(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021501
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】酸成分捕捉液の製造装置、製造システム、製造方法および酸成分の回収方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/18 20060101AFI20240208BHJP
B01D 53/14 20060101ALI20240208BHJP
B01D 53/40 20060101ALI20240208BHJP
B01D 53/78 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B01D53/18 ZAB
B01D53/14 210
B01D53/40 220
B01D53/78
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124360
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】全 載完
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA02
4D002AA03
4D002AA08
4D002AA09
4D002AA12
4D002AA19
4D002AA23
4D002AB01
4D002BA02
4D002CA20
4D002DA31
4D002DA32
4D002FA01
4D020AA03
4D020AA04
4D020AA05
4D020AA06
4D020AA07
4D020AA10
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BB04
4D020CB40
4D020CC01
4D020CC21
(57)【要約】
【課題】酸性ガスから酸成分を効率的に捕捉する方法等を実現する。
【解決手段】酸成分捕捉液の製造装置(1)であって、複数の製造ユニットが接続され、2つの連続する製造ユニットをそれぞれ第1製造ユニット(10)および第2製造ユニット(20)とすると、各製造ユニットは、酸性ガスのガス供給ライン(11、21)と、酸成分を捕捉する捕捉液の液供給ライン(12、22)と、酸性ガスと捕捉液とを接触させ酸成分捕捉液を得る接触ライン(14、24)と、酸性ガスと酸成分捕捉液とを分離する分離装置(15、25)とを有し、接触ライン(14)と液供給ライン(22)とが分離装置(15)を介して接続しており、第1製造ユニット(10)から分離された酸成分捕捉液が、捕捉液として液供給ライン(22)に供給される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の製造ユニットが接続されてなる酸成分捕捉液の製造装置であって、
前記複数の製造ユニットのうち、2つの連続する製造ユニットをそれぞれ第1製造ユニットおよび第2製造ユニットとすると、
前記第1製造ユニットおよび前記第2製造ユニットのそれぞれは、
酸性ガスを供給するガス供給ラインと、
前記酸性ガスに含まれる酸成分を捕捉する捕捉剤を含有する捕捉液を供給する液供給ラインと、
前記ガス供給ラインから供給される前記酸性ガスと、前記液供給ラインから供給される前記捕捉液とを流通して接触させ、前記酸成分を含有する酸成分捕捉液を得る接触ラインと、
前記接触ラインを通過した、前記捕捉液と接触後の前記酸性ガスと、前記酸成分捕捉液とを分離する分離装置と、を有し、
前記第1製造ユニットの前記接触ラインと、前記第2製造ユニットの前記液供給ラインとが、前記第1製造ユニットの前記分離装置を介して接続しており、前記第1製造ユニットの前記分離装置により分離された前記酸成分捕捉液が、前記第2製造ユニットにおいて前記捕捉液として前記液供給ラインに供給される、酸成分捕捉液の製造装置。
【請求項2】
前記第1製造ユニットの前記ガス供給ラインから供給される前記酸性ガスである第1酸性ガスと、前記第2製造ユニットの前記ガス供給ラインから供給される前記酸性ガスである第2酸性ガスとは、含有する前記酸成分の濃度が互いに異なる、請求項1に記載の酸成分捕捉液の製造装置。
【請求項3】
前記第2酸性ガスが含有する前記酸成分の濃度は、前記第1酸性ガスが含有する前記酸成分の濃度よりも高い、請求項2に記載の酸成分捕捉液の製造装置。
【請求項4】
前記第2酸性ガスは、前記第1製造ユニットの前記分離装置により分離された前記酸性ガスである、請求項2に記載の酸成分捕捉液の製造装置。
【請求項5】
前記酸成分は二酸化炭素である、請求項1に記載の酸成分捕捉液の製造装置。
【請求項6】
前記捕捉液は、前記捕捉剤として少なくとも一種の有機アミン化合物を含む、請求項1に記載の酸成分捕捉液の製造装置。
【請求項7】
前記接触ラインは、微細流路として構成されている、請求項1に記載の酸成分捕捉液の製造装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか1項に記載の製造装置を複数備える製造システムであって、
複数の前記製造装置は互いに接続しており、そのうち2つの連続する前記製造装置をそれぞれ第1製造装置および第2製造装置とすると、
