(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021483
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/511 20060101AFI20240208BHJP
A61F 13/15 20060101ALI20240208BHJP
A61F 13/53 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
A61F13/511 200
A61F13/15 140
A61F13/53 100
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124331
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100192463
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 剛規
(74)【代理人】
【識別番号】100169328
【弁理士】
【氏名又は名称】藤本 健治
(72)【発明者】
【氏名】中下 将志
(72)【発明者】
【氏名】村上 圭
【テーマコード(参考)】
3B200
【Fターム(参考)】
3B200AA01
3B200AA03
3B200BA04
3B200BB21
3B200CA02
3B200CA11
3B200DA14
3B200DB02
3B200DB14
(57)【要約】
【課題】経時でその位置を変化させにくく、液体が液透過性シートの肌当接面に拡がることを抑制しつつ、液体を繰り返し吸収コアに滑落させることができ、経時での繰り返し吸収性に優れる吸収性物品を提供すること。
【解決手段】肌当接面15,53及び非肌側面17を備えている液透過性シート3と、液不透過性シート5と、それらの間の吸収コア7aとを備えている吸収性物品1であって、油性成分と、バイオサーファクタントと、多価アルコールとを含むゲル状組成物13が、吸収コア7aよりも液透過性シート3側に配置された、液透過性シート3を含む資材51に存在しており、資材51において、肌当接面15,53に存在するゲル状組成物13の量が、非肌当接面55に存在するゲル状組成物13の量よりも少ないことを特徴とする吸収性物品1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌当接面及び非肌側面を備えている液透過性シートと、液不透過性シートと、それらの間の吸収コアとを備えている吸収性物品であって、
油性成分と、バイオサーファクタントと、多価アルコールとを含むゲル状組成物が、前記吸収コアよりも前記液透過性シート側に配置された、前記液透過性シートを含む資材に存在しており、
前記資材において、前記液透過性シートの前記肌当接面に存在する前記ゲル状組成物の量が、前記液透過性シートの前記肌当接面よりも前記液不透過性シート側に配置された非肌当接面に存在する前記ゲル状組成物の量よりも少ない、
ことを特徴とする、前記吸収性物品。
【請求項2】
前記肌当接面に存在する前記ゲル状組成物の量が0である、請求項1に記載の吸収性物品。
【請求項3】
前記非肌当接面が前記液透過性シートの前記非肌側面である、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項4】
下記(i)及び(ii)、
(i)前記資材が前記液透過性シート及び前記吸収コアの間に配置されたセカンドシートをさらに備えているとともに、前記非肌当接面が前記セカンドシートの肌側面又は非肌側面である、
(ii)前記資材が前記吸収コアを前記液透過性シート側から覆うコアラップをさらに備えているとともに、前記非肌当接面が前記コアラップの肌側面又は非肌側面である、
の少なくとも1つを満たす、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項5】
前記ゲル状組成物が、水分と接触すると前記油性成分のエマルションを形成するように構成されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項6】
前記ゲル状組成物が、36℃及び0.28(1/s)の剪断速度において、50~1,000Pa・sの粘度を有する、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項7】
前記ゲル状組成物が、前記油性成分と、前記多価アルコールと、前記バイオサーファクタントとを、それらの合計質量に基づいて、40.0~94.9質量%と、5.0~59.9質量%と、0.1~5.0質量%との比率で含む、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項8】
前記バイオサーファクタントが、サーファクチン、アルスロファクチン、イチュリン、及びそれらの塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項9】
前記多価アルコールが、3価以上のアルコールであるか、又は2価アルコールのポリエーテルである、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項10】
前記油性成分が、40℃における0.01~80mm2/sの動粘度と、0.01~4.0質量%の抱水率と、1,000未満の重量平均分子量とを有する、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項11】
前記油性成分が、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(d4)ジアルキルカーボネート、(e1)ポリオキシC3~C6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC3~C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC3~C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、及び(f1)鎖状アルカン、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項12】
前記ゲル状組成物が、薬剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項13】
前記油性成分が、温感剤及び/又は冷感剤をさらに含む、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項14】
前記吸収コアと前記吸収性物品の厚さ方向に重複する範囲において、前記肌当接面に存在する前記ゲル状組成物の量が、前記非肌当接面に存在する前記ゲル状組成物の量よりも少ない関係を満たす、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【請求項15】
前記ゲル状組成物が、前記非肌当接面に、ライン状、ドット状又は粒子状で配置されている、請求項1又は2に記載の吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
経血等の体液を吸収性物品の内部に滑落させるため、所定の血液滑性付与剤を吸収性物品に塗工することが行われている。
例えば、特許文献1には、液透過性のトップシートと、液不透過性のバックシートと、上記液透過性のトップシート及び液不透過性のバックシートの間の吸収体とを有する吸収性物品であって、上記液透過性のトップシートが、肌当接面に、凸部と、凹部とを含む凹凸構造を有し、そして上記液透過性のトップシートが、排泄口当接域において、少なくとも上記凸部に、40℃における0.01~80mm2/sの動粘度と、0.01~4.0質量%の抱水率と、1,000未満の重量平均分子量とを有する血液滑性付与剤を含むことを特徴とする吸収性物品が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る吸収性物品では、血液滑性付与剤が血液を効率よく吸収性物品の内部に滑落させ、経血を吸収した後、トップシートにべたつき感がなく、トップシートがサラサラしているものである。しかし、上記血液滑性付与剤は、その特性上、液透過性のトップシートから移動しやすく、改良の余地がある。
従って、本開示は、経時でその位置を変化させにくく、液体が液透過性シートの肌当接面に拡がることを抑制しつつ、液体を繰り返し吸収コアに滑落させることができ、経時での繰り返し吸収性に優れる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示者らは、肌当接面及び非肌側面を備えている液透過性シートと、液不透過性シートと、それらの間の吸収コアとを備えている吸収性物品であって、油性成分と、バイオサーファクタントと、多価アルコールとを含むゲル状組成物が、上記吸収コアよりも上記液透過性シート側に配置された、上記液透過性シートを含む資材に存在しており、上記資材において、上記液透過性シートの上記肌当接面に存在する上記ゲル状組成物の量が、上記液透過性シートの上記肌当接面よりも上記液不透過性シート側に配置された非肌当接面に存在する上記ゲル状組成物の量よりも少ないことを特徴とする上記吸収性物品を見出した。
【発明の効果】
【0006】
本開示の吸収性物品は、経時でその位置を変化させにくく、液体が液透過性シートの肌当接面に拡がることを抑制しつつ、液体を繰り返し吸収コアに滑落させることができ、経時での繰り返し吸収性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1実施形態における生理用ナプキン1を説明するための図である。
【
図2】
図2は、第1実施形態における生理用ナプキン1を説明するための図である。
【
図3】
図3は、第2実施形態における生理用ナプキン1を説明するための図である。
【
図4】
図4は、第3実施形態における生理用ナプキン1を説明するための図である。
【
図5】
図5は、第4実施形態における生理用ナプキン1を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
具体的には、本開示は以下の態様に関する。
[態様1]
肌当接面及び非肌側面を備えている液透過性シートと、液不透過性シートと、それらの間の吸収コアとを備えている吸収性物品であって、
油性成分と、バイオサーファクタントと、多価アルコールとを含むゲル状組成物が、上記吸収コアよりも上記液透過性シート側に配置された、上記液透過性シートを含む資材に存在しており、
