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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021494
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】半導体装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20240208BHJP
   H01L 23/12 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01L23/30 B
H01L23/12 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124345
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】真篠 直寛
【テーマコード(参考)】
4M109
【Fターム(参考)】
4M109AA02
4M109BA03
4M109CA21
4M109CA22
4M109EA02
4M109EE03
(57)【要約】
【課題】防湿効果及びガスバリア性を向上した半導体装置を提供する。
【解決手段】本半導体装置は、第1端面、第2端面、及び前記第1端面と前記第2端面とを接続する側面を備えた金属ポストと、前記第1端面を露出する第1面及び前記第2端面を露出する第2面を備え、前記側面を被覆する第1無機絶縁層と、下面が前記第2面と接するように、前記第2面に積層された半導体チップ実装部と、前記半導体チップ実装部の上面及び側面の全体を被覆し、かつ前記第1無機絶縁層と連続する第2無機絶縁層と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端面、第2端面、及び前記第1端面と前記第2端面とを接続する側面を備えた金属ポストと、
前記第1端面を露出する第1面及び前記第2端面を露出する第2面を備え、前記側面を被覆する第1無機絶縁層と、
下面が前記第2面と接するように、前記第2面に積層された半導体チップ実装部と、
前記半導体チップ実装部の上面及び側面の全体を被覆し、かつ前記第1無機絶縁層と連続する第2無機絶縁層と、を有する、半導体装置。
【請求項2】
前記第1無機絶縁層及び前記第2無機絶縁層は、ALD層、CVD層、又はALD層とCVD層とが積層された複合層である、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記複合層において、前記ALD層の厚さは、前記CVD層の厚さよりも薄い、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記複合層において、前記CVD層の上層に前記ALD層が形成される、請求項2に記載の半導体装置。
【請求項5】
前記ALD層は、酸化ハフニウム、酸化チタン、又は酸化ジルコニウムにより形成されている、請求項2乃至4の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項6】
前記CVD層は、SiO又はSiOCにより形成されている、請求項2乃至4の何れか一項に記載の半導体装置。
【請求項7】
前記半導体チップ実装部は、
前記第2面に積層されて前記第2端面と電気的に接続された最下配線層を含む1以上の配線層と、
前記第2面に積層されて前記最下配線層を被覆する最下絶縁層を含む1以上の絶縁層と、
最上の前記絶縁層上に配置され、最上の前記配線層と電気的に接続された電極を備えた半導体チップと、
最上の前記絶縁層上に配置され、前記半導体チップを被覆する封止樹脂層と、を有し、
前記第2無機絶縁層は、前記封止樹脂層の上面及び側面の全体、すべての前記絶縁層の側面の全体を被覆し、かつ前記第1無機絶縁層と連続する、請求項1に記載の半導体装置。
【請求項8】
支持体上に、第1端面、第2端面、及び前記第1端面と前記第2端面とを接続する側面を備えた金属ポストを、前記第1端面が前記支持体側を向くように形成する工程と、
前記支持体上に、前記第1端面を露出する第1面及び前記第2端面を露出する第2面を備え、前記側面を被覆する第1無機絶縁層を形成する工程と、
下面が前記第2面と接するように、前記第2面に積層された半導体チップ実装部を形成する工程と、
前記半導体チップ実装部の上面及び側面の全体を被覆し、かつ前記第1無機絶縁層と連続する第2無機絶縁層を形成する工程と、
前記支持体を除去する工程と、を有する、半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記金属ポストを形成する工程は、