前記第1製造装置が備える少なくとも何れかの製造ユニットが有する分離装置により酸成分捕捉液と分離された酸性ガスは、前記第2製造装置が備える少なくとも何れかの製造ユニットが有するガス供給ラインに供給される、酸成分捕捉液の製造システム。
【請求項9】
請求項1から7の何れか1項に記載の製造装置により、前記酸成分捕捉液を製造する製造方法であって、
前記第1製造ユニットにおいて、前記捕捉液と前記酸性ガスとを接触して第1酸成分捕捉液を得る第1捕捉工程と、
前記第1酸成分捕捉液と前記酸性ガスとを前記第2製造ユニットに供給し、前記第1酸成分捕捉液と前記酸性ガスとを接触して第2酸成分捕捉液を得る第2捕捉工程と、を含む、酸成分捕捉液の製造方法。
【請求項10】
請求項9に記載の製造方法により製造した前記第2酸成分捕捉液を取得する取得工程と、
前記第2酸成分捕捉液から前記酸成分を分離する回収工程と、を含む、酸成分の回収方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸成分捕捉液の製造装置、製造システム、製造方法および酸成分の回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出が社会問題となっている。そのため、工業的に発生する排ガス等から二酸化炭素を回収する技術が要請されている。
【0003】
例えば特許文献1には、微細流路内で、被吸収ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液の内外に移動させ、処理後ガスと分離した後の吸収液を、再循環ラインを通じて各微細流路の入口に戻す循環工程を備えた成分移動処理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の方法は、再循環により複数段階で、吸収液に二酸化炭素を吸収させる方法である。この場合、二酸化炭素等の酸成分を効率的に捕捉液に捕捉させるには、酸性ガスに含まれる酸成分の濃度と、捕捉液が捕捉済みの酸成分の濃度との組み合わせを、処理段階ごとに最適化することが好ましい。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、処理後ガスと分離後の吸収液について、微細流路の入口まで戻して再循環させる。当該方法では、微細流路の入口に導入される被吸収ガスに含まれる二酸化炭素の濃度を、各段階での吸収液中の二酸化炭素濃度に応じて変更することは困難であるため、吸収効率の最適化が困難である。
【0007】
本発明の一態様は、酸成分の捕捉液を循環させず、酸性ガスから酸成分を効率的に捕捉する方法等を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る製造装置は、複数の製造ユニットが接続されてなる酸成分捕捉液の製造装置であって、前記複数の製造ユニットのうち、2つの連続する製造ユニットをそれぞれ第1製造ユニットおよび第2製造ユニットとすると、前記第1製造ユニットおよび前記第2製造ユニットのそれぞれは、酸性ガスを供給するガス供給ラインと、前記酸性ガスに含まれる酸成分を捕捉する捕捉剤を含有する捕捉液を供給する液供給ラインと、前記ガス供給ラインから供給される前記酸性ガスと、前記液供給ラインから供給される前記捕捉液とを流通して接触させ、前記酸成分を含有する酸成分捕捉液を得る接触ラインと、前記接触ラインを通過した、前記捕捉液と接触後の前記酸性ガスと、前記酸成分捕捉液とを分離する分離装置と、を有し、前記第1製造ユニットの前記接触ラインと、前記第2製造ユニットの前記液供給ラインとが、前記第1製造ユニットの前記分離装置を介して接続しており、前記第1製造ユニットの前記分離装置により分離された前記酸成分捕捉液が、前記第2製造ユニットにおいて前記捕捉液として前記液供給ラインに供給される。
【0009】
本発明の一態様に係る製造システムは、前記の製造装置を複数備える製造システムであって、複数の前記製造装置は互いに接続しており、そのうち2つの連続する前記製造装置をそれぞれ第1製造装置および第2製造装置とすると、前記第1製造装置が備える少なくとも何れかの製造ユニットが有する分離装置により酸成分捕捉液と分離された酸性ガスは、前記第2製造装置が備える少なくとも何れかの製造ユニットが有するガス供給ラインに供給される。
【0010】
本発明の一態様に係る製造方法は、前記の製造装置により、前記酸成分捕捉液を製造する製造方法であって、前記第1製造ユニットにおいて、前記捕捉液と前記酸性ガスとを接触して第1酸成分捕捉液を得る第1捕捉工程と、前記第1酸成分捕捉液と前記酸性ガスとを前記第2製造ユニットに供給し、前記第1酸成分捕捉液と前記酸性ガスとを接触して第2酸成分捕捉液を得る第2捕捉工程と、を含む。
【0011】
本発明の一態様に係る酸成分の回収方法は、前記の製造方法により製造した前記第2酸成分捕捉液を取得する取得工程と、前記第2酸成分捕捉液から前記酸成分を分離する回収工程と、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、酸成分の捕捉液を循環させず、酸性ガスから酸成分を効率的に捕捉する方法等を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態に係る製造装置を示す模式図である。
