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特開2024-22151フッ化物イオン電池用電極活物質、フッ化物イオン電池用電極及びフッ化物イオン電池
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  • 特開-フッ化物イオン電池用電極活物質、フッ化物イオン電池用電極及びフッ化物イオン電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022151
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】フッ化物イオン電池用電極活物質、フッ化物イオン電池用電極及びフッ化物イオン電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20240208BHJP
   C01G 49/00 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
H01M4/48
C01G49/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125517
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100138863
【弁理士】
【氏名又は名称】言上 惠一
(74)【代理人】
【識別番号】100131808
【弁理士】
【氏名又は名称】柳橋 泰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100145104
【弁理士】
【氏名又は名称】膝舘 祥治
(72)【発明者】
【氏名】柏原 浩大
【テーマコード(参考)】
4G002
5H050
【Fターム(参考)】
4G002AA06
4G002AA08
4G002AB02
4G002AD04
4G002AE05
5H050AA08
5H050BA15
5H050CA01
5H050CA02
5H050CA07
5H050CA14
5H050CA15
5H050CA17
5H050CA20
5H050CA29
5H050CB01
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050CB20
5H050CB29
5H050DA13
5H050EA15
5H050HA02
5H050HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】フッ化物イオン電池用の電極活物質の提供。
【解決手段】メリライト型結晶構造を含む複合酸化物を含む電極活物質である。複合酸化物は、第1金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第1金属原子と、第2金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第2金属原子と、特定非金属原子群から選択される少なくとも1種を含む特定非金属原子と、を含み、特定非金属原子として少なくともOを含んでもよい。第1金属原子群:Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Y、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi。第2金属原子群:Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au。特定非金属原子群:O、F、N、S、Cl。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メリライト型結晶構造を含む複合酸化物を含むフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項2】
前記複合酸化物は、下記第1金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第1金属原子と、下記第2金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第2金属原子と、下記特定非金属原子群から選択される少なくとも1種を含む特定非金属原子と、を含み、前記特定非金属原子として少なくとも酸素原子を含む請求項1に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
第1金属原子群:Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Y、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi。
第2金属原子群:Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au。
特定非金属原子群:O、F、N、S、Cl。
【請求項3】
前記複合酸化物は、前記第1金属原子の総モル数に対する前記第2金属原子の総モル数の比が、1.4以上1.6以下であり、前記第1金属原子及び前記第2金属原子の総モル数に対する前記特定非金属原子の総モル数の比が1.3以上1.5以下である組成を有する請求項2に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項4】
前記複合酸化物は、前記第1金属原子として、Ca、Sr、Y、Ba及びLaからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項2又は請求項3に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項5】
前記複合酸化物は、前記第2金属原子として、Al、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項2又は請求項3に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項6】
前記複合酸化物は、前記第1金属原子として、少なくともSrを含む請求項2又は請求項3に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項7】
前記複合酸化物は、前記第2金属原子として、Fe及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項2又は請求項3に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項8】
