(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024021918
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】無線通信システム、基地局装置、及び無線通信方法
(51)【国際特許分類】
H04W 16/28 20090101AFI20240208BHJP
H04W 88/04 20090101ALI20240208BHJP
H04W 92/18 20090101ALI20240208BHJP
H04B 7/0452 20170101ALI20240208BHJP
【FI】
H04W16/28 130
H04W88/04
H04W92/18
H04B7/0452 110
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125120
(22)【出願日】2022-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】000004226
【氏名又は名称】日本電信電話株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100124844
【弁理士】
【氏名又は名称】石原 隆治
(72)【発明者】
【氏名】中平 俊朗
(72)【発明者】
【氏名】村山 大輔
(72)【発明者】
【氏名】守山 貴庸
(72)【発明者】
【氏名】村田 英一
(72)【発明者】
【氏名】太郎丸 北斗
【テーマコード(参考)】
5K067
【Fターム(参考)】
5K067AA13
5K067DD43
5K067EE02
5K067EE10
5K067EE22
5K067EE25
5K067HH22
(57)【要約】
【課題】複数の端末装置を連携してMIMO通信を行う端末連携MIMO通信の伝送効率を改善する。
【解決手段】無線通信システムは、基地局装置と複数の端末装置とを含む無線通信システムであって、前記基地局装置は、前記端末装置から、端末連携MIMO通信の連携状態を示す情報を含む端末情報を収集するように構成された端末情報収集部と、前記端末情報に基づいて、前記端末連携MIMO通信で連携する連携端末数が所定数以上の前記端末装置に対して、前記端末連携MIMO通信でデータを送信し、前記連携端末数が前記所定数未満の端末装置に対して、MU-MIMO通信でデータを送信するように構成された無線通信部と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基地局装置と複数の端末装置とを含む無線通信システムであって、
前記基地局装置は、
前記端末装置から、端末連携MIMO通信の連携状態を示す情報を含む端末情報を収集するように構成された端末情報収集部と、
前記端末情報に基づいて、前記端末連携MIMO通信で連携する連携端末数が所定数以上の前記端末装置に対して、前記端末連携MIMO通信でデータを送信し、前記連携端末数が前記所定数未満の端末装置に対して、MU-MIMO通信でデータを送信するように構成された無線通信部と、
を有する、無線通信システム。
【請求項2】
通信の宛先の端末装置から収集した前記端末情報に基づいて、前記宛先の端末装置に、前記端末連携MIMO通信でデータを送信するか、前記MU-MIMO通信でデータを送信するかを動的に制御するように構成された通信制御部を有する、請求項1に記載の無線通信システム。
【請求項3】
前記通信制御部は、
通信の宛先の端末装置に、前記端末連携MIMO通信でデータを送信する場合、
前記宛先の端末装置、及び前記宛先の端末装置と連携可能な他の端末装置から収集した前記端末情報に基づいて、前記他の端末装置のうち、端末連携MIMO通信の無線信号を前記宛先の端末装置に中継する端末装置を決定する、
請求項2に記載の無線通信システム。
【請求項4】
前記通信制御部は、前記他の端末装置のうち、前記連携端末数がより少ない端末装置を、前記無線信号を前記宛先の端末装置に中継する端末装置に決定する、請求項3に記載の無線通信システム。
【請求項5】
前記宛先の端末装置から収集する前記端末情報は、前記他の端末装置との間の伝搬路情報を含み、
前記通信制御部は、前記連携端末数が同じ前記他の端末装置が複数ある場合、前記宛先の端末装置に無線信号を中継する中継通信用の無線リンクの無線品質がより高い端末装置を、前記無線信号を前記宛先の端末装置に中継する端末装置に決定する、請求項4に記載の無線通信システム。
【請求項6】
前記端末連携MIMO通信は、
前記基地局装置が、前記宛先の端末装置に送信するデータと、前記宛先の端末装置にデータを中継する他の端末装置への制御情報とを含む前記無線信号を送信し、
前記他の端末装置は、受信した前記無線信号の前記制御情報に従って、受信した前記無線信号を中継通信用の無線リンクで前記宛先の端末装置へ中継し、