【
図2】前記製造装置が備える接触ラインを流通するスラグ流を示す模式図である。
【
図3】前記製造装置が備える分離装置を示す模式図である。
【
図4】本発明の一実施形態に係る製造システムを示す模式図である。
【
図5】本発明の一実施例に係る二酸化炭素捕捉量および二酸化炭素捕捉効率を示す図である。
【
図6】比較例に係る二酸化炭素捕捉量と捕捉反応時間との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔製造装置〕
本発明の一実施形態について、以下に説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る製造装置1は、複数の製造ユニットが接続されてなる酸成分捕捉液の製造装置1である。製造装置1は、酸成分を含む酸性ガスと、酸成分を捕捉する捕捉剤を含む捕捉液とを接触させ、捕捉液に酸成分を捕捉することで、酸性ガスから酸成分を分離する。
【0015】
(酸成分)
酸成分としては、例えば、二酸化炭素、一酸化炭素、一酸化二窒素、塩化水素、硫化水素、硫黄酸化物(SOx)およびフッ化水素が挙げられる。中でも二酸化炭素は、工業的な排出量が多く、温室効果ガスとして社会的に問題となっていることから、排ガス等からの分離方法について社会的な要請が大きいため、酸性ガスに含まれる酸成分として好適である。酸成分を含む酸性ガスは、このような酸成分を含むガスであれば特に限定されない。
【0016】
(捕捉液)
捕捉液に含まれる捕捉剤は、酸成分を捕捉液中に捕捉する機能を有する成分である。捕捉剤としては、例えば、有機アミン化合物および酸成分の吸着剤が挙げられる。有機アミン化合物としては、例えば、第1級アミン、第2級アミンおよび第3級アミンが挙げられる。
【0017】
第1級アミンの例として、2-メチルピペリジン等の複素環を有する第1級アミン;モノメタノールアミン、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、および、モノブタノールアミン等の第1級アルカノールアミンが挙げられる。
【0018】
第2級アミンの例として、2-メチルアミノエタノール、2-エチルアミノエタノール、2-イソプロピルアミノエタノール、2-n-ブチルアミノエタノール等の第2級アルカノールアミン;ピペラジン、2-メチルピペラジン、2,5-ジメチルピペラジン、および、2-ピペリジノエタノール等の複素環を有する第2級アミンが挙げられる。
【0019】
第3級アミンの例として、メチルジエタノールアミン、ジエチルアミノプロパノール、ジエチルアミノエタノール、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノメチルプロパノール、N-エチル-N-メチルエタノールアミン、3-(ジメチルアミノ)プロパノール、4-(ジメチルアミノ)ブタノール、4-(ジエチルアミノ)ブタノール、2-(2-ジエチルアミノエトキシ)エタノール、および、2-(2-ジメチルアミノエトキシ)エタノール等の第3級アルカノールアミン;1-メチル-2-ピペリジンメタノール、1-エチル-3-ピペリジンメタノール、1-(2-ヒドロキシエチル)ピペリジン等の複素環を有する第3級アミンが挙げられる。
【0020】
酸成分の吸着剤としては、例えば、ゼオライト等の無機多孔質剤、金属有機構造体(MOF;Metal Organic Framework)および共有結合性有機構造体(COF;Covalent Organic Framework)が挙げられる。
【0021】
捕捉液は、このような捕捉剤の溶液または分散液であってよい。捕捉液に含まれる捕捉剤は、2種以上の有機アミン化合物を含んでいてもよく、2種以上の酸成分の吸着剤を含んでいてもよい。また、捕捉剤は、有機アミン化合物および酸成分の吸着剤の両方を含んでいてもよい。捕捉液において、捕捉剤を溶解または分散する溶媒としては、例えば、水であってもよく、水とエーテル系有機溶媒との混合溶媒であってもよい。エーテル系有機溶媒としては、例えば、2-プロパノール、ビス(2-エトキシエチル)エーテルジエチルカルビトール、ビス[2-(2-メトキシエトキシ)エチル]エーテルが挙げられる。
【0022】
捕捉液における捕捉剤の濃度は特に限定されない。例えば、捕捉剤が有機アミン化合物等の溶液である場合、酸成分の吸収量、吸収速度、脱離量および脱離速度等の観点から、捕捉液における捕捉剤の濃度は10質量%以上が好ましい。一方、捕捉剤の溶解性および捕捉液の粘度等の観点から、捕捉剤の濃度は70質量%以下が好ましい。
【0023】
本実施形態では、酸成分を捕捉した捕捉液を、酸成分捕捉液と称する場合がある。酸成分捕捉液は、捕捉限界まで酸成分を捕捉した状態の捕捉液であることを要さず、少しでも酸成分を捕捉している捕捉液であれば、酸成分捕捉液と称してよい。すなわち、製造装置1により得られる酸成分捕捉液は、酸成分をさらに捕捉するための捕捉液として再利用可能であってよい。
【0024】
(製造ユニット)
製造装置1は、複数の製造ユニットを備えている。
