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特開2024-21511接合シリコンウェーハ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021511
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】接合シリコンウェーハ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/02 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
H01L21/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124375
(22)【出願日】2022-08-03
(71)【出願人】
【識別番号】302006854
【氏名又は名称】株式会社SUMCO
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100179903
【弁理士】
【氏名又は名称】福井 敏夫
(72)【発明者】
【氏名】古賀 祥泰
(57)【要約】
【課題】厚みが薄く、かつ、赤外線反射率が高い接合シリコンウェーハ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】支持基板用シリコンウェーハと、前記支持基板用シリコンウェーハ上の単結晶シリコン層と、前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層との間に設けられた、赤外反射シリコン膜を有する接合シリコンウェーハであって、前記赤外反射シリコン膜はアモルファスシリコンを含み、前記赤外反射シリコン膜の厚みが16nm以上である、接合シリコンウェーハ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持基板用シリコンウェーハと、
前記支持基板用シリコンウェーハ上の単結晶シリコン層と、
前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層との間に設けられた、赤外反射シリコン膜を有する接合シリコンウェーハであって、
前記赤外反射シリコン膜はアモルファスシリコンを含み、
前記赤外反射シリコン膜の厚みが16nm以上である、接合シリコンウェーハ。
【請求項2】
前記赤外反射シリコン膜は、アモルファスシリコンからなる請求項1に記載の接合シリコンウェーハ。
【請求項3】
前記赤外反射シリコン膜は、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる請求項1に記載の接合シリコンウェーハ。
【請求項4】
前記赤外反射シリコン膜の厚みが25nm以上である、請求項1~3に記載の接合シリコンウェーハ。
【請求項5】
前記単結晶シリコン層の厚みが3μm以上30μm以下である、請求項1~3に記載の接合シリコンウェーハ。
【請求項6】
請求項2に記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、前記支持基板用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上のアモルファスシリコン成膜層を形成するアモルファスシリコン成膜層形成工程と、
前記アモルファスシリコン成膜層の表面と単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、
前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、
を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【請求項7】
請求項2に記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上のアモルファスシリコン成膜層を形成するアモルファスシリコン成膜層形成工程と、
前記アモルファスシリコン成膜層の表面と前記支持基板用シリコンウェーハの表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、
前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、
を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【請求項8】
請求項2に記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、前記支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハの各表面上に合計の厚さが16nm以上となるアモルファスシリコン成膜層を形成するアモルファスシリコン成膜層形成工程と、
前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハ表面上の各アモルファスシリコン成膜層の表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、
前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、
を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【請求項9】
請求項3に記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、前記支持基板用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上の多結晶シリコン成膜層を形成する多結晶シリコン成膜層形成工程と、
前記多結晶シリコン成膜層の表面と単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、
前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、
を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【請求項10】
請求項3に記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上の多結晶シリコン成膜層を形成する多結晶シリコン成膜層形成工程と、
前記多結晶シリコン成膜層の表面と前記支持基板用シリコンウェーハの表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、
前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、
を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【請求項11】
請求項3に記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、前記支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハの各表面上に合計の厚さが16nm以上の多結晶シリコン成膜層を形成する多結晶シリコン成膜層形成工程と、
前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハ表面上の各多結晶シリコン成膜層の表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、
前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、
を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合シリコンウェーハ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
接合シリコンウェーハとして、常温接合装置を使ったMEMSデバイスや半導体デバイスが知られている(例えば特許文献1を参照)。一方、近年、監視用カメラや自動車の衝突防止センサ等の分野において高感度の赤外光受光センサが必要とされており、従来可視光の領域のセンサとして用いられているシリコンウェーハを利用する取り組みが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-72249号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
