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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024022316
(43)【公開日】2024-02-16
(54)【発明の名称】印刷装置及び印刷方法
(51)【国際特許分類】
   B41F 15/08 20060101AFI20240208BHJP
   B41M 1/12 20060101ALI20240208BHJP
   H05K 3/34 20060101ALI20240208BHJP
【FI】
B41F15/08 303E
B41M1/12
H05K3/34 505D
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022125810
(22)【出願日】2022-08-05
(71)【出願人】
【識別番号】000190688
【氏名又は名称】新光電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 春樹
【テーマコード(参考)】
2C035
2H113
5E319
【Fターム(参考)】
2C035AA06
2C035FA24
2C035FD01
2C035FD19
2H113AA01
2H113AA05
2H113BA10
2H113BB22
2H113CA17
5E319BB05
5E319CD29
5E319GG20
(57)【要約】
【課題】2つのスキージを用いた印刷において、被印刷物の表面に対するダメージを抑制しつつ印刷品質を保つこと。
【解決手段】印刷装置は、印刷部と、測定部と、制御部とを有する。印刷部は、2つのスキージを印刷マスクの上で順次移動させることにより、印刷マスクの開口を介して被印刷物にペーストを印刷する。測定部は、印刷されたペーストの膜厚を測定する。制御部は、各部を制御する。制御部は、測定部による膜厚の測定結果に基づいて、2つのスキージのうち最後に移動する一方のスキージの印圧を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのスキージを印刷マスクの上で順次移動させることにより、前記印刷マスクの開口を介して被印刷物にペーストを印刷する印刷部と、
印刷された前記ペーストの膜厚を測定する測定部と、
各部を制御する制御部と
を有し、
前記制御部は、
前記測定部による前記膜厚の測定結果に基づいて、前記2つのスキージのうち最後に移動する一方のスキージの印圧を制御する制御部と
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
前記膜厚の所定の目標値からの差分ごとに前記印圧の制御量を対応付けて記憶する制御量テーブルを記憶する記憶部をさらに有し、
前記制御部は、
前記制御量テーブルを参照して、前記測定部によって測定された前記膜厚と前記目標値との差分に対応する前記制御量で前記一方のスキージの印圧を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記測定部によって測定された前記膜厚と前記目標値との差分に対応する前記制御量を現在の前記一方のスキージの印圧に加算した加算印圧を算出し、前記加算印圧が所定の上限値を上回る場合又は所定の下限値を下回る場合、アラートを通知する
ことを特徴とする請求項2に記載の印刷装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記2つのスキージのうち最初に移動する他方のスキージの印圧が前記一方のスキージの印圧よりも低い一定値となるように前記他方のスキージの印圧を制御する
ことを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項5】
2つのスキージを印刷マスクの上で順次移動させることにより、前記印刷マスクの開口を介して被印刷物にペーストを印刷し、
印刷された前記ペーストの膜厚を測定し、
前記膜厚の測定結果に基づいて、前記2つのスキージのうち最後に移動する一方のスキージの印圧を制御する
工程を含むことを特徴とする印刷方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置及び印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スクリーン印刷方式を用いて印刷を行う印刷装置がある。かかる印刷装置では、被印刷物の上に印刷マスクを載置し、スキージを印刷マスクの上で移動させることで、印刷マスクの開口を介して被印刷物にペーストを印刷する。