前記宛先の端末装置は、前記基地局装置から受信した前記無線信号と、前記中継通信用の無線リンクで受信した前記無線信号とを用いて、前記データを受信する、
請求項3乃至5のいずれか一項に記載の無線通信システム。
【請求項7】
複数の端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、
前記端末装置から、端末連携MIMO通信の連携状態を示す情報を含む端末情報を収集するように構成された端末情報収集部と、
前記端末情報に基づいて、前記端末連携MIMO通信で連携する連携端末数が所定数以上の前記端末装置に対して、前記端末連携MIMO通信でデータを送信し、前記連携端末数が前記所定数未満の端末装置に対して、MU-MIMO通信でデータを送信するように構成された無線通信部と、
を有する、基地局装置。
【請求項8】
基地局装置と複数の端末装置とを含む無線通信システムにおいて、
前記基地局装置が、
前記端末装置から、端末連携MIMO通信の連携状態を示す情報を含む端末情報を収集する処理と、
前記端末情報に基づいて、前記端末連携MIMO通信で連携する連携端末数が所定数以上の前記端末装置に対して、前記端末連携MIMO通信でデータを送信し、前記連携端末数が前記所定数未満の端末装置に対して、MU-MIMO通信でデータを送信する処理と、
を実行する、無線通信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線通信システム、基地局装置、及び無線通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
無線通信システムにおける大容量化技術のために現在広く用いられている技術として複数アンテナを用いて同一の無線チャネルで空間分割多重を行うMIMO(Multiple Input Multiple Output)があり、様々な無線システムにおいて採用されている。
【0003】
また、端末共同干渉キャンセルを用いるMIMO通信と、MU(Multi User)-MIMO通信とを組み合わせて無線通信を行う伝送方法が検討されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】谷口他、"端末共同干渉キャンセルを用いるマルチユーザMIMOシステムにおけるプリコーディング手法の検討"、信学技報、vol.113、no.456、RCS2014-03、pp.499-504、2014年3月.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示された技術では、複数の端末装置が共同して干渉をキャンセルすることにより、端末装置が有するアンテナ数以上の空間多重伝送(以下、端末連携MIMO通信と呼ぶ)を実現している。この技術では、基地局装置は、端末装置が孤立状態であるか否かにより、端末連携MIMO通信でデータを送信するか、MU-MIMO通信でデータを送信するかを決めて、以後のデータ送信を行う。
【0006】
しかし、実際には、データを送信する宛先の端末装置によって、連携すべき他の端末装置が変動するが、非特許文献1に示した従来の技術では、連携すべき他の端末装置の変動が考慮されておらず、端末連携MIMO通信の伝送効率が低下してしまう場合がある。
【0007】
本発明の実施形態は、上記の問題点に鑑みてなされたものであって、複数の端末装置を連携してMIMO通信を行う端末連携MIMO通信の伝送効率を改善する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明の実施形態に係る無線通信システムは、基地局装置と複数の端末装置とを含む無線通信システムであって、前記基地局装置は、前記端末装置から、端末連携MIMO通信の連携状態を示す情報を含む端末情報を収集するように構成された端末情報収集部と、前記端末情報に基づいて、前記端末連携MIMO通信で連携する連携端末数が所定数以上の前記端末装置に対して、前記端末連携MIMO通信でデータを送信し、前記連携端末数が前記所定数未満の端末装置に対して、MU-MIMO通信でデータを送信するように構成された無線通信部と、を有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、複数の端末装置を連携してMIMO通信を行う端末連携MIMO通信の伝送効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る無線通信システムのシステム構成の例を示す図である。
【
図2】本実施形態に係る無線通信システムの機能構成の例を示す図である。
【
図3】本実施形態に係る基地局装置の処理の例を示すフローチャートである。
【
図4】本実施形態に係る連携端末の決定処理の例を示すフローチャートである。
【
図5】本実施形態に係るデータの送信処理の例を示すフローチャートである。