単結晶シリコン及び酸化シリコンはいずれも赤外光に対して反射率が低く比較的透明である。そのため、赤外光受光センサの赤外反射層として単結晶シリコン又は酸化シリコンを用いようとすると、その赤外反射層は100μm程の厚みを要してしまう。赤外反射層の厚みを薄くすることができれば、赤外光受光センサを小型化することができる。そこで本発明は、厚みが薄く、かつ、赤外線反射率が高い接合シリコンウェーハ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討し、シリコンウェーハ系デバイスにおける赤外反射シリコン膜として一般的に用いられてきた酸化シリコンに替えて、アモルファスシリコンを用いることを検討した。アモルファスシリコンは酸化シリコンよりも赤外線反射率が高く、また、常温接合技術を用いた場合に形成されるため、製法プロセス上の優位性があることを期待した。しかしながら、通常の常温接合技術で形成されるアモルファスシリコン膜では、その厚みが薄く十分に赤外線を反射することができなかった。本発明者はアモルファスシリコンの利用をさらに鋭意検討し、アモルファスシリコン層の厚みを制御する、あるいは、多結晶シリコン層を組み合わせることで、上記赤外線反射率を著しく改善することを本発明者は知見した。本発明は、上記知見に基づいて完成されたものであり、その要旨構成は以下のとおりである。
【0006】
<1>支持基板用シリコンウェーハと、前記支持基板用シリコンウェーハ上の単結晶シリコン層と、前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層との間に設けられた、赤外反射シリコン膜を有する接合シリコンウェーハであって、前記赤外反射シリコン膜はアモルファスシリコンを含み、前記赤外反射シリコン膜の厚みが16nm以上である、接合シリコンウェーハ。
【0007】
<2>前記赤外反射シリコン膜は、アモルファスシリコンからなる<1>に記載の接合シリコンウェーハ。
【0008】
<3>前記赤外反射シリコン膜は、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる<1>に記載の接合シリコンウェーハ。
【0009】
<4>前記赤外反射シリコン膜の厚みが25nm以上である、<1>~<3>に記載の接合シリコンウェーハ。
【0010】
<5>前記単結晶シリコン層の厚みが3μm以上30μm以下である、<1>~<4>に記載の接合シリコンウェーハ。
【0011】
<6>上記<2>、<4>、<5>のいずれかに記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、前記支持基板用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上のアモルファスシリコン成膜層を形成するアモルファスシリコン成膜層形成工程と、前記アモルファスシリコン成膜層の表面と単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【0012】
<7>上記<2>、<4>、<5>のいずれかに記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上のアモルファスシリコン成膜層を形成するアモルファスシリコン成膜層形成工程と、前記アモルファスシリコン成膜層の表面と前記支持基板用シリコンウェーハの表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【0013】
<8>上記<2>、<4>、<5>のいずれかに記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、前記支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハの各表面上に合計の厚さが16nm以上となるアモルファスシリコン成膜層を形成するアモルファスシリコン成膜層形成工程と、前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハ表面上の各アモルファスシリコン成膜層の表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【0014】
<9>上記<3>~<5>のいずれかに記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、前記支持基板用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上の多結晶シリコン成膜層を形成する多結晶シリコン成膜層形成工程と、前記多結晶シリコン成膜層の表面と単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【0015】
<10>上記<3>~<5>のいずれかに記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面上に厚さが15nm以上の多結晶シリコン成膜層を形成する多結晶シリコン成膜層形成工程と、
前記多結晶シリコン成膜層の表面と前記支持基板用シリコンウェーハの表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、
前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、
を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【0016】
<11>上記<3>~<5>のいずれかに記載の接合シリコンウェーハの製造方法であって、前記支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハの各表面上に合計の厚さが16nm以上の多結晶シリコン成膜層を形成する多結晶シリコン成膜層形成工程と、
前記支持基板用シリコンウェーハ及び前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハ表面上の各多結晶シリコン成膜層の表面に真空常温下で活性化処理を施して両方の表面を活性化領域とする活性化処理工程と、
前記活性化処理工程に引き続き、前記真空常温下で両方の前記活性化領域を接触させて両方の前記活性化領域同士を接合することにより、前記赤外反射シリコン膜を形成する接合工程と、
前記接合工程の後、前記単結晶シリコン層用シリコンウェーハを減厚して前記単結晶シリコン層を得る減厚工程と、
を含む接合シリコンウェーハの製造方法。
【0017】
以下では、上述の支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハのそれぞれに活性化領域を形成して、真空常温下で両者の活性化領域同士で貼り合せる方法を「真空常温接合法」と称する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、厚みが薄く、かつ赤外線反射率が高い接合シリコンウェーハ及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明による、接合シリコンウェーハの概要を説明する模式断面図である。
図2A】本発明による、赤外反射シリコン膜がアモルファスシリコンからなる接合シリコンウェーハを説明する模式断面図である。
図2B】本発明による、赤外反射シリコン膜がアモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる接合シリコンウェーハの第1の態様を説明する模式断面図である。
図2C】本発明による、赤外反射シリコン膜がアモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる接合シリコンウェーハの第2の態様を説明する模式断面図である。
図2D】本発明による、赤外反射シリコン膜がアモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる接合シリコンウェーハの第3の態様を説明する模式断面図である。
図3】本発明による接合シリコンウェーハの製造方法の第1実施形態を説明する模式断面図である。
図4】本発明による接合シリコンウェーハの製造方法の第2実施形態を説明する模式断面図である。
図5】本発明による接合シリコンウェーハの製造方法の第3実施形態を説明する模式断面図である。
図6】本発明による接合シリコンウェーハの製造方法の第4実施形態を説明する模式断面図である。
図7】本発明による接合シリコンウェーハの製造方法の一実施形態において、真空常温接合を行う際に用いる装置の一例を示す概念図である。
図8】本発明の一実施形態による接合シリコンウェーハの赤外光の反射率の測定方法を説明するための接合シリコンウェーハ断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(1.概要)
本発明に従う実施形態の説明に先立ち、各図面の対応関係について説明する。図1は本発明に従う接合シリコンウェーハ1の模式断面図である。このとき、赤外反射シリコン膜30はアモルファスシリコンであってもよく、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造であってもよい。図2Aは、赤外反射シリコン膜30がアモルファスシリコンからなる接合シリコンウェーハである。また、図2B図2Dは、赤外反射シリコン膜30がとくにアモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる接合シリコンウェーハにおける赤外反射シリコン膜30の3つの態様を示し、以下ではそれぞれ第1態様、第2態様及び第3態様と称する。
【0021】
