(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021402
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】無線通信装置、無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 28/04 20090101AFI20240208BHJP
H04W 4/38 20180101ALI20240208BHJP
【FI】
H04W28/04
H04W4/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124207
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】304021277
【氏名又は名称】国立大学法人 名古屋工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】110001128
【氏名又は名称】弁理士法人ゆうあい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大塚 孝信
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067BB27
5K067HH25
(57)【要約】
【課題】無線通信による通信量を抑えつつ、計測データの信頼性を確保可能な無線通信装置および無線通信方法を提供する。
【解決手段】無線通信装置20は、シーケンス番号および計測データが付加されたパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によってセンサ機器10から取得する。無線通信装置20は、パケットに付加されたシーケンス番号の誤りの有無を判定する誤り判定部52と、シーケンス番号の誤りを訂正する誤り訂正部53と、を備える。誤り判定部52は、判定対象パケットに付加されたシーケンス番号が、判定対象パケットの前後に受信されたパケットのシーケンス番号と不連続となる場合にシーケンス番号の誤り有りと判定する。誤り訂正部53は、誤り判定部52で誤り有りと判定された誤パケットに付加されたシーケンス番号を、前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号に連なる番号に置き換える訂正を行う。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シーケンス番号および所定の物理量の計測データが付加されたパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信機器(10)から取得する無線通信装置であって、
前記パケットを受信するパケット受信部(30)と、
前記パケットに付加された前記シーケンス番号の誤りの有無を判定する誤り判定部(52)と、
前記シーケンス番号の誤りを訂正する誤り訂正部(53)と、を備え、
誤りの判定対象となる前記パケットを判定対象パケットとしたとき、
前記誤り判定部は、前記判定対象パケットに付加された前記シーケンス番号が、前記判定対象パケットの前後に受信された前記パケットに付加された前記シーケンス番号と不連続となる場合に前記シーケンス番号の誤り有りと判定し、
前記誤り判定部で誤り有りと判定された前記判定対象パケットを誤パケットとしたとき、
前記誤り訂正部は、前記誤パケットに付加された前記シーケンス番号を、前後に受信された前記パケットに付加された前記シーケンス番号に連なる番号に置き換える訂正を行う、無線通信装置。
【請求項2】
前記誤り訂正部は、前記誤パケットに付加された前記計測データをヌル値に置き換える訂正を行う、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項3】
前記誤り判定部による前記シーケンス番号の誤りの有無を判定する処理または前記誤り訂正部による前記シーケンス番号の誤りを訂正する処理を実施した後に、前記パケットを受信した順序で記憶装置(DB)に格納するパケット格納部(54)と、
前記パケットの取り出し範囲を規定したウィンドに基づいて前記記憶装置から前記シーケンス番号の総数以下となる基準数の前記パケットを取り出し、前記記憶装置から取り出した前記基準数の前記パケットを前記シーケンス番号に基づいてソートして前記記憶装置に格納するソート処理を行うソート処理部(55)と、を備え、
前記ソート処理部は、前記ソート処理が完了すると、前記基準数以下の数だけ前記ウィンドで規定した前記パケットの取り出し範囲をスライドさせ、スライド後の前記ウィンドに基づいて前記記憶装置から前記基準数の前記パケットを取り出して前記ソート処理を行う、請求項1に記載の無線通信装置。
【請求項4】
シーケンス番号および所定の物理量の計測データが付加されたパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信機器(10)から取得する無線通信装置であって、
前記パケットを受信するパケット受信部(51)と、
前記パケットを受信した順序で記憶装置(DB)に格納するパケット格納部(54)と、
前記パケットの取り出し範囲を規定したウィンドに基づいて前記記憶装置から前記シーケンス番号の総数以下となる基準数の前記パケットを取り出し、前記記憶装置から取り出した前記基準数の前記パケットを前記シーケンス番号に基づいてソートして前記記憶装置に格納するソート処理を行うソート処理部(55)と、を備え、
前記ソート処理部は、前記ソート処理が完了すると、前記基準数以下の数だけ前記ウィンドで規定した前記パケットの取り出し範囲をスライドさせ、スライド後の前記ウィンドに基づいて前記記憶装置から前記基準数の前記パケットを取り出して前記ソート処理を行う、無線通信装置。
【請求項5】
前記ソート処理部は、前記ウィンド内に前記シーケンス番号の末尾から先頭への切り替わりを示す前記シーケンス番号が含まれる場合、先頭側の前記シーケンス番号に前記総数以上となる所定数を付加して前記ソート処理を行い、前記ソート処理の完了後に、前記所定数を付加した前記シーケンス番号から前記所定数を減算する、請求項3または4に記載の無線通信装置。
【請求項6】
前記パケットの欠損の有無を判定する欠損判定部(56)を備え、
前記欠損判定部は、前記ソート処理後の前記シーケンス番号に連続性がない場合に、前記連続性が途切れた箇所の前記パケットが欠損していると判定する、請求項3または4に記載の無線通信装置。
【請求項7】
前記パケットに付加された計測順に並ぶ複数の前記計測データを分解して前記計測順に前記記憶装置に格納するデータ分解部(57)を備える、請求項3または4に記載の無線通信装置。
