(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022215
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】搬送装置
(51)【国際特許分類】
B65G 15/58 20060101AFI20240208BHJP
【FI】
B65G15/58 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125636
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】中林 一夫
(72)【発明者】
【氏名】浦山 聡
【テーマコード(参考)】
3F024
【Fターム(参考)】
3F024CA01
3F024CA04
(57)【要約】
【課題】搬送装置において、搬送対象物の脱落を抑制する。
【解決手段】本搬送装置は、搬送部に保持された板状の搬送対象物を搬送する搬送装置であって、前記搬送部は、長手方向と短手方向とを有する細長状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトに取り付けられるクリップと、を有し、前記搬送ベルトは、前記短手方向の端部に、第1保持部を備え、前記クリップは、前記第1保持部に対向する第2保持部を備え、前記第1保持部には、前記短手方向に延びる第1突起部が設けられ、前記第2保持部には、前記長手方向に延びる第2突起部が設けられ、前記搬送対象物は、前記クリップのばね力により前記第1突起部と前記第2突起部との間に挟まれた状態で搬送される。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送部に保持された板状の搬送対象物を搬送する搬送装置であって、
前記搬送部は、長手方向と短手方向とを有する細長状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトに取り付けられるクリップと、を有し、
前記搬送ベルトは、前記短手方向の端部に、第1保持部を備え、
前記クリップは、前記第1保持部に対向する第2保持部を備え、
前記第1保持部には、前記短手方向に延びる第1突起部が設けられ、
前記第2保持部には、前記長手方向に延びる第2突起部が設けられ、
前記搬送対象物は、前記クリップのばね力により前記第1突起部と前記第2突起部との間に挟まれた状態で搬送される、搬送装置。
【請求項2】
前記第2突起部は、前記第1保持部側に凸となる曲面を含む、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
前記クリップは、屈曲部と、前記屈曲部の一端部に設けられた前記第2保持部と、前記屈曲部の他端部に設けられた挿入部とを有し、
前記搬送ベルトには、前記短手方向において互いに離隔して配置された第1開口部と第2開口部とが設けられ、
前記第2開口部は、前記第1開口部よりも前記短手方向の端部に近い側に配置され、
前記クリップは、前記挿入部が前記第1開口部に挿入され、前記第2保持部が前記第2開口部に挿入されて、前記搬送ベルトに取り付けられている、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記短手方向において、前記第1保持部は、前記第2開口部の前記第1開口部とは反対側に隣接して配置され、
前記第1保持部は、前記第2開口部に連通して前記短手方向に延びるスリット部により分離された2つの領域を備え、
各々の前記領域に、前記第1突起部が設けられている、請求項3に記載の搬送装置。
【請求項5】
2つの前記第1突起部は、前記スリット部の前記短手方向に平行な中心軸に関して線対称となる位置に配置されている、請求項4に記載の搬送装置。
【請求項6】
前記搬送対象物は、リードフレームである、請求項1に記載の搬送装置。
【請求項7】
前記長手方向において、互いに離隔して配列された複数の前記クリップを有し、
前記搬送ベルトは、各々の前記クリップの前記第2保持部と対向する位置に、複数の前記第1保持部を備えている、請求項1乃至6の何れか一項に記載の搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、板状の搬送対象物を搬送する搬送装置が知られている。このような搬送装置の一例として、搬送対象物にめっき処理を施すためのめっき装置が挙げられる。めっき装置等に用いられる搬送装置は、板状の搬送対象物を保持するための保持部を備えている。
【0003】