前記支持体上に、開口部を備えたレジスト層を形成する工程と、
前記開口部を充填する前記金属ポストを形成する工程と、
前記レジスト層を除去する工程と、を含み、
前記第1無機絶縁層を形成する工程は、
前記支持体上に、前記第2端面及び前記側面を被覆する前記第1無機絶縁層を形成する工程と、
前記第2端面が露出するまで前記第1無機絶縁層の上面を研磨する工程と、を含み、
前記レジスト層を除去する工程、及び前記第2端面及び前記側面を被覆する前記第1無機絶縁層を形成する工程は、真空チャンバー内で一連の工程として実施される、請求項8に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記金属ポストを形成する工程、前記第1無機絶縁層を形成する工程、及び前記半導体チップ実装部を形成する工程では、前記支持体上に、個片化されて半導体装置となる複数の部分が形成され、
前記半導体チップ実装部を形成する工程と前記第2無機絶縁層を形成する工程との間に、前記複数の部分を分離する溝を形成する工程を有し、
前記第2無機絶縁層を形成する工程では、前記複数の部分の上面及び前記溝の内部に露出する前記複数の部分の側面の全体を被覆し、かつ前記第1無機絶縁層と連続する前記第2無機絶縁層を形成する、請求項8又は9に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な構成の半導体装置が提案されている。半導体装置の一例として、特許文献1には、記録通信モジュールが開示されている。半導体装置には湿度の影響を受けやすい部分があるため、防湿効果を付与することが好ましい。上記の半導体装置では、パラキシリレン系化合物の重合体蒸着膜により、防湿効果を付与している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-140215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体装置には、さらなる防湿効果の向上が求められている。
【0005】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、防湿効果及びガスバリア性を向上した半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本半導体装置は、第1端面、第2端面、及び前記第1端面と前記第2端面とを接続する側面を備えた金属ポストと、前記第1端面を露出する第1面及び前記第2端面を露出する第2面を備え、前記側面を被覆する第1無機絶縁層と、下面が前記第2面と接するように、前記第2面に積層された半導体チップ実装部と、前記半導体チップ実装部の上面及び側面の全体を被覆し、かつ前記第1無機絶縁層と連続する第2無機絶縁層と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
開示の技術によれば、防湿効果及びガスバリア性を向上した半導体装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。
図2】本実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その1)である。
図3】本実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その2)である。
図4】本実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その3)である。
図5】本実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図(その4)である。
図6】無機絶縁層の防湿性の検討結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0010】
[半導体装置の構造]
図1は、本実施形態に係る半導体装置を例示する断面図である。図1を参照すると、半導体装置1は、金属ポスト11と、無機絶縁層12と、無機絶縁層13と、半導体チップ実装部20とを有している。
【0011】
なお、本実施形態では、便宜上、半導体装置1の封止樹脂層26側を上側、無機絶縁層12側を下側とする。又、各部位の封止樹脂層26側の面を上面、無機絶縁層12側の面を下面とする。但し、半導体装置1は天地逆の状態で用いることができ、又は任意の角度で配置できる。又、平面視とは対象物を封止樹脂層26の上面の法線方向から視ることを指し、平面形状とは対象物を封止樹脂層26の上面の法線方向から視た形状を指すものとする。