図1には、製造装置1が、第1製造ユニット10、第2製造ユニット20および第3製造ユニット30の3つの製造ユニットを備える例を示している。しかし、製造装置1が備える製造ユニットは複数であればよく、その数は特に限定されない。
【0025】
また、製造装置1が備える複数の製造ユニットについて、2つの連続する製造ユニットをそれぞれ第1製造ユニットおよび第2製造ユニットとして定義できる。本実施形態では便宜上、3つの製造ユニットをそれぞれ第1製造ユニット10、第2製造ユニット20および第3製造ユニット30として示している。しかし、酸性ガスおよび捕捉液が最初に供給される製造ユニットが第1製造ユニットであることは要さず、任意の2つの連続する製造ユニットの一方を第1製造ユニットとしてよい。
【0026】
第1製造ユニット10は、第1ガス供給ライン11と、第1液供給ライン12と、第1合流部13と、第1接触ライン14と、第1分離装置15とを有している。同様に、第2製造ユニット20は、第2ガス供給ライン21と、第2液供給ライン22と、第2合流部23と、第2接触ライン24と、第2分離装置25とを有している。また、第3製造ユニット30は、第3ガス供給ライン31と、第3液供給ライン32と、第3合流部33と、第3接触ライン34と、第3分離装置35とを有している。
【0027】
第2製造ユニット20および第3製造ユニット30の構成は、特記しない限り第1製造ユニット10の構成と同様である。すなわち、各製造ユニットが有するガス供給ライン、液供給ライン、合流部、接触ラインおよび分離装置はそれぞれ、何れの製造ユニットでも同様の構成を有する部材である。そのため、以下には第1製造ユニット10の構成を中心に説明し、第2製造ユニット20および第3製造ユニット30については主に、第1製造ユニット10と異なる点について説明する。
【0028】
また、本実施形態において、第1製造ユニット10に供給される各流体について、酸性ガスを第1酸性ガス、捕捉液を第1捕捉液、酸成分捕捉液を第1酸成分捕捉液と称する場合がある。また、第2製造ユニット20に供給される各流体について、酸性ガスを第2酸性ガス、捕捉液を第2捕捉液、酸成分捕捉液を第2酸成分捕捉液と称する場合がある。また、第3製造ユニット30に供給される各流体について、酸性ガスを第3酸性ガス、捕捉液を第3捕捉液、酸成分捕捉液を第3酸成分捕捉液と称する場合がある。
【0029】
第1ガス供給ライン11は、酸性ガスを供給するガス流通路である。製造装置1では、製造装置1に供給される酸性ガスは、第1ガス供給ライン11、第2ガス供給ライン21および第3ガス供給ライン31に分割して供給される。
【0030】
第1液供給ライン12は、捕捉液を供給する液体流通路である。第1液供給ライン12には、酸成分を未捕捉の捕捉液が供給されてもよい。第1液供給ライン12を流通した第1捕捉液は、第1ガス供給ライン11を流通した第1酸性ガスと、第1合流部13において合流する。第1合流部13は、第1ガス供給ライン11と第1液供給ライン12とが合流する構成であればよい。
【0031】
第1接触ライン14は、第1ガス供給ライン11から供給される第1酸性ガスと、第1液供給ライン12から供給される第1捕捉液とを流通して接触させる流通路である。第1接触ライン14は、第1ガス供給ライン11および第1液供給ライン12の下流において、第1合流部13を介してこれらのラインと接続している。第1接触ライン14における第1酸性ガスと第1捕捉液との接触により、第1捕捉液が第1酸性ガスに含まれる酸成分を捕捉して、第1酸成分捕捉液が得られる。
【0032】
第1酸成分捕捉液中での酸成分の捕捉態様は、第1捕捉液中に溶解する有機アミン化合物等の捕捉剤と結合して液中に吸収される態様であってもよく、第1捕捉液中に分散する無機多孔質材等の捕捉剤に吸着する態様であってもよい。
【0033】
第1接触ライン14は、微細流路として構成されていることが好ましい。第1接触ライン14において、第1酸性ガスは第1捕捉液中に分散した気泡として存在してよい。第1酸性ガスの気泡と第1捕捉液との接触面積が大きいほど、第1酸性ガス中の酸成分が第1捕捉液に捕捉されやすくなり、酸成分の捕捉効率が向上する。ここで、第1接触ライン14が微細流路として構成されていれば、
図2に示すように、第1酸性ガスの気泡と第1捕捉液とが、交互に存在するいわゆるスラグ液の状態となりやすい。そのため、第1酸性ガスに含まれる酸成分と第1捕捉液との接触面積が最大化しやすくなり、効率よく酸成分を第1捕捉液に捕捉可能となる。
【0034】
第1接触ライン14を微細流路として構成するために、例えば、第1接触ライン14の内径は1.5mm以上4.5mm以下とすればよく、1.8mm以上3.5mm以下とすることが好ましく、2mm以上2.5mm以下とすることがより好ましい。第1接触ライン14がこのような内径を有する微細流路として構成されていれば、第1接触ライン14において効率よく酸成分を第1捕捉液に捕捉できる。
【0035】
第1分離装置15は、第1接触ライン14を通過した、第1捕捉液と接触後の第1酸性ガスと、第1酸成分捕捉液とを分離する部材である。
図3に、第1分離装置15の構成の一例を示す。第1分離装置15には、第1接触ライン14から第1酸成分捕捉液と第1酸性ガスとが流入する。第1分離装置15が有する容器中で、第1酸成分捕捉液と第1酸性ガスとの比重の差により第1酸性ガスが気層に移行することで、第1酸性ガスが第1酸成分捕捉液から分離される。