図3は、赤外反射シリコン膜がアモルファスシリコンからなる場合の接合シリコンウェーハ2の製造方法の実施形態(以下、第1実施形態)を説明する模式断面図である。なお、図3に示す第1実施形態では、支持基板用シリコンウェーハ110にアモルファスシリコン成膜層131を形成しているが、これに替えて、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120にアモルファスシリコン成膜層を形成することもできる。
【0022】
図4は、赤外反射シリコン膜がアモルファスシリコンからなる場合であり、支持基板用シリコンウェーハ210と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220の両方にアモルファスシリコン成膜層231を設ける接合シリコンウェーハ2の製造方法の実施形態(以下、第2実施形態)を説明する模式断面図である。
【0023】
図5は、赤外反射シリコン膜がアモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる場合であり、かつ、第1態様による赤外反射シリコン膜を有する接合シリコンウェーハ3の製造方法の実施形態(以下、第3実施形態)を説明する模式断面図である。なお、図5に示す第3実施形態では、支持基板用シリコンウェーハ310に多結晶シリコン成膜層335を形成しているが、これに替えて、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320に多結晶シリコン成膜層を形成すれば第2態様による赤外反射シリコン膜を有する接合シリコンウェーハ4を製造することができる。
【0024】
図6は、赤外反射シリコン膜430がアモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる場合であり、かつ、第3態様による赤外反射シリコン膜430を有する接合シリコンウェーハ5の製造方法の実施形態(以下、第4実施形態)を説明する模式断面図である。
【0025】
以下、図面を参照しつつ本発明の一実施形態を詳細に説明する。まず、図1及び図2A図2Dを参照して本発明による接合シリコンウェーハ1~5の概要を説明する。ここで、図1の接合シリコンウェーハ1における赤外反射シリコン膜30は、アモルファスシリコンであってもよく、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造であってもよい。次に、接合シリコンウェーハ2~5を得るための第1~第4実施形態による接合シリコンウェーハの製造方法を説明しつつ、併せて各構成の詳細を説明する。その後、本発明に適用可能な具体的態様を説明する。なお、各図面では説明の便宜上、各構成の厚さを誇張して示す。そのため、各構成の厚さは、実際の厚さの割合とは異なる。
【0026】
(2.接合シリコンウェーハ)
図1を参照する。本発明による接合シリコンウェーハ1は、支持基板用シリコンウェーハ10と、支持基板用シリコンウェーハ10上の単結晶シリコンからなる単結晶シリコン層21と、支持基板用シリコンウェーハ10及び単結晶シリコン層21との間に設けられた赤外反射シリコン膜30と、を有し、赤外反射シリコン膜30はアモルファスシリコンを含む。そして、図2Aの接合シリコンウェーハ2では赤外反射シリコン膜30は、アモルファスシリコンからなり、図2B~Dの接合シリコンウェーハ3~5では赤外反射シリコン膜30は、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる。ここで、支持基板用シリコンウェーハ10及び単結晶シリコン層21の材質としての単結晶シリコンは赤外線に対して透明であり、一方、赤外反射シリコン膜30の材質としてのアモルファスシリコン及び多結晶シリコンは赤外線に対して不透明である。アモルファスシリコン単独又はアモルファスシリコン及び多結晶からなる赤外反射シリコン膜30を16nm以上の厚みとすることで、厚みが薄く、かつ赤外線反射率が高い接合シリコンウェーハを得ることができる。赤外反射シリコン膜30は、アモルファスシリコンであってもよく、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造であってもよいが、厚みは16nmよりも薄いと赤外線を十分に反射することができない。赤外反射シリコン膜30の厚みは20nm以上とすることが好ましく、25nm以上とすることがより好ましく、30nm以上とすることがさらに好ましい。赤外反射シリコン膜30の厚みは厚いほど反射率が100%に近づくものの、概ね25nmで飽和し、その上限は特に制限されないが、接合シリコンウェーハ1を小型化する観点では、上限を40nmと設定することが可能である。また、赤外線が入射する単結晶シリコン層21の厚みは、特に制限されないものの、3μm以上30μm以下であることが好ましい。接合シリコンウェーハ1の用途に応じて、単結晶シリコン層21の厚みを5μm以上としてもよいし、10μm以上としてもよいし、20μm以下としてもよいし、15μm以下としてもよい。
【0027】
図2Aに赤外反射シリコン膜30がアモルファスシリコンからなる場合の接合シリコンウェーハを模式的に示す。
【0028】
図2B図2Dのそれぞれに、赤外反射シリコン膜30がアモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる場合の第1態様~第3態様を模式的に示す。
【0029】
図2Bに示す第1態様の赤外反射シリコン膜30において、多結晶シリコン層35が支持基板用シリコンウェーハ10の表面側に設けられ、アモルファスシリコン層32が単結晶シリコン層21の表面側に設けられる。
【0030】
図2Cに示す第2態様の赤外反射シリコン膜30において、多結晶シリコン層35が単結晶シリコン層21の表面側に設けられ、アモルファスシリコン層32が支持基板用シリコンウェーハ10の表面側に設けられる。
【0031】
図2Dに示す第3態様の赤外反射シリコン膜30において、赤外反射シリコン膜30は支持基板用シリコンウェーハ10及び単結晶シリコン層21の両方の表面側にそれぞれ設けられた多結晶シリコン層35a及び多結晶シリコン層35bを有する。そして、アモルファスシリコン層32は多結晶シリコン層35a及び多結晶シリコン層35bの間に設けられる。
【0032】
赤外反射シリコン膜30がアモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる場合の第1態様~第3態様において、赤外反射シリコン膜30が支持基板用シリコンウェーハ10側から順に多結晶シリコン層、アモルファスシリコン層の順となる場合と、支持基板用シリコンウェーハ10側から順にアモルファスシリコン層、多結晶シリコン層の順となる場合及び支持基板用シリコンウェーハ10側から順に多結晶シリコン層、アモルファスシリコン層、多結晶シリコン層の順となる場合とは、製造方法の実施形態に由来して定まる。さらに、図示しないものの第1態様~第3態様に示す積層構造には、さらに追加のアモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層のうちいずれか一方又は両方からなる積層構造が加わってもよい。いずれの場合であっても、本発明による接合シリコンウェーハ2~5であれば、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層体が同様に赤外反射シリコン膜として機能する。以下、接合シリコンウェーハ2~5を製造するための実施形態を順次説明する。
【0033】
(3.接合シリコンウェーハの製造方法の第1実施形態)
図3を参照して、第1実施形態による接合シリコンウェーハ100の製造方法を説明する。本実施形態は、図2Aの接合シリコンウェーハ2を製造する方法であり、図1の接合シリコンウェーハ1において、赤外反射シリコン膜30がアモルファスシリコンからなる場合の実施形態である。
【0034】
接合シリコンウェーハ100の製造方法は、支持基板用シリコンウェーハ110の表面上に、厚さが15nm以上のアモルファスシリコン成膜層131を形成するアモルファスシリコン成膜層形成工程(図3のS110、S120参照)と、支持基板用シリコンウェーハ110のアモルファスシリコン成膜層131の表面及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面に、真空常温下で、活性化処理を施して、両方の表面を活性化領域132a,132bとする活性化処理工程(図3のS130、S140参照)と、この活性化処理工程に引き続き、真空常温下で、両方の活性化領域132a,132bを接触させて、両方の活性化領域132a,132b同士を接合することにより、赤外反射シリコン膜130を形成する接合工程(図3のS150参照)と、接合工程の後、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を減厚して単結晶シリコン層121を得る減厚工程(図3のS160参照)と、を含む。以下、各工程の詳細を順次説明する。
【0035】
<アモルファスシリコン成膜層形成工程>
