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  • 特開-被覆食品及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022312
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】被覆食品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23G 1/54 20060101AFI20240208BHJP
   A23G 1/32 20060101ALI20240208BHJP
   A23G 3/54 20060101ALI20240208BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20240208BHJP
【FI】
A23G1/54
A23G1/32
A23G3/54
A23L5/00 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125803
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000006116
【氏名又は名称】森永製菓株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100137338
【弁理士】
【氏名又は名称】辻田 朋子
(74)【代理人】
【識別番号】100196313
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 大輔
(72)【発明者】
【氏名】太田 康博
(72)【発明者】
【氏名】月足 元希
(72)【発明者】
【氏名】仙波 佐智子
【テーマコード(参考)】
4B014
4B035
【Fターム(参考)】
4B014GB02
4B014GB04
4B014GE03
4B014GG14
4B014GP18
4B035LC03
4B035LC16
4B035LE07
4B035LG12
4B035LK14
4B035LP59
(57)【要約】
【課題】
一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含み、輸送耐性がある被覆食品を提供すること。
【解決手段】
センター材と、前記センター材を被覆するコーティング部とを含み、全体にわたって滑らかな曲面で形成される被覆食品であって、
前記センター材の硬度が、前記センター材の温度が25℃のときに0.5g以上であり、前記センター材の体積は800mm以上であり、
前記コーティング部は、28℃で固体の油脂含有原料で形成され、該油脂含有原料は、温度が28℃のときの固体脂含量が47%以上である、被覆食品。
【選択図】 なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
センター材と、前記センター材を被覆するコーティング部とを含み、全体にわたって滑らかな曲面で形成される被覆食品であって、
前記センター材の硬度が、前記センター材の温度が25℃のときに0.5g以上であり、前記センター材の体積は800mm以上であり、
前記コーティング部は、28℃で固体の油脂含有原料で形成され、該油脂含有原料は、温度が28℃のときの固体脂含量が47%以上である、被覆食品。
【請求項2】
前記油脂含有原料は、温度が30℃のときの固体脂含量が55%以下である、請求項1に記載の被覆食品。
【請求項3】
前記被覆食品全体に占める前記コーティング部の割合が50体積%以上90体積%以下である、請求項1に記載の被覆食品。
【請求項4】
前記センター材の体積が5000mm以下である、請求項1に記載の被覆食品。
【請求項5】
前記センター材の質量が0.1g以上である、請求項1に記載の被覆食品。
【請求項6】
複数の前記センター材を転動させながら、該センター材に前記油脂含有原料を供給することで、個々の前記センター材を前記油脂含有原料で被覆することにより得られる食品である、請求項1に記載の被覆食品。
【請求項7】
全体にわたって滑らかな曲面で形成される被覆食品の製造方法であって、28℃における硬度が0.5g以上であり、個々の体積が800mm以上である複数のセンター材に、28℃における固体脂含量が47%以上である油脂含有原料を供給して、前記センター材を個別に前記油脂含有原料で被覆する被覆工程を含む、被覆食品の製造方法。
【請求項8】
前記油脂含有原料の、28℃における固体脂含量が60%以下である、請求項7に記載の被覆食品の製造方法。
【請求項9】
前記油脂含有原料の、22℃における固体脂含量が76.5%以下である、請求項7に記載の被覆食品の製造方法。
【請求項10】
前記油脂含有原料の温度が22℃のときの固体脂含量が65%以上である、請求項9に記載の被覆食品の製造方法。
【請求項11】
