(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022005
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】鋳造設備
(51)【国際特許分類】
B22D 7/06 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B22D7/06 R
B22D7/06 G
B22D7/06 T
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125268
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000180070
【氏名又は名称】山陽特殊製鋼株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大嶌 裕二
(57)【要約】
【課題】鋳型の湯口穴にノズルが容易に挿入されうる鋳造設備の提供。
【解決手段】鋳造設備2は、底20に湯口穴24を有する鋳型6と、湯口穴24に挿入される胴部及び先端部を有し、先端部と湯口穴24との隙間が胴部と湯口穴24との隙間より大きいノズル8とを備える。好ましくは、鋳造設備2、先端部及び胴部のそれぞれの形状が円筒形であり、先端部の外径が胴部の外径より小さい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底に湯口穴を有する鋳型と、
前記湯口穴に挿入される胴部及び先端部を有し、前記先端部と前記湯口穴との隙間が前記胴部と前記湯口穴との隙間より大きいノズルと
を備える、鋳造設備。
【請求項2】
前記先端部及び前記胴部のそれぞれの形状が円筒形であり、前記先端部の外径が前記胴部の外径より小さい、請求項1に記載の鋳造設備。
【請求項3】
前記先端部と前記湯口穴との隙間が1mm以上5mm以下である、請求項1又は2に記載の鋳造設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、下注ぎ造塊法に使用される鋳造設備を開示する。
【背景技術】
【0002】
鋼材の製造の一例では、鋼材が鋼塊から得られる。この鋼塊は、溶鋼の鋳造によって得られる。この溶鋼の鋳造方法の一例として、下注ぎ造塊法が知られている。下注ぎ造塊法では、鋳型に溶鋼が下方から注入される。この鋳造に使用される鋳型が特許文献1に記載されている。この鋳型では、底に湯口穴が形成されている。この湯口穴にノズルが挿入されている。このノズルを通って溶鋼が鋳型に注入される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この鋳型は溶鋼の鋳造に繰り返し使用される。ノズルは、湯口穴に繰り返し挿入され取り外される。鋳型で溶鋼の鋳造が繰り返されることで、湯口穴に変形が生じる。湯口穴の変形に合わせて、ノズルの形状が修正される。ノズルの形状修正には手間がかかる。
【0005】
本出願人の意図するところは、鋳型の湯口穴にノズルが容易に挿入されうる鋳造設備の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書が開示する鋳造設備は、
底に湯口穴を有する鋳型と、
前記湯口穴に挿入される胴部及び先端部を有し、前記先端部と前記湯口穴との隙間が前記胴部と前記湯口穴との隙間より大きいノズルと
を備える。
【0007】
好ましくは、前記先端部及び前記胴部のそれぞれの形状が円筒形である。前記先端部の外径は前記胴部の外径より小さい。
【0008】
好ましくは、前記先端部と前記湯口穴との隙間は、1mm以上5mm以下である。
【発明の効果】
【0009】
この鋳造設備では、鋳型の湯口穴にノズルが容易に挿入されうる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る鋳造設備が示された正面断面図である。
【
図3】
図3(A)は
図1の鋳造設備が備えるノズルの平面図であり、
図3(B)は
図3(A)の線分IIIB-IIIBに沿った断面図である。
【
図4】
図4は、