前記複合酸化物は、体積平均粒径が20nm以上10μm以下である請求項7に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項9】
前記複合酸化物は、下記式(1)で表される組成を有する請求項1に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
(1)
(式(1)中、1.9<b<2.1、2.9<c<3.1、6.8<d<7.2を満たし、Mは、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Y、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びBiからなる群より選択される少なくとも1種を含み、Mは、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される少なくとも1種を含み、Xは、Oを含み、N、F、S及びClからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。)
【請求項10】
前記式(1)において、前記Mは、Ca、Sr、Y、Ba及びLaからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項9に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項11】
前記式(1)において、前記Mは、Al、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項9に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項12】
前記式(1)において、前記Mは、少なくともSrを含む請求項9に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項13】
前記式(1)において、前記Mは、Fe及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項9に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項14】
前記複合酸化物は、体積平均粒径が20nm以上10μm以下である請求項13に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【請求項15】
請求項1から請求項3及び請求項9から請求項14のいずれか1項に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質を含むフッ化物イオン電池用電極。
【請求項16】
請求項15に記載のフッ化物イオン電池用電極と、電解質とを備えるフッ化物イオン電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フッ化物イオン電池用電極活物質、フッ化物イオン電池用電極及びフッ化物イオン電池に関する。
【背景技術】
【0002】
高いエネルギー密度を有する二次電池としてリチウムイオン電池が知られている。リチウムイオン電池よりも高いエネルギー密度を達成可能な電池として、フッ化物イオン電池が提案されている。例えば、特許文献1には、層状ペロブスカイト構造を有し、特定組成の結晶相を有する活物質が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-143044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の一態様は、フッ化物イオン電池用の電極活物質を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様は、メリライト型結晶構造を含む複合酸化物を含むフッ化物イオン電池用電極活物質である。第2態様は、第1態様のフッ化物イオン電池用電極活物質を含むフッ化物イオン電池用電極である。第3態様は、第2態様のフッ化物イオン電池用電極と、電解質とを備えるフッ化物イオン電池である。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、フッ化物イオン電池用の電極活物質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例に係る複合酸化物のX線回折スペクトルの一例を示す図である。
図2】評価用電池の充放電曲線の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。さらに本明細書に記載される数値範囲の上限及び下限は、数値範囲として例示された数値をそれぞれ任意に選択して組み合わせることが可能である。以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための、フッ化物イオン電池用電極活物質、フッ化物イオン電池用電極及びフッ化物イオン電池を例示するものであって、本発明は、以下に示すフッ化物イオン電池用電極活物質、フッ化物イオン電池用電極及びフッ化物イオン電池に限定されない。
【0009】
フッ化物イオン電池用電極活物質
フッ化物イオン電池用電極活物質(以下、単に「電極活物質」ともいう)は、メリライト型結晶構造を含む複合酸化物を含む。従来知られているフッ化物イオン電池用電極活物質の多くは金属活物質であり、金属のフッ化脱フッ化反応により活物質として機能する。金属のフッ化脱フッ化反応は、結晶構造の大きな変化を伴う反応であり、体積変化が大きい。そのため、抵抗が大きく、サイクル特性やレート特性が低くなる傾向がある。一方、層状の結晶構造をもつ化合物は、キャリアイオンの層間空間への挿入脱離により活物質としての機能を発現する。活物質の結晶構造が変化しないことから体積変化が小さく、抵抗の低減及びサイクル特性、レート特性等の向上が期待できる。メリライト型結晶構造をもつ複合酸化物も層状構造を有するため、これらの利点が期待できる。
【0010】