【請求項8】
前記計測データの計測時刻を推定する時刻推定部(58)を備え、
前記パケットには、所定のサンプリングレートで計測された複数の前記計測データが付加されており、
前記時刻推定部は、過去に前記パケットを受信した際の時刻、前記サンプリングレートに基づいて複数の前記計測データの前記計測時刻を推定する、請求項3または4に記載の無線通信装置。
【請求項9】
前記通信方式は、LPWA規格に準ずるものであり、
前記送信機器は、電池(16)からの電力供給によって前記物理量の計測および前記パケットの送信を行う電池駆動機器であり、
前記パケットには、前記物理量の計測時刻を示す情報が含まれていない、請求項1または3に記載の無線通信装置。
【請求項10】
シーケンス番号および所定の物理量の計測データが付加されたパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信機器(10)から取得する無線通信方法であって、
前記パケットを受信するパケット受信工程と、
前記パケットに付加された前記シーケンス番号の誤りの有無を判定する誤り判定工程と、
前記シーケンス番号の誤りを訂正する誤り訂正工程と、を含み、
誤りの判定対象となる前記パケットを判定対象パケットとしたとき、
前記誤り判定工程では、前記判定対象パケットに付加された前記シーケンス番号が、前記判定対象パケットの前後に受信された前記パケットに付加された前記シーケンス番号と不連続となる場合に前記シーケンス番号の誤り有りと判定し、
前記誤り判定工程で誤り有りと判定された前記判定対象パケットを誤パケットとしたとき、
前記誤り訂正工程では、前記誤パケットに付加された前記シーケンス番号を、前後に受信された前記パケットに付加された前記シーケンス番号に連なる番号に置き換える訂正を行う、無線通信方法。
【請求項11】
シーケンス番号および所定の物理量の計測データが付加されたパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信機器(10)から取得する無線通信方法であって、
前記パケットを受信するパケット受信工程と、
前記パケットを受信した順序で記憶装置(DB)に格納するパケット格納工程と、
前記パケットの取り出し範囲を規定したウィンドに基づいて前記記憶装置から前記シーケンス番号の総数以下となる基準数の前記パケットを取り出し、前記記憶装置から取り出した前記基準数の前記パケットを前記シーケンス番号に基づいてソートして前記記憶装置に格納するソート処理を行うソート処理工程と、を含み、
前記ソート処理工程では、前記ソート処理が完了すると、前記基準数以下の数だけ前記ウィンドで規定した前記パケットの取り出し範囲をスライドさせ、スライド後の前記ウィンドに基づいて前記記憶装置から前記基準数の前記パケットを取り出して前記ソート処理を行う、無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、無線通信装置および無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、中山間地域等の遠隔地に配置した多数のセンサデバイスから無線通信によって計測データを効率よく収集する手法として、計測データを間引き、計測データの送信量を減らすものが提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】指吸 未来(外3名)、“センサデータの時系列変化特徴による間引きを用いた送信量削減手法の提案”、情報処理学会第80回全国大会講演論文集、2018年、3-371~3-372
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、センサデバイスの計測データの収集においては、無線通信の失敗によって、全ての計測データが記憶装置に格納されない問題が存在し、計測データの一部の欠損によって計測データの時系列に誤りが生ずることがある。このことは、計測データの信頼性を低下させる要因となる。
【0005】
このような課題に対して、Wi-FiやLTE等の比較的通信速度が速い通信方式の無線通信では、計測データの計測時刻、誤り訂正符号をパケットに付加して対応することが多い。なお、“LTE”は、Long Term Evolutionの略称である。
【0006】
しかしながら、例えば、[背景技術]の欄で示した遠隔地等からの計測データの収集においては、運用コストや消費電力の観点で通信量を抑えることが望ましいため、計測データの計測時刻、誤り訂正符号をパケットに付加するような対策を実施するのは困難である。
【0007】
本開示は、無線通信による通信量を抑えつつ、計測データの信頼性を確保可能な無線通信装置および無線通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、
シーケンス番号および所定の物理量の計測データが付加されたパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信機器(10)から取得する無線通信装置であって、
パケットを受信するパケット受信部(30)と、
パケットに付加されたシーケンス番号の誤りの有無を判定する誤り判定部(52)と、
シーケンス番号の誤りを訂正する誤り訂正部(53)と、を備え、
誤りの判定対象となるパケットを判定対象パケットとしたとき、
誤り判定部は、判定対象パケットに付加されたシーケンス番号が、判定対象パケットの前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号と不連続となる場合にシーケンス番号の誤り有りと判定し、
誤り判定部で誤り有りと判定された判定対象パケットを誤パケットとしたとき、
誤り訂正部は、誤パケットに付加されたシーケンス番号を、前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号に連なる番号に置き換える訂正を行う。
【0009】
請求項10に記載の発明は、
シーケンス番号および所定の物理量の計測データが付加されたパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信機器(10)から取得する無線通信方法であって、
パケットを受信するパケット受信工程と、
パケットに付加されたシーケンス番号の誤りの有無を判定する誤り判定工程と、
シーケンス番号の誤りを訂正する誤り訂正工程と、を含み、
誤りの判定対象となるパケットを判定対象パケットとしたとき、
