(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024002215
(43)【公開日】2024-01-11
(54)【発明の名称】接合体の製造方法、発光装置の製造方法、及び発光装置
(51)【国際特許分類】
B32B 9/00 20060101AFI20231228BHJP
C03C 27/10 20060101ALI20231228BHJP
B32B 37/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
B32B9/00 A
C03C27/10 B
B32B37/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022101283
(22)【出願日】2022-06-23
(71)【出願人】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】長尾 洋平
(72)【発明者】
【氏名】染谷 武紀
【テーマコード(参考)】
4F100
4G061
【Fターム(参考)】
4F100AA13D
4F100AA19D
4F100AA20B
4F100AA20C
4F100AG00A
4F100AG00B
4F100AG00C
4F100AR00E
4F100AT00D
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA04
4F100BA05
4F100BA07
4F100DA20A
4F100DA20D
4F100DD07A
4F100DD07D
4F100EJ17
4F100GB41
4F100JG01E
4F100JN30
4F100JN30A
4F100YY00A
4F100YY00D
4G061AA02
4G061BA05
4G061CB04
4G061CB12
4G061CB13
4G061CD10
4G061DA23
4G061DA33
(57)【要約】
【課題】接合不良を抑制する、技術を提供する。
【解決手段】接合体の製造方法は、サファイア基板又は窒化アルミニウム基板からなる第1部材の接合面と、第2部材の接合面とを向かい合わせて前記第1部材と前記第2部材を接合することを含み、前記第1部材と前記第2部材を接合する際に、前記第1部材と前記第2部材の間に圧力を加えることを含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サファイア基板又は窒化アルミニウム基板からなる第1部材の接合面と、第2部材の接合面とを向かい合わせて前記第1部材と前記第2部材を接合することを含み、
前記第1部材と前記第2部材を接合する際に、前記第1部材と前記第2部材の間に圧力を加えることを含む、接合体の製造方法。
【請求項2】
無加圧で前記第1部材と前記第2部材を重ね合わせたときに前記第1部材と前記第2部材の間に形成される空隙の最大厚みをd(d>0)(nm)とし、前記第1部材と前記第2部材の重なり合う領域の面積をS(mm2)とし、前記第1部材の板厚をt(mm)とすると、
前記第1部材と前記第2部材を接合する際に、前記第1部材と前記第2部材の間にd×(t/S)3(MPa)以上の圧力を加えることを含む、請求項1に記載の接合体の製造方法。
【請求項3】
前記第1部材と前記第2部材を接合する際に、前記第1部材と前記第2部材の間にd×(t/S)3×4+t×200(MPa)以下の圧力を加えることを含む、請求項2に記載の接合体の製造方法。
【請求項4】
前記第1部材の接合面の表面粗さをRa1(nm)とし、前記第2部材の接合面の表面粗さをRa2(nm)とすると、
Ra1とRa2の少なくとも1つが0.5nmを超える場合、前記圧力はd×(t/S)3×4+(Ra1+Ra2)×15(MPa)以上である、請求項2又は3に記載の接合体の製造方法。
【請求項5】
前記第1部材と前記第2部材の各々の接合面の表面形状を測定することで前記空隙の最大厚みdを測定することと、前記空隙の最大厚みdに基づき前記圧力を設定することと、を含む、請求項2又は3に記載の接合体の製造方法。
【請求項6】
前記第1部材の接合面のうち、少なくとも前記第2部材と重なり合う領域は凹曲面であり、
前記第2部材の接合面のうち、少なくとも前記第1部材と重なり合う領域は凸曲面である、請求項1~3のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項7】
前記第1部材と前記第2部材の接合前に、前記第1部材の接合面とは反対向きの非接合面には半導体層が形成されている、請求項1~3のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項8】
前記第1部材と前記半導体層とは、発光素子を構成する、請求項7に記載の接合体の製造方法。
【請求項9】
前記発光素子は、紫外線発光素子である、請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項10】
前記第2部材は、レンズである、請求項8に記載の接合体の製造方法。
【請求項11】
前記レンズは、SiO2含有量が70mol%以下のガラスである、請求項10に記載の接合体の製造方法。
【請求項12】
前記第1部材と前記第2部材を接合する前に、前記第1部材の接合面に第1酸化シリコン膜を形成することを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項13】
前記第1部材と前記第2部材を接合する前に、前記第2部材の接合面に第2酸化シリコン膜を形成することを含み、