保持部は、例えば、対向する2つの部材からなり、少なくとも一方の部材の有するばね性により、対向する2つの部材の間に搬送対象物を挟んで保持することができる。搬送対象物は、保持部に保持された状態で搬送される(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2020/008662号公報
【特許文献2】特表2005-500223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような搬送装置では、搬送中に搬送対象物が揺れるため、搬送対象物が保持部からずり落ちて脱落する場合がある。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みてなされたものであり、搬送装置において、搬送対象物の脱落を抑制することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本搬送装置は、搬送部に保持された板状の搬送対象物を搬送する搬送装置であって、前記搬送部は、長手方向と短手方向とを有する細長状の搬送ベルトと、前記搬送ベルトに取り付けられるクリップと、を有し、前記搬送ベルトは、前記短手方向の端部に、第1保持部を備え、前記クリップは、前記第1保持部に対向する第2保持部を備え、前記第1保持部には、前記短手方向に延びる第1突起部が設けられ、前記第2保持部には、前記長手方向に延びる第2突起部が設けられ、前記搬送対象物は、前記クリップのばね力により前記第1突起部と前記第2突起部との間に挟まれた状態で搬送される。
【発明の効果】
【0008】
開示の技術によれば、搬送装置において、搬送対象物の脱落を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る搬送装置を例示する図である。
【
図2】本実施形態に係る搬送装置を構成する搬送部を例示する部分斜視図である。
【
図3】搬送部を構成する搬送ベルトを例示する部分斜視図である。
【
図4】搬送部を構成するクリップを例示する図である。
【
図5】搬送ベルトにクリップを取り付ける様子を例示する部分斜視図である。
【
図6】搬送部に搬送対象物が保持される様子を例示する図である。
【
図8】本実施形態に係る搬送装置において搬送対象物がZ軸方向に対して傾斜した状態を例示する図である。
【
図10】比較例に係る搬送装置において搬送対象物がZ軸方向に対して傾斜した状態を例示する図である。
【
図11】保持力を確認するための実験について説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して発明を実施するための形態について説明する。なお、各図面において、同一構成部分には同一符号を付し、重複した説明を省略する場合がある。
【0011】
図1は、本実施形態に係る搬送装置を例示する図である。
図1(a)は搬送装置の平面模式図であり、
図1(b)は搬送装置を側面側から視た部分斜視図である。なお、
図1(b)に示す100は、搬送装置1の搬送対象物を示している。搬送対象物100としては、例えば、リードフレームや樹脂基板やシリコン基板等の板状の部材が挙げられる。
図1では、参考のため、互いに直交するX軸、Y軸、及びZ軸を示している。なお、他の図でも、必要に応じ、
図1と同様のX軸、Y軸、及びZ軸を示す場合がある。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る搬送装置1は、搬送部10と、駆動ローラ50と、従動ローラ60とを有している。搬送部10は、駆動ローラ50及び従動ローラ60により巻回されている。駆動ローラ50の回転駆動により、搬送部10に保持された搬送対象物100は、矢印で示す搬送方向Tの上流側から下流側に向かって搬送される。
【0013】
搬送方向Tの上流側には、例えば、搬送対象物の取り付けを行うステージ200が設けられている。ステージ200よりも搬送方向Tの下流側には、例えば、搬送対象物の処理を行うステージ210が設けられている。ステージ210よりも搬送方向Tの下流側には、例えば、搬送対象物の取り外しを行うステージ220が設けられている。ステージ200とステージ210との間に、1又は複数の他のステージがさらに設けられてもよい。また、ステージ210とステージ220との間に、1又は複数の他のステージがさらに設けられてもよい。
【0014】
ステージ210では、例えば、めっき処理が行われる。例えば、搬送対象物100がリードフレームであり、ステージ210でめっき処理が行われる場合、ステージ200とステージ210との間に設けられるステージとしては、前処理、レジスト電着、露光、現像等が挙げられる。また、ステージ210とステージ220との間に設けられるステージとしては、レジスト剥離、後処理、乾燥等が挙げられる。ただし、ステージ210で行われる処理は、めっき処理には限られない。
【0015】