誤り判定工程では、前記判定対象パケットに付加されたシーケンス番号が、判定対象パケットの前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号と不連続となる場合にシーケンス番号の誤り有りと判定し、
誤り判定工程で誤り有りと判定された判定対象パケットを誤パケットとしたとき、
誤り訂正工程では、誤パケットに付加されたシーケンス番号を、前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号に連なる番号に置き換える訂正を行う。
【0010】
これらのように、時刻情報に比べてデータサイズの小さいシーケンス番号をパケットに対して付加すれば、パケット毎のシーケンス番号の連続性に基づいて、計測データの計測順序を把握したり、パケットの欠損の有無を把握したりすることが可能となる。すなわち、無線通信の通信量を抑えた形で、計測データを適切に収集することができる。
【0011】
加えて、本開示の無線通信装置および無線通信方法は、パケットに付加したシーケンス番号の連続性に基づいて、シーケンス番号の誤りの有無の判定およびシーケンス番号の誤りの訂正を実施する構成になっている。これによると、パケット毎のシーケンス番号の連続性に基づいて計測データの計測順序やパケットの欠損の有無を適切に把握して、計測データの信頼性を確保することができる。
【0012】
したがって、本開示の無線通信装置および無線通信方法によれば、無線通信による通信量を抑えつつ、計測データの信頼性を確保することができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、
シーケンス番号および所定の物理量の計測データが付加されたパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信機器(10)から取得する無線通信装置であって、
パケットを受信するパケット受信部(51)と、
パケットを受信した順序で記憶装置(DB)に格納するパケット格納部(54)と、
パケットの取り出し範囲を規定したウィンドに基づいて記憶装置からシーケンス番号の総数以下となる基準数のパケットを取り出し、記憶装置から取り出した基準数のパケットをシーケンス番号に基づいてソートして記憶装置に格納するソート処理を行うソート処理部(55)と、を備え、
ソート処理部は、ソート処理が完了すると、基準数以下の数だけウィンドで規定したパケットの取り出し範囲をスライドさせ、スライド後のウィンドに基づいて記憶装置から基準数のパケットを取り出してソート処理を行う。
【0014】
請求項11に記載の発明は、
シーケンス番号および所定の物理量の計測データが付加されたパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信機器(10)から取得する無線通信方法であって、
パケットを受信するパケット受信工程と、
パケットを受信した順序で記憶装置(DB)に格納するパケット格納工程と、
パケットの取り出し範囲を規定したウィンドに基づいて記憶装置からシーケンス番号の総数以下となる基準数のパケットを取り出し、記憶装置から取り出した基準数のパケットをシーケンス番号に基づいてソートして記憶装置に格納するソート処理を行うソート処理工程と、を含み、
ソート処理工程では、ソート処理が完了すると、基準数以下の数だけウィンドで規定したパケットの取り出し範囲をスライドさせ、スライド後のウィンドに基づいて記憶装置から基準数のパケットを取り出してソート処理を行う。
【0015】
これらのように、データサイズの小さいシーケンス番号をパケットに対して付加し、シーケンス番号に基づいてソートすれば、シーケンス番号の連続性に基づいて、計測データの計測順序を把握したり、パケットの欠損の有無を把握したりすることが可能となる。すなわち、無線通信の通信量を抑えた形で、計測データを適切に収集することができる。
【0016】
加えて、本開示の無線通信装置および無線通信方法は、シーケンス番号の総数以下となる基準数のパケットを記憶装置から取り出して、シーケンス番号でソートする構成になっている。このような局所的なソートを実施すれば、シーケンス番号の重複を抑制することができるので、計測データの信頼性を確保することができる。
【0017】
したがって、本開示の無線通信装置および無線通信方法によれば、無線通信による通信量を抑えつつ、計測データの信頼性を確保することができる。
【0018】
なお、各構成要素等に付された括弧付きの参照符号は、その構成要素等と後述する実施形態に記載の具体的な構成要素等との対応関係の一例を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る無線通信装置を含む通信システムの概略構成図である。
【
図2】センサ機器が送信するパケットに付加される情報を説明するための説明図である。
【
図3】無線通信装置が受信する各パケットを説明するための説明図である。
【
図4】パケットのシーケンス番号の誤りを説明するための説明図である。
【
図5】連続してシーケンス番号が誤っている場合の誤り判定を説明するための説明図である。
【
図6】シーケンス番号の誤り訂正を説明するための説明図である。
【
図7】パケットのソート処理を説明するための説明図である。
【
図8】ウィンド内にシーケンス番号の末尾から先頭への切り替わりを示すシーケンス番号が含まれる際のパケットソート処理の流れを説明するための説明図である。
【
図9】シーケンス番号が不連続となっている場合のパケットのソート処理を説明するための説明図である。
【
図10】パケットの欠損判定を説明するための説明図である。
【
図11】パケットに含まれる複数の計測データの分解を説明するための説明図である。
【
図12】計測時刻の推定を説明するための説明図である。
【
図13】無線通信方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の一実施形態について
図1~
図13に基づいて説明する。本実施形態では、本開示の無線通信装置20および無線通信方法を、複数のセンサ機器10から計測データを収集し、ユーザへの情報提供を行う無線通信システム1に適用した例について説明する。
【0021】
図1に示すように、無線通信システム1は、複数のセンサ機器10、無線通信装置20、データベースDBを含んでいる。無線通信システム1は、無線通信装置20を介してセンサ機器10から取得した計測データを時系列データとしてデータベースDBに保存することで、計測データをユーザに提供する。
【0022】
複数のセンサ機器10は、所定の物理量を計測し、当該物理量の計測結果を計測データとして出力する機器である。センサ機器10は、例えば、定期的に観測する必要がある物理量を計測する。
