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特開2024-21647基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法、クリーニング方法、およびプログラム
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  • 特開-基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法、クリーニング方法、およびプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021647
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法、クリーニング方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/31 20060101AFI20240208BHJP
   H01L 21/302 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01L21/31 B
H01L21/302 201A
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022124636
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(72)【発明者】
【氏名】赤江尚徳
【テーマコード(参考)】
5F004
5F045
【Fターム(参考)】
5F004AA15
5F004BA19
5F004BB28
5F004BD04
5F004DA00
5F004DA17
5F004DB07
5F045AA06
5F045AA15
5F045AB32
5F045AB33
5F045AB34
5F045AC00
5F045AC05
5F045AC07
5F045AC11
5F045AC12
5F045AC15
5F045AD04
5F045AD05
5F045AD06
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045BB15
5F045DP03
5F045DQ10
5F045EB06
5F045EE13
5F045EE17
5F045EF05
5F045EF20
5F045EK07
(57)【要約】      (修正有)
【課題】基板載置台に形成された意図しない膜の影響を低減可能とする基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法、クリーニング方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】基板処理装置100は、処理室201に配された基板載置台21の基板載置面211に基板が有る状態では処理室に処理ガスを供給し、基板載置面に基板が無い状態では、基板載置台の側面212aに、クリーニングガス及びクリーニング補助ガスを供給する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を処理可能な処理室と、
前記基板を載置する基板載置面を備えた基板載置台と、
前記処理室内に処理ガスを供給する処理ガス供給系と、
前記基板載置台の側面に、クリーニングガス及び前記クリーニングガスと反応するクリーニング補助ガスを供給するクリーニングガス供給系と、
前記処理室内の雰囲気を排気可能な排気系と、
前記基板載置面に基板が有る状態では前記処理室に処理ガスを供給し、
前記基板載置面に前記基板が無い状態では、前記前記基板載置台の側面に、クリーニングガス及びクリーニング補助ガスを供給するよう、
前記処理ガス供給系と前記クリーニングガス供給系と前記排気系とを制御可能なよう構成される制御部と、
を有する基板処理装置。
【請求項2】
前記クリーニングガス供給系は、
前記処理室に前記クリーニングガスまたは前記クリーニング補助ガスを供給可能な第一クリーニングガス供給系と、
前記第一クリーニングガス供給系から供給されるガスとは異なるガスを供給可能な第二クリーニングガス供給系と、
を有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記処理室の下方には、前記基板を搬送可能な搬送室が設けられ、
前記第二クリーニングガス供給系は前記搬送室を介して前記クリーニング補助ガスを供給するよう構成される請求項2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記クリーニングガス供給系は、前記基板載置台の側方で混合させるよう前記クリーニングガスと前記クリーニング補助ガスとを供給する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項5】
前記クリーニング補助ガスは、前記クリーニングガスと反応して、前記基板載置台の側面をクリーニング可能な性質を有する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項6】
更に、前記基板載置台を昇降可能な昇降部が設けられ、
前記制御部は、前記基板載置台の側方にクリーニングガス流路を形成するよう前記昇降部を制御する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項7】
前記クリーニングガス供給系は、
前記処理室に前記クリーニングガスまたは前記クリーニング補助ガスを供給可能な第一クリーニングガス供給系と、
前記第一クリーニングガス供給系から供給されるガスとは異なるガスを供給可能な第二クリーニングガス供給系とを有し、
前記第二クリーニングガス供給系から供給されたガスは、前記クリーニングガス流路に供給される請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項8】
前記クリーニングガスと前記クリーニング補助ガスとは、前記クリーニングガス流路にて反応されるよう構成される請求項7に記載の基板処理装置。
【請求項9】
前記第二ガス供給系から前記クリーニング補助ガスを供給する際は、
前記クリーニングガス流路の温度が前記処理室の温度よりも低くなるよう構成される
請求項6に記載の基板処理装置。
【請求項10】
前記基板載置台のうち、前記基板載置面が設けられた面には端面が設けられ、
前記クリーニングガス供給系は、前記端面上にて前記クリーニングガスと前記クリーニング補助ガスとを反応させるよう構成される請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項11】
更に、前記処理室の上流に設けられたシャワーヘッドを備え、
前記クリーニングガス供給系は、
前記クリーニングガスまたは前記クリーニング補助ガスを前記処理室に供給可能な第一クリーニングガス供給系と、
前記第一クリーニングガス供給系から供給されるガスとは異なるガスを前記基板載置台の側面に供給可能な第二クリーニングガス供給系とを有し、
前記排気系は、前記処理室の側方に配された処理室排気系と、前記シャワーヘッドに設けられたシャワーヘッド排気系とを備え、
前記処理室排気系の排気量が前記シャワーヘッド排気系の排気量よりも大きい状態で、前記クリーニングガス供給系は前記クリーニングガス及びクリーニング補助ガスを供給するよう構成する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項12】