図2は、本実施形態に係る搬送装置を構成する搬送部を例示する部分斜視図である。
図2(a)と
図2(b)では視る方向が異なる。
【0016】
図2に示すように、搬送部10は、長手方向と短手方向とを有する細長状の搬送ベルト20と、搬送ベルト20に取り付けられる複数のクリップ30とを備えている。搬送ベルト20は、例えば、無端ベルトである。
図2では、搬送ベルト20の長手方向はX軸方向であり、短手方向はZ軸方向である。複数のクリップ30は、X軸方向において互いに離隔して配列されている。複数のクリップ30は、例えば、X軸方向において等間隔に配列される。搬送ベルト20とクリップ30は、例えば、金属により形成することができる。金属の一例としては、ステンレス鋼が挙げられる。
【0017】
図3は、搬送部を構成する搬送ベルトを例示する部分斜視図である。
図3に示すように、搬送ベルト20には、X軸方向において互いに離隔して配列された複数の第1開口部21が設けられている。また、搬送ベルト20には、X軸方向において互いに離隔して配列された複数の第2開口部22が設けられている。
【0018】
各々の第1開口部21と各々の第2開口部22とは、Z軸方向において互いに離隔して配置されている。第2開口部22は、第1開口部21よりもZ軸負方向の端部に近い側に配置されている。
図3の例では、第1開口部21は、X軸方向の長さがZ軸方向の長さよりも長い細長状である。一方、第2開口部22は、X軸方向の長さとZ軸方向の長さが略等しい矩形である。
【0019】
搬送ベルト20は、Z軸負方向の端部に、X軸方向において互いに離隔して配列された複数の第1保持部23を備えている。Z軸方向において、各々の第1保持部23は、各々の第2開口部22の第1開口部21とは反対側に隣接して配置されている。つまり、各々の第1保持部23は、各々の第2開口部22のZ軸負方向に隣接して配置されている。Y軸方向から視て、第1開口部21の中心と、第2開口部22の中心と、第1保持部23の中心とを結ぶ直線は、例えば、Z軸と平行になる。
【0020】
各々の第1保持部23の一方の面には、Z軸方向に延びY軸負方向に突起する第1突起部23xが設けられている。詳細には、各々の第1保持部23は、第2開口部22に連通してZ軸方向に延びるスリット部24により分離された2つの領域23a及び23bを備えている。領域23a及び23bには、それぞれZ軸方向に延びる第1突起部23xが設けられている。スリット部24を設けることにより、搬送対象物100を第1保持部23と第2保持部32とで把持した際に、領域23a及び23bが適度に撓むことが可能となる。これにより、第1保持部23と第2保持部32とによる搬送対象物100表面に沿った把持が可能となり、搬送対象物100の保持力を向上できる。2つの第1突起部23xは、例えば、スリット部24のZ軸方向に平行な中心軸に関して線対称となる位置に配置することができる。第1突起部23xにおいて、第2保持部32側を向く面は、第2保持部32側に凸となる曲面を含むことが好ましい。第1突起部23xにおいて、XY平面に平行に切断した断面は、例えば、半円形であってもよいし、半楕円形であってもよいし、他の形状であってもよい。
【0021】
第1保持部23の領域23aと、該第1保持部23とX軸方向に隣接する他の第1保持部23の領域23bとの間には、第3開口部25が設けられている。言い換えれば、第1保持部23と第3開口部25は、Z軸負方向の端部において、X軸方向に交互に配置されている。隣接する第1保持部23の間に第3開口部25を設けることで、搬送ベルト20により搬送対象物100を覆う面積を減らすことができる。これにより、搬送対象物100に対するめっき等の処理の阻害を防止できる。
【0022】
搬送ベルト20には、X軸方向において互いに離隔して配列された複数の第4開口部27及び複数の第5開口部28を設けることができる。第4開口部27及び第5開口部28は、例えば、駆動ローラ50や従動ローラ60の表面に設けられた突起と係合することができる。第4開口部27及び第5開口部28は、例えば、円形である。この場合、第4開口部27及び第5開口部28は、同一の径であってもよいし、異なる径であってもよい。第4開口部27及び第5開口部28は、第1開口部21と千鳥状に配置されてもよい。
【0023】
搬送ベルト20には、X軸方向において互いに離隔して配列された、Z軸方向に延びる複数のスリット部29を設けることができる。複数のスリット部29を設けることにより、駆動ローラ50や従動ローラ60の表面に沿って、搬送ベルト20を湾曲させやすくすることができる。スリット部29は、第4開口部27と連通してもよい。
【0024】
図4は、搬送部を構成するクリップを例示する図である。
図4(a)及び