一般にメリライト型結晶構造を含む複合酸化物は、例えばM で表される理論組成を有する。ここでMはアルカリ金属、アルカリ土類金属、ランタノイド等を表す。Mは遷移金属、Al、Si、Zn、Ge等を表す。XはO、N、F、S、Cl等を表す。メリライト型結晶構造においては、M-X四面体が二次元ネットワーク構造をとり、Mサイトを挟んで層状構造を形成する。メリライト型結晶構造の組成等については、例えば国際公開第2019/065285号を参照できる。メリライト型結晶構造では、フッ化物イオンの二次元拡散による優れたサイクル特性及びレート特性等が期待される。また、Mサイトに配位したアニオンのレドックス反応による高容量化が期待される。
【0011】
本開示に係るメリライト型結晶構造を含む複合酸化物(以下、単に「複合酸化物」ともいう)は、第1金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第1金属原子と、第2金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第2金属原子と、特定非金属原子群から選択される少なくとも1種を含み、少なくとも酸素原子を含む特定非金属原子と、を組成に含んでいてよい。複合酸化物の組成は、第1金属原子を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。また、複合酸化物の組成は、第2金属原子を1種のみ含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。さらに、複合酸化物の組成は、特定非金属原子として酸素原子のみを含んでいてもよく、酸素原子と酸素原子以外の特定非金属原子とを組み合わせて含んでいてもよい。
【0012】
第1金属原子群は、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Y、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi等からなる群から選択される少なくとも1種を含む第1金属原子から構成されてよい。第1金属原子はCa、Sr、Y、Ba及びLaからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともSrを含んでいてよい。
【0013】
また第1金属原子はCa、Sr、Y、Ba及びLaからなる群から選択される少なくとも1種を含み、Li、Be、Na、Mg、K、Rb、Y、Cs、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びBiからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。第1金属原子がCa、Sr、Y、Ba及びLaからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、第1金属原子におけるCa、Sr、Y、Ba及びLaの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。第1金属原子におけるCa、Sr、Y、Ba及びLaの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0014】
更に第1金属原子はSrを含み、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Y、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びBiからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。第1金属原子がSrを含む場合、第1金属原子におけるSrの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。第1金属原子におけるSrの含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0015】
第2金属原子群は、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au等からなる群から選択される少なくとも1種を含む第2金属原子から構成されてよい。第2金属原子はAl、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、Fe及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともFe及びGeを含んでいてよい。
【0016】
また第2金属原子はAl、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含み、Sc、Ti、V、Cr、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。第2金属原子がAl、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、第2金属原子におけるAl、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。第2金属原子におけるAl、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0017】
更に第2金属原子はFe及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含み、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。第2金属原子がFe及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、第2金属原子におけるFe及びGeの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。第2金属原子におけるFe及びGeの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0018】
特定非金属原子群は、O、N、F、S及びClを少なくとも含んでいてよい。特定非金属原子は、少なくともOを含み、特定非金属原子群から選択されるO以外の少なくとも1種の特定非金属原子(例えば、N、F、S、Cl等)を含んで構成されてよい。特定非金属原子におけるOの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。
【0019】