【
図6】本実施形態に係る中継通信用無線リンクの確立処理の例を示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態に係る基地局装置、及び端末装置のハードウェア構成の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態(本実施形態)を説明する。以下で説明する実施形態は一例に過ぎず、本発明が適用される実施形態は、以下の実施形態に限られない。
【0012】
<システム構成>
図1は、本実施形態に係る無線通信システムのシステム構成の例を示す図である。無線通信システム1は、例えば、
図1に示すように、基地局装置10と、基地局装置10と無線通信で通信可能な複数の端末装置20-1~20-6とを含む。なお、以下の説明において、複数の端末装置20-1~20-6のうち、任意の端末装置を示す場合、「端末装置20」を用いる。また、
図1に示す端末装置20の数は一例であり、端末装置20の数は、2つ以上の他の数であって良い。
【0013】
無線通信システム1は、例えば、通信の宛先の端末装置20-1と連携する他の端末装置20-2~20-4が、基地局装置10から受信した無線信号を宛先の端末装置20-1に対して中継伝送する機能を有している。また、無線通信システム1は、宛先の端末装置20-1が、基地局装置10から受信した無線信号12と、他の端末装置20-2~20-4から中継伝送された無線信号21とを用いて、MIMO伝送の容量を拡大する端末連携MIMO通信30を行う。さらに、無線通信システム1は、例えば、他の端末装置20と連携していない端末装置20-5、20-6と、個別にMU(Multi User)-MIMO通信40を行う。
【0014】
非特許文献1に開示された従来の技術では、基地局装置10は、複数の端末装置20-1~20-6を、非孤立状態と孤立状態とに分類し、例えば、端末装置20-1等の非孤立状態の端末装置に対して、端末連携MIMO通信でデータを送信する。一方、基地局装置10は、例えば、端末装置20-6等の孤立状態の端末装置に対して、MU-MIMO通信で個別にデータを送信する。
【0015】
しかし、実際の利用状況を鑑みると、完全な孤立状態ではなく、部分的に連携可能(例えば、1、2台程度で連携可能)な端末装置20も相当数生じると考えられるが、従来の技術では、部分的に連携可能な端末については考慮されていなかった。また、宛先の端末装置20によって、連携が必要な他の端末装置20が変わり、それによって端末装置20の孤立状態が変動することが考えられるが、従来の技術では考慮されていなかった。その結果、従来の技術では、例えば、孤立状態と扱うべき端末装置20を非孤立状態として扱い、端末連携MIMO通信の伝送効率が低下してしまう場合があった。
【0016】
そこで、本実施形態に係る無線通信システム1では、基地局装置10が、端末装置20から、端末連携MIMO通信30の連携状態を示す情報を含む端末情報を収集する。また、基地局装置10は、収集した端末情報に基づいて、端末連携MIMO通信30で連携する他の端末装置20の数である連携端末数が所定数以上の端末装置20に対して、端末連携MIMO通信30でデータを送信する。一方、基地局装置10は、連携端末数が所定数未満の端末装置20に対して、例えば、MU-MIMO通信で個別にデータを送信する。さらに、基地局装置10は、上記の処理を繰り返し実行することにより、通信の宛先の端末装置20に、端末連携MIMO通信でデータを送信するか、MU-MIMO通信でデータを送信するかを動的に制御する。
【0017】
これにより、本実施形態に係る無線通信システム1によれば、複数の端末装置20を連携してMIMO通信を行う端末連携MIMO通信の伝送効率を改善することができる。
【0018】
<無線通信システムの機能構成>
図2は、本実施形態に係る無線通信システムの機能構成の例を示す図である。
【0019】
(端末装置の機能構成)
端末装置20は、例えば、コンピュータの構成を備え、当該コンピュータが、記憶媒体等に記憶した所定のプログラムを実行することにより、無線通信部211、端末間連携部212、及び無線信号処理部213等を実現している。なお、上記の各機能構成のうち、少なくとも一部は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。また、
図2において、端末装置20-2、・・・は、端末装置20-1と同様の機能構成を有しているものとする。
【0020】
無線通信部211は、基地局装置10と所定の無線通信規格に基づいて無線通信を行う無線通信処理を実行する。例えば、無線通信部211は、基地局装置10との制御情報の送受信、及び基地局装置10への端末情報の送信等を行う。また、無線通信部211は、複数のアンテナ214を用いて、基地局装置10と、MIMO信号によるデータの送受信を行う。