アモルファスシリコン成膜層形成工程(図3のS110、S120参照)では支持基板用シリコンウェーハ110の表面上に、アモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン成膜層131を形成する。アモルファスシリコン成膜層131は一般的な手法により形成することができる。ここで形成するアモルファスシリコン成膜層131の厚みは、接合シリコンウェーハとしたときにアモルファスシリコンの領域が赤外反射シリコン膜として機能するために15nm以上の厚みとする。活性化処理時に各シリコンウェーハの表面から概ね1nmの深さ位置にまで、アモルファスシリコンからなる活性化領域が形成されるため、シリコンウェーハ同士を貼り合わせた際に、16nm以上の厚みの赤外反射シリコン膜130が形成される。本工程において形成するアモルファスシリコン成膜層131の厚みは、19nm以上とすることが好ましく、24nm以上とすることがより好ましく、29nm以上とすることがさらに好ましい。アモルファスシリコン成膜層131の厚みの上限は特に制限されないが、工業的な生産性を考慮すれば上限は40nm程度である。
【0036】
<<CVD法によるアモルファスシリコン成膜層の形成>>
また、アモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン成膜層131は、プラズマCVD法などのCVD法を用いて、支持基板用シリコンウェーハ110の表面上に成膜することができる。支持基板用シリコンウェーハ110の温度を500℃以上600℃以下にした状態で成膜すれば、アモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン成膜層を成長させることができる。
【0037】
<活性化処理工程>
次に、活性化処理工程(図3のS130、S140参照)では、真空常温接合法を行うための活性化処理を行う。すなわち、支持基板用シリコンウェーハ110のアモルファスシリコン成膜層131の表面及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面に、真空常温下で、イオンビーム又は中性原子ビーム910を照射する活性化処理を施して、活性化領域132a,132bを支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120のそれぞれの表面に形成する。また、後述するとおり各シリコンウェーハの表面において、注入エネルギーにも依存するものの、ビームを照射した側の表面から概ね1nmの深さ位置にまで、アモルファスシリコンからなる活性化領域が形成される。
【0038】
<接合工程>
そして、接合工程(図3のS150参照)により、この活性化処理工程に引き続き、真空常温下で、支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の両方の活性化領域132a,132bを接触させることで、両シリコンウェーハを、アモルファスシリコン成膜層131を介して貼り合わせる。このとき、支持基板用シリコンウェーハ110上のアモルファスシリコン成膜層131の表面の活性化領域132aのみならずアモルファスシリコン成膜層131を形成していない単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面の活性化領域132bにも、概ね1nmの深さ位置にまでアモルファスシリコンが形成される。したがって、接合時には、アモルファスシリコン成膜層131と合わせて16nm以上の厚みのアモルファスシリコンからなる赤外反射シリコン膜130が形成されることとなる。
【0039】
<<真空常温接合法による貼り合わせ>>
図3及び図7を参照しつつ、上記活性化処理工程及び接合工程を行うための、真空常温接合法による貼合せ方法を説明する。真空常温接合法とは、支持基板用シリコンウェーハ110と、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を加熱することなく、両者を常温で貼り合わせる方法である。本実施形態においては、支持基板用シリコンウェーハ110のアモルファスシリコン成膜層131の表面と、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面とのそれぞれに、真空常温下でイオンビームまたは中性原子ビームを照射する活性化処理をして、上記両方の表面をそれぞれ活性化領域132a,132bとする(図3のS130,S140も参照)。これにより、活性化領域132a,132bにはダングリングボンドが現れる。そのため、引き続き真空常温下で上記両方の活性化領域を接触させると、瞬時に接合力が働き、上記活性化領域132a,132bを貼合せ面として、支持基板用シリコンウェーハ110と単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120とが強固に貼り合い、両者を接合できる(図3のS150も参照)。
【0040】
活性化処理の方法としては、プラズマ雰囲気でイオン化した元素を基板表面へ加速させる方法と、イオンビーム装置から加速したイオン化した元素を基板表面へ加速させる方法が挙げられる。図7を参照しつつ、この方法を実現する装置の一例を示す概念図を用いて活性化処理方法を説明する。真空常温接合装置930は、プラズマチャンバー931と、ガス導入口932と、真空ポンプ933と、パルス電圧印加装置934と、ウェーハ固定台935a,935bと、を有する。
【0041】
まず、プラズマチャンバー931内のウェーハ固定台935a,935bにそれぞれ支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を載置して、固定する。次に、真空ポンプ933によりプラズマチャンバー931内を減圧し、ついで、ガス導入口932からプラズマチャンバー931内に原料ガスを導入する。続いて、パルス電圧印加装置934によりウェーハ固定台935a,935b(併せて支持基板用シリコンウェーハ110,単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120)に負電圧をパルス状に印加する。これにより、原料ガスのプラズマを生成するとともに、生成したプラズマに含まれる原料ガスのイオンを支持基板用シリコンウェーハ110に形成されたアモルファスシリコン成膜層131及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面に向けて加速、照射することができる。
【0042】
なお、照射する元素は、Ar、Ne、Xe、H、He及びSiから選択される少なくとも一種から選択すればよい。
【0043】
図3のS140を参照する。先に述べたとおり、真空常温接合法における活性化処理によって、アモルファスシリコン成膜層131及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120のそれぞれにおいて、ビームを照射した側の表面から概ね1nmの深さ位置にまで、アモルファスシリコンの領域が形成されるとともに、ダングリングボンドが形成される。本実施形態ではアモルファスシリコン成膜層131がアモルファスシリコンからなるため、支持基板用シリコンウェーハ110には、アモルファスシリコンの領域の厚さは変わらずに活性化領域132aが形成される。また、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120にはアモルファスシリコンからなる活性化領域132bが形成される。なお、両シリコンウェーハに形成されたこれらのアモルファスシリコンの領域は、ゲッタリング層としても機能する。例えば、アモルファスシリコンからなる活性化領域132aは、支持基板用シリコンウェーハ110中の酸素や不純物が単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120に外方拡散するのを抑制することができる点で有用である。
【0044】
―真空常温接合法の具体的態様―
プラズマチャンバー931内のチャンバー圧力は1×10-5Pa以下とすることができる。1×10-5Pa以下であれば、スパッタされた元素が基板表面に再付着することによってダングリングボンドの形成率が低下するおそれがないからである。
【0045】
支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120に印加するパルス電圧は、基板表面に対する照射元素の加速エネルギーが100eV以上10keV以下となるように設定すればよい。100eV以上であれば、照射した元素が基板表面に堆積するおそれがなく、10keV以下であれば、照射した元素が基板内部へ注入するおそれがないので、ダングリングボンドを安定的に形成することができる。
【0046】
パルス電圧の周波数は、支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120にイオンまたは中性原子が照射される回数を決定する。パルス電圧の周波数は、10Hz以上10kHz以下とすればよい。パルス電圧の周波数が10Hz以上であれば、イオンまたは中性原子の照射ばらつきを吸収することができるので、イオンまたは中性原子の照射量が安定する。パルス電圧の周波数が10kHz以下であれば、グロー放電によるプラズマ形成が安定する。
【0047】
