンジアミン10.5g、IPA(イソプロピルアルコール)18gを加えて撹拌・溶解したものと、蒸留水100gにセルロースナノファイバー0.4質量%を含む第2水分散液を必要量分取し、マグネティックスターラーを用いて撹拌し、添加剤(TEA10質量%、CSA20質量%を含む水溶液)105g、SLS0.45gを加え、マグネティックスターラーで撹拌後に、m-フェニレンジアミン10.5g、IPA(イソプロピルアルコール)18gを加え撹拌したものと、を混合攪拌し、蒸留水で全量が600gとなるように調整し、マグネティックスターラーを用いて撹拌して、m-フェニレンジアミンが3.5質量%、TEA3.5質量%、SLS0.15質量%、CSA7質量%、IPA6質量%、カーボンナノチューブ及びセルロースナノファイバーを含む混合液(塗工液)を得た。
【0048】
混合液におけるカーボンナノチューブの濃度は0.05質量%であった。混合液におけるセルロースナノファイバーの濃度は0.003質量%であった。
【0049】
(4) 多孔性支持体の作製:
単糸繊度0.5デシテックスのポリエステル繊維と1.5デシテックスのポリエステル繊維との混繊糸からなる、通気度0.7cm/cm・秒、平均孔径7μm以下の湿式不織布であって、縦30cm、横20cmの大きさの物を、ガラス板上に固定し、その上に、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒のポリスルホン濃度15重量%の溶液(20℃)を、総厚み210μm~215μmになるようにキャストし、直ちに水に浸積してポリスルホンの多孔性支持体を製造した。
【0050】
(5) RO膜を得る工程:
80cmの多孔性支持体に、バーコーター(#6wired bar)を用いて多孔性支持体表面を10mm/sの速度で比較例1の塗工液を塗布した後、多孔性支持体表面から余分な水溶液をゴムブレードで除去した後、トリメシン酸クロライド0.18質量%を含む室温のIPソルベント溶液4mlを膜表面が完全に濡れるように塗布した。膜から余分な溶液を除去するために膜面を鉛直に保持して液切りし、その後、120℃の恒温槽中で3分間乾燥後、蒸留水に浸漬洗浄することで、RO膜を製造した。
【0051】
≪流路材の製造方法≫
特許文献4の実施例1に従って、ポリプロピレン樹脂100質量部に対して、カーボンナノチューブを18質量部配合した組成物を、所定の金型を利用して成形し、メッシュ状成形品を製造した。なお、メッシュの目開きは縦約4mm、横約4mmであり、線径は約0.4mmであり、メッシュの厚さは約0.7mmのものを使用した。
【0052】
<比較例1の膜エレメント>
流路材として比較例2の膜エレメントで使用される流路材を使用したこと以外は実施例1と同一の膜エレメント。
【0053】
<比較例2の膜エレメント>
市販ROミニエレメント(TW30-2012-125、DOW)。
【0054】
<予備濃縮を行うROエレメント>
ES202インチROエレメント(日東電工社製)を6本使用した。
【0055】
<実験手順>
図1に通水実験装置の概要を示す。塩化カルシウム、フッ化ナトリウム及びPBTCを含む上記被処理水を、被処理水タンク1からポンプ2により予備濃縮ROエレメント3に通水し、5倍に濃縮した。その濃縮水を濃縮水タンク4からポンプ5によりROミニエレメント6に通水し、透過水流束(フラックス)の経時変化を測定した。水温は31~34℃である。
【0056】
<結果>
図2にフラックス比(測定されたフラックスを初期フラックスで除算した値)の経時変化を示す。
【0057】
図2の通り、比較例2は比較例1よりもフラックス比が高く維持されているが、実施例1では長時間にわたりさらに高く維持されていることが分かる。
【符号の説明】
【0058】
1 被処理水タンク
3 予備濃縮ROエレメント
6 ROミニエレメント
図1
図2