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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021405
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/892 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
G01N21/892 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124213
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】510192019
【氏名又は名称】株式会社ヴィーネックス
(74)【代理人】
【識別番号】100141852
【弁理士】
【氏名又は名称】吉本 力
(72)【発明者】
【氏名】岩崎 修
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 龍太
(72)【発明者】
【氏名】龍満 和明
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA32
2G051AA34
2G051AA41
2G051AB02
2G051BA20
2G051BB07
2G051BB09
2G051BC02
2G051CA03
2G051CB01
2G051CB02
2G051CC07
2G051CC09
2G051CD03
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】従来方式では、異物や欠陥の2次元画像の取得は可能であるが、画素サイズ若しくは、それよりも小さい程度の微小な異物・欠陥の3次元的な形状の取得を可能にする、異物・欠陥検査装置を実現する。
【解決手段】スリット6は、光源1から射出した光が入射し、複数の開口部を有する。第1レンズ7は、スリット6に前側焦点位置が位置するように配置され、スリット6を通過した光を絞り込んで検査対象物W側へとスリット像を導く。受光レンズは、検査対象物を透過又は反射した光を受光する。受光素子アレイ10は、複数の受光素子がアレイ状に配置されることにより構成され、受光レンズを透過した光を受光する。受光素子アレイ10は、1つ又は複数の受光素子により構成される1画素内に、少なくとも1つのスリット像を受光する。
【選択図】図11B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
副走査方向に搬送される検査対象物を主走査方向に延びる読取ラインで読み取る検査装置であって、
光源と、
前記光源から射出した光が入射し、複数の開口部を有する第1スリットと、
前記第1スリットに前側焦点位置が位置するように配置され、前記第1スリットを通過した光を絞り込んで検査対象物側へとスリット像を導く第1レンズと、
検査対象物を透過又は反射した光を受光する受光レンズと、
複数の受光素子がアレイ状に配置されることにより構成され、前記受光レンズを透過した光を受光する受光素子アレイとを備え、
前記受光素子アレイは、1つ又は複数の前記受光素子により構成される1画素内に、少なくとも1つの前記スリット像を受光することを特徴とする検査装置。
【請求項2】
前記第1レンズの後側焦点位置に配置され、前記第1レンズにより絞り込まれた光が入射するアパチャーと、
前記アパチャーに前側焦点位置が位置するように配置され、前記アパチャーを通過した光束を平行光束として、検査対象物の表面或いは内部に位置する後側焦点位置にスリット像を形成する第2レンズとをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記受光素子アレイは、1つ又は複数の前記受光素子により構成される1画素内に、複数の前記スリット像を受光し、
各画素における信号レベルの変化に基づいて、副走査方向に搬送される検査対象物に含まれる画素サイズ以下の異物又は欠陥を検出することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記スリット像を走査させる光走査素子をさらに備え、
前記受光素子アレイは、1つ又は複数の前記受光素子により構成される1画素内に、1つの前記スリット像を受光し、
前記光走査素子により前記スリット像を走査させたときの各画素における信号レベルの変化に基づいて、副走査方向に搬送される検査対象物に含まれる画素サイズ以下の異物又は欠陥を検出することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記第1スリットは、主走査方向に平行又は直角に延びる矩形開口を有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項6】
前記第1スリットは、主走査方向に平行又は直角な方向に対し、傾斜した矩形開口を有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項7】
前記第1スリットは、光軸方向視において互いに直交する複数の矩形開口を有することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項8】
前記光源、前記第1レンズ及び前記受光レンズをそれぞれ複数備え、
少なくとも前記第1レンズを含む照明光学系と、少なくとも前記受光レンズを含む受光光学系とが、複数の前記光源に対応付けて複数組設けられていることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項9】
複数の前記光源は、それぞれ異なる波長を有することを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項10】
前記受光素子アレイは、複数組の前記照明光学系及び前記受光光学系に対応付けて複数設けられており、
前記受光光学系は、各組別の分光素子を有し、当該分光素子により前記受光素子アレイに各組別の色光を入射させることを特徴とする請求項9に記載の検査装置。
【請求項11】
複数の前記受光レンズは、主走査方向に沿ってライン状に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項12】
複数の前記受光レンズは、主走査方向に沿って千鳥状に配置されていることを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項13】
複数の前記受光レンズは、互いに該受光レンズの直径以上或いは視野以上に離間して配置されていることを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項14】
前記照明光学系と前記受光光学系とは、検査対象物を挟んで対向して配置されるか、或いは、検査対象物に対して同じ側に異なる光軸角度で配置されることを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項15】
前記受光レンズと前記受光素子アレイとの間に配置され、前記第1スリットと同じ前記開口部を有する第2スリットをさらに備え、
前記受光素子アレイは、1つ又は複数の前記受光素子により構成される1画素内に、前記第1スリット及び前記第2スリットを通過した少なくとも1つの前記スリット像を受光し、
前記受光素子アレイが受光するモアレ模様に基づいて、副走査方向に搬送される検査対象物に含まれる画素サイズ以下の異物又は欠陥を検出することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項16】
前記スリット像のピッチが画素サイズ以下であることを特徴とする請求項15に記載の検査装置。
【請求項17】
主走査方向に平行に配置された複数の前記光源を備え、各光源は、主走査方向において、端の光源から順番にパルス点灯されることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項18】
前記光源から射出した光を主走査方向に往復偏向させるか或いは、前記往復偏向の何れか一方に偏向させる光偏向器をさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項19】
前記第1スリットは、当該第1スリットに入射する光の光軸に直交する平面に対して、傾斜させて配置されていることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項20】
各光源に対応する前記第1レンズ及び前記受光レンズを含むレンズ系の組は、それぞれテレセントリック光学系を構成しており、互いのレンズ系の組同士が主走査方向においては、各レンズの直径以上或いは視野以上に離間して配置されていることを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項21】
前記スリット像のパターンが前記受光素子アレイ上に投影され、異物又は欠陥が該パターンを通過した際に、前記異物又は欠陥が無い場合のパターンと前記異物又は欠陥がある場合のパターンとの位相差により、検査対象物にある異物又は欠陥の高さ又は深さを弁別することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項22】
前記スリット像のパターンが前記受光素子アレイ上に投影され、異物又は欠陥が該パターンを通過した際に、前記異物又は欠陥が無い場合のパターンと前記異物又は欠陥がある場合のパターンとのパルス幅により、検査対象物にある異物又は欠陥の高さ又は深さを弁別することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項23】
前記光源が、インコヒーレントな光源であることを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項24】
前記複数の受光素子は少なくとも2列以上の前記読取ラインを形成することを特徴とする請求項1に記載の検査装置。
【請求項25】
前記受光レンズは、倒立像を形成することを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項26】
複数の前記光源は、LED、LD又はSLD(スーパールミネッセンドダイオード)を含むことを特徴とする請求項8に記載の検査装置。
【請求項27】
前記光源が、コヒーレント光源であって、該光源の駆動回路に高周波を重畳した出力を発生させ、前記光源に入力してインコヒーレント化した光源としたことを特徴とする請求項1に記載の検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として印刷物やフィルムなど薄い検査対象物の表面のキズ・欠陥及び透明フィルムの内部のキズ・欠陥を検出する検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙幣などの真贋を判別する検査機や、業務用複写機や、家庭用プリンタスキャナなどのフラットベットスキャナに用いられてきた密着型光学センサ(以下CISと記す)を、印刷物の印刷の出来のチェック、薄物・広幅のフィルム製品の製造工程における表面検査、各種の飲料容器や食品容器及び缶などに貼り付けたラベルの検査などを検査対象物とした所謂面検機に応用することが検討されてきており、一部は製品化されている。
【0003】
しかしながら、依然としてSELFOCレンズ(「SELFOC」は登録商標)を応用したCISでは作動距離(以下W.D.と記す)が短く、工程で用いる場面では接触を回避するため、W.D.の長いCISが望まれている。加えて、紙幣等の紙葉類の検査では、被写界深度は比較的浅くとも使用に耐えられたが、前記検査対象物の製造工程では該検査対象物の光軸方向への変動が大きい理由からも被写界深度が深いCISも強く望まれている。
【0004】
被写界深度の深いCISは、特許文献1~7に示されるようにミラー光学系を用いたテレセントリック光学系が代表的である。前記特許文献から、該光学系は非常に複雑であることが分かる。該光学系を製造し、商品として運用する際には、非常な困難を伴う。即ち、製造時には、工程が複雑化し、製造安定性やコストアップが問題となる。また、商品化された後にも、環境の変化や経時変化による複雑な光学系であるが故の光軸の狂いが発生し、従来の簡素な構造のCISに比べて性能の劣化を生じ易いなどの問題が残る。
【0005】
そこで、前記テレセントリック光学系を用いず、ガラスや樹脂を用いた屈折系のレンズを用い、W.D.や被写界深度を向上させることが考えられる。前記の屈折系の光学系については、特許文献6及び特許文献7に示されるように一定程度の解決策が提案されている。例えば、特許文献6においては、千鳥配置したラインセンサに1個のテレセントリック屈折光学系を離間させて配置し、前記屈折光学系であるレンズを離間配置してアレイ化することにより、被写界深度の深い光学系を実現しようとしている。
【0006】