【0036】
なお、第1分離装置15は、第1酸成分捕捉液と第1酸性ガスとを分離可能な構成であれば特に限定されず、一般的な液体と気体との分離装置であってよい。第1分離装置15から分離された第1酸性ガスは、第1製造ユニット10に供給される前の第1酸性ガスよりも酸成分の濃度が低下した酸性ガスであり、オフガスと称する場合がある。本明細書では便宜上、第1製造ユニット10により、第1酸性ガスから酸成分が完全に除去された状態のオフガスも、「分離装置から分離された酸性ガス」の一態様に含まれるものとして説明する。
【0037】
第1分離装置15は、第2液供給ライン22と接続している。言い換えれば、第1接触ライン14と第2液供給ライン22とが、第1分離装置15を介して接続している。また、第1分離装置15により第1酸性ガスと分離された第1酸成分捕捉液は、第2製造ユニット20においては酸成分を捕捉するための第2捕捉液として第2液供給ライン22に供給される。
【0038】
第2ガス供給ライン21には、第1ガス供給ライン11に供給された第1酸性ガスと同じ酸成分の濃度を有する酸性ガスが、第2酸性ガスとして供給される。そして、第2製造ユニット20は、第1製造ユニット10と同様に、第2接触ライン24において第2酸性ガスと第2捕捉液とを接触させて第2酸成分捕捉液を取得し、第2分離装置25により第2捕捉液と接触後の第2酸性ガスと第2酸成分捕捉液とを分離する。
【0039】
このような構成によれば、第1製造ユニット10において供給される第1捕捉液が、第2製造ユニット20まで直列に流通して供給される。これにより、製造装置1は、捕捉液を循環させずとも複数段階で酸性ガスを捕捉液と接触でき、酸性ガス中の酸成分を効率よく捕捉することができる。
【0040】
また、第2分離装置25は、第3液供給ライン32と接続している。第2分離装置25により第2酸性ガスと分離された第2酸成分捕捉液は、第3製造ユニット30においては酸成分を捕捉するための第3捕捉液として、第3液供給ライン32に供給される。
【0041】
第3ガス供給ライン31には、第1酸性ガスおよび第2酸性ガスと同じ酸成分の濃度を有する酸性ガスが、第3酸性ガスとして供給される。そして、第3製造ユニット30は、第1製造ユニット10および第2製造ユニット20と同様に、第3接触ライン34において第3酸性ガスと第3捕捉液とを接触させて第3酸成分捕捉液を取得する。続けて第3製造ユニット30は、第3分離装置35により第3捕捉液と接触後の第3酸性ガスと第3酸成分捕捉液とを分離する。
【0042】
このように、製造装置1は3つ以上の製造ユニットを有していることが好ましい。製造ユニットの数が増加するほど、製造装置1に供給される捕捉液における単位体積あたりの酸成分の捕捉量が向上する。そのため、少ない量の捕捉液により効率的に酸性ガスから酸成分を捕捉できる。また、製造装置1では酸性ガスを分割して各製造ユニットにそれぞれ供給する。そのため、製造装置1に多量の酸性ガスが供給された場合に、製造ユニットの数が増加するほど短時間で酸成分の捕捉を行うことができる。
【0043】
また、第1ガス供給ライン11から供給される酸性ガスである第1酸性ガスと、第2ガス供給ライン21から供給される酸性ガスである第2酸性ガスとは、含有する酸成分の濃度が互いに異なっていてもよい。第3酸性ガスについても同様に、第1酸性ガスおよび第2酸性ガスとは、含有する酸成分の濃度が互いに異なっていてもよい。言い換えれば、製造装置1に供給される酸性ガスは、製造ユニットごとに異なる濃度の酸成分を含むものであってもよい。
【0044】
例えば、製造装置1に供給された酸性ガスが分割されて各製造ユニットのガス供給ラインに供給されるのではなく、各ガス供給ラインにそれぞれ異なる酸性ガスが供給されてもよい。このように、製造装置1は、製造ユニットごとに独立したガス供給ラインを備えており、ガス供給ラインごとに独立して酸性ガスを供給可能に構成されていてもよい。
【0045】
このような構成によれば、各製造ユニットに供給する酸性ガスの酸成分濃度を、製造ユニットごとに調整できる。そのため、各製造ユニットに供給する酸性ガスの酸成分濃度について、製造装置1全体として効率的な酸成分の捕捉ができるよう、最適化が可能となる。
【0046】
例えば、第2酸性ガスが含有する酸成分の濃度は、第1酸性ガスが含有する酸成分の濃度よりも高くてもよい。また、第3酸性ガスが含有する酸成分の濃度についても、第2酸性ガスが含有する酸成分の濃度より高くてもよい。このような構成によれば、製造装置1の下流に位置する製造ユニットに供給される酸性ガスほど、酸成分の濃度が高くなる。これにより、第1製造ユニット10では、酸成分濃度が低い第1酸性ガスからは確実に酸成分を捕捉できる。一方、後段の第2製造ユニット20および第3製造ユニット30においては、捕捉液が捕捉可能な上限濃度近くまで酸成分を捕捉させることができる。これにより、製造装置1全体としての酸成分の捕捉効率を高めることができる。
【0047】