上記資材において、上記液透過性シートの上記肌当接面に存在する上記ゲル状組成物の量が、上記液透過性シートの上記肌当接面よりも上記液不透過性シート側に配置された非肌当接面に存在する上記ゲル状組成物の量よりも少ない、
ことを特徴とする、上記吸収性物品。
【0009】
上記吸収性物品は、油性成分を含むゲル状組成物を備えている。上記ゲル状組成物は、ゲル状であり、一定の粘度を有するため、所定の圧力(例えば、吸収性物品の保管時(輸送時)の圧力等)が加わった場合でも、その位置を変化させにくい。
すなわち、上記吸収性物品では、ゲル状組成物は、経時でその位置を変化させにくい。
【0010】
また、ゲル状組成物における油性成分は、体液等の液体を吸収コアに滑落させるための成分であるが、油性成分そのものは親油性を有するため、油性成分の状態が経時で変化すると、液体の吸収性が変化する場合がある。例えば、油性成分が、液透過性シートに微粒子状で均一に配置された状態から、液透過性シートに大きな液滴として不均一に配置された状態に変化すると、親油性を有する油性成分が、親水性を有する液体を弾き、液体が吸収コアに滑落せず、液透過性シートに残存しやすくなる場合がある。
【0011】
上記吸収性物品では、油性成分が、多価アルコール及びバイオサーファクタントとともにゲル状で存在していることから、長期間、特に高温で保管された場合であっても、ゲル状組成物が、液体に対して一定のなじみ性を有している。
【0012】
また、上記吸収性物品では、上記資材において、上記肌当接面におけるゲル状組成物の量が、上記非肌当接面に存在するゲル状組成物の量よりも少ない、すなわち、液透過性シートの肌当接面の親水性が、それ以外の部分における親水性(吸収性物品の内部の親水性)よりも高くなっている。
【0013】
[1回目の液体吸収]
従って、製造直後であっても、そして製造から一定の時間が経過した場合であっても、上記吸収性物品の使用時に、液透過性シートに体液等の液体(1回目)が到達すると、液体が液透過性シートの肌当接面となじみやすく、液体が、液透過性シートの肌当接面を平面方向に拡がることを抑制しつつ、液体を液透過性シートの内部に引き込みやすい。次いで、液透過性シートから吸収性物品の内部に引き込まれた液体は、親水性成分(多価アルコール)及びバイオサーファクタントを含むゲル状組成物となじむことができ、親油性成分(油性成分)と、親水性成分(多価アルコール)と、バイオサーファクタントとを含むゲル状組成物の一部が迅速に油性成分のエマルション(1回目)を形成する。当該油性成分のエマルション(1回目)は、その一部が、液体を吸収コアに滑落させるとともに、その残余が、液体が透過してきた経路を遡って、液透過性シートの肌当接面に到達し、残余の油性成分のエマルション(1回目)が、液透過性シートの肌当接面に配置される。
【0014】
[2回目の液体吸収]
液透過性シートに液体(2回目)が到達すると、液透過性シートの肌当接面に存在する、残余の油性成分のエマルション(1回目)が、液体を、液透過性シートの肌当接面において平面方向に拡がることを抑制しつつ、液体を、液透過性シートの肌当接面から吸収コアに迅速に滑落させることができる。また、液透過性シートに液体(2回目)が到達した際に、ゲル状組成物の一部がさらに油性成分のエマルション(2回目)を形成し、当該油性成分のエマルション(2回目)は、その一部が、液体を吸収コアに滑落させるとともに、その残余が、液体が透過してきた経路を遡って、液透過性シートの肌当接面まで到達し、残余の油性成分のエマルション(2回目)が、液透過性シートの肌当接面に配置される。
【0015】
[3回目以降の液体吸収]
3回目以降の液体吸収では、2回目と同様のメカニズムを繰り返すことができる。
これらのメカニズムを繰り返すことにより、上記吸収性物品は、製造直後であっても、製造から一定の時間が経過した場合であっても、液体が液透過性シートの肌当接面に拡がることを抑制しつつ、液体を繰り返し吸収コアに滑落させることができ、経時での繰り返し吸収性に優れる。
【0016】
[態様2]
上記肌当接面に存在する上記ゲル状組成物の量が0である、態様1に記載の吸収性物品。
【0017】
上記吸収性物品では、上記肌当接面に存在するゲル状組成物の量が0であるので、ゲル状組成物が、液透過性シートの肌当接面に存在している場合と比較して、上記吸収性物品の使用時に、液透過性シートに体液等の液体(1回目)が到達する際に、液体が液透過性シートの肌当接面とよりなじみやすくなり、液体が、液透過性シートの肌当接面を平面方向に拡がることをより抑制しつつ、液体を液透過性シートの内部により引き込みやすくなる。
【0018】
[態様3]
上記非肌当接面が上記液透過性シートの上記非肌側面である、態様1又は2に記載の吸収性物品。
【0019】
上記吸収性物品では、上記非肌当接面が液透過性シートの非肌側面である、すなわち、ゲル状組成物が、液透過性シートの非肌側面に存在している。
【0020】
従って、上記吸収性物品は、ゲル状組成物が、液透過性シートの非肌側面に存在していない場合と比較して、液透過性シートに体液等の液体(1回目)が到達した際に、油性成分のエマルションは、その一部が、液体を吸収コアにより滑落させやすくなるとともに、その残余が、液体が透過してきた経路を遡って、液透過性シートの肌当接面までより到達しやすくなり、残余の油性成分のエマルションが、液透過性シートの肌当接面により配置されやすくなる。
【0021】
[態様4]
下記(i)及び(ii)、
(i)上記資材が上記液透過性シート及び上記吸収コアの間に配置されたセカンドシートをさらに備えているとともに、上記非肌当接面が上記セカンドシートの肌側面又は非肌側面である、
(ii)上記資材が上記吸収コアを上記液透過性シート側から覆うコアラップをさらに備えているとともに、上記非肌当接面が上記コアラップの肌側面又は非肌側面である、
の少なくとも1つを満たす、態様1~3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0022】
上記吸収性物品は、(i)及び(ii)の少なくとも1つを満たすことから、製造直後であっても、製造から一定の時間が経過した場合であっても、液体が液透過性シートの肌当接面に拡がることを抑制しつつ、液体を繰り返し吸収コアに滑落させることができ、経時での繰り返し吸収性に優れる。
【0023】
[態様5]
上記ゲル状組成物が、水分と接触すると上記油性成分のエマルションを形成するように構成されている、態様1~4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0024】
上記吸収性物品では、ゲル状組成物が、水分と接触すると油性成分のエマルションを形成するように構成されているので、態様1の効果をより発揮することができる。
【0025】
[態様6]
上記ゲル状組成物が、36℃及び0.28(1/s)の剪断速度において、50~1,000Pa・sの粘度を有する、態様1~5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0026】
上記吸収性物品では、ゲル状組成物が、着用者の体温付近且つ保管時に相当する剪断速度において、所定の粘度を有することから、吸収性物品の着用時に、ゲル状組成物が、その位置を変化させにくいとともに、液透過性シートに液体が到達した際に、油性成分のエマルションが形成されやすくなる。
【0027】
[態様7]
上記ゲル状組成物が、上記油性成分と、上記多価アルコールと、上記バイオサーファクタントとを、それらの合計質量に基づいて、40.0~94.9質量%と、5.0~59.9質量%と、0.1~5.0質量%との比率で含む、態様1~6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0028】
上記吸収性物品では、ゲル状組成物が所定の組成を有するため、態様1の効果をより発揮しやすくなる。
【0029】
[態様8]
上記バイオサーファクタントが、サーファクチン、アルスロファクチン、イチュリン、及びそれらの塩、並びにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、態様1~7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0030】
上記吸収性物品では、バイオサーファクタントが、所定のものから選択されるため、ゲル状組成物が液体と接触する際に、油性成分のエマルションが形成されやすくなり、態様1の効果をより発揮しやすくなる。
【0031】
[態様9]
上記多価アルコールが、3価以上のアルコールであるか、又は2価アルコールのポリエーテルである、態様1~8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
上記吸収性物品では、多価アルコールが、所定のものから選択されるため、ゲル状組成物が液体と接触する際に、多価アルコールが液体中に溶解しやすくなり、態様1の効果をより発揮しやすくなる。
【0032】
[態様10]
上記油性成分が、40℃における0.01~80mm2/sの動粘度と、0.01~4.0質量%の抱水率と、1,000未満の重量平均分子量とを有する、態様1~9のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0033】
上記吸収性物品では、油性成分が所定の動粘度、抱水率及び重量平均分子量を有することから、油性成分が、体液を、液透過性シートから吸収コアに滑落させやすくなり、態様1の効果をより発揮しやすくなる。
【0034】
[態様11]
上記油性成分が、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(d4)ジアルキルカーボネート、(e1)ポリオキシC3~C6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC3~C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC3~C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、及び(f1)鎖状アルカン、並びにそれらの任意の組み合わせから成る群から選択される、態様1~10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0035】
上記吸収性物品では、油性成分が、所定のものから選択されるため、油性成分が、体液を、液透過性シートから吸収コアに滑落させやすくなり、態様1の効果をより発揮しやすくなる。
【0036】
[態様12]
上記ゲル状組成物が、薬剤をさらに含む、態様1~11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0037】