前記被覆工程は、前記センター材を転動させながら行う、請求項7に記載の被覆食品の製造方法。
【請求項12】
前記センター材の体積が5000mm以下である、請求項7に記載の被覆食品の製造方法。
【請求項13】
前記センター材の質量が0.1g以上である、請求項7に記載の被覆食品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を内包する被覆食品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、センター材を内包する被覆食品及びその製造方法が種々開発されてきた。
例えば特許文献1には、ココアバターと精製バターオイルの総量に対する精製バターオイルの配合割合が8質量%以上であり、レオメーターによる最大荷重が2500g以下である硬さを有するテンパー型チョコレートがコーティングされたチョコレート被覆食品及びその製造方法が記載されている。
また特許文献2には、チョコレート生地中の油脂の1,3-ジステアロイル-2-オレオイルグリセロール(StOSt)含量が26~70質量%である融液状のチョコレート生地を調製する調製工程と、前記融液状のチョコレート生地に、β型StOSt結晶を少なくとも含むシーディング剤を添加する添加工程と、添加工程で得られたチョコレート生地を食品に被覆する被覆工程を含む、チョコレート被覆食品の製造方法及び当該製造方法で製造されたチョコレート被覆菓子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-036837号公報
【特許文献2】再表2014/003079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の実施例ではバウムクーヘンを、特許文献2の実施例ではフランスパンやビスケットを、コーティング液をかけるか又は塗布することにより被覆するものである。これらのセンター材は比較的固いか、変形しにくいものであった。また食感としても既存の菓子と同じようなものであった。
また一般的に販売されている被覆菓子も、センター材はナッツ類等のある程度以上の固さを有する、比較的小さいものであった。
換言すれば、従来の被覆菓子中のセンター材はある程度以上の固さを有する比較的小さいものであり、センター材を大きいものや、軟らかいものに変更することによって、新規な食感を有する、嗜好性の高い被覆食品及びその製造方法を提供することについては、検討されてこなかったのである。
【0005】
このような状況の中、本発明者らは、従来にない新規な食感を有する被覆食品を提供する観点から、センター材を、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するものに変更することを着想した。
当該着想に従い本発明者らが鋭意研究を行ったところ、センター材が比較的大きい場合、特に、センター材が一定以上の軟らかさと大きさを有する場合、製造工程において被覆することが困難であるか、または、被覆できたとしても輸送耐性が低く、輸送中にコーティングがひび割れたり剥がれたりすることが明らかになった。
また、本発明者らは、輸送耐性に着目して、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含む被覆食品を試作したが、当該センター材の食感と、これを被覆するコーティング部の食感に一体感がなかった。すなわち、食感としてまとまりのある、嗜好性の高い被覆食品を提供することに課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものである。
すなわち、本発明は、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含み、輸送耐性がある被覆食品を提供することを、第1の課題とする。好ましくは、一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含み、輸送耐性があり、センター材とコーティング部の食感の一体感による嗜好性の高い被覆食品を提供することを、さらなる課題とする。
【0007】
また本発明は、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を被覆することができる、被覆食品の製造方法を提供することを、第2の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する本発明は、センター材と、前記センター材を被覆するコーティング部とを含み、全体にわたって滑らかな曲面で形成される被覆食品であって、前記センター材の硬度が、前記センター材の温度が25℃のときに0.5g以上であり、前記センター材の体積は800mm以上であり、前記コーティング部は、28℃で固体の油脂含有原料で形成され、該油脂含有原料は、温度が28℃のときの固体脂含量が47%以上である、被覆食品である。