【0021】
端末間連携部212は、基地局装置10から受信した端末連携MIMO通信の無線信号を、宛先の端末装置20に中継する中継通信用の無線リンクを、無線通信部211を用いて確立する。また、端末間連携部212は、基地局装置10から受信した無線信号に含まれる制御情報に従って、受信した無線信号を宛先の端末装置20へ中継する中継通信を制御する。例えば、端末装置20-1の端末間連携部212は、制御情報を参照して、無線通信部211が受信した無線信号が他の端末装置20-2宛ての無線信号である場合、他の端末装置20-2に無線信号を中継通信用の無線リンクで中継(転送)する。また、端末装置20-1の端末間連携部212は、他の端末装置20-2から、端末装置20-1宛に中継された無線信号を受信する。
【0022】
好ましくは、端末間連携部212は、無線通信部211が、基地局装置10からの無線信号を受信する周波数チャネルとは異なる周波数チャネルを用いて、無線通信により中継通信を行う。なお、無線通信部211が基地局装置10から無線信号を受信する無線通信方式と、無線通信部211が中継通信を行う無線通信方式は、同じ無線通信方式であってもよいし、異なる無線通信方式であってもよい。
【0023】
無線信号処理部213は、無線通信部211が、基地局装置10から受信した自装置宛の無線信号と、端末間連携部212が他の端末装置20から受信した無線信号とを用いて、MOMO信号を復調、及び復号してデータを受信する。また、無線信号処理部213は、端末装置20が基地局装置10に送信する無線信号を生成する。
【0024】
(基地局装置の機能構成)
基地局装置10は、例えば、コンピュータの構成を備え、当該コンピュータが記憶媒体等に記憶した所定のプログラムを実行することにより、無線通信部201、端末情報収集部202、通信制御部203、及び無線信号処理部204等を実現している。なお、上記の各機能構成のうち、少なくとも一部は、ハードウェアによって実現されるものであっても良い。
【0025】
無線通信部201は、複数の端末装置20-1、20-2、・・・と所定の無線通信規格に基づいて無線通信を行う通信処理を実行する。例えば、無線通信部201は、端末装置20との制御信号を送受信、及び端末装置20からの端末情報の受信等を行う。また、無線通信部201は、複数のアンテナ11を用いて、端末連携MIMO通信、又はMU-MIMO通信等のMUMO通信で、端末装置20とデータ通信を行う。
【0026】
端末情報収集部202は、無線通信部201を介して、端末装置20から、端末連携MIMO通信の連携状態を示す情報(以下、連携状態情報と呼ぶ)を含む端末情報を収集する。この連携状態情報には、例えば、端末装置20が、他のどの端末装置20と、どの程度の無線品質(例えば受信電力)で連携した状態にあるかを示す情報が含まれる。
【0027】
好ましくは、端末情報収集部202は、CSI(Channel State Information)推定に合わせて、各端末装置20から、伝搬路情報と、連携状態情報とを含む端末情報を取得する。
【0028】
通信制御部203は、宛先の端末装置20から収集した端末情報に基づいて、無線通信部201が、宛先の端末装置20に、端末連携MIMO通信でデータを送信するか、MU―MIMO通信でデータを送信するかを動的に制御する通信制御処理を実行する。例えば、通信制御部203は、宛先の端末装置20の連携端末数が所定数以上である場合、宛先の端末装置20に対して、端末連携MIMO通信でデータを送信するように、無線通信部201を制御する。一方、通信制御部203は、宛先の端末装置20の連携端末数が所定数未満である場合、宛先の端末装置20に対して、MU-MIMO通信でデータを送信するように、無線通信部201を制御する。
【0029】
これにより、無線通信部201は、端末連携MIMO通信で連携する連携端末数が所定数以上の端末装置20に対して、端末連携MIMO通信でデータを送信し、連携端末数が所定数未満の端末装置20に対して、MU-MIMO通信でデータを送信する。
【0030】
無線信号処理部204は、端末装置20に送信するMIMO通信の無線信号を生成する。また、無線信号処理部204は、端末装置20から受信した無線信号から制御情報、又はデータ等を抽出する。
【0031】
例えば、
図1の例では、無線信号処理部204は、宛先の端末装置20-1用のデータと、他の端末装置20-2、20-3、20-4用の制御情報とを含む、端末連携MIMO通信用の無線信号を生成する。他の端末装置20-2、20-3、20-4用の制御情報には、例えば、宛先の端末装置20-1を特定する情報、中継通信で用いる周波数チャネルの情報、中継通信の送信順序を示す情報、及びアンテナパターンの情報等が含まれる。
【0032】
<処理の流れ>
続いて、本実施形態に係る無線通信方法の処理の流れについて説明する。
【0033】
(基地局装置の処理)