図4(b)は異なる方向から視た斜視図、
図4(c)及び
図4(d)は部分側面図である。
【0025】
図4に示すように、クリップ30は、X軸方向から視て略V字型に屈曲する屈曲部31と、屈曲部31の一端部に設けられてZ軸負方向に延びる第2保持部32と、屈曲部31の他端部に設けられてZ軸正方向に延びる挿入部33とを有している。クリップ30は、例えば、金属板を所定形状に打ち抜いて折り曲げることにより形成することができる。クリップ30は、ばね性を有する。
【0026】
屈曲部31において、Y軸方向に伸びる部分におけるX軸方向の幅は略一定であり、Y軸方向に伸びる部分に対して屈曲する部分は、第2保持部32に近付くほどX軸方向の幅が細くなっている。第2保持部32のX軸方向の幅は、略一定である。挿入部33のX軸方向の幅は、略一定である。第2保持部32のX軸方向の幅は、挿入部33のX軸方向の幅よりも狭い。
【0027】
第2保持部32の一方の面には、X軸方向に延びY軸正方向に突起する第2突起部32xが設けられている。第2突起部32xの形状は、X軸に略平行な線に近い領域で搬送対象物100と接することができる形状であることが好ましい。そのため、第2突起部32xにおいて、第1保持部23側を向く面は、第1保持部23側に凸となる曲面を含むことが好ましい。
【0028】
第2突起部32xにおいて、例えば、X軸方向の異なる位置でYZ平面に平行に切断した断面は同一形状である。第2突起部32xにおいて、X軸方向の異なる位置でYZ平面に平行に切断した断面は、例えば、半円形であってもよいし、半楕円形であってもよいし、第1保持部23側に凸となる曲面を含む他の形状であってもよい。
【0029】
クリップ30において、第2突起部32xが形成されていない側の面は、
図4(c)に示すように平坦であってもよいし、
図4(d)に示すように第2突起部32x側に窪む凹部32yが形成されていてもよい。
【0030】
図5は、搬送ベルトにクリップを取り付ける様子を例示する部分斜視図である。
図5に示すように、クリップ30は、挿入部33がY軸正方向から第1開口部21に挿入され、第2保持部32がY軸正方向から第2開口部22に挿入されて、搬送ベルト20に取り付けられている。
【0031】
図6は、搬送部に搬送対象物が保持される様子を例示する図である。
図6(a)は斜視図、
図6(b)は
図6(a)のA-A線に沿う断面図である。
図7は、
図6のB部の拡大図である。
図7(a)は
図6(a)の拡大図であり、
図7(b)は
図6(b)の拡大図である。
【0032】
図6及び
図7に示すように、搬送ベルト20の第1保持部23と、クリップ30の第2保持部32とは、互いに対向する位置に配置される。そして、搬送対象物100の上端近傍は、クリップ30のばね力により、搬送ベルト20の第1保持部23に設けられた2つの第1突起部23xと、クリップ30の第2保持部32に設けられた1つの第2突起部32xに挟まれた状態で保持される。搬送対象物100は、
図6及び
図7に示す状態で、
図1に示した駆動ローラ50の回転駆動により、
図1に矢印で示す搬送方向Tの上流側から下流側に向かって搬送される。
【0033】
図6及び
図7では、搬送対象物100は、Z軸方向に対して傾斜していない状態で搬送されている。しかし、搬送対象物100は、搬送中の振動等により振れるため、常にZ軸方向に対して傾斜していない状態で搬送されるとは限らない。
図8は、本実施形態に係る搬送装置において搬送対象物がZ軸方向に対して傾斜した状態を例示する図である。
図8(a)及び
図8(b)に示すように、搬送対象物100は、Z軸方向に対して傾斜している状態で搬送される場合もある。
【0034】
このように、搬送対象物100は、Z軸方向に対する傾斜方向を変えながら搬送される。そのため、搬送対象物100に対する第1保持部23及び第2保持部32の保持力が不十分であると、搬送中に、搬送対象物100が第1保持部23及び第2保持部32からずり落ちて脱落する場合がある。
【0035】
搬送装置1は、搬送対象物100に対する第1保持部23及び第2保持部32の保持力が大きくなるような構造とされている。これに関して、
図9及び
図10に示す比較例を参照しながら説明する。
【0036】
図9は、比較例に係る搬送装置を例示する図である。
図9(a)及び
図9(b)は
図7(a)及び
図7(b)に対応する部分を示している。
図9に示すように、比較例に係る搬送装置は、第2保持部32に第2突起部32zが設けられている点が、搬送装置1と相違する。搬送装置1において第2突起部32xはX軸方向に延びているのに対し、比較例に係る搬送装置では、第2突起部32zはZ軸方向に延びている。すなわち、第2突起部32zと、2つの第1突起部23xは長手方向が略平行となるように配置されている。
