(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021903
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】放射能測定装置
(51)【国際特許分類】
G01T 1/20 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
G01T1/20 A
G01T1/20 F
G01T1/20 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125089
(22)【出願日】2022-08-04
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】501203344
【氏名又は名称】国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165951
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 憲悟
(72)【発明者】
【氏名】吉本 周平
(72)【発明者】
【氏名】土原 健雄
(72)【発明者】
【氏名】白旗 克志
(72)【発明者】
【氏名】中里 裕臣
【テーマコード(参考)】
2G188
【Fターム(参考)】
2G188AA12
2G188AA23
2G188BB04
2G188BB05
2G188BB06
2G188CC10
2G188CC21
2G188DD10
2G188DD11
2G188DD30
2G188DD45
2G188EE01
2G188EE06
2G188EE14
2G188EE28
2G188FF02
(57)【要約】
【課題】防水性及び強度に優れ、深部の環境水であっても、リアルタイム且つ連続的に放射性物質濃度を測定できる放射能測定装置を提供する。
【解決手段】上記課題を解決するべく、本発明は、内空のプラスチックシンチレータから構成された防水容器10と、前記防水容器10の外表面に接続した通信ケーブル20と、前記防水容器10の内部に設けられた、前記通信ケーブル20を介してデータの送受信を行う通信部31及び該通信部31のバッテリー32を含む、内部部品30と、を備え、前記防水容10器は、その外径Xが50mm以下であり、該防水容器10の内部と外部との間を貫通する孔がなく、前記通信部31と前記通信ケーブル20とが、非接触の状態でデータの送受信を行うことを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水中の放射性物質濃度を観測するための放射能測定装置であって、
内空のプラスチックシンチレータから構成された防水容器と、
前記防水容器の外表面に接続した通信ケーブルと、
前記防水容器の内部に設けられた、前記通信ケーブルを介してデータの送受信を行う通信部及び該通信部のバッテリーを含む、内部部品と、
を備え、
前記防水容器は、その外径が50mm以下であり、該防水容器の内部と外部との間を貫通する孔がなく、
前記通信部と前記通信ケーブルとが、非接触の状態でデータの送受信を行うことを特徴とする、放射能測定装置。
【請求項2】
前記内部部品が、さらに、光電子倍増素子を含むことを特徴とする、請求項1に記載の放射能測定装置。
【請求項3】
前記内部部品が、さらに、データロガー及び/又はマルチチャンネルアナライザを含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載の放射能測定装置。
【請求項4】
前記バッテリー充電を、外部と非接触の状態で行うことを特徴とする、請求項1又は2に記載の放射能測定装置。
【請求項5】
前記放射能測定装置は、水中のラドン濃度を測定することを特徴とする、請求項1又は2に記載の放射能測定装置。
【請求項6】
前記放射能測定装置は、水深10m以上での水域で用いられることを特徴とする、請求項1又は2に記載の放射能測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水性及び強度に優れ、深部の環境水であっても、リアルタイム且つ連続的に放射性物質濃度を測定できる放射能測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
地殻に含まれるウランやトリウム等の放射性核種、またその子孫核種は、その分布の特異性から、地学的な調査に有用な指標としてこれまで広く測定されてきた。このうち、ウランの子孫核種であるラドンは、希ガスであり、水に溶解する一方、半減期が3.8日と短い。そのため、ラドンは、ウラン系列の核種を含む地層を通過した地下水の寄与を示す指標として利用され、これまで、河川や沿岸域での地下水湧出や地殻活動に伴う地下水の流動変化の検知等を目的として、環境水中のラドンの測定が行われている。
【0003】