パルス電圧のパルス幅は、支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120にイオンまたは中性原子が照射される時間を決定する。パルス幅は、1μ秒以上10m秒以下とすることが好ましい。パルス幅が1μ秒以上であれば、イオンまたは中性原子を支持基板及び単結晶シリコン層用基板に安定的に照射することができる。パルス幅が10m秒以下であれば、グロー放電によるプラズマ形成が安定する。
【0048】
なお、前述のとおり、支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120は加熱されない。そのため、各ウェーハの温度は常温(通常、30℃~90℃)となる。
【0049】
<単結晶シリコン層用シリコンウェーハの減厚工程>
上述した真空常温接合法による活性化処理工程及び接合工程を経た後、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の減厚工程(図3のS160参照)を行う。本工程では、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を貼り合わせた面とは反対側から減厚することで単結晶シリコンからなる単結晶シリコン層121を得る。減厚するためには、例えば単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を研削及び研磨すればよい。これにより、所望厚さの単結晶シリコン層121を有する接合シリコンウェーハ100を得ることができる。単結晶シリコン層121の厚さは、そこに形成するデバイスに応じて適宜決定することができ、3μm以上30μm以下とすることが好ましく、5μm以上としてもよいし、10μm以上としてもよいし、20μm以下としてもよいし、15μm以下としてもよい。なお、この研削及び研磨には、公知の研削法及び研磨法を好適に用いることができ、具体的には平面研削法及び鏡面研磨法を用いることができる。
【0050】
こうして得られる接合シリコンウェーハ100は、支持基板用シリコンウェーハ110と、支持基板用シリコンウェーハ110上の単結晶シリコン層121と、支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層121との間に設けられたアモルファスシリコンからなる赤外反射シリコン膜130と、を有する。また、赤外反射シリコン膜130のアモルファスシリコンは、実質的には、支持基板用シリコンウェーハ110の表面側に設けられたアモルファスシリコン成膜層131と、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面に形成された活性化領域132bとからなり、アモルファスシリコン成膜層131はアモルファスシリコン成膜層131の表面に形成された活性化領域132aを含む。
【0051】
以上、図3を参照して接合シリコンウェーハの製造方法の第1実施形態を説明した。この第1実施形態では支持基板用シリコンウェーハ110にアモルファスシリコン成膜層131を形成したものの、これに替わる第1実施形態の変形態様として、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120にアモルファスシリコン成膜層131を形成する以外は、上記第1実施形態と同様の工程を経ることにより、図1に示す接合シリコンウェーハ100を製造することもできる。すなわち、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120の表面上に、アモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン成膜層131を形成するアモルファスシリコン成膜層形成工程と、支持基板用シリコンウェーハ110の表面及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120上のアモルファスシリコン成膜層131の表面に、真空常温下で、イオンビーム又は中性原子ビーム910を照射する活性化処理を施して、活性化領域132a,132bを支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120のそれぞれに形成する活性化処理工程と、活性化処理工程に引き続き、真空常温下で、両方の活性化領域132a,132bを接触させることで、支持基板用シリコンウェーハ110及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を、アモルファスシリコン成膜層131を介して貼り合わせる接合工程と、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ120を貼り合わせた面とは反対側から減厚することで単結晶シリコン層121とする減厚工程と、により接合シリコンウェーハ100を製造することができる。アモルファスシリコン成膜層131の形成、真空常温接合法、減厚のための研削及び研磨手法等については第1実施形態において上述したのと同様の手法を用いることができるため、重複する説明を省略する。
【0052】
(4.接合シリコンウェーハの製造方法の第2実施形態)
図4を参照して、第2実施形態による接合シリコンウェーハ200の製造方法を説明する。本実施形態において製造される接合シリコンウェーハ200は、第1実施形態において製造される接合シリコンウェーハ100と同じく図1の赤外反射シリコン膜30がアモルファスシリコンからなる接合シリコンウェーハである。なお、簡潔な説明のため、第1実施形態と同一の構成要素及び同一ステップには原則として一及び十の位に同一の参照番号を付して構成の詳細な説明を省略し、以降も同様とする。
【0053】
接合シリコンウェーハ200の製造方法は、支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220の各表面上に合計の厚さが16nm以上となる、アモルファスシリコン成膜層231a、231bを形成するアモルファスシリコン成膜層形成工程(図4のS210、S220参照)と、支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220表面上の各アモルファスシリコン成膜層231a、231bの表面に、真空常温下で活性化処理を施して、両方の表面を活性化領域232a,232bとする活性化処理工程(図4のS230、S240参照)と、活性化処理工程に引き続き、真空常温下で、両方の活性化領域232a,232bを接触させて、両方の活性化領域232a,232b同士を接合することにより赤外反射シリコン膜230を形成する接合工程(図4のS250参照)と、接合工程の後、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220を減厚して単結晶シリコン層221を得る減厚工程(図4のS260参照)と、を含む。
【0054】
<アモルファスシリコン成膜層形成工程>
第1実施形態ではアモルファスシリコン成膜層131を支持基板用シリコンウェーハ110にのみ形成していたところ、第2実施形態では支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220のそれぞれにアモルファスシリコン成膜層231a,231bを形成する点で異なる。アモルファスシリコンからなるアモルファスシリコン成膜層231a,231bの形成手法は第1実施形態と同様であり、CVD法などを適用することができる。また、ここで形成するアモルファスシリコン成膜層231a,231bの厚みは、接合シリコンウェーハ200としたときに赤外反射シリコン膜230が効率よく赤外線を反射するために合計で16nm以上の厚みとする。アモルファスシリコン成膜層231a,231bのそれぞれの厚みは同じであってもよく異なっていてもよい。第2実施形態の製造方法においては、活性化される両方の表面がアモルファスシリコンであるため、接合後の赤外反射シリコン膜230の厚みと接合前に形成されるアモルファスシリコン成膜層231a,231bの厚みの合計の厚みは同じである。アモルファスシリコン成膜層231a,231bの合計の厚みは、20nm以上とすることが好ましく、25nm以上とすることがより好ましく、30nm以上とすることがさらに好ましい。アモルファスシリコン成膜層231の厚み合計の上限は特に制限されないが、工業的な生産性を考慮すれば上限は40nm程度である。
【0055】
<活性化処理工程及び接合工程>
第2実施形態においては、活性化処理では、アモルファスシリコン成膜層231a,231bの表面を活性化処理して両シリコンウェーハの表面に活性化領域232a,232bを形成する。そして、接合工程では、第1実施形態と同様に、活性化領域232a,232bを真空常温下で貼り合わせる。
【0056】
<減厚工程>
減厚工程も、第1実施形態と同様にして行うことができる。
【0057】