【0023】
複数のセンサ機器10は、計測データを含むパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信する。本実施形態のセンサ機器10は、無線通信装置20に対して、例えば1km以上離れた遠隔地に設置され、計測データを含むパケットを無線通信装置20に向けて定期的または不定期に送信する。本実施形態では、センサ機器10が本開示の“送信機器”を構成している。
【0024】
具体的には、複数のセンサ機器10は、センサ部12、第1通信部14、電池16を含んで構成されている。なお、複数のセンサ機器10は、それぞれ同じように構成されていてもよいし、一部異なるものが含まれていてもよい。
【0025】
センサ部12は、所定のサンプリングレートΔt(例えば、100ミリ秒)で周期的に所定の物理量を計測する。センサ機器10が計測する物理量は、特に制限されず、任意に設定可能である。
【0026】
第1通信部14は、計測データを含むパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信する。具体的には、第1通信部14は、センサ部12から受け取った計測データに基づいてパケットを生成するパケット生成部141、パケット生成部141で生成されたパケットを送信するアンテナ部142を有する。
【0027】
本実施形態の第1通信部14は、LPWA規格に準ずる通信方式(例えば、LoRaWAN)によってパケットを送信する。LPWA規格に準ずる通信方式は、WifiやLTE等に比べて、低い消費電力、広いカバーエリア、低コストを可能とするものであり、通信や電力のインフラが整備されていない遠隔地でのデータ収集に好適である。なお、LPWAは、Low Power Wide Areaの略称である。
【0028】
電池16は、センサ部12および第1通信部14に電力を供給する。センサ機器10は、電池16を電源として駆動される電池駆動機器である。センサ機器10は、電池16からの電力供給によってセンサ部12における所定の物理量の計測および第1通信部14におけるパケットの送信を行う。電池16は、放電可能な一次電池で構成されている。なお、電池16は、充放電可能な二次電池で構成されていてもよい。
【0029】
このように構成される複数のセンサ機器10は、無線通信の失敗によって、全ての計測データがデータベースDB等の記憶装置に格納されない問題が存在し、計測データの一部の欠損によって、計測データの時系列に誤りが生ずる。このことは、計測データの信頼性を低下させる要因となる。
【0030】
このような課題に対して、Wi-FiやLTE等の比較的通信速度が速い通信方式の無線通信では、計測データの計測時刻、誤り訂正符号をパケットに付加して対応することが多い。
【0031】
しかし、本実施形態の如く、遠隔地にあるセンサ機器10から計測データを収集する場合、運用コストや消費電力の観点で通信量を抑えることが望ましいことため、計測データの計測時刻、誤り訂正符号をパケットに付加するような対策を実施するのは困難である。特に、LPWA規格の通信方式では、センサ機器10から送信するデータ量(すなわち、通信量)が大きくなると、無線通信の失敗が生じ易くなる傾向があり、通信量を抑える対策が必要となる。
【0032】
これらを考慮し、本実施形態の無線通信システム1では、計測時刻や誤り訂正符号の代わりに、センサ機器10が送信するパケット毎にシーケンス番号を付加し、当該シーケンス番号に基づいて計測データの時系列を修正する。
【0033】
本実施形態のセンサ機器10は、例えば、
図2に示すように、シーケンス番号、複数の計測データからなるセンサデータがペイロードに対して付加されたパケットを送信する。パケットには、所定の物理量の計測時刻を示す情報が含まれていない。
【0034】
シーケンス番号は、センサデータのフレームの送信順序を示すデータであって、計測時刻に対して充分に小さいデータサイズ(例えば、2バイト)になっている。なお、UNIX(登録商標)時刻を文字列として送信する場合は10バイトが必要となるので、計測時刻をパケットに付加する場合に比べて、シーケンス番号を付加する場合の方が通信量を充分に抑えることができる。
【0035】
パケットを1フレーム送信するたびに、シーケンス番号に対して“1”が加算される。本実施形態のシーケンス番号は、総数が“100”とされ、“00”~“99”までの100通りの値を取る。具体的には、シーケンス番号は、“00”、“01”、…、“98”、“99”、“00”、“01”、・・・といったサイクルになっている。本実施形態のシーケンス番号は、先頭が“00”、末尾が“99”となっている。
【0036】
センサデータには、センサ部12で計測された複数の計測データが含まれている。本実施形態のパケットは、ペイロードに対して、10個の計測データが計測順に並んで付加されている。なお、1つのパケットに含まれる計測データの数は、10個に限らず、10個未満でもよいし、11個以上であってもよい。
【0037】
計測データは、センサ部12の出力値が、例えば、[0、1)の実数の小数第一位から第三位までの3バイトの値としている。“[0、1)”は“0以上、1未満”の区間を意味する。センサ部12の出力値が、例えば、“0.492”の場合は“492”が計測データとしてパケットに付加される。なお、センサ部12の出力値が、例えば、“1.0”以上の場合は“0.999”として扱う。
【0038】
図示しないが、パケットのヘッダには、当該パケットが複数のセンサ機器10いずれから送信されたのかを特定するための固有ID等が付加されている。これにより、無線通信装置20は、取得したパケットが複数のセンサ機器10いずれから送信されたのかを特定可能になっている。
【0039】
無線通信装置20は、シーケンス番号および所定の物理量の計測データが付加されたパケットを所定の通信方式に準ずる無線通信によって送信機器である複数のセンサ機器10から取得する装置である。
【0040】
無線通信装置20は、パケットを受信するための第2通信部30、第2通信部30で受信したパケットに含まれる計測データを処理するデータ処理部50を含んで構成されている。
【0041】
第2通信部30は、所定の通信規格に準ずる無線通信によって複数のセンサ機器10が送信するパケットを受信する。本実施形態では、第2通信部30が本開示の“パケット受信部”を構成している。
【0042】