環境水中のラドンは、従来、河川や観測用井戸から水をくみ上げて、溶媒抽出を行い、ラドンを液体シンチレータに凝縮させ、液体シンチレーションカウンタで分析を行うこと、あるいは、くみ上げた水をチューブ内で空気と平衡させて空気に移行したラドンを電離箱や静電捕集法などで測定することによって、濃度の測定が行われていた(例えば、非特許文献1、非特許文献2、非特許文献3を参照。)。そのため、非特許文献1で開示されたような測定方法では、水中から汲み上げが必要であるとともに、溶媒抽出にかかる労力や空気との平衡のための装置が必要であることから、土地や給電設備や人的リソースが十分にあるような限られた条件のもとでなければ、リアルタイム且つ連続的なデータの取得は困難であった。
一方、地震などの災害による水資源への影響評価のニーズが高い昨今、地下水等の環境水の放射性物質濃度を連続的に観測できるシステムの構築が求められている。このような状況において、今後ラドンを連続的に測定できる装置があれば、水資源管理上の異常検知に利用できる可能性がある。
【0004】
上述した環境水の放射性物質濃度を連続的に観測するための技術として、例えば特許文献1には、放射線検出器と、防水性を有し且つ放射線を透過させる材料からなり、前記放射線検出器を覆うように設けられた防水容器と、を備える放射能測定装置が開示されている。
また、特許文献2には、内空の容器形のシンチレータを用いその内側に反射板や光電子倍増管を設けた放射能測定装置が開示されている。
これらの放射能測定装置によれば、環境水中の放射性物質濃度をリアルタイムに把握することが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-066393号公報
【特許文献2】実全昭62-0551853号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】濱田ら、「ラドン濃度を指標とした地下水調査・解析法」、農業工学研究所報告、1997年、36、p.17-50
【非特許文献2】Burnett et al、「A continuous monitor for assessment of 22Rn in the coastal ocean」, Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry、249、P1657-1724
【非特許文献3】石川ら、「地下水中ラドン濃度測定装置の比較―液体シンチレーションカウンタ, IM泉効計, 電離箱, ラドンモニタで得られた結果―」, Radioisotopes、53(3)、p.133-140
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
地下ダム等の地下水が水資源として利用されている場所では、小さなボーリング孔(観測孔)が地下水観測のために複数設けられており、このような観測孔を利用して、より深部の放射性物質濃度を測定することが望まれている。
しかしながら、特許文献1及び2の放射能測定装置については、サイズ的にこのような観測孔内に設置することはできなかった。
また、より深部の地下水の放射性物質濃度を測定するためには、内部装置へ水の侵入を防ぐための高い防水性や、水圧や接触した際の衝撃に耐え得る強度が必要とされるが、特許文献1及び2の放射能測定装置では、比較的浅い水域での放射性物質濃度を測定することが想定されており、高い防水性及び強度についてはさらなる改善が望まれていた。
【0008】
そのため、本発明の目的は、防水性及び強度に優れ、深部の環境水であっても、リアルタイム且つ連続的に放射性物質濃度を測定できる放射能測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、水中の放射性物質濃度を観測するための放射能測定装置について、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、プラスチックシンチレータを防水容器として用いるともに、該防水容器の内部に設けられた通信部が通信ケーブルとの間で非接触の状態でデータの送受信を行うようにすることで、防水容器に通信ケーブルを通すための貫通孔を形成することがないため、従来技術に比べて、防水容器の強度及び防水性を大幅に高めることができること、さらに、防水容器の外径を50mm以下と小さくすることで、放射能測定装置の小サイズ化が可能となるため、上述した地下水観測のための観測孔内に設置することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明は、このような知見に基づきなされたもので、その要旨は以下の通りである。
(1)水中の放射性物質濃度を観測するための放射能測定装置であって、
内空のプラスチックシンチレータから構成された防水容器と、
前記防水容器の外表面に接続した通信ケーブルと、
前記防水容器の内部に設けられた、前記通信ケーブルを介してデータの送受信を行う通信部及び該通信部のバッテリーを含む、内部部品と、
を備え、
前記防水容器は、その外径が50mm以下であり、該防水容器の内部と外部との間を貫通する孔がなく、
前記通信部と前記通信ケーブルとが、非接触の状態でデータの送受信を行うことを特徴とする、放射能測定装置。
【0011】
(2)前記内部部品が、さらに、光電子倍増素子を含むことを特徴とする、上記(1)に記載の放射能測定装置。
【0012】