【0003】
ここで、印刷マスクの上で移動するスキージの消耗が印刷品質に影響する。被印刷物に印刷されるペーストの膜厚は、スキージの消耗が大きくなるほど、厚くなる傾向がある。このため、ペーストの膜厚を管理するための種々の手法が提案されている。例えば、スキージを用いてペーストの印刷を行った後に、ペーストの膜厚を測定し、膜厚の測定結果に基づきスキージの印圧を制御する技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5-13926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、最近の印刷装置では、2つのスキージを用いて印刷を行うものがある。かかる印刷装置では、2つのスキージを印刷マスクの上で順次移動させることで、印刷マスクの開口を介して被印刷物にペーストを印刷する。このとき、2つのスキージのうち最初に移動するスキージ(以下「第1スキージ」と呼ぶ。)によって、ペーストが印刷マスクの開口から押し出されて被印刷物に比較的に薄く塗布される。一方、2つのスキージのうち最後に移動するスキージ(以下「第2スキージ」と呼ぶ。)によって、ペーストが印刷マスクの開口から押し出されて被印刷物にさらに塗布され、ペーストの膜厚が所望の膜厚に調節される。
【0006】
これらの2つのスキージの印圧が上述したペーストの膜厚の測定結果に基づき一律に制御される場合、被印刷物の表面に対してダメージが付与されるおそれがある。すなわち、2つのスキージを用いた印刷においては、ペーストの膜厚の増加に伴って、第1スキージの印圧が第2スキージの印圧とともに増加する。第1スキージの印圧が増加すると、第1スキージの先端が印刷マスクの開口を通過して未だペーストが塗布されていない被印刷物の表面に当接する。その結果、第1スキージの先端によって被印刷物の表面が傷付けられ、被印刷物の表面に対してダメージが付与される可能性がある。
【0007】
開示の技術は、上記に鑑みてなされたものであって、2つのスキージを用いた印刷において、被印刷物の表面に対するダメージを抑制しつつ印刷品質を保つことができる印刷装置及び印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願の開示する印刷装置は、一つの態様において、印刷部と、測定部と、制御部とを有する。印刷部は、2つのスキージを印刷マスクの上で順次移動させることにより、印刷マスクの開口を介して被印刷物にペーストを印刷する。測定部は、印刷されたペーストの膜厚を測定する。制御部は、各部を制御する。制御部は、測定部による膜厚の測定結果に基づいて、2つのスキージのうち最後に移動する一方のスキージの印圧を制御する。
【発明の効果】
【0009】
本願の開示する印刷装置の一つの態様によれば、2つのスキージを用いた印刷において、被印刷物の表面に対するダメージを抑制しつつ印刷品質を保つをことができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態に係る印刷装置の構成例を示す左側面図である。
図2図2は、実施形態に係る印刷部をX軸正方向から見た側面図である。
図3図3は、実施形態に係る印圧制御量テーブルの一例を示す図である。
図4図4は、実施形態に係る印刷装置の処理動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本願の開示する印刷装置及び印刷方法の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態により開示技術が限定されるものではない。
【0012】
以下参照する各図面では、説明を分かりやすくするために、互いに直交するX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向を規定し、Z軸正方向を鉛直上向き方向とする直交座標系を示す。
【0013】
また、ここでは、X軸負方向を前方とし、X軸正方向を後方とする前後方向を規定し、Y軸正方向を右方とし、Y軸負方向を左方とする左右方向を規定する。また、Z軸正方向を上方とし、Z軸負方向を下方とする上下方向を規定する。
【0014】
実施形態に係る印刷装置1の構成について図1を参照して説明する。図1は、実施形態に係る印刷装置1の構成例を示す左側面図である。図1に示す印刷装置1は、被印刷物である基板Wに対してスクリーン印刷方式でペーストPの印刷を行う。ペーストPとしては、例えば、フラックスやはんだペースト等が用いられる。印刷装置1は、印刷部2と、搬送部3と、測定部4とを有する。