データ処理部50は、図示しないCPU、ROM、RAM、不揮発性リライタブルメモリを含む記憶部51等を備えたマイクロコンピュータとしての構成を有している。データ処理部50は、受信したパケットに含まれる固有ID等に基づいて、何れのセンサ機器10から送信されたものかを特定する。そして、データ処理部50は、複数のセンサ機器10毎に、パケットに付加されたシーケンス番号に基づいて計測データを時系列データにしてデータベースDBに格納する。なお、本実施形態では、データベースDBが本開示の“記憶装置”を構成している。
【0043】
ここで、無線通信の異常により、シーケンス番号に誤りが発生することがある。また、無線通信の失敗によるデータ欠損等により時系列データの順番誤りが発生する。これらは、計測データの信頼性を損ねる要因となる。
【0044】
これらを考慮し、データ処理部50は、シーケンス番号の誤り訂正処理、シーケンス番号によるパケットのソート処理、データの欠損の有無の判定処理等を行うことでデータ修正を行う。
【0045】
具体的には、データ処理部50は、マイクロコンピュータ上に実現される機能構成として、誤り判定部52、誤り訂正部53、パケット格納部54、ソート処理部55、欠損判定部56、データ分解部57、時刻推定部58を備える。なお、各機能構成は、あくまで、本開示の内容の理解に資するために便宜的に設定した機能構成である。したがって、これらの機能構成が実際にサブルーチンあるいはハードウエアとして実現されていなくても、本開示の所定の機能あるいは処理が実現されていれば、本開示の要件は充足され得る。
【0046】
誤り判定部52は、パケットに付加されたシーケンス番号の誤りの有無を判定する。シーケンス番号の誤りの発生頻度は低いことから、誤り判定部52では、シーケンス番号が連続した数字になっているか否かによってシーケンス番号の誤りの有無を判定する。例えば、
図3に示すように、パケットのシーケンス番号が連続した数字になっている場合、誤り判定部52は、シーケンス番号の誤りなしと判定する。
【0047】
一方、誤り判定部52は、誤りの判定対象となるパケットである判定対象パケットに付加されたシーケンス番号が、判定対象パケットの前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号と不連続となる場合にシーケンス番号の誤り有りと判定する。
【0048】
例えば、
図4に示すように、シーケンス番号が“46”となるパケットは、前後に受信されたパケットのシーケンス番号の“79”、“80”と連続しないので、シーケンス番号の誤り有りと判定する。また、例えば、
図5に示すように、シーケンス番号が“30”、“46”となるパケットは、前後に受信されたパケットのシーケンス番号の“78”、“81”と連続しないので、シーケンス番号の誤り有りと判定する。
【0049】
誤り訂正部53は、シーケンス番号に誤りがある誤パケットのシーケンス番号の誤りを訂正する。誤り訂正部53は、誤パケットに付加されたシーケンス番号を、前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号に連なる番号に置き換える訂正を行う。
【0050】
例えば、
図6に示すように、誤パケットが1つある場合、誤り訂正部53は、誤パケットのシーケンス番号である“46”を、前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号である“79”、“81”に連なる“80”に置き換える。また、
図5に示すように、誤パケットが2つある場合、誤り訂正部53は、誤パケットのシーケンス番号である“30”、“46”を、前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号である“78”、“81”に連なる“79”、“80”に置き換える。
【0051】
ここで、誤パケットに付加される計測データは、真偽が定かではない。このため、本実施形態の誤り訂正部53は、誤パケットに付加される計測データをヌル値に置き換える訂正を行う。
【0052】
パケット格納部54は、パケットを受信した順序でデータベースDBに格納する。本実施形態のパケット格納部54は、誤り判定部52によるシーケンス番号の誤りの有無を判定する処理または誤り訂正部53によるシーケンス番号の誤りを訂正する処理を実施した後に、パケットを受信した順序でデータベースDBに格納する。データベースDBでは、パケットを格納する際に、データベースDBに設けられたタイマTMに基づくタイムスタンプがパケットに対して付与される。
【0053】
ここで、無線通信装置20は、センサ機器10から取得したパケットを格納可能なようにデータベースDBに対して無線または有線によって接続されている。データベースDBは、コンピュータ等によるサーチと検索のために編成された情報の任意の収集体であり、任意のデータ構造で編成されている。データベースDBは、任意の数のデータベース管理システムを使用してもよい。データベースDBは、情報を保存したり提供したりするサードパーティのサーバ又はウェブサイトを含んでもよい。
【0054】
データベースDBへのパケットの格納順序は、センサ機器10でのパケットの送信順序と一致しないことがある。このため、ソート処理部55は、データベースDBから取り出した複数のパケットをシーケンス番号に基づいて昇順にソートして、データベースDBに格納する。このように、データサイズの小さいシーケンス番号をパケットに対して付加し、シーケンス番号に基づいてソートすれば、シーケンス番号の連続性に基づいて、計測データの計測順序を把握したり、パケットの欠損の有無を把握したりすることが可能となる。すなわち、無線通信の通信量を抑えた形で、計測データを適切に収集することができる。
【0055】
ところで、シーケンス番号は末尾に達すると先頭に戻るように循環的にパケットに付与される。このため、単純にデータベースDB内のパケットをシーケンス番号に基づいてソートすると、現在のサイクルのシーケンス番号と1つ前のサイクルのシーケンス番号とが重複してしまう。シーケンス番号の重複は、パケット毎のシーケンス番号の連続性に基づく計測データの計測順序の把握やパケットの欠損の有無の把握に影響し、計測データの信頼性を損ねる要因となる。
【0056】
そこで、本実施形態のソート処理部55は、シーケンス番号の総数以下となる基準数のパケットをデータベースDBから取り出して、シーケンス番号でソートする構成になっている。このような局所的なソートを実施すれば、シーケンス番号の重複を抑制することができるので、計測データの信頼性を確保することができる。
【0057】
具体的には、ソート処理部55は、パケットの取り出し範囲を規定したウィンドWに基づいてデータベースDBからシーケンス番号の総数以下となる基準数のパケットを取り出し、シーケンス番号に基づいてソートしてデータベースDBに格納するソート処理を行う。ソート処理部55は、例えば、