(3)前記内部部品が、さらに、データロガー及び/又はマルチチャンネルアナライザを含むことを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の放射能測定装置。
【0013】
(4)前記バッテリー充電を、外部と非接触の状態で行うことを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の放射能測定装置。
【0014】
(5)前記放射能測定装置は、水中のラドン濃度を測定することを特徴とする、上記(1)又は(2)に記載の放射能測定装置。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、防水性及び強度に優れ、深部の環境水であっても、リアルタイム且つ連続的に放射性物質濃度を測定できる放射能測定装置を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の放射能測定装置の一実施形態について、模式的に示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<放射能測定装置>
本発明の放射能測定装置の一実施形態について、必要に応じて図面を用いて説明する。
本発明の放射能測定装置は、
図1に示すように、内空のプラスチックシンチレータから構成された防水容器10と、前記防水容器10の外表面に接続した通信ケーブル20と、前記防水容器10の内部に設けられた、前記通信ケーブル20を介してデータの送受信を行う通信部31及び該通信部31のバッテリー32を含む、内部部品30と、を備える。
【0018】
そして、本発明の放射能測定装置は、
図1に示すように、前記防水容器10は、その外径Xが50mm以下であり、該防水容器10の内部と外部との間を貫通する孔がなく、前記通信部31と前記通信ケーブル20とが、非接触の状態でデータの送受信を行うことを特徴とする。
前記防水容器10を、プラスチックレータから構成することで、装置を任意の形に成形できることに加え、内部にシンチレータを別途設ける必要がないため、装置の小型化が可能となる。さらに、前記防水容器10が、孔を有さない密閉構造となることで、より優れた防水性能を実現でき、孔に起因した割れ等を防ぐことができるため、強度についてもより高めることができる。加えて、本発明の放射能測定装置では、前記通信部31と前記通信ケーブル20とが、非接触の状態でデータの送受信を行われるため、前記防水容器10を密閉構造とした場合であっても、データの送受信が可能となり、リアルタイム且つ連続的な放射性物質濃度の測定が行える。
【0019】
なお、本発明の放射能測定装置が放射性物質濃度を観測する際の、対象となる環境水については、特に限定はされない。例えば、河川、湖、池、湾、入り江等の地学的水域や、貯水施設(ため池、ダムなど)、水路、港等の人工的水域における環境水が挙げられる。また、本発明の放射能測定装置が放射性物質濃度を観測する際の「水中」とは、前記水域中の任意の部分を意味し、水域中での深さ等は特に限定されない。
これらの中でも、本発明では、測定対象の水域がため池、ダム、地下ダム等の貯水施設であることが好ましく、ダム又は地下ダムであることがより好ましい。本発明の放射能測定装置は、深部の環境水の放射線を測定する際、大きな水圧がかかった場合であっても防水性及び強度を維持できるため、貯水施設での環境水の放射能測定に適しており、さらに本発明の放射能測定装置は、小型化されているため、ダムや地下ダムの観測孔中に設置した状態での測定が可能となる。
【0020】
また、本発明の放射能測定装置による濃度観測の対象である「放射性物質」は、放射能を持った物質である。その種類については、特に限定はされず、例えば、核燃料物質や、放射性元素、又は、放射性同位体、中性子の照射を受けた放射化物質などが挙げられる。その中でも、本発明では、シンチレータとしてプラスチックシンチレータを用いていることから、α線やβ線に対して感度が高いため、崩壊過程でα線やβ線を放出する核種、例えば、ラドン(222Rn)、トロン(220Rn)等の放射性物質の測定に適している。このような放射性物質は水中に含まれることが多く、本発明によって放射性物質濃度を把握する利益が大きい。
なお、本発明での「放射線」とは、α線、β線、γ線、中性子線等の人体に与える影響の強い電離放射線のことであり、「放射能」とは、放射線を発する能力のことである。その中でも本発明では、放射線として、主に「α線」、「β線」、「γ線」を対象としており、以後の説明で「放射線」と記載する場合には、実質的に「α線」、「β線」、「γ線」を示すことがある。
【0021】
(防水容器)
本発明の放射能測定装置は、
図1に示すように、内空のプラスチックシンチレータから構成された防水容器10を備える。該防水容器10は、シンチレータから構成されており、防水性及び補強性のための容器としての役目を行いつつ、放射線の有無及び放射線量を検出するための機器としても作用する。
【0022】
前記プラスチックシンチレータについては、放射線の励起作用によりケイ光を出す蛍光物質を、プラスチックに混ぜ込んでなる成形体、又は、放射線の励起作用により発光するプラスチック(放射線蛍光プラスチック)、等が挙げられる。前記防水容器10としてプラスチックシンチレータを用いることで、防水性を有しつつ、放射線の測定が可能となる。