上記吸収性物品では、ゲル状組成物が薬剤をさらに含む。従って、吸収性物品の着用時に、ゲル状組成物が液体と接触する度に、ゲル状組成物から薬剤が放出され、その一部が吸収性物品の着用者の皮膚等に作用することができるため、薬剤が、長時間にわたって着用者の皮膚に作用することができる。
【0038】
[態様13]
上記油性成分が、温感剤及び/又は冷感剤をさらに含む、態様1~12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0039】
上記吸収性物品では、ゲル状組成物の油性成分が温感剤及び/又は冷感剤をさらに含む。従って、吸収性物品の着用時に、液透過性シートに液体が到達する前においては、温感剤及び/又は冷感剤がその作用を発揮しにくく、そして液透過性シートに液体が到達する度に、油性成分が温感剤及び/又は冷感剤とともにエマルション化され、液透過性シートの肌当接面に配置され、温感剤及び/又は冷感剤が、長時間にわたって着用者の皮膚に作用することができる。
【0040】
[態様14]
上記吸収コアと上記吸収性物品の厚さ方向に重複する範囲において、上記肌当接面に存在する上記ゲル状組成物の量が、上記非肌当接面に存在する上記ゲル状組成物の量よりも少ない関係を満たす、態様1~13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0041】
上記吸収性物品では、ゲル状組成物が所定の範囲に存在しているため、ゲル状組成物から、油性成分のエマルションが迅速に形成されやすくなり、態様1の効果をより発揮しやすくなる。
【0042】
[態様15]
上記ゲル状組成物が、上記非肌当接面に、ライン状、ドット状又は粒子状で配置されている、態様1~14のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0043】
上記吸収性物品では、ゲル状組成物が、上記非肌当接面に所定の状態で配置されているため、吸収性物品の吸収性を阻害しにくく、そして態様1の効果をより発揮しやすくなる。
【0044】
[態様16]
上記エマルションが、0.5~5.0μmの平均粒径を有する、態様5に記載の吸収性物品。
【0045】
上記吸収性物品では、ゲル状組成物から形成される油性成分のエマルションが所定の平均粒径を有するため、油性成分のエマルションが液透過性シートの肌当接面に複数のエマルションが配置されやすくなるとともに、複数のエマルションが液体を吸収コアに滑落させやすくなる。
【0046】
[態様17]
上記液透過性シートが、5~60μmの平均繊維径を有する繊維を含む不織布から構成されている、態様16に記載の吸収性物品。
【0047】
上記吸収性物品では、液透過性シートが所定の不織布から構成されているため、油性成分のエマルションが液透過性シートの繊維の表面に配置されやすくなり、繊維の表面に配置された油性成分のエマルションが、液体を吸収コアに滑落させやすくなる。
【0048】
本開示の吸収性物品について、以下、詳細に説明する。
<油性成分>
上記油性成分は、特許文献1に記載の血液滑性付与剤と同様の作用を有し、経血のみならず、尿等の液体を液透過性シートから吸収コアに滑落させる役割を有する。
【0049】
上記油性成分は、40℃において、好ましくは0.01~80mm2/s、より好ましくは1~70mm2/s、さらに好ましくは3~60mm2/s、さらにいっそう好ましくは5~50mm2/sの動粘度を有する、そしてさらにいっそう好ましくは7~45mm2/sの動粘度を有する。
【0050】
また、油性成分が、40℃において、0.01~80mm2/sの動粘度を有するために、油性成分の融点が45℃以下であることが好ましい。油性成分が40℃で結晶を含むと、その動粘度が高くなる傾向があるからである。
なお、本明細書では、40℃における動粘度を、単に「動粘度」と称する場合がある。
上記動粘度が80mm2/sを超えると、油性成分の粘性が高く、液透過性シートの肌当接面に到達した液体とともに、1回目及び2回目以降の液体吸収の際に液透過性シートから吸収コアに滑落することが難しくなる傾向がある。
【0051】
上記動粘度は、JIS K 2283:2000の「5.動粘度試験方法」に従って、キャノンフェンスケ逆流形粘度計を用いて、40℃の試験温度で測定されることができる。
【0052】
上記油性成分は、好ましくは0.01~4.0質量%、より好ましくは0.02~3.5質量%、さらに好ましくは0.03~3.0質量%、さらにいっそう好ましくは0.04~2.5質量%、そしてさらにいっそう好ましくは0.05~2.0質量%の抱水率を有する。
【0053】
本明細書において、「抱水率」は、物質が、保持することができる水の比率を意味し、以下の通りに測定されうる。
(1)40℃の恒温室に、試験管、ゴム栓、測定すべき物質及び脱イオン水を一昼夜静置する。
(2)上記恒温室で、20mLの試験管に、測定すべき物質5.0gと、脱イオン水5.0gを投入する。
(3)上記恒温室で、試験管の口をゴム栓にて栓をし、1回転させ、5分間静置する。
【0054】
(4)上記恒温室で、測定すべき物質の層(通常は、上層)3.0gを、直径90mmのガラス製シャーレ(質量:W0)に採取する。
(5)上記シャーレを、オーブン内で、105℃で3時間加熱し、水分を蒸発させ、シャーレごと、質量を測定する(質量:W1)。
(6)抱水率を、以下の式に従って算出する。
抱水率(質量%)=100×(W0-W1)/3.0
測定は3回実施し、平均値を採用する。
【0055】
上記油性成分は、1,000未満の重量平均分子量を有し、そして好ましくは900未満の重量平均分子量を有する。上記重量平均分子量が1,000以上であると、油性成分そのものにタック性が生じ、着用者に不快感を与える傾向があるからである。
上記油性成分は、100以上の重量平均分子量を有することが好ましく、そして200以上の重量平均分子量を有することがより好ましい。上記重量平均分子量が小さくなると、上記油性成分の蒸気圧が高くなり、保存中に気化し、量の減少、着用時の臭気等の問題が発生する場合があるからである。
【0056】
なお、本明細書において、「重量平均分子量」は、多分散系の化合物(例えば、逐次重合により製造された化合物、複数の脂肪酸と、複数の脂肪族1価アルコールとから生成されたエステル)と、単一化合物(例えば、1種の脂肪酸と、1種の脂肪族1価アルコールから生成されたエステル)とを含む概念であり、Ni個の分子量Miの分子(i=1、又はi=1,2・・・)からなる系において、次の式:
Mw=ΣNiMi
2/ΣNiMi
により求められるMwを意味する。
【0057】
本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により求められる、ポリスチレン換算の値を意味する。
GPCの測定条件としては、例えば、以下が挙げられる。
機種:(株)日立ハイテクノロジーズ製 高速液体クロマトグラム Lachrom Elite
カラム:昭和電工(株)製 SHODEX KF-801、KF-803及びKF-804
溶離液:THF
流量 :1.0mL/分
打込み量:100μL
検出:RI(示差屈折計)
【0058】
上記油性成分としては、例えば、(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル、(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル、(d2)ジアルキルケトン、(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル、(d4)ジアルキルカーボネート、(e1)ポリオキシC3~C6アルキレングリコール、(e2)ポリオキシC3~C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル、(e3)ポリオキシC3~C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、及び(f1)鎖状アルカンが挙げられる。
【0059】
[(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのテトラエステル、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのトリエステル、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのジエステル、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
【0060】
上記脂肪酸としては、例えば、飽和脂肪酸、例えば、C2~C30の飽和脂肪酸、例えば、酢酸(C2)(C2は、炭素数を意味する、以下同じ)、プロパン酸(C3)、ブタン酸(C4)及びその異性体、例えば、2-メチルプロパン酸(C4)、ペンタン酸(C5)及びその異性体、例えば、2-メチルブタン酸(C5)、2,2-ジメチルプロパン酸(C5)、ヘキサン酸(C6)、ヘプタン酸(C7)、オクタン酸(C8)及びその異性体、例えば、2-エチルヘキサン酸(C8)、ノナン酸(C9)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)、ヘプタデカン酸(C17)、オクタデカン酸(C18)、エイコサン酸(C20)、ドコサン酸(C22)、テトラコサン酸(C24)、ヘキサコサン酸(C26)、オクタコサン酸(C28)、トリアコンタン酸(C30)等、並びに列挙されていないこれらの異性体が挙げられる。
【0061】
上記脂肪酸はまた、不飽和脂肪酸であることができる。上記不飽和脂肪酸としては、例えば、C3~C20の不飽和脂肪酸、例えば、モノ不飽和脂肪酸、例えば、クロトン酸(C4)、ミリストレイン酸(C14)、パルミトレイン酸(C16)、オレイン酸(C18)、エライジン酸(C18)、バクセン酸(C18)、ガドレイン酸(C20)、エイコセン酸(C20)等、ジ不飽和脂肪酸、例えば、リノール酸(C18)、エイコサジエン酸(C20)等、トリ不飽和脂肪酸、例えば、リノレン酸、例えば、α-リノレン酸(C18)及びγ-リノレン酸(C18)、ピノレン酸(C18)、エレオステアリン酸、例えば、α-エレオステアリン酸(C18)及びβ-エレオステアリン酸(C18)、ミード酸(C20)、ジホモ-γ-リノレン酸(C20)、エイコサトリエン酸(C20)等、テトラ不飽和脂肪酸、例えば、ステアリドン酸(C20)、アラキドン酸(C20)、エイコサテトラエン酸(C20)等、ペンタ不飽和脂肪酸、例えば、ボセオペンタエン酸(C18)、エイコサペンタエン酸(C20)等、並びにこれらの部分水素付加物が挙げられる。
【0062】