前記第2部材は、SiO2含有量が70mol%以下のガラスである、請求項1~3のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
【請求項14】
請求項1~3のいずれか1項に記載の製造方法で接合体を製造することを含む、発光装置の製造方法。
【請求項15】
レンズと、前記レンズと接合された発光素子と、実装用の基板と、前記発光素子と前記実装用の基板とを接合するはんだバンプと、を備え、
前記はんだバンプの厚みが、前記はんだバンプの幅の90%以下である、発光装置。
【請求項16】
レンズと、前記レンズと接合された発光素子と、実装用の基板と、前記発光素子と前記実装用の基板とを接合するはんだバンプと、を備え、
前記実装用の基板に対して前記発光素子が0.5°~1°傾いている、発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接合体の製造方法、発光装置の製造方法、及び発光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、2つの基板を接合する接合方法が開示されている。その接合方法は、2つの基板それぞれの互いに接合される接合面の少なくとも一方を親水化することと、親水化の後で2つの基板を接合することと、を含む。親水化することは、酸素ガスを用いた反応性イオンエッチングと、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングと、窒素ラジカルの照射と、を含む。
【0003】
特許文献2には、2つの基板を接合する接合方法が開示されている。その接合方法は、一対の基板の両方又はいずれか一方の接合面に金属酸化物の薄膜を形成することと、その薄膜を介して基板の接合面を互いに接触させて、貼り合わせることと、を含む。基板は、SiO2を含むガラス、強化ガラス等である。薄膜として、実施例では酸化アルミニウム膜が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/084285号
【特許文献2】国際公開第2019/131490号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
サファイア基板又は窒化アルミニウム基板からなる第1部材の接合面と、第2部材の接合面とを向かい合わせて第1部材と第2部材を接合することがあるが、接合不良が生じうる。
【0006】
本開示の一態様は、接合不良を抑制する、技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る接合体の製造方法は、サファイア基板又は窒化アルミニウム基板からなる第1部材の接合面と、第2部材の接合面とを向かい合わせて前記第1部材と前記第2部材を接合することを含み、前記第1部材と前記第2部材を接合する際に、前記第1部材と前記第2部材の間に圧力を加えることを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一態様によれば、接合する際に圧力を加えることで、接合不良を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、接合前の第1部材と第2部材の一例を示す断面図である。
【
図2】
図2は、接合後の第1部材と第2部材の一例を示す断面図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る接合体の製造方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、無加圧下での第1部材の反りの一例を示す断面図である。
【
図5】
図5は、接合時の加圧による第1部材の変形の一例を示す断面図である。
【
図6】
図6は、無加圧下での接合面の表面粗さの一例を示す断面図である。
【
図7】
図7は、接合面が凸曲面である第2部材の一例を示す断面図である。
【
図8】
図8は、接合体を含む発光装置の一例を示す断面図である。
【
図9】
図9は、第1変形例に係る発光装置の断面図である。
【
図10】
図10は、第2変形例に係る発光装置の断面図である。
【
図11】
図11は、はんだバンプのつぶれの一例を示す断面図である。
【
図12】
図12は、基板に対する発光素子の傾きの一例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について図面を参照して説明する。なお、各図面において同一の又は対応する構成には同一の符号を付し、説明を省略することがある。明細書中、数値範囲を示す「~」は、その前後に記載された数値を下限値及び上限値として含むことを意味する。本明細書において、表面粗さとは、原子間力顕微鏡(Atomic Force Microscope:AFM)で、一辺2μmの正方形の区画を測定した際の算術平均粗さRaのことである。
【0011】
図1~
図3を参照して、一実施形態に係る接合体1の製造方法について説明する。接合体1の製造方法は、
図1及び
図2に示すように第1部材21の接合面21aと第2部材31の接合面31aを向かい合わせて第1部材21と第2部材31を接合することを含む。第1部材21と第2部材31は、詳しくは後述するが、有機接着剤を介することなく接合される。
【0012】