また、特許文献7においては、離間したレンズの間に仕切り板を設けることにより、レンズ間のクロストークを防止する方法について検討されている。前記の特許文献6及び特許文献7においては、被写界深度の向上並びにレンズ間のクロストークを防止することは出来るが、通常のテレセントリック屈折光学系は、大型であり、コンパクト化は困難である。また、特許文献7に示されている仕切り板では、読み取り時に欠落画素が発生し、読み取りが不完全となる。更に、レンズが離間することにより発生する1個のレンズが原理的に有するシェーディングの解決策については示されていない。読取ライン方向の所謂リップルの抑制方法についても言及されていない。しかも、現在までに前記の屈折光学系方式は、実現されてもいない。
【0007】
更に、前記方式と別方式であるラインカメラなどのカメラレンズを用いた検査機は、大型であり、製造現場の広幅の検査対象物に対応させるためには、多くの台数が必要である。そのため、装置全体が非常に大型になり、しかもそのコストも莫大なものとなるため、工場の各工程に配備することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018-019334号公報
【特許文献2】特開2018-152713号公報
【特許文献3】特開2009-244500号公報
【特許文献4】特開2018-019334号公報
【特許文献5】特開2018-022948号公報
【特許文献6】特開2009-246623号公報
【特許文献7】特開平5-14600号公報
【特許文献8】特開2009-259711号公報
【特許文献9】特開2018-136273号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】金子、藤垣、村田;格子投影法を用いた高さ測定装置における計測精度予測手法の提案;実験力学;Vol15,No3,2015.9,pp.210-216
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記の問題を解決するために、工場の各工程に対しても導入可能な小型で安価であり、かつ、W.D.が長く被写界深度の深い新たな屈折系レンズを受光系のみならず、照明系においても採用することで、特に透明性検査対象物においては、被写界深度の深い光学系を提案する。
【0011】
更に、従来のCISでは、2次元の画像のみの取得が可能になるだけであったが、本願発明においては微細な3次元形状の検査対象物の表明性(凹凸、表面粗さ)、透過性のある検査対象物内部に潜む異物や欠陥の検出・把握・3次元立体画像化も可能となる方式について提案する。
【0012】
従来からパターンプロジェクション法による3次元立体形状を取得する装置は、各所で開発されている。しかし、比較的大きな物体が対象であり、本願発明のようなセンサの画素サイズ程度の微小な異物・欠陥の3次元形状を対象とした検査装置は稀であり、工場の検査工程に組み込むには、装置サイズが検査対象に比べ大きく、しかも高価であるためまだ実現されていない。或いは実現されていても、実態はオフラインであり、測定に長時間を要し、せいぜい抜き取り検査であり、工場のオンラインかつリアルタイムの検査はできない。
【0013】
異物・欠陥の3次元形状が分れば、その特定にも有効である。ガラス、化合物、シリコン、樹脂材料等の表面状態の把握やキズ・突起、或いは付着物かの判別など、微小な異物・欠陥の3次元形状を把握することにより、異物・欠陥の種類の特定に対するハードルが下がる。また、検査対象物の表面性(凹凸や粗さ)を検査することも可能である。そこで、本願発明では、画素サイズ程度かそれ以下の小さい異物・欠陥を検出でき、かつ、3次元形状も取得が可能となり、ひいては異物・欠陥の種類を正確に弁別可能にでき、更には検査対象物の表面性も検査が可能となる検査装置を提案する。
【0014】
更に従来は干渉を応用した3次元形状の測定手法もあるが、本願発明では、主としてレーザに代表されるコヒーレント光源を用いた干渉法を用いず、むしろ、可干渉性の低いインコヒーレント光源を用いた手法を提案する。特許文献8においては、インコヒーレントな光源をライン照明として実現している。しかし、該ライン照明は1ラインのみであり、複数のラインを形成するには、複数の光源を必要とする。本願発明では、単一の光源でも複数のラインをムラ無く形成できる手法を提案する。
【0015】
また、特許文献9にモアレ法を示す。所謂モアレ法は、比較的大きな構造物を扱う。測定精度は良好なものの、マイクロメートル単位の検査対象物に対しては適用が困難である。
【0016】
また干渉を応用したホログラムでは、干渉ノイズを伴い易く、かつ、検査装置は複雑である。非特許文献1には、格子投影法が示されているが、測定精度は良いものの、やはり検査対象物は大きい。
【0017】
そこで本願発明では、比較的簡素な光学系による簡便な測定を実現し、リアルタイムかつオンラインでの測定が可能になり、更には微小な検査対象物に含まれる異物・欠陥の3次元の形状を取得可能となる方式を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明に係る検査装置は、副走査方向に搬送される検査対象物を主走査方向に延びる読取ラインで読み取る検査装置であって、光源、第1スリット、第1レンズ、受光レンズ及び受光素子アレイを備える。前記第1スリットは、前記光源から射出した光が入射し、複数の開口部を有する。前記第1レンズは、前記第1スリットに前側焦点位置が位置するように配置され、前記第1スリットを通過した光を絞り込んで検査対象物側へとスリット像を導く。前記受光レンズは、検査対象物を透過又は反射した光を受光する。前記受光素子アレイは、複数の受光素子がアレイ状に配置されることにより構成され、前記受光レンズを透過した光を受光する。前記受光素子アレイは、1つ又は複数の前記受光素子により構成される1画素内に、少なくとも1つの前記スリット像を受光する。
【発明の効果】
【0019】
従来方式では、異物や欠陥の2次元画像の取得は可能であるが、画素サイズ若しくは、それよりも小さい程度の微小な異物・欠陥の3次元的な形状の取得は困難であり、更に、ライン照明の副走査方向の照明領域が広く受光素子の副走査方向寸法に解像度を依存しているため、画素寸法以下の検出は困難であった。かつ、受光素子による異物・欠陥の3次元形状の取得も不可能であった。しかし、本願発明により、画素サイズよりも小さい異物・欠陥を検出でき、かつ、3次元形状も取得可能となり、ひいては異物・欠陥の種類を正確に弁別可能にする検査装置を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本実施形態のスリットパターンの例である。
図2】本実施形態の照明光学系の模式図である。(テレセントリック光学系に入射し、検査対象物中に結像するスリットパターンを形成する一部の光束を図示している。)
図3A】主走査方向用スリットを用いた離間したレンズアレイとスリットを組み合わせた光学系の模式図である。
図3B】副走査方向用スリットを用いた離間したレンズアレイとスリットを組み合わせた光学系の模式図である。
図3C】副走査方向にもテレセントリック光学系で用いるアパチャーで制限される視野以上レンズを離し、かつ副走査方向のレンズの幅を狭くし矩形状にして、レンズの副走査方向の間隔を短くした照明光学系の模式図である。
図4A】受光素子アレイが3ラインの場合の副走査側スリットパターン(照明光ビーム)の模式図である。
図4B】受光素子アレイが3ラインの場合の主走査側スリットパターン(照明光ビーム)の模式図である。
図4C】主走査方向のスリットパターンと副走査方向のスリットパターンを重ね合わせたスリットパターンの模式図である。
図4D】スリットパターンの開口部を1画素中に1本として、光ビームを点滅させつつ、スリットパターンを走査する方式について示す模式図であり、主走査方向に平行な方向に開口部が延びるスリットパターンを示す。
図4E】スリットパターンの開口部を1画素中に1本として、光ビームを点滅させつつ、スリットパターンを走査する方式について示す模式図であり、主走査方向に直交する方向に開口部が延びるスリットパターンを示す。
図4F】スリットパターンの開口部を1画素中に1本として、光ビームを点滅させつつ、スリットパターンを走査する方式について示す模式図であり、主走査方向のスリットパターンと副走査方向のスリットパターンを重ね合わせたスリットパターンを示す。
図5A】主走査方向に用いる照明パターンを用いた格子投影法の光学系の模式図である。
図5B】格子投影法による異物・欠陥検出系において受光系を略垂直方向の光軸上に配置した場合で、異物・欠陥が検査対象物表面に対し、凸となっている場合について示した図である。
図5C】格子投影法による異物・欠陥検出系において受光系を略垂直方向の光軸上に配置した場合で、異物・欠陥が検査対象物表面に対し、凹となっている場合について示した図である。
図5D】照明系の光軸を搬送面に対し傾け、該照明系の光軸傾斜角度に略一致した光軸角度を有する受光系を配置した格子投影法による透過性媒質内部における異物・欠陥の検出方法を表した模式図である。
図6A】照明光学系の第1レンズから第2レンズまでと同じ光学系を受光系として配置し、更に光軸方向に対し、受光素子アレイの手前近傍に照明系と同じスリットパターンを配置することにより、モアレを発生させることの出来る主走査方向の光学系を示す図である。
図6B図6Aにおいてスリットパターンの向きが主走査方向とは略直角を成しており、副走査用となっている光学系を示す図である。
図7A】主走査方向と副走査方向のスリットパターン同士が平行で交差部の形状が正方形である場合を示す図である。
図7B】主走査方向と副走査方向のスリットパターンのピッチが同じで交差部の形状が長方形である場合を示す図である。
図7C】主走査方向と副走査方向の互いのスリットパターンが傾いた平行四辺形の交差部形状をなす場合を示す図である。
図8A】受光素子が3ラインの場合(太線矩形内が異物・欠陥とみなした模式図)であり、実際のモアレの模様が、矩形の枠内に発生している様子を表す図である。(見やすくするために大きく描いている。1画素の中にモアレは発生している。)
図8B】9ラインの受光素子アレイを配置し、エリアセンサのように用いる場合を示す図である。(1画素あたり、3本のスリットパターンとしている。)
図8C】受光素子が1ラインの場合であり、実際のモアレの模様が、矩形の枠内に発生している様子を表す図である。
図9A】テレセントリック照明を主走査方向と副走査方向とで別体とした場合を示す図である。
図9B】モアレパターンが発生した場合の受光素子からの出力信号の模式図である。
図10A】光軸平行移動素子により、僅かに異なるスリットパターンのピッチを形成し、モアレパターンをより精細にとらえることも可能になることを示した模式図である。
図10B】光軸平行移動素子により、モアレのピッチがより細かくなっていることを示した模式図である。
図10C】光軸平行移動素子により、モアレのピッチがより細かくなっていることを示した模式図である。
図10D】光軸平行移動素子により、モアレのピッチがより細かくなっていることを示した模式図である。
図10E】光軸平行移動素子により、モアレのピッチがより細かくなっていることを示した模式図である。
図10F】光軸平行移動素子により、モアレのピッチがより細かくなっていることを示した模式図である。
図10G】光軸平行移動素子により、モアレのピッチがより細かくなっていることを示した模式図である。
図11A】光源から射出した光ビームをコリメーションした後、検査対象物においてAODにより偏向させ主走査方向にスリットパターンを移動する方式を示した図である。
図11B】光源から射出した光ビームをコリメーションした後、AODにより偏向させ主走査方向にスリットパターンを移動する方式であり、図11Aに受光光学系を付加した図である。
図12A】順次点灯するための複数個(3個)の光源を主走査方向に平行に配置したことを表す図である。
図12B図12Aにおいて、光源の主走査方向のピッチを狭めるための縮小光学系を付与した場合を表す図である。
図12C】順次点灯するための8個の光源(LD)から出射した光を8本の光ファイバに接続し、光ファイバの出射端を新たな光源とした場合を示した図である。
図13A】主走査、副走査方向のスリットパターンの移動も含めたモアレ像の移動を示した模式図である。(3回点滅する場合)
図13B】主走査、副走査方向のスリットパターンの移動も含めたモアレ像の移動を示した模式図である。(8回点滅する場合)
図14】ラインセンサの各画素に1本のスリットパターンを配置し、各パターンを主走査方向に移動させる方式を示す図である。
図15】RGB3ラインセンサに各画素に1本のスリットパターンを配置し、各パターンを副走査方向に移動させる方式を示す図である。
図16A】レンズのN.A.と回折限界の関係を示した図である。
図16B】1個の矩形開口による回折光の光高度分布を示した図である。
図16C】複数の矩形開口から出射した回折光が重畳された場合の光強度分布を示した図である。
図16D】複数の矩形開口から出射した回折光が重畳された場合の光強度分布を示した図である。