更に、前記処理室の上流に設けられたシャワーヘッドを備え、
前記クリーニングガス供給系は、
前記クリーニングガスまたは前記クリーニング補助ガスを前記処理室に供給可能な第一クリーニングガス供給系と、
前記第一クリーニングガス供給系から供給されるガスとは異なるガスを前記基板載置台の側面に供給可能な第二クリーニングガス供給系とを有し、
前記排気系は、前記処理室の側方に配された処理室排気系と、前記シャワーヘッドに設けられたシャワーヘッド排気系とを有し、
前記シャワーヘッド排気系の排気量を前記処理室排気系の排気量よりも大きくした状態で、前記クリーニングガス供給系は前記クリーニングガス及びクリーニング補助ガスを供給するよう構成する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項13】
前記クリーニングガス供給系は、前記クリーニングガスの供給を開始してから所定時間経過後、前記クリーニング補助ガスの供給を開始する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項14】
前記クリーニングガス供給系は、前記クリーニングガスの供給を維持した状態で前記クリーニング補助ガスの供給を開始する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項15】
前記クリーニングガス供給系は、前記クリーニング補助ガスを前記処理室に供給せず、前記クリーニングガスの供給を開始する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項16】
前記制御部は、前記クリーニングガスの供給と、前記クリーニング補助ガスの供給とを少なくとも1回以上繰り返すよう制御する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項17】
前記クリーニングガスの供給と前記クリーニング補助ガスの供給の後、前記処理室内の雰囲気をパージする請求項16に記載の基板処理装置。
【請求項18】
更に、前記処理室の上流に設けられたシャワーヘッドを備え、
前記クリーニングガス供給系からクリーニング補助ガスを供給する間、前記シャワーヘッドに不活性ガスを供給する請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項19】
処理室に配された基板載置台の基板載置面に基板が有る状態では前記処理室に処理ガスを供給し、
前記基板載置面に前記基板が無い状態では、前記前記基板載置台の側面に、クリーニングガス及びクリーニング補助ガスを供給する
基板処理方法。
【請求項20】
処理室に配された基板載置台の基板載置面に基板が有る状態では前記処理室に処理ガスを供給し、
前記基板載置面に前記基板が無い状態では、前記前記基板載置台の側面に、クリーニングガス及びクリーニング補助ガスを供給する
半導体装置の製造方法。
【請求項21】
処理室に配された基板載置台の基板載置面に基板が有る状態では前記処理室に処理ガスを供給し、
前記基板載置面に前記基板が無い状態では、前記前記基板載置台の側面に、クリーニングガス及びクリーニング補助ガスを供給する
クリーニング方法。
【請求項22】
処理室に配された基板載置台の基板載置面に基板が有る状態では前記処理室に処理ガスを供給させ、
前記基板載置面に前記基板が無い状態では、前記前記基板載置台の側面に、クリーニングガス及びクリーニング補助ガスを供給させる
コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置、基板処理方法、半導体装置の製造方法、クリーニング方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程で用いられる基板処理装置として、処理室内に設けられた基板載置台上に基板を載置した状態で、処理室に処理ガスを供給し、基板を処理するよう構成されたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-183271号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
基板載置台には、意図しない膜が形成することがある。意図しない膜は基板処理に影響を及ぼす恐れがある。
【0005】
本開示は、基板載置台に形成された意図しない膜の影響を低減可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様によれば、処理室に配された基板載置台の基板載置面に基板が有る状態では前記処理室に処理ガスを供給し、 前記基板載置面に前記基板が無い状態では、前記前記基板載置台の側面に、クリーニングガス及びクリーニング補助ガスを供給する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板載置台に形成された意図しない膜の影響を低減可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一態様に係る基板処理装置の概略構成図である。
図2】本開示の一態様に係る基板処理装置のガス供給系を説明する説明図である。
図3】本開示の一態様に係る基板処理装置のガス供給系を説明する説明図である。
図4】本開示の一態様に係る基板処理装置のコントローラを説明する説明図である。
図5】本開示の一態様に係る基板処理工程を説明するフロー図である。
図6】本開示の一態様に係る基板処理工程の詳細を説明するフロー図である。
図7】本開示の一態様に係るクリーニング工程の詳細を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。以下、本開示の一態様について、主に図1図7を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない。
【0010】
以下の説明で例に挙げる基板処理装置は、半導体装置の製造工程で用いられるもので、処理対象となる基板に対して所定のプロセス処理を行うように構成されたものである。
処理対象となる基板は、例えば、半導体装置(半導体デバイス)が作り込まれる半導体基板としてのシリコンウエハ(以下、単に「ウエハ」という。)である。なお、本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体(集合体)」を意味する場合(すなわち、表面に形成された所定の層や膜等を含めてウエハと称する場合)がある。また、本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面(露出面)」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面、すなわち、積層体としてのウエハの最表面」を意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
ウエハに対して行う所定のプロセス処理(以下、単に「処理」ということもある。)としては、例えば、酸化処理、拡散処理、アニール処理、エッチング処理、プリクリーニング処理、チャンバクリーニング処理、成膜処理等がある。本実施形態では、特に成膜処理を行う場合を例に挙げる。
【0011】