図3は、本実施形態に係る基地局装置の処理の例を示すフローチャートである。この処理は、基地局装置10が、宛先の端末装置20にデータを送信するときに実行する処理の例を示している。
【0034】
ステップS301において、基地局装置10の端末情報収集部202は、通信の宛先の端末装置20から、例えば、端末連携MIMO通信の連携状態を示す連携状態情報と、中継通信用リンクの伝搬路情報とを含む端末情報を収集する。
【0035】
ステップS302において、基地局装置10の通信制御部203は、収集した連携状態情報に基づいて、宛先の端末装置20の連携端末数が所定数以上であるか否かを判断する。ここで、連携端末数は、宛先の端末装置20が、中継通信用の無線リンクを確立している他の端末装置20の数である。また、所定数は、基地局装置10が、端末連携MIMO通信でデータを送信するか、MU-MIMO通信でデータを送信するかを決定するための閾値であり、例えば、システム管理者等により予め設定されているものとする。
【0036】
連携端末数が所定数以上である場合、通信制御部203は、処理をステップS303に移行させる。一方、連携端末数が所定数未満である場合、通信制御部203は、処理をステップS304に移行させる。
【0037】
ステップS303に移行すると、通信制御部203は、宛先の端末装置20に端末連携MOMO通信でデータを送信するように、基地局装置10を制御する。例えば、通信制御部203は、
図4に示すような連携端末の決定処理、及び
図5に示すようなデータの送信処理を実行するように、基地局装置10を制御する。
【0038】
一方、ステップS302からステップS304に移行すると、通信制御部203は、宛先の端末装置20に、公知のMU-MIMO通信でデータを送信するように、基地局装置10を制御する。なお、MU―MIMO通信によるデータ送信は、例えば、非特許文献1等の従来の技術と同様でよいので、ここでは説明を省略する。
【0039】
基地局装置10の通信制御部203は、
図3の処理を繰り返し実行することにより、宛先の端末装置20に、端末連携MIMO通信でデータを送信するか、MU-MIMO 通信でデータを送信するかを、動的に制御する。
【0040】
(連携端末の決定処理)
図4は、本実施形態に係る連携端末の決定処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図3のステップS303において、基地局装置10の通信制御部203が、端末連携MIMO通信の無線信号を、宛先の端末装置20に中継する他の端末装置(連携端末)を決定するために実行する処理の一例を示している。
【0041】
ステップS401において、基地局装置10の通信制御部203は、宛先の端末装置20から収集した端末情報に含まれる連携状態情報から、宛先の端末装置20と連携可能な他の端末装置20が複数あるか否かを判断する。ここで宛先の端末装置20と連携可能な他の端末装置20は、例えば、宛先の端末装置20と中継通信用の無線リンクを確立している端末装置20である。
【0042】
連携可能な他の端末装置20が複数ある場合、通信制御部203は、処理をステップS403に移行させる。一方、連携可能な他の端末装置20が1つである場合、通信制御部203は、処理をステップS402に移行させる。
【0043】
ステップS402に移行すると、通信制御部203は、連携可能な他の端末装置20を、連携端末に決定する。なお、宛先の端末装置20に、端末連携MIMO通信でデータを送信するか否かを判断する所定数が2以上である場合、ステップS401、S402の処理は不要である。
【0044】
ステップS403に移行すると、通信制御部203は、端末情報収集部202を用いて、連携可能な他の端末装置20から端末情報を収集する。
【0045】
ステップS404において、通信制御部203は、収集した端末情報から、宛先の端末装置20と連携可能な複数の他の端末装置20の連携端末数を取得し、連携端末数がより少ない、所定の数の他の端末装置20を選択する。例えば、宛先の端末装置20と連携可能な他の端末装置が6台あり、その中から、4台の他の端末装置を選択する場合、通信制御部203は、他の端末装置20より連携端末数が少ない4台の他の端末装置20を選択する。
【0046】
ステップS405において、通信制御部203は、ステップS404において、所定の数の他の端末装置を選択できたか否かを判断する。例えば、宛先の端末装置20と連携可能な6台の他の端末装置20のうち、連携端末数が同数の他の端末装置20が複数あり、4台の他の端末装置20を選択できていない場合、通信制御部203は、所定の数の他の端末装置を選択できないと判断する。
【0047】
所定の数の他の端末装置20を選択できた場合、通信制御部203は、処理をステップS407に移行させる。一方、所定の数の他の端末装置20を選択できない場合、通信制御部203は、処理をステップS406に移行させる。