図16E】複数の矩形開口から出射した回折光が重畳された場合の光強度分布を示した図である。
図16F】複数の矩形開口から出射した回折光が重畳された場合の光強度分布を示した図である。
図16G】複数の矩形開口から出射した回折光が重畳された場合の光強度分布を示した図である。
図16H】複数の矩形開口から出射した回折光が重畳された場合の光強度分布を示した図である。
図16I】矩形開口と円形開口の回折光の強度分布を比較した図である。
図17A】1画素中のパターン本数を増す方法について説明するための図である。
図17B図6Aの光学系を千鳥配置した例を示す図である。
図17C図17Aの光学系から受光素子アレイ手前のスリットを除き格子投影法を用いた千鳥配置の例を示す図である。
図18図9Bの光量変化を模式的に説明した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態に係る検査装置は、副走査方向に搬送される検査対象物Wを主走査方向に延びる読取ラインで読み取る。本実施形態では、まず、照明光学系を光軸高さが変化しても収差の影響が小さいテレセントリック照明系とする。光源としては、インコヒーレントな光源を用いる。光源をストロボ方式でパルス点灯することにより検査対象物を照明し、受光素子の蓄積時間を検査対象物が搬送方向に1画素分移動する時間内に少なくとも1回以上点滅させる。受光素子は、前記照明系の点灯タイミングに同期させて、前記検査対象物が1画素分移動する時間内に少なくとも1回以上、蓄積及び読み出しを繰り返す。なお、受光素子は、アレイ状に複数配置されることにより受光素子アレイとして構成され、1つ又は複数の受光素子により1画素が構成される。
【0022】
前記照明光学系について以下に示す。本実施形態では、所定のスリットパターンを有するスリットが前記照明光学系に含まれており、当該スリットを通過した光によるスリット像が検査対象物Wに投影される。図1は、本実施形態のスリットパターンの例を示す図である。図2は、本実施形態の照明光学系の模式図である。図2では、図1のスリットパターンAを用いた場合が示されている。図2に示す通り、本実施形態の検査装置に備えられた照明光学系は、光源1、コリメータレンズ2、コリメータレンズ3、アパチャー4、アパチャー5、スリット(第1スリット)6、第1レンズ7などを含む。
【0023】
光源1から射出した光は、コリメータレンズ2,3によりコリメートされるか或いは、光源1が有する出射特性で拡がりながら、第1のアパチャー4に入射する。次に第2のアパチャー5に入射し、平行光束成分のみが出射し、スリット6に入射する。スリット6は、複数の開口部を有している。具体的に、スリット6には、搬送方向(副走査方向)に略平行な方向或いは搬送方向(副走査方向)に略直角な方向(主走査方向)に延びる開口部が少なくとも1種類設けられている。また、スリット6には、搬送方向(副走査方向)に対して斜め方向に延びる開口部が設けられていてもよい。
【0024】
スリット6は、第1レンズ(結像レンズ)7の被写界深度中央部で、かつ、スリット6側の略前側焦点位置に配置されている。すなわち、第1レンズ7は、スリット6に前側焦点位置が位置するように配置され、スリット6を通過した光を絞り込んで検査対象物W側へとスリット像(スリット6の各開口部を通過した光の像)を導く。照明光学系が片側テレセントリック光学系である場合、第1レンズ7を通過した光は、検査対象物Wに入射し、第1レンズ7の検査対象物W側の略後側焦点位置に結像する。前記スリット像は、検査対象物Wの表面或いは、内部に結像する。但し、テレセントリック光学系であるため、光学的には、検査対象物Wの表面及び内部に共通の焦点を有すると考えてよい。検査対象物Wが反射性素材であるか、透過性素材であるかを問わない。反射性素材では光源1の光量は比較的小さくし、透過性素材では光源1の光量を増大させるなど、検査に応じて光源1の光量を適宜調整すればよい。即ち反射性素材の場合は、検査対象物Wの表面の異物や欠陥を検出し、透過性素材の場合は、検査対象物Wの内部に含まれる異物や欠陥を検出する。尚、透過性素材においても、検査対象物Wの異物・欠陥を検出でき、かつ検査対象物Wの表面性(凹凸も含む)を評価することも可能である。
【0025】
照明光学系は、テレセントリック光学系がスリット像を投影するうえで、収差や光軸高さの倍率の変化を考慮すると、図2に示すような両側テレセントリック光学系であることが好ましい。両側テレセントリック光学系においては2組のレンズ(第1レンズ7及び第2レンズ9)を用いる。2組のレンズの間には、アパチャー8を配し、許容される収差や受光光量に応じてアパチャーサイズ(開口サイズ)を決定する。アパチャー8は、第1レンズ7の後側焦点位置に配置され、第1レンズ7により絞り込まれた光が入射する。第2レンズ9は、アパチャー8に前側焦点位置が位置するように配置され、アパチャー8を通過した光束を平行光束として、検査対象物Wの表面或いは内部に位置する後側焦点位置にスリット像を形成する。
【0026】
以下においては、両側テレセントリック光学系を用いた構成について記すが、目的に応じて結像レンズは、1つのレンズであってもよい。例えば、結像レンズは片側(物側或いは像側)テレセントリック光学系を構成してもよいし、カメラレンズのように1組の結像レンズであってもよい。更には検出方向によっては、照明光学系にシリンドリカルレンズを用いることも可能である。
【0027】
前記テレセントリック光学系は、1個のスリット6に1組の光学系を対応させることが信号分離手段としては好ましい。即ち、光源1から検査面までがスリット6を含めた1組の光学系を成す。この場合、受光素子アレイは、複数組の照明光学系及び受光光学系に対応付けて複数設けられる。また、1組の光学系と他の1組の光学系は互いに異なるスペクトルを有する光源1を有していてもよい。この場合、光学フィルタで、搬送方向に平行な方向の成分であるか、搬送方向に直交する方向の成分であるかに応じて受光する光を分光して判別することも可能である。すなわち、受光光学系は、各組別の分光素子(例えば光学フィルタ)を有し、当該分光素子により受光素子アレイに各組別の色光を入射させてもよい。
【0028】
前記の方向以外の成分を検出する場合は、更に別のスペクトルを有する光源1を含む光学系を構成し、検査対象物Wの搬送面において搬送方向に対し、直交又は平行以外の別角度で入射させてもよい。また、各光学系で作成した検査対象物Wにおけるスリット像の位置は、異なる位置でも検出は可能であるが、同じ位置に結像させることが異物・欠陥の位置を特定するうえで好ましい。検査位置の合致(コインシデンス)は、機械的に光学系全体をトラバースしてもよいし、光学素子を用いて位置合わせする方法を採用してもよく、適宜検査の条件に応じて決めればよい。
【0029】
スリットパターンとして斜め格子状パターンを形成する場合は、光学系の配置を変更すると格子状パターン全体が搬送面に対し回転するため、スリット6を傾斜させて作成したものを用いれば、同じ位置に所望の角度を有する格子状パターンを形成することが出来る。
【0030】
図1に示したスリットパターンA~Dは、それぞれ複数の開口部を有しており、各開口部は矩形開口により構成されている。ここで、矩形開口とは、略矩形状の開口を意味しているが、細長い開口や格子状の開口を含む概念である。スリットパターンA及びBは、主走査方向に平行又は直角に延びる矩形開口を有する。スリットパターンCは、光軸方向視において互いに直交する複数の矩形開口を有する。スリットパターンDは、主走査方向に平行又は直角な方向に対し、傾斜した矩形開口を有する。
【0031】
スリットパターンにおいて、開口は光を透過するが、隣接する開口間は光を透過しないため、光の明暗が生じる。スリット6は、検査対象物Wの表面或いは内部においてスリットパターンを形成し、また、該スリットパターンの明暗1組のパターンの間隔は、光学系(テレセントリック光学系)の横倍率で決まる。スリットパターン自身を大きく作成した場合は、検査対象物Wの表面或いは内部で結像したスリットパターンも大きくなる。スリットパターンを小さくして検査対象物Wのより微細な範囲を調べる場合は、テレセントリック照明光学系を縮小光学系とし、スリットパターンを縮小投影してもよい。
【0032】
また、スリットパターンの開口の間隔を回折の影響を考慮して小さく出来る場合は、等倍光学系でも縮小光学系と同等の微細な異物・欠陥を検出可能である。或いは受光光学系に拡大光学系を選択すれば、異物・欠陥が微細であっても、受光素子アレイの画素を大きくすることができ、S/Nの良好な信号を得ることにより検出の精度を向上させることも可能である。
【0033】
即ち、検査対象物Wにおけるスリットパターンの投影像の大きさは、明暗1組のスリットパターンの間隔と光学系の倍率で決まり、回折効果を考慮して目標とする解像度に応じて決めればよい。尚、主走査方向に平行な開口部を有するスリットパターンを用いる場合、結像レンズ系としては、回折を考慮しつつ、主走査方向にパワーを有さないシリンドリカルレンズを用いてもよい。結像レンズ系にシリンドリカルレンズを用いる場合は、アパチャー4,5の形状についても、パワーを有さない方向へは各走査幅と同等の幅で開口部が必要となる。尚、スリットパターンにおける各開口部の間隔は、主走査方向に平行又は直交の各方向で略同寸法(ピッチ)とすれば、主走査方向と副走査方向の検出分解能を同等とすることが出来るため好ましい。
【0034】
以下、600dpiの解像度の受光素子アレイについて、等倍の光学系である場合を検討する。
【0035】
図2においては、スリットパターンに含まれる各開口部のピッチ(スリット像のピッチ)を画素サイズ以下に小さくし、光源1のパルス点灯と組み合わせて画素サイズ以下の小さい異物・欠陥に対応した解像度を得ることも可能である。その場合は、搬送速度が一定のため、例えば1画素に着目すると、異物や欠陥が、1画素に含まれるスリット像の数だけ搬送方向に沿ってスリット像を横切ることになる。或いは、スリット像が1画素内で1本の場合には、スリット像が1画素内を走査される本数だけ異物や欠陥が搬送方向に沿ってスリット像を横切ることになる。故に、光源1のパルス点灯タイミングと受光素子アレイの電荷の取り込みタイミング(或いは、電荷の吐き出しタイミング)と同期させれば、異物・欠陥が1画素内のどの箇所を通過したかが予め分かるため、1画素の解像度よりも高い解像度を得ることが可能になる。
【0036】
前述したごとく照明光学系はテレセントリックレンズ系ではなくとも、スリット6を通過した光をマイクロレンズ等で焦点調整してアフォール系と組み合わせる方法や副走査方向のスリットパターンを用いる場合については、副走査方向のみにパワーを有するシリンドリカルレンズなど他の結像レンズ系でもよい。以下においては前記のテレセントリック光学系以外の説明は省略する。
【0037】
更に前述した光学系は1組の光学系であるが、一般的に数10cmから1mを超えるサイズの幅を有する検査対象物Wを扱うには、複数の離間したレンズアレイ群にスリットパターンを組み合わせることが必要になる。それには、まず、受光レンズ系を離間レンズ群とし、照明光学系のレンズ群の光軸に合わせる方法がある。こうすることにより、視野がより明確に分割されるので他のセンサからのクロストークを防止できる。同時に各スリット6の開口部から出射した回折光は、光源1を共有するので、インコヒーレントな光源であっても回折光が干渉する可能性がある。これを回避するために、各スリットパターンが別々のスリット6の開口部を通過し、検査対象物Wにおける別々の位置に結像するテレセントリック光学系とする。即ち、検査対象物Wに結像する各パターンは、互いに異なる独立した光路を介して結像する。また或いは、コヒーレント光源であっても、該光源の駆動回路に高周波を重畳した出力を光源に入力して適宜インコヒーレント化しておいてもよい。高周波重畳技術は、例えば、レーザスペックルパターンの低減のために一般的に用いられている技術である。
【0038】
図3A図3Bに離間したレンズアレイとスリットを組み合わせた例を示す。図3Aは主走査方向用のスリット6(図1のスリットパターンA)を用いた光学系の模式図であり、図3Bは副走査方向用のスリット6(図1のスリットパターンB)を用いた光学系の模式図である。図3A及び図3Bでは、主走査方向と副走査方向でスリットパターンを直交させている。
【0039】
本実施形態の検査装置は、第1レンズ7、第2レンズ9及び後述する受光レンズをそれぞれ複数備えている。具体的には、第1レンズ7及び第2レンズ9を含む照明光学系と、受光レンズを含む受光光学系とが、複数の光源1に対応付けて複数組設けられている。各光源1に対応する第1レンズ7、第2レンズ9及び後述する受光レンズを含むレンズ系の組は、それぞれテレセントリック光学系を構成している。また、互いのレンズ系の組同士が主走査方向においては、各レンズ(第1レンズ7、第2レンズ9及び受光レンズ)の直径以上或いは視野以上に離間して配置されている。即ち、主走査方向に隣接する第1レンズ7は、第1レンズ7の直径以上或いは視野以上に離間しており、主走査方向に隣接する第2レンズ9は、第2レンズ9の直径以上或いは視野以上に離間しており、主走査方向に隣接する受光レンズは、受光レンズの直径以上或いは視野以上に離間している。