本明細書における処理温度とは基板Sの温度または処理室201内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、処理時間とは、その処理を継続する時間を意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0012】
以下、実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。
【0013】
(1)基板処理装置の構成
図1は本態様に係る基板処理装置を説明する説明図である。以下に、図1の基板処理装置100を例に各構成を具体的に説明する。
【0014】
基板処理装置100は容器202を備えている。容器202は、例えば横断面が円形であり扁平な密閉容器として構成されている。また、容器202は、例えばアルミニウム(Al)やステンレス(SUS)などの金属材料により構成されている。容器202内には、基板Sを処理する処理空間205と、基板Sを処理空間205に搬送する際に基板Sが通過する搬送空間206とが形成されている。容器202は、上部容器202aと下部容器202bで構成される。上部容器202aと下部容器202bの間には仕切り板208が設けられる。処理空間205を構成する構造を処理室201と呼ぶ。本態様においては、処理室201は、後述する分散板234と基板載置台212とで主に構成される。
【0015】
下部容器202bの側面には、ゲートバルブ149に隣接した基板搬入出口148が設けられており、基板Sは基板搬入出口148を介して、隣接する搬送チャンバ(図示せず)との間を移動する。下部容器202bの底部には、リフトピン207が複数設けられている。
【0016】
処理空間205には、基板Sを載置する基板載置部210が配される。基板載置部210は、基板Sを載置する基板載置面211と、基板載置面211を表面に持つ基板載置台212、基板載置台212内に設けられた加熱源としてのヒータ213とを有する。ヒータ213は、基板載置面211の下方に配される。
【0017】
基板載置面211が設けられた面であって、基板載置面211の外周には、端面214が設けられる。基板処理時、基板載置面211には基板Sが載置されるが、端面214には基板Sが載置されない。
【0018】
基板載置台212には、リフトピン207が貫通する貫通孔215が、リフトピン207と対応する位置にそれぞれ設けられている。基板載置台212は、例えば石英で構成される。
【0019】
基板載置台212内には、ヒータ213の温度を測定する第一の温度測定器である温度測定器216を有する。温度測定器216は、配線220を介して第一の温度測定部である温度測定部221に接続される。
【0020】
ヒータ213には、電力を供給するための配線222が接続される。温度測定器216はヒータ制御部223に接続される。
【0021】
温度測定部221、ヒータ制御部223は後述するコントローラ400に電気的に接続されている。コントローラ400は、温度測定部221で測定した温度情報をもとにヒータ制御部223に制御情報を送信する。ヒータ制御部223は受信した制御情報を参照し、ヒータ213を制御する。
【0022】
基板載置台212の表面における熱分布は、基板載置面211の温度が、端面214や基板載置台212の側面212aよりも高くなるよう構成されている。このような状態は、基板載置面211では熱が閉じ込められ、端面214や側面212aでは熱が逃げてしまうことが一因と考えられる。具体的には、基板載置面211上では、基板S等により熱が閉じ込められるものの、基板載置台212の側方では、端面214や側面212aから熱が逃げてしまう。
【0023】
基板載置台212は、シャフト217によって支持される。シャフト217は、容器202の底部を貫通しており、さらに容器202の外部で昇降部218に接続されている。
【0024】
昇降部218はシャフト217を支持する支持軸218aと、支持軸218aを昇降させたり回転させたりする作動部218bを主に有する。作動部218bは、例えば昇降を実現するためのモータを含む昇降機構218cと、支持軸218aを回転させるための歯車等の回転機構218dを有する。
【0025】
昇降部218には、昇降部218の一部として、作動部218bに昇降・回転指示するための指示部218eを設けても良い。指示部218eはコントローラ400に電気的に接続される。指示部218eはコントローラ400の指示に基づいて、作動部218bを制御する。
【0026】
昇降部218を作動させてシャフト217および基板載置台212を昇降させることにより、基板載置台212は、載置面211上に載置される基板Sを昇降させることが可能となっている。なお、シャフト217下端部の周囲はベローズ219により覆われており、これにより処理空間205内は気密に保持されている。
【0027】
基板載置台212は、基板Sの搬送時には、基板載置面211が基板搬入出口148に対向する基板搬送ポジションまで下降し、基板Sの処理時には、図1で示されるように、基板Sが処理空間205内の基板処理ポジションとなるまで上昇する。基板処理ポジションは第一ポジション、基板搬送ポジションは第二ポジションとも呼ぶ。
【0028】
基板載置台212が基板処理ポジションまで上昇すると、基板載置台212の側面212aと仕切り板208の側面208aとの間に、クリーニングガス流路281が形成される。クリーニングガス流路281については後述する。
【0029】
処理空間205の上部(上流側)には、ガス分散機構としてのシャワーヘッド(SHとも呼ぶ)230が設けられている。シャワーヘッド230の蓋231には貫通孔231aが設けられる。貫通孔231aは後述する共通ガス供給管242と連通する。シャワーヘッド230内には、バッファ空間232が構成される。
【0030】
シャワーヘッド230には、バッファ空間232と連通するよう、シャワーヘッド排気管251が接続される。更に、シャワーヘッド230には、シャワーヘッドヒータ235が設けられている。なお、本態様においてはヒータ213を第一ヒータ、シャワーヘッドヒータ235を第二ヒータと呼んでもよい。
【0031】
バッファ空間232には、整流板265が設けられている。整流板265は、ガス導入口241を中心として基板Sの径方向に向かうにつれ径が広がる円錐形状である。整流板265のエッジ下端は、基板Sの端部よりも外周に位置する様に構成される。整流板265は、供給されたガスを分散板234方向に効率よく移動させる構成である。
【0032】
上部容器202aはフランジを有し、フランジ上に支持ブロック233が載置され、固定される。支持ブロック233はフランジ233aを有し、フランジ233a上には分散板234が載置され、固定される。更に、蓋231は支持ブロック233の上面に固定される。
【0033】
続いて、図2を用いてガス供給系を説明する。
共通ガス供給管242には、第一ガス供給管243a、第二ガス供給管244a、第三ガス供給管245a、第四ガス供給管248aが接続されている。
【0034】
第一ガス供給管243aには、上流方向から順に、第一ガス源243b、流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)243c、及び開閉弁であるバルブ243dが設けられている。
【0035】