本発明によれば、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含み、輸送耐性がある被覆食品とすることができる。
なお、本明細書において「%」表記は、特記しない限りは質量%を表す。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記油脂含有原料は、温度が30℃のときの固体脂含量が55%以下である。
本発明によれば、輸送耐性があり、かつ、センター材とコーティング部の食感に一体感がある、嗜好性の高い被覆製品とすることができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記被覆食品全体に占める前記コーティング部の割合が50体積%以上90体積%以下である。
本発明によれば、輸送耐性があり、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含む被覆食品とすることができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記センター材の体積は5000mm以下である。
本発明の別の好ましい形態では、前記センター材の質量が0.1g以上である。
本発明によれば、今までにない食感を有する新規な被覆食品を提供することができる。
【0012】
本発明の好ましい形態では、複数の前記センター材を転動させながら、該センター材に前記油脂含有原料を供給することで、個々の前記センター材を前記油脂含有原料で被覆することにより得られる食品である。
本発明によれば、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含み、輸送耐性がある被覆食品を、工業的に提供することができる。
【0013】
上記第2の課題を解決する本発明は、全体にわたって滑らかな曲面で形成される被覆食品の製造方法であって、28℃における硬度が0.5g以上であり、個々の体積が800mm以上である複数のセンター材に、28℃における固体脂含量が47%以上である油脂含有原料を供給して、前記センター材を個別に前記油脂含有原料で被覆する被覆工程を含む、被覆食品の製造方法である。
本発明によれば、従来の方法では製造することができなかった、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含む被覆食品を製造することができる。
【0014】
本発明の好ましい形態では、前記油脂含有原料の、28℃における固体脂含量が60%以下である。
本発明によれば、従来の方法では製造することができなかった、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含む被覆食品を製造することができる。
【0015】
本発明の好ましい形態では、前記油脂含有原料の、22℃における固体脂含量が76.5%以下である。
本発明のより好ましい形態では、前記油脂含有原料の温度が22℃のときの固体脂含量が65%以上である。
本発明によれば、従来の油脂含有原料を使用する方法では製造することができなかった、一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含む被覆食品を製造することができる。
【0016】
本発明の好ましい形態では、前記被覆工程は、前記センター材を転動させながら行う。
本発明によれば、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含み、輸送耐性がある被覆食品を、工業的に製造することができる。
【0017】
本発明の好ましい形態では、前記センター材の体積が5000mm以下である。
本発明の別の好ましい形態では、前記センター材の質量が0.1g以上である。
本発明によれば、従来の油脂含有原料を使用する方法では製造することができなかった、一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含み、輸送耐性がある被覆食品を製造することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含み、輸送耐性がある被覆食品を提供することができる。
また本発明によれば、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を被覆することができる、被覆食品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】試験例1において、実施例1に係る被覆食品と比較例1に係る被覆食品の被覆状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
1.被覆食品
本発明に係る被覆食品は、センター材と、当該センター材を被覆するコーティング部とを含み、全体にわたって滑らかな曲面で形成される被覆食品である。