【0012】
金属ポスト11は、第1端面11aと、第2端面11bと、第1端面11aと第2端面11bとを接続する側面11cとを備えている。金属ポスト11は、例えば、銅や銅合金等から形成することができる。金属ポスト11において、第1端面11aと第2端面11bとは、例えば、平行である。第1端面11a及び第2端面11bと側面11cとは、例えば、垂直である。第1端面11aは、半導体装置1の外部に露出しており、例えば、外部接続端子として用いることができる。
【0013】
金属ポスト11において、第1端面11a及び第2端面11bは、例えば、面積が略同一の円形である。第1端面11a及び第2端面11bが円形である場合、その直径は、例えば、1μm~20μm程度である。金属ポスト11の高さは、例えば、1μm~20μm程度である。金属ポスト11のピッチは、例えば、1μm~100μm程度である。
【0014】
無機絶縁層12は、金属ポスト11の第1端面11aを露出する第1面12a及び第2端面11bを露出する第2面12bを備え、側面11cを被覆する。無機絶縁層12の第1面12aは、例えば、金属ポスト11の第1端面11aと面一とすることができる。無機絶縁層12の第2面12bは、例えば、金属ポスト11の第2端面11bと面一とすることができる。無機絶縁層12の第2面12bの粗度は、例えば、Ra100nm以下程度とすることができる。無機絶縁層12の第2面12bの粗度を小さくして平坦化することで、無機絶縁層12の第2面12bに微細配線を形成することが容易となる。
【0015】
無機絶縁層12は、例えば、SiO、又はSiOC等を用いてCVD(Chemical Vapor Deposition)法により形成することができる。以降、CVD法で形成された層をCVD層と称する場合がある。無機絶縁層12は、例えば、酸化ハフニウム、酸化チタン、又は酸化ジルコニウム等を用いてALD(Atomic Layer Deposition)法により形成してもよい。以降、ALD法で形成された層をALD層と称する場合がある。
【0016】
無機絶縁層12は、ALD層とCVD層とが積層された複合層であってもよい。複合層は、CVD層とALD層を積層した2層構造であってもよいし、CVD層の上下をALD層で挟んだ3層構造であってもよい。無機絶縁層12がALD層とCVD層とが積層された複合層である場合、ALD層の厚さは例えば10nm~20nm程度とすることができ、それ以外の部分がCVD層となる。無機絶縁層12がALD層とCVD層とが積層された複合層である場合、ALD層の厚さは、CVD層の厚さよりも薄くてもよい。
【0017】
なお、本願において、無機絶縁層とは、対象となる絶縁層を構成する全材料の80wt%以上を無機材料が占める絶縁層を意味する。例えば、対象となる絶縁層が0.7wt%のSiOCと99.3wt%のSiOを含む場合、対象となる絶縁層は無機絶縁層である。
【0018】
半導体チップ実装部20は、下面が無機絶縁層12の第2面12bと接するように、第2面12bに積層されている。半導体チップ実装部20は、配線層21と、絶縁層22と、配線層23と、半導体チップ24と、封止樹脂層26とを有している。
【0019】
配線層21は、無機絶縁層12の第2面12bに積層され、金属ポスト11の第2端面11bと電気的に接続されている。配線層21は、半導体チップ実装部20における最下配線層である。配線層21の厚さは、例えば、0.5μm以上3μm以下程度とすることができる。配線層21のライン/スペースは、例えば、1μm/1μm~5μm/5μm程度とすることができる。
【0020】
なお、ライン/スペースにおけるラインとは配線幅を表し、スペースとは隣り合う配線同士の間隔(配線間隔)を表す。例えば、ライン/スペースが1μm/1μm~5μm/5μmと記載されていた場合、配線幅が1μm以上5μm以下で、かつ隣り合う配線同士の配線間隔が1μm以上5μm以下であることを表す。必ずしも配線幅と配線間隔とを等しくしなくてもよい。
【0021】
絶縁層22は、無機絶縁層12の第2面12bに積層されている。絶縁層22は、最下配線層である配線層21を被覆する。絶縁層22は、半導体チップ実装部20における最下絶縁層である。絶縁層22上に、さらに1以上の絶縁層や1以上の配線層が設けられてもよい。絶縁層22の材料は、例えば、フェノール系樹脂やポリイミド系樹脂等の感光性樹脂を主成分とすることができる。絶縁層22の材料は、例えば、エポキシ系樹脂、イミド系樹脂、フェノール系樹脂、シアネート系樹脂等の非感光性樹脂、ならびに、CVD膜(例えば、膜厚0.5μm~5μm)などによる無機材料を主体としてもよい。絶縁層22は、シリカ(SiO)等のフィラーを含有しても構わない。絶縁層22の厚さは、例えば0.5~40μm程度とすることができる。絶縁層22には、絶縁層22を貫通し配線層21の上面を露出するビアホール22xが形成されている。ビアホール22xの径は、例えば、15μm以上20μm以下程度とすることができる。