第一ガス源243bは第一元素を含有する第一ガス(「第一元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第一元素含有ガスは、原料ガス、すなわち、処理ガスの一つである。ここで、第一元素は、例えばシリコン(Si)である。すなわち、第一元素含有ガスは、例えばシリコン含有ガスである。具体的には、ジクロロシラン(SiHCl,dichlorosilane:DCS)ガスやテトラエトキシシラン(Si(OC,Tetraethoxysilane:TEOS)ガス等が用いられる。以下の説明では、DCSガスを用いた例について説明する。
【0036】
主に、第一ガス供給管243a、MFC243c、バルブ243dにより、第一ガス供給系243(シリコン含有ガス供給系ともいう)が構成される。第一ガス供給系に第一ガス源243bを含めてもよい。
【0037】
第二ガス供給管244aには、上流方向から順に、第二ガス源244b、MFC244c、及びバルブ244dが設けられている。
【0038】
第二ガス源244bは第二元素を含有する第二ガス(以下、「第二元素含有ガス」とも呼ぶ。)源である。第二元素含有ガスは、処理ガスの一つである。なお、第二元素含有ガスは、反応ガスまたは改質ガスとして考えてもよい。
【0039】
ここで、第二元素含有ガスは、第一元素と異なる第二元素を含有する。第二元素としては、例えば、酸素(O)、窒素(N)、炭素(C)のいずれか一つである。本態様では、第二元素含有ガスは、例えば窒素含有ガスであり、アンモニア(NH)ガスを用いる例を説明する。
【0040】
基板Sをプラズマ状態の第二ガスで処理する場合、第二ガス供給管にプラズマ生成部としてのリモートプラズマユニット244eを設けてもよい。
【0041】
主に、第二ガス供給管244a、MFC244c、バルブ244dにより、第二ガス供給系244(反応ガス供給系ともいう)が構成される。第二ガス供給系244にプラズマ生成部を含めてもよい。更には、第二ガス供給系に第二ガス源244bを含めてもよい。
【0042】
第三ガス供給管245aには、上流方向から順に、第三ガス源245b、MFC245c、及びバルブ245dが設けられている。
【0043】
第三ガス源245bは不活性ガス源である。不活性ガスは、例えば、窒素(N)ガスである。
【0044】
主に、第三ガス供給管245a、MFC245c、バルブ245dにより、第三ガス供給系245が構成される。第三ガス供給系に第三ガス源245bを含めてもよい。
【0045】
不活性ガス源245bから供給される不活性ガスは、基板処理工程では、容器202やシャワーヘッド230内に留まったガスをパージするパージガスとして作用する。また、クリーニング工程では、必要に応じて、クリーニングガスのキャリアガスまたは希釈ガスとして用いられる。この場合、MFC245c、バルブ245d、共通ガス供給管242を介して、シャワーヘッド230内に供給される。
【0046】
第四ガス供給管248aには、上流方向から順に、第四ガス源248b、MFC248c、バルブ248dが設けられている。クリーニングガスをプラズマ状態にする場合は、リモートプラズマユニット248eを設けても良い。
【0047】
クリーニングガス供給時、第三ガス供給系245から不活性ガスを供給する場合は、リモートプラズマユニット248eを、第三ガス供給管245aと第四ガス供給管248aとの合流地点の下流に設けるのが望ましい。このようにすることで、プラズマ状態となったクリーニングガスに不活性ガスが衝突し、クリーニングガスの失活を抑制できる。
【0048】
第四ガス源248bはクリーニングガス源である。クリーニングガスは、例えばNFやFガスである。第四ガス源248bから供給されるクリーニングガス(第4のガス)は、クリーニング工程ではシャワーヘッド230や処理容器202に付着した副生成物等を除去するクリーニングガスとして作用する。具体的には、クリーニングガスとして、例えば三フッ化窒素(NF)ガスを用いることが考えられる。また、例えば、フッ化水素(HF)ガス、三フッ化塩素(ClF)ガス、フッ素(F)ガス等を用いても良く、またこれらを組合せて用いても良い。なお、クリーニングガスは、F成分を含むことから、F含有ガスと呼んでも良い。クリーニングガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0049】
主に、第四ガス供給管248a、MFC248c、バルブ248dにより、第四ガス供給系248が構成される。第四ガス供給系248には、リモートプラズマユニット248eを含めても良い。更には、第四ガス供給系に第四ガス源248bを含めてもよい。
【0050】
第四ガス源248bから供給されるクリーニングガスは、処理室201やシャワーヘッド230内をクリーニングする際に供給される。
【0051】
図2では、共通ガス供給管(第1供給管)242を介して、第一ガス供給系243、第二ガス供給系244、第三ガス供給系245および第四ガス供給系248のそれぞれと処理室201とを連通させる構成の例を説明したが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、第一ガス供給系243、第二ガス供給系244、第三ガス供給系245、第四ガス供給系248のそれぞれにおけるガス供給管を、直接シャワーヘッド230等に接続するようにしてもよい。
【0052】
なお、第一ガス供給系243、第二ガス供給系244、第三ガス供給系245のそれぞれ、またはこれらの組み合わせを「処理ガス供給系」と呼んでもよい。その場合に、処理ガス供給系は、シャワーヘッド230や処理室201等に対して、処理ガスまたはパージガスを供給するものとして機能することになる。
【0053】
下部容器202bには、第五ガス供給管271が連通するよう構成される。図3に記載されているように、第五ガス供給管271には、上流方向から順に、第五ガス源272、MFC273、及びバルブ274が設けられている。第五ガス供給系270には、リモートプラズマユニット275を含めても良い。
【0054】
第五ガス源272は第二クリーニングガス源である。第二クリーニングガス源272には、第一クリーニングガスと異なる第二クリーニングガスが貯留される。本態様においては、第二クリーニングガスとしてのクリーニング補助ガスが貯留される。クリーニング補助ガスは、第一クリーニングガスの活性化を補助する性質を備えるガスである。具体的には、例えば、NOガス、Oガス、HOガス、アルコール等の酸素含有ガスが挙げられる。クリーニング補助ガスとしては、これらのうち1以上を用いることができる。
【0055】
主に、第五ガス供給管271、MFC273、バルブ274により、第五ガス供給系270が構成される。第五ガス供給系270には、第五ガス源272を含めても良い。更には、第五ガス供給系270には、リモートプラズマユニット275を含めても良い。
【0056】
第四ガス供給系248は、第一クリーニングガス供給系とも呼ぶ。第五ガス供給系270は第二クリーニングガス供給系とも呼ぶ。また、第一クリーニングガス供給系から供給されるガスは第一クリーニングガスとも呼び、第二クリーニングガス供給系から供給されるガスは第二クリーニングガスとも呼ぶ。更には、第一クリーニングガス供給系と第二クリーニングガス供給系とを合わせてクリーニングガス供給系とも呼ぶ。
【0057】
処理空間205は、排気バッファ構造261を介して排気管262が連通される。排気バッファ構造261は基板Sの外周を囲むように円周状に設けられる。本態様においては、仕切り板208と上部容器202aの間に配される。排気バッファ構造261のうち下面側は、基板処理ポジションにおける基板載置面211と同等の高さとなるよう構成される。したがって、クリーニングガス流路281は排気バッファ構造261の下面よりも下方に配されることになる。