図7に示すように、シーケンス番号の総数(本例では100)の半分(本例では50)を基準数とし、当該基準数のパケットをデータベースDBから取り出す。なお、ウィンドWは、基準数のパケットを取り出し範囲として規定されている。
【0058】
また、ソート処理部55は、ソート処理が完了すると、基準数以下の数だけウィンドWで規定したパケットの取り出し範囲をスライドさせ、スライド後のウィンドWに基づいてデータベースDBから基準数のパケットを取り出して再びソート処理を行う。ソート処理部55は、ソート処理が完了すると、例えば、
図7に示すように、基準数の半分(本例では25)をスライド量とし、当該スライド量の分だけ、ウィンドWで規定したパケットの取り出し範囲をスライドさせる。そして、スライド後のウィンドWに基づいてデータベースDBから基準数のパケットを取り出して再びソート処理を行う。なお、基準数は、シーケンス番号の総数の半分に限定されず、シーケンス番号の総数以下の任意の数に設定することができる。また、スライド量は、基準数の半分に限定されず、基準数以下の数に設定することができる。
【0059】
さらに、ソート処理部55は、ウィンドW内にシーケンス番号の末尾から先頭への切り替わりを示すシーケンス番号が含まれる場合、先頭側のシーケンス番号にシーケンス番号の総数以上の所定数を付加してソート処理を行う。ソート処理部55は、例えば、
図8の左側に示すように、ウィンドW内に基準数以上に離れたシーケンス番号(例えば、“99”や“1”)が含まれている場合、基準数以下のシーケンス番号に対してシーケンス番号の総数を付加してソート処理を行う。
【0060】
そして、ソート処理部55は、ソート処理の完了後に、シーケンス番号の総数を付加したシーケンス番号から総数を減算する。ソート処理部55は、例えば、
図8の右側に示すように、ソート処理後に、シーケンス番号の総数を超えるシーケンス番号から所定数である総数を減算する。
【0061】
このような一連のソート処理によれば、例えば、
図9に示すように、パケットの順序が入れ替わる箇所があっても、データベースDBに格納されたパケットを適正な順序に訂正することができる。
【0062】
欠損判定部56は、パケットの欠損の有無を判定する。欠損判定部56は、ソート処理後のシーケンス番号に連続性がない場合に、連続性が途切れた箇所のパケットが欠損していると判定する。欠損判定部56は、例えば、
図10に示すように、ソート処理後のパケットのシーケンス番号の並びが“30”、“31”、“34”、“35”となっている場合、シーケンス番号の連続性が途切れた“32”、“33”のパケットが欠損していると判定する。
【0063】
そして、欠損判定部56は、パケットの欠損による時系列データの順番誤りを訂正するために、欠損していると判定したパケットに対してダミーの計測データを追加する。ダミーの計測データは、例えば、ヌル値、欠損したパケットの前後に受信したパケットの計測データ、当該計測データの平均値等が挙げられる。
【0064】
データ分解部57は、パケットに付加された計測順に並ぶ複数の計測データを分解して計測順にデータベースDBに格納する。本実施形態のデータ分解部57は、ソート処理部55によるソート処理および欠損判定部56による計測データの追加が完了した後、
図11に示すように、各パケットの計測データを分解して計測データを計測順に並べてデータベースDBに格納する。なお、欠損判定部56による計測データの追加が完了した後は、シーケンス番号は不要となるため、データ分解部57は、計測データをデータベースDBに格納する際にシーケンス番号に関する情報を破棄する。
【0065】
時刻推定部58は、計測データの計測時刻を推定する。時刻推定部58は、過去にパケットを受信した際の時刻、サンプリングレートΔtに基づいて複数の計測データの計測時刻を推定する。過去にパケットを受信した際の時刻については、例えば、データベースDBに設けられたタイマTMから取得する。時刻推定部58は、パケットの最初に付加された計測データの計測時刻について、例えば、
図12の数式F1に示すように、1つ前に受信したパケットの最後に付加された計測データの計測時刻に対してサンプリングレートΔtを加算して求める。また、時刻推定部58は、パケットの最初以外の計測データの計測時刻について、例えば、
図12の数式F2に示すように、同じパケットの最初の計測データの計測時刻に対して、サンプリングレートΔtおよびパケットでの順番Nを乗じた値を加算して求める。
【0066】
次に、パケットの無線通信方法について
図13を参照しつつ説明する。
図13に示すように、無線通信方法は、パケット受信工程、誤り判定工程、誤り訂正工程、パケット格納工程、ソート処理工程、欠損判定工程、データ分解工程を含んでいる。
【0067】
パケット受信工程は、センサ機器10から送信されたパケットを無線通信装置20の第2通信部30で受信する工程である。このパケット受信工程は、定期的または不定期に実施される。
【0068】
誤り判定工程は、パケット受信工程で受信したパケットに付加されたシーケンス番号の誤りの有無を無線通信装置20の誤り判定部52で判定する工程である。この誤り判定工程では、判定対象パケットに付加されたシーケンス番号が、判定対象パケットの前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号と不連続となる場合にシーケンス番号の誤り有りと判定する。
【0069】
誤り訂正工程は、誤り判定工程にて誤り有りと判定された場合に、シーケンス番号の誤りを無線通信装置20の誤り訂正部53で訂正する工程である。この誤り訂正工程では、誤パケットに付加されたシーケンス番号を、前後に受信されたパケットに付加されたシーケンス番号に連なる番号に置き換える訂正を行う。
【0070】
パケット格納工程は、パケット受信工程でパケットを受信した順序でデータベースDBに格納する工程である。このパケット格納工程は、誤り判定工程および誤り訂正工程後に無線通信装置20のパケット格納部54によって実施される。
【0071】
ソート処理工程は、パケットの取り出し範囲を規定したウィンドWに基づいてデータベースDBからシーケンス番号の総数以下となる基準数のパケットを取り出し、シーケンス番号に基づいてソートしてデータベースDBに格納するソート処理を行う工程である。このソート処理工程では、ソート処理が完了すると、基準数以下の数だけウィンドWで規定したパケットの取り出し範囲をスライドさせ、スライド後のウィンドWに基づいてデータベースDBから基準数のパケットを取り出してソート処理を行う。ソート処理工程は、無線通信装置20のソート処理部55によって実施される。