第1部材21は、サファイア基板又は窒化アルミニウム基板からなる。なお、本明細書中に記載に窒化アルミニウム基板とは、窒化アルミニウム単結晶からなる基板である。第1部材21は、第2部材31に対向する接合面21aと、接合面21aとは反対向きの非接合面21bと、を有する。非接合面21bには、半導体層22が形成されてもよい。半導体層22は、例えば第1部材21と第2部材31の接合前に形成される。第1部材21と半導体層22は、発光素子2を構成する。発光素子2は、さらに電極を有してもよい。発光素子2は、実装用の基板にはんだバンプを介して接合されていてもよい。ここで実装用の基板とは、例えば、窒化アルミニウム焼結体、酸化アルミニウム焼結体、又はLTCC(Low Temperature Co-fired Ceramics)などのセラミックス材料に、電極が形成された基板である。実装用の基板の形状は、例えば、板状、箱状である。
【0013】
第1部材21は、上記の通り、発光素子2の一部であってもよい。発光素子2は、例えば紫外線発光素子である。紫外線は、UVC(波長200nm~280nm)、UVB(波長280nm~315nm)、及びUVA(波長315nm~400nm)のいずれでもよい。なお、発光素子2は、可視光線発光素子、又は赤外線発光素子であってもよい。
【0014】
なお、第1部材21は、発光素子2の一部には限定されない。第1部材21は、サファイア基板、又は窒化アルミニウム基板からなるものであればよい。サファイア基板、又は窒化アルミニウム基板は、発光素子2以外の半導体素子の一部であってもよく、例えば受光素子の一部であってもよい。
【0015】
第1部材21の板厚tは、例えば0.05mm~2mmである。第1部材21の板厚tが2mm以下であれば、無加圧で第1部材21が反りを有する場合に、その反りが無くなるように第1部材21を弾性変形させることが可能である。第1部材21の板厚tは、好ましくは1mm以下である。
【0016】
第1部材21の接合面21aの表面粗さRa1は、例えば0.01nm~1nmである。表面粗さRa1が1nm以下であれば、微小なボイドの発生を抑制できる。表面粗さRa1は、好ましくは0.5nm以下である。
【0017】
第2部材31は、特に限定されないが、例えばレンズである。発光素子2の発した光は、レンズを介して外部に取り出される。レンズを発光素子2に取り付けることで、光の全反射を抑制でき、光の取り出し効率を向上できる。レンズは、球面レンズでも非球面レンズでもよいが、光の取り出し効率の観点から球面レンズが好ましい。
【0018】
第2部材31は、第1部材21に対向する接合面31aと、接合面31aとは反対向きの非接合面31bと、を有する。第2部材31が平凸レンズである場合、接合面31aが平面であるのに対し、非接合面31bが凸曲面である。凸曲面は、中央が周縁よりも突出するドーム状の曲面である。なお、詳しくは後述するが、接合面31aも、非接合面31bと同様に、凸曲面であってもよい。
【0019】
なお、第2部材31は、レンズには限定されない。第2部材31は、例えば、プリズム、又は板であってもよい。
【0020】
第2部材31の材質は、例えばソーダライムガラス、無アルカリガラス、化学強化ガラス、又はホウ酸ランタン系ガラスなどである。化学強化ガラスは、ディスプレイのカバーガラスなどに用いられる。ホウ酸ランタン系ガラスは、レンズ又はプリズムなどに用いられる。
【0021】
第2部材31の最大厚みは、例えば、第1部材21の板厚tに比べて厚い。第2部材31の最大厚みは、第2部材31の接合面31aに対して垂直な方向に計測する。第2部材31の曲げ剛性は第1部材21の曲げ剛性よりも高く、第2部材31は第1部材21に比べて弾性変形し難い。
【0022】
第2部材31の接合面31aの表面粗さRa2は、例えば0.01nm~1nmである。表面粗さRa2が1nm以下であれば、微小なボイドの発生を抑制できる。表面粗さRa2は、好ましくは0.5nm以下である。
【0023】
第2部材31の接合面31aの面積は、例えば、第1部材21の接合面21aの面積よりも大きい。接合面31aの周縁は、接合面21aの周縁の外に配置される。この場合、
図2に示すように、第1部材21と第2部材31の重なり合う領域Aの面積S(mm
2)は、第1部材21の接合面21aの面積に等しい。面積Sは、接合体1の用途に応じて選択されるが、例えば0.1mm
2~10mm
2である。
【0024】
接合体1の製造方法は、例えばシーケンシャルプラズマ法を用いることを含む。シーケンシャルプラズマ法は、例えば、酸素ガスを用いた反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching;RIE)と、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングと、窒素ラジカルの照射と、を含む。
【0025】
以下、酸素ガスを用いた反応性イオンエッチングを、「酸素RIE」とも表記する。また、窒素ガスを用いた反応性イオンエッチングを、「窒素RIE」とも表記する。なお、シーケンシャルプラズマ法は、窒素RIEと、窒素ラジカルの照射と、を含めばよく、酸素RIEを含まなくてもよい。
【0026】
シーケンシャルプラズマ法は、接合面を改質する。改質した接合面が水蒸気又は水などに接触し、親水基であるOH基が接合面に生成される。その後、接合時にOH基同士の水素結合が生じ、高い接合強度が得られる。接合の後、アニール処理が実施されてもよい。アニール処理によって、水素結合が共有結合に変わり、より高い接合強度が得られる。
【0027】
本発明者は、実験によって、SiO2含有量が100mol%の部材(石英、又は石英ガラス)の接合面をシーケンシャルプラズマ法で改質した場合に、酸素RIEのみを用いて改質した場合に比べて、高い接合強度が得られることを確認した。
【0028】