【0058】
排気管262は、排気バッファ構造261を介して処理空間205に連通するよう、排気バッファ構造261の上部側であって、上部容器202aに接続される。排気管262には、処理空間205内を所定の圧力に制御する圧力制御器であるAPC(AutoPressure Controller)266が設けられる。APC266は開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、コントローラ400からの指示に応じて排気管262のコンダクタンスを調整する。
【0059】
排気管262においてAPC266の上流側にはバルブ267が設けられる。排気管262とバルブ267、APC266をまとめて処理室排気系と呼ぶ。さらに、排気管262の下流には、DP(Dry Pump。ドライポンプ)269が設けられる。DP269は、排気管262を介して、処理空間205の雰囲気を排気する。処理室排気系にDP269を含めてもよい。
【0060】
排気管251は、バッファ空間232に連通するよう、シャワーヘッド230に接続される。例えば天井231に接続される。排気管251には、バッファ空間232を所定の圧力に制御する圧力制御器であるAPC(AutoPressure Controller)253が設けられる。APC253は開度調整可能な弁体(図示せず)を有し、コントローラ400からの指示に応じて排気管251のコンダクタンスを調整する。
【0061】
排気管251においてAPC253の上流側にはバルブ252が設けられる。排気管251とバルブ252、APC253をまとめてシャワーヘッド排気系と呼ぶ。さらに、シャワーヘッド排気管251の下流には、DP(Dry Pump)254が設けられる。DP254は、排気管251を介して、バッファ空間232の雰囲気を排気する。シャワーヘッド排気系にDP254を含めてもよい。さらに、処理室排気系とシャワーヘッド排気系とをまとめて排気系と呼んでもよい。
【0062】
基板処理装置100は、基板処理装置100の各部の動作を制御するコントローラ400を有している。
【0063】
コントローラ400の概略を図4に示す。制御部であるコントローラ400は、CPU(Central Processing Unit)401、RAM(Random Access Memory)402、記憶装置としての記憶部403、I/Oポート404を備えたコンピュータとして構成されている。RAM402、記憶部403、I/Oポート404は、内部バス405を介して、CPU401とデータ交換可能なように構成されている。基板処理装置100内のデータの送受信は、CPU401の一つの機能でもある送受信指示部406の指示により行われる。
【0064】
上位装置294にネットワークを介して接続されるネットワーク送受信部293が設けられる。ネットワーク送受信部293は、ロット中の基板Sの処理履歴や処理予定に関する情報等を受信することが可能である。
【0065】
記憶部403は、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶部403内には、基板処理の手順や条件などが記載されたプロセスレシピ409や、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム410が読み出し可能に格納されている。
【0066】
なお、プロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ400に実行させ、所定の結果を得ることが出来るように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単にプログラムともいう。なお、本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。また、RAM402は、CPU401によって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0067】
I/Oポート404は、ゲートバルブ149、昇降機構218、各圧力調整器、各ポンプ、ヒータ制御部223等、基板処理装置100の各構成に接続されている。
【0068】
CPU401は、記憶部403からの制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置291からの操作コマンドの入力等に応じて記憶部403からプロセスレシピを読み出すように構成されている。そして、CPU401は、読み出されたプロセスレシピの内容に沿うように、ゲートバルブ149の開閉動作、昇降機構218の昇降動作、温度測定部221、ヒータ制御部223、各ポンプのオンオフ制御、MFCの流量調整動作、バルブ等を制御可能に構成されている。
【0069】
なお、コントローラ400は、上述のプログラムを格納した外部記憶装置(例えば、ハードディスク等の磁気ディスク、DVD等の光ディスク、MOなどの光磁気ディスク、USBメモリ等の半導体メモリ)292を用いてコンピュータにプログラムをインストールすること等により、本技術に係るコントローラ400を構成することができる。なお、コンピュータにプログラムを供給するための構成は、外部記憶装置292を介して供給する場合に限らない。例えば、インターネットや専用回線等を用い、外部記憶装置292を介さずにプログラムを供給するようにしても良い。なお、記憶部403や外部記憶装置292は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成される。以下、これらを総称して、単に記録媒体ともいう。なお、本明細書において、記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶部403単体のみを含む場合、外部記憶装置292単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。
【0070】
(2)基板処理工程
次に、半導体製造工程の一工程として、上述した構成の基板処理装置100を用いて、基板Sを処理する基板処理工程について説明する。
ここでは、基板処理工程として、基板S上に薄膜を形成する場合を例に挙げる。特に、本実施形態においては、原料ガス(第1のガス)としてDCSガスを用い、反応ガス(第2の処理ガス)としてNHガスを用いて、これらのガスを交互に供給して基板S上にシリコン含有膜としてのSiN(シリコン窒化)膜を形成する例について説明する。
なお、以下の説明において、基板処理装置100を構成する各部の動作は、コントローラ400により制御される。
【0071】
図5は、本実施形態に係る基板処理工程の手順を示すフロー図である。図6は、図5における成膜工程の詳細を示すフロー図である。図7図5におけるクリーニング工程の詳細を示すフロー図である。
【0072】
(基板搬入工程:S102)
基板処理装置100において、基板処理工程に際しては、まず、基板搬入工程S102を行う。基板搬入工程S102では、基板載置台212が基板搬送ポジション(図1の点線)にある状態で、処理容器202内に基板Sを搬入する。そして、処理容器202内に基板Sを搬入したら、図示せぬ真空搬送ロボットを処理容器202の外へ退避させ、ゲートバルブ205を閉じて処理容器202内を密閉する。その後、基板載置台212を上昇させることにより、基板載置台212に設けられた基板載置面211上に基板Sを載置させる。さらに、基板載置台212を基板処理ポジションまで上昇させることにより、処理室201内の処理位置まで基板Sを上昇させる。