【0040】
また、本実施形態では、互いのレンズ系の組同士は、主走査方向に沿って千鳥状に配置されている。具体的には、一部のレンズ系の組は、主走査方向に延びる1つの読取ラインLに沿って間隔を隔ててライン状に配置され、残りのレンズ系の組は、主走査方向に延びる別の読取ラインLに沿って間隔を隔ててライン状に配置されている。これにより、互いに平行に延びる2つの読取ラインLが形成されている。その結果、第1レンズ7、第2レンズ9及び受光レンズは、それぞれ2つの読取ラインLに沿ってライン状に配置されることにより、それぞれ主走査方向に千鳥状に配置されている。このように、複数の受光素子は少なくとも2列以上の読取ラインを形成している。第1レンズ7、第2レンズ9及び受光レンズのそれぞれは、主走査方向だけでなく副走査方向においても、各レンズ(第1レンズ7、第2レンズ9及び受光レンズ)の直径以上或いは視野以上に離間して配置されている。ただし、2つの読取ラインLに沿って各レンズが配置された構成に限らず、3つ以上の読取ラインLに沿って各レンズが配置された構成であってもよいし、1つの読取ラインLに沿って各レンズが配置された構成であってもよい。
【0041】
尚、図3A図3Bでは、円形のレンズを用いたが、必ずしも円形でなくともよい。主走査方向に関しては、有効受光径は、テレセントリック系のアパチャーで決まるので、主走査方向に対しては比較的大きい視野は必要であるが、副走査方向の視野は、レンズ径よりも小さく、アパチャーの張る角で制限されたレンズ厚み程度でよいので、副走査方向は、矩形状にしてもよい。例えば、アパチャー径が2mmである場合は、レンズの副走査方向のサイズはアパチャー径よりも大きいサイズとすればよい。例えば3mm程度あれば十分である。これを図3Cに示す。図3Cは、副走査方向にもテレセントリック光学系で用いるアパチャーで制限される視野以上レンズを離し、かつ副走査方向のレンズの幅を狭くし矩形状にして、レンズの副走査方向の間隔を短くした照明光学系の模式図である。即ち、本実施形態においては、アパチャーで決められるテレセントリック光学系のN.A.がレンズの副走査方向の厚みを決定する支配要因である。
【0042】
尚、前記の光源1からの光は、コリメーションして後にスリット6に入射させても、コリメーションせずにスリット6に入射させても良いが、コリメーションしたほうが、スリッット6から射出する光が、均等な立体角で射出するので、より好ましく、しかも光量損失が少なく、光利用効率が向上する利点がある。更に、回折効果を考慮すれば、スリット6には平面波を入射させることが好ましく、この場合はコリメーションすることが前提となる。
【0043】
前記のスリットパターンの製作には、例えば、耐熱性があり、かつ、熱膨張率の小さい(温度変化による変形量が小さい)ガラス基板に誘電体多層膜を蒸着後に、位置と寸法の精度が高く、表面粗さも光源波長よりも遥かに微細な加工が可能な、イオンビームスパッタリングなどの方法で微細エッチング処理を施し、開口部を設ける方法がある。
【0044】
スリットパターンが形成されたスリット6の基板は、アパチャー5からの入射光ビームに垂直な面に対し、傾斜させている。これを図2に示す。図2には、アパチャー5及びスリット6を側方から見た図を追記している。この図2に示すように、スリット6は、当該スリット6に入射する光の光軸に直交する平面に対して、傾斜させて配置されている。
【0045】
本実施形態で主として用いる誘電体多層膜の反射率は、ほぼ100%であり、開口部の専有面積は、60%であるとすると、残りの40%が反射することになる。即ち、例えば、光源1として約1W出力のLDを検討する。即ち、光ビームパワーの40%である0.4Wが、反射し、最終的には、熱損失につながる。また、反射光が照明光学系の各部に照射され、また、2次、3次といった高次の反射光となり、最終的に迷光が発生する。その防止のためにスリット6を傾斜させ、その方向に光吸収部材(ビームストップ)を設ける。図2では、アパチャー5における開口部以外の部分が光吸収部材として機能している。また,光吸収部材は、放熱部も兼ねており、0.4Wの熱量を放熱する。或いは、別体の放熱部に熱を伝導する部材(ヒートパイプなど)も用いてもよい。
【0046】
光源1は、LEDでもLDをコリメーションしたものでも良いが、特にLEDについては平行光束とするためには、光源1と第1レンズ7との間に間隔をあけて、少なくとも2個のアパチャー4,5を配置することが好ましい。こうすることにより、平行光束成分のみが、スリット6のスリットパターンに入射する。
【0047】
次に検査方法について記す。画素寸法よりも小さい異物・欠陥を検査する場合について記す。
【0048】
まず、LED、LD又はSLD(スーパールミネッセンドダイオード)などの光源1を用いて、副走査方向に1画素分だけ検査対象物が移動する間に、1画素中に含まれるスリットパターンの開口部の数だけ、或いは、1本の開口部を有するスリットパターンの場合は1画素内の走査本数だけ光源1を点滅させると同時に、受光素子の取り込み回数も同期させ、蓄積・出力させる。蓄積中は、受光素子から信号のはきだしをせず、消灯時間中に信号をはきだす。即ち、ビーム照射時間内に、受光素子は電荷を蓄積し、ビーム非照射時間に電荷を読み出す。1画素に含まれるスリットパターンの開口部の数だけ、或いは、1本の開口部を有するスリットパターンの場合は1画素内の走査本数だけ、光源1を点滅させ、謂わば、ストロボ撮影の手法に類似した照明方法を採用することより、各走査方向における1画素よりも小さい(狭い)部分について異物・欠陥の検出が可能になる。上記の1画素内の位置を決定するには、1画素内のスリットパターンの開口部を、スリットパターンよりも小さな異物・欠陥が通過したことを事前に把握しておく必要がある。即ち、最初の開口部が光り、次いで2番目の開口部が光り、最後に光る開口部と受光素子の出力の時間と位置の関係を把握しておく。
【0049】
前述した如く、前記のスリットパターンの開口部は、1画素に1本である場合も含む。この場合、検査対象物表面、或いは、検査対象物中に投影されたスリットパターンが1画素内で点滅を繰り返しながら走査される。具体的には、スリットパターンの開口部の間隔をDfとし、搬送速度をVとすると、開口部間を移動する時間Tfは、Tf=Df/Vとなる。故に、点灯時間Tlは、Tl<Tfでなければならない。
【0050】
図4Aは、受光素子アレイが3ラインの場合の副走査側スリットパターン(照明光ビーム)の模式図であり、主走査方向に平行な方向に開口部が延びるスリットパターンである。図4Bは、受光素子アレイが3ラインの場合の主走査側スリットパターン(照明光ビーム)の模式図であり、主走査方向に直交する方向に開口部が延びるスリットパターンである。図4Cは、主走査方向のスリットパターンと副走査方向のスリットパターンを重ね合わせたスリットパターンの模式図である。前記の場合は、スリットパターンを固定する方式である。
【0051】
また、図4D図4E図4Fに、スリットパターンの開口部を1画素中に1本として、光ビームを点滅させつつ、スリットパターンを走査する方式について示す。図4Dは主走査方向に平行な方向に開口部が延びるスリットパターンの模式図であり、図4Eは主走査方向に直交する方向に開口部が延びるスリットパターンの模式図であり、図4Fは主走査方向のスリットパターンと副走査方向のスリットパターンを重ね合わせたスリットパターンの模式図である。
【0052】
前述したスリットパターンは、1本の開口部を画素内で走査する方式の方が、複数本の開口部を固定して光ビームを点滅させる方式よりも信号のコントラストが良い。しかしながら、複数本の開口部を含むスリットパターンは、走査する必要が無くなるので、簡素な光学系に出来ることがメリットとなる。
【0053】
次にスリットパターン(スリット像)を光走査素子により各走査方向に走査させる方法について記す。光源1から出射した光ビームはコリメーションされ、光走査素子により主走査、副走査の各方向に一定の角度で偏向を受ける。光走査素子は、光源1から射出した光を主走査方向に往復偏向させるか或いは、前記往復偏向の何れか一方に偏向させる光偏向器を構成している。偏向角度に応じて走査方向に光ビームが平行移動(変位)する。例えば600dpiの場合、1画素は42.3μmであるので、照明レンズ系の焦点距離を両側テレセントリックとし、50mmの焦点距離としたとき、偏向角度は約20mradであればよく、光偏向素子としてAOD(音響光学偏向器)を用いた場合、bragg角(回折角)は大きいもので約35~50mradあるので偏向角度として十分である。偏向角度はAODの駆動周波数を変更することにより調整する。更に、1画素分偏向を受ける間に、光ビームは点滅される。点滅は光源1のパルス点灯により行う。
【0054】
故にスリットパターンは初期位置から最終位置に至る間に光源1のパルス点灯に同期して読取りと吐き出しが行われる。読み取り時にスリットパターンは照明(ON)され、吐き出し時には消灯(OFF)される。点滅回数は、検査対象物において投影されたスリットパターンの開口部の各走査方向における幅の1画素に対する比、及び、目標とする異物・欠陥の最大分解能により決定される。ただし、パルス点灯の時間は、光源の最大パワー、受光素子の応答性、出力信号のSNR、ダイナミックレンジ、更には、レンズ系のN.A.に依存する回折限界などに影響するため、各パラメータを勘案して決定される。
【0055】
スリットパターンの初期位置は、1画素の一方の端にあり、最終位置では、もう一方の端にある。即ち、1画素中の光ビームの位置(スリット像の位置)を特定することにより、異物・欠陥の位置を特定できるので、測定系の分解能は1画素の分解能よりも大きくすることが可能になる。副走査方向には検査対象物が搬送されるので、副走査方向のパターンは相対的に走査されることになるため、主走査方向のみの走査だけでもよい。
【0056】
但し、前述した如く、スリットパターンを通過して発生する回折光ビームがお互いに干渉する可能性もあるため、スリットパターンを干渉した場合に応じて数画素にわたり離間させそして数画素間を走査する方式も好ましい。即ち、ある画素の一端から光走査を開始し、数画素離間した画素の他方の端を走査終了位置とする。
【0057】
<格子投影法による異物・欠陥の検出方式>
<媒質表面(反射性媒質、透過性媒質)における異物・欠陥の検出方法>
従来の格子投影法(パターンプロジェクション法;以下格子投影法と記す)は、エリアセンサに液晶とMEMSを組み合わせた光学系で生成したパターンをカメラで撮影する方法が主流であり、パターン自体は、1画素のサイズよりも大きい。本実施形態では、受光素子アレイの1画素のサイズよりも小さい開口部を有するスリットパターンについて記す。本実施形態のスリットパターンは、照明系の光軸を主走査方向に直角の面内で搬送方向に傾けて斜入射とし、受光系を搬送方向に略垂直の光軸上に配置した場合と正反射方向の光軸上に配置した場合について記す。
【0058】
図5Aに格子投影法による異物・欠陥検出系において主走査方向に用いる照明パターンを用いた検査装置の光学系の模式図を表す。また、図5Bに、前記格子投影法による異物・欠陥検出系において受光系を略垂直方向の光軸上に配置した場合を示す。照明系によって形成したスリットパターンは、搬送方向に対し、略平行のパターンとしている。検査対象物Wは、紙面の左から右方向へ移動してゆく。
【0059】
まず、異物・欠陥が検査対象物Wの表面に対し、凸となっている場合について、図5Bに示す。この場合、受光素子が受ける異物・欠陥の信号は、基準信号に対し、先行して取得される。かつ、異物・欠陥の高さが高い方が、より先行して前記信号が取得される。即ち、異物・欠陥の高さを基準信号との時間差によって検出することが可能になる。ここで、基準信号とは、スリットパターンによって生じる時間的な強度変化であり、矩形状の信号或いは、波型の信号の形を表し、読み取り区間にある複数の画素の時間平均であり、1つの画素との差分が常に求められる。
【0060】
或いは、読み取り(ストロボ照明)タイミング信号を基準信号としてもよい。時間差(位相差)は、実際には信号の強度変化として現れるので、信号の強度変化の差分を求めることで、時間差が求められる。図5B図5Cにおいて、基準信号を長い線分で表した。前記線分よりどの位早く信号(差分信号)が観測されるか、どの位遅く信号(差分信号)が観測されるかで凹凸の高さや深さを検出できる。すなわち、スリット像のパターンが受光素子アレイ上に投影され、異物又は欠陥が該パターンを通過した際に、異物又は欠陥が無い場合のパターンと異物又は欠陥がある場合のパターンとの位相差により、検査対象物にある異物又は欠陥の高さ又は深さを弁別することができる。
【0061】
そして、まず、前記の差分値がある閾値を超えた場合に異物・欠陥があると判断でき、かつ、信号強度の変化を基準信号と常に照合しておき、該差分信号が基準信号よりも先に検出されたとき凸状の異物・欠陥が存在すると判断できる。異物・欠陥の検出分解能は、1画素に含まれるスリットパターンの本数(ライン及びスペースの組数)によって決まる。
【0062】