複合酸化物の組成は、第1金属原子の総モル数に対する第2金属原子の総モル数の比が、例えば1.4以上1.6以下であってよく、1.45以上、又は1.55以下であってよい。また複合酸化物の組成は、第1金属原子及び第2金属原子の総モル数に対する特定非金属原子の総モル数の比が、例えば1.3以上1.5以下であってよく、1.35以上、又は1.45以下であってよい。複合酸化物の組成は、特定非金属原子の総モル数を7とする場合に、例えば第1金属原子の総モル数が1.9より大きく2.1未満であってよく、1.95以上、又は2.05以下であってよい。複合酸化物の組成は、特定非金属原子の総モル数を7とする場合に、例えば第2金属原子の総モル数が2.9より大きく3.1未満であってよく、2.95以上、又は3.05以下であってよい。
【0020】
複合酸化物は、例えば下記式(1)で表される組成を有していてよい。
(1)
【0021】
式(1)中、b及びcは、例えば1.9<b<2.1、2.9<c<3.1、6.8<d<7.2を満たしてよく、1.95≦b≦2.05、2.95≦c≦3.05、6.9<d<7.1を満たしていてよい。
【0022】
は、例えばLi、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Y、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びBiからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。Mは、Ca、Sr、Y、Ba、及びLaからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともSrを含んでいてよい。
【0023】
はCa、Sr、Y、Ba及びLaからなる群から選択される少なくとも1種を含み、Li、Be、Na、Mg、K、Rb、Y、Cs、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びBiからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。MがCa、Sr、Y、Ba及びLaからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、MにおけるCa、Sr、Y、Ba及びLaの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。MにおけるCa、Sr、Y、Ba及びLaの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0024】
はSrを含み、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Y、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びBiからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。MがSrを含む場合、MにおけるSrの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。MにおけるSrの含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0025】
は、例えばAl、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される少なくとも1種を含んでいてよい。Mは、Al、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、Fe及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてよく、少なくともFe及びGeを含んでいてよい。
【0026】
はAl、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含み、Sc、Ti、V、Cr、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。MがAl、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、MにおけるAl、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。MにおけるAl、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0027】
はFe及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含み、Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてよい。MがFe及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む場合、MにおけるFe及びGeの総含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。MにおけるFe及びGeの総含有量は、例えば100モル%以下、又は100モル%未満であってよい。
【0028】
XはOを含み、N、F、S及びClからなる群から選択される少なくとも1種類の特定非金属原子を更に含んでよい。XにおけるOの含有量は、例えば50モル%以上、70モル%以上、又は90モル%以上であってよい。
【0029】
複合酸化物の組成に含まれる酸素原子のモル数は、ICP発光分光分析法によって定量される金属イオン量に基づいて、第1金属原子及び第2金属原子の合計モル数を5として、それぞれの金属の価数を考慮して算出される。複合酸化物の組成に含まれるN、F、S及びClのモル数についても同様にして算出される。
【0030】
例えば、ICP発光分光分析法により、第1金属原子であるSr(2価)、第2金属原子であるFe(3価)及びGe(4価)が、モル数の比でそれぞれ、2:2:1で検出されたとする。この場合、ストロンチウムイオン、鉄イオン及びゲルマニウムイオンの検出量はモル基準でそれぞれ2、2、1となる。ストロンチウムイオンの価数を2、鉄イオンの価数を3、及びゲルマニウムイオンの価数を4として、複合酸化物の組成に含まれる酸素原子のモル数は、(2×2+3×2+1×4)/2=7であると算出される。
【0031】
複合酸化物が、メリライト型結晶構造を有することはX線回折(XRD)スペクトルを測定することで確認することができる。具体的には、無機結晶構造データベース(ICSD)において、複合酸化物に対応する組成を有し、メリライト型結晶構造であることが示されている無機結晶のXRDスペクトルと、複合酸化物のXRDスペクトルとが相似関係にある場合に、複合酸化物がメリライト型結晶構造を有していると同定することができる。