【0015】
図2は、実施形態に係る印刷部2をX軸正方向から見た側面図である。印刷部2は、図2に示すように、保持台21と、印刷マスク22と、第1スキージ23_1と、第2スキージ23_2と、第1昇降機構24_1と、第2昇降機構24_2と、移動プレート25とを有する。なお、以下では、第1スキージ23_1及び第2スキージ23_2を総称して「スキージ23」と記載することがある。また、第1昇降機構24_1及び第2昇降機構24_2を総称して「昇降機構24」と記載することがある。
【0016】
保持台21は、基板Wを水平に保持する。
【0017】
印刷マスク22は、例えば金属からなる板状部材である。印刷マスク22は、スクリーン版とも呼ばれる。印刷マスク22には、所定のパターンを有する開口(不図示)が形成されている。印刷マスク22は、基板Wに当接する印刷位置と、印刷位置の上方に位置する退避位置との間で移動可能に構成される。
【0018】
2つのスキージ23は、例えば樹脂製ゴム等からなる弾性部材である。2つのスキージ23は、左右方向に沿って並べて配置される。2つのスキージ23は、2つのスキージ23を昇降させる2つの昇降機構24にそれぞれ取り付けられる。具体的には、第1スキージ23_1は、第1昇降機構24_1に取り付けられ、第1昇降機構24_1によって上下方向に昇降可能である。また、第2スキージ23_2は、第2昇降機構24_2に取り付けられ、第2昇降機構24_2によって上下方向に昇降可能である。
【0019】
2つの昇降機構24は、移動プレート25に取り付けられる。昇降機構24の下端には、スキージ23が取り付けられる。昇降機構24は、スキージ23を前後方向と平行な軸を中心に回動自在に支持する。昇降機構24は、スキージ23を昇降させる。具体的には、昇降機構24は、アクチュエータを有し、かかるアクチュエータの駆動力によりロッド24aを伸縮させてスキージ23を昇降させる。昇降機構24は、スキージ23を昇降させることにより、スキージ23の印刷マスク22に対する押圧力(つまり、印圧)を変更することができる。具体的には、昇降機構24は、ロッド24aを伸長させてスキージ23を降下させることにより、スキージ23の印圧を増加させることができ、ロッド24aを縮退させてスキージ23を上昇させることにより、スキージ23の印圧を減少させることができる。なお、昇降機構24は、ロッド24aを伸縮させる駆動力を得るものであれば如何なる機構であってもよく、例えば、空圧や油圧等によってロッド24aを伸縮させる駆動力を得る機構であってもよい。
【0020】
移動プレート25は、左右方向に延びるガイドレール(不図示)に取り付けられ、例えばリニアモータ等の駆動部によってガイドレールに沿って、左右方向に移動可能である。
【0021】
かかる印刷部2は、2つのスキージ23を印刷マスク22の上で順次移動させることにより、印刷マスク22の開口を介して基板WにペーストPを印刷する。
【0022】
すなわち、印刷部2は、印刷部2に搬入された基板Wを保持台21に保持すると、印刷マスク22を退避位置から印刷位置に移動させて印刷マスク22を基板Wに当接させる。印刷マスク22の上には、予めペーストPが載せられる。続いて、印刷部2は、第1昇降機構24_1を用いて2つのスキージ23のうち第1スキージ23_1を降下させることにより、第1スキージ23_1を印刷マスク22に押し付ける。続いて、印刷部2は、移動プレート25を右方向に移動させることによって第1昇降機構24_1と共に第1スキージ23_1を印刷マスク22の上で右方向に移動させる。これにより、印刷マスク22の上に載せられたペーストPが印刷マスク22の開口から押し出され、基板Wに塗布される。第1スキージ23_1の移動を終了すると、印刷部2は、第1昇降機構24_1を用いて第1スキージ23_1を上昇させる。続いて、印刷部2は、第2昇降機構24_2を用いて第2スキージ23_2を降下させることにより、第2スキージ23_2を印刷マスク22に押し付ける。続いて、印刷部2は、移動プレート25を左方向に移動させることによって第2昇降機構24_2と共に第2スキージ23_2を印刷マスク22の上で左方向に移動させる。これにより、印刷マスク22の上に載せられたペーストPが印刷マスク22の開口から押し出され、基板Wに塗布される。第2スキージ23_2の移動を終了すると、印刷部2は、第2昇降機構24_2を用いて第2スキージ23_2を上昇させる。続いて、印刷部2は、印刷マスク22を印刷位置から退避位置に移動させ、一つの基板Wに対するペーストPの印刷を完了する。