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステル、すなわち、ペンタエリトリトールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
また、上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルとしては、抱水率の値を小さくする観点から、ジエステル、トリエステル又はテトラエステルであることが好ましく、トリエステル又はテトラエステルであることがより好ましく、そしてテトラエステルであることがさらに好ましい。
【0063】
上記ペンタエリトリトールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、ユニスター H-408BRS、H-2408BRS-22(混合品)等(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
【0064】
[(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
(a2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル、グリセリンと脂肪酸とのジエステル、及びグリセリンと脂肪酸とのモノエステルが挙げられる。
【0065】
上記脂肪酸は、上述の通りである。
上記グリセリンと脂肪酸とのエステルとしては、抱水率の値を小さくする観点から、ジエステル又はトリエステルであることが好ましく、そしてトリエステルであることがより好ましい。
【0066】
上記グリセリンと、2種以上の脂肪酸とのトリエステルとしては、例えば、グリセリンと、オクタン酸(C8)及びデカン酸(C10)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)及びドデカン酸(C12)とのトリエステル、グリセリンと、オクタン酸(C8)、デカン酸(C10)、ドデカン酸(C12)、テトラデカン酸(C14)、ヘキサデカン酸(C16)及びオクタデカン酸(C18)とのトリエステル等が挙げられる。
【0067】
融点を45℃以下とする観点から考察すると、上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルは、グリセリンと脂肪酸とのトリエステルを構成する脂肪酸の炭素数の合計が、約40以下であることが好ましい。
【0068】
上記グリセリンと脂肪酸とのトリエステルの市販品としては、トリヤシ油脂肪酸グリセリド、NA36、パナセート800、パナセート800B及びパナセート810S、並びにトリC2L油脂肪酸グリセリド及びトリCL油脂肪酸グリセリド(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0069】
[(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
(a3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、例えば、C2~C6の鎖状炭化水素ジオール、例えば、C2~C6のグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールと、脂肪酸とのモノエステル又はジエステルが挙げられる。
【0070】
上記脂肪酸としては、「(a1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル」において列挙されている脂肪酸が挙げられる。
上記C2~C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸に由来する、C2~C6グリコールと脂肪酸とのエステル、すわなち、C2~C6グリコールと飽和脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
【0071】
また、上記C2~C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、抱水率の値を小さくする観点から、炭素数の大きいグリコールに由来する、グリコールと脂肪酸とのエステル、例えば、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールに由来するグリコールと脂肪酸とのエステルであることが好ましい。
さらに、上記C2~C6グリコールと脂肪酸とのエステルとしては、抱水率の値を小さくする観点から、ジエステルであることが好ましい。
上記C2~C6グリコールと脂肪酸とのエステルの市販品としては、例えば、コムポールBL、コムポールBS(以上、日油株式会社製)等が挙げられる。
【0072】
[(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル]
(b1)鎖状炭化水素テトラオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、例えば、ペンタエリトリトールと脂肪族1価アルコールとのテトラエーテル、トリエーテル、ジエーテル及びモノエーテルが挙げられる。
【0073】
脂肪族1価アルコールとしては、例えば、飽和脂肪族1価アルコール及び不飽和脂肪族1価アルコールが挙げられる。
上記飽和脂肪族1価アルコールとしては、例えば、C1~C20の飽和脂肪族1価アルコール、例えば、メチルアルコール(C1)(C1は、炭素数を示す、以下同じ)、エチルアルコール(C2)、プロピルアルコール(C3)及びその異性体、例えば、イソプロピルアルコール(C3)、ブチルアルコール(C4)及びその異性体、例えば、sec-ブチルアルコール(C4)及びtert-ブチルアルコール(C4)、ペンチルアルコール(C5)、ヘキシルアルコール(C6)、ヘプチルアルコール(C7)、オクチルアルコール(C8)及びその異性体、例えば、2-エチルヘキシルアルコール(C8)、ノニルアルコール(C9)、デシルアルコール(C10)、ドデシルアルコール(C12)、テトラデシルアルコール(C14)、ヘキサデシルアルコール(C16)、へプラデシルアルコール(C17)、オクタデシルアルコール(C18)、及びエイコシルアルコール(C20)、並びに列挙されていないこれらの異性体が挙げられる。
【0074】
上記不飽和脂肪族1価アルコールとしては、上記飽和脂肪族1価アルコールのC-C単結合の1つを、C=C二重結合で置換したもの、例えば、オレイルアルコールが挙げられ、例えば、新日本理化株式会社から、リカコールシリーズ及びアンジェコオールシリーズの名称で市販されている。
【0075】
[(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル、]
(b2)鎖状炭化水素トリオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、例えば、グリセリンと脂肪族1価アルコールとのトリエーテル、ジエーテル及びモノエーテルが挙げられる。
上記脂肪族1価アルコールは、上述の通りである。
【0076】
[(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル]
(b3)鎖状炭化水素ジオールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、C2~C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのジエーテル、C2~C6グリコールと脂肪族1価アルコールとのモノエーテルが挙げられる。
上記脂肪族1価アルコールは、上述の通りである。
【0077】
[(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
(c1)4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステルとしては、例えば、4個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素テトラカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのモノエステル、ジエステル、トリエステル及びテトラエステル、好ましくはジエステル、トリエステル及びテトラエステル、より好ましくはトリエステル及びテトラエステル、そしてさらに好ましくはテトラエステルが挙げられる。
【0078】
上記鎖状炭化水素テトラカルボン酸としては、例えば、アルカンテトラカルボン酸、例えば、ブタン四酸、ペンタン四酸、ヘキサン四酸、ヘプタン四酸、オクタン四酸、ノナン四酸及びデカン四酸が挙げられる。
上記脂肪族1価アルコールは、上述の通りである。
【0079】
[(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
(c2)3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステルとしては、例えば、3個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素トリカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのモノエステル、ジエステル及びトリエステル、好ましくはジエステル及びトリエステル、そしてより好ましくはトリエステルが挙げられる。
【0080】
上記鎖状炭化水素トリカルボン酸としては、例えば、アルカントリカルボン酸、例えば、プロパン三酸、ブタン三酸、ペンタン三酸、ヘキサン三酸、ヘプタン三酸、オクタン三酸、ノナン三酸及びデカン三酸が挙げられる。
上記脂肪族1価アルコールは、上述の通りである。
例として、O-アセチルクエン酸トリブチルが挙げられ、そして市販されている。
【0081】
[(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステル]
(c3)2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエステルとしては、例えば、2個のカルボキシル基を有する鎖状炭化水素ジカルボン酸、ヒドロキシ酸、アルコキシ酸又はオキソ酸と、少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのモノエステル及びジエステル、好ましくはジエステルが挙げられる。
【0082】
上記鎖状炭化水素ジカルボン酸としては、例えば、アルカンジカルボン酸、例えば、エタン二酸、プロパン二酸、ブタン二酸、ペンタン二酸、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸及びデカン二酸が挙げられる。
上記脂肪族1価アルコールについては、上述の通りである。