【0022】
配線層23は、ビアホール22xを充填するビア配線である。配線層23の上面は、絶縁層22の上面から露出する。配線層23の上面は、例えば、絶縁層22の上面と面一とすることができる。配線層23の材料としては、例えば、銅等を用いることができる。
【0023】
半導体チップ24は、例えば、シリコン等からなる薄板化された半導体基板(図示せず)上に半導体集積回路(図示せず)等が形成されたものである。半導体基板(図示せず)の回路形成面には、半導体集積回路(図示せず)と電気的に接続された電極25が形成されている。電極25は、例えば、銅パッドである。
【0024】
半導体チップ24は、半導体チップ実装部20における最上の絶縁層上に配置されている。電極25は、半導体チップ実装部20における最上の配線層と電気的に接続されている。図1の例では、最上の絶縁層は絶縁層22であり、最上の配線層は配線層23である。つまり、図1の例では、半導体チップ24は絶縁層22上に配置され、電極25は絶縁層22から露出する配線層23の上面と接続されている。電極25と配線層23は、例えば、拡散接合等により直接接続してもよいし、はんだバンプ等を介して間接的に接続してもよい。後者の場合、はんだバンプの材料としては、例えばPbを含む合金、SnとCuの合金、SnとAgの合金、SnとAgとCuの合金等を用いることができる。
【0025】
封止樹脂層26は、半導体チップ24の下方に位置する最上の絶縁層上に配置され、半導体チップ24を被覆する。図1の例では、最上の絶縁層は絶縁層22である。封止樹脂層26は、半導体チップ24の裏面(回路形成面とは反対側の面)及び側面を被覆すると共に、半導体チップ24の回路形成面と絶縁層22の上面との間に充填されている。封止樹脂層26の材料としては、例えば、モールド樹脂を用いることができる。なお、モールド樹脂とは、トランスファーモールド法、コンプレッションモールド法、インジェクションモールド法等に使用可能な非感光性の熱硬化性樹脂を主成分とする絶縁性樹脂である。モールド樹脂は、例えば、非感光性で熱硬化性のエポキシ系樹脂等の絶縁性樹脂であり、フィラーを含むものがある。
【0026】
無機絶縁層13は、半導体チップ実装部20の上面及び側面の全体を被覆し、かつ無機絶縁層12と連続する。言い換えれば、無機絶縁層13は、無機絶縁層12の側面、絶縁層22の側面、並びに、封止樹脂層26の上面及び側面を連続的に被覆する。無機絶縁層13の材料は、無機絶縁層12と同様とすることができる。無機絶縁層13は、CVD層とALD層を積層した2層構造であってもよい。あるいは、無機絶縁層13は、CVD層の上下をALD層で挟んだ3層構造であってもよい。
【0027】
[半導体装置の製造方法]
次に、本実施形態に係る半導体装置の製造方法について説明する。図2図5は、本実施形態に係る半導体装置の製造工程を例示する図である。図2図5において、Cは半導体装置を個片化する予定の位置を示している(以降、分離位置Cとする)。なお、本実施の形態では、支持体上に半導体装置となる複数の部分(隣接する分離位置Cに挟まれた部分)を作製した後に個片化して各半導体装置とする工程の例を示すが、支持体上に1個の半導体装置を作製する工程としてもよい。
【0028】
まず、図2(a)に示す工程では、最外層が金属箔である支持体100を準備する。支持体100としては、例えば、基部110上にキャリア付き金属箔120が積層されたものを用いることができる。支持体100の厚さは、例えば9~100μm程度とすることができる。基部110としては、例えば、ガラス、金属、セラミック等を用いることができる。キャリア付き金属箔120は、銅等の金属箔からなる厚さ10~50μm程度の厚箔(キャリア箔)上に、剥離層を介して、銅等の金属箔からなる厚さ1.5~5μm程度の薄箔が剥離可能な状態で貼着されたものである。
【0029】
次に、図2(b)に示す工程では、支持体100のキャリア付き金属箔120の上面全体に、無電解めっき法又はスパッタ法により、シード層130を形成する。シード層130の材料としては、例えば、銅等を用いることができる。シード層130の厚さは、例えば、100~400nm程度とすることができる。
【0030】