次に、異物・欠陥が検査対象物表面に対し、凹となっている場合について、図5Cに示す。この場合は、異物・欠陥からの信号は基準信号に対し、遅延して取得される。凹部の深さが深いほど、遅延時間が大きくなる。或いは、異物・欠陥からの信号は、基準信号との位置ずれとして検出できるとも言える。後者の検出方法は、搬送方向に略直角方向のパターンについての検出方法でもある。凹となる異物・欠陥の検出分解能も凸の場合と同じであり、1画素に含まれるスリットパターンの本数(組数)によって決まる。
【0063】
更に、検出信号の遅延や先進の度合い(位相差)は、基準信号や異物・欠陥の検出信号をより速い(細かい)クロック信号でカウントしておけば、デジタル的な位相差として求めることが出来る。こうすることにより異物・欠陥のサイズをより精度よく検出可能になる。
【0064】
検査対象物表面のパターンのピッチは、元のパターンのピッチをPpとし、検査対象物表面のピッチPfとすると、検査対象物の表面に略垂直方向に光軸を配置した受光光学系の受光素子に投影されるパターンのピッチPrは、等倍受光光学系の場合であれば、Pr=Pfであり、照明光学系の光軸と検査対象物の表面の垂線となす角をΦとすれば、Pr=Pf=Pp/cosΦで表される。
【0065】
基本的には、前述したように異物・欠陥の大きさや高低はスリットパターンの1画素に含まれる本数に依存するのであるが、光量に余裕があり、パルス点灯周期をスリットパターンの本数よりも多く出来た場合、1画素をスリットパターンの本数で除したサイズよりも小さい異物・欠陥を検出できる。
【0066】
例えば、検査対象物の表面に付着した異物の高さをHfとすると、Hf=Pfのとき、検査対象物表面に異物・欠陥が無い場合の前記受光光学系に観測されるパターンに先行して観測される異物・欠陥のパターンは、丁度、1パターン分であるPfに等しい。また、パルス点滅回数と受光素子の読取り回数、或いは、吐き出し回数を同期させ、例えば、1画素に含まれるスリットパターンの本数による蓄積、吐き出し回数をスリットパターンの倍とすれば、異物・欠陥の高さが、Hf=Pf/2であれば、1パターン幅の1/2だけ先行することになる。同様にして、スリットパターンの1/N倍先行したことが検出出来れば、スリットパターンのN倍の分解能を得ることが出来る。
【0067】
結局、受光光学系が、検査対象物の表面に対し、略垂直方向の配置であれば、観測される異物・欠陥の高さをHfav、異物・欠陥が無い場合のパターンに対する受光信号との時間差分をΔTpf、搬送速度をVp、各光ビームの各走査方向への走査速度をVsとすれば、副走査方向については、副走査方向が搬送方向と逆方向であれば、異物・欠陥への照射パルスの点灯時間内の平均値として高さが得られ、
ΔTpf=(Pp/cosΦ-Hfav)/(Vp+Vs)(搬送方向と逆)
が実際に観測される時間差である。
また、副走査方向が搬送方向と同じ方向であれば、
ΔTpf=(Pp/cosΦ-Hfav)/(Vp-Vs)(搬送方向と同)
が実際に観測される時間差である。
故に、異物・欠陥の高さHfavは、
Hfav=Pp/cosΦ-(Vp+Vs)・ΔTpf(搬送方向と逆)
Hfav=Pp/cosΦ-(Vp-Vs)・ΔTpf(搬送方向と同)
となる。
【0068】
副走査方向と同方向に光ビームを走査すれば同じ位置での走査ビームの滞在時間が増加し、より副走査方向の解像度が向上するので、副走査方向と同方向に光ビームを走査することがより好ましい。
【0069】
検査対象物にキズや欠陥があり、検査対象物の表面に対し凹となっている場合は、前記の異物が付着している凸の場合とは逆に信号が基準信号に対し遅延して観測される。この場合も絶対値は同じであり、遅延により、凹部と判別できる。即ち、先進パルスであれば、凸部、遅延パルスであれば、凹部である。
【0070】
尚、正反射成分を受光する場合も、検査対象物表面に投影されたパターンのピッチは、検査対象物に対して法線方向で受光する場合と同様であり、信号パルスの受光タイミングは、正反射光を受光する場合も法線方向で受光する場合も同じである。
【0071】
<格子投影法による透過性媒質内部における異物・欠陥の検出方法>
次に、透過性を有する検査対象物について、図5Dを用いて説明する。図5Dでは、照明系の光軸を搬送面に対し傾け、該照明系の光軸傾斜角度に略一致した光軸角度を有する受光系を配置する。簡単のため、異物・欠陥が照明光の波長に対し、不透過でありかつ直方体の形状である場合について検討する。
【0072】
受光系が取得する平均レベルよりも低い出力のパルスは、検査対象物の深さ方向における前記異物・欠陥のサイズが小さい場合は、基準信号のピッチよりも狭いパルス幅になり、異物・欠陥のサイズが大きくなるに従い、基準パルスの信号のピッチよりも広いパルス幅となる。即ち、パターン間隔をPpとし、検査対象物の深さ方向における異物・欠陥のサイズをDfとすれば、搬送速度をVp、光学系の光軸と搬送方向に垂直な法線との傾斜角をΦとして、検出パルス幅Pmは、
Pm=Df/(Pp/sinΦ)/Vp
となる。
検査対象物の入射面と出射面が略平行であれば出射角度は入射角度と略同一になり、検査対象物の屈折率は無視出来るため、DfがDf=Pp/sinΦと同じ厚みサイズであれば、パルス幅はパターン幅と搬送速度によって決まる基準出力信号のパルス幅と同じになり、前記異物・欠陥の2倍の厚みサイズであれば、2倍のパルス幅になる。
【0073】
したがって、スリット像のパターンが受光素子アレイ上に投影され、異物又は欠陥が該パターンを通過した際に、異物又は欠陥が無い場合のパターンと異物又は欠陥がある場合のパターンとのパルス幅により、検査対象物にある異物又は欠陥の高さ又は深さを弁別することができる。尚、勿論、副走査方向に画素を有する場合では、スリットパターンのサイズが1画素のサイズよりも大きくともよい。この場合は、従来の格子投影法と同様であり画素分解能は受光素子アレイ程度のサイズになる。
【0074】
差分を取るための基準格子点は、異物が無い場合の検査対象物からの信号を基準にしてもよいし、予め、基準検査対象物からのパターンからの信号パルスを基準としてもよい。また、予め記憶させた信号と照合することによって、差分信号を得ることも可能である。
【0075】
副走査方向のスリットパターンは検査対象物の表面に対する法線とΦだけ傾斜しており、sinΦが副走査方向の変位量であり、cosΦが光軸方向(異物の高さ方向)への変位量である。また傾斜角に応じて、副走査方向成分と光軸方向成分に分解することにより、1画素のサイズよりも小さい異物や欠陥の主走査方向と副走査方向のサイズ並びに高さ(深さ)の検出が可能になる。
【0076】
図2に示した本実施形態の格子投影方式の光学系は、主走査方向と副走査方向とで、別体の光学系としてもよいし一体化してもよいが、同一の光学系とし、しかも異なる波長の光源を用いることで、主走査方向と副走査方向の信号を区別することが可能となる。そして、主走査方向の取得パルス信号の位相差、副走査方向の取得パルス信号の位相差から、各方向の高さ(深さ)を求めることが出来るため、総合的に異物・欠陥のサイズと凹凸を検出可能になる。
【0077】
格子投影法式の照明光学系の概略図を図9Aに示す。図9Aでは、テレセントリック照明光学系を主走査方向と副走査方向とで別体とし、検査対象物においてスリットパターンを合成している。但し、光学的に合成せずとも、別の位置において形成した各パターンを検出した信号を、取得時間差を予め考慮して信号処理により後で合成してもよい。
【0078】
合成にはダイクロイックフィルタを用いて、一方の波長を反射し、他方の波長を透過させる方法が一般的であるが、検査対象物においてスリットパターンが形成されれば単に光軸を一致させるなどの簡便な方法でもよい。この場合は各光軸の入射角度に対し、副走査方向と主走査方向のスリットパターンサイズの補正をしておく。
【0079】
また、本方式の受光光学系も照明光学系と同様の波長分割型の光学系としてもよいし、複数ラインの受光素子アレイにカラーフィルタを設け、一体の受光光学系としてもよい。また、受光角度については、反射受光の場合、正反射光が強く、受光素子が劣化するような場合は、正反射成分を避けるため、検査対象物表面の略法線に沿った法線方向に光軸を有する受光光学系がよい。但し、この場合は、正反射成分を避けるのが目的であるので、法線方向でなくともよい。
【0080】
検査対象物が透過媒質の場合も、同様に直接入射を避ける方法でもよいし、直接入射させてもどちらでも可能である。また光学系のレンズ系は、収差や光軸高さによる倍率変動を考慮すれば、テレセントリック光学系が望ましいが、単に、異物・欠陥を検出するだけでよい場合は、他のレンズ系でもよい。
【0081】
光源は単色性がよいLEDやLDが望ましいが、白色LEDを用い、干渉フィルタなどの狭帯域の透過スペクトル特性を有する光学素子により分光後、スリットパターンを投影してもよい。以上、本実施形態の格子投影方式によれば、受光素子よりも小さい異物・欠陥の主・副走査方向のサイズ並びに3次元形状を検出することが可能になる。
【0082】
<モアレトポグラフィ法よる異物・欠陥の検出方式>
次にモアレトポグラフィ法よる異物・欠陥の検出方式について以下に記す。モアレトポグラフィ法の光学系と格子投影法の光学系の違いは主としてスリットパターンが1個であるか2個であるかの違いである。
【0083】
以下に、モアレトポグラフィ法の照明光学系と受光光学系の両者にパターンを配置する方法について記す。
【0084】
図6Aは、照明光学系の第1レンズ7から第2レンズ9までと同じ光学系を受光系として配置し、更に光軸方向に対し、受光素子アレイ10の手前近傍に照明系と同じスリット(第2スリット)6を配置することにより、モアレを発生させることの出来る主走査方向の光学系である。図6Bは、スリット6の開口部(スリットパターン)の向きが主走査方向とは略直角を成しており、副走査用となっていることが異なる点である。
【0085】
受光系の第1レンズ7及び第2レンズ9は、受光レンズを構成しており、検査対象物Wを透過又は反射した光を受光する。受光レンズは、倒立像を形成してもよい。照明光学系と受光光学系とは、検査対象物Wを挟んで対向して配置されるか、或いは、検査対象物Wに対して同じ側に異なる光軸角度で配置される。受光系の第1レンズ7及び第2レンズ9は、検査対象物Wに対して、照明光学系の第1レンズ7及び第2レンズ9とは対称に(逆の順序で)配置されている。受光系の第1レンズ7と第2レンズ9との間には、照明光学系と同様にアパチャー8が配置されている。受光系のスリット6は、受光レンズ(第1レンズ7及び第2レンズ9)と受光素子アレイ10との間に配置され、照明光学系のスリット6と同じ開口部(スリットパターン)を有している。受光素子アレイ10は、受光レンズ(第1レンズ7及び第2レンズ9)を透過した光を受光する。なお、図2の例では、受光系について図示を省略したが、図6A及び図6Bと同様の受光系が設けられている。後述する受光系の説明については、上述した格子投影法(パターンプロジェクション法)にも適用される。
【0086】
前述した光学系による異物・欠陥検出方法について説明する。照明光学系によって検査対象物Wに形成されたパターンは受光光学系に配置されたスリット6と干渉し、照明光学系のスリット6と受光光学系のスリット6の方向が平行であれば、重なり合ったパターンを受光素子上に形成する。しかしながら実際上両者のスリット6は平行にならず、一種のモアレパターンを形成する。これは、各々のスリット6が検査装置に固有の異なったパターンを形成することを意味する。即ち機差が発生する。
【0087】
前記のモアレパターンは、検出する異物・欠陥のモアレパターンに重畳されるため、ノイズ成分となる。ノイズとなる検査装置に固有のモアレパターンを除去するためには、予め、異物・欠陥の無いキャリブレーション媒質を測定して、検査装置固有のモアレパターンを取得しておき、実際の検査対象物Wを測定して得たモアレパターンから前記のモアレパターンを差し引けばよい。或いは、図2に示した照明光学系により得た異物・欠陥の無い信号パターンを検査対象物Wから得たモアレパターンから差し引いてもよいし、疑似的に理想的なスリットパターンを作成しておき、実際に得た検査対象物Wから得た信号との差分を求めてもよい。これを図7A図7B図7Cに示す。
【0088】
図7Aは、主走査方向と副走査方向のスリットパターン同士が平行で交差部の形状が正方形である場合を示す。図7Bは、主走査方向と副走査方向のスリットパターンのピッチが同じで交差部の形状が長方形である場合を示す。また、図7Cは、主走査方向と副走査方向の互いのスリットパターンが傾いた平行四辺形の交差部形状をなす場合を示す。図7A及び図7Bのモアレパターンと、図7Cのモアレパターンとは異なっていることが分かる。図7Cに示したモアレパターンが一般的であり、照明系と受光系の互いのスリット自身により発生するモアレパターンを予め除去しておく必要がある。
【0089】
次に異物・欠陥の高さの違いによるモアレパターンについて説明する。異物・欠陥の高さHfmを検査対象物における照明パターンピッチPpmの1/5とすると、受光されるパターンは、異物・欠陥が無い場合に比べ、1/5ピッチ分位相が先行または遅延する。高さが平坦な場合、1/5ピッチ分が徐々にずれてゆき、2/5、3/5、4/5、5/5となって位相ずれが大きくなったり小さくなったりする。即ちこの位相ずれが、所謂「うなり」模様となって、モアレパターンとなる。故に、モアレパターンの周期を観測すれば、異物・欠陥の高さを求めることが出来る。