全体にわたってなめらかな曲面で形成されることにより、輸送中に被覆食品同士が衝突してもひび割れが起きにくくなるため、輸送耐性が良い。
被覆食品全体の形状は、センター材の形状によって決めてもよいが、輸送耐性の観点からは、好ましくは球形である。
【0021】
本発明において、コーティング部は、28℃で固体である。
またコーティング部を形成する油脂含有原料の、温度が28℃のときの固体脂含量は47%以上であり、好ましくは47.2%以上であり、より好ましくは47.5%以上である。
また好ましくは、コーティング部を形成する油脂含有原料の、温度が28℃のときの固体脂含量は、60%以下であり、より好ましくは59%以下であり、さらに好ましくは58.5%以下である。
コーティング部を形成する油脂含有原料の28℃における固体脂含量を上記数値範囲とすることにより、一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材(以下、単にセンター材ともいう)を含む、輸送耐性がある被覆食品を製造することができる。
なお本発明において、固体脂含量は、IUPAC 2.150に準拠した方法により測定した数値である。
【0022】
コーティング部を形成する油脂含有原料としては、好ましくは「チョコレート利用食品の表示に関する公正競争規約」で定義されているところのチョコレート類を例示することができる。具体的には、同規約で定義されているチョコレート、準チョコレート、チョコレート菓子、準チョコレート菓子などを例示することができる。
【0023】
本発明の好ましい形態では、コーティング部を形成する油脂含有原料は、30℃のときの固体脂含量が55%以下であり、より好ましくは、30℃のときの固体脂含量が53%以下であり、さらに好ましくは30℃のときの固体脂含量が40%以下である。
本発明によれば、センター材とコーティング部の食感に一体感があり、嗜好性が高い新規な被覆食品を製造することができる。
なおコーティング部を形成する油脂含有原料の、30℃のときの固体脂含量の下限値は、製造適性及びセンター材の食感にあわせて適宜設定すればよいが、例えば35%以上とすることができる。
【0024】
本発明の好ましい形態では、被覆食品全体に占めるコーティング部の割合が50体積%以上90体積%以下であり、より好ましくは60体積%以上85体積%以下である。
被覆食品全体に占めるコーティング部の割合を、上記数値範囲内とすることにより、輸送耐性がよく、またセンター材とコーティング部の食感に一体感がある、嗜好性の高い被覆食品とすることができる。
【0025】
本発明においてセンター材は、25℃のときに硬度が0.5g以上であればよく、好ましくは0.8g以上であり、より好ましくは1.0g以上である。
また好ましくは、センター材の25℃のときの硬度の上限値は、500g以下であり、より好ましくは450g以下である。
センター材の25℃のときの硬度を上記数値範囲とすることにより、新規な食感の被覆食品とすることができる。
【0026】
なお本発明において、センター材の25℃のときの硬度は、以下の方法で測定した硬度である。
<センター材の硬度の測定方法>
あらかじめ品温が25℃になるように調整したセンター材(あらかじめ、高さ7mm、横10mm、縦10mmとなるようにカットして成形)をテクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製)にセットし、1mm/secの速さでプランジャー(直径9.7mm)をセンター材に押し付けた。プランジャーがセンター材に3mm侵入したところでプランジャーを止め、その時点で表示された硬度を、当該センター材の硬度とした。
【0027】
センター材の体積は800mm以上であり、好ましくは900mm以上とすることができ、1000mm以上とすることができる。
センター材の体積を上記数値範囲内とすることにより、新規な食感の被覆食品を提供することができる。
なおセンター材の体積の上限は特に制限されないが、製造適性の観点からは、5000mm以下とすることができ、好ましくは4500mm以下とすることができる。
【0028】
センター材としては、25℃のときの硬度及び体積の条件を充足していれば特に制限されず、例えばグミ、マシュマロ、ギモーヴ、ソフトキャンディ、求肥、餅、団子、白玉等を挙げることができる。
またその形状も特に制限されないが、好ましくは全体にわたって曲面で形成されており、より好ましくは球状である。
【0029】
本発明の好ましい形態では、センター材の質量は、0.1g以上である。
センター材の質量を上記数値範囲とすることにより、新規な食感の被覆食品を提供することができる。
なおセンター材の質量の上限値は特に制限されず、製造適性や目指す食感等により設定することができるが、例えば5g以下とすることができ、好ましくは4.5g以下とすることができる。
【0030】