【0023】
図1の説明に戻る。搬送部3は、印刷部2と測定部4との間に設けられ、内部に基板搬送装置31を有する。基板搬送装置31は、基板Wを保持する基板保持機構を有する。また、基板搬送装置31は、前後方向及び鉛直方向への移動が可能であり、基板保持機構を用いて印刷部2と測定部4との間で基板Wの搬送を行う。
【0024】
測定部4は、基板Wに印刷されたペーストPの膜厚を測定する。測定部4は、保持台41と、膜厚センサ42とを有する。保持台41は、基板Wを水平に保持する。
【0025】
膜厚センサ42は、基板Wに印刷されたペーストPの膜厚を非接触で測定する。膜厚センサ42としては、例えば、レーザ光を基板Wに照射し、ペーストPの表裏面で反射する光の干渉状態から膜厚を測定する分光干渉式膜厚センサを用いることができる。
【0026】
かかる測定部4は、印刷部2によってペーストPが印刷された基板Wが搬送部3によって測定部4に搬送されると、該基板Wを保持台41に保持し、膜厚センサ42を用いてペーストPの膜厚を測定する。
【0027】
また、印刷装置1は、制御装置5を備える。制御装置5は、たとえばコンピュータであり、制御部51と記憶部52とを備える。記憶部52には、印刷装置1において実行される各種の処理を制御するプログラムが格納される。制御部51は、記憶部52に記憶されたプログラムを読み出して実行することによって印刷装置1の動作を制御する。
【0028】
なお、かかるプログラムは、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記録されていたものであって、その記憶媒体から制御装置5の記憶部52にインストールされたものであってもよい。コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体としては、たとえばハードディスク(HD)、フレキシブルディスク(FD)、コンパクトディスク(CD)、マグネットオプティカルディスク(MO)、メモリカードなどがある。
【0029】
ところで、印刷装置1では、複数の基板Wに対する印刷が順次行われると、印刷部2におけるスキージ23が徐々に消耗して、基板Wに印刷されるペーストPの膜厚が変動する。すなわち、基板Wに印刷されるペーストPの膜厚は、スキージ23の消耗が大きくなるほど、厚くなる傾向がある。
【0030】
これに対し、ペーストPの膜厚を管理するための技術として、ペーストPの膜厚を測定し、膜厚の測定結果に基づき、2つのスキージ23の印圧を制御することが考えられる。例えば、ペーストPの膜厚の増加に伴って2つのスキージ23の印圧を一律に増加させることが考えられる。
【0031】
しかしながら、ペーストPの膜厚の増加に伴って2つのスキージ23の印圧を一律に増加させる技術では、2つのスキージ23のうち最初に移動する第1スキージ23_1の先端が印刷マスク22の開口を通過して未だペーストPが塗布されていない基板Wの表面に当接する。その結果、第1スキージ23_1の先端によって基板Wの表面が傷付けられ、基板Wの表面に対してダメージが付与される可能性がある。
【0032】
そこで、実施形態に係る印刷装置1において、制御部51は、印刷されたペーストPの膜厚の測定結果に基づいて第2昇降機構24_2を制御することにより、2つのスキージ23のうち最後に移動する第2スキージ23_2の印圧を制御することとした。これにより、第1スキージ23_1によって基板Wにある程度の膜厚でペーストPが塗布された後に、基板Wの表面がペーストPによって覆われた状態で第2スキージ23_2によってペーストPの膜厚が所望の膜厚に調節される。このとき、仮に第2スキージ23_2の先端が印刷マスク22の開口を通過する場合でも、基板Wの表面が既に塗布されたペーストPによって保護されるているため、第2スキージ23_2の先端によって基板Wの表面が傷付けられ難い。結果として、2つのスキージ23を用いた印刷において、基板Wの表面に対するダメージを抑制しつつ印刷品質を保つことができる。
【0033】
また、制御部51は、図3に示す印圧制御量テーブルを参照して、測定部4による測定膜厚と所定の目標値との差分に対応する制御量で第2スキージ23_2の印圧を制御する。図3は、実施形態に係る印圧制御量テーブルの一例を示す図である。図3に示す印圧制御量テーブルは、ペーストPの膜厚の所定の目標値βからの差分α(μm)ごとに第2スキージ23_2の印圧制御量ΔP(MPa)を対応付けて記憶するテーブルであり、シミュレーション等によって予め作成され、記憶部52に記憶される。差分αは、以下の式(1)に従って算出される値である。