【0032】
例えば、複合酸化物がSrFeGeOという理論組成を有する場合、ICSDにおけるSrCoGeのXRDデータのうち、強度の高い複数(例えば、4つ)のピークについて、複合酸化物のXRDデータが対応するピークを有する場合に、複合酸化物がメリライト型結晶構造を有していると同定することができる。具体的には例えば、SrFeGeOのXRDデータの2θが、27.44°±2°、29.60°±2°、34.80°±2°、49.06°±2°の位置にあればメリライト型結晶構造を有していると同定することができる。
【0033】
複合酸化物の形状は、例えば粒子状、バルク状等から適宜選択することができる。複合酸化物の体積平均粒径は、例えば1nm以上100μm以下であってよい。複合酸化物の体積平均粒径は、20nm以上、又は10μm以下であってよい。複合酸化物の体積平均粒径は、体積基準の累積粒度分布において、小径側からの体積累積50%に対応する粒径として求められる。なお、体積基準の累積粒度分布は、例えばレーザー回折式粒度分布測定装置を用いて測定される。
【0034】
電極活物質を構成する複合酸化物は1種のみであってもよく、2種以上の組み合わせであってもよい。また電極活物質は、対極を構成する活物質に応じて、正極活物質であってもよく、負極活物質であってもよい。すなわち、フッ化物イオン電池を構成する際に、複合酸化物よりも低い電位を有する活物質で対極を構成することで、複合酸化物を正極活物質として用いることができる。一方、複合酸化物よりも高い電位を有する活物質で対極を構成することで、複合酸化物を負極活物質として用いることができる。
【0035】
電極活物質を正極活物質として用いる場合、負極活物質には、正極活物質よりも低い電位を有する任意の活物質が選択され得る。負極活物質としては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物及びこれらのフッ化物を挙げることができる。負極活物質に含まれる金属原子としては、例えば、La、Ca、Al、Eu、Li、Si、Ge、Sn、In、V、Cd、Cr、Fe、Zn、Ga、Ti、Nb、Mn、Yb、Zr、Sm、Ce、Mg、Pb等を挙げることができる。中でも、負極活物質は、Mg、MgF、Al、AlF、Sn、SnF、Ce、CeF、Ca、CaF、Pb及びPbFからなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、上記xは、0よりも大きい実数である。また、負極活物質として、炭素材料及びそのフッ化物を挙げることもできる。炭素材料としては、例えば、黒鉛、コークス、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。また、負極活物質のさらに他の例として、ポリマー材料を挙げることもできる。ポリマー材料としては、例えば、ポリアニリン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチオフェン等を挙げることができる。
【0036】
電極活物質を負極活物質として用いる場合、正極活物質には、負極活物質よりも高い電位を有する任意の活物質が選択され得る。正極活物質としては、例えば、金属単体、合金、金属酸化物及びこれらのフッ化物を挙げることができる。正極活物質に含まれる金属原子としては、例えば、Cu、Ag、Ni、Co、Pb、Ce、Mn、Au、Pt、Rh、V、Os、Ru、Fe、Cr、Bi、Nb、Sb、Ti、Sn、Zn等を挙げることができる。中でも、正極活物質は、Cu、CuF、Fe、FeF、Bi及びBiFxからなる群から選択少なくとも1種を含むことが好ましい。ここでxは、0よりも大きい実数である。また、正極活物質として上述した炭素材料及びポリマー材料を用いることもできる。
【0037】
電極活物質に含まれる複合酸化物の含有率は、電極活物質に対して、例えば50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。複合酸化物の含有率の上限は、例えば100質量%以下であってよい。
【0038】
複合酸化物の製造方法には、セラミックス材料の製造方法を用いることができる。例えば、錯体重合法、水熱合成法、共沈法等の液相法、焼結法、メカノケミカル法等の固相法などを用いることができる。このうち、液相法によれば、化学的に均一性の高い複合酸化物を得ることができる。
【0039】
複合酸化物は、例えば錯体重合法により合成することもできる。この方法によれば、固相法に比べて得られる複合酸化物の化学的な均一性を高くすることができる。この方法では、まず、複合酸化物を構成する金属を含む金属源を、目的とする複合酸化物に含まれる金属の化学量論比と同様になるようにそれぞれ秤量して金属源混合物を得る。次いで金属源混合物と純水とクエン酸とを混合し、更に必要に応じてエチレングリコールを混合して原料溶液を得る。原料溶液を加熱濃縮して粉体状の前駆体を得る。必要に応じて前駆体を粉砕した後、前駆体を熱処理することで所望の複合酸化物を得ることができる。錯体重合法の詳細については、例えば国際公開第2019/065285号を参照することができる。
【0040】
複合酸化物の製造に用いられる金属源には、例えば所望の金属を含む硝酸塩、酢酸塩、酸化物等から適宜選択して用いることができる。
【0041】
フッ化物イオン電池用電極組成物
フッ化物イオン電池用電極組成物(以下、単に「電極組成物」ともいう)は、メリライト型結晶構造を含む複合酸化物を含む。複合酸化物は、電極活物質として電極組成物を構成してよい。複合酸化物の詳細については既述の通りである。電極組成物における複合酸化物の含有量は、電極組成物に対して、例えば30質量%以上99質量%以下であってよく、50質量%以上、又は80質量%以下であってよい。電極組成物は、複合酸化物を1種単独で含んでいてもよく、2種以上を組み合わせて含んでいてもよい。
【0042】
電極組成物は、複合酸化物に加えて、導電助材、結着材、固体電解質、分散剤等からなる群から選択される少なくとも1種の他の成分をさらに含んでいてもよい。
【0043】
導電助材としては、所望の電子伝導性を有するものであればよく、例えば炭素材料を挙げることができる。炭素材料としては、例えば、繊維状カーボン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、ファーネスブラック、サーマルブラック等のカーボンブラック、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ等を挙げることができる。結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系結着材を挙げることができる。