【0073】
基板Sが搬送空間203に搬入された後、処理室201内の基板処理ポジションまで上昇すると、APCバルブ266を稼働させて、排気バッファ室261とAPCバルブ266と真空ポンプ269の間を連通させる。APCバルブ266は、排気配管262のコンダクタンスを調整することで、真空ポンプ269による排気バッファ室261の排気流量を制御し、排気バッファ室261に連通する処理室201を所定の圧力に維持する。
【0074】
また、基板Sを基板載置台212の上に載置する際は、基板載置台212の内部に埋め込まれたヒータ213に電力を供給し、基板Sの表面が所定の処理温度となるよう制御される。この際、ヒータ213の温度は、温度測定器216により検出された温度情報に基づいてヒータ213への通電具合を制御することによって調整される。
【0075】
このようにして、基板搬入工程S102では、処理室201内を所定の処理圧力となるように制御するとともに、基板Sの表面温度が所定の処理温度となるように制御する。ここで、所定の処理温度、処理圧力とは、後述する成膜工程S104において、サイクリック処理によりSiN膜を形成可能な処理温度、処理圧力である。すなわち、第1処理ガス(原料ガス)供給工程S202で供給する原料ガスが自己分解しない程度の処理温度、処理圧力である。具体的には、処理温度は室温以上500℃以下、好ましくは室温以上400℃以下、処理圧力は50~5000Paとすることが考えられる。この処理温度、処理圧力は、後述する成膜工程S104においても維持されることになる。
【0076】
(成膜工程:S104)
基板搬入S102の後は、次に、成膜工程S104を行う。以下、図6を参照し、成膜工程S104について詳細に説明する。なお、成膜工程S104は、異なる処理ガスを交互に供給する工程を繰り返すサイクリック処理である。
【0077】
(第一処理ガス供給工程:S202)
成膜工程S104では、まず、基板Sがある状態で、第1処理ガス(原料ガス)供給工程S202を行う。第一処理ガス供給工程S202では、原料ガス供給系243から処理室201内に原料ガス(第1のガス)としてDCSガスを供給する。処理室201内に供給されたDCSガスは、基板処理ポジションにある基板Sの面上に到達する。これにより、基板Sの表面には、DCSガスが接触することによって「第1元素含有層」としてのシリコン含有層が形成される。シリコン含有層は、例えば、処理容器202内の圧力、DCSガスの流量、基板載置台212の温度、処理室201の通過にかかる時間等に応じて、所定の厚さおよび所定の分布で形成される。
【0078】
DCSガスの供給を開始してから所定時間経過後、バルブ243dを閉じて、DCSガスの供給を停止する。なお、第一処理ガス供給工程S202では、APCバルブ266によって処理室201内の圧力が所定圧力となるように制御される。
【0079】
(パージ工程:S204)
第一処理ガス供給工程S202の後は、次に、パージガス供給系245からNガスを供給し、処理室201およびシャワーヘッド230内の雰囲気のパージを行う。これにより、第一処理ガス供給工程S202で基板Sに結合できなかったDCSガスは、真空ポンプ269により処理室201から除去される。
【0080】
(第二処理ガス供給工程:S206)
パージ工程S204の後は、次に、反応ガス供給系244から処理室201内に反応ガス(第2のガス)としてNHガスを供給する。NHガスは、RPU244eによりプラズマ状態とされ、基板処理ポジションにある基板Sの面上に照射されるようにしてもよい。これにより、基板Sの面上では、既に形成されているシリコン含有層が改質され、例えばSi元素およびN元素を含有する層であるSiN膜が形成される。
【0081】
そして、所定時間の経過後、バルブ244dを閉じて、NHガスの供給を停止する。なお、第二処理ガス供給工程S206においても、上述した第一処理ガス供給工程S202と同様に、APCバルブ266によって処理室201の圧力が所定圧力となるように制御される。
【0082】
(パージ工程:S208)
第二処理ガス供給工程S206の後は、パージ工程S208を実行する。パージ工程S208における各部の動作は、上述したパージ工程S204の場合と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0083】
(判定工程:S210)
パージ工程S208を終えると、続いて、コントローラ400は、上述した一連の処理(S202~S208)を1つのサイクルとし、その1サイクルを所定回数(n cycle)実施したか否かを判定する。そして、所定回数実施していなければ、第一処理ガス供給工程S202からパージ工程S208までの1サイクルを繰り返す。一方、所定回数実施したときには、成膜工程S104を終了する。
【0084】
このように、成膜工程S104では、第一処理ガス供給工程S202からパージ工程S208までの各工程を順次行うことで、基板Sの面上に所定の厚さのSiN膜が堆積される。そして、これらの各工程を1サイクルとし、その1サイクルを所定回数繰り返すことで、基板Sの面上に形成されるSiN膜が所望の膜厚に制御される。
【0085】
(基板搬出工程:S106)
以上のような成膜工程S104の終了後、基板処理装置100では、図2に示すように、基板搬出工程S106を行う。基板搬出工程S106では、上述した基板搬入工程S102と逆の手順にて、処理済みの基板Sを処理容器202の外へ搬出する。そして、基板搬入工程S102と同様の手順にて、次に待機している未処理の基板Sを処理容器202内に搬入する。その後、搬入された基板Sに対しては、成膜工程S104が実行されることになる。
【0086】
(判定工程:S108)
基板搬出工程S106を終えると、基板処理装置100では、上述した一連の処理(S102~S106)を1つのサイクルとし、その1サイクルを所定回数実施したか否か、すなわち成膜工程S104で処理した基板Sが所定の枚数に到達したか否かを判定する。そして、所定回数実施していなければ、処理した基板Sが所定の枚数に到達していないので、基板搬入工程S102から基板搬出工程S106までの1サイクルを繰り返す。一方、所定回数実施したときには、基板処理工程を終了する。
【0087】
基板処理工程が終了すると、処理容器202内は、基板Sが存在しない状態となる。
【0088】
ところで、処理ガスは基板S上に供給され、排気バッファを介して排気されるが、その途中で、側面212aに回り込むことがある。そのため、側面212aにガスが付着し、それが副生成物となるおそれがある。
【0089】
ところで、基板載置面211上では、基板Sにコントロールされた緻密な膜を形成するための温度に調整されている。一方、側面212aや端面214では、緻密な膜を形成する必要がないので、温度コントロールが為されていない。そのため、側面212aに付着した、コントロールされていない膜中では応力のばらつきが発生する。そうすると側面212aに付着した膜が剥がれてパーティクルとなる恐れがある。
【0090】
そこで、所定枚数基板を処理した後、クリーニング工程S110を実施する。なお、ここでは所定枚数処理した後と説明したが、それに限るものではなく、所定の累積処理時間の後にクリーニング工程S110を実施するなどしてもよい。
【0091】
(クリーニング工程S110)