α=(ペーストPの膜厚)-β ・・・ (1)
ここで、式(1)は、差分αが正の値になる場合、ペーストPの膜厚が目標値βよりも大きいことを示し、差分αが負の値になる場合、ペーストPの膜厚が目標値βよりも小さいことを示す。
【0034】
制御部51は、印圧制御量テーブルを参照し、測定部4による測定膜厚と所定の目標値βとの差分αに対応する印圧制御量ΔPを決定し、印圧制御量ΔPで第2昇降機構24_2を制御することで第2スキージ23_2の印圧を制御する。例えば、差分αが1.5(μm)である場合、制御部51は、第2スキージ23_2の印圧を0.02(MPa)だけ増加させる。また、例えば、差分αが-2.5(μm)である場合、制御部51は、第2スキージ23_2の印圧を0.03(MPa)だけ減少させる。
【0035】
制御部51が差分αに応じて第2スキージ23_2の印圧を増加又は減少させることにより、測定部4によって測定されるペーストPの膜厚の値が目標値βに近づく。すなわち、差分αが正の値になる場合、つまり、ペーストPの膜厚が目標値βよりも大きい場合、第2スキージ23_2の印圧を増加させることにより、ペーストPの膜厚を目標値βに向けて減少させることができる。また、差分αが負の値になる場合、つまり、ペーストPの膜厚が目標値βよりも小さい場合、第2スキージ23_2の印圧を減少させることにより、ペーストPの膜厚を目標値βに向けて増加させることができる。
【0036】
このように、制御部51が印圧制御量テーブルを参照して測定部4による測定膜厚から決定した印圧制御量ΔPで第2スキージ23_2を制御することで、複雑な演算を行うことなくペーストPの膜厚を目標値βに迅速に近づけることができる。
【0037】
ところで、第2スキージ23_2の印圧が過度に増加又は減少して許容範囲から逸脱する場合には、種々の不具合が発生することがある。例えば、第2スキージ23_2の印圧が所定の上限値を上回る場合、第2スキージ23_2から印刷マスク22へ付与される負荷が大きくなり、印刷マスク22が破損してしまうおそれがある。また、例えば、第2スキージ23_2の印圧が所定の下限値を下回る場合、第2スキージ23_2が印刷マスク22から離れてしまい、印刷マスク22の上に載せられたペーストPが印刷マスク22の開口から押し出されない印刷不良が発生するおそれがある。
【0038】
そこで、制御部51は、測定部4による測定膜厚と所定の目標値βとの差分αに対応する印圧制御量ΔPを第2スキージ23_2の印圧の現在値に加算して加算印圧を算出し、加算印圧が上限値を上回る場合又は下限値を下回る場合、アラートを通知してもよい。アラートは、印刷装置1の管理者などに異常を報知できれば、いずれの方式で通知されてもよい。例えば、制御部51は、印刷装置1が有する表示装置等のユーザインタフェース(不図示)に異常を報知するメッセージを表示してもよい。
【0039】
これにより、実施形態に係る印刷装置1は、第2スキージ23_2の印圧が許容範囲から逸脱したことに伴う印刷装置1の不具合を事前に報知することができる。
【0040】
次に、実施形態に係る印刷装置1の処理動作について図4を参照して説明する。図4は、実施形態に係る印刷装置1の処理動作の一例を示すフローチャートである。図4に示す各処理は、制御部51による制御に従って実行される。また、図4に示す処理動作は、所定のタイミング、例えば、基板Wが印刷部2の保持台21に保持されたタイミングで開始される。
【0041】
まず、制御部51は、印刷部2を制御して、2つのスキージ23を印刷マスク22の上で順次移動させることにより、印刷マスク22の開口を介して基板WにペーストPを印刷する(ステップS101)。具体的には、制御部51は、第1スキージ23_1及び第2スキージ23_2を印刷マスクの上でこの順番に移動させることにより、基板WにペーストPを印刷する。基板Wに対するペーストPの印刷を終了すると、制御部51は、搬送部3を制御して、印刷部2の保持台21から測定部4の保持台41に基板Wを搬送する。
【0042】
次に、制御部51は、測定部4を制御して、基板Wに印刷されたペーストPの膜厚を測定する(ステップS102)。
【0043】
次に、制御部51は、測定部4による測定膜厚を用いて印圧制御量テーブルを参照し、測定部4による測定膜厚と所定の目標値βとの差分αに対応する印圧制御量ΔPを決定する(ステップS103)。そして、制御部51は、決定した印圧制御量ΔPを第2スキージ23_2の印圧の現在値に加算して加算印圧を算出する(ステップS104)。
【0044】