【0044】
固体電解質としては、La、Ce等のランタノイドのフッ化物、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属のフッ化物、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属のフッ化物等を挙げることができる。具体的には、La及びBaのフッ化物(例えば、La0.9Ba0.12.9)、Pb及びSnのフッ化物(例えば、PbSnF)等を挙げることができる。
【0045】
電極組成物が、複合酸化物に加えて他の成分を含む場合、電極組成物における他の成分の含有量は、電極組成物に対して、例えば1質量%以上80質量%以下であってよく、20質量%以上、又は50質量%以下であってよい。
【0046】
電極組成物は電極を構成する電極活物質層を形成することに用いることができる。電極組成物は、その対極を構成する活物質に応じて、正極活物質層を構成する正極組成物であってもよく、負極活物質層を構成する負極組成物であってもよい。
【0047】
フッ化物イオン電池用電極
フッ化物イオン電池用電極(以下、単に「電極」ともいう)は、フッ化物イオン電池用電極組成物を含む。電極は、集電体と集電体上に配置される電極活物質層とを備えていてよい。集電体の材質としては、例えば金、白金、SUS、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。集電体の材質は、電極の電位に応じて適宜選択することができる。また、集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状等を挙げることができる。
【0048】
集電体上に配置される電極活物質層は、既述の電極組成物を含んで構成されてよい。電極活物質層における複合酸化物の含有量は、電極活物質層に対して、例えば20質量%以上、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。電極活物質層における複合酸化物の含有量は、例えば99質量%以下であってよい。
【0049】
電極活物質層は、複合酸化物に加えて、導電助材、結着材、固体電解質、分散剤等からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。電極活物質層における導電助材の含有量は、電極活物質層に対して、例えば1質量%以上20質量%以下であってよく、5質量%以上、又は10質量%以下であってよい。電極活物質層における結着材の含有量は、電極活物質層に対して、例えば1質量%以上30質量%以下であってよい。
【0050】
フッ化物電池用電極は、対極の活物質層を構成する活物質に応じて、正極活物質層を有するフッ化物電池用正極であってもよく、負極活物質層を有するフッ化物電池用負極であってもよい。
【0051】
電極は、粉体状の電極組成物を加圧して電極活物質層を形成し、電極活物質層と集電体とを接続して構成してよい。また、溶剤を含む電極組成物を集電体上に付与し、必要に応じて乾燥、及び加圧成形することで集電体上に電極活物質層を形成して、電極を構成してもよい。
【0052】
フッ化物イオン電池
フッ化物イオン電池は、フッ化物イオン電池用電極と電解質と対極とを備える。フッ化物イオン電池用電極は、対極を負極とする正極として構成されてもよく、対極を正極とする負極として構成されてもよい。フッ化物イオン電池は、正極及び負極の間に、セパレータを備えていてもよい。フッ化物イオン電池は、一次電池であってもよく、二次電池であってもよく、好ましくは二次電池であってよい。なお、一次電池には、二次電池の一次電池的使用(充電後、一度の放電だけを目的とした使用)も含まれる。フッ化物イオン電池の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、角型等を挙げることができる。
【0053】
フッ化物イオン電池が備えるフッ化物イオン電池用電極については、既述の通りである。電解質は、フッ化物イオン電池用電極及びそれに対する対極の間に配置される。電解質は、液体電解質(電解液)であっても、固体電解質であってもよい。
【0054】
電解液は、例えば、フッ化物塩及び有機溶剤を含有する非水電解液であってよい。フッ化物塩としては、無機フッ化物塩、有機フッ化物塩、イオン液体等を挙げることができる。無機フッ化物塩としては、XFを挙げることができる。ここでXは、Li、Na、K、Rb及びCsからなる群から選択される少なくとも1種のアルカリ金属を含んでいてよい。有機フッ化物塩のカチオンとしては、テトラメチルアンモニウムカチオン等のアルキルアンモニウムカチオンを挙げることができる。電解液におけるフッ化物塩の濃度は、例えば0.1モル%以上40モル%以下であってよく、1モル%以上、又は10モル%以下であってよい。
【0055】
電解液を構成する有機溶剤はフッ化物塩を溶解する溶剤であればよい。有機溶剤としては、例えば、トリエチレングリコールジメチルエーテル(G3)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(G4)等のグライム、エチレンカーボネート(EC)、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、ジフルオロエチレンカーボネート(DFEC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)等の環状カーボネート、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)等の鎖状カーボネート挙げることができる。また、有機溶剤として、イオン液体を用いてもよい。
【0056】
固体電解質としては、La、Ce等のランタノイドのフッ化物、Li、Na、K、Rb、Cs等のアルカリ金属のフッ化物、Ca、Sr、Ba等のアルカリ土類金属のフッ化物等を挙げることができる。具体的には、La及びBaのフッ化物(例えば、La0.9Ba0.12.9)、Pb及びSnのフッ化物(例えば、PbSnF)等を挙げることができる。
【0057】