次に、図2(c)~図3(a)に示す工程では、支持体100上に金属ポスト11を形成する。まず、図2(c)に示すように、シード層130上にレジスト層300を形成する。レジスト層300は、例えば、感光性樹脂からなるドライフィルムレジストをラミネートすることで形成できる。そして、図2(d)に示すように、レジスト層300を露光及び現像によりパターニングし、金属ポスト11を形成する部分にシード層130の上面を露出する開口部300xを形成する。
【0031】
次に、図2(e)に示すように、シード層130を給電層に利用した電解めっき法により、レジスト層300の開口部300x内に銅等を析出し、開口部300xを充填する金属ポスト11を形成する。なお、この工程では、金属ポスト11の先端側がレジスト層300の上面よりも突出するまで銅等を析出させる。次に、図3(a)に示すように、金属ポスト11のレジスト層300の上面から突出する部分を除去して平坦化する。これにより、支持体100上に、第1端面11a、第2端面11b、及び第1端面11aと第2端面11bとを接続する側面11cを備えた金属ポスト11が、第1端面11aが支持体100側を向くように形成される。平坦化は、例えば、ケミカルエッチング等により行うことができる。
【0032】
次に、図3(b)に示す工程では、まず、図3(b)の上段に示すように、図3(a)に示す構造体を真空チャンバー400内に配置する。次に、図3(b)の中段に示すように、真空チャンバー400内でレジスト層300を除去する。レジスト層300の除去は、例えば、ドライエッチング等により行うことができる。次に、図3(b)の下段に示すように、支持体100上に、金属ポスト11の第2端面11b及び側面11cを被覆する無機絶縁層12を形成する。
【0033】
無機絶縁層12は、例えば、SiO、又はSiOC等を用いてCVD法により形成することができる。無機絶縁層12は、例えば、酸化ハフニウム、酸化チタン、又は酸化ジルコニウム等を用いてALD法により形成してもよい。無機絶縁層12は、CVD層とALD層を積層した2層構造としてもよい。あるいは、無機絶縁層12は、CVD層の上下をALD層で挟んだ3層構造としてもよい。無機絶縁層12がCVD層とALD層の積層構造である場合、ALD層の厚さは例えば1nm~20nm程度とすることができ、それ以外の部分がCVD層となる。
【0034】
このように、図3(b)に示すレジスト層300を除去する工程、及び第2端面11b及び側面11cを被覆する無機絶縁層12を形成する工程は、真空チャンバー400内で一連の工程として実施される。すなわち、無機絶縁層12を形成する直前に真空チャンバー400内でレジスト層300を除去し、レジスト層300を除去した直後に同一の真空チャンバー400内で無機絶縁層12を形成する。これにより、細くて繊細な金属ポスト11に搬送途中でダメージを与えることなく、無機絶縁層12内に容易に金属ポスト11を埋め込むことができる。言い換えれば、このようなプロセスを用いることで、金属ポスト11の微細化が可能となる。
【0035】
なお、金属ポスト11を形成する前に無機絶縁層12を形成し、無機絶縁層12に貫通孔を形成し、貫通孔内にめっき等で金属ポスト11を形成する工程も考えられる。しかし、この場合、貫通孔の側壁と金属ポスト11の側面11cとが密着しないため、信頼性の低下が生じる。図3(b)に示す工程は、金属ポスト11が形成された状態で無機絶縁層12を形成するので、無機絶縁層12に貫通孔等を形成することなく、無機絶縁層12内に容易に金属ポスト11を埋め込むことができる。この場合、金属ポスト11の側面11cと無機絶縁層12との密性及び気密性を確保できる。
【0036】
次に、図3(c)に示す工程は、金属ポスト11の第2端面11bが露出するまで無機絶縁層12の上面を研磨する。これにより、支持体100上に、金属ポスト11の第1端面11aを露出する第1面12a及び第2端面11bを露出する第2面12bを備え、側面11cを被覆する無機絶縁層12が形成される。研磨には、例えば、CMP法(chemical mechanical polishing法)やドライエッチングを用いることができる。無機絶縁層12の第2面12bは、例えば、金属ポスト11の第2端面11bと面一とすることができる。無機絶縁層12の第2面12bの粗度は、例えば、Ra20nm以下程度とすることができる。
【0037】
次に、図4(a)及び図4(b)に示す工程では、下面が無機絶縁層12の第2面12bと接するように、第2面12bに積層された半導体チップ実装部20を形成する。まず、図4(a)に示すように、無機絶縁層12上に配線層21、絶縁層22、及び配線層23を順次形成する。配線層23は、例えば、セミアディティブ法により形成することができる。