但し、SiO2含有量が70mol%以下の部材の接合面を、シーケンシャルプラズマ法を用いて改質した場合、酸素RIEのみを用いて改質した場合と比べて、同程度の接合強度しか得られなかった。
【0029】
本発明者は、更に実験を行い、互いに接合される2つの部材の少なくとも一方がSiO2含有量の低い部材である場合に、その部材の接合面に酸化シリコン膜を形成しておけば、シーケンシャルプラズマ法で接合強度を改善できることを見出した。
【0030】
表面改質前の酸化シリコン膜は、石英又は石英ガラスと同様に、酸素とケイ素以外の不純物をほぼ含まない。それゆえ、酸化シリコン膜の接合面をシーケンシャルプラズマ法で改質すれば、石英ガラスの接合面をシーケンシャルプラズマ法で改質する場合と同程度に、高い接合強度が得られる。
【0031】
第1部材21は、上記の通り、サファイア基板又は窒化アルミニウム基板であり、SiO2をほとんど含まない。サファイア基板又は窒化アルミニウム基板の接合面に第1酸化シリコン膜23を形成しておけば、シーケンシャルプラズマ法を用いて接合強度を改善できる。
【0032】
第2部材31は、上記の通り、例えばソーダライムガラス、無アルカリガラス、化学強化ガラス、又はホウ酸ランタン系ガラスなどである。これらのガラスのSiO2含有量は70mol%以下である。これらのガラスの接合面に第2酸化シリコン膜33を形成しておけば、シーケンシャルプラズマ法で接合強度を改善できる。
【0033】
なお、第2部材31が石英ガラス又は石英である場合、第2酸化シリコン膜33は不要である。この場合、第2部材31の接合面31aを、シーケンシャルプラズマ法を用いて改質すれば、酸素RIEのみを用いて改質した場合に比べて、高い接合強度が得られる。
【0034】
接合体1の製造方法は、例えば
図3に示すように、酸化シリコン膜の成膜(ステップS1)と、酸素RIE(ステップS2)と、窒素RIE(ステップS3)と、窒素ラジカルの照射(ステップS4)と、水分子の供給(ステップS5)と、接合(ステップS6)と、アニール(ステップS7)とを含む。
【0035】
ステップS1は、第1部材21の接合面21aに、第1酸化シリコン膜23を成膜することを含む。また、ステップS1は、第2部材31の接合面31aに、第2酸化シリコン膜33を成膜することを含む。第1酸化シリコン膜23と、第2酸化シリコン膜33とは、同時に成膜されてもよいし、順番に成膜されてもよい。
【0036】
第1酸化シリコン膜23と第2酸化シリコン膜33は、同様に構成される。そこで、以下、代表的に、第1酸化シリコン膜23について説明し、第2酸化シリコン膜33の説明を省略する。
【0037】
第1酸化シリコン膜23は、例えばSiO2膜である。第1酸化シリコン膜23は、化学量論組成のものには限定されない。つまり、第1酸化シリコン膜23は、ケイ素と酸素のモル比が1:2のものには限定されない。
【0038】
第1酸化シリコン膜23の成膜方法は、例えばスパッタ法である。スパッタ法は、反応性スパッタ法でもよい。反応性スパッタ法は、金属のターゲットと、希ガス等の不活性ガスと反応性ガス(例えば酸素ガス)との混合ガスを使用し、金属酸化物を対象基板上に形成する。スパッタ法は、金属酸化物のターゲットを使用してもよい。
【0039】
なお、第1酸化シリコン膜23の成膜方法は、スパッタ法には限定されず、プラズマCVD(Chemical Vapor Deposition)法、蒸着法、又はALD(Atomic Layer Deposition)法などであってもよい。
【0040】
第1酸化シリコン膜23の膜厚は、例えば1nm~100nmである。第1酸化シリコン膜23の膜厚が1nm以上であれば、シーケンシャルプラズマ法の改質効果が得られる。第1酸化シリコン膜23の膜厚が100nm以下であれば、第1酸化シリコン膜23の膜厚が発光素子2の光の波長よりも短いので、第1部材21と第1酸化シリコン膜23の間の屈折率差による光の反射がほとんど生じない。
【0041】
第1酸化シリコン膜23の膜厚は、好ましくは75nm以下であり、より好ましくは50nm以下であり、更に好ましくは30nm以下であり、更にまた好ましくは20nm以下であり、特に好ましくは10nm以下であり、更に特に好ましくは5nm以下である。第1酸化シリコン膜23の膜厚は薄いので、第1酸化シリコン膜23の接合面23aの表面粗さは、第1部材21の接合面21aの表面粗さRa1と同程度になる。
【0042】
ステップS2は、第1酸化シリコン膜23の接合面23aに対して、酸素RIEを施すことを含む。また、ステップS2は、第2酸化シリコン膜33の接合面33aに対して、酸素RIEを施すことを含む。酸素RIEは、例えば処理容器内のステージに部材を保持することと、処理容器内の残留ガスを排出することと、処理容器内に酸素ガスを導入することと、ステージに保持された部材に対して高周波バイアスを印加することと、を含む。高周波バイアスの周波数は、例えば13.56MHzである。高周波バイアスの印加によって、酸化シリコン膜の接合面の近傍にシース領域が発生する。シース領域は、酸素イオンが酸化シリコン膜の接合面に繰り返し衝突する領域である。酸素イオンの衝突によって、酸化シリコン膜の接合面がエッチングされる。酸素ガスと希ガスの混合ガスが、処理容器内に導入されてもよい。
【0043】