例としては、アジピン酸ジオクチルが挙げられ、そして市販されている。
【0083】
[(d1)脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテル]
上記脂肪族1価アルコールと脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、次の式(1):
R1OR2 (1)
(式中、R1及びR2のそれぞれは、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
上記エーテルを構成する脂肪族1価アルコール(式(1)において、R1OH及びR2OHに相当する)としては、上述の通りである。
【0084】
[(d2)ジアルキルケトン]
上記ジアルキルケトンとしては、次の式(2):
R3COR4 (2)
(式中、R3及びR4のそれぞれは、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
上記ジアルキルケトンは、市販されている他、公知の方法、例えば、第二級アルコールを、クロム酸等で酸化することにより得ることができる。
【0085】
[(d3)脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステル]
上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルとしては、例えば、次の式(3):
R5COOR6 (3)
(式中、R5及びR6は、それぞれ、鎖状炭化水素である)
を有する化合物が挙げられる。
【0086】
上記エステルを構成する脂肪酸(式(3)において、R5COOHに相当する)としては、上述の脂肪酸が挙げられ、酸化等により変性する可能性を考慮すると、飽和脂肪酸が好ましい。上記エステルを構成する脂肪族1価アルコール(式(3)において、R6OHに相当する)としては、例えば、上述の脂肪族1価アルコールが挙げられる。
【0087】
上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの例としては、例えば、ドデカン酸(C12)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル、テトラデカン酸(C14)と、ドデシルアルコール(C12)とのエステル等が挙げられ、上記脂肪酸と脂肪族1価アルコールとのエステルの市販品としては、例えば、エレクトールWE20、及びエレクトールWE40(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
【0088】
[(d4)ジアルキルカーボネート]
上記ジアルキルカーボネートとしては、次の式(4):
R7OC(=O)OR8 (4)
(式中、R7及びR8のそれぞれは、アルキル基である)
を有する化合物が挙げられる。
上記ジアルキルカーボネートは、市販されている他、ホスゲンとアルコールとの反応、塩化ギ酸エステルとアルコール又はアルコラートとの反応、及び炭酸銀とヨウ化アルキルとの反応により合成することができる。
【0089】
[(e1)ポリオキシC3~C6アルキレングリコール]
上記ポリオキシC3~C6アルキレングリコールは、i)オキシC3~C6アルキレン骨格、すなわち、オキシプロピレン骨格、オキシブチレン骨格、オキシペンチレン骨格、及びオキシヘキシレン骨格から成る群から選択されるいずれか1種の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するホモポリマー、ii)上記群から選択される2種以上の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するブロックコポリマー、又はiii)上記群から選択される2種以上の骨格を有し且つ両末端にヒドロキシ基を有するランダムコポリマーを意味する。
上記ポリC3~C6アルキレングリコールの市販品としては、例えば、ユニオール(商標)PB-500及びPB-700(以上、日油株式会社製)が挙げられる。
【0090】
[(e2)ポリオキシC3~C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステル]
上記ポリオキシC3~C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪酸とのエステルとしては、「(e1)ポリオキシC3~C6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC3~C6アルキレングリコールのOH末端の一方又は両方が、脂肪酸によりエステル化されているもの、すなわち、モノエステル及びジエステルが挙げられる。
上記脂肪酸については、上述の通りである。
【0091】
[(e3)ポリオキシC3~C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテル]
上記ポリオキシC3~C6アルキレングリコールと少なくとも1の脂肪族1価アルコールとのエーテルとしては、「(e1)ポリオキシC3~C6アルキレングリコール」の項で説明したポリオキシC3~C6アルキレングリコールのOH末端の一方又は両方が、脂肪族1価アルコールによりエーテル化されているもの、すなわち、モノエーテル及びジエーテルが挙げられる。
上記脂肪族1価アルコールについては、上述の通りである。
【0092】
[(f1)鎖状アルカン]
(f1)鎖状アルカンとしてが、例えば、直鎖アルカン及び分岐鎖アルカンが挙げられる。
上記炭化水素の市販品としては、例えば、パールリーム6(日油株式会社)が挙げられる。
【0093】
<多価アルコール>
上記多価アルコールは、2価以上のアルコールを意味し、例えば、2価アルコール、3価アルコール、4価アルコール、5価アルコール、6価以上のアルコール、及びそれらのエーテル等が挙げられ、3価以上のアルコールであるか、又は2価アルコールのポリエーテルであることが好ましい。
上記2価アルコールとしては、例えば、C2~C6の鎖状炭化水素ジオール、例えば、C2~C6のグリコール、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール又はヘキシレングリコールが挙げられる。
【0094】
上記3価アルコールとしては、例えば、上述の鎖状炭化水素トリオールが挙げられ、例えば、グリセリンが挙げられる。
上記4価アルコールとしては、例えば、上述の鎖状炭化水素テトラオールが挙げられ、例えば、ペンタエリトリトールが挙げられる。
上記5価以上のアルコールとしては、例えば、キシリトール、ソルビトール等が挙げられる。
上記エーテルとしては、例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ジグリセリン、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、テトラプロピレングリコール等が挙げられる。
【0095】
<バイオサーファクタント>
上記バイオサーファクタントは、微生物により生産される天然の化合物であり、一般に生分解性が高く、人体に対する皮膚刺激性が低いため、環境及び人体への安定性が高い。本開示に係るバイオサーファクタントとしては、サーファクチン、アルスロファクチン、イチュリン等のリポペプチド化合物、マンノシルエリスリトールリピッド、ソホロリピッド、トレハロースリピッド、ラムノリピッド等の糖脂質、スピクリスポール酸等の脂肪酸、エマルザン等のポリマー、及びそれらの塩、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0096】
上記バイオサーファクタントは、ゲル状組成物の安定性の高さから、リポペプチド化合物及びその塩が好ましく、サーファクチン、アルスロファクチン、イチュリン、及びそれらの塩がより好ましく、サーファクチン及びその塩がさらに好ましい。
【0097】
サーファクチンの塩は、次の式(5)
【化1】
(式中、Xは、ロイシン残基、イソロイシン残基、及びバリン残基からなる群より選択されるアミノ酸残基を意味し、Rは、C
9~C
18アルキル基を意味し、そしてM
+は、アルカリ金属イオン又は第四級アンモニウムイオンを意味する。)
で示される。
【0098】
Xとしてのアミノ酸残基は、L体又はD体であることができ、好ましくはL体である。
RとしてのC9~C18アルキル基は、直鎖状又は分枝鎖状の1価飽和炭化水素基を意味し、n-ノニル基、6-メチルオクチル基、7-メチルオクチル基、n-デシル基、8-メチルノニル基、n-ウンデシル基、9-メチルデシル基、n-ドデシル基、10-メチルウンデシル基、n-トリデシル基、11-メチルドデシル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基等が挙げられる。
【0099】
M+としてのアルカリ金属イオンとしては、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン等が挙げられる。
M+としての第四級アンモニウムイオンの置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、tert-ブチル基等のアルキル基;ベンジル基、メチルベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基;フェニル基、トルイル基、キシリル基等のアリール基等の有機基が挙げられる。
第四級アンモニウムイオンとしては、例えば、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、ピリジニウムイオン等が挙げられる。
【0100】
サーファクチン又はその塩は、公知方法に従って、微生物、例えば、バチルス・ズブチリスに属する菌株を培養し、その培養液から分離することができ、精製品であってもよく、また、未精製のまま、例えば、培養液のまま使用することもできる。サーファクチン又はその塩はまた、合成したものであってもよい。
【0101】
<ゲル状組成物>
上記ゲル状組成物は、ゲル状であれば、その組成は特に制限されないが、ゲル状組成物の作用を発揮しやすくするため、上記油性成分と、上記多価アルコールと、上記バイオサーファクタントとを、それらの合計質量に基づいて、好ましくは40.0~94.9質量%、5.0~59.9質量%及び0.1~5.0質量%、より好ましくは50.0~92.0質量%、6.0~49.7質量%及び0.3~4.0質量%、そしてさらに好ましくは60.0~90.0質量%、7.0~39.5質量%及び0.5~3.0質量%の比率で含む。
【0102】