こうして得られる接合シリコンウェーハ200は、支持基板用シリコンウェーハ210と、支持基板用シリコンウェーハ210上の単結晶シリコン層221と、支持基板用シリコンウェーハ210及び単結晶シリコン層221との間に設けられたアモルファスシリコンからなる赤外反射シリコン膜230と、を有する。また、赤外反射シリコン膜230のアモルファスシリコンは、実質的には、支持基板用シリコンウェーハ210の表面に設けられたアモルファスシリコン成膜層231aと、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ220の表面に設けられたアモルファスシリコン成膜層231bとからなり、アモルファスシリコン成膜層231aはアモルファスシリコン成膜層231aの表面に形成された活性化領域232aを含み、アモルファスシリコン成膜層231bはアモルファスシリコン成膜層231bの表面に形成された活性化領域232bを含む。
【0058】
(5.接合シリコンウェーハの製造方法の第3実施形態)
図5を参照して、第3実施形態による接合シリコンウェーハ300の製造方法を説明する。本実施形態は、図2B及び図2Cの態様の接合シリコンウェーハ2及び3を製造する方法であり、本実施形態の赤外反射シリコン膜330は第1,第2実施形態と異なり、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造からなる。
【0059】
接合シリコンウェーハ300の製造方法は、支持基板用シリコンウェーハ310の表面上に、厚さが15nm以上の多結晶シリコン成膜層331を形成する多結晶シリコン成膜層形成工程(図5のS310、S320参照)と、支持基板用シリコンウェーハ310の多結晶シリコン成膜層331の表面及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320の表面に、真空常温下で、活性化処理を施して、両方の表面を活性化領域332a,332bとする活性化処理工程(図5のS330、S340参照)と、この活性化処理工程に引き続き、真空常温下で、両方の活性化領域332a,332bを接触させて、両方の活性化領域332a,332b同士を接合することにより、赤外反射シリコン膜330を形成する接合工程(図5のS350参照)と、接合工程の後、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320を減厚して単結晶シリコン層321を得る減厚工程(図5のS360参照)と、を含む。
【0060】
<多結晶シリコン成膜層形成工程>
多結晶シリコン成膜層形成工程(図5のS310、S320参照)では支持基板用シリコンウェーハ310の表面上に、多結晶シリコンからなる多結晶シリコン成膜層335を形成する。多結晶シリコン成膜層335は一般的な手法により形成することができる。ここで形成する多結晶シリコン成膜層335の厚みは、接合シリコンウェーハ300としたときに多結晶シリコン及びアモルファスシリコンの積層構造からなる領域が赤外反射シリコン膜として機能するために15nm以上の厚みとする。活性化処理時に各シリコンウェーハの表面から概ね1nmの深さ位置にまで、アモルファスシリコンからなる活性化領域が形成されるため、シリコンウェーハ同士を貼り合わせた際に、16nm以上の厚みの赤外反射シリコン膜330が形成される。本工程において形成する多結晶シリコン成膜層335の厚みは、19nm以上とすることが好ましく、24nm以上とすることがより好ましく、29nm以上とすることがさらに好ましい。多結晶シリコン成膜層335の厚みの上限は特に制限されないが、工業的な生産性を考慮すれば上限は40nm程度である。
【0061】
<<CVD法による多結晶シリコン成膜層の形成>>
また、多結晶シリコンからなる多結晶シリコン成膜層335は、プラズマCVD法などのCVD法を用いて、支持基板用シリコンウェーハ310の表面上に成膜することができる。支持基板用シリコンウェーハ310の温度を700℃以上900℃以下にした状態で成膜すれば、多結晶シリコンからなる多結晶シリコン成膜層を成長させることができる。
【0062】
<活性化処理工程>
活性化処理は、上述の第1,第2実施工程と同様にして行えばよい。すなわち、図5のS330,S340を参照して、支持基板用シリコンウェーハ310の多結晶シリコン成膜層335の表面及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320の表面に、真空常温下で、イオンビーム又は中性原子ビーム910を照射する活性化処理を施して、活性化領域332a,332bを支持基板用シリコンウェーハ310及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320のそれぞれに形成する。また、後述するとおり各シリコンウェーハの表面において、ビームを照射した側の表面から概ね1nmの深さ位置にまで、アモルファスシリコンからなる活性化領域が形成される。
【0063】
<接合工程>
接合工程(図5のS350参照)では、活性化処理工程に引き続き、真空常温下で、両方の活性化領域332a,332bを接触させることで、支持基板用シリコンウェーハ310及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320を、多結晶シリコン成膜層335を介して貼り合わせることができる。このとき、多結晶シリコン成膜層335を形成しなかった単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320の表面にも、少なくとも1nm以上のアモルファスシリコンが形成されているため、接合時には、多結晶シリコン成膜層335と併せて16nm以上の厚みの多結晶シリコン及びアモルファスシリコンからなる赤外反射シリコン膜330が形成されることとなる。
【0064】
<減厚工程>
続く減厚工程は、第1,第2実施形態と同様にして行うことができる。
【0065】
こうして得られる接合シリコンウェーハ300は、支持基板用シリコンウェーハ310と、支持基板用シリコンウェーハ310上の単結晶シリコン層321と、支持基板用シリコンウェーハ310及び単結晶シリコン層321との間に設けられた赤外反射シリコン膜330と、を有する。そして、赤外反射シリコン膜330は、多結晶シリコンからなる多結晶シリコン成膜層335と、活性化領域332とを有する。なお、活性化領域332は、上述した活性化領域332a及び活性化領域332bに由来するものである。
【0066】
以上、図5を参照して第1態様による接合シリコンウェーハ300の製造方法の第3実施形態を説明した。この第1実施形態では支持基板用シリコンウェーハ310に多結晶シリコン成膜層335を形成したものの、これに替わる第3実施形態の変形態様として、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320に多結晶シリコン成膜層335を形成する以外は、上記第3実施形態と同様の工程を経ることにより、図2Cに示す第2態様による接合シリコンウェーハ4を製造することができる。すなわち、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320の表面上に、多結晶シリコンからなる多結晶シリコン成膜層335を形成する多結晶シリコン成膜層形成工程と、真空常温下で、支持基板用シリコンウェーハ310及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320の表面に、イオンビーム又は中性原子ビームを照射する活性化処理を施して、活性化領域332a,332bを支持基板用シリコンウェーハ310及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320のそれぞれ形成する活性化処理工程と、活性化処理工程に引き続き、真空常温下で、両方の活性化領域332a,332bを接触させることで、支持基板用シリコンウェーハ310及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320を、多結晶シリコン成膜層335を介して貼り合わせる接合工程と、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ320を貼り合わせた面とは反対側から減厚することで単結晶シリコンからなる単結晶シリコン層321とする減厚工程と、により第2態様による接合シリコンウェーハ4を製造することができる。多結晶シリコン成膜層335の形成、真空常温接合法、減厚のための研削及び研磨手法等については第3実施形態において上述したのと同様の手法を用いることができるため、重複する説明を省略する。
【0067】
(6.接合シリコンウェーハの製造方法の第4実施形態)
図6を参照して、第4実施形態による接合シリコンウェーハ400の製造方法を説明する。本実施形態は、図2Dの第3態様の接合シリコンウェーハ5を製造する方法である。また、本実施形態の赤外反射シリコン膜430は第3実施形態と同じく多結晶シリコン及びアモルファスシリコンからなる。
【0068】