次に基板処理方法または半導体装置の製造方法の一工程として、基板処理装置100の処理容器202内に対するクリーニング工程S110の詳細を説明する。
【0092】
上述した基板処理工程を繰り返し行うと、処理容器202内(特に、処理室201内)では、副生成物等の不要な反応物が処理容器の壁面や端面214、側面212aに付着してしまうおそれがある。そのため、基板処理装置100は、所定のタイミング(例えば、所定回数の基板処理工程の実行後、所定枚数の基板Sを処理した後、前回のクリーニング処理から所定の時間が経過した後等)で、処理室201のクリーニング工程を行う。
【0093】
クリーニング工程S110では、基板載置台212上に基板Sが無い状態でクリーニングガスとクリーニング補助ガスとを供給し、バッファ空間232内や処理室201、基板載置台212の端面214、側面212aのうち、少なくともいずれかに付着した付着物(反応副生成物等)を除去する。このとき、処理室201内に基板が無い状態で、且つ処理ガスが存在しない状態でクリーニング処理が為される。
【0094】
クリーニング処理では、たとえば以下の条件で処理する。
処理室内温度:200℃~600℃、
処理室内圧力:133Pa(1Torr)~66500Pa(500Torr)、
NFガス供給流量:200sccm(0.2slm)~4000sccm(4slm)、
NOガス供給流量:200sccm(0.2slm)~4000sccm(4slm)、
N2ガス供給流量:500sccm(0.5slm)~20000sccm(20sl
m)
【0095】
なお、本明細書における「1~2000Pa」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「1~2000Pa」とは「1Pa以上2000Pa以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0096】
なお、クリーニングガスの希釈やキャリアガスが必要な場合は、バルブ245dを開として、不活性ガスを供給する。
【0097】
次に、本技術の比較例を説明する。比較例として、クリーニング補助ガスを供給せずに、クリーニングガスのみを処理室201に供給することが考えられる。たとえば、第四ガス供給系から供給された第一クリーニングガスは、バッファ空間232を介して処理室201に供給される。処理室201に供給されたクリーニングガスは、処理室201を構成する壁等をクリーニングし、その後排気バッファ構造261を介して、排気管262から排気される。
【0098】
本件開示者による鋭意検討の結果、比較例の方法では、クリーニングガス流れの下流側では、クリーニングが不十分な箇所があることを発見した。クリーニングが不十分な箇所とは、例えば端面214や側面212aである。次にクリーニングが不十分となる理由を説明する。クリーニングガスはバッファ空間232と処理室201とを介して端面214や側面212aに到達する。クリーニングガスは、バッファ空間232や処理室201でクリーニング処理をするため、端面214や側面212aに到達する前に失活してしまう。そのため、端面214や側面212aでは、クリーニングガスのエネルギーが不十分になってしまう。
【0099】
特に、クリーニングガスは排気バッファ構造261を介して排気されるため、クリーニングガスの一部は側面212aにたどり着くものの、多くのクリーニングガスは排気バッファ261方向に流れてしまう。つまり、側面212aでは、クリーニングガスの量がより不十分な可能性がある。
【0100】
このような懸念事項に対して本開示では、端面214や側面212aを十分にクリーニングする方法を説明する。以下に、具体的な内容を説明する。
【0101】
(第一ポジション移動工程S302)
続いて、第一ポジション移動工程S302を説明する。基板載置台212上に基板が無い状態で、基板載置台212を第一ポジションに移動する。このようにすることで、側面212aと側面208aとの間に、クリーニングガス流路281を形成する。このときヒータ213は、側面212aの温度、即ちクリーニングガス流路の温度がクリーニングガスとクリーニング補助ガスとが反応してクリーニング処理可能な温度に設定される。なお、基板載置台212の構成から、前述のように、クリーニングガス流路の温度は処理室201の温度よりも低くなる。
【0102】
(第一クリーニング工程S304)
続いて、第一クリーニング工程S304を説明する。基板載置台212を第一ポジションに移動したら、ヒータ213を稼働させた状態で、第一クリーニングガス供給系248からクリーニングガスを供給する。更に、バルブ267を開とし、バルブ252を閉とする。ヒータ213は稼働された状態であるため、クリーニングガス流路の温度は処理室201の温度よりも低くなる。
【0103】
クリーニングガスは、シャワーヘッド230を介して処理室201に供給される。なお、ここではバルブ267を開とし、バルブ252を閉として説明したが、クリーニングガス及びクリーニング補助ガスが排気バッファ構造261から排気できればよく、例えば、処理室排気系の排気量をシャワーヘッド排気系の排気量よりも多くするよう、バルブの開度等を調整してもよい。
【0104】
より良くは、クリーニング補助ガスが、クリーニングガスの処理室201内やクリーニングガス流路281内への拡散を阻害しないよう制御する。例えば、バルブ248dを開として、処理室201内やクリーニングガス流路にクリーニングガスを供給し、バルブ274を閉として処理室201内やクリーニングガス流路281内にてクリーニング補助ガスを供給しないようにする。
【0105】
このようにすると、クリーニングガスの拡散をクリーニング補助ガスが阻害することを抑制できる。したがってクリーニングガスを処理室201内に拡散でき、処理室201内、端面214、側面212aにクリーニングガスを供給可能とする。仮に処理室201内やクリーニングガス流路281内に対して、クリーニングガスよりも先にクリーニング補助ガスが供給された場合、端面214や側面212aへのクリーニングガスの拡散が不十分となり、その結果不十分なクリーニング処理となることが考えられる。
【0106】
(第二クリーニング工程S306)
第二クリーニング工程S306を説明する。
クリーニングガスの供給を開始して、所定時間経過したら、第二クリーニングガス供給系270からクリーニング補助ガスを供給する。このとき、第一クリーニング工程S304に引き続いて、クリーニングガスの供給と処理室排気系からの排気を行う。さらにヒータ213の稼働を維持する。そのため、クリーニングガス流路の温度は処理室201の温度よりも低い状態が維持される。
【0107】
クリーニング補助ガスは、搬送空間206を介してクリーニングガス流路281に供給される。このとき、クリーニングガス流路281では、クリーニングガスとクリーニング補助ガスとが合流して反応し、クリーニングガスが活性化される。これにより、側面212aをクリーニングすることができる。合流したクリーニングガスとクリーニング補助ガスは、排気バッファ261から排気される。
【0108】
なお、本工程における所定時間とは、クリーニングガス流路281にてクリーニングガスとクリーニング補助ガスとが合流可能な時間を示す。例えば、少なくともクリーニングガスがクリーニングガス流路281に到達する時間を示す。クリーニング補助ガスの供給を所定時間遅延させることで、クリーニングガスとクリーニング補助ガスとをクリーニングガス流路281で合流させる。
【0109】