【0090】
異物・欠陥によるパターンの位相ずれをΔPfmとする。異物・欠陥の高さ(深さ)Ppm±ΔPfmだけ位相がずれたパターンと元のパターンピッチPpとの間にどのような関係があるかを示す。但し、ΔPfm<Ppmとする。
【0091】
基準パターンのピッチとの位相ずれが半分になる位置が、一番パターン密度が高い箇所であり、丁度重なり合った部分が、一番密度が低い箇所である。第1の密度が高い位置は、位相ずれがPpm/2に等しくなった点である。第二の密度が高い位置は、パターンのN番目であるとすると、N・ΔPfmだけずれており、
N・ΔPfm=Ppm/2
であるから、
ΔPpm=Ppm/2N
である。Nは基準パターンの本数である。
故に
Hfm=ΔPpm=Ppm/2N
となり、モアレパターンから異物・欠陥の高さを求めることが可能になる。
【0092】
モアレパターンのピッチは、実際の照明系や受光系のパターンピッチよりも大きく、例えば、Ppm=10μmとして、異物・欠陥がその1/10程度の位相差を生じさせたとすると、1μmの高低差を検出可能になる。前述したパターン投影法に対し、モアレトポグレフィと呼ばれる手法では、高分解能での異物・欠陥の検出が可能になる。本実施形態におけるモアレトポグラフィによる方式では、主走査方向と、副走査方向に分解して各々検出し、前記の主走査方向の座標と副走査方向の座標を合致させることにより座標上の高さを求めてもよい。
【0093】
通常、モアレトポグラフィは、画像を取り込み、2次元画像として視覚的に観察する方法が主流である。例えば、医療用では、脊柱彎曲を診断するために、患者の等高線画像を2次元的に診断する。また、顔面の観察により、形成外科的治療の良否を判断することも行われている。歯科用では、法医学的な解析や歯型の解析にも使用されている。しかしながら、これらは、2次元画像をまず取り込み、その結果を解析する手法であるために、工場の生産ラインでリアルタイムに異物・欠陥を検出することは、困難である。しかも微小な異物・欠陥の検出には特別な工夫を必要とする。本実施形態におけるモアレトポグラフィ法は、工場の生産ラインにおいてもリアルタイムでの処理が可能となる検出方法である。
【0094】
更に本実施形態におけるモアレトポグラフィ法では、搬送系により、検査対象物が移動するため、ラインセンサを用いることを前提としている。即ち、画素寸法よりも狭いスリットパターン間隔(スリット像の間隔)を有し、しかも受光素子の蓄積時間よりも短い間隔で光源を点滅させる。即ち、受光素子アレイ10は、1つ又は複数の受光素子により構成される1画素内に、スリット6を通過した少なくとも1つのスリット像を受光する。点滅のタイミングは、画素におけるパターンの本数に応じて複数回点滅させる。こうすることで、画素寸法より高い解像度を実現できる。
【0095】
さて、任意の主走査方向と副走査方向のパターンの座標は受光素子により決定されるが、これだけではモアレの位置を判別することはできない。受光素子からの出力変化をとらえる必要がある。それについて以下に記す。
【0096】
図8Aに異物・欠陥の凹凸による2次元のモアレパターンを示す。矢印方向にモアレパターンが出来ているのが分かる。背景にあるスリットパターンが基準パターンである。検査対象物においては、紙面に対し上下方向にパターンの形状が変化し、かつ、移動する。(即ち、副走査方向は上下方向であり、主走査方向は左右方向である。)副走査方向に着目すると、異物は矢印方向に進んでゆく。図8Aの基準スリットパターンの本数は、13本としている。異物・欠陥の凹凸は、モアレパターンを発生する。本実施形態においては説明をしやすくするため、予めモアレパターン上を異物が通過すると見做しているが、実際には、異物・欠陥の凹凸がモアレを発生する。異物・欠陥の凹凸によって発生するモアレの丁度中央近傍に着目すると、異物・欠陥に含まれるモアレパターンの数は、図8Aでは3本である。
【0097】
図8Aの受光素子は3ラインセンサとしているので、副走査方向に異物が通過すると3ラインセン面上で発生する全モアレパターンの本数は、全部で10数本程度になる。3ラインセンサの副走査方向におけるモアレパターンの本数を数え、かつ、3ライセンサのサイズをその本数で割ることにより、モアレパターンの平均的ピッチを求めることができ、異物・欠陥の凹凸の高さ(深さ)をHf=ΔPp=Pp/2Nにより正確に求めることが可能になる。基準格子状パターンを多く設定すれば、1画素分のモアレパターンの本数から異物・欠陥の凹凸の高さ(深さ)を求めることも可能である。また、異物・欠陥の高低は時々刻々と変化するので、モアレの1周期毎の長さ(ピッチ)の変化を捉えることで、異物・欠陥の凹凸のサイズを求めることも可能である。
【0098】
また、図8Bは9ラインの受光素子アレイを配置し、エリアセンサのように用いる場合であり、1画素あたり、3本のスリットパターンとしている。これにより、スリット数を少なくしてもモアレの発生を分別し易くなり、ひいては3次元形状も得やすくなるというメリットがある。図9Bはモアレパターンが発生した場合の受光素子からの出力信号を模式化したものである。図9Bに示す変化によってモアレパターンの時間変化を捉えることが可能になる。即ち、モアレの時間的変化は受光素子アレイの副走査方向の画素数が少ない場合に用い、副走査方向の画素数が多い場合は空間的変化(画像)として求めることが出来る。本実施例では、受光素子アレイは、1つ又は複数の受光素子により構成される1画素内に、複数のスリット像を受光する。そして、各画素における信号レベルの変化に基づいて、副走査方向に搬送される検査対象物に含まれる画素サイズ以下の異物又は欠陥を検出する。
【0099】
また、前述した内容は、異物・欠陥の凹凸形状を高精度で検出する方法であるが、モアレの発生そのものから異物・欠陥の有無を検出できることは言うまでもない。図8Cは受光素子が1ラインの場合で、投影パターンが格子状パターンであり、実際のモアレの模様は、矩形の枠内に発生するので1画素の狭い領域中にモアレは発生する。この場合は、図8Bと異なり、発生したモアレパターンの時間変化を捉える。
【0100】
図6Aに透過性媒質である検査対象物に対する本実施形態のモアレトポグラフィ方式の照明光学系並びに受光光学系を示したが、当然、反射媒質である検査対象物にも応用が可能である。その際、図9Aに示した光学系の照明光学系は2波長とし、検査対象物における各測定部のコインシデンスを取ればよい。更に波長を複数用いるか、或いは、同じ波長の光源でも別体として別々のタイミングで信号を得れば、1個の光学系の回折限界を超えた信号が得られる。即ち、格子投影法と同様、複数の照明光学系を用い、光軸平行移動素子(図10A)により、複数倍のスリットパターンのピッチを形成し、各々の照明光学系により各々のモアレパターンを検出し合成することにより、異物・欠陥をより高精細にとらえることも可能になる。これを図10B図10Gに示す。図10B図10Gに示したように、モアレのピッチはより細かくなっている。照明光学系は、各々にスリットパターンを有しており、各光学系の光源の点滅順序を調整する。即ち、照明光学系Aが点灯しているときは、照明光学系Bが消灯しており、照明光学系Bが点灯しているときは、照明光学系Aが消灯しており、故に照明光学系Aと照明光学系Bが回折による影響を互いに受けないようにしている。受光光学系も照明光学系に応じて読み取りタイミングを調整し、実質的に照明光学系Aと照明光学系Bの合成した検出信号が得られる。
【0101】
この場合のスリットパターンのピッチは、図8に示したものより約半分のサイズにしている。光軸平行移動素子は、光学ガラスなどの平行平板素子を光軸に対し傾け、適宜回転させる。光軸が主走査方向と副走査方向にずれるので、スリットパターンも同様にずれる。各スリッパターンのずれの調整については、スリットパターンの形成面に対物レンズを配置するなどして、スクリーンにスリットパターンを拡大して調整してもよいし、受光信号の基準パルスからのずれを確認して調整してもよい。尚、異なる波長の照明光学系を用いてカラーフィルタの無いモノクロセンサで受光してもよい。
【0102】
離間レンズ系にパターン投影法やモアレトポグラフィを用いる際には各レンズ光軸が微妙にずれることによる読み取りのタイムラグが発生するが、異物・欠陥の検出サイズや凹凸の絶対値などにより3次元形状を求める際には、特に画素の境界領域においては問題になるため、予め基準信号により時間差補正をしておき、信号合成をした後、画像合成或いは信号合成をすればよい。
【0103】
<テレセントリック照明光学系の構成>
本実施形態の照明光学系は、図2に示したように、検査面上に微細なスリットパターンを形成する。光源1はLDやLEDであり、単色性が優れたものを用いることが好ましい。本実施形態のテレセントリック照明光学系を図2に示した。格子投影法で用いた光学系を同様に用いることが出来る。図2において光源1は1個としている。光源1はLD(レーザダイオード)が好ましいが,LEDも使用可能である。本実施形態においては、光源1としてLDを用いた。また、光源1として白色のLEDを用いることも可能であり、その際は、光学フィルタにより単色性を確保すればよい。光源1から出射した光は、コリメートレンズ系により、ある程度断面が矩形の光束にコリメーションされる。或いは、コリメーションしないでも良いが、その場合は、平行光束を得るために、拡がった光を失うことになるため、光源1の光量に余裕があることが前提となる。
【0104】
<複数のスリットパターンによる回折像の干渉>
スリット開口部と遮蔽部の主走査方向のサイズの比は、開口部60%に対し、遮蔽部40%である。スリットパターンは、複数の矩形開口を有しており、矩形開口の短辺側が約8.5μmのサイズである。また、テレセントリックレンズ系のN.A.は0.02乃0.03(図16A参照)としており、矩形開口による回折限界は、7μm~10μmであり、スリットパターンの矩形開口のピッチは14.1μmであるため、矩形開口による回折限界(1次)の2倍以上離間して結像する。
【0105】
図16Bに矩形開口によるFraunhofer回折光(以下単に回折光と呼ぶ)の振幅強度分布(矩形開口)とパワーの強度分布を示す。振幅は破線、パワーは実線で表した。またスリットパターンに対応した複数の回折光の強度分布を図16Cから図16Hに示す。重畳された回折光は、第1暗部とピーク強度の距離(全幅)の0.75倍(図16C)、1倍(図16D)、1.25倍(図16E)、1.5倍(図16F)、2倍(図16G)、5倍(図16H)の距離だけ離間して回折光を重畳している。等倍系であるとすると、N.A.で決まる回折限界はN.A.=0.02で光源の波長が=450nm(550nm)の場合、前記距離の0.75倍(図16C)については、干渉の影響が大きく、回折光ビームの分離が出来ないが、1倍以上(図16D図16H)については最大値と最小値が明確に分離されており、サイドローブがあるものの十分に分離していることが分かる。
【0106】
N.A.が0.02の回折限界は、第1暗点までの幅をWd(λ)とすると、結像面で、各々Wd(450nm.0.02)≒10μm、Wd(550nm,0.02)≒10.75μmになる。N.A.=0.03の場合はそれぞれWd(450nm,0.03)≒7.5μm、Wd(550nm,0.03)≒9μmとなる。
【0107】
次に回折光ビームのお互いの干渉が発生する可能性を検討する。隣り合った回折光ビームが近い位置にあり、それぞれの光ビームの振幅が重なれば干渉が発生する。そのため、干渉しないように回折光ビームを光強度分布に影響しない程度に離間させればよい。即ち、回折光ビームが仮に重畳され干渉しても光ビームの中央から第1暗部までの光強度分布に影響のない範囲であれば、回折した光ビームは良好に分離される。即ち、本実施形態において、第1暗部と回折限界は同等であるから、テレセントリック系の光軸が独立した系であることを利用して光軸に平行方向のみ重畳しないようにすればよい。図16Dの1倍の場合は、回折限界幅は、N.A.=0.03の場合、約7.5μmであるので、矩形開口の第1暗部までの投影像の等倍である7.5μm以上離間して、スリットパターン像を生成すればよい。本実施形態においては、1画素を約3分割して1/3画素ずつの点滅を検討したので、14.1μmが1本(ライン及びスペースが14.1μmで1組)となる。
【0108】
次に14.1μmのうち60%を開口部(或いは透過部)とし、40%を遮蔽部(或いは反射部)としたスリットパターンとすると、約8.5μmが開口部となり、約5.5μmの幅が遮蔽部となる。回折限界の幅は、Wd(450nm,0.03)≒7.5μmであるので、等倍以上離間しており、光ビームは良好に分離される。また、Wd(550nm,0.03)≒9μmについては、開口部2を9μmとし、遮蔽部を5μmにすれば、同じく良好に分離できる。
【0109】