接合シリコンウェーハ400の製造方法は、支持基板用シリコンウェーハ410及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ420の各表面上に、合計の厚さが16nm以上となる、多結晶シリコン成膜層435a、435bを形成する多結晶シリコン成膜層形成工程(図6のS410、S420参照)と、支持基板用シリコンウェーハ410及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ420表面上の各多結晶シリコン成膜層435a、435bの表面に真空常温下で、活性化処理を施して両方の表面を活性化領域432a,432bとする活性化処理工程(図6のS430、S440参照)と、活性化処理工程に引き続き、真空常温下で、両方の活性化領域432a,432bを接触さて、両方の活性化領域432a,432b同士を接合することにより赤外反射シリコン膜430を形成する接合工程(図6のS450参照)と、接合工程の後、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ420を減厚して単結晶シリコン層421を得る減厚工程(図4のS460参照)と、を含む。
【0069】
<多結晶シリコン成膜層形成工程>
第3実施形態では多結晶シリコン成膜層335を支持基板用シリコンウェーハ310にのみ形成していたところ、第4実施形態では支持基板用シリコンウェーハ410及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ420のそれぞれに多結晶シリコン成膜層435a,435bを形成する点で異なる。多結晶シリコンからなる多結晶シリコン成膜層435a,435bの形成手法は第3実施形態と同様であり、CVD法などを適用することができる。また、ここで形成する多結晶シリコン成膜層435a,435bの厚みは、接合シリコンウェーハ400としたときに赤外反射シリコン膜430が効率よく赤外線を反射するために合計で16nm以上の厚みとする。多結晶シリコン成膜層435a,435bのそれぞれの厚みは同じであってもよく異なっていてもよい。第4実施形態の製造方法においては、活性化される両方の表面が多結晶シリコンであるため、接合後の赤外反射シリコン膜430の厚みと接合前に形成される多結晶シリコン成膜層435a,435bの厚みの合計の厚みは同じである。多結晶シリコン成膜層435a,435bの合計の厚みは、20nm以上とすることが好ましく、25nm以上とすることがより好ましく、30nm以上とすることがさらに好ましい。赤外反射シリコン膜430の厚み合計の上限は特に制限されないが、工業的な生産性を考慮すれば上限は40nm程度である。なお第4実施形態では、支持基板用シリコンウェーハ410及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハ420のそれぞれに多結晶シリコン成膜層を形成したが、片方に多結晶シリコン成膜層を形成してもう片方にアモルファスシリコン成膜層を形成してもよい。
【0070】
<活性化処理工程及び接合工程>
第4実施形態においては、活性化処理では、多結晶シリコン成膜層435a,435bの表面を活性化処理して両シリコンウェーハの表面に活性化領域432a,432bを形成する。そして、接合工程では、第3実施形態と同様に、活性化領域432a,432bを真空常温下で貼り合わせる。
【0071】
<減厚工程>
減厚工程も、第3実施形態により参照される第1、第2実施形態において述べたのと同様にして行うことができる。
【0072】
こうして得られる接合シリコンウェーハ400は、支持基板用シリコンウェーハ410と、支持基板用シリコンウェーハ410上の単結晶シリコン層421と、支持基板用シリコンウェーハ410及び単結晶シリコン層421との間に設けられた赤外反射シリコン膜430と、を有する。そして、赤外反射シリコン膜430は、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造である。さらに、アモルファスシリコン層及び多結晶シリコン層の積層構造は、支持基板用シリコンウェーハ410及び単結晶シリコン層421の両方の表面側にそれぞれ設けられた多結晶シリコン成膜層435a及び多結晶シリコン成膜層435bを有し、多結晶シリコン成膜層435aは多結晶シリコン及びその表面に設けられたアモルファスシリコンからなる活性化領域432aからなり、多結晶シリコン成膜層435bは多結晶シリコン及びその表面に設けられたアモルファスシリコンからなる活性化領域432bからなる。
【0073】
なお、第1実施形態~第4実施形態において、活性化処理に先立ち、アモルファスシリコン成膜層及び多結晶シリコン成膜層の表面の平坦化処理を行うことも好ましい。すなわち、第1実施形態及び第2実施形態ではそれぞれアモルファスシリコン成膜層131,231の平坦化を行うことが好ましく、第3実施形態及び第4実施形態ではそれぞれ多結晶シリコン成膜層335、435の平坦化を行うことが好ましい。
【0074】
平坦化の条件は特に制限されないが、アモルファスシリコン成膜層又は多結晶シリコン成膜層の表面粗さRaが3nm以下となるように平坦化することが好ましく、研磨代を30nm以内とすることがより好ましい。平坦化を行うことにより、活性化後の接合をより確実に行うことができるためである。なお、平坦化には、公知の化学機械研磨(CMP:chemical mechanical polishing)法等を好適に用いることができる。また、本明細書における表面粗さRaとは、JIS B 0601(2001)に規定の算術平均粗さRaの定義に従う。
【0075】
以上の第1実施形態~第4実施形態の製造方法により、本発明による接合シリコンウェーハを製造することができる。
【0076】
(7.具体的態様)
以下では、本発明において用いることができる支持基板用シリコンウェーハ10、単結晶シリコン層用シリコンウェーハ20(単結晶シリコン層21)に適用可能なシリコンウェーハの具体的態様を説明する。
【0077】
シリコンウェーハの面方位は任意であり、(100)面のウェーハを用いてもよいし、(110)面のウェーハなどを用いてもよい。
【0078】
シリコンウェーハの厚さは、用いる用途に応じて適宜決定することができ、300μm~1.5mmとすることができる。単結晶シリコン層用シリコンウェーハから得られる単結晶シリコンからなる単結晶シリコン層の膜厚を100nm~1mmの範囲で適宜定めることは既に述べたとおりである。
【0079】
また、シリコンウェーハにボロン(B)、リン(P)、ヒ素(As)、アンチモン(Sb)などのドーパントがドープされていてもよいし、所望の特性を得るため炭素(C)又は窒素(N)などがドープされていてもよい。
【0080】
シリコンウェーハの直径は何ら制限されない。一般的な直径300mm又は200mmなどのシリコンウェーハに本発明を適用することができる。もちろん、直径300mmよりも直径の大きいシリコンウェーハに対しても、直径の小さいシリコンウェーハに対しても本発明を適用することができる。
【0081】
なお、本明細書における「シリコンウェーハ」とは、表面にエピタキシャル層又は酸化シリコンなどからなる赤外反射シリコン膜などの別の層が形成されていない、いわゆる「バルク」のシリコンウェーハを用いてもよいし、エピタキシャル層などの別の層を別途形成したエピタキシャルシリコンウェーハを用いても構わない。なお、シリコンウェーハの表面には数Å程度の膜厚の自然酸化膜が形成されうるが、こうした自然酸化膜があってもよいし、必要に応じて公知の洗浄方法等を用いて除去してもよい。
【実施例0082】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
【0083】
[実験例1]
(発明例1-1)
支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハとして、直径:8インチ(203.2mm)、厚み:500μmのn型CZシリコンウェーハ(ドーパント:リン)を用意した。次いで、支持基板用シリコンウェーハをプラズマCVD装置に導入し、装置内の真空度を1×10-5Pa以下に保持した。そして、ステージ温度を500℃に維持した状態で、ソースガスとしてシランガス(CHSiH)を55sccm、キャリアガスとしてHガスを110sccm流して、プラズマCVD法により支持基板用シリコンウェーハの表面に膜厚15nmのアモルファスシリコン成膜層を形成した。
【0084】
次いで、支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハの両方をチャンバー内に導入し、真空度を1×10-5Pa以下に保持した。その後、支持基板用シリコンウェーハの表面及び活性層用ウェーハの表面に対し、アルゴンイオンを1.4keVで照射することで活性化処理を施し、両方のシリコンウェーハの表面に活性化領域(アモルファスシリコン)を形成した。そして、両基板を真空常温環境下で両ウェーハの活性化領域同士を貼り合わせて接合した。
【0085】
単結晶シリコン層用シリコンウェーハの厚みを10μm残すよう、貼り合せ面とは反対側から、研削及び研磨を行い、発明例1-1に係る接合シリコンウェーハを得た。
【0086】
こうして得られた接合シリコンウェーハの接合界面をTEM観察したところ、16nmの厚みのアモルファスシリコンが形成されていることが確認できた。すなわち、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面を活性化処理した際に1nmの活性化領域が形成されたことが分かった。
【0087】