本発明に係る被覆食品は、好ましくは、複数のセンター材を転動させながら、該センター材に前記油脂含有原料を供給することで、個々の前記センター材を前記油脂含有原料で被覆することにより得られる食品である。
例えば、公知のベルトコーターやコーティングパンを用いることにより、製造することができる。
本発明によれば、輸送耐性に優れる被覆食品を、工業的に製造することができる。
なお、製造方法の詳細は、後述する。
【0031】
本発明は、包装容器入り被覆食品にも関する。
すなわち、本発明の好ましい形態では、上記被覆食品を、個包装をせずに、1の包装容器に収容した、包装容器入り被覆食品である。
個包装をしないことにより、包材の使用量を削減して包装容器入り被覆食品を製造することができる。
【0032】
2.被覆食品の製造方法
本発明は、被覆食品の製造方法にも関する。
本発明に係る被覆食品の製造方法は、全体にわたって滑らかな曲面で形成される被覆食品の製造方法に関する。
【0033】
本発明に係る製造方法においては、センター材は、28℃における硬度が0.5g以上であり、個々の体積が800mm以上である。
センター材の硬度及びその好ましい範囲、並びに体積及びその好ましい範囲については、上記「1.」で述べた事項を適用することができる。
【0034】
本発明の好ましい形態では、センター材の質量は、0.1g以上である。
またセンター材の質量の上限値は、好ましくは5g以下とすることができ、より好ましくは4.5g以下とすることができる。
センター材の質量を上記数値範囲内とすることにより、製造過程において、センター材が自重で潰れることや、センター材同士が互いに付着すること(ブロッキング)を抑制することができる。
【0035】
本発明に係る被覆食品の製造方法は、複数のセンター材に、28℃における固体脂含量が47%以上である油脂含有原料を供給して、前記センター材を個別に前記油脂含有原料で被覆する被覆工程を含む。
油脂含有原料の、温度が28℃のときの固体脂含量は47%以上であり、好ましくは47.2%以上であり、より好ましくは47.5%以上である。
また本発明の好ましい形態では、油脂含有原料は、温度が28℃のときの固体脂含量が60%以下であり、より好ましくは59%以下であり、さらに好ましくは58.5%以下である。
特に、センター材が一定以上の軟らかさと大きさを有する場合、製造工程においてセンター材同士の衝突やセンター材自身の重さにより、センター材が変形する。従来の油脂含有原料がセンター材に付着・ある程度固化したあとに、センター材の上記変形が生じた場合、センター材に合わせて油脂含有原料が変形することができないので、ひびわれが生じ、当該ひびわれを起点にしてセンター材から油脂含有原料が剥がれてしまい、均一に被覆することができない。
しかし、油脂含有原料の28℃における固体脂含量を上記数値範囲内とすることにより、センター材の変形に追随してセンター材に付着した油脂含有原料が変形しつつ、固化させることができるので、油脂含有原料がセンター材から剥がれない。よって本発明によれば、特に一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含む被覆食品を製造することができる。
【0036】
好ましくは、油脂含有原料は、22℃における固体脂含量が76.5%以下であり、より好ましくは76.3%以下である。
また好ましくは、油脂含有原料は、22℃における固体脂含量が65%以上であり、より好ましくは68%以上である。
本発明の被覆食品の製造方法において、センター材の温度(品温)は約22℃(22℃±1℃付近)である。したがって、油脂含有原料の22℃における固体脂含量を、上記数値範囲内とすることにより、供給された油脂含有原料がセンター材に付着した後、適度な速度で固化するので、センター材から油脂含有原料が剥がれず、一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を被覆した被覆食品を製造することができる。
また、センター材の温度(品温)が上述した範囲外の場合には、当該温度(品温)における固体脂含量が上記数値範囲内にあればよい。
【0037】
本発明の好ましい形態では、油脂含有原料は、40℃における固体脂含量が47.5%以下であり、より好ましくは47%以下である。
また好ましくは、油脂含有原料は、40℃における固体脂含量が32%以上であり、より好ましくは34%以上である。
本発明の被覆食品の製造方法において、センター材に供給するときの油脂含有原料の温度(品温)は約40℃である。したがって、油脂含有原料の40℃における固体脂含量を、上記数値範囲内とすることにより、本発明に係る被覆食品を工業的に製造することができる。
なお、油脂含有原料は、センター材への供給開始の時点で40℃であればよい。霧状の油脂含有原料をセンター材に供給する場合には、供給前の液体状の時点で40℃であればよい。
また油脂含有原料の温度(品温)が上述した範囲外の場合には、当該温度(品温)における固体脂含量が上記数値範囲内にあればよい。