以上は矩形開口について記したが、勿論円形開口を用いてもよい。円形開口の場合は、矩形開口よりも光利用効率が若干下がり、高次の光強度が矩形に比べ低く、重畳したときの多数の回折光のコントラストが良好になるメリットがある。図16Iに矩形開口と円形開口の回折光の強度分布を比較した図を示す。矩形開口は、円形開口に比べ、第一暗部までの距離が狭く、即ち1画素内での明暗の本数が若干多い。
【0110】
<光量とS/N>
本実施形態の受光素子アレイ1画素分に必要とする受光光量を検討する。一般的な600dpiの解像度を有するCMOS光センサを本実施例で採用する。また、本実施例の600dpiの受光素子アレイ(1画素サイズ:42.3×42.3μm)の50MHz駆動時のλ=450nmの条件における感度は、2.8V/(mW・sec)であり、飽和出力電圧は、1.3Vである。
【0111】
本実施例では、まず、検査対象物がほぼ拡散性のない媒質であると仮定し、異物・欠陥による散乱光は受光素子アレイにほとんど到達せず、異物・欠陥以外の部分については、ほとんどの散乱光を受光できるとみなし、光散乱媒質による損失は、別途考慮することにする(異物・欠陥により散乱された光は該異物・欠陥と受光素子アレイとを結ぶ光軸以外の光軸に移動し、別の画素に到達しコントラストを向上させる効果があり、或いは、軸外光となり受光素子アレイに入射しない)。受光素子アレイの飽和出力を得るために必要な(飽和)光量Inは、スリットを受光素子アレイの手前に配置するため、40%程度の損失があり、In=0.77mWとなる。本実施例の光源は、例えば、青色LDと緑色LDを分光して使う(ダイクロイック)。発振波長は青色がλ=473nm、緑色がλ=525nmである。各波長のLDは、出力1Wの連続発振LDを受光素子アレイの蓄積・読み出しに同期させパルス変調する。つまり、蓄積時には発光させ、読み出し時には、消灯する。スリットのライン及びスペースは夫々5.5μm:8.5μmの走査方向サイズ比とした。
【0112】
次に、照明光学系における光伝搬損失は主としてスリットパターンによるものである。即ち、開口率が60%であり、それ故スリットパターンの光伝搬効率は約60%であり、スリットを通過する光量は約0.6Wである。故に、千鳥配置の受光素子アレイにおいて各受光素子アレイの18mmの主走査方向の長さをカバーするとして、600dpiの場合は、1ライン当たり、354画素である。故に1画素分の出射光の光量は、1.4mWとなる。また、受光素子アレイ手前に照明光学系で用いたスリットパターンと同じサイズのスリットを用いるため、受光素子アレイ手前で60%の損失があり、トータルで、0.84mWになる。
【0113】
これは、飽和光量よりも大きく(1.1倍)、必要な光量を満足している。スリットパターン以外の光伝搬時の損失や光散乱性のある検査対象物における散乱損失に補填すればよい。或いは、被写界深度を更に深くするために、受光テレセントリックレンズ系のN.A.を小さくすることに用いても良い。更に、光量が不足した場合でも光源の出力を増大させればよい。1WのLDを更に出力のあるLDに変更すればよい。数W級出力のLDは現在市販されている。
【0114】
本実施例の受光素子アレイの変換効率は、0.6μV/e-(1光電子当たりの出力電圧への変換効率)であり、量子効率は0.455であるので、飽和出力電圧が得られるときの生成電子数は、98.6万個弱である。故にショットノイズ比S/N(shot)は、S/N(shot)≒992となる。ショットノイズにおいては、S/N=1即ち、992個の電子が最小電子数となるため、このときの出力V(shot_minimum)を検討すると、V(shot_minimum)≒0.6mVが得られる。
【0115】
一方、本実施例の受光素子アレイの暗時出力ノイズN(dark)は、N(dark)=0.3mVであり、読み出し時ノイズN(read)は、N(read)=0.6mVであるので、ショットノイズを含めたノイズ(暗時ノイズ+読み出しノイズ+最小光量のときのshotノイズ)NtotalはNtotal≒1.5mVであり、結果的に信号対雑音比S/Ntotalは、S/N(total)≒867となり、9ビット(512諧調)の分解能が得られる。
【0116】
<矩形光ビームの拡大コリメーション>
本実施例において、光ビームについては、図示しない方法により光源から出射した励起光をコリメーションし、光ビーム径ΦcをΦc=2mmとした。LDから出射した光束のビームコリメーションの方法は、代表的な従来技術である一対のシリンドリカルレンズや、球面レンズとアナモルフィックプリズムペアの組み合わせでもよい。そして、主走査方向のライン照明エリアは、18mmが必要であり、9倍の拡大光学系とするため、組み合わせシリンドリカルレンズの焦点距離比を1:9とした。本実施例では、f=4mmとf=36mmの組み合わせレンズとした。照明系テレセントリックレンズは焦点距離ftをft=50mmとした。以上の光学系により、検査対象物中にスリット像が形成される。
【0117】
尚、両側テレセントリック光学系のレンズ間には、各レンズが共有する焦点位置にΦ=1mm~3mmのアパチャーを配置し、所望のN.A.を実現する。
【0118】
本実施例における検査対象の搬送速度は、1m/sとした。故に副走査方向への画素分の滞在時間は、42.3μsとなる。主走査方向の走査速度は、受光素子が141KHzの副走査周波数を満足する蓄積時間とした。即ち1画素を通過するまでに3回のオーバーサンプリングが可能となり、同時に3回のストロボ的点滅が可能になる。3回のストロボ的点滅の光量変化を読み取り、1画素よりも小さい領域におけるモアレパターン或いは格子投影法によるパターンの時間変化を検出し、異物・欠陥を検出する。
【0119】
第1(シリンドリカル)レンズと第2(シリンドリカル)レンズの間の各焦点位置に、長円形(矩形)の開口部を有するアパチャーを配置しテレセントリック光学系とする。第2(シリンドリカル)レンズに入射した各平行光束は、第2(シリンドリカル)レンズにおける検査面上の焦点位置にライン状パターンとして結像され、ライン形状のパターン照明が、検査媒質中或いは検査面上に形成される。
【0120】
前記スリットの開口部の長辺の方向は、搬送方向に平行、或いは直角に配置する。搬送方向に直角な方向のラインパターンは、異物がある場合と無い場合とで異なった光量変化をする。例えばライン状の照明パターンを画素中心に配置した場合を想定する。この場合は、受光素子はある光量を常に受光しているので、出力が最大値に近い値となる。
【0121】
斜入射したライン状パターンは、異物の高さ(厚み)に応じて、出力幅が変化する。即ち、異物の高さが低い或いは、厚みが薄い場合は、異物のある部分の出力値の出力時間が長くなり、異物の高さが高い、或いは、厚みが厚い場合は、異物の無い出力値の出力時間が短くなる。つまり、異物の透過率が検査対象物の透過率よりも低い場合、或いは、不透過性媒質の場合の出力は低くなるが、この低出力期間が、異物の高さが高い場合は長くなり、異物の高さが低い場合は短くなる。
【0122】
<照明系のスリットパターンの主走査方向への移動方法>
副走査方向については搬送系が検査対象物を移動させるので、モアレパターン或いは格子投影法によるパターンもそれに応じて動き、時々刻々とモアレパターンについては模様が変化する。しかし、仮に異物・欠陥が画素内にあったとしても、主走査方向に対するモアレパターン或いは格子投影法(パターンプロジェクション法)によるパターンの時間的な変化は非常に小さい。主走査方向も副走査方向と同様に積極的にスリットパターンを動かすことが出来れば、異物・欠陥があたかも搬送されるような動きが得られるので、モアレパターン或いは格子投影法によるパターンの時間的変化を捉えることが十分可能になる。
【0123】
副走査方向では連続的に搬送系によって光ビームが相対移動するため、光ビーム走査素子は、主走査方向も副走査方向と同様に光ビームを連続的に移動させることが出来る素子であることが好ましい。このような光走査素子としては、音響光学偏向器(Acousto-Optic-Deflector;以下AODと記す)、ポリゴンミラー、ガルバノミラー、レゾナントミラーなどの連続的に光ビームを主走査方向に移動可能な光走査素子が好ましい。前記光走査素子がデジタル駆動方式となる場合でも連続的に走査したと見做せるほど、画素分解能よりも高分解能な光走査素子であってもよい。本実施例では、透過光学系として扱いやすく高速走査が可能なAODを用いた。
【0124】
図11AにAOD11を用いた光学系を示す。また、図11BにAOD11を用いた照明光学系と受光光学系の全体的な構成を示す。本実施例では、受光素子アレイ10は、1つ又は複数の受光素子により構成される1画素内に、1つのスリット像を受光する。そして、AOD11によりスリット像を走査させたときの各画素における信号レベルの変化に基づいて、副走査方向に搬送される検査対象物Wに含まれる画素サイズ以下の異物又は欠陥を検出する。
【0125】
本実施例では副走査方向の搬送速度は1m/sであるので、主走査方向の走査速度も副走査方向に合わせ、1m/sとした。光ビームは大きくとも1画素分移動すればよいので、600dpiの場合、42.3μmの距離を1m/sで移動することになり、即ち走査時間は42.3μsec、副走査ライン周波数23.6KHzの走査周波数でAOD11を駆動すればよい。前記周波数であればAOD11は問題なく駆動できる。スキャンレート250KHzが現在市販されている。
【0126】
またAOD11は、光ビームを往復運動させることが出来るため、副走査方向の位置は異なるが1画素中の「往」と「復」と別々の方向の成分も取得が可能になる。尚、図11A図11Bにおいては、光源1のコリメーションに関する光学素子は図示していない。LDなどの一般的なコリメーション素子(非球面レンズやアナモルフィックプリズムペアなど)を用い、AOD11の有効径に適したコリメーションビーム径とすればよい。
【0127】
本実施例のコリメーション後の光ビームは、光ビーム径ΦbをΦb=2mmとした。AOD11は光学結晶であるTeO(二酸化テルル)を用いた。ほかに同様な光学結晶としてPbMnO(モリブデン酸鉛)、光学結晶ではない光学ガラスなどがある。AOD11に入射した光ビームは、結晶内で発生した超音波によりBragg回折を受け、前記超音波により周波数シフト(周波数変調)を受けると同時に、AOD11の駆動周波数に応じた角度θdで回折をする。
【0128】
また、回折した光ビームは、入射光ビームとAOD11内で発生した超音波の波面に対し、対称な回折角としてAOD11から出射する。本実施例におけるAOD11の結晶内で回折して出射した光ビームは、AOD11の駆動周波数に応じて回折角度が変わる。本実施例で用いたAOD11の駆動周波数Fdは、Fd=40±10MHz(中心周波数40MHz、バンド幅は20MHz)であり、θd≒7mradである。コリメーションされた1次回折光ビームは、主走査方向にパワーを有する1組のシリンドリカルレンズを用いたビームエキスパンダに入射し、受光素子アレイ10の有効幅Wrは、Wr≒15mmに広げられて、2つの矩形開口を有するアパチャーを通過して矩形状のビームプロファイルを有する光ビームとなる。前記のビームエキスパンダは、第1レンズ7の焦点距離fc1をfc1=4mm、第2レンズ9の焦点距離fc2をfc2=36mmとし、拡大率9倍の光ビームがコリメーションされて2つの矩形開口のアパチャーに入射し、シリンドリカルレンズに斜入射したことによる収差が一定程度補正され、主走査方向の幅WmbがWmb≒15mm、副走査方向の幅がΦb=2mmで維持された光ビームとなり、スリットパターンに入射する。次にスリットパターン(ライン及びスペース)の開口部から出射した光ビームは照明側テレセントリックレンズ系の第1レンズ7に入射する。次に照明側の各々のテレセントリックレンズの共有する焦点位置に配置されたアパチャー8を抜けた光ビームは第2レンズ9に入射・通過し、更に収差を抑制し、検査対象物Wに前記スリットパターンのスリット像を結像する。
【0129】
尚、前記テレセントリックレンズの焦点距離ftは、ft=50mmとした。またスリットパターン上の光ビームの最大移動距離Lsurfは、Lsurf≒525μmとなり、受光素子アレイ10の10数画素分となり、十分な主走査方向移動距離を得た。或いは、AOD11の駆動バンド周波数fb(AOD)の幅を狭くしてもよく、その場合は走査レートを早くすることができる。AOD11の回折角度θdがθd≒7mradであり、AOD11からスリットパターンまでの距離LsをLs=75mmとしたので、照明側のビームエキスパンダ及びテレセントリックレンズは、AOD11から出射した光ビーム径よりも副走査方向の幅が大きい場合は、光ビームパワーを失うことがなく、それ故に、副走査方向のレンズの幅を小さくして外形を矩形形状とすることが好ましい。そうすることにより、千鳥配置の受光素子アレイ10の互いの間隔を狭めることができ、故に、搬送方向の速度変動による画素の微小なずれを抑制することが可能になる。
【0130】