対極は、集電体と集電体上に配置される電極活物質層とを備えていてよい。集電体の材質は対極の電位に応じて適宜選択されてよい。例えば対極を負極として用いる場合、集電体の材質としては、例えば金、白金、SUS、銅、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。また、集電体の形状としては、例えば、箔状、メッシュ状、多孔質状等を挙げることができる。
【0058】
フッ化物イオン電池用電極を正極としてフッ化物イオン電池を構成する場合、負極となる対極の負極活物質層を構成する負極活物質は、正極活物質である複合酸化物よりも低い電位を有する活物質であればよい。負極活物質の具体例は既述の通りである。負極活物質層における負極活物質の含有量は、負極活物質層に対して、例えば30質量%以上であってよく、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。負極活物質層における負極活物質の含有量の上限は、例えば99質量%以下であってよい。
【0059】
フッ化物イオン電池用電極を負極としてフッ化物イオン電池を構成する場合、正極となる対極の正極活物質層を構成する正極活物質は、負極活物質である複合酸化物よりも高い電位を有する活物質であればよい。正極活物質の具体例は既述の通りである。正極活物質層における正極活物質の含有量は、正極活物質層に対して、例えば30質量%以上であってよく、50質量%以上、70質量%以上、又は90質量%以上であってよい。正極活物質層における正極活物質の含有量は、例えば99質量%以下であってよい。
【0060】
対極の電極活物質層は、電極活物質に加えて、導電助材、結着材、固体電解質、分散剤等からなる群から選択される少なくとも1種をさらに含んでいてもよい。対極の電極活物質層における導電助材の含有量は、電極活物質層に対して、例えば1質量%以上20質量%以下であってよく、5質量%以上、又は10質量%以下であってよい。電極活物質層における結着材の含有量は、電極活物質層に対して、例えば1質量%以上30質量%以下であってよい。
【0061】
本開示にかかる発明は、例えば以下の態様を包含してよい。
[1]メリライト型結晶構造を含む複合酸化物を含むフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0062】
[2]前記複合酸化物は、下記第1金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第1金属原子と、下記第2金属原子群から選択される少なくとも1種を含む第2金属原子と、下記特定非金属原子群から選択される少なくとも1種を含む特定非金属原子と、を含み、前記特定非金属原子として少なくとも酸素原子を含む[1]に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
第1金属原子群:Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Y、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Bi。
第2金属原子群:Al、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au。
特定非金属原子群:O、F、N、S、Cl。
【0063】
[3]前記複合酸化物は、前記第1金属原子の総モル数に対する前記第2金属原子の総モル数の比が、1.4以上1.6以下であり、前記第1金属原子及び前記第2金属原子の総モル数に対する前記特定非金属原子の総モル数の比が1.3以上1.5以下である組成を有する[2]に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0064】
[4]前記複合酸化物は、前記第1金属原子として、Ca、Sr、Y、Ba及びLaからなる群から選択される少なくとも1種を含む[2]又は[3]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0065】
[5]前記複合酸化物は、前記第2金属原子として、Al、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む[2]から[4]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0066】
[6]前記複合酸化物は、前記第1金属原子として、少なくともSrを含む[2]から[5]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0067】
[7]前記複合酸化物は、前記第2金属原子として、Fe及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む[2]から[6]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0068】
[8]前記複合酸化物は、体積平均粒径が20nm以上10μm以下である[1]から[7]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0069】
[9]前記複合酸化物は、下記式(1)で表される組成を有する[1]に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
(1)
(式(1)中、1.9<b<2.1、2.9<c<3.1、6.8<d<7.2を満たし、Mは、Li、Be、Na、Mg、K、Ca、Rb、Sr、Y、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu及びBiからなる群より選択される少なくとも1種を含み、MはAl、Si、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Sn、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt及びAuからなる群より選択される少なくとも1種を含み、XはOを含み、N、F、S及びClからなる群より選択される少なくとも1種をさらに含んでもよい。)
【0070】
[10]前記式(1)において、前記Mは、Ca、Sr、Y、Ba及びLaからなる群から選択される少なくとも1種を含む[9]に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0071】