【0038】
具体的には、まず、無電解めっき法又はスパッタ法により、無機絶縁層12の第2面12b及び金属ポスト11の第2端面11b上に銅等からなるシード層を形成する。次に、シード層上に配線層21に対応する開口部を備えたレジスト層を形成する。そして、シード層を給電層に利用した電解めっき法により、レジスト層の開口部に銅等からなる電解めっき層を形成する。次に、レジスト層を除去した後、電解めっき層をマスクにして、電解めっき層に覆われていない部分のシード層をエッチングにより除去する。これにより、シード層上に電解めっき層が積層された配線層21が形成される。
【0039】
絶縁層22を形成するには、例えば、液状又はペースト状の感光性の絶縁性樹脂を準備し、配線層21を覆うように無機絶縁層12の第2面12bにスピンコート法等により塗布する。あるいは、フィルム状の感光性の絶縁性樹脂を準備し、配線層21を覆うように無機絶縁層12の第2面12bにラミネートしてもよい。そして、塗布又はラミネートした絶縁性樹脂を加熱して、半硬化状態の絶縁層22を形成する。
【0040】
次に、フォトリソグラフィ法により、絶縁層22を貫通し、配線層21の上面を露出するビアホール22xを形成する。そして、例えば、セミアディティブ法により、ビアホール22xを充填する配線層23を形成する。配線層23は、先端側が絶縁層22の上面よりも突出するように形成してもよい。この場合、CMP等により配線層23の絶縁層22の上面から突出する部分を除去して平坦化する。これにより、絶縁層22の上面と配線層23の上面とは、面一となる。
【0041】
次に、図4(b)に示すように、絶縁層22上に、電極25を備えた半導体チップ24を実装し、さらに半導体チップ24を被覆する封止樹脂層26を形成する。これにより、半導体チップ実装部20が形成される。半導体チップ24は、電極25が配線層23の上面と電気的に接続されるように実装される。封止樹脂層26は、半導体チップ24の裏面及び側面を被覆すると共に、半導体チップ24の回路形成面と絶縁層22の上面との間に充填されるように形成される。封止樹脂層26は、例えば、モールド樹脂を用いたモールド成形法により形成できる。モールド成形法としては、例えば、トランスファーモールド法、コンプレッションモールド法、インジェクションモールド法等が挙げられる。図2(a)から図4(b)までの工程では、支持体100上に、個片化されて半導体装置1となる複数の部分(隣接する破線Cに挟まれた部分)が形成される。
【0042】
次に、図4(c)に示す工程では、図4(b)に示す構造体に、半導体装置1となる複数の部分を分離する溝20xを形成する。溝20xは、ダイサー等により分離位置Cを含むよう形成される。切断は、少なくとも半導体チップ実装部20の側面を露出するように行われる。つまり、溝20xは、少なくとも封止樹脂層26、絶縁層22、及び無機絶縁層12を貫通し、無機絶縁層12の側面、絶縁層22の側面、及び封止樹脂層26の側面を露出する。溝20xの幅は、例えば、200μm~1000μm程度とすることができる。
【0043】
次に、図5(a)に示す工程では、半導体チップ実装部20の上面及び側面の全体を被覆し、かつ無機絶縁層12と連続する無機絶縁層13を形成する。ここでいう半導体チップ実装部20の上面及び側面とは、半導体装置1となる複数の部分の上面及び溝20xの内部に露出する複数の部分の側面である。つまり、無機絶縁層13は、半導体装置1となる各々部分において、絶縁層22の側面、並びに、封止樹脂層26の上面及び側面を連続的に被覆するように形成される。無機絶縁層13は、例えば、無機絶縁層12と同様にCVD法またはALD法により形成することができる。無機絶縁層13の材料は、無機絶縁層12と同様とすることができる。無機絶縁層13は、CVD層とALD層を積層した2層構造としてもよい。あるいは、無機絶縁層13は、CVD層の上下をALD層で挟んだ3層構造としてもよい。
【0044】
次に、図5(b)に示す工程では、図5(a)に示す構造体から支持体100を除去する。例えば、キャリア付き金属箔120が薄箔上に剥離層を介して厚箔が貼着された構造の場合は、支持体100に機械的な力を加え、キャリア付き金属箔120の薄箔と厚箔との界面を剥離する。厚箔は、剥離層とともに薄箔から容易に剥離する。その後、エッチングにより薄箔を除去する。
【0045】
次に、図5(c)に示す工程では、図5(b)に示す構造体からシード層130を除去する。シード層130は、例えば、エッチングにより除去できる。これにより、個片化された複数の半導体装置1が完成する。