このとき、処理室排気系と第一クリーニングガス供給系と第二クリーニングガス供給系の協働で、クリーニングガス流路281にてクリーニングガスとクリーニング補助ガスとが合流できるよう、制御する。
【0110】
クリーニングガス流路281では、失活したクリーニングガスがクリーニング補助ガスによって活性化され、側面212aをクリーニングする。
【0111】
なお、所定時間の経過を待たずにクリーニング補助ガスを供給した場合、クリーニングガス流路281がクリーニング補助ガスで満たされることになる。そうすると、クリーニングガス流路281が高圧となるため、クリーニングガスはクリーニングガス流路281に供給されにくい環境となり、側面212aへのクリーニングが不十分となるおそれがある。これに対して、上記のように所定時間経過後にクリーニング補助ガスを供給することで、クリーニングガス流路にクリーニングガスを供給することができ、したがって側面212aを十分にクリーニングすることができる。
【0112】
(第三クリーニング工程:S308)
続いて、第三工程S308を説明する。
ここでは、第二工程S306にてクリーニングガスの供給を開始してから所定時間経過後、第一クリーニングガス供給系からのクリーニングガス供給を維持した状態で、第二クリーニングガス供給系からクリーニング補助ガスを供給する。更に、バルブ267を閉とし、バルブ252を開とし、ヒータ213の稼働を維持する。クリーニングガス流路の温度は処理室201の温度よりも低い状態が維持される。
【0113】
このようにすることで、クリーニング補助ガスは、搬送室206、クリーニングガス流路281、端面214を介して、シャワーヘッド排気系から排気される。端面214上では、失活したクリーニングガスとクリーニング補助ガスが合流して反応し、失活したクリーニングガスがクリーニング補助ガスによって活性化され、端面214上をクリーニングする。
【0114】
なお、本工程においては、端面214上でクリーニングガスとクリーニング補助ガスとが合流した後、クリーニングガスの供給量を第二クリーニング工程よりも小さくしても良い。例えば、クリーニングガスの供給を停止しても良い。そうすると、端面214上では残留したクリーニングガスとクリーニング補助ガスとが反応して端面214上をクリーニングする。これに対して、基板載置面211や分散板234では、新たなクリーニングガスが補充されないため、クリーニングガスとクリーニング補助ガスとが合流することを抑制できる。仮に、基板載置面211や分散板234の分散孔、分散板270等でクリーニングガスとクリーニング補助ガスとが合流すると、クリーニングガスがより活性化され、基板載置面211や分散板234、分散板270がエッチングされる恐れがある。
【0115】
とりわけ、成膜工程S104では基板載置面211に基板が載置されていることから、基板載置面211上ではクリーニング対象物が少なく、したがってエネルギーの高いクリーニングガスと接触すると基板載置面211エッチングされやすい。
【0116】
特に基板載置台210が石英等の熱透過部材の場合、基板載置面211がエッチングされることでヒータ213からの熱が乱反射し、基板Sの加熱ムラにつながる恐れがある。本技術の場合、エッチングを抑制できるので、熱透過部材を用いた基板載置台210であっても、加熱ムラを防ぐことができる。
【0117】
更には、第三ガス供給系から不活性ガスを供給しても良い。このようにすることで基板載置面211や分散板234の分散孔、分散板27近傍からクリーニングガスの残留ガスをパージすることができる。従って更にエッチングを抑制できる。
【0118】
なお、ここではバルブ252を開とし、バルブ267を閉として説明したが、端面214のクリーニングに寄与したクリーニングガス及びクリーニング補助ガスがシャワーヘッド排気系から排気できればよく、例えば、シャワーヘッド排気系の排気量を処理室排気系の排気量よりも多くするよう、バルブの開度等を調整してもよい。
【0119】
(パージ工程S310)
第三クリーニング工程S308が終了したら、バルブ252を開にした状態で第三ガス供給系から不活性ガスを供給し、処理室201及びバッファ空間232から、クリーニングガス及びクリーニング補助ガスを除去する。このとき、バルブ267を開としてもよい。
【0120】
なお、上記態様では第一クリーニング工程S304から第三クリーニング工程S308までの組み合わせを一回行った場合を説明したが、それに限るものではなく、例えば第一クリーニング工程S304から第三クリーニング工程S308までの組み合わせを、二回以上行っても良い。このようにすることで、新鮮なクリーニングガスとクリーニング補助ガスによりクリーニング処理が為されるので、より緻密なクリーニングが可能となる。
【0121】
また、第一クリーニング工程S304から第二クリーニング工程S308を一回以上繰り返す場合には、パージ工程S310を行うことが望ましい。これにより、常に新鮮なクリーニングガス及びクリーニング補助ガスを用いることができるので、より緻密なクリーニングが可能となる。
<他の実施形態>
【0122】
以上に、本開示の実施形態を具体的に説明したが、本開示が上述の各実施形態に限定されることはなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
【0123】
例えば、上述した実施形態では、クリーニングガスを第一クリーニングガス供給系248から、クリーニング補助ガスを第二クリーニングガス供給系270から供給するよう説明したが、それに限るものではない。クリーニングガス流路218でクリーニングガスとクリーニング補助ガスとが合流できればよく、例えば第一クリーニングガス供給系248からクリーニング補助ガスを供給し、第二クリーニングガス供給系270かからクリーニングガスを供給しても良い。
【0124】
また、上述した実施形態では、基板処理工程において、原料ガス(第1のガス)としてDCSガスを用い、反応ガス(第2の理ガス)としてNHガスを用いて、これらのガスを交互に供給してウエハ上にSiN膜を形成する場合を例に挙げたが、本開示がこれに限定されることはない。すなわち、成膜処理に用いる処理ガスは、DCSガスやNHガス等に限られることはなく、他の種類のガスを用いて他の種類の薄膜を形成しても構わない。さらには、3種類以上の処理ガスを用いる場合であっても、本開示を適用することが可能である。
【0125】
また、上述した実施形態では、ウエハ上に窒化膜であるSiN膜を形成する場合に、クリーニングガスとしてNFガスやFガス等を用い、クリーニング補助ガスとしてNOガスやOガス等を用いる例を挙げたが、本開示がこれに限定されることはない。例えば、ウエハ上に酸化膜(例えばSiO膜)を形成する場合であれば、クリーニングガスとしてフッ化水素(HF)を用い、クリーニング補助ガスとして水(HO)またはアルコールを用いてもよい。
【0126】
上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【符号の説明】
【0127】
S…基板
201…処理室、211…基板載置面、212…基板載置台、248…第一クリーニングガス供給系、270…第二クリーニングガス供給系、400…コントローラ




図1
図2
図3
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図5
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図7