【0037】
図10は、比較例に係る搬送装置において搬送対象物がZ軸方向に対して傾斜した状態を例示する図である。例えば、搬送対象物100が搬送中に
図10(a)の状態から
図10(b)の状態に変化した場合を考える。この場合、断面視における搬送対象物100と第2突起部32zとの接触点がP1からP2にずれる。そのため、搬送中に
図10(a)の状態から
図10(b)の状態に変化したときに搬送対象物100に対する第1保持部23及び第2保持部32の保持力が低下し、搬送対象物100が第1保持部23及び第2保持部32からずり落ちて脱落する場合がある。
【0038】
これに対して、搬送装置1では、搬送対象物100が搬送中に
図8(a)の状態から
図8(b)の状態に変化したとしても、断面視における搬送対象物100と第2突起部32xとの接触点はほとんどずれることがない。そのため、搬送中に
図8(a)の状態から
図8(b)の状態に変化しても、搬送対象物100に対する第1保持部23及び第2保持部32の保持力が維持され、搬送対象物100が第1保持部23及び第2保持部32からずり落ちて脱落することを抑制できる。
【0039】
なお、第1保持部23は、1つの第1突起部23xを有する構造であってもよい。この場合も、第1突起部23xと第2突起部32xの長手方向が互いに直交することにより、搬送対象物100が第1保持部23及び第2保持部32からずり落ちて脱落することを抑制する一定の効果が得られる。だたし、第1保持部23が2つの第1突起部23xを有する構造の方が、保持力をいっそう大きくできる点で好ましい。
【0040】
図11は、保持力を確認するための実験について説明する図である。
図11に示すように、まず、板状の土台310上にX軸方向において互いに離隔する2本の支柱320が設けられた支持部材300を準備した。そして、支持部材300の2本の支柱320の上端近傍に、搬送部10の搬送ベルト20の両端を橋渡した状態で固定した。次に、搬送対象物100の上端近傍を搬送部10に保持させた。
【0041】
次に、搬送対象物100の下端近傍に、ばねばかり400を取り付けた。そして、搬送対象物100を、ばねばかり400で矢印Fの方向(Z軸負方向)に引っ張り、搬送対象物100が脱落した際の荷重をばねばかり400で測定した。この実験は、本実施形態に係る搬送装置に加え、比較のため、
図9に示した比較例に係る搬送装置についても行った。結果を表1に示す。
【0042】
【0043】
表1より、比較例に係る搬送装置の荷重の平均値は630gfであったのに対し、本実施形態に係る搬送装置の荷重の平均値は1000gfであった。すなわち、Z軸方向に延びる第2突起部32zを備えた構造に対し、X軸方向に延びる第2突起部32xを備えた構造では、保持力が約60%向上することが確認された。これにより、X軸方向に延びる第2突起部32xを備えた構造を採用することで、Z軸方向に延びる第2突起部32zを備えた構造に対し、搬送対象物100の脱落を大幅に抑制できると考えられる。
【0044】
なお、搬送装置1では、第1突起部23xはZ軸方向に延び、第2突起部32xはX軸方向に延びるように配置されている。つまり、第1突起部23xと第2突起部32xは、長手方向が互いに直交する。例えば、第1突起部23xと第2突起部32xの長手方向を両方ともX軸方向に向ける構造も考えられるが、この構造では、第1突起部23xと第2突起部32xがZ軸方向に少しでもずれると搬送対象物100が傾いてしまう点で好ましくない。したがって、第1突起部23xと第2突起部32xは、長手方向が互いに直交することが好ましい。
【0045】
また、搬送装置1とは反対に、第1突起部23xがX軸方向に延び、第2突起部32xがZ軸方向に延びるように配置する構造も考えられる。しかし、搬送ベルト20側にX軸方向に延びる複数の第1突起部23xを設けることは構造上困難であるため、搬送装置1の構造の方が好ましい。
【0046】
以上、好ましい実施形態について詳説したが、上述した実施形態に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態に種々の変形及び置換を加えることができる。
【符号の説明】
【0047】
1 搬送装置
10 搬送部
20 搬送ベルト
21 第1開口部
22 第2開口部
23 第1保持部
23a,23b 領域
23x 第1突起部
24,29 スリット部
25 第3開口部
27 第4開口部
28 第5開口部
30 クリップ
31 屈曲部
32 第2保持部
32x,32z 第2突起部
32y 凹部
33 挿入部
50 駆動ローラ
60 従動ローラ
100 搬送対象物
200,210,220 ステージ
300 支持部材
310 土台
320 支柱
400 ばねばかり