図1の鋳造設備の鋳型の湯口穴にノズルが取り付けられた状態が示された説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態が詳細に説明される。
【0012】
図1に、鋳造設備2が示されている。この鋳造設備2は、注入管4、鋳型6、ノズル8及び定盤10を備える。注入管4は、定盤10の上で起立している。鋳型6は、定盤10の上に置かれている。ノズル8は鋳型6に取り付けられている。
【0013】
注入管4は、鉛直方向に延在している。注入管4は、上端に開口12を有している。注入管4は、第一湯道14を有している。第一湯道14は、注入管4の開口12から下端16にまで至っている。
【0014】
定盤10は、第二湯道32を有している。第二湯道32は水平方向に延在する。第二湯道32は第一湯道14と連通している。
【0015】
図2には、鋳型6の断面が示されている。鋳型6は、側壁18と底20とを有している。鋳型6は、側壁18と底20とで囲まれたキャビティ22を有する。側壁18は、円錐台状の外形形状を有する。側壁18は、上方ほど外径が大きい形状を有する。また、側壁18は、上方ほど内径が大きい形状を有する。底20は湯口穴24を有している。
【0016】
湯口穴24は、底20の上面から下面にまで至っている。湯口穴24の断面形状は円形である。湯口穴24を形成する内周面は、テーパ面34及び通し面36を含む。テーパ面34は、底20の下面に開口している。テーパ面34は、底20の下面から通し面36にまで至っている。テーパ面34は、通し面36に向かって先細りである。通し面36は、テーパ面34から底20の上面にまで至っている。通し面36の内径は、一定である。
【0017】
図3(A)及び
図3(B)に示される様に、ノズル8は、先端に開口26を有している。ノズル8は後端に開口28を有している。ノズル8は湯道30を有する。湯道30は、開口26から開口28にまで至っている。ノズル8は、頭部38、胴部40及び先端部42を有する。胴部40は、頭部38から先端部42にまで至っている。湯道30は、頭部38、胴部40及び先端部42を貫通している。ノズル8の材質は、特に限定されないが、例えば煉瓦である。
【0018】
頭部38は円錐台状の形状を有する。頭部38の外径は、胴部40に向かって先細りである。胴部40は、円筒形の形状を有する。
図3(B)の両矢印Daは、胴部40の外径を表している。先端部42は、円筒形の形状を有する。
図3(B)の両矢印Dbは、先端部42の外径を表している。両矢印Lbは、先端部42の長さを表している。胴部40の外径Daは一定である。先端部42の外径Dbは一定である。頭部38の外径は、胴部40の外径Daより大きい。胴部40の外径Daは先端部42の外径Dbより大きい。
【0019】
図4では、ノズル8が湯口穴24に挿入されている。湯口穴24のテーパ面34の半径方向内側に、ノズル8の頭部38が位置している。湯口穴24の通し面36の半径方向内側に、胴部40と先端部42とが位置している。
図4の両矢印Gは、湯口穴24と先端部42との隙間の大きさを表している。この隙間Gは、湯口穴24の半径と先端部42の半径(Db/2)との差として算出される。
【0020】
ノズル8と湯口穴24とでは、頭部38がテーパ面34に当接している。先端部42と湯口穴24(通し面36)との隙間Gは、胴部40と湯口穴24(通し面36)との隙間より大きい。ノズル8が湯口穴24に挿入された状態では、湯道30は第二湯道32に連通している(
図1参照)。
【0021】
図1の鋳造設備2で鋼塊が製造されるとき、溶鋼が開口12から注入管4に注入される。溶鋼は、第一湯道14を下降し、第二湯道32に至る。溶鋼が、継続して注入管4に注入される。溶鋼が、ノズル8の湯道30からキャビティ22に注入される。溶鋼は鋳型6に下方から注入される。鋳型6に注入された溶鋼が凝固する。この様にして、溶鋼から鋼塊が得られる。鋼塊が鋳型6から引き抜かれる。
【0022】
使用された鋳型6から、ノズル8が取り外される。この鋳型6が、整備される。この鋳型6に、ノズル8が取り付けられる。この鋳型6は、定盤10の上に置かれる。この様にして、鋳造設備2は、
図1の状態に戻される。この鋳造設備2で、更に、鋼塊が製造される。この鋳型6とノズル8とは、繰り返し使用される。