ステップS3は、第1酸化シリコン膜23の接合面23aに対して、窒素RIEを施すことを含む。また、ステップS3は、第2酸化シリコン膜33の接合面33aに対して、窒素RIEを施すことを含む。窒素RIEは、例えば処理容器内のステージに部材を保持することと、処理容器内の残留ガスを排出することと、処理容器内に窒素ガスを導入することと、ステージに保持された部材に対して高周波バイアスを印加することと、を含む。高周波バイアスの周波数は、例えば13.56MHzである。高周波バイアスの印加によって、酸化シリコン膜の接合面の近傍にシース領域が発生する。シース領域は、窒素イオンが酸化シリコン膜の接合面に繰り返し衝突する領域である。窒素イオンの衝突によって、酸化シリコン膜の接合面がエッチングされる。窒素ガスと希ガスの混合ガスが、処理容器内に導入されてもよい。
【0044】
ステップS4は、第1酸化シリコン膜23の接合面23aに対して、窒素ラジカルを照射することを含む。また、ステップS4は、第2酸化シリコン膜33の接合面33aに対して、窒素ラジカルを照射することを含む。窒素ラジカルの照射は、例えば処理容器内のステージに部材を保持することと、処理容器内の残留ガスを排出することと、処理容器内に窒素ガスを導入することと、マイクロ波等で窒素ガスをプラズマ化することと、を含む。マイクロ波の周波数は、例えば2.45GHzである。プラズマは、マイクロ波プラズマには限定されず、容量結合プラズマ、又は誘導結合プラズマ等であってもよい。窒素ラジカルが生成されればよい。窒素ラジカルの照射によって、OH基の付着するサイトが形成される。なお、OH基の付着するサイトは、酸素RIE、及び窒素RIEでも形成される。
【0045】
ステップS5は、第1酸化シリコン膜23の接合面23aに対して、水分子を供給することを含む。また、ステップS5は、第2酸化シリコン膜33の接合面33aに対して、水分子を供給することを含む。水分子の供給は、例えば処理容器から部材を取り出すことと、取り出した部材を大気に晒すことと、を含む。大気中の水分子によって、OH基が酸化シリコン膜の接合面に形成される。なお、水分子の供給は、処理容器の内部で実施されてもよい。例えば、処理容器内に水蒸気ガスを導入することで水分子を供給できる。水分子は、気体でも液体でもよい。
【0046】
なお、第1酸化シリコン膜23の改質(ステップS2~S5)と、第2酸化シリコン膜33の改質(ステップS2~S5)とは、接合(ステップS6)の前に実施されればよく、同時に実施されてもよいし、別々に実施されてもよい。
【0047】
ステップS6は、第1部材21と第2部材31を接合し、接合体1を得ることを含む。第1部材21と第2部材31の接合は、大気圧下で行われてもよく、減圧雰囲気下で行われてもよい。ボイドの生成を抑制すべく、減圧雰囲気下で実施されることが好ましい。第1酸化シリコン膜23の接合面23aと第2酸化シリコン膜33の接合面33aには予めOH基が形成されているので、OH基同士の水素結合が生じ、高い接合強度が得られる。ステップS6は、第1部材21と第2部材31を押し付け合わせるように、加圧することを含んでもよい。また、ステップS6は、加圧中に同時に加熱することを含んでもよい。加圧中に同時に加熱を行う場合には、ステップS7を省略することが出来る。
【0048】
ステップS7は、接合体1を加熱し、アニールすることを含む。水素結合が共有結合に変わり、より高い接合強度が得られる。接合体1の加熱温度は、例えば120℃~200℃である。また、接合体1の加熱時間は、例えば10分~7時間である。アニールは、接合強度を向上するだけではなく、接合面同士の接触面積を増大し、ボイドを低減しうる。
【0049】
第1部材21と第2部材31は、第1酸化シリコン膜23と第2酸化シリコン膜33を介して接合される。第1酸化シリコン膜23と第2酸化シリコン膜33の合計の膜厚は発光素子2の光の波長よりも小さく、仮に第1部材21と第1酸化シリコン膜23の間、又は第2部材31と第2酸化シリコン膜33の間で屈折率差があった場合でも、これらの間で光がほとんど反射しない。
【0050】
なお、接合体1の製造方法は、シーケンシャルプラズマ法を用いるものには限定されず、例えば、高速イオンビーム若しくは高速原子ビームを用いた表面活性化接合法、又は原子拡散接合法を用いることが出来る。接合体1の製造方法は、少なくともステップS6を含めばよく、その他のステップS1~S5及びS7を含まなくてもよい。また、接合体1の製造方法は、ステップS1~S7以外のステップを更に含んでもよい。
【0051】
次に、
図4を参照して、無加圧下での第1部材21の反りの一例について説明する。
図4において、d(d>0)(nm)は、無加圧で第1部材21と第2部材31を重ね合わせたときに、第1部材21と第2部材31の間に形成される空隙5の最大厚みである。なお、第1酸化シリコン膜23及び第2酸化シリコン膜33が存在する場合、空隙5は第1酸化シリコン膜23と第2酸化シリコン膜33の間に形成される。また、
図4において、Aは、第1部材21と第2部材31の重なり合う領域である。
【0052】
第1部材21は、反りを有することがある。反りは、例えば半導体層22の形成によって生じる。第1部材21の接合面21aは、
図4では凹曲面であるが、鞍状の曲面又は凸曲面であってもよい。凹曲面とは、中央が周縁よりも凹むボウル状の曲面である。第1部材21の反りが大きいほど、空隙5の最大厚みdが大きい。
【0053】
空隙5の最大厚みdは、第1部材21と第2部材31の各々の接合面21a、31aの表面形状を測定することで得られる。表面形状の測定には、例えば白色干渉計(例えば、ザイゴコーポレーション 表面粗さ・形状測定機 New View7300)が用いられる。なお、表面形状の測定は、少なくとも領域Aで行えば足りる。
【0054】