【0048】
ステップS406に移行すると、通信制御部203は、連携端末数が同数の他の端末装置20から、中継通信用の無線品質がより高い他の端末装置20を選択することにより、所定の数の他の端末装置20を選択する。
【0049】
ステップS407に移行すると、通信制御部203は、ステップS404~S406の処理で選択した他の端末装置20を、宛先の端末装置20に無線信号を中継する連携端末に決定する。なお、
図4に示した連携端末の決定方法は一例であり、通信制御部203は、他の決定方法で連携端末を決定してもよい。
【0050】
(データの送信処理)
図5は、本実施形態に係るデータの送信処理の例を示すフローチャートである。この処理は、基地局装置10が、
図4の処理で決定した連携端末を利用して、端末連携MIMO通信で宛先の端末装置20にデータを送信する処理の例を示している。
【0051】
ステップS501において、基地局装置10の無線通信部201は、宛先の端末装置20に送信するデータと、
図4の処理で決定した連携端末への制御信号と、を含む端末連携MIMO通信の無線信号を送信する。
【0052】
ステップS502において、宛先の端末装置20とは異なる他の端末装置20は、受信した無線信号に含まれる制御情報に従って、基地局装置10から受信した無線信号を、中継通信用の無線リンクで宛先の端末装置20へ中継する。例えば、他の端末装置20が、
図4の処理で決定された連携端末である場合、受信した無線信号には、自装置宛の制御情報が含まれている。この場合、他の端末装置20は、制御情報で指示された宛先の端末装置20に、指示された周波数チャネルと中継通信の送信順序で、受信した無線信号を送信する。
【0053】
一方、他の端末装置20が、
図4の処理で決定された連携端末でない場合、受信した無線信号には、自装置宛の制御情報が含まれていない。この場合、他の端末装置20は、受信した無線信号を破棄する。
【0054】
ステップS503において、宛先の端末装置20は、基地局装置10から受信した自装置宛の無線信号と、他の端末装置20から受信した自装置宛の無線信号とを用いて、データをMIMO受信する。これにより、宛先の端末装置20において、宛先の端末装置20が備えるアンテナ数より、MIMO伝送の容量を拡大する端末連携MIMO通信を行うことができる。
【0055】
(中継通信用リンクの確立処理)
図6は、本実施形態に係る中継通信用の無線リンクの確立処理の例を示すフローチャートである。この処理は、例えば、
図3で説明した基地局装置の処理を実行する前に、無線通信システム1が実行する。
【0056】
ステップS601において、基地局装置10の通信制御部203は、宛先の端末装置20に対して、中継通信用の無線リンクの確立を指示する制御情報を送信する。
【0057】
ステップS602において、宛先の端末装置20の端末間連携部212は、基地局装置10からの指示に従って、所定のブロードキャスト信号を送信する。なお、この所定のブロードキャスト信号は、例えば、ブロードキャスト信号を受信した他の端末装置20に対して、ブロードキャスト信号を送信した端末装置20への接続要求の送信を要求する、予め定められた信号であるものとする。
【0058】
ステップS603において、宛先の端末装置20の端末間連携部212は、ブロードキャスト信号を送信した時点から、所定の時間を経過したか否かを判断し、所定の時間を経過していない場合、処理をステップS604に移行させる。一方、所定の時間を経過している場合、端末間連携部212は、処理をステップS606に移行させる。なお、所定の時間は、所定のブロードキャスト信号を受信した他の端末装置が送信する接続要求の受け付けに必要な時間が、予め設定されているものとする。
【0059】
ステップS604に移行すると、宛先の端末装置20の端末間連携部212は、他の端末装置20から接続要求を受信したか否かを判断し、他の端末装置20から接続要求を受信した場合、ステップS605の処理を実行する。一方、他の端末装置20から接続要求を受信していない場合、端末間連携部212は、処理をステップS603に戻す。
【0060】
ステップS605に移行すると、宛先の端末装置20の端末間連携部212は、接続要求を送信した要求元の他の端末装置20に接続許可を送信して、要求元の他の端末装置20と中継通信用の無線リンクを確立し、処理をステップS603に戻す。
【0061】
ステップS603~S605の処理により、宛先の端末装置20の端末間連携部212は、宛先の端末装置20の周辺にある他の端末装置20と、中継通信用の無線リンクを確立する。
【0062】
ステップS603からS606に移行すると、宛先の端末装置20の端末間連携部212は、中継通信用の無線リンクの確立結果を、基地局装置10に送信する。
【0063】
好ましくは、無線通信システム1は、