【0023】
前記プラスチックとしては、例えば、ポリスチレン、ポリビニルトルエン、ポリエチレンテレフタレート、その他芳香環を有するポリエステル系化合物等が挙げられる。これらの中でも、光の透過性、加工の容易性、製造コスト等の点から、ポリビニルトルエン又はポリエチレンテレフタレートを材料として含むことが好ましい。
また、前記蛍光物質についても、特に限定はされず、例えば、2,5-ジフェニルオキサゾール(別称PPO)、1,4-ビス-2- (5-フェニルオキサゾリル)ベンゼン(別称POPOP)等が挙げられる。
【0024】
なお、前記プラスチックシンチレータについては、市販のプラスチックシンチレータを用いて、形状や外径を調整することで、本発明の放射能測定装置に適した防水容器10を得ることができる。
【0025】
前記防水容器10の形状については、内空であること以外は、特に限定はされず、使用する水域の状態によって適宜変更することができる。例えば、前記防水容器10の形を、円柱状、多角柱状、球状、楕円体状、平板状、円盤状、棒状等にすることが可能である。その中でも、前記放射線検出器10の形状に対応させる点からは、前記防水容器20の形状を、円柱状又は多角柱状とすることが好ましく、水域における水の抵抗が少ないという点並びに検出効率を最大化させる点からは、円柱状とすることがより好ましい。
【0026】
また、
図1に示すように、前記防水容器10は、その外径Xが50mm以下である。上述したように、本発明の放射能測定装置は、ダムの観測孔のような狭い場所に設置されることが考えられるため、外径Xを50mmと小さくすることで、狭い場所であっても放射線の測定が可能となるためである。同様の観点から、前記防水容器10の外径Xは、45mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましい。また、前記防水容器10の外径Xの下限値については、特に限定はなく、内部に設けられた内部部品30の大きさに応じて設定することができる。
なお、前記防水容器10の外径Xとは、前記防水容器10の短径のことであり、
図1に示すように、前記防水容器10が円筒状の場合は、円の直径がそれに該当する。また、前記防水容器10が高くの場合は、多角柱状、棒状の場合には、それぞれ、長さ方向に直交する断面形状の直径であり、円盤状や平板状の場合は、平面部のうち最も短い径が外径に相当する。
【0027】
また、前記防水容器10の厚さTについては、特に限定はされないが、水圧や接触時の強度を維持する観点からは、5mm以上の厚さを有することが好ましく、10mm以上の厚さを有することがより好ましい。
なお、前記防水容器10の厚さTについては、
図1に示すように、防水容器のうち最も薄い部分の厚さのことである。
【0028】
さらに、前記防水容器10は、該防水容器10の内部と外部との間を貫通する孔がない。通常、放射能測定装置を水中で使用する場合、地上にある解析手段等の計算機(図示せず)との間でデータの送受信を行うための通信ケーブルや、電源ケーブル等のその他のケーブルを通すための孔が防水容器中に設けられている。ただし、防水容器に設けられた孔は、水圧が大きな水域で使用した場合に防水性能が低下するおそれがあり、岩やコンクリート等と接触した際には防水容器の破損を招くおそれもある。
本発明では、前記防水容器10に孔がないことで、防水性能や強度の低下を抑えることができ、深部の環境水の放射性物質濃度の測定が可能となる。
【0029】
なお、前記防水容器10は、上述したようにプラスチックシンチレータから構成されているが、他の部材を含むこともできる。
例えば、
図1に示すように、前記防水容器10は、防水容器10の密閉性を高めるための、蓋部11を含むことができる。蓋部11は、ねじのようなもので固定することもできるし、蓋部11を溶着させたり接着させることもできる。
【0030】
さらに、前記防水容器10は、必要に応じてその一部に、放射線シールド(図示せず)を有することもできる。前記放射能測定装置が検出する放射線のうち、不要なもの(測定対象となる水域以外に由来する放射線)をできるだけ排除することで、水中の特定の位置における放射性物質濃度の検出精度を高めることができるからである。
なお、前記放射線シールド11の材料については、放射線を遮蔽する作用があるものであれば、特に限定はされず、公知のものを用いることができる。例えば、鉛、鉄、アルミニウム、アクリル等が挙げられる。これらの組み合わせによって、測定対象とする放射線の種類(α線、β線、γ線)を選択して測定することもできる。
【0031】
上記に加えて、前記防水容器をポリスチレンやポリビニルトルエンなど芳香環を有するプラスチックから構成すると、水中のラドンが分配されて吸収されるため、特に崩壊過程でα線を放出するラドンの測定については計数効率を向上させることができる。一方で、前記プラスチックへのラドンの吸着によって水中のラドン濃度の短期的な変化への追随が遅れることから、短期的な濃度変化を把握するために防水性素材によるシールドによってプラスチックへのラドンの吸収を妨げることも可能である。
【0032】
(通信ケーブル)
本発明の放射能測定装置は、