【0072】
欠損判定工程は、パケットの欠損の有無を判定する工程である。この欠損判定工程では、ソート処理後のシーケンス番号に連続性がない場合に、連続性が途切れた箇所のパケットが欠損していると判定する。この欠損判定工程は、無線通信装置20の欠損判定部56によって実施される。
【0073】
データ分解工程は、パケットに付加された計測順に並ぶ複数の計測データを分解して計測順にデータベースDBに格納する工程である。このデータ分解工程は、無線通信装置20のデータ分解部57によって実現される。
【0074】
以上説明した無線通信装置20および無線通信方法によれば、計算コストが低く軽量な時系列の修正アルゴリズムによってセンサ機器10の計測データを時系列データとして収集することができる。具体的には、無線通信装置20および無線通信方法は、時刻情報に比べてデータサイズの小さいシーケンス番号をパケットに対して付加し、パケット毎のシーケンス番号の連続性に基づいて、計測データの計測順序やパケットの欠損の有無を把握している。これによると、無線通信の通信量を抑えた形で、計測データを適切に収集することができる。特に、無線通信装置20および無線通信方法は、パケットに付加したシーケンス番号の連続性に基づいて、シーケンス番号の誤りの有無の判定およびシーケンス番号の誤りの訂正を実施する構成になっている。これによると、パケット毎のシーケンス番号の連続性に基づいて計測データの計測順序やパケットの欠損の有無を適切に把握して、計測データの信頼性を確保することができる。
【0075】
また、無線通信装置20および無線通信方法は、パケットに対して付加したシーケンス番号に基づいてソートした後、シーケンス番号の連続性に基づいて、計測データの計測順序を把握したり、パケットの欠損の有無を把握したりしている。これによると、無線通信の通信量を抑えた形で、計測データを適切に収集することができる。
【0076】
特に、無線通信装置20および無線通信方法は、シーケンス番号の総数以下となる基準数のパケットをデータベースDBから取り出して、シーケンス番号でソートする構成になっている。このような局所的なソートを実施すれば、シーケンス番号の重複を抑制することができるので、計測データの信頼性を確保することができる。
【0077】
したがって、本実施形態の無線通信装置20および無線通信方法によれば、無線通信による通信量を抑えつつ、計測データの信頼性を確保することができる。
【0078】
これらに加えて、本実施形態の無線通信装置20は、以下の特徴を備える。
【0079】
(1)無線通信装置20の誤り訂正部53は、誤パケットに付加された計測データをヌル値に置き換える訂正を行う。誤パケットに付加された計測データは誤っている可能性があるため、当該計測データはヌル値に置き換えることが望ましい。
【0080】
(2)無線通信装置20は、シーケンス番号の誤りの有無を判定する処理またはシーケンス番号の誤りを訂正する処理を実施した後に、パケットを受信した順序でデータベースDB等の記憶装置に格納するパケット格納部54を備える。また、無線通信装置20は、所定のウィンドWに基づいてデータベースDBからシーケンス番号の総数以下となる基準数のパケットを取り出し、取り出したパケットをシーケンス番号に基づいてソートしてデータベースDBに格納するソート処理部55を備える。このソート処理部は、ソート処理が完了すると、基準数以下の数だけウィンドWで規定したパケットの取り出し範囲をスライドさせ、スライド後のウィンドWに基づいてデータベースDBから基準数のパケットを取り出してソート処理を行う。このような局所的なソートを実施すれば、シーケンス番号の重複を抑制することができるので、計測データの信頼性を確保することができる。
【0081】
(3)ソート処理部55は、ウィンドW内にシーケンス番号の末尾から先頭への切り替わりを示すシーケンス番号が含まれる場合、先頭側のシーケンス番号に総数以上の所定数を付加してソート処理を行う。そして、ソート処理部55は、ソート処理の完了後に、所定数を付加したシーケンス番号から所定数を減算する。これによると、ウィンドにシーケンス番号の末尾から先頭への切り替わりを示すシーケンス番号が含まれる場合でも、データベースDBから取り出したパケットをシーケンス番号で適切にソートすることができる。
【0082】
(4)無線通信装置20は、パケットの欠損の有無を判定する欠損判定部56を備える。この欠損判定部56は、ソート処理後のシーケンス番号に連続性がない場合に、連続性が途切れた箇所のパケットが欠損していると判定する。これによると、パケットの欠損の有無を適切に把握することができる。
【0083】
(5)無線通信装置20は、パケットに付加された計測順に並ぶ複数の計測データを分解して計測順にデータベースDBに格納するデータ分解部57を備える。これによると、パケットに計測時刻を示す情報が含まれていなくても、パケットに対して付加された複数の計測データを時系列データとしてデータベースDBに格納することができる。
【0084】
(6)無線通信装置20は、計測データの計測時刻を推定する時刻推定部58を備える。パケットには、所定のサンプリングレートΔtで計測された複数の計測データが付加されている。時刻推定部58は、過去にパケットを受信した際の時刻、サンプリングレートΔtに基づいて複数の計測データの計測時刻を推定する。これによると、パケットに計測時刻を示す情報が含まれていなくても、計測データを時系列データとして取り扱うことが可能になる。
【0085】
(7)無線通信装置20は、LPWA規格の通信方式に準ずる無線通信によってセンサ機器10からパケットを取得する。本実施形態の無線通信装置20は、無線通信による通信量を抑えつつ、計測データの信頼性を確保することができるので、伝送速度は遅く通信量に制限があるLPWA規格の通信方式の無線通信に好適である。なお、LPWA規格の通信方式の無線通信は、伝送速度は遅いものの、伝送距離が長く低コストで消費電力が低いといった特徴がある。
【0086】
(8)センサ機器10は、電池16からの電力供給によって所定の物理量の計測およびパケットの送信を行う電池駆動機器である。本実施形態の無線通信装置20は、無線通信による通信量を抑えてセンサ機器10側の消費電力を抑制できるので、センサ機器10が電池駆動機器で構成される場合に特に有効である。
【0087】
(9)パケットには、所定の物理量の計測時刻を示す情報が含まれていない。これによると、パケットのデータサイズを小さくして、無線通信の通信量を充分に抑えることができる。
【0088】
(他の実施形態)
以上、本開示の代表的な実施形態について説明したが、本開示は、上述の実施形態に限定されることなく、例えば、以下のように種々変形可能である。