次に、制御部51は、加算印圧が所定の上限値を上回るか否かを判定する(ステップS105)。加算印圧が所定の上限値を上回らない場合(ステップS105;No)、制御部51は、加算印圧が所定の下限値を下回るか否かを判定する(ステップS106)。
【0045】
加算印圧が所定の下限値を下回らない場合(ステップS106;No)、制御部51は、ステップS103で決定した印圧制御量ΔPで第2昇降機構24_2を制御することにより、第2スキージ23_2の印圧を制御する(ステップS107)。
【0046】
一方、加算印圧が所定の上限値を上回る場合(ステップS105;Yes)又は所定の下限値を下回る場合(ステップS106;Yes)、制御部51は、アラートを通知する(ステップS108)。
【0047】
ステップS107,S108の処理を終了したとき、制御部51は、図示しない搬送部を制御して、測定部4の保持台41から印刷装置1の外部に基板Wを搬出し(ステップS109)、処理を完了する。
【0048】
なお、制御部51は、図4に示す処理動作を行う間、第1昇降機構24_1を制御して、2つのスキージ23のうち第1スキージ23_1の印圧が第2スキージ23_2の印圧よりも低い一定値となるように第1スキージ23_1の印圧を制御してもよい。
【0049】
(その他の変形例)
上記実施形態では、測定部4による膜厚の測定結果に基づき、第2スキージ23_2の印圧を制御する場合を例に説明したが、印圧以外の他の印刷パラメータが制御されてもよい。例えば、制御部51は、測定部4による膜厚の測定結果に基づき、第2スキージ23_2の移動速度又は角度を制御してもよい。また、例えば、制御部51は、測定部4による膜厚の測定結果に基づき、第2スキージ23_2の印圧、移動速度及び角度の少なくとも一つを制御してもよい。
【0050】
以上のように、実施形態に係る印刷装置(例えば、印刷装置1)は、印刷部(例えば、印刷部2)と、測定部(例えば、測定部4)と、制御部(例えば、制御部51)とを有する。印刷部は、2つのスキージ(例えば、第1スキージ23_1及び第2スキージ23_2)を印刷マスク(例えば、印刷マスク22)の上で順次移動させることにより、印刷マスクの開口を介して被印刷物(例えば、基板W)にペーストを印刷する。測定部は、印刷されたペーストの膜厚を測定する。制御部は、各部を制御する。制御部は、測定部による膜厚の測定結果に基づいて、2つのスキージのうち最後に移動する一方のスキージ(例えば、第2スキージ23_2)の印圧を制御する。これにより、実施形態に係る印刷装置によれば、2つのスキージを用いた印刷において、被印刷物の表面に対するダメージを抑制しつつ印刷品質を保つことができる。
【0051】
また、実施形態に係る印刷装置は、膜厚の所定の目標値(例えば、目標値β)からの差分(例えば、差分α)ごとに印圧の制御量(例えば、印圧制御量ΔP)を対応付けて記憶する制御量テーブル(例えば、印圧制御量テーブル)を記憶する記憶部(例えば、記憶部52)をさらに有してもよい。制御部は、制御量テーブルを参照して、測定部によって測定された膜厚と目標値との差分に対応する制御量で一方のスキージの印圧を制御してもよい。これにより、実施形態に係る印刷装置によれば、複雑な演算を行うことなくペーストの膜厚を目標値に迅速に近づけることができる。
【0052】
また、制御部は、測定部によって測定された膜厚と目標値との差分に対応する制御量を現在の一方のスキージの印圧に加算した加算印圧を算出し、加算印圧が所定の上限値を上回る場合又は所定の下限値を下回る場合、アラートを通知してもよい。これにより、実施形態に係る印刷装置によれば、一方のスキージの印圧が許容範囲から逸脱したことに伴う印刷装置の不具合を事前に報知することができる。
【0053】
また、制御部は、2つのスキージのうち最初に移動する他方のスキージ(例えば、第1スキージ23_1)の印圧が一方のスキージの印圧よりも低い一定値となるように他方のスキージの印圧を制御してもよい。これにより、実施形態に係る印刷装置によれば、2つのスキージを用いた印刷において、被印刷物の表面に対するダメージを抑制しつつ印刷品質を保つことができる。
【符号の説明】
【0054】
1 印刷装置
2 印刷部
3 搬送部
4 測定部
5 制御装置
21 保持台
22 印刷マスク
23_1 第1スキージ
23_2 第2スキージ
23 スキージ
24_1 第1昇降機構
24_2 第2昇降機構
24 昇降機構
24a ロッド
25 移動プレート
31 基板搬送装置
41 保持台
42 膜厚センサ
51 制御部
52 記憶部
W 基板
図1
図2
図3
図4