また、第1製造ユニット10の第1分離装置15により分離された第1酸性ガスが、第2製造ユニット20において第2酸性ガスとして供給されてもよい。この場合、第2ガス供給ライン21は、第1分離装置15と接続していてもよい。このような構成によれば、第1製造ユニット10から排出されるオフガスから、さらに第2製造ユニット20でも酸成分を捕捉できる。そのため、酸性ガスから高効率で酸成分を捕捉できる。
【0048】
上述の通り、本実施形態に係る製造装置1によれば、酸性ガスに含まれる酸成分を効率的に捕捉液中に捕捉できる。酸性ガスに含まれる酸成分は、二酸化炭素等の温室効果ガスまたは塩化水素等の腐食性を有する成分を包含する。製造装置1は、このような酸成分を酸性ガスから効率的に捕捉することで、大気中等に排出される温室効果ガスまたは有害ガスを低減できる。このような効果は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標12.4の「化学物質の大気への放出削減」および目標13.3の「気候変動の緩和」等の達成にも貢献するものである。
【0049】
〔製造システム〕
本発明の一実施形態に係る製造装置1を複数備える製造システム100についても、本発明の一態様に含まれる。
図4に示す通り、本実施形態に係る製造システム100は、複数(n個)の製造装置1が互いに接続している。
【0050】
製造システム100が備える複数の製造装置1について、2つの連続する製造装置1をそれぞれ第1製造装置および第2製造装置として定義できる。本実施形態では便宜上、各製造装置1についてそれぞれ第1製造装置1-i、第2製造装置1-ii、第3製造装置1-iiiとして示し、n番目の製造装置1を第n製造装置1-nとして示している。しかし、製造システム100において最初に酸性ガスが供給される製造装置1が第1製造装置であることは要さず、任意の2つの連続する製造装置1の一方を第1製造装置としてよい。
【0051】
図4では、各製造装置1に供給される捕捉液をそれぞれ捕捉液i、捕捉液ii、捕捉液iiiおよび捕捉液nとして示している。また、各製造装置1から得られる酸成分捕捉液をそれぞれ酸成分捕捉液i、酸成分捕捉液ii、酸成分捕捉液iiiおよび酸成分捕捉液nとして示している。また、各製造装置1から分離されるオフガスをそれぞれオフガスi、オフガスii、オフガスiiiおよびオフガスnとして示している。
【0052】
第1製造装置1-iには、酸成分の捕捉が行われる前の、未処理の排ガス等の酸性ガスが供給される。酸性ガスは、第1製造装置1-iの各製造ユニットに供給され、酸成分捕捉液iが得られると共に、各製造ユニットからオフガスiが排出される。
【0053】
第1製造装置1-iから排出されたオフガスiは、続いて第2製造装置1-iiの各製造ユニットに、酸性ガスとして供給される。このとき、第1製造装置1-iが備える少なくとも何れかの製造ユニットが有する分離装置により酸成分捕捉液と分離された酸性ガスは、第2製造装置1-iiが備える何れかの製造ユニットが有するガス供給ラインに供給されてよい。
【0054】
例えば、第1製造装置1-iの最上流の製造ユニットから排出されたオフガスiは、第2製造装置1-iiの最下流の製造ユニットに供給されてもよい。また、第1製造装置1-iの最下流の製造ユニットから排出されたオフガスiは、第2製造装置1-iiの最上流の製造ユニットに供給されてもよい。このような構成によれば、製造システム100が有する1つの製造装置1の各製造ユニットから排出されたオフガスについて、他の製造装置1の各製造ユニットに酸性ガスとして供給できる。
【0055】
第2製造装置1-ii以降の製造装置1においても同様に、1つ前の製造装置1から排出されたオフガスが、次の製造装置1に酸性ガスとして供給される。このようにして、各製造装置1が、それぞれ酸性ガスから酸成分を捕捉して酸成分捕捉液の取得を繰り返すことで、酸性ガス中の酸成分の濃度は段階的に低減していく。また、各製造装置1にはそれぞれ、酸成分を未捕捉の捕捉液が供給されてもよい。このような構成によれば、製造システム100は、酸性ガス中の酸成分を効率的に捕捉できる。製造システム100が多数の製造装置1を備えていれば、酸性ガスから酸成分を完全に除去することも可能である。
【0056】
〔製造方法〕
本発明の一実施形態に係る製造装置1により酸成分捕捉液を製造する製造方法についても、本発明の一態様に含まれる。本実施形態に係る製造方法は、第1捕捉工程と、第2捕捉工程とを含む。
【0057】
第1捕捉工程は、第1製造ユニット10において、第1捕捉液と第1酸性ガスとを接触して第1酸成分捕捉液を得る工程である。また、第2捕捉工程は、第1酸成分捕捉液と第2酸性ガスとを第2製造ユニット20に供給し、第1酸成分捕捉液と第2酸性ガスとを接触して第2酸成分捕捉液を得る工程である。
【0058】
なお、本実施形態に係る製造方法では、上述したとおり、製造装置1における任意の2つの連続する製造ユニットの一方を第1製造ユニットとすればよく、第1捕捉工程は、当該任意の第1製造ユニットにおいて第1酸成分捕捉液を得る工程である。そのため、第2捕捉工程において得られる第2酸成分捕捉液は、製造装置1において最上流から2番目の製造ユニットから得られる酸成分捕捉液に限定されない。製造装置1において、最上流から2番目以降の少なくとも何れかの製造ユニットから得られる酸成分捕捉液は、本実施形態に係る製造方法において得られる第2酸成分捕捉液といえる。