上記ゲル状組成物は、36℃及び0.28(1/s)の剪断速度において、好ましくは50~1,000Pa・s、より好ましくは100~800Pa・s、そしてさらに好ましくは200~500Pa・sの粘度を有する。ゲル状組成物が、着用者の体温付近且つ保管時に相当する剪断速度において、所定の粘度を有することにより、吸収性物品の着用時に、ゲル状組成物が、その位置を変化させにくいとともに、液透過性シートに液体が到達した際に、油性成分のエマルションが形成されやすくなる。
【0103】
本明細書では、上記ゲル状組成物の粘度は、以下の機器を用いて測定することができる。
・機器:Thermo Fisher SCIENTIFIC社製
HAAKE RheoStress1
・センサー:Coneφ60mm,1°angle C60/1
・剪断速度:0.28(1/s)
・測定時間:30秒
・サンプリング:100,平均値算出
【0104】
上記ゲル状組成物は、水分と接触すると、上記油性成分のエマルションを形成するように構成されていることが好ましく、そしてその場合に、エマルションが、好ましくは0.5~5.0μm、そしてより好ましくは1.0~3.0μmの平均粒径を有する。それにより、液透過性シートの肌当接面に配置される油性成分のエマルションの個数が増えるとともに、個々のエマルションが液体を吸収コアに滑落させやすくなる。
【0105】
本明細書では、上記ゲル状組成物から形成される油性成分のエマルションの粒径は、以下の装置を用いて測定することができる。
・装置:マイクロトラックベル社製のレーザー回折散乱式粒度分布測定装置
・エマルションの形成条件:300mLのビーカーに、ゲル状組成物10.0gと、水90.0gとを添加し、ゲル状組成物の塊がなくなるまで攪拌し、10分静置する。
【0106】
[その他の成分]
上記ゲル状組成物は、その作用を阻害しない範囲で、その他の成分をさらに含むことができる。
上記その他の成分としては、パール由来成分が挙げられる。
上記パール由来成分としては、真珠層を有する貝に由来する成分であれば、特に制限されない。上記真珠層を有する貝としては、アコヤガイ、クロチョウガイ(黒蝶真珠)、シロチョウガイ(南洋真珠)、マベガイ(マベ真珠)、アワビ等の海水性の貝、イケチョウガイ(淡水パール)、カラス貝(淡水パール)等が挙げられる。
【0107】
上記パール由来成分としては、上述の真珠層を有する貝の粉砕物、すなわち、粉体が挙げられ、そして上述の真珠層を有する貝の有機質、例えば、タンパク質コンキオリン、及び上記有機質に由来するペプチド、アミノ酸、例えば、加水分解コンキオリン等であることができる。上記ペプチド、アミノ酸等は、液状であってもよい。
【0108】
上記その他の成分としては、例えば、香料、溶媒等が挙げられる。
上記その他の成分としては、例えば、シリコーンオイル、シリコーン、シリコーン系レジン等が挙げられる。
上記その他の成分としては、例えば、酸化防止剤、例えば、BHT(2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール)、BHA(ブチル化ヒドロキシアニソール)、没食子酸プロピル等が挙げられる。
【0109】
上記その他の成分としては、例えば、ビタミン、例えば、天然ビタミン又は合成ビタミンが挙げられる。上記ビタミンとしては、例えば、水溶性ビタミン、例えば、ビタミンB群、例えば、ビタミンB1,ビタミンB2,ビタミンB3,ビタミンB5,ビタミンB6,ビタミンB7,ビタミンB9,ビタミンB12等、ビタミンCが挙げられる。
上記ビタミンとしては、例えば、脂溶性ビタミン、例えば、ビタミンA群、ビタミンD群、ビタミンE群、およびビタミンK群等が挙げられる。
上記ビタミンにはまた、それらの誘導体も含まれる。
【0110】
上記その他の成分としては、例えば、アミノ酸、例えば、アラニン、アルギニン、リジン、ヒスチジン、プロリン、ヒドロキシプロリン等、並びにペプチドが挙げられる。
【0111】
上記その他の成分としては、例えば、ゼオライト、例えば、天然ゼオライト、例えば、方沸石、菱沸石、輝沸石、ナトロライト、束沸石、及びソモソナイト、並びに、合成ゼオライトが挙げられる。
上記その他の成分としては、例えば、コレステロール、ヒアルロン酸、レシチン、セラミド等が挙げられる。
【0112】
また、上記その他の成分としては、例えば、薬剤、例えば、皮膚収斂剤、抗ニキビ剤、抗シワ剤、抗セルライト剤、美白剤、抗菌剤、抗カビ剤、抗炎症剤、温感剤、冷感剤等が挙げられる。
【0113】
上記皮膚収斂剤としては、例えば、酸化亜鉛、硫酸アルミニウム、タンニン酸等、油溶性皮膚収斂剤、例えば、油溶性ポリフェノールが挙げられる。上記油溶性ポリフェノールとしては、天然の油溶性ポリフェノール、例えば、オオバクエキス、オトギリソウエキス、オドリコソウエキス、カモミラエキス、ゴボウエキス、サルビアエキス、シナノキエキス、セイヨウボダイジュエキス、シラカバエキス、スギナエキス、セージエキス、サルビアエキス、テウチグルミエキス、ハイビスカスエキス、ビワ葉エキス、ボダイジュエキス、ホップエキス、マロニエエキス、ヨクイニンエキス等が挙げられる。
【0114】
上記抗ニキビ剤としては、例えば、サリチル酸、過酸化ベンゾイル、レゾルシノール、イオウ、エリスロマイシン、亜鉛等が挙げられる。
上記抗シワ剤としては、例えば、乳酸、サリチル酸、サリチル酸誘導体、グリコール酸、フィチン酸、リポ酸、リソフォスファチド酸が挙げられる。
【0115】
上記抗セルライト剤としては、例えば、キサンチン化合物、例えば、アミノフィリン、カフェイン、テオフィリン、テオブロミン等が挙げられる。
上記美白剤としては、例えば、ナイアシンアミド、コウジ酸、アルブチン、グルコサミン及びその誘導体、フィトステロール誘導体、アスコルビン酸及びその誘導体、並びにクワ抽出物及び胎盤抽出物(ヒトに由来するもの又はヒト以外に由来するもの)が挙げられる。
上記抗炎症剤としては、例えば、天然由来の抗炎症剤、例えば、ボタン、オオゴン、オトギリソウ、カモミール、甘草、モモノハ、ヨモギ、シソエキス等、合成抗炎症剤、例えば、アラントイン、グリチルリチン酸ジカリウム等が挙げられる。
【0116】
上記温感剤としては、TRPチャネルを活性化するもの、例えば、TRPV1レセプターに対するアゴニスト、TRPV3レセプターに対するアゴニスト等が挙げられ、TRPV1に対するアゴニストであることが好ましい。TRPV1レセプターは、活性化温度閾値が43℃超と高く、着用者に高い温感を付与することができる。
【0117】
上記温感剤は、着用者の安心感の観点から、植物由来の化合物であることが好ましい。上記温感剤としては、例えば、カプシコシド、カプサイシン、カプサイシノイド類(ジヒドロカプサイシン、ノルジヒドロカプサイシン、ホモジヒドロカプサイシン、ホモカプサイシン、ノニバミド等)、カプサンチン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸β-ブトキシエチル、N-アシルワニルアミド、ノナン酸バニリルアミド、多価アルコール、唐辛子末、唐辛子チンキ、唐辛子エキス、ノナン酸バニリルエーテル、バニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテル)、イソバニリルアルコールアルキルエーテル、エチルバニリルアルコールアルキルエーテル、ベラトリアルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコール誘導体、置換ベンジルアルコールアルキルエーテル、バニリンプロピレングリコールアセタール、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、ショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール、ジンゲロン、ヘスペリジン、及びピロリドンカルボン酸、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0118】
上記温感剤は、着用者が痛さ、痒さ等を感じにくい観点から、カプサイシンではないことが好ましく、そしてバニリルアルコールアルキルエーテル誘導体(例えば、バニリルエチルエーテル、バニリルブチルエーテル、バニリルペンチルエーテル、バニリルヘキシルエーテルショウガエキス、ジンジャーオイル、ジンゲロール、及びジンゲロン、並びにそれらの任意の組み合わせがより好ましい。
【0119】
上記冷感剤としては、例えば、TRPチャネルを活性化するもの、例えば、TRPM8レセプターに対するアゴニスト、TRPA1レセプターに対するアゴニスト等が挙げられ、TRPM8レセプターに対するアゴニストであることが好ましい。
【0120】
上記冷感剤としては、例えば、メントール(例えば、l-メントール)及びその誘導体(例えば、乳酸メンチル、メンチルグリセリルエーテル、例えば、l-メンチルグリセリルエーテル)、サリチル酸メチル、カンファー、植物(例えば、ミント、ユーカリ)由来の精油等が挙げられる。
【0121】
また、上記その他の成分としては、例えば、pH調整剤、保湿剤、色素、染料、顔料、植物抽出エキス等が挙げられる。
上記pH調整剤としては、皮膚を弱酸性に保つためのもの、例えば、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、酒石酸、乳酸等が挙げられる。
上記顔料としては、例えば、酸化チタンが挙げられる。
【0122】
上記その他の成分は、親油性であっても、親水性であってもよい。上記その他の成分が親水性であることにより、親水性であるその他の成分が、多価アルコールとともに存在しやすくなる。その結果、液透過性シートに液体が到達した際に、親水性であるその他の成分が、多価アルコールとともに、液体に溶解しやすくなり、例えば、液体中でその他の成分の作用を発揮することができる。
【0123】
上記その他の成分が親油性であることにより、親油性であるその他の成分が、油性成分とともに存在しやすくなる。その結果、液透過性シートに液体が到達する前には、親油性成分であるその他の成分がその作用を発揮しにくく、液透過性シートに液体が到達した際に、親油性であるその他の成分が、油性成分のエマルションとともに放出され、その他の成分の作用を発揮しやすくなる。
例えば、温感剤及び冷感剤が親油性である場合には、ゲル状組成物が液体と接触する都度、温感剤又は冷感剤が、その作用を着用者に付与することができる。
【0124】
[吸収性物品]
本開示の吸収性物品は、肌当接面及び非肌側面を備えている液透過性シートと、液不透過性シートと、それらの間の吸収コアとを備えている。
上記吸収性物品が吸収すべき液体は、液状であれば特に制限されず、例えば、体液、例えば、血液、経血、尿、唾液、汗、精液、リンパ液、組織液、体腔液、涙、鼻水、母乳等が挙げられる。