図1に示すように、前記防水容器10の外表面に接続した通信ケーブル20を、さらに備える。
前記通信ケーブル20については、特に限定はされず、後述する通信部31による通信の種類によってケーブルの種類や構成を適宜選択することができる。ケーブルの種類については、例えば、平対ケーブル、同軸ケーブル、光ファイバーケーブル等が挙げられる。
【0033】
(内部部品)
本発明の放射能測定装置は、
図1に示すように、前記防水容器10の内部に設けられた内部部品30をさらに備える。該内部部品30は、
図1に示すように、通信部31及び該通信部のバッテリー32を含む。
【0034】
前記通信部31は、前記通信ケーブル20を介して、外部の装置(制御装置、計算機等)とデータの送受信を行うための機器である。
そして、本発明の放射能測定装置では、
図1に示すように、前記通信部31と前記通信ケーブル20とが、非接触の状態でデータの送受信を行う。このように、非接触でデータの送受信が行われることで、前記防水容器10内にケーブル20を通すための孔を設ける必要がなく、防水容器10の防水性及び強度の向上につながる。
【0035】
なお、前記通信部31による通信方法については、非接触で通信できる方法であればよく、コストや水域の状態に応じて適宜選択することができる。例えば、光通信や、無線通信、赤外線通信、Bluetooth等を用いることができる。また、将来的により効率的な非接触の通信技術があれば、それを採用することも可能である。
【0036】
前記バッテリー32は、主に通信部で使用する電力を供給するために用いられる。前記バッテリー32は、一度きりの使用で、放射能測定装置を使い捨てのようにすることもできるし、前記バッテリー32の充電を行うことで、放射能測定装置を繰り返し使用することも可能である。前記バッテリー32を充電する際には、外部と非接触の状態で行うことが好ましい。前記防水容器10内にケーブル20を通すための孔を設ける必要がなく、防水容器10の防水性及び強度の向上を図るためである。
【0037】
また、前記内部部品30が、
図1に示すように、さらに光電子倍増素子34を含むことが好ましい。前記プラスチックシンチレータから取得した信号について、光電子倍増素子34によって、増幅させることもできるため、前記制御装置または計算機等(図示せず)で利用しやすいデータとすることができるためである。環境放射能の測定においては、ラドンだけでなく、カリウム等の他の核種による放射線も存在することから、光電子倍増管34により増幅された信号から光子の数とエネルギーの情報(スペクトル)を取得し、核種を弁別することが可能となる。
【0038】
また、前記内部部品30は、要求される性能に応じて、データロガー33、マルチチャンネルアナライザ(図示せず)、制御盤(図示せず)等の機器を含むことが好ましい。
【0039】
また、前記内部部品30は、前記測定対象となる水域の水位を測定する水位測定手段(図示せず)をさらに含むことができる。前記水位測定手段を用いることで、所望の深さ位置に放射能測定装置があるか否かを確認でき、また、前記水位測定手段の測定した水位に応じて、バックグラウンド放射線量を算出することができ、放射性物質濃度をより高精度に把握できる。
【0040】
(その他の機器)
本発明の放射能測定装置は、前記通信ケーブルと繋がれた解析手段(図示せず)をさらに備えることもできる。該解析手段は、通信ケーブル20等の接続機器を介して防水容器10と接続されており、防水容器10のプラスチックシンチレータから取得した信号に基づいて放射性物質濃度を算出する。
なお、前記解析手段の設けられる場所については特に限定はされない。例えば、地上に設置され、前記防水容器10の外に設けられているが、解析手段の全部又は一部を、前記防水容器10の中に入るような構成とすることも可能である。
【0041】
ここで、前記解析手段による放射性物質濃度の算出は、前記制御装置又は計算機等によって行われる。前記プラスチックシンチレータから取得した信号に基づき、放射性物質濃度を算出する具体的な方法については、特に限定はされず、使用する計算機の種類や、状況に応じて、公知の技術を適宜選択することができる。
【0042】
一例として、前記プラスチックシンチレータから取得した信号を放射線のエネルギーとカウント数との関係を示すスペクトルデータとした後、該スペクトルデータに対してスムージング等の処理を行い、α線の全吸収ピーク、β線の連続スペクトル、またはγ線のコンプトン端に対応するカウント数を積算し、放射線物質のピーク計数率へ変換する。一方で、ピーク計数率とサンプリングによって別途得られた水中の放射性物質濃度との関係式を求めておくことで、放射性物質濃度を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明によれば、防水性及び強度に優れ、深部の環境水であっても、リアルタイム且つ連続的に放射性物質濃度を測定できる放射能測定装置を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0044】
10 防水容器
11 蓋部
20 通信ケーブル
30 内部部品
31 通信部
32 バッテリー
33 データロガー
34 光電子倍増素子
X 防水容器の外径
T 防水容器の厚さ