図7に示した処理を、例えば、所定の時間を経過するごとに再実行して、中継通信用の無線リンクを更新する。
【0064】
以上、本実施形態に係る無線通信システム1、及び無線通信方法について説明したが、本発明に係る無線通信システム1、及び無線通信方法は、様々な変形、及び応用が可能である。
【0065】
例えば、上記の各説明では、各端末装置20が、端末連携MIMO通信の機能を有しているものとして説明したが、無線通信システム1には、端末連携MIMO通信の機能を有していない端末装置20が含まれていてもよい。また、端末連携MIMO通信の機能を有している端末装置20であっても、例えば、バッテリ残量が低下して端末連携MIMO通信を希望しない端末装置20は、端末連携MIMO通信の機能を有していない端末装置20として扱ってもよい。なお、基地局装置10は、端末連携MIMO通信の機能を有していない端末装置20に対して、例えば、連携端末数が「0」の端末装置20として、MU-MIMO通信でデータを送信する。
【0066】
また、無線通信システム1は、例えば、高速で移動する端末装置20等、端末連携機能の適用可能時間が短く、端末連携MIMO通信の効果が低いと想定される端末装置20を、端末連携MIMO通信の機能を有していない端末装置20として扱ってもよい。
【0067】
また、ここまで単一の無線通信方式、及び無線システムを想定して説明したが、例えば、基地局装置-端末装置間と端末装置-端末装置間で異なる複数の無線通信方式を組み合わせて利用してもよい。
【0068】
<ハードウェア構成例>
図7は、本実施形態に係る基地局装置、及び端末装置のハードウェア構成の例を示す図である。基地局装置10、及び端末装置20は、例えば、
図7に示すようなコンピュータ1000の構成を備えている。
図7の例では、コンピュータ1000は、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージデバイス1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、及びバスB等を有する。
【0069】
プロセッサ1001は、例えば、記憶媒体(記録媒体)等に記憶した所定のプログラムを実行することにより、様々な機能を実現するCPU(Central Processing Unit)等の演算装置である。メモリ1002は、コンピュータ1000が読み取り可能な記憶媒体であり、例えば、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を含む。ストレージデバイス1003は、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体であり、例えば、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、各種の光ディスク、及び光磁気ディスク等を含み得る。
【0070】
通信装置1004は、無線、又は有線のネットワークを介して他の装置と通信を行うための1つ以上のハードウェア(送受信デバイス)を含む。本実施形態では、通信装置1004には、例えば、複数のアンテナ、無線回路、及びベースバンド処理と通信制御処理とを実行する通信用のプロセッサ等が含まれる。
【0071】
入力装置1005は、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウス、マイクロフォン、スイッチ、ボタン、センサ等)である。出力装置1006は、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカ、LEDランプ等)である。なお、入力装置1005と出力装置1006とは、一体となった構成(例えば、タッチパネルディスプレイ等の入出力装置)であっても良い。
【0072】
バスBは、上記の各構成要素に共通に接続され、例えば、アドレス信号、データ信号、及び各種の制御信号等を伝送する。なお、プロセッサ1001は、CPUに限られず、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、PLD(Programmable Logic Device)、又はFPGA(Field Programmable Gate Array)等であっても良い。
【0073】
(補足)
なお、本実施形態における基地局装置10、及び端末装置20は専用装置による実現に限らず、汎用コンピュータで実現するようにしても良い。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現しても良い。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0074】