【0038】
本発明の好ましい形態では、油脂含有原料は、チョコレートである。チョコレートの具体例は、上記「1.」の記載を適用することができる。
また油脂含有原料の、特定温度における固体脂含量は、例えば同一温度における固体脂含量が異なる複数の油脂含有原料を混合することにより、調整することができる。
【0039】
センター材に供給されるときの油脂含有原料の性状は、センター材を被覆することができる形態であればよく、液体状又は霧状とすることが好ましい。
具体的には、油脂含有原料をその融点以上に加熱して液体状にした後、公知の機器を用いて液体状のまま、又は霧状にしてから供給すればよい。好ましくは、油脂含有原料の融点は35℃以上であり、より好ましくは、油脂含有原料の融点は40℃以上であり、さらに好ましくは、油脂含有原料の融点は43℃以上である。
油脂含有原料を霧状で供給する場合、その平均粒子径は、製造適性の観点や製造する被覆食品の食感等から適宜設定することができる。
【0040】
本発明の好ましい形態では、上記被覆工程は、センター材を転動させながら行う。
センター材を転動させながら行うことで、センター材を均一に被覆することができる。また、一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含む被覆食品を、工業的に製造することができる。
例えば、ベルトコーターやコーティンパンを用いることにより、センター材を転動させながら、被覆工程を行うことができる。
【0041】
また本発明の好ましい形態では、上記被覆工程を経て得られた被覆食品は、個包装せずに、1の包装容器に収容する。
個包装をしないことにより、包材の使用量を削減して包装容器入り被覆食品を製造することができる。
【実施例0042】
以下、実施例を参照して本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は、以下の実施例に限定されない。
【0043】
<試験例1> センター材の被覆可能性についての検討
本試験例では、油脂含有原料の相違によるセンター材の被覆可能性の違いについて検討した。
【0044】
本試験例では、センター材として、下記表1に示す5種類を用意した。グミ1~グミ3、マシュマロ、及び求肥は、いずれも市販品である。
【0045】
各センター材の硬度は、以下の方法で測定した。測定は2回行い、2回の平均を、各センター材の硬度とした。
<センター材の硬度の測定方法>
あらかじめ品温が25℃になるように調整したセンター材(あらかじめ、高さ7mm、横10mm、縦10mmとなるようにカットして成形)をテクスチャーアナライザー(Stable Micro Systems社製)にセットし、1mm/secの速さでプランジャー(直径9.7mm)をセンター材に押し付けた。プランジャーがセンター材に3mm侵入したところでプランジャーを止め、その時点で表示された硬度を、当該センター材の硬度とした。
【0046】
本試験例において、実施例では、油脂含有原料として、28℃で固体であり、28℃における固体脂含量が57.7%であるチョコレートを使用した。
比較例では、油脂含有原料として、28℃で固体であり、28℃における固体脂含量が61%であるチョコレートを使用した。
また、被覆食品1個あたり、被覆食品全体に対する油脂含有原料の割合は71体積%である。
【0047】
本試験例において、被覆食品は、以下の方法で製造した。
<製造方法>
(1)各センター材300gをコーティングパン(オサ株式会社製)に投入し、センター材を転動させた。
(2)転動しているセンター材に対し、あらかじめ40℃に加熱することにより液体状にした油脂含有原料を500g噴霧し、センター材をコーティングした。このとき、センター材の品温は約22℃であった。
(3)コーティング終了後、コーティングしたセンター材をさらに10分間転動させ、チョコレートを完全に固化させた。
【0048】
製造した被覆食品について、以下の基準で、成形性を評価した。評価は本分野で熟練した評価者3名により行った。
[基準]
○:均一にチョコレートが被覆できている
△:軽度のひび割れや軽度のブロッキングが観察される
×:成型が出来ないか、又は重度のひび割れや重度のブロッキングが観察される
【0049】
表1に、センター材の質量、硬度、体積及び被覆食品の成形性の評価を示す。なお成形性の評価は、3名の評価者による評価が同一であったため、代表者1名の評価を示す。また図1に、実施例1及び比較例1の被覆食品の写真を示す。
【0050】
【表1】
【0051】
表1及び図1に示す通り、従来の被覆食品の製造に用いられていたチョコレート(28℃における固体脂含量が61%)を用いた比較例1~比較例5は、いずれもセンター材の全体を被覆することができなかった。