[11]前記式(1)において、前記Mは、Al、Si、Mn、Fe、Co、Ni、Cu及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む[9]又は[10]に記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0072】
[12]前記式(1)において、前記Mは、少なくともSrを含む[9]から[11]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0073】
[13]前記式(1)において、前記Mは、Fe及びGeからなる群から選択される少なくとも1種を含む[9]から[12]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0074】
[14]前記複合酸化物は、体積平均粒径が20nm以上10μm以下である[9]から[13]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質。
【0075】
[15][1]から[14]のいずれかに記載のフッ化物イオン電池用電極活物質を含むフッ化物イオン電池用電極。
【0076】
[16][15]に記載のフッ化物イオン電池用電極と、電解質とを備えるフッ化物イオン電池。
【実施例0077】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0078】
実施例1
複合酸化物の合成
Sr(NO(富士フイルム和光純薬株式会社製)、Fe(NO・9HO(富士フイルム和光純薬株式会社製)及びGeO(株式会社高純度化学研究所製)を金属のモル比で2:2:1となるように秤量した。そこに純水、総カチオン量の5倍モル量のクエン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)及び総カチオン量と等モル量のエチレングリコール(富士フイルム和光純薬株式会社製)を加えて均一になるよう撹拌し、原料溶液を得た。原料溶液を150℃に設定した恒温槽に静置し、加熱濃縮することで粉状の前駆体を得た。得られた前駆体を粉砕し、ボックス炉を用いて大気中1000℃で10時間熱処理して複合酸化物を得た。
【0079】
組成分析
上記で得られた複合酸化物について誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析により、複合酸化物の組成を求めた。具体的には、前処理としてアルカリ溶融した後、塩酸加熱溶解をして誘導結合プラズマ(ICP)発光分光分析装置(ICP-AES;Optima8300:Perkin Elmer社製)を用いて、金属イオンの組成量を測定し、金属イオンの組成量の合計を5として組成における酸素原子のモル比を決定した。得られた複合酸化物は、Sr2.00Fe2.04Ge0.966.98で表される組成を有していた。
【0080】
固体電解質の調製
BaF(株式会社高純度化学研究所製)とLaF(株式会社高純度化学研究所製)をモル比で1:9となるように秤量した。秤量した材料を120℃で2時間加熱乾燥した後に、遊星ボールミルを用いて600rpmで10時間、粉砕混合して混合物を得た。得られた混合物をアルゴン雰囲気下で600℃、10時間熱処理し、La0.9Ba0.12.9で表される組成を有する固体電解質を得た。
【0081】
正極組成物の調製
電極活物質として上記で得られた複合酸化物を150mg、上記で得られた固体電解質を300mg及び導電助剤としてVGCF(R)-H(昭和電工社製)を50mg準備し、15分間乳鉢で混合した。そこに、混合用のメディアとしてジルコニア(ZrO)ボール(Φ3mm)を15g加え、ホモジナイザーで混合し、正極組成物を得た。なお、本工程は全てアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0082】
負極組成物の調製
負極活物質としてSnF(シグマアルドリッチ)を150mg、上記で得られた固体電解質を300mg及び導電助剤としてVGCF(R)-Hを50mg準備し、15分間乳鉢で混合した。そこに、混合用のメディアとしてZrOボール(Φ3mm)を15g加え、ホモジナイザーで混合し、負極組成物を得た。なお、本工程は全てアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0083】
評価用電池の作製
上記で得られた正極組成物10mg、固体電解質175mg及び負極組成物50mgをこの順で積層し、圧粉成型した。両端に集電体としてAu箔を取り付け、評価用電池を作製した。なお、本工程は全てアルゴン雰囲気のグローブボックス内で行った。
【0084】
[評価]
XRD測定
上記で得られた複合酸化物(Sr2.00Fe2.04Ge0.966.98)をXRDガラスフォルダに詰めて、X線回折測定装置(Rigaku社製Miniflex600)を用いて粉末XRD測定を行った。具体的には、CuKα線(λ=0.154nm)を用いて、2θ=20°から80°までスキャンスピード10°/min、ステップ幅:0.02°で測定を行った。結果を図1に示す。なお、下段には標品としてSrCoGeで表される組成を有するメリライト型複合酸化物のXRDスペクトルを示す。
【0085】
上記で得られた複合酸化物のXRDスペクトルにおいて、強度の高い4つのピークとして、2θ=27.44°、29.60°、34.80°、49.08°の位置にピークが確認された。
【0086】
ICSDのXRDデータにおける2θ=27.44°±2°、29.60°±2°、34.80°±2°及び49.06°±2°の4個のピークに対応するピークが観察されたことから、上記で得られた複合酸化物は、メリライト型結晶構造を有することがわかった。
【0087】
充放電試験
実施例1で得られた評価用電池に対して、定電流充放電試験を行った。充放電試験は140℃の環境下にて、電流6.7mA/g、充放電終止電位を-1.5V及び2.5V(vs.Sn/SnF)として11回充放電を行った。11サイクル目の充放電曲線を図2に示す。
【0088】
充電曲線においては-1.0から0.5V(vs.Sn/SnF)付近に第一プラトー領域が、1.5から2.0V(vs.Sn/SnF)付近に第二プラトー領域が見られた。SrFeGeOの理論容量は1電子あたり56.9mAh/gである。第一プラトー領域では2電子反応に相当する容量が得られていることから、Fe3+/Fe4+の反応で電荷補償が行われていると考えられる。第二プラトー領域では金属原子の酸化還元による反応電子数を超えた容量が発現していることから、酸素のレドックスにより電荷補償が行われていると考えられる。
図1
図2