【0089】
上述の実施形態の如く、無線通信装置20は、データ処理部50として、誤り判定部52、誤り訂正部53、パケット格納部54、ソート処理部55、欠損判定部56、データ分解部57、時刻推定部58を備えていることが望ましいが、これに限定されない。無線通信装置20は、例えば、データ処理部50として、誤り判定部52および誤り訂正部53を備え、他の機能構成を有していなくてもよい。また、無線通信装置20は、例えば、データ処理部50として、パケット格納部54およびソート処理部55を備え、他の機能構成を有していなくてもよい。
【0090】
上述の実施形態の誤り判定部52は、シーケンス番号が連続した数字になっているか否かによってシーケンス番号の誤りの有無を判定するようになっているが、これに限定されない。
【0091】
例えば、無線通信の異常等によって、後に送信されたパケットが先に送信されたパケットより前に無線通信装置20に届くことで、シーケンス番号が連続した数字になっていない場合、ソート処理を実施することで、パケットの順序を適正な状態にすることができる。このため、誤り判定部52は、後に送信されたパケットが先に送信されたパケットより前に無線通信装置20に届くことで、シーケンス番号が連続した数字になっていない場合は、シーケンス番号の誤りなしと判定するようになっていてもよい。例えば、誤り判定部52は、前後のパケットのシーケンス番号が入れ替わっているような場合、シーケンス番号の誤りなしと判定するようになっていてもよい。
【0092】
上述の実施形態の誤り訂正部53は、誤パケットに付加される計測データをヌル値に置き換える訂正を行っているが、これに限定されない。誤り訂正部53は、例えば、誤パケットに付加される計測データを、1つ前または1つ後に受信したパケットの計測データに置き換える訂正を行うようになっていてもよい。
【0093】
上述の実施形態のパケット格納部54は、シーケンス番号の誤りの有無を判定する処理またはシーケンス番号の誤りを訂正する処理を実施した後に、パケットを受信した順序でデータベースDBに格納するようなっているが、これに限定されない。パケット格納部54は、例えば、シーケンス番号の誤りの有無を判定する処理の実施前に、パケットを受信した順序でデータベースDBに格納するようになっていてもよい。この場合、誤り判定部52は、データベースDBに格納されたパケットのシーケンス番号が連続した数字になっているか否かによってシーケンス番号の誤りの有無を判定すればよい。
【0094】
また、パケット格納部54やソート処理部55は、データベースDBにパケットを格納するようになっているが、これに限定されず、例えば、無線通信装置20の記憶部51にパケットを格納するようになっていてもよい。
【0095】
上述の実施形態のソート処理部55は、ウィンドW内にシーケンス番号の末尾から先頭への切り替わりを示すシーケンス番号が含まれる場合、先頭側のシーケンス番号にシーケンス番号の総数以上の所定数を付加してソート処理を行っているが、これに限定されない。ソート処理部55は、例えば、ウィンドW内にシーケンス番号の末尾から先頭への切り替わりを示すシーケンス番号が含まれる場合、当該シーケンス番号が含まれないようにウィンドWのサイズを小さくして、ソート処理を行うようになっていてもよい。
【0096】
欠損判定部56、データ分解部57、時刻推定部58は、無線通信装置20において必須の構成ではない。すなわち、無線通信装置20は、欠損判定部56、データ分解部57、時刻推定部58のうち少なくとも1つが省略されていてもよい。
【0097】
上述の実施形態のセンサ機器10は、LPWA規格の通信方式に準ずる無線通信によってパケットを送信するものを例示したが、これに限定されない。センサ機器10は、他の通信方式に準ずる無線通信(例えば、1Mbps以下の低速度無線通信)によってパケットを送信するようになっていてもよい。
【0098】
上述の実施形態のセンサ機器10は、電池16によって駆動される電池駆動機器として構成されているが、これに限定されない。センサ機器10は、商用電源等によって駆動される機器として構成されていてもよい。
【0099】
上述の実施形態のセンサ機器10は、計測時刻を示す時刻情報を含まないパケットを送信するようになっているが、これに限らず、時刻情報を含むパケットを送信するようになっていてもよい。
【0100】
上述の実施形態では、本開示の無線通信装置20および無線通信方法を、複数のセンサ機器10から計測データを収集し、ユーザへの情報提供を行う無線通信システム1に適用した例について説明したが、これに限定されない。本開示の無線通信装置20および無線通信方法は、例えば、送信機器から送信された計測データを収集し、当該計測データを自動運転機器等へ直接的または間接的に提供するシステムにも適用することができる。
【0101】
上述の実施形態において、実施形態を構成する要素は、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに必須であると考えられる場合等を除き、必ずしも必須のものではないことは言うまでもない。
【0102】
上述の実施形態において、実施形態の構成要素の個数、数値、量、範囲等の数値が言及されている場合、特に必須であると明示した場合および原理的に明らかに特定の数に限定される場合等を除き、その特定の数に限定されない。
【0103】
上述の実施形態において、構成要素等の形状、位置関係等に言及するときは、特に明示した場合および原理的に特定の形状、位置関係等に限定される場合等を除き、その形状、位置関係等に限定されない。
【0104】
本開示の制御部及びその手法は、コンピュータプログラムにより具体化された一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ以上の専用ハードウエア論理回路によってプロセッサを構成することによって提供された専用コンピュータで、実現されてもよい。本開示の制御部及びその手法は、一つ乃至は複数の機能を実行するようにプログラムされたプロセッサ及びメモリと一つ以上のハードウエア論理回路によって構成されたプロセッサとの組み合わせで構成された一つ以上の専用コンピュータで、実現されてもよい。また、コンピュータプログラムは、コンピュータにより実行されるインストラクションとして、コンピュータ読み取り可能な非遷移有形記録媒体に記憶されていてもよい。
【符号の説明】
【0105】
10 センサ機器(送信機器)
20 無線通信装置
30 第2通信部(パケット受信部)
52 誤り判定部
53 誤り訂正部
54 パケット格納部
55 ソート処理部
DB データベース(記憶装置)