【0059】
本実施形態に係る製造方法の具体的な例については、「製造装置」の項目にて説明した通りであるため、ここでは説明を省略する。
【0060】
〔回収方法〕
また、本発明の一実施形態に係る製造方法により製造した第2酸成分捕捉液を取得する取得工程と、得られた第2酸成分捕捉液から酸成分を分離する回収工程とを含む酸成分の回収方法についても、本発明の一態様に含まれる。
【0061】
取得工程の実施方法は、一般的な方法により行われてよい。取得工程は、例えば、第2分離装置25から分離された第2酸成分捕捉液を直接汲み取る工程であってもよく、第2酸成分捕捉液を、液体流通路等を通して取得する工程であってもよい。
【0062】
回収工程の実施方法についても、一般的な方法により行われてよく、例えば、第2酸成分捕捉液を加熱して捕捉剤と酸成分との結合を外す工程であってもよい。
【0063】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る製造装置は、複数の製造ユニットが接続されてなる酸成分捕捉液の製造装置であって、前記複数の製造ユニットのうち、2つの連続する製造ユニットをそれぞれ第1製造ユニットおよび第2製造ユニットとすると、前記第1製造ユニットおよび前記第2製造ユニットのそれぞれは、酸性ガスを供給するガス供給ラインと、前記酸性ガスに含まれる酸成分を捕捉する捕捉剤を含有する捕捉液を供給する液供給ラインと、前記ガス供給ラインから供給される前記酸性ガスと、前記液供給ラインから供給される前記捕捉液とを流通して接触させ、前記酸成分を含有する酸成分捕捉液を得る接触ラインと、前記接触ラインを通過した、前記捕捉液と接触後の前記酸性ガスと、前記酸成分捕捉液とを分離する分離装置と、を有し、前記第1製造ユニットの前記接触ラインと、前記第2製造ユニットの前記液供給ラインとが、前記第1製造ユニットの前記分離装置を介して接続しており、前記第1製造ユニットの前記分離装置により分離された前記酸成分捕捉液が、前記第2製造ユニットにおいて前記捕捉液として前記液供給ラインに供給される。
【0064】
本発明の態様2に係る製造装置は、前記態様1において、前記第1製造ユニットの前記ガス供給ラインから供給される前記酸性ガスである第1酸性ガスと、前記第2製造ユニットの前記ガス供給ラインから供給される前記酸性ガスである第2酸性ガスとは、含有する前記酸成分の濃度が互いに異なっていてもよい。
【0065】
本発明の態様3に係る製造装置は、前記態様2において、前記第2酸性ガスが含有する前記酸成分の濃度は、前記第1酸性ガスが含有する前記酸成分の濃度よりも高くてもよい。
【0066】
本発明の態様4に係る製造装置は、前記態様2または3において、前記第2酸性ガスは、前記第1製造ユニットの前記分離装置により分離された前記酸性ガスであってもよい。
【0067】
本発明の態様5に係る製造装置は、前記態様1から4の何れかにおいて、前記酸成分は二酸化炭素であってもよい。
【0068】
本発明の態様6に係る製造装置は、前記態様1から5の何れかにおいて、前記捕捉液は、前記捕捉剤として少なくとも一種の有機アミン化合物を含んでいてもよい。
【0069】
本発明の態様7に係る製造装置は、前記態様1か6の何れかにおいて、前記接触ラインは、微細流路として構成されていてもよい。
【0070】
本発明の態様8に係る製造システムは、前記態様1から7の何れかに記載の製造装置を複数備える製造システムであって、複数の前記製造装置は互いに接続しており、そのうち2つの連続する前記製造装置をそれぞれ第1製造装置および第2製造装置とすると、前記第1製造装置が備える少なくとも何れかの製造ユニットが有する分離装置により酸成分捕捉液と分離された酸性ガスは、前記第2製造装置が備える少なくとも何れかの製造ユニットが有するガス供給ラインに供給される。
【0071】
本発明の態様9に係る製造方法は、前記態様1から7の何れかに記載の製造装置により、前記酸成分捕捉液を製造する製造方法であって、前記第1製造ユニットにおいて、前記捕捉液と前記酸性ガスとを接触して第1酸成分捕捉液を得る第1捕捉工程と、前記第1酸成分捕捉液と前記酸性ガスとを前記第2製造ユニットに供給し、前記第1酸成分捕捉液と前記酸性ガスとを接触して第2酸成分捕捉液を得る第2捕捉工程と、を含む。
【0072】
本発明の態様10に係る酸成分の回収方法は、前記態様9に記載の製造方法により製造した前記第2酸成分捕捉液を取得する取得工程と、前記第2酸成分捕捉液から前記酸成分を分離する回収工程と、を含む。
【実施例0073】
本発明の一実施例について、以下に説明する。本発明の実施例としては、製造装置1を用いて二酸化炭素を含む酸性ガス中の二酸化炭素を捕捉し、捕捉量を検討した。比較例としては、単一の製造ユニットを有する酸成分捕捉液の製造装置を用いて、二酸化炭素を含む酸性ガス中の二酸化炭素を捕捉し、捕捉量を検討した。
【0074】
(実験条件)
二酸化炭素を含む酸性ガスとしては、流速100cc/minで供給される窒素ガスと、流速20cc/minで供給される二酸化炭素ガスとを混合した混合ガス(二酸化炭素16.7体積%)を用いた。実施例において、製造装置1が備える3つの製造ユニットには何れも、同じ濃度の二酸化炭素を含有する前記の混合ガスを酸性ガスとして供給した。