一方、本発明のコーティング液(28℃における固体脂含量が57.7%)を用いて製造した実施例1~実施例5は、従来のセンター材とは異なり、一定以上の大きさ、特に、一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材であるにも関わらず、センター材の全体を被覆することができていた。
以上より、28℃における固体脂含量が47%以上である油脂含有原料を用いることにより、一定以上の大きさ、特に、一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材であっても、被覆することができることが明らかになった。
【0052】
<試験例2> 油脂含有原料の固体脂含量の検討
本試験例では、油脂含有原料の固体脂含量の範囲を検討した。
【0053】
本試験例では、センター材として実施例3と同じグミ(グミ3)を使用した。
油脂含有原料を、固体脂含量が下記表2に示すものに変更した以外は、試験例1と同様にして、被覆食品を製造した。
試験例1と同様にして、各実施例について成形性を評価した。評価結果を表2に示す。なお本試験例においても、各評価者の評価は一致したので、代表者1名の評価を示す。
【0054】
【表2】
【0055】
表2に示す通り、本試験例で用いた油脂含有原料の何れであっても、一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材の全体を被覆することができた。
本試験例の結果から、本発明に係る製造方法で用いる油脂含有原料の28℃における固体脂含量は、55%以下であることが好ましいことが明らかになった。
また、本発明に係る製造方法で用いる油脂含有原料の22℃における固体脂含量は、76%以下であることが好ましいことが明らかになった。
さらにまた、本発明に係る製造方法で用いる油脂含有原料の22℃のときの固体脂含量は、65%以上であることが好ましいことが明らかになった。
【0056】
<試験例3> 輸送耐性及び食感の評価
本試験例においては、被覆食品全体に対するコーティング部の割合が、輸送耐性及び食感に与える影響を評価した。
【0057】
実施例3のセンター材(グミ3)、実施例7の油脂含有原料(28℃における固体脂含量が57.7%)を用いて、被覆食品全体に対するコーティング部の体積が下記表3に記載の割合になるようにした以外は、試験例1と同様にして、実施例13~実施例15の被覆食品を製造した。
【0058】
実施例13~実施例15の被覆食品について、官能評価と輸送耐性評価を行った。
【0059】
官能評価は、以下の3観点について、熟練した評価者3名(下記表4中、パネルA~パネルC)が以下の基準で評価した。
(1)コーティング部の軟らかさ
5・・・非常に軟らかい
4・・・軟らかい
3・・・どちらでもない
2・・・硬い
1・・・非常に硬い
(2)センター材の軟らかさ
5・・・非常に軟らかい
4・・・軟らかい
3・・・どちらでもない
2・・・硬い
1・・・非常に硬い
(3)コーティング部とセンター材の一体感
5・・・非常にバランスが良い
4・・・バランスが良い
3・・・どちらでもない
2・・・バランスが悪い
1・・・非常にバランスが悪い
○・・・評価点3点以上
×・・・評価点3点未満
【0060】
上記基準で評価した評価結果(点数)の平均を算出し、この値を、各評価者の被覆食品に対する評価(全体評価)とした。
また、評価者3名の全体評価の平均(全体評価の平均)を算出した。
【0061】
輸送耐性評価は、雰囲気温度28℃の条件で、複数個の被覆食品を1の容器に収容し、当該容器を振動させることにより行い、以下の基準で評価した。
○・・・試験後に表面にひびわれがある被覆食品、又は互いに付着している被覆食品が、3%未満である。
×・・・試験後に表面にひびわれがある被覆食品、又は互いに付着している被覆食品が3%以上である。
【0062】
官能評価及び輸送耐性評価を総合し、以下の基準で、各被覆食品についてトータル評価を判定した。判定基準は、以下の通りである。
○・・・官能評価及び輸送耐性評価の評価が何れも「○」である
×・・・官能評価又は輸送耐性評価の何れか又は両方が「×」である
評価結果を、下記表3及び表4に示す。
【0063】
【表3】
【0064】
【表4】
【0065】
表3及び表4に示された通り、被覆食品全体に対するコーティング部の割合がそれぞれ50体積%、71体積%及び79体積%である実施例13~実施例15は、官能評価及び輸送耐性が良好であった。
具体的には、官能評価結果によれば、実施例13~実施例15の被覆食品は、コーティング部とセンター材はそれぞれ軟らかく、コーティング部とセンター材の一体感が感じられる、嗜好性の高い被覆食品であった。また輸送耐性もある被覆食品であった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明によれば、輸送耐性がある、一定以上の大きさ、好ましくは一定以上の軟らかさと大きさを有するセンター材を含む被覆食品及びその製造方法を提供することができる。

図1