接合体1の製造方法は、接合(ステップS6)の際に、第1部材21と第2部材31の間に圧力Pを加えることを含む。圧力Pは、領域Aに実効的に印加される圧力を示しており、第1部材21と第2部材31に加えた荷重Fを、領域Aの面積Sで除すことで計算される。圧力P(MPa)は、空隙5の最大厚みd(nm)に基づき設定される。具体的には、例えば、圧力Pは、d×(t/S)3(MPa)以上、d×(t/S)3×4+t×200(MPa)以下の範囲で設定される。
【0055】
ここで、dは空隙5の最大厚み(nm)であり、tは第1部材21の板厚(mm)であり、Sは第1部材21と第2部材31の重なり合う領域Aの面積(mm2)である。dは、例えば5nm~800nmであり、好ましくは5nm~600nmであり、より好ましくは5nm~400nmであり、特に好ましくは5nm~200nmである。tは、例えば0.05mm~1mmであり、好ましくは0.1mm~0.5mmである。Sは、例えば0.1mm2~10mm2であり、好ましくは0.5mm2~5mm2である。
【0056】
圧力Pがd×(t/S)
3(MPa)以上であれば、
図5に示すように、
図4に示す空隙5を押し潰すことができ、接合不良を低減できる。圧力Pは、好ましくはd×(t/S)
3×2(MPa)以上、より好ましくはd×(t/S)
3×4(MPa)以上である。ちなみに、水平な円板(上面と下面の各々の面積:S、板厚:t)の周縁を固定し、円板の下面の中心をdmm下方に変位させるべく、円板の上面全体を均一な圧力で押す場合、その圧力はd×(t/S)
3に比例する。
【0057】
圧力Pがd×(t/S)3×4+t×200(MPa)以下であれば、過剰な圧力の発生を抑制でき、第1部材21又は半導体層22の破損を抑制できる。本実施形態によれば、空隙5の最大厚みdに基づき圧力Pの上限値を設定するので、空隙5を押し潰すのに要する圧力を遥かに超える無駄な圧力の発生を抑制できる。
【0058】
図6に示すように、第1部材21の接合面21a又は第2部材31の接合面31aが粗い場合、第1部材21と第2部材31との間に、微細な凹凸に起因する空隙6が生じうる。空隙6は、第1部材21の接合面21aの表面粗さRa1と、第2部材の接合面31aの表面粗さRa2の少なくとも1つが0.5nmを超える場合に顕著である。
【0059】
そこで、表面粗さRa1、Ra2の少なくとも1つが0.5nmを超える場合に、圧力Pがd×(t/S)3×4+(Ra1+Ra2)×15(MPa)以上であってもよい。これにより、反りに起因する空隙5のみならず、微細な凹凸に起因する空隙6をも押し潰すことができ、接合不良をより低減できる。なお、Ra1とRa2の測定は、少なくとも領域A内の異なる3点の測定を行い、それらの平均値をとることで行えば足りる。Ra1とRa2は、各々、例えば0.01nm~1nmである。
【0060】
図7に示すように、第1部材21の接合面21aのうち、少なくとも第2部材31と重なり合う領域Aが凹曲面である場合、第2部材31の接合面31aのうち、少なくとも第1部材21と重なり合う領域Aが凸曲面であることが好ましい。凸曲面は、例えば研磨圧力分布の制御、又は局所加工などによって形成可能である。凹曲面と凸曲面を組み合わせることで、空隙5の最大厚みdを小さくでき、圧力Pを低減できる。
【0061】
第1部材21の接合面21aに含まれる凹曲面の高低差は、例えば10nm~1000nmである。第2部材31の接合面31aに含まれる凸曲面の高低差は、例えば10nm~1000nmである。第1部材21の接合面21aに含まれる凹曲面の高低差と、第2部材31の接合面31aに含まれる凸曲面の高低差とは、どちらが大きくてもよいし、どちらも同じでもよい。
【0062】
図8~
図10に示すように、発光装置100は、接合体1と、接合体1を収容する容器101と、を備える。接合体1は、発光素子2と、レンズ31とを有する。レンズ31の代わりにプリズムなどが用いられてもよく、接合体1は発光素子2と光学部材を有すればよい。容器101は、例えば
図8に示すように、基板102と、カバー103と、を有する。基板102の表面102aには、接合体1を収容する凹部104が形成されている。凹部104の内底面に、発光素子2が固定される。発光素子2は、ダイボンディングなどの公知の方法で固定される。発光素子2とレンズ31が接合された後に、発光素子2が基板102に固定されるが、その順番は逆でも良く、発光素子2が基板102に固定された後に発光素子2とレンズ31が接合されてもよい。
【0063】
接合体1は、レンズ31をカバー103に向けて固定される。カバー103は、発光素子2から出射する光を透過する材料で形成される。発光素子2から出射する光は、レンズ31とカバー103をこの順番で透過する。カバー103は、平板状であり、基板102の表面102aに接着される。
【0064】
カバー103は、発光素子2から出射する光を透過する材料で形成される。かかる材料としては、例えば石英、又は無機ガラスが挙げられる。カバー103と基板102とは、金属ハンダ、無機接着剤、又は有機接着剤で接着される。接着によって外界からの水分等の侵入を防ぎ、発光素子2の性能劣化を抑制できる。
【0065】
カバー103は、
図8に示すように平板状であるが、
図9に示すように箱型状でもよいし、
図10に示すようにドーム状であってもよい。カバー103が箱型状、又はドーム状である場合、レンズ31から放射状に出射する光を効率良く外に取り出すことができる。ドーム状の場合、光の取り出し効率が特に良い。また、カバー103が箱型状、又はドーム状である場合、基板102の表面102aに凹部104を形成しないので、基板102のコストを削減できる。
【0066】
図11及び