本開示の吸収性物品としては、上記液体を吸収するものが挙げられ、例えば、生理用ナプキン、おりもの用シート、使い捨ておむつ、尿取りパッド、使い捨てショーツ、母乳パッド、ペットシート等が挙げられる。
【0125】
上記吸収性物品では、上記ゲル状組成物は、吸収コアよりも液透過性シート側に配置された、液透過性シートを含む資材に存在している。上記資材は、液透過性シートを備えているとともに、液透過性シート及び吸収コアの間に配置された、所望によるセカンドシート(例えば、拡散シート)、吸収コアを液透過性シート側から覆う、所望によるコアラップ等をさらに備えていることができる。
【0126】
本開示の吸収性物品では、上記資材は、液透過性シートが備えている肌当接面と、液透過性シートの肌当接面よりも液不透過性シート側に配置された非肌当接面とを備えている。また、上記資材において、上記肌当接面に存在するゲル状組成物の量が、上記非肌当接面に存在するゲル状組成物の量よりも少ない。それにより、上記吸収性物品は、製造直後であっても、製造から一定の時間が経過した場合であっても、液体が液透過性シートの肌当接面に拡がることを抑制しつつ、液体を繰り返し吸収コアに滑落させることができ、経時での繰り返し吸収性に優れる。
【0127】
上記資材において、上記肌当接面に存在するゲル状組成物の量が、上記非肌当接面に存在するゲル状組成物の量よりも少ないとの関係は、ゲル状組成物がその作用を発揮する観点から、例えば、排泄口に当接する排泄口当接域、吸収コアと吸収性物品の厚さ方向に重複する範囲等において満たすことが好ましい。
【0128】
本開示では、ゲル状組成物の量(上記肌当接面に存在するゲル状組成物の量及び上記非肌当接面に存在するゲル状組成物の量)は、所定の範囲における平均坪量を意味する。
上記所定の範囲としては、吸収コアと厚さ方向に重複する範囲、排泄口当接域と厚さ方向に重複する範囲等であることができ、そして吸収コアと厚さ方向に重複する範囲であることが好ましい。本開示の効果の観点からである。
【0129】
ゲル状組成物の平均坪量の大小は、目視により評価することができる。
また、上記平均坪量の大小は、以下の通り評価することもできる。
(1)吸収性物品から、ゲル状組成物の平均坪量の比較対象面を有する、比較対象となるシート(液透過性シート、所望によるセカンドシート、所望によるコアラップ等)を取得する。なお、各シートは、必要に応じて、ドライヤー、コールドスプレー等を用いて吸収性物品から分離する。なお、比較対象面が同一のシート(例えば、液透過性シートの肌当接面及び非肌側面)に存在する場合には、異なる吸収性物品から、同一のシートを2枚取得する。
(2)比較対象となるシートを、上記所定の範囲にカットする。
(3)上記所定の範囲より大きいパラピン紙(複数枚でも可)を準備し、パラピン紙の質量を測定する。
【0130】
(4)パラピン紙を、比較対象となるシートの比較対象面に載せる。
(5)上記シートの比較対象面の全体を覆うようにパラピン紙を載せ、その上からアクリル板を載せ、その上におもりを載せ、1分間静置する。なお、おもりは、比較対象となるシートに、30g/cm2の荷重が加わるように質量を調整する。
(6)比較対象面を覆っていたパラピン紙の質量を測定する。
(7)パラピン紙の質量の増加量が多かったシートの比較対象面を、ゲル状組成物の平均坪量が多いと判断する。
【0131】
上記資材において、上記非肌当接面としては、例えば、液透過性シートの非肌側面が挙げられる。それにより、ゲル状組成物が、液透過性シートの非肌側面に存在していない場合と比較して、液透過性シートに体液等の液体(1回目)が到達した際に、油性成分のエマルション(1回目)は、その一部が、液体を吸収コアにより滑落させやすくなるとともに、その残余が、液体が透過してきた経路を遡って、液透過性シートの肌当接面までより到達しやすくなる。
【0132】
上記資材において、上記非肌当接面としては、例えば、(i)肌側面及び非肌側面を備えているセカンドシートの肌側面及び/又は非肌側面、(ii)肌側面及び非肌側面を備えているコアラップの肌側面及び/又は非肌側面等が挙げられる。
【0133】
上記資材において、上記非肌当接面は、着用者に近いものであることが好ましく、液透過性シートの非肌側面であることが最も好ましい。それにより、ゲル状組成物が、液透過性シートの非肌側面に存在していない場合と比較して、液透過性シートに体液等の液体(1回目)が到達した際に、油性成分のエマルション(1回目)は、その一部が、液体を吸収コアにより滑落させやすくなるとともに、その残余が、液体が透過してきた経路を遡って、液透過性シートの肌当接面までより到達しやすくなる。
【0134】
本開示の吸収性物品では、上記資材が非肌当接面を複数備えている場合には、上記ゲル状組成物は、上記資材において、複数の非肌当接面に存在していてもよい。それにより、液体を繰り返し吸収コアに滑落させることができ、経時での繰り返し吸収性に優れやすくなる。
【0135】
上記資材が非肌当接面を複数備えている場合であって、上記ゲル状組成物が、複数の非肌当接面に存在しているときには、上記複数の非肌当接面に存在するゲル状組成物のうち、少なくとも1つの非肌当接面におけるゲル状組成物の量が、液透過性シートの肌当接面に存在するゲル状組成物の量よりも多ければ、「上記肌当接面に存在するゲル状組成物の量が、上記非肌当接面に存在するゲル状組成物の量よりも少ない」との要件を満たす。
【0136】
もっとも、上記資材が非肌当接面を複数備えている場合であって、上記ゲル状組成物が、複数の非肌当接面に存在しているときには、上記複数の非肌当接面に存在するゲル状組成物の全ての非肌当接面におけるゲル状組成物の量が、液透過性シートの肌当接面に存在するゲル状組成物の量よりも多くてもよい。それにより、液体を繰り返し吸収コアに滑落させることができ、経時での繰り返し吸収性に優れやすくなる。
【0137】
上記ゲル状組成物は、上記肌当接面に存在するゲル状組成物の平均坪量が0g/m2であること、すなわち、ゲル状組成物が上記肌当接面に存在していないことが好ましい。それにより、液体が液透過性シートの肌当接面に拡がることが抑制されやすくなる。
【0138】
上記吸収性物品は、吸収コアよりも液透過性シート側に配置された、液透過性シートを含む資材に、ゲル状組成物を、総量として、好ましくは1~30g/m2、より好ましくは2~20g/m2、そしてさらに好ましくは3~10g/m2の坪量で備えている。ゲル状組成物の作用と、吸収性物品の吸収性との観点からである。
なお、上記坪量は、上述の所定の範囲における坪量を意味する。
【0139】
本明細書では、上記坪量は、以下の通り測定される。
(1)吸収性物品を、所定の範囲で切り出し、所定の範囲の面積:S(m2)を測定する。
(2)所定の範囲を切り出した吸収性物品から、必要に応じてドライヤー等を用いて、資材を切り出す。
(3)資材の初期質量:m1(g)を測定する。
(3)資材を十分な水で洗い、資材からゲル状組成物を除去する。
(4)ゲル状組成物を除去した資材を、40℃で24時間乾燥させ、資材の乾燥後質量:m2(g)を測定する。
(5)上記坪量を、次の式:
坪量(g/m2)=(m1-m2)/S
にて算出する。
【0140】
上記ゲル状組成物は、公知のコーターを用いて、任意の形態、例えば、ライン状、ドット状、粒子状(例えば、微粒子状)等に塗工されることができる。
図1及び
図2は、本開示の実施形態の1つ(第1実施形態)に従う生理用ナプキン1を説明するための図である。詳細には、
図1は、生理用ナプキン1の平面図であり、
図2は、
図1のII-II端面における部分端面図である。第1実施形態に従う生理用ナプキン1は、液透過性シート3と、液不透過性シート5と、液透過性シート3及び液不透過性シート5の間に配置された吸収体7とを有する。吸収体7は、吸収コア7aと、吸収コア7aを覆うコアラップ7bとを備えている。生理用ナプキン1はまた、サイドシート9と、エンボス部11とを有する。
【0141】
液透過性シート3は、着用者の肌に当接する肌当接面15と、液不透過性シート5と対向する非肌側面17とを備えており、非肌側面17に、複数のライン状のゲル状組成物13を含む。複数のライン状のゲル状組成物13は、生理用ナプキン1の長手方向Lに沿って、そして生理用ナプキン1の幅方向Wに離間して、液透過性シート3の非肌側面17に配置されている。
第1実施形態に従う生理用ナプキン1では、ゲル状組成物13は、液透過性シート3の肌当接面15に配置されていない。
【0142】
なお、第1実施形態に従う生理用ナプキン1では、吸収コア7aよりも液透過性シート3側に配置された資材51は、液透過性シート3と、吸収コア7aを液透過性シート3側から覆うコアラップ7bとを備えている。資材51の肌当接面53は、液透過性シート3の肌当接面15から構成され、資材51の非肌当接面55は、液透過性シート3の非肌側面17と、コアラップ7bの肌側面(図示せず)及び非肌側面(図示せず)とから構成される。
【0143】
図3は、本開示の別の実施形態(第2実施形態)に従う生理用ナプキン1を示す平面図である。第2実施形態に従う生理用ナプキン1では、液透過性シート3は、その非肌側面(図示せず)に、ゲル状組成物13を含み、そして複数のドット状のゲル状組成物13が、液透過性シート3の非肌側面(図示せず)に、千鳥状に配置されている。
第2実施形態に従う生理用ナプキン1では、ゲル状組成物13は、液透過性シート3の肌当接面15に配置されていない(存在していない)。
【0144】
図4は、本開示のさらに別の実施形態(第3実施形態)に従う生理用ナプキン1を説明するための図であり、
図1のII-II端面に相当する部分端面図である。
第3実施形態に従う生理用ナプキン1は、液透過性シート3、セカンドシート21、吸収体7(吸収コア7a及びコアラップ7bを備えている)及び液不透過性シート5を、その順番で備えている。セカンドシート21は、液透過性シート3と対向する肌側面23と、液不透過性シート5と対向する非肌側面25とを備えており、肌側面23に、複数のライン状のゲル状組成物13を含む。複数のライン状のゲル状組成物13は、生理用ナプキン1の長手方向Lに沿って、そして生理用ナプキン1の幅方向Wに離間して、セカンドシート21の肌側面23に配置されている。
【0145】
なお、第3実施形態に従う生理用ナプキン1では、吸収コア7aよりも液透過性シート3側に配置された資材51は、液透過性シート3と、セカンドシート21と、吸収コア7aを液透過性シート3側から覆うコアラップ7bとを備えている。資材51の肌当接面53は、液透過性シート3の肌当接面15から構成され、資材51の非肌当接面55は、液透過性シート3の非肌側面17と、セカンドシート21の肌側面23及び非肌側面25と、コアラップ7bの肌側面(図示せず)及び非肌側面(図示せず)とから構成される。
【0146】