【0023】
この鋼塊の製造では、繰り返し使用される鋳型6に、磨耗、亀裂などが生じることがある。磨耗、亀裂などが生じた鋳型6は、整備される。この様にして、鋳型6が繰り返し使用されることで、湯口穴24に凹凸等の変形が生じる。この変形は、湯口穴24のキャビティ22に近い部分に生じ易い。また、キャビティ22に近い部分での変形量は、キャビティ22から離れた部分での変形量より、大きい。
【0024】
この鋳造設備2では、湯口穴24に変形が生じる前の初期状態において、ノズル8の先端部42と湯口穴24との隙間Gは、胴部40と湯口穴24との隙間より大きい。これにより、湯口穴24が変形した後でも、このノズル8は、湯口穴24に容易に挿入されうる。このノズル8は、湯口穴24の形状に合わせてノズル8の形状を修正する手間が省ける。これにより、鋳造設備2は、鋼塊の生産性の向上に寄与する。
【0025】
この湯口穴24の変形は様々である。ノズル8の形状を修正する場合にも、その形状修正は様々である。このため、この形状修正は手作業を必要とする。この形状修正は、手作業によって、ばらつき易い。この形状修正が適切でないと、鋳型6の使用中に漏鋼が発生する恐れがある。この鋳造設備2では、この形状修正の頻度が低減される。鋳造設備2は、漏鋼の発生を抑制できる。
【0026】
胴部40と湯口穴24との隙間は、ノズル8の先端部42と湯口穴24との隙間Gより小さい。従って、胴部40と湯口穴24とによって、鋳造設備2は漏鋼の発生を抑制できる。この鋳造設備2は、鋼塊の生産性の向上に寄与しつつ、漏鋼の発生を抑制できる。
【0027】
このノズル8では、先端部42及び胴部40のそれぞれの形状は、円筒形である。先端部42の外径Dbは胴部40の外径Daより小さい。湯口穴24の通し面36の内径は一定にされている。この湯口穴24にノズル8が挿入されている。このノズル8では、先端部42と湯口穴24との隙間Gの大きさが、容易に管理される。胴部40と湯口穴24との隙間の大きさが容易に管理される。この先端部42及び胴部40のそれぞれの形状は、好ましくは円筒形である。
【0028】
しかしながら、先端部42及び胴部40のそれぞれの形状は円筒形に限定されない。ノズル8と湯口穴24とは、先端部42と湯口穴24との隙間Gが、胴部40と湯口穴24との隙間より大きければよい。例えば、先端部42又は胴部40の形状が円錐台状であってよいし、先端部42及び胴部40のそれぞれの形状が円錐台状であってよい。
【0029】
先端部42と湯口穴24との隙間Gが大きいノズル8は、湯口穴24に挿入され易い。ノズル8の形状修正の頻度が低減される。これらの観点から、隙間Gは、好ましくは1mm以上であり、更に好ましくは1mmより大きく、特に好ましくは2mm以上である。この隙間Gは、特に上限はないが、例えば5mm以下である。
【0030】
先端部42の長さLbが大きいノズル8は、湯口穴24に挿入され易い。ノズル8の形状修正の頻度が低減される。これらの観点から、この長さLbは、好ましくは5mm以上であり、更に好ましくは10mm以上である。この長さLbに、特に上限はない。
【0031】
このノズル8では、頭部38が湯口穴24のテーパ面34に当接している。この頭部38によって、湯口穴24の軸方向において、ノズル8は位置決めされている。この頭部38によって、湯口穴24の軸方向において、先端部42及び胴部40は位置決めされている。この位置決めは、先端部42と湯口穴24との隙間Gの管理を容易にする。また、この位置決めは、胴部40と湯口穴24との隙間の管理を容易にする。これらの観点から、ノズル8は、頭部38を有することが好ましい。なお、頭部38の形状は円錐台状に限定されない。頭部38の形状は、例えば、円柱状であってよいし、多角柱形、又は多角すい形状であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上説明された鋳造設備は、様々な下注ぎ造塊法の鋳造に適用できる。
【符号の説明】
【0033】
2・・・鋳造設備
6・・・鋳型
8・・・ノズル
20・・・底
24・・・湯口穴
40・・・胴部
42・・・先端部
G・・・隙間
Da、Db・・・外径