図12に示すように、発光装置100は、レンズ31と、レンズ31と接合された発光素子2と、実装用の基板102と、発光素子2と基板102を接合するはんだバンプ105と、を備える。レンズ31と発光素子2とで接合体1が構成される。
【0067】
本明細書中に例示した方法により、圧力をかけて接合体1を製造することで、発光素子2の形態に変化が生じる。特に発光素子2がはんだバンプ105を介して基板102に取り付けられている状態で、圧力をかけて接合体1を製造すると、はんだバンプ105のつぶれ(
図11参照)又は基板102に対する発光素子2の傾き(
図12参照)が生じる。
【0068】
はんだバンプ105へ等方的に圧力がかかった場合には、はんだバンプ105のつぶれのみが発生するが、これは例えば光学顕微鏡による観察により確認することができ、はんだバンプ105の厚みTがはんだバンプ105の幅Wの90%以下であれば、はんだバンプ105がつぶれていると判断できる。はんだバンプ105の厚みTは、基板102の発光素子2との対向面102aに対して垂直な方向に測定する。はんだバンプ105の幅Wは、基板102の発光素子2との対向面102aに対して平行な方向に測定する。はんだバンプ105の厚みTは、はんだバンプ105の幅Wの10%以上である。
【0069】
はんだバンプ105の形状が上記のようになっている場合、はんだバンプ105と発光素子2の接触面積、及びはんだバンプ105と基板102の電極の接触面が大きく、発光素子2と基板102間の抵抗値を低下できる。また、はんだバンプ105のサイズのバラつきを低減でき、均一性を確保できる。
【0070】
はんだバンプ105に等方的ではない圧力がかかった場合、つぶれと傾きが同時に発生する。はんだバンプ105の変形(つぶれ)は、接合前後で10%以上である。基板102に対する発光素子2の傾きθは、例えば0.5°~1°である。傾きθは、光学顕微鏡で測定する。
【0071】
傾きθが0.5°~1°であることは、はんだバンプ105の少なくとも一部分の抵抗値が低下していることを意味している。従って、発光素子2の全体的な抵抗値を下げることができる。
【0072】
はんだバンプ105のつぶれ又は基板102に対する発光素子2の傾きが確認できる場合は、本発明の方法で製造しているといえる。
【0073】
はんだバンプ105を介して基板102と発光素子2を接合した後で発光素子2とレンズ31を接合することは、発光素子2とレンズ31を接合した後ではんだバンプ105を介して基板102と発光素子2を接合することに比較して容易である。
【実施例0074】
以下、実験データについて説明する。下記の例1~例5が実施例であり、下記の例6~例8が比較例である。例1~例8の接合条件及び評価結果を、表1~表2に示す。
【0075】
【0076】
【0077】
表1~表2において、「ガラス」は、SiO2含有量が70mol%以下のホウ酸ランタン系ガラスである。「Pmin1」は、Pmin1=d×(t/S)3(MPa)の式から算出した値である。「Pmax1」は、Pmax1=d×(t/S)3×4+t×200(MPa)の式から算出した値である。「Pmin2」は、Pmin2=d×(t/S)3×4+(Ra1+Ra2)×15(MPa)の式から算出した値である。接合評価が「O.K.」であることは圧力の解除後、第1部材21と第2部材31が剥離しないことを意味し、接合評価が「N.G.」であることは圧力の解除後、第1部材21と第2部材31が剥離することを意味する。以下、例1~例8の接合条件及び評価結果について詳細に説明する。
【0078】
例1では、第1部材21としてサファイア基板の切断片であるサファイアチップを用意し、第2部材31としてサファイア基板を用意した。サファイアチップとサファイア基板の各々の接合面には、SiO2膜をスパッタ法で成膜した。各SiO2膜の接合面は、シーケンシャルプラズマ法で改質した。具体的には、酸素RIEと、窒素RIEと、窒素ラジカルの照射と、をこの順番で実施した後、大気に晒してOH基を付着させた。酸素RIEの処理時間は180秒であり、窒素RIEの処理時間は180秒であり、酸素ラジカルの照射時間は15秒であった。その後、改質した2つのSiO2膜を介して、サファイアチップとサファイア基板を接合した。接合時の圧力Pは、13MPaであった。圧力印加は、200℃で2時間行った。接合評価は「O.K.」であった。サファイアチップの破損は無かった。
【0079】
例2では、第1部材21としてのサファイアチップの非接合面にSiN膜を成膜することでサファイアチップの接合面が凹曲面になるようにサファイアチップを反らせたこと、及び接合時の圧力Pを17MPaに設定したこと以外、例1と同様の接合条件で、サファイアチップとサファイア基板を接合した。圧力印加は、200℃で2時間行った。接合評価は「O.K.」であった。サファイアチップの破損は無かった。
【0080】
例3では、第2部材31として半球状のガラスレンズを用いたこと、ガラスレンズの接合面が凸曲面であること、及び接合時の圧力Pを6MPaに設定したこと以外、例1と同様の接合条件で、サファイアチップとガラスレンズを接合した。圧力印加は、200℃で2時間行った。接合評価は「O.K.」であった。サファイアチップの破損は無かった。ガラスレンズは、酸化物基準のmol%表示で、SiO2を5.8%、La2O3を19%を含むホウケイ酸ガラスのものを用いた。
【0081】
例4では、紫外線発光素子を用意し、その一部であるサファイアチップを第1部材21として用いたこと、接合時の圧力Pを70MPaに設定したこと以外、例3と同様の接合条件で、紫外線発光素子とガラスレンズを接合した。圧力印加は、200℃で2時間行った。接合評価は「O.K.」であった。紫外線発光素子の破損は無かった。