(発明例1-2)
発明例1-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmのアモルファスシリコン成膜層を形成していたところ、発明例1-2においては、膜厚20nmのアモルファスシリコン成膜層を形成した以外は、発明例1-1と同じ条件で発明例1-2に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0088】
(発明例1-3)
発明例1-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmのアモルファスシリコン成膜層を形成していたところ、発明例1-3においては、膜厚25nmのアモルファスシリコン成膜層を形成した以外は、発明例1-1と同じ条件で発明例1-3に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0089】
(発明例1-4)
発明例1-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmのアモルファスシリコン成膜層を形成していたところ、発明例1-4においては、膜厚30nmのアモルファスシリコン成膜層を形成した以外は、発明例1-1と同じ条件で発明例1-4に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0090】
(従来例1)
発明例1-1と同様の支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハを用意した。次いで、いずれの基板にもアモルファスシリコン成膜層その他の層を形成することなく、両基板を真空常温環境下で活性化処理を施して両ウェーハに活性化領域を形成し、両ウェーハの活性化領域同士を貼り合わせて接合した。
【0091】
そして、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの厚みを10μm残すよう、貼り合せ面とは反対側から、研削及び研磨を行い、従来例1に係る接合シリコンウェーハを得た。
【0092】
(比較例1)
発明例1-1と同様の支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハを用意した。そして、発明例1-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmのアモルファスシリコン成膜層を形成していたところ、比較例1においては、膜厚10nmのアモルファスシリコン成膜層を形成した以外は、発明例1-1と同じ条件で比較例1に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0093】
(評価:赤外線反射率の評価)
赤外反射シリコン膜の赤外線反射率を評価するため、膜厚測定装置(CHRocodile IT500、プレシテック社製)を用いて、接合シリコンウェーハ表面に赤外光を入射し、反射光の信号強度を検出した。図8を参照して、本測定器によるFTIR(Fourier Transform Infrared)法を用いた赤外線反射率の測定原理を簡単に説明する。なお、本測定器の入射光となるレーザ光源は、スーパールミネッセンスダイオードである。本測定器を用いて、近赤外光Lを接合シリコンウェーハに照射したときに得られる反射光L及び反射光Lを検出し、赤外線の反射率L/Lを求めた。ここで、反射光Lは接合シリコンウェーハ500の表面528Aで反射される反射光であり、反射光Lは単結晶シリコン層521及びアモルファスシリコンから形成される領域530の界面からの反射光である。なお、反射されなかった赤外光はさらに支持基板側単結晶シリコンの領域510へと進むこととなる。
【0094】
結果を下記表1に記載する。本評価結果から、発明例1-1から発明例1-4ではアモルファスシリコンの領域が赤外反射膜として十分に機能することが確認された一方、従来例や比較例1で形成されたアモルファスシリコンの領域では赤外反射膜として機能するには不十分であることが確認された。
【0095】
【表1】
【0096】
[実験例2]
(発明例2-1)
支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハとして、直径:8インチ(203.2mm)、厚み:500μmのn型CZシリコンウェーハ(ドーパント:リン)を用意した。次いで、支持基板用シリコンウェーハをプラズマCVD装置に導入し、装置内の真空度を1×10-5Pa以下に保持した。そして、ステージ温度を800℃に維持した状態で、ソースガスとしてシランガス(CHSiH)を55sccm、キャリアガスとしてHガスを110sccm流して、プラズマCVD法により支持基板用シリコンウェーハの表面に膜厚15nmの多結晶シリコン成膜層を形成した。
【0097】
次いで、支持基板用シリコンウェーハ及び単結晶シリコン層用シリコンウェーハの両方をチャンバー内に導入し、真空度を1×10-5Pa以下に保持した。その後、支持基板用シリコンウェーハの表面及び活性層用ウェーハの表面に対し、アルゴンイオンを1.4keVで照射することで活性化処理を施し、両方のシリコンウェーハの表面に活性化領域(アモルファスシリコン)を形成した。そして、両基板を真空常温環境下で両ウェーハの活性化領域同士を貼り合わせて接合した。
【0098】
単結晶シリコン層用シリコンウェーハの厚みを10μm残すよう、貼り合せ面とは反対側から、研削及び研磨を行い、接合シリコンウェーハを得た。
【0099】
こうして得られた接合シリコンウェーハの接合界面をTEM観察したところ、15nmの厚みの多結晶シリコン成膜層のほかに1nmのアモルファスシリコンの領域が形成されていることが確認できた。すなわち、単結晶シリコン層用シリコンウェーハの表面を活性化処理した際に1nmの活性化領域が形成されたことが分かった。
【0100】
(発明例2-2)
発明例2-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmの多結晶シリコン成膜層を形成していたところ、発明例2-2においては、膜厚20nmの多結晶シリコン成膜層を形成した以外は、発明例2-1と同じ条件で発明例2-2に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0101】
(発明例2-3)
発明例2-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmの多結晶シリコン成膜層を形成していたところ、発明例2-3においては、膜厚25nmの多結晶シリコン成膜層を形成した以外は、発明例2-1と同じ条件で発明例2-3に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0102】
(発明例2-4)
発明例2-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmの多結晶シリコン成膜層を形成していたところ、発明例2-4においては、膜厚30nmの多結晶シリコン成膜層を形成した以外は、発明例2-1と同じ条件で発明例2-4に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0103】
(比較例2)
発明例2-1では支持基板用シリコンウェーハの表面に、プラズマCVD法により、膜厚15nmの多結晶シリコン成膜層を形成していたところ、比較例1においては、膜厚10nmの多結晶シリコン成膜層を形成した以外は、発明例2-1と同じ条件で比較例2に係る接合シリコンウェーハを作製した。
【0104】
(評価:赤外線反射率の評価)
実験例2における赤外線反射率の評価は、実験例1と同様に、前述の膜厚測定装置を用いて赤外線反射率を求めた。なお、実験例2において反射光L2は接合シリコンウェーハ500の表面528Aで反射される反射光であり、反射光L3は単結晶シリコン層521とアモルファスシリコン及び多結晶シリコンから形成される領域530の界面からの反射光である。
【0105】
結果を下記表2に記載する。本評価結果から、発明例2-1から発明例2-4ではアモルファスシリコン及び多結晶シリコンから形成される領域が赤外反射膜として機能することが確認された一方、比較例2で形成されたアモルファスシリコン及び多結晶シリコンの領域では赤外反射膜として機能するには不十分であることが確認された。
【0106】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明によれば、
厚みが薄く、かつ、赤外線反射率が高い接合シリコンウェーハを得ることができる。
【符号の説明】
【0108】
1,2,3,4,5,100,200,300,400 接合シリコンウェーハ
10,110,210,310,410 支持基板用シリコンウェーハ
120,220,320,420 単結晶シリコン層用シリコンウェーハ
30,130,230,330,430 赤外反射シリコン膜
131,231 アモルファスシリコン成膜層
35,335,435 多結晶シリコン成膜層
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図3
図4
図5
図6
図7
図8