図5は、本開示のさらに別の実施形態(第4実施形態)に従う生理用ナプキン1を説明するための図であり、
図1のII-II端面に相当する部分端面図である。
第4実施形態に従う生理用ナプキン1は、液透過性シート3、吸収体7、及び液不透過性シート5をその順番で備えている。吸収体7は、吸収コア7aと、吸収コア7aを液透過性シート3側及び液不透過性シート5側の両面から覆うコアラップ7bを備えている。液透過性シート3側のコアラップ7bは、液透過性シート3と対向する肌側面27と、液不透過性シート5と対向する非肌側面29とを備えており、肌側面27に、複数のライン状のゲル状組成物13を含む。複数のライン状のゲル状組成物13は、生理用ナプキン1の長手方向Lに沿って、そして生理用ナプキン1の幅方向Wに離間して、液透過性シート3側のコアラップ7bの肌側面27に配置されている。
【0147】
なお、第4実施形態に従う生理用ナプキン1では、吸収コア7aよりも液透過性シート3側に配置された資材51は、液透過性シート3と、吸収コア7aを液透過性シート3側から覆うコアラップ7bとを備えている。資材51の肌当接面53は、液透過性シート3の肌当接面15から構成され、資材51の非肌当接面55は、液透過性シート3の非肌側面17と、コアラップ7bの肌側面27及び非肌側面29とから構成される。
【0148】
上記液透過性シートは、布帛(例えば、不織布、織布及び編物)、開孔フィルム等であることができる。
液透過性シートが布帛である場合には、布帛を構成する繊維が、好ましくは5~60μm、より好ましくは10~40μm、そしてさらに好ましくは15~30μmの平均繊維径を有する。それにより、布帛を構成する繊維の表面に油性成分のエマルションが配置されやすくなり、油性成分のエマルションが、液体を吸収コアに滑落させやすくなる。なお、当該効果は、油性成分のエマルションの平均粒径が上述の範囲にある場合に、より高くなる。
【0149】
また、布帛を構成する繊維の上記平均繊維径は、油性成分のエマルションよりも、好ましくは大きく、より好ましくは2倍以上大きく、さらに好ましくは3倍以上大きく、さらにいっそう好ましくは5倍以上大きく、そしてさらにいっそう好ましくは7倍以上大きい。それにより、油性成分のエマルションが繊維の表面に配置されやすくなる。
【0150】
本明細書では、繊維の平均繊維径は以下の通り測定される。
・液透過性シートの任意の場所から、縦×横=5mm×5mmの試料を10個切り出す。
・走査型電子顕微鏡(KEYENCE社製,VE-7800)を用いて、倍率500倍で試料の表面の写真を計10枚(1試料1枚)撮影する。
・計10枚の写真のそれぞれにおいて、所定本数(例えば、10本)の繊維の繊維径を測定する。
・計10枚の写真の所定本数の繊維径の和を、計10枚の写真の所定本数の和で除した値を平均繊維径とする。
【実施例0151】
以下、例を挙げて本開示を説明するが、本開示はこれらの例に限定されるものではない。
[製造例1]
油性成分としてのパナセート810S(日油株式会社製)80.0質量部と、グリセリン19.0質量部と、カネカ・サーファクチン(カネカ株式会社製)1.0質量部とを室温で混合し、ゲル状組成物No.1を形成した。
なお、パナセート810Sは、C8の脂肪酸:C10の脂肪酸がおおよそ85:15の重量比で含まれている、グリセリンと脂肪酸とのトリエステル(トリグリセリド)である。
【0152】
ゲル状組成物No.1を、スパンボンド不織布(坪量:20g/m2)に、400m×80mmの範囲で、坪量が20g/m2となるように塗工した。市販の尿取りパッド(ユニ・チャーム株式会社製,ライフリー 長時間あんしん 尿とりパッド 昼用スーパー,以下、「市販尿取りパッド」と称する)の液透過性シートを剥がし、ゲル状組成物No.1が塗工された不織布を、液透過性シートとして、ゲル状組成物No.1が非肌側面となるように、そして背側の吸収コアの端部から30mmの位置からゲル状組成物No.1が存在するように市販尿取りパッドに貼り付け、尿取りパッドNo.1を得た。
【0153】
[参考製造例1]
市販尿取りパッドの液透過性シートを剥がし、ゲル状組成物No.1が塗工された不織布を、液透過性シートとして、ゲル状組成物No.1が肌当接面となるように市販尿取りパッドに貼り付けた以外は製造例1と同様にして、尿取りパッドNo.2を得た。
【0154】
[比較製造例1]
市販尿取りパッドの液透過性シートを剥がし、ゲル状組成物No.1が塗工されていないスパンボンド不織布(坪量:20g/m2)を、液透過性シートとして市販尿取りパッドに貼り付けた以外は製造例1と同様にして、尿取りパッドNo.3を得た。
【0155】
[実施例1、参考例1及び比較例1]
[液流れ長、液透過性シート側拡散長及び液不透過性シート側拡散長]
尿取りパッドNo.1~No.3のそれぞれ(以下、「各尿取りパッド」と称する)を、傾斜30度の台に、背側が上となるように固定した。各尿取りパッドの背側の吸収コアの端部から50mmの位置に、人工尿(イオン交換水10Lに、尿素200g、塩化ナトリウム80g、硫酸マグネシウム8g、塩化カルシウム3g及び色素:青色1号約1gを溶解させることにより調製)100mLを3回、10分間隔で、滴下漏斗から10mL/秒の速度で滴下した。
各尿取りパッドの液流れ長、液透過性シート側拡散長及び液不透過性シート側拡散長を測定した。結果を、表1に示す。
【0156】
なお、液流れ長は、人工尿を滴下中に液透過性シートの肌当接面を流れる人工尿の長さ(人工尿の滴下ポイントから、液透過性シートの肌当接面を流れる人工尿の最も遠い到達点までの、尿取りパッドの長手方向における長さ)を意味し、液透過性シート側拡散長は、滴下から3分後に、液透過性シート側から観察される人工尿の拡散長(人工尿の滴下ポイントから、人工尿の最も遠い到達点までの、尿取りパッドの長手方向における長さ)を意味し、液不透過性シート側拡散長は、液透過性シート側拡散長の測定後すぐに、液不透過性シート側から観察される人工尿の拡散長(人工尿の滴下ポイントから、人工尿の最も遠い到達点までの、尿取りパッドの長手方向における長さ)を意味する。
【0157】
[リウェット]
上記液流れ長、液透過性シート側拡散長及び液不透過性シート側拡散長を測定した各尿取りパッドとは異なるサンプルを用いて、3回目の人工尿の滴下から5分後、人工尿を滴下した場所を中心に、初期質量:m3(g)を測定したろ紙(100mm×100mm)60枚を置き、その上から、圧力が30g/cm2となるようにおもりを置く。3分後、上記60枚のろ紙を取出し、試験後質量:m4(g)を測定する。
以下の式に従って、「リウェット(g)」を算出する。
リウェット(g)=m4-m3
【0158】
【0159】
表1より、尿取りパッドNo.1は、尿取りパッドNo.2及びNo.3と比較して、液流れ長が短く、そして液透過性シート側拡散長が短く、液不透過性シート側拡散長が長いことが分かる。当該結果から、尿取りパッドNo.1は、人工尿が液透過性シートの肌当接面に拡がることを抑制しつつ、人工尿を繰り返し吸収コアに滑落させることができ、経時での繰り返し吸収性に優れることが分かる。
【0160】
[製造例2]
油性成分としてのパナセート810S(日油株式会社製)50.0質量部と、グリセリン49.0質量部と、カネカ・サーファクチン(カネカ株式会社製)1.0質量部とを室温で混合し、ゲル状組成物No.2を形成した。ゲル状組成物No.2を、エアスルー不織布(坪量:30g/m2)に、400m×80mmの範囲で、坪量が20g/m2となるように塗工した。市販尿取りパッドの液透過性シートを剥がし、ゲル状組成物No.2が塗工された不織布を、液透過性シートとして、ゲル状組成物No.2が非肌側面となるように、そして背側の吸収コアの端部から30mmの位置からゲル状組成物No.2が存在するように市販尿取りパッドに貼り付け、尿取りパッドNo.4を得た。
【0161】
[製造例3]
油性成分としてのパナセート810S(日油株式会社製)60.0質量部と、グリセリン39.0質量部と、カネカ・サーファクチン(カネカ株式会社製)1.0質量部とを室温で混合し、ゲル状組成物No.3を形成した。製造例2と同様にして、ゲル状組成物No.3が塗工された尿取りパッドNo.5を得た。
【0162】
[製造例4]
油性成分としてのパナセート810S(日油株式会社製)70.0質量部と、グリセリン29.0質量部と、カネカ・サーファクチン(カネカ株式会社製)1.0質量部とを室温で混合し、ゲル状組成物No.4を形成した。製造例2と同様にして、ゲル状組成物No.4が塗工された尿取りパッドNo.6を得た。
【0163】
[製造例5]
油性成分としてのパナセート810S(日油株式会社製)80.0質量部と、グリセリン19.0質量部と、カネカ・サーファクチン(カネカ株式会社製)1.0質量部とを室温で混合し、ゲル状組成物No.5を形成した。製造例2と同様にして、ゲル状組成物No.5が塗工された尿取りパッドNo.7を得た。
【0164】
[比較製造例2]
特開2022-34252号の実施例1における表面処理剤(以下、「表面処理剤No.1」と称する)を製造した。なお、桃の葉エキス及びアルガンオイルの代わりに、マカダミアナッツオイルを用いた。製造例2と同様にして、表面処理剤No.1が塗工された尿取りパッドNo.8を得た。
【0165】
[比較製造例3]
特開2022-34252号の実施例3における表面処理剤(以下、「表面処理剤No.2」と称する)を製造した。なお、桃の葉エキス及びアルガンオイルの代わりに、マカダミアナッツオイルを用いた。製造例2と同様にして、表面処理剤No.2が塗工された尿取りパッドNo.9を得た。
【0166】
[比較製造例4]
特開2022-34252号の実施例5における表面処理剤(以下、「表面処理剤No.3」と称する)を製造した。なお、桃の葉エキス及びアルガンオイルの代わりに、マカダミアナッツオイルを用いた。製造例2と同様にして、表面処理剤No.3が塗工された尿取りパッドNo.10を得た。
【0167】
[比較製造例5]
市販尿取りパッドの液透過性シートを剥がし、エアスルー不織布(坪量:30g/m2)を、液透過性シートとして市販尿取りパッドに貼り付けた以外は製造例1と同様にして、尿取りパッドNo.11を得た。
【0168】
[実施例2~5及び比較例2~5]
[液流れ長]
尿取りパッドNo.4~No.11のそれぞれに対して、液流れ長を測定した。なお、液流れ長の測定方法は、上述の通りである。結果を表2に示す。
【0169】
【0170】
尿取りパッドNo.4~No.7(実施例2~5)は、尿取りパッドNo.8~No.11(比較例2~4)と比較して液流れ長が短いことが分かる。従って、特開2022-34252号における繊維処理剤は、本願のゲル状組成物のように適用した場合であっても、本願発明と比較して液流れ長に劣り、液透過性シートの肌当接面において液体が拡がりやすいことが分かる。