【0082】
例5では、サファイアチップの板厚が0.44mmであったこと、接合時の圧力Pを35MPaに設定したこと以外、例4と同様の接合条件で、紫外線発光素子とガラスレンズを接合した。圧力印加は、200℃で2時間行った。接合評価は「O.K.」であった。紫外線発光素子の破損は無かった。
【0083】
例6では、接合時の圧力Pを0Paに設定したこと以外、例1と同様の接合条件で、サファイアチップとサファイア基板を接合した。圧力印加は、200℃で2時間行った。接合評価は「N.G.」であった。サファイアチップの破損は無かった。
【0084】
例7では、接合時の圧力Pを2MPaに設定したこと以外、例2と同様の接合条件で、サファイアチップとサファイア基板を接合した。圧力印加は、200℃で2時間行った。接合評価は「N.G.」であった。サファイアチップの破損は無かった。
【0085】
例8では、接合時の圧力を25Pa(25×10-6MPa)に設定したこと以外、例4と同様の接合条件で、紫外線発光素子とガラスレンズを接合した。圧力印加は、200℃で2時間行った。接合評価は「N.G.」であった。紫外線発光素子の破損は無かった。
【0086】
上記実施形態に関し、以下の付記を開示する。
[付記1]
サファイア基板又は窒化アルミニウム基板からなる第1部材の接合面と、第2部材の接合面とを向かい合わせて前記第1部材と前記第2部材を接合することを含み、
前記第1部材と前記第2部材を接合する際に、前記第1部材と前記第2部材の間に圧力を加えることを含む、接合体の製造方法。
[付記2]
無加圧で前記第1部材と前記第2部材を重ね合わせたときに前記第1部材と前記第2部材の間に形成される空隙の最大厚みをd(d>0)(nm)とし、前記第1部材と前記第2部材の重なり合う領域の面積をS(mm2)とし、前記第1部材の板厚をt(mm)とすると、
前記第1部材と前記第2部材を接合する際に、前記第1部材と前記第2部材の間にd×(t/S)3(MPa)以上の圧力を加えることを含む、付記1に記載の接合体の製造方法。
[付記3]
前記第1部材と前記第2部材を接合する際に、前記第1部材と前記第2部材の間にd×(t/S)3×4+t×200(MPa)以下の圧力を加えることを含む、付記2に記載の接合体の製造方法。
[付記4]
前記第1部材の接合面の表面粗さをRa1(nm)とし、前記第2部材の接合面の表面粗さをRa2(nm)とすると、
Ra1とRa2の少なくとも1つが0.5nmを超える場合、前記圧力はd×(t/S)3×4+(Ra1+Ra2)×15(MPa)以上である、付記2又は3に記載の接合体の製造方法。
[付記5]
前記第1部材と前記第2部材の各々の接合面の表面形状を測定することで前記空隙の最大厚みdを測定することと、前記空隙の最大厚みdに基づき前記圧力を設定することと、を含む、付記2~4のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
[付記6]
前記第1部材の接合面のうち、少なくとも前記第2部材と重なり合う領域は凹曲面であり、
前記第2部材の接合面のうち、少なくとも前記第1部材と重なり合う領域は凸曲面である、付記1~5のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
[付記7]
前記第1部材と前記第2部材の接合前に、前記第1部材の接合面とは反対向きの非接合面には半導体層が形成されている、付記1~6のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
[付記8]
前記第1部材と前記半導体層とは、発光素子を構成する、付記7に記載の接合体の製造方法。
[付記9]
前記発光素子は、紫外線発光素子である、付記8に記載の接合体の製造方法。
[付記10]
前記第2部材は、レンズである、付記8又は9に記載の接合体の製造方法。
[付記11]
前記レンズは、SiO2含有量が70mol%以下のガラスである、付記10に記載の接合体の製造方法。
[付記12]
前記第1部材と前記第2部材を接合する前に、前記第1部材の接合面に第1酸化シリコン膜を形成することを含む、付記1~11のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
[付記13]
前記第1部材と前記第2部材を接合する前に、前記第2部材の接合面に第2酸化シリコン膜を形成することを含み、
前記第2部材は、SiO2含有量が70mol%以下のガラスである、付記1~12のいずれか1項に記載の接合体の製造方法。
[付記14]
付記1~13のいずれか1項に記載の製造方法で接合体を製造することを含む、発光装置の製造方法。
[付記15]
レンズと、前記レンズと接合された発光素子と、実装用の基板と、前記発光素子と前記実装用の基板とを接合するはんだバンプと、を備え、
前記はんだバンプの厚みが、前記はんだバンプの幅の90%以下である、発光装置。
[付記16]
レンズと、前記レンズと接合された発光素子と、実装用の基板と、前記発光素子と前記実装用の基板とを接合するはんだバンプと、を備え、
前記実装用の基板に対して前記発光素子が0.5°~1°傾いている、発光装置。
【0087】
以上、本開示に係る接合体の製造方法、発光装置の製造方法、及び発光装置について説明したが、本開示は上記実施形態等に限定されない。特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更、修正、置換、付加、削除、及び組み合わせが可能である。それらについても当然に本開示の技術的範囲に属する。