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD-ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の様々な記憶装置を含む。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでも良い。
【0075】
また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良く、PLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されるものであっても良い。
【0076】
<実施形態の効果>
本実施形態によれば、複数の端末装置20を連携してMIMO通信を行う端末連携MIMO通信の伝送効率を改善することができる。
【0077】
<実施形態のまとめ>
本明細書には、少なくとも下記各項の無線通信方法、及び無線通信システムが開示されている。
(第1項)
基地局装置と複数の端末装置とを含む無線通信システムであって、
前記基地局装置は、
前記端末装置から、端末連携MIMO通信の連携状態を示す情報を含む端末情報を収集するように構成された端末情報収集部と、
前記端末情報に基づいて、前記端末連携MIMO通信で連携する連携端末数が所定数以上の前記端末装置に対して、前記端末連携MIMO通信でデータを送信し、前記連携端末数が前記所定数未満の端末装置に対して、MU-MIMO通信でデータを送信するように構成された無線通信部と、
を有する、無線通信システム。
(第2項)
通信の宛先の端末装置から収集した前記端末情報に基づいて、前記宛先の端末装置に、前記端末連携MIMO通信でデータを送信するか、前記MU-MIMO通信でデータを送信するかを動的に制御するように構成された通信制御部を有する、第1項に記載の無線通信システム。
(第3項)
前記通信制御部は、
通信の宛先の端末装置に、前記端末連携MIMO通信でデータを送信する場合、
前記宛先の端末装置、及び前記宛先の端末装置と連携可能な他の端末装置から収集した前記端末情報に基づいて、前記他の端末装置のうち、端末連携MIMO通信の無線信号を前記宛先の端末装置に中継する端末装置を決定する、
第2項に記載の無線通信システム。
(第4項)
前記通信制御部は、前記他の端末装置のうち、前記連携端末数がより少ない端末装置を、前記無線信号を前記宛先の端末装置に中継する端末装置に決定する、第3項に記載の無線通信システム。
(第5項)
前記宛先の端末装置から収集する前記端末情報は、前記他の端末装置との間の伝搬路情報を含み、
前記通信制御部は、前記連携端末数が同じ前記他の端末装置が複数ある場合、前記宛先の端末装置に無線信号を中継する中継通信用の無線リンクの無線品質がより高い端末装置を、前記無線信号を前記宛先の端末装置に中継する端末装置に決定する、第4項に記載の無線通信システム。
(第6項)
前記端末連携MIMO通信は、
前記基地局装置が、前記宛先の端末装置に送信するデータと、前記宛先の端末装置にデータを中継する他の端末装置への制御情報とを含む前記無線信号を送信し、
前記他の端末装置は、受信した前記無線信号の前記制御情報に従って、受信した前記無線信号を中継通信用の無線リンクで前記宛先の端末装置へ中継し
前記宛先の端末装置は、前記基地局装置から受信した前記無線信号と、前記中継通信用の無線リンクで受信した前記無線信号とを用いて、前記データを受信する、
第3項~第5項のいずれかに記載の無線通信システム。
(第7項)
複数の端末装置と無線通信を行う基地局装置であって、
前記端末装置から、端末連携MIMO通信の連携状態を示す情報を含む端末情報を収集するように構成された端末情報収集部と、
前記端末情報に基づいて、前記端末連携MIMO通信で連携する連携端末数が所定数以上の前記端末装置に対して、前記端末連携MIMO通信でデータを送信し、前記連携端末数が前記所定数未満の端末装置に対して、MU-MIMO通信でデータを送信するように構成された無線通信部と、
を有する、基地局装置。
(第8項)
基地局装置と複数の端末装置とを含む無線通信システムにおいて、
前記基地局装置が、
前記端末装置から、端末連携MIMO通信の連携状態を示す情報を含む端末情報を収集する処理と、
前記端末情報に基づいて、前記端末連携MIMO通信で連携する連携端末数が所定数以上の前記端末装置に対して、前記端末連携MIMO通信でデータを送信し、前記連携端末数が前記所定数未満の端末装置に対して、MU-MIMO通信でデータを送信する処理と、
を実行する、無線通信方法。
【0078】
以上、本実施形態について説明したが、本発明はかかる特定の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0079】
1 無線通信システム
10 基地局装置
20、20-1~20-6 端末装置
201 無線通信部
202 端末情報収集部
203 通信制御部
212 端末間連携部
1000 コンピュータ