【0075】
捕捉液としては、モノエタノールアミン(MEA)を捕捉剤として含む、30質量%モノエタノールアミン水溶液を用いた。また、製造装置1または比較例に係る製造装置が備える接触ラインは何れも、1/8インチ管(内径2.17mm、外径3.17mm)により構成される微細流路を用いた。
【0076】
実施例および比較例におけるその他の実験条件および二酸化炭素の捕捉効率(%)の結果について、下記表1に示す。下記表1において、「接触ライン通過時間」は、酸性ガスと捕捉液との混合流体が接触ラインの入口から出口まで通過するのに要する時間(捕捉反応時間)を示す。また、「総接触時間」は、製造装置1または比較例に係る製造装置に供給される全ての酸性ガスおよび捕捉液が、混合流体として接触ラインを流通したトータルの時間を示す。
【0077】
また、二酸化炭素の捕捉効率は、酸性ガス中の二酸化炭素量(体積%)について、接触ラインへの供給後に減少した割合を示す。実施例については、第1製造ユニット10単独での捕捉効率を「第1」、第2製造ユニット20単独での捕捉効率を「第2」、第3製造ユニット30単独での捕捉効率を「第3」としてそれぞれ示した。
【0078】
【0079】
実施例では、3つの製造ユニットを備える製造装置1を用いたため、酸性ガスと捕捉液との混合流体は、各製造ユニットの接触ラインをそれぞれ流通する。例えば、前記混合流体は、3つの接触ラインをそれぞれ4秒かけて流通するため、前記表1では、「4sec(×3)」と記載している。捕捉液供給量、二酸化炭素供給量および総接触時間についても同様である。
【0080】
比較例では、接触ラインの長さまたは接触ライン内の圧力を変更して、各条件における二酸化炭素の捕捉量を検討した。接触ライン内の圧力は、接触ラインに一般的な背圧弁を設けることにより調整した。接触ライン内の圧力を高めることで、捕捉液中における酸性ガスの気泡の体積が低減し、捕捉液と酸性ガスの気泡との接触面積が増加する。また、酸性ガスの気泡について、体積あたりの酸成分の濃度(モル数)が上昇し、捕捉液と酸性ガスの気泡との接触時間も長くなる。これにより、捕捉液への二酸化炭素の捕捉効率上昇が得られると考えられる。
【0081】
(実験結果)
図5に、実施例における捕捉液中の二酸化炭素含有量α(mol CO
2/mol MEA)および各製造ユニットでの二酸化炭素の捕捉効率(%)を示した。
図5において、各製造ユニットに供給される捕捉液のαの値から、第1製造ユニット10の結果は「CO2 lean-MEA」として示している。これは、第1製造ユニット10には二酸化炭素を未捕捉(α=0)の捕捉液が供給されるためである。また、第2製造ユニット20の結果は「CO2 rich-MEA[α=0.22]」、第3製造ユニット30の結果は「CO2 rich-MEA[α=0.41]」として示している。
【0082】
実施例では、最終的な酸成分捕捉液のαが0.46となった。これは、捕捉液の二酸化炭素捕捉キャパシティの上限値に対して、約87%に相当する二酸化炭素が捕捉されたことを示す。実施例における捕捉反応時間は実質12秒(4秒×3)であり、極めて高い時間効率により二酸化炭素を捕捉可能なことが示された。
【0083】
次に、
図6に、各比較例の結果について、捕捉液中の二酸化炭素含有量α(mol CO
2/mol MEA)と、前記混合流体の接触ラインの通過時間との関係を示した。
図6には、比較例に係る捕捉液のαの上限値であるα=0.0300と、バッチ吸収(捕捉液中に単に酸性ガスを吹き込む)により二酸化炭素を捕捉した捕捉液のα=0.0188の値を、それぞれ参考値として示している。なお、捕捉液のαの上限値は、実験装置の条件等により変化し得ることから、実施例と比較例とでは捕捉液のαの上限値は異なる。実施例および比較例に示すように、実験条件ごとにαの上限値を取得し、当該上限値に対してそれぞれの実験により得られた値を比較すればよい。
【0084】
各比較例の結果から、接触ラインにおける捕捉反応時間(Residence time in the micro-channel)を長くすることで、αの値が向上することが示された。最も捕捉反応時間が長い、接触ラインの長さを50mとし接触ラインの圧力を0.2MPaとした条件において、最も高いαの値が得られた。当該条件のα=0.0258は、捕捉液の二酸化炭素捕捉キャパシティの上限値に対して、約86%に相当する二酸化炭素が捕捉されたことを示す値である。しかし、この条件は200秒以上の捕捉反応時間を要するものであった。また、捕捉反応時間が長くなるほど二酸化炭素捕捉量の上昇効率は低下し、捕捉反応時間が約50秒を超えた時点から二酸化炭素捕捉量の上昇はほとんど見られなくなっていた。
【0085】
以上の結果から、本発明の一実施形態に係る製造装置1を用いることで、従来法よりも極めて高い時間効率により、酸性ガスから二酸化炭素等の酸成分を捕捉可能であることが示された。
【0086】
〔付記事項〕
本発明は上述した各実施形態および各実施例に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。異なる実施形態または実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。