【0046】
このように、半導体装置1において、金属ポスト11の第1端面11aを除くすべての部分は無機絶縁層12又は13により被覆されている。これにより、外部接続端子となる第1端面11aを除く半導体装置1の全体に防湿性及びガスバリア性(主に酸素に対するガスバリア性)を付与することができるため、防湿効果の向上及びガスバリア性の向上が可能となる。
【0047】
ここで、無機絶縁層の防湿性について説明する。発明者らは、ALD層、CVD層、及びALD層とCVD層とが積層されたALD/CVD複合層について、層厚と防湿性との関係を調べた。具体的には、ポリイミドフィルム上に上記のいずれかの層を様々な膜厚で形成し、Mocon法により水蒸気透過度を測定した。図6及び表1に無機絶縁層の防湿性の検討結果を示す。
【0048】
なお、図6及び表1において、例えば、ALD-10/10 CVD-0/0は、厚さ10nmのALD層をポリイミドフィルムを挟んで両面に1層ずつ積層し、CVD層を形成しない場合を示す。また、ALD-0/20 CVD-0/0は、厚さ20nmのALD層をポリイミドフィルムの片側の面に1層形成し、CVD層を形成しない場合を示す。また、ALD-0/10 CVD-0/200は、厚さ10nmのALD層(1層)の上に厚さ200nmのCVD層(1層)を重ねた積層構造を示す。他の表記についても、これらに準ずる。
【0049】
【表1】
【0050】
図6及び表1に示すサンプル(1)は、比較例であり、無機絶縁層を形成しない場合、つまりALD層もCVD層も形成しない場合のサンプルである。サンプル(1)の水蒸気透過度は33.2[g/(m・day)]であった。なお、0.1[g/(m・day)]以下の水蒸気透過度は、カテゴリー2と称され、一般電子機器に求められる値である。
【0051】
サンプル(2)~(6)の結果より、ALD層のみを形成した場合にも、無機絶縁層を形成しないサンプル(1)に対して十分な防湿性が得られることがわかる。特に、ALD層1層の層厚が20nm以上100nm以下の場合は、カテゴリー2の要件を満たしている。また、ALD層1層の層厚が50nm以上100nm以下の場合は、ALD層1層の層厚が20nmの場合のさらに半分程度の良好な水蒸気透過度となっている。
【0052】
なお、サンプル(7)の結果より、ALD層1層の層厚が200nmになると層厚が100nmのサンプル(6)よりも水蒸気透過度が悪化することがわかった。これは、ALD層が硬いセラミック膜であるため、クラックが生じたためと考えられる。ただし、サンプル(7)でも、サンプル(1)に対して十分な防湿性が得られている。
【0053】
また、サンプル(8)及び(10)の結果より、CVD層のみを形成した場合にも、無機絶縁層を形成しないサンプル(1)に対して十分な防湿性が得られることがわかる。特に、CVD層1層の層厚が800nmの場合は、カテゴリー2の要件を満たしている。なお、サンプル(4)、(5)、(6)、及び(8)の値は、検出限界値以下であり、実際には、これらのサンプルは図6及び表1で示す値よりもさらに低い水蒸気透過度を示す可能性がある。
【0054】
また、サンプル(9)とサンプル(10)とを比較すると、ALD/CVD複合層を有するサンプル(9)は、CVD層のみを有するサンプル(10)に対して、大幅に水分透過度を低減できていることがわかる。つまり、僅か10nmのALD層を形成することで、200nmのCVD層のみに対して、大幅に水分透過度を低減できる。この理由は、CVD層は、ある程度の多孔質性を有するが、CVD層とALD層との積層構造では、CVD層の有する僅かな隙間(孔)にALD層が入り込むため、水蒸気が透過しにくくなるためと考えられる。
【0055】
複合層において、CVD層とALD層とは、いずれが上層であって水蒸気透過度を低減する効果が得られるが、最表層にALD層が形成されることが好ましい。なぜならば、緻密な膜が最表層にあることで、ポーラスなCVD層への吸水性を軽減することができるためである。
【0056】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 半導体装置
11 金属ポスト
11a 第1端面
11b 第2端面
11c 側面
12,13 無機絶縁層
12a 第1面
12b 第2面
20 半導体チップ実装部
21,23 配線層
22 絶縁層
22x ビアホール
24 半導体チップ
25 電極
26 封止樹脂層
100 支持体
110 基部
120 キャリア付き金属箔
130 シード層
300 レジスト層
300x 開口部
400 真空チャンバー
図1
図2
図3
図4
図5
図6