但し、各々のテレセントリックレンズ間にある各レンズの焦点近傍に位置するアパチャーによる損失も同時に考慮して、レンズの幅を決定した。本実施例においては、副走査方向のレンズの幅Ws、千鳥配置の受光素子アレイ10の副走査方向の距離Lsaを、Ws=3mm、Lsa=2.5mmとした。次に検査対象物Wを透過した光ビームは、受光側テレセントリックレンズ系を経て、受光素子アレイ10手前に配置された照明系と同じスリットパターンに入射し、各検査装置に固有のモアレを発生する。検査対象物Wに異物・欠陥があれば新たなモアレが発生し、検査装置に固有のモアレと新たなモアレが他の画素との差分を取ることにより、受光素子アレイ10により検出される。
【0131】
尚、AOD11の最大回折角度は、35mrad~50mradであることを利用して、1画素分の走査角が前述した7mradの場合は、5画素から7画素程度の複数画素にまたがった走査も可能である。その場合は走査光ビームが1画素当たり1本に代えて、数画素あたり1本としてもよい。この場合、各スリットの開口部から出射し、回折した光ビームの干渉を抑制する効果が生まれる。
【0132】
<実施例1>
実施例1において、図4D図4Fに示した1画素中に1本のスリットパターンを配置する方式について述べる。この場合は、前記パターンのピッチは1画素ピッチとなる。故に回折光ビームのスリットの開口幅が約10μm、回折限界も約10μmであり、42.4μmのピッチが回折限界の4倍以上であるので、回折光ビーム同士の干渉は無視できる。
【0133】
図14及び図15に、1ラインセンサ、及び、RGB3ラインセンサに各画素に1本のスリットパターンを配置し、各パターンを各走査方向に移動させる方式を示す。図14では受光素子アレイ10が1ラインで、主走査方向にパターンを移動し、図15では受光素子アレイ10がRGB3ラインで、副走査方向(搬送方向)にパターンを移動させる。図14の1ラインを図15のようにRGB3ラインとしてもよい。画素密度は600dpiであり、回折光ビームの各走査方向への幅は、最小幅を回折限界である7.5μmに基づき、1画素の1/2である約21μmとする。無論、それ以上の回折光ビームの幅であってもよい。1画素中(数画素中)を走査される期間に点滅を複数回実施するが、必ずしも1画素を回折光ビームで割った自然数倍でなくともよい。点滅回数が増えれば、オーバーサンプリング回数が増える分、検出領域が重なり合う箇所が発生するが、回折光ビームの点滅に合わせて受光素子の取り込み(蓄積時間)、掃き出しのタイミングを合わせればよい。
【0134】
<複数光源による照明系のスリットパターンの主走査方向への移動>
図12A図12Cには1個の光源を配置する代わりに複数個の光源を主走査方向に平行に配置している。各光源は、主走査方向において、端の光源から順番にパルス点灯される。図12A図12Bは3個の光源1とした例を示し、図12Cは光ファイバ12を用いて8個の光源1とした例を示す。図12A図12Cでは、スリットパターンが600dpiの画素寸法である。回折限界と回折光ビームの干渉を抑制するために1画素当たり3本の開口部を有するスリットを設けている。故にスリットのライン及びスペースは14.1μmの幅になる。
【0135】
光源1を順次点灯させると、主走査方向に対する光源1の位置のちがいから結像位置が異なり、光源1を点滅するに従い、順次スリットパターンの位置が変わり、その結果、スリットパターンが移動する。3個の光源1の場合は、1個目の光源1によるパターン位置から2個目の光源1のパターン位置は走査方向にずれており、3個目の光源1はまた更に走査方向にずれ、そして1個目の光源1によるパターン位置に戻る。この際、パターンが走査方向に対し、順にずれていくことが重要である。8個の光源1についても同じである。複数個の光源1による各光源1によるパターンの位置は順にずれてゆき、異物・欠陥を検出するだけの目的であれば必ずしも同じピッチで移動する必要はないが、定量的検出(厚み、凹凸の度合いなど)が目的であれば、等ピッチで所謂同位相差で移動させなければならない。そうすることにより、モアレパターンがその模様を時間的に変化させ、モアレの時間的変化を受光素子アレイ10で検出することにより、異物・欠陥の検出並びに異物・欠陥の厚み、凹凸などを把握できる。
【0136】
尚、格子投影法については、モアレの発生は無いが、基本的には受光素子アレイでスリットパターンの時間変化を異物・欠陥の無い場合(他の画素との差分信号や基準信号との差分)と比較して信号の時間変化を捉え、異物・欠陥の3次元的な形状やサイズを検出する。
【0137】
前述した如く、スリットパターンの移動距離は、光源1の配置間隔により異なるが、各位置に配置した光源1において、別の位置に投影された別々のスリットパターンの投影位置を、「スリットパターン間隔の整数倍+スリットパターンの光源1の数」をNとすると、1/Nピッチずつずらして各光源1から出射するようにスリットパターンの位置合わせをすればよい(光源1のサイズがスリットパターンの大きさに対し、非常に大きい場合に対応)。そして、光源1を順次に点滅し、各光源1から出射したスリットパターンが移動することにより、異物・欠陥によるモアレの模様が移動して変わり、その変化を捉えることが可能になる。
【0138】
LDアレイのパッケージサイズが大きい場合は、光源1の間隔を画素間隔の整数倍ずらし、かつ、微調することにより、見かけ上隣同士のスリットパターンが移動しているようにすることも可能である。その際、スリットパターンの長さは、受光素子アレイ10の長さよりも長くしておき、数mm程度移動しても端のスリットパターンが、受光素子アレイ10の視野をカバーできるようにしておく必要がある。また、同時に光源1の間隔を画素間隔の整数倍ずらし、かつ、微調することにより、移動前のスリットパターンと移動後のスリットパターンが見かけ上同位置に重ならないようにする必要がある。また、更に、図12Aのように光源1の後段にアフォーカル縮小光学系を設ければ、光源1の間隔を狭くすることも可能である。図13A図13Bは副走査方向の移動も含めたモアレ像の移動を示した模式図である。
【0139】
図13A図13Bは、光ビームを連続的に移動することにより、或いは、複数の光源1を順次点滅し、不連続的かつ等間隔に移動させることにより、検査対象物Wに投影されたスリットパターンを主走査方向に移動させた場合のモアレ模様の変化を示す図である。受光素子アレイが受光するモアレ模様に基づいて、副走査方向に搬送される検査対象物Wに含まれる画素サイズ以下の異物又は欠陥を検出することができる。但し、図13Aではスリットパターンの移動量は少ないが、不連続的な移動である(分かりやすくするため、点滅回数が非常に多い場合を示した)。回折を考慮し、画素サイズを決定し、回折限界が許す範囲でスリットパターンの数を決定する。図13Aでは、画素サイズが300dpi相当である。或いは、図9Aのように複数の照明光学系を組み合わせてもよい。
【0140】
図13A図13Bにおいて、異物・欠陥は紙面の下側から上側に向かって移動している。その際に検査対象物Wに投影されたスリットパターン自身も移動するため、異物・欠陥の無い画素においても受光素子が受ける光量に変化を伴う。しかしながら、異物・欠陥が有れば、無い場合と比べて1画素内の光強度の変化が異なっており、その差分を検出することと合わせ、1画素内の時間変動を見ることにより、異物・欠陥の検出が可能になる。即ち、異物・欠陥が無い画素との比較、或いは、同じ画素でも異物・欠陥が無い場合の出力との比較により差分を求め、異物・欠陥の有無を検出できる。図13Aは3回点滅する場合を表し、図13Bは8回点滅する場合を表す。
【0141】
更に、前記の1画素内における時間変動からモアレの周期を求めることも可能であり、モアレ周期(或いはモアレ周波数)であるので、1画素よりも小さい異物・欠陥の凹凸を求めることも可能になる。また、前記の手法の応用で検査対象物Wの表面性や微小な凹凸も検査が可能となる。
【0142】
前述した図8Aでは、モアレ模様は、副走査方向において1画素に3本あり、スリットパターンの間隔は、副走査方向、主走査方向ともに14.1μmであり、モアレの明暗のピッチは4本分であるため、ΔPp=Pp/2Nから、異物の高さhfを計算するとhf=ΔPp=1.76μmとなり、画素サイズ42.3μmよりも遥かに小さい異物の高さを検出することが出来る。主走査方向についても同様である。
【0143】
以上は、図により求めたが、実際には受光素子アレイ10から得た時間的変動を空間的変動に変換後に、図に示したようにして求める。同様に、図8Bには、受光素子アレイ10を9ラインとした場合を示した。この場合のライン及びスぺースの1画素における本数は、約3本であり、1画素の大きさは、600dpi相当である。この場合は、多数の画素によりモアレパターンを検出し、エリアセンサのような画像として解析が可能である。また、図8Cには、1ラインの受光素子アレイ10にモアレパターンが発生した様子を表す。この場合は、1画素に含まれるライン及びスペースの本数は35本であり、1画素は50dpi相当(508μm角)である。この場合のモアレパターンは、副走査方向に9本あるため、Ppm/2Nにより、異物・欠陥の高さ(深さ)は、約0.8μmとなる。
【0144】
図9Bにモアレパターンからの受光素子からの出力信号を示す。出力信号の山と谷をカウントすれば、モアレ縞から数値への変換(時間変動を空間変動に置換する)が出来る。
【0145】
以上より、モアレの強度変化の幾何学的な周期模様が時間的変化として主走査方向や副走査方向に移動するため、出力の時間変化を生じ、それ故に、1画素における各走査方向の時間的出力(強度)変化を捉えれば、異物・欠陥の凹凸を定量的に観測できる。更に、得られた時間変化の動的データから静的な3次元画像への変換も可能になる。また、図18図9Bの光量変化を模式的に説明した図を示す(副走査方向のモアレパターンの変化の様子である)。
【0146】
図18Aは、異物・欠陥が無く、走査されるパターンがほとんど重ならない場合を示している。図18Bは、異物・欠陥が無く、走査されるパターンが重なっている場合を示している。図18Cは、異物・欠陥が有り、異物・欠陥の無い画素と比べ明るい(出力が大きい)場合を示している。図18Dは、異物・欠陥が有り、異物・欠陥の無い画素と比べ明るい(出力が大きい)場合を示している。図18Eは、異物・欠陥が有り、異物・欠陥の無い画素とあまり変化が無い(出力の差が少ない)場合を示している。図18Fは、異物・欠陥が有り、異物・欠陥の無い画素と比べ明るい(出力が大きい)場合を示している。
【0147】
次に、図17Aを用いて1画素中のパターン本数を増す方法について述べる。回折限界及び回折光ビームが重畳されることによる干渉を避けるため、他のスリット開口が独立した光軸を有するテレセントリック光学系において回折限界がパターンの最小ピッチであることを述べた。副走査方向において、テレセントリック光学系から出射した回折光ビームは、別の光学系によりN.A.を大きく出来れば、そのN.A.に応じた回折限界が生まれる。即ち縮小光学系を用いることにより、N.A.を大きく出来る。前述した等倍光学系であれば、600dpiの解像度であれば1画素に3本のパターンが限界に近いが、縮小光学系を用いることにより縮小率を1/NとすればN倍のパターン本数になる。1/2倍では、1画素中に6本、1/3倍では9本に増やすことが出来る。
【0148】
尚、受光系が縮小系であるので、受光素子アレイ10の主走査方向の長さは、縮小倍率に応じて縮小すればよい。また、受光素子アレイ10の手前に配置するスリット6のサイズも縮小光学系に合わせて縮小する。副走査方向だけの光学系においては、副走査方向に1/N倍の倍率を有するシリンドリカルレンズを用いてもよい。この場合は、視野は同じであるが、受光素子アレイ10の4画素分にわたって回折光ビーム走査の分解能を上げることにより、モアレパターンをより細かく検出することが可能になる。
【0149】
更には、前述した内容では、受光素子アレイ10が18mmであった。通常、検査機器の読み取り範囲は広く、最小幅でも300mmあり、広幅の場合は1.5mになる。そのため、前述した光学系を複数用いる。図17B及び図17Cでは、一例として離間したテレセントリック光学系を用い、同時に受光素子アレイ10も千鳥配置している。図17Bは、図6Aの光学系を千鳥配置した例(平面図)であり、図17Cは、図17Aの光学系から受光素子アレイ手前のスリットを除き格子投影法を用いた千鳥配置の例(平面図)である。
【符号の説明】
【0150】
1 光源
2 コリメータレンズ
3 コリメータレンズ
4 アパチャー
5 アパチャー
6 スリッット
7 第1レンズ
8 アパチャー
9 第2レンズ
10 受光素子アレイ
11 AOD
12 光ファイバ
W 検査対象物

図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図4C
図4D
図4E
図4F
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図9A
図9B
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図10G
図11A
図11B
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図16E
図16F
図16G
図16H
図16I
図17A
図17B
図17C
図18